JPWO2014002850A1 - 光拡散性シート - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、2012年6月26日に日本国に出願された特願2012−143088号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、環境問題への関心の高まりに伴い、照明装置や液晶用バックライトの光源として、省電力且つ長寿命であることから、発光ダイオード光源を用いたものが急速に普及しつつある。
そこで、本発明は、優れた光拡散性を有する光拡散性シートを提供することを目的とする。
<1>一方向Yに沿って波状の凹凸が繰り返されることによって形成された第1凹凸パターンを有する共に、第1凹凸パターンの表面に、前記方向Yに沿って波状の凹凸が繰り返されることによって形成された第2凹凸パターンを有し、第1凹凸パターンが蛇行している光拡散性シートであって、第1凹凸パターンは、最頻ピッチが3〜20μm、配向度が0.2以上、アスペクト比が0.2〜1.0であり、第2凹凸パターンは、最頻ピッチが0.3〜2.0μm、配向度が0.2以上であり、第1凹凸パターンの配向方向と第2凹凸パターンの配向方向との差が5°以内であることを特徴とする光拡散性凹凸パターン形成シート。
<2>第1凹凸パターンの波状の凹凸は正弦波状になっている、<1>に記載の光拡散性凹凸パターン形成シート。
[1]シートの少なくとも片面に、第1の凹凸パターンと、第1の凹凸パターンの表面に形成された第2の凹凸パターンとを有する、光拡散性シートであって、第1の凹凸パターンは、シートの表面に、複数の突条が第1の方向に沿って配列することによって形成され、
前記第2の凹凸パターンは、前記第1の凹凸パターンの表面に、複数の突条が第1の方向に対して配列することによって形成されていることを特徴とする、光拡散性シート;
[2]第1の凹凸パターンを形成する複数の突条の稜線が、前記シートの法線方向から見て蛇行している、[1]に記載の光拡散性シート;
[3]第2の凹凸パターンを形成する複数の突条の稜線が、前記シートの法線方向から見て蛇行している、[1]又は[2]に記載の光拡散性シート;
[4]第1の凹凸パターンにおいて、突条の稜線の蛇行の程度を示す配向度C1が、0.20〜0.50である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光拡散性シート;
[5]第2の凹凸パターンにおいて、突条の稜線の蛇行の程度を示す配向度C2が、0.20〜0.50である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光拡散性シート;
[6]第1の凹凸パターンの配向方向と、第2の凹凸パターンの配向方向との差が5°以内である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光拡散性シート;
[7]第1の凹凸パターンにおいて、突条の第1の方向における最頻ピッチP1が3〜20μmであり、突条のアスペクト比A1が、0.2〜1.0である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の光拡散性シート;
[8]第2の凹凸パターンにおいて、突条の第1の方向における最頻ピッチP2が、0.3〜2μmである、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の光拡散性シート;
[9][1]〜[8]のいずれか一項に記載の光拡散性シートであって、シートの片面のみに、第1の凹凸パターンと、第2の凹凸パターンが形成されており、前記シートの凹凸パターンを有さない面から光を入射した際の光の1/10値角度が65°以上である、光拡散性シート。
本発明の光拡散性シートの一実施形態について説明する。
図1および図2に、本実施形態の光拡散性シートを示す。本実施形態の光拡散性シート1は、その少なくとも片面に凹凸パターン10を有する。ここで、凹凸パターン10は、第1の凹凸パターン11と、第1の凹凸パターン11の表面に形成された第2の凹凸パターン12とを有する。
第1の凹凸パターン11は、光拡散性シート1の表面に、第1の方向に沿って複数の突条が配列することによって形成される。以下、第1の凹凸パターン11の突条部の1つを「突条部11a」として、任意の隣り合う突条部11a間の凹部の谷底部分を「凹部11b」として説明する。
ここで、「突条」とは、シート面上を延伸する細長い突出部のことを意味する。
また、「隣り合う突条部」とは、第1の方向において、任意の突条部11aと、そのすぐ横に配置されている突条部11aのことを指す。
また、第2の凹凸パターン12は、第1の凹凸パターン11の表面に複数の突条が、第1の方向に対して配列することによって形成されている。以下、第2の凹凸パターン12の突条部の1つを「突条部12a」として、任意の隣り合う突条部12a間の凹部の谷底部分を「凹部12b」として説明する。
本実施形態において、光拡散性シート1の凹凸パターン10を有する面を、法線方向から観察した際、突条部11aの稜線は、蛇行していることが好ましい。すなわち、突条部11aの各々の稜線は、第2の方向に対して延伸する進行軸を有しているが、この進行軸を中心に左右に蛇行していることが好ましい。同様に、光拡散性シート1の凹凸パターン10を有する面を、法線方向から観察した際、突条部12aの稜線は、蛇行していることが好ましい。
ここで、「突条部11aの稜線」とは、突条部11aの頂部をつないで続く線のことを意味する。また、「突条部12aの稜線」とは、突条部12aの頂部をつないで続く線のことを意味する。
また、突条部11aの稜線は、図5の電子顕微鏡写真において、白く見えるラインのことを指す。また、突条部12aの稜線は、図4の電子顕微鏡写真において、第1の凹凸パターン11の突条部11aの表面に、白く見えるラインのことを指す。
図2に示すように、第1の凹凸パターン11を形成する複数の突条部11aの断面形状はそれぞれ異なっており、同一ではない。同様に、第2の凹凸パターン12を形成する突条部12aの断面形状もまた、それぞれに異なっており、同一ではない。本発明の一つの態様において、光拡散性シート1を第1の方向に沿って切断した際の、第1の凹凸パターン11を形成する突条部11aの断面形状、及び第2の凹凸パターン12を形成する突条部12aの断面形状は、ひだ状、または紡錘形の一部を有する形状、または、一方向に引き伸ばしたドーム状であることが好ましい。
また、光拡散性シート1を第1の方向に沿って切断した際、突条部11aの断面の大きさ、及び形状の少なくとも1つが、第2の方向に沿って変化していることが好ましい。同様に、光拡散性シート1を第1の方向に沿って切断した際、突条部12aの断面の大きさ、及び形状の少なくとも1つが、第2の方向に沿って変化していることが好ましい。このような形状が、第1の凹凸パターン11、及び第2の凹凸パターン12を構成する突条の稜線の不規則性を生み出し、均一でフリンジパターンを発生しない光拡散性シートが得られる。
ここで、「フリンジパターン」とは、規則性のある凹凸パターンを有する光拡散シートを光が透過する際に発生する縞状のパターンを意味する。
図3に示すように、複数の突条部11aの稜線の間隔は、第1の方向において不規則に変化している。また、隣り合う2つの突条部11aの稜線の間隔は、第2の方向において不規則に、かつ連続的に変化していることが好ましい。ただし、第1の方向、及び第2の方向において、突条部11aの稜線の間隔が変化しない部分を含んでいてもよい。また、突条部11aの稜線は、その途中で任意の他の突条部11aの稜線に枝分かれしていてもよく、複数の突条部11aの稜線が重なっていてもよい。このような突条部11aの稜線の枝分かれ、又は合一が、突条部11aの稜線の間隔の不規則性を生み出す要因となっている。
ここで、「隣り合う2つの突条部11aの稜線の間隔」とは、第1の方向に沿って隣り合う2つの突条部11aの、頂部と頂部の間隔(距離)のことを意味する。
図4に示すように、第2の凹凸パターン12は、第1の凹凸パターン11の表面に、複数の突条部12aが配列することによって形成されている。
複数の突条部12aの稜線の間隔は、第1の方向において不規則に変化している。また、隣り合う2つの突条部12aの稜線の間隔は、第2の方向において不規則に、かつ連続的に変化していることが好ましい。ただし、第1の方向、及び第2の方向において、突条部12aの稜線の間隔が変化しない部分を含んでいてもよい。また、突条部12aの稜線は、その途中で任意の他の突条部12aの稜線に枝分かれしていてもよく、複数の突条部12aの稜線が重なっていてもよい。
本発明の1つの態様において、第1の凹凸パターン11の最頻ピッチP1は、3〜20μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましく、8〜13μmであることがさらに好ましい。最頻ピッチP1が前記下限値未満、すなわち、3μm未満であっても、前記上限値を超えても、すなわち、20μmを超えても、光拡散性が損なわれる。
最頻ピッチP1=1/R1 ・・・(1)
具体的に、最頻ピッチP1は光拡散性シートの電子顕微鏡画像より求めることができる。以下に、電子顕微鏡を用いた最頻ピッチの算出方法について説明する。
まず、光拡散性シート1の凹凸パターン10が形成されている面を、法線方向から電子顕微鏡で観察する。観察条件は、加速電圧15〜20kV、ワーキングディスタンス5〜15mm程度で行うことが好ましい。電子顕微鏡観察における観察倍率は、第1の凹凸パターン11の突条部11aの配列数が、20〜50列となるように適宜調整することが好ましい。
次に、得られた電子顕微鏡写真(図5)を、2次元フーリエ変換してフーリエ変換画像(図6)を得る。ここで、得られた電子顕微鏡写真がJPEG等の圧縮画像である場合は、TIFF画像等のグレースケール画像に変換してから、2次元フーリエ変換を行うことが好ましい。なお、図6のフーリエ変換画像において、中心からの方位は、図5に存在する周期構造、すなわち、第1の凹凸パターン11を形成する突条部11aが配列する方向を意味し、中心からの距離は、図5に存在する周期構造の周期の逆数を意味する。
また、図6の画像の濃淡は周期構造の頻度を表し、淡いほど、図5に含まれる周期構造の中で、対象となる周期構造の頻度が高いことを意味する。
続いて、観察条件はそのままで、第2の凹凸パターン12の電子顕微鏡観察を行う。観察倍率は、第1の方向における突条部12aの配列数が、20〜50列になるように適宜変更する。得られた電子顕微鏡写真(図4参照)を、2次元フーリエ変換してフーリエ変換画像(図7)を得る。ここで、得られた電子顕微鏡写真がJPEG等の圧縮画像である場合は、TIFF画像等のグレースケール画像に変換してから、2次元フーリエ変換を行うことが好ましい。
次に、図6のフーリエ変換画像の中心部以外で、突条部11aのピッチの最大頻度を示す位置D1を通るように直線L1を引き、直線L1上の突条部11aのピッチの頻度を縦軸に、中心からの距離(周期の逆数)を横軸にグラフを作成する(図8)。図8のグラフにおいて頻度が最大となる距離R1の逆数から最頻ピッチP1を求めることができる。
突条部11aの平均高さB1は次のようにして求める。すなわち、光拡散性シート1の凹凸パターン10が形成された面を、法線方向から電子顕微鏡により観察し、その観察像から第1の方向に沿って切断した断面図(図2参照)を得る。ここで、電子顕微鏡の観察条件は、前述の最頻ピッチP1を求める際に用いた条件と同じであってもよい。
図2に示すように、第1凹凸パターン11を形成する突条部11aの高さは、両隣の2つの凹部11bから、突条部11aの頂部までの第3の方向の距離の和の1/2である。すなわち、第1の凹凸パターン11を形成する突条部11aの高さbiは、突条部11aに対して一方側の凹部11bから計測した突条部11aの高さをLi、他方側の凹部11bの底から計測した高さをRiとした際に、bi=(Li+Ri)/2となる。このようにして各突条部11aの高さbiを求める。そして、50個の突条部11aの高さRiとLiを測定して高さbiを算出し、それらの高さを平均して平均高さB1を求める。
第1の凹凸パターン11の配向度C1は0.2以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましく、0.30以上であることが更に好ましい。配向度C1が前記下限値未満、すなわち、0.2未満であると、光拡散性が損なわれることがある。
一方、第1の凹凸パターン11の配向度C1は0.50以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましく、0.35以下であることがさらに好ましい。配向度C1が前記上限値以下、すなわち、0.50以下であれば、容易に光拡散性シート1を製造できる。すなわち、第1の凹凸パターン11の配向度C1は、0.20〜0.50であることが好ましく、0.30〜0.40であることがより好ましい。配向度C1が0.20〜0.50であれば、光拡散性が損なわれることなく、容易に光拡散性シートを製造できるため好ましい。
まず、最頻ピッチP1を求める際に得た図6のフーリエ変換像を利用し、突条部11aのピッチの最大頻度D1が、X軸上を通るように、フーリエ変換像の中心部を軸として回転させたフーリエ変換像を作成する(図9)。ここで、「X軸」とは、フーリエ変換像の中心部を通り、画像に対して水平な線のことを指す。次いで、最大頻度D1を通り、第1の方向に平行な補助線M1を引き、補助線M1上の周期の頻度を縦軸に、最大頻度D1からの距離を横軸にとってグラフを作成する(図10)。図10のグラフから、得られたピークの半減値W1(補助線M1上の周期の頻度の値が、最大頻度D1の半分になる位置でのピークの幅)を求める。得られた値を以下の式(2)に当てはめて、配向度C1を求める。
配向度C1=W1/R1 ・・・(2)
第1の凹凸パターン11の突条部11aと凹部11bを含む波状の凹凸が正弦波状であると、光拡散性に優れたシートが得られるため好ましい。
最頻ピッチP2=1/R2 ・・・(3)
具体的に、最頻ピッチP2は、図7のフーリエ変換画像を用いて、第1の凹凸パターン11の最頻ピッチP1の算出方法と同様の方法にて、求めることができる。
すなわち、図7のフーリエ変換画像の中心部以外で、突条部12aのピッチの最大頻度を示す位置を通るように直線を引き、前記直線上の突条部12aのピッチの頻度を縦軸に、中心からの距離(周期の逆数)を横軸にグラフを作成する。このグラフにおいて頻度が最大となる距離R2の逆数から最頻ピッチP2を求めることができる。
突条部12aの平均高さB2は次のようにして求める。すなわち、光拡散性シート1の凹凸パターン10が形成された面を、法線方向から電子顕微鏡により観察し、その観察像から第1の方向に沿って切断した断面図(図2参照)を得る。ここで、電子顕微鏡の観察条件は、前述の最頻ピッチP1を求める際に用いた条件と同じであってもよい。
図2に示すように、第2の凹凸パターン12を形成する突条部12aの高さは、両隣の2つの凹部12bから、突条部12aの頂部までの距離の和の1/2である。ここで、凹部12bから突条部12aの頂部までの距離は、突条部11aの頂部と、凹部11bを結ぶ線に平行であり、かつ突条部12aの頂部を通過する仮想線に対して垂直方向の距離である。すなわち、第2の凹凸パターン12を形成する突条部12aの高さは、突条部12aに対して一方側の凹部12bから計測した突条部12aの高さをLS、他方側の凹部12bから計測した高さをRSとした際に、bS=(LS+RS)/2となる。このようにして各突条部12aの高さbSを求める。そして、50個の突条部12aの高さRSを測定し、それらの高さを平均して平均高さB2を求める。
本発明の1つの態様において、配向度C2は、0.2以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましく、0.30以上であることが更に好ましい。配向度C2が前記下限値未満、すなわち、0.2未満であると、光拡散性が損なわれることがある。
また、第2の凹凸パターン12の配向度C2は0.50以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましく、0.35以下であることがさらに好ましい。配向度C2が前記上限値以下、すなわち、0.50以下であれば、容易に光拡散性シートを製造できる。すなわち、第2の凹凸パターン12の配向度C2は、0.20〜0.50であることが好ましく、0.25〜0.35であることがより好ましい。配向度C2が0.20〜0.50であれば、光拡散性が損なわれることなく、容易に光拡散性シートを製造できるため好ましい。
ここで、第1の凹凸パターン11の配向方向とは、第1の凹凸パターン11の蛇行した稜線の各箇所での方向を平均した方向を意味する。また、第2の凹凸パターン12の配向方向とは、第2の凹凸パターン12の蛇行した稜線の各箇所での方向を平均した方向を意味する。
第1の凹凸パターン11の配向方向と、第2の凹凸パターン12の配向方向は、電子顕微鏡画像を元に算出することができる。
まず、上述の最頻ピッチP1を求める際に得られた電子顕微鏡画像図4、及び図5において、これら画像に共通する突条の稜線方向を一致させる。
図5のフーリエ変換像である図6において、フーリエ変換像の中心部以外で、突条部11aのピッチの最大頻度を示す位置D1から、フーリエ変換像の中心部に引いた線L1と、X軸から構成される角度θ1を、第1の凹凸パターン11の配向方向とする(図11参照)。
次に、図4のフーリエ変換像である図7において、フーリエ変換像の中心部以外で、突条部12aのピッチの最大頻度を示す位置D2から、フーリエ変換像の中心部に引いた線L2と、X軸から構成される角度θ2を、第2の凹凸パターン12の配向方向とする。
得られたθ1とθ2との差、すなわち、θ1-θ2で表される角度から配向方向の差を求めることができる。
ここで、「光の1/10値角度」は、以下の方法により求めることができる。
まず、ゴニオメーター(型式:GENESIA Gonio/FFP、ジェネシア社製)を用いて透過散乱光を測定することにより、照度曲線を得る。具体的には、光拡散シートから垂直に出射する光(この光の出光角度を0°とする。)の照度を1とした際の相対照度を、第2方向または第1方向に沿って出光角度−90°から90°までの相対照度を1°間隔で測定して、照度曲線を得る。ここで、照度曲線とは、図14に示すような、横軸を出光角度とし、縦軸を相対照度として、プロットとした曲線である。
そして、得られた照度曲線から光の1/10値角度(図14中のW2)を求める。
光拡散性シート1が、後述する光拡散性シートの製造方法により得られたシートそのものである場合には、通常、断面から見た場合に蛇行変形した硬質層と表面が硬質層の変形に追従して変形した基材層の2層で構成される。また、複製シートである場合には、通常、表面に凹凸が転写された樹脂からなる1層または、表面に凹凸が一方の面に転写された凹凸形成層と前記凹凸形成層の凹凸が転写されていない面に積層された平坦な基材層の2層で構成される。
次に、光拡散性シート1の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の光拡散性シート1の製造方法は、積層フィルム形成工程と加熱収縮工程とを有する。
本実施形態における積層フィルム形成工程は、加熱収縮性樹脂フィルムの片面に、表面が平滑で2種の樹脂からなる硬質層(以下、「表面平滑硬質層」という。)を少なくとも1層積層させて積層フィルムを得る工程である。ここで、表面平滑硬質層とは、JIS B0601に記載の方法により測定される中心線平均粗さが0.1μm以下の層であって、加熱収縮性樹脂フィルムを収縮させる温度条件下で軟化しない層である。また、軟化しないとは、表面平滑層のヤング率が100MPa以上であることを意味する。
本実施形態では、加熱収縮性樹脂フィルムとして、1軸延伸フィルムを用いることが好ましい。1軸延伸は、縦延伸、横延伸のいずれであってもよい。
また、加熱収縮性樹脂フィルムは、1.1〜15倍の延伸倍率で延伸されていることが好ましく、1.3〜10倍で延伸されていることがより好ましい。
また、加熱収縮性樹脂フィルムとしては、収縮率が好ましくは20〜90%、より好ましくは35〜75%のフィルムであることが好ましい。本明細書において、収縮率とは、(収縮率[%])={(収縮前のフィルムの長さ)−(収縮後のフィルムの長さ)}/(収縮前のフィルムの長さ)×100である(ただし、「フィルムの長さ」は加熱収縮性樹脂フィルムの収縮方向の長さのことを意味する)。収縮率が前記下限値以上、すなわち20%以上であれば、光拡散性シート1をより容易に製造できる。一方、収縮率が前記上限値を超える、すなわち、90%を超える加熱収縮性樹脂フィルムの製造は困難である。
加熱収縮性樹脂フィルムの表面は、平坦であることが好ましい。加熱収縮性樹脂フィルムの表面が平坦であれば、その表面に、表面平滑硬質層を容易に形成できるため好ましい。ここで、「平坦」とは、JIS B0601に記載の方法により測定される中心線平均粗さが0.1μm以下であることを意味する。
樹脂Lのヤング率は、加熱収縮工程の温度、すなわち、80〜180℃の温度範囲において0.01〜100MPaであることが好ましく、0.1〜10MPaであることがより好ましい。樹脂Lのヤング率が前記下限値以上であれば、基材として使用可能な硬さであり、前記上限値以下であれば、表面平滑硬質層が変形する際に同時に追従して変形可能な軟らかさである。
上述のようなガラス転移温度Tg1、及びヤング率を有する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、及びポリ塩化ビニル系樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
一方、Tg2MとTg2Nとが離れすぎても、第2凹凸パターン12を形成しにくくなるため、Tg2M−Tg2Nが20℃以下であることが好ましく、19℃以下であることがより好ましい。すなわち、樹脂Mのガラス転移温度Tg2Mと、樹脂Nのガラス転移温度Tg2Nの差は、10〜20℃であることが好ましく、11〜15℃であることがより好ましい。
第1の凹凸パターン11および第2の凹凸パターン12からなる凹凸パターン10を容易に形成できる点では、樹脂Mのガラス転移温度Tg2Mと樹脂Lのガラス転移温度Tg1との差(Tg2M−Tg1)、樹脂Nのガラス転移温度Tg2Nと樹脂Lのガラス転移温度Tg1との差(Tg2N−Tg1)が共に10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが特に好ましい。
樹脂Mおよび樹脂Nのヤング率は、加熱収縮工程の温度、すなわち、80〜180℃の温度範囲において0.01〜300GPaの範囲内にあることが好ましく、0.1〜10GPaの範囲内にあることがより好ましい。樹脂Mおよび樹脂Nのヤング率が0.01GPa以上であれば、凹凸パターン10の形状を維持するのに充分な硬さであり、ヤング率が前記上限値未満であれば、より容易に凹凸パターン10を形成できる。
本発明の1つの態様において、樹脂Mとしては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、又はスチレン-アクリル共重合体であることが好ましい。また、樹脂Nとしては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、又はスチレン−アクリル共重合体であることが好ましい。これら樹脂Mと樹脂Nの組み合わせとしては、アクリル樹脂とアクリル樹脂、アクリル樹脂とスチレン−アクリル共重合体、又はアクリル樹脂とスチレン−アクリロニトリル共重合体の組み合わせが好ましく、アクリル樹脂とアクリル樹脂との組み合わせであることがより好ましい。
表面平滑硬質層の厚さは連続的に変化していても構わない。表面平滑硬質層の厚さが連続的に変化している場合には、圧縮後、すなわち、加熱収縮工程後に形成される第1の凹凸パターン11の突条部11aのピッチおよび高さが連続的に変化するようになる。
前記硬質層形成用塗料の調製方法としては、トルエン溶媒により希釈する方法等が挙げられる。また、前記硬質層形成用塗料の固形分濃度(樹脂Mと樹脂Nの濃度)は、塗料の総質量に対して、1〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。
塗料の塗工方法としては、例えば、エアナイフコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、メイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、キャストコーティング、カーテンコーティング、ダイスロットコーティング、ゲートロールコーティング、サイズプレスコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング等が挙げられる。
乾燥方法としては、熱風、赤外線等を用いた加熱乾燥法が挙げられる。
加熱収縮性樹脂フィルムへの樹脂溶液の乾燥塗工量は、1〜10g/m2にすることが好ましい。樹脂溶液の乾燥塗工量が1〜10g/m2であれば、表面平滑硬質層の厚みを上述の好ましい範囲とすることができ、前記表面平滑硬質層に凹凸パターン10が形成されやすいため好ましい。
加熱収縮工程は、上記積層フィルムを加熱して加熱収縮性樹脂フィルムを収縮させることにより、前記表面平滑硬質層を折り畳むように変形させて、加熱収縮性樹脂フィルムの表面に凹凸パターン10を形成する工程である。
加熱収縮工程では、40%以上の収縮率で積層フィルムを収縮させることが好ましい。収縮率が40%以上であれば、収縮不足の部分、すなわち、凹凸パターン10が形成されない、または形成されたとしても突条のアスペクト比が十分に大きくない部分を小さくすることができる。一方、収縮率を大きくしすぎると、得られる光拡散性シート1の面積が小さくなり、歩留まりが低くなるため、収縮率の上限は80%が好ましい。
加熱収縮性樹脂フィルムを熱収縮させる際の加熱温度は、使用する加熱収縮性樹脂フィルムの種類、目的とする第1の凹凸パターン11の最頻ピッチP1、アスペクト比A1および配向度C1、目的とする第2の凹凸パターン12の最頻ピッチP2および配向度C2に応じて適宜選択することが好ましい。
また、加熱収縮温度は、加熱収縮性樹脂フィルムを構成する樹脂Lのガラス転移温度Tg1以上の温度にすることが好ましい。Tg1以上の温度で熱収縮させると、第1の凹凸パターン11を容易に形成できる。
また、樹脂Mのガラス転移温度Tg2Mが樹脂Nのガラス転移温度Tg2Nよりも高い場合には、加熱収縮温度は、(樹脂Mのガラス転移温度Tg2M+15℃)未満であることが好ましい。
すなわち、本発明の1つの態様において、加熱収縮工程は、前記工程で得られた積層フィルムを、80〜180℃、より好ましくは120〜170℃の熱風の中を通過させることにより、加熱樹脂収縮性フィルムと表面平滑硬質層を変形させて、凹凸パターン10が表面平滑硬質層の表面に形成されたシートを得る工程であることが好ましい。積層フィルムを熱風で加熱する時間は、1〜3分間であることが好ましく、1〜2分間であることがより好ましい。また、熱風の風速としては、1〜10m/sであること好ましく、2〜5m/sであることがより好ましい。
上記製造方法の条件を調整することによって、第1の凹凸パターン11の最頻ピッチP1、突条部11aのアスペクト比A1、および配向度C1、第2の凹凸パターン12の最頻ピッチP2、突条部12aのアスペクト比A2、および配向度C2、第1の凹凸パターン11の配向方向と第2の凹凸パターン12の配向方向の差を調整することができる。
最頻ピッチP1を調整するためには、ガラス転移温度が高い樹脂Mと低い樹脂Nの配合比率を変更すればよい。樹脂Mの配合比率が高い程、最頻ピッチP1は、大きくなる傾向がある。すなわち、樹脂Mと樹脂Nの配合比率が、1:1〜1:3であれば、第1の凹凸パターン11の最頻ピッチP1を、3〜20μmの範囲に調整することができる。
突条部11aのアスペクト比A1を上記所定、すなわち、0.2〜1.0の範囲にするためには、ガラス転移温度が高い樹脂Mと低い樹脂Nの配合比率を変更すればよい。樹脂Mの配合比率が高い程、アスペクト比A1は、小さくなる傾向がある。すなわち、樹脂Mと樹脂Nの配合比率が、1:1〜1:3であれば、突条部11aのアスペクト比A1を、0.2〜1.0の範囲に調整することができる。
配向度C1を上記所定、すなわち、0.20〜0.50の範囲にするためには、加熱収縮工程の収縮率を調整すればよい。収縮率が大きい程、配向度C1は、大きくなる傾向がある。すなわち、加熱収縮工程において、積層フィルムの収縮率が40〜60%であれば、配向度C1を0.20〜0.50の範囲に調整することができる。
最頻ピッチP2を調整するためには、ガラス転移温度が高い樹脂Mと低い樹脂Nの配合比率を変更すればよい。樹脂Mの配合比率が高い程、最頻ピッチP2は、大きくなる傾向がある。すなわち、樹脂Mと樹脂Nの配合比率が、1:1〜1:3であれば、第2の凹凸パターン12の最頻ピッチP2を、0.3〜2.0μmの範囲に調整することができる。
突条部12aのアスペクト比A2を上記所定、すなわち、0.25〜0.35の範囲にするためには、加熱収縮工程の収縮率を調整すればよい。また、樹脂Mの配合比率が高い程、アスペクト比A2は、大きくなる傾向がある。すなわち、樹脂Mと樹脂Nの配合比率が、1:1〜1:3であれば、突条部12aのアスペクト比A2を、0.25〜0.35の範囲に調整することができる。また、加熱収縮工程において、積層フィルムの収縮率が40〜60%であれば、突条部12aのアスペクト比A2を、0.25〜0.35の範囲に調整することができる。
配向度C2を上記所定の範囲、すなわち、0.20〜0.50にするためには、加熱収縮工程の収縮率を一定の範囲に調整すればよい。収縮率が大きい程、配向度C2は、大きくなる傾向がある。すなわち、加熱収縮工程において、積層フィルムの収縮率が40〜60%であれば、配向度C2を0.20〜0.50の範囲に調整することができる。
第1の凹凸パターン11の配向方向と第2の凹凸パターン12の配向方向の差を調整するためには、樹脂Mと樹脂Nの配合比率を調整した上で、加熱収縮工程の収縮率を調整すればよい。樹脂Mの配合比率が高い程、収縮率が大きい程、配向方向の差は、大きくなる傾向がある。すなわち、樹脂Mと樹脂Nの配合比率が、1:1〜1:3であり、加熱収縮工程における積層フィルムの収縮率が、40〜60%であれば、第1の凹凸パターン11の配向方向と第2の凹凸パターン12の配向方向の差を5°以内とすることができる。
また、光拡散性シートの製造方法としては、下記(1)〜(4)の方法を適用することもできる。
(1)基材用樹脂層の片面の全部に、2種の樹脂からなる表面平滑硬質層を設けて積層シートを形成し、積層シート全体を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材用樹脂層のガラス転移温度が室温未満の場合、積層シートの圧縮は室温で行い、基材用樹脂層のガラス転移温度が室温以上の場合、積層シートの圧縮は、基材用樹脂層のガラス転移温度以上、表面平滑硬質層のガラス転移温度未満で行う。
(2)基材用樹脂層の片面の全部に、2種の樹脂からなる表面平滑硬質層を設けて積層シートを形成し、積層シートを一方向に延伸し、延伸方向に対する直交方向を収縮させて、表面平滑硬質層を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材用樹脂層のガラス転移温度が室温未満の場合、積層シートの延伸は室温で行い、基材用樹脂層のガラス転移温度が室温以上の場合、積層シートの延伸は、基材用樹脂層のガラス転移温度以上、表面平滑硬質層のガラス転移温度未満で行う。
(3)未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂により形成された樹脂層に、2種の樹脂からなる表面平滑硬質層を積層して積層シートを形成し、活性エネルギー線を照射して基材用樹脂層を硬化させることにより収縮させて、基材に積層された表面平滑硬質層を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
(4)溶媒を膨潤させて膨張させた基材用樹脂層に、2種の樹脂からなる表面平滑硬質層を積層して積層シートを形成し、基材用樹脂層中の溶媒を乾燥し、除去することにより収縮させて、基材用樹脂層に積層された表面平滑硬質層を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
(3)の方法において、活性エネルギー線硬化性樹脂としては紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂などが挙げられる。
(4)の方法において、溶媒は基材用樹脂層を構成する樹脂の種類に応じて適宜選択される。溶媒の乾燥温度は溶媒の種類に応じて適宜選択される。
(2)〜(4)の方法における表面平滑硬質層においても、(1)の方法で用いるものと同様の樹脂成分を用いることができ、同様の厚さとすることができる。また、積層シートの形成方法は、(1)の方法と同様に、基材用樹脂層の片面に樹脂の溶液または分散液を塗工し、溶媒を乾燥させる方法、基材用樹脂層の片面に、あらかじめ作製した表面平滑硬質層を積層する方法を適用できる。
また、光拡散性シートは、上記製造方法により得たものを原版シートとして用い、以下に示すような方法で他の素材に転写させることにより、製造することもできる。
原版シートには、光拡散性シート1を支持するための樹脂製または金属製の支持体が取り付けられてもよい。
(a)原版シートの凹凸パターンが形成された面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工する工程と、活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を原版シートから剥離する工程とを有する方法。ここで、活性エネルギー線とは、通常、紫外線または電子線のことであるが、本発明では、可視光線、X線、イオン線等も含む。
(b)原版シートの凹凸パターンが形成された面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工する工程と、前記液状熱硬化性樹脂を加熱して硬化させた後、硬化した塗膜を原版シートから剥離する工程とを有する方法。
(c)原版シートの凹凸パターンが形成された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、前記シート状の熱可塑性樹脂を原版シートに押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を原版シートから剥離する工程とを有する方法。
2次工程用成形物を用いる具体的な方法としては、下記(d)〜(f)の方法が挙げられる。
(e)原版シートの凹凸パターンが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を原版シートから剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、前記2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工する工程と、加熱により該樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
(f)原版シートの凹凸パターンが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を原版シートから剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、前記2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、前記シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
原版シートの凹凸パターンが形成された面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工するコーターとしては、Tダイコーター、ロールコーター、バーコーター等が挙げられる。
未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリエン/アクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルメチルメタクリレート等のプレポリマー、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、芳香族アクリレート、水酸基含有アクリレート、アリル基含有アクリレート、グリシジル基含有アクリレート、カルボキシ基含有アクリレート、ハロゲン含有アクリレート等のモノマーの中から選ばれる1種類以上の成分を含有するものが挙げられる。未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂は溶媒等で希釈することが好ましい。
また、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂には、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を添加してもよい。
未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を紫外線により硬化する場合には、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂にアセトフェノン類、ベンゾフェノン類等の光重合開始剤を添加することが好ましい。
枚葉のシートを用いる場合、枚葉のシートを平板状の型として使用するスタンプ法、枚葉のシートをロールに巻きつけて円筒状の型として使用するロールインプリント法等を適用できる。また、射出成形機の型の内側に枚葉の原版シートを配置させてもよい。
しかし、これら枚葉のシートを用いる方法において、光拡散性シートを大量生産するためには、凹凸パターンを形成する工程を多数回繰り返す必要がある。活性エネルギー線硬化性樹脂と原版シートとの離型性が低い場合には、多数回繰り返した際に凹凸パターンに目詰まりが生じ、凹凸パターンの転写が不完全になる傾向にある。
これに対し、上記に示す方法(a)では、原版シートがウェブ状であるため、大面積で連続的に凹凸パターンを形成させることができる。そのため、光拡散性シートの繰り返し使用回数が少なくても、必要な量の光拡散性シートを短時間に製造できる。
また、(b)の方法における硬化温度は、原版シートのガラス転移温度より低いことが好ましい。硬化温度が原版シートのガラス転移温度以上であると、硬化時に原版シートの凹凸パターンが変形するおそれがあるからである。
シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧する際の圧力は1〜100MPaであることが好ましい。押圧時の圧力が1MPa以上であれば、凹凸パターン10を高い精度で転写させることができ、100MPa以下であれば、過剰な加圧を防ぐことができる。
また、(c)の方法における熱可塑性樹脂の加熱温度は、原版シートのガラス転移温度より低いことが好ましい。加熱温度が原版シートのガラス転移温度以上であると、加熱時に原版シートの凹凸パターン10が変形するおそれがあるからである。
加熱後の冷却温度としては、凹凸パターン10を高い精度で転写させることができることから、熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満であることが好ましい。
(d)〜(f)の方法では、熱による変形が小さい金属製シートを原版シートとして用いるため、光拡散性シート用の材料として、活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用できる。
ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂(樹脂N)とガラス転移温度139℃のアクリル樹脂(樹脂M)を質量比1:1で混合し、トルエンに希釈して、硬質層形成用塗料(固形分濃度8質量%)を得た。この塗料を、一軸方向に収縮する加熱収縮性樹脂フィルム(ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、製品名SC807、東洋紡績社製、厚さ30μm)の片面に、バーコーターにより、乾燥後の厚さが2.0μmになるように塗工した。次いで、乾燥させることにより、表面平滑硬質層を形成して積層シートを得た。
次いで、前記積層シートの1軸収縮方向に張力が掛かるように前記積層シートの両端をクランプで固定した。前記積層シートを150℃で1分間加熱すると共に、加熱後の積層シートの1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層シートの1軸収縮方向の長さの48%(すなわち、収縮率48%)となるように積層シートの1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。
これにより、表面平滑硬質層の表面に、複数の突条が収縮方向(第1の方向)に沿って配列することにより形成された第1の凹凸パターンと、第1の凹凸パターンの表面に、複数の突条が前記第1の方向に沿って配列することによって形成された第2の凹凸パターンとを含む凹凸パターンを形成して、光拡散性シートを得た。
硬質層形成用塗料を、ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂(樹脂N)とガラス転移温度139℃のアクリル樹脂(樹脂M)を質量比3:1で混合し、トルエンに希釈して得たものに変更した以外は実施例1と同様の操作にて、光拡散性シートを得た。
硬質層形成用塗料を、ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂(樹脂N)とガラス転移温度139℃のアクリル樹脂(樹脂M)を質量比1:3で混合し、トルエンに希釈して得たものに変更した以外は実施例1と同様の操作にて、光拡散性シートを得た。
実施例1と同様の操作にて光拡散性シートを得た。ただし、本例では、加熱後の積層シートの1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層シートの1軸収縮方向の長さの51%(収縮率51%)となるように積層シートの1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。
実施例1と同様の操作にて光拡散性シートを得た。ただし、本例では、加熱後の積層シートの1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層シートの1軸収縮方向の長さの43%(収縮率43%)となるように積層シートの1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。
ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂(樹脂N)を酢酸エチル、トルエンに溶解させた溶液と、ガラス転移温度139℃(樹脂M)のアクリル樹脂をメチルエチルケトンに溶解させた溶液を、質量比1:1で混合し、更にトルエンに希釈して、樹脂Mと樹脂Nのガラス転移温度差が11℃である硬質層形成用塗料(固形分濃度8質量%)を得た。この塗料を、一軸方向に収縮する加熱収縮性樹脂フィルム(ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、製品名SC807、東洋紡績社製、厚さ30μm)の片面に、バーコーターにより、乾燥後の厚さが2μmになるように塗工した。次いで、乾燥させることにより、表面平滑硬質層を形成して積層シートを得た。
次いで、前記積層シートの1軸収縮方向に張力が掛かるように前記積層シートの両端をクランプで固定した。前記積層シートを170℃で2分間加熱すると共に、加熱後の積層シートの1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層シートの1軸収縮方向の長さの57%(収縮率57%)となるように積層シートの1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。
これにより、表面平滑硬質層の表面に、複数の突条が収縮方向(第1の方向)に沿って配列することにより形成された第1の凹凸パターンと、第1の凹凸パターンの表面に、複数の突条が前記第1の方向に沿って配列することによって形成された第2の凹凸パターンとを含む凹凸パターンを形成して、光拡散性シートを得た。
硬質層形成用塗料を、ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂を酢酸エチル、トルエンに溶解させた溶液と、ガラス転移温度139℃のアクリル樹脂をメチルエチルケトンに溶解させた溶液を質量比3:1で混合し、更にトルエンで希釈して調製したものに変更した以外は、実施例6と同様の操作にて、光拡散性シートを得た。
硬質層形成用塗料を、ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂を酢酸エチル、トルエンに溶解させた溶液と、ガラス転移温度139℃のアクリル樹脂をメチルエチルケトンに溶解させた溶液を質量比1:3で混合し、更にトルエンで希釈して調製したものに変更した以外は、実施例6と同様の操作にて、光拡散性シートを得た。
実施例6と同様の操作にて光拡散性シートを得た。ただし、本例では、加熱後の積層シートの1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層シートの1軸収縮方向の長さの59%(収縮率59%)となるように積層シートの1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。
実施例6と同様の操作にて光拡散性シートを得た。ただし、本例では、加熱後の積層シートの1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層シートの1軸収縮方向の長さの50%(収縮率50%)となるように積層シートの1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。
実施例1と同様の操作にて光拡散性シートを得た。その後、光拡散性シートの凹凸パターン形成面に、離型剤を含む未硬化の紫外線硬化性樹脂A(アクリレート系樹脂、総研化学社製)を厚さ20μmとなるように塗布し、紫外線を照射して硬化後、剥離して光拡散性シートの凹凸パターンが反転したパターンを有する1次転写品を得た。
次いで透明PET基材(東洋紡株式会社製A4300、厚さ188μm)の片面に未硬化の紫外線硬化性樹脂B(アクリレート系樹脂、ソニーケミカル社製)を厚さ20μmとなるように塗布し、塗布された紫外線硬化性樹脂Bに対して、1次転写品の反転パターンを有する面を押し当て、紫外線を照射して硬化させた。硬化後、1次転写品を剥離して、透明PET基材上に紫外線硬化性樹脂の硬化物からなる表面層が形成された、光拡散性シートと同じ凹凸パターンを有する2次転写品を得た。
硬質層形成用塗料を、ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂をトルエンに希釈して得たものに変更した以外は実施例1と同様の操作にて、光拡散性シートを得た。
硬質層形成用塗料を、ガラス転移温度139℃のアクリル樹脂をトルエンに希釈して得たものに変更した以外は実施例1と同様の操作にて、光拡散性シートを得た。
ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂を酢酸エチル、トルエンに溶解させた溶液と、ガラス転移温度175℃のアクリル樹脂をメチルエチルケトンに溶解させた溶液を質量比1:1で混合し、更にトルエンで希釈して調製した、ガラス転移温度差が47℃である硬質層形成用塗料に変更した以外は、実施例1と同様の操作にして、凹凸パターン形成シートを得た。
実施例1〜11の光拡散性シートを顕微鏡観察したところ、第1の凹凸パターンの表面に第2の凹凸パターンが形成されていることが確認された(図12参照。なお、図12は、実施例1の光拡散性シートの凹凸パターンを、走査型電子顕微鏡を用いて撮影したものである。)。
比較例1〜3の光拡散性シートを顕微鏡観察したところ、第1凹凸パターンの表面に第2凹凸パターンが形成されていないことが確認された(図13参照。なお、図13は、比較例1の光拡散性シートの凹凸パターンを、走査型電子顕微鏡を用いて撮影したものである。)。
また、各例における第1の凹凸パターンの最頻ピッチP1、アスペクト比A1および配向度C1、第2の凹凸パターンの最頻ピッチP2、アスペクト比A2および配向度C2、第1凹凸パターンの配向方向と第2凹凸パターンの配向方向との差(表中では「配向方向の差」と略す。)を、上述の方法により測定した。使用した電子顕微鏡の仕様、及び観察条件は以下の通りである。
電子顕微鏡:日立ハイテクノロジーズ社製S-3600N
分解能:3.0nm(2次電子像)、4.5nm(反射電子像)、
加速電圧:0.5〜30kV、倍率:12〜300,000
観察条件:加速電圧15kV、ワーキングディスタンス10mm
最頻ピッチ、アスペクト比および配向度、及び配向方向の差の測定結果を表1に示す。
上述した方法に沿って、最頻ピッチP1及びP2を算出した。
上述した方法に沿って、アスペクト比A1及びA2を算出した。
上述した方法に沿って、配向度C1及びC2を算出した。
上述した方法に沿って、配向方向の差を算出した。
10個のLED光源(株式会社SYK製 SouLight照射角度: 約120°)を、17mm間隔で直線的に配列して直線状の光源ユニットを形成した。次いで、この光源ユニットを、各例の光拡散性シートで、LED光源の配列方向と第1の凹凸パターンの突条の配列方向とが一致するように且つLED光源からの光が光拡散性シートに垂直に入射するように覆った。その際、光拡散性シートの凹凸パターンを、光源ユニットの反対側に配置させたてから、5人の評価者が、上記照明装置における光拡散性を目視により評価した。その評価は1点〜5点の5段階とし、LED光源の不視認性が高く、光拡散性が高いほど、高い点数とした。5人の評価の平均値を表1に示す。
ゴニオメーター(型式:GENESIA Gonio/FFP、ジェネシア社製)を用いて透過散乱光を測定することにより、照度曲線を得た。具体的には、光拡散性シートから垂直に出射する光(この光の出光角度を0°とする。)の照度を1とした際の相対照度を、第1の方向に沿って出光角度−90°から90°までの相対照度を1°間隔で測定して、照度曲線を得た。ここで、照度曲線とは、図14に示すような、横軸を出光角度とし、縦軸を相対照度として、プロットとした曲線である。
そして、照度曲線における半値幅(1/2幅、図14中のW1)および1/10値幅(図14中のW2)を求めた。その際、相対照度が0.5以上の角度範囲のデータのみを利用した。
半値幅および1/10値幅の結果を表1に示す。なお、照度曲線の半値幅の角度および1/10値幅の角度が大きい程、拡散角度が大きくなる。
これに対し、比較例1の光拡散性シートは、1/10値幅が狭く、拡散角度が充分に広くなっておらず、図17のように、LED光源を視認可能になっていた。比較例2及び3についても比較例1と同様であった。したがって、比較例1〜3では、光拡散性が不充分であった。
10 凹凸パターン
11 第1の凹凸パターン
11a 突条部
11b 凹部
12 第2の凹凸パターン
12a 突条部
12b 凹部
Claims (9)
- シートの少なくとも片面に、第1の凹凸パターンと、第1の凹凸パターンの表面に形成された第2の凹凸パターンとを有する、光拡散性シートであって、第1の凹凸パターンは、シートの表面に、複数の突条が第1の方向に沿って配列することによって形成され、
前記第2の凹凸パターンは、前記第1の凹凸パターンの表面に、複数の突条が第1の方向に対して配列することによって形成されていることを特徴とする、光拡散性シート。 - 第1の凹凸パターンを形成する複数の突条の稜線が、前記シートの法線方向から見て蛇行している、請求項1に記載の光拡散性シート。
- 第2の凹凸パターンを形成する複数の突条の稜線が、前記シートの法線方向から見て蛇行している、請求項1又は2に記載の光拡散性シート。
- 第1の凹凸パターンにおいて、突条の稜線の蛇行の程度を示す配向度C1が、0.20〜0.50である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光拡散性シート。
- 第2の凹凸パターンにおいて、突条の稜線の蛇行の程度を示す配向度C2が、0.20〜0.50である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光拡散性シート。
- 第1の凹凸パターンの配向方向と、第2の凹凸パターンの配向方向との差が5°以内である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光拡散性シート。
- 第1の凹凸パターンにおいて、突条の第1の方向における最頻ピッチP1が3〜20μmであり、突条のアスペクト比A1が、0.2〜1.0である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光拡散性シート。
- 第2の凹凸パターンにおいて、突条の第1の方向における最頻ピッチP2が、0.3〜2μmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光拡散性シート。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の光拡散性シートであって、シートの片面のみに、第1の凹凸パターンと、第2の凹凸パターンが形成されており、前記シートの凹凸パターンを有さない面から光を入射した際の光の1/10値角度が65°以上である、光拡散性シート。
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