JPWO2013073404A1 - 米タンパク質組成物とその製造方法 - Google Patents

米タンパク質組成物とその製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明の目的は、舌触り及び口解けが改善された高純度の米タンパク質組成物及びその製造方法の提供である。
米タンパク質組成物は、グルテリンとプロラミンとを含み、かつ固形分に対するタンパク質含有量が90%以上である。米または米粉からアルカリ水溶液により抽出される米タンパク質を40℃以上かつ80℃以下の温度で中和凝集させるか、または二価金属イオンを添加して凝集させてその後中和するか、グルコノデルタラクトンを加えて加熱してタンパク質をゲル化させる際に、米タンパク質組成物のpHが7.0以上または4.0以下とすることにより、分散性と舌触りが極めて良好な米タンパク質組成物を得ることができる。さらにpHを調整した後に80℃以上に加熱することで、より吸水性の高い組成物とすることができる。

Description

本発明は、高純度で分散性や舌触りに優れた米タンパク質組成物、及び該米タンパク質組成物の製造方法に関する。
従来、米タンパク質はコレステロール低下作用や脂質代謝改善作用を有し、機能性食品の素材として注目されている。かかる米タンパク質は、米又は米粉をアルカリ性溶液に浸漬することにより抽出され、抽出液を中和して凝集する沈殿として回収できることが開示され(特許文献1)、この方法で得られる米タンパク質組成物が栄養価に優れ、消化及び吸収に優れることも開示されている(非特許文献1及び非特許文献2)。
米タンパク質を含有するアルカリの抽出液について、特許文献1の他に、非特許文献3には、米澱粉を製造する際の廃液が開示されている。具体的に、精白米を水酸化ナトリウム液に2〜3日浸漬して米粒中のタンパク質の約50%を溶出除去すること、このアルカリ処理による廃液や他の廃棄物を混合した後にpH処理し、脱水して飼料を調製する旨が開示されている。この方法は、米澱粉を回収する際の廃棄物である米タンパク質を除去する目的で行われているが、その操作自体について米タンパク質を回収するプロセスと類似である。
特開2006−273840号公報
Kumagaiら、J Nutr Sci Vitaminol 第52巻、467−472頁(2006) Kumagaiら、J Nutr Sci Vitaminol 第55巻、170−177頁(2009) 斎藤昭三、コメ澱粉、二國二郎監修「澱粉科学ハンドブック」、385〜395頁、朝倉書店(1977)
しかし、従来の方法で得られる米タンパク質組成物は、構成粒子が硬く微粉砕が困難であり、ザラザラとした食感で舌触りや口解けが悪い。このため、従来の米タンパク質組成物は、利用できる食品が限定されるという問題を有していた。
また、工業的に米タンパク質を回収する際には、原料米中に多量に含まれる米澱粉も高品質の状態で回収することが経済性の観点から特に重要であり、米澱粉を製造するプロセスの副生物として発生する米タンパク質を高品質の状態で回収するための手法が求められることは言うまでもない。
既に本発明者らは、米タンパク質の凝集体を生成する際の温度を調節することで、得られるタンパク質組成物が優れた舌触り及び口解けを呈すること(特願2010−156467)、また米タンパク質含有抽出液に二価金属イオンを導入すると米タンパク質が凝集体を生成し、この凝集体を回収して得られるタンパク質組成物が優れた舌触り及び口解けを呈すること(特願2010−156466)を見出し、特許出願している。しかし、米タンパク質組成物の舌触りや口解けのさらなる改良が求められる。
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、舌触り及び口解けが改善された米タンパク質組成物とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは米澱粉の製造プロセスとそれより派生する米タンパク質の性状や物性等について鋭意検討した結果、米胚乳の主要タンパク質成分であるグルテリンとプロラミンを米胚乳中における存在比率と同等の組成比で含有し、固形分に対するタンパク質含有量が所定値以上である米タンパク質を一定の条件でゲル化させることにより得られる組成物が保水力に優れ、かつ舌触りや口解けに極めて優れることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
(1) グルテリンとプロラミンとを含み、固形分に対するタンパク質含量が90%以上で、かつ重量の6倍以上の水をゲル状の形態を保ったまま保持することができる米タンパク質組成物。
(2) グルテリンとプロラミンとを含み、かつ水に溶解または懸濁したときの液のpHが7.0以上または4.0以下である米タンパク質組成物。
(3) 米タンパク質を含有する溶液を中和することにより、もしくは前記溶液に二価金属イオンを添加することによりタンパク質の凝集体を生成し、前記凝集体を80℃以上に加熱してゲル化させ、回収する工程を含む米タンパク質組成物の製造方法。
(4) 米タンパク質を含有する溶液のpHが11.3以上である(3)記載の米タンパク質組成物の製造方法。
(5) 前記凝集体の生成を、40℃以上80℃以下の温度で行う(3)記載の米タンパク質組成物の製造方法。
(6) 前記加熱時の前記溶液のpHを7.0以上または4.0以下にする(3)から(5)いずれか記載の米タンパク質組成物の製造方法。
(7) 米タンパク質を含有する溶液を目開き75μm以下の篩を通過させる工程を含む(3)から(6)いずれか記載の米タンパク質組成物の製造方法。
(8) 米タンパク質を含有するアルカリ抽出液を精密濾過膜または限外濾過膜を用いて膜濾過することにより米タンパク質を濃縮及び脱塩する工程を含む(3)から(7)いずれか記載の米タンパク質組成物の製造方法。
(9) 米タンパク質を含有する溶液をpH7.0以上または4.0以下に調整した後、そのまま乾燥させる、もしくは生じた沈殿を回収して乾燥させる工程を含む米タンパク質組成物の製造方法。
(10) 米タンパク質を含有する溶液にグルコノデルタラクトンを、ゲルの最終pHが7.0以上または4.0以下になる量で添加し、その後80℃以上に加熱することによりタンパク質をゲル化させる工程を含む米タンパク質組成物の製造方法。
本発明によれば、硬い凝集体の形成が抑制され、かつ高純度の米タンパク質組成物が得られ、該組成物は優れた舌触りや口解けを呈する。
標品A及び標品Rにおけるグルテリン及びプロラミンの存在を示す写真である。 米タンパク質標品の遊離SH基の挙動に対する中和温度やその後の加熱による影響を示す写真である。 米タンパク質分子の凝集メカニズムとして提唱される分子モデルを示す図である。
以下、本発明の一実施形態を説明するが、これが本発明を限定するものではない。
先ず、近年における米澱粉の製造方法につき概説する。米澱粉の原料としては、ジャポニカ種である短粒米、インディカ種である長粒米等であってよい。通常は搗精度90%前後の精白米が用いられる。精白米表面の夾雑物や糠成分を除去するために洗米される。洗米が終了した米に、アルカリ溶液、例えば0.1〜1.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液を米の1〜5倍量添加し、半日〜2日間にわたり浸漬して米の組織を軟化させ、これを磨砕する。磨砕は、浸漬米のみを取り出して乾式で行ってもよく、浸漬米と浸漬水を同時に、または新たに水酸化ナトリウム水溶液や水道水を添加しながら、湿式で行われてもよい。磨砕により米澱粉が単粒に解離し、米タンパク質がアルカリ溶液に溶解または分散・浮遊してくる。上記の工程により得られる乳液には澱粉の粗粒や磨砕残渣、不溶性繊維質等が含まれているため、それらは150メッシュの篩で濾別される。濾別を終えた澱粉乳液をノズルセパレーター等の連続式遠心分離機で濃縮・洗浄し、脱水、乾燥、篩分けを経て米澱粉が製造される。
米タンパク質は、上記工程の初期に得られる浸漬液と、米のアルカリ磨砕乳液の遠心分離上清、例えばノズルセパレーターの軽液(以下合わせて「米タンパク質アルカリ抽出液」と称する)とに多量に含有される。通常、これらの米タンパク質を含有する液は廃水として処理され、中和、脱水、乾燥の工程を経た乾燥物は飼料として利用される。上記乾燥物は、粒子が粗くかつ硬いために微粉砕され難く、かつ吸水性や水への分散性に乏しいことから、人が摂取する食品として利用することはこれまで困難であった。
米タンパク質は、主に米胚乳中でタンパク質顆粒(プロテインボディー)として存在しており、アルカリ抽出により、一部は溶液中に溶解し、残部は膨潤したプロテインボディーの形態を保持したまま液中に浮遊するものと考えられる。また、米タンパク質アルカリ抽出液には多量の繊維質が混在しており、その中には、アルカリ液には可溶でかつ中性〜弱酸性液には不溶の繊維質が存在すると考えられる。このような性質を有する繊維質は、米タンパク質を中和凝集させる際に、米タンパク質の凝集体、またはプロテインボディー同士が架橋した巨大な凝集体を形成することが予想される。実際、米または米粉を予め、繊維質分解酵素であるセルラーゼ、ヘミセルラーゼやペクチナーゼを含む酵素剤で前処理した後に、タンパク質をアルカリで抽出し、抽出物を中和することにより回収される米タンパク質組成物は、酵素剤処理を行わない場合と比較して分散性が極めて向上していることが確認され、前記仮説の正当性が確認された。
繊維質の含有量が低い米タンパク質アルカリ抽出液を製造する方法としては、米または米粉に予め酵素剤を作用させて繊維質を分解して除去することの他に、得られた米タンパク質アルカリ抽出液を篩処理して繊維質を濾別することが有効である。本発明では、繊維質を効率良く除去するには、JIS試験篩において、200メッシュ以上(目開き75μm以下)の篩で処理することが必要であるが、好ましくは280メッシュ以上(目開き53μm以下)の篩で処理する。さらに細かい目開きの篩や濾布を用いることも可能であり、これにより、繊維質の除去について同等以上の効果が期待される。しかし、目開きが小さくなればなるほど濾別の処理速度が低下するため、工業的な操作では300メッシュ以下(目開き50μm以上)の篩で処理することが望ましい。尚、米タンパク質アルカリ抽出液は、米のアルカリ磨砕乳液をノズルセパレーター等の遠心分離による軽液として回収されることから、そこに若干量の澱粉粒が混在している場合がある。澱粉粒の混在は、得られる米タンパク質組成物のタンパク質純度を著しく低下させることから、米タンパク質アルカリ抽出液を再度遠心分離等により処理し、混在する澱粉を極力除去しておくことが望ましい。繊維質を濾別することにより、回収される米タンパク質の純度が飛躍的に向上し、固形分量に対して90%以上のタンパク質含有量を有する米タンパク質組成物を得ることが可能となり、アルカリ成分、塩類他の低分子成分の除去を適宜行うことにより、固形分量に対するタンパク質の含有量を95%以上とすることもできる。
澱粉の除去には遠心分離等による物理的な方法の他に、アミラーゼを用いた酵素的な方法も採用することができる。多くのアミラーゼは中性〜弱酸性において活性を有していることから、米タンパク質のアルカリ抽出液に作用させることは難しい。そこで後述の工程、すなわち米タンパク質溶液を中和し、米タンパク質を凝集させた後にアミラーゼ反応を行うことが重要である。
繊維質を濾別した米タンパク質アルカリ抽出液からアルカリ成分や単糖、オリゴ糖、アミノ酸やペプチド等の低分子成分を除去する方法として、米タンパク質アルカリ抽出液を中和することにより米タンパク質を凝集させて沈殿として回収し、この沈殿をさらに洗浄して残存する低分子成分を除去することが用いられる。中和後のpHを5.0〜6.0とした場合に米タンパク質の回収率が最も高くなるが、米タンパク質分子は他の植物性タンパク質と同様、塩の存在下でタンパク質分子間の相互作用が変化し、より硬く締まった凝集体を形成すると考えられる。それ故、塩を多量に含有する中和液から遠心分離により回収される米タンパク質の沈殿は、タンパク質同士が強固に絡み合った状態で圧着・脱水されることになり、得られる米タンパク質組成物が分散し難い硬い凝集物となる原因と考えられる。一方、低分子成分の除去に精密濾過膜や限外濾過膜を利用すると、タンパク質分子は緩く凝集したまま水中に浮遊した状態で存在し、膜濾過により低分子成分が除去されることから、最終的に得られるタンパク質の凝集度が低く、分散性が良く舌触りや口解けに優れた組成物を調製することが可能である。
米タンパク質アルカリ抽出液のpHは、抽出に用いるアルカリの濃度によって左右されるが、通常は11〜13の範囲であり、そのpHのまま精密濾過や限外濾過を行うと、濾過膜の材質によっては耐久性が不十分である場合がある。また、pHが11以上では、タンパク質同士の凝集度が低く、膜の種類によっては、溶解したタンパク質が濾過膜を通過してタンパク質回収率の低下をきたす場合がある。また、pHが9以下では、タンパク質同士の凝集により中空糸膜やスパイラル膜の内部を閉塞させる恐れがあることから好ましくない。それ故、膜濾過を行うに当たり米タンパク質抽出液のpHを9〜11、好ましくは9.5〜10.5に調整しておくことが望ましい。膜濾過に利用可能な膜としては、孔径0.05〜0.45μmの精密濾過膜や分画分子量5,000〜50万の限外濾過膜が適する。上記条件を満足する濾過膜であればその材質は特に問わないが、耐久性やタンパク質の膜表面への付着性を考慮するとポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の精密濾過膜や、ポリアクリロニトリル(PAN)またはポリエーテルサルホン(PES)製の限外濾過膜が好ましい。これらの濾過膜を用いて米タンパク質アルカリ抽出液を処理することにより、低分子成分の除去と米タンパク質の濃縮が達成される。必要に応じ、適宜水を加えて濾過を続行することにより、低分子成分の除去をより完全に行うこともできる。工業的に膜濾過を行う場合には、濾過膜面の目詰まりが回避できる中空糸膜、スパイラル膜やチューブラー膜等を用いたクロスフロー方式の濾過を行うことが重要である。膜濾過処理中の米タンパク質溶液のpHは9〜10の範囲であることが適切である。アルカリ成分の除去に伴い溶液のpHは徐々に低下する。pH9以下になるまで濾過を行うとタンパク質の凝集により膜の閉塞をきたす恐れがあることから、タンパク質溶液のpHが9以下となる前に膜濾過の操作を終了させることが重要である。尚、米タンパク質はアルカリ溶液中において30℃を境に構造が変化し濾過膜表面に強固に付着することがあるため、膜濾過の操作は30℃以下、より好ましくは25℃以下の温度で行うことが望ましい。
膜濾過が終了したタンパク質の濃縮・脱塩液(以下「米タンパク質濃縮液」とする)からタンパク質を回収する方法としては、米タンパク質濃縮液にそのまま噴霧乾燥、ドラム乾燥、気流乾燥、凍結乾燥等を行うことができるが、蒸発させる水分量を削減するために米タンパク質濃縮液のpHを中性〜弱酸性に調整した後にタンパク質凝集物を遠心分離等により回収し、乾燥させることもできる。その場合、タンパク質の沈殿に含まれる塩類が僅かであることから、タンパク質分子同士の絡まり度合いはある程度低くなるものの、pHを5〜6の範囲に調整して得られる米タンパク質沈殿は強固な凝集体となる。このため、沈殿を回収する際のpHは7.0以上または4.0以下であることが好ましい。また、米タンパク質濃縮液を、そのpHを7.0以上または4.0以下に調整して、そのまま噴霧乾燥やドラム乾燥等により乾燥させてもよい。
一方、米タンパク質アルカリ抽出液からそのまま米タンパク質を回収することも可能である。米タンパク質アルカリ抽出液、好ましくは200メッシュ以上の篩で繊維質を除去した抽出液を中和して凝集体を生成させる場合や、二価金属イオンを添加して凝集体を生成させる場合でも、その後のpHを7.0以上または4.0以下に調整した場合には舌触りの良い食感に優れた米タンパク質が得られる。さらに米タンパク質の凝集体を生成させる温度も重要であり、40℃以上80℃以下の温度であることが好ましい。これにより米タンパク質は非常に大きな軟らかい凝集体を形成し、200メッシュ以上の篩や濾紙または濾布を用いた濾過により容易に回収することができる。米タンパク質の凝集体を中和により生成させる場合、25℃以下の温度でpH7.0以上またはpH4.0以下に調整すると、凝集体として回収可能なタンパク質の量が低下するが、40℃以上の温度で中和処理を行うことは、pH7.0以上または4.0以下でも高効率でタンパク質が回収できることも利点である。回収された凝集体を必要に応じて水に再懸濁し、再度篩分離または濾過することにより脱塩することも可能である。かくして得られるペースト状の米タンパク質の凝集体を枠型に納めてしばらく放置することにより木綿豆腐様のゲル状食品を製造することも可能であり、また凝集体を脱水した後に乾燥させて固形状のタンパク質組成物を回収することもできる。
米タンパク質の凝集物をさらに加熱してタンパク質のゲル化をより進めることも可能である。米タンパク質を効率良くゲル化させるためには、米タンパク質を含有する溶液のpHを11.3以上、好ましくは11.5以上とし、これを中和して米タンパク質凝集体を生成させるか、もしくは二価金属イオンを添加して米タンパク質を凝集させた後に所定のpHに調整し、その後に該凝集物を含む懸濁液を80℃以上に加熱することが重要である。このようにして得られるゲル化したタンパク質の凝集物は、最初に凝集物を形成せしめる温度が40℃以下であっても40℃〜80℃の範囲であってもほぼ同等に大きく軟らかい凝集体であり、かつpH7.0以上または4.0以下でも高効率でタンパク質が回収できる点でも有利である。
米の組織中に存在するタンパク質はプロテインボディーを形成し、タンパク質分子が強固に折りたたまれた状態で存在している。これをアルカリで抽出した場合にはタンパク質分子がやや緩んだ状態となり、さらにこれを40℃以上80℃以下に加熱するとタンパク質分子の構造がさらに緩み、折りたたまれたタンパク質分子の内部に存在していた遊離のSH基が分子表面に露出してくるものと考えられる。構造が緩くなったタンパク質分子は中和することにより再度折りたたまれる。米タンパク質の等電点に近いpH5〜6の範囲では米タンパク質分子は再度強固に折りたたまれ、密なる状態で凝集する。これを80℃以上に加熱すると一部は構造が緩んだ状態でSS結合によるネットワークを形成する。このとき、pH7.0以上または4.0以下ではタンパク質分子がより緩んだ状態でSS結合が形成され、高い空隙率を保ったままでネットワークが形成される。このため、タンパク質凝集物のpHを7.0以上または4.0以下に調整した後に、80℃以上に加熱してゲル化させることが好ましい。尚、このような加熱処理によりゲル化させた米タンパク質標品は高い保水力を示す。尚、加熱処理はタンパク質を中和凝集させた直後に行うことが望ましく、米タンパク質の凝集体を含む溶液をpH4〜7の範囲に長時間放置した場合や、米タンパク質凝集体を一旦乾燥させた後に水に懸濁して加熱しても、ゲル化による保水力の上昇は十分に起こらない。逆にタンパク質の熱変性による食感の低下をきたす点で、不利である。
このような分子構造変化のモデルを裏付ける試験として、米タンパク質のアルカリ抽出液を25℃で中和した場合、50℃で中和した場合と、50℃加熱後に25℃に冷却して中和した場合に得られたタンパク質組成物を、遊離のSH基に特異的に結合するモノブロモビマンで蛍光標識し、その後SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行うことによりタンパク質分子中の遊離SH機の挙動を調べることができる(図2)。中和を25℃で行った場合(レーン1)や、50℃加熱後に25℃に冷却して中和した場合(レーン3)には比較的多量のSH基が遊離の状態で存在しているのに対し、50℃で中和した場合(レーン2)には遊離SH基の比率が大幅に低下していることがわかる。一方、中和後にこれらを80℃で30分加熱した場合(レーン4〜6)には遊離のSH基がほとんど認められなくなる。このような凝集またはゲル化のメカニズムとして、図3に示す分子モデルが推測される。
空隙率が高いままでネットワークを形成した米タンパク質凝集体やそれを乾燥させた米タンパク質組成物は空隙の部分に多量の水を含有することができ、ゲル状の組成物として一定の形状を保持することが可能である。このような吸水性の高い組成物の分散性や舌触りが吸水性の低い組成物と比較して極めて向上しており、それにより良食感を示すものと推測される。尚、保水力の測定は、乾燥米タンパク質組成物の場合には、乾燥重量既知の米タンパク質組成物に過剰量の水を加えてタンパク質を充分に膨潤させた後に例えば室温(25℃前後、特に25℃)で1,500×gで3分間の遠心分離を行い、沈殿として得られるゲル状組成物の湿重量を測定することにより、またゲル状米タンパク質組成物の場合にも1,500×gで3分間の遠心分離を行って余分な水分を除去した後に沈殿の湿重量とそれを乾燥させた乾燥重量を求め、式1に従って求められる。本発明の一実施形態における米タンパク質組成物は、保水力が6倍以上であり、好ましくは10倍以上である。
保水力=(「湿重量」−「乾燥重量」)/「乾燥重量」・・・・式1
乾燥により得られる米タンパク質組成物を再度水に溶解または懸濁させた場合、液のpHは乾燥前濃縮液のpHにほぼ等しい。このようにして回収される米タンパク質組成物は米の主要タンパク質であるグルテリンやプロラミンを米胚乳中における組成比とほぼ同じ比率で含有する。また、米タンパク質組成物の回収方法、例えば米タンパク質濃縮液のpHや沈殿を回収する工程の有無にかかわらず、グルテリンやプロラミンの組成比は大きくは変動しない。なお、米タンパク質組成物がグルテリン及びプロラミンを含むことは、米タンパク質組成物を常法のSDS−PAGEで分子量分画し、グルテリン(分子量37〜39kDaの酸性サブユニット及び分子量21〜23kDaの塩基性サブユニット)及びプロラミン(分子量10〜16kDa)に対応するバンドの存在により確認される。
乾燥させた米タンパク質は必要に応じて粉砕し、60〜100メッシュの篩を用いて篩分けを行い、粒度の揃った米タンパク質組成物を得る。このようにして得られる米タンパク質組成物は異味・異臭が少なく、吸水性や水への分散性に優れ、舌触りや口解けが極めて良いことから、幅広い分野の食品に添加することが可能である。食品は、例えば、米菓、和菓子、洋菓子、氷菓、調味料、畜肉加工品、魚肉・水産加工品、乳・卵加工品、野菜加工品、果実加工品、穀類加工品であってよい。中でも、優れた舌触り及び口解けの優位性が発揮される点で、和洋菓子や練り製品が好ましい。
膜濾過により脱アルカリ処理を行った米タンパク質濃縮液は、豆腐を製造する際に用いられるグルコノデルタラクトン(GDL)を添加して加熱することにより、豆腐と同様のゲルを形成させることができる。水に溶解したGDLは徐々に加水分解されてグルコン酸となり、溶液のpHを低下させる。形成されるゲルのpHはGDLの添加量により調整することが可能であるが、ゲルのpHが7.0以上または4.0以下の場合には比較的軟らかいゲルが形成され、絹ごし豆腐に似てツルリとした舌触りや口解けに極めて優れた食感を示す。
米タンパク質組成物のタンパク質含量は、住化分析センター社製スミグラフNC−900を用いた酸素循環燃焼・TCDガスクロマトグラフ検出法により求めた窒素含量に、米タンパク質の窒素係数である5.95を乗じることにより求めた。米タンパク質組成物の水分含量は、130℃で2時間乾燥させることによる重量法により求めた。また、米タンパク質組成物がグルテリン及びプロラミンを含むことは、米タンパク質組成物をSDS−PAGEにより分子量分画し、存在を示すバンドの確認により行った。
<実施例1>
コシヒカリ米粉(新潟製粉製)200gを0.2%水酸化ナトリウム水溶液1Lに懸濁し、室温で一夜かけてタンパク質を抽出した。1,500×gで10分間にわたり遠心分離することにより澱粉を除去し、上清をさらに同一条件で遠心分離してその再遠心上清を回収した。再遠心上清(米タンパク質アルカリ抽出液)を2等分し、一方はそのまま、他方は200メッシュ(目開き75μm)の篩で処理した後に、室温環境下(25±2℃)においてそれぞれの溶液を6N塩酸によりpHを6.0に調整した。遠心分離(2,000×g、10分)により沈殿を回収し、これを200mLの蒸留水に懸濁した。懸濁液を同上の条件で遠心分離し、得られた沈殿を凍結乾燥により乾燥させた。篩処理を経ないで調製した米タンパク質組成物(標品A)と比較して、篩処理を経た後に調製した組成物(標品B)は粉砕性や分散性に優れ、かつ舌触りが向上していた。
<実施例2>
実施例1と同様の手法により調製した米タンパク質アルカリ抽出液を280メッシュ(目開き53μm)の篩で処理した。以降、実施例1と同様の手法により米タンパク質組成物(標品C)を回収した。
<実施例3>
コシヒカリ精白米200gを洗米した後に0.2%水酸化ナトリウム水溶液1Lに室温で一夜にわたり浸漬した。浸漬した米は乳鉢で細かく粉砕した後に浸漬液と混合し、2時間スターラーで撹拌して、タンパク質を抽出した。150メッシュ(目開き106μm)の篩により粗砕物を除去した後に、実施例1と同様に遠心分離を2回行い、米タンパク質アルカリ抽出液を得た。この液を2等分し、一方はそのまま、他方は280メッシュの篩処理を行った後に、実施例1と同様に室温で中和し、その後遠心分離、乾燥の処理を行って米タンパク質組成物(前者は標品D、後者は標品E)を得た。
<実施例4>
実施例3と同様の手法により米タンパク質アルカリ抽出液を得た。この液を280メッシュの篩処理し、その液500mLに6N塩酸を加えてpHを10.0に調整した後、旭化成社製ペンシル型モジュールUSP−043(ポリフッ化ビニリデン製精密濾過膜)を用いて液量が100mLになるまで濃縮及び脱塩した。濃縮液に100mLの蒸留水を加えて液量が100mLになるまで濾過を継続し、この操作を4回繰り返した。濃縮液に6N塩酸を加えてpH5.5に調整した後に遠心分離を行い、生じた沈殿を凍結乾燥して米タンパク質組成物を得た(標品F)。
<米タンパク質標品の比較>
標品A〜Fにつき、タンパク質含量、粉砕性、分散性、舌触りを評価した。尚、粉砕性は凍結乾燥品を指先で潰した際の潰れやすさを、分散性は米タンパク質標品1gを10mLの蒸留水に懸濁した際の懸濁液の均一性を、定性的に評価した。舌触りは5名のパネラーによる0〜5(高いほど優れている)の6段階官能評価結果の平均値で示した。尚、これら標品の水分含量は全て約1%であった。また、図1に標品AのSDS−PAGEの結果を示した。また図には示さないが標品B〜Fも標品Aと同様にグルテリン及びプロラミンが含まれていた。
表1に示した通り、米タンパク質アルカリ抽出液を目開きの細かい篩で処理することにより回収された標品B、C、E、Fの固形分に対するタンパク質含有量は高く、また粉砕性や分散性と舌触りが大きく改善されることが解る。また、米粉から抽出される標品Cと比べて、精白米から抽出された標品Eは、固形分に対するタンパク質含有量が若干高く、かつ品質評価結果も僅かではあるが優れていた。精密濾過膜を用いて濃縮及び脱塩を行った標品Fは、標品Eと比べて固形分に対するタンパク質含有量は僅かに低下したものの、分散性や舌触りに優れたものであった。
<実施例5>
コシヒカリ精白米1kgを、0.1%水酸化ナトリウム水溶液5Lに加えて室温で一夜にわたり浸漬した。浸漬した米を浸漬水と共に増幸産業社製スーパーマスコロイダーで磨砕し、磨砕液を2回遠心分離して、米タンパク質アルカリ抽出液を約3L回収した。この液のpHを10.0に調整した後に、280メッシュの篩で処理した。処理液1Lを、旭化成社製ペンシル型モジュールALP−0013(ポリアクリロニトリル製限外濾過膜)で200mLにまで濃縮し、その後、蒸留水200mLを加え、液量が200mLとなるまで濃縮する操作を計5回行った。この液を20mLずつ50mL容の遠心チューブに10等分し、それぞれに6N塩酸を加えて、表2に示したpHとなる様に調整した。2,000×gで10分間の遠心分離を行って上清を廃棄し、沈殿をそのまま凍結乾燥した。得られた沈殿の重量、固形分に対するタンパク質含有量および5名のパネラーによる官能評価を行った。表2に示した通り、中和後のpHが7.0以上の場合および4.0以下の場合に舌触りに関する官能評価点が高く、特に標品G、Hではパネラー全員が5点満点と評価した。なお、図示はしないが、これら標品には、グルテリン及びプロラミンが含まれていた。
<実施例6>
実施例5で得た米タンパク質アルカリ抽出液1Lを280メッシュの篩で処理した。その濾液の内の500mLをpH10.0に調整後、旭化成社製ペンシル型モジュールAHP−0013(ポリアクリロニトリル製限外濾過膜)で液量が100mLとなるまで濃縮した。100mLの蒸留水添加と液量100mLになるまでの濃縮処理を5回繰返し、その後pH7.0に調整して生じた沈殿を遠心分離(2,000×g、10分)で回収した。沈殿を凍結乾燥し、4.4gの米タンパク質組成物(標品Q)を回収した。遠心上清は篩処理した米タンパク質アルカリ抽出液400mLと混合し、全く同様の手段で限外濾過、pH調整、遠心分離、凍結乾燥を行い、4.6gの米タンパク質組成物(標品R)を得た。標品Q、標品Rの固形分に対するタンパク質含有量はそれぞれ95.2%、95.1%であり、水分含量はどちらも約1%であった。また、図1に一例として標品RのSDS−PAGEの結果を示すが、標品Q、標品Rともに標品Aと同様のSDS−PAGEパターンを示し、これら標品にグルテリン及びプロラミンがほぼ同一の組成比で含まれていた。これらについて官能評価を行った結果、パネラー全員が舌触りを5点満点と評価した。
<実施例7>
コシヒカリ米粉500gを2Lの0.2%NaOH水溶液に一夜懸濁することにより米タンパク質を抽出した。1,500×gで10分間の遠心分離操作を2回行った後に280メッシュ(目開き53μm)の篩処理を行い、米タンパク質アルカリ抽出液を得た。これを80mLずつ6本のビーカーに分注し、それぞれに6NのHClを加えてpHを9.0、8.0、7.0、6.0、5.0、4.0に調整した後に2等分し、一方はそのまま、他方は沸騰水中で5分間加熱した。それぞれを1,500×gで3分間遠心分離して凝集物を回収した後に、それらを40mLの蒸留水に懸濁し、同上の条件で遠心分離を行って湿ペレットを得た。機械ピペットを用いて上清部分および遠心チューブ内壁に付着した水分を丁寧に除去した後に湿ペレットの重量を測定し、また凍結乾燥によりそれぞれを乾燥させた後に乾燥重量を測定し、各標品の保水力を前述の式1に従って計算して求めた。
また、米タンパク質アルカリ抽出液を同様に80mLずつ6本のビーカーに分注後に50℃に加温してから6NのNaClを用いて上記と同様にpHを9.0〜4.0に調整し、遠心分離による凝集体回収と蒸留水による洗浄操作を行い、同様に乾燥ペレットを得た。
得られた24標品中、回収量が極端に低かった4標品を除く20標品について粉砕性を5段階で評価した。
表3に示した通り、pHが7.0以上または4.0以下で中和することにより得られた標品は粉砕性に優れていた。一方、米タンパク質アルカリ抽出液を室温でpH6.0や5.0まで中和して得られた標品は非常に粉砕性が悪かった。50℃で中和した得られた標品の保水力は室温で中和した場合に比べて概して高く、かつ中和後に沸騰水中で加熱処理を行うことによりさらに保水力が高まる傾向にあった。
<実施例8>
0.025%〜0.2%NaOH水溶液40mLにそれぞれコシヒカリ米粉10gを加えて懸濁し、室温で一夜タンパク質を抽出した。遠心分離により上清を回収し、これをpH7.0に中和後、沸騰水中で5分間加熱した。1,500×gで3分間の遠心分離により回収した沈殿を40mLの蒸留水に懸濁し、同条件で遠心分離を行ってタンパク質の湿ペレットを得た。実施例7と同様に湿重量を測定し、また凍結乾燥後の乾重量を測定して収量と保水力を求めた。
表4に結果を示した通り、浸漬時のNaOH濃度が0.1%以上でゲルの保水力が6以上となった。
<実施例9>
実施例8と全く同様に0.025〜0.2%NaOH水溶液を用いて米タンパク質を抽出し、これをpH5.5に中和後、沸騰水中で5分間加熱した。同様に遠心分離と洗浄を行い、湿重量と凍結乾燥後の乾燥重量を求めた。結果を表5に示したが、実施例8の場合と同様に浸漬時のNaOH濃度が0.1%以上で6以上の保水力を有するゲルが得られた。
以上の結果より、保水力の高いゲルを形成させるにはpH11.3以上、好ましくはpH11.5以上のタンパク質溶液を中和して得られるタンパク質凝集体を加熱してゲルを形成させることが必要であると言える。
<実施例10>
実施例5と同様の手法により4Lの米タンパク質抽出液を得た。280メッシュの篩処理を行った後、pH10.0に調整した。旭化成社製ラボモジュールAHP―1013(ポリアクリロニトリル系限外濾過膜)を用いて液量が1Lになるまで濃縮し、これに3Lの蒸留水を加えてさらに液量が1Lになるまで濃縮する操作を2回繰り返した。得られた米タンパク質濃縮液のpHは9.1であった。この液を約250mLずつ4等分し、それぞれの液に6NのHClを加えてpHを9.0、8.0、7.5、および7.0に調整した。それぞれの液を50mLずつ4本の100mL容トールビーカーに分注し、調製直後の10%のグルコノデルタラクトン水溶液をグルコノデルタラクトンの終濃度がそれぞれ0.1、0.2、0.5、および1.0%となる様に添加して沸騰水中に入れて15分間加熱した。生成したゲルの硬さを+(柔らかい)〜+++(硬い)の3段階で定性的に評価した。またゲルにpH電極を直接差し込むことによりゲルのpHを測定した。結果を表6に示した。尚、ゲル強度が−と表示したものはゲル化しなかったことを意味する。
ゲルを形成しなかった1標品を除き、ゲルのpHが7.0以上または4.0以下の標品は強度が+と判定される軟らかいゲルであった。
<実施例11>
実施例10と同様の処理を行うことにより約1Lの米タンパク質濃縮液を得た。濃縮液のpHは9.2であった。これに終濃度が0.2%となる様にグルコノデルタラクトンの10%水溶液を加えて200mL容のプラスチック容器に充填した。蓋をしてシールした後に沸騰水中で15分間加熱してゲルを形成させた。得られたゲルのpHは7.2であり、絹ごし豆腐と同様の柔らかくツルリとした食感を示した。ゲルはほとんど無味・無臭であったが、僅かに米の風味が感じられた。

Claims (10)

  1. グルテリンとプロラミンとを含み、固形分に対するタンパク質含量が90%以上で、かつ重量の6倍以上の水をゲル状の形態を保ったまま保持することができる米タンパク質組成物。
  2. グルテリンとプロラミンとを含み、かつ水に溶解または懸濁したときの液のpHが7.0以上または4.0以下である米タンパク質組成物。
  3. 米タンパク質を含有する溶液を中和することにより、もしくは前記溶液に二価金属イオンを添加することによりタンパク質の凝集体を生成し、前記凝集体を80℃以上に加熱してゲル化させ、回収する工程を含む米タンパク質組成物の製造方法。
  4. 米タンパク質を含有する溶液のpHが11.3以上である請求項3記載の米タンパク質組成物の製造方法。
  5. 前記凝集体の生成を、40℃以上80℃以下の温度で行う請求項3記載の米タンパク質組成物の製造方法。
  6. 前記加熱時の前記溶液のpHを7.0以上または4.0以下にする請求項3から5いずれか記載の米タンパク質組成物の製造方法。
  7. 米タンパク質を含有する溶液を目開き75μm以下の篩を通過させる工程を含む請求項3から6いずれか記載の米タンパク質組成物の製造方法。
  8. 米タンパク質を含有するアルカリ抽出液を精密濾過膜または限外濾過膜を用いて膜濾過することにより米タンパク質を濃縮及び脱塩する工程を含む請求項3から7いずれか記載の米タンパク質組成物の製造方法。
  9. 米タンパク質を含有する溶液をpH7.0以上または4.0以下に調整した後、そのまま乾燥させる、もしくは生じた沈殿を回収して乾燥させる工程を含む米タンパク質組成物の製造方法。
  10. 米タンパク質を含有する溶液にグルコノデルタラクトンを、ゲルの最終pHが7.0以上または4.0以下になる量で添加し、その後80℃以上に加熱することによりタンパク質をゲル化させる工程を含む米タンパク質組成物の製造方法。
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