JPWO2014104352A1 - リムルス試験に付されるアンチトロンビンiii用の前処理剤及び前処理方法 - Google Patents

リムルス試験に付されるアンチトロンビンiii用の前処理剤及び前処理方法 Download PDF

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Abstract

アンチトロンビンIIIをリムルス試験に付す際の反応干渉作用を低減し、以て、アンチトロンビンIIIのリムルス試験を高精度に実施する手段を提供する。リムルス試験に付されるアンチトロンビンIIIを二価金属塩と共存させた状態でタンパク質を失活させる処理に供することにより、アンチトロンビンIIIをリムルス試験に付す際の反応干渉作用を低減する。

Description

本発明は、リムルス試薬を用いたエンドトキシン等の標的物質の検出試験に付されるアンチトロンビンIII用の前処理剤及び該処理剤を含むリムルス試薬キット、並びにこれらを用いたアンチトロンビンIIIの前処理方法及びリムルス試薬を用いたエンドトキシン等の標的物質の測定方法に関する。
本発明においては、以下の略号を使用する場合がある。
Et:エンドトキシン
BG:(1→3)−β−D−グルカン
ATIII:アンチトロンビンIII
エンドトキシンは、グラム陰性細菌の細胞壁外膜に存在するリポ多糖であり、強い発熱性物質として知られている。また、エンドトキシンは、発熱以外にも、ショック症状等の様々な病態を引き起こすことが知られている。そのため、注射剤等の医薬品、水、医療器具等におけるエンドトキシンの検出や定量は、医薬品等の安全性確保の観点から重要である。
カブトガニにグラム陰性細菌が感染すると、血液凝固を引き起こすことが知られており、この現象はエンドトキシンの検出に利用されてきた。すなわち、カブトガニ血球抽出液(カブトガニ・アメボサイト・ライセート;以下「LAL」ともいう)を使用して、エンドトキシンを測定することができる。これは、リムルス試験と呼ばれ、エンドトキシンがLALに接触することによって起きるLAL中に存在する種々のタンパク質(いずれもセリンプロテアーゼ)のカスケード反応を利用するものである。
ATIIIは、血液中の抗凝固因子であり、播種性血管内凝固症候群(DIC)等の治療に用いられる。ここで、ATIIIはセリンプロテアーゼインヒビターであるため、LAL中に存在するカスケード反応に関与するタンパク質の活性を阻害する(非特許文献1)。このように、被検試料によっては、リムルス試薬に対する阻害作用を示す場合がある。このような阻害作用は、被検試料の希釈により回避できる場合がある(非特許文献2)。しかし、ATIIIはリムルス試薬に対する阻害作用が極めて強く、ATIII製剤(注射剤)をリムルス試験に付すには64倍以上に希釈する必要があった(非特許文献2)。よって、リムルス試薬の検出感度(検量線の最小エンドトキシン濃度)を考慮すると、ATIII製剤にリムルス試験を適用することは困難であると考えられてきた(非特許文献2)。現に、ATIIIを含む試料については、現在でもウサギ発熱試験を用いてエンドトキシンの検出が行われている(非特許文献1)。
非特許文献1には、ATIII製剤を100倍希釈し、70℃で20分間加熱して前処理した後、LALと反応させて、光散乱法で測定することを特徴とする、ATIII製剤のEtを測定する方法が開示されている。この方法は、Etの検出を高感度化するために、分光光度計を用いた比濁法に代わって光散乱測定装置を用いた光散乱法を採用したことが技術的特徴である。しかし、この方法は、前記と同様に高倍率の希釈が必要不可欠であることに加え、少なくとも以下の問題があった。
(1)リムルス試験の測定装置として広く普及しているのは分光光度計であり、光散乱法を実施するには光散乱測定装置を別途新たに導入し、使用する必要があること。
(2)日本薬局方では、Etの光学的定量法として比濁法および比色法のみが規定されており、光散乱法は規定されていないこと。
また、特許文献1には、生体由来試料をアルカリ土類金属硫酸塩又はアルカリ土類金属ハロゲン化物と接触させ、加温して前処理した後、リムルス試薬を用いた測定に付すことを特徴とする、生体由来試料のEt及びBGの測定方法が記載されている。
また、特許文献2には、生体由来試料をヘキサジメトリン化合物、アルカリ金属水酸化物、非イオン性界面活性剤及びアルカリ土類金属ハロゲン化物と混合し、加温して前処理した後、リムルス試薬を用いた測定に付すことを特徴とする、血液由来試料のEt及びBGの測定方法が記載されている。
また、特許文献3には、生体由来試料をリポ多糖及び/又はリピッドA結合性ペプチドを固定化した担体と接触させてEtを吸着回収した後、リムルス試薬等を用いた測定に付すことを特徴とする、ATIIIを含有する可能性のある試料のEt測定方法が記載されている。
しかし、いずれの文献にも、ATIIIのリムルス試験を実施するために、ATIIIを二価金属塩と共存させた状態でタンパク質を失活させる処理に供して前処理することについては、記載も示唆もされていない。
国際公開2006/080448号パンフレット 特開平6−70796 特開2010−243342
エンドトキシン・自然免疫研究15―飛躍する自然免疫研究―、医学図書出版、p.27〜30、2012 エンドトキシン研究12―自然免疫学の新たな展開―、医学図書出版、p.93〜97、2009
本発明は、ATIIIをリムルス試験に付す際の反応干渉作用を低減し、以て、ATIIIのリムルス試験を高精度に実施する手段を提供することを課題とする。ここにいう「反応干渉作用」とは、リムルス試験の測定対象物質(EtやBG等)以外の要因によって引き起こされ、かつ、リムルス試験の結果に影響を与えるあらゆる作用を意味する。したがって、「反応干渉作用」には、例えば、ATIIIそのもの、ATIIIと共存している添加物又は不純物等の成分、前処理時に共存させる前処理剤以外の試薬等の成分、および/またはリムルス試薬中の成分等に起因する、これらの成分自体が不溶化する作用、リムルス試薬の反応を促進又は阻害する作用、Etのミセル構造やBGの高次構造を変化させてそれらの活性(リムルス試薬中のC因子やG因子に対する反応性)を変化させる作用等、リムルス試験の結果に影響を与えるあらゆる作用が含まれる。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ATIIIを二価金属塩と共存させた状態で、熱処理や酸処理等のタンパク質を失活させる処理に供することにより、ATIIIをリムルス試験に付す際の反応干渉作用を低減でき、よって、ATIIIのリムルス試験を高精度に実施できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1]
リムルス試験に付されるアンチトロンビンIII用の前処理剤であって、
二価金属塩を含有し、
アンチトロンビンIIIをリムルス試験に付す前に、該アンチトロンビンIIIを前記前処理剤と共存させた状態でタンパク質を失活させる処理に供するために用いられる、前処理剤。
[2]
前記二価金属塩が、二価金属塩化物、二価金属酢酸塩、及び二価金属硫酸塩からなる群より選択される1又はそれ以上の金属塩である、前記前処理剤。
[3]
前記二価金属塩を構成する二価金属が、マグネシウム、カルシウム、マンガン、及び亜鉛からなる群より選択される1又はそれ以上の金属である、前記前処理剤。
[4]
アンチトロンビンIIIを前記前処理剤と共存させた時の、前記二価金属塩に由来する二価金属イオンの濃度が、0.5mM以上である、前記前処理剤。
[5]
前記リムルス試験の測定対象物質が、エンドトキシンである、前記前処理剤。
[6]
前記前処理剤を含む、アンチトロンビンIII用のリムルス試薬キット。
[7]
アンチトロンビンIIIを前記前処理剤と共存させた状態でタンパク質を失活させる処理に供することを含む、リムルス試験に付されるアンチトロンビンIIIの前処理方法。
[8]
前記タンパク質を失活させる処理が、熱処理または酸処理である、前記前処理方法。
[9]
前記熱処理が、50℃超の温度で行われる、前記前処理方法。
[10]
前記酸処理に用いられる酸が、塩酸である、前記前処理方法。
[11]
前記前処理方法によりアンチトロンビンIIIを前処理すること、および前処理されたアンチトロンビンIIIをリムルス試験に付すことを含む、アンチトロンビンIII中のリムルス試験の測定対象物質を測定する方法。
[12]
前記方法によりアンチトロンビンIII中のリムルス試験の測定対象物質を測定すること
を含む、アンチトロンビンIIIを製造する方法。
図1は、平行線定量法を用いた試験の結果を示す図である。 図2は、平行線定量法を用いた試験の結果を示す図である。 図3は、平行線定量法を用いた試験の結果を示す図である。
(1)本発明の前処理剤
本発明の前処理剤は、二価金属塩を含有する、リムルス試験に付されるATIII用の前処理剤である。本発明の前処理剤は、ATIIIをリムルス試験に付す前に、該ATIIIを本発明の前処理剤と共存させた状態でタンパク質を失活させる処理に供するために用いられる。
ここにいう「リムルス試験」とは、リムルス試薬を用いて標的物質を検出(測定)する試験をいう。同標的物質を、「リムルス試験の測定対象物質」ともいう。リムルス試験の測定対象物質は、リムルス試験により検出可能な物質であれば特に制限されないが、Et又はBGであることが好ましく、Etであることがより好ましい。
ここにいう「ATIII」とは、ATIIIを含有する試料であれば特に制限されず、ATIIIからなるものであってもよく、ATIII以外の成分を含むものであってもよい。ATIIIの形状も特に制限されず、例えば、液状であってもよく、凍結乾燥物、粉末、顆粒、錠剤等の固形状であってもよい。
ATIIIとしては、例えば、ATIIIの注射用製剤が挙げられる。このような注射用製剤として、具体的には、例えば、ノイアート(登録商標;株式会社ベネシス製)、アンスロンビン(財団法人 化学及血清療法研究所製)、ノンスロン(登録商標;日本製薬株式会社製)が挙げられる。このようなATIIIの注射用製剤を本発明の前処理およびリムルス試験に付す際には、原液そのままを被検体として用いてもよいし、濃縮された溶液を被検体として用いてもよいし、水や緩衝液等の水性溶媒で任意の倍率に希釈した溶液を被検体として用いてもよい。ここにいう「原液」とは、ATIIIを注射用製剤として通常用いる際の濃度である50Unit/mLの濃度で含む溶液を意味する。「原液」は、例えば、各ATIIIの注射用製剤の添付文書に記載された方法に従ってATIIIを水性溶媒に溶解することによって得られる。ここにいう「濃縮された溶液」とは、ATIIIを50Unit/mL超の濃度で含む溶液を意味する。「濃縮された溶液」としては、例えば、各ATIIIの注射用製剤の製造工程において得られる中間精製物が挙げられる。
また、原液を水性溶媒で希釈する場合の希釈倍率は、リムルス試験の測定対象物質を検出可能である限り特に制限されないが、例えば、1倍超64倍未満であることが好ましく、1倍超16倍以下であることがより好ましく、1倍超10倍以下であることがさらに好ましく、1倍超4倍以下であることがよりさらに好ましく、1倍超2.5倍以下であることが特に好ましく、1.1倍以上2.5倍以下であることが極めて好ましく、1.2倍以上2.5倍以下であることが特に極めて好ましい。なお、ここにいう「希釈倍率」とは、本発明の前処理剤の共存下でタンパク質を失活させる処理を行っている反応液の、前記「原液」に対する希釈の倍率を意味する。よって、希釈倍率「1倍」とは、本発明の前処理剤の共存下でタンパク質を失活させる処理を行っている反応液におけるATIII濃度が、前記「原液」のATIII濃度と同じであること(原液のまま。原液が希釈されておらず、ATIIIが50Unit/mLの濃度で存在していること。)を意味する。
また、ATIIIは、組換えタンパク質であってもよい。組換えATIIIは、宿主細胞に発現させることで取得できる。宿主細胞による発現は常法に従って行うことができる。例えば、山田ら(国際公開第2005/035563号)の方法に従って行うことができる。ATIIIのアミノ酸配列やそれをコードする遺伝子の塩基配列は、公知のデータベースから取得できる。公知のデータベースとしては、例えば、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)が挙げられる。発現させる組換えタンパク質は、天然のATIIIと同一のアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。また、発現させる組換えタンパク質は、ATIIIとしての機能を維持している限り、天然のATIIIのバリアントであってもよい。バリアントには、公知のATIIIのホモログや人為的改変体も含まれる。
ここにいう「二価金属塩」は、本発明の属する技術分野において二価金属塩として認識される金属塩である限り特に制限されない。二価金属塩としては、例えば、二価金属フッ化物、二価金属塩化物、二価金属臭化物、二価金属ヨウ化物、二価金属水酸化物、二価金属シアン化物、二価金属硝酸塩、二価金属亜硝酸塩、二価金属次亜塩素酸塩、二価金属亜塩素酸塩、二価金属塩素酸塩、二価金属過塩素酸塩、二価金属過マンガン酸塩、二価金属酢酸塩、二価金属炭酸水素塩、二価金属リン酸二水素塩、二価金属硫酸水素塩、二価金属硫化水素塩、二価金属チオシアン酸塩、二価金属酸化物、二価金属硫化物、二価金属過酸化物、二価金属硫酸塩、二価金属亜硫酸塩、二価金属チオ硫酸塩、二価金属炭酸塩、二価金属クロム酸塩、二価金属二クロム酸塩、二価金属リン酸一水素塩、二価金属リン酸塩が挙げられる。二価金属塩としては、1種のみを用いてもよく、2種またはそれ以上を組み合わせて用いてもよい。二価金属塩は、例えば、二価金属塩化物、二価金属酢酸塩、及び二価金属硫酸塩からなる群より選択される1又はそれ以上の金属塩であることが好ましい。
二価金属塩は、ATIIIを本発明の前処理剤と共存させた時に、二価の金属イオンを与えるものであってよい。「ATIIIを本発明の前処理剤と共存させた時」とは、具体的には、後述するタンパク質を失活させる処理が行われている時をいう。二価金属塩は、例えば、水性溶媒に溶解し二価の金属イオンを与えるものであってよい。水性溶媒としては、水や緩衝液が挙げられる。
ここにいう「二価金属」は、本発明の属する技術分野において二価金属として認識される金属である限り特に制限されない。「二価金属」とは、イオン化した際に二価の金属イオンを与える金属を意味してよい。二価金属としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、カドミウム、ニッケル、亜鉛、銅、水銀、鉄、コバルト、スズ、鉛、マンガンが挙げられる。二価金属としては、1種のみを用いてもよく、2種またはそれ以上を組み合わせて用いてもよい。二価金属は、例えば、マグネシウム、カルシウム、マンガン、及び亜鉛からなる群より選択される1又はそれ以上の金属であることが好ましい。
二価金属塩として、具体的には、例えば、硫酸マグネシウム(MgSO4)、例えば、塩化マグネシウム(MgCl2)、酢酸マグネシウム(Mg(CH3COO)2)、塩化カルシウム(CaCl2)、酢酸カルシウム(Ca(CH3COO)2)、硫酸マンガン(MnSO4)、硫酸亜鉛(ZnSO4)が挙げられる。本発明の前処理剤は、例えば、二価金属塩として硫酸マグネシウム(MgSO4)のみを含有していてもよい。また、本発明の前処理剤は、例えば、硫酸マグネシウム(MgSO4)に加えて、さらに1又はそれ以上の他の二価金属塩を含有していてもよい。
また、本発明の前処理剤は、さらに他の成分を含有していてもよい。「他の成分」は、試薬・診断薬学的に許容される成分であれば特に制限されず、例えば、試薬や診断薬に配合して用いられる成分を用いることができる。ここにいう「他の成分」としては、例えば、アルカリ金属塩化物、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属硫酸塩、界面活性剤、及び各種添加剤が挙げられる。各種添加剤としては、例えば、安定化剤、乳化剤、浸透圧調整剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、pH調整剤、着色剤、賦形剤、縮合剤、滑沢剤、崩壊剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の前処理剤の剤形は特に制限されない。本発明の前処理剤は、例えば、液剤として提供されてもよく、粉末剤、顆粒剤、又は錠剤等の用時溶解用の固形剤として提供されてもよい。また、本発明の前処理剤は、例えば、本発明の前処理剤をウェル内に保持するマイクロプレートとして提供されてもよい。そのようなマイクロプレートは、例えば、液状に調製した本発明の前処理剤をウェル内に分注し、乾燥させることにより得られる。また、本発明の前処理剤が液剤として提供される場合は、本発明の前処理剤は、凍結状態で提供されてもよいし、液体状態(融解状態)で提供されてもよい。
本発明の前処理剤において、二価金属塩は、塩の状態で存在していてもよく、イオン化した状態で存在していてもよく、その混合物として存在していてもよい。これらいずれの場合も、「本発明の前処理剤が二価金属塩を含有する」ことに該当する。
本発明の前処理剤は、二価金属塩を含有させること以外は、試薬や診断薬を製造するのに通常用いられるのと同様の手法によって製造することができる。
本発明の前処理剤における二価金属塩の濃度は特に制限されず、二価金属塩の種類や本発明の前処理剤の使用量等の諸条件に応じて適宜設定することができる。本発明の前処理剤における二価金属塩の濃度は、例えば、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、30質量%以上、または50質量%以上であってよい。本発明の前処理剤における二価金属塩の濃度は、例えば、100質量%以下、50質量%以下、30質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、または1質量%以下であってよい。
本発明の前処理剤の使用量は特に制限されず、二価金属塩の種類や濃度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。本発明の前処理剤は、例えば、ATIIIを本発明の前処理剤と共存させた時の二価金属塩に由来する二価金属イオンの濃度(以下、「処理時の二価金属イオン濃度」ともいう)が以下に例示するような濃度範囲となるように用いることができる。「ATIIIを本発明の前処理剤と共存させた時の濃度」とは、具体的には、後述するタンパク質を失活させる処理が行われている反応系での濃度をいう。処理時の二価金属イオン濃度は、本発明の前処理の効果が得られる限り特に制限されないが、例えば、0.5mM以上であるのが好ましい。処理時の二価金属イオン濃度は、例えば、0.5mM〜100mMであることが好ましく、0.5mM〜50mMであることがより好ましく、0.5mM〜25mMであることがさらに好ましく、5mM〜25mMであることがよりさらに好ましく、5mM〜12.5mMであることが特に好ましい。なお、本発明の前処理剤に2種類以上の二価金属塩が含有されている場合には、ここにいう「処理時の二価金属イオン濃度」は、それら二価金属塩に由来する二価金属イオンの濃度の総和を意味する。
このような本発明の前処理剤を用いてATIIIの前処理を行うことにより、ATIIIをリムルス試験に付す際の反応干渉作用を低減することができ、よって、ATIIIのリムルス試験を高精度に実施できる。
(2)本発明のキット
本発明のキットは、本発明の前処理剤を構成物品として含む、リムルス試薬キットである。本発明のキットは、他の構成物品を含んでいてもよい。ここにいう「他の構成物品」としては、例えば、リムルス試薬、リムルス反応の検出用基質、緩衝液、蒸留水、標準物質(EtやBG等)、及びマイクロプレートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において用いるリムルス試薬は、リムルス試験の測定対象物質に対応したカスケード反応に関与するタンパク質を含有している限り、特に限定されない。リムルス試薬としては、例えば、カブトガニ血球抽出液(LAL(ライセート試薬))が挙げられる。LALは、カブトガニの血液を原料として常法により取得することができる。LALは、適宜分画および/または精製等してから利用してもよい。カブトガニは、いずれの種類のカブトガニであってもよい。カブトガニとしては、日本産カブトガニであるタキプレウス・トリデンタツス(Tachypleus tridentatus)、アメリカ産カブトガニであるリムルス・ポリフェムス(Limulus polyphemus)、ならびに東南アジア産カブトガニであるカルシノスコルピウス・ロツンディカウダ(Carcinoscorpius rotundicauda)およびタキプレウス・ギガス(Tachypleus gigas)が挙げられる。例えば、リムルス・ポリフェムス由来ライセートを用いたリムルス試薬としては、エンドスペシー(登録商標)ES−50M(生化学工業株式会社)、パイロクロム(アソシエーツオブケープコッドインク)、パイロテル(登録商標)−T(アソシエーツオブケープコッドインク)、パイロテル(登録商標)マルチテスト(アソシエーツオブケープコッドインク)、カイネティック−QCL(ロンザウォーカーズヴィルインク)、エンドクロム−K(チャールズリバーラボラトリーズインク)が挙げられる。
また、リムルス試薬としては、人為的に再構成されたものも例示できる。再構成されたリムルス試薬は、リムルス試験の測定対象物質に対応したカスケード反応に関与するタンパク質を含むように構成されていれば特に制限されない。カスケード反応に関与するタンパク質を総称して「因子」ともいう。ここにいう「カスケード反応」とは、リムルス試験の測定対象物質の存在により進行する一連の反応のことをいう。例えば、Et等のC因子を活性化する物質が存在する場合、同物質によりC因子が活性化されて活性型C因子となり、活性型C因子によりB因子が活性化されて活性型B因子となり、活性型B因子によりプロクロッティングエンザイムが活性化されてクロッティングエンザイムとなる一連の反応が進行する。すなわち、Et等のC因子を活性化する物質が測定対象物質である場合は、再構成されたリムルス試薬は、カスケード系を構成する因子として、例えば、C因子、B因子、およびプロクロッティングエンザイムを含んでいればよい。また、例えば、BG等のG因子を活性化する物質が存在する場合、同物質によりG因子が活性化されて活性型G因子となり、活性型G因子によりプロクロッティングエンザイムが活性化されてクロッティングエンザイムとなる一連の反応が進行する。すなわち、BG等のG因子を活性化する物質が測定対象物質である場合は、再構成されたリムルス試薬は、カスケード系を構成する因子として、例えば、G因子およびプロクロッティングエンザイムを含んでいればよい。カスケード反応の進行は、例えば、後述するリムルス反応の検出用基質を用いてクロッティングエンザイムの存在を検出することにより検出できる。
また、後述するリムルス反応の検出用基質として、カスケード反応の途中段階を検出できるものを利用する場合は、再構成されたリムルス試薬は、当該途中段階までに関与する因子を含んでいればよい。具体的には、例えば、Et等のC因子を活性化する物質が測定対象物質であり、且つ、活性化C因子の存在を検出できるリムルス反応の検出用基質を利用する場合は、再構成されたリムルス試薬は、C因子を含んでいればよい。
再構成されたリムルス試薬に含まれる各因子は、天然に得られるものであってもよく、組換えタンパク質であってもよい。
天然の各因子は、上記各種カブトガニの血球抽出液(LAL)から取得することができる。これらの因子は、所望の程度に精製して用いることができる。精製は、例えば、公知の手法(Nakamura T. et al., J Biochem. 1986 Mar; 99(3): 847-57.)により行うことができる。
また、各因子は、宿主細胞に発現させることで取得できる。宿主細胞による発現は常法に従って行うことができる。例えば、水村ら(国際公開第2012/118226号)の方法に従って行うことができる。各因子のアミノ酸配列やそれをコードする遺伝子の塩基配列は、公知のデータベースから取得できる。公知のデータベースとしては、例えば、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)が挙げられる。発現された各組換えタンパク質は、必要に応じ、所望の程度に精製して用いることができる。
各因子を適宜組み合わせることで再構成されたリムルス試薬が得られる。例えば、再構成されたリムルス試薬に含まれる因子は、全て天然の因子であってもよく、全て組換えタンパク質であってもよく、それらの任意の組み合わせであってもよい。また、再構成されたリムルス試薬は、例えば、LAL自体に、あるいはLALを適宜分画および/または精製等したものに、各因子を適宜組み合わせることで得られたものであってもよい。
リムルス反応の検出用基質(以下、単に「検出用基質」ともいう)とは、カスケード反応の進行を検出するための基質をいう。
検出用基質としては、コアギュローゲンが挙げられる。コアギュローゲンは、カスケード反応の最終産物であるクロッティングエンザイムの検出基質である。コアギュローゲンとクロッティングエンザイムが接触することで、コアギュリンとして凝固する。凝固反応の進行は、反応液の濁度を測定することやゲルの形成を観測することで測定することができる。コアギュローゲンはカブトガニ血球抽出液(LAL)から回収することができる。また、コアギュローゲンをコードする遺伝子の塩基配列は明らかになっており(宮田ら、蛋白質 核酸 酵素 別冊 No.29; P30-43; 1986)、常法に従い遺伝子工学的にコアギュローゲンを生産することもできる。
また、検出用基質としては、合成基質を用いてもよい。合成基質は、カスケード反応の進行を検出するのに好適な性質を有する限り特に制限されない。「カスケード反応の進行を検出するのに好適な性質」とは、例えば、クロッティングエンザイムの存在を検出するための性質であってもよく、カスケード反応の途中段階を検出するための性質であってもよい。「クロッティングエンザイムの存在を検出するための性質」としては、クロッティングエンザイムの酵素反応により発色する性質や、クロッティングエンザイムの酵素反応により蛍光を発する性質が挙げられる。「カスケード反応の途中段階を検出するための性質」としては、活性化C因子等の酵素反応により発色する性質や、活性化C因子等の酵素反応により蛍光を発する性質が挙げられる。合成基質としては、例えば、一般式X−Y−Z(式中、Xは保護基、Yはペプチド、ZはYとアミド結合した色素である)で表される基質が挙げられる。例えば、C因子、B因子、およびプロクロッティングエンザイムを含有する反応系にEt等のC因子を活性化する物質が存在する場合には、カスケード反応の結果として生ずるクロッティングエンザイムの酵素反応によりY−Z間のアミド結合が切断され、色素Zが遊離して発色する、あるいは蛍光を発する。G因子およびプロクロッティングエンザイムを含有する反応系を利用する場合や、カスケード反応の途中段階を検出する場合も、それぞれ、クロッティングエンザイムや、カスケード反応の途中段階で生ずるタンパク質により、色素Zが遊離すればよい。保護基Xとしては、特に制限されず、ペプチドの公知の保護基を好適に用いることができる。そのような保護基としては、t−ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基が挙げられる。色素Zは、特に制限されず、例えば、可視光下で検出される色素であってもよく、蛍光色素であってもよい。色素Zとしては、pNA(パラニトロアニリン)、MCA(7−メトキシクマリン−4−酢酸)、DNP(2,4−ジニトロアニリン)、Dansyl(ダンシル)系色素が挙げられる。ペプチドYとしては、Leu−Gly−Arg(LGR)、Ile−Glu−Gly−Arg(IEGR)(配列番号1)、Val−Pro−Arg(VPR)、Asp−Pro−Arg(DPR)が挙げられる。これらの合成基質は、いずれも、クロッティングエンザイムの存在を検出するために用いてもよく、カスケード反応の途中段階を検出するために用いてもよい。また、これらの合成基質は、検出対象に応じて好適なものを選択して用いてもよい。例えば、基質特異性の点からは、ペプチドYとしてLGRを含む基質はクロッティングエンザイムの検出に好適に用いることができ、ペプチドYとしてVPRまたはDPRを含む基質は活性化C因子の検出に好適に用いることができる。遊離した色素Zは、色素の性質に応じた手法により測定すればよい。
なお、リムルス試薬としてカブトガニ血球抽出液(LAL)を用いる場合、LALにもともと含有されるコアギュローゲンを検出用基質として利用することができる。また、適宜選択した検出用基質をLALと組み合わせて用いてもよい。
リムルス試薬として再構成されたリムルス試薬を用いる場合、適宜選択した検出用基質を再構成されたリムルス試薬と組み合わせて用いることができる。
各因子や検出用基質は、混合物として本発明のキットに含まれていてもよく、それぞれ別個に、または、任意の組み合わせで別個に、本発明のキットに含まれていてもよい。
このような本発明のキットを用いてATIIIの前処理を行うことにより、ATIIIをリムルス試験に付す際の反応干渉作用を低減することができ、ATIIIのリムルス試験を高精度に実施できる。
(3)本発明の前処理方法
本発明の前処理方法は、ATIIIを本発明の前処理剤と共存させた状態でタンパク質を失活させる処理に供することを含む、リムルス試験に付されるATIIIの前処理方法である。
ここにいう「タンパク質を失活させる処理」とは、ATIIIを失活させる処理であればよく、具体的には、リムルス試験を阻害しない程度にATIIIを失活させる処理であればよい。タンパク質を失活させる処理としては、例えば、熱処理、酸処理、アルカリ処理が挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質を失活させる処理としては、いずれかの処理を単独で行ってもよく、2またはそれ以上の処理を組み合わせて行ってもよい。
タンパク質を失活させる処理は、例えば、水や緩衝液等の水性溶媒中で行うことができる。すなわち、タンパク質を失活させる処理は、例えば、ATIIIと本発明の前処理剤を水性溶媒中で共存させた状態で行うことができる。
ここにいう「熱処理」とは、本発明の前処理剤と共存させたATIIIを加熱する処理をいう。加熱の方法は特に限定されないが、ヒートブロック、ウォーターバス、エアーバス、マイクロウェーブオーブン等の機器を使用する方法が好ましい。また、熱処理の温度は、タンパク質が失活する限り特に制限されないが、例えば、通常50℃超である。熱処理の温度は、例えば、55℃〜100℃であることが好ましく、55℃〜95℃であることがより好ましく、60℃〜90℃であることがさらに好ましく、65℃〜85℃であることがよりさらに好ましく、65℃〜75℃であることが特に好ましい。また、熱処理の時間は、タンパク質が失活する限り特に制限されないが、例えば、1分間以上であるのが好ましい。熱処理の時間は、例えば、1分間〜2時間であることが好ましく、1分間〜1時間であることがより好ましく、5分間〜30分間であることがさらに好ましく、5分間〜20分間であることがよりさらに好ましく、5分間〜15分間であることが特に好ましい。
また、ここにいう「酸処理」は、本発明の前処理剤と共存させたATIIIと酸を接触させる処理をいう。酸処理に用いられる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中では、塩酸が好ましい。酸の添加量は、酸の種類等の諸条件に応じて適宜設定することができる。酸の添加量は、例えば、酸処理時の反応系における酸濃度が0.001N〜1N、好ましくは0.01N〜0.5N、より好ましくは0.01N〜0.1Nとなるような量であってよい。酸処理の時間は、タンパク質が失活する限り特に制限されないが、例えば、酸処理に通常用いられる時間であってよい。酸処理の時間は、例えば、0.1秒〜2時間であってもよい。
また、ここにいう「アルカリ処理」は、本発明の前処理剤と共存させたATIIIとアルカリを接触させる処理をいう。アルカリ処理に用いられるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中では、水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリの添加量は、アルカリの種類等の諸条件に応じて適宜設定することができる。アルカリの添加量は、例えば、アルカリ処理時の反応系におけるアルカリ濃度が0.001N〜1N、好ましくは0.01N〜0.5N、より好ましくは0.01N〜0.1Nとなるような量であってよい。アルカリ処理の時間は、タンパク質が失活する限り特に制限されないが、例えば、アルカリ処理に通常用いられる時間であってよい。アルカリ処理の時間は、例えば、0.1秒〜2時間であってもよい。
本発明の前処理方法は、タンパク質を失活させる処理以外の工程を含んでいてもよい。
例えば、タンパク質を失活させる処理を行う前に、適宜、ATIIIに処理を行ってもよい。例えば、ATIIIの乾燥粉末を微粉化する等、ATIIIを加工する処理を行うことができる。また、例えば、ATIIIを希釈または濃縮等してもよい。これらの処理は、本発明の前処理剤と共存させる前に行ってもよく、本発明の前処理剤と共存させた後且つタンパク質を失活させる処理を行う前に行ってもよい。
また、例えば、タンパク質を失活させる処理を行った後には、適宜、後処理を行ってもよい。後処理は、例えば、前処理されたATIIIをリムルス試験に付す際に、リムルス試験が阻害されないようにする処理であってよい。例えば、タンパク質を失活させる処理として熱処理を行った場合は、処理物の温度を下げることができる。また、例えば、タンパク質を失活させる処理として酸処理を行った場合は、アルカリにより処理物を中和することができる。また、例えば、タンパク質を失活させる処理としてアルカリ処理を行った場合は、酸により処理物を中和することができる。また、例えば、処理物を希釈または濃縮等してもよい。
このような本発明前処理方法を用いてATIIIの前処理を行うことにより、ATIIIをリムルス試験に付す際の反応干渉作用を低減することができ、よって、ATIIIのリムルス試験を高精度に実施できる。
(4)本発明の測定方法
本発明の測定方法は、本発明の前処理方法によりATIIIを前処理すること、および前処理されたATIIIをリムルス試験に付すことを含む、ATIII中のリムルス試験の測定対象物質を測定する方法である。
リムルス試験は、例えば、公知の手法により行うことができる。公知の手法としては、例えば、比色法、比濁法、ゲル化法が挙げられる。
リムルス試験は、具体的には、ATIIIとリムルス試薬を接触させることにより行うことができる。ATIII中にリムルス試験の測定対象物質が存在する場合には、カスケード反応が進行する。よって、カスケード反応の進行を測定することにより、ATIII中のリムルス試験の測定対象物質を測定することができる。リムルス試験の際には、各因子は、ATIIIとリムルス試薬を接触させる工程の当初から反応系に含まれていてもよく、逐次反応系に添加されてもよい。
カスケード反応の進行は、検出用基質を用いて測定できる。すなわち、カスケード反応の進行は、検出用基質の種類に応じて、当該基質の反応(発色や凝固等)を測定することで測定できる。検出用基質は、任意のタイミングで反応系に添加してよい。例えば、検出用基質は、ATIIIとリムルス試薬を接触させる工程の当初から反応系に含まれていてもよく、当該工程の進行中または完了後に反応系に添加されてもよい。また、検出用基質を予め含有しているリムルス試薬を用いる場合は、検出用基質を反応系に別途添加しなくてもよい。
本発明の測定方法は、ATIII中にリムルス試験の測定対象物質が存在する場合にカスケード反応が進行する限り、その他の任意の工程を含んでいてよい。例えば、本発明の測定方法は、上述の通り、反応系に検出用基質を添加する工程を含んでいてもよい。また、例えば、本発明の測定方法は、測定により得られたデータを他のデータに変換する工程を含んでいてもよい。測定により得られたデータを他のデータに変換する工程としては、例えば、測定により得られたデータに基づき、ATIII中のリムルス試験の測定対象物質の量を算出する工程が挙げられる。
本発明の測定方法において、反応は水あるいは緩衝液等の水性溶媒中で行われるのが好ましい。
本発明の測定法によれば、ATIIIをリムルス試験に付す際の反応干渉作用を低減することができ、よって、ATIIIのリムルス試験を高精度に実施できる。
また、このようにして、リムルス試験の測定対象物質による汚染がないことが確認されたATIIIが得られる。すなわち、本発明は、本発明の測定方法によりATIII中のリムルス試験の測定対象物質を測定することを含む、ATIIIを製造する方法を提供する。このように製造されたATIIIは、注射剤等の任意の形態で提供できる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。なお、実施例に記載したすべての試験において、水、試薬、プラスチック製品、及びガラス製品等は、エンドトキシンが検出されないこと及びリムルス試薬の反応に対する反応干渉因子を含まないことが保証されたものを使用した。
<Et添加回収率の定義>
比色法または比濁法で実施した試験においては、以下の手順でEt添加回収率を算出した。すなわち、ATIIIに既知量のエンドトキシンを添加した被検体のリムルス試験と同時に、ATIIIの代わりに等量の水を被検体としたリムルス試験を陽性対照として実施した。ATIIIを含む被検体の吸光度変化率(mAbs/min)の値を陽性対照の吸光度変化率の値で除した値を百分率換算し、Et添加回収率とした。なお、ATIIIまたは水にエンドトキシン汚染がある場合には、汚染に相当する値を測定値から差し引いた後にEt添加回収率を算出すればよい。すなわち、Et添加回収率とは、ATIIIによる反応干渉作用がない場合に検出されるべきEt量に対する、ATIIIを含む被検体において実際に検出されたEt量の比率(%)、を意味し得る。
<参考例1>希釈加熱法によるATIIIのEt添加回収試験
原液、又は水で4倍、16倍、64倍、若しくは256倍に希釈した50Unit/mLのATIII製剤(ノイアート(登録商標);株式会社ベネシス;以下、同じ)0.4mLに、0.5EU/mLに調製したEt(JPRSE:日本薬局方エンドトキシン標準品;以下、同じ)の標準液0.04mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、0.2mLを別容器に分注し、ヒートブロックを用いて70℃で10分間加熱した。その後、0.05mLをマイクロプレートに分注し、比色法用のEt測定試薬(エンドスペシー(登録商標)ES−50M;生化学工業株式会社;以下、同じ)0.05mLを加えた。次いで、恒温槽機能および撹拌機能を有するウェルリーダー(ウェルリーダーMP−96;生化学工業株式会社;以下、同じ)を用いて1分間激しく撹拌した後、37℃で30分間加温しながら測定波長405nm及び対照波長492nmにおける吸光度の経時変化を測定し、Et添加回収率を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2014104352
表1に示すように、希釈倍率が16倍以下の場合には、Et添加回収率が10%未満となり、Etを精度よく検出することができなかった。一方、希釈倍率が64倍以上の場合には、ほぼ100%のEt添加回収率が得られた。この結果は、希釈加熱法に関する公知の結果(非特許文献1)とも概ね一致するものであった。
<実施例1>硫酸マグネシウムまたは塩化カルシウムを共存させて熱処理した場合のEt添加回収試験
25Unit/mLのATIII製剤(水で2倍に希釈したATIII製剤)0.9mLに0.5EU/mLのEt標準液0.1mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、0.18mLを別容器に分注し、15.6mM、125mM、250mM、500mM、若しくは1000mMのMgSO4水溶液、又は、15.6mM、56mM、125mM、250mM、若しくは500mMのCaCl2水溶液を0.02mL加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。各溶液をヒートブロックを用いて70℃で10分間加熱した後、ただちに氷冷した。各溶液を室温まで戻した後、0.05mLをマイクロプレートに分注した。エンドスペシーES−50Mを0.05mL添加し、ウェルリーダーを用いて1分間激しく撹拌した後、37℃で30分間加温しながら測定波長405nm及び対照波長492nmにおける吸光度の経時変化を測定し、Et添加回収率を算出した。結果を表2、3に示す。表中、「MgSO4濃度」および「CaCl2濃度」は、熱処理時の反応液中での濃度を示す。また、本実施例におけるATIII製剤の希釈倍率は、約2.5倍である。
Figure 2014104352
Figure 2014104352
表2、3に示すように、ATIIIおよびEtと硫酸マグネシウムまたは塩化カルシウムを共存させて熱処理することにより、希釈加熱法のように64倍以上に希釈せずとも、精度よくEtを検出できた。特に、硫酸マグネシウムの濃度が12.5mM以上の場合に、精度よくEtを検出できた。
<実施例2>二価金属塩の種類の検討
50Unit/mLのATIII製剤0.2mLに0.5EU/mLのEt標準液0.22mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、水を1.8mL加え、さらに試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、0.1mLを別容器に分注し、50mMまたは5mMに調製した各種二価金属塩の水溶液を1/10量(0.011mL)加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。各溶液をヒートブロックを用いて70℃で10分間加熱した後、ただちに氷冷した。各溶液を室温まで戻した後、0.05mLをマイクロプレートに分注した。エンドスペシーES−50Mを0.05mL添加し、ウェルリーダーを用いて1分間激しく撹拌した後、37℃で30分間加温しながら測定波長405nm及び対照波長492nmにおける吸光度の経時変化を測定し、Et添加回収率を算出した。結果を表4に示す。表中、二価金属塩濃度は、熱処理時の反応液中での濃度を示す。また、本実施例におけるATIII製剤の希釈倍率は、約12倍である。
Figure 2014104352
表4に示すように、Mg(CH3COO)2、MgCl2、Ca(CH3COO)2、MnSO4、又はZnSO4をATIIIと共存させて熱処理した場合にも、Etを検出できた。
<実施例3>熱処理の温度と時間の検討
50Unit/mLのATIII製剤0.9mLに0.5EU/mLのEt標準液0.1mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌し、0.18mLを別容器に分注した。その後、200mMのCaCl2水溶液を0.02mL加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。各溶液を、氷上に静置、又はヒートブロックを用いて37℃、50℃、60℃、70℃、80℃若しくは90℃で5分間、10分間又は20分間熱処理した後にただちに氷冷した。各溶液を室温まで戻した後、0.05mLをマイクロプレートに分注した。エンドスペシーES−50Mを0.05mL添加し、ウェルリーダーを用いて1分間激しく撹拌した後、37℃で30分間加温しながら測定波長405nm及び対照波長492nmにおける吸光度の経時変化を測定し、Et添加回収率を算出した。結果を表5に示す。熱処理時の反応液中でのCaCl2濃度は20mMである。また、本実施例におけるATIII製剤の希釈倍率は、約1.2倍である。
Figure 2014104352
表5に示すように、熱処理の温度が60℃以上の場合に、Etの検出が可能であった。また、熱処理の時間が5分間以上の場合に、Etの検出が可能であった。また、各温度(60℃、70℃、80℃、又は90℃)で10分間加熱した結果から、熱処理の温度はEt添加回収率が最も高かった70℃が好適であると考えられる。
<参考例2>熱処理後に二価金属塩を加える効果の検討
水で4倍若しくは16倍に希釈した50Unit/mLのATIII製剤又は水0.9mLに0.5EU/mLのEt標準液0.1mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、0.18mLを別容器に分注し、氷上に静置、又はヒートブロックを用いて70℃で10分間熱処理した後にただちに氷冷した。各溶液を室温まで戻した後、水、又は7mM、28mM、若しくは112mMのCaCl2水溶液を0.02mL加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、0.05mLをマイクロプレートに分注した。エンドスペシーES−50Mを0.05mL添加し、ウェルリーダーを用いて1分間激しく撹拌した後、37℃で30分間加温しながら測定波長405nm及び対照波長492nmにおける吸光度の経時変化を測定し、Et添加回収率を算出した。結果を表6に示す。
Figure 2014104352
表6に示すように、熱処理後に二価金属塩を加える方法ではEt添加回収率が10%未満となり、Etを精度よく検出することができなかった。よって、二価金属塩は熱処理の前にATIIIおよびEtと共存させておく必要があることが明らかとなった。
<実施例4>酸処理の検討
50Unit/mLのATIII製剤0.2mLに0.5EU/mLのEt標準液0.22mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、水を1.8mL加え、さらに試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、0.1mLを別容器に分注し、50mMもしくは5mMに調製した各種二価金属塩の水溶液を1/10量(0.011mL)加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、5N、2N、1N、0.5N、又は0.1Nの塩酸を0.011mL加え、さらに試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、0.05mLをマイクロプレートに分注し、エンドスペシーES−50Mを0.05mL添加し、ウェルリーダーを用いて1分間激しく撹拌した後、37℃で30分間加温しながら測定波長405nm及び対照波長492nmにおける吸光度の経時変化を測定し、Et添加回収率を算出した。結果を表7に示す。表中、二価金属塩濃度および塩酸濃度は、酸処理時の反応液中での濃度(概算)を示す。また、本実施例におけるATIII製剤の希釈倍率は、約14倍である。
Figure 2014104352
表7に示すように、二価金属を共存させた状態で酸処理することにより、熱処理した場合と同様に、Etを検出できた。特に、塩酸濃度が0.01N〜0.1Nの場合に、Etを効率的に検出できた。
<実施例5>パイロクロム(比色法用のEt測定試薬)を用いた試験
50Unit/mLのATIII製剤0.1mLに0.4EU/mLのEt標準液0.1mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、水0.1mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、25mMのCaCl2水溶液0.1mLを加え、さらに試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌し、0.2mLをATIIIの4倍希釈液として別容器に分注した。残りの0.2mLに水0.2mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、0.2mLをATIIIの8倍希釈液として別容器に分注した。この操作を繰り返し、ATIIIの16倍希釈液及び32倍希釈液も調製し、それぞれを別容器に分注した。各溶液をヒートブロックを用いて70℃で10分間熱処理した後にただちに氷冷した。各溶液を室温まで戻した後、0.05mLをマイクロプレートに分注した。比色法用のEt測定試薬(パイロクロム;アソシエーツオブケープコッドインク)0.05mLを添加し、ウェルリーダーを用いて1分間激しく撹拌した後、37℃で60分間加温しながら測定波長405nm及び対照波長492nmにおける吸光度の経時変化を測定し、Et添加回収率を算出した。結果を表8に示す。
Figure 2014104352
表8に示すように、比色法用のEt測定試薬としてエンドスペシーES−50Mに代えてパイロクロムを用いた場合においても、ATIII製剤の希釈倍率によらずEt添加回収率はほぼ100%であり、Etを精度よく検出できた。よって、本発明の前処理法を実施することにより、比色法用のEt測定試薬としてパイロクロムを用いた場合においても、ATIIIと共存するEtの高精度な測定が可能であることが明らかとなった。
<実施例6>パイロテル−T(比濁法用のEt測定試薬)を用いた試験
50Unit/mLのATIII製剤0.1mLに0.4EU/mLのEt標準液0.1mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、水0.1mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、25mMのCaCl2水溶液0.1mLを加え、さらに試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌し、0.2mLをATIIIの4倍希釈液として別容器に分注した。残りの0.2mLに水0.2mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、0.2mLをATIIIの8倍希釈液として別容器に分注した。この操作を繰り返し、ATIIIの16倍希釈液及び32倍希釈液も調製し、それぞれを別容器に分注した。各溶液をヒートブロックを用いて70℃で10分間熱処理した後にただちに氷冷した。各溶液を室温まで戻した後、0.1mLをマイクロプレートに分注した。比濁法用のEt測定試薬(パイロテル(登録商標)−T;アソシエーツオブケープコッドインク)0.1mLを添加し、ウェルリーダーを用いて1分間激しく撹拌した後、37℃で60分間加温しながら測定波長405nm及び対照波長660nmにおける吸光度の経時変化を測定し、Et添加回収率を算出した。結果を表9に示す。
Figure 2014104352
表9に示すように、Et測定試薬としてエンドスペシーES−50Mに代えてパイロテル−Tを用いた場合においても、ATIII製剤の希釈倍率によらずEt添加回収率がほぼ100%であり、Etを精度よく検出できた。よって、本発明の前処理法を実施することにより、リムルス試薬として比濁法用のEt測定試薬を用いた場合においても、ATIIIと共存するEtの高精度な測定が可能であることが明らかとなった。
<実施例7>パイロテルマルチテスト(ゲル化法用のEt測定試薬)を用いた試験
50Unit/mLのATIII製剤0.1mLに0.24EU/mLのEt標準液0.1mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、水0.1mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、25mMのCaCl2水溶液0.1mLを加え、さらに試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌し、0.2mLをATIIIの4倍希釈液として別容器に分注した。残りの0.2mLに水0.2mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、0.2mLをATIIIの8倍希釈液として別容器に分注した。この操作を繰り返し、ATIIIの16倍希釈液及び32倍希釈液も調製し、それぞれを別容器に分注した。各溶液をヒートブロックを用いて70℃で10分間熱処理した後にただちに氷冷した。各溶液を室温まで戻した後、0.1mLを丸底試験管に分注した。ゲル化法用のEt測定試薬(パイロテル(登録商標)マルチテスト;アソシエーツオブケープコッドインク)0.1mLを添加し、試験管ミキサーを用いて1分激しく撹拌した後、ヒートブロックを用いて37℃で1時間加温した。その後、試験管をゆっくり転倒させ、内容物が流出しない堅固なゲルを形成しているか確認した。結果を表10に示す。
Figure 2014104352
表10に示すように、パイロテルマルチテストの検出限界である0.03EU/mL以上のEtを含むATIII溶液で内容物のゲル化が確認された。よって、本発明の前処理法を実施することにより、リムルス試薬としてゲル化法用のEt測定試薬を用いた場合においても、ATIIIと共存するEtの高精度な検出が可能であることが明らかとなった。
<実施例8>平行線定量法を用いた試験(1)
50Unit/mLのATIII製剤0.475mLに1EU/mLのEt標準液0.11mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、水0.475mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、500mMのMgSO4水溶液0.05mLを加え、さらに試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌し、溶液をヒートブロックを用いて70℃で10分間熱処理した後にただちに氷冷した。溶液を室温まで戻した後、0.5mLをATIIIの2倍希釈液として別容器に分注した。残りの0.5mLに水0.5mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、0.5mLをATIIIの4倍希釈液として別容器に分注した。この操作を繰り返し、ATIIIの8倍希釈液、16倍希釈液及び32倍希釈液も調製し、それぞれを別容器に分注した。また、ATIII製剤の代わりにエンドトキシン試験用水を用い、本発明の前処理法を実施せずに調製した同様の希釈系列を対照試料として用意した。各溶液0.05mLをマイクロプレートに分注した。エンドスペシーES−50Mを0.05mL添加し、ウェルリーダーを用いて1分間激しく撹拌した後、37℃で30分間加温しながら測定波長405nm及び対照波長492nmにおける吸光度の経時変化を測定した。結果を表11および図1に示す。
Figure 2014104352
図1に示すように、ATIIIを含む試料の希釈倍率に対する測定値および対照試料(エンドトキシン標準液のエンドトキシン試験用水による2倍希釈系列液)のエンドトキシン濃度に対する測定値をそれぞれ両対数プロットし、平行線定量法により平行性検定を行った。平行線定量法の専用ソフトウエア(PL603;生化学工業株式会社)により統計学的に分析した結果、両者は回帰および平行性が成立し、試験に適合した。平行線定量法により算出されたEt濃度(0.275EU/mL)を対照試料のEt濃度(0.232EU/mL)で除して算出したEt添加回収率は118.5%となった。
<実施例9>平行線定量法を用いた試験(2)
50Unit/mLのATIII製剤0.8mLに1EU/mLのEt標準液0.1mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、水0.02mLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、500mMのMgSO4水溶液0.08mLを加え、さらに試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌し、溶液をヒートブロックを用いて70℃で10分間熱処理した後にただちに氷冷した。溶液の温度を室温に戻した後、0.5mLをATIIIの1.25倍希釈液として別容器に分注した。残りの0.5mLに40mMのMgSO4水溶液を0.5mL加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、0.5mLをATIIIの2.5倍希釈液として別容器に分注した。この操作を繰り返し、ATIIIの5倍希釈液、10倍希釈液、20倍希釈液も調製し、それぞれを別容器に分注した。また、ATIII製剤の代わりにエンドトキシン試験用水を用い、本発明の前処理法を実施せずに調製した同様の希釈系列を対照試料として用意した。各溶液0.05mLをマイクロプレートに分注し、エンドスペシーES−50Mを0.05mL添加し、ウェルリーダーを用いて1分間激しく撹拌した後、37℃で30分間加温しながら測定波長405nm及び対照波長492nmにおける吸光度の経時変化を測定した。結果を表12および図2に示す。
Figure 2014104352
図2に示すように、ATIIIを含む試料の希釈倍率に対する測定値および対照試料(エンドトキシン標準液のエンドトキシン試験用水による2倍希釈系列液)のエンドトキシン濃度に対する測定値をそれぞれ両対数プロットし、平行線定量法により平行性検定を行った。平行線定量法の専用ソフトウェア(PL603;生化学工業株式会社)により統計学的に分析した結果、両者には回帰および平行性が成立し、試験に適合した。平行線定量法により算出されたEt濃度(0.122EU/mL)を対照試料のEt濃度(0.125EU/mL)で除して算出したEt添加回収率は97.6%となった。
<実施例10>平行線定量法を用いた試験(3)
50Unit/mLのATIII製剤472.5μLに20EU/mLのEt標準液2.5μLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。次に、水6.25μLを加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、2MのMgSO4水溶液18.75μLを加え、さらに試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した。その後、ヒートブロックを用いて溶液を70℃で20分間熱処理した後にただちに氷冷した。溶液の温度を室温に戻した後、250μLをATIIIの1.06倍希釈液として別容器に分注した。残りの250μLに水を250μL加え、試験管ミキサーを用いて1分間激しく撹拌した後、250μLをATIIIの2.12倍希釈液として別容器に分注した。この操作を繰り返し、ATIIIの4.23倍希釈液、8.47倍希釈液、16.93倍希釈液も調製し、それぞれを別容器に分注した。また、ATIII製剤の代わりにエンドトキシン試験用水を用い、本発明の前処理法を実施せずに調製した同様の希釈系列を対照試料として用意した。各溶液50μLをマイクロプレートに分注し、エンドスペシーES−50Mを50μL添加し、ウェルリーダーを用いて1分間激しく撹拌した後、37℃で30分間加温しながら測定波長405nm及び対照波長492nmにおける吸光度の経時変化を測定した。結果を表13および図3に示す。
Figure 2014104352
図3に示すように、ATIIIを含む試料の希釈倍率に対する測定値および対照試料(エンドトキシン標準液のエンドトキシン試験用水による2倍希釈系列液)のエンドトキシン濃度に対する測定値をそれぞれ両対数プロットし、平行線定量法により平行性検定を行った。平行線定量法の専用ソフトウェア(PL603;生化学工業株式会社)により統計学的に分析した結果、両者には回帰および平行性が成立し、試験に適合した。平行線定量法により算出されたEt濃度(0.111EU/mL)を対照試料のEt濃度(0.106EU/mL)で除して算出したEt添加回収率は104.7%となった。
よって、<実施例8>〜<実施例10>に示したとおり、本発明の前処理法を実施することにより、生物学的製剤基準に記載されている平行線定量法に従って試験した場合においても、ATIIIと共存するEtの高精度な測定が可能であることが明らかとなった。
本発明によれば、リムルス試験に付されるATIIIの前処理を行うことにより、ATIIIをリムルス試験に付す際の反応干渉作用を低減でき、よって、ATIIIのリムルス試験を高精度に実施できる。また、本発明によれば、ATIIIのリムルス試験を簡便、迅速、かつ安価に実施できると期待される。

Claims (12)

  1. リムルス試験に付されるアンチトロンビンIII用の前処理剤であって、
    二価金属塩を含有し、
    アンチトロンビンIIIをリムルス試験に付す前に、該アンチトロンビンIIIを前記前処理剤と共存させた状態でタンパク質を失活させる処理に供するために用いられる、前処理剤。
  2. 前記二価金属塩が、二価金属塩化物、二価金属酢酸塩、及び二価金属硫酸塩からなる群より選択される1又はそれ以上の金属塩である、請求項1に記載の前処理剤。
  3. 前記二価金属塩を構成する二価金属が、マグネシウム、カルシウム、マンガン、及び亜鉛からなる群より選択される1又はそれ以上の金属である、請求項1または2に記載の前処理剤。
  4. アンチトロンビンIIIを前記前処理剤と共存させた時の、前記二価金属塩に由来する二価金属イオンの濃度が、0.5mM以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の前処理剤。
  5. 前記リムルス試験の測定対象物質が、エンドトキシンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の前処理剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の前処理剤を含む、アンチトロンビンIII用のリムルス試薬キット。
  7. アンチトロンビンIIIを請求項1〜5のいずれか1項に記載の前処理剤と共存させた状態でタンパク質を失活させる処理に供することを含む、リムルス試験に付されるアンチトロンビンIIIの前処理方法。
  8. 前記タンパク質を失活させる処理が、熱処理または酸処理である、請求項7に記載の前処理方法。
  9. 前記熱処理が、50℃超の温度で行われる、請求項8に記載の前処理方法。
  10. 前記酸処理に用いられる酸が、塩酸である、請求項8に記載の前処理方法。
  11. 請求項7〜10のいずれか1項に記載の前処理方法によりアンチトロンビンIIIを前処理すること、および前処理されたアンチトロンビンIIIをリムルス試験に付すことを含む、アンチトロンビンIII中のリムルス試験の測定対象物質を測定する方法。
  12. 請求項11に記載の方法によりアンチトロンビンIII中のリムルス試験の測定対象物質を測定することを含む、アンチトロンビンIIIを製造する方法。
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