JPWO2013021506A1 - 熱化学水分解用レドックス材料及び水素製造方法 - Google Patents

熱化学水分解用レドックス材料及び水素製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2013021506A1
JPWO2013021506A1 JP2011554294A JP2011554294A JPWO2013021506A1 JP WO2013021506 A1 JPWO2013021506 A1 JP WO2013021506A1 JP 2011554294 A JP2011554294 A JP 2011554294A JP 2011554294 A JP2011554294 A JP 2011554294A JP WO2013021506 A1 JPWO2013021506 A1 JP WO2013021506A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
metal oxide
redox
support
porous silica
redox material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2011554294A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5459322B2 (ja
Inventor
竹島 伸一
伸一 竹島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Application granted granted Critical
Publication of JP5459322B2 publication Critical patent/JP5459322B2/ja
Publication of JPWO2013021506A1 publication Critical patent/JPWO2013021506A1/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01BNON-METALLIC ELEMENTS; COMPOUNDS THEREOF; METALLOIDS OR COMPOUNDS THEREOF NOT COVERED BY SUBCLASS C01C
    • C01B3/00Hydrogen; Gaseous mixtures containing hydrogen; Separation of hydrogen from mixtures containing it; Purification of hydrogen
    • C01B3/02Production of hydrogen or of gaseous mixtures containing a substantial proportion of hydrogen
    • C01B3/06Production of hydrogen or of gaseous mixtures containing a substantial proportion of hydrogen by reaction of inorganic compounds containing electro-positively bound hydrogen, e.g. water, acids, bases, ammonia, with inorganic reducing agents
    • C01B3/061Production of hydrogen or of gaseous mixtures containing a substantial proportion of hydrogen by reaction of inorganic compounds containing electro-positively bound hydrogen, e.g. water, acids, bases, ammonia, with inorganic reducing agents by reaction of metal oxides with water
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/36Hydrogen production from non-carbon containing sources, e.g. by water electrolysis

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Combustion & Propulsion (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Catalysts (AREA)
  • Oxygen, Ozone, And Oxides In General (AREA)

Abstract

本発明では、熱化学水分解のために用いることができる改良されたレドックス材料、及びこのレドックス材料を用いた水素製造方法を提供する。本発明の熱化学水分解用レドックス材料は、ペロフスカイト型複合金属酸化物、蛍石型複合金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるレドックス金属酸化物、並びに金属酸化物担体を有し、且つレドックス金属酸化物が金属酸化物担体に分散して担持されている。本発明の水素製造方法では、本発明のレドックス材料の酸化還元を用いて、水を水素と酸素とに分解する。

Description

本発明は、熱化学水分解のためのレドックス材料に関する。
〈関連技術〉
近年、クリーンエネルギーである水素をエネルギー源として用いることが多く提案されている。水素の製造のためには、炭化水素燃料を用いた水蒸気改質が一般的に行われている。また、近年では、水の分解、特に熱化学水分解によって、水から水素を得ることも考慮されている。
熱化学水分解法は、化学反応を組み合わせることによって水の直接熱分解の場合よりも低い温度で水の分解を行わせる方法である。具体的には例えば、熱化学水分解法では、下記のように酸化状態の異なる金属酸化物間の酸化還元反応を用いて、水を水素と酸素とに分解する(MOは金属酸化物):
MO(高酸化状態) → MO(低酸化状態) + O (吸熱反応)
MO(低酸化状態) + HO → MO(高酸化状態) + H (発熱反応)
全反応 HO→H+1/2O
このような熱化学水分解法では、反応に必要とされる温度、特に高酸化状態の金属酸化物を低酸化状態の金属酸化物と酸素とに分解する反応に必要とされる温度を低下させることが重要な課題となっている。
これに関して例えば、”Reactive ceramics of CeO −MO (M=Mn, Fe, Ni, Cu) for H generation by two−step water splitting using concentrated solar thermal energy”、H. Kaneko等、Energy、Volume 32、Issue 5、May 2007、pp.656−663では、CeO−MO(MO=MnO、Fe、NiO、CuO)等の蛍石構造を有する複合金属酸化物が、熱化学水分解法のために良好に用いられるとしている。具体的には、この文献では、このような複合金属酸化物を用いる場合、1500℃前後の温度で高酸化状態の金属酸化物から低酸化状態の金属酸化物への還元を行えるとしている。
また、特開2008−94636では、80℃/分よりも大きい加熱速度を用いることによって高酸化状態の金属酸化物から低酸化状態の金属酸化物への還元を比較的低い温度で効率的に行えるとしている。具体的には、この文献では、このような大きい加熱速度の使用によって、1500℃前後の温度で高酸化状態の金属酸化物から低酸化状態の金属酸化物への還元を効率的に行えるとしている。
なお、自動車等の排ガス浄化の分野においては、貴金属等の触媒成分を担持する多孔質金属酸化物担体として、アルミナ、多孔質シリカ等を用いることが知られている。
例えば、本件発明者による特開2008−12382(米国特許出願公開US2009/286677A1に対応)で提案されている排ガス浄化触媒は、内部細孔構造を有するシリカからなる多孔質シリカ担体、及び多孔質シリカ担体の内部細孔構造内に担持されているペロフスカイト型複合金属酸化物の粒子を有し、且つ多孔質シリカ担体の細孔分布において、シリカの一次粒子間の間隙に起因するピークが、3〜100nmの範囲にある。
本発明では、熱化学水分解のために用いることができる改良された熱化学水分解用レドックス材料、特に比較的低い温度での熱化学水分解のために用いることができる改良された熱化学水分解用レドックス材料を提供する。
本発明の熱化学水分解用レドックス材料は、ペロフスカイト型複合金属酸化物、蛍石型複合金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるレドックス金属酸化物、並びに金属酸化物担体を有し、且つレドックス金属酸化物が金属酸化物担体に分散して担持されている。なお、本発明に関してシリカの「内部細孔構造」とは、シリカを構成するケイ素原子及び酸素原子によって形成される規則的に配列した分子レベルの細孔を意味している。
また本発明では、本発明の熱化学水分解用レドックス材料を用いて水を分解して、水素を生成する方法を提供する。熱化学水分解によって水素を製造するこの方法は、(a)高酸化状態のレドックス金属酸化物を有する本発明のレドックス材料を加熱して、高酸化状態のレドックス金属酸化物から酸素を脱離させ、それによって低酸化状態のレドックス金属酸化物を有するレドックス材料、及び酸素を得ること、及び(b)低酸化状態のレドックス金属酸化物を有するレドックス材料に水を接触させて、低酸化状態のレドックス金属酸化物を酸化し且つ水を還元し、それによって高酸化状態のレドックス金属酸化物を有するレドックス材料、及び水素を得ることを含む。
実施例3で得たレドックス材料のHAADF−STEM像である。
〔熱化学水分解用レドックス材料〕
本発明の熱化学水分解用レドックス材料は、ペロフスカイト型複合金属酸化物、蛍石型複合金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるレドックス金属酸化物、並び金属酸化物担体を有し、且つレドックス金属酸化物が金属酸化物担体に分散して担持されている。なお、本発明に関しては、熱化学水分解のために酸化・還元される金属酸化物を「レドックス酸化物」として言及する。
本発明の熱化学分解用レドックス材料では、ペロフスカイト型複合金属酸化物等のレドックス金属酸化物が金属酸化物担体に分散して担持されており、それによってレドックス金属酸化物が単独で存在する場合と比較して、レドックス金属酸化物の粒子径を小さく維持することができる。このような比較的小さい粒子径は、予想外に、比較的低い温度で、熱化学水分解のためのレドックス金属酸化物の酸化還元反応、特に高酸化状態のレドックス金属酸化物から低酸化状態のレドックス金属酸化物への還元反応を可能にする。
理論に限定されるものではないが、比較的小さい粒子径を有するレドックス金属酸化物では、表面エネルギーが大きく、それによって高酸化状態のレドックス金属酸化物を加熱した際に酸素が不安定化しやすく、したがって比較的低温においても低酸化状態のレドックス金属酸化物への還元が行われるものと考えられる。
このような本発明のレドックス材料は、それ自体を成形して用いるだけでなく、モノリス基材、例えばセラミックハニカムにコートして用いることもできる。
(金属酸化物担体)
レドックス金属酸化物を担持するための金属酸化物担体としては、任意の金属酸化物担体を用いることができる。ただし、金属酸化物担体は、レドックス金属酸化物の高分散担持を可能にする担体であることが好ましい。
このような金属酸化物担体としては、内部細孔構造を有するシリカからなる多孔質シリカ担体を用い、且つレドックス金属酸化物を、多孔質シリカ担体の内部細孔構造内に担持することができる。この場合、レドックス金属酸化物が多孔質シリカ担体の内部細孔構造内で固定されることによって、高温状態においてレドックス金属酸化物が移動してシンタリングし、それによって粒子径が大きくなることを抑制できる。これに関して例えば、シリカの内部細孔構造に起因するピークは、多孔質シリカ担体の細孔分布において、1〜5nmの範囲であってよい。
特にこのような多孔質シリカ担体としては、細孔分布におけるシリカの一次粒子間の間隙に起因するピークが3〜100nm、特に5〜50nmの範囲にある多孔質シリカ担体を用いることができる。
このように、内部細孔構造を有する多孔質シリカ担体の細孔分布において、シリカの一次粒子間の間隙に起因するピークが、上記の範囲にあること、すなわち多孔質シリカ担体が比較的小さい一次粒子を有していることは、多孔質シリカ担体の内部細孔構造内に担持されているレドックス金属酸化物と雰囲気との接触を増加させ、それによってレドックス酸化物の酸化還元を促進すると考えられる。
このような多孔質シリカ担体は例えば、水性溶媒中において、アルキルアミンを自己配列させ、この溶液にアルコキシシラン及び随意の塩基を加えて、自己配列しているアルキルアミンをテンプレートとして用いて、その周囲で多孔質シリカ担体前駆体を析出させ、これを焼成することによって得ることができる。
したがって例えば、この方法では、水性溶媒としてエタノール水溶液を用い、アルキルアミンとしてヘキサデシルアミンを用い、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランを用い、且つ随意の塩基としてアンモニアを用いることができる。
多孔質シリカ担体の製造方法で用いるアルキルアミン及びアルコキシシランは、意図する多孔質シリカ担体の一次粒子径、細孔分布等に従って選択することができる。例えば、多孔質シリカ担体の製造において使用するアルキルアミンのアルキル鎖の長さを長くすると、内部細孔構造の細孔径を大きくすることができる。
具体的には、アルキルアミンとして、セチル(すなわちC1633)トリメチルアンモニウムクロリドを用いると、内部細孔構造の細孔径を約2.7nmにすることができ、ラウリル(すなわちC1225)トリメチルアンモニウムクロリドを用いると、内部細孔構造の細孔径を約2.0nmにすることができ、テトラコシル(すなわちC2449)トリメチルアンモニウムクロリドを用いると、内部細孔構造の細孔径を約4.0nmにすることができる。
(レドックス金属酸化物)
本発明のレドックス材料において用いられるレドックス金属酸化物は、ペロフスカイト型複合金属酸化物、蛍石型複合金属酸化物、又はそれらの組み合わせである。
レドックス金属酸化物は、20nm以下、15nm以下、10nm以下、又は5nm以下の平均粒子径、例えば1.5nm〜5nmの平均粒子径で、金属酸化物担体に分散して担持されていてよい。
また、金属酸化物担体に対するレドックス金属酸化物の担持量は、レドックス金属酸化物の粒成長を抑制し、且つ熱化学水分解に関する十分な性能を提供できる範囲で選択することができる。したがって例えば、レドックス金属酸化物の担持量は、金属酸化物担体の質量に対して、レドックス金属酸化物における遷移金属のモル数が、0.01mol/g以上、又は0.05mol/g以上であって、100mol/g以下、10mol/g以下、又は1mol/g以下、又は0.5mol/g以下となるようにすることができる。
具体的には、ペロフスカイト型複合金属酸化物は、希土類及び遷移金属の複合金属酸化物であってよい。この場合には、遷移金属の酸化数が変化することによって、ペロフスカイト型複合金属酸化物がレドックス金属酸化物として機能すると考えられる。より具体的には、ペロフスカイト型複合金属酸化物は、下記の式で表されるペロフスカイト型複合金属酸化物であってよい:

(Aは、希土類元素、特にランタンLa、ストロンチウムSr、セリウムCe、バリウムBa、カルシウムCa、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Bは、遷移金属元素、特にコバルトCo、鉄Fe、ニッケルNi、クロムCr、マンガンMn、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Oは酸素であり;
a+b=2であり;且つ
a:b=1.2:0.8〜0.8〜1.2、特に1.1:0.9〜0.9:1.1である)。
すなわち例えば、ペロフスカイト型複合金属酸化物は、下記の式で表される複合金属酸化物であってよい(x=0.1〜0.4):
LaMn;又は、
LaMnb−xFe
ここで、ランタンのような希土類と並んで、遷移金属としてのマンガンを含有し、このマンガンの一部が鉄によって置換されているペロフスカイト型複合金属酸化物は、比較的低温で効率的に酸化還元させることができ、したがって熱化学水分解特性に関して特に好ましい。
また具体的には、蛍石型複合金属酸化物は、希土類及び遷移金属の複合金属酸化物であってよい。この場合には、遷移金属の酸化数が変化することによって、蛍石型複合金属酸化物がレドックス金属酸化物として機能すると考えられる。より具体的には、蛍石型複合金属酸化物は、下記の式で表される蛍石型複合金属酸化物であってよい:
a1 a2
(Aは、希土類元素、特にランタンLa、ストロンチウムSr、セリウムCe、バリウムBa、カルシウムCa、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
は、遷移金属元素、特にコバルトCo、鉄Fe、ニッケルNi、クロムCr、マンガンMn、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Oは酸素であり;
a1+a2=2であり;且つ
a1:a2=1.3:0.7〜0.7:1.3、特に1.2:0.8〜0.8:1.2、より特に1.1:0.9〜0.9:1.1である)。
すなわち例えば、蛍石型複合金属酸化物は、下記の式で表される複合金属酸化物であってよい(x=0.1〜0.4であり、且つδは、酸素欠陥による酸素の減少分):
Cea1Mna2;又は
CeMnb−xFe4−δ
ここで、セリウムのような希土類と並んで、遷移金属としてのマンガンを含有し、このマンガンの一部が鉄によって置換されている蛍型複合金属酸化物は、比較的低温で効率的に酸化還元させることができ、したがって熱化学水分解特性に関して特に好ましい。
金属酸化物担体へのレドックス金属酸化物の担持は、レドックス金属酸化物を構成する金属の塩の溶液を金属酸化物担体に含浸させ、得られた金属酸化物担体を乾燥及び焼成することによって達成できる。レドックス金属酸化物を構成する金属の塩としては、硝酸塩、塩酸塩のような無機酸塩、酢酸塩のような有機酸塩を挙げることができる。
この塩溶液からの溶媒の除去及び乾燥は、任意の方法及び任意の温度で行うことができる。これは例えば、塩溶液を含浸させた金属酸化物担体を120℃のオーブンに入れて達成できる。このようにして溶媒を除去及び乾燥した金属酸化物担体を焼成して、本発明のレドックス材料を得ることができる。この焼成は、金属酸化物の合成において一般的に用いられる温度、例えば500〜1100℃の温度で行うことができる。
なお、上記のような多孔質シリカ担体、及びこのような多孔質シリカ担体へのレドックス金属酸化物の担持に関しては、特開2008−12382(米国特許出願公開US2009/286677A1に対応)の記載を参照することができる。この文献及び本明細書で引用している他の文献の記載は、ここで参照して本明細書の記載に含める。
〔本発明の水素製造方法〕
本発明の水素製造方法では、本発明のレドックス材料を用いる熱化学水分解によって、水素を製造する。具体的には、熱化学水分解によって水素を製造する本発明の方法では、(a)高酸化状態のレドックス金属酸化物を有するレドックス材料を加熱して、高酸化状態のレドックス金属酸化物から酸素を脱離させ、それによって低酸化状態のレドックス金属酸化物を有するレドックス材料、及び酸素を得ること、及び(b)低酸化状態のレドックス金属酸化物を有する本発明のレドックス材料に水を接触させて、低酸化状態のレドックス金属酸化物を酸化し且つ水を還元し、それによって高酸化状態のレドックス金属酸化物を有するレドックス材料及び水素を得ることを含む。
また、本発明の水素製造方法では、本発明のレドックス材料を用いていることによって、比較的低い温度で高酸化状態のレドックス金属酸化物からの酸素の脱離を達成することができ、これは例えばレドックス金属酸化物を1300℃以下、1200℃以下、1100℃以下、又は1000℃以下の温度で達成することができる。ここで、この加熱は、不活性雰囲気、特に窒素雰囲気、又はアルゴン雰囲気のような希ガス雰囲気において行って、酸素の脱離を促進することができる。
本発明の水素製造方法では、本発明のレドックス材料を用いていることによって、比較的低い温度で低酸化状態のレドックス金属酸化物と水を反応させて水素を生成することができ、これは例えばレドックス金属酸化物を1100℃以下、1000℃以下、900℃以下、又は800℃以下の温度で達成することができる。
以下、本発明を実施例に基づき更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〜5〕
(多孔質シリカ担体の合成)
金属酸化物担体としての多孔質シリカの合成は、下記のようにして行った。
水に対して、セチルトリメチルアンモニウムクロリドを0.5mol/L溶解した。得られた水溶液を2時間にわたって撹拌して、セチルトリメチルアンモニウムクロリドを自己配列させた。次に、セチルトリメチルアンモニウムクロリドを自己配列させた溶液に、テトラエトキシシランとアンモニア水を添加して、溶液のpHを9.5にした。
この溶液中において、テトラエトキシシランを30時間にわたって加水分解して、配列したセチルトリメチルアンモニウムクロリドの周りにシリカを析出させて、ナノサイズの細孔を有する一次粒子からなる二次粒子を形成した。次にこの水溶液に少量の硝酸を加えてpH7にし、1時間にわたって二次粒子を更に凝集及び熟成させて、多孔質シリカ担体前駆体を得た。
その後、得られた多孔質シリカ担体前駆体を、エタノール水で洗浄し、ろ過し、乾燥し、800℃の空気中で2時間にわたって焼成して、本発明において用いる多孔質シリカ担体を得た。なお、得られた多孔質シリカ担体におけるシリカの内部細孔構造に起因する細孔の径は、約2.7nmであった。また、得られた多孔質シリカ担体は、シリカの内部細孔構造に起因する細孔だけでなく、シリカの一次粒子間の間隙に起因する10nm強の細孔も有していた。
(レドックス金属酸化物の担持)
レドックス金属酸化物として、LaMnO(実施例1)、LaMn0.8Fe0.2(実施例2)、及びCeFeO(実施例3)の組成のペロフスカイト型、並びにCeMnO(実施例4)、及びCeMn0.8Fe0.24−δ(実施例5)の組成の蛍石構造複合金属酸化物を、多孔質シリカ担体に担持した。ここで、担持は、レドックス金属酸化物おける遷移金属のモル数が0.12mol/100g−担体であるようにして、レドックス金属酸化物おける全金属のモル数が0.24mol/100g−担体であるようにして行った。また、多孔質シリカ担体へのレドックス金属酸化物の担持は、自動車触媒において一般に行われている吸水担持法によって行った。
具体的には、実施例1については、約0.5mol/Lの硝酸ランタン、約0.5mol/Lの硝酸マンガン、及び約1.2mol/Lの安定化剤としてのクエン酸を、蒸留水に加えて、溶液を得、この溶液を2時間にわたって保管した。その後、この溶液に、乾燥状態の多孔質シリカ担体を加え、超音波を提供しながら多孔質シリカ担体から泡が出なくなるまで撹拌した。
吸水させた多孔質シリカ担体をろ過によって溶液から分離し、250℃で乾燥し、800℃で2時間にわたって焼成して、レドックス金属酸化物としてのペロフスカイト型ランタン−マンガン複合金属酸化物を担持している多孔質シリカ担体を得た。ここで、ランタン及びマンガンの担持量は、それぞれ0.12mol/100g−担体であった。
(レドックス金属酸化物の担持状態の評価)
ペロフスカイト型複合金属酸化物を多孔質シリカ担体に担持して得た実施例3のレドックス材料についてのHAADF−STEM像を図1に示す。図1のHAADF−STEM像では、多孔質シリカ担体の内部細孔構造に対応する部分が白く写っており、したがってレドックス金属酸化物としてのペロフスカイト型複合金属酸化物が、多孔質シリカ担体の内部細孔構造内に担持されたことが理解される。また、図1のHAADF−STEM像からは、ペロフスカイト型複合金属酸化物が、約2〜3nmの大きさの粒子として、多孔質シリカ担体の内部細孔構造内に担持されていることが理解される。なお、HAADF−STEMは、元素質量の二乗に比例して電子線が散乱する現象により画像を形成するものである。
(酸素脱離及び水素生成について特性評価)
実施例1〜5のレドックス材料について、それぞれ、窒素雰囲気において1000℃に加熱して酸素を脱離させ、そしてその後、水蒸気雰囲気において800℃に加熱して水素を生成させた。得られた結果を、表1に示す。なお、表1において、酸素脱離量及び水素生成量はそれぞれ、ペロフスカイト型複合金属酸化物等のレドックス金属酸化物の質量に対する量(μmol/g−レドックス金属酸化物)である。
〔比較例1及び2〕
レドックス金属酸化物としてのCe0.9Fe0.11.5(比較例1)の組成の複合金属酸化物、及びCe0.9Mn0.1(比較例1)の組成の蛍石型複合金属酸化物を、共沈法によって得た。得られたレドックス金属酸化物は、2〜3nm程度の粒子状の形状であった。
これらのレドックス金属酸化物について、実施例1と同様にして、酸素脱離反応及び水素生成反応を行わせた。ただし、比較例1及び2では、酸素脱離反応を1000℃で行い、且つ水素生成反応を800℃で行ったときには観察可能な程度に反応が進行しなかったので、酸素脱離反応を1400℃で行い、且つ水素生成反応を1000℃で行った。得られた結果を表1に示す。
Figure 2013021506
表1からは実施例1〜5のレドックス材料は、比較例1及び2のレドックス材料と比較して低温においてさえも、優れた熱化学水分解特性を示すことが理解される。
本発明は、熱化学水分解のためのレドックス材料に関する。
近年、クリーンエネルギーである水素をエネルギー源として用いることが多く提案されている。水素の製造のためには、炭化水素燃料を用いた水蒸気改質が一般的に行われている。また、近年では、水の分解、特に熱化学水分解によって、水から水素を得ることも考慮されている。
熱化学水分解法は、化学反応を組み合わせることによって水の直接熱分解の場合よりも低い温度で水の分解を行わせる方法である。具体的には例えば、熱化学水分解法では、下記のように酸化状態の異なる金属酸化物間の酸化還元反応を用いて、水を水素と酸素とに分解する(MOは金属酸化物):
MO(高酸化状態) → MO(低酸化状態) + O (吸熱反応)
MO(低酸化状態) + HO → MO(高酸化状態) + H (発熱反応)
全反応 HO→H+1/2O
このような熱化学水分解法では、反応に必要とされる温度、特に高酸化状態の金属酸化物を低酸化状態の金属酸化物と酸素とに分解する反応に必要とされる温度を低下させることが重要な課題となっている。
これに関して例えば、”Reactive ceramics of CeO−MO (M=Mn, Fe, Ni, Cu) for H generation by two−step water splitting using concentrated solar thermal energy”、H. Kaneko等、Energy、Volume 32、Issue 5、May 2007、pp.656−663では、CeO−MO(MO=MnO、Fe、NiO、CuO)等の蛍石構造を有する複合金属酸化物が、熱化学水分解法のために良好に用いられるとしている。具体的には、この文献では、このような複合金属酸化物を用いる場合、1500℃前後の温度で高酸化状態の金属酸化物から低酸化状態の金属酸化物への還元を行えるとしている。
また、特開2008−94636では、80℃/分よりも大きい加熱速度を用いることによって高酸化状態の金属酸化物から低酸化状態の金属酸化物への還元を比較的低い温度で効率的に行えるとしている。具体的には、この文献では、このような大きい加熱速度の使用によって、1500℃前後の温度で高酸化状態の金属酸化物から低酸化状態の金属酸化物への還元を効率的に行えるとしている。
なお、自動車等の排ガス浄化の分野においては、貴金属等の触媒成分を担持する多孔質金属酸化物担体として、アルミナ、多孔質シリカ等を用いることが知られている。
例えば、本件発明者による特開2008−12382(米国特許出願公開US2009/286677A1に対応)で提案されている排ガス浄化触媒は、内部細孔構造を有するシリカからなる多孔質シリカ担体、及び多孔質シリカ担体の内部細孔構造内に担持されているペロフスカイト型複合金属酸化物の粒子を有し、且つ多孔質シリカ担体の細孔分布において、シリカの一次粒子間の間隙に起因するピークが、3〜100nmの範囲にある。
本発明では、熱化学水分解のために用いることができる改良された熱化学水分解用レドックス材料、特に比較的低い温度での熱化学水分解のために用いることができる改良された熱化学水分解用レドックス材料を提供する。
本発明の熱化学水分解用レドックス材料は、ペロフスカイト型複合金属酸化物、蛍石型複合金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるレドックス金属酸化物、並びに金属酸化物担体を有し、且つレドックス金属酸化物が金属酸化物担体に分散して担持されている。なお、本発明に関してシリカの「内部細孔構造」とは、シリカを構成するケイ素原子及び酸素原子によって形成される規則的に配列した分子レベルの細孔を意味している。
また本発明では、本発明の熱化学水分解用レドックス材料を用いて水を分解して、水素を生成する方法を提供する。熱化学水分解によって水素を製造するこの方法は、(a)高酸化状態のレドックス金属酸化物を有する本発明のレドックス材料を加熱して、高酸化状態のレドックス金属酸化物から酸素を脱離させ、それによって低酸化状態のレドックス金属酸化物を有するレドックス材料、及び酸素を得ること、及び(b)低酸化状態のレドックス金属酸化物を有するレドックス材料に水を接触させて、低酸化状態のレドックス金属酸化物を酸化し且つ水を還元し、それによって高酸化状態のレドックス金属酸化物を有するレドックス材料、及び水素を得ることを含む。
実施例3で得たレドックス材料のHAADF−STEM像である。
〔熱化学水分解用レドックス材料〕
本発明の熱化学水分解用レドックス材料は、ペロフスカイト型複合金属酸化物、蛍石型複合金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるレドックス金属酸化物、並び金属酸化物担体を有し、且つレドックス金属酸化物が金属酸化物担体に分散して担持されている。なお、本発明に関しては、熱化学水分解のために酸化・還元される金属酸化物を「レドックス酸化物」として言及する。
本発明の熱化学分解用レドックス材料では、ペロフスカイト型複合金属酸化物等のレドックス金属酸化物が金属酸化物担体に分散して担持されており、それによってレドックス金属酸化物が単独で存在する場合と比較して、レドックス金属酸化物の粒子径を小さく維持することができる。このような比較的小さい粒子径は、予想外に、比較的低い温度で、熱化学水分解のためのレドックス金属酸化物の酸化還元反応、特に高酸化状態のレドックス金属酸化物から低酸化状態のレドックス金属酸化物への還元反応を可能にする。
理論に限定されるものではないが、比較的小さい粒子径を有するレドックス金属酸化物では、表面エネルギーが大きく、それによって高酸化状態のレドックス金属酸化物を加熱した際に酸素が不安定化しやすく、したがって比較的低温においても低酸化状態のレドックス金属酸化物への還元が行われるものと考えられる。
このような本発明のレドックス材料は、それ自体を成形して用いるだけでなく、モノリス基材、例えばセラミックハニカムにコートして用いることもできる。
(金属酸化物担体)
レドックス金属酸化物を担持するための金属酸化物担体としては、任意の金属酸化物担体を用いることができる。ただし、金属酸化物担体は、レドックス金属酸化物の高分散担持を可能にする担体であることが好ましい。
このような金属酸化物担体としては、内部細孔構造を有するシリカからなる多孔質シリカ担体を用い、且つレドックス金属酸化物を、多孔質シリカ担体の内部細孔構造内に担持することができる。この場合、レドックス金属酸化物が多孔質シリカ担体の内部細孔構造内で固定されることによって、高温状態においてレドックス金属酸化物が移動してシンタリングし、それによって粒子径が大きくなることを抑制できる。これに関して例えば、シリカの内部細孔構造に起因するピークは、多孔質シリカ担体の細孔分布において、1〜5nmの範囲であってよい。
特にこのような多孔質シリカ担体としては、細孔分布におけるシリカの一次粒子間の間隙に起因するピークが3〜100nm、特に5〜50nmの範囲にある多孔質シリカ担体を用いることができる。
このように、内部細孔構造を有する多孔質シリカ担体の細孔分布において、シリカの一次粒子間の間隙に起因するピークが、上記の範囲にあること、すなわち多孔質シリカ担体が比較的小さい一次粒子を有していることは、多孔質シリカ担体の内部細孔構造内に担持されているレドックス金属酸化物と雰囲気との接触を増加させ、それによってレドックス酸化物の酸化還元を促進すると考えられる。
このような多孔質シリカ担体は例えば、水性溶媒中において、アルキルアミンを自己配列させ、この溶液にアルコキシシラン及び随意の塩基を加えて、自己配列しているアルキルアミンをテンプレートとして用いて、その周囲で多孔質シリカ担体前駆体を析出させ、これを焼成することによって得ることができる。
したがって例えば、この方法では、水性溶媒としてエタノール水溶液を用い、アルキルアミンとしてヘキサデシルアミンを用い、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランを用い、且つ随意の塩基としてアンモニアを用いることができる。
多孔質シリカ担体の製造方法で用いるアルキルアミン及びアルコキシシランは、意図する多孔質シリカ担体の一次粒子径、細孔分布等に従って選択することができる。例えば、多孔質シリカ担体の製造において使用するアルキルアミンのアルキル鎖の長さを長くすると、内部細孔構造の細孔径を大きくすることができる。
具体的には、アルキルアミンとして、セチル(すなわちC1633)トリメチルアンモニウムクロリドを用いると、内部細孔構造の細孔径を約2.7nmにすることができ、ラウリル(すなわちC1225)トリメチルアンモニウムクロリドを用いると、内部細孔構造の細孔径を約2.0nmにすることができ、テトラコシル(すなわちC2449)トリメチルアンモニウムクロリドを用いると、内部細孔構造の細孔径を約4.0nmにすることができる。
(レドックス金属酸化物)
本発明のレドックス材料において用いられるレドックス金属酸化物は、ペロフスカイト型複合金属酸化物、蛍石型複合金属酸化物、又はそれらの組み合わせである。
レドックス金属酸化物は、20nm以下、15nm以下、10nm以下、又は5nm以下の平均粒子径、例えば1.5nm〜5nmの平均粒子径で、金属酸化物担体に分散して担持されていてよい。
また、金属酸化物担体に対するレドックス金属酸化物の担持量は、レドックス金属酸化物の粒成長を抑制し、且つ熱化学水分解に関する十分な性能を提供できる範囲で選択することができる。したがって例えば、レドックス金属酸化物の担持量は、金属酸化物担体の質量に対して、レドックス金属酸化物における遷移金属のモル数が、0.01mol/100g以上、又は0.05mol/100g以上であって、100mol/100g以下、10mol/100g以下、又は1mol/100g以下、又は0.5mol/100g以下となるようにすることができる。
具体的には、ペロフスカイト型複合金属酸化物は、希土類及び/又はストロンチウムSr、バリウムBa及びカルシウムCaから選ばれるアルカリ土類金属と遷移金属の複合金属酸化物であってよい。この場合には、遷移金属の酸化数が変化することによって、ペロフスカイト型複合金属酸化物がレドックス金属酸化物として機能すると考えられる。より具体的には、ペロフスカイト型複合金属酸化物は、下記の式で表されるペロフスカイト型複合金属酸化物であってよい:

(Aは、希土類元素、特にランタンLa及びセリウムCeと、ストロンチウムSr、バリウムBa及びカルシウムCaから選ばれるアルカリ土類金属、並びにこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Bは、遷移金属元素、特にコバルトCo、鉄Fe、ニッケルNi、クロムCr、マンガンMn、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Oは酸素であり;
a+b=2であり;且つ
a:b=1.2:0.8〜0.81.2、特に1.1:0.9〜0.9:1.1である)。
すなわち例えば、ペロフスカイト型複合金属酸化物は、下記の式で表される複合金属酸化物であってよい(x=0.1〜0.4):
LaMn;又は、
LaMnb−xFe
ここで、ランタンのような希土類と並んで、遷移金属としてのマンガンを含有し、このマンガンの一部が鉄によって置換されているペロフスカイト型複合金属酸化物は、比較的低温で効率的に酸化還元させることができ、したがって熱化学水分解特性に関して特に好ましい。
また具体的には、蛍石型複合金属酸化物は、希土類及び/又はストロンチウムSr、バリウムBa及びカルシウムCaから選ばれるアルカリ土類金属と遷移金属の複合金属酸化物であってよい。この場合には、遷移金属の酸化数が変化することによって、蛍石型複合金属酸化物がレドックス金属酸化物として機能すると考えられる。より具体的には、蛍石型複合金属酸化物は、下記の式で表される蛍石型複合金属酸化物であってよい:
a1 a2
(Aは、希土類元素、特にランタンLa及びセリウムCeと、ストロンチウムSr、バリウムBa及びカルシウムCaから選ばれるアルカリ土類金属、並びにこれらの組み合わせからなる群より選択され;
は、遷移金属元素、特にコバルトCo、鉄Fe、ニッケルNi、クロムCr、マンガンMn、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Oは酸素であり;
a1+a2=2であり;且つ
a1:a2=1.3:0.7〜0.7:1.3、特に1.2:0.8〜0.8:1.2、より特に1.1:0.9〜0.9:1.1である)。
すなわち例えば、蛍石型複合金属酸化物は、下記の式で表される複合金属酸化物であってよい(x=0.1〜0.4であり、且つδは、酸素欠陥による酸素の減少分):
Cea1Mna2;又は
CeMnb−xFe4−δ
ここで、セリウムのような希土類と並んで、遷移金属としてのマンガンを含有し、このマンガンの一部が鉄によって置換されている蛍型複合金属酸化物は、比較的低温で効率的に酸化還元させることができ、したがって熱化学水分解特性に関して特に好ましい。
金属酸化物担体へのレドックス金属酸化物の担持は、レドックス金属酸化物を構成する金属の塩の溶液を金属酸化物担体に含浸させ、得られた金属酸化物担体を乾燥及び焼成することによって達成できる。レドックス金属酸化物を構成する金属の塩としては、硝酸塩、塩酸塩のような無機酸塩、酢酸塩のような有機酸塩を挙げることができる。
この塩溶液からの溶媒の除去及び乾燥は、任意の方法及び任意の温度で行うことができる。これは例えば、塩溶液を含浸させた金属酸化物担体を120℃のオーブンに入れて達成できる。このようにして溶媒を除去及び乾燥した金属酸化物担体を焼成して、本発明のレドックス材料を得ることができる。この焼成は、金属酸化物の合成において一般的に用いられる温度、例えば500〜1100℃の温度で行うことができる。
なお、上記のような多孔質シリカ担体、及びこのような多孔質シリカ担体へのレドックス金属酸化物の担持に関しては、特開2008−12382(米国特許出願公開US2009/286677A1に対応)の記載を参照することができる。この文献及び本明細書で引用している他の文献の記載は、ここで参照して本明細書の記載に含める。
〔本発明の水素製造方法〕
本発明の水素製造方法では、本発明のレドックス材料を用いる熱化学水分解によって、水素を製造する。具体的には、熱化学水分解によって水素を製造する本発明の方法では、(a)高酸化状態のレドックス金属酸化物を有するレドックス材料を加熱して、高酸化状態のレドックス金属酸化物から酸素を脱離させ、それによって低酸化状態のレドックス金属酸化物を有するレドックス材料、及び酸素を得ること、及び(b)低酸化状態のレドックス金属酸化物を有する本発明のレドックス材料に水を接触させて、低酸化状態のレドックス金属酸化物を酸化し且つ水を還元し、それによって高酸化状態のレドックス金属酸化物を有するレドックス材料及び水素を得ることを含む。
また、本発明の水素製造方法では、本発明のレドックス材料を用いていることによって、比較的低い温度で高酸化状態のレドックス金属酸化物からの酸素の脱離を達成することができ、これは例えばレドックス金属酸化物を1300℃以下、1200℃以下、1100℃以下、又は1000℃以下の温度で達成することができる。ここで、この加熱は、不活性雰囲気、特に窒素雰囲気、又はアルゴン雰囲気のような希ガス雰囲気において行って、酸素の脱離を促進することができる。
本発明の水素製造方法では、本発明のレドックス材料を用いていることによって、比較的低い温度で低酸化状態のレドックス金属酸化物と水を反応させて水素を生成することができ、これは例えばレドックス金属酸化物を1100℃以下、1000℃以下、900℃以下、又は800℃以下の温度で達成することができる。
以下、本発明を実施例に基づき更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〜5〕
(多孔質シリカ担体の合成)
金属酸化物担体としての多孔質シリカの合成は、下記のようにして行った。
水に対して、セチルトリメチルアンモニウムクロリドを0.5mol/L溶解した。得られた水溶液を2時間にわたって撹拌して、セチルトリメチルアンモニウムクロリドを自己配列させた。次に、セチルトリメチルアンモニウムクロリドを自己配列させた溶液に、テトラエトキシシランとアンモニア水を添加して、溶液のpHを9.5にした。
この溶液中において、テトラエトキシシランを30時間にわたって加水分解して、配列したセチルトリメチルアンモニウムクロリドの周りにシリカを析出させて、ナノサイズの細孔を有する一次粒子からなる二次粒子を形成した。次にこの水溶液に少量の硝酸を加えてpH7にし、1時間にわたって二次粒子を更に凝集及び熟成させて、多孔質シリカ担体前駆体を得た。
その後、得られた多孔質シリカ担体前駆体を、エタノール水で洗浄し、ろ過し、乾燥し、800℃の空気中で2時間にわたって焼成して、本発明において用いる多孔質シリカ担体を得た。なお、得られた多孔質シリカ担体におけるシリカの内部細孔構造に起因する細孔の径は、約2.7nmであった。また、得られた多孔質シリカ担体は、シリカの内部細孔構造に起因する細孔だけでなく、シリカの一次粒子間の間隙に起因する10nm強の細孔も有していた。
(レドックス金属酸化物の担持)
レドックス金属酸化物として、LaMnO(実施例1)、LaMn0.8Fe0.2(実施例2)、及びCeFeO(実施例3)の組成のペロフスカイト型、並びにCeMnO(実施例4)、及びCeMn0.8Fe0.24−δ(実施例5)の組成の蛍石構造複合金属酸化物を、多孔質シリカ担体に担持した。ここで、担持は、レドックス金属酸化物おける遷移金属のモル数が0.12mol/100g−担体であるようにして、レドックス金属酸化物おける全金属のモル数が0.24mol/100g−担体であるようにして行った。また、多孔質シリカ担体へのレドックス金属酸化物の担持は、自動車触媒において一般に行われている吸水担持法によって行った。
具体的には、実施例1については、約0.5mol/Lの硝酸ランタン、約0.5mol/Lの硝酸マンガン、及び約1.2mol/Lの安定化剤としてのクエン酸を、蒸留水に加えて、溶液を得、この溶液を2時間にわたって保管した。その後、この溶液に、乾燥状態の多孔質シリカ担体を加え、超音波を提供しながら多孔質シリカ担体から泡が出なくなるまで撹拌した。
吸水させた多孔質シリカ担体をろ過によって溶液から分離し、250℃で乾燥し、800℃で2時間にわたって焼成して、レドックス金属酸化物としてのペロフスカイト型ランタン−マンガン複合金属酸化物を担持している多孔質シリカ担体を得た。ここで、ランタン及びマンガンの担持量は、それぞれ0.12mol/100g−担体であった。
(レドックス金属酸化物の担持状態の評価)
ペロフスカイト型複合金属酸化物を多孔質シリカ担体に担持して得た実施例3のレドックス材料についてのHAADF−STEM像を図1に示す。図1のHAADF−STEM像では、多孔質シリカ担体の内部細孔構造に対応する部分が白く写っており、したがってレドックス金属酸化物としてのペロフスカイト型複合金属酸化物が、多孔質シリカ担体の内部細孔構造内に担持されたことが理解される。また、図1のHAADF−STEM像からは、ペロフスカイト型複合金属酸化物が、約2〜3nmの大きさの粒子として、多孔質シリカ担体の内部細孔構造内に担持されていることが理解される。なお、HAADF−STEMは、元素質量の二乗に比例して電子線が散乱する現象により画像を形成するものである。
(酸素脱離及び水素生成について特性評価)
実施例1〜5のレドックス材料について、それぞれ、窒素雰囲気において1000℃に加熱して酸素を脱離させ、そしてその後、水蒸気雰囲気において800℃に加熱して水素を生成させた。得られた結果を、表1に示す。なお、表1において、酸素脱離量及び水素生成量はそれぞれ、ペロフスカイト型複合金属酸化物等のレドックス金属酸化物の質量に対する量(μmol/g−レドックス金属酸化物)である。
〔比較例1及び2〕
レドックス金属酸化物としてのCe0.9Fe0.11.5(比較例1)の組成の複合金属酸化物、及びCe0.9Mn0.1(比較例)の組成の蛍石型複合金属酸化物を、共沈法によって得た。得られたレドックス金属酸化物は、2〜3nm程度の粒子状の形状であった。
これらのレドックス金属酸化物について、実施例1と同様にして、酸素脱離反応及び水素生成反応を行わせた。ただし、比較例1及び2では、酸素脱離反応を1000℃で行い、且つ水素生成反応を800℃で行ったときには観察可能な程度に反応が進行しなかったので、酸素脱離反応を1400℃で行い、且つ水素生成反応を1000℃で行った。得られた結果を表1に示す。
Figure 2013021506
表1からは実施例1〜5のレドックス材料は、比較例1及び2のレドックス材料と比較して低温においてさえも、優れた熱化学水分解特性を示すことが理解される。

Claims (10)

  1. ペロフスカイト型複合金属酸化物、蛍石型複合金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるレドックス金属酸化物、並びに金属酸化物担体を有し、且つ前記レドックス金属酸化物が前記金属酸化物担体に分散して担持されている、熱化学水分解用レドックス材料。
  2. 前記レドックス金属酸化物が、20nm以下の平均粒子径で、前記金属酸化物担体に分散して担持されている、請求項1に記載のレドックス材料。
  3. 前記金属酸化物担体が、内部細孔構造を有するシリカからなる多孔質シリカ担体であり、前記レドックス金属酸化物が、前記多孔質シリカ担体の内部細孔構造内に担持されている、請求項1又は2に記載のレドックス材料。
  4. 前記多孔質シリカ担体の細孔分布において、シリカの一次粒子間の間隙に起因するピークが、3〜100nmの範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載のレドックス材料。
  5. シリカの一次粒子間の間隙に起因する前記ピークが、5〜50nmの範囲にある、請求項1〜4のいずれかに記載のレドックス材料。
  6. 前記多孔質シリカ担体の細孔分布において、シリカの内部細孔構造に起因するピークが、1〜5nmの範囲にある、請求項1〜5のいずれかに記載のレドックス材料。
  7. 前記ペロフスカイト型複合金属酸化物及び/又は蛍石型複合金属酸化物が、希土類及び遷移金属の複合金属酸化物である、請求項1〜6のいずれかに記載のレドックス材料。
  8. (a)高酸化状態の前記レドックス金属酸化物を有する請求項1〜7のいずれかに記載の前記レドックス材料を加熱して、高酸化状態の前記レドックス金属酸化物から酸素を脱離させ、それによって低酸化状態の前記レドックス金属酸化物を有する前記レドックス材料、及び酸素を得ること、及び
    (b)低酸化状態の前記レドックス金属酸化物を有する前記レドックス材料に水を接触させて、低酸化状態の前記レドックス金属酸化物を酸化し且つ水を還元し、それによって高酸化状態の前記レドックス金属酸化物を有する前記レドックス材料、及び水素を得ること、
    を含む、熱化学水分解によって水素を製造する方法。
  9. 前記工程(a)において、前記レドックス材料を1300℃以下の温度に加熱して、低酸化状態の前記レドックス金属酸化物を有する前記レドックス材料、及び酸素を得る、請求項8に記載の方法。
  10. 前記工程(b)において、前記レドックス材料を1100℃以下の温度で水と反応させて、高酸化状態の前記レドックス金属酸化物を有する前記レドックス材料、及び水素を得る、請求項8又は9に記載の方法。
JP2011554294A 2011-08-05 2011-08-05 熱化学水分解用レドックス材料及び水素製造方法 Expired - Fee Related JP5459322B2 (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2011/068404 WO2013021506A1 (ja) 2011-08-05 2011-08-05 熱化学水分解用レドックス材料及び水素製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP5459322B2 JP5459322B2 (ja) 2014-04-02
JPWO2013021506A1 true JPWO2013021506A1 (ja) 2015-03-05

Family

ID=47668051

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011554294A Expired - Fee Related JP5459322B2 (ja) 2011-08-05 2011-08-05 熱化学水分解用レドックス材料及び水素製造方法

Country Status (4)

Country Link
JP (1) JP5459322B2 (ja)
CN (1) CN103038158B (ja)
DE (1) DE112011105502B4 (ja)
WO (1) WO2013021506A1 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104418298A (zh) * 2013-09-02 2015-03-18 中国科学院大连化学物理研究所 含微量贵金属的钙钛矿类活性材料光热分解h2o和/或co2的方法
CN104418299B (zh) * 2013-09-02 2017-02-15 中国科学院大连化学物理研究所 不同载体分散的钙钛矿进行太阳能热分解h2o和/或co2的方法
CN106458597A (zh) * 2014-06-13 2017-02-22 沙特基础工业全球技术公司 由二元和三元基于铈的氧化物制备合成气
CN108698938B (zh) * 2016-02-25 2021-08-27 京瓷株式会社 光吸收构件、制氢用构件以及制氢装置
JP7037172B2 (ja) * 2018-01-26 2022-03-16 国立大学法人 新潟大学 水素の製造方法
CN108313978A (zh) * 2018-02-06 2018-07-24 中国科学院上海高等研究院 一种双层钙钛矿型储氧材料及其制备方法和应用
JP7045665B2 (ja) * 2018-03-30 2022-04-01 学校法人関西学院 酸素ガスの製造方法
KR20200101028A (ko) * 2019-02-19 2020-08-27 현대자동차주식회사 수명성능이 개선된 수소 생산용 나노복합재료 및 그 제조방법

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE4410915A1 (de) * 1994-03-29 1995-10-12 Erno Raumfahrttechnik Gmbh Verfahren zur Erzeugung von Wasserstoff
JP2001270701A (ja) * 2000-03-28 2001-10-02 Yutaka Tamaura 水の分解方法
US20060166816A1 (en) 2004-06-23 2006-07-27 Catalytic Solutions, Inc. Catalysts and processes for selective hydrogenation of acetylene and dienes in light olefin feedstreams
JP5076377B2 (ja) 2006-07-03 2012-11-21 トヨタ自動車株式会社 排ガス浄化触媒
US20080169449A1 (en) 2006-09-08 2008-07-17 Eltron Research Inc. Catalytic membrane reactor and method for production of synthesis gas
JP2008094636A (ja) 2006-10-06 2008-04-24 Tokyo Institute Of Technology 水素製造方法、水素製造装置および金属酸化物
WO2009055037A1 (en) 2007-10-26 2009-04-30 California Institute Of Technology Thermochemical synthesis of fuels for storing thermal energy
EP2212662A4 (en) 2007-11-05 2015-11-18 Univ Colorado Regents METAL FERRITE SPINELLE ENERGY STORAGE DEVICES AND METHOD FOR MANUFACTURING THEM AND USE THEREOF
WO2010131363A1 (ja) 2009-05-15 2010-11-18 富士通株式会社 一酸化炭素ガス発生装置および一酸化炭素ガス発生方法

Also Published As

Publication number Publication date
WO2013021506A1 (ja) 2013-02-14
DE112011105502T5 (de) 2014-10-16
DE112011105502B4 (de) 2021-12-09
CN103038158A (zh) 2013-04-10
CN103038158B (zh) 2015-08-05
JP5459322B2 (ja) 2014-04-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5459322B2 (ja) 熱化学水分解用レドックス材料及び水素製造方法
JP4777670B2 (ja) アンモニア合成触媒及びその製造方法
US8435486B2 (en) Redox material for thermochemical water splitting, and method for producing hydrogen
JP5778309B2 (ja) 水素製造触媒およびそれを用いた水素製造方法
JP2013255911A (ja) 合成ガス製造用触媒および合成ガスの製造方法
Lian et al. Ni supported on LaFeO 3 perovskites for methane steam reforming: on the promotional effects of plasma treatment in H 2–Ar atmosphere
JP2011056488A (ja) アンモニア改質触媒とこれを用いた水素の製造方法
JP2019155227A (ja) Co2メタン化触媒及びこれを用いた二酸化炭素の還元方法
WO2010060736A1 (en) Non-noble metals based catalysts for ammonia decomposition and their preparation
JP4607715B2 (ja) 触媒及び触媒の製造方法
JP4119652B2 (ja) 炭化水素分解用触媒及びその製造法
KR20200076404A (ko) 루테늄 기반 암모니아 탈수소용 촉매, 이의 제조 방법 및 이를 이용하여 암모니아로부터 수소를 생산하는 방법
JP2013103143A (ja) 排ガス浄化用Co3O4/CeO2複合触媒の製造方法およびそれによって得られた触媒
JP6802524B2 (ja) メタン化触媒担体、それを用いたメタン化触媒及びメタンの製造方法
EP4378582A1 (en) Method for preparing catalyst for ammonia decomposition using cation-anion double hydrolysis
JP4715999B2 (ja) 水性ガスシフト反応用の触媒及びその製造方法
CN108367278B (zh) 用于化学工艺强化的方法和设备
JP4665044B2 (ja) 燃料改質用触媒、改質器及び燃料電池システム
JP5910486B2 (ja) 排ガス浄化用触媒
JP4120862B2 (ja) Coシフト反応用触媒
JP2010184202A (ja) 水素生成触媒及びその製造方法
JP4882048B2 (ja) メタンの酸化的除去用触媒及びメタンの酸化的除去方法
JP5287222B2 (ja) Pm酸化触媒、パティキュレートフィルタ及びpm酸化触媒の製造方法
Mileva et al. NANOSIZED MESOPOROUS CuO-CeO 2-TiO 2 AND CuO-ZrO 2-TiO 2 COMPOSITES AS CATALYSTS FOR METHANOL DECOMPOSITION: EFFECT OF MODIFICATION PROCEDURE.
JP2018075550A (ja) 排ガス浄化用三元触媒及びその製造方法、並びに排ガス浄化用触媒コンバータ

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131217

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131230

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5459322

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees