JP2006256184A - セルロースエステルフィルム、及びその製造方法、セルロースエステルフィルムを用いた偏光板 - Google Patents
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Abstract
【課題】液晶表示装置(LCD)に用いられる偏光板用保護フィルム等に利用することができ、押され故障がない高品質なセルロースエステルフィルム、及びその製造方法を提供する。このセルロースエステルフィルムを用いて、光学特性に優れた偏光板及びこの偏光板を用いた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができる。
【解決手段】溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法であって、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を20〜120重量%となし、ウェブが支持体と接触していた面が移送ロールに接触する際のウェブの平均残留溶媒量を12〜80重量%、及び同ウェブの表面残留溶媒量を0.5〜10重量%となし、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧を500〜3000Paとし、かつウェブがロール1本当たりと接触する時間を0.01〜0.72secとする。
【選択図】図1
【解決手段】溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法であって、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を20〜120重量%となし、ウェブが支持体と接触していた面が移送ロールに接触する際のウェブの平均残留溶媒量を12〜80重量%、及び同ウェブの表面残留溶媒量を0.5〜10重量%となし、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧を500〜3000Paとし、かつウェブがロール1本当たりと接触する時間を0.01〜0.72secとする。
【選択図】図1
Description
本発明は、液晶表示装置(LCD)に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルム等にも利用することができるセルロースエステルフィルム、及びその製造方法、さらには、セルロースエステルフィルムを用いた偏光板に関するものである。
一般に、液晶表示装置(LCD)は、低電圧かつ低消費電力でIC回路への直結が可能であり、しかも薄型化が可能であるから、ワードプロセッサーやパーソナルコンピュータ等の表示装置として広く使用されている。ところで、このLCDの基本的な構成は、液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、LCDにおいては、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によってLCDの性能が大きく左右される。偏光板は偏光子と、偏光子の両面に積層された保護フィルムとよりなる。
近年、液晶表示装置(LCD)の薄型軽量化、大型画面化、高精細化の開発が進んでいる。それに伴って、偏光板用の保護フィルムもますます薄膜化、広幅化、高品質化の要求が強くなり、液晶表示装置の高画質化に伴って光学フィルムの品質の要求レベルも厳しくなってきている。
偏光板用保護フィルムには、一般的にセルロースエステルフィルムが広く使用されているが、最近の大画面化に伴って、フィルム幅が広く、長い巻長のフィルム原反が要望されている。
従来から溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、何らかの原因物による剥離直後のウェブのロールから受けるダメージ(押され故障)が問題となっていた。この押され故障が発生したフィルムを偏向板化すると重大な欠陥になることが判っている。
膜が柔らかいセルロースアセテートプロピオネートのフィルムでは、この押され故障が発生しやすいために、特に重要な課題となっていた。
一方、溶液流延製膜法において、流延時の皮膜、可塑剤飛散等による剥離近傍ロールの異物付着が発生することがある。従来からこの原因物除去の努力がなされてきたが、未だ充分ではない状況である。
このような溶液流延製膜法における剥離ロール関連の特許文献には、従来、つぎのようなものがある。
特開2002−292658号公報 本出願人は、先に、この特許文献1において、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法の発明を提案した。この特許文献1では、エンドレスベルトから剥離したウェブより析出、蒸発し易い可塑剤や紫外線吸収剤が剥離ロール及び移送ロールに付着しにくくするために、セルロースエステル溶液をエンドレスベルトに流延して得られたウェブをエンドレスベルトから剥離ロールにより剥離するさいのウェブの残留溶媒量、及び剥離ロール及び剥離ロールから乾燥装置までの移送ロールのビッカース硬度を規定していた。
しかしながら、上記特許文献1に記載の先提案によるセルロースエステルフィルムの製造の方法では、ウェブがロールから受けるダメージ(押され故障)に対して、面圧や接触時間については、規定されておらず、従来の問題を解決するための明確な指標や対応はなされていない。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、押され故障がない高品質なセルロースエステルフィルム、及びその製造方法、並びにセルロースエステルフィルムを用いた偏光板を提供することにある。
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、溶液流延製膜法においては、ドープ流延時の皮膜や可塑剤の飛散等による剥離近傍ロールに異物付着が発生することがあるが、剥離近傍のロール上に、このような異物が多少存在しても、適切なロール面圧条件とロール接触時間の規定により、押され故障のない高品質のセルロースエステルフィルムが得られ、上記の従来の問題を解決し得ることを見出した。
すなわち、ロールに接触する際のウェブの残留溶媒量、ウェブがロールから受ける面圧、ウェブがロール1本当たりと接触する時間、ロールの硬度、表面粗さ、及びロールの表面エネルギー等を規定することにより、押され故障のない高品質の良好なセルロースエステルフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、溶液流延製膜法によりセルロースエステルのドープを無限移行する無端の支持体上に流延ダイから流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(以下、ウェブとも呼ぶ)を形成した後、これを剥離ロールで剥離し、これを移送ロールで移送し、さらに乾燥させ、セルロースエステルフィルムを製造する方法であって、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を20〜120重量%となし、ウェブが支持体と接触していた面が移送ロールに接触する際のウェブの平均残留溶媒量を12〜80重量%、及び同ウェブの表面残留溶媒量を0.5〜10重量%となし、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧を500〜3000Paとし、かつウェブがロール1本当たりと接触する時間を0.01〜0.72secとすることを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、剥離ロール及び移送ロールのうち少なくとも剥離ロールのビッカース硬度を500〜1000となし、かつ表面粗さ(最大高さ:Ry)を0.05μm以上、0.6μm以下となすことを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、剥離ロール及び移送ロールのうち少なくとも剥離ロールに、20℃における表面エネルギーが70〜100mN/mのロールを用いることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの膜厚を20〜100μmとすることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルが、セルロースアセテートプロピオネート樹脂であることを特徴としている。
請求項6のセルロースエステルフィルムの発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法により製造されたことを特徴としている。
請求項7の偏光板の発明は、請求項6に記載のセルロースエステルフィルムが、偏光フィルムの両側に配置された2枚の偏光板用保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方を構成するものであることを特徴としている。
請求項1の発明は、流延製膜装置で膜厚溶液流延製膜法によりセルロースエステルのドープを無限移行する無端の支持体上に流延ダイから流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(ウェブ)を形成した後、これを剥離ロールで剥離し、これを移送ロールで移送し、さらに乾燥させ、セルロースエステルフィルムを製造する方法であって、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を20〜120重量%となし、ウェブが支持体と接触していた面が移送ロールに接触する際のウェブの平均残留溶媒量を12〜80重量%、及び同ウェブの表面残留溶媒量を0.5〜10重量%となし、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧を500〜3000Paとし、かつウェブがロール1本当たりと接触する時間を0.01〜0.72secとするもので、本発明によれば、剥離近傍のロール上に、このような異物が多少存在しても、押され故障がない高品質なセルロースエステルフィルムを製造することができるという効果を奏する。
請求項2の発明は、請求項1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、剥離ロール及び移送ロールのうち少なくとも剥離ロールのビッカース硬度を500〜1000となし、かつ表面粗さ(最大高さ:Ry)を0.05μm以上、0.6μm以下となすもので、本発明によれば、ロールの硬度及び表面粗さ(最大高さ:Ry)を規定することにより、より一層、押され故障がない高品質なセルロースエステルフィルムを製造することができるという効果を奏する。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、剥離ロール及び移送ロールのうち少なくとも剥離ロールに、20℃における表面エネルギーが70〜100mN/mのロールを用いるもので、本発明によれば、ロールの表面エネルギーを規定することにより、ウェブとロールの摩擦係数を適性に保持して、ロールによる正常な移送を確保するとともに、汚れ付着を防止し、押され故障がない高品質なセルロースエステルフィルムを製造することができるという効果を奏する。
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、例えばセルロースエステルフィルムの膜厚を20〜100μmとするもので、本発明によれば、偏光板の保護フィルムとしての強度が充分であり、偏光板の寸法安定性や湿熱での保存安定性を良好に保持することができ、偏光板の薄型化、ひいては液晶ディスプレイの薄型化が可能であるという効果を奏する。
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルが、セルロースアセテートプロピオネート樹脂であるもので、本発明によれば、膜が柔らかいセルロースアセテートプロピオネートのフィルムであっても、押され故障がない高品質なセルロースエステルフィルムを製造することができ、このようなプロピオニル基を置換基として導入したセルロースエステルフィルムでは、可塑性が向上し、成形性が向上するという効果を奏する。
請求項6のセルロースエステルフィルムの発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法により製造されたもので、本発明によれば、セルロースエステルフィルムは、押され故障がなく、高品質であり、例えば液晶表示装置に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルム等に、有利に利用することができるという効果を奏する。
請求項7の偏光板の発明は、請求項6に記載のセルロースエステルフィルムが、偏光フィルムの両側に配置された2枚の偏光板用保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方を構成するものであるから、本発明によれば、上記のセルロースエステルフィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、光学特性に優れた偏光板を提供することができるという効果を奏する。
つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法は、溶液流延製膜法によりセルロースエステルのドープを無限移行する無端の支持体上に流延ダイから流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(ウェブ)を形成した後、これを剥離ロールで剥離し、これを移送ロールで移送し、さらに乾燥させ、セルロースエステルフィルムを製造する方法であって、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を20〜120重量%となし、ウェブが支持体と接触していた面が移送ロールに接触する際のウェブの平均残留溶媒量を12〜80重量%、及び同ウェブの表面残留溶媒量を0.5〜10重量%となし、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧を500〜3000Paとし、かつウェブがロール1本当たりと接触する時間を0.01〜0.72secとするものである。
本発明において用いるセルロースエステルは、セルロース由来の水酸基がアシル基などで置換されたセルロースエステルである。例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどのセルロースアシレートや、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートなどが挙げられる。中でも、セルロースアセテートプロピオネート、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートが好ましい。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他の置換基が含まれていてもよい。
セルロースアセテートプロピオネートの例としては、アシル基の置換度が、2.0以上3.0以下、アセチル基の置換度が1.4以上2.4以下であることが好ましい。さらに、アシル基の置換度が、2.5以上2.8以下、アセチル基の置換度が1.5以上2.0以下であることが好ましい。置換度をこの範囲にすることで、溶融流延製膜装置による良好な成形性が得られ、かつ所望の面内方向リタデーション(Ro)、及び厚み方向リタデーション(Rt)を容易に得ることができるのである。アセチル基の置換度が、この範囲より低いと、位相差フィルムとしての耐湿熱性、特に湿熱下での寸法安定性に劣る場合があり、置換度が大きすぎると、必要なリタデーション特性が発現しなくなる場合がある。
プロピオニル基を置換基として導入すると、セルロースエステルの可塑性が向上し、成形性が向上するのである。
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。また、それらから得られたセルロースエステルは、それぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明において、セルロースエステルの数平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。さらに70000〜200000が好ましい。
上記のセルロースエステルを溶解する溶剤(溶媒)としては、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率の点で好ましい。
ここで、本発明の方法において用いる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの結合酢酸量によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いるときには、セルロースエステルの結合酢酸量55%では良溶剤になり、結合酢酸量60%では貧溶剤となってしまう。
セルロースエステルの溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどの低級アルコール類、シクロヘキサン、ジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族塩化炭化水素類などを用いることができる。
ドープを調製する時のセルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、好ましい方法としては、セルロースエステルを貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させ、さらに良溶剤と混合する方法があげられる。このとき加圧下で、溶剤の常温での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、撹拌しながら溶解する方法が、「ゲル」や「ママコ」と呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。
溶剤比率としては、例えばメチレンクロライド70〜95重量%、その他の溶剤は5〜30重量%が好ましい。またセルロースエステルの濃度は10〜50重量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないうに定められる。
溶解後、ドープは冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
本発明において、セルロースエステルには、種々の添加剤を配合することができる。
本発明では、湿熱下での寸法安定性向上のために、いわゆる可塑剤を配合することが好ましい。可塑剤に湿熱下での寸法安定性改良効果があることは、これまで知られていなかった。可塑剤としては、従来公知のセルロースエステル用の可塑剤が好ましく使用できる。特に相溶性に優れたものが好ましく、例えばリン酸エステルやカルボン酸エステルが好ましい。リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェイト、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができ、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。分子量の大きい可塑剤は、押し出し成形の際の揮発が抑制でき好ましい。これらの例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどのグリコールと二塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのオキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリバレロラクトンなどのラクトンからなる脂肪族ポリエステル類、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー類などが挙げられる。上記可塑剤は、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
上述した可塑剤の含有量は、セルロースエステルに対して1〜30重量%含有させることが好ましい。可塑剤をこの範囲含有させることで、セルロースエステルフィルムの湿熱下での寸法安定性を向上することができる。
本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用できる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
これらの紫外線吸収剤の配合量は、セルロースエステルに対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5重量%が好ましい。使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不十分の場合があり、多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合がある。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
セルロースエステルのアセチル基の置換度が低いと、耐熱性が低下する場合がある。この場合、酸化防止剤を配合することが有効である。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
本発明におけるセルロース誘導体には、滑り性を付与するために、マット剤等の微粒子を添加するのが好ましい。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
無機化合物の微粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。その中でも、微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。これらの例としては、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されているものがあり、使用することができる。さらに、二酸化ケイ素微粒子の1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛比重が70g/リットル以上の二酸化ケイ素微粒子であることが好ましい。これらを満足する二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジル200V、アエロジルR972Vがあり、フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいために、特に好ましい。
有機化合物の微粒子の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素化合物樹脂、ウレタン樹脂等の微粒子が挙げられる。
微粒子の1次粒径は、特に限定されないが、最終的にフィルム中での平均粒径は、0.05〜5.0μm程度が好ましい。さらに好ましくは、0.1〜1.0μmである。
微粒子の平均粒径は、セルロースエステルフィルムを電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察した際に、フィルムの観察場所における、粒子の長軸方向の長さの平均値を指す。フィルム中で観察される粒子であれば、1次粒子であっても、1次粒子が凝集した2次粒子であってもよいが、通常観察される多くは2次粒子である。
上記の微粒子の平均粒径が5μmを超えると、ヘイズの劣化等が見られたり、異物として巻状態での故障を発生する原因にもなる。また、微粒子の平均粒径が0.05μm未満の場合は、フィルムに滑り性を付与するのが難しくなる。
上記の微粒子は、セルロースエステルに対して、0.04〜0.5重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.25重量%添加して使用される。微粒子の添加量が0.04重量%以下では、フィルム表面粗さが平滑になりすぎて、摩擦係数の上昇によりブロッキングを発生する。微粒子の添加量が0.5重量%を超えると、フィルム表面の摩擦係数が下がりすぎて、巻き取り時に巻きズレが発生したり、フィルムの透明度が低く、ヘイズが高くなるため、液晶表示装置用フィルムとしての価値を持たなくなるので、上記の範囲が必須である。
微粒子の分散は、微粒子と溶剤を混合した組成物を高圧分散装置で処理することが好ましい。本発明で用いる高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。
高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が980N/cm2以上であることが好ましい。さらに好ましくは、装置内部の最大圧力条件が1960N/cm2以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが、好ましい。
上記のような高圧分散装置としては、例えば、Microfluidics Corporation社製の超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザーが挙げられ、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザーなどが挙げられる。
つぎに、本発明の溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法について、詳しく説明する。
まず、セルロースエステルを、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒に溶解し、これに可塑剤や紫外線吸収剤を添加してセルロースエステル溶液(ドープ)を調製し、ドープを鏡面処理された表面を有するエンドレス支持体上に流延ダイから流延(キャスト)してドープ膜(ウェブ)を得る。
流延(キャスト)される側の支持体の表面温度は、10〜55℃、溶液の温度は、25〜60℃、さらに溶液の温度を支持体の温度より0℃を超えて高くするのが好ましく、5℃以上に設定するのがさらに好ましい。溶液温度、支持体温度は、高いほど溶媒の乾燥速度が速くできるので好ましいが、あまり高すぎると発泡したり、平面性が劣化する場合がある。なお、剥離する際の支持体温度を10〜40℃、さらに好ましくは、15〜30℃にすることで、フィルムと支持体との密着力を低減できるので、好ましい。
支持体上において、ウェブの溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法、及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率が好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。流延後の支持体上のウェブを温度40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。温度40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか、赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
そして、ウェブがエンドレス支持体の下面に至りほぼ一巡したところで、剥離ロールにより剥離する。支持体の上下の移送経路の表裏両側に、支持体上に流延されたドープを加熱乾燥してウェブを形成する加熱乾燥装置をそれぞれ配置するのが、好ましい。
溶液流延製膜においては、ドープ流延時の皮膜、可塑剤飛散等による剥離近傍ロールの異物付着が発生することがある。この原因物除去ための努力が従来からなされてきたが、未だ充分ではない状況である。
しかしながら、本発明では、ロール上にこのような異物が多少存在しても、フィルムに押され故障が生じない製膜条件を見出した。
すなわち、本発明は、ロールに接触する際のウェブの残留溶媒量、ウェブがロールから受ける面圧、ウェブがロール1本当たりと接触する時間、ロールの硬度、表面粗さ、及び「ロールの表面エネルギー等を規定することにより、押され故障のない良好なフィルムが得られることを見出したものである。
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法は、溶液流延製膜法によりセルロースエステルのドープを無限移行する無端の支持体上に流延ダイから流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(ウェブ)を形成した後、これを剥離ロールで剥離し、これを移送ロールで移送し、さらに乾燥させ、セルロースエステルフィルムを製造するときに、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を20〜120重量%となし、ウェブが支持体と接触していた面が移送ロールに接触する際のウェブの平均残留溶媒量を12〜80重量%、及び同ウェブの表面残留溶媒量を0.5〜10重量%となし、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧を500〜3000Paとし、かつウェブがロール1本当たりと接触する時間を0.01〜0.72secとするものである。
ここで、溶液流延製膜法によりセルロースエステルフィルムの製造において、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
ここで、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
本発明において、剥離ロールに接触する際のウェブの残留溶媒量について検討したところ、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を20〜120重量%となし、剥離直前まで支持体に接していたウェブ面側の残留溶剤量が多く、鋭意検討の結果、平均残留溶媒量12〜80重量%、及び表面残留溶媒量0.5〜10重量%の領域が望ましいことが判明した。ここで、剥離直前まで支持体に接していたウェブ面側の平均残留溶媒量が12重量%未満、及び同ウェブの表面残留溶媒量が0.5重量%未満では、生産性が非常に悪化し、逆に、剥離直前まで支持体に接していたウェブ面側の平均残留溶媒量が80重量%、及び同ウェブの表面残留溶媒量が10重量%を、それぞれ超えると、押され故障が急激に発生することが判った。
上記のように剥離時の残留溶媒量を調整するには、流延後の流延用支持体の表面温度を制御し、ウェブからの有機溶媒の蒸発を効率的に行なえるように、流延用支持体上の剥離位置における温度を上記の温度範囲に設定することが、好ましい。支持体温度を制御するには、伝熱効率のよい伝熱方法を使用するのがよく、例えば、液体による裏面伝熱方法が、好ましい。
輻射熱や熱風等による伝熱方法は支持体温度のコントロールが難しく、好ましい方法とはいえないが、ベルト(支持体)マシンにおいて、移送するベルトが下側に来た所の温度制御には、緩やかな風でベルト温度を調節することができる。
支持体の温度は、加熱手段を分割することによって、部分的に支持体温度を変えることができ、流延用支持体の流延位置、乾燥部、剥離位置等異なる温度とすることができる。
また、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧について検討したところ、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧を500〜3000Paとするのが望ましいことが判明した。ここで、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧が500Pa未満では、ベース(ウェブ)がばたついてロールが滑り、正常な移送ができず、好ましくない。逆に、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧が3000Paを超えると、フィルムに押され故障が発生するので、好ましくない。
さらに、ウェブがロール1本当たりと接触する時間について検討したところ、0.01〜0.72secとするのが望ましいことが判明した。ここで、ウェブがロール1本当たりと接触する時間が0.01sec未満では、ロールの抱き角が少なすぎるか、移送速度が速すぎるかによって、ロールが滑り、正常な移送ができない。逆に、ウェブがロール1本当たりと接触する時間が0.72secを超えると、ロール上に微小な原因物があった場合に、ウェブへ転写してしまうので、好ましくない。
また、剥離ロール及び移送ロールについて検討したところ、剥離ロール及び移送ロールのうち少なくとも剥離ロールのビッカース硬度を、500〜1000とするのが望ましいことが判明した。ここで、ロールのビッカース硬度が、500未満では、硬い異物がロールとウェブとの間に挟まった場合や清掃時にロール表面が変形し、フィルムに変形痕が転写する可能性があるので、好ましくない。逆に、ロールのビッカース硬度が、1000を超えると、溶剤雰囲気下の長時間使用によりロール表面にクラックが発生し、このクラック間に汚れが堆積して、フィルムの押され故障発生の可能性が生じるので、好ましくない。特に、ロールのビッカース硬度が800〜1000の範囲にあるのが好ましく、またこの範囲は、100〜300℃に加熱したロールで得られる硬度である。
なお、ビッカース硬度(Vickers hardness)は、押し込み硬さの一種であり、対面角αが136°のダイヤモンド製四角すいを圧子として用い、これを試験荷重で押し付けて、試験片の表面に出来たクボミの大きさで表わす。ビッカース硬さは、軟質プラスチックのフィルムなどのきわめて柔かい材料から、鋼などのきわめて硬い材料に至るまでの広い範囲の硬さの異なる材料のスケールで表示できる特徴がある。
さらに、本発明において、剥離ロール及び移送ロールの表面粗さ(最大高さ:Ry)について検討したところ、ロールの表面粗さ(最大高さ:Ry)を0.05μm以上、0.6μm以下となすのが望ましいことが判明した。ここで、ロールの表面粗さ(最大高さ:Ry)が、0.05μm未満では、ロールとウェブとの接触面積の増大による貼りつきに伴い、押され故障が発生し易くなるので、好ましくない。また逆に、ロールの表面粗さ(最大高さ:Ry)が、0.6μmを超えると、異物が付着し易くなってしまうので、好ましくない。
なお、ロールの表面粗さ(最大高さ:Ry)とは、粗さ曲線からその平行線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定し、この値をマイクロメーター(μm)で表わしたものをいう。
また、本発明において、剥離ロール及び移送ロールの20℃における表面エネルギーについて検討したところ、剥離ロール及び移送ロールのうち少なくとも剥離ロールに、20℃における表面エネルギーが70〜100mN/mのロールを用いるのが望ましいことが判明した。ここで、ロールの表面エネルギーが、70mN/m未満では、ウェブとロールの摩擦係数が低下し、ロールが滑り、正常な移送ができず、ウェブにスリキズが発生するので、好ましくない。逆に、ロールの表面エネルギーが、100mN/mを超えると、汚れが付着し、押され故障発生の原因となるので、好ましくない。
剥離後の乾燥工程では、ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して移送する乾燥装置及び/またはクリップまたはピンでウェブの両端を保持して移送するテンター装置を用いて幅保持しながら、ウェブを乾燥する工程である。
乾燥工程における移送張力も可能な範囲で低めに維持することが好ましく、190N/m以下であることが好ましい。さらに170N/m以下であることが好ましく、さらに140N/m以下であることが好ましく、100〜130N/mであることが特に好ましい。特に、フィルム中の残留溶媒量が少なくとも5重量%以下となるまで、上記移送張力以下に維持することが効果的である。
乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥はでき上がりのフィルムの平面性を損ねやすい。高温による乾燥は残留溶媒が8重量%以下くらいから行なうのがよい。全体を通し、乾燥温度は概ね40〜250℃で行なわれる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは幅方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど、収縮が大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。
このとき幅手方向の延伸倍率は0%〜100%であることが好ましく、偏光板用保護フィルムとして用いる場合は5〜20%がさらに好ましく、8〜15%が最も好ましく、位相差フィルムとして用いる場合は10〜40%がさらに好ましく、20〜30%が最も好ましい。延伸倍率によってリタデーション値Roをコントロールすることが可能で、延伸倍率が高い方ができ上がったフィルムの平面性に優れるため、好ましい。
テンターを行なう場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100重量%であるのが好ましく、かつ、ウェブの残留溶媒量が10重量%以下になるまでテンターをかけながら乾燥を行なうことが好ましく、さらに好ましくは5重量%以下である。
テンターを行なう場合の乾燥温度は、30〜150℃が好ましく、50〜120℃がさらに好ましく、70〜100℃が最も好ましい。乾燥温度の低い方が紫外線吸収剤、可塑剤などの蒸散が少なく、工程汚染に優れ、乾燥温度の高い方がフィルムの平面性に優れる。なお、乾燥温度が高い場合でも蒸散しにくい紫外線吸収剤を使用することにより、テンター乾燥温度が高く、延伸倍率の高い製造条件のときに、その効果が顕著に発揮される。
ウェブ乾燥工程では、一般にロール懸垂方式でウェブを移送しながら乾燥する方式が採られる。すなわち、セルロースエステルのウェブは、側面から見て千鳥配置せられた複数の移送ロールで移送して乾燥装置に導入する。乾燥装置内では上下に交互に配置せられた複数の乾燥用ロールによってウェブが蛇行させられ、その間にウェブを移送しながら乾燥する方式が採られる。ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行なうことが寸法安定性を良くするため、さらに好ましい。
溶液流延製膜装置を通しての流延直後から乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で行なってもよい。
ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論のことである。
巻き取り工程では、ウェブ中の残留溶媒量が2重量%以下となってからセルロースエステルフィルムとして巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4重量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
また、上記の金属製エンドレス支持体は、例えばステンレス鋼製のエンドレスベルトであるが、この周回金属製エンドレス支持体の代わりに回転する金属ドラム支持体が設けられていてもよい。
なお、本発明の方法により溶液流延製膜法によって作製したセルロースエステルフィルムは、延伸した乾燥後のセルロースエステルフィルムの膜厚が、20〜100μmの範囲であるのが、好ましい。その理由は、セルロースエステルフィルム全体の膜厚が薄すぎると、偏光板の保護フィルムとしての強度が不足し、偏光板の寸法安定性や湿熱での保存安定性が悪化する。膜厚が厚いと偏光板が厚くなり、液晶ディスプレイの薄膜化が困難になる。これらを両立するセルロースエステルフィルムの膜厚は20〜100μmで、好ましくは30〜90μm、さらに好ましくは40〜80μmである。
膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度等をコントロールするのがよい。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが、好ましい。
つぎに、本発明の方法を、図面を参照して説明する。
図1を参照すると、本発明の方法を実施するセルロールエステルフィルムの製造装置は、回転金属製エンドレスベルトからなる支持体1と、支持体1上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延するダイ2と、ダイ2によって支持体1上に形成されたウェブWを支持体1から剥離させるウェブ剥離装置6と、剥離されたウェブWの左右両側縁部を多数のクリップによってそれぞれ押さえて延伸しながら移送して乾燥させるテンター7と、さらにウェブWを、複数の移送ロール83を経由させて移送しながら乾燥させるウェブ乾燥装置8と、ウェブWを乾燥させることにより得られたセルロースエステルフィルムFを巻き取るフィルム巻取装置9とよりなる。
支持体1であるエンドレスベルトの上下の移送経路の移送面側およびこれとは反対側には、それぞれウェブWを上下から加熱乾燥するための加熱装置3,4が配置されている。
ウェブ剥離装置6は、ハウジング60内に設けられた1つの剥離ロール5および複数の移送ロール(搬送ロール)63を備えている。ハウジング60には乾燥風吹き込み口61および同排出口62が設けられている。複数の移送ロール63は千鳥配置状に設けられている。そして、支持体1の剥離側端部から剥離ロール5により剥離されたウェブWは、ハウジング60内を全ての移送ロール63に掛けられて移送され、その移送中に乾燥風吹き込み口61から吹き込まれる乾燥風により乾燥させられた後、テンター7に送られる。
本発明者は、剥離近傍のロール上に異物が多少存在しても、適切なロール面圧条件とロール接触時間の規定により、押され故障のない高品質のセルロースエステルフィルムが得られることを見出した。
すなわち、本発明は、溶液流延製膜法によるセルロースエステルの製造方法であって、ウェブWを支持体1から剥離ロール5により剥離する際のウェブWの平均残留溶媒量を20〜120重量%となし、ウェブWが支持体1と接触していた面が移送ロール63に接触する際のウェブWの平均残留溶媒量を12〜80重量%、及び同ウェブWの表面残留溶媒量を0.5〜10重量%となし、ウェブWが剥離ロール5及び移送ロール63から受ける面圧を500〜3000Paとし、かつウェブWがロール1本当たりと接触する時間を0.01〜0.72secとするものである。
また、本発明は、剥離ロール5及び移送ロール63のうち少なくとも剥離ロール5のビッカース硬度を500〜1000となし、かつ表面粗さ(最大高さ:Ry)を0.05μm以上、0.6μm以下となすものであり、さらに、剥離ロール5及び移送ロール63のうち少なくとも剥離ロール5に、20℃における表面エネルギーが70〜100mN/mのロールを用いるものである。
テンター7では、ウェブ剥離装置6からのウェブWの左右両側縁部を多数のクリップによってそれぞれ押さえて延伸しながら移送して乾燥させられ、その後、ウェブWは、ウェブ乾燥装置8に送られる。なお、テンター7の設置は必須ではなく、これを省略することもある。
ウェブ乾燥装置8では、ハウジング80内に千鳥配置状に設けられた複数の移送ロール83を備えている。ハウジング80には乾燥風吹き込み口81および同排出口82が設けられている。そして、テンター7を通過したウェブWは、ウェブ乾燥装置8のハウジング80内を全ての移送ロール83に掛けられて移送され、その移送中に、乾燥風吹き込み口81から吹き込まれる乾燥風により乾燥させられてフィルムFとされた後、フィルム巻取装置9に送られる。
フィルム巻取装置9は、ハウジング90内に設けられた複数の移送ロール91および1つの巻取ロール92を備えている。巻取ロール92は、移送ロール91群よりも下流側に配されている。そして、ウェブ乾燥装置8から送られてきたフィルムFは、フィルム巻取装置9のハウジング90内を全ての移送ロール91に掛けられて移送され、巻取ロール92に巻き取られる。
なお、ウェブWまたはフィルムFの移送速度は、通常、2〜200m/分、好ましくは10〜100m/分である。
上記構成の製造装置を用いてのセルロールエステルフィルムの製造方法は、つぎの通りである。
まず、セルロースエステルのドープを流延ダイ2から支持体1上に流延し、これにより支持体1上にドープ膜すなわちウェブWを形成する。ついで、支持体1上に形成されたウェブWを、ウェブ剥離装置6の剥離ロール5により支持体1から剥離し、剥離したウェブWを複数の移送ロール63に掛けてハウジング60内を移送し(剥離プロセス)、この移送中に、乾燥風吹き込み口61から吹き込まれる乾燥風により乾燥させた後、テンター7に送る。
本発明では、ロールに接触する際のウェブWの残留溶媒量、ウェブWがロールから受ける面圧、ウェブWがロール1本当たりと接触する時間、ロールの硬度、表面粗さ、及びロールの表面エネルギー等を、上記のように規定することにより、押され故障のない高品質の良好なセルロースエステルフィルムが得られるものである。
テンター7では、ウェブ剥離装置6からのウェブWの左右両側縁部を多数のクリップによってそれぞれ押さえて延伸しながら移送して乾燥させ、ウェブWを、その後、ウェブ乾燥装置8のハウジング80内に送る。ついで、ウェブWを複数の移送ロール81に掛けてハウジング80内を移送し、この移送中に、乾燥風吹き込み口82から吹き込まれる乾燥風により乾燥させて、セルロースエステルフィルムFを得た後乾燥プロセス、このフィルムFをフィルム巻取装置9のハウジング90内に送る。最後に、フィルム巻取装置9のハウジング90内において、複数の移送ロール91に掛けて移送した後、巻取ロール92の巻き取る(巻取プロセス)。こうして、セルロースエステルフィルムFが製造される。
本発明のセルロースエステルフィルムは、押され故障がなく高品質を有することから、液晶表示用部材、特に偏光板用保護フィルムに用いられる。
ここで、偏光フィルムは、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如きの延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光フィルム自身では、十分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルローストリアセテートフィルムを接着して偏光板としている。
本発明による偏光板は、上記のセルロースエステルフィルムが、偏光フィルムの両側に配置された2枚の偏光板用保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方を構成するものである。
本発明の偏光板は、上記の偏光フィルムに、本発明のセルロースエステルフィルムを位相差フィルムとして貼り合わせて作製してもよいし、また本発明のセルロースエステルフィルムを、位相差フィルム及び保護フィルムを兼ねて、直接偏光フィルムと貼り合わせて作製してもよい。貼り合わせる方法は、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行なうことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。
また、長手方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光フィルムと、長尺の本発明のセルロースエステルフィルムよりなる位相差フィルムとを貼り合わせることによって、長尺の偏光板を得ることができる。偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
本発明の光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルムを用いることにより、薄膜化とともに、光学特性に優れた偏光板を得ることができる。
このようにして得られた本発明の偏光板は、種々の表示装置に使用できる。特に電圧無印加時に液晶性分子が実質的に垂直配向しているVAモードや、電圧無印加時に液晶性分子が実質的に水平かつねじれ配向しているTNモードの液晶セルを用いた液晶表示装置が好ましい。
本発明の偏光板を用いた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができるものである。
なお、本発明のセルロースエステルフィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布あるいは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
また、本発明によるセルロースエステルフィルムは、その他、反射防止用フィルムあるいは光学補償フィルムの基材としても使用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1
溶液流延製膜方法により、目標ドライ膜厚80μmの本発明の光学フィルムとしてのセルロースアシレートフィルムを製造するにあたり、まず、樹脂組成物Aのドープを調製した。
溶液流延製膜方法により、目標ドライ膜厚80μmの本発明の光学フィルムとしてのセルロースアシレートフィルムを製造するにあたり、まず、樹脂組成物Aのドープを調製した。
(樹脂組成物A)
セルロースアセテートプロピオネート(酢綿) 100重量部
(アセチル置換度1.95、プロピオニル置換度0.7)
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 10重量部
エチルフタリルエチルグリコレート(可塑剤) 2重量部
チヌビン326(UV剤) 1重量部
アエロジル200V(MAT剤) 0.1重量部
メチレンクロライド(溶剤) 300重量部
エタノール(溶剤) 40重量部
上記の材料を密閉したドープ溶解釜に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。溶解後、密閉釜での攪拌を停止し、密閉釜に連結した配管を経て流延ダイから30℃に保たれたドープを、30℃の乾燥風を吹かせたステンレス鋼製エンドレスベルト支持体上に流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(ウェブ)を形成した後、これが約1周したところで、エンドレスベルト支持体上から剥離する。ついで、ウェブを移送ロールで移送し、さらに乾燥させ、得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムを巻取り機に巻き取った。
セルロースアセテートプロピオネート(酢綿) 100重量部
(アセチル置換度1.95、プロピオニル置換度0.7)
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 10重量部
エチルフタリルエチルグリコレート(可塑剤) 2重量部
チヌビン326(UV剤) 1重量部
アエロジル200V(MAT剤) 0.1重量部
メチレンクロライド(溶剤) 300重量部
エタノール(溶剤) 40重量部
上記の材料を密閉したドープ溶解釜に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。溶解後、密閉釜での攪拌を停止し、密閉釜に連結した配管を経て流延ダイから30℃に保たれたドープを、30℃の乾燥風を吹かせたステンレス鋼製エンドレスベルト支持体上に流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(ウェブ)を形成した後、これが約1周したところで、エンドレスベルト支持体上から剥離する。ついで、ウェブを移送ロールで移送し、さらに乾燥させ、得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムを巻取り機に巻き取った。
そして、本実施例1においては、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を80重量%となし、ウェブが支持体と接触していた面が移送ロールに接触する際のウェブの平均残留溶媒量を18〜45重量%、及び同ウェブの表面残留溶媒量を2〜6重量%となし、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧を1500Paとし、かつウェブがロール1本当たりと接触する時間を0.1〜0.3secとした。
また、剥離ロール及び移送ロールのビッカース硬度を750となし、かつロール表面粗さ(最大高さ:Ry)を0.4μmとした。さらに、剥離ロール及び移送ロールに、20℃における表面エネルギーが90mN/mのロールを用いて実施した。
なお、セルロースアセテートプロピオネートフィルムは、最終的な残留溶媒量が0.2重量%の状態で巻取り機に巻き取った。
本実施例1におけるセルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造条件を、下記の表1に示した。
実施例2
上記実施例1の場合と同様に、樹脂組成物Aを用いて、本発明によるセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、実施例1の場合と異なる点は、剥離ロール及び移送ロールのビッカース硬度を490となし、かつロール表面粗さ(最大高さ:Ry)を0.7μmとした点にある。
上記実施例1の場合と同様に、樹脂組成物Aを用いて、本発明によるセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、実施例1の場合と異なる点は、剥離ロール及び移送ロールのビッカース硬度を490となし、かつロール表面粗さ(最大高さ:Ry)を0.7μmとした点にある。
下記の表1に、本実施例2におけるセルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造条件を、あわせて示した。
実施例3
上記実施例1の場合と同様に、樹脂組成物Aを用いて、本発明によるセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、実施例1の場合と異なる点は、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を75重量%となし、ウェブが支持体と接触していた面が移送ロールに接触する際のウェブの平均残留溶媒量を15〜40重量%、及び同ウェブの表面残留溶媒量を1.2〜4.7重量%となし、また、剥離ロール及び移送ロールのビッカース硬度を490となし、かつロール表面粗さ(最大高さ:Ry)を0.7μmとした。さらに、剥離ロール及び移送ロールに、20℃における表面エネルギーが115mN/mのロールを用いて実施した点にある。
上記実施例1の場合と同様に、樹脂組成物Aを用いて、本発明によるセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、実施例1の場合と異なる点は、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を75重量%となし、ウェブが支持体と接触していた面が移送ロールに接触する際のウェブの平均残留溶媒量を15〜40重量%、及び同ウェブの表面残留溶媒量を1.2〜4.7重量%となし、また、剥離ロール及び移送ロールのビッカース硬度を490となし、かつロール表面粗さ(最大高さ:Ry)を0.7μmとした。さらに、剥離ロール及び移送ロールに、20℃における表面エネルギーが115mN/mのロールを用いて実施した点にある。
下記の表1に、本実施例3におけるセルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造条件を、あわせて示した。
実施例4
溶液流延製膜方法により、目標ドライ膜厚60μmの本発明の光学フィルムとしてのセルローストリアセテートフィルムを製造するにあたり、まず、樹脂組成物Bのドープを調製した。
溶液流延製膜方法により、目標ドライ膜厚60μmの本発明の光学フィルムとしてのセルローストリアセテートフィルムを製造するにあたり、まず、樹脂組成物Bのドープを調製した。
(樹脂組成物B)
セルローストリアセテート(酢綿) 100重量部
(アセチル置換度2.88)
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 10重量部
エチルフタリルエチルグリコレート(可塑剤) 2重量部
チヌビン326(UV剤) 1重量部
アエロジル200V(MAT剤) 0.1重量部
メチレンクロライド(溶剤) 475重量部
エタノール(溶剤) 25重量部
上記の材料を密閉したドープ溶解釜に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。溶解後、密閉釜での攪拌を停止し、密閉釜に連結した配管を経て流延ダイから30℃に保たれたドープを、30℃の乾燥風を吹かせたステンレス鋼製エンドレスベルト支持体上に流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(ウェブ)を形成した後、これが約1周したところで、エンドレスベルト支持体上から剥離する。ついで、ウェブを移送ロールで移送し、さらに乾燥させ、得られたセルローストリアセテートフィルムを巻取り機に巻き取った。
セルローストリアセテート(酢綿) 100重量部
(アセチル置換度2.88)
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 10重量部
エチルフタリルエチルグリコレート(可塑剤) 2重量部
チヌビン326(UV剤) 1重量部
アエロジル200V(MAT剤) 0.1重量部
メチレンクロライド(溶剤) 475重量部
エタノール(溶剤) 25重量部
上記の材料を密閉したドープ溶解釜に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。溶解後、密閉釜での攪拌を停止し、密閉釜に連結した配管を経て流延ダイから30℃に保たれたドープを、30℃の乾燥風を吹かせたステンレス鋼製エンドレスベルト支持体上に流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(ウェブ)を形成した後、これが約1周したところで、エンドレスベルト支持体上から剥離する。ついで、ウェブを移送ロールで移送し、さらに乾燥させ、得られたセルローストリアセテートフィルムを巻取り機に巻き取った。
そして、本実施例4においては、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を95重量%となし、ウェブが支持体と接触していた面が移送ロールに接触する際のウェブの平均残留溶媒量を22〜53重量%、及び同ウェブの表面残留溶媒量を3.2〜5.2重量%となし、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧を1500Paとし、かつウェブがロール1本当たりと接触する時間を0.1〜0.3secとした。
また、剥離ロール及び移送ロールのビッカース硬度を490となし、かつロール表面粗さ(最大高さ:Ry)を0.7μmとした。さらに、剥離ロール及び移送ロールに、20℃における表面エネルギーが115mN/mのロールを用いて実施した。
下記の表1に、本実施例4におけるセルローストリアセテートフィルムの製造条件を、あわせて示した。
比較例1
比較のために、実施例1の場合と同様に、樹脂組成物Aを用いて、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、上記実施例1の場合と異なる点は、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を121重量%となし、ウェブが支持体と接触していた面が移送ロールに接触する際のウェブの平均残留溶媒量を46〜93重量%(上限値が本発明の範囲外である)、及び同ウェブの表面残留溶媒量を4.4〜14.6重量%(上限値が本発明の範囲外である)となし、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧を本発明の範囲外である3200Paとし、かつウェブがロール1本当たりと接触する時間を本発明の範囲外である0.8secとした点にある。
比較のために、実施例1の場合と同様に、樹脂組成物Aを用いて、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、上記実施例1の場合と異なる点は、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を121重量%となし、ウェブが支持体と接触していた面が移送ロールに接触する際のウェブの平均残留溶媒量を46〜93重量%(上限値が本発明の範囲外である)、及び同ウェブの表面残留溶媒量を4.4〜14.6重量%(上限値が本発明の範囲外である)となし、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧を本発明の範囲外である3200Paとし、かつウェブがロール1本当たりと接触する時間を本発明の範囲外である0.8secとした点にある。
なお、剥離ロール及び移送ロールのビッカース硬度を490となし、かつロール表面粗さ(最大高さ:Ry)を0.7μmとした。さらに、剥離ロール及び移送ロールに、20℃における表面エネルギーが115mN/mのロールを用いて実施した。
下記の表1に、比較例1におけるセルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造条件を、あわせて示した。
(セルロースエステルフィルムの評価)
つぎに、本発明の実施例1〜4及び比較例1で作製したセルロースエステルフィルム試料について、押され故障、異物の存在及び汚れを観察するとともに、ロールへの汚れの付着量を測定し、また偏光板の輝きスポット数について評価し、得られた結果を表1にあわせて示した。評価方法は、つぎのようにした。
つぎに、本発明の実施例1〜4及び比較例1で作製したセルロースエステルフィルム試料について、押され故障、異物の存在及び汚れを観察するとともに、ロールへの汚れの付着量を測定し、また偏光板の輝きスポット数について評価し、得られた結果を表1にあわせて示した。評価方法は、つぎのようにした。
評価方法
(押され故障・異物・汚れの観察と評価)
本発明の実施例1〜4及び比較例1で作製したセルロースエステルフィルム試料から全幅で長手方向に1mの長さに切り出し、このフィルム試料にシャーカステン上で光を透過させながら、ルーペで、押され故障・異物・汚れの有無及び大きさを観察し、下記の基準で評価した。
(押され故障・異物・汚れの観察と評価)
本発明の実施例1〜4及び比較例1で作製したセルロースエステルフィルム試料から全幅で長手方向に1mの長さに切り出し、このフィルム試料にシャーカステン上で光を透過させながら、ルーペで、押され故障・異物・汚れの有無及び大きさを観察し、下記の基準で評価した。
AA:ほとんど押され故障・異物・汚れがなかった。
A:50μm以上の大きさの押され故障・異物・汚れはなく、50μm未満の ものが、0〜10個観察された。
B:50μm以上の大きさの押され故障・異物・汚れはなく、50μm未満の ものが11〜30個観察された。
C:50μm以上の大きさの押され故障・異物・汚れが1〜10個観察され、 50μm以下のものが31〜50個観察された。
D:50μm以上の大きさの押され故障・異物・汚れが11〜30個観察され、 50μm以下のものが51個以上観察された。
(ロールへの汚れ付着量)
純水とメチレンクロライドで清掃した剥離ロール及び移送ロールを用いて、24時間連続でフィルムを作製し、ロールの表面に付着した汚れを、再びメチレンクロライドを用いて布で拭き取り、MEKを加えて超音波照射した。濾過したのち、溶媒を蒸発乾固し、可塑剤と紫外線吸収剤をGC/MS(ガスクロマトグラフ/質量分析)で定量した。同様にして30日間連続でフィルムを作製し、ロールの汚れを定量し、24時間後の結果に対して、何倍汚れが増加したか、を評価した。
純水とメチレンクロライドで清掃した剥離ロール及び移送ロールを用いて、24時間連続でフィルムを作製し、ロールの表面に付着した汚れを、再びメチレンクロライドを用いて布で拭き取り、MEKを加えて超音波照射した。濾過したのち、溶媒を蒸発乾固し、可塑剤と紫外線吸収剤をGC/MS(ガスクロマトグラフ/質量分析)で定量した。同様にして30日間連続でフィルムを作製し、ロールの汚れを定量し、24時間後の結果に対して、何倍汚れが増加したか、を評価した。
(偏光板の輝きスポット数)
本発明の実施例1〜4及び比較例1で得られたセルロースエステルフィルムを、60℃の2mol/l濃度の水酸化ナトリウム水溶液中に2分間浸し水洗した後、100℃で10分間乾燥して得たアルカリ鹸化処理した偏光板用保護フィルムを作製した。
本発明の実施例1〜4及び比較例1で得られたセルロースエステルフィルムを、60℃の2mol/l濃度の水酸化ナトリウム水溶液中に2分間浸し水洗した後、100℃で10分間乾燥して得たアルカリ鹸化処理した偏光板用保護フィルムを作製した。
一方、これとは別に、厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1重量部、ホウ酸4重量部を含む水溶液100重量部に浸し、50℃で4倍に延伸して偏光膜を作製した。そして、この偏光膜の両面に前記偏光板用保護フィルムをそれぞれ完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として用い、各々貼り合わせて偏光板を作製した。
ついで、25cm×25cmの大きさに切り出したこれらの偏光板試料を、1試料につき5枚準備し、30cm×30cmの大きさのクロスニコルを用意して、異物等による暗黒面に現れる輝きスポット数を観察し、5枚の輝きスポット数の平均を下記の基準で評価した。
A:全く輝きスポットがなかった。
B:小さな輝きスポットが1〜5個観察された。
C:小さな輝きスポットが6〜30個観察された。
D:輝きスポットが31〜50個観察された。
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4によれば、セルロースエステルフィルムに押され故障・異物・汚れがほとんど無く、かつ剥離ロール及び移送ロール表面への汚れの付着も少なく、また偏光板の輝きスポット数が非常に少なかった。
これに対し、比較例1によれば、セルロースエステルフィルムに押され故障・異物・汚れが多く観察され、かつ剥離ロール及び移送ロール表面への汚れの付着も非常に多く、また偏光板の輝きスポット数が多く観察され、偏光板用保護フィルム等の光学フィルムとして、使用することができないものであった。
W:ウェブ
F:セルロースエステルフィルム
1:回転金属製エンドレスベルト(支持体)
2:流延ダイ
5:剥離ロール
6:ウェブ剥離装置
63:移送ロール
7:テンター
8:ウェブ乾燥装置
83:移送ロール
9:フィルム巻取装置
92:巻取ロール
F:セルロースエステルフィルム
1:回転金属製エンドレスベルト(支持体)
2:流延ダイ
5:剥離ロール
6:ウェブ剥離装置
63:移送ロール
7:テンター
8:ウェブ乾燥装置
83:移送ロール
9:フィルム巻取装置
92:巻取ロール
Claims (7)
- 溶液流延製膜法によりセルロースエステルのドープを無限移行する無端の支持体上に流延ダイから流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(以下、ウェブとも呼ぶ)を形成した後、これを剥離ロールで剥離し、これを移送ロールで移送し、さらに乾燥させ、セルロースエステルフィルムを製造する方法であって、ウェブを支持体から剥離ロールにより剥離する際のウェブの平均残留溶媒量を20〜120重量%となし、ウェブが支持体と接触していた面が移送ロールに接触する際のウェブの平均残留溶媒量を12〜80重量%、及び同ウェブの表面残留溶媒量を0.5〜10重量%となし、ウェブが剥離ロール及び移送ロールから受ける面圧を500〜3000Paとし、かつウェブがロール1本当たりと接触する時間を0.01〜0.72secとすることを特徴とする、セルロースエステルフィルムの製造方法。
- 剥離ロール及び移送ロールのうち少なくとも剥離ロールのビッカース硬度を500〜1000となし、かつ表面粗さ(最大高さ:Ry)を0.05μm以上、0.6μm以下となすことを特徴とする、請求項1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 剥離ロール及び移送ロールのうち少なくとも剥離ロールに、20℃における表面エネルギーが70〜100mN/mのロールを用いることを特徴とする、請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- セルロースエステルフィルムの膜厚を20〜100μmとすることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- セルロースエステルが、セルロースアセテートプロピオネート樹脂であることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法により製造されたことを特徴とする、セルロースエステルフィルム。
- 請求項6に記載のセルロースエステルフィルムが、偏光フィルムの両側に配置された2枚の偏光板用保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方を構成するものであることを特徴とする、偏光板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005078552A JP2006256184A (ja) | 2005-03-18 | 2005-03-18 | セルロースエステルフィルム、及びその製造方法、セルロースエステルフィルムを用いた偏光板 |
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Publications (1)
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Family
ID=37095909
Family Applications (1)
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Country | Link |
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JP (1) | JP2006256184A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009083113A (ja) * | 2007-09-27 | 2009-04-23 | Konica Minolta Opto Inc | 光学フィルム、その製造方法、光学フィルムを用いた偏光板、及び表示装置 |
JP2009083344A (ja) * | 2007-09-30 | 2009-04-23 | Konica Minolta Opto Inc | 光学フィルム、その製造方法、光学フィルムを用いた偏光板、及び表示装置 |
-
2005
- 2005-03-18 JP JP2005078552A patent/JP2006256184A/ja not_active Withdrawn
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