JPWO2013161843A1 - 光拡散性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、透明樹脂と屈折率が異なり、架橋構造を有する高分子微粒子を有機系光拡散剤として用いる方法も知られている。有機系光拡散剤としては、例えば、架橋アクリル系粒子、架橋シリコーン系粒子及び架橋スチレン系粒子等が知られている。
有機系光拡散剤は、無機系光拡散剤と比較して成形品の表面平滑性に優れており、光拡散性も良好であることから、幅広く光拡散剤として用いられている。しかしながら、その添加量が多い場合には耐衝撃性や難燃性が低下するという問題があり、逆にコストを考慮して添加量を少なくした場合には光拡散性が不十分となることが知られている。
特許文献3には、光拡散剤として平均粒子径が1〜4μmであり、特定の粒子径分布を有するアクリル樹脂系微粒子が、ポリカーボネート樹脂中に分散された組成物が開示されている。更に、特許文献4には、ポリカーボネート樹脂と屈折率が異なり、その平均粒子径が0.5〜100μmの範囲にある架橋ポリマー微粒子を含有する組成物が開示されている。
特許文献5には、屈折率が1.495〜1.504の範囲である高分子微粒子が、ポリカーボネート樹脂中に分散された組成物が開示されている。
また、特許文献6には、体積平均粒子径が0.7〜2.5μmであり、粒子径分布の狭い特定の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる架橋樹脂微粒子を含有する組成物が開示されている。
透明な樹脂に光拡散剤粒子を配合した樹脂組成物及びそれからなる成形体の光拡散性は、樹脂と光拡散剤粒子との屈折率差、光拡散剤粒子の粒子径、及び光拡散剤粒子の含有量等に依存することが知られており、樹脂と光拡散剤粒子との屈折率差が大きいほど、また光拡散剤粒子の粒子径が大きいほど、1個の光拡散剤粒子による光拡散係数は大きくなる。しかし、光拡散剤粒子の粒子径が大きいと、光拡散剤粒子の質量が大きくなるため、樹脂中での光拡散剤粒子の質量割合を一定にした場合には、樹脂に含有される大粒子径の光拡散剤粒子の個数が少なくなり、個々の光拡散剤粒子の光拡散係数と、樹脂中に含有されている光拡散剤粒子の個数との積に基づく全体の光拡散性は必ずしも高くならない。一方、透明な樹脂中に含有させる光拡散剤粒子の粒子径が小さ過ぎると、光拡散係数が指数関数的に減少するため、十分な光拡散性が得られない。
更に、光拡散板の成形は、300℃を超えるような高い温度条件下で行われることもあるため、光拡散剤には係る高温条件下においても分解等が起こりにくいというような優れた耐熱性も要求されている。
特許文献1の技術は、拡散板の成形において、比較的多量の光拡散剤を必要とするため、実用性に乏しかった。特許文献2に記載の技術では、比較的少量の光拡散剤により、良好な光拡散性を示すが、全光線透過率が70%以上の領域における光拡散性が十分ではない。このため、照明器具のカバー等の、高い光透過が必要な用途には使用できない。また、特許文献3〜5に記載の光拡散剤は、全光線透過率80%未満程度の領域では良好な光拡散性を得るために添加量を多くする必要があり、耐衝撃性及びコストの面から問題があった。
特許文献6に記載の技術では、少量の光拡散剤により、幅広い全光線透過率領域において良好な光拡散性を発現することが可能であるものの、耐熱性の点では改善の余地があった。
1.透明樹脂(X)及び架橋樹脂微粒子(Y)を含み、上記透明樹脂(X)の屈折率と、上記架橋樹脂微粒子(Y)の屈折率との差の絶対値(以下、「Δn」という)が0.095〜0.115であり、上記架橋樹脂微粒子(Y)の体積平均粒子径が1.5〜3.3μmであり、上記架橋樹脂微粒子(Y)の粒子径の変動係数が20%以下であり、上記架橋樹脂微粒子(Y)を、窒素ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で熱分解させた場合に、質量が半分となる温度が320℃以上であることを特徴とする光拡散性樹脂組成物。
2.上記架橋樹脂微粒子(Y)が(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む上記1に記載の光拡散性樹脂組成物。
3.上記光拡散性樹脂組成物を用いて作製した厚さ1.5mmのシートであって、白色光の全光線透過率が85%である該シートの表面に、ゴニオメーターを用いて垂直方向に光を入射した場合に、0度の出射光に対して50%の輝度の出射光となる角度が20度以上である上記1又は2に記載の光拡散性樹脂組成物。
4.上記透明樹脂(X)及び上記架橋樹脂微粒子(Y)の質量割合がそれぞれ100質量部及び0.5質量部である光散乱性樹脂組成物を用いて作製した厚さ1.5mmのシートの表面に、ゴニオメーターを用いて垂直方向に光を入射した場合に、0度の出射光に対して50%の輝度の出射光となる角度が22度以上である上記1又は2に記載の光拡散性樹脂組成物。
5.上記透明樹脂(X)がポリカーボネート樹脂である上記1〜4のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
6.上記透明樹脂(X)100重量部に対して上記架橋樹脂微粒子(Y)を0.1〜2.0質量部含んでなる上記1〜5のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
7.上記架橋樹脂微粒子(Y)が、分散重合により製造されたものである上記1〜6いずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
8.上記架橋樹脂微粒子(Y)が、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系樹脂をシラン架橋して得られる架橋樹脂微粒子である上記1〜7のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
9.上記1から8のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物からなる成形品。
10.上記成形品が照明器具又は表示器具に配設される上記9に記載の成形品。
以下、本発明について詳しく説明する。
これらのうち、スチレンが、スチレン系樹脂の入手容易性、コスト、重合性等の点から好ましい。
上記スチレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜3.5であることが、得られる成形体の強度等の点から好ましい。
上記ポリカーボネート樹脂は、界面重合及び溶融エステル交換のいずれの方法により得られたポリカーボネート樹脂であってもよい。
(i)分散重合により製造した樹脂微粒子よりなるシード粒子に、架橋性単量体を含むビニル系単量体(m2)を吸収させた後、このビニル系単量体(m2)を重合させる方法。
(ii)分散重合により加水分解性シリル基を有する樹脂微粒子を得た後、加水分解性シリル基どうしによる架橋反応を行う方法。
本発明では、上記(i)及び(ii)等の方法により得られた架橋樹脂微粒子を単独で用いても良いし、組み合せて用いても良い。
カルボキシル基含有マクロモノマーは、分子の末端又は側鎖にラジカル重合性不飽和結合を有するものであれば、特に限定されない。このラジカル重合性不飽和結合としては、末端ビニリデン基、末端(メタ)アクリロイル基、側鎖(メタ)アクリロイル基、末端スチリル基等が挙げられる。
上記シード粒子の形成に用いられる(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、ビニル系単量体(m1)の全質量に対して、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%である。
また、上記シード粒子は、シード粒子を構成する構造単位の全量100質量%に対し、好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70〜100質量%が、メタクリル酸メチルに由来する構造単位及び/又はメタクリル酸イソブチルに由来する構造単位からなるメタクリル酸エステル系樹脂であることが、粒子の耐熱ブロッキング性、耐候性及び屈折率の点から好ましい。
これらのうち、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなるシード粒子への吸収が容易であること、架橋密度を高くすることが可能であること、及び重合安定性に優れる等の点から好ましく用いられる。
尚、多官能ビニル単量体の使用量は、ビニル系単量体(m2)の全質量に対して、好ましくは3〜95質量%、特に好ましくは5〜75質量%である。
これらのうち、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体としては、加水分解性シリル基含有アクリル酸エステル、及び、加水分解性シリル基含有メタクリル酸エステルが好ましい。これらの単量体は、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合性に優れ、耐熱性及び耐候性に優れた微粒子が得られることから好ましい。上記ビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合性、分散重合時の安定性及び架橋性に優れることから、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル(別称:トリメトキシシリルプロピルメタクリレート)が特に好ましく用いられる。
(メタ)アクリロイル基は、ポリマー鎖の末端及び側鎖のいずれの位置に結合していてもよい。特に、(メタ)アクリロイル基が側鎖に結合したマクロモノマー型分散安定剤は、より少量の使用で、目的とする加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系樹脂微粒子を安定に製造できる点から好ましい。
側鎖に(メタ)アクリロイル基を有し且つカルボキシル基を有するマクロモノマー型分散安定剤の製造方法としては、乳化重合によりカルボキシル基含有プレポリマーを合成し、その後、このプレポリマーのカルボキシル基と、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートにおけるエポキシ基とを反応させて、(メタ)アクリロイル基を付与する方法が挙げられる。このとき、プレポリマーのカルボキシル基の一部が残存してもよい。この方法であれば、簡便に高性能のマクロモノマーを製造することができる。エポキシ基含有(メタ)アクリレートを用いる場合には、ポリマー鎖1本当たりに0.6〜2.0個付加させることで、より粒子径分布が狭く、粒子径の揃った微粒子を製造でき、好ましい。
架橋反応は、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系樹脂微粒子を含む分散液に、架橋用触媒を添加することにより行うことができる。架橋用触媒により、加水分解性シリル基どうしを縮合反応させてシロキサン結合を形成することができる。架橋用触媒としては、アルカリ材料が好ましく、特に、架橋反応後、除去が容易なアンモニアや、低沸点アミンが好ましく用いられる。
アルカリ材料の使用量は、シリル架橋度が高くなる点から、加水分解性シリル基を有する樹脂微粒子中のシリル基に対して3倍当量以上であることが好ましく、6倍当量以上であることがより好ましい。
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
このうち、リン系酸化防止剤としては、亜リン酸エステル化合物等が挙げられる。
上記酸化防止剤は、1種又は2種以上を組み合せて使用することができる。
上記光安定剤は、1種又は2種以上を組み合せて使用することができる。
体積平均粒子径(dv)が1.5μm未満の場合、粒子1個当たりの拡散光の割合が少なくなるため拡散せずに透過する正透過光の割合が多くなり、全光線透過率が高い領域で拡散性(分散度)が低下するため好ましくない。一方、体積平均粒子径(dv)が3.3μmを超える場合、同質量における粒子数が少なくなり、同じ全光線透過率を得るために必要な添加量が多くなるため好ましくない。また、架橋樹脂微粒子(Y)の粒子が大きい場合には、拡散透過光がより直進性を増すために好ましくない。
尚、変動係数(CV)の値を粒子径分布の広がりを表す指標として用いることができる。変動係数(CV)が小さいほど粒子径分布が狭いことを表し、20%以下であれば、その分布幅は非常に狭いものであるということができる。全粒子が同一粒子径且つ真球状粒子である場合には、変動係数(CV)が0となるが、現実に得られるものとしては2%程度が下限と考えられる。
一般に、メタクリル系ポリマーは、他のポリマー材料と比較すると、加熱した際の分解速度が大きいことが知られており、メタクリル系単量体のみからなる架橋樹脂微粒子のTd50は、低くなる。しかしながら、アクリル系単量体及びスチレン系単量体等を、数質量%程度共重合させることにより、加熱時の分解速度が低減されるため、Td50の値を高めることができる。
Δnが大きい場合には、光拡散剤粒子1個当たりの散乱光の割合が多くなり、必要な拡散剤添加量が少なくなるため基本的には好ましい。しかし、Δnが大き過ぎると、反射光の割合が多くなるので好ましくない。また、必要な光拡散剤添加量が少なすぎると、樹脂組成物中で粒子に当たらず透過してしまう正透過光が多くなり、拡散透過光が少なくなるため好ましくない。このような場合には全光線透過率が高い領域において分散度が低下する傾向があり、Δnが0.115を超えるとこれらの不具合が生じることがある。
また、Δnが0.095未満の場合には、粒子1個当たりの拡散光の割合が少なくなるため光拡散剤の添加量を増やす必要があり、好ましくない。
ここで、酸化防止剤及び光安定剤は、架橋樹脂微粒子(Y)に添加可能なものとして既述した化合物を用いることができる。
この性質は、全光線透過率が高い領域で一定水準以上の分散度を示す光拡散性樹脂組成物は、光拡散性が良好であることを示し、分散度(I)が20度以上であることにより十分な明るさと良好な光拡散性が両立されることとなる。そのため、本発明の光拡散性樹脂組成物は、ディスプレイや照明器具等の部材用の成形材料としても好適となる。分散度は、透明樹脂(X)及び架橋樹脂微粒子(Y)との屈折率差(Δn)、架橋樹脂微粒子(Y)の粒子径、粒子径分布及びその添加量等をバランス化させることにより調整される。
上記分散度(II)が22度以上であれば、光拡散に優れるため好ましい。
Bθ=Iθ/cosθ (1)
マクロモノマー、架橋樹脂微粒子(Y)、並びに光拡散性樹脂組成物から製造した成形体等に対して実施した評価方法は、以下の通りである。
マクロモノマー又はその製造原料であるプレポリマーを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に供して、分子量が既知のポリスチレンを基準物質として用いて予め作成しておいた検量線から、数平均分子量(以下、「Mn」)及び重量平均分子量(以下、「Mw」)を算出した。
GPC装置として、東ソー社製「HLC−8220GPC」を使用し、カラムとして東ソー社製「TSK−GEL MULTIPORE HXL−M」(4本)を使用して測定した。重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解して濃度0.2%の溶液を調製した後、溶液100μLを、カラムに注入し、溶離液にTHF、カラム温度40℃、溶離液(THF)の流速1.0mL/分にて測定を行った。
表1に示した製造例1〜13で得られた架橋樹脂微粒子を含むスラリーにメタノールを加えて、微粒子の濃度が5%となるよう調整し、十分に振り混ぜて、均一分散させた。この分散液に、超音波を10分間照射した後、日機装社製レーザー回折散乱式粒度分布計「MT−3000」を用いて、粒子径分布測定を行った。測定時の循環分散媒として、イオン交換水若しくはアセトンを使用した。また、市販品1〜3の架橋樹脂微粒子は、その乾燥粉末の濃度が5%となるようにアセトン中に投入し、十分に振り混ぜて、均一分散させた。この分散液に、超音波を10分間照射した後、粒子径分布測定を行った。粒子径分布測定により得られた体積基準での粒子径分布よりメジアン径(μm)を計算し、体積平均粒子径(dv)とした。
表1に示した架橋樹脂微粒子(A1)〜(A9)及び(B1)〜(B7)を、日本電子社製電界放射走査型電子顕微鏡(FE−SEM)「JSM−6330F」にて観察した。1枚に50〜100個程度の粒子が観察できる倍率で撮影した後、粒子像を明確に確認できる0.2μm以上の架橋樹脂微粒子(200個以上)について、粒子径(di)(円相当直径)を測定した。次いで、下記式(3)により標準偏差(σ)を算出し、これを用いて下記式(2)により変動係数(CV)を算出した。
CV(%)=100×(σ/dn) (2)
σ=(Σ(di−dn)2/ΣNi)1/2 (3)
ここで変動係数(CV)及び標準偏差(σ)を求めるための数平均粒子径(dn)は上記SEM観察で得られた粒子径(di)及び粒子径を有する粒子数(Ni)を用いて、下記式(4)から算出した。
dn=(ΣNidi/ΣNi) (4)
架橋樹脂微粒子の屈折率は、架橋樹脂を構成する各構造単位のホモポリマーの屈折率(ni)、及び、架橋樹脂を構成する構造単位の全量に対する各構造単位の質量割合(wi)を用いて、下記式(5)より算出した。
n=Σniwi (5)
尚、各ホモポリマーの屈折率は「POLYMER HANDBOOK 第4版」(John Wiley & Sons,Inc.発行)に記載された値を用いた。文献に屈折率記載のないポリマーについては、溶液重合若しくは光重合によりホモポリマーを合成し、アタゴ社製アッベ屈折計「DR−M2」を用いて、温度25℃で、波長589nmの光で測定した。
架橋性微粒子の熱分解温度を、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製示差熱熱重量同時測定装置(TG−DTA)「SII EXSTAR6000」にて測定した。窒素ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分で25℃から500℃まで昇温し、重量変化を測定した。測定前の質量が半減したときの温度を測定し、これをTd50とした。
光拡散性樹脂組成物を用いて、厚さ1.5mmのシートを作製し、これを適当な大きさに切りだして測定試料とした。日本電色社製ヘイズメーター「ヘイズメーターNDH2000」(型式名)を使用して、全光線透過率(T.t.)を測定した。
全光線透過率と同じシートを測定試料とした。図1に示すように、光源2を備える装置として、村上色彩技術研究所社製変角光度計「GP−200」を用いて、シート1の表面に対して垂直に、光線を照射し、裏面側で透過光(出射光)の配光分布を測定して分散度を求めた。具体的には、各透過光(出射光)の出射角度θでの光度Iθを測定した後、下記式(6)より輝度Bθを求め、θ=0のときの輝度B0を100とした場合の輝度が50になるときの角度θを算出し、このθを分散度とした。
Bθ=Iθ/cosθ (6)
はじめに、架橋樹脂微粒子を製造するために、マクロモノマーMM−1及びMM−2を製造した。
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び送液配管連結部を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水200部を仕込んだ。次いで、攪拌、及び窒素ガスの導入を行いながら、反応容器内の水温を80℃に調整した。一方、送液配管を取り付けたガラス製容器に、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」)36.35部、メタクリル酸イソブチル(以下、「IBMA」)36.35部、メタクリル酸(以下、「MAA」)20部及びチオグリコール酸2−エチルヘキシル(以下、「OTG」)7.3部を仕込み、攪拌して単量体混合液(100部)を調製した。ガラス製反応容器内の水温が80℃で安定したことを確認した後、ガラス製反応容器に、重合開始剤である過硫酸アンモニウム(以下、「APS」)0.8部をイオン交換水3.0部に溶解した開始剤水溶液を添加し、撹拌した。そして、その5分後に、送液配管連結部を介してガラス製反応容器に接続されたガラス製容器から、定量ポンプを用いて、単量体混合液の供給を開始した。単量体混合液の供給は、一定速度で240分かけて行った。単量体混合液の供給完了後、反応容器内温を30分かけて90℃に昇温した。そして、90℃で4.5時間維持してプレポリマーの分散液を得た。分散液の一部をサンプリングし、乾燥により媒体を除いた後のプレポリマーを、GPC測定に供したところ、ポリスチレン換算のMnは2,700であり、Mwは4,600であった。
上記で得られたプレポリマー分散液の温度を30分かけて80℃に降温した後、導入ガスを、窒素ガスから空気に変更し、直ちにメトキシハイドロキノン0.03部を添加した。メトキシハイドロキノンを添加して5分後に、トリエチルアミン9.4部を一定速度で30分かけて反応容器に供給した。その15分後にメタクリル酸グリシジル(以下、「GMA」)6.1部を一定速度で30分かけて反応容器に供給し、温80℃で3時間加熱した。これにより、プレポリマーのカルボキシル基と、GMAに含まれるグリシジル基とを反応させ、GMAに由来するメタクリロイル基を有するマクロモノマーMM−1を含む分散液を得た(NV34%)。
ホットオイルによる加熱装置を備えた容量500mlの加圧式攪拌槽型反応器を、3−エトキシプロピオン酸エチルで満たした。その後、反応器を約250℃に加温した。一方、MMA20部、アクリル酸シクロヘキシル(以下、「CHA」)55部、アクリル酸(以下、「AA」)25部及びジ−tert−ブチルパーオキサイド(以下、「DTBP」)0.1部を混合して、単量体混合液を調製し、それを原料タンクに収容した。
次いで、上記反応器内の圧力を、圧力調節器により3−エトキシプロピオン酸エチルの蒸気圧以上で一定に保ちながら、上記単量体混合液を原料タンクから反応器に連続的に供給し、230℃で重合を行った。このとき、単量体混合液の反応器内での平均滞留時間が12分となるように供給速度を設定した。単量体混合液の供給量に相当する反応液を反応器の出口から連続的に取り出した。尚、単量体混合液を供給している間、反応器内の温度を230℃±2℃に維持した。
単量体混合液の供給開始から90分後、反応器の出口から取り出した反応液を薄膜蒸発器に導入して、反応液中の未反応単量体等の揮発性成分を除去し、マクロモノマーMM−2を得た。マクロモノマーMM−2の採取を60分間行い、その後、冷却することにより、固体のマクロモノマーMM−2を得た。そして、マクロモノマーMM−2をGPC測定に供したところ、ポリスチレン換算によるMnは3,100であり、Mwは10,600であった。また、核磁気共鳴スペクトル(以下、1H−NMRという。)により、マクロモノマーMM−2に含まれる末端エチレン性不飽和結合の濃度を測定した。数平均分子量及び末端エチレン性不飽和結合の濃度から算出されるマクロモノマーMM−2の末端エチレン性不飽和結合導入率(以下、F値という。)は98%であった。
次に、固体のマクロモノマーMM−2を粉砕してフレーク状としたもの100部、水260部及び25%アンモニア水22.5部を、冷却管付ガラス製フラスコに仕込み、温浴を用いて、内温を90℃とした。そして、攪拌を行い、マクロモノマーMM−2を水溶化させた。マクロモノマーMM−2が溶解したことを確認した後、固形分が25%となるように水を加え、マクロモノマーMM−2の水溶液を得た。
光拡散性樹脂組成物の製造に用いた架橋樹脂微粒子は、合成品及び市販品であり、以下に示される。
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び送液配管連結部を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水100.4部、メタノール475.6部、25%アンモニア水0.12部、合成例1で得られたマクロモノマーMM−1を含む分散液5.86部、MMA15.0部、IBMA50.0部及びアクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「HA」)10.0部を仕込んだ。次いで、攪拌、及び窒素ガスの導入を行いながら、反応容器の内温を55℃に調整した。
内温が55℃で安定したことを確認した後、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(以下、「TMOS−PMA」)25.0部を反応容器に供給した。更に、その10分後、重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシピバレートの70%溶液(日本油脂社製、商品名「パーブチルPV」)2.4部を添加して重合を開始した。この重合開始剤を添加すると、直ちに反応液に濁りが生じ、徐々に白化して乳白色となった。即ち、重合体微粒子が生成していることが確認された。重合開始剤の添加開始から、内温を55℃に保持して、6時間後、重合を終了し、加水分解性シリル基を有する重合体微粒子の分散液を得た。
次に、加水分解性シリル基を架橋させるための塩基性触媒として、25%アンモニア水32.8部を、上記分散液に添加し、内温を62℃として、攪拌下、3時間保持した。これにより、架橋構造を有する微粒子を形成させた。尚、アンモニア水の添加から2.5時間経過した時点で、酸化防止剤(BASF社製、商品名「Irganox245」)1.0部を添加した。
反応液を冷却後、200目ポリネットでろ過を行い、濾液(架橋樹脂微粒子の分散液)を回収した。そして、この分散液を、155℃で30分間加熱した場合の不揮発分が98%以上になるまで60℃で乾燥した。乾燥後、解砕を行い、粉末の架橋樹脂微粒子A1を得た。その後、上記の方法により、dv、CV、屈折率及びTd50を得た(表1参照)。
マクロモノマーの存在下に使用する単量体の種類及び使用量、並びに、イオン交換水及びメタノールの使用量を表1に示すとおり変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、架橋樹脂微粒子A2〜A6、A9及びB1〜B4を得た。得られた架橋樹脂微粒子の物性を表1に示す。
マクロモノマーの存在下に使用する単量体の種類及び使用量、並びに、イオン交換水及びメタノールの使用量を表1に示すとおりとし、使用する単量体の9/10を初期に仕込み、残りの1/10を、重合開始剤を添加してから10分後に添加した以外は、製造例1と同様の操作を行い、架橋樹脂微粒子A7を得た。得られたA7の物性を表1に示す。
架橋樹脂微粒子A8は、樹脂微粒子よりなるシード粒子SD−1を作製した後、このシード粒子SD−1の存在下に、架橋性単量体を含むビニル系単量体を重合させて得られた微粒子である。
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び送液配管連結部を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水250部、メタノール750部、MMA40部、IBMA50部、アクリル酸イソブチル(以下、「IBA」)10部、及び、上記で得られたマクロモノマー(MM−2)を含む水溶液40部を仕込んだ。次いで、攪拌、及び窒素ガスの導入を行いながら、反応容器内の混合液の温度を60℃に調整した。
混合液の温度が60℃で安定したことを確認した後、ガラス製反応容器に、重合開始剤「パーブチルPV」2.4部を添加し、攪拌下、重合を開始した。この重合開始剤を添加すると、直ちに反応液に濁りが生じ、徐々に白化して乳白色となった。即ち、重合体微粒子が生成していることが確認された。重合開始剤の添加開始から、内温を60℃に保持して、6時間後、50℃まで冷却した。その後、減圧下、メタノール及び水を留去して、固形分が35.0%となるように調整して、シード粒子SD−1を含む分散液を得た。
得られたシード粒子SD−1の分散液を遠心分離処理し、上澄み液を除去した後、回収した微粒子の体積平均粒子径(dv)を、レーザー回折散乱式粒度分布計により測定したところ、1.65μmであった。
一方、SUS製容器に、MMA40部、IBMA40部及びトリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製、商品名「アロニックスM−309」)20部を仕込み、攪拌混合した。その後、得られた混合物に、更にイオン交換水100部に、乳化剤であるラウリル硫酸ナトリウム(花王社製、商品名「エマール2F−30」)1.5部を溶解させた乳化剤水溶液を加え、乳化器を用いて乳化させ、ビニル単量体の乳化物を調製した。
次に、シード粒子SD−1が収容された上記反応容器に、上記で調整したビニル単量体の乳化液を加え、更に重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製、商品名「V−65」)1部を加え、20℃で、12時間攪拌を行い、シード粒子SD−1にビニル単量体及び重合開始剤を吸収させた。
その後、反応容器内の気相部に、窒素ガス導入管より窒素ガスを導入した。そして、内温を20℃から70℃まで2時間かけて昇温することでシード粒子に吸収されたビニル単量体を重合させた。70℃に到達した後、更に2時間、70℃に維持しつつ、撹拌を行った。次いで、酸化防止剤であるトリエチレングリコールビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)]プロピオネート(ADEKA社製、商品名「AO−70」)1部をメタノール19部に溶解した液を加え、攪拌下、70℃で更に30分保持した。その後、冷却して架橋樹脂微粒子A8を含む分散液を得た。
次に、上記分散液の遠心分離処理を行い、上澄みを除去して、架橋樹脂微粒子A8を含む沈降ケーキを得た。得られた沈降ケーキを、同質量のイオン交換水と混合して、再分散させた。その後、再度遠心分離処理を行い、上澄みを除去して沈降ケーキを得た。そして、得られた沈降ケーキを、155℃で30分間加熱した場合の、不揮発分が98%以上になるまで80℃で乾燥した。乾燥後、解砕を行い、粉末の架橋樹脂微粒子A8を得た。得られたA8の物性を表1に示す。
B5:ガンツ化成社製、架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子「GM−0105」(商品名)。
B6:ガンツ化成社製、架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子「GM−0401S」(商品名)。
B7:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、シリコーン樹脂微粒子「トスパール120」(商品名)。
MMA:メタクリル酸メチル(屈折率 1.4900)
IBMA:メタクリル酸イソブチル(屈折率 1.4770)
IBA:アクリル酸イソブチル(屈折率 1.4608)
HA:アクリル酸2−エチルヘキシル(屈折率 1.4625)
TMOS−PMA:トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(屈折率 1.4800)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(屈折率 1.5135)
St:スチレン(屈折率 1.5900)
実施例1
本例では、透明樹脂であるポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名「ユーピロン S−3000F」、屈折率 1.585)と、架橋樹脂微粒子A1とを含む組成物の製造及び評価を行った。
架橋樹脂微粒子A1を0.3gと、ポリカーボネート樹脂59.64gと、酸化防止剤(BASF社製、商品名「Irganox B225」)0.06gとを混合した後、ラボプラストミル(東洋精機社製、LABO PLASTOMILL)を用いて、250℃、50rpmの条件にて9分間溶融混練し、架橋樹脂微粒子A1を0.5%含む光拡散性樹脂組成物を得た(表2の(3)参照)。
光拡散性樹脂組成物を、所定の形状及び大きさを有するキャビティを有する金型を用いて、圧縮成型機(神藤金属工業所社製、「SFA−37」)により4MPaにて圧縮成型し、平板成形品(縦120mm×横120mm×厚さ1.5mm)を製造した。その後、マイクロメーターを用いて平板の厚さを測定し、1.50mm±0.05mmの範囲にあることを確認した。
また、別途、架橋樹脂微粒子A1及びポリカーボネート樹脂の配合量を、表2の(1)、(2)又は(4)に記載の通りに変えて、上記と同様にして、光拡散性樹脂組成物及び平板成形品を製造した。
上記により得られた各成形品について、全光線透過率及び分散度を測定した。結果を表2に示す。また、透明樹脂及び架橋樹脂微粒子の屈折率差の絶対値Δnも併記した。
ポリカーボネート樹脂に代えて、GPポリスチレン樹脂(Dongbu Hannong Chemicals社製、商品名「SOLARENE GPPS G−116HV」、屈折率 1.590)を用い、混練温度を200℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、光拡散性樹脂組成物及び平板成形品を得た。また、別途、ポリスチレン樹脂及び架橋樹脂微粒子A1の含有割合を変更した2種の組成物を製造した。得られた各成形品について、全光線透過率及び分散度を測定した。結果を表2に示す。
表2に示す配合で、ポリカーボネート樹脂及び架橋樹脂微粒子A2〜A9を用い、実施例1と同様にして、光拡散性樹脂組成物及び平板成形品を得た。得られた各成形品について、全光線透過率及び分散度を測定した。結果を表2に示す。
表3に示す配合で、ポリカーボネート樹脂及び架橋樹脂微粒子B1〜B7を用い、実施例1と同様にして、光拡散性樹脂組成物及び平板成形品を得た。得られた各成形品について、全光線透過率及び分散度を測定した。結果を表3に示す。
平均体積粒子径(dv)に着目してみると、1.8μm以上のdvを有する架橋樹脂微粒子を用いた実施例1〜9では、全光線透過率85%程度における分散度が20度以上と認められ、全光線透過率の高い領域においても良好な拡散性が発揮されることが判った。また、dvが2.8μm以下である実施例1〜4、並びに6〜10では、透明樹脂に対する架橋性樹脂微粒子の添加量を0.5%とした際の分散度が22度以上であり、拡散効率がより良好である結果が得られた。
その他、架橋樹脂微粒子の体積平均粒子径(dv)が小さい比較例2、並びにシリコーン系の架橋樹脂微粒子を用いた比較例7では、全光線透過率85%程度の高い全光線透過率領域における分散度が低く、適用可能な全光線透過率領域が限られるものであることが判った。
更に、架橋性微粒子を構成する単量体成分が全てメタクリル酸エステル系単量体からなる比較例4は、熱分解速度が速く、架橋樹脂微粒子を光拡散板等に用いた場合には、その耐熱性において懸念される結果が得られた。
Claims (10)
- 透明樹脂(X)及び架橋樹脂微粒子(Y)を含み、前記透明樹脂(X)の屈折率と、前記架橋樹脂微粒子(Y)の屈折率との差の絶対値が0.095〜0.115であり、前記架橋樹脂微粒子(Y)の体積平均粒子径が1.5〜3.3μmであり、前記架橋樹脂微粒子(Y)の粒子径の変動係数が20%以下であり、前記架橋樹脂微粒子(Y)を、窒素ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で熱分解させた場合に、質量が半分となる温度が320℃以上であることを特徴とする光拡散性樹脂組成物。
- 前記架橋樹脂微粒子(Y)が(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む請求項1に記載の光拡散性樹脂組成物。
- 前記光拡散性樹脂組成物を用いて作製した厚さ1.5mmのシートであって、白色光の全光線透過率が85%である該シートの表面に、ゴニオメーターを用いて垂直方向に光を入射した場合に、0度の出射光に対して50%の輝度の出射光となる角度が20度以上である請求項1又は2に記載の光拡散性樹脂組成物。
- 前記透明樹脂(X)及び前記架橋樹脂微粒子(B)の質量割合がそれぞれ100質量部及び0.5質量部である光拡散性樹脂組成物を用いて作製した厚さ1.5mmのシートの表面に、ゴニオメーターを用いて垂直方向に光を入射した場合に、0度の出射光に対して50%の輝度の出射光となる角度が22度以上である請求項1又は2に記載の光拡散性樹脂組成物。
- 前記透明樹脂(X)がポリカーボネート樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
- 前記透明樹脂(X)100重量部に対して前記架橋樹脂微粒子(Y)を0.1〜2.0質量部含んでなる請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
- 前記架橋樹脂微粒子(Y)が、分散重合法により製造されたものである請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散樹脂組成物。
- 前記架橋樹脂微粒子(Y)が、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系樹脂をシラン架橋して得られる架橋樹脂微粒子である請求項1〜7のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物からなる成形品。
- 上記成形品が照明器具又は表示器具に配設される請求項9に記載の成形品。
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