JPWO2013073633A1 - リチウム含有複合酸化物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

有害かつ電池性能に悪影響を及ぼす不純物を含まない、量産性、品質安定性および電池性能に優れたリチウム含有複合酸化物の安価な製造方法を提供する。原料粉末を外部から加熱された回転する筒状金属容器内で転動させながら焼成して焼成物を得る第一焼成工程と、得られた焼成物を第一焼成工程より高い焼成温度で焼成する第二焼成工程とを含むリチウム含有複合酸化物の製造方法において、筒状金属容器内部の原料混合物との接粉部が99質量%以上のニッケルを含む純ニッケル、または15〜25質量%のクロムと15〜25質量%のモリブデンもしくは3〜6質量%のアルミニウムとを含み残部がニッケルであるニッケル合金であり、かつ第一焼成工程の焼成温度が450〜600℃であり、第二焼成工程の焼成温度が700〜1100℃である。

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池正極材料用のリチウム含有複合酸化物の製造方法に関する。
近年、機器のポータブル化、コードレス化が進むにつれ、小型、軽量でかつ高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池に対する要求がますます高まっている。かかるリチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、LiCoO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiNi0.8Co0.2などのリチウムと遷移金属との複合酸化物(以下、リチウム含有複合酸化物ともいう。)が知られている。
これらのリチウム含有複合酸化物は、通常、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウムまたはシュウ酸リチウムなどのリチウム化合物と、硝酸、塩酸もしくは炭酸などの無機酸もしくは各種有機酸の遷移金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、または金属オキシ水酸化物とを所定の元素量論比で混合した後、大気中または酸素ガス導入下において焼成することで製造される。
一般に、この焼成は、原料混合物をアルミナ等のセラミック容器に充填し、バッチ炉または連続コンベア炉にて静置状態で行われる。しかしながら、焼成時に原料混合物から水蒸気、炭酸ガスおよび有機性揮発物などの気体が発生する。そのためセラミック容器内への原料混合物の充填深さが深い場合は急激に原料混合物層内部の温度が上昇したり、また、十分な加熱時間が保持できない場合は原料混合物層内から外部へと気体が揮散すると同時に、原料混合物層中への酸素ガスの内部拡散が十分進行しなかったりするため、均一な焼成反応が進行せずに副反応が起こる。その結果、本来その正極材料の設計値とする電池性能が発現しなかった。したがって、従来の原料混合物の容器内静置による製造法は、設備規模に対する実生産能力の点においては極めて効率の悪いものであった。
これらの問題を解決するために、特許文献1には、コバルト酸リチウムの製造法として、リチウム化合物とコバルト化合物との混合物を回転する円筒の中で順次移動させながら600〜800℃で加熱する第一の熱処理工程と、該第一の熱処理工程の熱処理物をさらに850〜950℃で加熱する第二の熱処理工程からなる製造法が提案されている。
特許文献2には、羽根付き回転ブロックを内蔵するロータリーキルンにて、リチウム、ニッケルおよびコバルトを含む原料混合物を650〜850℃でバッチ焼成するか、または連続式のロータリーキルンにて、400〜650℃の範囲で焼成した後、さらに650〜850℃の範囲で焼成する、2段焼成によって、リチウム含有複合酸化物を製造する方法が提案されている。
特許文献3においても、原料混合物を大気雰囲気または酸素含有雰囲気下、500〜900℃で混合しながら第一段の焼成を行った後、さらに800〜1100℃の温度で混合または静置して第2段の焼成を行う方法が提案されている。
特許文献4では、遷移金属複合水酸化物と水酸化リチウムとの混合物を連続的に流動させながら脱水処理を行う装置として、鉄またはステンレス鋼製レトルトの連続式のロータリーキルンが用いられている。
特許文献5では、ニッケル・コバルト複合水酸化物を原料とするリチウム複合酸化物の製造法において、直径6cm、長さ約40cmの高純度アルミナ製の筒状レトルトを使用したロータリーキルンにて650℃以上の焼成を行う事例が示されている。
特許文献6では、リチウム含有複合酸化物の製造法において、高耐酸性のクロム含有合金であるSUS310S製レトルトとの接触面からリチウム含有複合酸化物中へクロムが不純物として混入することが問題として指摘されており、これを防止するために接触面にアルミニウムの拡散メッキ処理を施すことが提案されている。
日本特開平8−301619号公報 日本特開平11−139829号公報 日本特開2002−260655号公報 日本特開2000−173599号公報 日本特開平11−111290号公報 日本特開2003−267729号公報
上記した特許文献1〜3に記載された製造方法においては、いずれもロータリーキルン等の回転転動式の焼成炉を用いることによって、原料混合物への伝熱と、高温下の反応によって発生した気体の揮散を促し、同時に酸素ガスとの接触を促進することによって、焼成速度の高率化と製品品質の均一化を目的とするものである。特許文献1〜3には、ロータリーキルンなどの回転転動式の焼成炉に用いるレトルトの材質について、具体的な記載はないが、従来、リチウム含有複合酸化物の製造用に用いてきたロータリーキルンのレトルト材料には、優れた熱伝導性と加熱高温下での機械的強度と耐酸化性を具備させるために、クロム(Cr)を含有させた耐熱性ステンレス鋼SUS310Sまたはクロムを含有させたインコネル(登録商標)およびハステロイ(登録商標)などの耐食性のニッケル合金が使用されてきた。しかし、これらの合金をレトルト材料に使用する場合、リチウム含有複合酸化物との接粉部が腐食する問題、および人体に非常に有害な6価クロムなどが混入する問題があった。
特許文献4では、遷移金属複合水酸化物と水酸化リチウムとの混合物を連続的に流動させながら脱水処理を行う装置として、鉄(Fe)またはステンレス鋼製のレトルトを用いた連続式のロータリーキルンが記載されている。しかし、水酸化リチウムの融点以上ではレトルト材料が激しく腐食する問題、およびクロムに加えて、電池の短絡の原因となり電池性能に悪影響を及ぼす鉄が混入する問題があった。
特許文献5では、直径6cm、長さ約40cmの高純度アルミナ製の筒状レトルトを使用したロータリーキルンで650℃以上の焼成をする事例が示されている。しかし、アルミナ等のセラミックスは、機械的強度に劣るため大型のアルミナ製筒状金属容器の成形は極めて困難であり、かつ熱伝導性に乏しいためメートル級の直径を必要とする量産スケールのロータリーキルン用レトルト材料として不適当であった。
特許文献6では、リチウム含有複合酸化物の製造法において、高耐酸性のクロム含有合金であるSUS310S製レトルトとの接触面からリチウム含有複合酸化物へとクロムが不純物として混入することが問題として指摘されており、これを防止するために接触面にアルミニウム(Al)のメッキ処理を施したレトルト材料が提案されている。しかし、ロータリーキルンを回転させてリチウム含有複合酸化物とレトルト材料が接触する際に、表面のアルミニウムが磨耗して削れるためアルミニウムが不純物として混入する問題があり、レトルト材料としては不適当であった。
上記のように、従来ではいずれの製造方法においても量産性、不純物の混入などの問題は解決されていなかった。
本発明は、ニッケル、クロムおよび鉄などの不純物が混入することのない、量産性、品質安定性および電池性能に優れたリチウム含有複合酸化物の安価な製造方法の提供を目的とする。
本発明者は、鋭意研究を続けた結果、下記の構成を要旨とする発明により、上記の課題が良好に達成されることを見出した。
(1)リチウム化合物と遷移金属化合物とを含む原料混合物の粉末を、外部から加熱された回転する筒状金属容器内で転動させながら焼成して焼成物を得る第一焼成工程と、得られた焼成物を第一焼成工程より高い焼成温度で焼成する第二焼成工程とを有するリチウム含有複合酸化物の製造方法において、前記筒状金属容器内部の原料混合物との接粉部が、99質量%以上のニッケルを含む純ニッケル、または15〜25質量%のクロムと15〜25質量%のモリブデンもしくは3〜6質量%のアルミニウムとを含み残部がニッケルであるニッケル合金からなり、かつ第一焼成工程の焼成温度が450〜630℃であり、第二焼成工程の焼成温度が700〜1100℃であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用リチウム含有複合酸化物の製造方法。
(2)遷移金属化合物が、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、またはそれらの混合物である上記(1)に記載の製造方法。
(3)遷移金属化合物が、5〜25μmの平均粒径を有し、かつリチウム化合物が20μm以下の平均粒径を有する上記(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)原料混合物のかさ密度Aに対する、第一焼成工程で得られる焼成物のかさ密度Bの比率(かさ密度比B/A)が1.4以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)第一焼成工程の焼成温度が500〜600℃である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)第二焼成工程の焼成温度が800〜1100℃である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)第二焼成工程において、第一焼成工程で得られた焼成物を焼成容器内に充填した後、静止状態にて焼成する上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)第二焼成工程の焼成後に得られる焼成物に含まれるニッケル、クロムおよび鉄の増加量が、原料混合物中のそれぞれに対して、20ppm以下、25ppm以下および10ppm以下である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9)第一焼成工程の焼成が、ロータリーキルンで行なわれる上記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)第二焼成工程の焼成が、シャトルキルン、ローラーハースキルン、またはプッシャーキルンで行なわれる上記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)上記(1)に記載の製造方法に用いる焼成装置であって、筒状金属容器内部の原料混合物との接粉部が99質量%以上のニッケルを含む純ニッケル、または15〜25質量%のクロムと15〜25質量%のモリブデンもしくは3〜6質量%のアルミニウムとを含み残部がニッケルであるニッケル合金からなることを特徴とする焼成装置。
本発明によれば、回転する筒状金属容器を備えたロータリーキルンなどの焼成炉において、筒状金属容器に所定の組成を有する金属材料を用いて、かつ所定の焼成条件で原料混合物を焼成することにより、有害で、かつ電池性能に悪影響を及ぼす不純物が極めて少なく、優れた電池性能を有するリチウム含有複合酸化物を効率良く量産できる。
筒状金属容器の材質に上記で規定した組成を有する材料を使用して、かつ所定の焼成プロファイルで焼成することで、クロムおよび鉄などの金属不純物が、ロータリーキルンのレトルトから混入することを防ぐことができる。クロムは人体に有害であり、環境にも極めて悪影響を及ぼすためできる限り含まれないことが好ましい。また鉄は混入すると電池性能が著しく悪化し、かつ電池の短絡などの原因となるためできる限り含まれないことが好ましい。すなわち、本発明で使用する材料は、リチウム含有複合酸化物との接触により削れることも無く、かつ焼成による腐食などが生じないため、有害な不純物および電池性能に悪影響を及ぼす不純物を含まないリチウム含有複合酸化物が製造できる。
またリチウム化合物と遷移金属化合物との原料混合物を、外部から加熱された回転する筒状金属容器内にて、転動させながら焼成する第一焼成工程によって、原料混合物からの分解ガスの揮散と酸素供給による酸化を伴う合成反応を高速、かつ短時間で完了させて焼成物を得ることができる。得られた焼成物は、第一焼成工程より高い温度で熱処理する第二焼成工程によって結晶成長の結晶構造の安定化が進み、性能発現に最適な結晶構造が形成される。第一焼成工程で得られた焼成物はリチウム化合物と遷移金属化合物の分解反応が進むことによって、二酸化炭素の放出、水分の除去が生じて、原料混合物よりもかさ密度が向上する。さらに第一焼成工程から得られた焼成物は第二焼成工程にて加熱されるが、この工程ではガス発生が非常に少ないため、第一焼成工程にてかさ密度を高めた焼成物を焼成容器内に大量に充填し、短時間で焼成することが可能となり、全工程を通して生産速度を飛躍的に向上させることができる。
よって、本発明の製造方法を用いることによって、不純物を含まない、優れた電池性能を有するリチウム含有複合酸化物を安定的に高速で製造することができる。
本発明においては、リチウム化合物と遷移金属化合物とを含む原料混合物の粉末を、外部から加熱された回転する筒状金属容器内で転動させながら焼成する第一焼成工程と、得られた焼成物を第一焼成工程より高い温度で焼成する第二焼成工程を経て、リチウム含有複合酸化物を製造する。
筒状金属容器内部の原料混合物との接粉部の材質は、99質量%以上のニッケルを含む純ニッケル、または15〜25質量%のクロムと15〜25質量%のモリブデンもしくは3〜6質量%のアルミニウムとを含み残部がニッケルであるニッケル合金であり、なかでも99質量%以上のニッケルを含む純ニッケルが好ましく、99.0質量%以上のニッケルを含む純ニッケルがより好ましい。
ニッケルを99質量%以上含む純ニッケルおよび前記ニッケル合金は、市販品としても入手できる。純ニッケルとしては、三菱スーパーアロイ社製である、LC−Ni(耐熱用、品番、ニッケル純度99.0%)、NC-Ni(工業用、品番、ニッケル純度99.0%),K-Ni(品番、ニッケル純度99.5%以上)、A-Ni(品番、ニッケル純度99.7%以上)が例示される。なかでも、耐熱性の高いLC−Niが特に好ましい。また、住友金属工業社製である、NAR−N200(品番、ニッケル純度99.0%),NAR−N201(品番、ニッケル純度99.0%)が挙げられる。
前記ニッケル合金の市販品としては、三菱スーパーアロイ社製である、MAT21(クロムとモリブデンを含む耐食ニッケル合金、品番、ニッケル含量62%)、MA24(クロムとアルミニウムと鉄を含む耐熱ニッケル合金、品番、ニッケル含量77.5%)が好ましい。
筒状金属容器としては、原料混合物と接触するその接粉部が本発明で規定する組成の純ニッケルまたはニッケル合金で構成したものが使用される。また、筒状金属容器の接粉部の内部表面のみ、上記の純ニッケルまたはニッケル合金を用い、原料混合物とは接触しない外部に他の金属を用いたクラッドを用いることもできる。この際、純ニッケルまたはニッケル合金と張り合わせる金属は、耐熱強度が高く安価なものが好ましく、具体的にはSUS310Sを外部に張り合わせたクラッド材料が好ましい。さらに、厚膜メッキや溶射によって、筒状金属容器の接粉部の内部表面に、上記のニッケル層またはニッケル合金層を形成した筒状金属容器を使用することもできる。
原料混合物は、外部から加熱された回転する筒状金属容器内で焼成されるが、その具体的な量産装置としては、本発明で規定する材質の筒状金属容器を備えた連続式またはバッチ式のロータリーキルンが好ましく、なかでも量産性の観点から連続式のロータリーキルンがより好ましい。
第一焼成工程では、原料混合物の粉末を焼成することによって、二酸化炭素および水蒸気などのガス発生を伴う合成反応をできるだけ完結させて、リチウム化合物と遷移金属化合物ができる限り残存しない焼成物を得ることが好ましい。したがって、この合成反応を十分に進行させるため、少なくとも450℃程度の温度で焼成する必要がある。しかし、650℃以上で焼成すると、短時間で合成反応を進行させられるが、強度を維持できず、筒状金属容器の形状が変形するおそれがあるため、630℃以下で焼成することが必要である。かくして、第一焼成工程の焼成温度は450〜630℃であり、なかでも450〜600℃が好ましく、500〜600℃がより好ましく、合成反応の促進という観点から530〜580℃が特に好ましい。
第一焼成工程の焼成雰囲気としては、特に限定されないが、酸素濃度としては10〜60体積%が好ましく、15〜40体積%がより好ましい。焼成時間は特に限定されないが、1〜36時間が好ましく、1〜18時間がより好ましい。
第一焼成工程における筒状金属容器の回転速度は、0.4〜2.0rpmが好ましく、0.7〜1.5rpmがさらに好ましい。
第一焼成工程で得られる焼成物に含まれる不純物量は少ない方が好ましい。第一焼成工程では、筒状金属容器と原料混合物とが接触して、容器内部の金属が削れて混入するおそれがある。特に混入する不純物として好ましくない元素としては、ニッケル、クロムおよび鉄が挙げられる。そのため、焼成前の原料混合物に対して、焼成後に得られる焼成物に含まれるニッケル、クロムおよび鉄の増加量は少ないほど好ましい。焼成後に得られる焼成物に含まれるニッケルの増加量は20ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、5ppm以下が特に好ましい。ニッケルの増加量は少ないほど好ましいが、下限として0.1ppmは含んでも良い。また、クロムの増加量は25ppm以下が好ましく、15ppm以下がより好ましく、5ppm以下が特に好ましい。なおクロムの増加量は少ないほど好ましいが、下限として0.1ppmは含んでも良い。鉄の含有量は10ppm以下が好ましく、5ppm以下がより好ましく、2ppmが特に好ましい。また、鉄の含有量は少ないほど好ましいが、下限として0.1ppmは含んでも良い。
なお、本発明において、原料混合物および第一焼成工程で得られる焼成物に含まれるNi、CrおよびFeなどの不純物の分析、ならびにリチウム含有複合酸化物の組成および不純物の分析には、ICP分析(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析)を用いることができる。
第一焼成工程で得られた焼成物は、さらに第一焼成工程の焼成温度より高い温度にて、再び焼成される第二焼成工程を経て、本発明のリチウム含有複合酸化物を製造することができる。第二焼成工程を経ることによって、結晶成長と電池性能の発現に必要な結晶構造の形成が図られる。そのため、第二焼成工程での焼成温度の範囲は700〜1100℃であり、なかでも800〜1100℃が好ましく、焼成時間の短縮と炉材の耐久性の点においては850〜1050℃の範囲がより好ましい。通常、第二焼成工程では大気雰囲気の酸素濃度にて焼成されるが、遷移金属の種類によっては、酸素ガスを焼成工程雰囲気中に導入し、酸素濃度を高めることで、より好ましい物性の結晶を形成させて、より優れた電池性能を発現させることもできる。焼成雰囲気としては、特に限定されないが、酸素濃度としては、10〜60体積%が好ましく、15〜40体積%がより好ましい。焼成時間は特に限定されないが、1〜48時間が好ましく、3〜36時間がより好ましい。
第二焼成工程においては、焼成温度以外は特に限定されないが、第一焼成工程で得られる焼成物を焼成容器に充填し、静置状態で焼成するのが好ましい。静置状態の焼成としては、シャトルキルン、ローラーハースキルン、プッシャーキルンまたは電気炉を用いた焼成などが例示される。量産用としては、なかでも、シャトルキルン、ローラーハースキルン、またはプッシャーキルンが好ましい。
第一焼成工程で得られる焼成物は、第二焼成工程での焼成によるさらなるガス発生は起こらない状態となっている。そのため第二焼成工程では、焼成容器内に充填し、静置状態にて焼成することが可能となる。さらに、ガス発生を伴う反応は第一焼成工程で既にほぼ完了しているため、原料混合物のかさ密度Aに比べて、焼成物のかさ密度Bを向上させることができる。そのため、第二焼成工程における焼成容器内に充填できる焼成物の重量は、第一焼成工程前のかさ密度Aに対する第一焼成工程後のかさ密度Bの比率(かさ密度比B/A)に比例して向上させることができ、その結果、その生産速度および生産効率をより向上できる。したがって、第一焼成工程でのガス発生を伴う合成反応を完全に進行させ、かつ第二焼成工程での生産速度を高めるためには、その尺度として、かさ密度比B/Aの値を1.4以上にすることが好ましい。一方、第一焼成工程でのガス発生を伴う合成反応が不完全な場合には、第二焼成工程の静置状態での熱処理時に焼成容器内からさらにガス発生が起こることによって完全な結晶化過程が十分に進まず、結果としてアルカリ量が高くなり、電池内でのガス発生を助長する原因となる。したがって、かさ密度比B/Aは1.45以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましい。また、かさ密度比B/Aの上限については、特に限定されないが充填性が高すぎると均一な焼成ができない場合があるため、かさ密度比B/Aは2.0以下が好ましい。
本発明で使用するリチウム化合物としては、特に限定されないが、なかでも炭酸リチウムまたは水酸化リチウムが好ましく、なかでもレトルトなどの円筒金属容器への腐食性が低い炭酸リチウムがより好ましい。
本発明で使用する遷移金属化合物としては、特に限定されないが、コバルト、ニッケルおよびマンガンの少なくともいずれかを含む化合物を使用することが好ましい。また、コバルト、ニッケルおよびマンガンからなる群から選ばれる2種以上の元素を含む複合化合物を使用することもできる。なかでも反応性と収率の点で、遷移金属化合物としては酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、またはそれらの混合物が好ましい。遷移金属化合物がコバルト塩である場合は、炭酸コバルト、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルトまたは酸化コバルトが好ましく、なかでも性能が発現しやすい水酸化コバルトまたはオキシ水酸化コバルトがより好ましい。遷移金属化合物がニッケル塩である場合は、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、酸化ニッケルまたは炭酸ニッケルが好ましい。また遷移金属化合物がマンガンである場合には、水酸化マンガン、炭酸マンガン、オキシ水酸化マンガンまたは酸化マンガンが好ましい。
遷移金属化合物として、コバルト、ニッケルおよびマンガンからなる群から選ばれる2種以上の元素を含む複合化合物を使用する場合は、ニッケル−コバルト複合化合物またはニッケル−コバルト−マンガン複合化合物が好ましい。ニッケル-コバルト複合化合物としては、ニッケル−コバルト複合水酸化物、ニッケル−コバルト複合オキシ水酸化物、ニッケル−コバルト複合酸化物またはニッケル−コバルト複合炭酸塩が好ましい。さらに具体的には、Ni0.8Co0.2OOHまたはNi0.8Co0.2(OH)が好ましい。ニッケル−コバルト−マンガン複合化合物としては、ニッケル−コバルト−マンガン複合水酸化物、ニッケル−コバルト−マンガン複合オキシ水酸化物、ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物またはニッケル−コバルト−マンガン複合炭酸塩が好ましい。さらに具体的には、Ni1/3Co1/3Mn1/3OOH、Ni1/3Co1/3Mn1/3(OH)、Ni0.5Co0.2Mn0.3OOHまたはNi0.5Co0.2Mn0.3(OH)が好ましい。
遷移金属化合物にフッ素源が含まれる場合は、フッ素源は特に限定はされないが、なかでもアルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物が好ましく、LiFまたはMgFがより好ましい。
原料混合物を転動させながら焼成する場合、リチウム化合物と遷移金属化合物とが分離せずにできるだけ均一な混合状態を保つことが好ましい。一般的に、転動による原料混合物の分離挙動は、用いる原料の比重の差と粒径の差に影響される。そのため、より均一な混合状態を維持して焼成するために、遷移金属化合物の平均粒径は5〜25μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。リチウム化合物の平均粒径は20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、7μm以下がさらに好ましく、5μm以下が特に好ましい。また、リチウム化合物の平均粒径は0.1μm以上が好ましい。さらに、リチウム化合物の平均粒径と遷移金属化合物の平均粒径の比(リチウム化合物の平均粒径)/(遷移金属化合物の平均粒径)は、0.05〜4が好ましく、0.1〜2がより好ましい。
なお、本発明において、リチウム化合物、遷移金属化合物およびリチウム含有複合酸化物の平均粒径は、体積基準で粒度分布を求め、全体積を100%とした累積カーブにおいて、累積体積が50%となる点の粒径である、体積基準累積50%径(D50)を意味する。本発明において、平均粒径を平均粒径(D50)ということがある。粒度分布は、レーザー散乱粒度分布測定装置で測定した頻度分布および累積体積分布曲線で求められる。粒径の測定は、粒子を水媒体中に超音波処理などで充分に分散させて粒度分布を測定する(例えば、日機装社製マイクロトラックHRAX−100などを用いる)ことにより行なわれる。
本発明によって製造されるリチウム含有複合酸化物としては、リチウムイオンの吸蔵放出を伴う可逆的な電気化学的酸化還元反応によって二次電池用の正極として機能し得るリチウム含有複合酸化物であれば、組成は特に限定されない。なかでも実用性の観点から、具体的には、一般式Lipxyza(但し、Nは、Co、MnおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Mは、Co、MnおよびNi以外の遷移金属元素、Al、Snならびに第2族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、0.9≦p≦2.0、0.9≦x≦2.0、0≦y≦0.1、1.9≦z≦4.2、0≦a≦0.05)で表されるリチウム含有複合酸化物が好ましい。具体的な組成としてはLiCoO、LiNiO、LiMn、LiNi0.8Co0.2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、Li1.12Ni0.145Co0.1Mn0.55、Li1.1(Ni0.15Co0.1Mn0.55)O1.95、Li(Li1/5Ni1/5Mn3/5)Oなどが例示される。
上記のp、x、y、zおよびaは、なかでも0.9≦p≦1.5、0.9≦x≦2.0、0≦y≦0.1、1.9≦z≦4.2、0≦a≦0.05の範囲が好ましく、0.9≦p≦1.2、0.9≦x≦1、0≦y≦0.1、1.9≦z≦2.1、0≦a≦0.05の範囲がより好ましく、0.95≦p≦1.1、0.95≦x≦1.00、0≦y≦0.05、1.95≦z≦2.05、0≦a≦0.01がさらに好ましい。なかでもpについては0.9≦p≦1.2が好ましく、0.95≦p≦1.1がより好ましく、1≦p≦1.05が特に好ましい。また、フッ素(F)を含まない場合は、フッ素を含む場合と比べて、放電容量が高くなる傾向があり、容量を重視するときはa=0が好ましい。また、母材のリチウム含有複合酸化物がフッ素を含む場合は、酸素の一部がフッ素で置換された正極活物質となり、安全性がさらに向上する傾向が見られるため、安全性を重視するときは、aは0.001≦a≦0.01の範囲が好ましい。
Nは、Co、MnおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、なかでも、NはCo単独またはCo、MnおよびNiの組み合わせが好ましく、Co単独がより好ましい。Mは、Co、MnおよびNi以外の遷移金属元素、Al、Snならびに第2族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表す。なかでもMは、Al、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mg、SnおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種であると好ましい。特に、放電容量、安全性、充放電サイクル耐久性などの見地から、M元素は、Al、Ti、ZrおよびMgからなる群から選ばれる少なくとも1種であるとより好ましく、Al、ZrおよびMgからなる群から選ばれる少なくとも1種であると特に好ましい。Mは任意成分であり、Mを含まない場合、放電容量が高くなる傾向があり、容量を重視するときはy=0が好ましい。一方、安全性、充放電サイクル耐久性などの特性を重視する場合は、0.0001≦y≦0.05の範囲が好ましい。なお、遷移金属元素とは、具体的には周期表の3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族および12族の遷移金属を表す。
また、本発明で得られるリチウム含有複合酸化物において、アルカリ量は0.035モル%以下が好ましく、0.025モル%以下がより好ましい。リチウム含有複合酸化物から溶出するアルカリ量が少ないと、正極の作製時にスラリーとした際に、ゲル化することなく均一に塗布できるため好ましい。なお、本発明において、アルカリ量はリチウム含有複合酸化物の粉末5gを50gの純水中に分散して30分間撹拌した後、ろ過して得られたろ液を0.02mol%の塩酸水溶液で電位差滴定して、pHが4.0に至るまでに使用した塩酸水溶液から求められる。
本発明で得られるリチウム含有複合酸化物を正極材料として用いて、リチウムイオン二次電池用の正極を製造する場合には、まず、リチウム含有複合酸化物の粉末に、アセチレンブラック、黒鉛、ケッチェンブラックなどのカーボン系導電材と結合材を混合する。前記結合材には、好ましくは、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂等が用いられる。本発明により得られる複合酸化物の粉末、導電材および結合材を溶媒、または分散媒を使用して、スラリーまたは混練物とせしめる。これをアルミニウム箔などの正極集電体に塗布などにより担持せしめてリチウムイオン二次電池用の正極が製造される。
本発明で得られるリチウム含有複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池において、セパレータとしては、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレンのフィルムなどが使用される。また、電池の電解質溶液の溶媒としては、種々の溶媒が使用できるが、なかでも炭酸エステルが好ましい。炭酸エステルは環状、鎖状いずれも使用できる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(EC)などが例示される。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネートなどが例示される。
本発明では、上記炭酸エステルを単独で、または2種以上を混合して使用できる。また、他の溶媒と混合して使用してもよい。また、負極活物質の材料によっては、鎖状炭酸エステルと環状炭酸エステルを併用すると、放電特性、サイクル耐久性、充放電効率が改良できる場合がある。
また、本発明で得られるリチウム含有複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池においては、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(例えば、アトケム社製:商品名カイナー)またはフッ化ビニリデン−パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体を含むゲルポリマー電解質を電解質に用いてもよい。上記の電解質溶媒またはポリマー電解質に添加される溶質としては、ClO 、CFSO 、BF 、PF 、AsF 、SbF 、CFCO 、(CFSOなどをアニオンとするリチウム塩のいずれか1種以上が好ましく使用される。電解質溶媒またはポリマー電解質に含有されるリチウム塩の濃度は、0.2〜2.0mol/l(リットル)が好ましく、0.5〜1.5mol/lが特に好ましい。この濃度範囲の場合、イオン伝導度が大きく、電解質の電気伝導度が増大する。
本発明で得られるリチウム含有複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池において、負極活物質には、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な材料が用いられる。この負極活物質を形成する材料は特に限定されないが、例えばリチウム金属、リチウム合金、炭素材料、周期表14または15族の金属を主体とした酸化物、炭素化合物、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、炭化ホウ素化合物などが挙げられる。炭素材料としては、種々の熱分解条件で有機物を熱分解したものや人造黒鉛、天然黒鉛、土壌黒鉛、膨張黒鉛または鱗片状黒鉛などを使用できる。酸化物としては、酸化スズを主体とする化合物が使用できる。負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔などが用いられる。かかる負極は、上記活物質を有機溶媒と混練してスラリーとし、該スラリーを金属箔集電体に塗布、乾燥、プレスして得ることにより好ましくは製造される。
本発明で得られるリチウム含有複合酸化物を正極材料に用いたリチウム電池の形状には特に制約はない。シート状、フィルム状、折り畳み状、巻回型有底円筒形、ボタン形などが用途に応じて選択される。
以下本発明の実施例について説明するが、本発明は下記の実施例にのみ限定されるものではない。
〔実施例1〕
平均粒径(D50)が12μmであるオキシ水酸化コバルト143.7gと、平均粒径(D50)が5μmである炭酸リチウム56.3gとを乾式で混合し、原料混合物の粉末を得た。この原料混合物のかさ密度Aを測定した。また、原料混合物に含まれるNi、CrおよびFeの量を測定したところ、いずれも検出されなかった。すなわち、原料混合物には、これらの元素を含む化合物が含まれていない。次いで、直径200mm、長さ200mm、厚さ3mmの表1に示す材質の筒状金属容器から成るバッチ式ロータリーキルンに、得られた混合物を全て投入し、筒状金属容器内に空気を10L/minでフローしながら、回転速度1rpmにて、外部加熱により原料混合物を550℃にて2時間の第一焼成工程の焼成を大気雰囲気中にて行なった。焼成物に含まれるNi、CrおよびFeの不純物量を測定した。また焼成物のかさ密度Bを測定し、さらに第一焼成工程前後におけるかさ密度比B/Aを算出したところ、1.55であった。
続けて、この第一焼成工程から得られた焼成物をアルミナ容器中に納め、電気炉を用いて静置状態にて1010℃にて14時間の第二焼成工程の焼成を大気雰囲気中にて行なった。その後、解砕および分級して、平均粒径(D50)が12μmであり、Li1.015Co0.985の組成を有する粉末状のリチウム含有複合酸化物を得た。得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量は0.20モル%であった。
〔実施例2〕
第一焼成工程の焼成温度を600℃にした以外は実施例1と同様にして、リチウム含有複合酸化物を得た。第一焼成工程で得られた焼成物に含まれるNi、CrおよびFeを測定した。また第一焼成工程前後におけるかさ密度比B/Aを算出したところ、1.57であった。得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量は0.21モル%であった。
〔実施例3〕
筒状金属容器に表1に示す組成から成る、三菱スーパーアロイ社製品番MAT21と称するニッケル系合金を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、リチウム含有複合酸化物を得た。第一焼成工程で得られた焼成物に含まれるNi、CrおよびFeを測定した。また第一焼成工程前後におけるかさ密度比B/Aを算出したところ、1.55であった。得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量は0.19モル%であった。
〔実施例4〕
筒状金属容器に表1に示す組成から成る、三菱スーパーアロイ社製品番MA24と称するニッケル系合金を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、リチウム含有複合酸化物を得た。第一焼成工程で得られた焼成物に含まれるNi、CrおよびFeを測定した。また第一焼成工程前後におけるかさ密度比B/Aを算出したところ、1.54であった。得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量は0.21モル%であった。
〔比較例1〕
筒状金属容器に表1に示す組成から成る、JIS規格に準拠する耐食鋼SUS310Sを使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、リチウム含有複合酸化物を得た。第一焼成工程で得られた焼成物に含まれるNi、CrおよびFeを測定した。また第一焼成工程前後におけるかさ密度比B/Aを算出したところ、1.55であった。得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量は0.20モル%であった。
〔比較例2〕
筒状金属容器に表1に示す組成から成る、三菱スーパーアロイ社製品番MA600(インコネル600)を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、リチウム含有複合酸化物を得た。第一焼成工程で得られた焼成物に含まれるNi、CrおよびFeを測定した。また第一焼成工程前後におけるかさ密度比B/Aを算出したところ、1.56であった。得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量は0.22モル%であった。
〔比較例3〕
筒状金属容器に表1に示す組成から成る、三菱スーパーアロイ社製品番MA625(インコネル625)を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、リチウム含有複合酸化物を得た。第一焼成工程で得られた焼成物に含まれるNi、CrおよびFeを測定した。また第一焼成工程前後におけるかさ密度比B/Aを算出したところ、1.55であった。得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量は0.24モル%であった。
〔比較例4〕
筒状金属容器に表1に示す組成から成る、三菱スーパーアロイ社製品番MA−X(ハステロイX)を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、リチウム含有複合酸化物を得た。第一焼成工程で得られた焼成物に含まれるNi、CrおよびFeを測定した。また第一焼成工程前後におけるかさ密度比B/Aを算出したところ、1.56であった。得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量は0.21モル%であった。
実施例1〜4、および比較例1〜4に用いた筒状金属容器の品番と材質を表1にまとめて、第一焼成工程で得られた焼成物のニッケル、クロムおよび鉄の増加量である含有量を表2にまとめた。なお、表2の「N.D.」は、検出限界外であることを意味する。Ni、CrおよびFeの検出限界はいずれも、0.1ppmである。
Figure 2013073633
Figure 2013073633
表1と表2にまとめた結果から、比較例1〜4に比べて、実施例1〜4では、第一焼成工程で得られた焼成物においてはNi、CrおよびFeの含有量が極めて少なく、ニッケルおよび鉄については検出されなかった。特に筒状金属容器に高純度のニッケルを用いた実施例1および2ではNi、CrおよびFeの全ての金属が検出されなかった。すなわち、筒状金属容器として、本発明で規定する材料を用いて、かつ本発明で規定する条件で焼成することで、レトルトの腐食を抑制でき、有害かつ電池性能に悪影響を及ぼす不純物の混入を阻止し、Ni、CrおよびFeなどの環境と電池特性に悪影響を及ぼす不純物を含まない焼成物が得られることがわかる。また、このような焼成物を原料に用いることで、環境に悪影響を及ぼさない優れた電池特性を有するリチウム含有複合酸化物を得ることができる。
〔実施例5〕
平均粒径が12μmであるオキシ水酸化コバルト8622kgと、平均粒径が5μmである炭酸リチウム3378kgとを乾式で混合し、原料混合物を得た。得られた原料混合物は粉末状であり、原料混合物のかさ密度Aを測定した。なお、原料混合物に含まれるNi、CrおよびFeの量を測定したところ、いずれも検出されなかった。この原料混合物を、直径1.4m、長さ15mであり、厚さ10mmの実施例1と同じ材質の円筒金属容器から成る連続式ロータリーキルンに400kg/hrにて投入し、円筒金属容器内に空気を3.0m/minでフローしながら、回転速度0.7rpmにて、外部加熱により、原料混合物を焼成温度550℃にて、その焼成温度域の滞在時間を2時間として第一焼成工程での焼成を大気雰囲気下にて施し焼成物を得た。該焼成物は粉末状であり、そのかさ密度Bを測定し、さらに第一焼成工程前後におけるかさ密度比B/Aを算出した。また、第一焼成工程で得られた焼成物のNi、CrおよびFeの含有量を測定したが、いずれの元素も検出されなかった。
続けて、第一焼成工程から得られた焼成物を縦横300×300mm、容器深さ70mmのセラミック製角型容器に充填し、焼成物を静置状態に保ちながら、ローラーハースキルンを用いて、大気雰囲気下、焼成温度1010℃にて14時間、保持することにより、第二焼成工程を施した。第二焼成工程で得られたリチウム含有複合酸化物を解砕および分級して、平均粒径が13μmであるLi1.015Co0.985の組成を有する粉末状のリチウム含有複合酸化物を得た。得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量は0.19モル%であった。
〔実施例6〕
第一焼成工程の焼成温度を550℃として、その焼成温度域の滞在時間を3.0時間としたこと以外は、実施例5と同様にしてリチウム含有複合酸化物を製造した。また該複合酸化物を製造するプロセスにおいて、原料混合物のかさ密度A、焼成物のかさ密度B、かさ密度比B/Aおよびリチウム含有複合酸化物のアルカリ量を測定した。また、第一焼成工程で得られた焼成物のNi、CrおよびFeの含有量を測定したが、いずれの元素も検出されなかった。
〔実施例7〕
第一焼成工程の焼成温度を580℃とした以外は、実施例5と同様にしてリチウム含有複合酸化物を製造した。また該複合酸化物を製造するプロセスにおいて、原料混合物のかさ密度A、焼成物のかさ密度B、かさ密度比B/Aおよびリチウム含有複合酸化物のアルカリ量を測定して算出した。また、第一焼成工程で得られた焼成物のNi、CrおよびFeの含有量を測定したが、いずれの元素も検出されなかった。
〔実施例8〕
第一焼成工程の焼成温度を530℃とした以外は、実施例5と同様にしてリチウム含有複合酸化物を製造した。また該複合酸化物を製造するプロセスにおいて、原料混合物のかさ密度A、焼成物のかさ密度B、かさ密度比B/Aおよびリチウム含有複合酸化物のアルカリ量を測定した。また、第一焼成工程で得られた焼成物のNi、CrおよびFeの含有量を測定したが、いずれの元素も検出されなかった。
〔実施例9〕
第一焼成工程の焼成温度を500℃として、その焼成温度域の滞在時間を3.0時間とした以外は、実施例5と同様にしてリチウム含有複合酸化物を製造した。また該複合酸化物を製造するプロセスにおいて、原料混合物のかさ密度A、焼成物のかさ密度B、かさ密度比B/Aおよびリチウム含有複合酸化物のアルカリ量を測定した。また、第一焼成工程で得られた焼成物のNi、CrおよびFeの含有量を測定したが、いずれの元素も検出されなかった。
〔実施例10〕
第一焼成工程の焼成温度を600℃とした以外は、実施例5と同様にしてリチウム含有複合酸化物を製造した。また該複合酸化物を製造するプロセスにおいて、原料混合物のかさ密度A、焼成物のかさ密度B、かさ密度比B/Aおよびリチウム含有複合酸化物のアルカリ量を測定した。また、第一焼成工程で得られた焼成物のNi、CrおよびFeの含有量を測定したが、いずれの元素も検出されなかった。
〔比較例5〕
第一焼成工程の焼成温度を400℃として、その焼成温度域の滞在時間を3.0時間とした以外は、実施例5と同様にしてリチウム含有複合酸化物を製造した。また該複合酸化物を製造するプロセスにおいて、原料混合物のかさ密度A、焼成物のかさ密度B、かさ密度比B/Aおよびリチウム含有複合酸化物のアルカリ量を測定した。また、第一焼成工程で得られた焼成物のNi、CrおよびFeの含有量を測定したが、いずれの元素も検出されなかった。
〔実施例11〕
平均粒径が10μmである複合水酸化物Ni0.5Co0.2Mn0.3(OH)8510kgと、平均粒径が5μmである炭酸リチウム3490kgとを乾式混合し、原料混合物の粉末を得た。得られた原料混合粉の粉末のかさ密度Aを測定した。その結果を表2に示す。この原料混合物のNi、CrおよびFeの含有量を測定した。次いで、この原料混合物を、直径1.4m、長さ15m、厚さ10mmの実施例1と同じ材質の円筒金属容器から成る連続式ロータリーキルンに400kg/hrにて投入し、円筒金属容器内に空気を3.0m/minでフローしながら、回転速度0.7rpmにて、外部加熱により、原料混合物を焼成温度580℃にて、その焼成温度域の滞在時間を3時間として第一焼成工程での焼成を大気雰囲気下にて行なった。第一焼成工程で得られた焼成物は粉末であり、そのかさ密度Bを測定した。また、かさ密度比B/Aを算出した。焼成物のNi、CrおよびFeの含有量を測定して、先に測定した原料混合物に予め含まれていたNi、CrおよびFeの量を差し引いて、第一焼成工程における焼成物へのNi、CrおよびFeの混入量をそれぞれ算出した。その結果、第一焼成工程における焼成物へのNi、CrおよびFeの混入量は、いずれも0ppmであった。
続けて、第一焼成工程から得られた焼成物を縦横300×300mm、容器深さ70mmのセラミック製角型容器に充填し、焼成物を静置状態に保ちながら、ローラーハースキルンを用いて、大気雰囲気下、焼成温度940℃にて5時間保持することにより、第二焼成工程を行なった。第二焼成工程で得られたリチウム含有複合酸化物を解砕かつ分級して、平均粒径が11μmであるLi1.015(Ni0.5Co0.2Mn0.30.985の組成を有する粉末状のリチウム含有複合酸化物を得た。また得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量を測定した。
〔比較例6〕
第一焼成工程の焼成温度を350℃として、その焼成温度域の滞在時間を3.5時間とした以外は、実施例11と同様にして、リチウム含有複合酸化物を製造した。また該複合酸化物を製造するプロセスにおいて、原料混合物のかさ密度A、焼成物のかさ密度B、かさ密度比B/Aおよびリチウム含有複合酸化物のアルカリ量を測定した。焼成物のNi、CrおよびFeの含有量を測定して、先に測定した原料混合物に予め含まれていたNi、CrおよびFeの量を差し引いて、第一焼成工程における焼成物へのNi、CrおよびFeの混入量をそれぞれ算出した。その結果、第一焼成工程における焼成物へのNi、CrおよびFeの混入量は、いずれも0ppmであった。
〔実施例12〕
平均粒径が15μmである複合オキシ水酸化物Ni1/3Co1/3Mn1/3OOH8450kgと、平均粒径が3μmである炭酸リチウム3550kgとを乾式混合し、原料混合物の粉末を得た。得られた原料混合物のかさ密度Aを測定した。この原料混合物を、直径1.4m、長さ15m、厚さ10mmの実施例1と同じ材質の円筒金属容器から成る連続式ロータリーキルンに400kg/hrにて投入し、容器内に空気を3.0m/minでフローしながら、回転速度0.7rpmにて、外部加熱により、原料混合物を焼成温度580℃にて、その焼成温度域の滞在時間を3時間として第一焼成工程での焼成を大気雰囲気下にて行なった。第一焼成工程で得られた焼成物は粉末であり、そのかさ密度Bを測定した。また、かさ密度比B/Aを算出した。焼成物のNi、CrおよびFeの含有量を測定して、先に測定した原料混合物に予め含まれていたNi、CrおよびFeの量を差し引いて、第一焼成工程における焼成物へのNi、CrおよびFeの混入量をそれぞれ算出した。その結果、第一焼成工程における焼成物へのNi、CrおよびFeの混入量は、いずれも0ppmであった。
続けて、第一焼成工程から得られた焼成物を縦横300×300mm、容器深さ70mmのセラミック製角型容器に充填し、焼成物を静置状態に保ちながら、ローラーハースキルンを用いて、大気雰囲気下、焼成温度1000℃にて10時間保持することにより、第二焼成工程を行なった。第二焼成工程で得られたリチウム含有複合酸化物を解砕かつ分級して、平均粒径が16μmであるLi1.015(Ni1/3Co1/3Mn1/30.985の組成を有する粉末状のリチウム含有複合酸化物を得た。得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量を測定した。
実施例5乃至12、比較例5および6において測定した原料混合物のかさ密度A、第一焼成工程の焼成物のかさ密度B、かさ密度比B/Aおよびリチウム含有複合酸化物のアルカリ量などを表3にまとめた。
Figure 2013073633
〔実施例13〕
水酸化マグネシウム6.1kgと、クエン酸29.1kgを水81.1kgに溶かした溶液に、アルミニウム含量4.47質量%の塩基性乳酸アルミニウム水溶液62.8kgと、ジルコニウム含量14.07質量%の炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液3.4kgとを添加して、水溶液を調製した。
次に、平均粒径が12μmであるオキシ水酸化コバルト1000kgをレーディゲミキサーに投入し、装置内にて230rpmで攪拌し、前記の水溶液をスプレーノズルで噴霧しながら、100℃で混合乾燥することにより、Co0.9795Al0.01Mg0.01Zr0.0005の組成比の乾燥粉を得た。
前記工程を繰り返して得た乾燥粉8600kgと平均粒径が4μmである炭酸リチウム3400kgとを乾式で混合し、原料混合物を得た。なお、原料混合物に含まれるNi、CrおよびFeの量を測定したところ、いずれも検出されなかった。この原料混合物を、直径1.4m、長さ15m、厚さ10mmであり、実施例1と同じ材質の円筒金属容器から成る連続式ロータリーキルンに400kg/hrにて投入し、容器内に空気を3.0m/minでフローしながら、回転速度0.7rpmにて、外部加熱により原料混合物を焼成温度550℃にて、その焼成温度域の滞在時間を2時間として第一焼成工程での焼成を大気雰囲気下にて行ない、焼成物を得た。また、第一焼成工程で得られた焼成物のNi、CrおよびFeの含有量を測定したが、いずれの元素も検出されなかった。また第一焼成工程前後におけるかさ密度比B/Aを算出したところ、1.54であった。
続けて、第一焼成工程から得られた焼成物を縦横300×300mm、容器深さ70mmのセラミック製角型容器に充填し、焼成物を静置状態に保ちながら、ローラーハースキルンを用いて、大気雰囲気下、焼成温度1010℃にて14時間、保持することにより、第二焼成工程を行なった。第二焼成工程で得られたリチウム含有複合酸化物を解砕かつ分級して、平均粒径13μmのLi1.015(Co0.9795Al0.01Mg0.01Zr0.00050.985の組成を有する粉末状のリチウム含有複合酸化物を得た。得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量は0.19モル%であった。
〔実施例14〕
平均粒径が13μmである水酸化コバルト10000kgと平均粒径が5μmである炭酸リチウム3790kgと、水酸化アルミニウム粉末7.99kgと、水酸化マグネシウム粉末6.00kgと、酸化チタン粉末4.43kgとを乾式混合し、原料混合物を得た。なお、原料混合物に含まれるNi、CrおよびFeの量を測定したところ、いずれも検出されなかった。この原料混合物を、直径1.4m、長さ15m、厚さ10mmであり、実施例1と同じ材質の円筒金属容器から成る連続式ロータリーキルンに400kg/hrにて投入し、容器内に空気を3.0m/minでフローしながら、回転速度0.7rpmにて、外部加熱により原料混合物を焼成温度550℃にて、その焼成温度域の滞在時間を2時間として第一焼成工程での焼成を大気雰囲気下にて行ない、焼成物を得た。また、第一焼成工程で得られた焼成物のNi、CrおよびFeの含有量を測定したが、いずれの元素も検出されなかった。また第一焼成工程前後におけるかさ密度比B/Aを算出したところ、1.67であった。
続けて、第一焼成工程から得られた焼成物を縦横300×300mm、容器深さ70mmのセラミック製角型容器に充填し、焼成物を静置状態に保ちながら、ローラーハースキルンを用いて、大気雰囲気下、焼成温度950℃にて10時間、保持することにより、第二焼成工程を行なった。第二焼成工程で得られたリチウム含有複合酸化物を解砕かつ分級して、平均粒径13μmのLiCo0.9975Al0.001Mg0.001Ti0.0005の組成を有する粉末状のリチウム含有複合酸化物を得た。得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量は0.12モル%であった。
〔実施例15〕
平均粒径が13μmである水酸化コバルト10000kgと平均粒径が5μmである炭酸リチウム3787kgと、水酸化アルミニウム粉末25.20kgと、フッ化リチウム粉末5.56kgとを乾式で混合し、原料混合物を得た。なお、原料混合物に含まれるNi、CrおよびFeの量を測定したところ、いずれも検出されなかった。この原料混合物を、直径1.4m、長さ15m、厚さ10mmであり、実施例1と同じ材質の円筒金属容器から成る連続式ロータリーキルンに400kg/hrにて投入し、容器内に空気を3.0m/minでフローしながら、回転速度0.7rpmにて、外部加熱により原料混合物を焼成温度550℃にて、その焼成温度域の滞在時間を2時間として第一焼成工程での焼成を大気雰囲気下にて行ない、焼成物を得た。また、第一焼成工程で得られた焼成物のNi、CrおよびFeの含有量を測定したが、いずれの元素も検出されなかった。また第一焼成工程前後におけるかさ密度比B/Aを算出したところ、1.68であった。
続けて、第一焼成工程から得られた焼成物を縦横300×300mm、容器深さ70mmのセラミック製角型容器に充填し、焼成物を静置状態に保ちながら、ローラーハースキルンを用いて、大気雰囲気下、焼成温度950℃にて10時間、保持することにより、第二焼成工程を行なった。第二焼成工程で得られたリチウム含有複合酸化物を解砕かつ分級して、平均粒径が13μmであるLiCo0.997Al0.0031.9980.002の組成を有する粉末状のリチウム含有複合酸化物を得た。得られたリチウム含有複合酸化物のアルカリ量は0.08モル%であった。
〔実施例16〕
実施例13で得られたリチウム含有複合酸化物の粉末と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデン粉末とを80/12/8の質量比で混合し、N−メチルピロリドンを添加してスラリーを作製し、厚さ20μmのアルミニウム箔にドクターブレードを用いて片面塗工した。これを乾燥し、ロールプレス圧延することによりリチウム電池用の正極シートを作製した。
上記正極シートを打ち抜いたものを正極に用い、厚さ500μmの金属リチウム箔を負極に用い、負極集電体にはSUS板を使用し、セパレータには厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンを用い、さらに電解液には1MのLiPF/EC(エチレンカーボネート)+DEC(ジエチルカーボネート)(容量比1:1)を用いて、ステンレス製簡易密閉セル型リチウム電池をアルゴングローブボックス内で2個組み立てた。
この電池について、正極活物質1gにつき180mAの負荷電流で4.5Vまで充電し、正極活物質1gにつき、75mAの負荷電流にて2.75Vまで放電して初期容量を求めた。また、この電池について、引き続き充放電サイクル試験を50回行った。その結果、初期の容量は179mAh/g、充放電効率は90.7%、放電平均電圧は4.02Vであり、50回充放電後の放電容量維持率は35.3%、放電平均電圧は3.10Vであった。
〔実施例17〕
実施例11で得られたリチウム含有複合酸化物の電池評価をするにあたり、充電条件を正極活物質1gにつき180mAの負荷電流で4.3Vまで充電したことと、放電条件を正極活物質1gにつき、1、2、5、6、9、10、13、14、17、18、21、22、25、26、29、30、39、40、49および50サイクル目は37.5mAの負荷電流で放電して、3、7、11、15、19、23、27、31〜38および41〜48サイクル目は225mAの負荷電流で放電して、4、8、12、16、20、24および28サイクル目は450mAの負荷電流で放電したこと以外は実施例16に記載の方法と同様にして、電池評価をした。その結果、初期の容量は166mAh/g、初期の充放電効率は87.3%であり、50回充放電後の放電容量維持率は92%であった。
〔実施例18〕
実施例12で得られたリチウム含有複合酸化物について、実施例17と同様にして電池評価をした結果、初期の容量は156mAh/g、初期の充放電効率は86.5%であり、50回充放電後の放電容量維持率は94%であった。
〔比較例7〕
比較例6で得られたリチウム含有複合酸化物について、実施例17と同様にして電池評価をした結果、初期の容量は161mAh/g、初期の充放電効率は86.5%であり、50回充放電後の放電容量維持率は87%であった。
本発明によれば、有害で、かつ電池性能に悪影響を及ぼす不純物が極めて少なく、優れた電池性能を有するリチウム含有複合酸化物を効率良く量産でき、リチウムイオン二次電池用の正極材料の製造方法として非常に有用である。
なお、2011年11月16日に出願された日本特許出願2011−250974号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (11)

  1. リチウム化合物と遷移金属化合物とを含む原料混合物の粉末を、外部から加熱された回転する筒状金属容器内で転動させながら焼成して焼成物を得る第一焼成工程と、得られた焼成物を第一焼成工程より高い焼成温度で焼成する第二焼成工程とを有するリチウム含有複合酸化物の製造方法において、前記筒状金属容器内部の原料混合物との接粉部が、99質量%以上のニッケルを含む純ニッケル、または15〜25質量%のクロムと15〜25質量%のモリブデンもしくは3〜6質量%のアルミニウムとを含み残部がニッケルであるニッケル合金からなり、かつ第一焼成工程の焼成温度が450〜630℃であり、第二焼成工程の焼成温度が700〜1100℃であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用リチウム含有複合酸化物の製造方法。
  2. 遷移金属化合物が、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、またはそれらの混合物である請求項1に記載の製造方法。
  3. 遷移金属化合物が、5〜25μmの平均粒径を有し、かつリチウム化合物が20μm以下の平均粒径を有する請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 原料混合物のかさ密度Aに対する、第一焼成工程で得られる焼成物のかさ密度Bの比率(かさ密度比B/A)が1.4以上である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 第一焼成工程の焼成温度が500〜600℃である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 第二焼成工程の焼成温度が800〜1100℃である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 第二焼成工程では、第一焼成工程で得られた焼成物を焼成容器内に充填し、静止状態にて焼成する請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 第二焼成工程の焼成後に得られる焼成物に含まれるニッケル、クロムおよび鉄の増加量が、原料混合物中のそれぞれに対して、20ppm以下、25ppm以下および10ppm以下である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 第一焼成工程の焼成が、ロータリーキルンで行なわれる請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 第二焼成工程の焼成が、シャトルキルン、ローラーハースキルン、またはプッシャーキルンで行なわれる請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
  11. 請求項1に記載の製造方法に用いる焼成装置であって、筒状金属容器内部の原料混合物との接粉部が99質量%以上のニッケルを含む純ニッケル、または15〜25質量%のクロムと15〜25質量%のモリブデンもしくは3〜6質量%のアルミニウムとを含み残部がニッケルであるニッケル合金からなることを特徴とする焼成装置。
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