JPWO2012077741A1 - カダベリンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

要約従来の発酵法による製造方法よりも効率的且つ高収率にカダベリンを製造することができる、新規なカダベリンの製造方法が開示されている。カダベリンの製造方法は、カダベリンを生産する能力を有し、かつ2,2’−チオビス(エチルアミン)に対する耐性を有するコリネ型細菌を培養することを含む。好ましくは、コリネ型細菌がリジン脱炭酸酵素活性を有し、また、好ましくは、コリネ型細菌は、ホモセリン栄養要求性および/またはS−(2−アミノエチル)−L−システイン耐性を有する。

Description

本発明は、カダベリン生産能を有するコリネ型細菌を用いたカダベリンの製造方法に関する。
カダベリンはジアミン構造を有し、別名1,5−ペンタンジアミンやペンタメチレンジアミン等と呼ばれているものである。最近カダベリンは、ポリアミドのモノマー原料として注目されているため、大量生産が望まれている。カダベリンの製造方法としては、コリネ型細菌を利用した発酵法が知られており、具体的には、カダベリン生産能を有し、かつカダベリンの前駆物質であるリジン合成能を強化したコリネ型細菌の発酵によるカダベリンの製造方法(特許文献1〜4、非特許文献1参照。)や、リジン脱炭酸酵素遺伝子のコピー数を高めることによってリジン脱炭酸酵素活性を強化したコリネ型細菌の発酵によるカダベリンの製造方法(特許文献5参照。)が知られている。
特開2004−222569号公報 特開2002−223770号公報 WO2007/113127号 WO2008/101850号 WO2008/092720号
Stefaine Kind,Metabolic engineering.(メタボリック エンジニアリング)12,341−351,(2010)
本発明の課題は、従来の発酵法によるカダベリンの製造方法よりも効率的且つ高収率のカダベリン製造プロセスを創出することである。
本発明者は、カダベリンを生産する能力を有し、かつ2,2’−チオビス(エチルアミン)に対する耐性を有するコリネ型細菌がカダベリン生産菌として有用であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(5)を提供する。
(1)カダベリンを生産する能力を有し、かつ2,2’−チオビス(エチルアミン)に対する耐性を有するコリネ型細菌を培養することを含む、カダベリンの製造方法。
(2)前記コリネ型細菌が250mM以上の2,2’−チオビス(エチルアミン)に対する耐性を有する、(1)に記載のカダベリンの製造方法。
(3)前記コリネ型細菌がリジン脱炭酸酵素活性を有する、(1)または(2)に記載のカダベリンの製造方法。
(4)前記コリネ型細菌がコリネバクテリウム属およびブレビバクテリウム属からなる群より選ばれる、(1)〜(3)のいずれかに記載のカダベリンの製造方法。
(5)前記コリネ型細菌がホモセリン栄養要求性および/またはS−(2−アミノエチル)−L−システイン耐性を有する、(1)〜(4)のいずれかに記載のカダベリンの製造方法。
本発明によれば、従来の発酵法によるカダベリンの製造方法よりも効率的且つ高収率でカダベリンを製造することができる。
上記の通り、本発明の方法では、コリネ型細菌を用いる。コリネ型細菌とは好気性のグラム陽性桿菌であり、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在、コリネバクテリウム属に統合された細菌も含まれる(Int.J.Syst.,Bacteriol.,(1981)41,p.225)。また、コリネバクテリウム属と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌を含む。
このようなコリネ型細菌の例として、コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophylum)、コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)、コリネバクテリウム・アルカノリティカム(Corynebacterium alkanolyticum)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium)、コリネバクテリウム・メラセコーラ(Corynebacterium mellassecola)、コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)、コリネバクテリウム・エッフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム・ハーキュリス(Corynebacterium herculis)、ブレビバクテリウム・ディバリカタム(Brevivacterium divaricatum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevivacterium flavum)、ブレビバクテリウム・インマリオフィラム(Brevivacterium immariophilum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevivacterium lactofermentum)、ブレビバクテリウム・ロゼウム(Brevivacterium roseum)、ブレビバクテリウム・サッカロリティカム(Brevivacterium saccharolyticum)、ブレビバクテリウム・チオゲニタリス(Brevivacterium thiogenitalis)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、ブレビバクテリウム・アルバム(Brevivacterium album)、ブレビバクテリウム・セリヌム(Brevivacterium cerinum)、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム(Microbacterium ammoniaphilum)が挙げられる。
また、各コリネ型細菌の具体的な菌株として、コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム ATCC13870、コリネバクテリウム・アセトグルタミカム ATCC15806、コリネバクテリウム・アルカノリティカム ATCC21511、コリネバクテリウム・カルナエ ATCC15991、コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13020,ATCC13020,ATCC13060、コリネバクテリウム・リリウム ATCC15990、コリネバクテリウム・メラセコーラ ATCC17965、コリネバクテリウム・エッフィシエンス AJ12340(寄託番号:FERM BP−1539)、コリネバクテリウム・ハーキュリス ATCC13868、ブレビバクテリウム・ディバリカタム ATCC14020、ブレビバクテリウム・フラバム ATCC13826,ATCC14067,AJ12418(寄託番号:FERM BP−2205)、ブレビバクテリウム・インマリオフィラム ATCC14068、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869、ブレビバクテリウム・ロゼウム ATCC13825、ブレビバクテリウム・サッカロリティカム ATCC14066、ブレビバクテリウム・チオゲニタリス ATCC19240、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6871,ATCC6872、ブレビバクテリウム・アルバム ATCC15111、ブレビバクテリウム・セリヌム ATCC15112、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラス ATCC15354が挙げられる。
前述のコリネ型細菌は、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)より分譲を受けることができる。ATCCでは菌株毎に対応する登録番号を付与しており、この登録番号はATCCのカタログに記載され、この番号を参照して各菌株の分譲を受けることができる。
本発明において、カダベリンを生産する能力を有するコリネ型細菌としては、外部からリジン脱炭酸酵素をコードするポリヌクレオチドを導入されることによりリジン脱炭酸酵素活性を有するようになったコリネ型細菌が好ましく使用される。リジン脱炭酸酵素活性を有していれば、リジンを原料とし、これを脱炭酸することによりカダベリンを生産することができる。
リジン脱炭酸酵素はL−リジン脱炭酸酵素であることが好ましい。また、リジン脱炭酸酵素の由来については特に制限はないが、例えば、バシラス・ハロドゥランス(Bacillus halodurans)、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli;大腸菌)、セレノモナス・ルミナンチウム(Selenomonas ruminamtium)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、ストレプトマイセス・コエリカーラ(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・ピロサス(Streptomyces pilosus)、エイケネラ・コロデンス(Eikenella corrodens)、イユバクテリウム・アシダミノフィルム(Eubacterium acidaminophilum)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、ナイセリア・メニンギチデス(Neisseria meningitidis)、テルモプラズマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum)、またはピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)由来のものが好ましく用いられ、安全性の認められている大腸菌由来のものがより好ましく用いられる。これらリジン脱炭酸酵素(「LDC」と呼ぶことがある)のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列は、データベース(GenBank)に登録されている。例えば、本発明において好ましく用いることができる大腸菌由来のLDC遺伝子の塩基配列は、GenBank Accession No.M76411として登録されている。
本発明で使用されるリジン脱炭酸酵素をコードする遺伝子は、使用するコリネ型細菌のコドン使用頻度に応じて核酸配列を再設計してもよい。なお、上記の通り、前述の各生物由来のリジン脱炭酸酵素遺伝子は、データベース(GenBank)に登録されており、生物名とリジン脱炭酸酵素をキーワードとして検索すれば容易に各LDC遺伝子の塩基配列を知ることができる。
リジン脱炭酸酵素をコードする遺伝子としては、その機能を有する限りにおいては、上記した各生物種の天然のLDC遺伝子に加え、これらのLDC遺伝子の各塩基配列において、1又は数個の塩基の置換、欠失、挿入又は付加されたポリヌクレオチドも含まれる。ここで、「数個」とは、通常1〜40個、好ましくは1〜30個、さらに好ましくは1〜20個、特に好ましくは1〜10個、最適に好ましくは1〜5個程度である。また、前記リジン脱炭酸酵素をコードする遺伝子としては、その機能を有する限りにおいては、該遺伝子を構成するポリヌクレオチドもしくはその相補鎖の全体またはその一部とストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドが挙げられる。ここで、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、例えば、もとの塩基配列の任意の少なくとも20個、好ましくは25個、より好ましくは少なくとも30個の連続した配列を1つあるいは複数個選択した核酸配列をプローブとして、公知のハイブリダイセーション技術(Current Protocols I Molecular Biology edit. Ausbel et al.,(1987) Publish.John Wily & Sons Section 6.3−6.4)などを用いて、ハイブリダイズする核酸配列である。ここでストリンジェントな条件としては、例えば50%ホルムアミド存在下でハイブリダイゼーション温度が37℃、より厳しい条件としては42℃、さらに厳しい条件としては65℃で、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成:150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウム)を用いて洗浄することにより達成することができる。また、前記リジン脱炭酸酵素をコードするポリヌクレオチドとしては、その機能を有する限りにおいては、配列同一性が、通常85%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上有するポリヌクレオチドであってもよい。ここで、「配列同一性」は、配列を比較する2つの塩基配列の塩基ができるだけ多く一致するように2つの配列を整列させ(必要に応じてギャップを挿入する)、一致する塩基の数を全塩基数で除し、百分率で表した数値を意味する。両者の塩基数が異なる場合には、長い方の塩基数で除す。配列同一性を算出するソフトは周知であり、インターネット上でも無料公開されている。このようなリジン脱炭酸酵素をコードする遺伝子は、本来の宿主以外からも取得され得るし、本来の宿主から得られた遺伝子を、当業者に周知のインビトロ変異処理、あるいは部位特異的変異処理することによっても取得され得る。
コリネ型細菌へリジン脱炭酸酵素をコードする遺伝子(以下、「リジン脱炭酸酵素遺伝子」または「LDC遺伝子」と呼ぶことがあるが、上記の通り天然の遺伝子に限定されるものではない)を導入する場合、リジン脱炭酸酵素遺伝子は、コリネ型細菌染色体外で維持されるプラスミドなどにおいて保持されていても、コリネ型細菌の染色体に組み込まれて保持されていてもよい。
コリネ型細菌の染色体にリジン脱炭酸酵素遺伝子を組み込む場合、トランスポゾンを利用することにより相同組換えまたはそれ自身の転移能によってリジン脱炭酸酵素遺伝子がコリネ型細菌の染色体中に導入することができる。なお、導入する遺伝子配列の構築や、その確認方法については当業者に周知の分子生物学的手法になされるものであり、例えば、Sambrook et al.,Molecular Clonig:A Laboratory Manual,Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York、DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I andII (D.N.Glovered.1985)、F.M.Ausubel et al. (eds),Current Protocols in Molecular Biology (1994) John Wiley & Sons,Inc.、PCR Technology:Principles and Application for DNA Amplication,H.Erlich,ed.,Stockton Press等を参照することができる。
前記遺伝子構築物のコリネ型細菌への導入方法は特に限定されず、例えば、プロトプラスト法(Gene,(1985),39,p.281−286)、エレクトロポレーション法(Bio/Technology,(1989),7,1067−1070)等により導入することができる。
なお、外来のLDC遺伝子を導入し、カタベリン産生能を有するコリネ型細菌は、例えば特許文献1に記載されているとおり公知である(下記参考例参照)。
次に、2,2−チオビスエチルアミンに耐性を有するコリネ型細菌について具体的に説明する。
2,2−チオビスエチルアミンは、
NH−(CH−S−(CH−NH
の構造式で表される強アルカリ性の化学物質である。本発明において、2,2−チオビスエチルアミンに対して耐性を有するとは、2,2−チオビスエチルアミンを含有する培地において野生株よりも早く生育する性質をいう。具体的には、200mM以上の2,2−チオビスエチルアミンを含有するプレート培地上では、野生株はコロニーを形成できないが、2〜3日でコロニーを形成する株については2,2−チオビスエチルアミン耐性を有すると判断することができる。なお、コリネ型細菌がプレート培地上で耐性を示すチオビスエチルアミンの濃度には特に制限はないが、250mM以上が好ましく、300mM以上がより好ましく、400mM以上がさらに好ましい。
コリネ型細菌の2,2−チオビスエチルアミン耐性を評価するための2,2−チオビスエチルアミンを含有する培地は、コリネ型細菌が培養可能な培地であれば特に制限はないが、アミノ酸などが添加されていない最小培地であることが好ましく、表1に示される最小培地であることがより好ましい。
Figure 2012077741
コリネ型細菌に2,2−チオビスエチルアミンに耐性を付与する方法としては、特に制限はないが、例えば、親株の染色体に何らかの変異をもたらすものであればよい。染色体に変異を導入する技術としては、UV、レーザーなどの照射によって変異をもたらす方法、エタンスルホン酸メチル(EMS)、ニトロソグアニジン(NTG)、4−ジメチルアミノベンゼンジアゾスルホン酸ナトリウム(DAPA)等の変異誘発剤を用いる方法などがある。また、コリネ型細菌を培養している際に生じる自然変異を利用してもよい。なお、カダベリンを生産する能力を有し、かつ2,2−チオビスエチルアミンに耐性を有するコリネ型細菌を提供する方法としては、カダベリンを生産する能力を有するコリネ型細菌に該耐性を付与してもよく、また、該耐性を付与したコリネ型細菌に前述の通りカダベリンを生産する能力を付与してもよい。なお、上記した突然変異誘発処理は、微生物の突然変異誘発処理に採用されている周知の条件で行えばよく、例えば、UV照射の場合、照射量は光源からの距離に依存するが、通常、10秒〜30分照射を行う。また、上記したNTG等の各変異誘発剤で処理する場合には、処理濃度は、例えば、100μg/ml〜2μg/ml、好ましくは300μg/ml〜1.3μg/mlであり、この濃度の培養液中で例えば12時間〜48時間培養することにより行うことができる。
このような突然変異誘発処理後、上記した2,2−チオビスエチルアミン耐性を評価するための培地上で培養し、2,2−チオビスエチルアミン耐性を獲得した株をスクリーニングすることにより2,2−チオビスエチルアミン耐性を有するコリネ型細菌を得ることができる。なお、下記実施例に具体的に記載する通り、NTG処理により、2,2−チオビスエチルアミン耐性を獲得した株が複数得られていることから明らかなように、突然変異誘発処理によって2,2−チオビスエチルアミン耐性株を再現性をもって作出することが可能である。
その他、本発明で使用するコリネ型細菌は、リジン合成能が向上した変異株であることが好ましい。リジン合成能が向上した変異株としては、例えば、L−リジンもしくは、L−スレオニンによるフィードバック阻害が解除された変異株を利用することができる。これら変異株の取得方法としては、例えば、野生型株に、先の例と同様な変異操作を施した後、S−(2−アミノエチル)−L−システイン(AEC)耐性を指標に選択され、L−リジン生産性となった変異株から取得する方法をあげることができる(特許文献1参照)。なお、AEC耐性を有するか否かは、特許文献1に記載の通り、50μg/mlのAECを含む最少寒天培地上で、30℃で24時間の培養後に増殖が起きるか否かにより判定することができる。
あるいは、野生型株にAEC耐性を付与する更に好ましい方法として、遺伝子工学的手法を用いる方法である。遺伝子工学的手法を用いる方法に特に制限はなく、例えばコリネ型細菌で複製可能な組み換え体DNAを用いる方法、または相同組換えによって染色体中の目的遺伝子を組み換える方法である。例えば、配列番号14記載のアミノ酸配列において311番目のアミノ酸残基がThr以外のアミノ酸に置換された変異アスパルトキナーゼ遺伝子(「脱感作型AK遺伝子」ということがある)を有することによりS−(2−アミノエチル)−L−システイン耐性を獲得することができる。更に好ましい遺伝子工学的手法は、コリネ型細菌の染色体にあるAK遺伝子を脱感作型AK遺伝子に相同組み換えにより組み換える方法である。さらに、脱感作型AK遺伝子は、AK遺伝子に望みの変異導入する周知の技法(例えば、サイトダイレクテッド・ミュータジェネシス)を利用することができ、このためのキットも市販されている。
また、リジン合成能が向上した変異株として、AEC耐性変異株の他に、ホモセリン栄養要求性変異株があげられる。野生株はホモセリン栄養要求性を有していないが、ホモセリン栄養要求性株を取得する方法としては、先の例と同様に、例えば、野生型株から変異操作を施した後、ホモセリン栄養要求性を指標に選択され、L−リジン生産性となった変異株から取得する方法や、遺伝子工学的手法によりコリネ型細菌のホモセリンデヒドロゲナーゼ活性を欠損させる方法を挙げることができる(特許文献1)。
また野生型株にホモセリン栄養要求性を付与する更に好ましい方法として、相同組換えによって染色体中のホモセリンデヒドロゲナーゼ遺伝子(以下HOM遺伝子と略す) にその他の遺伝子を挿入する方法等によりホモセリンデヒドロゲナーゼ活性を欠損させる方法があげられる。その他の遺伝子に特に制限はない。好ましくはLDC遺伝子であり、更に好ましくはLDC遺伝子が野生型株で構成的に発現できるプロモーターとカセットになっているものである。
本発明では、前記カダベリンを生産する能力を有し、かつ2,2−チオビスエチルアミンに対する耐性を有するコリネ型細菌を培養することでカダベリンを製造する。培養方法としては、回分培養、流加培養または連続培養を用いることができる。連続培養の場合、例えば特開2008−104453号公報に記載のような公知の方法により連続培養を行うことが好ましい。
カダベリンを製造するための培養培地としては、同化可能な炭素源及び窒素源並びに無機塩類などを含む通常の栄養培地を用いることができる。炭素源としては、例えばグルコース、果糖、シュークロース、マルトース、でんぷん加水分解物等の糖類、エタノールなどのアルコール類、酢酸、乳酸、コハク酸等の有機酸類を用いることができる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどの各種無機および有機アンモニウム塩類、尿素、その他窒素含有化合物、ならびに肉エキス、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー、大豆加水分解物等の窒素含有有機物を用いることができる。無機塩としてはリン酸第一水素カリウム、リン酸第二水素カリウム、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム等を用いることができる。その他、必要に応じて、ビオチン、チアミン、ビタミンB6等の微量栄養源を加えることができる。これら微量栄養源は、肉エキス、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー、カザミノ酸等の培地添加物で代用することもできる。
また、培養培地にカダベリンの前駆体であるリジンを予め添加しておいても良い。培養培地にリジンを予め添加しておけば、コリネ型細菌がリジンを菌体内に取り込み、リジン脱炭酸酵素がリジンを基質にしてカダベリンに変換をするため、カダベリンの製造効率を高めることができる。培養培地に予めリジンを添加する場合の培養培地中のリジン濃度としては特に制限はないが、コリネ型細菌の増殖へ悪影響がおこらずかつリジン脱炭酸酵素への阻害がおこらない濃度が好ましく、具体的には、0.01から2Mであることが好ましい。
添加するリジンはL−リジンであることが好ましい。また、添加するリジンはフリー体であってもリジン塩であってもよいが、リジン塩であることが好ましく、リジン塩としてはリジン塩酸塩または後述のジカルボン酸由来のリジン・ジカルボン酸塩が好ましく、より好ましい具体例としては、リジン・アジピン酸塩、リジン・セバシン酸塩、リジン・1,12−ドデカンジカルボン酸塩、リジン・コハク酸塩、リジン・イソフタル酸塩、リジン・テレフタル酸塩が挙げられるが、より好ましい具体例としてはリジン・アジピン酸塩が挙げられる。
培養条件には特に制限はなく、振とう培養、深部通気撹拌培養等の好気的条件下で行う。培養温度は一般に25℃〜42℃に、好ましくは28℃〜38℃である。培養時間は、通常1日から6日間である。
培養pH調整にはアルカリ側に調整する場合はアンモニアを使用することが好ましく、酸性側に調整する場合は塩酸またはジカルボン酸を使用することが好ましく、ジカルボン酸を使用することがより好ましい。これら中和剤を用いて培養pHを5〜8に、好ましくはpH6.5〜7.5に制御するのがよい。なお、中和剤の状態に制限はなく、気体、液体、固体または水溶液で使用される。特に好ましくは水溶液である。
中和剤として好ましく使用されるジカルボン酸には特に制限はないが、好ましくは、前記2つのカルボキシル基以外には、実質上、官能基が存在しないジカルボン酸である。ここでいう官能基とは、ポリアミド重合反応(反応条件としては、例えば、反応温度250〜270℃、圧力10〜20kg/cmで反応時間1から5時間)の際にアミノ基やカルボキシル基等と反応して、ポリマーの分岐を引き起こしたり、ポリマーの結晶化度を低下(結晶化度80%以下)させるような反応基であり、例えば、アミノ基やカルボキシル基がこれに該当するが、それ以外には、酸性基(スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等)や塩基性基(ヒドラジノ基等)やプロトニックな極性基(水酸基等)や開裂性を有する基(エポシキ基、過酸化基等)やその他反応性の高い基(イソシアナート基等)が該当する。一方、ハロゲン置換基や芳香族性置換基、エーテル基、エステル基、アミド基等は反応性が低く、ここでいう官能基には該当しない。
ジカルボン酸として、より好ましくは、以下の一般式(1)、(2)または(3)で示されるジカルボン酸である。
HOOC−(CH−COOH・・・(1)
(但し、一般式(1)において、m=0〜16)。
Figure 2012077741
(但し、一般式(2)において、n,o=0〜16)。
Figure 2012077741
(但し、一般式(3)において、p,q=0〜16)。
また、ジカルボン酸として、更に好ましくは、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸である。
培養液中のカダベリンは、カダベリンのフリー体またはカダベリン塩として存在する(なお、本発明ではこれらを総称して「カダベリン」という。)。培養液中のカダベリンを回収するためにはまず、培養液中からコリネ型細菌を除去する。その際、コリネ型細菌が増殖し、発酵が十分進んでカダベリンが生成した後、菌体と培養上清を分離(分離方法としては、菌体を沈殿除去・遠心分離・膜ろ過分離)しても良いし、あるいは始めから菌体を保持材等で分離・保持あるいは固定化していても良い。菌体が除去されたカダベリンを含む培養液からカダベリンを回収する方法自体は周知であり、例えば、特開2009−207495号公報に記載のようにカダベリン・ジカルボン酸塩として晶析して採取することもできる。また、特開2009−29872号公報に記載のようにNF膜を利用してカダベリンのフリー体を精製し採取することもできる。また、特開2009−28045号公報に記載のように極性有機溶媒で抽出し、蒸留することによりカダベリンのフリー体を採取することもできる(下記参考例参照)。
以下、本発明について、実施例、比較例を挙げて詳細に説明する。
参考例1 カダベリンおよびリジン濃度のHPLCによる分析方法
分析サンプル25μlに、内標として1,4−ジアミノブタン(0.03M)を25μl、炭酸水素ナトリウム(0.075M)を150μl、2,4−ジニトロフルオロベンゼン(0.2M)のエタノール溶液を添加混合し37℃で1時間保温し、反応溶液50μlを1mlアセトニトリルに溶解後、10,000rpmで5分間遠心した後の上清10μlを以下の条件でHPLC分析した。
使用カラム:CAPCELL PAK C18(資生堂)
移動相:0.1%(w/w)リン酸水溶液:アセトニトリル=4.5:5.5
検出:UV360nm。
参考例2 L−リジン脱炭酸活性を有し、かつホモセリンデヒドロゲナーゼ活性を欠損しているコリネバクテリウム・グルタミカム(TR−CAD1株)の作製(特許文献1)
(1)HOM遺伝子のクローニング
HOM活性を欠損させるために、N末端から300アミノ酸領域に該当する遺伝子をクローニングを行った。
データベース(GenBank)に登録されているHOM遺伝子(Accession No.BA000036)の塩基配列を参考にオリゴヌクレオチドプライマー5’−gaagaattctaaacctcagcatctgcccc−3’(配列番号1)および5’−gaaggatccaaaggacttgtttaccgacgc−3’(配列番号2)を合成した。コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032から常法に従い調製したゲノムDNAの溶液を増幅鋳型として0.2mlのミクロ遠心チューブに0.2μlづつ取り、各プライマーを20pmol、トリス塩酸緩衝液pH8.0(20mM)、塩化カリウム(2.5mM)、ゼラチン(100μg/ml)、各dNTP(50μM)、LATaqDNAポリメラーゼ(2単位)(宝酒造製)となるように各試薬を加え、全量を50μlとした。DNAの変性条件を94℃、30秒、プライマーのアニーリング条件を55℃、30秒、DNAプライマーの伸長反応条件を72℃、3分の各条件でBioRad社のサーマルサイクラーを用い、30サイクルポリメラーゼ連鎖反応させた(以下PCR法と略す)。尚、本参考例におけるPCR法は特に断らない限り、本条件にて行った。このPCR法により得られた産物を1%アガロースにて電気泳動し、HOM遺伝子を含む約0.9kbのDNA断片をゲルから切り出しジーン・クリーン・キット(BIO101社製)により精製した。この断片を、制限酵素のEcoRIおよびBamHIで消化し、得られた0.9kbのEcoRI−BamHI断片を、予めEcoRIおよびBamHIで消化しておいたpHSG298(宝酒造製)のEcoRI/BamHI間隙にライゲーションキットver.1(宝酒造製)を用いて挿入し、得られたプラスミドをpHOM1と命名した。
(2)LDC発現カセットの作成
まず、LDCをコリネバクテリウム・グルタミカムで構成的に発現させるためのプロモーターとしてカナマイシン耐性遺伝子のプロモーターのクローニングを行った。
データベース(GenBank)に登録されているpHSG299(AccessionNo.M19415)の塩基配列を参考にオリゴヌクレオチドプライマー5’−gaaccgcggcctgaatcgccccatcatcc−3’(配列番号3)および5’−gaaccatggccccttgtattactg−3’(配列番号4)を合成した。プラスミドpHSG299を増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号3)、(配列番号4)をプライマーセットとしたPCR法により得られた産物を1.0%アガロースゲル電気泳動し、カナマイシン耐性遺伝子のプロモーター領域を含む0.3kbのDNA断片をゲルから切り出しジーン・クリーン・キットにより精製した。この断片を、プラスミドベクターpT7blue(Novagen社製)のEcoRV切断部位の3’−末端にT塩基が付加された間隙に、ライゲーションキットver.1を用いて挿入し、得られたプラスミドのうち制限酵素のHindIIIおよびSacIIで消化した際に3.2kbの単一断片になるプラスミドをpKMP1と命名した。
次に、LDC遺伝子のクローニングを行った。データベース(GenBank)に登録されているLDC遺伝子(AccessionNo.M76411)の塩基配列を参考にオリゴヌクレオチドプライマー5’−gaaccatggacgttattgcaa−3’(配列番号5)、5’−gaaccgcggttattttttgctttcttcttt−3’(配列番号6)を合成した。エシェリシア・コリATCC10798から常法に従い調整したゲノムDNAの溶液を増幅鋳型としてオリゴヌクレオチド(配列番号5)、(配列番号6)をプライマーセットとしたPCR法により得られた産物を1.0%アガロースゲル電気泳動し、LDC遺伝子を含む2.1kbのDNA断片をゲルから切り出しジーン・クリーン・キットにより精製した。この断片を、プラスミドベクターpT7blueのEcoRV切断部位の3’−末端にT塩基が付加された間隙に、ライゲーションキットver.1を用いて挿入し、得られたプラスミドのうちHindIIIおよびNcoIで消化した際に4.0kbの単一断片になるプラスミドをpCADAと命名した。
最後に、pKMP1をHindIIIおよびNcoIで消化し、この産物を1.2%アガロースゲル電気泳動し、カナマイシン耐性遺伝子のプロモーター領域を含む0.3kbのDNA断片をゲルから切り出しジーン・クリーン・キットにより精製した。こうして得られたHindIII−NcoI断片を、予めHindIIIおよびNcoIで消化しておいたpCADAのHindIII/NcoI間隙にライゲーションキットver.1を用い挿入し、得られたプラスミドをpTM100と命名した。
(3)HOM遺伝子破壊およびLDC遺伝子発現ベクターの作成
pTM100をSacIIで消化し、この産物を1.0%アガロースゲル電気泳動し、LDC発現カセットを含む2.4kbのDNA断片をゲルから切り出しジーン・クリーン・キットにより精製した。こうして得られたSacII断片を、予めSacIIで消化しておいたpHOM1のSacII間隙にライゲーションキットver.1を用い挿入し、得られたプラスミドをpTM101と命名した。
(4)pTM101の染色体への組み込み
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032(以下ATCC13032株と略す)にプラスミドpTM101を、電気穿孔法[FEMSMicrobiologyLetters,65,p.299(1989)]により導入し、カナマイシン(25μg/ml)が添加されているLB(トリプトン(10g/l)(Bacto社製)、酵母エキス(5g/l)(Bacto社製)、塩化ナトリウム(10g/l))寒天培地上で選択した。
こうして選択された形質転換体から常法に従いゲノムDNA溶液を調製した。このゲノムDNAを鋳型として、オリゴヌクレオチド(配列番号5)(配列番号6)をプライマーセットとして用いたPCR法を行い、得られた産物を1.0%アガロースゲルにて電気泳動したところ、2.1kbの単一のバンドが観察された。このことから、選択された形質転換体が、HOM遺伝子座に、LDC遺伝子が挿入されていることが確認できた。この形質転換体を、コリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1(以下TR−CAD1株と略す)と命名した。
13032株はLDC活性を有していないが、TR−CAD1株はLDC活性を有していることが確認された。また、13032株はHOM活性を有しているが、TR−CAD1株はHOM活性を欠損していた。13032株はホモセリンを要求しないが、TR−CAD1株は、ホモセリンを要求した。こうして、LDC活性を有し、かつHOM活性を欠損(ホモセリン栄養要求性)しているコリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1株が作製できた。
参考例3 L−リジン脱炭酸活性を有し、かつホモセリン要求性を有し、かつS−(2−アミノエチル)−L−システイン耐性を有するコリネバクテリウム・グルタミカム(TR−CAD2)株の作製(特許文献1)
(1)脱感作型AK遺伝子の作成
AK遺伝子に変異を導入し、脱感作型AK遺伝子を作成するためにAK遺伝子をクローニングを行った。
データベース(GenBank)に登録されているAK遺伝子(Accession No.BA000036)の塩基配列を参考にオリゴヌクレオチドプライマー5’−acagaattcgtggccctggtcgtacagaa−3’(配列番号7)および5’−catctcgagttagcgtccggtgcctgcat−3’(配列番号8)を合成した。コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032から常法に従い調整したゲノムDNAの溶液を増幅鋳型として、オリゴヌクレオチド(配列番号7)、(配列番号8)をプライマーセットとしたPCR法により得られた産物を1.0%アガロースゲル電気泳動し、AK遺伝子を含む約1.3kbのDNA断片をゲルから切り出しジーン・クリーン・キットにより精製した。この断片を、EcoRIおよびXhoIで消化し、得られた1.3kbのEcoRI−XhoI断片を、予めEcoRIおよびXhoIで消化しておいたpHSG396(宝酒造製)のEcoRI/XhoI間隙にライゲーションキットver.1を用いて挿入し、得られたプラスミドをpAK1と命名した。
次に、クローニングしたAK遺伝子の931番目から933番目のacc(Thr)をatg(Ile)に変異させるためにオリゴヌクレオチドプライマー5’−cgacatcatcttcacctgcc−3’(配列番号9)および5’−ggcaggtgaagatgatgtcg−3’(配列番号10)を合成した。pAK1を増幅鋳型として、オリゴヌクレオチド(配列番号9)、(配列番号10)をプライマーセットとしてQuikChangeサイトダイレクテッド・ミュータジェネシス・キット(ストラタジーン社製)を用い得られたプラスミドをpTM102と命名した。このpTM102中のAK遺伝子を常法によりシークエンスしたところ、目的通り931番目から933番目のacc(Thr)をatg(Ile)に変異されており、脱感作型AK遺伝子が作成できていることが確認できた。
(2)pTM102の染色体への組み込み
データベース(GenBank)に登録されているpFK398(AccessionNo.D29826)の塩基配列を参考にクロラムフェニコール耐性遺伝子のオリゴヌクレオチドプライマー5’−acggtcgactcgcagaataaataaatcctggtg−3’(配列番号11)および5’−atgaggcctgagaggcggtttgcgtattgga−3’(配列番号12)を合成した。
TR−CAD1株にプラスミドpTM102を、電気穿孔法により導入し、カナマイシン(25μg/ml)およびクロラムフェニコール(10μg/ml)が添加されているLB寒天培地上で選択した。
こうして選択された形質転換体から常法に従いゲノムDNA溶液を調製した。このゲノムDNAを鋳型として、オリゴヌクレオチド(配列番号11)(配列番号12)をプライマーセットとして用いたPCR法を行い、得られた産物を1.0%アガロースゲルにて電気泳動したところ、1.0kbの単一のバンドが観察された。このことから、選択された形質転換体が、AK遺伝子座に、クロラムフェニコール耐性遺伝子が挿入されていることが確認できた。この形質転換体を、コリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD2(以下TR−CAD2株と略す)と命名した。
(3)脱感作型AK遺伝子のTR−CAD2株の染色体上への導入の確認
データベース(GenBank)に登録されているAK遺伝子(Accession No.BA000036)の塩基配列を参考に、AKのN末端より上流0.1kbのオリゴヌクレオチドプライマー5’−ttggaacgcgtcccagtggc−3’(配列番号13)を合成した。
TR−CAD2株から常法に従いゲノムDNA溶液を調整した。このゲノムDNAを鋳型として、オリゴヌクレオチド(配列番号12)(配列番号13)をプライマーセットとして用いたPCR法を行い、得られた産物を1.0%アガロースゲルにて電気泳動し、AK遺伝子およびクロラムフェニコール耐性遺伝子を含む3.1kbのDNA断片をゲルから切り出しジーン・クリーン・キットにより精製した。この断片を、プラスミドベクターpT7blueのEcoRV切断部位の3’−末端にT塩基が付加された間隙に、ライゲーションキットver.1を用いて挿入し、得られたプラスミドをpAK2と命名した。このpAK2中のAK遺伝子を常法によりシークエンスしたところ、目的通りの変異が含まれていることが確認できたため、TR−CAD2株は染色体上で発現可能な脱感作型AK遺伝子が導入できたことが確認できた。こうして、LDC活性を有し、かつHOM活性を欠損(ホモセリン栄養要求性)し、かつAEC耐性であるコリネバクテリウム・グルタミカム(TR−CAD2株)が作製できた。
実施例1 カダベリンを生産する能力を有し、かつ2,2’−チオビス(エチルアミン)に対する耐性を有するコリネ型細菌の取得
上記の通り得られた、L−リジン脱炭酸酵素活性を有し、かつホモセリンデヒドロゲナーゼ活性を欠損することによりホモセリン栄養要求性変異株となったコリネバクテリウム・グルタミカム(TR−CAD1株)、およびL−リジン脱炭酸酵素活性を有し、かつホモセリンデヒドロゲナーゼ活性を欠損することによりホモセリン栄養要求性変異株となり、かつS−(2−アミノエチル)−L−システイン耐性(AEC耐性)を有するコリネバクテリウム・グルタミカム(TR−CAD2株)を、各々5mlのBHI(Brain Heart Infusion)液体培地で一晩前培養し、得られた前培養液のうち2.5mlを新しいBHI液体培地に植菌、濁度(A600)が1〜2に達するまで培養した。培養後、菌体をトリスマレイン酸緩衝液で2回洗浄し、洗浄した菌体を12mlのトリスマレイン酸緩衝液に懸濁、懸濁液を900μlずつ試験管に分注し、各々640μg/mlのNTG溶液を添加した。混合溶液を、30℃で40分激しく振とうし、2mlのBHI培地に懸濁して氷冷。懸濁液をトリスマレイン酸緩衝液で2回洗浄後、50mlのBHI培地を添加し、28度で一晩培養した。培養液を、トリスマレイン酸緩衝液で2回洗浄し、2,2−チオビスエチルアミンを180mM、220mM、250mM、300mMまたは400mMを添加した表1に示す培地で2〜3日培養後、コロニーを形成した菌体を2,2−チオビスエチルアミン耐性株として取得し、それぞれTR−CADA1−C、TR−CADA1−0〜6株、TR−CADA2−C、TR−CADA2−0〜6株(表2)とした。更に取得した耐性株は、該耐性株を取得した培地で3日間培養し、コロニーを形成すること、すなわち2,2−チオビスエチルアミン耐性が付与されたことを確認した。
なお、TR−CADA1−6株、TR−CADA2−5株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)にそれぞれ受領番号NITE BP−1002、NITE BP−1003として国際寄託されている。
Figure 2012077741
実施例2,3、比較例1,2
TR−CADA1−1〜6株(実施例2)、TR−CADA2−1〜6(実施例3)、TR−CADA1株(比較例1)、TR−CADA1−0株(比較例2)、TR−CADA2(比較例3)、TR−CADA2−0(比較例4)によるカダベリン発酵を行った。滅菌したBHI培地5mlに各株を1白金耳植菌し、30℃で24時間振とうして前々培養を行った。この前々培養液を前々培養と同じ培地50mlに全量植菌し、30℃、振幅30cmで、120rpmの条件下で24時間培養して前培養を行った。次に、表3に示すMMP培地950mlに前培養液全量を植菌し、滅菌した空気を0.07vvmで通気しながら、30℃、攪拌翼回転数800rpm、pHを6.7に調整しながら50時間培養を行った。中和剤として硫酸水溶液(3M)およびアンモニア水(3M)で行った。
Figure 2012077741
培養終了後、4℃、8,000rpmで10分間遠心分離することで菌体を除去し、培養上清を回収した。この培養上清中のカダベリンおよびリジンをHPLCにより分析した。また、グルコース濃度の測定には、“グルコーステストワコーC”(登録商標)(和光純薬社製)を用いた。カダベリン対糖収率(生産されたカダベリン重量/消費したグルコース重量)×100(%))を計算し、それら結果を表4に示す。
Figure 2012077741
その結果、実施例2と比較例1、比較例2及び実施例3と比較例3、比較例4をそれぞれ比較すると、親株に対し、2,2−チオビスエチルアミン耐性を付与することによって、カダベリンの蓄積濃度および対糖収率が向上していることが明らかになった。
得られた培養上清からのカダベリンの回収は、種々の公知の方法により可能である。以下に好ましい公知の回収方法を例示する。
参考例4 培養上清からのカダベリンの回収
前述の方法で得られたカダベリン発酵液の培養上清に5規定の水酸化ナトリウムを添加し、pHを13に調整する。次いで、ナノ濾過膜に通じて、無機塩成分および、微量の残留菌体を除去し、ナノ濾過膜透過液を回収する。次いで、回収したナノ濾過膜透過液を逆浸透膜に通じてカダベリン濃度が18重量%程度になるまで濃縮、回収する。次いで、回収した濃縮液をさらにロータリーエバポレーターなどにより減圧濃縮することにより水を除去し、50重量%程度のカダベリン水溶液が得られる。次にクロロホルムを等量加え、クロロホルム相にカダベリンを抽出する。最後にこのクロロホルム相を、減圧蒸留(30mmHg、80℃)することによりフリーのカダベリンを単離する。
本発明により、カダベリンを工業的に製造することができる。
NITE BP−1002
NITE BP−1003

Claims (5)

  1. カダベリンを生産する能力を有し、かつ2,2’−チオビス(エチルアミン)に対する耐性を有するコリネ型細菌を培養することを含む、カダベリンの製造方法。
  2. 前記コリネ型細菌が250mM以上の2,2’−チオビス(エチルアミン)に対する耐性を有する、請求項1に記載のカダベリンの製造方法。
  3. 前記コリネ型細菌がリジン脱炭酸酵素活性を有する、請求項1または2に記載のカダベリンの製造方法。
  4. 前記コリネ型細菌がコリネバクテリウム属およびブレビバクテリウム属からなる群より選ばれる、請求項1〜3のいずれかに記載のカダベリンの製造方法。
  5. 前記コリネ型細菌がホモセリン栄養要求性および/またはS−(2−アミノエチル)−L−システイン耐性を有する、請求項1〜4のいずれかに記載のカダベリンの製造方法。
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