以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、以下に詳述するように、所定区域に設けられる第1電力管理装置(CEMS10)は、所定区域に存在する各需要家側の装置20,30,40,50,60と通信し、所定区域での電力の需給バランスを予測する。第1電力管理装置は、需給バランスの予測結果から余剰電力を算出し、余剰電力の消費を各需要家に促す。これにより、所定区域で発電された電力を、その区域内で優先的に消費させることができ、いわゆる地産地消が実現する。
さらに、本実施形態では、後述のように、各需要家及び設備の位置情報と地図情報とに基づいて、所定区域の配電網の構成を予測できる。従って、各需要家間の接続状態を考慮して、ある需要家で生産された電力を他の需要家に供給等することができる。これにより、所定区域内の電力の需給をより細かく管理できる。
図1は、各区域毎の電力管理システムと電力系統との関係を模式的に示す全体構成図である。電力系統システム1は、発電所2,3で生成された電力を各需要家に供給するためのシステムであり、発電機能、変電機能、送電機能及び配電機能を含む。本実施例では、電力系統システム1は、交流電力を各需要家に供給する場合を説明する。しかし、交流電力を供給するシステムに代えて、直流電力を各需要家に供給するシステムでもよい。
集中電源2は、例えば、火力発電所、水力発電所、原子力発電所のような大規模発電所である。分散電源3は、例えば、比較的大規模な風力発電所または太陽光発電所あるいは太陽熱発電所等である。分散電源3は、系統側に属するため、系統側分散電源と呼ぶことができる。分散電源3は、比較的大規模な蓄電池3Aを備える。風力発電機等で発電された電力を蓄電池3Aに蓄えることにより、電力を有効に利用できる。
集中電源2及び分散電源3で生成された電力は、送電所4に送られて、所定の高電圧に昇圧される。送電所4は、蓄電池4Aを備えることもできる。その蓄電池4Aに、集中電源2または分散電源3からの電力の一部を蓄えることができる。
送電所4は、送電網6を介して、各配電用変電所5(1),5(2)に接続されており、高電圧の交流電力を各配電用変電所5(1),5(2)に供給する。送電網6は、一つまたは複数の変電所を備えることができるが、図1では省略している。
配電用変電所5(1),5(2)は、送電所4からの電力の電圧値を低下させて、各需要家に所定電圧の電力を供給する。特に区別しない場合は、配電用変電所5と呼ぶ。各配電用変電所5は、複数の電力供給線7を介して、各需要家に電力を供給する。
図1の例では、一方の配電用変電所5(1)は、複数の電力供給線7(1a),7(1n)を備えている。他方の配電用変電所5(2)は、他の複数の電力供給線7(2a),7(2n)を備えている。特に区別しない場合は、電力供給線7と呼ぶ。
各電力供給線7には、CEMS10が一つずつ設けられる。具体的には、電力供給線7(1a)にはCEMS10(1a)が、電力供給線7(1n)にはCEMS10(1n)が、電力供給線7(2a)にはCEMS10(2a)が、電力供給線7(2n)にはCEMS(2n)が、設けられている。特に区別しない場合、CEMS10と呼ぶ。CEMS10は「第1電力管理装置」に該当する。
図1に示すHEMS(Home Energy Management System)20、BEMS(Building and Energy Management System)30、FEMS(Factory Energy Management
System)40、EV−EMS(Electric Vehicle-Energy Management System)50は、各需要家に設けられる装置であり、「第2電力管理装置」に該当する。それら各装置20,30,40,50は、CEMS10により管理される。なお、各需要家には、図3で後述するように、符号200,300A,300B,400,500が与えられる。
各電力供給線7は、所定区域毎に設けられる。例えば、所定の広さの地域をカバーするようにして電力供給線7が設けられる。一つの電力供給線7が担当する地域の広さを第1サイズとした場合、複数の電力供給線7を備える配電用変電所5が担当する地域の広さは、第1サイズよりも大きい第2サイズとなる。
電力供給線7毎にCEMS10が設けられるため、第1サイズの広さを有する第1地域は、例えば、CEMS担当地域と呼ぶことができる。配電用変電所5が担当する第2サイズの広さを有する第2地域は、例えば配電用変電所担当地域と呼ぶこともできる。
本実施例では、後述のように、CEMS10により、第1地域で生じた電力をできるだけ第1地域内で消費させる。さらに、本実施例では、同一の配電用変電所5に接続されている電力供給線7同士で電力を融通することもできる。これにより、第2地域内で発生した電力を第2地域内で消費させることができる。つまり、一方の第1地域で余った電力を、共通の配電用変電所5の管理下にある他方の第1地域に供給することもできる。このように、本実施例では、管理地域の広さに応じた複数の段階で、再生可能エネルギを効率的に消費させる。
図2は、CEMS10の主要な機能構成を模式的に示す。物理的構成は図3及び図4で後述する。本発明は、図2に示された構成に限定されない。図2は、実施例の理解のために用意されたもので、本発明の範囲を限定するものではない。なお、図2以外の他の図面も、本発明の範囲を限定しないことは明らかである。
CEMS10は、所定地域(上述の第1地域)毎に設けられ、所定地域に属する各需要家での電力状態を管理する。電力状態には、発電の状態、及び/または、電力消費の状態が含まれる。
CEMS10の詳細な機能構成は図10で後述する。図2のCEMS10は、需給調整機能110と、EMS情報制御ハブ機能120(図10参照)と、を備える。EMS情報制御ハブ機能120は、例えば、共通アダプタI/F121と、共通API(Application Programming Interface)122と、共通データ処理機能123と、共通データ管理機能124と、データベース群125と、セキュリティ機能126とを備える。需給調整機能110は、図10等では需要者側CEMSアプリケーション110と呼ばれる。EMS情報制御ハブ機能120は、図10等ではEMS情報制御ハブ120と呼ばれる。
需給調整機能110は、CEMS10の担当する第1地域で生じる余剰電力量を予測し、その余剰電力を少なくさせるための情報を作成する。需給調整機能110は、例えば、第1地域における電力需要及び電力供給を予測する機能と、第1地域における電力需要及び電力供給の実績値を管理する機能と、第1地域における二酸化炭素ガスの排出量を算出する機能と、余剰電力の消費に関するインセンティブを算出する機能と、算出されたインセンティブを各需要家に提示する機能と、を備える。
EMS情報制御ハブ機能120は、各需要家側の装置20,30,40,50,60から収集されるデータを処理し、保存し、必要に応じて外部に提供する。地域の発電または/及び地域の蓄電を行うステーション60は、図3で後述する。
共通アダプタI/F121は、各需要家側の装置20,30,40,50,60が有する共通アダプタCAと双方向通信するためのインターフェースである。共通アダプタCAの役割については、図12で後述する。
共通API122は、サービス提供者90Aまたはアプリケーション開発者90Bのような外部業者と双方向通信するためのインターフェースである。EMS情報制御ハブ120は、地域のEMSに関するデータを外部業者90A,90Bに提供する。サービス提供者90Aとアプリケーション開発者90Bを、外部業者90と呼ぶ場合がある。
外部業者90としては、例えば、各需要家で使用されている各種製品の製造者または販売者、天候情報を提供する天気予報業者、電力に関する助言を行うコンサルタント会社、などを挙げることができる。
共通データ処理機能123は、各需要家側の装置20,30,40,50,60等から取得したデータを、予め定義された共通データとして処理する。共通データ管理機能124は、共通データをデータベース群125に記憶させる。データベース群125は、第1地域のEMSに関する各種情報を記憶する。
セキュリティ機能126は、CEMSと各需要家側の装置20,30,40,50,60等の通信の信頼性及び安全性を確保する。セキュリティ機能126は、通信相手を認証したり、通信内容を暗号化したりする。
図3は、電力管理システムの物理的構成を示す全体図である。先に配電網について説明する。送電網6には、配電用変電所5と高圧用変電所5Hとが接続されている。配電用変電所5は、例えば、数万キロボルトの交流電力を数千キロボルトの交流電力に変換して、各電力供給線7(1),7(2)に供給する。高圧用変電所5Hは、配電用変電所5の出力電圧よりも高い電圧の交流電力を生成し、高圧用の電力供給線7Hに供給する。以下、特に区別しない場合、電力供給線7と呼ぶ。
各電力供給線7には、例えば、区分開閉器71と、自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)72Aと、静止型無効電力補償装置(SVC:Static Var Compensator)72Bと、電圧調整器72Cとが設けられている。特に区別しない場合、電圧調整器72と呼ぶ。図3の例では、高圧用の電力供給線7Hには電圧調整器72Cが設けられており、電力供給線7(1)にはSVR72A及びSVC72Bが設けられている。さらに、各電力供給線7間には、連系開閉器73が設けられている。
区分開閉器71は、電力供給線7を開閉するスイッチ回路である。SVR72A及びSVC72Bは、電圧を自動的に調整する回路である。連系開閉器73は、各電力供給線7同士を接続したり、各電力供給線7間を遮断させたりするためのスイッチ回路である。連系開閉器73を制御することにより、一方の電力供給線7に断線等が生じた場合でも、他方の電力供給線7から各需要家に電力を供給できる。
電力供給線7に設けられる各回路71,72A,72B,73は、通信親局(RTU:Remote Terminal Unit)710,720に接続されている。図10で述べるように、通信親局710,720は、通信子局(FTU:Feeder Terminal Units)750を介して、電力供給線7上の各回路71,72A,72B,73に接続される。
一方の通信親局710は、通信線711を介して、高圧の電力供給線7Hに設けられている回路72Cに接続される。他方の通信親局720は、通信線721を介して、電力供給線7(1)に設けられている回路71,72A,72Bと、電力供給線7(1)と電力供給線7(2)とを接続する連系開閉器73とに接続される。さらに、他方の通信親局720は、他の通信線722を介して、電力供給線7(2)に設けられている回路71と、電力供給線7(2)と電力供給線7Hとを接続する連系開閉器73とに接続される。
各通信親局710,720は、CEMS10に接続される。これにより、CEMS10は、各回路71,72A,72B,73の状態を遠隔監視することができる。
電力供給線7は、複数の柱上変圧器74に接続されている。各需要家200,300A,300B,400,500の受電設備は、最寄りの柱上変圧器74を介して、電力供給線7から電力が供給される。なお、全ての需要家が柱上変圧器74を介して電力を受け取るとは限らない。例えば、地中に設けられた電力ケーブルが使用される場合もあるし、電力供給線7から直接電力を受け取る場合もあり得る。
図3には、複数種類の需要家、つまり、戸建て住宅200と、ビルディング300Aと、集合住宅300Bと、工場400と、充電ステーション500とが示されている。各需要家の構成はそれぞれ後述するが、簡単に説明すると、戸建て住宅200は、HEMS及びスマートメータ(図中、SM)により、発電量及び電力消費量が管理されている。ビルディング300A及び集合住宅300Bは、BEMS及びスマートメータにより、建物全体の発電量及び電力消費量と、建物に含まれる各区分の発電量及び電力消費量とが管理されている。工場400は、FEMS及びスマートメータにより、発電量及び電力消費量が管理される。充電ステーション500は、EV−EMS及びスマートメータにより、発電量及び電力消費量が管理される。
スマートメータは、通信線810を介して、AMI(Advanced Metering Infrastructure)の有するMDMS(Meter Data Management System)80に接続されている。CEMS10は、MDMS80に接続されており、MDMS80を介して各需要家のスマートメータから発電量及び電力消費量に関するデータ(実測値)を取得する。
CEMS10は、他の通信線820を介して、HEMS、BEMS、FEMS、EV−EMSに接続されている。CEMS10は、他の通信線820を用いて、HEMS、BEMS、FEMS、EV−EMSから後述の需給情報を受信したり、後述の計画情報をHEMS、BEMS、FEMS、EV−EMSに送信したりする。
配電用変電所5が担当する地域には、自然エネルギーを利用する分散電源(需要家側分散電源)60を少なくとも一つ設けることができる。分散電源60は、例えば、風力発電所61と、蓄電所62と、太陽光発電所63を備えることができる。さらに、例えば、太陽熱発電所、ヒートポンプ等の装置を備えることもできる。蓄電所62は、風力発電所61及び太陽光発電所63等で発電された、再生可能電力を蓄積する。蓄電所62は、電気エネルギを、例えば、熱エネルギ等の他のエネルギに変換して蓄える構成でもよい。
CEMS10は、地域に設けられた分散電源60とも接続されており、分散電源60の発電量及び蓄電量等を管理することができる。
図4は、CEMS10の物理的構成を示す。CEMS10は、複数のサーバ1101,1102,1201,1202,1203,1301,1302,1303,1401,1402と、複数のデータベース1103,1204,1205,1304,1305,1403等を備える。なお、図4中の「FW」はFireWallの略であり、「DMZ」はDeMilitarized Zoneの略である。CEMS10は、外部のネットワークからの侵入を阻止しており、さらに、CEMS10内にはセキュリティに配慮されたエリアが設けられている。安全なエリア内に、例えば、需給調整機能110とEMS情報制御ハブ機能120及び電力供給者側CEMSアプリケーション140(図10参照)等を実現するためのサーバ及びデータベースの少なくとも一部が設けられる。
配電自動化APサーバ1301と、配電自動化DBサーバ1302と、連携用DBサーバ1303と、マスタDB1304と、スレーブDB1305とは、配電自動化システム130(図10参照)を実現するための構成である。「AP」はアプリケーションの略であり、「DB」はデータベースの略である。
配電自動化APサーバ1301は、配電を自動的に制御するためのアプリケーションプログラムを提供する。配電自動化DBサーバ1302は、配電を自動制御するためのデータベースを管理する。連携用DBサーバ1303は、他のシステム(例えば、EMS情報制御ハブ)との間でデータベースを連携させる。
マスタDB1304は、例えば、現在の系統情報(SM及びTM)と、設備情報と、負荷を記録した情報と、図形情報とを備える。SVは、系統設備の監視データである。TMは、系統設備の負荷を遠隔測定したデータである。設備情報とは、配電網に設けられている各種設備(系統側の設備)の情報である。図形情報とは、電力系統の配置等を示す情報である。
スレーブDB1305には、マスタDB1304で管理されているデータがコピーされている。紙面の都合上、スレーブDB1305に記憶される情報名は、図4では省略されている。
D−EMS APサーバ1401は、D−EMS DBサーバ1402と、スレーブDB1403と共に、電力供給者側CEMSアプリケーション140を実現するための構成である。ここでD−EMSとは、電力供給者側CEMSを指す。
D−EMS APサーバ1401は、電力供給者側におけるCEMSアプリケーションを提供する。D−EMS DBサーバ1402は、スレーブDB1403を管理する。スレーブDB1403は、連携用DBサーバ1302により管理されるスレーブDB1305と、ハブDBサーバ1203で管理されるマスタDB1204とに接続される。従って、スレーブDB1403には、例えば、構成情報と、需給情報と、予測情報と、計画情報と、系統情報(SM、TV)とが記憶される。
構成情報とは、系統側の構成である配電網の構成と、各需要家内部の電気的構成とを含む情報である。本実施例では、後述のように、需要家の位置と設備の位置及び地図に基づいて、配電網の構成を予測できる。但し、電力供給者から配電網情報を取得できるのであれば、その配電網情報を使用してもよい。ここで、電力供給者から配電網情報を取得した場合の方がより好適である。需給のバランス調整(供給及び消費)は、物理的位置が近いかどうかよりも配電網上で近いもの同士で調整する方が、送電ロスの観点または/及び逆潮流の観点からみて望ましいからである。
需給情報とは、地域に存在する各需要家毎の電力消費量の実績値及び発電量の実績値と、その地域に関する電力系統システム1側の設備の発電量等を管理する情報である。
予測情報とは、地域全体の発電量及び電力消費量の予測値を示す。地域全体の発電量の予測値と地域全体の電力消費量の予測値との差は、余剰電力となる(予測発電量−予測電力消費量=余剰電力)。
計画情報とは、地域の余剰電力を低減させるための計画を管理する情報である。構成情報と、需給情報と、予測情報と、計画情報とは、ハブDBサーバ1203で管理されるマスタDB1204からコピーされる。系統情報は、連携用DBサーバ1303で管理されるスレーブDB1305からコピーされる。
需要家側CEMS DBサーバ1101と、需要家側CEMS APサーバ1102と、スレーブDB1103とは、需要家側CEMSアプリケーション110(需給調整機能)を実現するための構成である。
需要家側CEMS DBサーバ1101は、スレーブDB1103を管理する。需要家側CEMS APサーバ1102は、需要家側のCEMSアプリケーションを提供する。スレーブDB1103は、ハブDBサーバ1203で管理されるマスタDB1204に接続されている。スレーブDB1103には、マスタDB1204から、構成情報と、需給情報と、計画情報と、天気情報と、地図情報等がコピーされる。
ハブフロントサーバ1201と、サービス向けフロントサーバ1203と、ハブDBサーバ1203と、マスタDB1204と、スレーブDB1205とは、EMS情報制御ハブ120を実現するための構成である。
ハブフロントサーバ1201は、各需要家と情報を交換するもので、共通アダプタI/F121を備えている。サービス向けフロントサーバ1202は、サービス提供者90Aまたはアプリケーション開発者90Bと情報を交換するもので、共通API122を備えている。ハブDBサーバ1203は、マスタDB1204及びスレーブDB1205を管理する。
マスタDB1204は、スレーブDB1403とスレーブDB1103とに接続されている。マスタDB1204は、例えば、構成情報と、需要家と設備及び地域のの需給情報と、予測情報と、計画情報と、天気情報と、地図情報と、需要家側の位置等を示す図形情報と、機器の型番を管理する情報(「機器#」と表示)と、サービス情報とを記憶することができる。
機器型番とは、各需要家が有する電気機器(例えば、空調機、温水器、給湯器、冷蔵庫、テレビジョン)等を識別するための情報である。サービス情報は、各需要家に提供される各種サービスを管理するための情報である。
スレーブDB1205は、連携用DBサーバ1303で管理されるスレーブDB1305に接続されている。スレーブDB1205には、スレーブDB1305から、設備情報と、設備の需給情報と、系統の図形情報とがコピーされる。
図5は、一般の戸建て住宅200の電気的構成を模式的に示す。住宅200には、HEMS20と、スマートメータ21と、メータ付き分電盤22と、PCS(Power Conditioning System)23と、PV(PhotoVoltaic)24と、バッテリ25と、複数の電気機器26A−26Hと、PLC(Power Line Communications)27とを備える。
HEMS20は、住宅200内の電力状態(発電と電力消費の両方の状態)を管理しており、CEMS10と接続されている。HEMS20は、例えば、マイクロプロセッサと、メモリと、通信インターフェースと、モニタディスプレイを含むマイクロコンピュータシステムとして構成することができる。以下に述べるBEMS30,FEMS40,EV−EMS50も、マイクロコンピュータシステムとして構成される。
モニタディスプレイは、HEMS20に一体化させてもよいし、HEMS20とは別に形成してもよい。さらに、テレビジョン放送等を表示するディスプレイ装置をHEMS20のモニタディスプレイとして利用する構成でもよい。
スマートメータ21は、電力系統システム1から購入した電力を計測するための買電電力計と、電力系統システム1に売却した電力を計測するための売電電力計と、図3のMDMS80と通信するための通信回路と、を備える。スマートメータ21とHEMS20とが通信可能な構成でもよい。
メータ付き分電盤22は、住宅200の各部屋に電力を分配するための装置であり、漏電ブレーカ等を備える。分電盤22は、HEMS20に接続されている。
PCS23は、PV(太陽光発電装置)24とバッテリ25を制御する。PCS23は、分電盤22に接続されている。さらに、PCS23は、HEMS20にも接続されている。PV24で発電された電力は、バッテリ25に蓄積される。PCS23は、電圧変動が生じないように、バッテリ25で蓄積された電力を住宅200内の各機器26A−26Hに供給したり、あるいは、スマートメータ21を介して電力系統システム1に売電したりする。
さらに、住宅200で発電された余分な電力は、同一のCEMS10で管理されている他の需要家に供給できる。または、複数のCEMS10が連携することにより、ある住宅で余った電力を、同一の配電用変電所5に属する他のCEMS10で管理されている他の住宅200またはビルディング300A等に供給することもできる。
住宅200内の電気機器としては、例えば、燃料電池26Aと、ヒートポンプ給湯機26Bと、空調機26Cと、冷蔵庫26Dと、乾燥機26Eと、ブラインド26Fと、照明S6Gと、電気自動車(EV/PHV)26Hとを挙げることができる。
ブラインド26Fは、電気モータ等のアクチュエータを備えており、手動または自動的に開閉する。電気自動車には、例えば、バッテリと電気モータだけで走行するEV(Electric Vehicle)と、住宅200の電気コンセントから充電可能なPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)とが含まれる。なお、電気自動車に限らず、電気自動二輪車等でもよい。
PLC27は、住宅200内の電力配線を通信回線として利用し、HEMS20と各機器26A−26Hとを通信させるための装置である。
図6は、ビルディング300Aの電気的構成を模式的に示す。ビルディング300Aは、例えば、BEMS30と、スマートメータ31と、PCS32Aと、PV32と、PCS33Aと、バッテリ33と、各テナント毎の構成34と、電力計測ユニット36Bと、電気機器37Bと、コントローラ38Bと、を備える。
ビルディング300Aは、共通構成31,32,32A,33,33A,36B,37B,38Bと、ビルディングに入居している各テナント毎の個別構成34とを備える。BEMS30は、ビルディング300Aの共通構成及びテナント毎の個別構成のそれぞれについて、電力状態を管理する。
BEMS30は、ビルディング内の電力状態を管理する。スマートメータ31は、電力系統システム1からビルディング300Aに供給された電力の量(買電量)と、ビルディング300Aから電力系統システム1に供給された電力の量(売電量)とを計測する。スマートメータ31は、MDMS80に、電力量の情報を送信する。
PV制御用のPCS32Aは、BEMS30からの指示に従って、ビルディング300Aの屋上等に設けられたPV32を管理する。バッテリ制御用のPCS33Aは、BEMS30からの指示に従って、バッテリ33を管理する。
PV32で発電された電力は、バッテリ33を介して、共通設備である機器37Bまたは/及び各テナントの機器37Aに供給される。ビルディング300A内で消費できなかった余剰の電力は、電力系統システム1に売却できる。または、ビルディング300Aで余った電力は、同一のCEMS10で管理されている他の需要家に、または、共通の配電用変電所5に属する他のCEMS10で管理されている他の需要家に、供給することもできる。
各テナント毎の構成34には、例えば、スマートメータ35Aと、電力計測ユニット36Aと、電気機器37Aと、コントローラ38Aとが含まれる。スマートメータ35Aは、テナントの消費電力量を計測して、MDMS80に送信する。電力計測ユニット36Aは、各電気機器37A毎に設けられ、各電気機器37Aの消費電力(発電量を計測可能な構成でもよい)を計測する。各電力計測ユニット36Aは、各電気機器37Aの消費電力をBEMS20に送信する。
テナントの備える電気機器37Aとしては、例えば、空調機、照明、パーソナルコンピュータ及びコピーマシン等のオフィスオートメーション機器を挙げることができる。コントローラ38Aは、テナント内の各電気機器37Aを制御する。コントローラ38Aは、BEMS30に接続されている。
ビルディングの共通設備である電気機器37Bとしては、例えば、ヒートポンプ給湯機、冷凍機を挙げることができる。電力計測ユニット36Bは、電気機器37B毎に設けられており、各電気機器37Bの消費電力を計測してBEMS30に送信する。コントローラ38Bは、ビルディング300Aの共通設備である電気機器37Bを制御する。コントローラ38Bは、BEMS30に接続されている。
図7は、集合住宅300Bの電気的構成を模式的に示す。集合住宅300Bは、図6で述べたビルディング300Aと共通する構成30,31,32,32A,33,33A,36B,37B,38Bを備える。さらに、集合住宅300Bは、図5で述べた住宅200の構成も備える。集合住宅300Bは、個人住宅の集合体だからである。集合住宅300B内の各住宅200は、各HEMS20により管理される。集合住宅300Bの共通構成36B,37B,38BはBEMS30により管理される。
図8は、工場400の電気的構成を模式的に示す。工場400は、例えば、FEMS40と、スマートメータ41と、PV42とPV制御用PCS42Aと、バッテリ43と、バッテリ制御用PCS43Aと、コジェネレータ44と、生産設備に関する構成45A,46A,47A,48と、工場内の環境に関する構成45B,46B,47Bとを、備えている。
FEMS40は、工場400の電力状態を管理する。スマートメータ41は、電力系統システム1から工場400に供給された電力量と、工場400から電力系統システム1に供給した電力量とを計測し、MDMS80に送信する。
PCS42Aは、FEMS40からの指示に従って、PV42の動作を制御する。PCS43Aは、FEMS40からの指示に従って、バッテリ43の動作を制御する。PV42で発電された電力は、バッテリ43を経由して、工場400内の各機器46A,46Bで消費させることができる。工場400で余った電力は、共通のCEMS10で管理されている他の需要家に、または、共通の配電用変電所5に属する他の需要家に、供給することができる。
生産設備の構成を説明する。工場400は、例えば、プレスマシン、シャーリングマシン、溶接機、射出成型機、包装機等の各種電気機器46Aを備える。電力計測ユニット45Aは、各電気機器46A毎に設けられている。各電力計測ユニット45Aは、各電気機器46Aの消費電力(発電量を計測可能な構成でもよい。以下同様)を計測して、FEMS40に送信する。
コントローラ47Aは、各電気機器46Aを制御する。コントローラ47Aは、生産管理システム48に接続されている。生産管理システム48は、CEMS10から通知された計画情報等に基づいて、コントローラ47Aに指示を与えることができる。
工場内の環境に関する構成を説明する。工場の環境に関する電気機器46Bとしては、例えば、空調機、ボイラ、冷凍機、空気圧縮機等を挙げることができる。電力計測ユニット45Bは、各電気機器46B毎に設けられる。各電力計測ユニット45Bは、各電気機器46Bの消費電力を計測して、FEMS40に送信する。
図9は、充電ステーション500の電気的構成を模式的に示す。充電ステーション500は、EV(PHVを含む)57に充電するための施設である。充電ステーション500は、例えば、EV−EMS50と、スマートメータ51と、電力計測ユニット52と、充電コンバータ盤53と、PV54Aと、バッテリ54Bと、PCS55と、急速充電端末56Aと、普通充電端末56Bと、キオスク端末58とを備える。
EV−EMS50は、充電ステーション500の電力状態を管理する。スマートメータ51は、電力系統システム1から充電ステーション500に供給された電力量、及び、充電ステーション500から電力系統システム1に供給した電力量を計測し、MDMS80に送信する。
電力計測ユニット52は、各充電端末56A,56B等での電力量を計測し、EV−EMS50に送信する。
PCS55は、EV−EMS50からの指示に従って、PV54Aとバッテリ54Bとを制御する。PV54Aにより発電された電力は、充電ステーション500内で消費することができる。充電ステーション500内の余った電力は、共通のCEMS10で管理されている他の需要家に、または、共通の配電用変電所5に属する他の需要家に、供給することができる。
充電コンバータ盤53は、電力系統システム1またはバッテリ54Bから供給された電力を、所定の高電圧を有する電力に変換して、急速充電端末56Aに供給するための装置である。充電コンバータ盤53は、EV−EMS50に接続されている。
急速充電端末56Aは、普通充電端末56Bよりも高い電圧でEV57のバッテリを充電する装置である。急速充電端末56Aを用いることにより、比較的短時間で、EV57のバッテリ残量を所定量まで回復させることができる。普通充電端末56Bは、例えば、電力系統システム1から供給される通常の電力で、EV57のバッテリを充電する装置である。
キオスク端末58は、急速充電端末56Aを制御するための情報端末である。キオスク端末58は、例えば、利用者認証、充電料金の決済、充電端末56Aの保守、クーポン券の発行等を行う。急速充電端末56Aの使用状況は、キオスク端末58からCEMS10を介して、地域内のユーザまたは地域外のユーザに通知することができる。
図10は、電力管理システムの機能に着目した全体構成図である。CEMS10は、例えば、需要者側CEMSアプリケーション110と、EMS情報制御ハブ120と、配電自動化システム130と、電力供給者側CEMSアプリケーション140と、EAMアプリケーション150とを備える。
配電自動化システム(DMS:Distribution Management System)130は、電力系統システム1から各需要家への電力供給を管理する。例えば、配電自動化システム130は、各需要家に供給される電力の電圧値が一定範囲に収まるように電圧を制御したり、障害の発生した設備を特定したりする。
配電自動化システム130は、RTU710,720とFTU750とを介して、電力供給線7上の各回路(図10ではSWと表示)71,72,73に接続される。配電自動化システム130は、RTU710,720等を介して、各区分開閉器71,電圧調整器72,連系開閉器73等の状態を遠隔監視する。配電自動化システム130については、図13で後述する。
各需要家側の管理装置20,30,40,50,50C,60は、通信線820を介して、CEMS10に接続されている。さらに、各需要家側のスマートメータは、通信線810を介してMDMS80に接続されている。図10では、HEMS20がMDMS80に接続されているかのように示すが、実際には、スマートメータ21がMDMS80に接続される。他の需要家についても同様に、それぞれのスマートメータが通信線810を介してMDMS80に接続される。MDMS80は、配電自動化システム130に接続されており、各スマートメータからの情報を配電自動化システム130に送信する。
通信線810は、例えば、電柱74Aを介して各需要家のスマートメータに取り付けることができる。これに代えて、地中の通信ケーブルまたは無線通信を用いて、スマートメータとMDMS80を接続してもよい。
EVセンタ50Cは、複数のEV57を管理するための施設である。例えば、地域内のユーザは、EVセンタ50Cで管理されている複数のEV57を共同使用できる。
需要者側CEMSアプリケーション110は、例えば、地域の電力需要及び発電量を予測して、余剰電力を算出し、余剰電力を低減させるための情報を生成する。需要者側CEMSアプリケーション110については、図11で後述する。
EMS情報制御ハブ120は、例えば、CEMS10で管理される情報(EMS関連情報と呼ぶことができる)の流通等を制御する。EMS情報制御ハブ120は、例えば、サービス提供者90Aまたは/及びアプリケーション開発者90Bのような外部業者のサーバと接続することができる。さらに、EMS情報制御ハブ120は、他の地域を担当するCEMS10と接続することもできる。EMS情報制御ハブ120については、図12で後述する。
電力供給者側CEMSアプリケーション140は、例えば、電力系統システム1側の設備を管理する。電力供給者側CEMSアプリケーション140については、図14で後述する。
EAM(Enterprise Asset Management)アプリケーション150は、例えば、電力系統システム1側の各設備の保守等を担当する。EAMアプリケーション150については、図15で後述する。
図11は、需要者側CEMSアプリケーション110の機能を示す。需要者側CEMSアプリケーション110は、例えば、需給予測機能111と、需給バランス予測機能112と、二酸化炭素可視化機能113と、インセンティブ算出機能114と、インセンティブ可視化機能115と、需給実績管理機能116と、各DB117A−117Gと、供給と需要を連携させる機能118とを備えている。
需給予測機能111は、需給実績機能116で管理される電力の需給実績と天気情報117Eとに基づいて、次サイクルにおける電力の需給を予測する。予測サイクルは、例えば、30分程度に設定される。予測結果は、予測情報DB117Cに記憶される。ここで、電力の需給とは、電力需要と電力供給を示す。電力供給とは、地域に存在する各分散電源60,24,32,42,54Aから発電される電力である。
需給バランス予測機能112は、予測された電力需要と予測された電力供給のバランスを時間毎に予測する機能である。予測される電力需要と予測される電力供給とが一致する時間帯では、電力の需給がバランスしている。この場合、地域内の各需要家が必要とする電力は、その地域内の分散電源から供給されるため、電力系統システム1から電力供給を受ける必要はない。
予測される電力需要よりも、予測される電力供給の方が多い時間帯では、余剰電力が生じる。この場合は、余剰電力の消費を促すための計画情報を、余剰電力の生じる時間帯が始まる前に、地域内の各需要家に向けて配信する。
各需要家に余剰電力の消費を促してもなお余った電力は、配電用変電所5を介して他の地域の需要家に供給できる。あるいは、余剰電力の生じる時間帯では、分散電源を電力管理システムから切り離して、空運転させる構成でもよい。空運転とは、分散電源で発電された電力を使用せずに捨てることを意味する。あるいは、余剰電力を他の配電用変電所5に供給し、遠く離れた別の地域に供給する構成としてもよい。つまり、余剰電力を電力系統システム1に逆潮流させる構成でもよい。
二酸化炭素可視化機能113は、地域の電力状態に基づいて、その地域で排出される二酸化炭素の量を算出し、可視化する。地域内の分散電源は、その多くが再生可能な自然エネルギを利用している。従って、地域内の分散電源を多く消費する時間帯では、その地域から排出される二酸化炭素の量は少なくなる。これに対し、集中電源2は、石油または石炭等を消費するため、電力系統システム1からの電力を多く消費する時間帯では、その地域の二酸化炭素の排出量が増大する。二酸化炭素可視化機能113は、地域で排出される二酸化炭素の量を算出し、その値をグラフ化して各需要家に提示する。
インセンティブ算出機能114は、地域で生じた余剰電力を地域内の各需要家に積極的に消費してもらうためのインセンティブを算出する。インセンティブとしては、例えば、ポイントの付与を挙げることができる。指定された時間帯の余剰電力をより多く消費した需要家には、より多くのポイントが与えられる。そのポイントは、例えば、地域で共有するEV57を使用する権利として使ったり、電力系統システム1から購入した電力の代金に充てたりすることができる。
インセンティブ可視化機能115は、算出されたインセンティブに基づいて計画情報を作成する。計画情報とは、余剰電力の発生が予測される時間帯において、余剰電力の消費を促すための情報である。作成された計画情報は、計画情報117Dに記憶される。
需給実績管理機能116は、地域の電力需要及び電力供給の実績値を管理する。その需給実績のデータは、需給情報T117Bに記憶される。
構成情報117Aは、各需要家の電気的構成を示す情報と、配電用変電所5から各需要家の受電設備に至るまでの配電網の構成を示す情報とを記憶する。各需要家の電気的構成は、CEMS10による電力管理サービスに需要家が加入した場合に、その需要家から得ることができる。各需要家の電気的構成を示す情報には、各需要家で使用されている電気機器の種類と、電気機器の消費電力とを含めることができる。
配電網の構成は、その地域に電力を供給する電力供給者が許可するのであれば、その電力供給者から得てもよい。電力供給者の許可が得られない場合でも、本実施例では、各需要家の位置と、電力系統システム1側の設備の位置と、その地域を含む地図とに基づいて、その地域の配電網の構成を推定できる。
機器型番情報T117Gには、各需要家で使用されている電気機器を識別するための情報が記憶される。
供給と需要とを連携させる機能118は、例えば、意図的な停電または意図しない停電が生じた場合の処理、需要のピークをカットする処理等を行う。
図12は、EMS情報制御ハブ120の機能を示す。上述の通り、EMS情報制御ハブ120は、EMS関連情報の流通等を制御する。EMS情報制御ハブ120は、CEMS10内の各システム110,130,140,150と接続されている。さらに、EMS情報制御ハブ120は、CEMS10の外部に存在する各需要家の装置20,30,40,50,60等と、外部業者90のサーバとにも接続されている。
EMS情報制御ハブ120は、共通アダプタI/F121と、共通API122と、共通データ処理機能123と、共通データ管理機能124と、複数のデータベース125A−125Gと、セキュリティ機能126と、ハブ間連携機能127と、システム監視及びシステム運用の機能128を備える。
共通アダプタI/F121は、上述の通り、HEMS20,BEMS30,FEMS40,EV−EMS50の有する共通アダプタCAと通信するための通信インターフェースである。
共通アダプタI/F121は、各管理装置20,30,40,50等の共通アダプタCAとの間でコネクションを確立し、通信状態を把握し、メッセージを受け渡し、トランザクションを管理する。さらに、共通アダプタI/F121は、フォーマット変換、データ項目及びデータ値の変換または翻訳、識別情報(ID)の変換等も行う。
共通アダプタCAは、需要者側の管理装置20,30,40,50等に設けられ、共通アダプタI/F121と通信する。共通アダプタCAは、需要家における電力の需給状態の実績値を管理装置から取得して、その実績値をCEMS10との間で取り決められた標準形式のデータに変換し、CEMS10に送信する。
さらに、共通アダプタCAは、CEMS10から計画情報を受信して、管理装置に送信する。さらに、共通アダプタCAは、通信先が正しいか否かを判断するための認証処理、データを暗号化する暗号化処理、暗号データを復号する復号化処理等も行う。
共通アダプタCAと共通アダプタI/F121とを用いることにより、各需要家の種類、及び、需要家で使用される電気機器の種類に影響されずに、CEMS10と各需要家側との通信を行うことができ、かつ、将来の機能拡張にも容易に対応できる。
共通API122は、外部業者90に、共通のAPIを提供する。これにより、外部業者90は、EMS関連情報の少なくとも一部を利用して、各需要家にサービスを提供することができる。外部業者は、共通API122を利用することにより、より少ない工数で、アプリケーションまたはサービスを開発することができる。
共通データ処理機能123は、共通アダプタI/F121を介して各需要家から収集された各種の情報について、共通のデータ処理を実施する。共通のデータ処理には、例えば、異常値の監視処理がある。共通データ処理機能123は、予め設定された条件に基づいて、共通アダプタI/F121から受信したデータを検査し、異常なデータを発見した場合は警告を出力する。
つまり、共通データ処理機能123は、随時流れ込む多量の時系列データをリアルタイムでモニタリングし、迅速にイベントを検出する。イベント条件は複数設定することができ、かつ、変更可能である。イベント条件は、CEMS10の管理者、外部業者90、需要家が設定することができる。
イベントとしては、例えば、異常に多量の電力を消費している場合、通常値を超えた多量の電力が発電されている場合等がある。共通データ処理機能123でイベントを監視することにより、地域の異常(需要家での電気機器の故障等を含む)を早期に検出することができる。検出されたイベントに基づいて、例えば、火災の発生を予防したり、EVセンタ50Cでの犯罪を検出したりすることができる。従って、地域の電力管理だけでなく、地域の安全性向上にも寄与する。
共通データ管理機能124は、各需要家から時々刻々と集められる多量のデータを集約し、利用可能な形態で保持するためのデータモデルとデータ処理機能を提供する。共通データ管理機能124は、収集された多量のデータを、所定のデータベース125A−125Gに格納して、保存する。ここでは、データベースを「情報」と呼ぶ。
機器型番情報T125Aは、各需要家で使用される電気機器を識別するための情報を管理する。型番に限らず、識別情報(ID)でもよい。各電気機器を識別可能な情報であればよく、呼び名は特に問わない。
構成情報T125Bは、需要家側の電気的構成に関する情報と、地域の配電網の構成に関する情報とを管理する。
需給情報(需要家)125Cは、各需要家から取得される需給情報(電力の需要及び電力の供給を示す情報)を管理する。
予測情報125Dは、地域における電力の需要と電力の供給とを時間帯毎に予測した結果を管理する。電力需要と電力供給の予測には、例えば、実績値、天気、インセンティブの有効度、需要家側の構成変化等を考慮することができる。
天気情報125Eは、地域の過去の天気及び将来の予報とを管理する。天気に関する情報は、気象予報業者等から得ることができる。
図形情報(需要家)125Fは、地域の各需要家の位置を管理する。
サービス情報125Mは、各需要家に提供されるサービスの内容等を管理する。
設備情報125Lは、電力系統システム1側の設備(変圧器、蓄電池、発電機等)に関する情報を管理する。
需給情報(設備)125Kは、電力系統システム1側の設備に関する電力の需給情報を管理する。
計画情報125Jは、余剰電力を消費させるためのインセンティブを含む計画情報D20(図20参照)を管理する。
地図情報125Hは、地域の地図を管理する。二次元の地図でもよいし、三次元の地図でもよい。さらに、交通量等の関連情報を含めてもよい。
図形情報(設備)125Gは、電力系統システム1側の設備の位置を管理する。
時系列データは、日々多量に発生するため、そのままの形式で保存すると、多量のストレージ装置が必要となる。そこで、後述のように、所定期間内のデータは、時系列データとして保存しておき、所定期間が経過した後のデータは圧縮して保存してもよい。
セキュリティ機能126は、CEMS10で取り扱うデータ(情報)の安全を確保する機能である。CEMS10で取り扱われる電力の需給情報等は、需要家のプライバシー、個人情報、財産に関わる重要な情報である。従って、正当な権限の無い第三者に漏れたり、改ざんされたりしないようにしなければならない。
そこで、セキュリティ機能126は、データの暗号化及び復号化、通信相手先の認証、等を行う。
ハブ間連携機能127は、他のCEMS10と連携するための機能である。各CEMS10は、ハブ間連携機能127を介して情報を交換することができる。その情報交換に基づいて、各CEMS10間で余剰電力を融通しあうこともできる。
システム監視及びシステム運用の機能128は、例えば、データベースを追加したり、データベースのバックアップを作成したりするための機能である。
図13は、配電自動化システム130の機能を示す。配電自動化システム130は、例えば、オンライン配電アプリケーション131と、オフライン配電アプリケーション132と、基本SCADA機能133と、通信インターフェース134と、各データベース135A−135Eとを備える。
オンライン配電アプリケーション131は、例えば、事故の復旧操作を行う機能1311と、配電網の電圧を所定電圧に制御する機能1312と、潮流を計算する機能1313とを含む。潮流計算機能1313は、需要家側で発電された電力が系統に流れ込むという、いわゆる逆潮流の解析も含む。
オフライン配電アプリケーション132は、例えば、電力系統システム1側の設備計画、系統の最適な運用計画、分散電源の連系解析、訓練シミュレータ等を含む。
基本SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)機能133は、例えば、電力系統システム1の設備及び電力供給線等の状態を監視する。
通信インターフェース134は、例えば、電力供給線7に設けられる各機器71,72,73とRTU等を介して通信するためのインターフェースと、各需要家のスマートメータ21,31,41,51と通信するためのインターフェースと、EMS情報制御ハブ120と通信するためのインターフェースとを備える。
現在(SV/TM)情報135Aは、SVデータ及びTMデータの最新値を管理するデータベースである。設備情報135Bは、電力系統システム1側の設備に関する情報を管理する。負荷記録情報135Cは、各設備の負荷状態を記録する。図形情報135Dは、各設備の位置を、例えば、GIS(Geographic Information System)データのような形式で管理する。
他システムと連携して運用するための情報135Dには、他のCEMS10と連携して電力を管理するために必要な情報が記憶される。
図14は、電力供給者側CEMSアプリケーション140の機能を示す。電力供給者側CEMSアプリケーション140は、電力会社等の電力供給者により使用されるアプリケーションを提供する。
電力供給者側CEMSアプリケーション140は、例えば、統括管理機能141と、短周期リアルタイムフィードバック制御機能142と、中周期リアルタイムフィードバック制御機能143と、長周期予測機能144と、稼働状況監視機能145と、制御連携機能146と、データ連携機能147と、各データベース148A−148Eと、供給と需要を連携させる機能149とを備える。
統括制御機能141は、電力供給者側CEMSアプリケーション140の全体を制御する機能である。
短周期リアルタイムフィードバック制御機能142は、例えば、PV及び蓄電池等を、短周期で(例えば、秒単位で)監視し、フィードバック制御する。
中周期リアルタイムフィードバック制御機能143は、例えば、蓄熱器のような装置を、中周期で(例えば、時間単位で)監視し、フィードバック制御する。
長周期予測機能144は、地域内の各分散電源の発電量、電力需要、系統間の連系量等を、長周期で(例えば、数時間単位で)予測する。
稼働状況監視機能145は、運用を管理したり、稼働状況を監視したりする。制御連携機能146は、各需要家の電気機器を直接制御する場合に使用される。データ連携機能147は、配電自動化システム130及びEMS情報制御ハブ120との間で、データを連携させる機能である。そのデータ連携により、データベース148A−148Eにデータが記憶され、更新される。
構成情報148Aは、需要家側の構成及び電力系統システム1側の構成(配電網等)を管理する。需給情報148Bは、地域の電力の需給情報(実績値)を管理する。予測情報148Cは、地域の電力の需給の予測値を管理する。計画情報148Dは、計画情報を管理する。TM/SV情報148Eは、TMデータ及びSVデータを管理する。
供給と需要を連携させる機能149は、例えば、系統電圧を安定化させる機能1491と、需要のピークをカットする機能1492と、運転計画を最適化する機能1493とを備える。
図15は、EAMアプリケーション150の機能を示す。EAMアプリケーション150は、例えば、保全機能151と、設計及び工事機能152と、計画機能153と、各データベース154A−154Eとを備える。
保全機能151は、例えば、需要家の電気機器を点検するための計画等を作成する。設計及び工事機能152は、例えば、設計及び工事の計画を作成する。計画機能153は、例えば、計画の進捗状況を管理したり、優先して工事されるべき区分を管理したりする機能である。
設備情報154Aは、設備に関する情報を管理する。保全計画情報154Bは、保全計画に関する情報を管理する。保全実績情報154Cは、保全作業の実績を管理する。工事計画情報154Dは、工事計画に関する情報を管理する。工事実績情報154Eは、工事の実績に関する情報を管理する。
図16は、共通API122の機能を示す。例えば、需給実績情報125Cには、各需要家の電力の需給情報(実績値)が、共通データ項目と各サービス毎の固有項目とを対応付けて記憶される。各サービス毎の固有項目のデータは暗号化されている。
共通API122は、例えば、複数の出力プロトコル1221と、複数の出力形式1222と、複数の出力データ条件1223を疎なる。共通API122は、外部業者90の提供する各サービス毎に、データを出力するための条件1223を保持している。共通API122は、条件に合致するデータを、所定形式のデータに変換し、所定のプロトコルで外部業者90に出力する。
出力プロトコルとしては、例えば、HTTP(HyperText Transfer Protocol)、SOAP(Simple Object Access Protocol)、FTP(File Transfer Protocol)等がある。データの出力形式としては、例えば、XML(Extensible Markup Language)、CSV(Comma-Separated Values)、PHP(Hypertext Preprocessor)シリアライズ、JSON(JavaScript Object Notation)等がある。
共通API122は、そのサービス(アプリケーション)を提供する業者にのみ、そのサービスに関するデータを提供する。外部業者90は、自分の提供するサービスに関するデータのみを、共通API122を介してCEMS10から取得でき、他人の提供するサービスに関するデータは取得できない。
図17は、地域の配電網の構成を予測する処理を示す。CEMS10は、例えば、地図情報125Hと、各需要家の位置情報125Fと、各設備の位置情報125Gとを取得し、それらの情報を照らし合わせる(S10)。CEMS10は、例えば、地図上に、各需要家及び設備の位置をそれぞれマッピングし、各要素(需要家と設備)間の距離等を算出する。
CEMS10は、例えば、需要家は最も近い柱上変圧器から受電しており、かつ、物理的に近い需要家同士は共通の設備から受電していると推定する。これにより、CEMS10は、地域の配電網の構成を推定できる(S11)。
CEMS10は、推定された配電網の構成を、配電網情報125B1として構成情報125Bに格納させる。構成情報125Bには、各需要家での電気的接続構成を示す機器接続情報125B2も記憶されている。機器接続情報125B2は、CEMS10の管理者と各需要家との契約等に基づいて、各需要家から取得される。
図35に配電網情報の具体例を示す。ここに示すとおり、配電網情報は、CEMS10が把握している各機器を複数のサブコミュニュティに分けて管理している。このサブコミュニュティは、1又は複数の設備の単位で各機器を集約したものである。例えば、一つの柱上変圧器以下に接続される複数の機器は一つのサブコミュニティを構成する。
なお、電力系統システム1側から正確な配電網情報を取得できるのであれば、その配電網情報を使用してもよい。
図18は、地域の電力需要と電力供給とを予測して、余剰電力を消費させるための情報を作成する様子を示す。図18の処理は、需給調整機能(需要者側CEMSアプリケーション)110により実行される。
需給予測機能111は、例えば、電力需給の実績値と天気予報とに基づいて、電力需給を例えば30分単位で予測する。需給情報を各需要家から取得する周期を仮に3分とすると、予測周期はその10倍に設定される。
需給バランス予測機能112は、各時間帯毎に、電力供給の予測値と電力需要の予測値とを比較し、需要と供給がバランスするかを予測する。グラフG10は、時間帯毎の電力供給の変化を示す供給予測グラフである。グラフG11は、時間帯毎の電力需要の変化を示す需要予測グラフである。G12は、電力供給の予測(G10)と電力需要の予測(G11)との差分を示すグラフである。電力需要を電力供給が上回る場合に、余剰電力SPが生じる。
二酸化炭素可視化機能113は、電力の需給バランスの予測結果に基づいて、地域で排出される二酸化炭素量の時間変化を予測する。グラフG13は、時間帯毎の二酸化炭素の排出量の変化を示す二酸化炭素排出グラフである。
インセンティブ算出機能114は、余剰電力SPを消費させるためのインセンティブを算出する。余剰電力の発生する時間帯に、各需要家が電気機器を作動させれば、余剰電力を有効に利用することができる。例えば、余剰電力を給湯機、蓄熱器、蓄電池等に使用できれば、結果的に、それらの機器の電力需要をシフトさせることになり、余剰電力を低減できる。
そこで、インセンティブ算出機能114は、各需要家に余剰電力の消費を促すためのインセンティブを算出する。インセンティブ算出機能114は、例えば、「余剰電力を用いてヒートポンプ給湯機を2時間作動させた場合は、10ポイントを付与する。」等のインセンティブを立案する。
インセンティブ可視化機能115は、インセンティブを含む計画情報を各需要家に送信させる。各需要家が計画情報に従って余剰電力を消費すると、グラフG14に示すように、余剰電力SPaが予測値SPよりも低下する(SPa<SP)。所定の電気機器が余剰電力の発生する時間帯で使用されるため、それらの電気機器が通常使用される時間帯での電力需要は低下する。その電力需要の低下分を、グラフG14では、PP1,PP2として示している。
インセンティブ可視化機能115は、地域の各需要家が計画情報に従って行動した場合の予測グラフG14を、計画情報に含めて、または、計画情報と一緒に、あるいは、計画情報とは別に、各需要家に送信してモニタディスプレイに表示させることができる。予測結果を各需要家に提示することにより、需要家が計画情報に従って行動する動機を高めることができる。
図19は、各需要家からCEMS10に送信される電力の需給情報D10を示す。各需要家から、その需要家の有する各機器毎に需給情報D10が作成されて、CEMS10に送信される。
需給情報D10は、例えば、需要家ID C10と、機器ID C11と、消費電力/発電量C12と、時刻C13と、操作C14と、状態C15とを備える。これら以外の項目を含んでも良い。
需要家ID C10は、各需要家を識別するための情報である。機器ID C11は、各電気機器(PV、バッテリ、家電製品等)を識別するための情報である。消費電力/発電量C12は、C11で特定される機器で消費された電力量を示す情報、または、C11で特定される機器から発電される電力量を示す情報である。
時刻C13は、需給情報D10の作成された時刻を示す情報である。操作C14は、例えば、「オン操作された」、「オフ操作された」、「設定温度が18度に変更された」等の、機器の操作に関する情報である。状態C15は、例えば、「発電中」、「電力消費中」、「充電中」、「メンテナンス中」等の、機器の状態を示す情報である。
図20は、CEMS10から各需要家に配信される計画情報D20を示す。計画情報D20は、各需要家単位で作成されて、各需要家に送信される。計画情報D20は、例えば、需要家ID C20と、時間帯C21と、ポイントC22と、合計消費電力の上限値C23と、合計消費電力の下限値C24と、機器ID C25と、消費電力の上限値C26と、消費電力の下限値C27とを含む。これら以外の項目を備えても良い。
需要家ID C20は各需要家を識別するための情報である。時間帯C21は、インセンティブの適用される時間帯、つまり、地域で余剰電力が発生する時間帯を示す。ポイントC22は、インセンティブの内容を示す情報である。
合計消費電力の上限値C23は、その需要家が消費できる余剰電力の上限値を示す情報である。本実施例では、地域で生じた余剰電力を、地域の各需要家が公平に使用できるように、需要家毎に上限値を設定している。
合計消費電力の下限値C24は、その需要家が消費すべき余剰電力の下限値を示す情報である。本実施例では、各需要家が消費すべき余剰電力の量を提示している。下限値は、努力目標値であって、それを達成できなくても特別な不都合は生じない。但し、余剰電力を下限値以上使用しなかった需要家に、何らかのペナルティを与える構成でもよい。
機器ID C25は、需要家の有する機器を識別する情報である。消費電力の上限値C26は、その機器で使用可能な余剰電力の上限値を示す。消費電力の下限値C27は、その機器で消費すべき余剰電力の下限値を示す。
本実施例では、需要家に割り当てられた余剰電力を、その需要家の有する各機器毎に再割当てする。つまり、需要家の有する各機器に割り当てられた消費電力の上限値C26を合計すると、合計消費電力の上限値C23となる。同様に、各機器の消費電力の下限値C27を合計すると、合計消費電力の下限値C24となる。
図20の例では、一つの機器IDのみを示すが、実際には、需要家IDで特定される需要家の有する各機器(CEMSによる管理対象の機器)について、消費電力の上限値及び下限値が設定される。
図21は、二酸化炭素情報D30を示す。二酸化炭素情報D30は、計画情報D20に含める構成でもよいし、または、計画情報D20とは別に作成して各需要家に送信する構成でもよい。
二酸化炭素情報D30は、例えば、需要家ID C30と、地域で発生する二酸化炭素の量C31と、その需要家で発生する二酸化炭素の量C32と、その需要家の有する各機器毎の二酸化炭素の発生量C33とを備えることができる。
本実施例では、上述の通り、CEMS10による管理対象の各機器に関する電力状態を、電力計測ユニットまたはスマートメータで管理する。従って、各機器の消費電力または発電量を計測できる。これにより、本実施例では、計測された情報に基づいて機器単位の二酸化炭素排出量を算出することができる。
図22は、CEMS10の全体動作を示すフローチャートである。CEMS10は、上述の通り、各需要家の装置20,30,40,50等から需給情報D10を取得し(S20)、取得した需給情報D10に異常があるか否かを判定する(S21)。異常が発見された場合、CEMS10は、その需要家に警告を送信し、需要家に設けられているモニタディスプレイ等に出力させる。さらに、CEMS10は、必要があると判断した場合、例えば、警察署、消防署、病院、学校、勤務先、事前に指定された個人等に、電子メールまたは電話等の手段を用いて、警告を送信することもできる。
CEMS10は、需給情報D10を保存した後(S22)、計画情報D20の達成状況を評価する(S23)。つまり、CEMS10は、各需要家が前回の計画情報にどの程度従ったかを評価する。例えば、計画情報D20の達成状況に応じて、各需要家をランク分けすることができる。高ランクの需要家は、計画情報D20に従う可能性が高く、低ランクの需要家は計画情報D20に従う可能性が低い。
CEMS10は、需給情報の実績値と天気予報と各需要家のランク等に基づいて、次のサイクル(例えば、30分後)における電力の需給状態を予測する(S24)。さらに、CEMS10は、電力需給の予測結果に基づいて、電力の需要と供給がバランスするかを予測する(S25)。
CEMS10は、電力需給のバランス予測に基づいて、地域で発生する二酸化炭素の量を算出する(S26)。S26では、各需要家での二酸化炭素量、及び、各機器毎の二酸化炭素量を算出することもできる。
CEMS10は、余剰電力の消費を促すためのインセンティブを算出して、計画情報D20を作成し(S27)、その計画情報D20を各需要家側の管理装置20,30,40,50等に送信する(S28)。
図23は、需要家側の管理装置の動作を示す。需要家側の各管理装置20,30,40,50等を、HEMS20等と呼ぶ。HEMS20等は、送信時刻が到来したか否かを監視している(S30)。HEMS20等は、例えば、3分程度の周期で、需給情報D10をCEMS10に送信するように予め設定されている。
所定の送信時刻が到来すると(S30:YES)、HEMS20等は、需給情報D10を作成する(S31)。HEMS20等は、CEMS10にアクセスして(S32)、需給情報D10をCEMS10に送信する(S33)。HEMS20等がCEMS10にアクセスする場合には、所定の認証処理が行われる。さらに、HEMS20等からCEMS10には、暗号化された需給情報D10が送信される。
図24は、共通アダプタI/F121が優先度に応じて需給情報を処理する様子を模式的に示す。共通アダプタI/F121は、例えば、データ変換機能1211と、メッセージ振り分け機能1212を備える。
データ変換機能1211は、変換テーブルT1211を用いて、需給情報D10を標準形式のデータに変換し、共通データ処理機能123に引き渡す。
メッセージ振り分け機能1212は、優先度管理テーブルT1212を用いて、各共通アダプタCAから受信した需給情報D10を、その優先度に応じて振り分ける。メッセージ振り分け機能1212は、優先度の高い需給情報D10を優先処理キューに登録し、それ以外の需給情報D10を通常処理キューに登録する。図24に示す例では、地域の発電/蓄電60から送信される需給情報D10(4)には高い優先度が設定されており、優先的に処理される。
図25は、各機器毎の優先度を管理するテーブルT1212(1)を示す。機器毎の優先度管理テーブルT1212(1)は、例えば、機器タイプ12121C1と、優先度12121C2と、処理周期12121C3と、を備える。
機器タイプ12121C1は、各機器のタイプを示す。優先度12121C2は、機器の優先度が設定される。優先度は、例えば、「高」と「低」の2値で設定してもよいし、より細かく設定してもよい。処理周期12121C3は、機器の需給情報D10を処理すべき周期が設定される。優先度の高い需給情報D10は短い周期で処理され、優先度の低い需給情報D10は長い周期で処理される。即ち、優先度の高い需給情報D10は、優先処理キューに接続されて速やかに処理され、優先度の低い需給情報D10は、通常処理キューに接続されて処理される。
消費電力の大きい機器ほど、優先度が高くなるように設定できる。さらに、電力を消費する機器よりも、電力を発電する機器または蓄電する機器の優先度の方が高くなるように設定することもできる。または、大型蓄電池のようなリアルタイムでの監視が必要な機器ほど高い優先度を設定することもできる。
機器タイプ12121C1は、機器タイプ管理テーブルT1212(2)に関連付けられている。機器タイプ管理テーブルT1212(2)は、例えば、機器ID12122C1と、機器タイプ12122C2とを備える。
メッセージ振り分け機能1212は、需給情報D10の機器ID C11(図19参照)に基づいて、機器タイプ管理テーブルT1212(2)を参照することにより、その需給情報D10に対応する機器タイプを判別する。メッセージ振り分け機能1212は、判別された機器タイプに基づいて、優先度管理テーブルT1212(1)を参照することにより、その機器に設定された優先度と周期を知る。
図26は、各需要家毎の優先度を管理するテーブルT1212(3)を示す。優先度管理テーブルT1212(3)は、例えば、需要家タイプ12123C1と、優先度12123C2と、処理周期12123C3とを備える。
需要家タイプ12123C1は、各需要家のタイプを示す。便宜上、図26では、需要家のタイプをHEMS、BEMS、FEMSとして示してある。HEMSは住宅を示し、BEMSはビルディングまたは集合住宅を示し、FEMSは工場を示す。消費電力量または発電量の大きい需要家ほど高い優先度に設定される。
需要家タイプ12123C1は、需要家タイプ管理テーブルT1212(4)に関連付けられている。需要家タイプ管理テーブルT1212(4)は、例えば、需要家ID12124C1と、需要家タイプ12124C2とを備える。
メッセージ振り分け機能1212は、需給情報D10の需要家ID C10(図19参照)に基づいて、機器タイプ管理テーブルT1212(4)を参照することにより、その需給情報D10に対応する需要家タイプを判別する。メッセージ振り分け機能1212は、判別された需要家タイプに基づいて、優先度管理テーブルT1212(3)を参照することにより、その需要家に設定された優先度と周期を知る。
本実施例では、各機器毎の優先度に基づいて情報処理の速度を変える構成(図25)と、各需要家毎の優先度に基づいて情報処理の速度を変える構成(図26)のいずれも、実行することができる。または、機器毎の優先度と需要家毎の優先度の両方を組み合わせて、情報処理の速度を制御する構成としてもよい。その場合、高い優先度の需要家から送信された需給情報D10のうち、高い優先度を持つ機器に関する需給情報は、最も早く処理される。これに対し、低い優先度の需要家から送信された需給情報D10のうち、低い優先度を持つ機器に関する需給情報は、最も遅く処理される。
図27は、共通データ処理機能123が有する監視機能を示す。サービス提供者等の外部業者90(90A,90B)は、共通API122を介して、共通データ処理機能123に監視条件1231A,1231Bを設定することができる。
共通データ処理機能123は、共通アダプタCAから共通アダプタI/F121を介して流れ込む需給情報D10のうち、監視条件1231A,1231Bに該当する需給情報D10が有るか否かを監視する。
例えば、監視条件1231Aに一致する需給情報D10(2)が検出された場合、共通データ処理機能123は、その需給情報D10(2)をそのままで、または、加工処理1231Cして、外部業者90に引き渡す。引き渡し先の外部業者90は、監視条件1231Aを設定した業者である。監視条件を設定する外部業者と、その監視条件に一致する需給情報に関する通知を受信する外部業者とが異なる構成でもよい。
さらに、共通データ処理機能123は、監視条件に一致する需給情報の送信元である需要家に、監視条件に一致した旨を通知することもできる。
図28は、共通データ管理機能124によるアクセス制御処理を示す。外部業者90は、共通API122を介して、需給実績情報125C内の需給情報の少なくとも一部を利用することができる。しかし、需給情報は、各需要家のプライバシーに関わる重要な情報であるため、外部業者90への送信は慎重に行われる必要がある。
そこで、共通データ管理機能124には、アクセス制御機能1241と、アクセス権限管理テーブルT1241とが設けられる。アクセス権限管理テーブルT1241は、例えば、外部業者90を識別するための情報と、外部業者90に許可された情報内容とを対応付けて管理する。
外部業者90に許可された情報内容としては、例えば、外部業者90が情報を取得可能な需要家の範囲(許可された需要家IDのリスト、または、許可された需要家タイプ)、情報を取得可能な機器の範囲(許可された機器IDのリスト、または、許可された機器タイプ)を挙げることができる。
アクセス制御機能1241は、外部業者90のサーバが共通API122を介して、情報の取得を要求してきた場合、アクセス権限管理テーブルT1241を参照し、情報の送信を許可するか否かを判定する。許可された場合、例えば、需給実績情報125Cに記憶された情報のうち外部業者90が要求する情報が、共通API122を介して外部業者90のサーバに送信される。許可されない場合、共通データ管理機能124は、外部業者90のサーバにエラーを通知する。
図29は、HEMS20等がCEMS10から情報を受信した場合の処理を示す。HEMS20等は、CEMS10から計画情報D20を受信すると(S40:YES)、その情報の内容をモニタディスプレイに表示させる(S41)。
例えば、モニタディスプレイには、余剰電力の発生する時間帯、余剰電力の推奨消費量(合計消費電力の下限値)、ポイント等が表示される(S41)。表示画面の例はさらに後述する。
需要家のエネルギ管理者は、モニタディスプレイに表示されたインセンティブに触発されて、機器の操作を予約することができる(S42)。
HEMS20等は、インセンティブが有効になる時間帯が到来すると、または、インセンティブの有効になる時間帯よりも所定時間だけ前に、エネルギ管理者に注意を喚起することもできる(S43)。HEMS20等は、例えば、「余剰電力をお得に利用できる時刻が迫っています。」等のメッセージを、モニタディスプレイに表示させたり、音声出力したり、登録されたエネルギ管理者の電子メールアドレスに送信したりする。
図30は、HEMS20等がモニタディスプレイに表示させる、電力の需給状況を示す画面G20である。電力の需給状況を示す画面G20は、例えば、各種のデータをグラフ化して表示させる領域GP21と、各種のデータを数値または文字で表示させる領域GP22と、ポイントを表示させる領域GP23を備える。
画面G20には、例えば、その地域における電力需要の予測と、その地域における電力供給の予測と、その地域で発生する余剰電力の予測と、その需要家における電力需要の予測と、その需要家における電力供給の予測と、その需要家における余剰電力の予測と、を表示させることができる。さらに、地域及び需要家の、電力需要及び電力供給の実績値、電力料金等を画面G20に表示させることもできる。
図31は、二酸化炭素の排出量を表示する画面G30を示す。画面G30には、地域全体の二酸化炭素の排出量を示す領域GP31と、その需要家における二酸化炭素の排出量を示す領域GP32とを含むことができる。
図32は、インセンティブを表示する画面G40を示す。画面G40には、複数の領域GP41−GP45が含まれる。
領域GP41は、計画情報D20が達成された場合の余剰電力の変化等を示す。領域GP42は、余剰電力の使用を促すメッセージを表示する。領域GP43は、余剰電力の上限値及び下限値を示す。領域GP44は、余剰電力の消費方法を機器毎に示す。領域GP45は、余剰電力の発生する時間帯で作動を停止させるべき機器(PV等)を示す。
図33は、需要家側に表示させる画面の他の例を示す。情報表示画面G50は、例えば、日付欄GP51と、インセンティブ情報欄GP52と、インセンティブ実績欄GP53とを備える。
インセンティブ情報欄GP52には、例えば、インセンティブの付与される対象GP521と、インセンティブの内容GP522と、インセンティブの付与される時間GP523とが含まれる。
図33では、12時から14時までの時間帯で、給湯機を使用すると、1kWh毎に1ポイントが与えられることが示されている。さらに、12時から14時までの時間帯で空調機を停止させた場合、1kWhの電力消費を節約する度に、1ポイントが与えられることが示されている。
インセンティブ実績欄GP53には、例えば、インセンティブの使用実績GP531と、付与されたポイントの実績GP532とが含まれる。図33では、給湯機が2kWhの余剰電力を使用したため、2ポイント与えられたことが示されている。さらに、空調機が停止されたために、2ポイント与えられたことが示されている。このように、余剰電力の消費に貢献した内容は、毎日集計されて管理される。
図34は、需給情報を圧縮して管理する様子を示す。図34(a)に示すように、需給情報は、例えば3分間程度の短い周期で、各需要家から取得される。従って、CEMS10に蓄積される需給情報の量は日々増大する。
そこで、図34(b)に示すように、需給情報の低周波成分を抽出して、傾向を示すデータに変換する。簡単に言えば、3分毎の需給情報の示す値の包絡線を検出し、全体的な傾向を示すデータをCEMS10に保存する。なお、最近の需給情報はそのまま保存し、所定時間が経過した場合に傾向データに変換して保存することができる。
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。