JP2007001198A - セルロースエステルフィルム積層体、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置 - Google Patents

セルロースエステルフィルム積層体、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 フィルムへのゴミ付きを抑え、帯電防止性に優れたセルロースエステルフィルム積層体を提供すること。
【解決手段】 下記式(S−1)〜(S−3)を満足するセルロースエステルフィルムの少なくとも一方の面に、25℃・相対湿度60%における抵抗が1012Ω以下である導電性層を有するセルロースエステルフィルム積層体。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、セルロースエステルフィルムを基板とするセルロースエステルフィルム積層体とその製造方法に関する。また、本発明は、光学特性に優れかつゴミ付きを抑えて良好な帯電防止特性を有するセルロースエステルフィルム積層体、およびそれを用いた偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置にも関する。
従来から、液晶表示装置に使用されるセルローストリアセテートフィルムを製造する際に、ジクロロメタンのような塩素系有機溶媒にセルローストリアセテートを溶解し、これを基材上に流延、乾燥して製膜する溶液流延法が主に実施されている。塩素系有機溶媒の中でもジクロロメタンは、セルローストリアセテートの良溶媒であるとともに、沸点が低く(約40℃)、製膜工程や乾燥工程において乾燥させ易いという利点を有することから、好ましく使用されている。一方、近年では環境保全の観点から、塩素系有機溶媒を始めとする有機溶媒の排出を抑えることが強く求められるようになっている。このため、より厳密なクローズドシステムを採用して系から有機溶媒が漏れ出さないように努めたり、製膜工程から有機溶媒が漏れても外気に出す前にガス吸収塔を通して有機溶媒を吸着させたり、火力により燃焼させたり、電子線ビームにより分解させたりするなどの処理を行って、殆ど有機溶媒を排出することがないように対策が講じられている。しかしながら、これらの対策を行っても完全な非排出には至らないため、さらなる改良が必要とされていた。
そこで、有機溶媒を用いない製膜法として、セルロースエステルを溶融製膜する方法が開発された(例えば、特許文献1および2参照)。これらの方法は、セルローストリアセテートのアセチル基の炭素鎖を長くすることで融点を下げ、溶融製膜しやすくしたものである。具体的には、従来から用いられていたセルロースアセテートを、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等に変えることで溶融製膜を可能にしている。また、該特許文献には、微粒子と紫外線吸収剤を添加して滑り性などをコントロールし、かつ耐候性を付与することも記載されている。視野角補償フィルムとして用いられているセルローストリアセテートフィルムを、これらの方法により製造したフィルムに変更することにより、湿度変化による視野特性が変動しにくくすることができるという利点がある。
特表平6−501040号公報 特開2000−352620号公報
しかしながら、これらの特許文献の実施例などにしたがって溶融製膜すると、得られるセルロースエステルフィルムの着色が著しくなるという問題があることや、光学フィルムとして作製する過程でゴミ付きによる傷がフィルムに発生して商品として問題があることや、静電気発生による静電気障害によりフィルムの光学特性を損ねるという問題があることが判った。すなわち、特許文献1および2に記載される方法は、光学フィルム用のセルロースエステルフィルムを製造するための方法として適用できないものであった。
これらの従来技術の課題に鑑みて、本発明は、フィルムへのゴミ付きを抑え、帯電防止性に優れたセルロースエステルフィルム積層体を提供することを目的とする。また、そのようなセルロースエステルフィルム積層体のハンドリング性が良好で効率のよい製造方法を提供することも目的とする。さらに、光学特性に優れ、色調変化を抑制した偏光板、光学補償フィルムおよび反射防止フィルムを提供し、表示画面での異物故障や経時での視認性の変化を改善した液晶表示装置を提供することを目的とする。
本発明の前記目的は以下の構成により達成された。
[1] 下記式(S−1)〜(S−3)を満足するセルロースエステルフィルムの少なくとも一方の面に、25℃・相対湿度60%における抵抗が1012Ω以下である導電性層を有するセルロースエステルフィルム積層体。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
[2] 前記セルロースエステル中のセルロースの水酸基に対して置換している炭素数3〜22のアシル基の中に、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基からなる群より選択される2種類以上のアシル基が含まれていることを特徴とする[1]に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[3] 前記導電性層が、少なくとも一種の導電性無機金属素材および/または少なくとも一種の有機導電性素材を含有する層であることを特徴とする[1]または[2]に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[4] 前記導電性金属酸化物が、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25、またはこれらの複合酸化物であり、該金属酸化物が異種原子としてAl、In、Ta、Sb、Nb、Ag、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種を含有していてもよいことを特徴とする[3]に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[5] 前記セルロースエステルフィルムが、微粒子、可塑剤、紫外線吸収剤および安定剤からなる群より選択される少なくとも一種を0.005〜5g/m2含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[6] 残留溶媒量が0.01質量%以下であることを特徴とする[1]〜「5]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[7] 前記セルロースエステルフィルムの正面レターデーション(Re)が0〜300nmであり、且つ、厚さ方向のレターデーション(Rth)が−300〜700nmであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[8] 下記式(S−1)〜(S−3)を満足するセルロースエステルを180〜230℃で溶融しダイから押し出して溶融製膜し、得られた膜状物の少なくとも一方の面に25℃・相対湿度60%における抵抗が1012Ω以下である導電性層を形成する工程を含むことを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
[9] 前記膜状物を少なくとも1方向に−10%〜50%延伸する工程をさらに有することを特徴とする[8]に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
[10] [8]または[9]に記載の製造方法により製造されたことを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体。
[11] 偏光膜に[1]〜[7]または[10]に記載のセルロースエステルフィルム積層体を少なくとも1層積層したことを特徴とする偏光板。
[12] [1]〜[7]または[10]に記載のセルロースエステルフィルム積層体を基材に用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
[13] [1]〜[7]または[10]に記載のセルロースエステルフィルム積層体を基材に用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
[14] [1]〜[7]または[10]に記載のセルロースエステルフィルム積層体、[11]に記載の偏光板、[12]に記載の光学補償フィルム、および[13]に記載の反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも一つを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、フィルムへのゴミ付きを抑え、帯電防止性に優れている。また、本発明の製造方法によれば、そのようなセルロースエステルフィルム積層体をハンドリング性よく製造することができる。さらに、本発明の偏光板、光学補償フィルムおよび反射防止フィルムは、帯電防止性が良好で、光学特性に優れ、色調変化が抑制されている。また、本発明の液晶表示装置は、表示画面での異物故障や経時での視認性の変化が抑制されている。
以下において、本発明のセルロースエステルフィルム積層体等について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
<導電性層>
(抵抗値)
まず、本発明のセルロースエステル積層体を構成する導電性層について記述する。導電性層は、本発明のセルロースエステル積層体に帯電防止性を付与するために形成する。すなわち、本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、セルロースエステルフィルム積層体の少なくとも一層に、25℃・相対湿度60%における抵抗が1012Ω以下である導電性層を有することを特徴としている。抵抗値は1×1011.5Ω以下であることがより好ましく、さらには1×1010Ω以下であることが好ましく、2×109Ω以下が特に好ましい。本発明のセルロースエステルの導電性層は、温湿度の変化に対しても抵抗値が変動しないことが好ましく、例えば低温低湿から高温高湿でも上記の抵抗を有する層であることが好ましい。製造工程あるいは取り扱い時の環境を考えると、−30℃〜100℃でかつ相対湿度0〜100%などの色々な温湿度でも、導電性が1012Ω以下であることが好ましい。ここで、導電性層の抵抗は導電性層自身を測定する場合は、一般的な表面抵抗測定法で求めてもよいが、内部導電性層の場合はそのエッジ部から評価することが推奨される。すなわち、導電性層の両端部に銀ペイントを塗布し、導電性層の抵抗を測定することで抵抗値を求めることができる。
(導電性素材)
本発明の導電性層を形成する導電性素材について説明する。導電性層は少なくとも一種の導電性無機素材(例えば、導電性金属酸化物)、および/または少なくとも一種の有機導電性素材(例えば、導電性高分子化合物、イオン性導電性素材)を含有する層であることが好ましい。さらに好ましくは、導電性素材が導電性金属酸化物や導電性高分子化合物である場合である。なお、本発明の導電性層は蒸着やスパッタリングによる透明導電性膜でもよい。導電性無機素材である好ましい金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、あるいはこれらの複合酸化物を挙げることができ、特にZnO、SnO2、Sb23あるいはV25が好ましい。金属酸化物は異種原子を含んでいてもよく、具体的にはAl、In、Ta、Sb、Nb、Ag、Cl、BrおよびIからなる群より選択される1種以上を含んでいることが好ましい。異種原子の添加量は0.01mol%〜40mol%の範囲が好ましい。金属酸化物が異種原子を含む例としては、例えばZnOがAl、In等を含む態様、SnO2がSb、Nb、ハロゲン元素等を含む態様、またTiO2 がNb、Ta等を含む態様を挙げることができる。これら異種原子の添加量は0.01mol%〜30mol%の範囲が好ましいが、0.1mol%〜10mol%が特に好ましい。
また、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ω・cm以下が好ましく、さらに105Ω・cm以下であることが好ましく、特に103Ω・cm以下であることが好ましい。その1次粒子サイズは10nm〜0.2μmであることが好ましく、特には50nm〜0.1μmであることが好ましい。また、これらの凝集体の高次構造の長径が10nm〜6μmである特定の構造を有する粉体(例えば、針状)を導電性層に体積分率で0.01%〜80%含んでいることが好ましい。この導電性微粒子の使用量は0.001〜5.0g/m2が好ましく、特に0.005〜1g/m2が好ましい。これらの酸化物については特開昭56−143431号、同56−120519号、同58−62647号各公報などに記載されている。さらに又、特公昭59−6235号に記載のごとく、他の結晶性金属酸化物粒子あるいは繊維状物(例えば酸化球状カーブンブラック)に上記の金属酸化物を付着させた導電性素材を使用してもよい。利用できる粒子サイズは10μm以下が好ましいが、2μm以下であると分散後の安定性が良く使用し易い。
また光散乱性をできるだけ小さくするために、0.5μm以下の導電性粒子を利用することが好ましい。これによって、導電性層を設けても支持体を透明に保つことが可能になるからである。又、導電性材料がファイバーあるいは繊維状の場合はその長さは30μm以下で直径が2μm以下が好ましく、特に好ましいのは長さが25μm以下で直径0.5μm以下であり長さ/直径比が3以上である。特に好ましいのは、結晶性金属酸化物であるSnO2/Sb23(または/Sb25)であり、一次粒子サイズが10〜50nmの平均径を有し二次凝集体として約0.01〜0.5μmである球形の導電性材料を挙げることができる。さらに、本発明においてはゾル状金属酸化物も使用でき、例えば酸化錫ゾル溶液、アルミナゾル溶液からなる導電性層を形成することができる。
本発明の導電性層に用いることができる上記のイオン導電性素材とは、電気伝導性を示し、電気を選ぶ担体であるイオンを含有する物質のことである。この例としては、イオン性高分子化合物と電解質を含む金属酸化物ゾルを挙げることができる。イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号各公報にみられるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号各公報などにみられるような、主鎖中に解離基をもつアイオネン型高分子化合物;特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−67746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号各公報、開61−27853、開62−9346にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつカチオン性ペンダント型高分子化合物;等を挙げることができる。前記イオン性高分子化合物は、これを単独で用いてもよいし、あるいは数種類のイオン導電性物質を組み合わせて使用してもよい。そしてこのようなイオン性高分子化合物は0.005g〜2.0g/m2の範囲で用いられているのが好ましく、特に0.01g〜1.0g/m2の範囲で用いられるのが好ましい。
これらをさらに具体的に記すと、本発明に用いられる導電性高分子化合物としては、例えばポリビニルベンゼンスルホン酸塩類、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、米国特許第4,108,802号、同4,118,231号、同4,126,467号、同4,137,217号各明細書に記載の4級塩高分子化合物類、米国特許第4,070,189号、OLS2,830,767号、特開昭61−296352号、同61−62033号等各公報に記載のポリマーラテックス等が好ましい。以下に本発明の導電性高分子化合物の具体例を示すが、本発明で用いることができる導電性高分子化合物は必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、重合体の組成を示す数字は重合百分率で表したものである。
Figure 2007001198
本発明に用いられる導電性金属酸化物または導電性高分子化合物はバインダー中に分散または溶解させて用いられることが好ましい。バインダーとしては、フィルム形成能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばゼラチン、カゼイン等の蛋白質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、デキストラン、寒天、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体等の糖類、ポリビニールアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸等の合成高分子化合物等を挙げることができる。特に、ゼラチン(石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酵素分解ゼラチン、フタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン等)、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリルアミド、デキストラン、SBR ラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテクッス等が好ましい。
本発明に用いられる導電性金属酸化物あるいは導電性高分子化合物をより効果的に使用して導電性層の抵抗を下げるために、導電性層中における導電性物質の体積含有率は高い方が好ましいが、層としての強度を十分に持たせるために最低5%程度のバインダーが必要であるので、導電性金属酸化物あるいは導電性高分子化合物の体積含有率は5〜95%の範囲が望ましい。本発明に用いる導電性金属酸化物あるいは導電性高分子化合物の使用量は、一平方メートル当たり0.01〜2gが好ましく、特に0.01〜0.5gが好ましい。本発明に用いる導電性金属酸化物あるいは導電性高分子化合物を含有する導電性層は、構成層として少なくとも一層設けることが好ましい。例えば、表面保護層、バック層、下塗層などのいずれでもよいが、必要に応じて2層以上設けることもできる。
さらに導電性材料として、有機電子伝導性材料も好ましく、例えばポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアセチレン誘導体などを挙げることができる。これらの中でも特に好ましいのは、ポリピロールでありポリスチレンスルフォン酸との塩である。また、少なくとも1種以の金または銀コロイドを含有することも好ましい。さらに耐候性の観点から銀とパラジウムの合金が好ましく、パラジウムの含有量としては5〜30質量%が好ましい。銀コロイド粒子の作成方法としては、通常の低真空蒸発法による微粒子の作製方法や金属塩の水溶液を還元する金属コロイド作製方法が挙げられる。これらの金属粒子の平均粒子サイズは1〜200nmが好ましい。導電性層は実質的に金属微粒子のみからなることが好ましく、バインダー等の非導電性のものを含有しないことが導電性の観点から好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体に設置される導電性層は、機能層としてその導電性が確保できれば特にその位置は限定されないが、好ましい層構成としては下記を挙げることができる。本発明のセルロースエステルフィルムに直接導電性層を設けても良いし、下塗り層を介して導電性層を付与してもよい。これらの塗設方法については後述する下塗り方法を参照できる。なお、セルロースエステルフィルムに直接導電性層を付与する場合は、セルロースエステルフィルムを表面処理することが好ましい。
<セルロースエステル>
(セルロースエステルの置換度と置換基)
本発明で用いられるセルロースエステルは下記式(S−1)〜(S−3)を満足するものである。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
セルロースを構成する、ベータ(β)−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースエステルは、これらの水酸基の一部または全部をエステル化した重合体(ポリマー)である。本明細書でいう「置換度」とは、セルロースの2位、3位および6位のぞれぞれの水酸基の水素原子が置換されている割合の合計を意味する。2位、3位および6位の全ての水酸基の水素原子がアシル基で置換された場合は置換度が3となる。本発明において、A+Bはより好ましくは2.6≦A+B≦3.0であり、さらに好ましくは2.67≦A+B≦3.0である。また、Aは、好ましくは0≦A≦1.8であり、Bは1.0≦B≦3.が好ましく、さらには1.2≦B≦3.0が好ましい。本発明においては、セルロースの2位、3位および6位の水酸基の置換度は特に限定されないが、セルロースエステルの6位の置換度が好ましくは0.7以上であり、さらに好ましくは0.8以上であり、特に好ましくは0.85以上であり、特に0.90以上が好ましい。これによりセルロースエステルの溶解性、耐熱性を向上させることができる。
次に本発明のセルロースエステルの置換基Bで表される炭素数3〜22のアシル基は、脂肪族アシル基でも芳香族アシル基のいずれであってもよい。本発明のセルロースエステルのアシル基が脂肪族アシル基である場合、炭素数は3〜18であることが好ましく、炭素数は3〜12であることがさらに好ましく、炭素数は3〜8であることが特に好ましい。これらの脂肪族アシル基の例としては、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、あるいはアルキニルカルボニル基などを挙げることができる。アシル基が芳香族アシル基である場合、炭素数は6〜22であることが好ましく、炭素数は6〜18であることがさらに好ましく、炭素数は6〜12であることが特に好ましい。これらのアシル基は、それぞれさらに置換基を有していてもよい。
好ましいアシル基の例としては、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブチリル基、ピバロイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフタレンカルボニル基、フタロイル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、さらに好ましいものは、プロピオニル基、ブチリル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、ピバロイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などであり、特に好ましいものはプロピオニル基、ブチリル基である。
本発明のセルロースエステルのエステルを構成するアシル基は、好ましくは炭素原子数が6以下の脂肪族アシル基であり、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基からなる群より選択されるアシル基が好ましい。より好ましいのは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基およびペンタノイル基からなる群より選択されるアシル基であり、さらに好ましいのはアセチル基、プロピオニル基およびブチリル基からなる群より選択されるアシル基である。本発明のセルロースエステルのエステルを構成するアシル基は、単一種であってもよいし、複数種であってもよい。
さらに、本発明で使用するセルロースエステルは、下記式(S−4)〜(S−6)を満足することが好ましい。
式(S−4) 2.6≦A+B’≦3.0
式(S−5) 0≦A≦1.8
式(S−6) 1.0≦B’≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、B’はセルロースの水酸基に対するプロピオニル基、ブチリル基の置換度の総和を表す。)
また、より好ましくは、本発明で使用するセルロースエステルが、2.6≦A+B’≦3.0、0≦A≦1.4、および1.0≦B’≦3を満足することが好ましい。特に、本発明で使用するセルロースエステルが、2.7≦A+B’≦3.0、0≦A≦1.0および1.3≦B’≦3を満足することが好ましい。このようにアセチル基の含有率を低くし、プロピオニル基、ブチリル基の含有率を多くすることによって、フィルム化したときの温度、湿度に対する光学特性変化を抑制することができる。
(セルロースエステルの製造方法)
次に、本発明のセルロースエステルの製造方法について説明する。本発明のセルロースエステルのさらに詳細な原料綿や合成方法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁に記載されている。セルロース原料としては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、綿花リンター由来のものが好ましく用いられる。セルロース原料としては、α−セルロース含量が92質量%〜99.9質量%の高純度のものを用いることが好ましい。セルロース原料がシート状や塊状である場合は、あらかじめ解砕しておくことが好ましく、セルロースの形態は微細粉末から羽毛状になるまで解砕が進行していることが好ましい。本発明におけるセルロースエステルは、その含水率が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースエステルの重合度は、平均重合度は好ましくは100〜700であり、好ましくは120〜550であり、さらに好ましくは120〜400であり、特に好ましくは平均重合度130〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)に記載されるように、ゲル浸透クロマトグラフィー (GPC)による分子量分布測定などの方法により測定できる。さらに特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
本発明のセルロースエステルは1種類のみを用いてもよく、2種以上混合してもよい。重合度の調整は低分子量成分を除去することでも達成できる。低分子成分が除去されるとセルロースエステルの平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースエステルよりも低くなるため有用である。低分子成分の除去は、セルロースエステルを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。また、本発明におけるセルロースエステルは、セルロースエステル以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの可視光(615nm)の透過率は好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であることが好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルは、質量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜7.0のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.5〜6.0であり、さらに好ましくは2.0〜5.5であり、さらに好ましくは2.5〜5.5のセルロースエステルが好ましく用いられる。セルロースエステルはペレット化することが好ましく、好ましいペレットの大きさは1mm3〜10cm3であり、より好ましくは5mm3〜5cm3、さらに好ましくは10mm3〜3cm3である。この後、上述の条件で乾燥する。得られたセルロースエステルは、環境による影響を受けにくくするために、低温暗所で保存することが望ましい。さらに、保管用としてアルミニウムなどの防止素材で作製された防湿袋や、SUS製ドラムあるいはコンテナに保存することがさらに好ましい。
その他、6位置換度の大きいセルロースエステルの合成については、特開平11−5851号、特開2002−212338号や特開2002−338601号各公報などに記載がある。セルロースエステルの他の合成法としては、塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミン、tert−ブトキシカリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなど)の存在下に、カルボン酸無水物やカルボン酸ハライドと反応させる方法や、アシル化剤として混合酸無水物(カルボン酸・トリフルオロ酢酸混合無水物、カルボン酸・メタンスルホン酸混合無水物など)を用いる方法も用いることができ、特に後者の方法は、炭素数の多いアシル基や、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相アシル化法が困難なアシル基を導入する際には有効である。
(添加剤)
本発明のセルロースエステルには、以下に記載する添加剤を必要に応じて添加することができる。添加のタイミングは、セルロースエステル溶融液の調製前から調製後のいずれの段階であってもよい。なお、本発明のセルロースエステルに添加することができる添加剤は以下に説明するものに限定されず、難燃剤、滑剤、油剤などを添加してもよい。
(1)微粒子
本発明におけるセルロースエステルは、平均一次粒子サイズが0.005μm〜2μmである微粒子をセルロースエステルに対して、0.005〜1.0質量%を含有することが好ましい。該微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。
前記無機化合物としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2、In23、MgO、BaO、MoO2、V25、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウム等が挙げられる。好ましくは、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2、In23、MgO、BaO、MoO2、およびV25の少なくとも1種が好ましく、さらに好ましくはSiO2、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2である。前記SiO2の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。また、前記ZrO2の微粒子としては、例えば、アエロジルR976およびR811(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
次に、本発明で使用されうる有機化合物の微粒子としては、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂およびアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、シリコーン樹脂が特に好ましい。前記シリコーン樹脂としては、三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えばトスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120および同240(以上、東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品を使用できる。
本発明におけるセルロースエステルに使用される微粒子の平均一次粒子サイズとしては、ヘイズを低く抑えるという観点から0.005μm〜2μmであり、好ましくは0.005μm〜0.5μmであり、特に好ましくは0.005μm〜0.1μmである。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズの測定は、セルロースエステルフィルムを透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって平均一次粒子サイズとした。
これら微粒子のセルロースエステルへの添加方法は、常法によって混練するなどにより行うことができるが、特に好ましくは予め溶媒に分散した微粒子とセルロースエステルとを混合分散させた後、溶媒を揮発させた固形物とし、これをセルロースエステル溶融物の製造過程で用いることが均一な溶融物が得られる点で好ましい。なお、フィルム中に微粒子を均一に分散させるためには、混練機中やあるいは製膜時のダイ中でのシェアーにより、前記微粒子が粉体から微粒子化され微細分散化される工程を含むことが好ましい。なお、微粒子と共に必要に応じてその他の機能性素材(例えば可塑剤および/または紫外線吸収剤)を同時に溶媒に溶解して分散し、混合して使用してもよい。
また、本発明の製造方法により最終的に得られたセルロースエステルフィルム中での微粒子の平均二次粒子サイズは0.01〜5μmであることが好ましく、平均二次粒子サイズが0.02〜3μmであることがより好ましく、平均二次粒子サイズが0.02〜1μmであることが特に好ましい。ここで、前記微粒子の平均二次粒子サイズの測定は、セルロースエステルフィルムを透過型電子顕微鏡(倍率10万〜100万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察しその平均値をもって平均二次粒子サイズとした。
さらに、無機化合物からなる微粒子は、セルロースエステルフィルム中で安定に存在させるために表面処理をすることが好ましい。無機微粒子は、表面処理を施して用いることも好ましい。表面処理法としては、カップリング剤を使用する化学的表面処理と、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とがあるが、本発明においてはカップリング剤の使用が好ましい。前記カップリング剤としては、オルガノアルコキシ金属化合物(例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等)が好ましく用いられる。微粒子として無機微粒子を用いた場合(特にSiO2を用いた場合)ではシランカップリング剤による処理が特に有効である。前記シランカップリング剤としては下記一般式(11)で表されるオルガノシラン化合物が使用可能である。前記カップリング剤の使用量は特に限定されないが、好ましくは無機微粒子に対して、0.005〜5質量%使用することが推奨され、さらには0.01〜3質量%が好ましい。
一般式(11) RxSi(OR’)(4-x)
(式中、R、R’は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基またはフルオロアルキル基を表す。なお、前記アルキル基は、官能基として、エポキシ基、アミノ基、アクリル基、イソシアネート基、および/またはメルカプト基を有していてもよい。xは0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。)
前記一般式(11)で表されるオルガノシランの具体例としては下記のものを挙げることができるが、本発明で用いることができるオルガノシランはこれらの例示に限定されるものではない。一般式(11)においてx=0の場合の具体例として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等;x=1の場合:メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、CF3CH2CH2Si(OCH33、CF3(CF25CH2CH2Si(OCH33、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、x=2の場合の具体例として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。また、硬化膜の硬さおよび脆性の調節や官能基導入の目的で、異なる2種以上のオルガノシランを組み合わせて用いることもできる。
前記カップリング剤は、微粒子への直接処理方法とインテグラルブレンド法とによって処理される。前記直接法は乾式法とスラリー法とスプレー法とに大きく分類される。直接処理方法で得られた微粒子はバインダー中に添加され微粒子の表面に確実にカップリング剤が修飾できる点で優れている。その中で乾式法は微粒子にシランカップリング剤のアルコール水溶液、有機溶媒または水溶液中で均一に分散させた後乾燥して実施するものであり一般的である。ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、レデイミキサー、V型ブレンダー、オープンニーダー等の攪拌機を使用するのが好ましい。これらの攪拌機の中でも特にオープンニーダーが好ましい。微粒子と少量の水、または水を含有する有機溶媒そしてカップリング剤を混合しオープンニーダーで攪拌して水を除去したさらに微細分散するのが好ましい。
また、スラリー法は微粒子の製造において微粒子をスラリー化する工程がある場合にそのスラリー中にカップリング剤を添加する方法であり、製造工程で処理できる利点を有する。また、スプレー法は微粒子の乾燥工程において微粒子にカップリング剤を添加する方法であり、製造工程で処理できる利点を有するが処理の均一性に難点がある。
前記インテグラルブレンド法について述べると、インテグラルブレンド法は、カップリング剤を微粒子とバインダーとの中に添加する方法であり、良く混練する必要があるが簡便な方法である。本発明における微粒子は、セルロースエステルに対して0.005〜1.0質量%を含有されることが好ましい。前記微粒子の含有量は、より好ましくは、0.01〜0.8質量%であり、さらには0.02〜1.0質量%が特に好ましい。
(2)紫外線吸収剤
本発明においては、セルロースエステルに1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。含有量は、セルロースエステルに対して、0.2〜3質量%である。前記紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。
好ましい紫外線防止剤は、(a)ヒンダードアミン系光安定剤、(b)ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、オキザリックアシッドアニリド系、フォルムアミジン系およびトリアジン環系から選ばれる紫外線吸収剤、(c)ヒドロキシベンゾエート系光安定剤および(d)ニッケル系消光剤から適宜選択することができる。
(a)成分のヒンダードアミン系光安定剤としては、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピベリジン、1−アリル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピベリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピベリジン、1−(4−tert−ブチル−2−ブテニル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピベリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピベリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピベリジン、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジルマレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピベリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)フマレート、ビス(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−4−ピベリジル)セバケート、ビス(1−アリル−2,2,6,6−テトラメチノル−4−ピペリジル)フタレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピベリジル)セバケート、1,1'−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、
2−メチル−2−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)イミノ−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、1−プロパギル−4−β−シアノエチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−アセテート、トリメリット酸−トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステル、1−アクリロイル−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ジブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ジベンジルマロネート、ビス(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−4−ピペリジル)ジベンジル−マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピベリジル)−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,3−ジカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,3−ジカルボキシレート、ビス(1−アセチブレ2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,3−ジカルボキシレート、1,3−ビス[2,2'−[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,3−ジオキサシクロヘキサン−5,5−ジカルボキシレート]]、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−[1−メチルエチル]−1,3−ジオキサシクロヘキサン−5,5−ジカルボキシレート]]、1,2−ビス[2,2'−[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−メチル−1,3−ジオキサシクロヘキサン−5,5−ジカルボキシレート]]、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−[2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]エチル−2−メチル−1,3−ジオキサシクロヘキサン−5,5−ジカルボキシレート、ビス(2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,5−ジオキサスピロ[5.11]ヘプタデカン−3,3−ジカルボキシレート、ヘキサン−1',6'−ビス−4−カルバモイルオキシ−1−n−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)、トルエン−2',4'−ビス(4−カルバモイルオキシ−1−n−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)、ジメチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン、フェニル−トリス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン、トリス(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ホスファイト、トリス(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ホスフェート、フエニル−[ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)]−ホスホネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボンアミド、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピベリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボンアミド、2−ジブチルアミノ−4,6−ビス(9−アザ−3−エチル−8,8,10,10−テトラメチル−1,5−ジオキサスピロ[5.5]−3−ウンデシルメトキシ)−s−トリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ビス(9−アザ−3−エチル−8,8,9,10,10−ペンタメチル−1,5−ジオキサスピロ[5.5]−3−ウンデシルメトキシ)−s−トリアジン、テトラキス(9−アザ−3−エチル−8,8,10,10−テトラメチル−1,5−ジオキサスピロ[5.5]−3−ウンデシルメチル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(9−アザ−3−エチル−8,8,9,10,10−ペンタメチル−1,5−ジオキサスピロ[5.5]−3−ウンデシルメチル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、トリデシル・トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、トリデシル・トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ジ(トリデシノル)・ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ジ(トリデシル)・ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,4,4−テトラメチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ[5,1,11,2]ヘンエイコサン−21−オン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボエルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ベンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボエルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ポリ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート)、ポリ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート)、ポリ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート)、ポリ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート)、ポリ[[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イタコネート][ビニルブチルエーテル]]、ポリ[[ビス(1,2,2,6,6−ベンタメチル−4−ピペリジル)イタコネート][ビニルブチルエーテル]]、ポリ[[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イタコネート][ビニルオクチルエーテル]]、ポリ[[ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)イタコネート][ビニルオクチルエーテル]]、ジメチルサクシネート−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)エタノール縮合物、ポリ[ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[エチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチレン−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[[1,3,5−トリアジンー2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[[6−(ジエチルイミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)イミノ]]、ポリ[[6−[(2−エチルヘキシル)イミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[[6−(シクロヘキシルイミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[[6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイノル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[[6−(ブトキシイミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)オキシ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)イミノ]]、ポリ[オキシ[6−[(1−ピペリジル)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイルオキシ−1,2−エタンジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−3−オキソ−1,4−ピペリジル)−1,2−エタンジイル]][(3,3,5,5−テトラメチル−2−オキソ−1,4−ピベリジル)−1,2−エタンジイル]]、ポリ[オキシ[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイルオキシ−1,2−エタンジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−3−オキソ−1,4−ピペリジル)−1,2−エタンジイル][(3,3,5,5−テトラメチル−2−オキソ−1,4−ピペリジル)−1,2−エタンジイル]]、ポリ[[6−[(エチルアセチル)イミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)イミノ]]、ポリ[[6−[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)ブチルイミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、1,6,11−トリス[{4,6−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[{4,6−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[{4,6−ビス(N−オクチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[{4,6−ビス(N−オクチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノ]ウンデカン、ポリメチル−プロピル−3−オキシ[1(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジル]シロキサン、1,1',1"−[1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイル−トリス[(シクロヘキシルイミノ)−2,1−エタンジイル]]−トリス[3,3,5,5−テトラメチルピペラジン−2−オン]、1,1,1−トリス[ポリオキシプロピレン−{4,6−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノエーテルメチル]プロパン、1,1,1−トリス[ポリオキシエチレン−{4,6−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノエーテルメチル]プロパン、1,1,1−トリス[ポリオキシエチレン−{4,6−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノエーテルメチル]プロパン、1,1,1−トリス[ポリオキシプロピレン−{4,6−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5
−トリアジン−2−イル}アミノエーテルメチル]プロバン、1,1,1−トリス[ポリオキシプロピレン−{4,6−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピベリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノエーテルメチル]プロパン、1,5,8,12−テトラキス[4,6−ビス(N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ブチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[4,6−ビス(N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−ブチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカンなどを挙げることができる。
(b)成分のうちベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシー3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール・コポリマー、2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタールイミディルメチル)フェノール、2,2'−メチレンビス(4−tert−ブチル−6−2H−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−tert−オクチル−6−2H−ベンゾトリアゾリルフェノール)などを挙げることができる。
(b)成分のうちベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルフォニックアシッド、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノンおよび2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2'−カルボキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
(b)成分のオキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤としては、N,N'−ジエチルオキザリックアシッド−ビス−アニリド、2−エトキシ−2'−エチルオキザリックアシッド−ビス−アニリド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2'−エチルオキザリックアシッド−ビス−アニリドおよび2−エトキシ−5−tert−ブチル−2'−エチル−4'−tert−ブチルオキザリックアシッド−ビス−アニリドなどを挙げることができる。
(b)成分のフォルムアミジン系紫外線吸収剤としては、N−(4−エトキシカルボニルフェニル)−N'−メチル−N'−フェニルフォルムアミジン、N−(4−エトキシカルボニルフェニル)−N'−エチル−N'−フェニルフォルムアミジン、N−(4−エトキシカルボニルフェニル)−N'−エトキシル−N'−フェニルフォルムアミジンおよびN−(4−エトキシカルボニルフェニル)−N',N'−ジフェニルフォルムアミジンなどを挙げることができる。
(b)成分のトリアジン環紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ジ(2,4−キシリル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−オクチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールなどを挙げることができる。(c)成分のヒドロキシベンゾエート系光安定剤としては、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエート、2,6−ジ−tert−ブチルフェニル−3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートおよびn−オクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどを挙げることができる。
(d)成分のニッケル系消光剤としては、ニッケル−ビス[2,2'−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)]、ニッケル−ビス[O−tert−ブチル−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート]、エッケル−ビス[O−エチル−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート]、2,2'−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−ブチルアミノ−ニッケル(II)、2,2'−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−シクロヘキシルアミノ−ニッケル(II)、2,2'−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−ジエタノールアミノ−ニッケル(II)、2,2'−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−フェニル−ジエタノールアミノ−ニッケル(II)、2,2'−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−i−オクチルアミノ−ニッケル(II)、2,2'−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−オクチルアミノ−ニッケル(II)、2,2'−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−シクロヘキシル−ジエタノールアミノ−ニッケル(II)およびニッケルジブチルジチオカルバメートなどを挙げることができる。
(a)、(c)成分の光安定剤と(b)成分の紫外線吸収剤を併用することにより、より優れた耐候性を付与することができる。なお、本発明においてはフィルムの色を調整するために、場合により着色する事も好ましく、その際の着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄、チタニウムオキサイド系焼成顔料、群青、アルミン酸コバルト、カーボンブラック等の無機顔料、アゾ系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ペリレン系、イソインドリノン系、フタロシアニン系、キノフタロン系、スレン系、ジケトピロロピロール系等の有機顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の体質顔料、塩基性染料、酸性染料、媒染染料等の染料などを挙げることができる。
これらの紫外線吸収剤として、市販品を使用することもできる。そのような市販品として、ベンゾトリアゾール系としてはTINUBIN P(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、TINUBIN 234(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、TINUBIN 320(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、TINUBIN 326(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、TINUBIN 327(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、TINUBIN 328(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、スミソーブ340(住友化学)などがある。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、シーソーブ100(シプロ化成)、シーソーブ101(シプロ化成)、シーソーブ101S(シプロ化成)、シーソーブ102(シプロ化成)、シーソーブ103(シプロ化成)、アデカスタイプLA−51(旭電化)、ケミソープ111(ケミプロ化成)、UVINUL D−49(BASF)などが挙げられる。また、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤としては、TINUBIN 312(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)やTINUBIN 315(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)がある。また、サリチル酸系紫外線吸収剤としては、シーソーブ201(シプロ化成)やシーソーブ202(シプロ化成)が上市されており、シアノアクリレート系紫外線吸収剤としてはシーソーブ501(シプロ化成)、UVINUL N−539(BASF)がある。
(3)可塑剤
本発明のセルロースエステルに可塑剤を添加することにより、セルロースエステルの結晶融解温度(Tm)を下げることができる。本発明に用いる可塑剤の分子量は特に限定されるものではなく、低分量でもよく高分子量でもよい。可塑剤の種類は、リン酸エステル類、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、カルボン酸エステル類、多価アルコールの脂肪酸エステル類などが挙げられる。それらの可塑剤の形状としては固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。溶融製膜を行なう場合は、不揮発性を有するものを特に好ましく使用することができる。
リン酸エステルの具体例としては、例えばトリフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、1,4−フェニレンーテトラフェニル燐酸エステル等を挙げることができる。また特表平6−501040号公報の請求項3〜7に記載のリン酸エステル系可塑剤を用いることも好ましい。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
カルボン酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートおよびジエチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル類、およびクエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル類、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(ブチルジグリコールアジペート)等のアジピン酸エステル類、テトラオクチルピロメリテート、トリオクチルトリメリテートなどの芳香族多価カルボン酸エステル類、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、ジエチルアゼレート、ジブチルアゼレート、ジオクチルアゼレートなどの脂肪族多価カルボン酸エステル類、グリセリントリアセテート、ジグリセリンテトラアセテート、アセチル化グリセライド、モノグリセライド、ジグリセライドなどの多価アルコールの脂肪酸エステル類などを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン等を単独あるいは併用するのが好ましい。
また、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどのグリコールと二塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのオキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリバレロラクトンなどのラクトンからなる脂肪族ポリエステル類、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー類などの高分子量系可塑剤が挙げられる。可塑剤はこれらを単独もしくは低分量可塑剤と併用して使用することができる。
多価アルコール系可塑剤は、セルロース脂肪酸エステルとの相溶性が良く、また熱可塑化効果が顕著に現れるグリセリンエステル、ジグリセリンエステルなどグリセリン系のエステル化合物やポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物などである。
具体的なグリセリンエステルとして、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートミスチレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートノナネート、グリセリンジアセテートオクタノエート、グリセリンジアセテートヘプタノエート、グリセリンジアセテートヘキサノエート、グリセリンジアセテートペンタノエート、グリセリンジアセテートオレート、グリセリンアセテートジカプレート、グリセリンアセテートジノナネート、グリセリンアセテートジオクタノエート、グリセリンアセテートジヘプタノエート、グリセリンアセテートジカプロエート、グリセリンアセテートジバレレート、グリセリンアセテートジブチレート、グリセリンジプロピオネートカプレート、グリセリンジプロピオネートラウレート、グリセリンジプロピオネートミスチレート、グリセリンジプロピオネートパルミテート、グリセリンジプロピオネートステアレート、グリセリンジプロピオネートオレート、グリセリントリブチレート、グリセリントリペンタノエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンプロピオネートラウレート、グリセリンオレートプロピオネートなどが挙げられるがこれに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。この中でも、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンジアセテートペラルゴネート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートミリステート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートオレートが好ましい。
ジグリセリンエステルの具体的な例としては、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラバレレート、ジグリセリンテトラヘキサノエート、ジグリセリンテトラヘプタノエート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトラペラルゴネート、ジグリセリンテトラカプレート、ジグリセリンテトララウレート、ジグリセリンテトラミスチレート、ジグリセリンテトラパルミテート、ジグリセリントリアセテートプロピオネート、ジグリセリントリアセテートブチレート、ジグリセリントリアセテートバレレート、ジグリセリントリアセテートヘキサノエート、ジグリセリントリアセテートヘプタノエート、ジグリセリントリアセテートカプリレート、ジグリセリントリアセテートペラルゴネート、ジグリセリントリアセテートカプレート、ジグリセリントリアセテートラウレート、ジグリセリントリアセテートミスチレート、ジグリセリントリアセテートパルミテート、ジグリセリントリアセテートステアレート、ジグリセリントリアセテートオレート、ジグリセリンジアセテートジプロピオネート、ジグリセリンジアセテートジブチレート、ジグリセリンジアセテートジバレレート、ジグリセリンジアセテートジヘキサノエート、ジグリセリンジアセテートジヘプタノエート、ジグリセリンジアセテートジカプリレート、ジグリセリンジアセテートジペラルゴネート、ジグリセリンジアセテートジカプレート、ジグリセリンジアセテートジラウレート、ジグリセリンジアセテートジミスチレート、ジグリセリンジアセテートジパルミテート、ジグリセリンジアセテートジステアレート、ジグリセリンジアセテートジオレート、ジグリセリンアセテートトリプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリブチレート、ジグリセリンアセテートトリバレレート、ジグリセリンアセテートトリヘキサノエート、ジグリセリンアセテートトリヘプタノエート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンアセテートトリペラルゴネート、ジグリセリンアセテートトリカプレート、ジグリセリンアセテートトリラウレート、ジグリセリンアセテートトリミスチレート、ジグリセリンアセテートトリパルミテート、ジグリセリンアセテートトリステアレート、ジグリセリンアセテートトリオレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンカプリレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンオレートなどのジグリセリンの混酸エステルなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
この中でも、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトララウレートが好ましい。
ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
ポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物の具体的な例として、ポリオキシエチレンアセテート、ポリオキシエチレンプロピオネート、ポリオキシエチレンブチレート、ポリオキシエチレンバリレート、ポリオキシエチレンカプロエート、ポリオキシエチレンヘプタノエート、ポリオキシエチレンオクタノエート、ポリオキシエチレンノナネート、ポリオキシエチレンカプレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンミリスチレート、ポリオキシエチレンパルミテート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレンリノレート、ポリオキシプロピレンアセテート、ポリオキシプロピレンプロピオネート、ポリオキシプロピレンブチレート、ポリオキシプロピレンバリレート、ポリオキシプロピレンカプロエート、ポリオキシプロピレンヘプタノエート、ポリオキシプロピレンオクタノエート、ポリオキシプロピレンノナネート、ポリオキシプロピレンカプレート、ポリオキシプロピレンラウレート、ポリオキシプロピレンミリスチレート、ポリオキシプロピレンパルミテート、ポリオキシプロピレンステアレート、ポリオキシプロピレンオレート、ポリオキシプロピレンリノレートなどが挙げられるがこられに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
可塑剤の添加量は、0〜20質量%とするものが好ましく、より好ましくは0〜18質量%、最も好ましくは0〜15質量%である。可塑剤の含有量が20質量%より多い場合、セルロースエステルの熱流動性は良好になるものの、可塑剤が溶融製膜したフィルムの表面にしみ出したり、また耐熱性であるガラス転移温度Tgが低下することがある。
(4)安定剤
本発明においては必要に応じて要求される性能を損なわない範囲内で、熱劣化防止用、着色防止用の安定剤として、ホスファイト系化合物、亜リン酸エステル化合物、フォスフェイト、チオフォスフェイト、弱有機酸、エポキシ化合物等を単独または2種類以上混合して添加してもよい。ホスファイト系安定剤の具体例としては、特開2004−182979号公報の段落[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を用いることができる。
本発明における安定剤の添加量は、セルロースエステルに対して0.005〜1質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%、さらに好ましくは0.05〜0.3質量%である。添加量が0.005質量%以上であれば、溶融製膜時の劣化防止および着色抑制の効果を十分に得ることができる。また、0.5質量%以下であれば、溶融製膜したセルロースエステルフィルムの表面にしみ出しが出ることがない。
また、本発明では、劣化防止剤および酸化防止剤を添加することも好ましい。フェノール系化合物、チオエーテル系化合物、リン系化合物などは劣化防止剤もしくは酸化防止剤として添加することにより、劣化および酸化防止に相乗効果が現れる。さらに、その他の安定剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
(5)光学調整剤
また本発明では、光学調整剤を添加することもできる。例えば、光学異方性をコントロールするためのレターデーションコントロール剤が、場合により添加される。セルロースエステルフィルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーションコントロール剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースエステル100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースアセレート100質量部に対して、0.05〜15質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。本発明では、2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ環に含まれるヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
(6)フッ素原子を有する重合体−離型剤
本発明におけるセルロースエステルは、フッ素原子を有する重合体を含むことが好ましい。前記フッ素原子を有する重合体は、離型剤としての作用を発現できる。
前記フッ素原子を有する重合体としては、例えば、特開2001−269564号公報に記載の重合体を挙げることができる。前記フッ素原子を有する重合体として好ましいものは、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(単量体A)を必須成分として含有してなる単量体を重合せしめた重合体である。前記重合体に係わるフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(単量体A)としては、分子中にエチレン性不飽和基とフッ素化アルキル基とを有する化合物であれば特に制限はない。好ましくはアクリルエステル基およびその類縁基を含有するものが適しており、具体的には下記一般式(1)で表されるフッ素化(メタ)アクリレートが挙げられる。尚、(メタ)アクリレートは、メタクリレート、アクリレート、フルオロアクリレート、塩素化アクリレートを総称するものとする。
一般式(1) CH2=C(R1)−COO−(X)n−Rf
(式中、Rfは炭素数1〜20のパーフロロアルキル基、または部分フッ素化アルキル基であり、Rfは直鎖状であっても分岐状であってもよく、また酸素原子および/または窒素原子を含む官能基を主鎖中に有するものであってもよい。R1は水素原子、フッ素化されていてもよいアルキル基、塩素原子またはフッ素原子を表し、Xは2価の連結基を表し、nは0以上の整数を表す。)
Rfのパーフロロアルキル基の好ましい炭素数は1〜18であり、より好ましくは4〜18であり、さらに好ましくは6〜14であり、最も好ましくは6〜12である。部分フッ素化アルキル基は、その一部にパーフロロアルキル基を有するものが好ましく、そのパーフロロアルキル基の炭素数の好ましい範囲は前記と同じである。また、主鎖中に有していてもよい酸素原子を含む官能基としては、−SO2−、−C(=O)−、窒素原子を含む官能基としては、−NH−、−N(CH3)−、−N(C25)−、−N(C37)−などを挙げることができる。
1が採りうるフッ素化されていてもよいアルキル基は、無置換のアルキル基、パーフロロアルキル基、部分フッ素化アルキル基のいずれであってもよい。好ましいのは、無置換のアルキル基および部分フッ素化アルキル基である。無置換のアルキル基として好ましいのは、メチル基である。Xが採りうる2価の連結基として好ましいものは、−(CH2m−、−CH2CH(OH)−(CH2m−、−(CH2mN(R3)−SO2−、−(CH2mN(R3)−CO−、−CH(CH3)−、−CH(CH2CH3)−、−C(CH32−、−CH(CF3)−、−C(CH3)(CF3)−、−C(CF32−などである。mは1〜10の整数であり、1〜8が好ましく、1〜6がより好ましい。mが2以上であるとき、各Xが表す連結基は同一であっても異なっていてもよい。R3は水素または炭素数1〜6アルキル基である。また、一般式(6)で表される素材もフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(単量体A)として好ましい。
Figure 2007001198
(一般式(6)において、kは1〜20の整数を表し、kはより好ましくは2〜18であり、さらに好ましくは4〜14であり、最も好ましくは6〜12である。)
フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(単量体A)は、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を組み合わせて用いても構わない。フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(単量体A)におけるフッ素化アルキル基は、離型性(剥離性)の観点からは、その炭素数が6〜18であるものが特に好ましく、さらには6〜14であるものがより好ましく、6〜12であるものが特に好ましい。本発明において、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(単量体A)の重合体(I)中への導入量に特に制限はないが、10質量%以上重合せしめることが好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。
さらに本発明においてはフッ素原子を有する重合体中に、ポリオキシアルキレン基含有不飽和単量体(単量体B)を含有させることも可能である。ポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和単量体(単量体B)としては、1分子中にポリオキシアルキレン基とエチレン性不飽和基を有する化合物であれば特に制限はない。オキシアルキレン基としてはエチレンオキシド基および/またはプロピレンオキシド基が好ましい。またその重合度は通常1〜100であり、5〜50が好ましい。エチレン性不飽和基としては、原料の入手性、各種コーティング組成物中の配合物に対する相溶性、そのような相溶性を制御することの容易性、あるいは重合反応性の観点から(メタ)アクリルエステル基およびその類縁基を含有するものが適している。
さらに、1分子中に2個以上の不飽和結合を有するエチレン性不飽和単量体(単量体C)を含有させることも可能である。1分子中に2個以上の不飽和結合を有するエチレン性不飽和単量体(単量体C)としては、特に制限はなく、目的とする配合物中のマトリックス樹脂、溶媒等の組成により適宜選択される。エチレン性不飽和基としては原料の入手性、各種コーティング組成物中の配合物に対する相溶性、そのような相溶性を制御することの容易性あるいは重合反応性の観点から(メタ)アクリルエステル基およびその類縁基を含有するものが適している。
以下に本発明で好ましく用いられるフッ素原子を有する重合体の具体例を表すが、本発明で用いることができるフッ素原子を有する重合体はこれらに限定されるものではない。
PF−1 :2−ヘプタデシルフルオロオクチル−エチル アクリレート/ブチルアクリレート=30/70(モル比、分子量3000)
PF−2 :2−ヘプタデシルフルオロオクチル−エチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート=25/75(モル比、分子量5000)
PF−3 :2−トリデカフルオロヘキシル−エチルアクリレート/ブチルアクリレート=20/80(モル比、分子量8000)
PF−4 :2−トリデカフルオロヘキシル−エチルアクリレート/ブチルメクリレート=15/85(モル比、分子量5000)
PF−8 :2−ヘプタデシルフルオロオクチル−エチルアクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/ブチルアクリレート=30/20/50(モル比、分子量9000)
PF−9 :2−トリデカフルオロヘキシル−エチルアクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メチルアクリレート/トリエチレングリコール ジメタクリレート=30/20/30/15/5(モル比、分子量3000)
PF−10 :2−トリデカフルオロヘキシル−エチルアクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンアクリレート/2−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/テトラエチレングリコール ジメタクリレート=30/25/25/15/5(モル比、分子量3500)
PF−11 :2−トリデカフルオロヘキシル−エチルアクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/2−ヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/テトラエチレングリコール ジメタクリレート=30/25/25/5/5(モル比、分子量6000)
PF−12 :2−トリデカフルオロヘキシル−エチルアクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/2−ヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート=30/25/25/20(モル比、分子量6000)
PF−13 :2−ヘプタデシルフルオロオクチル−エチル アクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/2−ヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート=25/25/30/20(モル比、分子量8000)
PF−14 :2−ヘプタデシルフルオロオクチル−エチル アクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/2−ヘキシルアクリレート/スチレン=30/25/35/10(モル比、分子量9000)
<セルロースエステルフィルム積層体の製造>
本発明のセルロースエステルフィルム積層体を製造する代表的な手順を以下において説明する。
(ペレット化)
上記セルロースエステルと添加物は溶融製膜に先立ちペレット化するのが好ましい。ペレット化を行なうにあたりセルロースエステルは事前に乾燥しておくことが好ましいが、ベント式押出機を用いることで、これに代用することもできる。乾燥を行なう場合は、乾燥方法として、加熱炉内にて90℃で8時間以上加熱する方法等を用いることができるが、この限りではない。ペレット化は上記セルロースエステルと添加物を2軸混練押出機で150℃〜230℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを水中で固化し裁断することで作成することができる。また、押出機による溶融後水中に口金より直接押出ながらカットする、アンダーウオーターカット法等によりペレット化を行ってもかまわない。押出機は十分な、溶融混練が得られる限り、任意の公知の単軸スクリュー押出機、非噛み合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、噛み合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、噛み合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。好ましいペレットの大きさは断面積が1mm2〜300mm2、長さ1mm〜30mmが好ましく、より好ましくは断面積が2mm2〜100mm2、長さが1.5mm〜10mmである。
またペレット化を行なう時に、上記添加物を押出機の途中にある原料投入口やベント口から投入することもできる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは、20rpm〜700rpm、さらにより好ましくは30rpm〜500rpmである。10rpm以上であれば、滞留時間が長くなり過ぎることがなく、熱劣化による分子量低下や、黄色味の悪化を招きにくい。また1000rpm以下であれば、剪断による分子の切断や分子量低下、架橋ゲルの発生量の増加などを回避しやすい。ペレット化における押出滞留時間は10秒〜60分、より好ましくは、15秒〜30分である。十分に溶融ができれば、滞留時間は短い方が、樹脂劣化、黄色み発生を抑えることができる点で好ましい。
(溶融製膜)
本発明のセルロースエステルフィルム積層体を製造する際には、セルロースエステルフィルムを溶融製膜法で製造することが好ましい。一般に溶融製膜は、セルロースエステルを予め所定の温度に予熱し、添加物などを混合する混練・押し出し工程、キャスト工程、延伸工程、緩和工程、冷却工程、巻き取り工程、加工工程を通じて、所望のセルロースエステルフィルムを得るものである。溶融製膜条件の最適化について、以下に詳細に記述する。
(1)乾燥
本発明では、上述の方法でペレット化したものを用いるのが好ましく、溶融製膜に先立ちペレット中の含水率を好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは、0.01%以下にした後、溶融押出し機のホッパーに投入する。このときホッパーを好ましくは20℃〜110℃以下、より好ましくは40℃〜100℃以下、さらに好ましくは50℃〜90°以下にする。この際、ホッパーは除湿風エアー等で一定風量・温度であることが好ましいが、目的とする含水率が得られるのであればこの限りでは無い。また、ホッパー内を真空密閉構造とし、窒素等の不活性ガスを封入することがより好ましい。
(2)溶融押出し
上述したセルロースエステルは押出機の供給口を介してシリンダー内に供給される。図1は、本発明で用いることができる典型的な押出機22の概略図を示したものである。シリンダー32内は供給口40側から順に、供給口から供給したセルロースエステルを定量輸送する供給部(領域A)とセルロースエステルを溶融混練・圧縮する圧縮部(領域B)と溶融混練・圧縮されたセルロースエステルを計量する計量部(領域C)とで構成される。該セルロースエステルフィルムは上述の方法により水分量を低減させるために、乾燥することが好ましいが、残存する酸素による溶融樹脂の酸化を防止するために、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用いて真空排気しながら実施するのがより好ましい。押出機のスクリュー圧縮比は2.5〜4.5に設定され、L/Dは20〜70に設定されていることが好ましい。ここでスクリュー圧縮比とは供給部Aと計量部Cとの容積比、即ち(供給部Aの単位長さあたりの容積)÷(計量部Cの単位長さあたりの容積)で表され、供給部Aのスクリュー軸の外径d1、計量部Cのスクリュー軸の外径d2、供給部Aの溝部径a1、および計量部Cの溝部径a2とを使用して算出される。また、L/Dとはシリンダー内径に対するシリンダー長さの比である。また、押出温度は190〜240℃に設定されることが好ましい。押出機内での温度が230℃を超える場合には、押出機とダイとの間に冷却機を設けるようにすることが好ましい。
スクリュー圧縮比が小さ過ぎると、十分に溶融混練されず、未溶解部分が発生したり、せん断発熱が小さ過ぎて結晶の融解が不十分となり、製造後のセルロースエステルフィルムに微細な結晶が残存し易くなり、さらに、気泡が混入し易くなる傾向がある。これにより、セルロースエステルフィルムの強度が低下したり、あるいはフィルムを延伸する場合に、残存した結晶が延伸性を阻害し、配向を十分に上げることができなくなることがある。逆に、スクリュー圧縮比が大き過ぎると、せん断応力がかかり過ぎて発熱により樹脂が劣化し易くなるので、製造後のセルロースエステルフィルムに黄色味が出易くなる傾向がある。また、せん断応力がかかり過ぎると、分子の切断が起こり、分子量が低下してフィルムの機械的強度が低下することがある。製造後のセルロースエステルフィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が強くさらに延伸破断しにくくするためには、スクリュー圧縮比は2.5〜4.5の範囲が好ましく、より好ましくは2.8〜4.2、特に好ましいのは3.0〜4.0の範囲である。
また、L/Dが小さ過ぎると、溶融不足や混練不足となり、圧縮比が小さい場合と同様に製造後のセルロースエステルフィルムに微細な結晶が残存し易くなる傾向がある。逆に、L/Dが大き過ぎると、押出機内でのセルロースエステル樹脂の滞留時間が長くなり過ぎ、樹脂の劣化を引き起こし易くなる傾向がある。また、滞留時間が長くなると分子の切断が起こったり、分子量が低下してセルロースエステルフィルムの機械的強度が低下することがある。製造後のセルロースエステルフィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が強くさらに延伸破断しにくくするためには、L/Dは20〜70の範囲が好ましく、より好ましくは22〜65の範囲、特に好ましくは24〜50の範囲である。
また、押出温度が低過ぎると、結晶の融解が不十分となり、製造後のセルロースエステルフィルムに微細な結晶が残存し易くなり、フィルム強度が低下したり、あるいはフィルムを延伸する場合に、残存した結晶が延伸性を阻害し、配向を十分に上げることができなくなる傾向がある。逆に、押出し温度が高過ぎると、セルオースアシレート樹脂が劣化し、黄色味(YI値)の程度が悪化してしまう傾向がある。製造後のセルロースエステルフィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が高く延伸破断しにくくするためには、本発明では押出温度は180℃〜230℃であり、好ましくは190℃〜230℃、さらに好ましくは195℃〜230℃の範囲である。この時の温度は、押し出し機の最下流部の温度を示すものである。
上記の如く押出温度が設定された押出機を用いて製膜されたセルロースエステルフィルムは、ヘイズが2.0%以下、イエローインデックス(YI値)が10以下である特性値を有している。ここで、ヘイズは押出温度が低過ぎないかの指標、換言すると製造後のセルロースエステルフィルムに残存する結晶の多少を知る指標になり、ヘイズが2.0%を超えると、製造後のセルロースエステルフィルムの強度低下と延伸時の破断が発生し易くなる。また、イエローインデックス(YI値)は押出温度が高過ぎないかを知る指標となり、イエローインデックス(YI値)が10以下であれば、黄色味の点で問題無い。
押し出し機の種類として、一般的には設備コストの比較的安い単軸押し出し機が用いられることが多く、フルフライト、マドック、ダルメージ等のスクリュータイプがあるが、熱安定性の比較的悪いセルロースエステル樹脂には、フルフライトタイプが好ましい。また、設備コストは高価であるが、スクリューセグメントを変更することにより、途中でベント口を設けて不要な揮発成分を脱揮させながら押出ができる二軸押出機を用いることが可能である。二軸押し出し機には大きく分類して同方向と異方向のタイプがありどちらも用いることが可能であるが、滞留部分が発生し難くセルフクリーニング性能の高い同方向回転のタイプが好ましい。二軸押出機は設備が高価であるが、混練性が高く、樹脂の供給性能が高いため、低温での押出が可能となるため、セルロースアセテート樹脂の製膜に適している。ベント口を適正に配置することにより、未乾燥状態でのセルロールアシレートペレットやパウダーをそのまま使用することも可能である。また、製膜途中で出たフィルムのミミ等も乾燥させることなしにそのまま再利用することもできる。
なお、好ましいスクリューの直径は目標とする単位時間あたりの押出量によって異なるが、10mm〜300mm、より好ましくは20mm〜250mm、さらに好ましくは30mm〜150mmである。また、厚み精度を向上させるためには、吐出量の変動を減少させることが重要であり、押出機出機とダイスの間にギアポンプを設けて、ギアポンプから一定量のセルロースエステル樹脂を供給することは効果がある。ギアポンプとは、ドライブギアとドリブンギアとからなる一対のギアが互いに噛み合った状態で収容され、ドライブギアを駆動して両ギアを噛み合い回転させることにより、ハウジングに形成された吸引口から溶融状態の樹脂をキャビティ内に吸引し、同じくハウジングに形成された吐出口からその樹脂を一定量吐出するものである。押出機先端部分の樹脂圧力が若干の変動があっても、ギアポンプを用いることにより変動を吸収し、製膜装置下流の樹脂圧力の変動は非常に小さなものとなり、厚み変動が改善される。ギアポンプを用いることにより、ダイ部分の樹脂圧力の変動巾を±1%以内にすることが可能である。
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。また、ギアポンプのギアの変動を解消した3枚以上のギアを用いた高精度ギアポンプも有効である。ギアポンプを用いるその他のメリットとしては、スクリュー先端部の圧力を下げて製膜できることから、エネルギー消費の軽減・樹脂温上昇の防止・輸送効率の向上・押出機内での滞留時間の短縮・押出機のL/Dを短縮が期待できる。また、異物除去のために、フィルターを用いる場合には、ギアポンプが無いと、ろ圧の上昇と共に、スクリューから供給される樹脂量が変動したりすることがあるが、ギアポンプを組み合わせて用いることにより解消が可能である。一方、ギアポンプのデメリットとしては、設備の選定方法によっては、設備の長さが長くなり、樹脂の滞留時間が長くなることと、ギアポンプ部のせん断応力によって分子鎖の切断を引き起こすことがあり、注意が必要である。
樹脂が供給口から押出機に入ってからダイスから出るまでの樹脂の好ましい滞留時間は2分〜60分であり、より好ましくは3分〜40分であり、さらに好ましくは4分〜30分である。ギアポンプの軸受循環用ポリマーの流れが悪くなることにより、駆動部と軸受部におけるポリマーによるシールが悪くなり、計量および送液押し出し圧力の変動が大きくなったりする問題が発生するため、セルロースエステル樹脂の溶融粘度に合わせたギアポンプの設計(特にクリアランス)が必要である。また、場合によっては、ギアポンプの滞留部分がセルロースエステル樹脂の劣化の原因となるため、滞留のできるだけ少ない構造が好ましい。押出機とギアポンプあるいはギアポンプとダイ等をつなぐポリマー管やアダプタについても、できるだけ滞留の少ない設計が必要であり、且つ溶融粘度の温度依存性の高いセルロースエステル樹脂の押出圧力安定化のためには、温度の変動をできるだけ小さくすることが好ましい。一般的には、ポリマー管の加熱には設備コストの安価なバンドヒーターが用いられることが多いが、温度変動のより少ないアルミ鋳込みヒーターを用いることがより好ましい。さらに押出し機内でG'、G" 、tanδ、ηに最大値、最小値を持たせるために、押出し機のバレルを3〜20に分割したヒーターで加熱し溶融することが好ましい。
上記の如く構成された押出機によってセルロースエステル樹脂が溶融され、その溶融樹脂が吐出口からダイに連続的に送られる。ダイはダイス内の溶融樹脂の滞留が少ない設計であれば、一般的に用いられるTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイのいずれのタイプでも構わない。また、ダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためのスタティックミキサーを入れることも問題ない。ダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜5.0倍が良く、好ましくは1.2〜3倍、さらに好ましくは1.3〜2倍である。リップクリアランスがフィルム厚みよりも小さ過ぎる場合には製膜により面状の良好なシートを得ることが困難になる傾向がある。また、リップクリアランスがフィルム厚みよりも大き過ぎる場合にはシートの厚み精度が低下する傾向がある。
ダイはフィルムの厚み精度を決定する非常に重要な設備であり、厚み調整がシビアにコントロールできるものが好ましい。通常厚み調整は40〜50mm間隔で調整可能であるが、好ましくは35mm間隔以下、さらに好ましくは25mm間隔以下でフィルム厚み調整が可能なタイプが好ましい。また、セルロールアシレート樹脂は、溶融粘度の温度依存性、せん断速度依存性が高いことから、ダイの温度ムラや巾方向の流速ムラのできるだけ少ない設計が重要である。また、下流のフィルム厚みを計測して、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも長期連続生産の厚み変動の低減に有効である。フィルムの製造は設備コストの安い単層製膜装置が一般的に用いられるが、場合によっては機能層を外層に設けために多層製膜装置を用いて2種以上の構造を有するフィルムの製造も可能である。一般的には機能層を表層に薄く積層することが好ましいが、特に層比を限定するものではない。
樹脂中の異物ろ過のためや異物によるギアポンプ損傷を避けるため押し出し機出口にフィルター濾材を設けるいわゆるブレーカープレート式のろ過を行なうことが好ましい。また精度高く異物ろ過をするために、ギアポンプ通過後にいわゆるリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。特に、金属メッシュフィルター等でろ過を行うのが好ましい。メッシュの目の大きさは2〜30μmが好ましく、より好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは2〜10μmである。この際、加圧を行い、濾過に要する時間をできるだけ短縮することが好ましい。濾過圧は、0.5MPa〜15MPaが好ましく、2Pa〜15MPaがさらに好ましく、10Pa〜15MPaがもっとも好ましい。濾過圧は、高いほうが濾過時間を短くすることができるので好ましいが、フィルターの破損が起こらない範囲の高圧を用いることが好ましい。濾過の時の温度は180℃〜230℃が好ましく、180℃〜220℃がさらに好ましく、190〜220℃が特に好ましい。濾過時の温度が該上限値以下であれば、熱劣化が進行するなどの問題が生じにくいので好ましく、該下限値以上であれば、濾過に時間がかかりすぎて熱劣化が進行するなどの不都合が生じにくいので好ましい。濾過に要する時間はできるだけ短くして、フィルムの黄変を防止するのがよい。フィルター1cm2当たり1分間の濾過量は、0.05〜100cm3が好ましく、0.1〜100cm3がさらに好ましく、0.5〜100cm3がもっとも好ましい。
(3)キャスト
上記方法にて、ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化し、フィルムを得る。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの全面に実施してもよく、一部に実施しても良い。特にエッジピニングと呼ばれる、フィルムの両端部にのみを密着させる方法が取られることも多いが、これに限定される物ではない。キャスティングドラムは複数本用い、徐冷する法がより好ましい、特に一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。ロールの直径は50mm〜5000mmが好ましく、より好ましくは100mm〜2000mm、さらに好ましくは150mm〜1000mmである。複数本あるロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
キャスティングドラムは60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。この後、キャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。
製膜幅は好ましくは0.7m〜5m、さらに好ましくは1m〜4m、さらに好ましくは1.3m〜3mである。このようにして得られた未延伸フィルムの厚みは20μm〜400μmが好ましく、より好ましくは30μm〜300μm、さらに好ましくは40μm〜200μmである。本発明では、得られたセルロースエステルフィルムの厚みが200μmを超える場合には、さらに延伸することで、本発明の好ましい膜厚にすることができる。また、いわゆるタッチロール法を用いる場合、タッチロール表面は、ゴム、テフロン等の樹脂でもよく、金属ロールでも良い。さらに、金属ロールの厚みを薄くすることでタッチしたときの圧力によりロール表面が若干くぼみ、圧着面積が広くなりフレキシブルロールと呼ばれる様なロールを用いることも可能である。タッチロール温度は60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。
正面レターデーション(Re)や厚さ方向のレターデーション(Rth)が放物線状のムラを発現するのを回避するために、キャスティングドラムの後にニップロールを設置し、巻き取り張力のカットする方法を採用することができる。しかしながら、完全にはカットできず僅かに張力がキャスティングドラム剥ぎ取り後のシートまで伝播することがあり、これがRe,Rthムラを引き起こす。このようなムラは、幅方向全域に渡っておこるため、小さなサイズでは検知し難く、大きなサイズを切り出したときに、問題となることがある。このため、弱い張力で巻き取ることが好ましい(通常は20kg/cm2以上で巻かれる)。このような低張力で巻くことで巻きズレが発生し易くなるが、これには両端にナーリング(厚みだし)加工を付与することで対策できる。このようにして得られたフィルムの厚みは20μm〜400μmが好ましく、さらに好ましくは40μm〜200μm、特に好ましくは50μm〜150μmである。本発明では、得られたセルロースエステルフィルムの厚みが200μmを超える場合には、さらに延伸することで上記の好ましい膜厚にすることができる。
(巻き取り)
このようにして得たシートは、両端をトリミングして巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、あるいは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。トリミングカッターはロータリーカッター、シャー刃、ナイフ等いずれのタイプの物を用いても構わない。材質についても、炭素鋼、ステンレス鋼いずれを用いても構わない。一般的には、超硬刃、セラミック刃を用いると刃物の寿命が長く、また切り粉の発生が抑えられて好ましい。
また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。好ましい巻き取り張力は好ましくは1kg/m幅〜50kg/幅、より好ましくは2kg/m幅〜40kg/幅、さらに好ましくは3kg/m幅〜20kg/幅である。巻き取り張力が小さ過ぎると、フィルムを均一に巻き取ることが困難になる傾向がある。逆に、巻き取り張力が大き過ぎると、フィルムが堅巻きになってしまい、巻き外観が悪化するのみでなく、フィルムのコブの部分がクリープ現象により延びてフィルムの波うちの原因になったり、あるいはフィルムの伸びによる残留複屈折が生じやすくなる傾向がある。巻き取り張力は、ラインの途中のテンションコントロールにより検知し、一定の巻き取り張力になるようにコントロールされながら巻き取ることが好ましい。製膜ラインの場所により、フィルム温度に差がある場合には熱膨張により、フィルムの長さが僅かに異なる場合があるため、ニップロール間のドロー比率を調整し、ライン途中でフィルムに規定以上の張力がかからない様にすることが必要である。
巻き取り張力はテンションコントロールの制御により、一定張力で巻き取ることもできるが、巻き取った直径に応じてテーパーをつけ、適正な巻き取り張力にすることがより好ましい。一般的には巻き径が大きくなるにつれて張力を少しずつ小さくするが、場合によっては、巻き径が大きくなるにしたがって張力を大きくする方が好ましい場合もある。また、未延伸フィルムを延伸することで、厚みムラ、Reムラ、Rthムラ、Re,Rthの湿度変動の小さな延伸フィルムを得ることも可能である。このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、あるいは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミネートフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。
(延伸工程)
溶融製膜工程においてフィルム化されたセルロースエステルフィルムは、延伸工程において少なくとも1方向に延伸されることが好ましい。延伸はTg〜(Tg+50℃)で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg+1℃)〜(Tg+30℃)、さらに好ましくは(Tg+2℃)〜(Tg+20℃)である。少なくとも1方向に−10%〜50%の延伸倍率はで延伸することが好ましい。延伸倍率は−5%〜50%がより好ましく、さらに好ましくは−3%〜45%、特に好ましくは0%〜40%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここでいう延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
このような延伸は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸してもよく(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向および直角方向)に広げてもよい(横延伸)。
一般にいずれの場合も、延伸倍率を大きくすると、Re,Rthとも大きくすることができる。さらにRe、Rthの比を自由に制御するには、縦延伸の場合、ニップロール間をフィルム幅で割った値(縦横比)を制御することで達成できる。即ち縦横比を小さくすることで、Rth/Re比を大きくすることができる。横延伸の場合、直交方向に延伸すると同時に縦方向にも延伸したり、逆に緩和させることで制御することができる。即ち縦方向に延伸することでRth/Re比を大きくすることができ、逆に縦方向に緩和することでRth/Re比を小さくすることができる。このような延伸速度は10%/分〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20%/分〜1000%/分、さらに好ましくは30%/分〜800%/分である。
本発明においては、Re,Rth、厚みのムラをより小さくするために、ムラの少ない原反を用いることに加えて、延伸温度に幅方向に勾配を持たせるのが好ましい。即ち縦延伸の場合でも、横延伸の場合でも両端部の延伸が進みやすくRe,Rthが発現し易いため、中央部より端部の温度を高くすることが好ましい。端部とは、全幅に対し10%の領域を指し、ここを中央部より6℃〜40℃、より好ましくは7℃〜30℃、さらに好ましくは8℃〜25℃高くすることで達成できる。このように両端の温度を上げるには、両端部に熱源(パネルヒーター、赤外線ヒーター等)を増設してもよく、熱風の噴出し口を増設してもよい。このように敢えて温度分布を付与することで、一定の温度で延伸するより一層均一な延伸が達成できる。このような減少はセルロースエステルフィルム特有の現象である。
ここで、熱処理後の冷却温度は、熱処理温度やフィルム厚みによって異なるが、通常−40℃〜(Tg−10℃)の温度範囲において空冷する。好ましくは、0〜40℃である。この際、フィルムの表面と裏面を冷却する空気等の冷却媒体の温度差が、得られる(二軸)延伸フィルムの非熱変形性に影響を及ぼす。冷却気体の温度差が大き過ぎると、得られる(二軸)延伸フィルムの表裏両面の熱収縮率差が大きくなり、加熱時にフィルムが歪み、ソリが生じ易くなり、変形が大きくなる。かかる点を考慮すると、フィルムの表面と裏面を冷却する空気等の冷却媒体の温度差は小さい方が好ましいが、本発明の目的を達成するためには、該温度差を5℃以内に調整することが重要である。
これらの延伸前、延伸後のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、105℃、5時間での縦および横の寸法収縮率は±0.1%以下であることが好ましく、80℃・相対湿度90%における寸法収縮率が縦および横とも±0.5%未満であることが好ましく、ヘイズは1.2%以下が好ましく、0.6%以下であることがより好ましい。また、引き裂き強度は縦、横とも10g以上であることが好ましく、引っ張り強度が縦、横とも50N/mm2以上であることが好ましく、弾性率が縦、横とも3kN/mm2以上であることが好ましい。これらの未延伸、延伸セルロースエステルフィルムは単独で使用してもよく、これらと偏光板組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用してもよい。
延伸フィルムは、未延伸フィルムを延伸することで達成できる。その際に、Reムラの小さな未延伸フィルム(原反)を延伸することでReムラの小さな延伸フィルムを達成でき、Rthムラ、厚みムラ、Re,Rthの温度変化に対しても有効である。本発明では、上述のように厚みムラを小さくしたフィルムを用いることで、厚みもレターデーションも均一な延伸を行なうことができる。一方、本発明のような手法を実施していない前述の特開2000−352620号公報記載のような厚みムラの存在するフィルムを延伸すると、力学的に弱い薄いところから延伸されるため、厚みムラが増幅され易い。延伸により厚みムラが軽減されるような印象をもたれる場合があるが、このようなセルロースエステルフィルムの場合はこの逆である。
(セルロースエステルフィルムの特性)
(1)厚み
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの膜厚は20〜200μmであることが好ましく、より好ましくは20μm〜160μm、さらに好ましくは30μm〜120μm、特には好ましくは40〜120μmである。延伸する場合は、延伸前の未延伸フィルムの膜厚を延伸倍率を考慮して予め厚めの原反押し出し膜厚としておく。また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θは0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの厚みムラは、厚み方向、幅方向いずれも0〜5μmが好ましく、より好ましくは0〜3μm、さらに好ましくは0〜2μmである。
(2)キシミ値
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルに微粒子を添加することでキシミ値を軽減し搬送性を改良することが好ましい。そして、セルロースエステルフィルムの動的および静的キシミ値は、共に0.2〜1.5が好ましく、より好ましくは0.2〜1.3であり、さらには0.256〜1.0が好ましい。微粒子の存在状態が粗大である場合は、そのキシミ値が小さくなる場合と大きくなる場合があり、共に搬送性は好ましくないばかりか、傷付き発生を伴い推奨されない。前記キシミ値の測定法については後述する。
(3)算術平均粗さ
また、本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、その表面の粗さが適度な範囲内にあることが好ましい。前記セルロースエステルフィルムの表面粗さは、一般に用いられている算術平均粗さ(Ra)である。本発明において、前記セルロースエステルフィルムの算術平均粗さ(Ra)は3nm〜200nmであり、好ましくは5nm〜100nmであり、特に好ましくは5nm〜80nmである。算術平均粗さ(Ra)の測定は、一般に使用されている接触式あるいは非接触式表面粗さ測定機で求めることができる。
(4)光学特性
次に、本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの光学特性について好ましい範囲を示すが、本発明で用いることができるセルロースエステルフィルムは必ずしもこれらの光学特性を有するものに限定されない。本明細書において、正面レターデーション(Re)および厚さ方向のレターデーション(Rth)は以下に基づき算出するものとする。Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値等の計3つ以上の方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。
この際、平均屈折率の仮定値および膜厚を入力することが必要である。KOBRA 21ADHはRth(λ)に加えてnx、ny、nzも算出する。平均屈折率は、セルロースアセテートでは1.48を使用するが、セルロースアセテート以外の代表的な光学用途のポリマーフィルムの値としては、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)、等の値を用いることができる。その他の既存のポリマー材料の平均屈折率値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)やポリマーフィルムのカタログ値を使用することができる。また、平均屈折率が不明な材料の場合は、アッベ屈折計を用いて測定することができる。本明細書におけるλは、特に記載がなければ590±5nmである。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの波長590nmにおける正面レターデーション(Re)は、0〜300nmであることが好ましく、かつ厚さ方向のレターデーション(Rth)が−300〜700nmであることが好ましい。さらに好ましくは、正面レターデーション(Re)は、0〜250nmであることが好ましく、かつ厚さ方向のレターデーション(Rth)が−200〜500nmであり、特には正面レターデーション(Re)が、0〜250nmであり、厚さ方向のレターデーション(Rth)が−150〜300nmである。好ましいReムラは0〜10nmが好ましく、より好ましくは0〜5μm、さらに好ましくは0〜3μmである。好ましいRthムラは0〜10nmが好ましく、より好ましくは0〜5nm、さらに好ましくは0〜2nmである。これらの光学特性を有する本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、偏光子の保護膜としてこの上なく好ましいものである。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、湿度変化による光学特性問題を改良しうるものであり、25℃における相対湿度10%の光学特性と80%の光学特性との差が小さいものが好ましい。ここでいうフィルムの湿度変化による光学特性の変化は、Reの湿度変化による変化量をその絶対値で評価するものであり、Re湿度変化(nm)は、Re(相対湿度80%)とRe(相対湿度10%)との差の絶対値であり、湿度変化によるRth湿度変化(nm)は、Rth(相対湿度80%)とRth(相対湿度10%)との差の絶対値で表わされる。本発明のセルロースエステルフィルムは、Reの湿度変化が20nm以下であることが好ましく、さらには15nmを実現でき、また10nmも実現することができる。また、Rth湿度変化は、25nm以下であることが好ましく、さらには20nmを実現でき、また15nmも実現できる。これは、従来のセルローストリアセテートに比較すると、大幅な改善である。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、波長に対する光学特性の挙動をコントロールすることも可能である。すなわち、波長400nmおよび700nmにおけるそれぞれのRe(400)、Re(700)の差の絶対値が0〜15nmであることが好ましく、Rth(400)、Rth(700)の差の絶対値が0〜35nmであることが好ましい。即ち、式で表すと、本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの波長400nmおよび700nmにおけるそれぞれの正面レターデーション(Re)および厚さ方向のレターデーション(Rth)は、下記式(A−1)および(A−2)を満たすことが好ましい。
式(A−1) 0≦|Re(700)−Re(400)|≦15nm
式(A−2) 0≦|Rth(700)−Rth(400)|≦35nm
(式中、Re(400)およびRe(700)は、波長400nmおよび700nmにおける正面レターデーション(Re)を表し、Rth(400)およびRth(700)は、波長400nmおよび700nmにおける厚さ方向のレターデーション(Rth)を表す。)
(5)軸ズレ
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、光学遅相軸が流延方向あるいは幅方向に対して平行あるいは直角であることが好ましい。特に延伸処理を施した場合には、流延方向に延伸した場合は0°に近いほど好ましく、0±3°が好ましく、より好ましくは0±1.5°であり、さらに好ましくは0±0.5°である。幅方向に延伸した場合は、90±3°あるいは−90±3°が好ましく、より好ましくは90±1.5°あるいは−90±1.5°、さらに好ましくは90±0.5°あるいは−90±0.5°である。
(6)透過率
本発明のセルロースエステルフィルム積層体であるセルロースエステルフィルムは、好ましくは透過率が90%以上であり、さらに好ましくは91%以上であり、特に好ましくは92%以上である。
(7)ヘイズ
本発明のセルロースエステルフィルム積層体であるセルロースエステルフィルムは、ヘイズが0〜1.5%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜1.2%であり、さらに好ましくは0〜0.8%であり、特には0.1〜0.5%が好ましい。以上の観点から、本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、ヘイズが0.1〜1.2%であり、可視光透過率が91%以上であり、25℃・相対湿度60%環境下で波長590nmにおける面内方向の固有複屈折が0〜0.001であり、厚さ方向の固有複屈折の絶対値が0〜0.003であることが好ましい。
(セルロースエステルフィルムの機能化)
次に本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムについて、さらに機能を付与する場合の好ましい態様を記述する。
(1)表面処理
セルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、場合により表面処理を行なうことによって、セルロースエステルフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着性の向上を達成することができる。前記表面処理としては、例えば、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。前記グロー放電処理とは、10-3〜20Torr(約0.13〜2666Pa)の低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことも示すが、大気圧下でのグロー放電処理でもよい。
まず、低圧下でのグロー放電処理は、米国特許第3,462,335号明細書、同3,761,299号明細書、同4,072,769号明細書および英国特許第891,469号明細書に記載されている。また不活性ガス、酸化窒素類、有機化合物ガス等の特定のガス等を導入することも行われる。ポリマーの表面をグロー放電処理する際には大気圧でもよいし減圧下で実施してもよい。また、グロー放電処理の雰囲気に酸素、窒素、ヘリウムあるいはアルゴンのような種々のガスや水を導入しながら実施してもよい。グロー放電処理時の真空度は0.005〜20Torr(6.666〜2666Pa)が好ましく、より好ましくは0.02〜2Torr(2.666〜266Pa)である。また、グロー放電処理時の電圧は500〜5000Vの間が好ましく、より好ましくは500〜3000Vである。使用する放電周波数は、直流から数千MHz、より好ましくは50Hz〜20MHz、さらに好ましくは1KHz〜1MHzである。また、放電処理強度は、0.01KV・A・分/m2〜5KV・A・分/m2が好ましく、より好ましくは0.15KV・A・分/m2〜1KV・A・分/m2である。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの表面処理としては、紫外線照射処理も好ましく用いられる。紫外線照射法に使用される水銀灯は石英管からなる高圧水銀灯で、紫外線の波長が180nm〜380nmの間であるものが好ましい。紫外線照射の方法について、セルロースエステルフィルムの表面温度が150℃前後にまで上昇することが支持体性能上問題なければ、光源は主波長が365nmの高圧水銀灯ランプを使用することができる。また、低温処理が必要とされる場合には主波長が254nmの低圧水銀灯が好ましい。またオゾンレスタイプの高圧水銀ランプ、および低圧水銀ランプを使用する事も可能である。処理光量に関しては処理光量が多いほどセルロースエステルフィルムと被接着層との接着力は向上するが、光量の増加に伴い支持体が着色し、また支持体が脆くなるという問題が発生する。従って、365nmを主波長とする高圧水銀ランプで、照射光量20〜10000(mJ/cm2)が好ましく、より好ましくは50〜2000(mJ/cm2)である。254nmを主波長とする低圧水銀ランプの場合には、照射光量100〜10000(mJ/cm2)が好ましく、より好ましくは300〜1500(mJ/cm2)である。
さらに本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの表面処理としてはコロナ放電処理も好ましい。前記コロナ放電処理を行うコロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。コロナ放電処理は、空気中、常圧で行なうことができる。処理時の放電周波数は、好ましくは5〜40kHz、より好ましくは10〜30kHzであり、波形は交流正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールとのギャップクリアランスは0.1mm〜10mmが好ましく、より好ましくは1.0mm〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量は、好ましくは0.3〜0.4KV・A・分/m2、より好ましくは0.34〜0.38KV・A・分/m2である。
次に前記表面処理の一種である火炎処理について説明する。前記火炎処理に用いられるガスは、天然ガス、液化プロパンガス、都市ガスのいずれでもかまわないが、空気との混合比が重要である。天然ガス/空気の好ましい混合比は容積比で1/6〜1/10、好ましくは1/7〜1/9である。また、液化プロパンガス/空気の場合は好ましくは1/14〜1/22、より好ましくは1/16〜1/19、都市ガス/空気の場合は好ましくは1/2〜1/8、好ましくは1/3〜1/7である。
また、火炎処理量は好ましくは1〜50Kcal/m2、より好ましくは3〜20Kcal/m2の範囲で行なう。
次に、本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの表面処理として好ましく用いられるアルカリケン化処理を具体的に説明する。セルロースエステルフィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
前記アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの濃度は0.1mol/L〜4.0mol/Lであることが好ましく、0.5mol/L〜3.5mol/Lであることがさらに好ましい。前記アルカリ溶液の液温は、室温〜90℃の範囲が好ましく、40℃〜70℃がさらに好ましい。前記アルカリケン化処理はアルカリ溶液に浸漬した後、一般には水洗され、しかる後に酸性水溶液を通過させた後に、水洗して表面処理したセルロースエステルフィルム積層体であるセルロースエステルフィルムを得る。
この際、酸性水溶液としては塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、蟻酸、クロロ酢酸、シュウ酸などの水溶液であり、その濃度は0.01mol/L〜3.0mol/Lであることが好ましく、0.05mol/L〜2.0mol/Lであることがさらに好ましい。アルカリケン化時間は、20〜600秒で実施されるがことが好ましく、さらには30〜300秒が好ましく、特には40〜210秒であることが好ましい。また酸性溶液による中和は、20〜600秒で実施されることが好ましく、より好ましくは30〜250秒、特には40〜180秒であるであることが好ましい。さらに中和後の水洗については、20〜400秒で実施されることが好ましく、より好ましくは30〜300秒、特には40〜210秒であるであることが好ましい。
これらの方法で得られた固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができ、接触角法を用いることが好ましい。本発明のセルロースエステルフィルム表面の水の接触角(25℃/相対湿度60%)は、45°以下であることが好ましく、10〜45°であることがさらに好ましく、10〜40°が特に好ましく、10〜30°が最も好ましい。
(2)接着層
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、機能性層を接着させるために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースエステルフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何かしらの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。
前記下塗層の構成としても種々の工夫が行われており、例えば、1層の下塗り層を一層で構成する単層法や、第1層として支持体(セルロースエステルフィルム)によく接着する層(以下、「下塗第1層」と称する場合がある。)を設け、その上に第2層として機能層とよく接着する下塗り第2層を塗布する所謂重層法がある。
前記単層法においては、セルロースエステルフィルムを膨張させ、下塗層素材と界面混合させることによって良好な接着性を達成している場合が多い。前記下塗層に使用する下塗ポリマーとしては、水溶性ポリマー、セルロースエステル、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルなどが例示される。前記水溶性ポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ナトリウム、でんぷん、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などであり、セルロースエステルとしてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどである。ラテックスポリマーとしては塩化ビニル含有共重合体、塩化ビニリデン含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、ブタジエン含有共重合体などが挙げられる。前記重層法における下塗第1層では、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体を始めとして、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、ニトロセルロース、等のオリゴマーもしくはポリマーなどを用いることができる。前記下塗第2層では、例えば、前述の水溶性ポリマー、セルロースエステル、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルなど等を用いることができる。
また本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムには好ましい態様としては、偏光子と接着するための親水性バインダーからなる親水性バインダー層が設けられることである。前記親水性バインダーとしては、例えば、−COOM基含有の酢酸ビニル−マレイン酸共重合体化合物、または親水性セルロース誘導体(例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等)、ポリビニルアルコール誘導体(例えば酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリビニルベンザール等)天然高分子化合物(例えばゼラチン、カゼインアラビアゴム等)、親水基含有ポリエステル誘導体(例えばスルホン基含有ポリエステル共重合体)が挙げられる。
本発明セルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムに場合により施される下塗り層には、機能層の透明性などを実質的に損なわない程度に無機または、有機の微粒子をマット剤として含有させることができる。
無機の微粒子のマット剤としてはシリカ(SiO2),二酸化チタン(TiO2),炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを使用することができる。有機の微粒子マット剤としては、ポリメチルメタクリレート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリスチレン、米国特許第4,142,894号明細書に記載されている処理液可溶性のもの、米国特許第4,396,706号明細書に記載されているポリマーなどを用いることができる。これらの微粒子マット剤の平均粒子サイズは0.01〜10μmのものが好ましい。より好ましくは、0.05〜5μmである。また、その含有量は0.5〜600mg/m2が好ましく、さらに好ましくは、1〜400mg/m2である。前記下塗液は、一般に良く知られた塗布方法、例えばディップコ−ト法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコ−ト法、スライドコート法、あるいは、米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法により塗布することができる。
(3)界面活性剤
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの利用においては機能層の形成等に界面活性剤が好ましく用いられる。本発明における機能層の形成に使用される界面活性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤などに分類されるが、以下に述べる界面活性剤を適宜使用することで、それらの目的は達成できる。本発明で使用される界面活性剤は、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)いずれも使用できる。さらにフッ素系低分子界面活性剤も有機溶媒中での塗布剤としたり、帯電防止剤として好ましく用いられる。使用される層としてはセルロースエステルからなるフィルム中でもよいし、その他の機能層のいずれでもよい。光学用途で利用される場合は、機能層の例としては下塗り層、中間層、配向制御層、屈折率制御層、保護層、防汚層、粘着層、バック下塗り層、バック層などである。その使用量は目的を達成するために必要な量であれば特に限定されないが、一般には添加する層の全質量に対して、0.0001〜5質量%が好ましく、さらには0.0005〜2質量%が好ましい。その場合の界面活性剤の塗設量は、1m2当り0.02〜1000mgが好ましく、0.05〜200mgが好ましい。
(4)滑り層
セルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルム上に付与されるいずれかの層には滑り剤を含有させてもよく、特に最外層に含有させることが好ましい。用いられる滑り剤としては、例えば、特公昭53−292号公報に開示されているようなポリオルガノシロキサン;米国特許第4,275,146号明細書に開示されているような高級脂肪酸アミド;特公昭58−33541号公報、英国特許第927、446号明細書あるいは特開昭55−126238号および同58−90633号公報に開示されているような高級脂肪酸エステル(炭素数10〜24の脂肪酸と炭素数10〜24のアルコールとのエステル);米国特許第3,933,516号明細書に開示されているような高級脂肪酸金属塩;特開昭58−50534号公報に開示されているような、直鎖高級脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;国際公開第90/108115.8号パンフレットに開示されているような分岐アルキル基を含む高級脂肪酸−高級アルコールエステル等が知られている。
このうちポリオルガノシロキサンとしては、一般的に知られている、ポリジメチルシロキサンポリジエチルシロキサン等のポリアルキルシロキサンやポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等のポリアリールシロキサンのほかに、特公昭53−292号公報、特公昭55−49294号公報、特開昭60−140341号公報等に示されるような、炭素数5以上のアルキル基を持つオルガノポリシロキサン、側鎖にポリオキシアルキレン基を有するアルキルポリシロキサン、側鎖にアルコキシ、ヒドロキシ、水素、カルボキシル、アミノ、メルカプト基を有するようなオルガノポリシロキサン等の変性ポリシロキサンを用いることもでき、さらに、シロキサンユニットを有するブロックコポリマーや、特開昭60−191240号公報に示されるようなシロキサンユニットを側鎖に持つグラフトコポリマーを用いることもできる。前記滑り剤の塗設にあたっては,皮膜形成能のあるバインダーと共に用いることもできる。このようなポリマーとしては,公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応性樹脂、およびこれらの混合物、ゼラチンなどの親水性バインダーを使用することができる。滑り性能は静摩擦係数が0.25以下であることが好ましく、試料を温度25℃・相対湿度60%で2時間調湿した後、HEIDON−10静摩擦係数測定機により、5mmφのステンレス鋼球を用いて測定した値であり、数値が小さい程滑り性はよい。
(5)マット剤
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの機能層において、フィルムの易滑性や高湿度下での耐接着性の改良のためにマット剤を使用することが好ましい。その場合、表面の突起物の平均高さが0.005〜10μmが好ましく、より好ましくは0.01〜5μmである。また、その突起物は表面に多数ある程よいが、必要以上に多いとへイズが悪化する場合がある。好ましい突起物は突起物の平均高さを有する範囲であれば、例えば球形、不定形のいずれであってもよい。前記マット剤で突起物を形成する場合はその含有量が0.5〜600mg/m2であり、より好ましいのは1〜400mg/m2である。この際、使用されるマット剤としてはその組成において特に限定されず、無機物でも有機物でもよく2種類以上の混合物でもよい。
前記マット剤は無機化合物または有機化合物のいずれであってもく、例えば、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素、などの無機物の微粉末;湿式法やケイ酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラッグと硫酸とにより生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。また、前記マット剤は、粒子サイズの比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕した後、分級(振動ろ過、風力分級など)することによっても得られる。
前記マット剤としては、その他、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物も挙げられる。また、懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、または無機化合物を用いることもできる。
(6)他の機能層
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムには、透明ハードコート層を設けることができる。前記透明ハードコート層としては活性線硬化性樹脂層あるいは熱硬化樹脂層が好ましく用いられる。前記活性線硬化性樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂(活性線硬化性樹脂)を主たる成分とする層をいう。前記活性線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。前記紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。なお、特開2003−039014号公報には、塗布されたフィルムを巻き回しや幅方向に把持して乾燥し、活性線硬化物質を含む塗布液を硬化処理等することにより、高い平面性を有する発明が記載されており、この発明は本発明にも適応できる。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムには、反射防止層を設けて反射防止フィルムを形成することもできる。反射防止層の構成としては、単層、多層等各種知られているが、多層のものとしては高屈折率層、低屈折率層を交互に積層した構造のものが一般的である。構成の例としては、透明基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層の順から構成されたものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(透明基材あるいはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、さらに多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性などから、ハードコート層を有する基材上に、高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層の順に塗布することが好ましい構成である。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは防眩層を設けることもできる。前記防眩層は表面に凹凸を有する構造をもたせることにより、防眩層表面または防眩層内部において光を散乱させることにより防眩機能発現させるため、微粒子物質を層中に含有した構成をとっている。これらの層として好ましい構成は以下に示される態様である。前記防眩層は膜厚0.5〜5.0μmであって、平均粒子サイズ0.25〜10μmの1種以上の微粒子を含む層であることが好ましい。また、前記防眩層は、平均粒子サイズが当該膜厚の1.1〜2倍の二酸化ケイ素粒子と平均粒子サイズが0.005μm〜0.1μmの二酸化ケイ素微粒子とを、例えば、ジアセチルセルロースのようなバインダー中に含有する層であって、これによって防眩機能を発揮することができる。この「粒子」としては、無機粒子および有機粒子が挙げられる。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムには、カール防止加工を施すこともできる。カール防止加工とは、これを施した面を内側にして丸まろうとする機能を付与するものであり、前記カール防止加工を施すことによって、透明樹脂フィルムの片面に何らかの表面加工をして、両面に異なる程度・種類の表面加工を施した際に、その面を内側にしてカールしようとするのを防止する働きをするものである。前記カール防止層は基材の防眩層または反射防止層を有する側と反対側に設ける態様、あるいは、例えば透明樹脂フィルムの片面に易接着層を塗設する場合もある。また、逆面にカール防止加工を塗設するような態様も挙げられる。
<本発明のセルロースエステルフィルム積層体の利用>
本発明のセルロースエステルフィルム積層体には、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせ各光学フィルムを構成することが好ましい。中でも好ましいのが、偏光膜の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
(1)偏光膜の付与(偏光板の作製)
現在、市販の偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。二色性色素は、親水性置換基(例えば、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシル基)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)58頁に記載の化合物が挙げられる。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。バインダーには、例えば特開平8−338913号公報の段落番号[0022]に記載の水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。バインダー厚みは、1μm〜50μmであることが好ましく、より好ましくは2μm〜50μmであり、さらには5μm〜30μmである。また、偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋性のホウ素化合物(例えば、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましい。
偏光膜は、偏光膜を延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。前記延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。ここでいう延伸倍率は、(延伸後の偏光膜の長さ)/(延伸前の偏光膜の長さ)で表される。延伸は平行延伸法、特開2002−86554号公報に記載の斜め方向に傾斜め方向に張り出したテンターを用い延伸する方法を用いることができる。前記ケン化後のセルロースエステルフィルムと、延伸して調製した偏光膜を貼り合わせ偏光板を作製する。偏光膜を張り合わせる方向は、セルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が45°になるように行なうのが好ましい。偏光膜とセルロースエステルフィルム積層体とを貼り合わせる際に用いられる接着剤は特に限定されないが、例えば、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01μm〜10μmが好ましく、0.05μm〜5μmが特に好ましい。
(2)光学補償層の付与(光学補償シートの作製)
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、セルロースエステルフィルム積層体の上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。前記表面処理したセルロースエステルフィルム積層体上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましく、特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1μm〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分間〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分間〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
次に、配向膜の上に光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
−棒状液晶性分子−
前記棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
前記棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
前記棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。前記棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。前記重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報の段落番号[0064]〜[0086]に記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
−円盤状液晶性分子−
前記円盤状液晶性分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。
前記円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。例えば、特開2000−155216号公報の段落番号[0151]〜[0168]に記載の化合物等が挙げられる。
−光学異方性層の他の組成物−
前記光学異方性層は、前記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
−光学異方性層の形成−
前記光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。光学異方性層の厚さは、0.1μm〜20μmであることが好ましく、0.5μm〜15μmであることがさらに好ましく、1μm〜10μmであることが最も好ましい。配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
この光学補償フィルムと上述の偏光膜とを組み合わせることも好ましい。具体的には、前記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフイルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作製される。本発明に従う偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる。偏光膜と光学補償層の傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
(液晶表示装置への利用)
−一般的な液晶表示装置の構成−
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、様々な用途で用いることができる。本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると有効である。なお、フィルムそのものを光学補償シートとして用いる場合は、偏光素子(後述)の透過軸と、セルロースエステルフィルム積層体からなる光学補償シートの遅相軸とを実質的に平行または垂直になるように配置することが好ましい。このような偏光素子と光学補償シートとの配置については、特開平10−48420号公報に記載がある。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に80μm〜500μmの厚さを有する。光学補償シートは、液晶画面の着色を取り除くための複屈折率フィルムである。本発明のセルロースエステルフィルム積層体そのものを、光学補償シートとして用いることができる。さらに反射防止層、防眩性層、λ/4層や2軸延伸セルロースエステルフィルム積層体として機能を付与してもよい。また、液晶表示装置の視野角を改良するため、本発明のセルロースエステルフィルム積層体と、それとは(正/負の関係が)逆の複屈折を示すフィルムを重ねて光学補償シートとして用いてもよい。光学補償シートの厚さの範囲は、前述した本発明のセルロースエステルフィルム積層体の好ましい厚さと同じである。
偏光素子の偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。いずれの偏光膜も、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光板の保護膜は、25μm〜350μmの厚さを有することが好ましく、40μm〜200μmの厚さを有することがさらに好ましい。液晶表示装置には、表面処理膜を設けてもよい。表面処理膜の機能には、ハードコート、防曇処理、防眩処理および反射防止処理が含まれる。
前述したように、支持体の上に液晶(特にディスコティック液晶性分子)を含む光学的異方性層を設けた光学補償シートも提案されている(特開平3−9325号、同6−148429号、同8−50206号、同9−26572号の各公報記載)。本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、そのような光学補償シートの支持体としても用いることができる。
−ディスコティック液晶性分子を含む光学的異方性層−
光学的異方性層は、傾斜配向したディスコティック液晶性分子を含む層であることが好ましい。ディスコティック液晶性分子の円盤面と支持体面とのなす角は、光学的異方性層の深さ方向において変化している(ハイブリッド配向している)ことが好ましい。ディスコティック液晶性分子の光軸は、円盤面の法線方向に存在する。ディスコティック液晶性分子は、円盤面の法線方向の屈折率よりも円盤面方向の屈折率が大きな複屈折性を有する。ディスコティック液晶性分子は、支持体表面に対して実質的に水平に配向させてもよい。
(VA型液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有効に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質は、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。
VA型液晶表示装置に光学補償シートを二枚使用する場合は、光学補償シートの面内レターデーションを、−5nm〜5nmの範囲内にすることが好ましい。従って、二枚の光学補償シートの各面内レターデーションの絶対値は、0〜5とすることが好ましい。
VA型液晶表示装置に光学補償シートを一枚使用する場合は、光学補償シートの面内レターデーションを、−10nm〜10nmの範囲内にすることが好ましい。このような光学特性範囲になるように、本発明のセルロースエステルフィルム積層体は各種VAセルに対応した光学特性を付与すればよい。その範囲は、セルギャップに対応して一枚型セルロースエステルフィルム積層体では、Reが40〜120nmであり、好ましくはReが50〜100nmであり、特には50〜90nmである。
また、Rthが160〜300nmであり、好ましくはRthが170〜260nmであり、特には180〜240nmである。また、VA型液晶表示装置に光学補償シートをニ枚使用する場合は、本発明のセルロースエステルフィルム積層体は各種VAセルに対応した光学特性を付与すればよい。その範囲は、セルギャップに対応して二枚型セルロースエステルフィルム積層体では、Reが20〜80nmであり、好ましくはReが30〜70nmであり、特には30〜60nmである。また、Rthが80〜200nmであり、好ましくはRthが90〜180nmであり、特には95〜165nmである。
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。本発明のセルロースエステルフィルム積層体は各種OCBモードの液晶セルに対応した光学特性を付与すればよい。その範囲は、Reが20nm〜100nmであり、好ましくはReが30nm〜80nmであり、特には30nm〜60nmである。また、Rthが150nm〜300nmであり、好ましくはRthが160nm〜260nmであり、特には170nm〜250nmである。
(その他の液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、ASM(Axially Symmetric Alligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)外の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。本発明のセルロースエステルフィルム積層体を、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、同6−148429号、同8−50206号、同9−26572号の各公報に記載がある。これらの各種液晶表示装置に対する光学補償シート用として、本発明のセルロースエステルはその光学特性を所望の範囲で付与すればよい。
<測定方法および評価方法>
(セルロースエステルの置換度)
セルロースの水酸基に対するアシル基の置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
(セルロースエステルの重合度)
絶体乾燥したセルロースエステル約0.2gを精秤して、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶媒100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
ηrel =T/T0
[η]=ln(ηrel)/C
DP=[η]/Km
[式中、Tは測定試料の落下秒数、T0は溶媒単独の落下秒数、lnは自然対数、Cは濃度(g/L)、Kmは6×10-4である。]
(Tgの測定)
DSCの測定パンに試料を20mg入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃〜250℃まで昇温した後、30℃まで−10℃/分で冷却した。この後、再度30℃〜250℃まで昇温してベースラインが低温側から偏奇し始める温度をTgとした。
(ReおよびRth)
セルロースエステルフィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差値を測定することにより、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出させた。特に断らない場合ReおよびRthは、この値をさす。
(Reムラ、Rthムラ、厚みムラ)
MD方向のサンプリングは、長手方向に1m間隔で100点、1cm四方の大きさにサンプリングした。また、TD方向のサンプリングは、製膜全幅にわたり1cm四方の大きさに5cm等間隔でサンプルングした。それぞれ得られたサンプルの各最大値と最小値の差を各平均値で割り、百分率で示したものをReムラ、Rthムラとした。また、厚みムラも各サンプルの厚みを測定し、MD方向、TD方向の各最大値と最小値の差を各平均値で割り、百分率で示したものを厚みムラとした。
(Re湿度依存性およびRth湿度依存性)
さらにこれらのサンプルについて、25℃・相対湿度10%でRe(10%RH)とRth(10%RH)を求めた。各サンプルについて、25℃・相対湿度80%でRe(80%RH)とRth(80%RH)を求めた。また、同様にして各サンプルについて、Re(10%RH)とRe(80%RH)の差の絶対値、およびRth(10%RH)とRth(80%RH)の差の絶対値を求めて、それぞれRe湿度依存性およびRth湿度依存性を評価した。
(ヘイズ)
試料40mm×80mmについて、25℃・相対湿度60%でヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いてJIS K−6714に従ってヘイズを測定した。
(透明度、透過率)
試料20mm×70mmについて、25℃・相対湿度60%で透明度測定器(AKA光電管比色計、KOTAKI製作所)を用いて可視光(615nm)の透過率を測定した。
(分子配向軸)
試料70mm×100mmを、25℃・相対湿度65%で2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))を用いて垂直入射における入射角を変化させた時の位相差を測定して分子配向軸を算出した。
(軸ズレ)
自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株))を用いて、試料70mm×100mmの軸ズレ角度を測定した。幅方向に全幅にわたって等間隔で20点測定し、絶対値の平均値を求めた。また、遅相軸角度(軸ズレ)のレンジとは、幅方向全域にわたって等間隔に20点測定し、軸ズレの絶対値の大きいほうから4点の平均と小さいほうから4点の平均の差をとったものである。
(キシミ)
試料100mm×200mmおよび75mm×100mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、テンシロン引張試験機(RTA−100,オリエンテック(株))を用いて、大きいフィルムを台の上に固定し、200gのおもりをつけた小さいフィルムを載せた。おもりを水平方向に引っ張り、動き出した時の力、動いているときの力を測定した。そして、静摩擦係数、動摩擦係数をそれぞれ次式に従い算出した。
F=μ×W (W:おもりの重さ(kgf))
(動摩擦(鋼球法))
試料35mm×100mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、動摩擦係数測定器(東洋ボールドウィン)を用いて、測定面を上にして試料を台に固定し、鋼球を試料上におろし、台を送り動摩擦を測定した。
(カール値)
試料35mm×3mmを、カール調湿槽(HEIDON(No.YG53−168)、新東科学(株))で相対湿度25%、55%、85%で24時間調湿し、曲率半径をカール板で測定しドライのカール値とした。またウェットでのカールは、水温25℃の水中に30分静置した後に、そのカール値を測定した。
(透湿係数)
試料70mmφを25℃・相対湿度95%および40℃・相対湿度95%でそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量(g/m2)を算出した。そして、透湿度を調湿後質量−調湿前質量により求めた。さらに強制的評価として、60℃・相対湿度95%にて24時間調室後に測定し、透湿係数とした。
(異物検査)
試料の全幅×1mの範囲に反射光をあて、膜中異物を目視にて検出した後、偏光顕微鏡で異物(リント)を確認して評価した。
(寸法安定性)
寸法安定性は熱収縮率で評価した。試料の縦方向および横方向より30mm幅×120mm長さの試験片を各3枚採取した。試験片の両端に6mmφの穴をパンチで100mm間隔に開けた。これを23±3℃、相対温度65±5%の室内で3時間以上調湿した。自動ピンゲージ(新東科学(株)製)を用いてパンチ間隔の原寸(L1)を最小目盛り/1000mmまで測定した。次に試験片を80℃±1℃の恒温器に吊して3時間熱処理し、23± 3℃・相対湿度65±5%の室内で3時間以上調湿した後、自動ピンゲージで熱処理後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。そして以下の式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率={(L1−L2)/L1}×100
(輝点異物の測定)
直交状態(クロスニコル)に二枚の偏光板を配置して透過光を遮断し、二枚の偏光板の間に各試料を置いた。偏光板はガラス製保護板のものを使用した。片側から光を照射し、反対側から光学顕微鏡(50倍)で1cm2当たりの直径0.01mm以上の輝点数をカウントした。
(Tgの測定)
DSCの測定パンに試料を20mg入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後、30℃まで−10℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温してベースラインが低温側から偏奇し始める温度をTgとした。
(ロール汚れ)
T−ダイから押出しする際に最初のロールのフィルム端部のロール表面の汚れ程度を、反射光源のもとで目視観察し、以下に従って実施した。
A: 汚れは見られなかった。
B: 汚れが微かに見られた。
C: 汚れがはっきりと認められた。
D: 汚れが全面に著しく発生した。
(接着性)
試料フィルム5cm×5cmを25℃・相対湿度80%で3時間調湿した後、フィルムの溶融製膜時のキャスティングドラム面とエアー面を重ね合わせ、防湿袋に封じ込んだ後に、フィルム全体に10kgの荷重をかけた。さらに、60℃で3日間経時させ25℃・相対湿度60%に戻し2時間後にフィルム同士の接着跡を目視確認し、以下に従って評価した。
A: 接着跡は見られなかった。
B: 接着跡が微かに見られた。
C: 接着跡がかなり認められた。
D: 接着跡が全面に著しく発生した。
(傷つき)
キシミ値を評価したフィルムを目視で観察し、以下に従って評価した。
A: 傷つきは全く認められなかった。
B: 傷つきがわずかに認められた。
C: 傷つきがかなり認められた。
D: 傷つきが著しく認められた。
(アルカリ加水分解性)
試料100mm×100mmを、自動アルカリケン化処理装置(新東科学(株)製)にて、60℃,2mol/L水酸化ナトリウム水溶液にて3分間ケン化し、4分間水洗した後、30℃,0.01mol/L希硝酸にて4分間中和し、4分間水洗した。その後、100℃で3分間乾燥し、さらに自然乾燥を1時間行って、下記の目視基準とケン化処理前後のヘイズ値からアルカリ加水分解性を評価した(25℃・相対湿度60%)。
A: 白化は全く認められなかった。
B: 白化がわずかに認められた。
C: 白化がかなり認められた。
D: 白化が著しく認められた。
(含水率)
試料7mm×35mmを水分測定器と試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))を用いてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
(残留溶媒量)
ガスクロマトグラフィー(GC−18A、島津製作所(株)製)を用いて、試料7mm×35mmのベース残留溶媒量を測定した。
(熱収縮率)
試料30mm×120mmを90℃・相対湿度5%で24時間、120時間経時させ、自動ピンゲージ(新東科学(株)製)にて、両端に6mmφの穴を100mm間隔に開けて、間隔の原寸(L1)を最小目盛り1/1000mmまで測定した。さらに90℃・相対湿度5%にて24時間、120時間熱処理してパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。熱収縮率を{(L1−L2)/L1}×100により求めた。
(弾性率)
東洋ボールドウィン製の万能引っ張り試験機STM T50BPを用いて、23℃・相対湿度70%雰囲気中、引っ張り速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求めた。
(輝点異物の測定)
直交状態(クロスニコル)に二枚の偏光板を配置して透過光を遮断し、二枚の偏光板の間に各試料を置いた。偏光板はガラス製保護板のものを使用した。片側から光を照射し、反対側から光学顕微鏡(50倍)で1cm2当たりの直径に応じた輝点数をカウントした。
(ダイスジ)
ダイスジは、流延方向に見られるスジ状のムラを、反射光源のもとで目視観察し、以下に従って評価した。
A: ダイスジは見られなかった。
B: ダイスジが微かに見られた。
C: ダイスジがはっきりと認められた。
D: ダイスジが全面に著しく発生した。
(ダンムラ)
ダンムラは、幅方向に見られる段状のムラを、反射光源のもとで目視観察し、以下に従って評価した。
A: ダンムラは見られなかった。
B: ダンムラが微かに見られた。
C: ダンムラがはっきりと認められた。
D: ダンムラが全面に著しく発生した。
(導電性評価)
25℃・相対湿度60%の環境下で、各試料(セルロースエステルフィルム積層体)から1cm×5cmのサンプルを裁断し、長辺エッジ部に銀ペイントを塗布し十分に乾燥した。その後銀ペイント部に電極端子を設置し、その間の抵抗を抵抗計で測定した。
(ゴミ付評価)
各試料(セルロースエステルフィルム積層体)から1cm×5cmのサンプルと20cm×20cmのサンプルを作製し、25℃・相対湿度25%の環境下にて3日間調湿した。この調湿済みのサンプルの導電性を付与した面に、ナイロン布(5cm×5cm)に全体で1kgの分銅を掛け、サンプル表面(10cm×5cm)を10回擦って静電荷を付与した。得られたサンプルを5秒後に、予め採集したタバコの灰の上に1cmの距離に擦った面を置いて、タバコの灰の付着状態を目視で確認し、以下のA〜Dの4段階で評価した。A、B,C、Dの順に帯電防止特性が優れていることを示す。
A: 特にタバコの付着は認められなかった。
B: かすかにタバコの付着が認められた。
C: かなりなタバコの付着が認められた。
D: タバコの付着が著しく認められた。
(フィルム付着評価)
各試料(セルロースエステルフィルム積層体)から20cm×20cmのサンプルを作製し、25℃・相対湿度60%の環境下または25℃・相対湿度10%の環境下で3日間調湿した。同環境条件下で調湿済みのサンプルの両面を接触し、全体に5kgの分銅を掛けてサンプルを一方向に5cm搬送し、計10回擦って静電荷を付与した。得られたサンプルを縦方向に設置し、一方のフィルムに対して、他方のフィルムが落下する状態を目視で確認し、以下のA〜Dの4段階で評価した。A、B,C、Dの順に帯電防止特性が優れていることを示す。
A: 他方のフィルムは瞬時に落下した。
B: 他方のフィルムは短時間で落下した。
C: 他方のフィルムが少しずれたが付着した状態であった。
D: 他方のフィルムがしっかりと付着した状態であった。
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
(1)セルロースエステルペレットの調製
セルロースエステルとして、セルロースエステルA(アセチル基の置換度1.50、プロピオニル基の置換度1.40、トータル置換度2.90、粘度平均重合度180、含水率0.1質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度140mPa・s、平均粒子サイズ1.4mmであって標準偏差0.4mmである粉体)を用いた。なお、セルロースエステルAは、残存酢酸量が0.05質量%、残留プロピオン酸が0.03質量%であり、Ca含有量が51ppm、Mg含有量が15ppm、Fe含有量が0.45ppmであり、さらに硫酸基としてのイオウ量を0.16ppm含むものであった。
また6位におけるアセチル基の置換度は0.44、6位におけるプロピオニル基の置換度は0.53であった。また、質量平均分子量/数平均分子量比は3.0であった。得られたセルロースエステルAを、メチレンクロライド/メタノール=90/10(質量比)を用いてガラス板上に溶液製膜し、80μmの厚さのフィルムを得た。このセルロースエステルAのみからなるフィルムのイエローインデックスは0.87であり、ヘイズは0.1、透明度は94.2%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は125℃であった。このセルロースエステルAは、綿花リンターから採取したセルロースを原料として合成した。
このセルロースエステルAを105℃、5時間乾燥し、含水率を0.07質量%にした後に、一次平均粒子サイズ20nmのシリカ微粒子を0.02質量%、可塑剤ビフェニルジフェニルフォスフェートを2質量%、UV剤a{2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン}を0.5質量%、UV剤b{2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール}を0.25質量%、およびUV剤c{2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール}を0.25質量%添加し、また安定剤として、ビス(2,6−ジ−tert-ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトを0.1質量%、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]〕を0.1質量%、およびビス[(1,2,2,6,6、−ペンタメチル−4−ピペリジニル)2−(3,5−ジ−tert-ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネートを0.1質量%、離型剤としてトリデカフルオロエチルメタクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/ブチルアクリレート=30/20/50(モル比、分子量9000)を0.1質量%添加した。
これらを混合して2軸混練押し出し機のホッパーに投入し、さらに150〜200℃でスクリュー回転数300rpm、滞留時間40秒で混練して融解した。さらに、50℃の水浴中で直径3mmのストランド状に200kg/時間でダイから押し出し、1分間浸漬した後(ストランド固化)、10℃の水中を30秒間通過させて温度を下げ、長さ5mmに裁断してペレットを得た。得られたセルロースエステルAからなるペレットを、105℃で120分間乾燥し、しかる後にアルミニウムを有するラミネートフィルムからなる防湿袋に袋詰めして保管した。
(2)ろ過
前記セルロースエステルを直径3mm、長さ5mmの円柱状のペレットに成形したものを、110℃の真空乾燥機で3時間乾燥した。これをホッパーに投入し215℃で溶融した後、口径5μmの焼結金属フィルターを用いて、10MPaで速度0.1m/分にて加圧ろ過した。得られたろ過物は、透明かつ均質な組成であることを確認した。
(3)溶融製膜
つぎに105℃になるように調整したホッパーに投入し、上流側溶融温度が195℃、中間溶融温度が210℃、下流側溶融温度が225℃、圧縮比が14、T−ダイ温度が118℃、T−ダイとキャスティングドラム間の距離が8cm、固化速度が30℃/秒、キャスティングドラム温度は第一ロール(上流)が115℃で第二ロール(上流)が114℃でかつ第三ロール(上流)が113℃、冷却速度が−15℃/秒の条件下で処理した。10分間かけてメルトを溶融押出しした。この際、各水準静電印加法(10kVのワイヤーをメルトのキャスティングドラムへの着地点から10cmのところに設置)を用いた。固化したメルトを剥ぎ取り、ニップロールを介して、巻き取り張力6kg/cm2で巻き取った。なお、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた後、巻き取った。各水準とも、幅は1.5mで30m/分で500m巻き取った。フィルムの膜厚は、80μmとして作製した。このようにして得られた本発明のセルロースエステルフィルム(試料1−1)は、その特性は優れたものであり、ダイスジ、微粒子粉落ち、フィルム同士の接着性、面状、光耐候性なども問題ないものであった。
(4)導電性層の形成
調製したセルロースエステルフィルムの片面に、下記の酸化スズ−酸化アンチモン複合物からなる導電性層を形成した。導電性材料の添加量を変えることで、導電性の異なる各種試料を作製した。
・平均一次粒子サイズ15nmの球状酸化スズ−酸化アンチモン複合物
(酸化アンチモン含有量10mol%、比抵抗5Ω・cm、球形微粒
子粉末のアセトン分散物(2次凝集粒子サイズ約80nm))
(固形分塗布量は表1に記載)
・アセチルセルロース(酢化度2.60、重合度305) 0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル 0.001g/m2
該導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5質量%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布して、表1の金属酸化物塗布量(酸化スズ−酸化アンチモン複合物塗布量)になるように実施した。塗布後、25℃で密閉・無風状態で1分放置し、40℃の乾燥風を5分間送風し、さらに90℃の乾燥風にて3分乾燥した。
(5)セルロースエステルフィルム積層体の評価
得られた各セルロースエステルフィルム積層体の導電性と帯電特性を上記の方法で調べた。結果は表1に記載した。
表1に示すように、導電性金属酸化物を全く含まない試料1−1、あるいはその含有量の低い比較用試料1−2〜1−4は、抵抗値が高く、ゴミ付き評価とフィルム付着評価の結果が悪く、取り扱い性が悪いものであった。これに対して、本発明の試料1−5〜1−8はゴミ付き評価およびフィルム付着評価の結果が優れていた。特に低湿度環境下でもフィルム付着評価の結果が優れていた。
Figure 2007001198
なお、本発明の試料1−1の基板であるセルロースエステルフィルムは、ダイスジはA、ダンムラはAで良好であり、Reムラは0.2nm、Rthムラは1.5nm、厚みムラは2.1μmであり優れており、さらにロール汚れもなく(評価A)、優れた基板であった。また、Re湿度依存性は1.4nm、およびRth湿度依存性も5.8nmと小さいことを確認した。
なお試料1−1の特性として、Reは4.4nmであり、Rthは18.2nmであり、ヘイズは0.2%、透明度は93.5%、分子配向軸は0.15%、軸ズレは0.1%、キシミ値は成摩擦係数が0.55であり動摩擦係数が0.44、カール値はドライが0.1でありウェットが0.13、透湿度は760g/m2・日であり、異物は3個認められ、寸法安定性は0.01%以下であり、輝点異物輝点は0.02mm〜0.05mmが10個/3m未満であり0.05〜0.1mmが4個/3m未満であり0.1mm以上はないフィルムであることを確認した。その他の本発明の試料も、ほぼ同等な各種の特性を発現するものであり、優れた光学用のフィルム(特に偏光板保護膜として)として適用できるものであった。
ここで本発明の試料1−1の基板であるセルロースエステルフィルムは、傾斜幅は19.1nm、限界波長は389.4nm、吸収端は376.5nm、380nmの吸収は1.4%であり、軸ズレ(分子配向軸)は0.15°、弾性率は長手方向が2.96GPa,幅方向が2.83GPa、抗張力は長手方向が115MPa、幅方向が107MPa、伸長率は長手方向が61%,幅方向が60%であり、アルカリ加水分解性はAであり、カール値は相対湿度25%で−0.1,ウェットでは1.2であった。また、含水率は1.8質量%であり、熱収縮率は長手方向が−0.05%であり幅方向が−0.07%であった。異物はリントが4個/m未満であった。また、輝点は、0.02mm以下が7個/3m未満、0.02〜0.05mmが3個/3m未満、0.05mm以上はなかった。これらは、光学用途に対しては優れた特性を有するものであった。また、塗布後の接着も見られず(○)、透湿度も良好(○)であった。その他の本発明の試料も、試料1−1とほぼ同等の特性値を示すものであった。
[実施例2]
実施例1の本発明の試料1−7において用いたセルロースエステルAをセルロースエステルB(アセチル基の置換度1.10、プロピオニル基の置換度1.70、トータル置換度2.90、粘度平均重合度150、含水率0.1質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度52mPa・s、平均粒子サイズ1.5mmで標準偏差0.5mmである粉体)に変更した以外は、実施例1の試料1−7と全く同様にして本発明の試料2−1を作製した。さらに、セルロースエステルAをセルロースエステルC(アセチル基の置換度1.00、プロピオニル基の置換度1.85、トータル置換度2.85、粘度平均重合度160、含水率0.05質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度125mPa・s、平均粒子サイズ1.0mmで標準偏差0.25mmである粉体)に変更した以外は、実施例1の試料1−7と全く同様にして本発明の試料2−2を作製した。結果を表1に示す。試料2−1および2−2はゴミ付きおよびフィルム付着性の評価結果が優れていた。特に低湿度環境下でもフィルム付着性の評価は優れたものであることを確認した。
[実施例3]
実施例1において本発明の試料1−7の導電性を付与した面に、PVA/グルタルアルデヒド(5質量%/0.2質量%))水溶液を10ml/m2塗布し、さらに市販の偏光膜(HLC2−5618、サンリッツ社製)を貼り付けて、70℃で1時間処理し、さらに30℃で6日放置した。得られたセルロースエステルフィルム付の偏光板(試料3−1)をセルロースエステルフィルム側にカッターナイフで45°の角度で深さ200μmの碁盤目状の切り傷を11本ずつ直角に付与した。この傷跡部にニチバン製セロテープNo.405(セロテープ:登録商標)および日東テープ(PETテープ)を全面に強く付着し30分放置して、その端部を直角に勢いよく剥離した。その結果、未ケン化処理セルロースエステルフィルムは、すべての碁盤目状セルロースエステルフィルムが剥離したが、導電性を付与した偏光膜はいずれのテープに対しても剥離は全く見られなかった。また、ゴミ付きおよびフィルム付着性評価は共にAであり、帯電特性に優れたものであることを確認した。なお、本発明のセルロースエステルフィルム積層体からなる偏光フィルムは、偏光度は99.99%であり優れた偏光特性を有するものであった。
[実施例4]
実施例1において本発明の試料1−7の導電性を付与した面とは反対の側に、以下の条件でアルカリケン化処理を実施した。すなわち、3mol/LのNaOH水溶液を60℃に加温した液中でフィルムを2分間浸漬した後、25℃の水で30秒間洗浄し、しかる後に0.5mol/Lの硫酸水溶液(25℃)で1分間処理し、再度25℃の水で水洗した。得られたアルカリケン化済みフィルムの接触角(対純水)を測定したところ、29°であり濡れ性は良好のものであった。なお、アルカリケン化処理前の接触角は62°であり、本発明の試料は優れた表面処理性を有することが判る。
このケン化済みフィルムのケン化面に、PVA/グルタルアルデヒド(5質量%/0.2質量%))水溶液を10ml/m2塗布し、さらにその上に市販の偏光膜(HLC2−5618、サンリッツ社製)を貼り付けて、70℃/1時間処理し、さらに30℃で6日放置し本発明のセルロースエステルフィルム積層体からなる偏光板4−1を作成した。偏光板4−1を前記のゴミ付きおよびフィルム付着性評価方法に従って評価した。そして、ゴミ付きおよびフィルム付着性評価は共にAであり、帯電特性に優れたものであることを確認した。なお、本発明のセルロースエステルフィルム積層体からなる偏光フィルムは、偏光度は99.99%であり優れた偏光特性を有するものであった。得られたセルロースエステルフィルム積層体からなる偏光板をセルロースエステルフィルム側にカッターナイフで45°の角度で深さ200μmの碁盤目状の切り傷を11本ずつ直角に付与した。この傷跡部にニチバン製セロテープNo.405(セロテープ:登録商標)および日東テープ(PETテープ)を全面に強く付着し30分放置して、その端部を直角に勢いよく剥離した。その結果、未ケン化処理セルロースエステル積層体は、すべての碁盤目状セルロースエステルフィルムが剥離したが、ケン化処理したセルロースエステルフィルム積層体を付与した偏光膜は、セルロースエステルフィルム積層体の剥離はいずれのテープに対しても全く見られなかった。
[実施例5]
実施例1で得られた本発明の試料1−7の基体であるセルロースエステルフィルムを用いて、さらに延伸温度は135℃、延伸倍率は縦(MD方向)109%、横(TD方向)135%で実施する以外は、本発明の試料1−7と全く同様にして、本発明の試料5−1(延伸フィルム)を得た。延伸速度は、1m/分で実施した。得られた延伸したセルロースエステルフィルム積層体の基体であるセルロースエステルフィルム試料5−1の特性を表1にて評価したところ、延伸によるダイスジやダイムラも見られず優れたセルロースエステルフィルム積層体であることを確認した。また、Reムラ、Rthムラ、厚みムラもさらに小さくなり優れたものであった。また、ReおよびRthの湿度依存性は小さくて優れたものであることを確認した。なお、Reは60nmであり、Rthは210nmであった。
[実施例6]
実施例1の(4)において、導電性層の形成に用いた平均一次粒子サイズ15nmの球状を、針状の酸化スズ−酸化アンチモン複合物(酸化アンチモン含有量10mol%、比抵抗は3Ω・cm、短軸平均長12nm、長軸平均長350nm)に変更する以外は、実施例1の試料1−7と全く同様にして本発明の試料6−1を作製した。得られた本発明の試料6−1は、表1に示すように低い抵抗値と優れたゴミ付き評価結果とフィルム付着性評価結果を示した。
[実施例7]
実施例1の(4)において、導電性層の形成に用いた平均一次粒子サイズ15nmの球状を、ポリピロールとポリスチレンスルフォン酸複合体(比抵抗は10Ω・cm、平均粒子サイズ35nm)に変更する以外は、実施例1の試料1−7と全く同様にして本発明の試料7−1を作製した。得られた本発明の試料7−1は、表1に示すように低い抵抗値と優れたゴミ付き評価結果とフィルム付着性評価結果を示した。
[比較例1]
実施例1の本発明の試料1−7において、セルロースエステルフィルム積層体の基体であるセルロースエステルフィルムの作製時の溶融温度である225℃(下流側)を240℃および175℃で実施する以外は本発明の試料1−7と全く同様にして、比較用試料7−1および7−2を得た。得られた比較試料7−1は黄着色が見られ、セルロースエステルフィルム積層体のセルロースエステルフィルムは、ダイスジ、ダンムラが共にCランクであり面状の悪いものであった。また比較試料7−2は、ダイスジ、ダイムラ共にDランクであり面状の著しく悪いものであった。そのためにセルロースエステルフィルム積層体は、さらに面状の悪いものであった。従って、セルロースエステルフィルム積層体の基体であるセルロースエステルフィルムの作製時において本発明の製造方法の領域外の流延温度を採用すると、優れたセルロースエステルフィルム積層体を作製することが困難であることが判る。
[実施例8]
次に、セルロースエステルフィルム積層体を偏光板等に応用した実施例を記載する。
(8−1)偏光板の作製
(1)セルロースエステルフィルムのケン化
別途溶液流延方法により作製したN,N’,N”−トリ−m−トルイル−1,3,5ートリアジン−2,4,6−トリアミンを対セルロースエステルに対して4質量%添加し、幅方向に残留溶媒の存在する乾燥中に1.32倍延伸したセルローストリアセテート(Reは60nm、Rthは200nm、膜厚80μm)を以下の方法でケン化した。すなわち、KOHを1.5mol/Lとなるように溶解した後に、60℃に調温したものをケン化液として用いた。そして、60℃のセルロースエステルフィルム上に10g/m2塗布し、1分間ケン化した。この後、50℃の温水をスプレーにより、10リットル/m2・分で1分間吹きかけ洗浄した。その後、110℃の乾燥風を風速15m/秒で送り、5分間で乾燥し、ケン化済みのセルローストリアセテートフィルムCTA−Kを得た。これらのケン化は、ロール状のフィルムを速度45m/分で搬送しながら実施した。
(2)偏光膜の作製
特開平2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を調製した。
(3)貼り合わせと評価
このようにして得た偏光膜を、本発明の試料セルロースエステルフィルム積層体試料1−7の導電性層面と、ケン化した延伸セルローストリアセテートフィルムCAT−Kの一方の面との間に挟んだ。この時、接着剤としてはPVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を用い、偏光膜の偏光軸とセルロースエステルフィルム積層体1−7の長手方向とが90°となるように張り合わせた。そして、この偏光板を特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置に25℃・相対湿度60%下で取り付けた後、これを25℃・相対湿度10%の中に持ち込み、目視で色調変化の大小を10段階評価(大きいものほど変化が大きい)で評価した。本発明のセルロースエステルフィルムの色調変化は1であり、非常に優れたものであった。また、特開平2002−86554号公報の実施例1に従い、テンターを用い延伸軸が吸収軸に対して45°の角度となるように延伸した偏光板についても、同様にして本発明のセルロースエステルフィルム積層体を用いて作製したところ、前記同様良好な結果が得られた。
(8−2)光学補償フィルムの作製
特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明のセルロースエステルフィルム積層体1−7を使用し、これを、特開2002−62431号公報の実施例9に記載のベンド配向液晶セルに25℃・相対湿度60%下で取り付けた後、これを25℃・相対湿度10%の中に持ち込み、コントラストの変化を目視評価し、色変化の大小を10段階評価(大きいものほど変化が大きい)して2のマークを得た。本発明を実施したことにより良好な性能が得られた。
(8−3)低反射フィルムの作製
本発明のセルロースエステルフィルム積層体1−8を用いて、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の実施例47に従い低反射フィルムを作製したところ、良好な光学性能が得られた。
[実施例9]
実施例1において作製した本発明のセルロースエステルフィルム1−7を、特開2002−265636号公報記載の実施例13におけるセルローストリアセテートフィルム試料1301の代わりに用いた。そして、特開2002−265636号公報記載の実施例13と全く同様にして、光学異方性層、偏光板試料を作製しベンド配向液晶セルを作製した。得られた液晶セルは、優れた視野角特性を有するものであった。
[実施例10]
実施例1において作製した本発明のセルロースエステルフィルム試料1−7を用いて、このフィルムを特開2002−265636号公報記載の実施例14において、セルローストリアセテートフィルム試料1401の代わりに用いた。そして、特開2002−265636号公報記載の実施例14と全く同様にして、光学異方性層、偏光板試料の作製によりTN型液晶セルを作製した。得られた液晶セルは、優れた視野角特性を有するものであった。
[実施例11]
本実施例において、VAパネルへの実装を行った。
本発明の実施例8の(8−1)で作製した偏光板を、26”ワイドのサイズで偏光子の吸収軸が長辺となるように打抜いて視認側偏光板とし、偏光子の吸収軸が短辺となるように長方形に打抜いてバックライト側偏光板とした。VAモードの液晶TV(ソニー(株)製、KDL−L26RX2)の表裏の偏光板および位相差板を剥し、表と裏側とに上記試料3−1である本発明の偏光板を組合せで貼り付け、液晶表示装置を作製した。偏光板貼り付け後、50℃、5kg/cm2で20分間保持し、接着させた。この際、視認側の偏光板の吸収軸をパネル水平方向に、バックライト側の偏光板の吸収軸をパネル鉛直方向とし、粘着材面が液晶セル側となるように配置した。
プロテクトフィルムを剥した後、測定機(ELDIM社製、EZ−Contrast 160D)を用いて、黒表示および白表示の輝度測定から視野角(コントラスト比が10以上の範囲)を算出した。いずれの偏光板を使用した場合も、全方位で極角80°以上の良好な視野角特性が得られた。さらに、耐久試験による光漏れおよび偏光板剥がれテストを実施し問題ないことを確認した。耐久性テスト条件は以下の通りである。
1)60℃・相対湿度90%の環境に200時間保持し、25℃・相対湿度60%の環境に取り出して24時間後に液晶表示装置を黒表示させ、光漏れ強度および偏光板の液晶パネルからの剥がれの有無を評価した。
2)80℃ドライの環境に200時間保持し、25℃・相対湿度60%の環境に取り出して1時間後に液晶表示装置を黒表示させ、光漏れ強度および偏光板の液晶パネルからの剥がれの有無を評価した。なお、ここにおいてドライとは相対湿度10%以下を意味する。
[実施例12]
本発明の試料を所望の光学特性を示す光学異方性フィルムに作製し、以下の異なる液晶モードの市販モニターあるいはテレビの位相差膜を剥ぎ取り、本発明の位相差膜を貼り付けてその視野角特性を調べたところ、優れた広い視野角特性と色味を得て、本発明のセルロースエステルフィルム積層体が有用であることを確認した。
(TNモード)
視認側偏光板、バックライト側偏光板共に、偏光板の長辺に対して吸収軸が45°長辺となるように、17”のサイズで長方形に打抜いた。TNモードの液晶モニター(サムソン社製、SyncMaster 172X)の表裏の偏光板および位相差板を剥し、表と裏側に、本発明のセルロースエステルフィルム積層体からなる偏光板(試料3−1)を組合せで貼り付け、液晶表示装置を作製した。偏光板貼り付け後、50℃、5kg/cm2で20分間保持し、接着させた。この際、偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
(IPSパネル)
本発明の偏光板を、32”ワイドのサイズで偏光子の吸収軸が長辺となるように打抜いて視認側偏光板とし、偏光子の吸収軸が短辺となるように長方形に打抜いてバックライト側偏光板とした。IPSモードの液晶TV(日立製作所(株)製、W32−L5000)の表裏の偏光板および位相差板を剥し、表と裏側に本発明のセルロースエステルフィルム積層体から作製された偏光板(試料3−1)を組合せで貼り付け、液晶表示装置を作製した。偏光板貼り付け後、50℃、5kg/cm2で20分間保持し、接着させた。この際、視認側の偏光板の吸収軸をパネル水平方向に、バックライト側の偏光板の吸収軸をパネル鉛直方向となり、粘着層表面が液晶セル側となるように配置した。
[実施例13]
(13−1)セルロースエステルのペレット化
合成した表2のセルロースエステルを120℃で3時間送風乾燥し、含水率を0.1質量%にした。これに、表2に記載の可塑剤、およびSiO2粒子(アエロジルR972V)0.05質量%、紫外線吸収剤{「紫外線吸収剤a」2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(0.8質量%)、「紫外線吸収剤b」2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(0.25質量%)}を添加し、さらに安定剤トリス−3,5−ジーt−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート(0.15質量部)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4‘ビフェニレンジフォスファイト(0.15質量部)、ビス[(1,2,2,6,6、−ペンタメチル−4−ピペリジニル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル マロネート(0.15質量部)からなる混合物を、2軸混練押出し機を用いて190℃で溶融混練した。なお、この2軸混練押出し機には真空ベントを設け、真空排気(0.3気圧に設定)を行った。水浴中に直径3mmのストランド状に押出し、長さ5mmに裁断した。
(13−2)溶融製膜
(13−1)で調製した各セルロースエステルペレットを、100℃の真空乾燥機で3時間乾燥した。これを(Tg−10℃)になるように調整したホッパーに投入し、単軸押出機を用いて、圧縮比3.0のスクリューを用い、上流供給部(195℃)、中間圧縮部(210℃)、下流計量部(228℃)でセルロースエステルを溶融押出した。次に、溶融したセルロースエステルをギアポンプに通し、押出機の脈動を除去した後、3μmフィルターでろ過し、230℃のダイを通してキャストドラムに流延した。この時、3kVの電極をメルトから5cm離した所に設置し、両端5cmずつ静電印加処理を行った。(Tg−5℃)、Tg、(Tg−10℃)に設定した直径60cmの3本キャスティングドラムを通し固化させ、表2に記載の厚みのセルロースエステルフィルムを得た。両端5cmをトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけ、各フィルムとも、製膜速度30m/分で、幅が1.5mの2000m巻きのサンプルに調製した。各サンプルとも、キシミ値が小さくかつ傷付きもAであり、ダイスジ、ヘイズ、可視光(615nm)の透過率、微粒子粉落ち、接着性、面状および光耐候性の全てで優れたものであった。
(13−3)導電性層の形成
(13−2)で得たセルロースエステルフィルム積層体用の基体であるセルロースエステルフィルムの片面に、下記の酸化スズ−酸化アンチモン複合物からなる導電性層を形成した。導電性材料の添加量を変えることで、導電性の異なる各種試料を作製した。
・平均一次粒子サイズ15nmの球状酸化スズ−酸化アンチモン複合物
(酸化アンチモン含有量10mol%、比抵抗は5Ω・cm、球形微粒
子粉末のアセトン分散物(2次凝集粒子サイズ約80nm))
0.15g/m2
・アセチルセルロース(酢化度2.60、重合度305) 0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル 0.001g/m2
該導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5質量%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布して、上記の酸化スズ−酸化アンチモン複合物塗布量になるように実施した。塗布後、25℃で密閉・無風状態で1分放置し、40℃の乾燥風を5分間送風し、さらに90℃の乾燥風にて3分乾燥した。
(13−4)偏光板の作製
(13−4−1)セルロースエステルフィルム積層体のケン化
得られたセルロースエステルフィルムを次の浸漬ケン化法でケン化した。即ち、2.5mol/LのNaOH水溶液をケン化液として用いた。これを60℃に調温して、セルロースエステルフィルムを2分間浸漬した。この後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬し、2分間水洗した。その後、100℃、10分乾燥してケン化済みの試料を得た。
(13−4−2)偏光膜の作製
特開平2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を作製した。
(13−5)貼り合わせ
このようにして得た偏光膜、上記ケン化処理したセルロースエステルフィルム積層体、ならびにケン化処理したフジタック(トリアセテートフィルム)を、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として下記の組み合わせで張り合わせた。このとき、偏光膜の延伸方向とセルロースエステルの製膜方向(長手方向)が一致するようにした。また、ケン化処理したセルロースエステルフィルム積層体については、導電性層面と反対側面に張り合わせた。下記においてセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルフィルム積層体の作製に用いた、同じアシル化度のセルロースアシレートフィルムを表す。
偏光板A:セルロースエステルフィルム積層体/偏光膜/フジタック(富士タック TD80UF)
偏光板B:セルロースエステルフィルム積層体/偏光膜/セルロースエステルフィルム
(13−6)実装評価
VA型液晶セルを使用した26インチおよび40インチの液晶表示装置(シャープ(株)製)に液晶層を挟んで設置されている2対の偏光板のうち、観察者側の片面の偏光板を剥がし、粘着剤を用い、代わりに上記偏光板AまたはBを貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸が直交するように配置して、液晶表示装置を作成した。得られた液晶表示装置について、黒表示状態で発生する光漏れと色ムラ、面内の均一性を観察した。本発明のセルロースエステルフィルム積層体を用いた液晶表示装置は色調変化が抑えられており、非常に優れたものであった。
(13−7)低反射フィルムの作成
本発明のセルロースエステルフィルム積層体を用いて発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の実施例47に従って低反射フィルムを作成したところ、良好な光学性能を有するものであった。
(13−8)光学補償フィルムの作成
本発明のセルロースエステルフィルム積層体に、特開平11−316378号公報の実施例1に従って液晶層を塗布して光学補償フィルムを作製した。良好な性能が得られた。
Figure 2007001198
本発明によれば、フィルムへのゴミ付きを抑え、帯電防止性に優れたセルロースエステルフィルム積層体を提供することができる。本発明によって提供されるセルロースエステルフィルム積層体は、ダイスジ、厚さムラおよび光学特性ムラを大幅が軽減されており、フィルム付着性も大幅に改善されているうえ、ヘイズ、透過率などの性質も優れていることから、偏光板、光学補償フィルムおよび反射防止フィルムとして有用である。また、液晶表示装置に組み込むことにより、表示画面での異物故障、経時での視認性の変化、特に湿度による視認性の変化を抑制することができる。したがって、本発明のセルロースエステルフィルムは産業上の利用可能性が高い。
押出機の構成を示す概略図である。
符号の説明
22 押出機
32 シリンダー
40 供給口
A 供給部
B 圧縮部
C 計量部

Claims (14)

  1. 下記式(S−1)〜(S−3)を満足するセルロースエステルフィルムの少なくとも一方の面に、25℃・相対湿度60%における抵抗が1012Ω以下である導電性層を有するセルロースエステルフィルム積層体。
    式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
    式(S−2) 0≦A≦2.2
    式(S−3) 0.8≦B≦3.0
    (式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
  2. 前記セルロースエステル中のセルロースの水酸基に対して置換している炭素数3〜22のアシル基の中に、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基からなる群より選択される2種類以上のアシル基が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
  3. 前記導電性層が、少なくとも一種の導電性無機金属素材および/または少なくとも一種の有機導電性素材を含有する層であることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
  4. 前記導電性金属酸化物が、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25、またはこれらの複合酸化物であり、該金属酸化物が異種原子としてAl、In、Ta、Sb、Nb、Ag、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種を含有していてもよいことを特徴とする請求項3に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
  5. 前記セルロースエステルフィルムが、微粒子、可塑剤、紫外線吸収剤および安定剤からなる群より選択される少なくとも一種を0.005〜5g/m2含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
  6. 残留溶媒量が0.01質量%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
  7. 前記セルロースエステルフィルムの正面レターデーション(Re)が0〜300nmであり、且つ、厚さ方向のレターデーション(Rth)が−300〜700nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
  8. 下記式(S−1)〜(S−3)を満足するセルロースエステルを180〜230℃で溶融しダイから押し出して溶融製膜し、得られた膜状物の少なくとも一方の面に25℃・相対湿度60%における抵抗が1012Ω以下である導電性層を形成する工程を含むことを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
    式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
    式(S−2) 0≦A≦2.2
    式(S−3) 0.8≦B≦3.0
    (式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
  9. 前記膜状物を少なくとも1方向に−10%〜50%延伸する工程をさらに有することを特徴とする請求項8に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
  10. 請求項8または9に記載の製造方法により製造されたことを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体。
  11. 偏光膜に請求項1〜7または10に記載のセルロースエステルフィルム積層体を少なくとも1層積層したことを特徴とする偏光板。
  12. 請求項1〜7または10に記載のセルロースエステルフィルム積層体を基材に用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
  13. 請求項1〜7または10に記載のセルロースエステルフィルム積層体を基材に用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
  14. 請求項1〜7または10に記載のセルロースエステルフィルム積層体、請求項11に記載の偏光板、請求項12に記載の光学補償フィルム、および請求項13に記載の反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも一つを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
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