JPWO2012144555A1 - ポリマーの溶解脱泡方法および多孔質膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2011年4月19日に、日本に出願された特願2011−092826号、および2011年4月19日に、日本に出願された特願2011−092827号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
溶解工程:膜形成性樹脂、開孔剤を溶媒に溶解して製膜原液を得る工程。
脱泡工程:前記製膜原液を脱泡する工程。
凝固工程:脱泡後の製膜原液を吐出手段(紡糸ノズル、Tダイ等)から吐出し、凝固液中で凝固させて多孔質膜を形成する工程。
また、本発明は、溶媒の揮発量を抑えつつより短時間で製膜原液を調製し、高い生産性で充分な品質の多孔質膜を製造できる多孔質膜の製造方法の提供を他の目的とする。
[1]ポリマーを溶媒に溶解してポリマー溶液を脱泡するポリマーの溶解脱泡方法であって、ゲージ圧−50〜−90kPaの条件下、かつ前記溶媒の当該減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で、ポリマーと溶媒を含む混合液を撹拌し、前記ポリマーの溶解とポリマー溶液の脱泡を同時に行ってポリマー溶液を得る溶解脱泡工程を有するポリマーの溶解脱泡方法。
[2]ポリマーと溶媒を含む混合液を、ゲージ圧−50〜−90kPaの条件下、かつ前記溶媒の前記減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で撹拌し、前記ポリマーの溶解とポリマー溶液の脱泡を同時に行って製膜原液を調製する原液調製工程と、前記製膜原液を凝固液中で凝固させて多孔質膜を形成する凝固工程と、を有する多孔質膜の製造方法。
[3]前記溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドである、[3]または[4]に記載の多孔質膜の製造方法。
[1]ポリマーを溶媒に溶解してポリマー溶液を脱泡するポリマーの溶解脱泡方法であって、ゲージ圧−50〜−90kPaの条件下で減圧しながら、前記溶媒の当該減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で、前記ポリマーを溶媒に溶解したポリマー溶液を撹拌し、ポリマー溶液を脱泡する脱泡工程を有するポリマーの溶解脱泡方法。
[2]前記脱泡工程の前に、ゲージ圧−50〜−90kPaの減圧条件下にして減圧を停止し、減圧条件を維持した状態で、前記溶媒の前記減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度とした状態で、前記ポリマーと溶媒を含む混合液を撹拌し、ポリマー溶液を脱泡する溶解脱泡工程を有する、[1]に記載のポリマーの溶解脱泡方法。
[3]ポリマーを溶媒に溶解させ、かつポリマー溶液を脱泡して製膜原液を調製する原液調製工程と、前記製膜原液を凝固液中で凝固させて多孔質膜を形成する凝固工程と、を有する多孔質膜の製造方法であって、前記原液調整工程が、ゲージ圧−50kPa以下の減圧条件下、かつ前記溶媒の当該減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で前記製膜原液を撹拌し、ポリマー溶液を脱泡する脱泡工程を有する多孔質膜の製造方法。
[4]前記原液調整工程が、前記脱泡工程の前に、ゲージ圧−50〜−90kPaの減圧条件下にして減圧を停止し、前記減圧条件を維持した状態で、前記溶媒の前記減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度とした状態で、前記ポリマーと溶媒を含む液を撹拌し、ポリマー溶液を脱泡して製膜原液を得る溶解脱泡工程を有する、[3]に記載の多孔質膜の製造方法。
[5]前記溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドである、[3]または[4]に記載の多孔質膜の製造方法。
本発明のポリマーの溶解脱泡方法によれば、ポリマーを溶媒に効率良く溶解し、かつポリマー溶液を脱泡することにより、溶媒の揮発量を抑えつつ良好な品質のポリマー溶液を得ることができる。
また、本発明の多孔質膜の製造方法によれば、溶媒の揮発量を抑えつつより短時間で製膜原液を調製でき、高い生産性で良好な品質の多孔質膜を製造できる。
本発明のポリマーの溶解脱泡方法は、ポリマーを溶媒に溶解してポリマー溶液を脱泡する方法であって、ゲージ圧−50〜−90kPaの減圧条件下、かつ溶媒の減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で、ポリマーと溶媒を含む混合液を撹拌し、ポリマーの溶解とポリマー溶液の脱泡を同時に行ってポリマー溶液を得る溶解脱泡工程を有する。
本発明の第一の態様におけるポリマーの溶解脱泡方法では、ゲージ圧−50〜−90kPaの条件下、かつ前記溶媒の前記減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で、減圧しながら、ポリマーと溶媒を含む混合液を撹拌し、前記ポリマーの溶解とポリマー溶液の脱泡を同時に行ってポリマー溶液を得る溶解脱泡工程を含む。これにより、撹拌によってポリマーが飛散して、飛散したポリマーがミキサー等の回転によって炭化することを抑制しつつ、ポリマーの溶解とポリマー溶液の脱泡を充分に効率的に行うことができる。
ここで、「減圧しながら」とは、真空ポンプ等の減圧手段を停止せずに、減圧手段を作動させて真空引きした状態を意味する。
本発明の溶解脱泡方法における減圧条件は、ポリマー溶液を短時間で充分に脱泡できる点から、ゲージ圧で−50kPa以下であり、−70kPa以下が好ましい。また、減圧条件は、ポリマーが飛散してミキサー等の回転によって炭化することを抑制できる点から、ゲージ圧で−90kPa以上であり、−80kPa以上が好ましい。
すなわち、ゲージ圧は−50〜−90kPaが好ましく、−60〜−80kPaがより好ましい。
第二の態様におけるポリマーの溶解脱泡方法では、−50〜−90kPaの減圧条件下で撹拌を行うことで、ポリマーを溶媒に溶解すると同時に、ある程度のポリマー溶液の脱泡も行う。
これにより、ポリマーの溶解とポリマー溶液の脱泡に要する時間をより短縮することができる。
また、第二の態様におけるポリマーの溶解脱泡方法では、ゲージ圧−50〜−90kPaの条件下まで減圧した後に減圧を停止し、減圧条件を維持した状態で撹拌を行うため、溶解脱泡中に減圧条件下において溶媒が揮発して装置外部に放出されることが抑制でき、ポリマー溶液濃度を一定に保つことができる。
また、ポリマー溶液がゲル化することを抑制することが容易になる。
ポリマーを溶媒に加える時期は、ポリマーの溶解性の点から、前記(1)、(2)のいずれの場合についても、溶解脱泡装置に溶媒を投入して撹拌を開始した後が好ましい。
本発明の溶解脱泡方法において使用するポリマーは、粉体状ポリマー、およびペレット状ポリマーから選択される少なくとも1種類以上のポリマーであることが好ましい。また、ペレット状のポリマーと、粉状のポリマーを使用する場合、ペレット状のポリマーの溶解性が向上する点から、粉状のポリマーを溶媒に投入して溶解した後に、ペレット状のポリマーを投入して前記攪拌装置により攪拌を開始し、溶媒に溶解させることが好ましい。
前記温度は、使用する溶媒の種類や真空度(すなわち、減圧条件)によって選定でき、50〜90℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。前記温度が下限値以上であれば、ポリマーの溶解がより効率的に行える。前記温度が上限値以下であれば、ポリマーが飛散してミキサー等の回転によって炭化することを抑制しやすい。
より具体的には、溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、減圧条件が−50〜−90kPaであり、かつ温度が50〜90℃であることが好ましく、減圧条件が−60〜−80kPaであり、かつ温度が60〜80℃であることがより好ましい。また、溶媒が4−メチル−2−ピロリドンの場合は、減圧条件が−50〜−90kPaであり、かつ温度が50〜90℃であることが好ましく、減圧条件が−60〜−80kPaであり、かつ温度が60〜80℃であることがより好ましい。
また、ポリマーと溶媒の質量比(ポリマー:溶媒)は、20:80〜50:50が好ましく、25:75〜40:60が好ましい。
本発明の溶解脱泡方法に使用できる溶解脱泡装置としては、真空引き可能な真空ポンプ等のような減圧手段と組み合わせることで装置内を所定の真空度に減圧でき、装置内を所定の温度に調節することができ、かつポリマーと溶媒を含む混合液を撹拌できる装置が使用できる。
具体例としては、例えば、プライミクス社製のT.K.コンビミックスS−300型溶解釜等が挙げられる。溶解脱泡工程における撹拌速度は、ミキサーの種類、大きさによっても異なるが、ポリマーの溶解効率が向上する点から、700rpm以上が好ましく、1300rpm以上がより好ましい。
また、撹拌速度は、ポリマーが飛散してミキサー等の回転によって炭化することを抑制しやすい点から、1800rpm以下が好ましく、1600rpm以下がより好ましい。
すなわち、攪拌速度は、700〜1800rpmが好ましく、1300〜1600rpmがより好ましい。
掻き取りミキサーとは、高粘度の混合液を高速ミキサーの作用範囲内に移動させ、均一攪拌、混練、および熱伝導を行うミキサーを意味する。 高粘度の混合液でも溶解脱泡容器内全体の混合撹拌ができる。温度の低下により増粘するポリマー溶液の製造には、溶解脱泡内壁の伝熱境膜を掻取るためにスクレイパーを装備していることが好ましい。スクレイパーは、テフロン製であることが好ましい。
分散ミキサーとは、高速回転するタービンとステーターにより構成され、ムラのない吐出流動を行い、ポリマーを溶媒中に均質に分散させることができるミキサーを意味する。 混合液が、高速回転可能なタービン羽根とステーターとの間(およそ0.5mm)を通過する際に生じる強力な剪断、衝撃、およびキャビテーションによって、ポリマーを溶媒中に均一に分散させることができる。
ホモミキサーとは、ポリマーを溶媒中に均一に分散させ、混合液を攪拌するために適したミキサーを意味する。ディスパーと呼ばれる円盤を回転させながら、混合液を攪拌し、ポリマーを溶媒中に分散させる。ディスパーは、その円盤外周をノコギリ歯状に加工した羽根を有する。この羽根により、ポリマーを溶媒中に分散させることができる。
前記掻き取りミキサーの回転速度は、10〜22min−1、前記分散ミキサーおよびホモミキサーの回転速度は750〜1400min−1である。ミキサーミキサーミキサー高トルクが必要な掻き取りミキサーは低回転速度で回転させ、かつ高速での運転が必要な他のミキサーは高速回転させる事で効率よい溶解脱泡ができる。
分散ミキサー、およびホモミキサーの回転速度を750min−1から1〜300秒おきに段階的に上昇させることが好ましい。この条件を満たすことにより、高粘度溶液を攪拌する際に、攪拌装置等に損傷を与えることなく高回転速度に設定できる。ここで段階的とは、1〜300秒おきに回転速度を10〜100min−1ずつ上昇させることを意味する。
また、前記掻き取りミキサーが溶解脱泡容器の内壁に付着した前記ポリマーを掻きとるスクレイパーを具備することが好ましい。この条件を満たすことにより、溶解容器内壁面に付着し易い高粘度ポリマー溶液を物理的にこそぎ取る事ができる。
これにより、溶解脱泡装置にかかる負担が低減されるため、溶解脱泡装置に不具合が生じることを抑制しやすくなる。
特に、ミキサーの回転数を700〜900rpmとして膜形成性樹脂および開孔剤を投入して一定時間撹拌した後、ミキサーの回転数を1000〜1400rpmまで上げてから減圧を開始する方法が好ましい。
具体的には、ミキサーの回転数を700〜900rpmとしてポリマーを投入して0.1〜0.5時間撹拌した後、ミキサーの回転数を1000〜1400rpmまで上げてから減圧を開始する方法がより好ましい。
本発明の第二の態様におけるポリマーの溶解脱泡方法において、溶解脱泡工程の後、−50〜−90kPaの減圧条件下で、減圧しながら、前記溶媒の前記減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で、前記ポリマー溶液を撹拌して脱泡する脱泡工程を有することが好ましい。
前記減圧条件下で減圧しながら、ポリマー溶液を撹拌して脱泡することで、優れた脱泡効率が得られ、より短時間で充分な脱泡が行える。
このように、脱泡時間が短くなることに伴って、脱泡時の溶媒の揮発量が低減される。
ここで、「減圧しながら」とは、真空ポンプ等の減圧手段を作動させ、真空引きした状態を意味する。
また、溶解脱泡工程における減圧条件は、ポリマーが飛散してミキサー等の回転によって炭化することを抑制しやすい点から、ゲージ圧で−90kPa以上が好ましく、−80kPa以上がより好ましい。
溶解脱泡工程において、例えばゲージ圧が−80kPaよりも低い高真空度まで減圧する場合は、真空引きにて減圧してもよい。
前記温度は、使用する溶媒の種類や減圧条件によって選定でき、50〜90℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。
前記温度が下限値以上であれば、ポリマーの溶解がより効率的に行える。
前記温度が上限値以下であれば、ポリマーが飛散してミキサー等の回転によって炭化することを抑制しやすい。
より具体的には、溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、溶解脱泡工程における減圧条件が−50〜−90kPaであり、かつ温度が50〜90℃であることが好ましく、溶解脱泡工程における減圧条件が−60〜−80kPaであり、かつ温度が60〜80℃であることがより好ましい。また、溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、脱泡工程における減圧条件が−50〜−90 kPaであり、かつ温度が50〜90℃であることが好ましく、脱泡工程における減圧条件が−50〜−90kPaであり、かつ温度が60〜80℃であることがより好ましい。
また、溶媒が4−メチル−2−ピロリドンの場合は、溶解脱泡工程における減圧条件が−50〜−90kPaであり、かつ温度が50〜90℃であることが好ましく、溶解脱泡工程における減圧条件が−60〜−80kPaであり、かつ温度が60〜80℃であることがより好ましい。また、溶媒が4−メチル−2−ピロリドンの場合は、脱泡工程における減圧条件が−50〜−90kPaであり、かつ温度が50〜90℃であることが好ましく、脱泡工程における減圧条件が−60〜−80kPaであり、かつ温度が60〜80℃であることがより好ましい。また、ポリマーと溶媒の質量比(ポリマー:溶媒)は、20:80〜50:50が好ましく、25:75〜40:60がさらに好ましい。
また、脱泡工程における撹拌時間は、充分に脱泡されたポリマー溶液が得られやすい点から、10秒間以内が好ましく、20秒間以内がより好ましい。
すなわち、脱泡工程における撹拌時間は、10〜60秒間が好ましく、20〜40秒間がより好ましい。
また、撹拌速度は、ポリマーが飛散してミキサー等の回転によって炭化することを抑制しやすい点から、1800rpm以下が好ましく、1600rpm以下がより好ましい。
すなわち、脱泡工程における撹拌速度は、700〜1800rpmが好ましく、1300〜1600rpmがより好ましい。
本発明の溶解脱泡方法に使用できる装置としては、装置内を所定の真空度に減圧でき、装置内を所定の温度に調節することができ、かつポリマーと溶媒を含む混合液を撹拌して溶解と脱泡を同時に行えるものであれば特に限定されない。具体例としては、例えば、プライミクス社製のT.K.コンビミックスS−300型溶解釜等が挙げられる。
そのため、脱泡時間の短縮に伴って溶媒の揮発量が低減され、ゲル化も抑制されるので、高い品質のポリマー溶液が得られる。
このように本発明のポリマーの溶解脱泡方法によれば、ポリマーを溶媒に効率良く溶解し、かつポリマー溶液を脱泡することにより、溶媒の揮発量を抑えつつ良好な品質のポリマー溶液を得ることができる。
例えば、大気圧下でポリマーを溶媒に溶解してポリマー溶液を得る溶解工程後に、前記第二の態様における脱泡工程を実施する方法であってもよい。
前記方法であっても、前記脱泡工程の実施によりポリマー溶液の脱泡に要する時間が短縮されるので、溶媒の揮発量を低減しつつ、充分にポリマーの溶解およびポリマー溶液の脱泡を行った良好な品質のポリマー溶液を得ることができる。
本発明の多孔質膜の製造方法は、補強支持体の外側に多孔質膜層を有する多孔質膜を製造する方法であってもよく、補強支持体を有さず多孔質膜層を有する多孔質膜を製造する方法であってもよい。また、単層の多孔質膜層を有する多孔質膜を製造するものであってもよく、多層の多孔質膜層を有する多孔質膜を製造する方法であってもよい。さらに、吐出手段として紡糸ノズルを用いて紡糸して得られる、多孔質中空糸膜であってもよく、シートまたはフィルム状の多孔質平膜であってもよい。
膜形成性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
開孔剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、ここで用いる製膜原液には、相分離の制御を阻害しない範囲で、任意成分として開孔剤以外のその他の添加剤、水等の補助溶媒を用いることもできる。
任意成分を加える時期は、溶媒にポリマーを投入する前であることが好ましい。
製造装置1は、図1に示すように、前記膜形成性樹脂および開孔剤のようなポリマーを溶媒に溶解し、ポリマー溶液を脱泡して製膜原液を調製する原液調製手段10と;製膜原液を貯留する貯留部12と;中空状の補強支持体を後述の紡糸手段16に供給する支持体供給手段14と;貯留部12から供給される製膜原液を支持体供給手段14から供給される補強支持体の外側に付与するようにして紡糸する紡糸手段16と、凝固液によって製膜原液を凝固させて多孔質中空糸膜Mを形成する凝固手段18と、多孔質中空糸膜Mに残存する溶媒を除去する洗浄手段20と、多孔質中空糸膜M中に残存する開孔剤を除去する除去手段22と、多孔質中空糸膜Mを乾燥する乾燥手段24と、多孔質中空糸膜Mを巻き取る巻き取り手段26と、を有している。製造装置1における多孔質中空糸膜Mの走行はガイド部材28によって規制される。
原液調製工程:原液調製手段10によって、ポリマーと溶媒を含む混合液を、ゲージ圧−50〜−90kPaの条件下、かつ前記溶媒の前記減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で撹拌し、前記ポリマーの溶解とポリマー溶液の脱泡を同時に行って製膜原液Aを調製する工程。
凝固工程:紡糸手段16によって、中空状の補強支持体B(以下、単に「補強支持体B」という。)の外側に製膜原液Aを付与するように紡糸し、凝固手段18によって製膜原液Aを凝固液18a中で凝固させて多孔質中空糸膜Mを形成する工程。
洗浄工程:洗浄手段20によって多孔質中空糸膜Mを洗浄して多孔質中空糸膜Mに残留する溶媒を除去する工程。
除去工程:除去手段22によって多孔質中空糸膜Mに残留する開孔剤を除去する工程。
乾燥工程:乾燥手段24によって多孔質中空糸膜Mを乾燥する工程。
巻き取り工程:巻き取り手段26によって乾燥後の多孔質中空糸膜Mを巻き取る工程。
原液調製手段10において、ポリマーである膜形成性樹脂および開孔剤と、溶媒を含む混合液を、減圧条件下、減圧しながら、かつ前記溶媒の前記減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で撹拌し、前記膜形成性樹脂および開孔剤の溶解とポリマー溶液の脱泡を同時に行い、製膜原液Aを調製して貯留部12に貯留する。
ここで、「減圧しながら」とは、真空ポンプ等の減圧手段を停止せずに、真空引きした状態を意味する。
すなわち、減圧条件は、−50〜−90kPaが好ましく、−60〜−80kPaがより好ましい。
前記温度は、使用する溶媒の種類や真空度によって選定でき、50〜90℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。前記温度が下限値以上であれば、膜形成性樹脂および開孔剤の溶媒への溶解がより効率的に行える。前記温度が上限値以下であれば、膜形成性樹脂および開孔剤が飛散して原液調製手段10内においてミキサー等の回転によって炭化することを抑制しやすい。
より具体的には、溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、減圧条件が−50〜−90kPaであり、かつ温度が50〜90℃であることが好ましく、減圧条件が−60〜−80kPaであり、かつ温度が60〜80℃であることがより好ましい。また、溶媒が4−メチル−2−ピロリドンの場合は、減圧条件が−50〜−90kPaであり、かつ温度が50〜90℃であることが好ましく、減圧条件が−60〜−80kPaであり、かつ温度が60〜80℃であることがより好ましい。
また、ポリマーと溶媒の質量比(ポリマー:溶媒)は、20:80〜50:50が好ましく、25:75〜40:60が好ましい。
溶解脱泡工程1における撹拌速度は、ミキサーの種類、大きさによっても異なるが、膜形成性樹脂および開孔剤の溶解効率が向上する点から、700rpm以上が好ましく、1300rpm以上がより好ましい。
また、撹拌速度は、膜形成性樹脂および開孔剤が飛散してミキサー等の回転によって炭化することを抑制しやすい点から、1800rpm以下が好ましく、1600rpm以下がより好ましい。
すなわち、溶解脱泡工程1における撹拌速度は、700〜1800rpmが好ましく、1300〜1600rpmがより好ましい。
すなわち、膜形成性樹脂の含有量は、10〜30質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。
製膜原液Aを100質量%としたときの、開孔剤の含有量は、多孔質中空糸膜Mの形成が容易になる点から、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、開孔剤の含有量は、製膜原液Aの取扱性の点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
すなわち、開孔剤の含有量は、1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。
原液調製手段10において、ポリマーである膜形成性樹脂および開孔剤を、溶媒に溶解し、ポリマー溶液を脱泡することで製膜原液Aを調製して貯留部12に貯留する。本発明の原液調製工程2は、ゲージ圧−50kPa以下の減圧条件下、減圧しながら、かつ前記溶媒の当該減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で、膜形成性樹脂および開孔剤を溶媒に溶解した製膜原液を撹拌する脱泡工程を有することを特徴とする。本発明の多孔質膜の製造方法の原液調製工程2としては、例えば、下記の溶解脱泡工程および脱泡工程を有する工程が挙げられる。
溶解脱泡工程:ゲージ圧で−50kPa以下の減圧条件下にして減圧手段を停止し、減圧条件を維持した状態で、かつ前記溶媒の前記減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度とした状態で、前記膜形成性樹脂および開孔剤と溶媒を含む混合液を撹拌して製膜原液Aを得る。
脱泡工程:前記溶解脱泡工程の後、ゲージ圧−50kPa以下の減圧条件下で、減圧しながら、前記溶媒の前記減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で、前記製膜原液Aを撹拌する。
ここで、「減圧しながら」とは、真空ポンプ等の減圧手段を停止せずに、真空引きした状態を意味する。
ゲージ圧で−50〜−90kPaの減圧条件下で撹拌を行うことで、膜形成性樹脂と開孔剤が溶媒を溶解しつつ、ある程度のポリマー溶液の脱泡も行う。
これにより、溶解と脱泡に要する時間がより短縮される。
また、この溶解脱泡工程では、ゲージ圧−50〜−90kPaの減圧条件下まで減圧した後、減圧手段を停止し、減圧条件を維持した状態で撹拌を行うことで、工程中に減圧によって溶媒が揮発して装置外部に放出されることを抑制でき、製膜原液の濃度を一定に保つことができる。
そのため、溶媒の揮発量をより低減することができる。
また、減圧しながら撹拌する時間が長いと、製膜原液がゲル化しやすくなるが、溶解と脱泡に要する時間がより短縮されることで製膜原液のゲル化の抑制も容易になる。
また、膜形成性樹脂と開孔剤を溶媒に加える時期は、それらの溶解性の点から、前記(1)、(2)のいずれの場合についても原液調製手段10に溶媒を投入して撹拌を開始した後が好ましい。
特にペレット状の膜形成性樹脂を使用する場合、前記ペレット状の膜形成性樹脂の溶解性が向上する点から、粉状の膜形成性樹脂および開孔剤を溶媒に投入した後に、ペレット状の膜形成性樹脂を投入することが好ましい。
これにより、ペレット状の膜形成性樹脂が原液調製手段10における配管連結部近傍に溶け残ることを抑制することが容易になる。
例えば、ペレット状および粉状の膜形成性樹脂と粉状の開孔剤を使用する場合、それらを溶媒に投入する好ましい順序は、粉状の膜形成性樹脂、粉状の開孔剤、ペレット状の膜形成性樹脂の順である。
これにより、膜形成性樹脂および開孔剤の計量ミスによってそれらの濃度が所定の濃度と異なることで品質が低下することを抑制しやすくなる。
具体的には、−50〜−90kPaが好ましく、−60〜−80kPaがより好ましい。
前記温度は、使用する溶媒の種類や真空度によって選定でき、50〜90℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。前記温度が下限値以上であれば、膜形成性樹脂および開孔剤の溶媒への溶解がより効率的に行える。前記温度が上限値以下であれば、膜形成性樹脂および開孔剤が飛散して原液調製手段10内においてミキサー等の回転によって炭化することを抑制しやすい。
溶解脱泡工程における撹拌速度は、ミキサーの種類、大きさによっても異なるが、膜形成性樹脂および開孔剤の溶解効率が向上する点から、700rpm以上が好ましく、1300rpm以上がより好ましい。
また、撹拌速度は、膜形成性樹脂および開孔剤が飛散してミキサー等の回転によって炭化することを抑制しやすい点から、1800rpm以下が好ましく、1600rpm以下がより好ましい。
すなわち、溶解脱泡工程における撹拌速度は、700〜1800rpmが好ましく、1300〜1600rpmがより好ましい。
これにより、原液調製手段10にかかる負担が低減されるため、原液調製手段10に不具合が生じることを抑制しやすくなる。
特に、ミキサーの回転数を700〜900rpmとして膜形成性樹脂および開孔剤を投入して一定時間撹拌した後、ミキサーの回転数を1000〜1400rpmまで上げてから減圧を開始する方法が好ましい。
具体的には、ミキサーの回転数を700〜900rpmとして膜形成性樹脂および開孔剤を投入して0.1〜0.5時間撹拌した後、ミキサーの回転数を1000〜1400rpmまで上げてから減圧を開始する方法がより好ましい。
前記溶解脱泡工程2の後、−50〜−90kPaの条件下で、減圧しながら、前記溶媒の前記減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で、製膜原液Aを撹拌して脱泡する。
−50〜−90kPaの条件下で減圧しながら製膜原液Aを撹拌して脱泡することで、優れた脱泡効率が得られ、より短時間で充分な脱泡が行える。
このように、脱泡時間が短くなることで、脱泡時の溶媒の揮発量が低減される。
また、製膜原液Aのゲル化も抑制される。
ここで、「減圧しながら」とは、真空ポンプ等の減圧手段を停止せずに、真空引きした状態を意味する。
また、溶解脱泡工程における減圧条件は、膜形成性樹脂および開孔剤が飛散してミキサー等の回転によって炭化することを抑制しやすい点から、ゲージ圧で−90kPa以上が好ましく、−80kPa以上がより好ましい。
すなわち、溶解脱泡工程における減圧条件は、−50〜−90kPaが好ましく、−60〜−80kPaがより好ましい。
前記温度は、使用する溶媒の種類や減圧条件によって選定でき、50〜90℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。
前記温度が下限値以上であれば、膜形成性樹脂および開孔剤の溶解がより効率的に行える。
前記温度が上限値以下であれば、膜形成性樹脂および開孔剤が飛散してミキサー等の回転によって炭化することを抑制しやすい。
また、溶媒が4−メチル−2−ピロリドンの場合は、溶解脱泡工程における減圧条件が−50〜−90kPaであり、かつ温度が50〜90℃であることが好ましく、溶解脱泡工程における減圧条件が−60〜−80kPaであり、かつ温度が60〜80℃であることがより好ましい。また、溶媒が4−メチル−2−ピロリドンの場合は、脱泡工程における減圧条件が−50〜−90kPaであり、かつ温度が50〜90℃であることが好ましく、脱泡工程における減圧条件が−60〜−80kPaであり、かつ温度が60〜80℃であることがより好ましい。また、ポリマーと溶媒の質量比(ポリマー:溶媒)は、20:80〜50:50が好ましく、25:75〜40:60が好ましい。
また、脱泡工程における撹拌時間は、充分に脱泡された製膜原液Aが得られやすい点から、10秒間以内が好ましく、20秒間以内がより好ましい。
すなわち、脱泡工程における撹拌時間は、10〜60秒間が好ましく、20〜40秒間がより好ましい。
すなわち、製膜原液Aを100質量%としたときの、膜形成性樹脂の含有量は、10〜30質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。
製膜原液Aを100質量%としたときの、開孔剤の含有量は、多孔質中空糸膜Mの形成が容易になる点から、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、開孔剤の含有量は、製膜原液Aの取扱性の点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
すなわち、製膜原液Aを100質量%としたときの、開孔剤の含有量は、1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。
製膜原液Aの水分量は、水の含有量の少ない膜形成性樹脂、開孔剤および溶媒を用いることで調整できる。
紡糸手段16によって、貯留部12から供給される製膜原液Aを円筒状に吐出し、支持体供給手段14から供給される補強支持体Bの外側に付与するように紡糸し、凝固手段18において凝固液18a中で製膜原液を凝固させ、多孔質中空糸膜Mを形成する。
紡糸工程における製膜原液Aの温度は、20〜40℃が好ましい。
紡糸手段16としては、多孔質中空糸膜の製造に使用される公知の紡糸ノズル、例えば二重環状ノズルを採用することができる。
なお、本実施形態に代えて多孔質平膜を製造する場合には、紡糸ノズル16に代えて、公知のTダイ等の吐出手段を用いることができる。
凝固液18aの温度は、好適にスピノーダル分解を行う点から、高温である方が好ましいが、溶媒の沸騰や揮発による濃縮を防ぐ観点から、水溶液を用いる場合は60〜90℃が好ましい。
凝固工程で形成された多孔質中空糸膜Mには、溶液状態の開孔剤や溶媒が残存している。特に、多孔質中空糸膜Mは、開孔剤が膜中に残存していると充分な透水性を発揮できない。また、開孔剤が膜中で乾固すると、膜の機械的強度の低下の原因にもなる。一方、後述する除去工程において、酸化剤を使用して開孔剤を酸化分解(低分子量化)する際、多孔質中空糸膜M中に溶媒が残存していると、溶媒と酸化剤とが反応してしまうため、開孔剤の酸化分解が阻害される。そこで、本実施形態では、凝固工程後に、洗浄工程において多孔質中空糸膜M中に残存する溶媒を除去した後、除去工程において多孔質中空糸膜M中に残存する開孔剤を除去する。
なお、洗浄工程では主に多孔質中空糸膜M中の溶媒を除去するが、多孔質中空糸膜Mを洗浄することで開孔剤も一部除去される。
除去工程では、除去手段22によって、多孔質中空糸膜Mに残存する開孔剤を除去する。
除去工程としては、例えば、酸化剤を含む薬液中に多孔質中空糸膜Mを浸漬し、多孔質中空糸膜Mに薬液を保持させた後、多孔質中空糸膜Mを気相中で加熱して開孔剤の酸化分解を行い、その後に多孔質中空糸膜Mを洗浄して低分子量化された開孔剤を除去する工程が挙げられる。
すなわち、薬液の温度は0〜50℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。
加熱流体としては、酸化剤の乾燥が抑制され、より効率的な分解処理が可能となる点から、相対湿度の高い流体を使用すること、すなわち湿熱条件で加熱を行うことが好ましい。この場合、加熱流体の相対湿度は、80〜100%が好ましく、90〜100%がより好ましく、100%近傍が特に好ましい。
加熱温度は、連続処理を行う場合、処理時間を短くできることから、50〜100℃が好ましく、80〜100℃がより好ましい。また、加熱温度は、大気圧状態では、90〜100℃が好ましい。
乾燥手段24によって多孔質中空糸膜Mを乾燥する。
多孔質中空糸膜Mの乾燥方法としては、多孔質膜の乾燥方法として通常使用される方法が使用でき、例えば、多孔質膜を熱風によって乾燥する熱風乾燥方法等が挙げられる。具体的には、例えば、熱風を毎秒数m程度の風速で循環させることができる装置内に、多孔質中空糸膜Mを複数回往復させて連続的に走行させ、多孔質中空糸膜Mを外周側から乾燥する方法が挙げられる。
巻き取り手段26によって、乾燥後の多孔質中空糸膜Mを巻き取る。
また、膜形成性樹脂および開孔剤の溶媒への溶解と製膜原液Aの脱泡を同時に行うと、膜形成性樹脂および開孔剤が飛散し、ミキサー等の回転によって炭化する問題があったが、本発明の製造方法では前記減圧条件および温度条件で膜形成性樹脂および開孔剤の溶解と製膜原液Aの脱泡を行うことで、前記問題を抑制しつつ膜形成性樹脂および開孔剤の溶解と製膜原液Aの脱泡を充分に効率的に行うことができる。そのため、溶媒の揮発を抑制でき、製膜原液のゲル化も抑制できるので、高品質な多孔質膜を高い生産性で製造できる。
例えば、原液調製工程において、大気圧下で膜形成性樹脂および開孔剤を溶媒に溶解して製膜原液を調製した後に、前記脱泡工程を実施して製膜原液を調製してもよい。
製造装置1を使用する方法は、中空状の多孔質中空糸膜を製造する方法であったが、多孔質平膜を製造する方法であってもよい。
実施例1〜3、比較例1および2では、2層の多孔質膜を有する多孔質中空糸膜を製造するための第1の製膜原液と第2の製膜原液の調製を行い、ポリマーの炭化の有無および脱泡状態を評価した。
プライミクス社製300L溶解釜(T.K.コンビミックスS−300型)内に、膜形成性樹脂であるアルケマ社製PVDF301F(ポリフッ化ビニリデン)の29.7kgと、開孔剤である日本触媒社製PVP−K79(ポリビニルピロリドン)の15.6kgと、溶媒であるN,N−ジメチルアセトアミド(サムソンファインケミカル社製)の112.2Lとを投入し、以下の条件で撹拌を開始した直後に溶解釜内を減圧し、溶解と脱泡を同時に行って第1の製膜原液を調製した。
撹拌条件:ホモミキサー1325rpm、ホモディスパー1325rpm、アンカー22rpm
撹拌時間:3時間
減圧条件:−50kPa(ゲージ圧)
温度:60℃
溶解および脱泡時の溶解釜内の減圧条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして第1の製膜原液および第2の製膜原液を調製した。
溶解および脱泡時の溶解釜内の減圧条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして第1の製膜原液および第2の製膜原液を調製した。
1.ポリマーの炭化
第1の製膜原液および第2の製膜原液の調製終了後に溶解釜を目視で確認し、ポリマーの炭化の有無を確認した。第1の製膜原液および第2の製膜原液の両方にポリマーの炭化物が見られなかったものを「○(良好)」、第1の製膜原液および第2の製膜原液の何れか一方にポリマーの炭化物が見られたものを「×(不良)」と判定した。
2.脱泡状態
調製した第1の製膜原液と第2の製膜原液の脱泡状態を目視で確認して評価した。第1の製膜原液および第2の製膜原液の両方に気泡が見られなかったものを「○(良好)」、第1の製膜原液および第2の製膜原液の何れか一方に気泡が見られたものを「×(不良)」と判定した。
3.総合評価
第1の製膜原液および第2の製膜原液におけるポリマーの炭化および脱泡状態の評価がいずれも「○(良好)」である場合を「○(良好)」、いずれか一方でも「×(不良)」の場合を「×(不良)」と判定した。
各例の評価結果を表1に示す。なお、表1には、各例の真空度におけるN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)の沸点を示した。
一方、減圧条件が−100kPaの比較例1では、ポリマーの炭化が見られた。また、減圧条件が−30kPaと減圧が不充分な比較例2では、脱泡が不充分であった。
プライミクス社製300L溶解釜(T.K.コンビミックスS−300型)内に、溶媒であるN,N−ジメチルアセトアミド(サムソンファインケミカル社製)の112.2Lを投入し、撹拌(ホモミキサー750rpm、ホモディスパー750rpm、アンカーミキサー10rpm)を開始した後に、開孔剤である日本触媒社製PVP−K79(ポリビニルピロリドン)の15.6kgを投入し、次いで膜形成性樹脂であるアルケマ社製PVDF301F(ポリフッ化ビニリデン)の29.7kgを投入した。
その後、撹拌速度を上げ(ホモミキサー1325rpm、ホモディスパー1325rpm、アンカーミキサー22rpm)、減圧を開始して溶解釜内が、ゲージ圧−80kPaとなった時点で減圧を停止し、温度60℃で3時間撹拌を行った。
次に、ホモミキサーとホモディスパーの回転を停止し、アンカーミキサーの回転数を10rpmに低下させ、ゲージ圧−50kPaの減圧条件で減圧しながら、温度60℃で20秒間撹拌を行った。
その後、溶解釜内部を大気圧に戻し、製膜原液を得た。
なお、DMAcのゲージ圧−50kPaでの沸点は140℃である。
実施例4と同様にして膜形成性樹脂および開孔剤を溶解した後、脱泡工程における減圧条件を100℃、ゲージ圧−100kPaとした以外は、実施例4と同様にして製膜原液を得た。
なお、DMAcのゲージ圧−100kPaでの沸点は72℃である。
実施例4と同様にして膜形成性樹脂および開孔剤を溶解した後、脱泡工程における減圧条件を30℃、ゲージ圧−30kPaとした以外は、実施例4と同様にして製膜原液を得た。
なお、DMAcのゲージ圧−30kPaでの沸点は152℃である。
1.脱泡状態
得られた製膜原液の脱泡状態を目視で確認し、以下の基準で評価した。
「○(良好)」:製膜原液中に気泡が見られなかった。
「×(不良)」:製膜原液中に気泡が見られた。
各例の評価結果を表2に示す。
一方、DMAcの沸点よりも高い温度で脱泡を行った比較例3では、溶媒の沸騰によってポリマーが飛散し、ミキサー等の回転により膜形成樹脂の炭化するトラブルが発生した。
また、脱泡時の温度はDMAcの沸点より低いが、減圧条件が不充分な比較例4では、溶媒揮発量は少ないものの、得られた製膜原液中に数多くの気泡が見られた。
本発明のポリマーの溶解脱泡方法によれば、ポリマーを溶媒に効率良く溶解し、かつポリマー溶液を脱泡することにより、溶媒の揮発量を抑えつつ良好な品質のポリマー溶液を得ることができる。
また、本発明の多孔質膜の製造方法によれば、溶媒の揮発量を抑えつつより短時間で製膜原液を調製でき、高い生産性で良好な品質の多孔質膜を製造できる。
10 原液調製手段
12 貯留部
14 支持体供給手段
16 紡糸手段
18 凝固手段
18a 凝固液
20 洗浄手段
20a 洗浄液
22 除去手段
24 乾燥手段
26 巻き取り手段
28 ガイド部材
Claims (14)
- ポリマーの溶解脱泡方法であって、
ゲージ圧−50〜−90kPaの減圧条件下、かつ前記溶媒の前記減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で、ポリマーと溶媒を含む混合液を撹拌し、前記ポリマーの溶解とポリマー溶液の脱泡を同時に行ってポリマー溶液を得る溶解脱泡工程を有するポリマーの溶解脱泡方法。 - 前記ポリマーの溶解脱泡方法であって、
前記溶解脱泡工程において、ゲージ圧−50〜−90kPaの減圧条件にした後、前記減圧条件を維持した状態で減圧手段を停止し、前記溶媒の前記減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で撹拌する請求項1に記載のポリマーの溶解脱泡方法。 - 前記溶解脱泡工程およびを50℃〜90℃の範囲で行う請求項2記載のポリマーの溶解脱泡方法。
- 前記攪拌を60〜240分間の範囲で行う請求項3記載のポリマーの溶解脱泡方法。
- 攪拌装置として掻き取りミキサー、分散ミキサーおよびホモミキサーからなる3軸ミキサーを用いて前記溶解脱泡工程を行う請求項4記載のポリマーの溶解脱泡方法。
- 前記掻き取りミキサーの回転速度が10〜22min−1、前記分散ミキサーおよびホモミキサーの回転速度が750〜1400min−1である請求項5記載のポリマーの溶解脱泡方法。
- 分散ミキサー、およびホモミキサーの回転速度を750min−1から1〜300秒おきに段階的に上昇させる請求項6記載のポリマーの溶解脱泡方法。
- 前記掻き取りミキサーが溶解脱泡容器の内壁に付着した前記ポリマーを掻きとるスクレイパーを具備する請求項7記載のポリマーの溶解脱泡方法。
- 前記ポリマーが粉体状ポリマー、およびペレット状ポリマーから選択される少なくとも1種類以上のポリマーを使用する請求項8記載のポリマーの溶解脱泡方法。
- 溶解脱泡容器に前記溶媒、前記粉体状ポリマー、前記ペレット状ポリマーの順に投入してから前記攪拌装置により攪拌を開始する請求項9記載のポリマーの溶解脱泡方法。
- 前記溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドまたは4−メチル−2−ピロリドンである、請求項10に記載のポリマーの溶解脱泡方法。
- 前記溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドである、請求項11記載のポリマーの溶解脱泡方法。
- 請求項2に記載の溶解脱泡工程の後に、ゲージ圧−50〜−90kPaの減圧条件下で減圧しながら、前記溶媒の前記減圧条件下での沸点よりも低い温度でかつ凝固点よりも高い温度で、前記ポリマー溶液を撹拌して脱泡する脱泡工程を有するポリマーの溶解脱泡方法。
- 請求項1〜12いずれかの溶解脱泡方法で得られるポリマー溶液を凝固液中で凝固させて多孔質膜を形成する凝固工程と、
を有する多孔質膜の製造方法。
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