つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の1例を示す概略側面図である。図2は、その装置のエンドレスベルト部分の拡大概略側面図である。
図1と図2を参照すると、本発明による光学フィルムの製造方法は、溶液流延製膜法によるものであり、熱可塑性樹脂と溶剤とを含有するドープ(樹脂溶液)を、相互に所定間隔をおいて配置された一対のドラムである第1のドラム(上流側ドラム)(11)および第2のドラム(下流側ドラム)(12)に巻き回された金属製回転エンドレスベルト(単にエンドレスベルトともいう)(支持体)(1)の上部移送部(1a)上の第1のドラム上又は近傍に該当する位置に流延する。第1のドラム(11)の近傍とは、第1のドラム(11)と第2のドラム(12)の中間点より第1のドラムに近い位置を意味するが、エンドレスベルト(1)上におけるウェブ(W)の移送距離を大きくする観点から、第1のドラム(11)に近い方が好ましく、具体的には、エンドレスベルト(1)の上部移送部(1a)を5つの領域に分割した場合に、最も第1のドラム(11)の領域に含まれる位置を流延位置とすることが好ましい。ドープの流延によって形成されたウェブ(流延膜)(W)は、エンドレスベルト(1)の上部移送部(1a)、第2のドラムの巻回移送部(1d)および下部移送部(1b)をめぐって乾燥させられた後、剥離ロール(6)によってウェブ(W)をエンドレスベルト(1)の第1のドラム上に当たる第1のドラム巻回移送部(1c)で剥離され、ついでウェブ(W)を乾燥して、フィルム(F)となし、得られたフィルム(F)を巻き取るものである。
そして、本発明による光学フィルムの製造方法は、一対のドラムである第1のドラム(11)および第2のドラム(12)のうち、第1のドラム(11)の直径が第2のドラム(12)の直径よりも大きくなされていることを特徴としている。
本発明による光学フィルムの製造方法においては、後側ドラム(11)の直径が、前側ドラム(12)の直径に対して1.1〜5.0倍であることが好ましく、更に好ましくは1.5〜4.0倍である。また、エンドレスベルト(1)の周方向の全長が、40〜180mであることが好ましく、更に好ましくは50〜150mである。上記の範囲とすることで、本発明の効果が顕著に得られる。
本発明による光学フィルムの製造方法においては、図2さらには図3に詳しくに示すように、第1のドラム(11)はエンドレスベルト(1)の上部移送部上のドープの流延位置より上流側に位置するとともに、第2のドラム(12)はエンドレスベルト(1)の上部移送部上のドープの流延位置より下流側に位置し、径大の第1のドラム(11)から径小の第2のドラム(12)に至るエンドレスベルト(1)の上部移送部(1a)が、搬送方向に向かって下向きに傾斜せしめられ、ドープを、傾斜したベルト上面に流延するものであることが好ましい。この時の傾斜角度θは、図3に示されるように、水平方向に対する角度を意味しており、搬送方向に対して下向きの傾斜を正の値として表す。
このように、流延ダイ(2)からのドープの流延リボンのベルト接地点を、搬送方向に向かって下向きに傾けると、流延ダイ(2)からのドープ吐き出しベクトルと、ベルト搬送ベクトルの方向とがそろい、流延リボンがベルトの搬送方向に引っ張られる現象を抑制することができる。すなわち、流延直後に流延膜(ウェブ)が延ばされることによる不要なリタデーションの発生を防ぐことができる。特に、剥離後の工程で幅手方向に延伸することでリタデーションを発生させて位相差フィルムを製造する場合においてはベルト上で搬送方向に引っ張られることで搬送方向に不要なリタデーションが発生すると、後の幅手方向の延伸工程でその分をキャンセルする必要があるため、延伸倍率を高める必要があり、これにより、リタデーションの均一性を保つのが困難になる。
また、上記のような構成にすることで、同伴空気の巻き込みによる発泡も低減することが可能となる。また、従来のように、一対のドラムの直径が同じ場合は、ベルトの上部移送部を下向きに傾斜させると、必然的にベルトの下部移送部は搬送方向に対して上向きに傾斜することとなり、重力に逆らって搬送されることとなるためウェブの安定性を損なう場合があるが、本発明のように第2のドラムの直径を第1のドラムの直径よりも小さくした場合には、上部移送部を搬送方向に下向きに傾斜させた場合であっても、下部移送部の搬送方向の上向きの傾斜角度を小さくするか、水平または下向きの傾斜とすることが可能となる。
また、このような効果を好適に得る上で、本発明による光学フィルムの製造方法において、エンドレスベルト(1)の上部移送部(1a)の搬送方向に向かって下向きの傾斜角度θが、水平方向から1〜30°、好ましくは3〜25°であることが好ましい。傾斜角度θが1°以上であれば、不要なリタデーションの発生を抑制する効果が得られる。また、傾斜角度θが30°を超える場合には、流延時にベルトの同伴空気の巻き込みによる気泡が発生する場合があるが、30°以下とすることとで、気泡の発生を抑制できる。
本発明による光学フィルムの製造方法において、エンドレスベルト(1)の走行速度が、80〜200m/minであることが好ましい。本発明は、溶液流延製膜の中でもこのような高速製膜の条件において特に有効に用いることができる。
また、本発明による光学フィルムの製造方法において、流延ダイ(2)からエンドレスベルト(1)の上部移送部(1a)上に流延するドープ又はこのドープが乾燥されて形成されたウェブ(W)の幅が、1800〜2500mmであることが好ましい。このようにウェブの幅が非常に広い場合においては、剥離時の振動が発生し易いが、本発明の方法によれば、このようにウェブの幅が広い場合においても、剥離時の振動発生を有効に防止することができる。
本発明による光学フィルムの製造方法は、溶液流延製膜法により実施されるものであり、以下、これを詳しく説明する。
本発明による光学フィルムの製造方法においては、フィルム材料として、種々の樹脂を用いることができる。
本発明の方法において、好ましく用いられる樹脂としては、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル系樹脂、またセルロースメチルエーテル、セルロースエチルエーテル、セルロースプロピルエーテル等のセルロースエーテル樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、またアルキレンジカルボン酸とジアミンとの重合物のポリアミド樹脂、またアルキレンジカルボン酸とジオールとの重合物、アルキレンジオールとジカルボン酸との重合物、シクロヘキサンジカルボン酸とジオールとの重合物、シクロヘキサンジオールとジカルボン酸との重合物、芳香族ジカルボン酸とジオールとの重合物等のポリエステル樹脂、またポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル樹脂、またポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、アルキレンジイソシアナートとアルキレンジオールの線状重合物等のポリウレタン樹脂等を挙げることができ、これらから選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。
中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。また、相溶性のあるポリマーを2種類以上ブレンドして後で述べるドープ溶解を行なっても良いが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明において好ましく用いられるその他の樹脂としては、エチレン性不飽和単量体単位を有する単独重合体または共重合体を挙げることができる。より好ましくは、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸アルキルの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸アルキルエステル共重合体等のアクリル酸またはメタクリル酸エステルの単独重合体または共重合体が挙げられる。さらにアクリル酸またはメタクリル酸のエステルは、透明性、相溶性に優れるので、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル単位を有する単独重合体または共重合体、特に、アクリル酸またはメタクリル酸メチル単位を有する単独重合体または共重合体が好ましい。具体的にはポリメタクリル酸メチルが好ましい。ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸シクロヘキサンのようなアクリル酸またはメタクリル酸の脂環式アルキルエステルは、耐熱性が高く、吸湿性が低い、複屈折が低い等の利点を有しているものが、好ましい。
以下、セルロースエステルを例に挙げて、本発明を説明する。
本発明において、セルロースエステルおよび有機溶剤を含有するセルロースエステル溶液をドープといい、これをもって溶液流延製膜し、セルロースエステルフィルムを形成せしめるものである。
セルロースエステルは、セルロース由来の水酸基がアシル基などで置換されたセルロースエステルである。例えば、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどのセルロースアシレートや、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートなどが挙げられる。中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートが好ましい。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他の置換基が含まれていてもよい。
セルローストリアセテートの例としては、アセチル基の置換度が2.0以上3.0以下であることが好ましい。置換度をこの範囲にすることで、良好な成形性が得られ、かつ所望の面内リタデーション(Ro)、および厚み方向リタデーション(Rt)を得ることができるのである。アセチル基の置換度が、この範囲より低いと、位相差フィルムとしての耐湿熱性、特に湿熱下での寸法安定性に劣る場合があり、置換度が大きすぎると、必要なリタデーション特性が発現しなくなる場合がある。
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。また、それらから得られたセルロースエステルは、それぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明において、セルロースエステルの数平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。さらに70000〜200000が好ましい。
本発明において、セルロースエステルには、種々の添加剤を配合することができる。
セルロースエステルの溶媒としては、セルロースエステルを溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、また単独で溶解できない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより、溶解できるものであれば使用することができる。一般的には、良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、かつ混合溶媒中には貧溶媒を4〜30重量%含有するものが好ましく用いられる。
この他、使用できる良溶媒としては、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(すなわち、良溶媒)として挙げられる。酢酸メチルを用いると、得られるフィルムのカールが少なくなるため特に好ましい。
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができ、これらの貧溶媒は、単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明では、湿熱下での寸法安定性向上のために、いわゆる可塑剤を配合することが好ましい。可塑剤に湿熱下での寸法安定性改良効果があることは、これまで知られていなかった。可塑剤としては、従来公知のセルロースエステル用の可塑剤が好ましく使用できる。特に相溶性に優れたものが好ましく、例えばリン酸エステルやカルボン酸エステルが好ましい。リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェイト、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジオクチルフタレートおよびジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチルおよびクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができ、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。分子量の大きい可塑剤は、押し出し成形の際の揮発が抑制でき好ましい。これらの例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどのグリコールと二塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのオキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリバレロラクトンなどのラクトンからなる脂肪族ポリエステル類、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー類などが挙げられる。上記可塑剤は、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
上述した可塑剤の含有量は、セルロースエステルに対して1〜30重量%含有させることが好ましい。可塑剤をこの範囲含有させることで、セルロースエステルフィルムの湿熱下での寸法安定性を向上することができる。
本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用できる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
これらの紫外線吸収剤の配合量は、セルロースエステルに対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5重量%が好ましい。使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不十分の場合があり、多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合がある。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
なお、本発明において、上述の可塑剤、および紫外線吸収剤が、厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤としての役割をあわせ有していても良い。
セルロースエステルのアセチル基の置換度が低いと、耐熱性が低下する場合がある。この場合、酸化防止剤を配合することが有効である。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
本発明におけるセルロース誘導体には、滑り性を付与するために、マット剤等の微粒子を添加するのが好ましい。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
無機化合物の微粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫等の微粒子が挙げられる。この中では、ケイ素原子を含有する化合物の微粒子であることが好ましく、特に二酸化ケイ素微粒子が好ましい。二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,R805、OX50、TT600などが挙げられる。
有機化合物の微粒子の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素化合物樹脂、ウレタン樹脂等の微粒子が挙げられる。
微粒子の1次粒径は、特に限定されないが、最終的にフィルム中での平均粒径は、0.05〜5.0μm程度が好ましい。さらに好ましくは、0.1〜1.0μmである。
微粒子の平均粒径は、セルロースエステルフィルムを電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察した際に、フィルムの観察場所における、粒子の長軸方向の長さの平均値を指す。フィルム中で観察される粒子であれば、1次粒子であっても、1次粒子が凝集した2次粒子であってもよいが、通常観察される多くは2次粒子である。
測定方法の一例としては、1つのフィルムにつき、ランダムに10箇所の垂直断面写真を撮影し、各断面写真について、長軸長さが、0.05〜5μmの範囲にある100μm2中の粒子個数をカウントする。このときカウントした粒子の長軸長さの平均値を求め、10箇所の平均値を平均した値を平均粒径とする。
微粒子の場合は、1次粒径、溶媒に分散した後の粒径、フィルムに添加された後の粒径が変化する場合が多く、重要なのは、最終的にフィルム中で微粒子がセルロースエステルと複合し凝集して形成される粒径をコントロールすることである。
上記微粒子の平均粒径が、5μmを超えた場合は、ヘイズの劣化等が見られたり、異物として巻状態での故障を発生する原因にもなる。また、微粒子の平均粒径が、0.05μm未満の場合は、フィルムに滑り性を付与するのが難しくなる。
上記の微粒子は、セルロースエステルに対して、0.04〜0.5重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.25重量%添加して使用される。微粒子の添加量が0.04重量%以下では、フィルム表面粗さが平滑になりすぎて、摩擦係数の上昇によりブロッキングを発生する。微粒子の添加量が0.5重量%を超えると、フィルム表面の摩擦係数が下がりすぎて、巻き取り時に巻きズレが発生したり、フィルムの透明度が低く、ヘイズが高くなるため、液晶表示装置用フィルムとしての価値を持たなくなるので、上記の範囲が必須である。
微粒子の分散は、微粒子と溶剤を混合した組成物を高圧分散装置で処理することが好ましい。本発明で用いる高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。
高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が980N/cm2以上であることが好ましい。さらに好ましくは、装置内部の最大圧力条件が1960N/cm2以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが、好ましい。
上記のような高圧分散装置としては、例えば Microfluidics Corporation社製の超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザーが挙げられ、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザーなどが挙げられる。
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法は、セルロースエステルと溶剤とを含有するドープ(樹脂溶液)を、金属製回転エンドレスベルト(支持体)上に流延してウェブを形成する流延工程と、支持体から剥離されたウェブを乾燥させる乾燥工程と、乾燥したフィルムを巻き取る巻き取り工程を有するものである。
本発明による光学フィルムの製造方法において、光学フィルムが、セルロースエステルフィルムである場合を例にとると、まず、セルロースエステルの溶解は、溶解釜中での撹拌溶解方法、加熱溶解方法、超音波溶解方法等の手段が、通常用いられ、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。また、特開平9−95538号公報記載の冷却溶解方法、あるいはまた特開平11−21379号公報記載の高圧下で溶解する方法なども用いてもよい。
セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤、あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。このとき、セルロースエステルを貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させる装置と、良溶剤と混合して溶解する装置を別々に分けても良い。
セルロースエステルの溶解に用いる加圧容器の種類は、特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができればよい。加圧容器には、その他、圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行なってもよい。加熱は外部から行なうことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、使用する溶剤の沸点以上で、2種類以上の混合溶剤の場合は、沸点が低い方の溶剤の沸点以上の温度に加温しかつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましい。加熱温度が高すぎると、必要とされる圧力が大きくなり、生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は20〜120℃であり、30〜100℃が、より好ましく、40〜80℃の範囲がさらに好ましい。また圧力は、設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
セルロースエステルと溶剤の他に、必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
セルロースエステルの溶解後は、冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して、熱交換器などで冷却し、得られたポリマーのドープを製膜に供するが、このときの冷却温度は、常温まで冷却してもよい。
原料としてのセルロースエステルの粒径dは、0.1mm≦d≦20mmの粒子が60重量%以上の比率で構成されることが、セルロースエステルの凝集塊を発生させることなく、良好な溶解性を得るために、望ましい。
原料セルロースエステルと溶媒の混合物は、撹拌機を有する溶解釜で溶解し、このとき、撹拌翼の周速は少なくとも0.5m/秒以上で、かつ30分以上撹拌して溶解することが好ましい。
本発明の方法において、溶解釜で溶解したセルロースエステルのドープを、ポンプにより濾過機に送り、濾過機において濾過する。この濾過は、通常の方法で行なうことができるが、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加圧下加熱しながら濾過する方法が、濾過材前後の差圧(以下、濾圧というることがある)の上昇が小さく、好ましい。
本発明の方法において、セルロースエステルドープは、これを濾過することによって、異物、特に液晶画像表示装置において、画像と認識し間違う異物は、これを除去しなければならない。偏光板用保護フィルムの品質は、この濾過によって決まるといってもよい。
濾過に使用する濾材は、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾過材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行なわなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。
このため、本発明の方法において、セルロースエステルドープに使用する濾材は、絶対濾過精度0.020mm以下のものが好ましい。濾紙としては、例えば市販品の安積濾紙株式会社のNo.244や277等を挙げることができ、好ましく用いられる。
濾材の材質には、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
ドープ濾過の好ましい温度範囲は、45〜120℃であり、45〜70℃が、より好ましく、45〜55℃の範囲であることがさらに好ましい。
濾圧は、3500kPa以下であることが好ましく、3000kPa以下が、より好ましく、2500kPa以下であることがさらに好ましい。なお、濾圧は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールできる。こうして得られたドープは、ストックタンクに保管され、脱泡された後、流延に用いられる。
このように、溶解釜中で、あらかじめドメイン形成材料とセルロースエステルと溶媒とを混合してドープを調製する場合は、通常、ドメイン形成材料をインライン添加する必要はない。しかしながら、必要に応じて、ドメイン形成材料の全部もしくは一部をインラインで混合することができる。
例えば、溶解釜中で適当な溶媒に混合または分散された不定形粒子分散液は、ポンプにより濾過機に送り、濾過機において濾過する。得られたドープは、第2ストックタンクに保管され、脱泡される。
第1ストックタンクからポンプによって導管中を移行したセルロースエステル溶液(もしくはドープ原液と称する場合がある)と、第2ストックタンクからポンプによって導管中を移行したドメイン形成材料溶液(不定形粒子分散液)とは、合流管で合流させる。
合流管の直前には、濾過器が配置されており、例えば濾材交換等に伴い経路から発生する、塊や大きな異物を、送液中の不定形粒子分散液あるいはドープ原液から除去することができる。ここでは、耐溶剤性を有する金属製の濾過器が好ましく用いられる。
濾材としては、耐久性の観点から金属、特にステンレス鋼が好ましい。目詰まりの観点から60〜80%の空孔率を有していることが好ましい。最も好ましくは、絶対濾過精度30〜60μmであって、かつ空孔率60〜80%の金属製濾材で濾過することであり、これにより、長期に亘り、確実に粗大な異物を除くことができ好ましい。絶対濾過精度30〜60μmでかつ空孔率60〜80%の金属製濾材としては、例えば日本精線株式会社製ファインポアNFシリーズのNF−10、同NF−12、同NF−13等を挙げることができる。
上記のようにして合流した両液は、導管内を層状で移行するためそのままでは混合しにくい。そこで、両液を合流後、インラインミキサーのような混合機(19)で十分に混合しながら次工程に移送する。
本発明で使用できるインラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器、Hi−Mixer、東レエンジニアリング製)が好ましい。
図1は、本発明の溶液流延製膜方法により光学フィルムを製造する装置の一例を示すものである。
同図を参照すると、溶解釜で調整されたドープを、導管によって流延ダイ(2)に送液し、無限に移行する例えばエンドレスベルトよりなる支持体(1)上の流延位置に、流延ダイ(2)からドープを流延する工程である。
流延ダイ(2)としては、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。
流延ダイ(2)は、内部スリット壁面と支持体(1)表面とのなす角度を40〜90°にするのが、好ましく、特に60〜75°が好ましい。
流延ダイ(2)のダイリップと支持体(1)表面との間隙は、0.2〜10mmの間隙を取って設置されるのが好ましく、さらに0.5〜5mmの間隙が、より好ましい。流延ダイ(2)のスリットのギャップは0.05〜1.5mmが好ましく、0.15〜1.0mmが、より好ましい。
支持体(1)の表面粗さRaは、0.0001〜1μmであり、0.0003〜0.1μmが、より好ましく、0.0005〜0.05μmがさらに好ましい。
支持体(1)としてエンドレスベルトを具備する図示の製膜装置では、該エンドレスベルト(1)は一対のドラムおよびその中間に配置されかつエンドレスベルト(1)の上部移送部(1a)および下部移送部(1b)をそれぞれ裏側より支えている複数のサポートロール(図示略)より構成される。
また、エンドレスベルト(1)の両端のドラムの一方、もしくは両方に、エンドレスベルト(1)に張力を付与する駆動装置が設けられ、これによってエンドレスベルト(1)は張力が掛けられて張った状態で使用される。
製膜時のエンドレスベルト(1)の温度は、一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で流延することが好ましい。このとき、周囲の雰囲気湿度は露点以上に制御する必要がある。
また、エンドレスベルト(1)搬送速度が10m/分以上の場合には、流延ダイ(2)のリップから出てくる流延膜に減圧を掛けてエア混入や、フィルム幅手方向に横段状のスジをつくる原因となる流延リボンのばたつきを抑制するため、流延ダイ(2)上流側に減圧チャンバを設け、10〜600Pa減圧するのが好ましく、さらに好ましくは10〜200Paである。
減圧チャンバの下部端面と、エンドレスベルト(1)表面との間隙は、0.5〜5mmの範囲が吸引風量が大きくなり過ぎず、それにより、流延ダイリップ端部のドープ乾燥皮膜の発生が抑制されるため望ましい。
また、製膜速度を上げるために、加圧流延ダイ(2)をエンドレスベルト(1)上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層製膜してもよい。
エンドレスベルト(1)上では、ウェブ(W)がエンドレスベルト(1)から剥離ロール(6)によって剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させるため、ウェブ(W)中の残留溶媒量が210重量%以下まで乾燥させるのが好ましく、60〜210重量%が、より好ましい。また、支持体(1)からウェブ(W)を剥離するときのウェブ温度は、0〜30℃が好ましい。また、ウェブ(W)は、支持体(1)からの剥離直後に、支持体(1)密着面側からの溶媒蒸発で温度が一旦急速に下がり、雰囲気中の水蒸気や溶剤蒸気など揮発性成分がコンデンスしやすいため、剥離時のウェブ温度は5〜30℃がさらに好ましい。
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
エンドレスベルト(1)上に流延されたドープにより形成されたウェブ(W)を、エンドレスベルト(1)上で加熱し、エンドレスベルト(1)から剥離ロール(6)によってウェブ(W)が剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法、および/またはエンドレスベルト(1)の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等がある。
エンドレスベルト(1)とウェブ(W)を剥離ロール(6)によって剥離する際の剥離張力は、通常20〜25kg/mで剥離が行なわれるが、より薄膜化された条件(例えば光学フィルムの厚みが40μm以下となる場合)では、剥離の際にウェブ(W)にシワが入りやすいため、剥離できる最低張力〜17kg/mで剥離することが好ましく、さらに好ましくは、最低張力〜14kg/mで剥離することである。
エンドレスベルト(1)から剥離後のウェブ(W)は、初期乾燥ゾーン(3)に導入する。初期乾燥ゾーン(3)内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール(7)によってウェブ(W)が蛇行せられ、その間にウェブ(W)は初期乾燥ゾーン(3)の底の前寄り部分から吹込まれ、初期乾燥ゾーン(3)の天井の後寄り部分から排出せられる温風(15)によって乾燥される。
本発明による光学フィルムの製造方法においては、エンドレスベルト(1)からウェブ(W)を剥離する時のウェブ(W)の残留溶媒量を120〜210重量%、テンターに入る時のウェブの残留溶媒量を5〜40重量%とし、これらの間の初期乾燥ゾーン(3)の乾燥温度を60〜110℃とし、該初期乾燥ゾーン(3)において、ビッカース硬度(Hv)が1000以上、2000以下であり、かつ表面粗さRmaxが1.0〜3.0sである搬送ロール(7)を、少なくとも1箇所で、好ましくは1〜20箇所、望ましくは1〜10箇所、特に望ましくは剥離直後から初期乾燥の初期において使用するのが好ましい。
ここで、エンドレスベルトからウェブを剥離する時のウェブの残留溶媒量が120重量%以上であれば、支持体からウェブの剥離力が高くなることによって剥離時の抵抗が生じてフィルムに横段ムラが発生することを抑制することができ、高い物理的強度のフィルムを得ることができる。またエンドレスベルトからウェブを剥離する時のウェブの残留溶媒量が210重量%以下とすることによって、ウェブが安定となり搬送が安定化され、またウェブが軟弱になることによるオサレ発生故障も起きにくくなるので、好ましい。
また、テンターに入る時のウェブの残留溶媒量が5重量%以上であれば、所望の光学特性の安定性が得られ、また高い物理的強度のフィルムが得られるとともに、初期乾燥能力を上げる必要がなく、この間でのフィルム収縮に伴う搬送性の劣化が生じないので、好ましい。そして、テンターに入る時のウェブの残留溶媒量が40重量%以下であれば、延伸時のフィルムが軟弱にならず、フィルムに対する延伸によるリタデーション発生の効果が十分得られるため、所望の光学特性の安定性、また所望の光学特性値を得やすいため好ましい。
また、初期乾燥ゾーンの乾燥温度が60℃以上であれば、十分な乾燥能力が得られるため、好ましい。そして、初期乾燥ゾーンの乾燥温度が110℃以下であれば、その間のフィルム収縮に伴う搬送性の劣化が生じにくく、生産設備の耐用温度を維持することが容易になるので、好ましい。
また、初期乾燥ゾーンにおいて、ビッカース硬度(Hv)が1000以上であれば、搬送安定化が得られ、またロールに対する皮膜等の付着が起きにくくなり、さらにはロールにキズがつきにくくなるなど、ロール自体の剛性が得られやすいので、好ましい。そして、初期乾燥ゾーンにおいて、ビッカース硬度(Hv)が2000以下であれば、ロール製造時にコストアップが生じず、好ましい。
また、搬送ロールの表面粗さRmaxが1.0s以下であれば、ロール製造時にコストアップが生じず、また搬送安定化が得られるので、好ましい。
そして、搬送ロールの表面粗さRmaxが3.0s以下であれば、ロールに対する皮膜等の付着が起きにくくなるので、好ましい。
本発明による光学フィルムの製造方法において、前記初期乾燥ゾーンでのウェブ幅手方向の収縮率を、5%以下とするのが好ましい。
ここで、初期乾燥ゾーンでのウェブ幅手方向の収縮率が5%以下であれば、フィルム搬送が安定し、ツレ故障、シワ発生故障などが生じにくくなるので、好ましい。
本発明による光学フィルムの製造方法において、初期乾燥ゾーンにおいて用いる搬送ロール表面の純水による接触角が、50〜180度であることが好ましい。
ここで、初期乾燥ゾーンにおいて用いる搬送ロール表面の純水による接触角が50度以上であれば、ロールに対する皮膜等の付着が起きにくくなるので、好ましい。また初期乾燥ゾーンにおいて用いる搬送ロール表面の純水による接触角が180度以下であれば、ロール製造コストアップが生じず、好ましい。
本発明による上記の光学フィルムの製造方法によって製造された光学フィルムは、前記初期乾燥ゾーンの搬送張力が200〜350Nであるのが好ましい。
ここで、初期乾燥ゾーンの搬送張力が200N以上であれば、所望の光学特性や高い物理的強度が得られ、また安定にフィルムが搬送できるので、好ましい。また初期乾燥ゾーンの搬送張力が350N以下であれば、所望の光学特性が得られ、また安定なフィルム搬送ができるので、好ましい。
さらに、初期乾燥ゾーン(3)において用いる搬送ロール(7)表面の純水による接触角は、60〜180度であるのが好ましい。このように、搬送ロール(7)の純水接触角が60度以上である場合、表面エネルギーが70mN/mm以下と低くなっていることから、フィルム(ウェブ)搬送中に生じるセルロースエステル等のフィルム原料由来の皮膜などのロール付着が抑えられ、ロール付着に起因するフィルムのオサレ故障がなくなり、光学特性が安定する。
初期乾燥ゾーン(3)において用いる搬送ロール(7)の母材は、アルミニウム、ステンレスなどの金属であっても炭素繊維強化プラスチックなどのプラスチックであってもよい。またこれを表面処理したものであっても良い。表面処理はメッキ、溶射、塗膜形成など何れであってもよい。メッキとしては、ニッケル−リン複合メッキ、ニッケル−ホウ素複合メッキなどを使用することができる。溶射としては、タングステンカーバイド溶射、アルミナセラミック溶射などを使用することができる。塗膜形成としてはPVDコーティング、CVDコーティングなどを使用することができる。これらは一般的なロール製造メーカーによって製作することができ、それを購入することができる。
つぎに、本発明による光学フィルムの製造方法において、フィルムの延伸工程では、ウェブ(またはフィルム)(W)の両側縁部をクリップ等で固定して延伸するテンター方式が知られており、平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。
特に、エンドレスベルト(1)から剥離した後の初期乾燥ゾーン(3)では、溶媒の蒸発によってウェブ(またはフィルム)は幅手方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。
テンター(4)による延伸工程においては、例えばセルロースエステルフィルムを製造する際の延伸倍率は、製膜方向もしくは幅手方向に対して、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍である。2軸方向に延伸する場合、高倍率で延伸する側が、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍であり、もう一方の方向の延伸倍率は0.8〜1.5倍、好ましくは0.9〜1.2倍に延伸することができる。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸は、テンター(4)によって行なうことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
なお、テンター(4)による延伸工程においては、テンター(4)の底の前寄り部分から吹込まれ、テンター(4)の天井の後寄り部分から排出せられる温風(16)によってウェブ(W)が、延伸と共に乾燥されている。
テンター(4)による延伸工程の後に、後乾燥装置(5)を設けることが好ましい。後乾燥装置(5)内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール(17)によってウェブ(W)が蛇行せられ、その間にウェブ(W)が乾燥せられるものである。また、後乾燥装置(5)でのフィルム搬送張力は、ドープの物性、剥離時およびフィルム搬送工程での残留溶媒量、後乾燥装置(5)での温度等に影響を受けるが、30〜250N/mが好ましく、60〜150N/mがさらに好ましい。80〜120N/mが最も好ましい。
なお、ウェブ(またはフィルム)(W)を乾燥させる手段は、特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点から熱風で乾燥するのが好ましく、例えば後乾燥装置(5)の底の前寄り部分から吹込まれ、後乾燥装置(5)の天井の後寄り部分から排出せられる温風(17)によって乾燥される。乾燥温度は40〜160℃が好ましく、50〜160℃が平面性、寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。この場合、乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは勿論のことである。
乾燥時のウェブ搬送張力は、30〜300N/幅mであり、40〜270N/幅mが、より好ましい。
乾燥工程及び/又は熱矯正装置の前及び/又は後に、ウェブ(またはフィルム)(W)表面のクリーン化装置が配置されるのが、好ましい。
クリーン化装置は、搬送途中のウェブ(またはフィルム)(W)に対し、超音波振動を与えると共に表面に高圧風を吹き当てて付着物を吹き飛ばして吸引し、付着している粉塵などを除去するものである。この他、火炎処理(コロナ処理、プラズマ処理)を行なう方式、粘着ロールを設置する方式など、公知の手段・方法を特別の制限なく用いることができる。
なお、配置するクリーン化手段は、単一であってもよいし、2以上の複数であってもよい。
ウェブ(W)に対する粉塵などの付着は、静電気の作用による場合が多いので、上記のクリーン化装置の前に除電手段、例えば、除電バーを配置してウェブ(W)の静電気を除去することが好ましい。除電バーとしては、公知のものを特別の制限なく用いることができる。
乾燥工程では、ウェブ(またはフィルム)(W)に含有される可塑剤が蒸発し、ロールや壁面においてコンデンスする現象を抑制する対策として、単位時間当たり供給風量に対して特定量以上の新鮮なガスを流入させることが好ましい。そして、供給する新鮮ガスの量は、全供給風量の5〜50%に設定することが好ましい。
新鮮ガス供給量を5〜50%にしているのは、5%未満では、新鮮ガス量が少なすぎて可塑剤コンデンスを抑制しきれないためであり、50%を超えると新鮮ガス量が多すぎ、ランニングコストで無駄が多くなるためである。
なお、乾燥工程あるいは熱矯正工程室あるいはそれらから出てきたフィルムの冷却工程から、フィルムを出す際のフィルム温度は、60℃以下とすることが好ましい。
ここで、60℃を超える温度で矯正、冷却工程ボックスから搬出した場合には、可塑剤のコンデンスが発生しやすい条件下にあるからである。
後乾燥装置(5)での搬送方向へフィルムの伸びを防止する目的で、テンションカットロールを設けることが好ましい。乾燥終了後、巻き取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。
つぎに、搬送乾燥工程を終えた光学フィルムに対し、巻取工程に導入する前段において、エンボス加工装置によりフィルムにエンボスを形成する加工が行なわれる。エンボス加工装置としては、特開昭63−74850号公報に記載されている装置が利用できる。
ここで、エンボスの高さh(μm)は、フィルム膜厚の0.05〜0.3倍の範囲、エンボスの幅は、フィルム幅Lの0.005〜0.02倍の範囲に設定するのが好ましい。例えばフィルム膜厚40μm、フィルム幅100cmであるとき、エンボスの厚みは2〜12μm、エンボスの幅は5〜30mmに設定するのが好ましい。
エンボスは、フィルムの両面に形成してもよい。この場合、エンボスの高さh1+h2(μm)は、フィルム膜厚の0.05〜0.3倍の範囲、エンボスの幅は、フィルム幅の0.005〜0.02倍の範囲に設定するのが好ましい。例えばフィルム膜厚40μmであるとき、エンボスの高さh1+h2(μm)は2〜12μmに設定する。エンボスの幅は5〜30mmに設定するのが好ましい。
乾燥が終了したフィルム(F)を巻取り装置(18)によって巻き取り、光学フィルムの元巻を得る工程である。乾燥を終了するフィルム(F)の残留溶媒量は、0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下とすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
フィルムの巻き取り方法は、一般に使用されているワインダーを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の張力をコントロールする方法があり、それらを使い分ければよい。
巻取りコア(巻芯)への、フィルムの接合は、両面接着テープでも、片面接着テープでもどちらでも良い。
初期巻取開始時は、巻取り張力は280N/m幅以下、エンボス部のみタッチロール巻取の押圧力+巻取初期張力が60N/m幅以上となるよう巻取るのが好ましい。
光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりフィルムとして、通常20〜85μmの範囲が好ましく、特に液晶画像表示装置用フィルムとしては25〜80μmの範囲が用いられる。
膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度等をコントロールするのがよい。
また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが、好ましい。
本発明の方法により製造された光学フィルムは、抗張力が、MD方向、TD方向共に90〜170N/mm2であることが好ましく、特に120〜160N/mm2であることが好ましい。
含水率としては0.1〜5%が好ましく、0.3〜4%がより好ましく、0.5〜2%であることがさらに好ましい。
本発明の方法により製造された光学フィルムは、透過率が90%以上であることが望ましく、さらに好ましくは92%以上であり、さらに好ましくは93%以上である。また、ヘイズは0.5%以下であることが好ましく、特に0.1%以下であることが好ましく、0%であることがさらに好ましい。
本発明の方法により製造された光学フィルムは、下記式で定義される面内リタデーション(Ro)が、温度23℃、湿度55%RHの条件下で30〜300nm、厚み方向リタデーション(Rt)が、温度23℃、湿度55%RHの条件下で70〜400nmであることが好ましい。
Ro=(nx−ny)×d
Rt={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、Roは面内リタデーション値、Rtは厚み方向リタデーション値、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率(屈折率は波長590nmで測定)、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。
なお、リタデーション値Ro、Rtは、自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、KOBRA−WIS/RT(王子計測機器株式会社製)を用いて、温度23℃、湿度55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることができる。
本発明の方法により製造された光学フィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、高い物理的強度、耐久性および寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。
ここで、偏光フィルムは、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムのような延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光フィルム自身では、十分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルローストリアセテートフィルムを接着して偏光板としている。
上記偏光板に、本発明の方法により製造された光学フィルムを位相差フィルムとして保護フィルム上に貼り合わせて作製してもよいし、また本発明の方法により製造された光学フィルムを位相差フィルムおよび保護フィルムの機能も兼ねて、直接偏光フィルムと貼り合わせて作製してもよい。貼り合わせる方法は、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行なうことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。さらに、若干前述したが、長手方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光フィルムと長尺の本発明の方法により製造された位相差フィルムとを貼り合わせることによって長尺の偏光板を得ることができる。偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
上記の偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、セルロースエステルフィルムをアルカリケン化処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬、延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリケン化処理とは、水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ液中に漬ける処理のことをいう。
本発明の方法により製造された光学フィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布あるいは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
また偏光板は、上記本発明の方法により製造された光学フィルムが、偏光フィルムの両側に配置された2枚の偏光板保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方を構成するもので、このようにして得られた偏光板が、液晶セルの片面または両面に設けられ、これを用いて、液晶表示装置が得られる。
本発明の方法により製造された光学フィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、耐久性および寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。
さらに、この偏光板を用いた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができるものである。
本発明による液晶表示装置は、液晶層を挟持する一対の基板からなるIPSモードにて駆動される液晶セルと当該液晶セルの両側に直交状態に配置される一対の偏光板とを有する液晶表示装置であって、少なくとも一方の偏光板の液晶セル側に上記本発明の方法により製造された光学フィルムが備えられているものである。
また本発明は、特に、本発明の方法により製造された光学フィルムを用いた広範囲にわたり高コントラスト比を有する見やすい表示を実現可能な画像表示装置、特にIPSモードで動作する液晶表示装置を提供するものである。
なお、本発明の方法により製造された光学フィルムは、その他、反射防止用フィルムあるいは光学補償フィルムの基材としても使用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1
(ドープ組成)
セルローストリアセテート 100重量部
(Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1)
トリフェニルフォスフェート 8重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
メチレンクロライド 440重量部
エタノール 40重量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5重量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5重量部
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 0.2重量部
上記のドープ組成の材料を、密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。ついで、図1に示す溶液流延製膜装置を用い、流延ダイ(2)から温度30℃のドープを、幅2400mmのステンレス鋼製のエンドレスベルト(1)上に、幅2200mmで均一に流延した。エンドレスベルト(1)の走行速度は、100m/minとした。
またこのとき、ドープを、エンドレスベルト(1)の上部移送部(1a)の第1のドラム寄り部分のベルト上面に流延した。ここで、第1のドラム(11)の直径を3000mm、第2のドラム(12)の直径を2800mmとして、第1のドラム(11)の直径を第2のドラム(12)の直径よりも大きくした。第1のドラム(11)の直径は、第2のドラム(12)の直径に対して1.07倍であった。
なお、図4に示すように、エンドレスベルト(1)の上部移送部(1a)は、水平状(傾斜角度θ=0°)とした。
そして、エンドレスベルト(1)上では、ウェブ(W)側の乾燥機からは温度45℃の温風を10m/秒の風速で送り、エンドレスベルト(1)裏面側の乾燥機からは温度40℃の温風を10m/秒の風速で送り、溶媒を蒸発させ、ウェブ(W)を乾燥した(溶媒蒸発工程)。
つぎに、ウェブ(W)を剥離ロール(6)によってエンドレスベルト(1)の第1のドラム巻回移送部(1c)で剥離した(剥離工程)。剥離直前におけるウェブ(W)の残留溶媒量は80重量%であった。
ついで、剥離後のウェブ(W)は初期乾燥ゾーン(3)に導入する。初期乾燥ゾーン(3)内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール(7)によってウェブ(W)が蛇行せられ、その間にウェブ(W)を80℃の温風(15)で1分間乾燥した(第1乾燥工程)。
乾燥後のフィルム(ウェブ)(F)を延伸工程の2軸延伸テンター(4)に導入し、フィルム(ウェブ)(F)の残留溶媒量が3〜10重量%にあるときに、100℃の温風(16)による雰囲気下で、フィルム(ウェブ)(F)を幅手方向に1.25倍に延伸するとともに、乾燥した。
つぎに、延伸後のフィルム(ウェブ)(F)を、後期乾燥装置(5)に導入した。後期乾燥装置(5)では、鏡面搬送ロールよりなる多数の非駆動のフリーロールによって構成される搬送ロール(8)により搬送しながら、温度125℃の乾燥風(17)によって乾燥させた(第2乾燥工程)。
後期乾燥装置(5)による乾燥後に、セルローストリアセテートフィルム(F)を巻取り装置(18)によって巻き取り、最終的に温度20℃に冷却して、膜厚40μm、および幅2200mmのセルローストリアセテートフィルム(F)を得た。巻取り装置(18)によって巻き取った。このフィルムは、偏光板保護フィルムとして使用するものである。
実施例2〜5
上記実施例1の場合と同様に、ドープ組成を用いて、最終製品幅2200mmのセルローストリアセテートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、実施例2では、第1のドラム(11)の直径を3000mm、および第2のドラム(12)の直径を2500mmとし、第1のドラム(11)の直径が、第2のドラム(12)の直径に対し1.2倍とした点、実施例3では、第1のドラム(11)の直径を3000mm、および第2のドラム(12)の直径を2000mmとし、第1のドラム(11)の直径が、第2のドラム(12)の直径に対し1.5倍とした点、実施例4では、第1のドラム(11)の直径を3000mm、および第2のドラム(12)の直径を800mmとし、第1のドラム(11)の直径が、第2のドラム(12)の直径に対し3.75倍とした点、また実施例5では、第1のドラム(11)の直径を3000mm、および第2のドラム(12)の直径を500mmとし、第1のドラム(11)の直径を、第2のドラム(12)の直径に対し6.0倍とした点にある。
比較例1
比較のために、上記実施例1の場合と同様に、セルローストリアセテートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、第1のドラム(11)の直径を2000mm、および第2のドラム(12)の直径を2000mmとし、後側ドラム(11)の直径を、前側ドラム(12)の直径に対し1.0倍とした点にある。
なお、実施例1〜5および比較例1における上部移送部(1a)の傾斜角度θは、水平(0°)とした。
<横段状故障の評価>
そして、得られた実施例1〜5および比較例1のセルローストリアセテートフィルムについて、フィルムの端部に、搬送方向に対して垂直にのびる横段状故障が発生しているか、どうかを、目視で観察し、下記の基準により評価した。得られた結果を、下記の表1に示した。
横段状故障評価基準
◎:横段状故障が確認できない
○:横段状故障がわずかに確認できる
×:横段状故障が確認できる
なお、下記の表1には、第1のドラム(11)および第2のドラム(12)の直径、および第2のドラム(12)の直径に対する第1のドラム(11)の大きさの比をあわせて記載した。
(偏光膜の作製)
つぎに、上記実施例1〜5および比較例1によるセルローストリアセテートフィルムを用いて液晶表示装置を作製するために、まず、偏光膜を作製した。すなわち、厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、温度110℃、延伸倍率5倍で一軸延伸した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、ついでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し、偏光膜を得た。
(偏光板の作製)
ついで、下記の工程1〜工程5に従って、上記の偏光膜の両面に、上記実施例1〜3および比較例1で作製した膜厚40μmのセルローストリアセテートフィルム(偏光板保護フィルム)を貼り合わせて偏光板を作製した。
工程1:上記偏光板保護フィルムを、温度50℃の1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60秒間浸漬し、ついで水洗し乾燥して、偏光膜と貼合する側を鹸化した偏光板保護フィルムを得た。
工程2:偏光膜を固形分2重量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、この偏光膜の両側に、工程1で鹸化処理した偏光板保護フィルムを積層して配置した。
工程4:工程3で積層した偏光膜と、偏光板保護フィルムを、圧力20〜30N/cm2 、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:工程4で作製した偏光膜と偏光板保護フィルムとを貼合わせた試料を、80℃の乾燥機中に2分間乾燥し、偏光板を作製した。
(液晶表示装置の作製)
ついで、市販の液晶TV(シャープ社製、アクオス32AD5)の2枚の偏光板を剥離し、上記作製した偏光板をそれぞれ液晶セルのガラス面の両面に貼合して、液晶表示装置を作製した。
その際、偏光板の貼合の向きは、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行なった。
(視認性評価)
上記実施例1〜5および比較例1によるセルローストリアセテートフィルムを用いて作製した各液晶表示装置について、視認性の性能を評価するために、液晶表示装置を、温度23℃、湿度55%RHの環境で、液晶表示装置の液晶TV表示装置のバックライトを点灯して30分間そのまま放置とした後、表示装置に光学的ムラが生じているか、どうかの視認性を、下記の基準により評価し、得られた結果を、下記の表1にあわせて示した。
視認性評価基準
◎:全くムラが無い
○:弱いムラが数個程度ある
×:規則性のある強いムラがある
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜3で作製したセルローストリアセテートフィルムでは、横段状故障が確認できないか、または横段状故障が確認できてもごくわずかであり、偏光板保護フィルムとして偏光子の両面に使用した場合においても、液晶表示装置における視認性の評価において、全くムラが無いか、または弱いムラが数個程度あるだけであり、使用に問題がないものであった。
実施例6〜9
上記実施例3の場合と同様に、ドープ組成を用いて、最終製品幅2200mmのセルローストリアセテートフィルムを作製するが、上記実施例3の場合と異なる点は、下記の表2に示すように、エンドレスベルト(1)の上部移送部(1a)の搬送方向に向かって下向きの傾斜角度θを種々変更させた点にある。すなわち、
実施例3では、後側ドラム(11)の直径を3000mm、および前側ドラム(12)の直径を2000mmとし、エンドレスベルト(1)の上部移送部(1a)の搬送方向に向かって下向きの傾斜角度θを0°としたのに対し、実施例6では、その傾斜角度θを0.5°、実施例7では、その傾斜角度θを2.0°、実施例8では、その傾斜角度θを25°、実施例9では、その傾斜角度θを35°とした。
<フィルムの光学的性質の評価>
そして、得られた実施例3および6〜9のセルローストリアセテートフィルムの光学的性質を評価するために、各フィルムの面内リタデーション値(Ro)を、自動複屈折率計測定装置(KOBRA−WIS/RT、王子計測機器株式会社製)を用いて、温度23℃、湿度55%RHの環境下で、波長が590nmで測定した。
そして、各フィルムの10点の面内リタデーション値(Ro)を測定し、その平均値に対する面内リタデーション値(Ro)のバラツキを算出し、下記の基準により評価した。得られた結果を、下記の表2に示した。
フィルムの光学的性質の評価基準
◎:Roのバラツキが3%未満で、実用上最良のレベル
○:Roのバラツキが3%以上5%未満で、実用上良好なレベル
△:Roのバラツキが5%以上10%未満で、実用上問題のないレベル
×:Roのバラツキが10%を超え、問題のあるレベル
なお、下記の表2には、エンドレスベルト(1)の上部移送部(1a)の傾斜角度θ(°)を、あわせて記載した。
<フィルムの泡の巻き込みの評価>
つぎに、上記実施例3および6〜9で作製したセルローストリアセテートフィルムに、泡が巻き込まれているか、どうかを、目視により確認し、下記の基準により評価した。得られた結果を、下記の表2にあわせて示した。
フィルムの泡の巻き込みの評価基準
◎:泡の巻き込みが確認されない
○:泡の巻き込みがわずかに確認されるが、実用上問題のないレベル
×:泡の巻き込みによる面故障が確認され、実用上問題のあるレベル
上記表2の結果から明らかなように、傾斜角度θが比較的小さい本発明の実施例3および6〜8で作製したセルローストリアセテートフィルムによれば、泡の巻き込みが確認されなかった。なお、実施例9では、エンドレスベルト(1)の上部移送部(1a)の下向きの傾斜角度θを傾けすぎたことによって、ウェブ(流延膜)(W)とベルト上部移送部(1a)との間隙がせまくなり、ベルト同伴空気が逃げ場を失い、ウェブ(流延膜)(W)に泡の巻き込みがわずかに確認されたものと考えられる。