JP6294309B2 - アニリン生産性の向上したコリネ型細菌形質転換体及びそれを用いるアニリンの製造方法 - Google Patents
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Description
加えて、N末端から309番目のプロリン(P)をメチオニン(M)、バリン(V)、グルタミン(Q)、セリン(S)、アルギニン(R)のいずれかに置換した部位特異的変異体をコードする遺伝子をコリネ型細菌に導入した形質転換体では、アニリン生産性が更に増大することを見出し、本発明を完成するに至った。
この他、本発明者らは、遺伝子組み換え宿主として汎用される大腸菌にアニリンを添加して好気培養を行った結果、アニリン濃度20mM以上であると増殖に多大な影響がみられるが、アミノ酸生産菌として知られるコリネ型細菌の場合は、アニリン濃度を60mMにまで上げても増殖可能であることを見出した。即ち、遺伝子組み換え宿主として汎用される大腸菌よりもコリネ型細菌のアニリン耐性が高く、従ってアニリンの工業的生産性に優れていることを見出した(図2、図3)。
[1]アミノベンゾエート デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子が宿主のコリネ型細菌に導入された、アニリン生産能を有する形質転換体であって、前記アミノベンゾエート デカルボキシラーゼ活性を有する酵素が配列番号2で表されるアミノ酸配列から構成され、前記アミノ酸配列が少なくともN末端から309番目のプロリン(P)に変異を有することを特徴とする形質転換体。
[2]前記変異が、N末端から309番目のプロリン(P)の、メチオニン(M)、バリン(V)、グルタミン(Q)、スレオニン(T)、セリン(S)及びアルギニン(R)からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸への置換であることを特徴とする前記[1]記載の形質転換体。
[3]前記変異が、N末端から309番目のプロリン(P)の、メチオニン(M)、バリン(V)及びグルタミン(Q)からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸への置換であることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の形質転換体。
[4]アミノベンゾエート デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子が、エンテロバクター クロアカエ(Enterobacter cloacae)由来の遺伝子である前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の形質転換体。
[5]宿主のコリネ型細菌がコリネバクテリウム グルタミカムである前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の形質転換体。
[6]宿主のコリネバクテリウム グルタミカムが、コリネバクテリウム グルタミカムR(FERM P-18976(FERM BP-18976)、ATCC13032、又はATCC13869である前記[5]に記載の形質転換体。
[7]コリネバクテリウム グルタミカム ANI-13(受託番号:NITE P-01583(NITE BP-01583)形質転換体、コリネバクテリウム グルタミカム ANI-14(受託番号:NITE P-01584(NITE BP-01584)形質転換体又はコリネバクテリウム グルタミカム ANI-15(受託番号:NITE P-01585(NITE BP-01585)形質転換体。
[8]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の形質転換体を、還元条件下、アミノ安息香酸、そのエステル、及び/又はそれらの塩を含有する反応液中で反応させる工程と、反応培地中のアニリンを回収する工程とを含むアニリンの製造方法。
[9]反応工程において、形質転換体が実質的に増殖しない前記[8]に記載のアニリンの製造方法。
[10]還元条件下の反応液の酸化還元電位が−200〜−500ミリボルトである前記[8]又は[9]に記載のアニリンの製造方法。
コリネ型細菌とは、バージーズ・マニュアル・デターミネイティブ・バクテリオロジー〔Bargeys Manual of Determinative Bacteriology、Vol. 8、599(1974)〕に定義されている一群の微生物であり、通常の好気的条件で増殖するものならば特に限定されるものではない。具体例を挙げれば、コリネバクテリウム属菌、ブレビバクテリウム属菌、アースロバクター属菌、マイコバクテリウム属菌、マイクロコッカス属菌等が挙げられる。コリネ型細菌の中ではコリネバクテリウム属菌が好ましい。
旧分類のブレビバクテリウム ラクトファーメンタムATCC13869株、ブレビバクテリウム フラバムのMJ-233株(FERM BP-1497)、MJ-233AB-41株(FERM BP-1498)等も好適なコリネバクテリウム グルタミカムである。
アミノベンゾエート デカルボキシラーゼは、アミノ安息香酸から炭酸を脱離させてアニリンを生成する反応、及びその逆反応を触媒する酵素である。
PCRで増幅したアミノベンゾエート デカルボキシラーゼ酵素をコードするDNAは、それぞれ、宿主で増幅できる適切なベクターにクローニングすればよい。
プラスミドベクターとしては、コリネ型細菌内で自律複製機能を司る遺伝子を含むものであれば良い。その具体例としては、ブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)2256由来のpAM330〔特開昭58-67699号公報〕、〔Miwa, K. et al., Cryptic plasmids in glutamic acid-producing bacteria. Agric. Biol. Chem. 48:2901-2903(1984)〕及び〔Yamaguchi, R. et al., Determination of the complete nucleotide sequence of the Brevibacterium lactofermentum plasmid pAM330 and the analysis of its genetic information. Nucleic Acids Symp. Ser. 16:265-267(1985)〕、コリネバクテリウム グルタミカム ATCC13058由来のpHM1519 〔Miwa, K. et al., Cryptic plasmids in glutamic acid-producing bacteria. Agric. Biol. Chem. 48:2901-2903(1984)〕及びpCRY30 〔Kurusu, Y. et al., Identification of plasmid partition function in coryneform bacteria. Appl. Environ. Microbiol. 57:759-764 (1991)〕、コリネバクテリウム グルタミカム T250由来のpCG4〔特開昭57-183799号公報〕、〔Katsumata, R. et al., Protoplast transformation of glutamate-producing bacteria with plasmid DNA. J. Bacteriol.、159:306-311 (1984)〕、pAG1、pAG3、pAG14、pAG50〔特開昭62-166890号公報〕、pEK0、pEC5、pEKEx1 〔Eikmanns, B.J. et al., A family of Corynebacterium glutamicum/Escherichia coli shuttle vectors for cloning, controlled gene expression, and promoter probing. Gene, 102:93-98 (1991)〕等が挙げられる。
形質転換方法は、公知の方法を制限無く使用できる。このような公知の方法として、例えば塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン介在トランスフェクション、電気穿孔法等が挙げられる。中でも、コリネ型細菌には、電気パルス法が好適であり、電気パルス法は、公知の方法 〔Kurusu, Y. et al., Electroporation-transformation system for Coryneform bacteria by auxotrophic complementation. Agric. Biol. Chem. 54:443-447 (1990)〕 及び 〔Vertes A.A. et al., Presence of mrr- and mcr-like restriction systems in Coryneform bacteria. Res. Microbiol. 144:181-185 (1993)〕により行うことができる。
培養温度は約15〜45℃とすればよく、培養時間は約1〜7日間とすればよい。
上記説明した本発明の形質転換体を、アミノ安息香酸、そのエステル、及び/又はそれらの塩を含有する反応液中で反応させる工程と、反応液中のアニリンを回収する工程とを含む方法によりアニリンを製造することができる。
アニリンの製造における反応に先立ち、形質転換体を好気条件下で、温度約25〜35℃で、約12〜48時間培養して増殖させることが好ましい。
反応に先立つ形質転換体の好気的培養に用いる培地は、炭素源、窒素源、無機塩類及びその他の栄養物質等を含有する天然培地又は合成培地を用いることができる。
前記好気的培養における炭素源として、糖類(グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、ガラクトースのような単糖;スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、キシロビオース、トレハロースのような二糖;澱粉のような多糖;糖蜜等)、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、グリセリンのような糖アルコール;酢酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸のような有機酸;エタノール、プロパノールのようなアルコール;ノルマルパラフィンのような炭化水素等も用いることができる。
炭素源は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
培地中のこれら炭素源の濃度は、通常、約0.1〜10(w/v%)とすればよい。
さらに、必要に応じて、ビタミン類を添加することもできる。ビタミン類としては、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等が挙げられる。培地のpHは約6〜8が好ましい。
本発明のアニリン製造における反応液は、アニリン前駆体(アニリン原料)を含有する水、緩衝液、無機塩培地等を用いることができる。
前記前駆体としては、アミノ安息香酸、そのエステル、及び/又はそれらの塩を用いることができる。アミノ安息香酸としては、2−アミノ安息香酸(o−アミノ安息香酸;アントラニル酸)、3−アミノ安息香酸(m−アミノ安息香酸)、4−アミノ安息香酸(p−アミノ安息香酸)のいずれも使用できる。中でも、水溶性であるため反応に使用し易い点で、2−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸が好ましい。
反応温度、即ち反応中の形質転換体の生存温度は、約20〜40℃が好ましく、約25〜35℃がより好ましい。上記温度範囲であれば、効率良くアニリンを製造できる。また、反応時間は、約1〜7日間が好ましく、約1〜3日間がより好ましい。培養は、バッチ式、流加式、連続式の何れでもよい。中でも、バッチ式が好ましい。
反応は、好気的条件で行ってもよく、還元条件で行ってもよいが、還元条件で行うことが好ましい。還元条件では、コリネ型細菌は実質的に増殖せず、一層効率的にアニリンを生産させることができる。
還元条件は、反応液の酸化還元電位で規定される。反応液の酸化還元電位は、約−200mV〜−500mVが好ましく、約−250mV〜−500mVがより好ましい。反応液の還元状態は、簡便にはレサズリン指示薬(還元状態であれば、青色から無色への脱色)で推定できるが、正確には酸化還元電位差計(例えば、BROADLEY JAMES社製、ORP Electrodes)を用いて測定できる。
これらの方法を適宜組み合わせることも有効な還元条件の反応液用水溶液の調整方法である。
上記のようにして培養することにより、反応液中にアニリンが生産される。反応液を回収することによりアニリンを回収できるが、さらに、公知の方法でアニリンを反応液から分離することもできる。そのような公知の方法として、蒸留法、膜透過法、有機溶媒抽出法等が挙げられる。なお、蒸留法、膜透過法、有機溶媒抽出法は、従来十分に確立されているので、本発明においてもそれに従ってよい。
(1) 微生物からの染色体DNAの抽出
エンテロバクター クロアカエ(Enterobacter cloacae)NBRC 13535からの染色体DNA抽出は、NBRC Medium No.802培地 [polypeptone 10 g, yeast extract 2 g, MgSO4・7H2O 1 gを蒸留水1 Lに溶解]に、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期まで37℃で振とう培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
クローニングベクターpCRB22の構築
コリネバクテリウム カゼイ JCM12072由来のプラスミドpCASE1のDNA複製起点(以降、pCASE1-oriと記す)配列、及びクローニングベクターpHSG298(タカラバイオ株式会社製)をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、pCASE1-ori配列、クローニングベクターpHSG298をそれぞれクローン化するべく、配列番号3(pCASE1-ori配列)、配列番号4(クローニングベクター−pHSG298)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
(a-1); 5’- AT AGATCT AGAACGTCCGTAGGAGC -3’ (配列番号5)
(b-1); 5’- AT AGATCT GACTTGGTTACGATGGAC -3’ (配列番号6)
なお、プライマー(a-1)及び(b-1)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
クローニングベクターpHSG298増幅用プライマー
(a-2); 5’- AT AGATCT AGGTTTCCCGACTGGAAAG -3’ (配列番号7)
(b-2); 5’- AT AGATCT CGTGCCAGCTGCATTAATGA -3’ (配列番号8)
なお、プライマー(a-2)及び(b-2)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
TaKaRa LA TaqTM (5 units/μl) 0.5μl
10X LA PCRTM Buffer II (Mg2+ free) 5μl
25mM MgCl2 5μl
dNTP Mixture (2.5mM each) 8μl
鋳型DNA 5μl(DNA含有量1μg以下)
上記記載の2種プライマー*) 各々0.5μl(最終濃度1μM)
滅菌蒸留水 25.5μl
以上を混合し、この50μlの反応液を用いてPCRを行った。
*) pCASE1-ori配列を増幅する場合はプライマー(a-1)と(b-1)の組み合わせ、クローニングベクターpHSG298を増幅する場合はプライマー(a-2)と(b-2)の組み合わせで行った。
デナチュレーション過程 :94℃ 60秒
アニーリング過程 :52℃ 60秒
エクステンション過程 :72℃
pCASE1-ori配列 150秒
クローニングベクターpHSG298 180秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
得られたライゲーションA液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素BglIIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpHSG298約2.7-kbのDNA断片に加え、pCASE-ori配列の約1.4-kb DNA断片が認められた。
pCASE1-ori配列を含むクローニングベクターをpCRB22と命名した。
コリネバクテリウム グルタミカムR由来のグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)をコードするgapA遺伝子のプロモーター配列(以降、PgapAと記す)を含むDNA断片、及びクローニングベクターpKK223-3(ファルマシア社製)由来rrnBT1T2双方向ターミネーター配列(以降、ターミネーター配列と記す)を含むDNA断片を以下の方法により増幅した。
PCRに際して、PgapA配列及びターミネーター配列をそれぞれクローン化するべく、配列番号9(PgapA配列)、配列番号10(ターミネーター配列)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
(a-3); 5’- CTCT GTCGAC CCGAAGATCTGAAGATTCCTG -3’(配列番号11)
(b-3);5’- CTCT GTCGAC GGATCC CCATGG TGTGTCTCCTCTAAAGATTGTAGG -3’
(配列番号12)
なお、プライマー(a-3)には、SalI制限酵素部位が、プライマー(b-3)には、SalI、BamHI及びNcoI制限酵素部位が付加されている。
ターミネーター配列増幅用プライマー
(a-4); 5’- CTCT GCATGC CCATGG CTGTTTTGGCGGATGAGAGA -3’
(配列番号13)
(b-4); 5’- CTCT GCATGC TCATGA AAGAGTTTGTAGAAACGCAAAAAGG -3
(配列番号14)
なお、プライマー(a-4)には、SphI及びNcoI制限酵素部位が、プライマー(b-4)には、SphI及びBspHI制限酵素部位が付加されている。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
TaKaRa LA TaqTM (5 units/μl) 0.5μl
10X LA PCRTM Buffer II (Mg2+ free) 5μl
25mM MgCl2 5μl
dNTP Mixture (2.5mM each) 8μl
鋳型DNA 5μl(DNA含有量1μg以下)
上記記載の2種プライマー*) 各々0.5μl(最終濃度1μM)
滅菌蒸留水 25.5μl
以上を混合し、この50μlの反応液を用いてPCRを行った。
*) PgapA配列を増幅する場合はプライマー(a-3)と(b-3)の組み合わせ、ターミネーター配列を増幅する場合はプライマー(a-4)と(b-4)の組み合わせで行った。
(a-5);5’- CTCT CATATG ACAGCATCACCTTGGG -3’ (配列番号15)
(b-5);5’- CTCT CATATG TCATCTTAACGACGCTCCATTC -3’(配列番号16)
なお、プライマー(a-5)及び(b-5)には、NdeI制限酵素部位が付加されている。
dec/LB遺伝子増幅用プライマー
(a-6); 5’- CTCT CATATG GTAAATGATCCTTATGATTTACGAAAAG -3’
(配列番号17)
(b-6); 5’- CTCT CATATG CTAATCTCCCTCCCAACG -3’ (配列番号18)
なお、プライマー(a-6)及び(b-6)には、NdeI制限酵素部位が付加されている。
デナチュレーション過程 :94℃ 60秒
アニーリング過程 :52℃ 60秒
エクステンション過程 :72℃
PgapA配列 45秒
ターミネーター配列 30秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
得られたライゲーションB液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SalIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpCRB22約4.1-kbのDNA断片に加え、PgapA配列の約0.6-kb DNA断片が認められた。
PgapA配列を含むクローニングベクターをpCRB206と命名した。
得られたライゲーションC液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpCRB206約4.7-kbのDNA断片に加え、ターミネーター配列の約0.4-kb DNA断片が認められた。
rrnBT1T2ターミネーター配列を含むクローニングベクターをpCRB207と命名した。
コリネバクテリウム グルタミカムR由来のgapA(glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase A)遺伝子のプロモーター(以降、PgapAと記す)配列を含むDNA断片を以下の方法により増幅した。
PCRに際して、pCRB207配列をクローン化するべく、配列番号19(pCRB207)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
(a-7);5’- CTCT CATATG CTGTTTTGGCGGATGAGAG -3’(配列番号20)
(b-7);5’- CTCT CATATG GTGTCTCCTCTAAAGATTGTAGG -3’(配列番号21)
尚、プライマー(a-7)及び(b-7)にはNdeI制限酵素部位が付加されている。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
TaKaRa LA TaqTM (5 units/μl) 0.5μl
10X LA PCRTM Buffer II (Mg2+ free) 5μl
25mM MgCl2 5μl
dNTP Mixture (2.5mM each) 8μl
鋳型DNA 5μl(DNA含有量1μg以下)
上記記載の2種プライマー*) 各々0.5μl(最終濃度1μM)
滅菌蒸留水 25.5μl
以上を混合し、この50μlの反応液を用いてPCRを行った。
*)pCRB207配列を増幅する場合はプライマー(a-7)と(b-7)の組み合わせで行った。
(a-8); 5’- CTCT CATATG AACGGGCCGGAAC -3’ (配列番号22)
(b-8); 5’- CTCT CATATG TCAATCATCCACCCCGAAG -3’ (配列番号23)
なお、プライマー(a-8)及び(b-8)には、NdeI制限酵素部位が付加されている。
デナチュレーション過程 :94℃ 60秒
アニーリング過程 :52℃ 60秒
エクステンション過程 :72℃ 307秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
得られたライゲーションD液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素NdeIで切断し、制限酵素サイトの挿入を確認した。
PgapA配列及びrrnBT1T2ターミネーター配列を含むクローニングベクターをpCRB209と命名した。
エンテロバクター クロアカエ由来のアミノベンゾエート デカルボキシラーゼをコードするECL_04083-ECL_04082-ECL_04081(以降、dec/ECLと記載)遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、dec/ECL遺伝子をクローン化するべく、配列番号24(エンテロバクター クロアカエdec/ECL遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
(a-9); 5’- CTCT CATATG AGATTGATCGTGGGAATGAC -3’(配列番号25)
(b-9); 5’- CTCT CATATG TTACAGCAATGGCGGAATGG -3’(配列番号26)
なお、プライマー(a-9)及び(b-9)には、NdeI制限酵素部位が付加されている。
反応液:
TaKaRa LA TaqTM (5 units/μl) 0.5μl
10X LA PCRTM Buffer II (Mg2+ free) 5μl
25mM MgCl2 5μl
dNTP Mixture (2.5mM each) 8μl
鋳型DNA 5μl(DNA含有量1μg以下)
上記記載の2種プライマー*) 各々0.5μl(最終濃度1μM)
滅菌蒸留水 25.5μl
以上を混合し、この50μlの反応液を用いてPCRを行った。
*)エンテロバクター クロアカエdec/ECL遺伝子を増幅時には、プライマー(a-9) と(b-9) の組み合わせで行った。
デナチュレーション過程 :94℃ 60秒
アニーリング過程 :52℃ 60秒
エクステンション過程 :72℃
エンテロバクター クロアカエ dec/ECL遺伝子 135秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
アニリン生産遺伝子のpCRB209へのクローニング
上記項(3)に示したエンテロバクター クロアカエ株由来dec/ECL遺伝子を含む約2.3-kbのDNA断片10μl及びPgapAプロモーターを含有するクローニングベクターpCRB209 2μlを各々制限酵素NdeIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションE液とした。
各々の培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素でそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB209約5.1-kbのDNA断片に加え、エンテロバクター クロアカエ株由来dec/ECL遺伝子の長さ約2.3-kbの挿入断片が認められた。
上述のプラスミドpCRB209-dec/ECLを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol.54、443-447(1990) 及び Res. Microbiol.、Vol.144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム R 株を形質転換し、カナマイシン 50μg/mlを含むA寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5 g、K2HPO4 0.5 g、MgSO4.7H2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe2 SO4.7H2O + 0.042% (w/v) MnSO4.2H2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 g、glucose 40 g、寒天 15 gを蒸留水1Lに懸濁]に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB209-dec/ECLの導入が認められた。
エンテロバクター クロアカエ由来アミノベンゾエート デカルボキシラーゼをコードする遺伝子をターゲットとしたランダムミューテーションの導入を行い、アニリン生成量が増大した株をスクリーニングすることによって突然変異株を取得した。具体的には、ランダムミューテーション導入キット(商品名:GeneMorphII Random Mutagenesis Kit、Agilent社製)を用いて、変異を導入した。具体的には、上述のpCRB209-dec/ECLプラスミドを鋳型として、プライマー1(5’-GTCGCTCCCATATGAGATTGATCGTG-3’、配列番号27)と、プライマー2(5’-GCTCCTGCCATATGTTACAGCAATGG-3’、配列番号28)の組み合わせにより、前記キットの添付マニュアルに従いランダム変異を導入した。変異が導入されたDNA断片とプラスミドpCRB209を制限酵素Nde Iで消化し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、精製を行った後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液1μl、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをDNAライブラリーF液とした。
アミノ安息香酸デカルボキシラーゼの52.5 kDaサブユニット中のN末端から309番目のプロリン(P)を、スレオニン(T)以外のアミノ酸へそれぞれ置換した部位特異的変異導入を行った。具体的には、変異導入キット(商品名:PrimeSTAR(登録商標) Mutagenesis Basal Kit、タカラバイオ社製)を用いて、変異を導入した。具体的には、下記の条件で反応を行った。
PrimeSTARMax Premix (2x) 25μl
Primer1 (Fwd) 5μl(終濃度0.2μM)
Primer2 (Rev) 5μl(終濃度0.2μM)
鋳型DNA 5μl(2pg)
(pCRB209-dec/ECLプラスミド)
滅菌蒸留水 10μl
以上を混合し、この50μlの反応液を用いてPCRを行った。
実施例2(P309R)用Primers:
R(Fwd); 5’- GGGATGCGCTGGACCGAGATCGACTAC -3’(配列番号29)
R(Rev); 5’- GGTCCAGCGCATCCCGAGATAGAGGGA -3’(配列番号30)
S(Fwd); 5’- GGGATGTCCTGGACCGAGATCGACTAC -3’(配列番号31)
S(Rev); 5’- GGTCCAGGACATCCCGAGATAGAGGGA -3’(配列番号32)
M(Fwd); 5’- GGGATGATGTGGACCGAGATCGACTAC -3’(配列番号33)
M(Rev); 5’- GGTCCACATCATCCCGAGATAGAGGGA -3’(配列番号34)
V(Fwd); 5’- GGGATGGTGTGGACCGAGATCGACTAC -3’(配列番号35)
V(Rev); 5’- GGTCCACACCATCCCGAGATAGAGGGA -3’(配列番号36)
Q(Fwd); 5’- GGGATGCAGTGGACCGAGATCGACTAC -3’(配列番号37)
Q(Rev); 5’- GGTCCACTGCATCCCGAGATAGAGGGA -3’(配列番号38)
A (Fwd); 5’- GGGATGGCATGGACCGAGATCGACTAC -3’(配列番号39)
A (Rev); 5’- GGTCCATGCCATCCCGAGATAGAGGGA -3’(配列番号40)
F(Fwd); 5’- GGGATGTTCTGGACCGAGATCGACTAC -3’(配列番号41)
F(Rev); 5’- GGTCCAGAACATCCCGAGATAGAGGGA -3’(配列番号42)
デナチュレーション過程: 98℃ 10秒
アニーリング過程: 98℃ 15秒
エクステンション過程: 72℃ 40秒
以上を1サイクルとして、30サイクル行った。
各々の培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素でそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB209約5.1-kbのDNA断片に加え、エンテロバクター クロアカエ株由来dec/ECL(P309部位変異体)遺伝子の長さ約2.3-kbの挿入断片が認められた。
また、DNAシーケンスによって、目的とする変異が導入されていることを確認した。
上述のプラスミドpCRB209-dec/ECL(野生型、及びP309における各変異体)を用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol.54、443-447(1990) 及び Res. Microbiol.、Vol.144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム R 株を形質転換し、カナマイシン 50μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB209-dec/ECL変異体の導入が認められた。
pCRB209-dec/ECL(P309F変異体)プラスミドを導入した株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ANI-9と命名した。
pCRB209-dec/ECL(P309T変異体)プラスミドを導入した株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ANI-10と命名した。
pCRB209-dec/ECL(P309R変異体)プラスミドを導入した株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ANI-11と命名した。
pCRB209-dec/ECL(P309S変異体)プラスミドを導入した株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ANI-12と命名した。
pCRB209-dec/ECL(P309M変異体)プラスミドを導入した株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ANI-13と命名した。
pCRB209-dec/ECL(P309V変異体)プラスミドを導入した株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ANI-14と命名した。
pCRB209-dec/ECL(P309Q変異体)プラスミドを導入した株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ANI-15と命名した。
また、コリネバクテリウム グルタミカムR(Corynebacterium glutamicum R)は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターに寄託した(受託日:2002年8月20日、受託番号:FERM P-18976)。またこれについて、同センターにブタペスト条約に基づく国際寄託への移管を申請し、移管が完了している(国際受託番号:FERM BP-18976)。
(1)好気培養
製造例1において作製したコリネバクテリウム グルタミカムANI-7株(野生型、比較例1)を、カナマイシン50μg/mlを含むA寒天培地[(NH2)2CO 2g, (NH4)2SO4 7g, KH2PO4 0.5g, K2HPO4 0.5g, MgSO4・7H2O 0.5g, 0.06% (w/v) Fe2SO4・7H2O + 0.042% (w/v) MnSO4・2H2O 1 ml, 0.02% (w/v) biotin solution 1 ml, 0.01%(w/v) thiamin solution 2 ml, yeast extract 2 g, vitamin assay casamino acid 7 g, glucose 40 g, 寒天 15 gを蒸留水1Lに懸濁、カナマイシンを終濃度が50μg/mlとなるように添加]に塗布し、33℃、15時間暗所に静置した。
上記条件で生育したコリネバクテリウム グルタミカムANI-7株を、A液体培地10mlに初期菌体濃度OD610=0.1となるように植菌し、33℃にて好気的に振とう培養を行った。
このようにして培養増殖された菌体は、遠心分離 (4℃、15,000×g、10分) により回収した。得られた菌体を、5mlの新たなBT液体培地[(NH2)2CO 2g, (NH4)2SO4 7g, KH2PO4 0.5g, K2HPO4 0.5g, MgSO4・7H2O 0.5g, 0.06% (w/v) Fe2SO4・7H2O + 0.042% (w/v) MnSO4・2H2O 1 ml, 0.02% (w/v) biotin solution 1 ml, 0.01%(w/v) thiamin solution 2 mlを蒸留水1Lに溶解]を加えて懸濁後、再度遠心分離して(4℃、15000×g,10分)洗浄し、再度新たなBT液体培地を加えて菌体を懸濁した。反応溶液中の最終濃度が以下の条件になるように、MESバッファー(pH 6.0)、基質(4-アミノ安息香酸 Na塩)、BT培地を添加し、33℃に保った水浴中で攪拌しながら下記の反応液組成と反応条件にて反応を行った。
反応溶液組成:
100mM 4−アミノ安息香酸Na塩
100mM MESバッファー(pH6.0)
遺伝子組み換え型コリネバクテリウム グルタミカム(コリネ型細菌)最終OD610値=25
BT培地
ここで、OD610値は菌体密度を示しており、値が大きいほど菌体密度が高いことを示す。
温度:33℃、
反応容器:ファルコンチューブ(15 mL)、
還元条件下(酸化還元電位;-450 mV)
攪拌速度:125 rpm
嫌気反応開始から、24時間及び48時間後に、反応溶液を1mL採取した。反応溶液は、遠心分離によりコリネバクテリウム グルタミカムを除去した後、上清を0.22μmフィルターに通したものを試料としてHPLCによって生成物の分析を行った。結果を、下記表1に示す。
実施例1〜6のサンプルについて、比較例4と同様の条件で、アニリンを製造した。結果を、下記表1に示す。
(1)好気培養
野生型(比較例1)を用いて、好気培養は比較例4と同様に行った。
(2)アニリン製造実験
好気培養で培養増殖された菌体を、遠心分離 (4℃、15,000×g、10分) により回収した。得られた菌体を、5mlの新たなBT液体培地を加えて懸濁後、再度遠心分離して(4℃、15,000×g、10分)、洗浄した。再度、新たなBT液体培地を加えて懸濁後、再度遠心分離して(4℃、15000xg,10分)洗浄し、再度新たなBT液体培地を加えて菌体を懸濁した。
反応溶液中の最終濃度が以下の条件になるように、MESバッファー(pH 6.0)、基質(4-アミノ安息香酸 Na塩)、BT培地を添加し、33℃に保った水浴中で攪拌しながら下記の反応液組成と反応条件にて反応を行った。
反応溶液組成:
100mM 4−アミノ安息香酸Na塩
100mM MESバッファー(pH6.0)
遺伝子組み換え型コリネバクテリウム グルタミカム(コリネ型細菌)最終OD610値=150
BT培地
ここで、OD610値は菌体密度を示しており、値が大きいほど菌体密度が高いことを示す。
温度:33℃、
反応容器:ファルコンチューブ(15 mL)、
還元条件下(酸化還元電位;-450 mV)
攪拌速度:125 rpm
嫌気反応開始から48時間後に、反応溶液を0.2mL採取した。反応溶液は、遠心分離によりコリネバクテリウム グルタミカムを除去した後、上清を0.22μmフィルターに通したものを試料としてHPLCによって生成物の分析を行った。結果を、下記表2に示す。
実施例4〜6のサンプルについて、比較例5と同様の条件で、アニリンを製造した。結果を、下記表2に示す。
エシェリヒア コリとコリネバクテリウム グルタミカムについて、以下の方法で、アニリン存在下における増殖への影響を評価した。
(1)エシェリヒア コリ
エシェリヒア コリについて、好気培養におけるアニリンの生育阻害実験を行った。エシェリヒア コリHST02株をLB寒天培地[1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、及び1.5%寒天] に塗布し、37℃、15時間暗所に静置した。
上記プレートで生育したエシェリヒア コリHST02株をLB液体培地[1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、及び0.5%塩化ナトリウム]10 mlの入った試験管に一白金耳植菌し、37℃にて13時間、好気的に振とう培養を行った。
コリネバクテリウム グルタミカム R株をA寒天培地[(NH2)2CO 2 g, (NH4)2SO4 7 g, KH2PO4 0.5 g, K2HPO4 0.5 g, MgSO4・7H2O 0.5 g, 0.06% (w/v) Fe2SO4・7H2O + 0.042% (w/v) MnSO4・2H2O 1 ml, 0.02% (w/v) biotin solution 1 ml, 0.01%(w/v) thiamin solution 2 ml, yeast extract 2 g, vitamin assay casamino acid 7 g, glucose 40 g, 寒天 15 gを蒸留水1Lに懸濁]に塗布し、33℃、15時間暗所に静置した。
上記のプレート上で生育したコリネバクテリウム グルタミカム R株をA液体培地[(NH2)2CO 2 g, (NH4)2SO4 7 g, KH2PO4 0.5 g, K2HPO4 0.5 g, MgSO4・7H2O 0.5 g, 0.06% (w/v) Fe2SO4・7H2O + 0.042% (w/v) MnSO4・2H2O 1 ml, 0.02% (w/v) biotin solution 1 ml, 0.01%(w/v) thiamin solution 2 ml, yeast extract 2 g, vitamin assay casamino acid 7 g, glucose 40 gを蒸留水1Lに溶解]10 mLの入った試験管に一白金耳植菌し、33℃にて15時間、好気的に振とう培養を行った。
上記条件で生育したコリネバクテリウム グルタミカム R株を、A液体培地10mlに初期菌体濃度OD610=0.1となるように植菌し、同時にアニリンが終濃度0,20,40,60,80mMとなるように添加し、33℃にて好気的に振とう培養を行った。菌体の生育は、OD610の吸光度を測定することにより行った。
Claims (9)
- アミノベンゾエート デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子が宿主のコリネバクテリウム属菌に導入された、アニリン生産能を有する形質転換体であって、前記アミノベンゾエート デカルボキシラーゼ活性を有する酵素が、
(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列から構成され、該アミノ酸配列において、N末端から309番目のプロリン(P)が、メチオニン(M)、バリン(V)、グルタミン(Q)、スレオニン(T)、セリン(S)及びアルギニン(R)からなる群から選ばれる1種のアミノ酸へ置換される変異を有する酵素であるか、又は
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列から構成され、該アミノ酸配列において、N末端から309番目のプロリン(P)が、メチオニン(M)、バリン(V)、グルタミン(Q)、スレオニン(T)、セリン(S)及びアルギニン(R)からなる群から選ばれる1種のアミノ酸へ置換される変異と1〜数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加される変異をさらに有する酵素であり、該酵素をコードする塩基配列が前記(i)の酵素をコードする塩基配列と98%以上の同一性を有する酵素である、ことを特徴とする形質転換体。 - 前記変異が、N末端から309番目のプロリン(P)の、メチオニン(M)、バリン(V)及びグルタミン(Q)からなる群から選ばれる1種のアミノ酸への置換であることを特徴とする請求項1に記載の形質転換体。
- アミノベンゾエート デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子が、エンテロバクター クロアカエ(Enterobacter cloacae)由来の遺伝子である請求項1又は2に記載の形質転換体。
- 宿主のコリネバクテリウム属菌が、コリネバクテリウム グルタミカムである請求項1〜3のいずれか1項に記載の形質転換体。
- 宿主のコリネバクテリウム グルタミカムが、コリネバクテリウム グルタミカムR(FERM P-18976(国際受託番号:FERM BP-18976))、ATCC13032、又はATCC13869である請求項4に記載の形質転換体。
- コリネバクテリウム グルタミカム ANI-13(受託番号:NITE P-01583(国際受託番号:NITE BP-01583))形質転換体、コリネバクテリウム グルタミカム ANI-14(受託番号:NITE P-01584(国際受託番号:NITE BP-01584))形質転換体又はコリネバクテリウム グルタミカム ANI-15(受託番号:NITE P-01585(国際受託番号:NITE BP-01585))形質転換体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の形質転換体を、還元条件下、アミノ安息香酸、そのエステル、及び/又はそれらの塩を含有する反応液中で反応させる工程と、反応培地中のアニリンを回収する工程とを含むアニリンの製造方法。
- 反応工程において、形質転換体が増殖しない請求項7に記載のアニリンの製造方法。
- 還元条件下の反応液の酸化還元電位が−200〜−500ミリボルトである請求項7又は8に記載のアニリンの製造方法。
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