JPWO2012169256A1 - モリブデン造粒粉の製造方法およびモリブデン造粒粉 - Google Patents
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Abstract
容器に有機溶媒を入れる工程と、上記有機溶媒にバインダーとしてのポリビニルブチラールを添加する工程と、上記有機溶媒を攪拌しながら、カリウム成分、アルミニウム成分およびケイ素成分の少なくとも1種を添加した平均粒径が1〜10μmであるモリブデン粉末を投入することによりモリブデン含有溶液を調製する工程と、上記モリブデン含有溶液を分散するスプレードライヤーの回転板の回転数をA(rpm)とし、造粒粉の平均粒径をB(μm)としたときに、A/Bが50〜700の範囲内であるスプレードライヤーにモリブデン含有溶液を投入し、上記モリブデン含有溶液を分散すると共に乾燥してモリブデン造粒粉を調製する工程と、を有することを特徴とするモリブデン造粒粉の製造方法である。この構成によれば、目的とする平均粒径を有するモリブデン造粒粉を高い歩留りで効率的に製造できる。
Description
本発明は、モリブデン造粒粉の製造方法およびモリブデン造粒粉に関する。
モリブデン(Mo)は、融点が2620℃と高いことから耐熱材料として様々な分野に使用されている。例えば、溶射用材料、焼結炉用板材、電極部品、マグネトロン用ステム、スパッタリングターゲットなどの構成材として使用されている。溶射用材料は、Mo粉末やMoロッドで供給する方法がある。また、板材は、焼結で製造する場合や、圧延と鍛造を組合せて製造する場合がある。また、電極部品などは、板材を加工する場合、あるいは線引き加工してワイヤ加工される場合や焼結法によって製造される場合がある。
このようにMoを使用する場合、(1)Moを粉末のまま使用する方法、(2)Moを焼結した焼結体として使用する方法、(3)圧延、鍛造、鋳造などにより板状に加工する方法、(4)線引き加工してワイヤとして使用する方法などが挙げられる。
いずれの使用方法であっても、Mo粉末かMo溶湯を初期原料として用いることになる。Mo溶湯は、Mo材料を溶解し鋳造して目的とする形状に加工する方法で使用される。Mo溶湯を使用する方法は、金型に溶湯を流し込む方法であるため、比較的単純で、かつ大きな形状を有する製品に加工することができる方法である。一方、Moは前述の通り、高融点材料であるため、Mo溶湯を厳格に管理するためには、耐熱性が高い大型設備が必要である。また、Mo溶湯を型に流し込む方法であるため、複雑な形状には対応できない欠点がある。
このため、Mo粉末を焼結してMo焼結体として使用することが実施されている。この焼結法であれば、金型にMo粉末を充填することにより、複雑な形状の製品でも作製が可能である。例えば、特許第4157369号公報(特許文献1)では、断面がコの字状(カップ形状)の冷陰極管用焼結電極が開示されている。特許文献1では焼結法を用いて直径が1〜2mm程度のカップ形状の電極を作製している。
焼結法により、焼結体を作製する場合、Mo粉末に対して、造粒工程、成形工程、脱脂工程、焼結工程などが実施される。これまで焼結法では、脱脂工程や焼結工程の改良を中心にして改良が進められてきた。特許文献1の[0027]段落では、脱脂工程をウエット水素雰囲気中で実施する一方、焼結工程を水素雰囲気で実施することが開示されている。これにより焼結性が上昇し、歩留りの向上が図られている。
また、国際公開WO2011/004887A1のパンフレット(特許文献2)では、平均粒径が0.5〜100μmである高純度モリブデン粉末の製造方法が開示されている。特許文献2では、1次粒子の割合が50%以上であるモリブデン粉末が開示されている。
これまでのMo焼結法においては、Mo原料粉末、脱脂工程および焼結工程に関しての改良が進められてきた。しかしながら、その製品歩留りは必ずしも100%には到達できなかった。このような現象は、カリウム等のドープ剤を添加したMo粉末を使ったMo焼結体に関しても同様に生起していた。
このようにMoを使用する場合、(1)Moを粉末のまま使用する方法、(2)Moを焼結した焼結体として使用する方法、(3)圧延、鍛造、鋳造などにより板状に加工する方法、(4)線引き加工してワイヤとして使用する方法などが挙げられる。
いずれの使用方法であっても、Mo粉末かMo溶湯を初期原料として用いることになる。Mo溶湯は、Mo材料を溶解し鋳造して目的とする形状に加工する方法で使用される。Mo溶湯を使用する方法は、金型に溶湯を流し込む方法であるため、比較的単純で、かつ大きな形状を有する製品に加工することができる方法である。一方、Moは前述の通り、高融点材料であるため、Mo溶湯を厳格に管理するためには、耐熱性が高い大型設備が必要である。また、Mo溶湯を型に流し込む方法であるため、複雑な形状には対応できない欠点がある。
このため、Mo粉末を焼結してMo焼結体として使用することが実施されている。この焼結法であれば、金型にMo粉末を充填することにより、複雑な形状の製品でも作製が可能である。例えば、特許第4157369号公報(特許文献1)では、断面がコの字状(カップ形状)の冷陰極管用焼結電極が開示されている。特許文献1では焼結法を用いて直径が1〜2mm程度のカップ形状の電極を作製している。
焼結法により、焼結体を作製する場合、Mo粉末に対して、造粒工程、成形工程、脱脂工程、焼結工程などが実施される。これまで焼結法では、脱脂工程や焼結工程の改良を中心にして改良が進められてきた。特許文献1の[0027]段落では、脱脂工程をウエット水素雰囲気中で実施する一方、焼結工程を水素雰囲気で実施することが開示されている。これにより焼結性が上昇し、歩留りの向上が図られている。
また、国際公開WO2011/004887A1のパンフレット(特許文献2)では、平均粒径が0.5〜100μmである高純度モリブデン粉末の製造方法が開示されている。特許文献2では、1次粒子の割合が50%以上であるモリブデン粉末が開示されている。
これまでのMo焼結法においては、Mo原料粉末、脱脂工程および焼結工程に関しての改良が進められてきた。しかしながら、その製品歩留りは必ずしも100%には到達できなかった。このような現象は、カリウム等のドープ剤を添加したMo粉末を使ったMo焼結体に関しても同様に生起していた。
本発明者らは、Mo粉末を初期原料として使用した製品の歩留りが向上しない原因を追究した。その結果、造粒粉のサイズ、密度、流動性などのばらつきが大きいと、成形工程での原料粉の充填密度や供給量にばらつきを生じ、製品歩留りが低下する原因となることが判明した。また、溶射粉としてMo造粒粉を使用する場合には、溶射フレーム炎への供給量(供給速度)にばらつきが生じ、溶射膜としての特性が安定化しないなどの問題が生じていた。この原因を追及したところ、造粒工程において目的とする造粒粉の平均粒径に応じた管理がなされていないことに原因があることを見出した。
本発明は、このような問題を解決するためのものであり、Mo製品(粉末または焼結体)の品質の安定化や歩留りを向上でき、モリブデン造粒粉を効率的に製造する方法を提供するためのものである。
本発明は、このような問題を解決するためのものであり、Mo製品(粉末または焼結体)の品質の安定化や歩留りを向上でき、モリブデン造粒粉を効率的に製造する方法を提供するためのものである。
本発明の実施形態に係るモリブデン造粒粉の製造方法は、容器に有機溶媒を入れる工程と、上記有機溶媒にバインダーとしてのポリビニルブチラールを添加する工程と、上記有機溶媒を攪拌しながら、カリウム成分、アルミニウム成分およびケイ素成分の少なくとも1種を添加した平均粒径が1〜10μmであるモリブデン粉末を投入することによりモリブデン含有溶液を調製する工程と、上記モリブデン含有溶液を分散するスプレードライヤーの回転板の回転数をA(rpm)とし、造粒粉の平均粒径をB(μm)としたときに、A/Bが50〜700の範囲内であるスプレードライヤーにモリブデン含有溶液を投入し、上記モリブデン含有溶液を分散すると共に乾燥してモリブデン造粒粉を調製する工程と、を有することを特徴とするものである。
また、スプレードライヤーによる造粒工程完了後のモリブデン造粒粉に対して、その平均粒径Bの2〜3倍のメッシュ径を有する篩を通す篩分け工程をさらに実施することが好ましい。また、モリブデン造粒粉の平均粒径Bが20〜150μmであることが好ましい。また、スプレードライヤーの回転板の回転数Aが5000〜16000rpmであることが好ましい。また、有機溶媒がエタノールであることが好ましい。
また、カリウム成分の含有量(添加量)が、カリウム元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることが好ましい。また、アルミニウム成分の含有量が、アルミニウム元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることが好ましい。また、ケイ素成分の含有量が、ケイ素元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることが好ましい。
また、投入するモリブデン粉末の合計量を100体積部にしたときに、バインダーの体積を3〜20体積部とすることが好ましい。また、得られるモリブデン造粒粉の見掛け密度が1.3〜3.0g/ccであることが好ましい。また、モリブデン含有溶液は、モリブデン粉末量を100質量部としたとき、有機溶媒量が0.2〜1リットルであることが好ましい。
また、スプレードライヤーは、100〜300℃の熱風を供給しながらモリブデン造粒粉の乾燥を実施することが好ましい。また、スプレードライヤーは、大気圧以下の減圧雰囲気でモリブデン造粒粉の乾燥を実施することが好ましい。また、得られた造粒粉の流動性が50sec/50g以下であることが好ましい。
また、本発明に係るモリブデン造粒粉は、カリウム成分、アルミニウム成分およびケイ素成分の少なくとも1種を含み、見掛け密度が1.3〜3.0g/ccであることを特徴とするものである。
また、モリブデン造粒粉の平均粒径が20〜150μmであることが好ましい。また、モリブデン粉末の合計量を100体積部にしたとき、バインダーの体積が3〜20体積部であることが好ましい。また、モリブデン造粒粉の流動性が50sec/50g以下であることが好ましい。
また、スプレードライヤーによる造粒工程完了後のモリブデン造粒粉に対して、その平均粒径Bの2〜3倍のメッシュ径を有する篩を通す篩分け工程をさらに実施することが好ましい。また、モリブデン造粒粉の平均粒径Bが20〜150μmであることが好ましい。また、スプレードライヤーの回転板の回転数Aが5000〜16000rpmであることが好ましい。また、有機溶媒がエタノールであることが好ましい。
また、カリウム成分の含有量(添加量)が、カリウム元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることが好ましい。また、アルミニウム成分の含有量が、アルミニウム元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることが好ましい。また、ケイ素成分の含有量が、ケイ素元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることが好ましい。
また、投入するモリブデン粉末の合計量を100体積部にしたときに、バインダーの体積を3〜20体積部とすることが好ましい。また、得られるモリブデン造粒粉の見掛け密度が1.3〜3.0g/ccであることが好ましい。また、モリブデン含有溶液は、モリブデン粉末量を100質量部としたとき、有機溶媒量が0.2〜1リットルであることが好ましい。
また、スプレードライヤーは、100〜300℃の熱風を供給しながらモリブデン造粒粉の乾燥を実施することが好ましい。また、スプレードライヤーは、大気圧以下の減圧雰囲気でモリブデン造粒粉の乾燥を実施することが好ましい。また、得られた造粒粉の流動性が50sec/50g以下であることが好ましい。
また、本発明に係るモリブデン造粒粉は、カリウム成分、アルミニウム成分およびケイ素成分の少なくとも1種を含み、見掛け密度が1.3〜3.0g/ccであることを特徴とするものである。
また、モリブデン造粒粉の平均粒径が20〜150μmであることが好ましい。また、モリブデン粉末の合計量を100体積部にしたとき、バインダーの体積が3〜20体積部であることが好ましい。また、モリブデン造粒粉の流動性が50sec/50g以下であることが好ましい。
本発明に係るモリブデン造粒粉の製造方法によれば、造粒工程において、有機溶媒を攪拌しながら、ドープ剤添加モリブデン粉末およびバインダーを供給し、さらに目的とする造粒粉の平均粒径とスプレードライヤーの回転速度を所定範囲に制御しているために、平均粒径、見かけ密度および流動性が優れたモリブデン造粒粉を、高い歩留りで効率的に製造することができる。
本発明の一実施形態に係るモリブデン造粒粉の製造方法は、容器に有機溶媒を入れる工程と、上記有機溶媒にバインダーとしてのポリビニルブチラールを添加する工程と、上記有機溶媒を攪拌しながら、カリウム成分、アルミニウム成分およびケイ素成分の少なくとも1種を添加した平均粒径が1〜10μmであるモリブデン粉末を投入することによりモリブデン含有溶液を調製する工程と、上記モリブデン含有溶液を分散するスプレードライヤーの回転板の回転数をA(rpm)とし、造粒粉の平均粒径をB(μm)としたときに、A/Bが50〜700の範囲内であるスプレードライヤーにモリブデン含有溶液を投入し、上記モリブデン含有溶液を分散すると共に乾燥してモリブデン造粒粉を調製する工程と、を有することを特徴とするものである。
図1に、モリブデン含有溶液を調製する工程の一例を示す。図中、符号1は容器(モリブデン含有溶液を調製するための容器)であり、2は有機溶媒であり、3はモリブデン粉末(ドープ剤含有モリブデン粉末)であり、4はバインダーであり、5は必要に応じて再度投入する有機溶媒であり、6はモリブデン含有溶液である。
まず、容器1に有機溶媒2を注入する。この有機溶媒としては、アルコールなどが使用できる。アルコールとしては、エタノール(エチルアルコール:C2H5OH)が好ましい。エチルアルコールは、後述するバインダー(ポリビニルブチラール)を溶解し易いので好ましい。
また、容器1に有機溶媒2を注入した後に、必要に応じ50℃以下に加熱する工程を実施してもよい。50℃を超える加熱では有機溶媒が過度に蒸発してしまうので好ましくない。50℃以下の加熱であれば、バインダーを効率的に溶解することができる。
図1に、モリブデン含有溶液を調製する工程の一例を示す。図中、符号1は容器(モリブデン含有溶液を調製するための容器)であり、2は有機溶媒であり、3はモリブデン粉末(ドープ剤含有モリブデン粉末)であり、4はバインダーであり、5は必要に応じて再度投入する有機溶媒であり、6はモリブデン含有溶液である。
まず、容器1に有機溶媒2を注入する。この有機溶媒としては、アルコールなどが使用できる。アルコールとしては、エタノール(エチルアルコール:C2H5OH)が好ましい。エチルアルコールは、後述するバインダー(ポリビニルブチラール)を溶解し易いので好ましい。
また、容器1に有機溶媒2を注入した後に、必要に応じ50℃以下に加熱する工程を実施してもよい。50℃を超える加熱では有機溶媒が過度に蒸発してしまうので好ましくない。50℃以下の加熱であれば、バインダーを効率的に溶解することができる。
次に、有機溶媒2にバインダー4を添加する工程を実施する。バインダーの材質はポリビニルブチラール(PVB:polyvinyl butyral)を用いる。ポリビニルブチラールは、有機溶媒、特にエタノールに容易に溶解する。また、均一に有機溶媒に溶け込ませるには、有機溶媒を攪拌しながらバインダーを添加することが好ましい。
次に、有機溶媒を攪拌しながら平均粒径が1〜10μmであるモリブデン粉末を投入することにより、モリブデン含有溶液を調製する工程を実施する。モリブデン粉末の平均粒径とは、一次粒径の平均粒径である。ここではFSSS法(フィッシャー法)により求めた値を平均粒径とする。平均粒径が1μm未満では、Mo粉が過小であり、製造することが困難であり、コストアップの要因となる。
一方、平均粒径が10μmを超えると、一次粒径が過大になり、モリブデン造粒粉の特性を安定させることが困難となる。そのため、モリブデン粉末の平均粒径は1〜10μmとされる。さらには2〜5μmが好ましい。また、モリブデン粉末を一度に大量に投入すると、モリブデン粉末が必要以上に凝集し易くなるので、少量ずつ、例えば0.5〜2kgずつ投入することが好ましい。
次に、有機溶媒を攪拌しながら平均粒径が1〜10μmであるモリブデン粉末を投入することにより、モリブデン含有溶液を調製する工程を実施する。モリブデン粉末の平均粒径とは、一次粒径の平均粒径である。ここではFSSS法(フィッシャー法)により求めた値を平均粒径とする。平均粒径が1μm未満では、Mo粉が過小であり、製造することが困難であり、コストアップの要因となる。
一方、平均粒径が10μmを超えると、一次粒径が過大になり、モリブデン造粒粉の特性を安定させることが困難となる。そのため、モリブデン粉末の平均粒径は1〜10μmとされる。さらには2〜5μmが好ましい。また、モリブデン粉末を一度に大量に投入すると、モリブデン粉末が必要以上に凝集し易くなるので、少量ずつ、例えば0.5〜2kgずつ投入することが好ましい。
また、バインダーの全量が有機溶媒に溶解したことを確認した後に、モリブデン粉末を添加することが好ましい。バインダーを粉末状態で添加すると、溶解したか否かが肉眼で判別できる。なお、バインダーとしてポリビニルブチラール粉末を使用したとき、ポリビニルブチラール粉末が有機溶媒(エタノール)に完全に溶解すると、モリブデン粉末を添加する前の有機溶媒(エタノール)が半透明になる。バインダーが有機溶媒(エタノール)に完全に溶解したか否かを判定し易くするためにも、バインダーを添加した後、モリブデン粉末を添加する順番であることが好ましい。
有機溶媒2に、モリブデン粉末3、バインダー4を添加して、モリブデン含有溶液6を調製するに際して、投入するモリブデン粉末の合計量を100体積部にしたとき、バインダーの体積を3〜20体積部とすることが好ましい。バインダーはモリブデン造粒粉を形成する際に、モリブデン粉末同士を接着する接着剤の役割を果たす。そのため、モリブデン粉末の合計量を100体積部としたとき、バインダーの添加量が3体積部未満ではバインダー量が少なすぎて均一な造粒粉を得られない恐れがある。また、バインダーの添加量が20体積部を超えて大きくなると、モリブデン粉末同士の隙間にバインダーが入りすぎて、密度のばらつきが大きな造粒粉となってしまう。そのため、バインダーの添加量はモリブデン粉末100体積部に対し、3〜20体積部、さらには5〜15体積部であることが好ましい。
有機溶媒2に、モリブデン粉末3、バインダー4を添加して、モリブデン含有溶液6を調製するに際して、投入するモリブデン粉末の合計量を100体積部にしたとき、バインダーの体積を3〜20体積部とすることが好ましい。バインダーはモリブデン造粒粉を形成する際に、モリブデン粉末同士を接着する接着剤の役割を果たす。そのため、モリブデン粉末の合計量を100体積部としたとき、バインダーの添加量が3体積部未満ではバインダー量が少なすぎて均一な造粒粉を得られない恐れがある。また、バインダーの添加量が20体積部を超えて大きくなると、モリブデン粉末同士の隙間にバインダーが入りすぎて、密度のばらつきが大きな造粒粉となってしまう。そのため、バインダーの添加量はモリブデン粉末100体積部に対し、3〜20体積部、さらには5〜15体積部であることが好ましい。
また、モリブデン含有溶液は、モリブデン粉末量を100質量部としたときに、有機溶媒量が0.2〜1リットルであることが好ましい。スプレードライヤーには、モリブデン含有溶液の状態で投入される。このとき、モリブデン粉末量100質量部に対し、有機溶媒量が0.2リットル未満では有機溶媒の量が少なすぎてモリブデン含有溶液の粘性が上昇し、スプレードライヤーに安定的に供給し難い。
また、有機溶媒量が1リットルを超えると、有機溶媒の量が多すぎて、安定供給が困難である。なお、有機溶媒量が多いときは、攪拌しながら供給することにより安定供給する方法もある。このスプレードライヤーへのモリブデン含有溶液の供給は、機械化して自動化することも可能である。
また、必要に応じて、有機溶媒5を追加投入してもよい。例えば、エタノールは沸点が78.3℃と比較的低いため、バインダーおよびモリブデン粉末を投入し、混合している段階でエタノールが蒸発して溶媒量が大きく変わってしまう恐れもある。また、容器1として、20リットル以上の容積を有する大きな容器を使用する場合には、有機溶媒量を最終的な量の30〜60%でバインダーおよびモリブデン粉末と混合した後、残りの有機溶媒量70〜40%を追加投入してモリブデン粉末と有機溶媒量との配合量を調整する方法も可能である。バインダーが有機溶媒に完全に溶解したか否かを目視により確認し易くするためにも、有機溶媒を追加投入する方法は有効である。
また、有機溶媒量が1リットルを超えると、有機溶媒の量が多すぎて、安定供給が困難である。なお、有機溶媒量が多いときは、攪拌しながら供給することにより安定供給する方法もある。このスプレードライヤーへのモリブデン含有溶液の供給は、機械化して自動化することも可能である。
また、必要に応じて、有機溶媒5を追加投入してもよい。例えば、エタノールは沸点が78.3℃と比較的低いため、バインダーおよびモリブデン粉末を投入し、混合している段階でエタノールが蒸発して溶媒量が大きく変わってしまう恐れもある。また、容器1として、20リットル以上の容積を有する大きな容器を使用する場合には、有機溶媒量を最終的な量の30〜60%でバインダーおよびモリブデン粉末と混合した後、残りの有機溶媒量70〜40%を追加投入してモリブデン粉末と有機溶媒量との配合量を調整する方法も可能である。バインダーが有機溶媒に完全に溶解したか否かを目視により確認し易くするためにも、有機溶媒を追加投入する方法は有効である。
また、本発明のモリブデン粉末は、カリウム成分、アルミニウム成分およびケイ素成分の少なくとも1種を添加したモリブデン粉末である。カリウム成分、アルミニウム成分またはケイ素成分としては、それぞれ単体元素、酸化物、複合酸化物などの化合物が用いられる。
また、カリウム成分の含有量(添加量)は、カリウム元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることが好ましい。また、アルミニウム成分の含有量は、アルミニウム元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることが好ましい。また、ケイ素成分の含有量は、ケイ素元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることが好ましい。それぞれ100質量ppm未満では添加の効果が小さく、1000質量ppmを超えると却って特性が低下する。また、ドープ剤は、1種であっても2種以上を添加してもよい。
また、カリウム成分、アルミニウム成分、ケイ素成分は、ドープ剤と呼ばれる成分である。これらドープ剤を添加することにより、高純度モリブデンと比較して、再結晶温度が高くなり、高温強度が高くなる。また、再結晶熱処理後に延性が向上することから、ワイヤへの線引き加工などの二次加工性が向上する。二次加工は、ワイヤへの線引き加工の他に、ワイヤの折り曲げ加工、板材(Mo焼結体からなる板材)の圧延加工、曲げ加工や打ち抜き加工などが挙げられる。また、ワイヤの特性としてはノンサグ性、高温耐振性、耐黒化性の向上も図ることができる。
また、ドープ剤を添加したモリブデン粉末の製造方法は、特に限定されるものではないが、次のものが例示される。
まず、モリブデン粉末の原料として、アンモニウムダイモリブデート((NH4)2・Mo2O7))を用意し、水素気流中において温度600〜750℃で加熱し、Mo酸化物を得る。このMo酸化物に珪酸カリウムを、Mo元素単体当たりのカリウム元素単体量が100〜1000質量ppmになるように添加する。このとき純水を加え、混練して、攪拌しながら100〜140℃に加熱して乾燥し、ドープ剤添加モリブデン酸化物粉末とする。ドープ剤添加モリブデン酸化物粉末を水素雰囲気中において温度1000〜1200℃で2〜5時間加熱し還元することにより、ドープ剤添加モリブデン粉末を得ることができる。
なお、上記はドープ剤としてカリウムを添加した例を示したものである。ケイ素やアルミニウムをドープ剤として添加する場合は、それぞれケイ素単体またはケイ素化合物、アルミニウム単体またはアルミニウム化合物を添加する。また、上記カリウム成分として珪酸カリウムを用いたが、これに限定されるものではなく、他のカリウム化合物を用いてもよい。
また、カリウム、アルミニウムおよびケイ素を2種以上添加する場合は、それぞれの元素または化合物を添加してドープ剤添加モリブデン粉末を得れば良い。
ドープ剤添加モリブデン粉末の純度に関しては特に限定されるものではないが、Moとドープ剤との合計が99質量%以上、さらには99.9%質量以上であることが好ましい。モリブデン粉末の主な不純物は、Fe(鉄)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)が挙げられる。また、これ以外の不純物としては、Ni(ニッケル)、Na(ナトリウム)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Cd(カドミウム)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Sn(錫)が挙げられる。
モリブデンの純度の測定は、Fe(鉄)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Ni(ニッケル)、Na(ナトリウム)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Cd(カドミウム)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Sn(錫)の合計量を100質量%から差し引いて求めるものとする。また、それぞれの不純物量としては、Fe(鉄)は10質量ppm(wtppm)以下、Ca(カルシウム)は30質量ppm以下、Mg(マグネシウム)は20質量ppm以下、Ni(ニッケル)は50質量ppm以下、Na(ナトリウム)は10質量ppm以下、Pb(鉛)は70質量ppm以下、Bi(ビスマス)は70質量ppm以下、Cd(カドミウム)は70質量ppm以下、Cu(銅)は70質量ppm以下、Mn(マンガン)は20質量ppm以下、Sn(錫)は30質量ppm以下であることが好ましい。
また、上記金属不純物以外の不純物として、酸素などのガス成分が挙げられる。酸素量は7質量%以下とする一方、窒素量は7質量%以下であることが好ましい。
また、カリウム成分の含有量(添加量)は、カリウム元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることが好ましい。また、アルミニウム成分の含有量は、アルミニウム元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることが好ましい。また、ケイ素成分の含有量は、ケイ素元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることが好ましい。それぞれ100質量ppm未満では添加の効果が小さく、1000質量ppmを超えると却って特性が低下する。また、ドープ剤は、1種であっても2種以上を添加してもよい。
また、カリウム成分、アルミニウム成分、ケイ素成分は、ドープ剤と呼ばれる成分である。これらドープ剤を添加することにより、高純度モリブデンと比較して、再結晶温度が高くなり、高温強度が高くなる。また、再結晶熱処理後に延性が向上することから、ワイヤへの線引き加工などの二次加工性が向上する。二次加工は、ワイヤへの線引き加工の他に、ワイヤの折り曲げ加工、板材(Mo焼結体からなる板材)の圧延加工、曲げ加工や打ち抜き加工などが挙げられる。また、ワイヤの特性としてはノンサグ性、高温耐振性、耐黒化性の向上も図ることができる。
また、ドープ剤を添加したモリブデン粉末の製造方法は、特に限定されるものではないが、次のものが例示される。
まず、モリブデン粉末の原料として、アンモニウムダイモリブデート((NH4)2・Mo2O7))を用意し、水素気流中において温度600〜750℃で加熱し、Mo酸化物を得る。このMo酸化物に珪酸カリウムを、Mo元素単体当たりのカリウム元素単体量が100〜1000質量ppmになるように添加する。このとき純水を加え、混練して、攪拌しながら100〜140℃に加熱して乾燥し、ドープ剤添加モリブデン酸化物粉末とする。ドープ剤添加モリブデン酸化物粉末を水素雰囲気中において温度1000〜1200℃で2〜5時間加熱し還元することにより、ドープ剤添加モリブデン粉末を得ることができる。
なお、上記はドープ剤としてカリウムを添加した例を示したものである。ケイ素やアルミニウムをドープ剤として添加する場合は、それぞれケイ素単体またはケイ素化合物、アルミニウム単体またはアルミニウム化合物を添加する。また、上記カリウム成分として珪酸カリウムを用いたが、これに限定されるものではなく、他のカリウム化合物を用いてもよい。
また、カリウム、アルミニウムおよびケイ素を2種以上添加する場合は、それぞれの元素または化合物を添加してドープ剤添加モリブデン粉末を得れば良い。
ドープ剤添加モリブデン粉末の純度に関しては特に限定されるものではないが、Moとドープ剤との合計が99質量%以上、さらには99.9%質量以上であることが好ましい。モリブデン粉末の主な不純物は、Fe(鉄)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)が挙げられる。また、これ以外の不純物としては、Ni(ニッケル)、Na(ナトリウム)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Cd(カドミウム)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Sn(錫)が挙げられる。
モリブデンの純度の測定は、Fe(鉄)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Ni(ニッケル)、Na(ナトリウム)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Cd(カドミウム)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Sn(錫)の合計量を100質量%から差し引いて求めるものとする。また、それぞれの不純物量としては、Fe(鉄)は10質量ppm(wtppm)以下、Ca(カルシウム)は30質量ppm以下、Mg(マグネシウム)は20質量ppm以下、Ni(ニッケル)は50質量ppm以下、Na(ナトリウム)は10質量ppm以下、Pb(鉛)は70質量ppm以下、Bi(ビスマス)は70質量ppm以下、Cd(カドミウム)は70質量ppm以下、Cu(銅)は70質量ppm以下、Mn(マンガン)は20質量ppm以下、Sn(錫)は30質量ppm以下であることが好ましい。
また、上記金属不純物以外の不純物として、酸素などのガス成分が挙げられる。酸素量は7質量%以下とする一方、窒素量は7質量%以下であることが好ましい。
次に、得られたモリブデン含有溶液をスプレードライヤーに投入し造粒する工程を実施する。図2にスプレードライヤーによる造粒工程の一例を示す。図中、符号1はモリブデン含有溶液を入れた容器であり、6はモリブデン含有溶液であり、7はモリブデン含有水溶液の投入口であり、8は回転板であり、9はモリブデン造粒粉であり、10はスプレードライヤーの外壁であり、11はモリブデン造粒粉の回収容器である。
前記工程にて調製されたモリブデン含有溶液6を投入口7に流し込む。投入口7への投入速度は、10〜80cc/分が好ましい。投入速度が10cc/分未満では投入量が少なすぎて量産性が悪化する。一方、投入速度が80cc/分を超えると投入量が過多になり、得られる造粒粉の特性にばらつきを生じる。
前記工程にて調製されたモリブデン含有溶液6を投入口7に流し込む。投入口7への投入速度は、10〜80cc/分が好ましい。投入速度が10cc/分未満では投入量が少なすぎて量産性が悪化する。一方、投入速度が80cc/分を超えると投入量が過多になり、得られる造粒粉の特性にばらつきを生じる。
次に、投入されたモリブデン含有溶液6は、回転板8上に供給される。回転板8は一定の回転数で回転している。回転している回転板8にモリブデン含有溶液6が供給されると、一定量ずつ弾かれ表面張力により、球状のモリブデン造粒粉9が形成される。モリブデン造粒粉9はスプレードライヤーの外壁10に沿って落下し、モリブデン造粒粉の回収容器11に回収される。
モリブデン造粒粉の平均粒径は、回転板8の回転速度との関連性が高い。そこで本発明では、スプレードライヤーの回転板の回転速度をA(rpm)とし、造粒粉の平均粒径をB(μm)としたときに、A/Bが50〜700の範囲に制御することを特徴とするものである。
モリブデン含有溶液6を回転板8に供給したとき、モリブデン含有溶液6は回転板8に一定量ずつ弾かれ、弾かれたモリブデン含有溶液6は表面張力により球状のモリブデン造粒粉になる。また、バインダーを添加していることからも均一な造粒粉を製造することができる。
モリブデン造粒粉の平均粒径は、回転板8の回転速度との関連性が高い。そこで本発明では、スプレードライヤーの回転板の回転速度をA(rpm)とし、造粒粉の平均粒径をB(μm)としたときに、A/Bが50〜700の範囲に制御することを特徴とするものである。
モリブデン含有溶液6を回転板8に供給したとき、モリブデン含有溶液6は回転板8に一定量ずつ弾かれ、弾かれたモリブデン含有溶液6は表面張力により球状のモリブデン造粒粉になる。また、バインダーを添加していることからも均一な造粒粉を製造することができる。
上記の比率A/Bが50未満では、目的とする造粒粉の平均粒径に対して回転板の回転速度が不足しているため、目的とする造粒粉の平均粒径Bが得られない。また、A/Bが50未満の場合は、目的とする造粒粉の平均粒径Bに対して大きな平均粒径を有する造粒粉となる。
一方、A/Bが700を超えると、目的とする造粒粉の平均粒径に対して回転板の回転速度が速すぎるため、目的とする造粒粉の平均粒径Bが得られない。また、A/Bが700を超えると目的とする造粒粉の平均粒径Bに対して、小さな平均粒径となる。
上記の比率A/Bを50〜700の範囲に制御することにより、目的とする造粒粉の平均粒径Bに対して±50%の範囲の平均粒径を有する造粒粉が得られる。例えば、目的とする造粒粉の平均粒径Bを50μmとしたとき、±50%の幅は50×0.5=25μmであるから平均粒径が25〜75μmの造粒粉が得られることを意味している。なお、造粒粉の平均粒径は拡大写真を使用して、そこに写る造粒粉の最大径を粒径とし、造粒粉100粒の平均値を造粒粉の平均粒径とする。
一方、A/Bが700を超えると、目的とする造粒粉の平均粒径に対して回転板の回転速度が速すぎるため、目的とする造粒粉の平均粒径Bが得られない。また、A/Bが700を超えると目的とする造粒粉の平均粒径Bに対して、小さな平均粒径となる。
上記の比率A/Bを50〜700の範囲に制御することにより、目的とする造粒粉の平均粒径Bに対して±50%の範囲の平均粒径を有する造粒粉が得られる。例えば、目的とする造粒粉の平均粒径Bを50μmとしたとき、±50%の幅は50×0.5=25μmであるから平均粒径が25〜75μmの造粒粉が得られることを意味している。なお、造粒粉の平均粒径は拡大写真を使用して、そこに写る造粒粉の最大径を粒径とし、造粒粉100粒の平均値を造粒粉の平均粒径とする。
また、モリブデン造粒粉の平均粒径Bは20〜150μmであることが好ましい。モリブデン造粒粉の平均粒径が20〜150μmの範囲であれば、様々な用途に適用できる。また、スプレードライヤーの回転板8の回転数Aは、5000〜16000rpmであることが好ましい。回転数Aが5000〜16000rpmの範囲であれば、モリブデン含有溶液が回転板上で効率的に弾かれ、目的とする平均粒径を有するモリブデン造粒粉が容易に得られる。
また、スプレードライヤーは、100〜300℃の熱風を供給しながらモリブデン造粒粉の乾燥を実施することが好ましい。スプレードライヤーの外壁内に100〜300℃の熱風を供給することにより、造粒粉中の有機溶媒を蒸発させ、バインダーによるモリブデン粉末同士の結合力を強化することができる。その結果、目的とする平均粒径を有し構造強度が高いモリブデン造粒粉を製造することができる。
ここで、上記熱風は図示しない熱風供給口からスプレードライヤーの外壁10内に供給され、図示しない排気口から排気される。熱風を供給口から排気口に排気しながら供給することにより、常に新鮮な熱風を供給することができ、造粒粉から蒸発した水分が他の造粒粉に取り込まれることを防止することができる。なお、熱風の供給温度が100℃未満では有機溶媒分の蒸発速度が遅い一方、300℃を超えると有機溶媒が瞬間的に蒸発し過ぎて、造粒粉の粒径にばらつきが発生する原因となる。
ここで、上記熱風は図示しない熱風供給口からスプレードライヤーの外壁10内に供給され、図示しない排気口から排気される。熱風を供給口から排気口に排気しながら供給することにより、常に新鮮な熱風を供給することができ、造粒粉から蒸発した水分が他の造粒粉に取り込まれることを防止することができる。なお、熱風の供給温度が100℃未満では有機溶媒分の蒸発速度が遅い一方、300℃を超えると有機溶媒が瞬間的に蒸発し過ぎて、造粒粉の粒径にばらつきが発生する原因となる。
また、スプレードライヤーは大気圧以下の減圧雰囲気でモリブデン造粒粉の乾燥を実施することが好ましい。スプレードライヤーの外壁10内を大気圧以下の減圧雰囲気とすることにより、造粒粉中の有機溶媒を蒸発し易くすることができる。なお、減圧雰囲気は、大気圧(1atm=1.01×105Pa)から100〜500Pa低い減圧雰囲気であることが好ましい。100Pa未満では減圧雰囲気とする効果が十分でなく、500Paを超えると減圧雰囲気を制御する負担が増加し、コストアップの要因となる。
本発明に係るモリブデン造粒粉の製造方法によれば、造粒粉の平均粒径に合わせてスプレードライヤーの回転板の回転速度を調整していることから、目的とする平均粒径に対し±50%の範囲の粒径を有するモリブデン造粒粉を得ることができる。
また、得られるモリブデン造粒粉の見かけ密度が1.3〜3.0g/ccであることが好ましい。前述のように本発明ではモリブデン造粒粉の平均粒径は拡大写真を使用して測定している。この測定方法であれば、外観上の平均粒径は判断できる。
しかしながら、造粒粉の内部に空隙が多く密度が小さな造粒粉が存在すると、その後の製品(溶射用粉末や焼結体)に使用するときに、部分的にモリブデン粉末の存在比率にばらつきが生じる。存在比率のばらつきは、製品のばらつきに繋がる。例えば、造粒粉を溶射用粉末に使用する場合、密度が大きく異なる造粒粉が存在すると、溶射フレーム炎に投入されるモリブデン粉末量にばらつきが生じ、結果として溶射Mo膜の特性にばらつきを生じる原因となる。また、焼結体を作製する場合は、成形金型に充填されるモリブデン量にばらつきが生じ、焼結体中のポアが必要以上に大きくなる恐れがある。
また、得られるモリブデン造粒粉の見かけ密度が1.3〜3.0g/ccであることが好ましい。前述のように本発明ではモリブデン造粒粉の平均粒径は拡大写真を使用して測定している。この測定方法であれば、外観上の平均粒径は判断できる。
しかしながら、造粒粉の内部に空隙が多く密度が小さな造粒粉が存在すると、その後の製品(溶射用粉末や焼結体)に使用するときに、部分的にモリブデン粉末の存在比率にばらつきが生じる。存在比率のばらつきは、製品のばらつきに繋がる。例えば、造粒粉を溶射用粉末に使用する場合、密度が大きく異なる造粒粉が存在すると、溶射フレーム炎に投入されるモリブデン粉末量にばらつきが生じ、結果として溶射Mo膜の特性にばらつきを生じる原因となる。また、焼結体を作製する場合は、成形金型に充填されるモリブデン量にばらつきが生じ、焼結体中のポアが必要以上に大きくなる恐れがある。
モリブデン造粒粉の見掛け密度が1.3g/cc未満であると、造粒粉中のモリブデン量が少なすぎて、その後の製品化における品質にばらつきが発生する原因となる。一方、見掛け密度が3.0g/ccを超えて過大になると、モリブデン粉末がぎっしり詰まった状態であるため、スプレードライヤーで安定的に製造することが困難になる。見掛け密度の測定は、JIS−Z−2504に準拠した測定方法で実施するものとする。
また、得られたモリブデン造粒粉の流動性が50sec/50g以下であることが好ましい。この流動性の測定もJIS−Z−2504に準拠した測定方法で実施するものとする。流動性とは、造粒粉がどれだけ円滑迅速に移動する(流れる)かを示す指標である。流動性が良い(流動性50sec/50g以下)と、製品化する際の成形金型への供給充填が円滑迅速に実施できるのである。
つまりは、取扱い性が良好な造粒粉であると言える。また、流動性が良いということは、モリブデン造粒粉の形状が、球体に近いことを意味している。造粒粉が球体に近いとは、アスペクト比が1.5以下を示すものとする。図3にモリブデン造粒粉の一例を示す。図中、符号3はモリブデン粉末であり、9はモリブデン造粒粉であり、L1はモリブデン造粒粉9の短径であり、L2は長径である。アスペクト比は「長径L2/短径L1」により算出する。アスペクト比が1.0であるとは、真球に近い状態であることを示す。
また、得られたモリブデン造粒粉の流動性が50sec/50g以下であることが好ましい。この流動性の測定もJIS−Z−2504に準拠した測定方法で実施するものとする。流動性とは、造粒粉がどれだけ円滑迅速に移動する(流れる)かを示す指標である。流動性が良い(流動性50sec/50g以下)と、製品化する際の成形金型への供給充填が円滑迅速に実施できるのである。
つまりは、取扱い性が良好な造粒粉であると言える。また、流動性が良いということは、モリブデン造粒粉の形状が、球体に近いことを意味している。造粒粉が球体に近いとは、アスペクト比が1.5以下を示すものとする。図3にモリブデン造粒粉の一例を示す。図中、符号3はモリブデン粉末であり、9はモリブデン造粒粉であり、L1はモリブデン造粒粉9の短径であり、L2は長径である。アスペクト比は「長径L2/短径L1」により算出する。アスペクト比が1.0であるとは、真球に近い状態であることを示す。
このように本発明に係るモリブデン造粒粉の製造方法によれば、平均粒径、見掛け密度、流動性が優れたモリブデン造粒粉を歩留り良く効率的に製造することができる。
また、モリブデン造粒粉の平均粒径、特に粒度分布を制御する手段として、スプレードライヤーによる造粒工程完了後の造粒粉に対して、その平均粒径Bの2〜3倍のメッシュ径を有する篩を通す篩分け工程をさらに実施する方法もある。この篩分け工程を実施することにより、過大な造粒粉を除去することができる。これにより、さらに平均粒径のより厳格な制御が可能となる。また、篩分け工程により、過小な造粒粉を除去することも有効である。
また、モリブデン造粒粉の平均粒径、特に粒度分布を制御する手段として、スプレードライヤーによる造粒工程完了後の造粒粉に対して、その平均粒径Bの2〜3倍のメッシュ径を有する篩を通す篩分け工程をさらに実施する方法もある。この篩分け工程を実施することにより、過大な造粒粉を除去することができる。これにより、さらに平均粒径のより厳格な制御が可能となる。また、篩分け工程により、過小な造粒粉を除去することも有効である。
以上のように本発明の実施形態に係るモリブデン造粒粉の製造方法によれば、平均粒径、見かけ密度、流動性が優れたモリブデン造粒粉を歩留り良く効率的に製造することができる。そのため、各製品に応じた造粒粉を歩留り良く製造することができる。
これらのモリブデン造粒粉の用途としては、溶射用粉末、各種焼結体の原料粉などが挙げられる。溶射用粉末として、平均粒径、見かけ密度および流動性が優れたモリブデン造粒粉を使用することにより、モリブデン造粒粉の溶射フレーム炎への供給量(供給速度)を安定化させることができる。その結果、溶射膜の品質を均質なものとすることができる。また、各種焼結体の原料粉末としてモリブデン造粒粉を使用する場合に、平均粒径、見かけ密度および流動性が優れたモリブデン造粒粉を使用することにより、成形金型に対するモリブデン造粒粉の充填量を均質化できる。その結果、焼結体の密度などを安定化させることができる。特に、成形金型の形状に応じて、平均粒径を変化させることにより、さらに歩留りの向上を図ることができる。例えば、厚さが1mm以下の焼結体では造粒粉の平均粒径を50μm程度にする一方、厚さが5mm程度の焼結体では、造粒粉の平均粒径を100μm程度にすることにより、成形金型への充填を効率よく実施することができる。
これらのモリブデン造粒粉の用途としては、溶射用粉末、各種焼結体の原料粉などが挙げられる。溶射用粉末として、平均粒径、見かけ密度および流動性が優れたモリブデン造粒粉を使用することにより、モリブデン造粒粉の溶射フレーム炎への供給量(供給速度)を安定化させることができる。その結果、溶射膜の品質を均質なものとすることができる。また、各種焼結体の原料粉末としてモリブデン造粒粉を使用する場合に、平均粒径、見かけ密度および流動性が優れたモリブデン造粒粉を使用することにより、成形金型に対するモリブデン造粒粉の充填量を均質化できる。その結果、焼結体の密度などを安定化させることができる。特に、成形金型の形状に応じて、平均粒径を変化させることにより、さらに歩留りの向上を図ることができる。例えば、厚さが1mm以下の焼結体では造粒粉の平均粒径を50μm程度にする一方、厚さが5mm程度の焼結体では、造粒粉の平均粒径を100μm程度にすることにより、成形金型への充填を効率よく実施することができる。
(実施例)
(実施例1〜5および比較例1〜2)
表1に示すドープ剤添加モリブデン粉末と、バインダーとしてポリビニルブチラール(PVB)粉末およびエタノールを用意した。ステンレス製容器に、エタノールを注入し、常温で攪拌しながら、ポリビニルブチラール粉末を添加し、添加したポリビニルブチラール粉末を全て溶解させた。ポリビニルブチラール粉末が全て溶解したときは半透明の溶液となっていることが確認できた。その後、モリブデン粉末を1〜2kgずつ、合計40kg投入した。モリブデン粉末の攪拌に際して、エタノールが蒸発して不足する分は、必要に応じてエタノールを追加投入した。バインダーとしてポリビニルアルコール粉末を使用したモリブデン含有溶液を実施例1〜5とした。
ここまでのモリブデン含有溶液の調製工程の条件を下記表1,2に示す。
(実施例1〜5および比較例1〜2)
表1に示すドープ剤添加モリブデン粉末と、バインダーとしてポリビニルブチラール(PVB)粉末およびエタノールを用意した。ステンレス製容器に、エタノールを注入し、常温で攪拌しながら、ポリビニルブチラール粉末を添加し、添加したポリビニルブチラール粉末を全て溶解させた。ポリビニルブチラール粉末が全て溶解したときは半透明の溶液となっていることが確認できた。その後、モリブデン粉末を1〜2kgずつ、合計40kg投入した。モリブデン粉末の攪拌に際して、エタノールが蒸発して不足する分は、必要に応じてエタノールを追加投入した。バインダーとしてポリビニルアルコール粉末を使用したモリブデン含有溶液を実施例1〜5とした。
ここまでのモリブデン含有溶液の調製工程の条件を下記表1,2に示す。
次に、上記のように調製した実施例1〜5に係る各モリブデン含有溶液を使用して、スプレードライヤーによる造粒工程を実施した。スプレードライヤーによる造粒工程の条件を下記表3に示す。
上記実施例1A〜5Bおよび比較例1〜2の製造方法によって得られたモリブデン造粒粉の平均粒径、アスペクト比、見掛け密度、流動性および製品歩留りを調査した。
なお、平均粒径は得られたモリブデン造粒粉の任意の100粒を抜き出し、拡大写真を撮り、そこに写る最大径を求め100粒の平均値を平均粒径とした。また、アスペクト比は、同様の拡大写真を使用し、モリブデン造粒粉の短径L1および長径L2を求め、それぞれのL2/L1の平均値をアスペクト比とした。また、見掛け密度および流動性はJIS−Z−2504に準拠した測定方法により測定した。また、製品歩留りは、投入したモリブデン粉末40kg量と回収されたモリブデン造粒粉の合計量との比「(造粒粉の合計量/40kg)×100%」から算出した。
その測定結果を下記表4に示す。
なお、平均粒径は得られたモリブデン造粒粉の任意の100粒を抜き出し、拡大写真を撮り、そこに写る最大径を求め100粒の平均値を平均粒径とした。また、アスペクト比は、同様の拡大写真を使用し、モリブデン造粒粉の短径L1および長径L2を求め、それぞれのL2/L1の平均値をアスペクト比とした。また、見掛け密度および流動性はJIS−Z−2504に準拠した測定方法により測定した。また、製品歩留りは、投入したモリブデン粉末40kg量と回収されたモリブデン造粒粉の合計量との比「(造粒粉の合計量/40kg)×100%」から算出した。
その測定結果を下記表4に示す。
上記表4に示す結果から明らかなように、各実施例に係るモリブデン造粒粉の製造方法によって製造されたモリブデン造粒粉は、目的とする平均粒径Bに対するずれが小さく、アスペクト比、見掛け密度および流動性が優れていた。また、歩留りも高く効率の良い製造方法であることが確認できた。それに対し、A/Bが本発明での規定範囲外である比較例1および比較例2では、いずれのパラメータも悪化した特性を示した。
1…容器(モリブデン含有溶液を調製するための容器)
2…有機溶媒
3…モリブデン粉末(ドープ剤添加モリブデン粉末)
4…バインダー
5…必要に応じて再度投入する有機溶媒
6…モリブデン含有溶液
7…モリブデン含有溶液の投入口
8…回転板
9…モリブデン造粒粉
10…スプレードライヤーの外壁
11…モリブデン造粒粉の回収容器
2…有機溶媒
3…モリブデン粉末(ドープ剤添加モリブデン粉末)
4…バインダー
5…必要に応じて再度投入する有機溶媒
6…モリブデン含有溶液
7…モリブデン含有溶液の投入口
8…回転板
9…モリブデン造粒粉
10…スプレードライヤーの外壁
11…モリブデン造粒粉の回収容器
Claims (18)
- 容器に有機溶媒を入れる工程と、
上記有機溶媒にバインダーとしてのポリビニルブチラールを添加する工程と、
上記有機溶媒を攪拌しながら、カリウム成分、アルミニウム成分およびケイ素成分の少なくとも1種を添加した平均粒径が1〜10μmであるモリブデン粉末を投入することによりモリブデン含有溶液を調製する工程と、
上記モリブデン含有溶液を分散するスプレードライヤーの回転板の回転数をA(rpm)とし、造粒粉の平均粒径をB(μm)としたときに、A/Bが50〜700の範囲内であるスプレードライヤーにモリブデン含有溶液を投入し、上記モリブデン含有溶液を分散すると共に乾燥してモリブデン造粒粉を調製する工程と、
を有することを特徴とするモリブデン造粒粉の製造方法。 - 前記スプレードライヤーによる造粒工程完了後の造粒粉に対して、造粒粉の平均粒径Bの2〜3倍のメッシュ径を有する篩を通す篩分け工程をさらに実施することを特徴とする請求項1記載のモリブデン造粒粉の製造方法。
- 前記モリブデン造粒粉の平均粒径Bが20〜150μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモリブデン造粒粉の製造方法。
- 前記スプレードライヤーの回転板の回転数Aが5000〜16000rpmであることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のモリブデン造粒粉の製造方法。
- 前記有機溶媒がエタノールであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のモリブデン造粒粉の製造方法。
- 前記カリウム成分の含有量が、カリウム元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のモリブデン造粒粉の製造方法。
- 前記アルミニウム成分の含有量が、アルミニウム元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のモリブデン造粒粉の製造方法。
- 前記ケイ素成分の含有量が、ケイ素元素単体換算で100〜1000質量ppmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のモリブデン造粒粉の製造方法。
- 前記投入するモリブデン粉末の合計量を100体積部にしたときに、バインダーの体積を3〜20体積部とすることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のモリブデン造粒粉の製造方法。
- 前記得られるモリブデン造粒粉の見掛け密度が1.3〜3.0g/ccであることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のモリブデン造粒粉の製造方法。
- 前記モリブデン含有溶液は、モリブデン粉末量を100質量部としたとき、有機溶媒量が0.2〜1リットルであることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のモリブデン造粒粉の製造方法。
- 前記スプレードライヤーは、100〜300℃の熱風を供給しながらモリブデン造粒粉の乾燥を実施することを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載のモリブデン造粒粉の製造方法。
- 前記スプレードライヤーは、大気圧以下の減圧雰囲気でモリブデン造粒粉の乾燥を実施することを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載のモリブデン造粒粉の製造方法。
- 前記得られたモリブデン造粒粉の流動性が50sec/50g以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のモリブデン造粒粉の製造方法。
- カリウム成分、アルミニウム成分およびケイ素成分の少なくとも1種を含み、見掛け密度が1.3〜3.0g/ccであることを特徴とするモリブデン造粒粉。
- 前記モリブデン造粒粉の平均粒径が20〜150μmであること特徴とする請求項15に記載のモリブデン造粒粉。
- 前記モリブデン粉末の合計量を100体積部にしたときに、バインダーの体積が3〜20体積部であることを特徴とする請求項15または請求項16に記載のモリブデン造粒粉。
- 前記モリブデン粉末の流動性が50sec/50g以下であることを特徴とする請求項15乃至請求項17のいずれか1項に記載のモリブデン造粒粉。
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