JPWO2012043400A1 - 高分子電解質膜、膜−電極接合体、及び固体高分子型燃料電池 - Google Patents

高分子電解質膜、膜−電極接合体、及び固体高分子型燃料電池 Download PDF

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Abstract

高いイオン伝導性を保持すると共に、耐熱水性及び発電性能に優れる高分子電解質膜、該高分子電解質膜と電極とを備える膜−電極接合体、及び該高分子電解質膜を備える固体高分子型燃料電池を提供する。イオン伝導性重合体ブロック(A)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体を含む高分子電解質膜であって、該非イオン伝導性重合体ブロック(B)が非極性架橋剤(X)で架橋されてなることを特徴とする高分子電解質膜、該高分子電解質膜とガス拡散電極とを備える膜電極接合体、及び該高分子電解質膜を備える固体高分子型燃料電池。

Description

本発明は、高分子電解質膜、膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池に関する。さらに詳しくは、高いイオン伝導性を保持すると共に、耐熱水性及び発電性能に優れる高分子電解質膜、該高分子電解質膜とガス拡散電極とを備える膜−電極接合体、及び該高分子電解質膜を備える固体高分子型燃料電池に関するものである。
近年、従来の火力発電に比べて、小型化が可能で、燃料消費効率の高い発電装置として、燃料電池が注目されている。特に固体高分子型燃料電池は、小型軽量化が可能である等の理由から、電気自動車用の駆動電源や携帯機器用の電源としての利用、さらに電気と熱を同時利用する家庭据置き用の電源機器等への適用が検討されている。
固体高分子型燃料電池は、一般に次のように構成される。まず、イオン伝導性を有する高分子電解質膜の両側に、白金属の金属触媒を担持したカーボン粉末と高分子電解質からなるイオン伝導性バインダーとを含む触媒層がそれぞれ形成される。各触媒層の外側には、燃料ガス及び酸化剤ガスをそれぞれ通気する多孔性材料であるガス拡散層がそれぞれ形成される。ガス拡散層としてはカーボンペーパー、カーボンクロス等が用いられる。触媒層とガス拡散層を一体化したものはガス拡散電極と呼ばれ、また一対のガス拡散電極をそれぞれ触媒層が高分子電解質膜と向かい合うように接合した構造体は膜−電極接合体と呼ばれている。この膜−電極接合体の両側には、導電性と気密性を備えたセパレータが配置される。電極面に燃料又は酸化剤を供給するガス流路が膜−電極接合体とセパレータの接触部分又はセパレータ内に形成されている。一方のガス拡散電極(燃料極)に水素やメタノール等の燃料を供給し、他方のガス拡散電極(酸素極)に空気等の酸素を含有する酸化剤を供給して発電する。すなわち、燃料極では燃料がイオン化されてプロトンと電子が生じ、プロトンは高分子電解質膜を通り、電子は両電極をつなぐことによって形成される外部電気回路を移動して酸素極へ送られ、酸化剤と反応することで水が生成する。このようにして、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換して取り出すことができる。
固体高分子型燃料電池が実用性をさらに高める上では、高い発電性能のみならず、長時間安定して運転できることが重要である。長時間運転中に高分子電解質膜の構造、特にイオン伝導性基であるスルホン酸基等が凝集することにより形成されるイオン伝導性チャンネルの構造が変化しやすく、そのため発電特性も変化しやすい。それ故、発電前後(高分子電解質膜の評価においては、熱水浸漬処理前後に相当)の特性、特にイオン伝導度等の特性の変化が小さい高分子電解質膜が望まれている。
一般的に、固体高分子型燃料電池に用いる高分子電解質膜としては、化学的に安定であるという理由からパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子であるナフィオン(Nafion,デュポン社の登録商標。以下同様) が用いられている。しかしながら、ナフィオンはフッ素系のポリマーであるため、合成及び廃棄時に環境への配慮が必要であり、かつ高価である。
このような事情から、近年高分子電解質膜として非フッ素系の材料が求められており、種々検討されている。例えば耐熱水性を向上させるべく、ランダム共重合体に架橋部位を導入してなる高分子電解質膜が開示されている(特許文献1及び2参照)。
特開2006−269414号公報 特開2007−16205号公報
しかしながら、前記特許文献1及び特許文献2に記載の技術においては、耐熱水性は改善されるものの、架橋部位がランダムに分布しているために、耐熱水性と高いイオン伝導性を両立するには至っていない。
本発明は、このような状況下になされたもので、高いイオン伝導性を保持すると共に、耐熱水性及び発電性能に優れる高分子電解質膜、該高分子電解質膜とガス拡散電極とを備える膜−電極接合体、及び該高分子電解質膜を備える固体高分子型燃料電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
イオン伝導性重合体ブロック(A)と、非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体を含み、かつ前記非イオン伝導性重合体ブロック(B)が、非極性架橋剤により選択的に架橋されてなる高分子電解質膜により、あるいはイオン伝導性重合体ブロック(A)を含む相と、非イオン伝導性重合体ブロック(B)と非極性架橋剤を含む相とからなり、かつ少なくとも前記非イオン伝導性重合体ブロック(B)が前記非極性架橋剤で架橋されてなる高分子電解質膜により、その目的を達成し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1]イオン伝導性重合体ブロック(A)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体を含む高分子電解質膜であって、該非イオン伝導性重合体ブロック(B)が非極性架橋剤(X)で架橋されてなることを特徴とする高分子電解質膜、
[2]非極性架橋剤(X)が、不飽和炭化水素化合物、芳香環上にアルキル基を有する芳香族ビニル化合物、又はその重合体である、上記[1]に記載の高分子電解質膜、
[3]非極性架橋剤(X)が、以下の一般式(1)及び(2)で表される化合物の少なくとも1種を含む、上記[1]又は[2]に記載の高分子電解質膜、
Figure 2012043400
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。pは5〜65の数を表す。)
Figure 2012043400
(式中、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であり、R4及びR5はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。qは3〜30の数を表す。)
[4]前記非イオン伝導性重合体ブロック(B)が、不飽和炭化水素化合物及び/又は芳香族ビニル化合物由来の構成単位を繰り返し単位として有する重合体ブロックである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の高分子電解質膜、
[5]イオン伝導性重合体ブロック(A)を含む相(a)と、非イオン伝導性重合体ブロック(B)と非極性架橋剤(X)を含む相(b)とからなる高分子電解質膜であって、少なくとも前記非イオン伝導性重合体ブロック(B)が前記非極性架橋剤(X)で架橋されてなることを特徴とする高分子電解質膜、
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の高分子電解質膜とガス拡散電極とを備える膜−電極接合体、及び
[7]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の高分子電解質膜を備える固体高分子型燃料電池、
を提供するものである。
本発明によれば、高いイオン伝導性を保持すると共に、耐熱水性及び発電性能に優れる高分子電解質膜、該高分子電解質膜と電極とを備える膜−電極接合体、及び該高分子電解質膜を備える固体高分子型燃料電池を提供することができる。
まず、本発明の高分子電解質膜について説明する。
[高分子電解質膜]
本発明の高分子電解質膜は、イオン伝導性重合体ブロック(A)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体を含む高分子電解質膜であって、該非イオン伝導性重合体ブロック(B)が非極性架橋剤(X)で架橋されてなることを特徴とするもの、あるいはイオン伝導性重合体ブロック(A)を含む相(a)と、非イオン伝導性重合体ブロック(B)と非極性架橋剤(X)を含む相(b)とからなる高分子電解質膜であって、少なくとも前記非イオン伝導性重合体ブロック(B)が前記非極性架橋剤(X)で架橋されてなることを特徴とするものである。
かかるイオン伝導性重合体ブロック(A)及び非イオン伝導性重合体ブロック(B)は、ミクロ相分離を起こす。これにより、イオン伝導性重合体ブロック(A)が集結してなる、イオン伝導性重合体ブロック(A)を含む相(a)がイオンチャンネルを形成し、プロトン等のイオンの通り道となる。また、非イオン伝導性重合体ブロック(B)が集結してなる、非イオン伝導性重合体ブロック(B)を含む相(b)は、非極性架橋剤(X)も含むことで、該非イオン伝導性重合体ブロック(B)が非極性架橋剤(X)で架橋されてなる構造を形成する。
なおここで、「ミクロ相分離」とは微視的な意味での相分離を意味し、より詳しくは、形成されるドメインサイズが可視光の波長(3800〜7800Å)以下である相分離を意味するものとする。
(ブロック共重合体)
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体は、イオン伝導性重合体ブロック(A)と、非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなり、かつ該非イオン伝導性重合体(B)が非極性架橋剤(X)で架橋されてなる。
<イオン伝導性重合体ブロック(A)>
当該イオン伝導性重合体ブロック(A)としては、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位からなる重合体ブロック、ポリエーテルケトンブロック、ポリスルフィドブロック、ポリホスファゼンブロック、ポリフェニレンブロック、ポリベンゾイミダゾールブロック、ポリエーテルスルホンブロック、ポリフェニレンオキシドブロック、ポリカーボネートブロック、ポリアミドブロック、ポリイミドブロック、ポリ尿素ブロック、ポリスルホンブロック、ポリスルホネートブロック、ポリベンゾオキサゾールブロック、ポリベンゾチアゾールブロック、ポリフェニルキノキサリンブロック、ポリキノリンブロック、ポリトリアジンブロック、ポリアクリレートブロック、ポリメタクリレートブロック等の各重合体ブロックにそれぞれイオン伝導性基を導入した重合体ブロックが挙げられ、中でも芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位からなる重合体ブロック、ポリエーテルケトンブロック、ポリスルフィドブロック、ポリホスファゼンブロック、ポリフェニレンブロック、ポリベンゾイミダゾールブロック、ポリエーテルスルホンブロック、ポリフェニレンオキシドブロックの各々にそれぞれイオン伝導性基を導入した重合体ブロックが好ましく、合成の容易さという観点から、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位からなる重合体ブロックにイオン伝導性基を導入した重合体ブロックがより好ましい。
当該重合体ブロック(A)は重合体ブロック(A)に相当する部分(重合体ブロック(A)のイオン伝導性基を水素に置換した構造からなる重合体ブロックであり、これを重合体ブロック(A0)と称する)にイオン伝導性基を導入することで形成できる。重合体ブロック(A0)が芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位からなる場合、かかる芳香族ビニル化合物が有する芳香環は炭素環式芳香環であるのが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環等が挙げられる。
前記重合体ブロック(A0)を形成できる単量体としては、例えばスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルビフェニル、ビニルターフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4−フェノキシスチレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。
芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位からなる重合体ブロック(A0)の芳香環にイオン伝導性基を導入する場合、これら単量体の芳香環上にはイオン伝導性基を導入する反応を阻害する官能基がないことが望ましい。例えば、スチレンの芳香環上の水素(特に4位の水素)がアルキル基(特に炭素数3以上のアルキル基)等で置換されているとイオン伝導性基の導入が困難な場合があるので、該芳香環は他の官能基で置換されていないか、アリール基等の、それ自体がイオン伝導性基を導入可能な置換基で置換されていることが好ましく、イオン伝導性基の導入容易性、イオン伝導性基の高密度化等の観点から、スチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、ビニルビフェニルがより好ましい。
本発明でイオン伝導性に言及する場合のイオンとしてはプロトンが挙げられる。イオン伝導性基としては、当該高分子電解質膜を用いて作製される膜−電極接合体が十分なイオン伝導度を発現できるような基であれば特に限定されないが、中でも−SO3M又は−PO3HM(式中、Mは水素原子、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)で表されるスルホン酸基、ホスホン酸基又はそれらの塩が好適に用いられる。
イオン伝導性基の導入量は、高分子電解質の性能を決める上で重要である。本発明の高分子電解質が固体高分子型燃料電池における高分子電解質膜として使用するのに十分なイオン伝導性を発現するためには、本発明の高分子電解質のイオン交換容量は0.40meq/g以上となるような量であることが好ましく、0.50meq/g以上となるような量であることがより好ましい。イオン交換容量の上限については、イオン交換容量が大きくなりすぎると親水性が高まり、膨潤しやすい傾向にあるので、4.50meq/g以下であるのが好ましく、4.00meq/g以下であるのがより好ましい。
また、上記の芳香族ビニル化合物のビニル基上の水素原子のうち、芳香環のα−位の炭素(α−炭素)に結合した水素原子が他の置換基で置換され、α−炭素が4級炭素であってもよい。かかる置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基(クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロエチル基等)又はフェニル基等が挙げられる。これらの置換基で芳香環のα−位の炭素(α−炭素)に結合した水素原子が置換された芳香族ビニル化合物としては、α−メチルスチレン、α−メチル−4−メチルスチレン、α−メチル−2−メチルスチレン、α−メチル−4−エチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられる。
これら芳香族ビニル化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて重合体ブロック(A0)を形成する際の単量体として使用できるが、中でもスチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、α−メチル−4−メチルスチレン、α−メチル−2−メチルスチレン、ビニルビフェニルが好ましい。これらの2種以上を共重合させて、重合体ブロック(A0)を形成する場合の重合方法はランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、及びテーパード共重合のいずれでもよいが、ランダム共重合であることが好ましい。
本発明においては、重合体ブロック(A0)は、本発明の効果を損なわない範囲内で1種又は2種以上の他の単量体単位を含んでいてもよい。かかる他の単量体単位を構成する単量体としては、例えば、炭素数4〜8の共役ジエン化合物(1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン)、炭素数2〜8のアルケン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン等)、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等)、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等)が挙げられる。上記他の単量体との共重合形態はランダム共重合であることが望ましい。これら単量体の含有量は好ましくは5モル%以下である。
当該イオン伝導性重合体ブロック(A)の分子量は、大きすぎると高分子電解質膜の成形、製膜が困難になり、小さすぎるとイオン伝導性を発現しにくくなるので、必要性能に応じて分子量を適宜選択することが重要である。
<非イオン伝導性重合体ブロック(B)>
本発明の高分子電解質膜を成すブロック共重合体を構成する非イオン伝導性重合体ブロック(B)は、イオン伝導性を有さないことで、非極性架橋剤(X)による架橋を効率的に進行させることができる。このことによって、本発明の高分子電解質膜は所望の性能を得ることができる。
すなわち、非イオン伝導性重合体ブロック(B)を架橋し、イオン伝導性重合体ブロック(A)は架橋しないことにより、高いイオン伝導性を保持しつつ、耐熱水性及び発電性能が改善される。
かかる重合体ブロック(B)を構成する繰り返し単位としては、イオン伝導性基を有さない重合体ブロックであればよく、イオン伝導性基を有さない不飽和炭化水素化合物及び/又は芳香族ビニル化合物由来の構成単位を繰り返し単位として有する重合体ブロックであることが好ましい。かかる重合体ブロックとしては、イオン伝導性基を有さない芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位からなる重合体ブロック、炭素数2〜8のアルケン単位からなる重合体ブロック、炭素数5〜8のシクロアルケン単位からなる重合体ブロック、炭素数7〜10のビニルシクロアルカン単位からなる重合体ブロック、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位からなる重合体ブロック、炭素数4〜8の共役ジエン単位からなる重合体ブロック、炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位からなる重合体ブロック、ポリエーテルケトンブロック、ポリスルフィドブロック、ポリホスファゼンブロック、ポリフェニレンブロック、ポリベンゾイミダゾールブロック、ポリエーテルスルホンブロック、ポリフェニレンオキシドブロック、ポリカーボネートブロック、ポリアミドブロック、ポリイミドブロック、ポリ尿素ブロック、ポリスルホンブロック、ポリスルホネートブロック、ポリベンゾオキサゾールブロック、ポリベンゾチアゾールブロック、ポリフェニルキノキサリンブロック、ポリキノリンブロック、ポリトリアジンブロック、ポリアクリル酸エステルブロック、ポリメタクリル酸エステルブロック等が挙げられる。
中でもイオン伝導性基を有さない芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位からなる重合体ブロック、炭素数2〜8のアルケン単位からなる重合体ブロック、炭素数5〜8のシクロアルケン単位からなる重合体ブロック、炭素数7〜10のビニルシクロアルカン単位からなる重合体ブロック、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位からなる重合体ブロック、炭素数4〜8の共役ジエン単位からなる重合体ブロック、炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位からなる重合体ブロック、ポリエーテルケトンブロック、ポリスルフィドブロック、ポリホスファゼンブロック、ポリフェニレンブロック、ポリベンゾイミダゾールブロック、ポリエーテルスルホンブロック、ポリフェニレンオキシドブロックが好ましく、合成の容易さや架橋を効率的に進行させるという観点から、イオン伝導性基を有さない炭素数2〜8のアルケン単位からなる重合体ブロック、炭素数4〜8の共役ジエン単位からなる重合体ブロック、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位からなる重合体ブロックがより好ましく、特にイオン伝導性基を有さない炭素数2〜6のアルケン単位からなる重合体ブロック、炭素数4〜6の共役ジエン単位からなる重合体ブロック、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位からなる重合体ブロックが好ましい。アルケン単位として最も好ましいのはイソブテン単位、1,3−ブタジエン単位の二重結合を飽和させた構造単位(1−ブテン単位、2−ブテン単位)、イソプレン単位の二重結合を飽和させた構造単位(2−メチル−1−ブテン単位、3−メチル−1−ブテン単位、2−メチル−2−ブテン単位)であり、特に柔軟性の高さから1,3−ブタジエン単位の二重結合を飽和した構造単位(1−ブテン単位、2−ブテン単位)またはイソプレン単位の二重結合を飽和した構造単位(2−メチル−1−ブテン単位、3−メチル−1−ブテン単位、2−メチル−2−ブテン単位)が好ましい。共役ジエン単位として最も好ましいのは1,3−ブタジエン単位、イソプレン単位である。
また、本発明に用いる高分子電解質を製造するにあたり、前述の重合体ブロック(A0)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなる、イオン伝導性基を有さないブロック共重合体を重合した後に該重合体ブロック(A0)にイオン伝導性基を導入する場合、非イオン伝導性重合体ブロック(B)が飽和炭化水素構造であれば、該重合体ブロック(B)にはイオン伝導性基が導入されにくいので好ましい。非イオン伝導性重合体ブロック(B)が芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位である場合は、該芳香族ビニル化合物の芳香環上にはイオン伝導性基を導入する反応を阻害する官能基があることが望ましい。例えば、スチレンの芳香環上の水素(特に4位の水素)がアルキル基(特に炭素数3以上のアルキル基)等で置換されていることが好ましく、4−イソプロピルスチレン単位、4−n−ブチルスチレン単位、4−t−ブチルスチレン単位がより好ましい。
かかる単量体単位からなる非イオン伝導性重合体ブロック(B)を形成するための単量体は、特に制限はない。例えば炭素数2〜8のアルケン単位を形成するための単量体として炭素数2〜8のアルケン化合物(エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン等)、炭素数4〜8のアルケン単位および/または炭素数4〜8の共役ジエン単位を形成するための単量体として炭素数4〜8の共役ジエン化合物(1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン等)、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位として芳香族ビニル化合物(4−イソプロピルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−t−ブチルスチレン等)が挙げられる。
非イオン伝導性重合体ブロック(B)を形成するための単量体は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの群から選ばれる繰り返し単位は単独で又は2種以上を組み合わせて導入してもよい。2種以上を重合(共重合)させる場合の形態は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、及びテーパード共重合のいずれでもよいが、ランダム共重合であることが好ましい。また、(共)重合に供する単量体が炭素−炭素二重結合を複数有する場合にはそのいずれが重合に用いられてもよく、共役ジエン化合物の場合には1,2−結合であっても1,4−結合であってもよい。
非イオン伝導性重合体ブロック(B)を形成するための単量体を重合したのちに、不飽和結合が残存している場合には、かかる不飽和結合の一部または全部を、公知の水素添加反応によって飽和結合に変換してもよい。特に、ビニルシクロアルケン化合物、共役ジエン化合物、共役シクロアルカジエン化合物のように炭素−炭素二重結合を複数有する単量体を用いる場合には、通常、重合後の重合体ブロックに炭素−炭素二重結合が残存するが、耐熱劣化性の向上等の観点から、かかる炭素−炭素二重結合はその30モル%以上が水素添加(以下、「水添」と称する場合がある)されているのが好ましく、50モル%以上が水素添加されているのがより好ましく、80モル%以上が水素添加されているのが更に好ましく、すべて水素添加されていることが最も好ましい。ただし、水素添加反応の追い込みが困難な場合は、前記耐熱劣化性と生産効率のバランスから適宜水素添加率を選択すればよい。
炭素−炭素二重結合の水素添加率は、一般に用いられている方法、例えば、ヨウ素価測定法、1H−NMR測定等によって算出することができる。このように重合体ブロック(B)が炭素−炭素二重結合を有さないか又は低減した構造とすることで、高分子電解質膜の劣化を抑制できる。
また、非イオン伝導性重合体ブロック(B)は、上記単量体由来の単位以外に、使用温度領域において高分子電解質膜に弾力性を与えるという当該重合体ブロック(B)の目的を損なわない範囲で、他の単量体由来の単位、例えばスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系化合物由来の単位;塩化ビニル等のハロゲン含有ビニル化合物由来の単位、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)由来の単位、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等)由来の単位等を含んでいてもよい。この場合上記単量体と他の単量体との共重合形態はランダム共重合であることが好ましい。これら単量体由来の単位の含有量は、好ましくは5モル%以下である。
<ブロック共重合体の形態>
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体は、イオン伝導性基が導入されていない状態での数平均分子量は特に制限されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された標準ポリスチレン換算の数平均分子量として、通常、10,000〜300,000が好ましく、15,000〜250,000がより好ましく、20,000〜200,000が更に好ましい。
また、本発明においては、当該ブロック共重合体は、イオン伝導性重合体ブロック(A)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とを、それぞれ1個有していてもよいし、複数個有していてもよい。イオン伝導性重合体ブロック(A)を複数個有する場合、それらの構造(構成繰り返し単位の種類、重合度、イオン伝導性基の種類や導入割合等)は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。また、非イオン伝導性重合体ブロック(B)を複数個有する場合、それらの構造(構成繰り返し単位の種類、重合度等)は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
当該ブロック共重合体においては、前記イオン伝導性重合体ブロック(A)及び前記非イオン伝導性重合体ブロック(B)の配列に関しては特に制限はない。なお、各重合体ブロックは必ずしも直線状に連なっている必要はなく、ある重合体ブロックがグラフト結合する形態であってもよい。この意味で本発明で使用するブロック共重合体はグラフト共重合体を包含する。
当該ブロック共重合体における、イオン伝導性重合体ブロック(A)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)の配列の例として、A−B−A型トリブロック共重合体(A、Bはそれぞれ、イオン伝導性重合体ブロック(A)、非イオン伝導性重合体ブロック(B)を表す)、B−A−B型トリブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体あるいはB−A−B型トリブロック共重合体とA−B型ジブロック共重合体との混合物、A−B−A−B型テトラブロック共重合体、A−B−A−B−A型ペンタブロック共重合体、B−A−B−A−B型ペンタブロック共重合体、B−A−B'−A−B型ペンタブロック共重合体(BとB’は異なる繰り返し単位からなる非イオン伝導性重合体ブロック(B)を表す)、B−A−B−B'−B−A−B型ヘプタブロック共重合体、(A−B)nX型星形共重合体(Xはカップリング剤残基、nは2以上の整数を表す)、(B−A)nX型星形共重合体(Xはカップリング剤残基、nは2以上の整数を表す)等が挙げられる。本発明の高分子電解質膜においては、これらのブロック共重合体は、それぞれ単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の高分子電解質膜を構成する前記ブロック共重合体においては、イオン伝導性重合体ブロック(A)の合計量と、非イオン伝導性重合体ブロック(B)の合計量の割合は、質量比で95:5〜5:95であるのが好ましく、90:10〜10:90であるのがより好ましく、85:15〜15:85であるのが更に好ましい。この質量比が95:5〜5:95である場合には、ミクロ相分離によりイオン伝導性重合体ブロック(A)が形成するイオンチャンネルの形状がシリンダー状ないし連続相となるのに有利であって、実用上十分なイオン伝導性が発現し、また非イオン伝導性重合体ブロック(B)の割合が適切となって、柔軟性、弾力性ひいては膜−電極接合体や固体高分子型燃料電池の作製にあたって良好な成形性を与え、かつ優れた耐水性も発現する。
(ブロック共重合体の製造)
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体の製造方法に関しては、重合体ブロック(A0)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体を製造した後、重合体ブロック(A0)にイオン伝導性基を導入する方法等を用いることができる。
重合体ブロック(A0)又は非イオン伝導性重合体ブロック(B)の製造方法は、重合体ブロック(A0)又は非イオン伝導性重合体ブロック(B)を構成する単量体の種類、分子量等によって、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法等から適宜選択されるが、工業的な容易さから、ラジカル重合法、アニオン重合法あるいはカチオン重合法が好ましく選択される。特に、分子量、分子量分布、重合体の構造、重合体ブロック(A0)又は非イオン伝導性重合体ブロック(B)との結合の容易さ等からいわゆるリビング重合法が好ましく、具体的にはリビングラジカル重合法あるいはリビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法が好ましい。なお、重合体ブロック(A0)については、前述のとおりである。
重合体ブロック(A0)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体の製造方法の具体例として、スチレン等の芳香族ビニル系化合物を主たる繰り返し単位とする重合体ブロック(A0)、及び共役ジエン又はイソブテンからなる非イオン伝導性重合体ブロック(B)を成分とするブロック共重合体の製造方法について述べる。この場合、工業的容易さ、分子量、分子量分布、重合体ブロック(A0)、非イオン伝導性重合体ブロック(B)との結合の容易さ等からリビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法で製造するのが好ましく、次のような具体的な合成例が示される。
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体の前駆体である、重合体ブロック(A0)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体をアニオン重合によって製造するにあたっては、
(1)シクロヘキサン溶媒中でアニオン重合開始剤を用いて、20〜100℃の温度条件下で、スチレン等の芳香族ビニル系化合物、共役ジエン、スチレン等の芳香族ビニル系化合物を逐次重合させA−B−A型ブロック共重合体を得る方法、
(2)シクロヘキサン溶媒中でアニオン重合開始剤を用いて、20〜100℃の温度条件下でスチレン等の芳香族ビニル系化合物、共役ジエンを逐次重合させた後、安息香酸フェニル等のカップリング剤を添加してA−B−A型ブロック共重合体を得る方法、
(3)非極性溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%濃度の極性化合物の存在下、−30〜30℃の温度にて、5〜50質量%濃度のα−メチルスチレン等の芳香族ビニル系化合物を重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させた後、安息香酸フェニル等のカップリング剤を添加して、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法、
(4)シクロヘキサン溶媒中でアニオン重合開始剤を用いて、20〜100℃の温度条件下で、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル系化合物、スチレン等の芳香族ビニル系化合物、共役ジエンを所望の順番で各1回以上逐次添加し、重合させることで、B−A−B'−A−B型、B−A−B−B'−B−A−B型ブロック共重合体等の3種類以上の繰り返し単位からなるブロック共重合体を得る方法等が採用される。
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体の前駆体である重合体ブロック(A0)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体をカチオン重合によって製造するにあたっては、
(4)ハロゲン系/炭化水素系混合溶媒中、−78℃で、2官能性ハロゲン化開始剤を用いて、ルイス酸存在下、イソブテンをカチオン重合させた後、スチレン又はスチレン誘導体を重合させて、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法(Macromol.Chem.,Macromol.Symp.32,119(1990).)等が採用される。
なお、必要に応じて、上記アニオン重合やカチオン重合において反応させる成分を変えたり、追加したりすることによって、ブロック共重合体の成分として、他の重合体ブロックを加えることができる。
《イオン伝導性基の導入》
次に、得られた重合体ブロック(A0)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体にイオン伝導性基を導入する方法について述べる。
まず、該ブロック共重合体にスルホン酸基を導入する方法について述べる。スルホン酸基の導入(スルホン化)は、公知の方法で行える。例えば、ブロック共重合体の有機溶媒溶液や懸濁液を調製し、かかる溶液や懸濁液に後述するスルホン化剤を添加し混合する方法や、ブロック共重合体に直接ガス状のスルホン化剤を添加する方法が挙げられる。
スルホン化剤としては、硫酸;硫酸と脂肪族酸無水物との混合物系;クロロスルホン酸;クロロスルホン酸と塩化トリメチルシリルとの混合物系;三酸化硫黄;三酸化硫黄とトリエチルホスフェートとの混合物系;2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸に代表される芳香族有機スルホン酸等が例示される。また、使用する有機溶媒としては、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、ヘキサン等の直鎖脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素等が例示でき、必要に応じて複数の組み合わせから、適宜選択して使用してもよい。
次に、重合体ブロック(A0)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体にホスホン酸基を導入する方法について述べる。ホスホン酸基の導入(ホスホン化)は、公知の方法で行える。例えば、重合体ブロック(A0)が芳香族ビニル化合物からなる場合、該芳香族ビニル化合物の芳香環に塩化アルミニウム存在下でハロメチルエーテルを反応させてハロメチル基を導入し、次いで三塩化リン及び塩化アルミニウムと反応させてリン誘導体に置換したのち、加水分解によってホスホン酸基に変換する方法、前記芳香族ビニル化合物の芳香環に三塩化リンと無水塩化アルミニウムを反応させて導入したホスフィン酸基を硝酸により酸化してホスホン酸基に変換する方法が例示できる。
スルホン化又はホスホン化の程度としては、前述のとおり、本発明の高分子電解質膜のイオン交換容量が0.40meq/g以上、特に0.50meq/g以上となるように、そして、4.50meq/g以下、好ましくは4.00meq/g以下であるようにスルホン化又はホスホン化することが望ましい。これにより実用的なイオン伝導性能が得られる。最終的に得られる高分子電解質膜のイオン交換容量やスルホン化又はホスホン化されたブロック共重合体のイオン交換容量、又はブロック共重合体におけるイオン伝導性重合体ブロック(A)中のスルホン化率又はホスホン化率は、酸価滴定法、赤外分光スペクトル測定、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)測定等の分析手段を用いて算出することができる。
本発明の高分子電解質膜は、前記のようにして得られた、イオン伝導性重合体ブロック(A)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体を含み、かつ該非イオン伝導性重合体ブロック(B)が非極性架橋剤(X)で架橋されてなるものである。
(非極性架橋剤(X))
非極性架橋剤(X)は、イオン伝導性基を有する重合体ブロック(A)を含む相(a)よりも非イオン伝導性重合体ブロック(B)を含む相(b)に取り込まれやすいものであればよい。非極性架橋剤(X)としては、不飽和炭化水素化合物、芳香環上にアルキル基を有する芳香族ビニル化合物、又はその重合体が好ましく、共役ジエン系オリゴマーや芳香族ビニル化合物系オリゴマーがより好ましい。
例えば、以下の一般式(1)及び(2)で表される化合物の少なくとも1種を含むものが望ましい。
Figure 2012043400
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。pは5〜65の数を表す。)
Figure 2012043400
(式中、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であり、R4及びR5はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。qは3〜30の数を表す。)
前記一般式(1)において、R1及びR2のうちの炭素数1〜4のアルキル基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、pは5〜65の数、好ましくは10〜45の数である。
一方、前記一般式(2)におけるR3のうちの炭素数1〜4のアルキル基としては、上記と同じものを挙げることができるが、メチル基及びエチル基が好ましい。炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニリル基等が挙げられる。R4及びR5のうちの炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられるが、これらの中で炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。
qは3〜30の数、好ましくは4〜22の数である。
当該非極性架橋剤(X)の具体例を説明すると、共役ジエン系オリゴマーとしては、ブタジエンオリゴマー、イソプレンオリゴマーが好ましく、1,2−結合含有量が50質量%以上のブタジエンオリゴマー、イソプレンオリゴマーがより好ましく、架橋密度を高めやすいという観点から、1,2−結合含有量が50質量%以上のブタジエンオリゴマーが更に好ましく、1,2−結合含有量が75質量%以上のブタジエンオリゴマーが特に好ましい。かかるオリゴマーは必要に応じてその他の芳香族ビニル化合物(スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン等)やその他の共役ジエン(イソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等)を重合成分として含有してもよい。
一方、芳香族ビニル化合物系オリゴマーとしては、2−メチルスチレンオリゴマー、3−メチルスチレンオリゴマー、4−メチルスチレンオリゴマー、4−エチルスチレンオリゴマー、4−プロピルスチレンオリゴマー、4−イソプロピルスチレンオリゴマーが好ましく、4−メチルスチレンオリゴマー、4−エチルスチレンオリゴマー、4−イソプロピルスチレンオリゴマーがより好ましく、架橋密度を高めやすいという観点から4−メチルスチレンオリゴマー、4−イソプロピルスチレンオリゴマーが更に好ましい。
当該非極性架橋剤(X)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該非極性架橋剤(X)の使用量は、ブロック共重合体100質量部に対して、好ましくは1〜25質量部、より好ましくは1.3〜15質量部、さらに好ましくは2〜10質量部である。この量が1質量部以上であれば、非イオン伝導性重合体ブロック(B)が充分に架橋され、得られる高分子電解質膜は、耐熱水性及び開回路電圧値を高く保持し得ると共に、セル抵抗を低く保持することができ、一方25質量部以下であればイオン伝導性の低下によるセル抵抗の上昇を抑制することができる。
なお、当該非極性架橋剤(X)による、ブロック共重合体における非イオン伝導性重合体ブロック(B)の架橋方法については、後述する本発明の高分子電解質膜の作製において説明する。
(高分子電解質膜の作製)
次に、本発明の高分子電解質膜の作製について説明する。
<高分子電解質膜形成用塗工液の調製>
まず、高分子電解質膜形成用塗工液を調製する。
後述する溶媒中に、必須成分であるイオン伝導性重合体ブロック(A)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体及び非極性架橋剤(X)を加え、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤、例えば軟化剤、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤、リン系安定剤等の各種安定剤、無機充填剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、漂白剤、カーボン繊維等を各単独で又は2種以上組み合わせて溶解又は分散させて、高分子電解質膜形成用塗工液を調製する。
この高分子電解質膜形成用塗工液の固形分(不揮発分)濃度については、キャスト又はコート可能な粘度であればよく、特に制限はない。当該高分子電解質膜形成用塗工液の固形分中の前記ブロック共重合体の含有量は、得られる高分子電解質膜のイオン伝導性の観点から、高分子電解質膜形成用塗工液の固形分中に50質量%以上含まれていることが好ましく、70質量%以上含まれていることがより好ましく、90質量%以上含まれていることが更に好ましい。
《軟化剤》
必要に応じて用いられる軟化剤としては、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系のプロセスオイル等の石油系軟化剤、パラフィン、植物油系軟化剤、可塑剤等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
《安定剤》
必要に応じて用いられる安定剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロジナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のフェノール系安定剤;ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ系安定剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系安定剤が挙げられる。これら安定剤は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
《無機充填剤》
必要に応じて用いられる無機充填剤の具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ガラス繊維、マイカ、カオリン、酸化チタン、モンモリロナイト、アルミナが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
《溶媒》
溶媒としては、中に溶解又は分散させる前記ブロック共重合体の構造を破壊することなく、キャスト又はコートが可能な程度の粘度の溶液を調製することが可能なものであればよい。具体的には、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン等の直鎖脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、テトラヒドロフラン等のエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール、あるいはこれらの混合溶媒等が例示できる。溶媒中に溶解又は分散させる前記ブロック共重合体の構成、分子量、イオン交換容量等に応じて、上記に例示した溶媒の中から、単独で又は2種以上の組み合わせを適宜選択し、使用することができるが、特に、トルエンとイソブタノールの混合溶媒、キシレンとイソブタノールの混合溶媒、トルエンと2−プロパノールの混合溶媒、シクロヘキサンと2−プロパノールの混合溶媒、シクロヘキサンとイソブタノールの混合溶媒、テトラヒドロフラン溶媒、テトラヒドロフランとメタノールの混合溶媒が好ましく、特に、トルエンとイソブタノールの混合溶媒、キシレンとイソブタノールの混合溶媒、トルエンと2−プロパノールの混合溶媒が好ましい。
<高分子電解質膜の形成方法>
本発明の高分子電解質膜の形成方法については、通常の方法を採用できる。ただし、該高分子電解質膜が含むブロック共重合体における非イオン伝導性重合体ブロック(B)は、非極性架橋剤(X)で架橋されている必要があり、通常、前記ブロック共重合体を膜状に製膜した後に架橋を行うことになる。本発明の高分子電解質膜の形成は、例えば、前述のようにして調製した高分子電解質膜形成用塗工液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ガラス等の板状体にキャストするか、又はコーターやアプリケーター等を用いて塗布し、溶媒を除去して、未架橋の高分子電解質膜を製膜したのち、架橋処理することにより、本発明の高分子電解質膜を形成することができる。
ここで、溶媒除去の条件としては、本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体中のスルホン酸基等のイオン伝導性基が脱落してしまう温度以下で、溶媒を完全に除去できる条件であれば任意に選択できる。所望の物性を発現させるため、複数の温度を任意に組み合わせたり、通風条件下と真空条件下等を任意に組み合わせてもよい。具体的には、熱風乾燥機中にて60〜100℃で4分間以上乾燥させて溶媒を除去する方法;熱風乾燥機中にて100〜140℃で2〜4分間乾燥させて溶媒を除去する方法;25℃で1〜3時間、予備乾燥させた後、熱風乾燥機中にて80〜120℃で5〜10分間かけて乾燥する方法;25℃で1〜3時間、予備乾燥させた後、25〜40℃の雰囲気下、減圧条件下で1〜12時間乾燥させる方法等が挙げられる。
良好な強靭性を有する高分子電解質膜を調製しやすい観点から、熱風乾燥機中にて60〜100℃で4分間以上かけて乾燥させて溶媒を除去する方法;25℃で1〜3時間、予備乾燥させた後、熱風乾燥機中にて80〜120℃程度で5〜10分間かけて乾燥する方法;25℃で1〜3時間、予備乾燥させた後、25〜40℃の雰囲気下、1300Pa(約10mmHg)以下の減圧条件下で1〜12時間乾燥させる方法等が好適に用いられる。
また、本発明における架橋処理方法としては、前記のようにして形成された乾燥塗膜に、エネルギー線を照射する方法を採用することができる。
エネルギー線として電子線を用いる場合、電子線照射装置を使用し、加速電圧50〜250kV程度にて、線量100〜800kGy程度の電子線を照射することにより、ブロック共重合体における非イオン伝導性重合体ブロック(B)が、非極性架橋剤(X)により架橋される。
この架橋処理により形成された本発明の高分子電解質膜は、高いイオン伝導性を保持し、セル抵抗を低下させると共に、耐熱水性及び発電性能に優れるものになる。
なお、非イオン伝導性重合ブロック(B)が、非極性架橋剤(X)により架橋されていることは、後述の相溶性の評価試験、耐熱水性の向上、開回路電圧値の上昇及びセル抵抗値の低下、ゲル分率の上昇等により確認することができる。
このようにして形成された本発明の高分子電解質膜は、固体高分子型燃料電池用電解質膜として必要な性能、膜強度、ハンドリング性等の観点から、その膜厚が5〜500μm程度であることが好ましい。膜厚が5μm以上である場合には、膜の機械的強度やガス及びメタノール等の燃料の遮断性に優れる傾向がある。逆に、膜厚が500μm以下である場合には、膜の電気抵抗が大きくなりすぎず、充分なイオン伝導性が発現するため、固体高分子型燃料電池としたときの発電特性が高くなる傾向がある。該膜厚はより好ましくは10〜300μmである。
本発明の高分子電解質膜は、前記の高分子電解質膜形成用塗工液を基材に含浸させて得られたものであってもよい。基材としては、織布、不織布等の繊維状基材や、微細な貫通孔を有するフィルム状基材等を用いることができる。フィルム状基材としては燃料電池用細孔フィリング用膜等が挙げられる。強度の観点から繊維状基材が好ましい。該繊維状基材を構成する繊維としては、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維が挙げられ、強度上の観点から全芳香族系のポリエステル繊維やアラミド繊維がより好ましい。
前記高分子電解質膜形成用塗工液を基材に含浸させて、未架橋の高分子電解質膜を製膜する方法としては、例えばディップニップ法、コーターやアプリケーター等を用いて基材に積層塗布する方法等の一般的に採用されている方法で行うことができる。なお、架橋処理は製膜の後に行う。
本発明の高分子電解質膜は、複数の高分子電解質膜が積層された構造を持つ積層膜であってもよく、該積層膜を構成する高分子電解質膜の少なくとも1層が本発明の高分子電解質膜であればよい。3層以上の積層膜において、本発明の高分子電解質膜は最外層でも内層でもよい。
かかる積層膜の積層構造を形成する方法としては、例えば、コーターやアプリケーター等を用いて高分子電解質膜形成用塗工液をPETフィルム等に塗布した後、溶媒を除去して未架橋高分子電解質膜を製膜したのち、更に該高分子電解質膜上に同様に製膜を行い、未架橋高分子電解質膜を複数積層する方法が挙げられる。また、それぞれ作製した高分子電解質膜をラミネートしてもよい。架橋処理はかかる方法で積層構造を形成した後に行うことが望ましい。
[膜−電極接合体]
次に、本発明の高分子電解質膜を用いた膜−電極接合体について述べる。本発明の膜−電極接合体は、本発明の高分子電解質膜とガス拡散電極とを備え、該ガス拡散電極は、後述の触媒層とガス拡散層とで構成される。
膜−電極接合体の製造については特に制限はなく、公知の方法を利用することができ、例えば、イオン伝導性バインダーを含む触媒ペーストを印刷法やスプレー法により、後述するガス拡散層上に塗布し乾燥することで触媒層とガス拡散層との接合体を形成させ、ついで2対の接合体それぞれの触媒層を内側にして、高分子電解質膜の両側にホットプレス等により接合させる方法や、上記触媒ペーストを印刷法やスプレー法により高分子電解質膜の両側に塗布し、乾燥して触媒層を形成させ、それぞれの触媒層に、ホットプレス等によりガス拡散層を圧着させる方法がある。さらに別の製造方法として、イオン伝導性バインダーを含む溶液又は懸濁液を、高分子電解質膜の両面及び/又は2対のガス拡散電極の触媒層面に塗布し、高分子電解質膜と触媒層面とを貼り合わせ、熱圧着等により接合させる方法がある。この場合、該溶液又は懸濁液は高分子電解質膜及び触媒層面のいずれか一方に塗布してもよいし、両方に塗布してもよい。
さらに、膜−電極接合体の他の製造方法として、まず、上記触媒ペーストをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製等の基材フィルムに塗布し、乾燥して触媒層を形成させ、ついで、2対のこの基材フィルム上の触媒層を高分子電解質膜の両側に加熱圧着により転写し、基材フィルムを剥離することで高分子電解質膜と触媒層との接合体を得た後、それぞれの触媒層にホットプレスによりガス拡散層を圧着する方法がある。これらの方法においては、イオン伝導性基をNa等の金属との塩にした状態で行い、接合後の酸処理によってプロトン型に戻す処理を行ってもよい。
上記膜−電極接合体を構成するイオン伝導性バインダーとしては、例えば、「Nafion」(登録商標、デュポン社製)や「Gore−select」(登録商標、ゴア社製)等の既存のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーからなるイオン伝導性バインダー、スルホン化ポリエーテルスルホンやスルホン化ポリエーテルケトンからなるイオン伝導性バインダー、リン酸や硫酸を含浸したポリベンズイミダゾールからなるイオン伝導性バインダー等を用いることができる。また、本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体からイオン伝導性バインダーを作製してもよい。
なお、高分子電解質膜とガス拡散電極との密着性を一層高めるためには、高分子電解質膜に用いる高分子電解質と同一又は類似の材料から形成したイオン伝導性バインダーを用いることが好ましい。
上記膜−電極接合体の触媒層の構成材料について、導電材/触媒担体としては特に制限はなく、例えば炭素材料が挙げられる。炭素材料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
触媒金属としては、水素やメタノール等の燃料の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であればいずれのものでもよく、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、パラジウム等、又はそれらの合金、例えば白金−ルテニウム合金が挙げられる。中でも白金や白金合金が好ましく用いられる。
触媒金属の粒径は、通常1〜30nmである。これら触媒金属は、カーボン等の導電材/触媒担体に担持させた方が触媒使用量は少なくコスト的にも有利である。また、触媒層には、必要に応じて撥水剤が含まれていてもよい。撥水剤としては例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエーテルケトン等の各種熱可塑性樹脂が挙げられる。
上記膜−電極接合体のガス拡散層は、導電性及びガス透過性を備えた材料から構成され、かかる材料として例えばカーボンペーパーやカーボンクロス等の炭素繊維よりなる多孔性材料が挙げられる。また、かかるガス拡散層には、撥水性を向上させるために、撥水化処理を施してもよい。
[固体高分子型燃料電池]
上記のような方法で得られた膜−電極接合体を、極室分離と電極へのガス供給流路の役割を兼ねた導電性のセパレータ材の間に挿入することにより、固体高分子型燃料電池が得られる。本発明の膜−電極接合体は、燃料ガスとして水素を使用した純水素型、メタノールを改質して得られる水素を使用したメタノール改質型、天然ガスを改質して得られる水素を使用した天然ガス改質型、ガソリンを改質して得られる水素を使用したガソリン改質型、メタノールを直接使用する直接メタノール型等の固体高分子型燃料電池用膜−電極接合体として使用可能である。
本発明の高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池は、経済的で、環境に優しく、発電前後(熱水浸漬処理前後)の特性、特にイオン伝導度等の特性の変化が小さく、耐久性に優れ、長時間運転時に安定して駆動可能である。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により、何ら限定されるものではない。
(高分子電解質のイオン交換容量の測定方法)
試料を密閉できるガラス容器中に高分子電解質を秤量(秤量値a(g))し、過剰量の塩化ナトリウム飽和水溶液((300〜500)×a(ml))を添加して12時間攪拌した。フェノールフタレインを指示薬として、水中に発生した塩化水素を0.01規定のNaOH標準水溶液(力価f)にて滴定(滴定量b(ml))した。
イオン交換容量は次式により求めた。
イオン交換容量(meq/g)=(0.01×b×f)/a
(数平均分子量の測定方法)
数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により下記の条件で測定した。
装置:東ソー(株)製、商品名:HLC−8220GPC
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム:東ソー(株)製、商品名:TSK−GEL(TSKgel G3000HxL(76mml.D.×30cm)を1本、TSKgel Super Multipore HZ−M(46mml.D.×15cm)を2本の計3本を直列で接続)
カラム温度:40℃
検出器:RI
送液量:0.35ml/分
数平均分子量計算:標準ポリスチレン換算
[製造例1]
(スルホン化SEBSの製造)
塩化メチレン389ml中、0℃にて無水酢酸195mlと硫酸87.0mlとを混合し、スルホン化試薬を調製した。一方、SEBS((スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレン)ブロック共重合体、(株)クラレ製、商品名:セプトン8007)100gを、5L攪拌機付きのガラス製反応容器に入れ、真空−窒素導入を3回繰り返した後、窒素を導入した状態で、塩化メチレン1000mlを加え、常温にて4時間攪拌して溶解させた後、前記スルホン化試薬610mlを5分間かけて滴下した。滴下終了後、常温にて48時間攪拌後、攪拌下で蒸留水720mlを滴下して、反応を停止するとともに固形分を凝固析出させた。
塩化メチレンを常圧留去にて除去した後、濾過し、得られた固形分をビーカーに移し、蒸留水を1.0L添加して攪拌下で洗浄を行った後、濾過により固形分を回収した。かかる洗浄及び濾過を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返した後、回収した固形分を1300Pa(約10mmHg)、30℃にて24時間乾燥して、本発明の高分子電解質膜に用いるブロック共重合体であるスルホン化SEBSを得た。得られたスルホン化SEBSのスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から100mol%、イオン交換容量は滴定の結果、2.34meq/gであった。
[製造例2]
(ポリスチレン、水添ポリブタジエン及びポリ(4−tert−ブチルスチレン)からなるブロック共重合体の製造)
1400mLオートクレーブに、脱水シクロヘキサン593ml、テトラヒドロフラン1.8ml、及びsec−ブチルリチウム(1.00mol/L−シクロヘキサン溶液)2.92mlを仕込んだ後、4−tert−ブチルスチレン10.0ml、スチレン29.0ml、4−tert−ブチルスチレン10.0ml、ブタジエン60.7ml、4−tert−ブチルスチレン10.0ml、スチレン29.0ml、及び4−tert−ブチルスチレン10.0mlを逐次添加し、40℃で重合させ、ブロック共重合体;ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリスチレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリブタジエン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリスチレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)(以下、TSTBTST−1と略記する)を得た。得られたTSTBTST−1の数平均分子量は119,800であり、1H−NMR測定から求めたポリブタジエン部位の1,2−結合量は40.1%、スチレン単位の含有量は42.1質量%、4−tert−ブチルスチレン単位の含有量は27.9質量%であった。
得られたTSTBTST−1のシクロヘキサン溶液を調製し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のチーグラー系水素添加触媒を用いて、0.5〜1.0MPaの水素圧下において70℃で18時間水素添加反応を行い、ポリスチレン、水添ポリブタジエン及びポリ(4−tert−ブチルスチレン)からなるブロック共重合体;ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリスチレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−水添ポリブタジエン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリスチレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)(以下、TSTDTST−1と略記する)を得た。得られたTSTDTST−1の残存二重結合量を1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、検出限界以下であった。
(スルホン化TSTDTST−1の製造)
塩化メチレン346ml中、0℃にて無水酢酸173mlと硫酸77.4mlを混合してスルホン化試薬を調製した。一方、80gの前記TSTDTST−1を、5L攪拌機付きのガラス製反応容器に入れ、真空−窒素導入を3回繰り返した後、窒素を導入した状態で、塩化メチレン800mlを加え、常温にて4時間攪拌して溶解させた後、前記スルホン化試薬543mlを5分間かけて滴下した。滴下終了後、常温にて48時間攪拌後、攪拌下で蒸留水720mlを滴下して、反応を停止するとともに固形分を凝固析出させた。
塩化メチレンを常圧留去にて除去した後、濾過し、得られた固形分をビーカーに移し、蒸留水1.0Lを添加して攪拌下で洗浄を行った後、濾過により固形分を回収した。かかる洗浄及び濾過を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返した後、回収した固形分を1300Pa(約10mmHg)、30℃にて24時間乾燥して、本発明の高分子電解質膜に用いるブロック共重合体であるスルホン化TSTDTST−1を得た。得られたスルホン化TSTDTST−1のスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から100mol%、滴定の結果イオン交換容量は3.03meq/gであった。
[製造例3]
(ポリスチレン、水添ポリイソプレン及びポリ(4−tert−ブチルスチレン)からなるブロック共重合体の製造)
1400mLオートクレーブに、脱水シクロヘキサン576ml及びsec−ブチルリチウム(1.00mol/L−シクロヘキサン溶液)2.4mlを仕込んだ後、4−tert−ブチルスチレン13.6ml、スチレン39.1ml、4−tert−ブチルスチレン13.6ml、イソプレン74.6ml、4−tert−ブチルスチレン13.6ml、スチレン39.1ml及び4−tert−ブチルスチレン13.6mlを逐次添加し、60℃で逐次重合させることにより、ブロック共重合体;ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリスチレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリイソプレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリスチレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)(以下、「TSTITST」と略記する)を得た。得られたTSTITSTの数平均分子量は54,800であり、1H−NMR測定から求めたポリイソプレン部位の1,4−結合量は94.0%、スチレン単位の含有量は41.4質量%、4−tert−ブチルスチレン単位の含有量は29.2質量%であった。
得られたブロック共重合体TSTITSTのシクロヘキサン溶液を調製し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のチーグラー系水素添加触媒を用いて、0.5〜1.0MPaの水素圧下において70℃で18時間水素添加反応を行い、ポリスチレン、水添ポリイソプレン及びポリ(4−tert−ブチルスチレン)からなるブロック共重合体;ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリスチレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−水添ポリイソプレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリスチレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)(以下、「TSTETST」と略記する)を得た。得られたTSTETSTの残存二重結合量を1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、検出限界以下であった。
(スルホン化TSTETSTの製造)
塩化メチレン371ml中、0℃にて無水酢酸186mlと硫酸83.0mlとを混合してスルホン化試薬を調製した。一方、前記TSTETST70gを、5L攪拌機付きのガラス製反応容器に入れ、真空−窒素導入を3回繰り返した後、窒素を導入した状態で、塩化メチレン1000mlを加え、常温にて4時間攪拌して溶解させた後、前記スルホン化試薬582mlを5分間かけて滴下した。滴下終了後、常温にて48時間攪拌後、攪拌下で蒸留水720mlを滴下して、反応を停止するとともに固形分を凝固析出させた。
塩化メチレンを常圧留去にて除去した後、濾過し、得られた固形分をビーカーに移し、蒸留水を1.0L添加して、攪拌下で洗浄を行った後、濾過により固形分を回収した。かかる洗浄及び濾過を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返した後、回収した固形分を1300Pa(約10mmHg)、30℃にて24時間乾燥して、本発明の高分子電解質膜に用いるブロック共重合体であるスルホン化TSTETSTを得た。得られたスルホン化TSTETSTのスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から100mol%、イオン交換容量は滴定の結果、2.99meq/gであった。
[製造例4]
(ポリスチレン、水添ポリブタジエン及びポリ(4−tert−ブチルスチレン)からなるブロック共重合体の製造)
1400mLオートクレーブに、脱水シクロヘキサン593ml、テトラヒドロフラン1.8ml、及びsec−ブチルリチウム(1.00mol/L−シクロヘキサン溶液)4.0mlを仕込んだ後、4−tert−ブチルスチレン13.7ml、スチレン29.1ml、4−tert−ブチルスチレン13.7ml、ブタジエン40.5ml、4−tert−ブチルスチレン13.7ml、スチレン29.1ml及び4−tert−ブチルスチレン13.7mlを逐次添加し、40℃で逐次重合させることにより、ポリスチレン、ポリブタジエン及びポリ(4−tert−ブチルスチレン)からなるブロック共重合体;ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリスチレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリブタジエン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリスチレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)(以下、「TSTBTST−2」と略記する)を得た。得られたTSTBTST−2の数平均分子量は110,500であり、1H−NMR測定から求めたポリブタジエン部位の1,2−結合量は41.0%、スチレン単位の含有量は42.0質量%、4−tert−ブチルスチレン単位の含有量は38.0質量%であった。
得られたTSTBTST−2のシクロヘキサン溶液を調製し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のチーグラー系水素添加触媒を用いて、0.5〜1.0MPaの水素圧下において70℃で18時間水素添加反応を行い、ポリスチレン、水添ポリブタジエン及びポリ(4−tert−ブチルスチレン)からなるブロック共重合体;TSTDTST−2を得た。得られたTSTDTST−2の残存二重結合量を1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、検出限界以下であった。
(スルホン化TSTDTST−2の製造)
塩化メチレン382ml中、0℃にて無水酢酸191mlと硫酸85.3mlを混合してスルホン化試薬を調製した。一方、70gの前記TSTDTST−2を、5L攪拌機付きのガラス製反応容器に入れ、真空−窒素導入を3回繰り返した後、窒素を導入した状態で、塩化メチレン1000mlを加え、常温にて4時間攪拌して溶解させた後、前記スルホン化試薬598mlを5分間かけて滴下した。滴下終了後、常温にて48時間攪拌後、攪拌下で蒸留水720mlを滴下して、反応を停止するとともに固形分を凝固析出させた。
塩化メチレンを常圧留去にて除去した後、濾過し、得られた固形分をビーカーに移し、蒸留水を1.0L添加して攪拌下で洗浄を行った後、濾過により固形分を回収した。かかる洗浄及び濾過を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返した後、回収した固形分を1300Pa(約10mmHg)、30℃にて24時間乾燥して、本発明の高分子電解質膜に用いるブロック共重合体であるスルホン化TSTDTST−2を得た。得られたスルホン化TSTDTST−2のスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から100mol%、イオン交換容量は滴定の結果、3.05meq/gであった。
[製造例5]
(スチレン、ブタジエンからなるランダム共重合体の製造)
1400mLオートクレーブに、脱水シクロヘキサン593ml、テトラヒドロフラン1.03ml及びsec−ブチルリチウム(1.00mol/L−シクロヘキサン溶液)2.0mlを仕込んだ後、スチレン33.0mlとブタジエン113mlからなる混合モノマーを添加し、40℃で重合させることにより、スチレン−r−ブタジエンのランダム共重合体(以下「SBR」と略記する)を得た。得られたSBRの数平均分子量は80,500であり、1H−NMR測定から求めたポリブタジエン部位の1,2−結合量は41.0%、スチレン単位の含有量は30.0質量%であった。
得られたSBRのシクロヘキサン溶液を調製し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のチーグラー系水素添加触媒を用いて、0.5〜1.0MPaの水素圧下において70℃で18時間水素添加反応を行い、スチレン−r−水添ブタジエンのランダム共重合体(以下「SEBR」と略記する)を得た。得られたSEBRの残存二重結合量を1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、検出限界以下であった。
(スルホン化SEBRの製造)
塩化メチレン195ml中、0℃にて無水酢酸98mlと硫酸43.6mlを混合してスルホン化試薬を調製した。一方、前記SEBR50gを、5L攪拌機付きのガラス製反応容器に入れ、真空−窒素導入を3回繰り返した後、窒素を導入した状態で、塩化メチレン700mlを加え、常温にて4時間攪拌して溶解させた後、前記スルホン化試薬305mlを5分間かけて滴下した。常温にて48時間攪拌後、攪拌下で蒸留水720mlを滴下して、反応を停止するとともに固形分を凝固析出させた。
塩化メチレンを常圧留去にて除去した後、濾過し、得られた固形分をビーカーに移し、蒸留水を1.0L添加して攪拌下で洗浄を行った後、濾過により固形分を回収した。かかる洗浄及び濾過を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返した後、回収した固形分を1300Pa(約10mmHg)、30℃にて24時間乾燥して、高分子電解質であるスルホン化SEBRを得た。得られたスルホン化SEBRのスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から99.8mol%、イオン交換容量は滴定の結果、2.30meq/gであった。
[製造例6]
(イソプロピルスチレンオリゴマーの製造)
200mL三口フラスコに、脱水シクロヘキサン40ml、及びsec−ブチルリチウム(1.10mol/L−シクロヘキサン溶液)6.40mlを仕込んだ後、イソプロピルスチレン8.88mlを添加し、室温で5時間重合させ、イソプロピルスチレンオリゴマーを得た。得られたイソプロピルスチレンオリゴマーの数平均分子量は905であった。
[製造例7]
(ポリ(p−メチルスチレン)と水添ポリブタジエンとからなるブロック共重合体の製造)
乾燥後、窒素置換した内容積1400mlのオートクレーブに、脱水したシクロヘキサン710ml、テトラヒドロフラン1.95ml及びsec−ブチルリチウム(0.7mol/Lシクロヘキサン溶液)1.99mlを添加した後、40℃にて撹拌しつつ、4−メチルスチレン21.6ml、ブタジエン140ml、及び4−メチルスチレン21.6mlを順次添加して重合し、ポリ(4−メチルスチレン)−b−ポリブタジエン−b−ポリ(4−メチルスチレン)(以下、PBPと略記する)を合成した。
得られたPBPの数平均分子量は78,000であり、1H−NMR(400MHz)から求めたポリブタジエン部位の1,4−結合量は58.5%、4−メチルスチレン単位の含有量は30.0質量%であった。
上記で得られたPBPのシクロヘキサン溶液を調製して、窒素置換した耐圧容器に入れ、Ni/Al系のチーグラー系触媒を用いて、水素圧0.5〜1.0MPa、70℃で18時間水素添加反応を行い、ポリ(4−メチルスチレン)からなる重合体ブロック、及び水添ポリブタジエンからなる重合体ブロックからなるブロック共重合体;ポリ(4−メチルスチレン)−b−水添ポリブタジエン−b−ポリ(4−メチルスチレン)(以下PDPと略記する)を得た。
得られたPDPのポリブタジエンに由来する残存二重結合量を1H−NMR(400MHz)により算出を試みたが、検出限界以下であった。
(スルホン化PDPの製造)
塩化メチレン35.1ml中、0℃にて無水酢酸23.4mlと硫酸10.5mlを混合してスルホン化試薬を調製した。一方、前記PDP50gを、3L攪拌機付きのガラス製反応容器に入れ、真空−窒素導入を3回繰り返した後、窒素を導入した状態で、塩化メチレン612mlを加え、常温にて4時間攪拌して溶解させた後、前記スルホン化試薬69.1mlを5分間かけて滴下した。常温にて7時間攪拌後、攪拌下で蒸留水500mlを滴下して、反応を停止するとともに固形分を凝固析出させた。塩化メチレンを常圧留去にて除去した後、濾過し、得られた固形分をビーカーに移し、蒸留水を1.0L添加して攪拌下で洗浄を行った後、濾過により固形分を回収した。かかる洗浄及び濾過を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返した後、回収した固形分を1300Pa(約10mmHg)、30℃にて24時間乾燥して、高分子電解質であるスルホン化PDPを得た。得られたスルホン化PDPの4−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から65.2mol%、イオン交換容量は滴定の結果、1.47meq/gであった。
[実施例1]
(高分子電解質膜の作製)
製造例1で得られたスルホン化SEBS(イオン交換容量2.34meq/g)の16質量%のトルエン/イソブタノール(質量比70/30)溶液を調製した後、1,2−ポリブタジエン(日本曹達(株)製、商品名:PB−1000;数平均分子量1,000、重合度19)の40質量%トルエン溶液を、スルホン化SEBS/1,2−ポリブタジエンの質量比が100/5になるように添加し、塗工溶液を調製した。次いで、該塗工溶液を、離型処理済みPETフィルム(東洋紡(株)製、商品名:K1504)上に約350μmの厚さでコートし、熱風乾燥機にて、100℃で4分間乾燥させることで、厚さ30μmの高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜を、エレクトロカーテン型電子線照射装置(岩崎電気(株)製、商品名:CB250/30/20mA)を用いて、加速電圧150kV、ビーム電流8.6mA、線量300kGyの電子線照射を施すことで本発明の高分子電解質膜を作製した。
[実施例2]
(高分子電解質膜の作製)
製造例2で得られたスルホン化TSTDTST−1(イオン交換容量3.03meq/g)の16質量%のキシレン/イソブタノール(質量比45/55)溶液を調製した後、1,2−ポリブタジエン(日本曹達(株)製、商品名:PB−1000)の40質量%キシレン溶液を、スルホン化TSTDTST/1,2−ポリブタジエンの質量比が100/2になるように添加し、塗工溶液を調製した。次いで、該塗工溶液を、離型処理済みPETフィルム(三菱樹脂(株)製、商品名:MRV)上に約350μmの厚さでコートし、熱風乾燥機にて、100℃で6分間乾燥させることで、厚さ30μmの高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜を、エレクトロカーテン型電子線照射装置(岩崎電気(株)製、商品名:CB250/30/20mA)を用いて、加速電圧150kV、ビーム電流8.6mA、線量300kGyの電子線照射を施すことで本発明の高分子電解質膜を作製した。
[実施例3]
(高分子電解質膜の作製)
実施例2におけるスルホン化TSTDTST−1/1,2−ポリブタジエンの質量比を100/5に変更した以外は、実施例2と同様の手法により高分子電解質膜を作製した。
[実施例4]
(高分子電解質膜の作製)
製造例3で得られたスルホン化TSTETST(イオン交換容量2.99meq/g)の16質量%のトルエン/イソブタノール(質量比80/20)溶液を調製した後、1,2−ポリブタジエン(日本曹達(株)製、商品名:PB−1000)の40質量%トルエン溶液を、スルホン化TSTETST/1,2−ポリブタジエンの質量比が100/2になるように添加し、塗工溶液を調製した。次いで、該塗工溶液を、離型処理済みPETフィルム(三菱樹脂(株)製、商品名:MRV)上に約350μmの厚さでコートし、熱風乾燥機にて、100℃で4分間乾燥させることで、厚さ30μmの高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜を、エレクトロカーテン型電子線照射装置(岩崎電気(株)製、商品名:CB250/30/20mA)を用いて、加速電圧150kV、ビーム電流8.6mA、線量300kGyの電子線照射を施すことで本発明の高分子電解質膜を作製した。
[実施例5]
(高分子電解質膜の作製)
製造例4で得られたスルホン化TSTDTST−2(イオン交換容量3.05meq/g)の16質量%のキシレン/イソブタノール(質量比45/55)溶液を調製した後、1,2−ポリブタジエン(日本曹達(株)製、商品名:PB−1000)の40質量%キシレン溶液を、スルホン化TSTDTST−2/1,2−ポリブタジエンの質量比が100/2になるように添加し、塗工溶液を調製した。次いで、該塗工溶液を、離型処理済みPETフィルム(三菱樹脂(株)製、商品名:MRV)上に約350μmの厚さでコートし、熱風乾燥機にて、100℃で6分間乾燥させることで、厚さ30μmの高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜を、エレクトロカーテン型電子線照射装置(岩崎電気(株)製、商品名:CB250/30/20mA)を用いて、加速電圧150kV、ビーム電流8.6mA、線量300kGyの電子線照射を施すことで本発明の高分子電解質膜を作製した。
[実施例6]
(高分子電解質膜の作製)
製造例2で得られたスルホン化TSTDTST−1(イオン交換容量3.03meq/g)の16質量%のキシレン/イソブタノール(質量比45/55)溶液を調製した後、製造例6で得られたイソプロピルスチレンオリゴマー(数平均分子量905)の40質量%キシレン溶液を、スルホン化TSTDTST−1/イソプロピルスチレンオリゴマーの質量比が100/5になるように添加し、塗工溶液を調製した。次いで、該塗工溶液を、離型処理済みPETフィルム(三菱樹脂(株)製、商品名:MRV)上に約350μmの厚さでコートし、熱風乾燥機にて、100℃で6分間乾燥させることで、厚さ30μmの高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜を、エレクトロカーテン型電子線照射装置(岩崎電気(株)製、商品名:CB250/30/20mA)を用いて、加速電圧150kV、ビーム電流8.6mA、線量300kGyの電子線照射を施すことで本発明の高分子電解質膜を作製した。
[比較例1]
(高分子電解質膜の作製)
製造例5で得られたスルホン化SEBR(イオン交換容量2.30meq/g)の16質量%のトルエン/イソブタノール(質量比70/30)溶液を調製した後、1,2−ポリブタジエン(日本曹達(株)製、商品名:PB−1000)の40質量%トルエン溶液を、スルホン化SEBR/1,2−ポリブタジエンの質量比が100/5になるように添加し、塗工溶液を調製した。次いで、該塗工溶液を、離型処理済みPETフィルム(東洋紡(株)製、商品名:K1504)上に約350μmの厚さでコートし、熱風乾燥機にて、100℃で4分間乾燥させることで、厚さ30μmの高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜は、スルホン化SEBRと1,2−ポリブタジエンの相溶性が悪く、不均一な膜であった。得られた電解質膜を、エレクトロカーテン型電子線照射装置(岩崎電気(株)製、商品名:CB250/30/20mA)を用いて、加速電圧150kV、ビーム電流8.6mA、線量300kGyの電子線照射を施すことで架橋された高分子電解質膜を作製した。
[比較例2]
(高分子電解質膜の作製)
実施例2におけるスルホン化TSTDTST−1/1,2−ポリブタジエンの質量比を100/0に変更した以外は、実施例2と同様の手法により高分子電解質膜を作製した。
[比較例3]
(高分子電解質膜の作製)
製造例7で得られたスルホン化PDP(イオン交換容量1.47meq/g)の16質量%のトルエン/イソブタノール(質量比70/30)溶液を調製し、塗工溶液とした。次いで、該塗工溶液を、離型処理済みPETフィルム(東洋紡(株)製、商品名:K1504)上に約350μmの厚さでコートし、室温で十分乾燥させたのち、十分真空乾燥させることで、厚さ30μmの膜を得た。得られた膜を130℃、1MPaの圧力下で5分間熱プレスすることで、熱架橋された高分子電解質膜を作製した。
(実施例及び比較例の高分子膜の性能試験及びその結果)
下記の測定・評価方法によって、各実施例、比較例で作製した高分子電解質膜の性能を評価した。結果を表1に示す。
(水素を用いた固体高分子型燃料電池用単セルの発電試験)
得られた高分子電解質膜を用いて作製した固体高分子型燃料電池用単セルについて、出力性能を評価した。尚、固体高分子型燃料電池用単セルは以下の手順で作製した。Pt−Ru合金触媒担持カーボンに、Nafionの10質量%水分散液を、カーボンとNafionとの質量比が1:1になるように添加混合し、次いでn−プロピルアルコールを、水/n−プロピルアルコールの質量比が1/1になるまで添加混合し、均一に分散されたペーストを調製した。このペーストをスプレー法にて、カーボンペーパーの片面に均一に塗布した。130℃で30分乾燥させ、アノード用の電極を作製した。また、Pt触媒担持カーボンに、Nafionの10質量%溶液を、カーボンとNafionとの質量比が1:0.75になるように添加混合し、ついでn−プロピルアルコールを、水/n−プロピルアルコールの質量比が1/1になるまで添加混合し、均一に分散されたペーストを調製し、アノード側と同様の方法にてカソード用電極を作製した。その後、実施例、比較例で作製した高分子電解質膜を、前記2種類の電極でそれぞれ膜と触媒面とが向かい合うように挟み、その外側を2枚の耐熱性フィルム及び2枚のステンレス板で順に挟み、ホットプレス(115℃、2MPa、8分)により膜−電極接合体を作製した。ついで作製した膜−電極接合体を、2枚のガス供給流路の役割を兼ねた導電性のセパレータで挟み、さらにその外側を2枚の集電板及び2枚の締付板で挟み固体高分子型燃料電池用の評価セル(電極面積は25cm2)を作製した。
発電試験においては、燃料として水素を用い、酸化剤として空気を用いた。水素の供給条件は、ストイキ1.5、加湿を30%R.H.とした。空気の供給条件は、ストイキ2.0、加湿を30%R.H.とした。セル温度を80℃に設定して、実施例、比較例で作製した評価セルをセットした後、100%R.H.に加湿した水素及び酸素を用いて、発電試験を6回繰り返し、同じ電圧−電流曲線を示すことを確認した後、セル温度を室温に戻し、アノード極、カソード極の双方に乾燥窒素を1000ml/分の条件にて12時間供給させて、一旦乾燥させた。その後、再度セル温度を80℃に設定して、上記条件にて発電試験を実施し、開回路電圧(OCV)値と、電流密度750mA/cm2におけるセル抵抗を評価した。なお、開回路電圧値が高く、セル抵抗が低い方が、発電性能が高いことを意味する。
(耐熱水性試験1:不溶分残存率)
2cm×4cmに切り抜いた高分子電解質膜の試験片(質量をm1とする)を30ccのスクリュー管ビンに入れ、蒸留水を25cc添加し、スクリュー栓をした後、SUS製の金属容器内に収納した後、90℃の恒温槽内にて、72時間、及び270時間保管した後、スクリュー管内の内容物を、ろ紙(ADVANTEC製、5A、125mm)を通してろ過した。さらにスクリュー管内に蒸留水50ccを加え、スクリュー管内に固形分が残存しないように、ろ過を繰り返した。回収した固形分を乾燥したのち測定した質量(m2とする)から、不溶分残存率;m2/m1×100(%)を算出した。不溶分残存率が高いほど、耐熱水性が高いと判断した。
(耐熱水性試験2:目視試験)
2cm×4cmに切り抜いた高分子電解質膜の試験片を、90℃の熱水中に270時間浸漬した後の高分子電解質膜の表面の状態を目視で確認した。
(相溶性の評価)
本発明の高分子電解質膜は、非極性架橋剤(X)がブロック共重合体の非イオン伝導性重合体ブロック(B)に相溶することによって、該非イオン伝導性重合体ブロック(B)が非極性架橋剤(X)で架橋されていると推測している。実施例で用いたブロック共重合体の各重合体ブロックと非極性架橋剤(X)との相溶性に関しては、直接評価することが困難なため、製造例1〜4で製造したブロック共重合体重合体の非イオン伝導性重合体ブロック(B)と同じ繰り返し単位を含む重合体と、用いた非極性架橋剤(X)との相溶性を評価することで判断した。
相溶性の判断は、広域動的粘弾性測定装置(レオロジ社製、DVE−V4FTレオスペクトラー)を使用して、引張りモード(周波数11Hz)で、−80℃から250℃まで、昇温速度を毎分3℃として、損失正接tanδを測定し、損失正接のピーク温度Tα(℃)の変化、示差走査熱量計(メトラートレド社製、DSC822)を使用して、−80℃から250℃まで昇温速度を毎分10℃として測定し、相溶性を測定する対象となる非イオン伝導性重合体ブロックのガラス転移温度の変化を測定した。
水添ポリブタジエンブロック及び水添ポリイソプレンブロック並びに非極性架橋剤(X)として用いた1,2−ポリブタジエン(日本曹達(株)製、商品名:PB−1000)の相溶性は、ポリスチレン−水添ポリブタジエンブロック−ポリスチレン及びポリスチレン−水添ポリイソプレンブロック−ポリスチレンのトリブロックポリマーを評価することで判断した。
また、ポリtert−ブチルスチレンブロック並びに非極性架橋剤(X)として用いた1,2−ポリブタジエン(日本曹達(株)製、商品名:PB−1000)、及びイソプロピルスチレンオリゴマーの相溶性は、ポリ(4−tert−ブチルスチレン)を評価することで判断した。
上記トリブロックポリマーの評価については、トリブロックポリマーと実施例で用いた非極性架橋剤(X)である1,2−ポリブタジエン(日本曹達(株)製、商品名:PB−1000)の質量比を100/20として、実施例に記載の製膜方法で作製したフィルムを用いて評価した。この結果、水添ポリブタジエンブロックについては該ブロックのガラス転移温度と非極性架橋剤(X)とのガラス転移温度を示すピークが一つになり相溶していると判断できた。以上のことから実施例1,2,3,5は非極性架橋剤(X)がブロック共重合体の非イオン伝導性重合体ブロック(B)に相溶していると推測できる。
また、ポリ(4−tert−ブチルスチレン)の評価については、ポリ(4−tert−ブチルスチレン)と実施例で用いた非極性架橋剤(X)である1,2−ポリブタジエン(日本曹達(株)製、商品名:PB−1000)の質量比を100/20として、実施例に記載の製膜方法で作製したフィルムを用いて評価した。この結果、ポリ(4−tert−ブチルスチレン)と非極性架橋剤(X)とのガラス転移温度を示すピークが一つになり相溶していると判断できた。
同様に実施例で用いた非極性架橋剤(X)であるイソプロピルスチレンオリゴマーについても、ポリ(4−tert−ブチルスチレン)と非極性架橋剤(X)とのガラス転移温度を示すピークが一つになり相溶していると判断できた。
以上のことから実施例4、6についても非極性架橋剤(X)がブロック共重合体の非イオン伝導性重合体ブロック(B)に相溶していると推測できる。
(ゲル分率の測定)
架橋度の相対比較として、高分子電解質膜のゲル分率を測定した。
4cm×8cmに切り抜いた高分子電解質膜の試験片をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み該電解質膜のみの重さを精密天秤にて秤量した。この際の重さをM1とする。ソックスレー抽出器を用いてテトラヒドロフラン溶媒100mlに該高分子電解質膜を浸漬させ、還流を行い8時間処理した。その後該高分子電解質膜を取り出し、テトラヒドロフラン溶液を濃縮した後、残留物をさらに1300Pa(約10mmHg)、80℃にて12時間乾燥させた。乾燥後の固形分残渣のみの重さを精密天秤にて秤量した。この際の重さをM2とする。ゲル分率は、((M1−M2)/M1)×100(%)とした。
このゲル分率が高いほど架橋度が高いことを意味する。
Figure 2012043400
実施例に示すとおり、本発明の高分子電解質膜は、耐熱水性、開回路電圧値を高く保ちつつ、セル抵抗を低く保つことができる。一方、比較例1の高分子電解質膜は、耐熱水性が低い。これは高分子電解質であるスルホン化SEBRと非極性架橋剤(X)との相溶性が悪いため、膜全体を均一に架橋することが困難なためと推定される。また、比較例1の高分子電解質膜は、電流密度を高めると通電できなくなり、電流密度750mA/cm2でのセル抵抗を測定できなかったことから、発電性能は実用に耐えないと判断した。
比較例3の高分子電解質膜は、p−メチルスチレン部位が熱架橋していると考えているが、非極性架橋剤(X)を使用していないため、耐熱水性が低いことがわかる。
また、実施例2と比較例2から、非極性架橋剤(X)を導入することで、耐熱水性、開回路電圧値を高くできることがわかる。
また、ゲル分率から、比較例においては、ゲル成分が少なく、高分子電解質において十分に架橋が形成されていないのに対し、実施例1〜6においては、ゲル成分が99%より多く、高分子電解質膜において十分に架橋が形成されている。このことが、本発明の高分子電解質膜の耐熱水性の高さの要因と考えられる。
本発明の高分子電解質膜は、高いイオン伝導性を保持し、セル抵抗を低下させると共に、耐熱水性及び発電性能に優れており、当該高分子電解質膜とガス拡散電極とを備える膜−電極接合体及び当該高分子電解質膜を備える固体高分子型燃料電池を提供することができる。

Claims (7)

  1. イオン伝導性重合体ブロック(A)と非イオン伝導性重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体を含む高分子電解質膜であって、該非イオン伝導性重合体ブロック(B)が非極性架橋剤(X)で架橋されてなることを特徴とする高分子電解質膜。
  2. 非極性架橋剤(X)が、不飽和炭化水素化合物、芳香環上にアルキル基を有する芳香族ビニル化合物、又はその重合体である、請求項1に記載の高分子電解質膜。
  3. 非極性架橋剤(X)が、以下の一般式(1)及び(2)で表される化合物の少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の高分子電解質膜。
    Figure 2012043400
    (式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。pは5〜65の数を表す。)
    Figure 2012043400
    (式中、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であり、R4及びR5はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。qは3〜30の数を表す。)
  4. 前記非イオン伝導性重合体ブロック(B)が、不飽和炭化水素化合物及び/又は芳香族ビニル化合物由来の構成単位を繰り返し単位として有する重合体ブロックである、請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質膜。
  5. イオン伝導性重合体ブロック(A)を含む相(a)と、非イオン伝導性重合体ブロック(B)と非極性架橋剤(X)を含む相(b)とからなる高分子電解質膜であって、少なくとも前記非イオン伝導性重合体ブロック(B)が前記非極性架橋剤(X)で架橋されてなることを特徴とする高分子電解質膜。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質膜とガス拡散電極とを備える膜−電極接合体。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質膜を備える固体高分子型燃料電池。
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