JPWO2013111559A1 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、膜厚10〜50μmを有する光学フィルムの製造方法であって、フィルム巻取り工程前のフィルム搬送ラインに、搬送フィルムFの幅手方向の両端部で、それぞれ上側に位置する一対のスリッティング装置11,12が備えられ、第1スリッティング装置11および第2スリッティング装置12同士が、フィルム長手方向に1〜20mの間隔Dをあけて互い違い状に配置されていることを特徴とする方法に関する。
Description
本発明は、例えば液晶表示装置(LCD)に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルム等にも利用することができる光学フィルムの製造方法に関するものである。
近年の液晶表示パネルの薄型化に伴い、その部材である光学フィルムの薄膜化も求められている。これに伴い、薄膜フィルムの安定搬送技術の開発が進められてきた。
また近年では、液晶表示パネルを用いた液晶テレビのサイズの多角化に伴い、光学フィルムも様々な幅の光学フィルムが求められている。一般に、光学フィルムの製造においては、搬送フィルムの巻取り工程前のフィルム搬送ラインに、搬送フィルムの幅手方向の両端部に位置する一対のスリッティング装置が備えられていて、一対のスリッティング装置により搬送フィルムの両端部がそれぞれ切断除去されることにより、所定幅を有する光学フィルムが製造される。
さらに近年では、携帯電話のスマートフォンやパソコンのタブレット端末(スレートPC)にも液晶表示パネルが使われており、その部材として薄膜で様々な幅に対応した光学フィルムが求められている。
特に、タブレット端末(スレートPC)などは、これまでの液晶テレビとは違い、画面を目に近づけて見ることが多く、その液晶表示パネルには、これまで目立たなかったような光ムラが目立つようになってきており、高品質な光学フィルムが必要となっている。
この光ムラの発生の原因を調査したところ、搬送フィルムのスリッティング時にフィルムに小さなシワが入っており、このシワが原因でフィルムに微小なキズが発生していることが分かった。そして、フィルムの破断には至らない場合でも、シワが一度でも発生すると、幅変更後にもシワが弱く残留して、搬送によるスリキズが発生し、これまでは目立たなかったような光ムラの発生の原因となっていることが分かった。
一方で、液晶表示パネルのサイズの多様化に伴い、その部材としての光学フィルムも狭幅フィルムから広幅フィルムまでを一つの工場で生産することが求められており、また薄膜フィルムの安定搬送技術とともに、薄膜フィルムの切断の際の幅変更を安定に行う技術の開発も求められてきている。
特に、薄膜フィルムの切断の際の幅変更においては、フィルムの端部幅調整を行うスリッター装置の安定化が重要となっている。
光学フィルムの製造において、いわゆるオンラインで製品幅を変更する際、スリッターが内側方向、もしくは外側方向に移動する。広幅フィルムから、狭幅フィルムに切り替える際には、スリッターが内側方向へ移動し、それに伴い、内側方向に応力が発生し、搬送フィルム中央部でシワが発生し、シワが強くなると折れ返ってフィルムが破断してしまうという問題があった。
下記の特許文献1には、セルロースエステルフィルム、およびその製造装置が開示され、互いに対向する一対のスリッティング装置により搬送フィルム(搬送ウェブ)の幅手方向の両端部が同時に切断することが記載されている。また、下記の特許文献2には、フィルム、紙、金属箔等の可撓性を有する広幅の帯状物(ウェブ)を走行させながら、この広幅ウェブを複数個の幅の狭いウェブに裁断する裁断機において発生する耳を自動的に処理する裁断耳自動処理装置が開示され、ウェブのスリット幅の変更に関しては、ウェブの幅手方向に1列に配置された多数のスリッティング刃を、ウェブの搬送方向に対し直交方向に移動させる方法が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1および2に記載の方法では、薄膜のフィルム(ウェブ)の幅変更、破断強度の低いフィルムの幅変更時には、スリッターの移動により発生する内側方向への応力によって、フィルムが破断する危険性が依然として残っているという問題があった。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、近年の光学フィルムの光のムラの発生原因を究明し、光ムラの発生がない高品質な光学フィルムの製造方法を提供すること、および薄膜のフィルム(ウェブ)の幅変更、破断強度の低いフィルムの幅変更時にもフィルムの破断の危険性がほとんどなく、光ムラの発生がない高品質な光学フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明の一局面は、膜厚10〜50μmを有する光学フィルムの製造方法であって、フィルム巻取り工程前のフィルム搬送ラインに、搬送フィルムの幅手方向の両端部に位置する一対のスリッティング装置が備えられ、一方の端部に設けられる第1スリッティング装置および他方の端部に設けられる第2スリッティング装置同士が、フィルム長手方向に1〜20mの間隔をあけて互い違い状に配置されていることを特徴としている。
上記構成によれば、第1スリッティング装置および第2スリッティング装置同士が、フィルム長手方向に所定間隔をあけて互い違い状に配置されることにより、搬送フィルムの幅手方向両端部のスリット時にフィルムにかかる応力が、それぞれのスリッティング装置の反対サイドに逃げることが可能となるので、小さなシワの発生がなくなり、それによって擦りキズの発生もなくなるために、光ムラの発生のない高品質の光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
この明細書において、前方とはフィルムの搬送方向の下流方向をいう。
図1は、本実施形態の光学フィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置の実施形態を示す概略フローシートである。図2は、図1の装置におけるスリッティング装置部分の要部拡大斜視図である。なお、図中において、各符号は、1:ステンレス鋼製の回転駆動エンドレスベルト支持体、2:流延ダイ、3:剥離ロール、4:第1乾燥ゾーン、5:テンター、6:第2乾燥ゾーン、10:ウェブ、11:第1スリッティング装置、12:第2スリッティング装置、13:第1引取りロール、14:第2引取りロール、17:巻取り機、F:セルローストリアセテートフィルム(光学フィルム)を示す。
溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法は、ドープ調製工程(溶解工程)、ドープ流延工程、ウェブ剥離工程、ウェブ第1乾燥工程、ウェブ延伸工程、ウェブ第2乾燥工程、フィルム幅手方向両端部の切断工程、およびフィルム巻取り工程を具備するものである。
図1を参照すると、図示しない溶解釜で例えばセルロースエステル等の樹脂を、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒に溶解し、これに可塑剤や紫外線吸収剤等の添加剤を添加して樹脂溶液(ドープ)を調製する(ドープ調製工程)。ついで、ドープを流延ダイ(2)に送液し、無限に移送する例えば回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体(1)上の流延位置に、流延ダイ(2)からドープを流延し、これにより形成されたウェブ(10)を、エンドレスベルト支持体(1)上に接触させる(ドープ流延工程)。
エンドレスベルト支持体(1)上でウェブ(10)が剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させた後に、ウェブ(10)を剥離ロール(3)によって剥離する(ウェブ剥離工程)。
ついで、剥離後のウェブ(10)を第1乾燥ゾーン(4)に導入する。第1乾燥ゾーン(4)内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール(7)によってウェブ(10)が蛇行せられ、その間にウェブ(10)は温風によって乾燥される(ウェブ第1乾燥工程)。乾燥後のウェブを、延伸工程のテンター(5)に導入して、所定幅に延伸するとともに、乾燥する(ウェブ延伸工程)。延伸後のフィルム(ウェブ)(10)は、さらに第2乾燥ゾーン(6)に導入し、第2乾燥ゾーン(6)内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール(8)によってウェブ(10)が蛇行せられ、その間にウェブ(10)は温風によって乾燥される(ウェブ第2乾燥工程)。
第2乾燥ゾーン(6)による乾燥後に、搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部を、フィルム幅手方向の両端部に位置する一対のスリッティング装置(11)(12)により、例えば10〜50mmの幅でスリットして、断裁切除し、製品幅となるようにベースフィルムを形成する(フィルム幅手方向両端部の切断工程)。その後、ベースフィルムの幅手方向の端部に、上下一対のエンボスロール(15)(16)によりナーリング加工を施してエンボス部を形成し、ロール状の光学フィルム(F)を巻取り機(17)によって巻き取る(フィルム巻取り工程)。
図2に示すように、本実施形態による光学フィルムの製造方法は、膜厚10〜50μmを有する光学フィルムの製造方法であって、フィルム巻取り工程前のフィルム搬送ラインに、搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部で、それぞれフィルムの上側に位置する一対のスリッティング装置(11)(12)が備えられ、第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士が、フィルム長手方向に1〜20mの間隔(D)をあけて互い違い状に配置されていることを特徴とするものである。
なお、一対のスリッティング装置(11)(12)によりスリットされた搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のフィルム耳切り部(20)は、一対ずつの引取りロール(13)(14)によってそれぞれ下方に引き取られて除去され、光学フィルムの製造原料として再使用される。
本実施形態の光学フィルムの製造方法によれば、第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士が、フィルム長手方向に所定間隔(D)をあけて互い違い状に配置されることにより、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット時にフィルム(F)にかかる応力が、それぞれのスリッティング装置(11)(12)の反対サイドに逃げることが可能となるので、小さなシワの発生がなくなり、それによって擦りキズの発生もなくなるために、光ムラの発生のない高品質の光学フィルム(F)を製造することができるものである。
そして、本実施形態による光学フィルムの製造方法では、相互に互い違い状に配置された両スリッティング装置(11)(12)が、それぞれフィルム幅手方向に移動可能となされており、両スリッティング装置(11)(12)の移動により搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅が変更されるようになされている。なお、本実施形態の製造方法に用いられる製造装置としては、前記スリッティング装置が配置されたものであれば、その他の構成は特に限定はされない。
本実施形態によれば、このように第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士が、フィルム長手方向に所定間隔をあけて互い違い状に配置されることにより、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット時にフィルム(F)にかかる応力が、それぞれのスリッティング装置(11)(12)の反対サイドに逃げることが可能となるので、フィルム(F)がキズの発生により破断することがなくなるものである。そして、この傾向は、薄膜フィルムで特に顕著に表れる現象であることが判明し、薄膜のフィルム(ウェブ)の幅変更、破断強度の低いフィルム(F)の幅変更時にもフィルム(F)の破断の危険性がほとんどなく、光ムラの発生がない高品質な光学フィルム(F)を製造することができるものである。
本実施形態による光学フィルムの製造方法においては、相互に互い違い状に配置された両スリッティング装置(11)(12)の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅の変更量、換言すれば、スリットされるフィルム耳切り部(20)の幅変更量が、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部の片側で、30〜300mmとなされていることが好ましい。
このように、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅の変更量、換言すれば、スリットされるフィルム耳切り部(20)の幅変更量が、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部の片側で、30〜300mmの範囲であれば、スリット時にフィルムにかかる応力が、フィルムの長手方向に互い違い状に配置されたスリッティング装置(11)(12)のそれぞれの反対サイドに逃げることが可能となるので、小さなシワの発生がなくなり、それによって擦りキズの発生もなくなるために、光ムラの発生のない高品質の光学フィルムを製造することができるという利点がある。
本実施形態による光学フィルムの製造方法においては、両スリッティング装置(11)(12)の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度が、スリッティング装置(11)(12)の片側で10〜100mm/minとなされていることが好ましい。
このように、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度が、スリッティング装置(11)(12)の片側で10〜100mm/minの範囲であれば、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット時にフィルムにかかる応力が、フィルムの長手方向に互い違い状に配置されたスリッティング装置(11)(12)のそれぞれの反対サイドに逃げることが可能となるので、小さなシワの発生がなくなり、それによって擦りキズの発生もなくなるために、光ムラの発生のない高品質の光学フィルムを製造することができるという利点がある。
本実施形態による光学フィルムの製造方法においては、搬送フィルム(F)の幅が、1500〜2500mmであることが好ましい。これにより、光学フィルム(F)の広幅化の要求にも対応することができるという利点がある。
本実施形態による光学フィルムの製造方法においては、搬送フィルム(F)の走行速度が、80〜200m/minであることが好ましい。これにより、光学フィルム(F)の製膜速度の高速化にも対応することができるという利点がある。
本実施形態による光学フィルムの製造方法は、例えば溶液流延製膜法により実施されるものであるが、以下、これをさらに詳しく説明する。
本実施形態による光学フィルムの製造方法においては、フィルム材料として、種々の樹脂を用いることができる。
本実施形態の方法において、好ましく用いられる樹脂としては、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のアシル基の置換度が1.8〜2.8のセルロースエステル系樹脂、またセルロースメチルエーテル、セルロースエチルエーテル、セルロースプロピルエーテル等のアルキル基置換度2.0〜2.8のセルロースエーテル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、またアルキレンジカルボン酸とジアミンとの重合物のポリアミド樹脂、またアルキレンジカルボン酸とジオールとの重合物、アルキレンジオールとジカルボン酸との重合物、シクロヘキサンジカルボン酸とジオールとの重合物、シクロヘキサンジオールとジカルボン酸との重合物、芳香族ジカルボン酸とジオールとの重合物等のポリエステル樹脂、またポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル樹脂、またポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、アルキレンジイソシアナートとアルキレンジオールの線状重合物等のポリウレタン樹脂等を挙げることができ、これらから選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。
中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。また、相溶性のあるポリマーを2種類以上ブレンドして後で述べるドープ溶解を行なっても良いが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
本実施形態において好ましく用いられるその他の樹脂としては、エチレン性不飽和単量体単位を有する単独重合体または共重合体を挙げることができる。より好ましくは、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸アルキルの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸アルキルエステル共重合体等のアクリル酸またはメタクリル酸エステルの単独重合体または共重合体が挙げられる。さらにアクリル酸またはメタクリル酸のエステルは、透明性、相溶性に優れるので、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル単位を有する単独重合体または共重合体、特に、アクリル酸またはメタクリル酸メチル単位を有する単独重合体または共重合体が好ましい。具体的にはポリメタクリル酸メチルが好ましい。ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸シクロヘキサンのようなアクリル酸またはメタクリル酸の脂環式アルキルエステルは、耐熱性が高く、吸湿性が低い、複屈折が低い等の利点を有しているものが、好ましい。
以下、セルロースエステルを例に挙げて、本実施形態を説明する。
本実施形態において、セルロースエステル及び有機溶剤を含有するセルロースエステル溶液をドープといい、これをもって溶液流延製膜し、セルロースエステルフィルムを形成せしめるものである。
セルロースエステルは、セルロース由来の水酸基がアシル基などで置換されたセルロースエステルである。例えば、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどのセルロースアシレートや、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートなどが挙げられる。中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートが好ましい。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他の置換基が含まれていてもよい。
セルローストリアセテートの例としては、アセチル基の置換度が2.0以上3.0以下であることが好ましい。置換度をこの範囲にすることで、良好な成形性が得られ、かつ所望の面内リタデーション(Ro)、及び厚み方向のリタデーション(Rt)を得ることができるのである。アセチル基の置換度が、この範囲より低いと、位相差フィルムとしての耐湿熱性、特に湿熱下での寸法安定性に劣る場合があり、置換度が大きすぎると、必要なリタデーション特性が発現しなくなる場合がある。
本実施形態に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。また、それらから得られたセルロースエステルは、それぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本実施形態において、セルロースエステルの数平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。さらに70000〜200000が好ましい。
セルロースエステルの溶媒としては、セルロースエステルを溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、また単独で溶解できない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより、溶解できるものであれば使用することができる。一般的には、良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、かつ混合溶媒中には貧溶媒を4〜30重量%含有するものが好ましく用いられる。
この他、使用できる良溶媒としては、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(すなわち、良溶媒)として挙げられる。酢酸メチルを用いると、得られるフィルムのカールが少なくなるため特に好ましい。
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができ、これらの貧溶媒は、単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本実施形態において、セルロースエステルには、種々の添加剤を配合することができる。
本実施形態では、湿熱下での寸法安定性向上のために、いわゆる可塑剤を配合することが好ましい。可塑剤に湿熱下での寸法安定性改良効果があることは、これまで知られていなかった。可塑剤としては、従来公知のセルロースエステル用の可塑剤が好ましく使用できる。特に相溶性に優れたものが好ましく、例えばリン酸エステルやカルボン酸エステルが好ましい。リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができ、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。分子量の大きい可塑剤は、押し出し成形の際の揮発が抑制でき好ましい。これらの例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどのグリコールと二塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのオキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリバレロラクトンなどのラクトンからなる脂肪族ポリエステル類、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー類などが挙げられる。上記可塑剤は、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
上述した可塑剤の含有量は、セルロースエステルに対して1〜30重量%含有させることが好ましい。可塑剤をこの範囲含有させることで、セルロースエステルフィルムの湿熱下での寸法安定性を向上することができる。
本実施形態において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本実施形態に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用できる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
これらの紫外線吸収剤の配合量は、セルロースエステルに対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5重量%が好ましい。使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不十分の場合があり、多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合がある。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
なお、本実施形態において、上述の可塑剤、及び紫外線吸収剤が、厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤としての役割をあわせ有していても良い。
セルロースエステルのアセチル基の置換度が低いと、耐熱性が低下する場合がある。この場合、酸化防止剤を配合することが有効である。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファート等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
本実施形態におけるセルロース誘導体には、滑り性を付与するために、マット剤等の微粒子を添加するのが好ましい。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
無機化合物の微粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫等の微粒子が挙げられる。この中では、ケイ素原子を含有する化合物の微粒子であることが好ましく、特に二酸化ケイ素微粒子が好ましい。二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,R805、OX50、TT600などが挙げられる。
有機化合物の微粒子の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素化合物樹脂、ウレタン樹脂等の微粒子が挙げられる。
微粒子の1次粒径は、特に限定されないが、最終的にフィルム中での平均粒径は、0.05〜5.0μm程度が好ましい。さらに好ましくは、0.1〜1.0μmである。
微粒子の平均粒径は、セルロースエステルフィルムを電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察した際に、フィルムの観察場所における、粒子の長軸方向の長さの平均値を指す。フィルム中で観察される粒子であれば、1次粒子であっても、1次粒子が凝集した2次粒子であってもよいが、通常観察される多くは2次粒子である。
測定方法の一例としては、1つのフィルムにつき、ランダムに10箇所の垂直断面写真を撮影し、各断面写真について、長軸長さが、0.05〜5μmの範囲にある100μm2中の粒子個数をカウントする。このときカウントした粒子の長軸長さの平均値を求め、10箇所の平均値を平均した値を平均粒径とする。
微粒子の場合は、1次粒径、溶媒に分散した後の粒径、フィルムに添加された後の粒径が変化する場合が多く、重要なのは、最終的にフィルム中で微粒子がセルロースエステルと複合し凝集して形成される粒径をコントロールすることである。
上記微粒子の平均粒径が、5μmを超えた場合は、ヘイズの劣化等が見られたり、異物として巻状態での故障を発生する原因にもなる。また、微粒子の平均粒径が、0.05μm未満の場合は、フィルムに滑り性を付与するのが難しくなる。
上記の微粒子は、セルロースエステルに対して、0.04〜1.0重量%添加して使用される。微粒子の添加量が0.04重量%以下では、フィルム表面粗さが平滑になりすぎて、摩擦係数の上昇によりブロッキングを発生する。微粒子の添加量が0.5重量%を超えると、フィルム表面の摩擦係数が下がりすぎて、巻き取り時に巻きズレが発生したり、フィルムの透明度が低く、ヘイズが高くなったりするため、液晶表示装置用フィルムとしての価値を持たなくなるので、上記の範囲が必須である。
微粒子の分散は、微粒子と溶剤を混合した組成物を高圧分散装置で処理することが好ましい。本実施形態で用いる高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。
高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が980N/cm2以上であることが好ましい。さらに好ましくは、装置内部の最大圧力条件が1960N/cm2以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが、好ましい。
上記のような高圧分散装置としては、例えばMicrofluidics Corporation社製の超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザーが挙げられ、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザーなどが挙げられる。
本実施形態による光学フィルムの製造方法は、ドープ調製工程(溶解工程)、流延工程、乾燥工程、フィルムの幅切断工程、および巻取り工程を具備するものである。
本実施形態による光学フィルムの製造方法において、光学フィルムが、セルロースエステルフィルムである場合を例にとると、まず、セルロースエステルの溶解は、溶解釜中での撹拌溶解方法、加熱溶解方法、超音波溶解方法等の手段が、通常用いられ、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。また、特開平9−95538号公報記載の冷却溶解方法、あるいはまた特開平11−21379号公報記載の高圧下で溶解する方法なども用いてもよい。
セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤、あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。このとき、セルロースエステルを貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させる装置と、良溶剤と混合して溶解する装置を別々に分けても良い。
セルロースエステルの溶解に用いる加圧容器の種類は、特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができればよい。加圧容器には、その他、圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行なってもよい。加熱は外部から行なうことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、使用する溶剤の沸点以上で、2種類以上の混合溶剤の場合は、沸点が低い方の溶剤の沸点以上の温度に加温しかつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましい。加熱温度が高すぎると、必要とされる圧力が大きくなり、生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は20〜120℃であり、30〜100℃が、より好ましく、40〜80℃の範囲がさらに好ましい。また圧力は、設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
セルロースエステルと溶剤の他に、必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
セルロースエステルの溶解後は、冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して、熱交換器などで冷却し、得られたポリマーのドープを製膜に供するが、このときの冷却温度は、常温まで冷却してもよい。
原料としてのセルロースエステルの粒径dは、0.1mm≦d≦20mmの粒子が60重量%以上の比率で構成されることが、セルロースエステルの凝集塊を発生させることなく、良好な溶解性を得るために、望ましい。
原料セルロースエステルと溶媒の混合物は、撹拌機を有する溶解釜で溶解し、このとき、撹拌翼の周速は少なくとも0.5m/秒以上で、かつ30分以上撹拌して溶解することが好ましい。
本実施形態の方法において、溶解釜で溶解したセルロースエステルのドープを、ポンプにより濾過機に送り、濾過機において濾過する。この濾過は、通常の方法で行なうことができるが、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加圧下加熱しながら濾過する方法が、濾過材前後の差圧(以下、濾圧というることがある)の上昇が小さく、好ましい。
本実施形態の方法において、セルロースエステルドープは、これを濾過することによって、異物、特に液晶画像表示装置において、画像と認識し間違う異物は、これを除去しなければならない。偏光板用保護フィルムの品質は、この濾過によって決まるといってもよい。
濾過に使用する濾材は、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾過材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行なわなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。
このため、本実施形態の方法において、セルロースエステルドープに使用する濾材は、絶対濾過精度0.020mm以下のものが好ましい。濾紙としては、例えば市販品の安積濾紙株式会社のNo.244や277等を挙げることができ、好ましく用いられる。
濾材の材質には、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
ドープ濾過の好ましい温度範囲は、45〜120℃であり、45〜70℃が、より好ましく、45〜55℃の範囲であることがさらに好ましい。
濾圧は、3500kPa以下であることが好ましく、3000kPa以下が、より好ましく、2500kPa以下であることがさらに好ましい。なお、濾圧は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールできる。こうして得られたドープは、ストックタンクに保管され、脱泡された後、流延に用いられる。
このように、溶解釜中で、あらかじめドメイン形成材料とセルロースエステルと溶媒とを混合してドープを調製する場合は、通常、ドメイン形成材料をインライン添加する必要はない。しかしながら、必要に応じて、ドメイン形成材料の全部もしくは一部をインラインで混合することができる。
例えば、溶解釜中で適当な溶媒に混合または分散された不定形粒子分散液は、ポンプにより濾過機に送り、濾過機において濾過する。得られたドープは、第2ストックタンクに保管され、脱泡される。
第1ストックタンクからポンプによって導管中を移行したセルロースエステル溶液(もしくはドープ原液と称する場合がある)と、第2ストックタンクからポンプによって導管中を移行したドメイン形成材料溶液(不定形粒子分散液)とは、合流管で合流させる。
合流管の直前には、濾過器が配置されており、例えば濾材交換等に伴い経路から発生する、塊や大きな異物を、送液中の不定形粒子分散液あるいはドープ原液から除去することができる。ここでは、耐溶剤性を有する金属製の濾過器が好ましく用いられる。
濾材としては、耐久性の観点から金属、特にステンレス鋼が好ましい。目詰まりの観点から60〜80%の空孔率を有していることが好ましい。最も好ましくは、絶対濾過精度30〜60μmであって、かつ空孔率60〜80%の金属製濾材で濾過することであり、これにより、長期に亘り、確実に粗大な異物を除くことができ好ましい。絶対濾過精度30〜60μmでかつ空孔率60〜80%の金属製濾材としては、例えば日本精線株式会社製ファインポアNFシリーズのNF−10、同NF−12、同NF−13等を挙げることができる。
上記のようにして合流した両液は、導管内を層状で移行するためそのままでは混合しにくい。そこで、両液を合流後、インラインミキサーのような混合機で十分に混合しながら次工程に移送する。
本実施形態で使用できるインラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器、Hi−Mixer、東レエンジニアリング製)が好ましい。
図1を参照すると、本実施形態のセルロースエステルフィルムの製造方法では、まず溶解釜(図示略)で、例えばセルロースエステル等の樹脂を、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒に溶解し、これに可塑剤や紫外線吸収剤等の添加剤を添加して樹脂溶液(ドープ)を調製する。
ついで、溶解釜でドープ粘度が1〜200ポイズになるように調整されたドープを、例えば加圧型定量ギヤポンプ(図示略)を通して、導管によって流延ダイ(2)に送液し、無限に移送する回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体(1)上の流延位置に、流延ダイ(2)からドープを流延し、これにより形成されたウェブ(10)を、エンドレスベルト支持体(1)上に接触させる。エンドレスベルト支持体(1)は、前後一対のドラムおよび中間の複数のロール(図示略)より保持されており、エンドレスベルト支持体(1)の両端巻回部のドラムの一方、もしくは両方に、エンドレスベルト支持体(1)には図示しない張力を付与する駆動装置が設けられ、これによってエンドレスベルト支持体(1)は張力が掛けられて張った状態で使用される。
流延ダイ(2)によるドープの流延には、流延されたウェブ(10)をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイを用いる方法が好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。
なお、流延ダイ(2)としては、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。
そして、回転駆動エンドレスベルト支持体(1)上にウェブ(10)を形成する際、ウェブ(10)が支持体(1)上に密着して形成されるように流延上流側から減圧する手段としての下方に開口した減圧チャンバ(図示略)を備えている。
なお、図示は省略したが、例えば加圧型定量ギヤポンプを通して流延ダイ(2)に送液されたドープを、流延ダイ(2)からハードクロム鍍金により鏡面処理された表面を有するステンレス鋼製回転の冷却ドラム上に流延しても、良い。
流延ダイ(2)から支持体(1)上にほぼ均一な膜厚になるように流延し、一般的には、ウェブ中の残留溶媒量が、対固形分重量200%以上では、ウェブ温度が溶剤沸点以下に、また、残留溶媒量が、対固形分重量100〜200%の範囲では、溶剤沸点+10℃以下に、残留溶媒量100%以下〜剥離までは、溶剤沸点+20℃以下の範囲になるように、乾燥風によりウェブ(10)を乾燥させるのが好ましい。
エンドレスベルト支持体(1)上で乾燥されたウェブ(10)が支持体(1)の回転によってほぼ3/4周移動したところで、剥離ロール(3)により剥離する。
支持体(1)上は、ウェブ(10)が支持体(1)から剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させるため、一般的には、ウェブ(10)中の残留溶媒量が150重量%以下まで乾燥させるのが好ましく、80〜120重量%がより好ましい。
また、一般的に、支持体(1)からウェブ(10)を剥離するときのウェブ(10)の温度は、0〜30℃が好ましい。また、ウェブ(10)は、支持体(1)から剥離直後に、支持体(1)密着面側からの溶媒触媒で温度が一旦急速に下がり、雰囲気中の水蒸気や溶剤蒸気などの揮発成分がコンデンスしやすいため、剥離時のウェブ温度は5〜30℃がさらに好ましい。
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
式中、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
支持体(1)とウェブ(10)を剥離する際の剥離張力は、通常20〜25kg/mで剥離が行なわれるが、剥離できる最低張力〜17kg/mで剥離することが好ましい。さらに好ましくは、最低張力〜14kg/mで剥離することである。
ついで、エンドレスベルト支持体(1)から剥離後のウェブ(10)は第1乾燥ゾーン(4)に導入する。第1乾燥ゾーン(4)内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロールによってウェブ(10)が蛇行せられ、その間にウェブ(10)は第1乾燥ゾーン(4)の底の前寄り部分から吹込まれ、第1乾燥ゾーン(4)の天井の後寄り部分から排出せられる温風によって乾燥される。
溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法においては、ベルト支持体(1)からウェブ(10)を剥離する時のウェブ(10)の残留溶媒量を80〜170重量%、テンター(5)に入る時のウェブ(10)の残留溶媒量を2〜20重量%とし、これらの間の第1乾燥ゾーン(4)の乾燥温度を60〜110℃とするのが、好ましい。
テンター(5)による延伸工程においては、例えばセルロースエステルフィルムを製造する際の延伸倍率は、製膜方向もしくは幅手方向に対して、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍である。2軸方向に延伸する場合、高倍率で延伸する側が、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍であり、もう一方の方向の延伸倍率は0.8〜1.5倍、好ましくは0.9〜1.2倍に延伸することができる。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸は、テンター(5)によって行なうことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
なお、テンター(5)による延伸工程においては、テンター(5)の底の前寄り部分から吹込まれ、テンター(5)の天井の後寄り部分から排出せられる温風(図示略)によってウェブ(10)が、延伸と共に乾燥されている。
テンター(5)による延伸工程の後に、第2乾燥ゾーン(6)を設けることが好ましい。第2乾燥ゾーン(6)内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール(8)によってウェブ(10)が蛇行せられ、その間にウェブ(10)が乾燥せられるものである。また、第2乾燥ゾーン(6)でのフィルム搬送張力は、ドープの物性、剥離時及びフィルム搬送工程での残留溶媒量、第2乾燥ゾーン(6)での温度等に影響を受けるが、30〜250N/mが好ましく、60〜150N/mがさらに好ましい。80〜120N/mが最も好ましい。
なお、ウェブ(またはフィルム)(10)を乾燥させる手段は、特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点から熱風で乾燥するのが好ましく、例えば第2乾燥ゾーン(6)の底の前寄り部分から吹込まれ、第2乾燥ゾーン(6)の天井の後寄り部分から排出せられる温風によって乾燥される。乾燥温度は40〜160℃が好ましく、50〜160℃が平面性、寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。この場合、乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは勿論のことである。
乾燥時のウェブ搬送張力は、30〜300N/幅mであり、40〜270N/幅mが、より好ましい。
本実施形態によるセルロースエステルフィルムの製造方法においては、第2乾燥ゾーン(6)の後で、かつフィルム巻取り工程前のフィルム搬送ラインに、搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部で、それぞれ搬送フィルム(F)の上側に位置する一対のスリッティング装置(11)(12)が備えられており、第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士が、フィルム長手方向に1〜20mの間隔(D)をあけて互い違い状に配置されていることを特徴とするものである。
なお、一対のスリッティング装置(11)(12)によりスリットされた搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のフィルム耳切り部(20)は、一対ずつの引取りロール(13)(14)によってそれぞれ下方に引き取られて除去され、セルロースエステルフィルムの製造原料として再使用される。
本実施形態のセルロースエステルフィルムの製造方法によれば、第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士が、フィルム長手方向に所定間隔(D)をあけて互い違い状に配置されていることにより、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット時にフィルム(F)にかかる応力が、それぞれのスリッティング装置(11)(12)の反対サイドに逃げることが可能となるので、小さなシワの発生がなくなり、それによって擦りキズの発生もなくなるために、光ムラの発生のない高品質のセルロースエステルフィルム(F)を製造することができるものである。
ここで、第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士の間のフィルム長手方向の間隔(D)は、1〜20mであることが好ましく、これによって上記の作用効果を生じるものである。
すなわち、近年の液晶テレビのサイズの多角化に伴い、セルロースエステルフィルムも様々な幅のセルロースエステルフィルムが求められている。さらには、携帯電話のスマートフォンやパソコンのタブレット端末(スレートPC)にも液晶表示パネルが使われており、その部材として薄膜で様々な幅に対応したセルロースエステルフィルムが求められている。
特に、タブレット端末(スレートPC)などは、これまでの液晶テレビとは違い、画面を目に近づけて見ることが多く、その液晶表示パネルには、これまで目立たなかったような光ムラが目立つようになってきており、高品質なセルロースエステルフィルムが必要となっている。
本発明者は、この光ムラの発生の原因を調査したところ、搬送フィルム(F)のスリッティング時にフィルム(F)に小さなシワが入っており、このシワが原因でフィルム(F)に微小なキズが発生していることが分かった。そして、フィルム(F)の破断には至らない場合でも、シワが一度でも発生すると、幅変更後にもシワが弱く残留して、搬送によるスリキズが発生し、これまでは目立たなかったような光ムラの発生の原因となっていることが分かった。
これに対し、本発明のように、フィルム巻取り工程前のフィルム搬送ラインに、搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部で、それぞれ搬送フィルム(F)上側に位置する一対のスリッティング装置(11)(12)が備えられており、第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士が、両者間にフィルム長手方向に1〜20mの間隔(D)をあけて互い違い状に配置されていて、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット位置を、幅手方向に対向する位置ではなく、フィルム長手方向に1〜20mの間隔(D)をあけて互い違い状にずれた位置に配置すると、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット時にかかる応力が、それぞれ反対サイドに逃げることが可能となるので、小さなシワの発生がなくなり、擦りキズが発生しなくなることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
また、本実施形態によるセルロースエステルフィルムの製造方法では、相互に互い違い状に配置された両スリッティング装置(11)(12)が、それぞれフィルム幅手方向に移動可能となされており、両スリッティング装置(11)(12)の移動により搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅が変更されるようになされている。
本実施形態によれば、このように第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士が、フィルム長手方向に所定間隔をあけて互い違い状に配置されることにより、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット時にフィルム(F)にかかる応力が、それぞれのスリッティング装置(11)(12)の反対サイドに逃げることが可能となるので、フィルム(F)がキズの発生により破断することがなくなるものである。そして、この傾向は、薄膜フィルムで特に顕著に表れる現象であることが判明し、薄膜のフィルム(ウェブ)の幅変更、破断強度の低いフィルム(F)の幅変更時にもフィルム(F)の破断の危険性がほとんどなく、光ムラの発生がない高品質なセルロースエステルフィルム(F)を製造することができるものである。
すなわち、近年は、狭幅フィルムから広幅フィルムまでを一つの工場で生産することが求められており、薄膜フィルムの安定搬送技術と共に、例えば膜厚10〜50μmを有する薄膜フィルムの幅変更を安定に行う技術の開発も求められてきている。特に、薄膜フィルムの幅変更においては、フィルム(F)の端部幅調整を行う搬送フィルム幅手方向両端部に位置する左右一対のスリッティング装置の安定化が重要となっている。
セルロースエステルフィルムの製造方法において、いわゆるオンラインで製品幅を変更する際、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部に位置するスリッティング装置が内側方向、もしくは外側方向に移動する。例えばフィルムの幅変更で、広幅フィルムから、狭幅フィルムに切り替える際には、スリッティング装置が内側方向へ移動し、それに伴い、搬送フィルム(F)に内側方向の応力が発生し、搬送フィルム(F)の中央部でシワが発生し、シワが強くなると折れ返って、フィルム(F)が破断してしまうという問題があった。
本発明者は、このような従来の問題に対して、本実施形態のように、フィルム巻取り工程前のフィルム搬送ラインに、搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部で、それぞれ上側に位置する一対のスリッティング装置(11)(12)同士が、フィルム長手方向に1〜20mの間隔(D)をあけて互い違い状に配置されていて、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット位置を、幅手方向に対向する位置ではなく、フィルム長手方向に1〜20mの間隔(D)をあけて互い違い状にずれた位置に配置すると、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット時にフィルム(F)にかかる応力がそれぞれ反対サイドに逃げることが可能となるので、破断することがなくなることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。そして、このような傾向は、例えば膜厚10〜50μmを有する薄膜フィルムで、特に顕著に表れる現象であることが判明している。
本実施形態によるセルロースエステルフィルムの製造方法においては、相互に互い違い状に配置された両スリッティング装置(11)(12)の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅の変更量、換言すれば、スリットされるフィルム耳切り部(20)の幅変更量が、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部の片側で、30〜300mmとなされていることが好ましい。このように、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅の変更量、換言すれば、スリットされるフィルム耳切り部(20)の幅変更量が、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部の片側で、30〜300mmの範囲であれば、スリット時にフィルムにかかる応力が、フィルムの長手方向に互い違い状に配置されたスリッティング装置(11)(12)のそれぞれの反対サイドに逃げることが可能となるので、小さなシワの発生がなくなり、それによって擦りキズの発生もなくなるために、光ムラの発生のない高品質の光学フィルムを製造することができるという利点がある。
また、本実施形態によるセルロースエステルフィルムの製造方法においては、両スリッティング装置(11)(12)の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度が、スリッティング装置(11)(12)の片側で10〜100mm/minとなされていることが好ましい。このように、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度が、スリッティング装置(11)(12)の片側で10〜100mm/minの範囲であれば、スリット時にフィルムにかかる応力が、フィルムの長手方向に互い違い状に配置されたスリッティング装置(11)(12)のそれぞれの反対サイドに逃げることが可能となるので、小さなシワの発生がなくなり、それによって擦りキズの発生もなくなるために、光ムラの発生のない高品質の光学フィルムを製造することができるという利点がある。
一対のスリッティング装置(11)(12)により幅手方向両端部がスリットされた搬送フィルム(F)は、ついで、巻取り機(15)によって巻き取る。ここで、例えばセルロースエステルフィルム(F)の製造に係わる巻取り機(15)は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
本実施形態によるセルロースエステルフィルムの製造方法においては、搬送フィルム(F)の幅が、1500〜2500mmであることが好ましい。これにより、セルロースエステルフィルム(F)の広幅化の要求にも対応することができるという利点がある。
本実施形態によるセルロースエステルフィルムの製造方法においては、搬送フィルム(F)の走行速度が、80〜200m/minであることが好ましい。これにより、セルロースエステルフィルム(F)の製膜速度の高速化にも対応することができるという利点がある。
セルロースエステルフィルム(F)の膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、本実施形態において使用される膜厚範囲は10〜50μmの範囲が好ましい。フィルム(F)の平均膜厚は、所望の厚さになるように、押し出し流量、流延ダイ(2)の流延口の間隙、エンドレスベルト支持体(1)の速度等をコントロールすることで調整できる。
本実施形態の方法によって製造されたセルロースエステルフィルム(F)は、面内リタデーション値(Ro)が、60nm以下であることが好ましい。
ここで、フィルムのリタデーション値は自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて、590nmの波長において、三次元屈折率測定を行ない、得られた屈折率Nx、Ny、Nzから算出することができる。
面内リタデーション(Ro)=(Nx−Ny)×d
厚み方向のリタデーション(Rt)=[(Nx+Ny)/2−Nz]×d
式中、Nx、Ny、Nzはそれぞれ屈折率楕円体の主軸x、y、z方向の屈折率を表わし、かつ、Nx、Nyはフィルム面内方向の屈折率を、Nzはフィルムの厚み方向の屈折率を表わす。また、Nx≧Nyであり、dはフィルムの厚み(μm)を表わす。
厚み方向のリタデーション(Rt)=[(Nx+Ny)/2−Nz]×d
式中、Nx、Ny、Nzはそれぞれ屈折率楕円体の主軸x、y、z方向の屈折率を表わし、かつ、Nx、Nyはフィルム面内方向の屈折率を、Nzはフィルムの厚み方向の屈折率を表わす。また、Nx≧Nyであり、dはフィルムの厚み(μm)を表わす。
本実施形態による光学フィルムの製造方法は、上記のように、溶液流延製膜法により実施されるものであるが、その他、溶融流延製膜法により実施することもできる。
ここで、溶融流延製膜法としては、膜厚ムラやリタデーションのムラを小さくできるTダイを用いた方法が好ましい。Tダイを用いた押出し方法による溶融流延製膜法では、ポリマーを溶融可能な温度で溶融し、Tダイからフィルム状(シート状)の溶融樹脂を冷却ドラム(支持体)上に押し出す。引き続いて、冷却ドラムによってフィルム状(シート状)の溶融樹脂を冷却固化して、冷却ドラムから樹脂フィルムを剥離し、さらに必要により延伸してフィルムとし、これを巻き取るものである。そして、本実施形態による光学フィルムの製造方法をこのような溶融流延製膜法によって行なう場合には、フィルム巻取り工程前のフィルム搬送ラインに、搬送フィルムの幅手方向の両端部に位置する一対のスリッティング装置が備えられ、一方の端部に設けられた第1スリッティング装置および他方の端部に設けられた第2スリッティング装置同士が、フィルム長手方向に1〜20mの間隔をあけて互い違い状に配置されていることを特徴とするものである。
本実施形態の方法により製造されたセルロースエステルフィルムは、液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対して共に厳しい要求のある偏光板用保護フィルムにおいて、本実施形態の方法により製造されたセルロースエステルフィルムは好ましく用いられる。
ところで、偏光フィルムは、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムのような延伸配向可能なフィルムを、ヨウ素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光フィルム自身では、十分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルロースエステルフィルムを接着して偏光板としている。
上記偏光板には、本実施形態の方法により製造されたセルロースエステルフィルムを位相差フィルムして貼り合わせて作製してもよいし、また本実施形態の方法により製造されたセルロースエステルフィルムを位相差フィルムと保護フィルムとを兼ねて、直接偏光フィルムと貼り合わせて作製してもよい。貼り合わせる方法は、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行なうことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。さらに、長手方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光フィルムと、本実施形態の方法により製造された長尺の位相差フィルムとを貼り合わせることによって長尺の偏光板を得ることができる。偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
このようにして得られた偏光板は、種々の表示装置に使用できる。特に電圧無印加時に液晶性分子が実質的に垂直配向しているVAモードや、電圧無印加時に液晶性分子が実質的に水平かつねじれ配向しているTNモードの液晶セルを用いた液晶表示装置が好ましい。
ところで、偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、セルロースエステルフィルムをアルカリケン化処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬、延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリケン化処理とは、水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ液中に漬ける処理のことをいう。
セルロースエステルフィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布あるいは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
このようにして得られた偏光板が、液晶セルの片面または両面に設けられ、これを用いて、液晶表示装置が得られる。
本実施形態の方法により製造されたセルロースエステルフィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。さらに、この偏光板あるいは位相差フィルムを用いた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができる。
本実施形態の方法により製造されたセルロースエステルフィルムは、反射防止用フィルムあるいは光学補償フィルムの基材としても使用できる。
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
本発明の一局面は、膜厚10〜50μmを有する光学フィルムの製造方法であって、フィルム巻取り工程前のフィルム搬送ラインに、搬送フィルムの幅手方向の両端部に位置する一対のスリッティング装置が備えられ、一方の端部に設けられる第1スリッティング装置および他方の端部に設けられる第2スリッティング装置同士が、フィルム長手方向に1〜20mの間隔をあけて互い違い状に配置されていることを特徴としている。
上記構成によれば、左側スリッティング装置および右側スリッティング装置同士が、両者間にフィルム長手方向に所定間隔をあけて互い違い状に配置されることにより、搬送フィルムの幅手方向両端部のスリット時にフィルムにかかる応力が、それぞれのスリッティング装置の反対サイドに逃げることが可能となるので、小さなシワの発生がなくなり、それによって擦りキズの発生もなくなるために、光ムラの発生のない高品質の光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
また、上記製造方法において、相互に互い違い状に配置された左右両スリッティング装置が、それぞれフィルム幅手方向に移動可能となされており、左右両スリッティング装置の移動により搬送フィルムの幅手方向両端部のスリット幅が変更されるようになされていることが好ましい。それにより、左側スリッティング装置および右側スリッティング装置同士が、両者間にフィルム長手方向に所定間隔をあけて互い違い状に配置されることにより、搬送フィルムの幅手方向両端部のスリット時にフィルムにかかる応力が、それぞれのスリッティング装置の反対サイドに逃げることが可能となるので、フィルムがキズの発生により破断することがなくなり、この傾向は、薄膜フィルムで特に顕著に表れる現象であることが判明し、薄膜のフィルムの幅変更、破断強度の低いフィルムの幅変更時にもフィルムの破断の危険性がほとんどなく、光ムラの発生がない高品質な光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
さらに、上記製造方法において、相互に互い違い状に配置された左右両スリッティング装置の移動による搬送フィルムの幅手方向両端部のスリット幅の変更量が、搬送フィルムの幅手方向両端部の片側で、30〜300mmとなされていることがより好ましい。そのような構成を有することにより、スリットされる搬送フィルムの幅手方向両端部のスリット幅の幅変更量が、搬送フィルムの幅手方向両端部の片側で、30〜300mmの範囲であれば、スリット時にフィルムにかかる応力が、フィルム長手方向に互い違い状に配置されたスリッティング装置のそれぞれの反対サイドに逃げることが可能となるので、小さなシワの発生がなくなり、それによって擦りキズの発生もなくなるために、光ムラの発生のない高品質の光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
また上記製造方法において、左右両スリッティング装置の移動による搬送フィルムの幅手方向両端部のスリット幅の変更速度が、スリッティング装置の片側で10〜100mm/minとなされていることがより好ましい。それにより、搬送フィルムの幅手方向両端部のスリット幅速度が、スリッティング装置の片側で10〜100mm/minの範囲であれば、搬送フィルムの幅手方向両端部のスリット時にフィルムにかかる応力が、フィルム長手方向に互い違い状に配置されたスリッティング装置のそれぞれの反対サイドに逃げることが可能となるので、小さなシワの発生がなくなり、それによって擦りキズの発生もなくなるために、光ムラの発生のない高品質の光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
さらに、上記製造方法において、搬送フィルムの幅が、1500〜2500mmであることが望ましく、そのような構成により、光学フィルムの広幅化の要求にも対応することができるという効果を奏する。
また、上記製造方法において、搬送フィルムの走行速度が、80〜200m/minであれば、光学フィルムの製膜速度の高速化にも対応することができるという効果を奏する。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1
(ドープの調製)
セルローストリアセテート 100重量部
(Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1)
トリフェニルホスフェート 8重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
メチレンクロライド 440重量部
エタノール 40重量部
チヌビン109(BASFジャパン社製) 0.5重量部
チヌビン171(BASFジャパン社製) 0.5重量部
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 0.2重量部
上記のドープ組成の材料を、溶液流延製膜装置の密閉容器(溶解釜)に投入し、加熱、攪拌しながら完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、濾過を行なって、ドープを調製した。
(ドープの調製)
セルローストリアセテート 100重量部
(Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1)
トリフェニルホスフェート 8重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
メチレンクロライド 440重量部
エタノール 40重量部
チヌビン109(BASFジャパン社製) 0.5重量部
チヌビン171(BASFジャパン社製) 0.5重量部
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 0.2重量部
上記のドープ組成の材料を、溶液流延製膜装置の密閉容器(溶解釜)に投入し、加熱、攪拌しながら完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、濾過を行なって、ドープを調製した。
ついで、図1に示すように、溶解釜で調整されたドープを、ポンプを通して導管によって流延ダイ(2)に送液し、100m/mmで連続的に走行する幅2400mmおよび表面温度30℃の回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体(1)上の流延位置に、流延ダイ(2)からドープ(30℃)を流延し、流延ダイ(2)とエンドレスベルト支持体(1)との間にウェブ(10)を形成するとともに、支持体(1)上に幅2000mmのウェブ(10)を形成した。
流延後のステンレス鋼製エンドレスベルト支持体(1)の表面温度を25℃に制御し、ウェブ(10)上方の乾燥機(図示略)からは温度45℃の乾燥風を10m/秒の風速で送り、エンドレスベルト支持体(1)側の乾燥機(図示略)からは温度40℃の乾燥風を10m/秒の風速で送り、ウェブ(10)を乾燥した(溶媒蒸発工程)。乾燥したウェブ(10)を剥離ロール(3)により剥離した(剥離工程)。剥離工程直前におけるウェブ(10)中の残留溶媒量は80重量%であった。
ついで、剥離後のウェブ(10)を第1乾燥ゾーン(4)に導入した。第1乾燥ゾーン(4)内では、側面から見て千鳥配置せられた多数の搬送ロール(7)によってウェブ(10)が蛇行せられ、その間にウェブ(10)を温度80℃の温風によって1分間乾燥した(第1乾燥工程)。
乾燥後のウェブ(10)をテンター(5)に導入し、残留溶媒量が3〜10重量%であるときに、ウェブ(10)の幅手方向(TD方向)の両端部を把持して、100℃の雰囲気下でウェブ(10)をその幅手方向に延伸率1.25倍に延伸した(延伸工程)。
延伸後のウェブ(10)は第2乾燥ゾーン(6)に導入した。第2乾燥ゾーン(6)内では、側面から見て千鳥配置せられた多数の搬送ロールによってウェブ(10)が蛇行せられ、その間にウェブ(10)を温度125℃の温風によって20分間乾燥した(第2乾燥工程)。
図2に示すように、第2乾燥ゾーン(6)による乾燥後、フィルム巻取り工程前のフィルム搬送ラインに、搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部で、それぞれ上側に位置する一対のスリッティング装置(11)(12)を設置し、第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士を、フィルム長手方向に1mの間隔(D)をあけて互い違い状に配置した。そして、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部を、これらのスリッティング装置(11)(12)により、それぞれ150mmの幅でスリットして、断裁切除し、製品幅となるようにベースフィルム(F)を形成した(フィルム幅手方向両端部の切断工程)。スリット後のフィルム(F)の幅手方向の両端部にエンボス加工(ナール加工)を施して、フィルムの各端部に10mm幅のエンボス部を付与した後、エンボス部を具備する最終製品幅2200mm、および膜厚50μmのセルローストリアセテートフィルム(F)を、最終的に20℃に冷却して、巻取り装置(17)によって巻き取った(巻取り工程)。
実施例2と3
上記実施例1の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを製造するが、実施例2においては、第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士を、フィルム長手方向に10mの間隔(D)をあけて互い違い状に配置し、また実施例3においては、第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士を、フィルム長手方向に20mの間隔(D)をあけて互い違い状に配置して、実施した。
上記実施例1の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを製造するが、実施例2においては、第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士を、フィルム長手方向に10mの間隔(D)をあけて互い違い状に配置し、また実施例3においては、第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士を、フィルム長手方向に20mの間隔(D)をあけて互い違い状に配置して、実施した。
比較例1と2
比較のために、上記実施例1の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、比較例1では、搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部において、一対のスリッティング装置を、従来の場合と同様に、互いに対向するように設置した点にある。また比較例2では、搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部で、第1スリッティング装置および第2スリッティング装置同士を、本発明の範囲外であるフィルム長手方向に25mの間隔(D)をあけて互い違い状に配置した点にある。
比較のために、上記実施例1の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、比較例1では、搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部において、一対のスリッティング装置を、従来の場合と同様に、互いに対向するように設置した点にある。また比較例2では、搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部で、第1スリッティング装置および第2スリッティング装置同士を、本発明の範囲外であるフィルム長手方向に25mの間隔(D)をあけて互い違い状に配置した点にある。
実施例4と5
上記実施例1の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを製造するが、上記実施例1の場合と異なる点は、実施例4と5においては、フィルム(F)の膜厚を、ドープの押し出し流量、流延ダイ(2)の流延口の間隙、およびエンドレスベルト支持体(1)の速度をコントロールすることによって、それぞれ30μmと40μmに調整した点にある。
上記実施例1の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを製造するが、上記実施例1の場合と異なる点は、実施例4と5においては、フィルム(F)の膜厚を、ドープの押し出し流量、流延ダイ(2)の流延口の間隙、およびエンドレスベルト支持体(1)の速度をコントロールすることによって、それぞれ30μmと40μmに調整した点にある。
比較例3
比較のために、上記実施例1の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部において、一対のスリッティング装置を、従来の場合と同様に、互いに対向するように設置した点、およびフィルム(F)の膜厚を30μmに調整した点にある。
比較のために、上記実施例1の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部において、一対のスリッティング装置を、従来の場合と同様に、互いに対向するように設置した点、およびフィルム(F)の膜厚を30μmに調整した点にある。
なお、下記の表1には、実施例1〜5および比較例1〜3において搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部に設置した両端部のスリッティング装置同士の間のフィルム長手方向の間隔(D)(m)、およびセルローストリアセテートフィルムの膜厚(μm)を記載した。
実施例6〜8
上記実施例1の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを製造するが、実施例6〜8においては、相互に互い違い状に配置された両スリッティング装置(11)(12)が、それぞれフィルム幅手方向に移動可能となされており、両スリッティング装置(11)(12)の移動により搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅が変更されるようになされている点にある。
上記実施例1の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを製造するが、実施例6〜8においては、相互に互い違い状に配置された両スリッティング装置(11)(12)が、それぞれフィルム幅手方向に移動可能となされており、両スリッティング装置(11)(12)の移動により搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅が変更されるようになされている点にある。
そして、実施例6では、相互に互い違い状に配置された両スリッティング装置(11)(12)の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅の変更量を、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部の片側で50mmとし、また、両スリッティング装置(11)(12)の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度を、スリッティング装置(11)(12)の片側で10mm/minとした。
実施例7では、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅の変更量を30mmとし、実施例8では、この幅変更量を300mmとした。なお、実施例7と8では、両スリッティング装置(11)(12)の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度は、実施例6の場合と同様に、スリッティング装置(11)(12)の片側で10mm/minとした。
実施例9と10
上記実施例6の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを製造するが、実施例9においては、相互に互い違い状に配置された両スリッティング装置(11)(12)の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度を、スリッティング装置(11)(12)の片側で20mm/minとし、実施例10においては、両スリッティング装置(11)(12)の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度を、スリッティング装置(11)(12)の片側で100mm/minとした。
上記実施例6の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを製造するが、実施例9においては、相互に互い違い状に配置された両スリッティング装置(11)(12)の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度を、スリッティング装置(11)(12)の片側で20mm/minとし、実施例10においては、両スリッティング装置(11)(12)の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度を、スリッティング装置(11)(12)の片側で100mm/minとした。
比較例4と5
比較のために、上記実施例6の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを作製するが、上記実施例6の場合と異なる点は、比較例4では、搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部において、一対のスリッティング装置を、従来の場合と同様に、互いに対向するように設置した点にある。また、比較例5では、同様に、一対のスリッティング装置を、互いに対向するように設置し、かつ両スリッティング装置の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度を、スリッティング装置の片側で100mm/minとした点にある。
比較のために、上記実施例6の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを作製するが、上記実施例6の場合と異なる点は、比較例4では、搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部において、一対のスリッティング装置を、従来の場合と同様に、互いに対向するように設置した点にある。また、比較例5では、同様に、一対のスリッティング装置を、互いに対向するように設置し、かつ両スリッティング装置の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度を、スリッティング装置の片側で100mm/minとした点にある。
なお、下記の表2には、実施例6〜10および比較例4と5において搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部に設置したスリッティング装置同士の間のフィルム長手方向の間隔(D)(m)、セルローストリアセテートフィルムの膜厚(μm)、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅の変更量(mm)、および搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度(mm/min)を記載した。
(偏光膜の作製)
つぎに、上記実施例1〜10および比較例1〜5によるセルローストリアセテートフィルムを用いて液晶表示装置を作製するために、まず、偏光膜を作製した。すなわち、厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、温度110℃、延伸倍率5倍で一軸延伸した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、ついでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し、偏光膜を得た。
つぎに、上記実施例1〜10および比較例1〜5によるセルローストリアセテートフィルムを用いて液晶表示装置を作製するために、まず、偏光膜を作製した。すなわち、厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、温度110℃、延伸倍率5倍で一軸延伸した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、ついでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し、偏光膜を得た。
(偏光板の作製)
ついで、下記の工程1〜工程5に従って、上記の偏光膜の両面に、上記実施例1〜10および比較例1〜5で作製したセルローストリアセテートフィルム(偏光板保護フィルム)を貼り合わせて偏光板を作製した。
ついで、下記の工程1〜工程5に従って、上記の偏光膜の両面に、上記実施例1〜10および比較例1〜5で作製したセルローストリアセテートフィルム(偏光板保護フィルム)を貼り合わせて偏光板を作製した。
工程1:上記偏光板保護フィルムを、温度50℃の1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60秒間浸漬し、ついで水洗し乾燥して、偏光膜と貼合する側を鹸化した偏光板保護フィルムを得た。
工程2:偏光膜を固形分2重量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、この偏光膜の両側に、工程1で鹸化処理した偏光板保護フィルムを積層して配置した。
工程4:工程3で積層した偏光膜と、偏光板保護フィルムを、圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:工程4で作製した偏光膜と偏光板保護フィルムとを貼合わせた試料を、80℃の乾燥機中に2分間乾燥し、偏光板を作製した。
(液晶表示装置の作製)
ついで、市販の液晶TV(シャープ社製、アクオス32AD5)の2枚の偏光板を剥離し、上記作製した偏光板をそれぞれ液晶セルのガラス面の両面に貼合して、液晶表示装置を作製した。
ついで、市販の液晶TV(シャープ社製、アクオス32AD5)の2枚の偏光板を剥離し、上記作製した偏光板をそれぞれ液晶セルのガラス面の両面に貼合して、液晶表示装置を作製した。
その際、偏光板の貼合の向きは、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行なった。
(視認性評価)
上記実施例1〜10および比較例1〜5によるセルローストリアセテートフィルムを用いて作製した各液晶表示装置について、視認性の性能を評価するために、液晶表示装置を、温度23℃、湿度55%RHの環境で、液晶表示装置の液晶TV表示装置のバックライトを点灯して30分間そのまま放置とした後、表示装置に光ムラが生じているか、どうかの視認性を、下記の基準により評価し、得られた結果を、下記の表1および表2にあわせて示した。
上記実施例1〜10および比較例1〜5によるセルローストリアセテートフィルムを用いて作製した各液晶表示装置について、視認性の性能を評価するために、液晶表示装置を、温度23℃、湿度55%RHの環境で、液晶表示装置の液晶TV表示装置のバックライトを点灯して30分間そのまま放置とした後、表示装置に光ムラが生じているか、どうかの視認性を、下記の基準により評価し、得られた結果を、下記の表1および表2にあわせて示した。
視認性評価基準
○:全く光ムラが無い
△:弱い光ムラが数個程度あり、問題となる。
×:規則性のある強い光ムラがあり、問題となる。
○:全く光ムラが無い
△:弱い光ムラが数個程度あり、問題となる。
×:規則性のある強い光ムラがあり、問題となる。
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜3で作製したセルローストリアセテートフィルムでは、第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士が、フィルム長手方向に1〜20mの間隔(D)をあけて互い違い状に配置されることにより、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット時にフィルム(F)にかかる応力が、それぞれのスリッティング装置(11)(12)の反対サイドに逃げることが可能となるので、小さなシワの発生がなくなり、それによって擦りキズの発生もなくなるために、光ムラの発生のない高品質のセルローストリアセテートフィルムを製造することができ、液晶表示装置の視認性は良好であった。
これに対し、比較例1の場合のように、一対のスリッティング装置を、従来の場合と同様に、互いに対向するように設置した場合には、セルロースエステルフィルム(F)のスリッティング時にフィルムに小さなシワが入り、このシワが原因でフィルム(F)に微小なキズが発生して、光ムラが生じ、液晶表示装置の視認性は良くないものであった。また、比較例2の場合のように、両端部のスリッティング装置同士の間のフィルム長手方向に所定間隔(D)が、本発明の範囲外で長すぎると、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット時にフィルム(F)には小さなシワの発生はなくなるが、搬送フィルム(F)の重心と、同フィルム(F)にかけている張力の中心とが、ずれた状態で長い距離搬送されるため、シワが発生した。このシワが原因でフィルム(F)に微小なキズが発生して、光ムラが生じ、液晶表示装置の視認性は良くないものであった。これは、フィルム巻取り工程前のフィルム搬送ラインに、搬送フィルム(F)の幅手方向の両端部のうち、片側にだけスリッティング装置を設置した場合に起こる現象と同様のものであった。
また比較例3の場合のように、フィルム(F)の膜厚を薄くした場合には、さらにシワが発生しやすいことが分かった。これに対し、本発明の実施例4と5で作製したセルローストリアセテートフィルムでは、フィルム(F)の膜厚を薄くした場合でも、第1スリッティング装置(11)および第2スリッティング装置(12)同士が、フィルム長手方向に10mの間隔(D)をあけて互い違い状に配置されることにより、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット時にフィルム(F)にシワの発生がなく、光ムラが生じることなく、液晶表示装置の視認性は良好であった。
また、上記表2の結果から明らかなように、本発明の実施例6〜10で作製したセルローストリアセテートフィルムでは、相互に互い違い状に配置された両スリッティング装置(11)(12)の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅の変更量、および両スリッティング装置(11)(12)の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度を種々変えた場合であっても、搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット時にフィルム(F)にシワの発生がなく、光ムラが生じることなく、液晶表示装置の視認性は良好であった。
これに対し、比較例4と5の場合のように、一対のスリッティング装置を、従来の場合と同様に、互いに対向するように設置し、かつ互いに対向する両スリッティング装置の移動による搬送フィルム(F)の幅手方向両端部のスリット幅変更速度を種々変えた場合には、スリット時にフィルム(F)に小さなシワが入り、このシワが原因でフィルム(F)に微小なキズが発生して、光ムラが生じ、液晶表示装置の視認性は良くないものであった。
この出願は、2012年1月23日に出願された日本国特許出願特願2012−11044を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
本発明を表現するために、前述において図面等を参照しながら実施形態を通して本発明を適切かつ十分に説明したが、当業者であれば前述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易になし得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
本発明は、光学フィルムおよびその製造方法の技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。
Claims (6)
- 膜厚10〜50μmを有する光学フィルムの製造方法であって、フィルム巻取り工程前のフィルム搬送ラインに、搬送フィルムの幅手方向の両端部に位置する一対のスリッティング装置が備えられ、一方の端部に設けられる第1スリッティング装置および他方の端部に設けられる第2スリッティング装置同士が、フィルム長手方向に1〜20mの間隔をあけて互い違い状に配置されていることを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
- 相互に互い違い状に配置された両スリッティング装置が、それぞれフィルム幅手方向に移動可能となされており、両スリッティング装置の移動により搬送フィルムの幅手方向両端部のスリット幅が変更されるようになされていることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
- 相互に互い違い状に配置された両スリッティング装置の移動による搬送フィルムの幅手方向両端部のスリット幅の変更量が、搬送フィルムの幅手方向両端部の片側で、30〜300mmとなされていることを特徴とする、請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。
- 両スリッティング装置の移動による搬送フィルムの幅手方向両端部のスリット幅変更速度が、スリッティング装置の片側で10〜100mm/minとなされていることを特徴とする、請求項2または3に記載の光学フィルムの製造方法。
- 搬送フィルムの幅が、1500〜2500mmであることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 搬送フィルムの走行速度が、80〜200m/minであることを特徴とする、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
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