JPWO2013118230A1 - 蓄電装置及び非水系二次電池とポリマーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

四員環以上の環構造を含むコア部と、カルボキシル基を有する酸モノマーの重合体からなり環構造を構成する3個以上の炭素原子からそれぞれ伸びるアーム部と、からなるポリマーを含むバインダを用いて電極の活物質層を形成する。充放電時の体積変化への追従性に優れ、負荷特性が向上し初期効率と充放電容量が向上した蓄電装置となる。

Description

本発明は、二次電池、電気二重層コンデンサ、リチウムイオンキャパシタなどの蓄電装置及び非水系二次電池と、これらの電極に用いられるバインダとして好適なポリマーの製造方法に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、充放電容量が高く、高出力化が可能な二次電池である。現在、主として携帯電子機器用の電源として用いられており、更に、今後普及が予想される電気自動車用の電源として期待されている。リチウムイオン二次電池は、リチウム(Li)を挿入および脱離することができる活物質を正極及び負極にそれぞれ有する。そして、両極間に設けられた電解液内をリチウムイオンが移動することによって動作する。
リチウムイオン二次電池には、正極の活物質として主にリチウムコバルト複合酸化物等のリチウム含有金属複合酸化物が用いられ、負極の活物質としては多層構造を有する炭素材料が主に用いられている。
リチウムイオン二次電池の性能は、二次電池を構成する正極、負極および電解質の材料に左右される。なかでも活物質を形成する活物質材料の研究開発が活発に行われている。例えば負極活物質材料として炭素よりも高容量なケイ素またはケイ素酸化物が検討されている。
ケイ素を負極活物質として用いることにより、炭素材料を用いるよりも高容量の電池とすることができる。しかしながらケイ素は、充放電時のリチウムの吸蔵・放出に伴う体積変化が大きい。そのためケイ素が微粉化して集電体から脱落または剥離し、電池の充放電サイクル寿命が短いという問題点がある。そこでケイ素酸化物を負極活物質として用いることにより、ケイ素よりも充放電時のLiの吸蔵・放出に伴う体積変化を抑制することができる。
例えば、負極活物質として、酸化ケイ素(SiO:xは0.5≦x≦1.5程度)の使用が検討されている。SiOは熱処理されると、SiとSiOとに分解することが知られている。これは不均化反応といい、固体の内部反応によりSi相とSiO相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。また、Si相を覆うSiO相が電解液の分解を抑制する働きをもつ。したがって、SiとSiOとに分解したSiOからなる負極活物質を用いた二次電池は、サイクル特性に優れる。
上記した負極活物質を含む負極は、例えば、負極活物質とバインダとを含むスラリーを集電体に塗布し、乾燥することにより作製される。このため活物質粒子どうしの結着と、活物質と集電体との結着とを担うバインダの性能が、負極の性能に大きく影響する。バインダの結着力が低い場合には、活物質粒子どうしの密着性及び活物質と集電体との密着性が低下し、集電性が低下する。
また上述の酸化ケイ素からなる負極活物質を用いた負極であっても、充放電反応時のリチウムの吸蔵及び放出に伴う体積変化が避けられない。このため、負極の活物質層に含まれるバインダには大きな応力が作用するので、バインダには強い結着力が求められている。
例えば下記の特許文献1には、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸よりなる群から選ばれるポリマーを含有し、そのポリマーは酸無水物基を含むリチウムイオン二次電池用負極が記載されている。
また下記の特許文献2には、アクリル酸とメタクリル酸とを共重合させて得られるポリマーを負極用バインダ又は正極用バインダとして用いることが記載されている。
さらに下記の特許文献3には、アクリルアミドとアクリル酸とイタコン酸とを共重合させて得られるポリマーを負極用バインダ又は正極用バインダとして用いることが記載されている。
特開2007−115671号公報 特開2003−268053号公報 特開2006−513554号公報
従来使用されている負極用バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などの含フッ素系ポリマー、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの水溶性セルロース誘導体、ポリアクリル酸などの水溶性ポリマーなどが挙げられる。しかしこれらのポリマーを負極用バインダとして用いると、集電体への活物質の結着力がまだ不十分であるために、充放電サイクルの進行に伴う電極の膨潤、収縮などによって、活物質が電極から徐々に脱落し、十分なサイクル特性が得られないという問題があった。
また、例えばポリアクリル酸を負極用バインダとして用いると、負極上で皮膜を形成し負極活物質の劣化を抑制するという効果がある。ところが形成された皮膜成分が抵抗となり出力が低下するという不具合があった。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、使用時の体積変化への追従性に優れ、負荷特性が向上した蓄電装置及び非水系二次電池を提供することにある。
上記課題を解決する本発明の蓄電装置の特徴は、バインダを含む電極をもつ蓄電装置であって、バインダは、コア部と、コア部から伸びるポリマー鎖からなるアーム部とを有し、コア部は四員環以上の環構造を有し、アーム部はカルボキシル基を有する酸モノマーの重合体からなり、アーム部はコア部の環構造を構成する3個以上の炭素原子からそれぞれ伸び、それぞれのアーム部の一端はコア部の環構造を構成する炭素原子に単結合あるいはエーテル基、エステル基、カルボニル基、アルキレン基又はこれらを組み合わせた二価の基を介して結合しているポリマーを含むことにある。
上記ポリマーにおいて、アーム部は3本でありコア部の環構造を構成する3個の炭素原子からそれぞれ伸びている構造とすることができる。以下、このポリマーを第一のポリマーという。またアーム部は、コア部の環構造を構成する全ての炭素原子からそれぞれ伸びている構造としてもよい。以下、このポリマーを第二のポリマーという。
また、アーム部のカルボキシル基と共に高分子錯体を形成する遷移金属イオンを含むポリマーとすることもできる。以下、このポリマーを第三のポリマーという。
さらに、アーム部はカルボキシル基を有する酸モノマーの重合体とスチレンの重合体とからなり、スチレンの重合体が少なくとも1本のアーム部の少なくとも一部に含まれているポリマーとしてもよい。以下、このポリマーを第四のポリマーという。
また本発明の非水系二次電池の特徴は、活物質層をもつ電極を有する非水系二次電池であって、活物質層には本発明に係るバインダが含まれていることにある。
さらに本発明のポリマーの製造方法の特徴は、コア部と、コア部から伸びるポリマー鎖からなるアーム部とを有し、コア部は四員環以上の環構造を有し、アーム部はカルボキシル基を有する酸モノマーの重合体からなり、アーム部はコア部の環構造を構成する全ての炭素原子からそれぞれ伸び、それぞれのアーム部の一端はコア部の環構造を構成する炭素原子に単結合あるいはエーテル基、エステル基、カルボニル基、アルキレン基又はこれらを組み合わせた二価の基を介して結合しているポリマーの製造方法であって、
t-ブチル基をもたずラジカル発生可能な共役モノマーと、四環以上の環構造と環構造を構成する炭素原子の全てにアルキル基を介して結合したハロゲン基とからなる母体骨格化合物と、アミン系配位子と、加熱によって活性ハロゲンを生成する金属ハロゲン化物と、を溶媒に溶解させ加熱することでリビングラジカル重合する重合工程と、重合工程で得られた反応液に酸とアルコールを加えてアミン系配位子を中和するとともに沈殿物を析出させる沈殿工程と、沈殿物を洗浄及び濾過し乾燥してポリマー前駆体を得る濾過工程と、ポリマー前駆体を有機溶媒に溶解しアルカリ金属水酸化物を加えて加水分解する反応停止工程と、反応停止工程で得られた混合物の水相を中和し洗浄した後に乾燥する精製工程と、からなり、重合工程では、母体骨格化合物の総反応点のモル数を1としたとき0.8以下のモル比となる量で金属ハロゲン化物が添加されることにある。
なお母体骨格化合物の総反応点とは、母体骨格化合物の反応点の全てを指す。母体骨格化合物の総反応点のモル数とは、コア部においてハロゲン基が結合可能な点である反応点の数に、コア部自体のモル数を掛けたモル数を指す。
本発明の蓄電装置によれば、上記したポリマーを含むバインダが電極に含まれているので、環構造を有するコア部によって剛性が発現され、カルボキシル基を多数有するアーム部によって接着性と柔軟性が発現される。そのため本発明の蓄電装置は、負荷特性が向上する。
その理由として、例えば蓄電装置がリチウムイオン二次電池であれば、Grotthus機構によるプロトンホッピング伝導のような現象が起こっており、リチウムイオンがアーム部のカルボキシル基を介してホッピングし、移動し易くなるためと考えられ、高い放電容量と高い導電性が発現される。
そして第三のポリマーによれば、高分子錯体に含まれる遷移金属イオンによって導電性が向上するため、蓄電装置の電極用バインダとして用いられた場合に、電極における抵抗の増大を抑制することができる。
しかしながら第一〜第三のポリマーは、水には溶解するものの、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などには溶解しない。非水系二次電池の負極を形成する際には、負極活物質と、導電助剤と、バインダと、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶媒とからなるスラリーが用いられるが、上記ポリマーをバインダとすると水を溶媒とせざるを得ず、導電助剤や負極活物質の種類が限定されるという問題がある。
そこで第四のポリマーによれば、アーム部に含まれるスチレンの重合体によって有機溶媒との相溶性が向上するため、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などに可溶となり非水系二次電池の電極に用いることができる。
また本発明のポリマーの製造方法によれば、t-ブチル基をもつ共役モノマーを用いることなく環構造を構成する炭素原子の全てからアーム部を生長させることができる。また蟻酸を用いることなく反応停止工程を行うことができ、安全性が高い。すなわち母体骨格化合物の総反応点のモル数を1としたとき0.8以下のモル比となる量で金属ハロゲン化物を用いることで、重合工程における反応速度を小さくできるため、環構造を構成する炭素原子の全てからアーム部を生長させることがさらに容易となる。また適切な時期に水添加工程を行うことで、環構造を構成する炭素原子の全てからアーム部を生長させつつ、重合工程における反応速度が高まるので、反応時間を短縮することができる。
本発明の一実施例で合成されたスターポリマーの構造式を示す。 実施例1と比較例1に係るリチウムイオン二次電池の放電容量を示すグラフである。 実施例1と比較例1に係るリチウムイオン二次電池の放電IRドロップを示すグラフである。 実施例1と比較例1に係るリチウムイオン二次電池の放電容量維持率を示すグラフである。 本発明の第2の実施例で合成されたスターポリマーの構造式を示す。 実施例2と比較例2に係るリチウムイオン二次電池の放電容量を示すグラフである。 本発明の第3の実施例で合成されたスターポリマーの構造式を示す。 本発明の第3の実施例で合成されたポリマー前駆体のNMRチャートである。 実施例3と実施例1に係るリチウムイオン二次電池の放電容量維持率を示すグラフである。 本発明の第4の実施例で合成されたポリマー前駆体のNMRチャートである。 実施例1と実施例6に係るポリマーのFT-IRスペクトルを示す。 実施例1と実施例6に係るリチウムイオン二次電池のSOC20%放電抵抗を示すグラフである。 実施例7に係るポリマーの構造式を示す。 実施例7に係るポリマーをバインダとして含む負極をもつリチウムイオン二次電池の放電容量を示すグラフである。
本発明の蓄電装置のバインダに用いられるポリマーは、コア部と、アーム部とからなる。コア部は四員環以上の環構造を含むものであり、炭素のみからなる単素環式化合物から派生したものであってもよいし、炭素以外の元素を含む複素環式化合物から派生したものであってもよい。四員環の単素環式化合物としては、シクロブタン、シクロブテン、シクロブタジエンが例示され、四員環の複素環式化合物としては、アゼチジン、オセキタン、アゼト、トリメチレンスルフィドなどが例示される。四員環の環構造は、環構造をなす炭素原子が少なくとも3個存在することが必要である。
五員環の単素環式化合物としてはシクロペンタンが代表的なものであり、五員環の複素環式化合物としては、ヘテロ原子として窒素を含むアゾリジン、アゾール、イミダゾール、ピラゾール、イミダゾリン、ピロール、ヘテロ原子として酸素を含むオキソラン、オキソール、ヘテロ原子として窒素を含むチオール、ヘテロ原子として窒素と酸素を含むオキサゾール、ヘテロ原子として窒素と硫黄を含むチアゾールなどが例示される。五員環の環構造は、炭素原子が少なくとも3個存在することが必要である。
六員環の単素環式化合物としてはベンゼン、シクロヘキサンが挙げられ、六員環の複素環式化合物としては、ヘテロ原子として窒素を含むピペリジン、ピリジン、ピラジン、ヘテロ原子として酸素を含むテトラヒドロピラン、ヘテロ原子として硫黄を含むチアン、チアピラン、ヘテロ原子として窒素と酸素を含むモルホリン、ヘテロ原子として窒素と硫黄を含むチアジンなどが例示される。六員環の環構造は、炭素原子が少なくとも3個存在することが必要である。
七員環の単素環式化合物としては、シクロヘプタン、シクロヘプテンが挙げられ、七員環の複素環式化合物としては、ヘテロ原子として窒素を含むヘキサメチレンイミン(アゼバン)、アザトロピリデン(アゼピン)、ヘテロ原子として酸素を含むヘキサメチレンオキシド(オキセバン)、オキシシクロヘプタトリエン(オキセピン)、ヘテロ原子として硫黄を含むチオトロピリデン(チエピン)などが例示される。七員環の環構造は、炭素原子が少なくとも3個存在することが必要である。
八員環の単素環式化合物としては、シクロオクタン、シクロオクテンが挙げられる。八員環以上の単素環式化合物あるいは複素環式化合物から派生したコア部であってもよい。八員環の環構造は、炭素原子が少なくとも3個存在することが必要である。
コア部は、一つの環のみであってもよいし、複数の環からなる多環構造をなしていてもよい。例えば六員環の単素環式化合物が複数結合したものとしては、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、コランヌレン、コロネン、オバレンなどがある。
アーム部はコア部から伸びるポリマー鎖であり、カルボキシル基を有する酸モノマーの重合体からなる。酸モノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、(無水)マレイン酸などが例示される。アーム部は、これらの酸モノマーから選ばれる一種のモノマーのホモポリマーであってもよいし、複数のモノマーの共重合体であってもよい。例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリル酸−フマル酸共重合体、メタクリル酸−フマル酸共重合体、アクリル酸−イタコン酸共重合体、メタクリル酸−イタコン酸共重合体、アクリル酸−メタクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリル酸−メタクリル酸−フマル酸共重合体、アクリル酸−メタクリル酸−イタコン酸共重合体などが例示される。
酸モノマーの一部を、スチレン、スチレン誘導体、ブチレン、イソブチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリルなど他のモノマーに代えて共重合した共重合体でもよい。
アーム部は、コア部の環構造を構成する3個以上の炭素原子からそれぞれ伸びている。第一のポリマーにおけるアーム部は、環構造を構成する3個の炭素原子からそれぞれ伸びている。また第二のポリマーにおけるアーム部は、コア部の環構造を構成する全ての炭素原子からそれぞれ伸びている。
それぞれのアーム部の一端はコア部の環構造を構成する炭素原子に単結合あるいはエーテル基、エステル基、カルボニル基、アルキレン基又はこれらを組み合わせた二価の基を介して結合している。それぞれのアーム部を構成するポリマーは、同一種でもよいし異種であってもよい。
少なくとも1本のアーム部は、化1式に示すポリアクリル酸骨格を含むことが望ましい。ポリアクリル酸骨格を含むことで結着力がさらに高まり、リチウムイオン二次電池など蓄電装置の電極用バインダとして有用である。
Figure 2013118230
少なくとも1本のアーム部を構成するポリマーの分子量は、それぞれ数平均分子量(Mn)で1,000〜200,000、さらには1,000〜100,000、1,000〜50,000、1,000〜10,000の範囲が好ましい。アーム部の分子量が1,000より小さいと柔軟性と付着性が不足し、アーム部の分子量が200,000より大きくなると溶媒に溶解しにくくなる。アーム部の分子量が50,000〜200,000の場合にはゲル化する可能性があり、バインダとして用いた場合ネットワーク的な密着性がある。また、アーム部の分子量が1,000〜50,000の場合には、鎖の分布が安定するため、分散性が高い。なお各アーム部の分子量は、それぞれ同等であってもよいし異なっていてもよい。
コア部の環構造を構成する炭素原子のうち、アーム部が結合していない炭素原子には、水素ばかりでなく、メチル基、エチル基などのアルキル基、カルボキシル基、水酸基など各種置換基が結合していてもよい。
第三のポリマーにおいて、アーム部のカルボキシル基と共に高分子錯体を形成する遷移金属イオンとしては、銅イオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、コバルトイオン、鉄イオン、モリブデンイオン、などの群から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。中でも銅イオン、亜鉛イオン、マンガンイオンが好ましく用いられる。
遷移金属イオンの含有量は、遷移金属イオンの価数とポリマー中のカルボキシル基の量に応じて決まり、最大値でカルボキシル基と当量となるように含めることができるが、カルボキシル基のモル量に対して遷移金属のモル量が0.001〜30%の範囲とすることが望ましい。遷移金属イオンの含有量がこの範囲より少ないと導電性向上の効果が発現されず、この範囲を超えて遷移金属イオンを含有させても導電性向上の効果が飽和するとともに結着性などの物性が低下するようになる。
第四のポリマーにおいては、アーム部は、カルボキシル基を有する酸モノマーの重合体とスチレンの重合体とからなる。例えばアーム部の数が6本である場合、そのうちの何本かをカルボキシル基を有する酸モノマーの重合体から形成し、残りのアーム部をスチレンの重合体から形成することができる。あるいは1本のアーム部の中に、カルボキシル基を有する酸モノマーの重合体ブロックとスチレンの重合体ブロックとを含むこともできる。有機溶媒との相溶性の観点からは、スチレンの重合体ブロックがアーム部の末端側に存在するのが好ましい。
カルボキシル基を有する酸モノマーの重合体と、スチレンの重合体との組成比(スチレンの重合体/酸モノマーの重合体)は、質量比で3〜30の範囲とすることが望ましい。スチレンの重合体がこの範囲より少ないと有機溶媒との相溶性が低下し、スチレンの重合体がこの範囲より多くなるとバインダとしての結着性が低下するほか、リチウムの輸送能も低下するようになる。
本発明の蓄電装置に用いられるポリマーを合成するには、多官能性開始剤を用いてモノマーを重合させる方法、リビングポリマーと多官能性試薬とのカップリング法、リビングポリマーに重合可能なジビニル化合物を適当量加える方法、マクロモノマーの単独重合法などを採用することができる。中でも、多官能性開始剤を用いてモノマーを重合させる方法又はリビングポリマーと多官能性試薬とのカップリング法を用いれば、アーム部の本数を制御し易い。また多官能性開始剤を用いてモノマーを重合させる方法は、長鎖のアーム部をもつスターポリマーの合成に適している。
また酸モノマーのエステルをアーム部用モノマーとして用いてスターポリマーを合成し、その後にエステル基を加水分解してカルボキシル基を生成させてもよい。
例えば、t-ブチル基をもちラジカル発生可能な共役モノマーと、四環以上の環構造と環構造を構成する炭素原子の全てにアルキル基を介して結合したハロゲン基とからなる母体骨格化合物と、アミン系触媒と、を溶媒に溶解し、加熱によって活性ハロゲンを生成する金属ハロゲン化物を加えて加熱することでリビングラジカル重合する重合工程と、得られた反応液に酸とアルコールを加えてアミン系触媒を中和するとともに沈殿物を析出させる沈殿工程と、沈殿物を洗浄・濾過し乾燥してポリマー前駆体を得る濾過工程と、ポリマー前駆体を有機溶媒に溶解し蟻酸を加えて加水分解する反応停止工程と、得られた混合物の水相を洗浄した後乾燥する精製工程と、からなる製造方法を用いることができる。
第三のポリマーを製造するにあたり、ポリマーに遷移金属イオンを含ませるには、遷移金属を塩酸や硝酸などの無機酸に溶解して調製された酸性溶液を第一のポリマー又は第二のポリマー、あるいは第四のポリマーと混合し、その後に溶媒を除去すればよい。またリビングラジカル重合法で本発明に係るポリマーを合成する場合には、加熱によって活性ハロゲンを生成する金属ハロゲン化物(活性化剤)の金属を遷移金属イオンの一部又は全部として含ませることもできる。
上記したポリマーは、蓄電装置の電極用バインダとして単独で使用することができる。また、バインダとしての特性を損なわない範囲で、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリブロックイソシアナート、ポリオキサゾリン、ポリカルボジイミド等の硬化剤、エチレングリコール、グリセリン、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルオリゴマ、フタル酸エステル、ダイマー酸変性物、ポリブタジエン系化合物等の各種添加剤を単独で又は二種以上組み合わせて配合してもよい。
ところが上記した製造方法では、t-ブチル基をもつ共役モノマーを原料としているため、原料コストが高いという問題がある。また反応停止工程では強酸で毒性の強い蟻酸を用いる必要があった。またこの方法では、重合工程に約13時間の長時間を必要とし、重合反応の短縮が求められている。そこで本発明の製造方法によれば、t-ブチル基をもつ共役モノマーや蟻酸を用いることなく、短時間の反応でスターポリマーを製造することができる。
本発明のポリマーの製造方法では、リビングラジカル重合法によりポリマーを製造する。すなわち、先ず、t-ブチル基をもたずラジカル発生可能な共役モノマーと、四環以上の環構造と環構造を構成する炭素原子の全てにアルキル基を介して結合したハロゲン基とからなる母体骨格化合物と、アミン系配位子と、加熱によって活性ハロゲンを生成する金属ハロゲン化物と、を溶媒に溶解し加熱することでリビングラジカル重合する重合工程を行う。
t-ブチル基をもたずラジカル発生可能な共役モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、イタコン酸、イタコン酸エステル、フマル酸、フマル産エステルなどが例示される。このうちの一種のみを用いてもよいし、複数種を混合して用いることもできる。
母体骨格化合物は、前述した四環以上の環構造と環構造を構成する炭素原子の全てにアルキル基を介して結合したハロゲン基とからなるものである。例えば環構造がベンゼン環である場合には、ベンゼン環を構成する6個の炭素原子の全てにアルキル基を介してハロゲン基が結合した母体骨格化合物を用いることができる。アルキル基としては特に制限がないが、炭素数が小さなメチル基、エチル基、プロピル基程度までが好ましい。またハロゲン基としては、臭素基、ヨウ素基、塩素基、フッ素基などが例示されるが、臭素基又は塩素基が好ましい。
アミン系配位子は、リガンドとも称されるものであり、母体骨格化合物と共役モノマーとの初期反応を促進する機能をもつ。TMEDA(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)、bpy(2,2’-ビピリジン)、NPPMI(N-プロピル-ピリジルメタンイミン)、NOPMI(N-オクチル-ピリジルメタンイミン)、bpyをベースとしたdHDbpy,dHbpy、PMDETA(N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン)、tNtpy、HMTETA(1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン)、TPMA(トリス(ピリジン-2-メチル)アミン)、シクラムB、TPEDA(N,N,N’,N’,-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン)、Me6TREN(トリス2-ジエチルアミノエチルアミン)などを用いることができるが、反応速度の面からMe6TREN(トリス2-ジエチルアミノエチルアミン)が好ましい。
溶媒としては、母体骨格化合物、共役モノマー、アミン系配位子及び金属ハロゲン化物を溶解するものであれば特に制限されず、アルコール類、芳香族炭化水素類、エステル類、エーテル類などを単独で、あるいは複数種類を混合して用いることができる。錯体の溶解性と錯体の安定性とラジカルの連鎖移動性と反応速度の面から、2-プロピルアルコールが好ましい。
加熱によって活性ハロゲンを生成する金属ハロゲン化物としては、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、塩化銅(I)などが例示される。母体骨格化合物と同一のハロゲン基をもつものが望ましい。
金属ハロゲン化物は、母体骨格化合物の総反応点のモル数を1としたとき0.8以下のモル比で、望ましくは0.6以下0.3以上で添加する。金属ハロゲン化物の添加量がこの範囲より多くなると、重合反応速度が高くなるために、環構造を構成する炭素原子の全てからアーム部を生長させることが困難となる。また金属ハロゲン化物の添加量がこの範囲より少なくなると、反応時間が長くなりすぎて副反応が生じる確率が高くなり好ましくない。
また金属ハロゲン化物の添加量は、アミン系配位子のモル数を1としたときモル比で1以上であることが望ましい。アミン系配位子のモル数を1としたときモル比で1以上の場合の方が、モル比で1未満である場合に比べて、反応速度の観点から反応が速やかに進行する。
重合工程における反応では、金属ハロゲン化物は母体骨格化合物からハロゲンを預かって、母体骨格化合物には炭素ラジカルが生成し、系内に存在する共役モノマーの重合が始まる。生長ラジカルは再びハロゲンと結合して、末端にC-X結合を有する高分子となる。このC-X結合のハロゲン原子(X)は、再び金属ハロゲン化物へ移り、生長反応が継続するため分子量が時間とともに増大する。
重合工程では、反応初期に母体骨格化合物の環構造を構成する全ての炭素原子に炭素ラジカルが生成するとともに、各炭素ラジカルからほぼ同時に共役モノマーの重合が始まる。このとき、金属ハロゲン化物を適切な量で用いて反応速度を十分に遅くすることで、母体骨格化合物の環構造を構成する全ての炭素原子に炭素ラジカルを生成させることができる。
しかし一旦炭素ラジカルが生成した後の反応中期には、反応速度を遅延させる必要がなくなる。したがって重合工程の途中に、反応系に水を添加する水添加工程を行うことが望ましい。反応系に水を添加することで生長反応の速度が高まるので、重合反応時間を短縮することができる。
添加される水の量は、使用する溶媒に対して50%以下、望ましくは30%以下である。添加量が多くなると副反応が生じる恐れがある。
水添加工程を行う時期は、反応開始から8時間以内、望ましくは1時間以上4時間以内がよい。また水の添加時期は、母体骨格化合物の反応点が全て反応した後に行うのが望ましい。水の添加時期が早すぎると、環構造を構成する炭素原子のうち、生長反応に預からない炭素原子が残る場合がある。なお、母体骨格化合物の反応点が全て反応したか否かは、NMRにて未反応部分に由来するピークが無くなることを確認することで判断することができる。
沈殿工程では、得られた反応液に酸とアルコールを加えてアミン系配位子を中和するとともに沈殿物を析出させる。酸としてはアミン系配位子を中和して系を酸性にできるものであればよく、硝酸、硫酸などの強酸を用いることもできるが、未反応の共役モノマーを反応させる可能性があるため、酢酸、酒石酸、シュウ酸などの弱酸を用いることが望ましい。またアルコールを加えるのは、生成したポリマー前駆体を析出させるためであり、アルコールの種類は問わない。沸点が低く乾燥時間を短縮できるメタノールが好ましい。
濾過工程では、析出した沈殿物を洗浄・濾過し乾燥してポリマー前駆体を得る。沈殿物を洗浄するには、アセトンなどポリマー前駆体を可溶な有機溶媒を用いて沈殿物を溶解し、メタノールなどを加えて再沈殿させて濾過すればよく、この操作を複数回繰り返すことが望ましい。
得られるポリマー前駆体は、母体骨格化合物の環構造を構成する炭素原子から延び、共役モノマーのホモポリマー骨格を有する複数のアーム部をもち、その末端にはハロゲン基が結合しているので、生長反応がまだ停止していない。したがって反応停止工程を行う。そこで本発明の製造方法では、反応停止工程としてポリマー前駆体を有機溶媒に溶解するとともにKOH、NaOH、アンモニアなどのアルカリを加える。こうすることで加水分解反応が生じ、アーム部末端のハロゲン基が水酸基となるとともに、アーム部にエステル基が存在する場合はエステル基がカルボキシル基となる。溶媒としては、アルカリと反応することなくポリマー前駆体を溶解できるものを用いることができ、例えばトルエンなど芳香族炭化水素が好ましい。
加水分解後の混合物は、静置により有機溶媒相と水相とに分離し、ポリマーは水相に溶解している。したがって水相を中和し、洗浄した後に乾燥する精製工程が行われる。中和には、酢酸、硝酸などの酸を用いることができ、洗浄は、純水を用いた透析法などで行うことができる。その後、フリーズドライ法などを用いて乾燥することで、ポリマーが得られる。
上記ポリマーをバインダとして用いて、例えば非水系二次電池の負極を作製するには、負極活物質粉末と、炭素粉末などの導電助剤と、上記ポリマーと、適量の有機溶剤を加えて混合しスラリーにしたものを、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの方法で集電体上に塗布し、バインダを乾燥あるいは硬化させることによって作製することができる。
バインダは、なるべく少ない量で活物質等を結着させることが求められるが、その添加量は活物質、導電助剤、及びバインダを合計したものの0.5wt%〜50wt%が望ましい。バインダが0.5wt%未満では電極の成形性が低下し、50wt%を超えると電極のエネルギー密度が低くなる。
集電体は、放電或いは充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体のことである。集電体は箔、板等の形状を採用することができるが、目的に応じた形状であれば特に限定されない。集電体として、例えば銅箔やアルミニウム箔を好適に用いることができる。
負極活物質としては、グラファイト、ハードカーボン、ケイ素、炭素繊維、スズ(Sn)、酸化ケイ素など公知のものを用いることができる。中でもSiO(0.3≦x≦1.6)で表されるケイ素酸化物が特に好ましい。このケイ素酸化物粉末の各粒子は、不均化反応によって微細なSiと、Siを覆うSiOとに分解したSiOからなる。xが下限値未満であると、Si比率が高くなるため充放電時の体積変化が大きくなりすぎてサイクル特性が低下する。またxが上限値を超えると、Si比率が低下してエネルギー密度が低下するようになる。0.5≦x≦1.5の範囲が好ましく、0.7≦x≦1.2の範囲がさらに望ましい。
一般に、酸素を断った状態であれば800℃以上で、ほぼすべてのSiOが不均化して二相に分離すると言われている。具体的には、非結晶性のSiO粉末を含む原料酸化ケイ素粉末に対して、真空中または不活性ガス中などの不活性雰囲気中で800〜1200℃、1〜5時間の熱処理を行うことで、非結晶性のSiO相および結晶性のSi相の二相を含むケイ素酸化物粉末が得られる。
またケイ素酸化物として、SiOに対し炭素材料を1〜50質量%で複合化したものを用いることもできる。炭素材料を複合化することで、サイクル特性が向上する。炭素材料の複合量が1質量%未満では導電性向上の効果が得られず、50質量%を超えるとSiOの割合が相対的に減少して負極容量が低下してしまう。炭素材料の複合量は、SiOに対して5〜30質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲がさらに望ましい。SiOに対して炭素材料を複合化するには、CVD法などを利用することができる。
ケイ素酸化物粉末は平均粒径が1μm〜10μmの範囲にあることが望ましい。平均粒径が10μmより大きいと非水系二次電池の充放電特性が低下し、平均粒径が1μmより小さいと凝集して粗大な粒子となるため同様に非水系二次電池の充放電特性が低下する場合がある。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。導電助剤として、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)等を単独でまたは二種以上組み合わせて添加することができる。導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、活物質100質量部に対して、20〜100質量部程度とすることができる。導電助剤の量が20質量部未満では効率のよい導電パスを形成できず、100質量部を超えると電極の成形性が悪化するとともにエネルギー密度が低くなる。なお炭素材料が複合化されたケイ素酸化物を活物質として用いる場合は、導電助剤の添加量を低減あるいは無しとすることができる。
有機溶剤には特に制限はなく、複数の溶剤の混合物でも構わない。N-メチル-2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドンとエステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等)あるいはグライム系溶媒(ジグライム、トリグライム、テトラグライム等)の混合溶媒が特に好ましい。
本発明の蓄電装置がリチウムイオン二次電池の場合、負極を構成するケイ素酸化物には、リチウムがプリドーピングされていることもできる。負極にリチウムをドープするには、例えば対極に金属リチウムを用いて半電池を組み、電気化学的にリチウムをドープする電極化成法などを利用することができる。リチウムのドープ量は特に制約されない。
本発明の蓄電装置がリチウムイオン二次電池の場合、特に限定されない公知の正極、電解液、セパレータを用いることができる。正極は、非水系二次電池で使用可能なものであればよい。正極は、集電体と、集電体上に結着された正極活物質層とを有する。正極活物質層は、正極活物質と、バインダとを含み、さらには導電助剤を含んでも良い。正極活物質、導電助材およびバインダは、特に限定はなく、非水系二次電池で使用可能なものであればよい。
正極活物質としては、金属リチウム、LiCoO、Li[Mn1/3Ni1/3Co1/3]O、LiMnO、硫黄などが挙げられる。集電体は、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼など、リチウムイオン二次電池の正極に一般的に使用されるものであればよい。導電助剤は上記の負極で記載したものと同様のものが使用できる。
電解液は、有機溶媒に電解質であるリチウム金属塩を溶解させたものである。電解液は、特に限定されない。有機溶媒として、非プロトン性有機溶媒、たとえばプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等から選ばれる一種以上を用いることができる。また、溶解させる電解質としては、LiPF、LiBF、LiAsF、LiI、LiClO、LiCFSO等の有機溶媒に可溶なリチウム金属塩を用いることができる。
例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの有機溶媒にLiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO等のリチウム金属塩を0.5mol/lから1.7mol/l程度の濃度で溶解させた溶液を使用することができる。
セパレータは、非水系二次電池に使用されることができるものであれば特に限定されない。セパレータは、正極と負極とを分離し電解液を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い微多孔膜を用いることができる。
本発明の蓄電装置が非水系二次電池である場合、その形状に特に限定はなく、円筒型、積層型、コイン型等、種々の形状を採用することができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極にセパレータを挟装させ電極体とし、正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後、この電極体を電解液とともに電池ケースに密閉して電池となる。
以下、実施例及び比較例によって本発明の実施形態を具体的に説明する。
図1に本実施例の蓄電装置に用いたポリマーを示す。このスターポリマーは、ベンゼン環からなるコア部1と、コア部1の環構造を構成する6個の炭素原子のうち5個と結合した5本のアーム部2とからなる。それぞれのアーム部2はポリアクリル酸骨格を有し、メチレン基を介してベンゼン環を構成する炭素原子と結合している。アーム部2が結合していない1個の炭素原子にはメチレン基を介して水酸基3が結合している。またアーム部2の末端にも水酸基3が結合している。
以下、このスターポリマーの合成方法を説明する。
先ず、メチルアクリレートを室温にて真空蒸留し、含まれている重合禁止剤を除去した。このメチルアクリレートを20.0mlと、化2式に示す母体骨格化合物としてのヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン0.225gと、2-プロパノール5.00mlと、アミン系配位子(リガンド)としてのトリス2-ジメチルアミノエチルアミン0.57gをナス型フラスコに入れ、よく撹拌した後、静置した。さらに金属ハロゲン化物(活性化剤)として純度99.9%の臭化銅(I)0.182gを加え、真空ポンプで脱気した後に密封した。
Figure 2013118230
フラスコ内の溶液を撹拌しながら50℃〜52℃に加熱し、溶液が緑色に変色したことを確認後、さらに8時間加熱撹拌した。このとき臭化銅(I)は母体骨格化合物から臭素を預かって、母体骨格化合物には炭素ラジカルが生成し、系内に存在するメチルアクリレートの重合が始まる。生長ラジカルは再び臭素と結合して、末端にC-Br結合を有する高分子となる。このC-Br結合の臭素原子は、再び臭化銅(I)へ移り、生長反応が継続するため分子量が時間とともに増大する。溶液は、初期は紫がかった灰色に変色し、微量の沈殿が生成した。
加熱終了後、溶液を室温まで冷却し、系を開いて酢酸1.0mlを加えてアミン系配位子を中和し、よく撹拌した。フラスコ内の溶液を6〜8倍容のメタノール・酢酸溶液(酢酸濃度約1重量%)に注ぎ、よく撹拌してポリマー前駆体を沈殿させた。このとき、銅イオンによって溶液は青色に着色する。
得られた沈殿を濾過により回収し、沈殿の約5倍の容積のアセトンに溶解した。この溶液をその6〜8倍容のメタノール・酢酸溶液(酢酸濃度約1重量%)に注ぎ、よく撹拌してポリマー前駆体を沈殿させた。この操作を3〜5回繰り返して沈殿を洗浄し、メタノール・酢酸溶液の着色が消色したら、ポリマー前駆体の沈殿を濾過して回収し、室温にて真空乾燥した。
理論上このポリマー前駆体は、化3式に示した構造のスターポリマーと考えられ、アーム部はポリアクリル酸メチルであり、アーム部の先端は−C−Br基となっている。このスターポリマーは、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)=35,500、PDI=1.60であり、アーム部は、それぞれ数平均分子量(Mn)が8,200であった。
Figure 2013118230
このポリマー前駆体を1H-NMR(JOEL GSX、400MHz、重水素化クロロホルム、19.7℃)にて解析した。コア部に−C−Br基が結合している場合、そのピークは4.56ppm(文献値)近傍に現れる。一方、アーム部の末端に結合している−C−Br基のピークは、4.56ppmより僅かに低い位置に現れる。したがってこの二つのピークの面積比から、アーム部の数を算出することができる。
コア部に結合している−C−Br基のピーク面積は0.05であり、アーム部の末端に結合している−C−Br基のピーク面積は0.21であったので、アーム部の本数は[0.21/(0.21+0.05)]×6=4.85と算出された。つまりアーム部の本数は平均約5本であり、化4式に示す構造を主とすることがわかった。
Figure 2013118230
次に、得られたポリマー前駆体6.0gを12.0mlのトルエンに溶解し、水酸化カリウム水溶液(KOH:9.5g、水20ml)を徐々に加え、その溶液を撹拌しながら室温で3日間放置した。静置したときにトルエン相と水相とが共に透明になれば反応終了と判断した。反応終了後、水相を分離回収し、硝酸水溶液を添加してpHを3以下とした。セルロースチューブを用い、得られた酸性水溶液を蒸留水によって3日から1週間透析した。透析後の水溶液をフリーズドライ法で乾燥し、ポリマー粉末を得た。
得られたポリマーは、アーム部のエステル基が加水分解されてカルボキシル基となっているのでアーム部はポリアクリル酸骨格となり、アーム部の先端には水酸基が結合した図1に示す構造のスターポリマーである。
<リチウムイオン二次電池用負極の作製>
上記で得られたスターポリマー粉末を蒸留水に濃度15質量%となるように溶解し、バインダ溶液を調製した。
SiO粉末(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製、平均粒径5μm)を900℃で2時間熱処理し、平均粒径5μmのSiO粉末を調製した。この熱処理によって、SiとOとの比が概ね1:1の均質な固体の一酸化ケイ素SiOであれば、固体の内部反応によりSi相とSiO相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。
得られたSiO粉末42質量部と、天然黒鉛粉末40質量部と、ケッチェンブラック3質量部と、バインダ溶液100質量部(スターポリマーとして15質量部)とを混合してスラリーを調製した。
このスラリーを、厚さ20μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、銅箔上に負極活物質層を形成した。その後、ロールプレス機により、集電体と負極活物質層を強固に密着接合させた。これを100℃で3時間真空乾燥し、負極活物質層の厚さが16μmの負極を形成した。
<付着性試験>
カッターナイフを用いて負極活物質層に1mm間隔で100個の碁盤目を刻み、セロハンテープを貼り付けて引き剥がす碁盤目付着性試験(JIS K5400-8.5)を行った。その結果、100マス全てで負極活物質層の剥離は全く認められず、本実施例のスターポリマーは銅箔への付着性に優れ、且つSiO粉末、天然黒鉛粉末、ケッチェンブラックの結着性に優れている。
<正極の作製>
正極活物質としてのLi[Mn1/3Ni1/3Co1/3]Oと、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダ樹脂としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを混合し、スラリー状の正極合材を調製した。スラリー中の各成分(固形分)の組成比は、Li[Mn1/3Ni1/3Co1/3]O:AB:PVdF=88:6:6(質量比)であった。このスラリーを集電体に塗布し、集電体上に正極合材層を積層形成した。具体的には、ドクターブレードを用いてこのスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔(集電体)の表面に塗布した。
その後、80℃で20分間乾燥し、正極合材中から有機溶媒を揮発させて除去した。乾燥後、ロールプレス機により、電極密度を調整した。これを真空乾燥炉にて120℃で6時間加熱硬化させて、集電体の上層に厚さ50μm程度の正極合材層が積層されてなる正極を得た。
<リチウムイオン二次電池の作製>
正極を30mm×25mm、負極を31mm×26mmに裁断し、ラミネートフィルムで収容した。この正極および負極の間に、セパレータとしてポリプロピレン樹脂からなる矩形状シート(40mm×40mm角、厚さ30μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに下記の電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたラミネートセルを得た。電解液にはEC(エチレンカーボネート)、MEMC(メチルエチルカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)=3:3:4(体積比)の混合溶液にLiPFを1モル/Lとなる濃度で溶解したものを用いた。正極および負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネートセルの外側に延出した。以上の工程で、単層ラミネートセルのリチウムイオン二次電池を得た。
[比較例1]
負極用バインダとしてポリアクリル酸(「H-AS」日本触媒社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてポリマー溶液を調製した。ポリマー溶液中のポリマーは、アクリル酸が100モル%の単独重合体であり、GPCによって測定されたその質量平均分子量は700,000であった。
このポリマー溶液を用い、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極を作製し、実施例と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
<評価試験>
実施例1と比較例1のリチウムイオン二次電池を用い、測定温度25℃、0.2CのCCCV充電(定電流定電圧充電)の条件下において4.2Vまで充電し、1サイクルから順に0.2C、1C、2C、3C、4C、5CのCC放電(定電流放電)で2.5Vまで放電し、各レートにおける放電容量を測定した。0.2Cレートの放電容量を図2に、0.2C放電における初回放電IRドロップを図3に示す。初回放電IRドロップは、放電開始から10秒後における負極の抵抗値をそれぞれ測定した。
図2から、実施例1のリチウムイオン二次電池は比較例1に比べて高い放電容量を示している。また図3から、実施例1のリチウムイオン二次電池は比較例1に比べて放電IRドロップが大きく低下し、導電性が大きく向上していることが明らかである。その理由として、Grotthus機構によるプロトンホッピング伝導のような現象が起こっており、リチウムイオンがアーム部のカルボキシル基を介してホッピングし、移動し易くなったことが推測される。
また実施例1と比較例1のリチウムイオン二次電池を用い、55℃、1CのCC充電(定電流定充電)の条件下において4.2Vまで充電し、1CのCC放電の条件下において2.5Vまで放電させるサイクル試験を行った。そのときの放電容量維持率を測定し、結果を図4に示す。放電容量維持率は、Nサイクル目の放電容量を初回の放電容量で除した値の百分率((Nサイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100)で求められる値である。
図4から実施例1のリチウムイオン二次電池は比較例1に比べて放電容量維持率が高く負荷特性が向上している。これは、本発明に係る第一のポリマーをバインダとして用いたことによって負極内部抵抗が約10%低減されたとともに、負極の強度が高まったためと考えられる。
図5に本実施例の蓄電装置に用いたポリマー(第一のポリマー)を示す。このスターポリマーは、ベンゼン環からなるコア部1と、環構造を構成する6個の炭素原子のうち3個と結合した3本のアーム部2とからなる。それぞれのアーム部2はポリアクリル酸骨格を有し、メチレン基を介して環構造を構成する炭素原子と結合している。アーム部2が結合していない3個の炭素原子にはメチル基4が結合している。またアーム部2の末端には水酸基3が結合している。
以下、このスターポリマーの合成方法を説明する。
先ず、メチルアクリレートを室温にて真空蒸留し、含まれている重合禁止剤を除去した。このメチルアクリレートを20.0mlと、化5式に示す母体骨格化合物としての1,3,5-トリス(ブロモメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼン0.1412gと、2-プロパノール7mlと、アミン系配位子(リガンド)としてのトリス2-ジエチルアミノエチルアミン0.57mlをナス型フラスコに入れ、よく撹拌した後、静置した。さらに金属ハロゲン化物(活性化剤)として純度99.9%の臭化銅(I)を母体骨格化合物に対して質量比で3.5倍量を加え、真空ポンプで脱気した後に密封した。
Figure 2013118230
フラスコ内の溶液を撹拌しながら50℃〜52℃に加熱し、溶液が緑色に変色したことを確認後、さらに13.5時間加熱撹拌した。このとき臭化銅(I)は母体骨格化合物から臭素を預かって、母体骨格化合物には炭素ラジカルが生成し、系内に存在するメチルアクリレートの重合が始まる。生長ラジカルは再び臭素と結合して、末端にC-Br結合を有する高分子となる。このC-Br結合の臭素原子は、再び臭化銅(I)へ移り、生長反応が継続するため、分子量が時間とともに増大する。溶液は、初期は紫がかった灰色に変色し、微量の沈殿が生成した。
加熱終了後、溶液を室温まで冷却し、系を開いて酢酸1.0mlを加えてリガンドを中和し、よく撹拌した。フラスコ内の溶液を6〜8倍容のメタノール・酢酸溶液(酢酸濃度約1重量%)に注ぎ、よく撹拌してポリマー前駆体を沈殿させた。このとき、銅イオンによって溶液は青色に着色する。
得られた沈殿を濾過により回収し、沈殿の約5倍の容積のアセトンに溶解した。この溶液をその6〜8倍容のメタノール・酢酸溶液(酢酸濃度約1重量%)に注ぎ、よく撹拌してポリマー前駆体を沈殿させた。この操作を3〜5回繰り返して沈殿を洗浄し、メタノール・酢酸溶液の着色が消色したら、ポリマー前駆体の沈殿を濾過して回収し、室温にて真空乾燥した。
このポリマー前駆体を1H-NMR(JOEL GSX、400MHz、重水素化クロロホルム、19.7℃)にて解析した。
コア部に結合しているブロモメチル基が存在している場合、そのピークは4.58ppm(文献値)近傍に現れるが、このポリマー前駆体では4.58ppm近傍にシャープなピークが認められなかった。すなわちコア部に結合していたブロモメチル基は、3個とも全てアーム部に生長したことがわかった。つまりアーム部の本数は3本であり、化6式に示す構造となっていることがわかった。
Figure 2013118230
すなわちこのポリマー前駆体のアーム部はポリアクリル酸メチルの骨格であり、アーム部の先端には臭素が結合している。このスターポリマーは、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)=23,800、重量平均分子量(Mw)=24,100であり、アーム部は、それぞれ数平均分子量(Mn)が6,300であった。
次に、得られたポリマー前駆体6.0gを12.0mlのトルエンに溶解し、水酸化カリウム水溶液(KOH:9.5g、水20ml)を徐々に加え、その溶液を撹拌しながら室温で3日間放置した。静置したときにトルエン相と水相とが分離し、トルエン相が透明になれば反応終了と判断した。反応終了後、水相を分離回収し、硝酸水溶液を添加してpHを3以下とした。セルロースチューブを用い、得られた酸性水溶液を蒸留水によって3日から1週間透析した。透析後の水溶液をフリーズドライ法で乾燥し、ポリマー粉末を得た。
得られたポリマーは、アーム部のエステル基が加水分解されてカルボキシル基となっているのでアーム部はポリアクリル酸の骨格となり、アーム部の先端には水酸基が結合した図5に示す構造のスターポリマーである。
<リチウムイオン二次電池用負極の作製>
上記で得られたスターポリマー粉末をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に濃度15質量%となるように溶解し、バインダ溶液を調製した。
SiO粉末(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製、平均粒径5μm)を900℃で2時間熱処理し、平均粒径5μmのSiO粉末を調製した。この熱処理によって、SiとOとの比が概ね1:1の均質な固体の一酸化ケイ素SiOであれば、固体の内部反応によりSi相とSiO相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。
得られたSiO粉末42質量部と、天然黒鉛粉末40質量部と、ケッチェンブラック3質量部と、バインダ溶液100質量部(バインダとして15質量部)とを混合してスラリーを調製した。
このスラリーを、厚さ20μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、銅箔上に負極活物質層を形成した。その後、ロールプレス機により、集電体と負極活物質層を強固に密着接合させた。これを100℃で3時間真空乾燥し、負極活物質層の厚さが16μmの負極を形成した。
<付着性試験>
カッターナイフを用いて負極活物質層に1mm間隔で100個の碁盤目を刻み、セロハンテープを貼り付けて引き剥がす碁盤目付着性試験(JIS K5400-8.5)を行った。その結果、100マス全てで負極活物質層の剥離は全く認められず、本実施例のスターポリマーは銅箔への付着性に優れ、且つSiO粉末、天然黒鉛粉末、ケッチェンブラックの結着性に優れている。
<正極の作製>
正極活物質としての
Li[Mn1/3Ni1/3Co1/3]O と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダ樹脂としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを混合し、スラリー状の正極合材を調製した。スラリー中の各成分(固形分)の組成比は、Li[Mn1/3Ni1/3Co1/3]O:AB:PVdF=88:6:6(質量比)であった。このスラリーを集電体に塗布し、集電体上に正極合材層を積層形成した。具体的には、ドクターブレードを用いてこのスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔(集電体)の表面に塗布した。
その後、80℃で20分間乾燥し、正極合材中から有機溶媒を揮発させて除去した。乾燥後、ロールプレス機により、電極密度を調整した。これを真空乾燥炉にて120℃で6時間加熱硬化させて、集電体の上層に厚さ50μm程度の正極合材層が積層されてなる正極を得た。
<リチウムイオン二次電池の作製>
正極を30mm×25mm、負極を31mm×26mmに裁断し、ラミネートフィルムで収容した。この正極および負極の間に、セパレータとしてポリプロピレン樹脂からなる矩形状シート(40mm×40mm角、厚さ30μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに下記の電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたラミネートセルを得た。電解液にはEC(エチレンカーボネート)、MEMC(メチルエチルカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)=3:3:4(体積比)の混合溶液にLiPFを1モル/Lとなる濃度で溶解したものを用いた。正極および負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネートセルの外側に延出した。以上の工程で、単層ラミネートセルのリチウムイオン二次電池を得た。
[比較例2]
負極用バインダとしてポリアクリル酸(「H-AS」日本触媒社製)を用いたこと以外は実施例2と同様にしてポリマー溶液を調製した。ポリマー溶液中のポリマーは、アクリル酸が100モル%の単独重合体であり、GPCによって測定されたその質量平均分子量は700,000であった。
このポリマー溶液を用い、実施例2と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極を作製し、実施例2と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
<評価試験>
実施例2と比較例2のリチウムイオン二次電池を用い、測定温度25℃、0.2CのCCCV充電(定電流定電圧充電)の条件下において4.2Vまで充電し、1サイクルから順に0.2C、1C、2C、3C、4C、5CのCC放電(定電流放電)で2.5Vまで放電し、各レートにおける放電容量を測定した。0.2Cレートの放電容量を図6に示す。
図6から実施例2のリチウムイオン二次電池は比較例2に比べて0.2C放電容量が高い。これは、本発明のスターポリマーをバインダとして用いたことによって負極内部抵抗が約10%低減されたとともに、負極の強度が高まったためと考えられる。
図7に本実施例の蓄電装置に用いたポリマー(第二のポリマー)を示す。このスターポリマーは、ベンゼン環からなるコア部1と、コア部1の環構造を構成する6個の炭素原子の全てに結合した6本のアーム部2とからなる。このスターポリマーのアーム部2はポリアクリル酸骨格を有し、メチレン基を介してベンゼン環を構成する炭素原子と結合している。それぞれのアーム部2の末端には、水酸基3が結合している。
以下、このスターポリマーの合成方法を説明する。
先ず、t-ブチルアクリレートを室温にて真空蒸留し、含まれている重合禁止剤を除去した。このt-ブチルアクリレートを20.0mlと、化2式に示した母体骨格化合物としてのヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン0.225gと、2-プロパノール5.00mlと、アミン系配位子(リガンド)としてのトリス2-ジメチルアミノエチルアミン0.57gをナス型フラスコに入れ、よく撹拌した後、静置した。さらに金属ハロゲン化物(活性化剤)として純度99.9%の臭化銅(I)0.182gを加え、真空ポンプで脱気した後に密封した。
フラスコ内の溶液を撹拌しながら50℃〜52℃に加熱し、溶液が緑色に変色したことを確認後、さらに8時間加熱撹拌した。このとき臭化銅(I)は母体骨格化合物から臭素を預かって、母体骨格化合物には炭素ラジカルが生成し、系内に存在するt-ブチルアクリレートの重合が始まる。生長ラジカルは再び臭素と結合して、末端にC-Br結合を有する高分子となる。このC-Br結合の臭素原子は、再び臭化銅(I)へ移り、生長反応が継続するため分子量が時間とともに増大する。溶液は、初期は紫がかった灰色に変色し、微量の沈殿が生成した。
加熱終了後、溶液を室温まで冷却し、系を開いて酢酸1.0mlを加えてアミン系配位子を中和し、よく撹拌した。フラスコ内の溶液を6〜8倍容のメタノール・酢酸溶液(酢酸濃度約1重量%)に注ぎ、よく撹拌してポリマー前駆体を沈殿させた。このとき、銅イオンによって溶液は青色に着色する。
得られた沈殿を濾過により回収し、沈殿の約5倍の容積のアセトンに溶解した。この溶液をその6〜8倍容のメタノール・酢酸溶液(酢酸濃度約1重量%)に注ぎ、よく撹拌してポリマー前駆体を沈殿させた。この操作を3〜5回繰り返して沈殿を洗浄し、メタノール・酢酸溶液の着色が消色したら、ポリマー前駆体の沈殿を濾過して回収し、室温にて真空乾燥した。
理論上、このポリマー前駆体は、化7式に示す構造のスターポリマーであり、アーム部はポリアクリル酸t-ブチルであり、アーム部の先端は−C−Br基となっている。このスターポリマーは、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)=7.44×10、PDI=1.29であり、アーム部は、それぞれ数平均分子量(Mn)が1.24×10であった。
Figure 2013118230
このポリマー前駆体を1H-NMR(JOEL GSX、400MHz、重水素化クロロホルム、19.7℃)にて解析した。コア部に−C−Br基が結合している場合、そのピークは4.56ppm(文献値)近傍に現れる。しかし図8に示すように、4.56ppmにはピークが認められず、チャートを拡大してもピークが認められなかったことから、このポリマー前駆体は、コア部のベンゼン環を構成する炭素原子の全てにアーム部が結合していると認められる。
次に、得られたポリマー前駆体6.0gを12.0mlのトルエンに溶解し、蟻酸30mlを徐々に加え、その溶液を撹拌しながら室温で3日間放置した。静置したときにトルエン相と水相とが共に透明になれば反応終了と判断した。反応終了後、水相を分離回収し、セルロースチューブを用い蒸留水によって3日から1週間透析した。透析後の水溶液をフリーズドライ法で乾燥し、ポリマー粉末を得た。
得られたポリマーは、アーム部のエステル基が加水分解されてカルボキシル基となっているのでアーム部はポリアクリル酸骨格となり、アーム部の先端には水酸基が結合した図7に示す構造のスターポリマーである。
<リチウムイオン二次電池用負極の作製>
上記で得られたスターポリマー粉末を蒸留水に濃度15質量%となるように溶解し、バインダ溶液を調製した。
SiO粉末(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製、平均粒径5μm)を900℃で2時間熱処理し、平均粒径5μmのSiO粉末を調製した。この熱処理によって、SiとOとの比が概ね1:1の均質な固体の一酸化ケイ素SiOであれば、固体の内部反応によりSi相とSiO相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。
得られたSiO粉末32質量部と、天然黒鉛粉末50質量部と、ケッチェンブラック3質量部と、バインダ溶液100質量部(スターポリマーとして15質量部)とを混合してスラリーを調製した。
このスラリーを、厚さ20μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、銅箔上に負極活物質層を形成した。その後、ロールプレス機により、集電体と負極活物質層を強固に密着接合させた。これを100℃で3時間真空乾燥し、負極活物質層の厚さが16μmの負極を形成した。
<付着性試験>
カッターナイフを用いて負極活物質層に1mm間隔で100個の碁盤目を刻み、セロハンテープを貼り付けて引き剥がす碁盤目付着性試験(JIS K5400-8.5)を行った。その結果、100マス全てで負極活物質層の剥離は全く認められず、本実施例のスターポリマーは銅箔への付着性に優れ、且つSiO粉末、天然黒鉛粉末、ケッチェンブラックの結着性に優れている。
<正極の作製>
正極活物質としてのLi[Mn1/3Ni1/3Co1/3]Oと、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダ樹脂としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを混合し、スラリー状の正極合材を調製した。スラリー中の各成分(固形分)の組成比は、Li[Mn1/3Ni1/3Co1/3]O:AB:PVdF=93:4:3(質量比)であった。このスラリーを集電体に塗布し、集電体上に正極合材層を積層形成した。具体的には、ドクターブレードを用いてこのスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔(集電体)の表面に塗布した。
その後、80℃で20分間乾燥し、正極合材中から有機溶媒を揮発させて除去した。乾燥後、ロールプレス機により、電極密度を調整した。これを真空乾燥炉にて120℃で6時間加熱硬化させて、集電体の上層に厚さ50μm程度の正極合材層が積層されてなる正極を得た。
<リチウムイオン二次電池の作製>
正極を30mm×25mm、負極を31mm×26mmに裁断し、ラミネートフィルムで収容した。この正極および負極の間に、セパレータとしてポリプロピレン樹脂からなる矩形状シート(40mm×40mm角、厚さ30μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに下記の電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたラミネートセルを得た。電解液にはFEC(フルオロエチレンカーボネート)、EC(エチレンカーボネート)、MEMC(メチルエチルカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)=0.4:2.6:3:4(体積比)の混合溶液にLiPFを1モル/dmとなる濃度で溶解したものを用いた。正極および負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネートセルの外側に延出した。以上の工程で、単層ラミネートセルのリチウムイオン二次電池を得た。
<評価試験>
実施例3と実施例1のリチウムイオン二次電池を用い、測定温度25℃、1CのCCCV充電(定電流定電圧充電)の条件下において4.2Vまで充電し、1/3CのCC放電の条件下において3.0Vまで放電させるサイクル試験を行った。そのときの放電容量維持率を測定し、結果を図9に示す。放電容量維持率は、Nサイクル目の放電容量を初回の放電容量で除した値の百分率((Nサイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100)で求められる値である。
図9から実施例3のリチウムイオン二次電池は実施例1に比べて放電容量維持率が高く負荷特性が向上している。これは、実施例3に係るバインダを用いたことによって負極内部抵抗が約10%低減されたとともに、負極の強度が高まったためと考えられる。その理由として、Grotthus機構によるプロトンホッピング伝導のような現象が起こっており、リチウムイオンがアーム部のカルボキシル基を介してホッピングし、移動し易くなったことが推測される。
本実施例では、実施例3と同様の図7に示したスターポリマーを、実施例3とは異なる合成方法で製造する。このスターポリマーは、ベンゼン環からなるコア部1と、コア部1の環構造を構成する6個の炭素原子の全てに結合した6本のアーム部2とからなる。このスターポリマーのアーム部2はポリアクリル酸骨格を有し、メチレン基を介してベンゼン環を構成する炭素原子と結合している。それぞれのアーム部2の末端には、水酸基3が結合している。
先ず、メチルアクリレートを室温にて真空蒸留し、含まれている重合禁止剤を除去した。このメチルアクリレートを20.0mlと、化2式に示した母体骨格化合物としてのヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン0.2gと、2-プロパノール5.00mlと、アミン系配位子としてのトリス2-ジメチルアミノエチルアミン0.6gをナス型フラスコに入れ、よく撹拌した後、静置した。さらに金属ハロゲン化物として純度95%の臭化銅(I)0.2gを加え、真空ポンプで脱気した後に密封した。
フラスコ内の溶液を撹拌しながら50℃〜52℃に加熱し、溶液が緑色に変色したことを確認後、さらに8時間加熱撹拌した。このとき臭化銅(I)は母体骨格化合物から臭素を預かって、母体骨格化合物には炭素ラジカルが生成し、系内に存在するメチルアクリレートの重合が始まる。生長ラジカルは再び臭素と結合して、末端にC-Br結合を有する高分子となる。このC-Br結合の臭素原子は、再び臭化銅(I)へ移り、生長反応が継続するため分子量が時間とともに増大する。溶液は、初期は紫がかった灰色に変色し、微量の沈殿が生成した。なお、母体骨格化合物の反応点が全て反応した際に、用いた2-プロパノールの量に対して40%の水を反応系内に添加した。
加熱終了後、溶液を室温まで冷却し、系を開いて酢酸1.0mlを加えてアミン系配位子を中和し、よく撹拌した。フラスコ内の溶液を6〜8倍容のメタノール・酢酸溶液(酢酸濃度約1重量%)に注ぎ、よく撹拌してポリマー前駆体を沈殿させた。このとき、銅イオンによって溶液は青色に着色する。
得られた沈殿を濾過により回収し、沈殿の約5倍の容積のアセトンに溶解した。この溶液をその6〜8倍容のメタノール・酢酸溶液(酢酸濃度約1重量%)に注ぎ、よく撹拌してポリマー前駆体を沈殿させた。この操作を3〜5回繰り返して沈殿を洗浄し、メタノール・酢酸溶液の着色が消色したら、ポリマー前駆体の沈殿を濾過して回収し、室温にて真空乾燥した。
理論上、このポリマー前駆体は、化3式に示した構造のスターポリマーであり、アーム部はポリアクリル酸メチルであり、アーム部の先端は−C−Br基となっている。
このポリマー前駆体を1H-NMR(JOEL GSX、400MHz、重水素化クロロホルム、19.7℃)にて解析した。コア部に−C−Br基が結合している場合、そのピークは4.56ppm(文献値)近傍に現れる。しかし図10に示すように、4.56ppmにはピークが認められず、チャートを拡大してもピークが認められなかったことから、このポリマー前駆体は、コア部のベンゼン環を構成する炭素原子の全てにアーム部が結合していると認められる。
次に、得られたポリマー前駆体6.0gを12.0mlのトルエンに溶解し、8.5mol/LのKOH水溶液を徐々に加え、その溶液を撹拌しながら室温で3日間放置した。なおKOH水溶液の添加量は、けん化反応を行うために必要な量である。静置したときにトルエン相と水相とが共に透明になれば反応終了と判断した。反応終了後、硝酸を添加してpH3に調整した。そして水相を分離回収し、セルロースチューブを用い蒸留水によって3日から1週間透析した。透析後の水溶液をフリーズドライ法で乾燥し、ポリマー粉末を得た。
得られたポリマーは、アーム部のエステル基が加水分解されてカルボキシル基となっているのでアーム部はポリアクリル酸骨格となり、アーム部の先端には水酸基が結合した図7に示した構造のスターポリマーである。
すなわち本発明のポリマーの製造方法によれば、t-ブチル基をもつ共役モノマーを用いることなく環構造を構成する炭素原子の全てからアーム部を生長させることができる。また蟻酸を用いることなく反応停止工程を行うことができ、安全性が高い。すなわち母体骨格化合物の総反応点のモル数を1としたとき0.8以下のモル比となる量で金属ハロゲン化物を用いることで、重合工程における反応速度を小さくできるため、環構造を構成する炭素原子の全てからアーム部を生長させることがさらに容易となる。また適切な時期に水添加工程を行うことで、環構造を構成する炭素原子の全てからアーム部を生長させつつ、重合工程における反応速度が高まるので、反応時間を短縮することができる。
金属ハロゲン化物として純度99.9%の臭化銅(I)0.2gを添加したこと以外は、実施例4と同様にしてポリマー前駆体を合成した。このポリマー前駆体について、実施例4と同様に1H-NMRにて解析した。コア部に−C−Br基が結合している場合、そのピークは4.56ppm(文献値)近傍に現れる。一方、アーム部の末端に結合している−C−Br基のピークは、4.56ppmより僅かに低い位置に現れる。したがってこの二つのピークの面積比から、アーム部の数を算出することができる。
コア部に結合している−C−Br基のピーク面積は0.05であり、アーム部の末端に結合している−C−Br基のピーク面積は0.21であったので、アーム部の本数は[0.21/(0.21+0.05)]×6=4.85と算出された。つまりアーム部の本数は5本であり、化4式に示した構造となっていることがわかった。
すなわち母体骨格化合物の総反応点のモル数を1としたとき臭化銅(I)のモル比が0.8より大きい場合には、6本のアーム部をもつスターポリマーを製造することは困難であった。
実施例1と同様にして、化4式に示したポリマー前駆体を調製した。得られたポリマー前駆体6.0gを12.0mlのトルエンに溶解し、水酸化カリウム水溶液(KOH:9.5g、HO:20ml)を徐々に加え、その溶液を撹拌しながら室温で3日間放置した。静置したときにトルエン相と水相とが共に透明になれば反応終了と判断した。反応終了後、水相を分離回収し、10mM硝酸銅水溶液を10ml添加した後、硝酸水溶液を添加してpHを3以下とした。セルロースチューブを用い、得られた酸性水溶液を蒸留水によって3日から1週間透析した。透析後の水溶液をフリーズドライ法で乾燥し、ポリマー粉末を得た。
得られたポリマー(第三のポリマー)は、アーム部のエステル基が加水分解されてカルボキシル基となっているのでアーム部はポリアクリル酸骨格となり、アーム部の先端には水酸基が結合した図1に示す構造をなし、銅を含むこと以外は実施例1と同様のスターポリマーである。
<FT-IR分析>
実施例1と実施例6で調製されたスターポリマーをそれぞれFT-IR分析し、それらのFT-IRスペクトルを図11に示す。図11から、実施例6のスターポリマーは1540cm−1のピークが特異的であり、このピークはCOOイオンとCu2+イオンで形成された錯体に同定される。したがって実施例6のスターポリマーには、アーム部のカルボキシル基と共に高分子錯体を形成する銅イオンが含まれている。
<ICP-MS分析>
実施例6で調製されたスターポリマーをICP-MS分析したところ、3.3ppmのCuが検出された。
<リチウムイオン二次電池用負極の作製>
実施例1と実施例6で調製されたスターポリマー粉末を蒸留水に濃度10質量%となるようにそれぞれ溶解し、バインダ溶液をそれぞれ調製した。
SiO粉末(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製、平均粒径5μm)を900℃で2時間熱処理し、平均粒径5μmのSiO粉末を調製した。この熱処理によって、SiとOとの比が概ね1:1の均質な固体の一酸化ケイ素SiOであれば、固体の内部反応によりSi相とSiO相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。
得られたSiO粉末50質量部と、天然黒鉛粉末37質量部と、ケッチェンブラック3質量部と、それぞれのバインダ溶液100質量部(スターポリマーとして10質量部)とを混合してスラリーをそれぞれ調製した。
このスラリーを、厚さ20μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いてそれぞれ塗布し、銅箔上に負極活物質層を形成した。その後、ロールプレス機により、集電体と負極活物質層を強固に密着接合させた。これを100℃で3時間真空乾燥し、負極活物質層の厚さが16μmの負極をそれぞれ形成した。
<付着性試験>
カッターナイフを用いて負極活物質層に1mm間隔で100個の碁盤目を刻み、セロハンテープを貼り付けて引き剥がす碁盤目付着性試験(JIS K5400-8.5)を行った。その結果、100マス全てで負極活物質層の剥離は全く認められず、実施例1及び実施例6のスターポリマーは銅箔への付着性に優れ、且つSiO粉末、天然黒鉛粉末、ケッチェンブラックの結着性に優れている。
<正極の作製>
正極活物質としてのLi[Mn1/3Ni1/3Co1/3]Oと、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダ樹脂としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを混合し、スラリー状の正極合材を調製した。スラリー中の各成分(固形分)の組成比は、Li[Mn1/3Ni1/3Co1/3]O:AB:PVdF=93:3:4(質量比)であった。このスラリーを集電体に塗布し、集電体上に正極合材層を積層形成した。具体的には、ドクターブレードを用いてこのスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔(集電体)の表面に塗布した。
その後、80℃で20分間乾燥し、正極合材中から有機溶媒を揮発させて除去した。乾燥後、ロールプレス機により、電極密度を調整した。これを真空乾燥炉にて120℃で6時間加熱硬化させて、集電体の上層に厚さ50μm程度の正極合材層が積層されてなる正極を得た。
<リチウムイオン二次電池の作製>
正極を30mm×25mm、負極を31mm×26mmに裁断し、ラミネートフィルムで収容した。この正極および負極の間に、セパレータとしてポリプロピレン樹脂からなる矩形状シート(40mm×40mm角、厚さ30μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに下記の電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたラミネートセルを得た。電解液にはEC(エチレンカーボネート)、MEC(メチルエチルカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)=3:3:4(体積比)の混合溶液にLiPFを1モル/Lとなる濃度で溶解したものを用いた。正極及び負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネートセルの外側に延出した。以上の工程で、単層ラミネートセルのリチウムイオン二次電池を得た。
実施例1のスターポリマーを用いた負極を有するリチウムイオン二次電池は同じ物を2個作製し、実施例6のスターポリマーを用いた負極を有するリチウムイオン二次電池は同じ物を4個作製した。
<評価試験>
実施例1と実施例6のリチウムイオン二次電池を用い、測定温度25℃、0.2CのCCCV充電(定電流定電圧充電)の条件下において4.2Vで充電し、3CのCC放電(定電流放電)開始して10秒後の抵抗値(SOC20%放電)をそれぞれ測定した。結果を図12に示す。図12から実施例6のリチウムイオン二次電池は実施例1のリチウムイオン二次電池に比べて抵抗値が低いことがわかり、これは銅イオンを含んだことによる効果であることが明らかである。
図13に本実施例に係るポリマー(第四のポリマー)の代表的な構造式を示す。このスターポリマーは、ベンゼン環からなるコア部1と、コア部1の環構造を構成する6個の炭素原子の全てと結合した6本のアーム部2とからなる。このスターポリマーのアーム部2はポリアクリル酸ブロック20とポリスチレンブロック21とを有し、ポリアクリル酸ブロック20の一端がメチレン基を介してコア部1を構成する炭素原子と結合している。またポリアクリル酸ブロック20の他端にはポリスチレンブロック21の一端が結合し、ポリスチレンブロック21の他端には水酸基3が結合している。
なおコア部1にアーム部2が結合していない炭素原子をもつものもあり、その炭素原子には、メチレン基を介して水酸基3が結合している。
以下、このスターポリマーの合成方法を説明する。先ず、メチルアクリレートを室温にて真空蒸留し、含まれている重合禁止剤を除去した。このメチルアクリレートを160mlと、化2式に示した母体骨格化合物としてのヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン0.5gと、2-プロパノール20mlと、アミン系配位子(リガンド)としてのトリス2-ジメチルアミノエチルアミン2gをナス型フラスコに入れ、よく撹拌した後、静置した。
さらに金属ハロゲン化物(活性化剤)として臭化銅(I)0.74gを加えた後、窒素ガス雰囲気下においてフラスコ内の溶液を撹拌しながら50℃〜52℃に加熱し、溶液が緑色に変色したことを確認後、さらに6時間加熱撹拌した。なお反応雰囲気は、窒素ガス雰囲気のみならずアルゴンガス雰囲気、減圧雰囲気など非酸化性雰囲気であればよい。このとき臭化銅(I)は母体骨格化合物から臭素を預かって、母体骨格化合物には炭素ラジカルが生成し、系内に存在するメチルアクリレートの重合が始まる。生長ラジカルは再び臭素と結合して、末端にC-Br結合を有する高分子となる。このC-Br結合の臭素原子は、再び臭化銅(I)へ移り、生長反応が継続するため分子量が時間とともに増大する。溶液は、初期は紫がかった灰色に変色し、微量の沈殿が生成した。
加熱終了後、溶液を室温まで冷却し、系を開いて酢酸10mlを加えてアミン系配位子を中和し、よく撹拌した。フラスコ内の溶液を6〜8倍容のメタノール・酢酸溶液(酢酸濃度約1重量%)に注ぎ、よく撹拌してポリマー先駆体を沈殿させた。このとき、銅イオンによって溶液は青色に着色する。
得られた沈殿を濾過により回収し、沈殿の約5倍の容積のアセトンに溶解した。この溶液をその6〜8倍容のメタノール・酢酸溶液(酢酸濃度約1重量%)に注ぎ、よく撹拌してポリマー先駆体を沈殿させた。この操作を3〜5回繰り返して沈殿を洗浄し、メタノール・酢酸溶液の着色が消色したら、ポリマー先駆体の沈殿を濾過して回収し、室温にて真空乾燥した。
理論上、このポリマー先駆体は、化3式に示した構造のスターポリマーであり、アーム部はポリアクリル酸メチルであり、アーム部の末端は−C−Br基となっている。このポリマー先駆体は、ポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)=71,300、PDI=1.60であった。
このポリマー先駆体を1H-NMR(JOEL GSX、400MHz、重水素化クロロホルム、19.7℃)にて解析した。コア部に−C−Br基が結合している場合、そのピークは4.56ppm(文献値)近傍に現れる。一方、アーム部の末端に結合している−C−Br基のピークは、4.56ppmより僅かに低い位置に現れる。したがってこの二つのピークの面積比から、アーム部の数を算出することができる。
コア部に結合している−C−Br基のピーク面積は1.00であり、アーム部の末端に結合している−C−Br基のピーク面積は9.56であったので、アーム部の本数は[9.56/(9.56+1.00)]×6=5.43と算出された。つまり一つのコア部から延びるアーム部の本数は平均5.43本であり、一つのコア部から延びるアーム部の本数が6本の、化3式に示した構造のスターポリマーが必ず含まれていることがわかった。アーム部は、それぞれ数平均分子量(Mn)が79,900であった。
しかし化4式に示したように、コア部にアーム部が結合していない炭素原子をもつものもあり、その炭素原子にはメチレン基を介して臭素基が結合している。
次に、キシレン37gと2-プロパノール3.6gと、上記のポリマー先駆体20gと、スチレンモノマー30gと、アミン系配位子としてのトリス2-ジメチルアミノエチルアミン0.25gと、をナス型フラスコに入れ、よく撹拌した後、静置した。さらに臭化銅(I)0.14gを加えた後、減圧雰囲気下においてフラスコ内の溶液を撹拌しながら110℃に加熱し、溶液が緑色に変色したことを確認後、さらに2時間加熱撹拌した。なお反応雰囲気は、減圧雰囲気のみならず、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気など非酸化性雰囲気であればよい。
このとき臭化銅(I)はアーム部の末端から臭素を預かって、アーム部には炭素ラジカルが生成し、系内に存在するスチレンモノマーの重合が始まる。生長ラジカルは再び臭素と結合して、末端にC-Br結合を有する高分子となる。このC-Br結合の臭素原子は、再び臭化銅(I)へ移り、生長反応が継続するため分子量が時間とともに増大する。
加熱終了後、溶液を室温まで冷却し、系を開いて酢酸10mlを加えてアミン系配位子を中和し、よく撹拌した。フラスコ内の溶液を6〜8倍容のメタノール・酢酸溶液(酢酸濃度約1重量%)に注ぎ、よく撹拌してポリマー前駆体を沈殿させた。このとき、銅イオンによって溶液は青色に着色する。
得られた沈殿を濾過により回収し、沈殿の約5倍の容積のアセトンに溶解した。この溶液をその6〜8倍容のメタノール・酢酸溶液(酢酸濃度約1重量%)に注ぎ、よく撹拌してポリマー前駆体を沈殿させた。この操作を3〜5回繰り返して沈殿を洗浄し、メタノール・酢酸溶液の着色が消色したら、ポリマー前駆体の沈殿を濾過して回収し、室温にて真空乾燥した。
このポリマー前駆体を1H-NMR(JOEL GSX、400MHz、重水素化クロロホルム、19.7℃)にて解析したところ、カルボキシメチル基に同定されるピークと、ポリスチレンに同定されるピークとが観察された。したがって理論上、このポリマー前駆体は化8式に示す構造を主とするスターポリマーであり、アーム部はポリアクリル酸メチルブロックとポリスチレンブロックとからなり、アーム部の末端は−C−Br基となっている。
Figure 2013118230
なおベンゼン環にメチレン基を介して結合していた臭素基も反応に寄与し、ベンゼン環にメチレン基を介してポリスチレンブロックが形成されている可能性もある。
このポリマー前駆体は、ポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)=1,240,000、PDI=1.95であり、アーム部は、それぞれ数平均分子量(Mn)が526,000であった。また各アーム部におけるポリアクリル酸メチルブロックの数平均分子量(Mn)は79,900であり、ポリスチレンブロックの数平均分子量(Mn)は22,500であった。NMRから求めたこのポリマー前駆体中のポリスチレンは18.6mol%であった。
次に、得られたポリマー前駆体25.0gを100mlのベンゼンに溶解し、水酸化カリウム水溶液(KOH:78.2g、水150ml)を徐々に加え、その溶液を撹拌しながら室温で3日間放置した。静置したときにベンゼン相と水相とが共に透明になれば反応終了と判断した。反応終了後、水相を分離回収し、硝酸水溶液を添加してpHを3以下とした。セルロースチューブを用い、得られた酸性水溶液を蒸留水によって3日から1週間透析した。透析後の水溶液をフリーズドライ法で乾燥し、ポリマー粉末を得た。
得られたポリマーは、ポリアクリル酸メチルブロックのエステル基が加水分解されてカルボキシル基となっている。したがってアーム部はポリアクリル酸ブロックとポリスチレンブロックとからなり、アーム部の末端には水酸基が結合した図13に示す構造のスターポリマーを多く含む。
<試験例>
実施例1及び実施例7のスターポリマーを、濃度50質量%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)又は蒸留水と混合し、溶解性を目視で判定した。結果を表1に示す。なお完全に溶解して透明な溶液であったものを○とし、白濁又は沈殿が生じたものを×と評価した。
Figure 2013118230
表より実施例7のスターポリマーはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)への溶解性に優れ、これはアーム部にポリスチレンブロックを含むことに起因することが明らかである。
<リチウムイオン二次電池用負極の作製>
実施例7のスターポリマー粉末を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)又は蒸留水に濃度10質量%となるように溶解し、バインダ溶液を調製した。
SiO粉末(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製、平均粒径5μm)を900℃で2時間熱処理し、平均粒径5μmのSiO粉末を調製した。この熱処理によって、SiとOとの比が概ね1:1の均質な固体の一酸化ケイ素SiOであれば、固体の内部反応によりSi相とSiO相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。
得られたSiO粉末50質量部と、天然黒鉛粉末37質量部と、ケッチェンブラック3質量部と、バインダ溶液100質量部(スターポリマーとして10質量部)とを混合してスラリーを調製した。
このスラリーを、厚さ20μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、銅箔上に負極活物質層を形成した。その後、ロールプレス機により、集電体と負極活物質層を強固に密着接合させた。これを100℃で3時間真空乾燥し、負極活物質層の厚さが16μmの負極を形成した。
<付着性試験>
カッターナイフを用いて負極活物質層に1mm間隔で100個の碁盤目を刻み、セロハンテープを貼り付けて引き剥がす碁盤目付着性試験(JIS K5400-8.5)を行った。その結果、100マス全てで負極活物質層の剥離は全く認められず、実施例7のスターポリマーからなるバインダは銅箔への付着性に優れ、且つSiO粉末、天然黒鉛粉末、ケッチェンブラックの結着性に優れている。
<正極の作製>
正極活物質としてのLi[Mn1/3Ni1/3Co1/3]Oと、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダ樹脂としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを混合し、スラリー状の正極合材を調製した。スラリー中の各成分(固形分)の組成比は、Li[Mn1/3Ni1/3Co1/3]O:AB:PVdF=93:3:4(質量比)であった。このスラリーを集電体に塗布し、集電体上に正極合材層を積層形成した。具体的には、ドクターブレードを用いてこのスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔(集電体)の表面に塗布した。
その後、80℃で20分間乾燥し、正極合材中から有機溶媒を揮発させて除去した。乾燥後、ロールプレス機により、電極密度を調整した。これを真空乾燥炉にて120℃で6時間加熱硬化させて、集電体の上層に厚さ50μm程度の正極合材層が積層されてなる正極を得た。
<リチウムイオン二次電池の作製>
正極を30mm×25mm、負極を31mm×26mmに裁断し、ラミネートフィルムで収容した。この正極および負極の間に、セパレータとしてポリプロピレン樹脂からなる矩形状シート(40mm×40mm角、厚さ30μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに下記の電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたラミネートセルを得た。電解液にはEC(エチレンカーボネート)、MEC(メチルエチルカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)=3:3:4(体積比)の混合溶液にLiPFを1モル/Lとなる濃度で溶解したものを用いた。正極及び負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネートセルの外側に延出した。以上の工程で、単層ラミネートセルのリチウムイオン二次電池を得た。リチウムイオン二次電池は、同じ物を3個作製した。
<評価試験>
実施例7のリチウムイオン二次電池を用い、測定温度25℃、0.2CのCCCV充電(定電流定電圧充電)の条件下において4.2Vで充電し、1/3CのCC放電容量を測定した。結果を図14に示す。図14から実施例7のスターポリマーを負極用バインダとして用いたリチウムイオン電池は、電池として機能することがわかる。
本発明の蓄電装置は、二次電池、電気二重層コンデンサ、リチウムイオンキャパシタなどに利用できる。また電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用、パソコン、携帯通信機器、家電製品、オフィス機器、産業機器などに利用される非水系二次電池として有用であり、特に、大容量、大出力が必要な電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用に最適に用いることができる。
また本発明の製造方法によって製造されるポリマーは、蓄電装置の電極用バインダ、塗料、接着剤、などに用いることができる。
1:コア部 2:アーム部 3:水酸基 4:メチル基
20:ポリアクリル酸ブロック 21:ポリスチレンブロック

Claims (23)

  1. バインダを含む電極をもつ蓄電装置であって、
    該バインダは、
    コア部と、該コア部から伸びるポリマー鎖からなるアーム部とを有し、該コア部は四員環以上の環構造を有し、該アーム部はカルボキシル基を有する酸モノマーの重合体からなり、該アーム部は該コア部の前記環構造を構成する3個以上の炭素原子からそれぞれ伸び、それぞれの該アーム部の一端は該コア部の前記環構造を構成する該炭素原子に単結合あるいはエーテル基、エステル基、カルボニル基、アルキレン基又はこれらを組み合わせた二価の基を介して結合しているポリマーを含むことを特徴とする蓄電装置。
  2. 前記ポリマーの前記アーム部は前記コア部の前記環構造を構成する3個の炭素原子からそれぞれ伸びている請求項1に記載の蓄電装置。
  3. 前記ポリマーの前記アーム部は前記コア部の前記環構造を構成する全ての炭素原子からそれぞれ伸びている請求項1に記載の蓄電装置。
  4. 前記ポリマーの前記環構造はベンゼン環を含む請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電装置。
  5. 前記ポリマーの少なくとも1本の前記アーム部はポリアクリル酸骨格を含む請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電装置。
  6. 少なくとも1本の前記アーム部の数平均分子量(Mn)は1,000〜100,000の範囲にある請求項5に記載の蓄電装置。
  7. 前記アーム部のカルボキシル基と共に高分子錯体を形成する遷移金属イオンを含むポリマーを含む請求項1〜6のいずれかに記載の蓄電装置。
  8. 前記遷移金属イオンは銅イオンである請求項7に記載の蓄電装置。
  9. 前記ポリマーはFT-IRスペクトルにおいて1540cm−1付近にピークをもつ請求項7に記載の蓄電装置。
  10. 前記アーム部はカルボキシル基を有する酸モノマーの重合体とスチレンの重合体とからなり、該スチレンの重合体が少なくとも1本の前記アーム部の少なくとも一部に含まれている請求項1〜6のいずれかに記載の蓄電装置。
  11. 前記スチレンの重合体は前記アーム部のそれぞれの末端側に形成されている請求項10に記載の蓄電装置。
  12. 前記蓄電装置は活物質層をもつ電極を有する非水系二次電池であって、該活物質層には請求項1〜11のいずれかに記載の前記バインダが含まれていることを特徴とする非水系二次電池。
  13. 前記活物質層は負極活物質層であり、前記電極は負極である請求項12に記載の非水系二次電池。
  14. 前記活物質層には、SiO(0.3≦x≦1.6)で表されるケイ素酸化物を含む請求項13に記載の非水系二次電池。
  15. 前記負極にはリチウムがプリドーピングされている請求項13又は請求項14に記載の非水系二次電池。
  16. コア部と、該コア部から伸びるポリマー鎖からなるアーム部とを有し、該コア部は四員環以上の環構造を有し、該アーム部はカルボキシル基を有する酸モノマーの重合体からなり、該アーム部は該コア部の該環構造を構成する全ての炭素原子からそれぞれ伸び、それぞれの該アーム部の一端は該コア部の該環構造を構成する該炭素原子に単結合あるいはエーテル基、エステル基、カルボニル基、アルキレン基又はこれらを組み合わせた二価の基を介して結合しているポリマーの製造方法であって、
    t-ブチル基をもたずラジカル発生可能な共役モノマーと、四環以上の環構造と該環構造を構成する炭素原子の全てにアルキル基を介して結合したハロゲン基とからなる母体骨格化合物と、アミン系配位子と、加熱によって活性ハロゲンを生成する金属ハロゲン化物と、を溶媒に溶解させ加熱することでリビングラジカル重合する重合工程と、
    該重合工程で得られた反応液に酸とアルコールを加えて該アミン系配位子を中和するとともに沈殿物を析出させる沈殿工程と、
    該沈殿物を洗浄及び濾過し乾燥してポリマー前駆体を得る濾過工程と、
    該ポリマー前駆体を有機溶媒に溶解しアルカリ金属水酸化物を加えて加水分解する反応停止工程と、
    該反応停止工程で得られた混合物の水相を中和し洗浄した後に乾燥する精製工程と、からなり、
    前記重合工程では、前記母体骨格化合物の総反応点のモル数を1としたとき0.8以下のモル比となる量で前記金属ハロゲン化物が添加されることを特徴とするポリマーの製造方法。
  17. 前記重合工程における加熱中に反応系に水を添加する水添加工程を行う請求項16に記載のポリマーの製造方法。
  18. 前記共役モノマーはメチルアクリレートである請求項16又は請求項17に記載のポリマーの製造方法。
  19. 前記母体骨格化合物はヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼンである請求項16〜18のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
  20. 前記アミン系配位子はトリス2-ジメチルアミノエチルアミンである請求項16〜19のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
  21. 前記金属ハロゲン化物は臭化銅(I)である請求項16〜20のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
  22. 前記金属ハロゲン化物の添加量は、前記アミン系配位子のモル数を1としたときモル比で1以上である請求項16〜21のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
  23. 前記金属ハロゲン化物の添加量は、前記母体骨格化合物の総反応点のモル数を1としたときモル比で0.3以上0.6以下である請求項16〜22のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
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