JP2014032811A - 高分子電解質膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的強度および耐水性に優れる上、経済的にも有利な高分子電解質膜を提供する。
【解決手段】プロトン伝導性基および芳香環を有する樹脂成分(a)を含むマトリックス中に、プロトン伝導性基を有さない脂肪族炭化水素からなる樹脂成分(b)を含む疎水粒子が分散された構造を有し、溶剤膨潤法で得られる架橋密度が0.02〜1.00mmol/Lの範囲である高分子電解質膜である。
【選択図】なし

Description

本発明は、高分子電解質膜に関する。さらに詳しくは、機械的強度および耐水性に優れ、経済的にも有利であって、固体高分子型燃料電池、キャパシタ、アクチュエータ、センサーなどの電気化学素子用;イオン交換膜、逆浸透膜、水−エタノール分離膜、水蒸気透過膜、窒素−酸素分離膜、二酸化炭素吸収膜、パーベーパレーション膜などの分離用;などの幅広い用途に用いることができる高分子電解質膜およびその製造方法に関する。
近年、高分子電解質膜は、幅広い用途への利用が検討されている。例えば、フッ素系の高分子電解質膜、特にスルホン酸基を有するパーフルオロカーボンスルホン酸(例えば、デュポン社製「ナフィオン(登録商標)」)からなる高分子電解質膜は、プロトン伝導性などが優れることから、固体高分子型燃料電池用に利用できることが知られている。しかしながら、フッ素系の高分子電解質膜は、製造において特殊な設備を必要とすること、廃棄処理において分解して環境破壊の原因となる含フッ素ガスを発生する懸念があること、などの課題がある。
そこで近年、製造設備の観点から有利で、廃棄処理における含フッ素ガスの発生もない炭化水素系の高分子電解質膜が提案されている。
炭化水素系の高分子電解質膜として、ポリエーテルスルホンやポリエーテルエーテルケトン等にスルホン酸基などのプロトン伝導性基を導入した炭化水素系材料からなる高分子電解質膜が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、かかる高分子電解質膜は、プロトン伝導性を高めるべくイオン交換容量を高めると、使用中に加湿することで膨潤、変形しやすい。また、機械的強度に乏しいため、設置中や使用中に破損しやすい。
膨潤、変形を抑制するため、プロトン伝導性基が導入された重合体ブロックとプロトン伝導性基が導入されていない重合体ブロックを有する変性ポリエーテルスルホンからなる高分子電解質膜も提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、かかる高分子電解質膜も機械的強度に乏しく、設置中や使用中に破損しやすい傾向がある。
一方、別の炭化水素系の高分子電解質膜として、ポリビニルアルコールと、プロトン伝導性基を有する水溶性ポリマーとを架橋剤を用いて架橋してなる高分子電解質膜が提案されている(特許文献3、4参照)。しかしながら、かかる高分子電解質膜を構成するポリビニルアルコールおよび水溶性ポリマーは、ともに親水性が高いため、耐水性、具体的には水(特に熱水)による膨潤が問題となる。また、かかる高分子電解質膜も機械的強度に乏しく、設置中や使用中に破損しやすい傾向がある。
さらに、別の炭化水素系の高分子電解質膜として、プロトン伝導性基を有する樹脂成分を含むマトリックス中に、イオン伝導性基を有さない平均粒径20nm〜1μmのゴム微粒子が均一に分散された高分子電解質膜が知られている。また、該高分子電解質膜中のプロトン伝導性基を有する樹脂成分を架橋することで機械的強度を向上できることも知られている(特許文献5参照)。かかる高分子電解質膜は、ゴム微粒子によって柔軟性が高められるので、設置中や使用中の破損を抑制できる。しかしながら、マトリックスを形成するプロトン伝導性基を有する樹脂成分の親水性が高いため、耐水性になお改良の余地がある。
特開平10−45913号公報 特開平13−250567号公報 特開2009−252721号公報 特開2006−156055号公報 国際公開第2010/095562号
以上の事情を鑑み、本発明は機械的強度および耐水性に優れる炭化水素系の高分子電解質膜の提供を目的とする。
上記の目的は、本発明によれば、
[1]プロトン伝導性基および芳香環を有する樹脂成分(a)(以下、単に「樹脂成分(a)」と称する)を含むマトリックス中に、プロトン伝導性基を有さない脂肪族炭化水素からなる樹脂成分(b)(以下、単に「樹脂成分(b)」と称する)を含む疎水粒子が分散された構造を有し、溶剤膨潤法で得られる架橋密度が0.02〜1.00mmol/Lの範囲である高分子電解質膜;
[2]前記疎水粒子がゴム粒子であり、かつ前記マトリックスがビニレン単位とビニルアルコール単位とを含む樹脂成分(p)(以下、単に「樹脂成分(p)」と称する)を含有し、該樹脂成分(p)の含有率が1〜12質量%の範囲である、上記[1]の高分子電解質膜;
[3]芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなり、かつプロトン伝導性基を有する重合体ブロック(A)(以下、単に「重合体ブロック(A)」と称する)と、不飽和脂肪族炭化水素に由来する構造単位からなり、かつプロトン伝導性基を有さない重合体ブロック(B)(以下、単に「重合体ブロック(B)」と称する)とを含有するブロック共重合体(Z)(以下、単に「ブロック共重合体(Z)」と称する)、およびポリビニルアルコールの部分脱水物からなる、上記[1]又は[2]の高分子電解質膜;
[4]前記不飽和脂肪族炭化水素が、炭素数4〜8のアルケンおよび炭素数4〜8の共役ジエンから選ばれる少なくとも1種である、上記[3]の高分子電解質膜;並びに
[5]前記ブロック共重合体(Z)の有機溶剤溶液を調製する工程(1)、
該ブロック共重合体(Z)の有機溶剤溶液に水を添加した後に該有機溶剤を除去して、ブロック共重合体(Z)の水分散液を調製する工程(2)、および、
該ブロック共重合体(Z)の水分散液とポリビニルアルコールとを混合し、ブロック共重合体(Z)とポリビニルアルコールとを質量比で99:1〜88:12の範囲で含む組成物を調製して、該組成物を基材に塗布し、次いで加熱する工程(3)を少なくとも有する、上記[3]又は[4]の高分子電解質膜の製造方法;
を提供することで達成される。
本発明によれば、機械的強度および耐水性に優れる炭化水素系の高分子電解質膜ならびにその製造方法を提供することができる。
当該高分子電解質膜は、例えば固体高分子型燃料電池、キャパシタ、アクチュエータ、センサーなどの電気化学素子用;イオン交換膜、逆浸透膜、水−エタノール分離膜、水蒸気透過膜、窒素−酸素分離膜、二酸化炭素吸収膜、パーベーパレーション膜などの分離用;などの幅広い用途に用いることができる。
実施例1で得られた高分子電解質膜Aの断面の透過型電子顕微鏡写真である。
[高分子電解質膜]
本発明の高分子電解質膜は、樹脂成分(a)を含むマトリックス中に、樹脂成分(b)を含む疎水粒子が分散された構造を有し、溶剤膨潤法で得られる架橋密度が0.02〜1.00mmol/Lの範囲であることを特徴とする。
<架橋密度>
本発明の高分子電解質膜は、溶剤膨潤法で得られる架橋密度が0.02〜1.00mmol/Lの範囲であり、好ましくは0.04〜0.50mmol/Lの範囲、より好ましくは0.06〜0.10mmol/Lの範囲である。本発明の高分子電解質膜は、該架橋密度が0.02mmol/L以上であることで、耐水性、耐熱水性および耐溶剤性等に優れ、1.00mmol/L以下であることで、機械的強度に優れる。
溶剤膨潤法による架橋密度は、次のようにして求められる。まず、高分子電解質膜を一定時間、溶剤に浸漬させて膨潤させた後、これを真空乾燥させ、膨潤後の高分子電解質膜の質量W1と、真空乾燥後の高分子電解質膜の質量W2から、膨潤後の高分子電解質膜中の樹脂成分の体積分率vRを下記式(1)から算出する。
R=(W2/ρP)/{(W2/ρP)+(W1−W2)/ρS}・・・(1)
ここで、ρP、ρSはそれぞれ樹脂成分および溶剤の密度(g/mL)を表す。
ついで、得られたvRを用いて、下記式(2)で示されるフローリー・レーナー式から架橋密度ν(mol/L)を算出することができる。
ν=−{vR+μvR 2+ln(1−vR)}/VS{vR 1/3−(2/nf)vR}・・・(2)
ここで、μは樹脂成分−溶媒相互作用定数、VS(L/mol)は溶媒の分子容、nfは架橋点の官能数を表す。
該架橋密度は、具体的には実施例に記載の方法により算出される。
<マトリックス>
本発明の高分子電解質膜を構成するマトリックスは、樹脂成分(a)を含む。また、後述する樹脂成分(p)をさらに含有することが好ましい。
(樹脂成分(a))
樹脂成分(a)は、プロトン伝導性基および芳香環を有する。該プロトン伝導性基は、樹脂成分(a)が有する全部または一部の芳香環に結合していることが好ましい。
樹脂成分(a)は、マトリックス中の50〜99.5質量%を占めることが好ましく、65〜99質量%を占めることがより好ましく、75〜98質量%を占めることがさらに好ましい。
樹脂成分(a)の軟化温度は、高分子電解質膜の強度を高める観点から、10℃以上が好ましく、30℃以上であることがより好ましい。なお、上記軟化温度は、粘弾性測定装置によって測定できる。
当該樹脂成分(a)の有する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、インデン環、アントラセン環等が挙げられる。樹脂成分(a)は、かかる芳香環を主鎖に有していても、側鎖に有してもよいが、側鎖に有していることが好ましく、下記一般式(1)
(式中、Arは1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基を表し、R1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)
で表される少なくとも1種が主たる繰り返し単位であることがより好ましい。
上記一般式(1)で表される繰り返し単位を形成できる単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルビフェニル、ビニルターフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4−フェノキシスチレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。
樹脂成分(a)の有するプロトン伝導性基は特に限定されないが、−SO3M又は−PO3HM、−CO2M(式中Mは、水素イオン;アンモニウムイオン;又はナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン;を表す)で表されるスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基またはそれらの塩が挙げられ、スルホン酸基またはホスホン酸基が好ましい。
樹脂成分(a)の数平均分子量は、4,000〜70,000の範囲であることが好ましく、6,000〜50,000の範囲であることがより好ましい。該数平均分子量が4,000以上であれば、本発明の高分子電解質膜の使用時にマトリックスの溶出が抑制でき、70,000以下であれば、樹脂成分(a)の製造が容易である。
なお、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)による標準ポリスチレン換算の値である。
(樹脂成分(p))
樹脂成分(p)は、ビニレン単位とビニルアルコール単位とを含む樹脂成分である。
本発明の高分子電解質膜におけるマトリックスが樹脂成分(p)をさらに含有する場合、該樹脂成分(p)は、本発明の高分子電解質膜の耐水性、耐熱水性および機械的強度を高める役割を担う。本発明の高分子電解質膜中の樹脂成分(p)の含有率は、1〜12質量%の範囲であることが好ましく、2〜10質量%の範囲であることがより好ましく、3〜9質量%の範囲であることがさらに好ましい。また、樹脂成分(p)は、高分子電解質膜のマトリックス中の0.5〜50質量%を占めることが好ましく、1〜35質量%を占めることがより好ましく、2〜25質量%を占めることがさらに好ましい。
樹脂成分(p)の軟化温度は、10℃以上が好ましく、30℃以上であることがより好ましい。上記軟化温度は、粘弾性測定装置によって測定できる。
本発明の高分子電解質膜のマトリックス中に含まれる樹脂成分(p)は、ビニレン単位とビニルアルコール単位とを含み、当該樹脂成分(p)の具体例としてはポリビニルアルコール(以下「PVA」とも称する)の部分脱水物が挙げられる。
当該ビニレン単位およびビニルアルコール単位は、酸の存在下に加熱することにより、下記式(2)で示されるように、PVAの分子内脱水反応によりビニレン単位が形成され、また下記式(3)で示されるように、PVAの分子間脱水反応によりエーテル結合を介して架橋構造が形成される。樹脂成分(a)とPVAを混合して加熱することにより、樹脂成分(a)の有するプロトン伝導性基が酸触媒として働き、樹脂成分(p)を形成できるので、別途酸触媒を添加する必要がなく好ましい。
本発明の高分子電解質膜においては、樹脂成分(p)が樹脂成分(b)を含む疎水粒子を囲むように架橋していることで、イオン交換容量を架橋反応によって消費することなく耐水性、耐熱水性および高い機械的強度を実現できるので好ましい。
<樹脂成分(b)を含む疎水粒子>
本発明の高分子電解質膜における、樹脂成分(b)を含む疎水粒子の平均粒径は、3〜1000nmであることが好ましく、5〜300nmであることがより好ましく、10〜200nmであることがさらに好ましい。かかる平均粒径が3nm以上であれば製造が容易である。また1000nm以下であれば、プロトン伝導性基の有効利用量が高くなり、プロトン伝導性が向上する。かかる平均粒径は、透過型電子顕微鏡観察により測定することができる。
樹脂成分(b)を含む疎水粒子は、樹脂成分(b)からなる粒子でもよく、樹脂成分(b)以外の他の樹脂成分を含んでいてもよい。かかる他の樹脂成分は、プロトン伝導性基を有する樹脂成分を含んでいてもよいが、疎水粒子全体の質量に対するプロトン伝導性基の量は、0.1meq/g以下であることが好ましい。また、疎水粒子を形成する樹脂成分(b)と他の樹脂成分は単一の相を形成していることが好ましい。
本発明の高分子電解質膜に柔軟性や弾力性を付与する観点から、樹脂成分(b)を含む疎水粒子はゴム粒子であることが好ましい。かかるゴム粒子を形成できる樹脂成分(b)は、非晶性の樹脂成分(b)によって形成でき、非晶性ポリオレフィン重合体、又はブロック共重合体を構成する非晶性ポリオレフィン重合体ブロックであることが好ましい。ここで、「非晶性」とは動的粘弾性を測定して、結晶性重合体由来の貯蔵弾性率の変化がないことで確認できる。なお、当該ゴム粒子は、必要に応じ、架橋剤を用いて架橋されていてもよい。
(樹脂成分(b))
前記疎水粒子を構成する樹脂成分(b)は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテンなどの炭素数2〜8のアルケン;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテンおよびシクロオクテンなどの炭素数5〜8のシクロアルケン;ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテンなどの炭素数7〜10のビニルシクロアルケン;ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン、2,4−ヘプタジエンなどの炭素数4〜8の共役ジエン;シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどの炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン;ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタンなどの炭素数7〜10のビニルシクロアルカン;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチルなどの炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;よりなる群から選ばれる少なくとも1種の不飽和脂肪族炭化水素に由来する樹脂成分であることが好ましく、炭素数4〜8のアルケンおよび炭素数4〜8の共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の不飽和脂肪族炭化水素に由来する樹脂成分であることがより好ましく、イソブテン、ブタジエンおよびイソプレンから選ばれる少なくとも1種に由来する樹脂成分であることがさらに好ましい。
樹脂成分(b)は、上記した不飽和脂肪族炭化水素を重合することで得られる。重合して得られた樹脂成分が、主鎖に炭素−炭素二重結合を有している場合は、かかる炭素−炭素二重結合の一部又は全部を水素添加して飽和結合にすることが好ましい。かかる炭素−炭素二重結合の水素添加率(以下、「水添率」と称する)は30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。
樹脂成分(b)の数平均分子量は、4,000〜70,000の範囲であることが好ましく、6,000〜50,000の範囲であることがより好ましい。該数平均分子量が4,000以上であれば、機械的特性が良好であり、70,000以下であれば、工程通過性が良好である。
なお、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)による標準ポリスチレン換算の値である。
樹脂成分(b)は他の樹脂成分と共有結合していてもよい。この場合、樹脂成分(b)と他の樹脂成分は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、星型共重合体などの構造を取ることができる。樹脂成分(b)が共有結合していてもよい他の樹脂成分は、疎水粒子中に含有されていても、マトリックス中に含有されていてもよい。
樹脂成分(b)がマトリックスに含有されている樹脂成分と共有結合している例として、樹脂成分(b)と樹脂成分(a)とを重合体ブロックとするブロック共重合体が挙げられる。該ブロック共重合体は、製造上の観点から、樹脂成分(a)に相当する、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなり、かつプロトン伝導性基を有する重合体ブロック(A);および樹脂成分(b)に相当する、不飽和脂肪族炭化水素に由来する構造単位からなり、かつプロトン伝導性基を有さない重合体ブロック(B);を含有するブロック共重合体(Z)であることが好ましい。この場合、本発明の高分子電解質膜は、ブロック共重合体(Z)および樹脂成分(p)に相当するポリビニルアルコールの部分脱水物からなることが好ましい。
以下、ブロック共重合体(Z)について説明する。
<ブロック共重合体(Z)>
ブロック共重合体(Z)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなり、かつプロトン伝導性基を有さない重合体ブロック(A0)(以下、単に「重合体ブロック(A0)」と称する)と、重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体(Z0)の重合体ブロック(A0)にプロトン伝導性基を導入することで得られる。
ブロック共重合体(Z0)の数平均分子量(Mn)は特に制限されないが、GPC法により測定された標準ポリスチレン換算値として、通常、10,000〜300,000の範囲が好ましく、15,000〜250,000の範囲がより好ましく、20,000〜200,000の範囲がさらに好ましい。
ブロック共重合体(Z)のイオン交換容量は0.40〜4.50meq/gの範囲が好ましく、0.50〜4.00meq/gの範囲がより好ましい。イオン交換容量が0.40meq/g以上であればプロトン伝導性が十分であり、4.50meq/g以下であれば膨潤しにくい。なお、ブロック共重合体(Z)のイオン交換容量は、後述する実施例で開示する酸価滴定法を用いて算出できる。
また、ブロック共重合体(Z)は、重合体ブロック(A)および/または重合体ブロック(B)を、それぞれ1つ有していてもよいし、複数有していてもよい。重合体ブロック(A)を複数有する場合、それらの構造(構造単位の種類、重合度、プロトン伝導性基の種類や導入割合等)は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。また、重合体ブロック(B)を複数有する場合、それらの構造(構造単位の種類、重合度等)は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
ブロック共重合体(Z)における重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の結合配列に特に制限はない。各重合体ブロックは、直線状に結合していても、分岐して結合していてもよい。
当該ブロック共重合体(Z)における重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の結合配列の例として、A−B型ジブロック共重合体(A、Bはそれぞれ、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)を表す。以下同様)、A−B−A型トリブロック共重合体、B−A−B型トリブロック共重合体、A−B−A−B型テトラブロック共重合体、A−B−A−B−A型ペンタブロック共重合体、B−A−B−A−B型ペンタブロック共重合体、(A−B)nD型星形共重合体(Dはカップリング剤残基、nは2以上の整数を表す。以下、同様)、(B−A)nD型星形共重合体等が挙げられる。本発明の高分子電解質膜においては、これらのブロック共重合体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ブロック共重合体(Z)における(重合体ブロック(A)の合計量):(重合体ブロック(B)の合計量)は、プロトン伝導性と柔軟性の観点から、質量比で95:5〜5:95の範囲であるのが好ましく、90:10〜10:90の範囲であるのがより好ましく、85:15〜15:85の範囲であるのがさらに好ましい。
(重合体ブロック(A))
重合体ブロック(A)は、重合体ブロック(A0)にプロトン伝導性基を導入することで形成できる。プロトン伝導性基は通常、重合体ブロック(A0)の芳香環に導入する。
芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(A0)が有する芳香環は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環等の炭素環式芳香環であるのが好ましい。
前記重合体ブロック(A0)を形成できる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルビフェニル、ビニルターフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4−フェノキシスチレン等が挙げられる。
また、上記の芳香族ビニル化合物のビニル基上の水素原子のうち、芳香環のα−位の炭素(α−炭素)に結合した水素原子が他の置換基で置換されていてもよい。かかる置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロエチル基等の炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基;又はフェニル基等が挙げられる。また、具体的には、例えば、α−メチルスチレン、α−メチル−4−メチルスチレン、α−メチル−2−メチルスチレン、α−メチル−4−エチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられる。
上記した重合体ブロック(A0)を形成できる芳香族ビニル化合物のうち、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、α−メチル−4−メチルスチレン、α−メチル−2−メチルスチレン、ビニルビフェニル、1,1−ジフェニルエチレンが好ましく、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンがより好ましい。これら芳香族ビニル化合物を単量体として、1種を単独で、または2種以上を併用して重合することで重合体ブロック(A0)を形成できる。2種以上の芳香族ビニル化合物を併用する場合の共重合形態はランダム共重合が好ましい。
重合体ブロック(A0)は、本発明の効果を損なわない範囲で1種又は2種以上の芳香族ビニル化合物に由来しない他の構造単位を含有してもよい。かかる他の構造単位を形成できる単量体としては、例えば、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン等の炭素数4〜8の共役ジエン;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等の炭素数2〜8のアルケン;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;が挙げられる。前述した芳香族ビニル化合物との共重合形態はランダム共重合が好ましい。これら他の単量体の使用量は重合体ブロック(A0)の形成に用いる単量体の5モル%以下であることが好ましい。
重合体ブロック(A0)1つあたりの数平均分子量(Mn)は、標準ポリスチレン換算値として、1,000〜100,000の範囲が好ましく、2,000〜70,000の範囲がより好ましい。該数平均分子量が1,000以上であればプロトン伝導性が良好となり、100,000以下であればブロック共重合体(Z)の製膜性が良好となるので製造上有利となる。
重合体ブロック(A)の有するプロトン伝導性基としては、−SO3M又は−PO3HM(式中、Mは水素イオン、アンモニウムイオン又はナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンを表す)で表されるスルホン酸基、ホスホン酸基又はそれらの塩が好ましい。
(重合体ブロック(B))
重合体ブロック(B)は、不飽和脂肪族炭化水素に由来する構造単位からなり、プロトン伝導性基を有さない非晶性の重合体ブロックである。なお、重合体ブロック(B)の非晶性は、ブロック共重合体(Z)の動的粘弾性を測定して、結晶性オレフィン重合体由来の貯蔵弾性率の変化がないことで確認できる。
重合体ブロック(B)を形成できる不飽和脂肪族炭化水素としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等の炭素数2〜8のアルケン;ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン等炭素数7〜10のビニルシクロアルカン;ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテン等の炭素数7〜10のビニルシクロアルケン;ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン等の炭素数4〜8の共役ジエン;シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等の炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン;が挙げられ、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等の炭素数2〜8のアルケン;ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン等の炭素数4〜8の共役ジエン;が好ましく、炭素数4〜8のアルケンおよび炭素数4〜8の共役ジエンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、イソブテン、ブタジエンおよびイソプレンから選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。これら不飽和脂肪族炭化水素の1種以上を単量体として用いて、重合して重合体ブロック(B)を形成する。2種以上の不飽和脂肪族炭化水素を併用する場合の共重合形態はランダム共重合が好ましい。
また、重合体ブロック(B)は、使用温度領域においてブロック共重合体(Z)に柔軟性を与えるという重合体ブロック(B)の効果を損なわない範囲で、不飽和脂肪族炭化水素に由来しない他の構造単位を含んでいてもよい。かかる他の構造単位を形成できる単量体としては、例えば、スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物;塩化ビニル等のハロゲン含有ビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;等が挙げられる。この場合、これら他の単量体と、前述した不飽和脂肪族炭化水素との共重合形態はランダム共重合が好ましい。これら他の単量体の使用量は重合体ブロック(B)の形成に用いる単量体の5モル%以下であることが好ましい。
上記不飽和脂肪族炭化水素が炭素−炭素二重結合を複数有する場合、そのいずれが重合に用いられてもよく、例えば、共役ジエンの場合には1,2−結合単位または1,4−結合単位のいずれの結合単位となってもよい。共役ジエンを重合して形成した重合体ブロックには通常、炭素−炭素二重結合が残るが、耐熱劣化性の向上等の観点から、重合後に水素添加反応(以下、「水添反応」と称する)を行い、かかる炭素−炭素二重結合を水素添加(以下、「水添」と称する)することが好ましい。かかる炭素−炭素二重結合の水素添加率(以下、「水添率」と称する)は30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合を低減させると、高分子電解質膜の劣化を抑制できる。
また、ブロック共重合体(Z0)を重合した後にプロトン伝導性基を導入してブロック共重合体(Z)とする場合に、重合体ブロック(B)が飽和炭化水素構造であれば、重合体ブロック(B)へのプロトン伝導性基の導入が起こりにくいため好ましい。したがって、ブロック共重合体(Z0)を重合した後に重合体ブロック(B)に残存する炭素−炭素二重結合の水添反応を行う場合は、プロトン伝導性基を導入する前に行うことが望ましい。
なお、炭素−炭素二重結合の水添率は、1H−NMR測定によって算出できる。
重合体ブロック(B)1つあたりの数平均分子量(Mn)は、標準ポリスチレン換算値として、通常5,000〜250,000の範囲であるのが好ましく、7,000〜150,000の範囲であるのがより好ましく、8,000〜100,000の範囲であるのがさらに好ましく、10,000〜70,000の範囲であるのが特に好ましい。
(ブロック共重合体(Z0)の製造)
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体(Z)は、前述した各単量体を重合して、重合体ブロック(A0)と重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体(Z0)を製造した後、重合体ブロック(A0)にプロトン伝導性基を導入する方法によって製造できる。
ブロック共重合体(Z0)の製造方法は適宜選択できるが、リビングラジカル重合法、リビングアニオン重合法およびリビングカチオン重合法から選ばれる重合法によって、前述した各単量体を重合する方法が好ましい。
芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(A0)と、共役ジエン又はイソブテンからなる重合体ブロック(B)を成分とするブロック共重合体(Z0)を製造する方法の具体例としては、
(1)シクロヘキサン溶媒中でアニオン重合開始剤を用いて、20〜100℃の温度条件下で、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、芳香族ビニル化合物を逐次アニオン重合させA−B−A型ブロック共重合体を得る方法;
(2)シクロヘキサン溶媒中でアニオン重合開始剤を用いて、20〜100℃の温度条件下で芳香族ビニル化合物、共役ジエンを逐次アニオン重合させた後、安息香酸フェニル等のカップリング剤を添加してA−B−A型ブロック共重合体を得る方法;
(3)非極性溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%濃度の極性化合物の存在下、−30〜30℃の温度にて、5〜50質量%濃度の芳香族ビニル化合物をアニオン重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンをアニオン重合させた後、安息香酸フェニル等のカップリング剤を添加して、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法;
(4)ハロゲン系/炭化水素系混合溶媒中、−78℃で、2官能性ハロゲン化開始剤を用いて、ルイス酸存在下、イソブテンをカチオン重合させた後、芳香族ビニル化合物をカチオン重合させて、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法;
等が挙げられる。
(ブロック共重合体(Z)の製造)
ブロック共重合体(Z0)にプロトン伝導性基を導入して、ブロック共重合体(Z)を製造する方法について以下に述べる。
まず、ブロック共重合体(Z0)にプロトン伝導性基としてスルホン酸基を導入する方法を説明する。スルホン酸基の導入(スルホン化)は、例えば、ブロック共重合体(Z0)の有機溶媒溶液または懸濁液を調製し、次いでスルホン化剤を添加し混合する方法などの公知の方法が挙げられる。ブロック共重合体(Z0)に直接ガス状のスルホン化剤を添加する方法が挙げられる。
スルホン化剤としては、硫酸;硫酸と酸無水物との混合物;クロロスルホン酸;クロロスルホン酸と塩化トリメチルシリルとの混合物;三酸化硫黄;三酸化硫黄とトリエチルホスフェートとの混合物系;2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸に代表される芳香族有機スルホン酸等が挙げられる。また、有機溶媒としては、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、ヘキサン等、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ニトロベンゼン等が挙げられる。
次に、ブロック共重合体(Z0)にプロトン伝導性基としてホスホン酸基を導入する方法を説明する。ホスホン酸基の導入(ホスホン化)は、公知の方法で行える。例えば、重合体ブロック(A0)の芳香環に塩化アルミニウム存在下でハロメチルエーテルを反応させてハロメチル基を導入し、次いで三塩化リン及び塩化アルミニウムと反応させてリン誘導体に置換したのち、加水分解によってホスホン酸基に変換する方法;および前記芳香族ビニル化合物の芳香環に三塩化リンと無水塩化アルミニウムを反応させて導入したホスフィン酸基を硝酸により酸化してホスホン酸基に変換する方法が挙げられる。
ブロック共重合体(Z)における重合体ブロック(A)が有する芳香族ビニル化合物に由来する構造単位に対するプロトン伝導性基の導入率(スルホン化率、ホスホン化率等)は、1H−NMRを用いて算出することができる。
[高分子電解質膜の製造方法]
本発明の高分子電解質膜の製造方法は、前記ブロック共重合体(Z)の有機溶剤溶液を調製する工程(1)、
該ブロック共重合体(Z)の有機溶剤溶液に水を添加した後に該有機溶剤を除去して、ブロック共重合体(Z)の水分散液を調製する工程(2)、および、
該ブロック共重合体(Z)の水分散液とPVAとを混合し、ブロック共重合体(Z)とPVAとを質量比で99:1〜88:12の範囲で含む組成物を調製して、該組成物を基材に塗布し、次いで加熱する工程(3)を少なくとも有することを特徴とする。
<工程(1)>
工程(1)では、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなり、かつプロトン伝導性基を有する重合体ブロック(A)と、不飽和脂肪族炭化水素に由来する構造単位からなり、かつプロトン伝導性基を有さない重合体ブロック(B)とを含有する前記ブロック共重合体(Z)の有機溶剤溶液を調製する。ブロック共重合体(Z)、およびこれを構成する重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)の詳細については、前述したとおりである。
有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドからなる群より選択される有機溶剤;該有機溶剤、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン、ベンゼン等)、直鎖式脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン等)および環式脂肪族炭化水素(シクロヘキサン等)からなる群より選択される有機溶剤ならびにメタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール等の極性有機溶剤の混合溶剤;が挙げられる。
<工程(2)>
工程(2)では、前記工程(1)で調製されたブロック共重合体(Z)の有機溶剤溶液に水を添加した後に該有機溶剤を除去して、該ブロック共重合体(Z)の水分散液を調製する。該水分散液中において、ブロック共重合体(Z)は重合体ブロック(B)を核(コア)、重合体ブロック(A)を殻(シェル)とする、コアシェル構造の水分散粒子を形成する。該水分散粒子の分散粒径は、本発明の高分子電解質膜中に分散された疎水粒子の平均粒径を小さくする観点から、5〜1500nmの範囲が好ましく、8〜450nmの範囲がより好ましく、15〜300nmの範囲がさらに好ましい。かかる水分散粒子の分散粒径は、具体的には実施例に記載の方法で測定される。
高分子電解質膜中においてマトリックスを形成する重合体ブロック(A)が親水性であり、一方、疎水粒子を形成する重合体ブロック(B)が疎水性であるため、ブロック共重合体(Z)はミセル形成能を有し、界面活性剤や乳化剤を使用することなく水分散液を得ることができる。
ブロック共重合体(Z)の水分散液の調製方法としては、水分散粒子の分散粒径を小径化する観点から、ブロック共重合体(Z)の有機溶剤溶液に水を撹拌しながら添加して転相乳化させる方法;ブロック共重合体(Z)の有機溶剤溶液と水とを混合して水分散液を調製(プレ乳化)した後に、得られた水分散液同士を、高圧で衝突させて微粒子化する方法;が挙げられる。
工程(2)で調製されるブロック共重合体(Z)の水分散液の固形分濃度は、1〜30質量%であることが好ましい。
<工程(3)>
工程(3)では、前記工程(2)で調製されたブロック共重合体(Z)の水分散液とPVAとを混合し、ブロック共重合体(Z)とPVAとを質量比で99:1〜88:12の範囲で含む組成物を調製して、該組成物を基材に塗布し、次いで加熱する。
用いるPVAの粘度平均分子量は、5,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、20,000〜500,000の範囲であることがより好ましい。該粘度平均分子量が5,000以上であれば、本発明の高分子電解質膜は、高い耐水性、耐熱水性および耐溶剤性に優れるものとなる。また、該粘度平均分子量が1,000,000以下であれば、工程(3)において得られる組成物の粘度上昇が抑制され、基材への塗布が容易になる。
なお、上記粘度平均分子量は、GPC法により測定される標準プルラン換算の値である。
また、用いるPVAのケン化度は、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。
ブロック共重合体(Z)の水分散液にPVAを加えると、該PVAは保護コロイド形成能を有するので、ブロック共重合体(Z)中のプロトン伝導性基に付着し、重合体ブロック(A)を含有するマトリックスに選択的にPVAが存在する組成物が得られる。
ブロック共重合体(Z)の水分散液とPVAとの混合は、20〜80℃の範囲で行うことが好ましい。前記組成物中における、ブロック共重合体(Z)とPVAとの割合は、得られる高分子電解質膜の耐水性、耐熱水性および機械的特性の観点から、質量比で99:1〜88:12であることが好ましく、98:2〜90:10であることがより好ましく、97:3〜91:9であることがさらに好ましい。
前記組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋剤、架橋助剤、開始剤などの添加剤を含有してもよい。
次いで、得られた組成物を、基材(例えば、ポリエステルフィルムなど)に塗布して、塗布膜を形成する。組成物の塗布量は、最終的に得られる高分子電解質膜の厚さが数μm〜数十μmになるように調節する。
塗布膜の形成方法には、コンマコーター、グラビアコーター、ダイコーター、キスリバースコーター、スプレーコーターなどを用いた連続方式;バーコーター、ブロックコーター、アプリケーターなどを用いた枚葉方式;が挙げられ、組成物の粘度や所望の膜厚等によって適宜選択することができる。
次に、得られた塗布膜を加熱する。ブロック共重合体(Z)がプロトン伝導性基を有しているので、別途酸触媒を添加せずとも、加熱によりPVAの分子内及び分子間脱水反応が進行する。
PVAの分子内脱水反応により、ビニレン単位が形成され、PVAの部分脱水物が形成される。またPVAの分子間脱水反応により、エーテル結合を介する架橋構造が形成され、本発明の高分子電解質膜の耐水性および機械的強度を向上させることができる。
加熱条件は、加熱に要する時間を短縮するには高温が望ましいが、一方でブロック共重合体(Z)および/またはPVAが劣化、分解することが懸念されるため、60〜100℃の範囲で0.5〜24時間加熱するのが好ましい。加熱後の膜を基材から剥離することにより、本発明の高分子電解質膜が得られる。
本発明の高分子電解質膜の膜厚は、用途に応じて適宜選択できるが、例えば固体高分子型燃料電池用の高分子電解質膜として用いる場合には、該膜厚は2〜500μmの範囲が好ましく、10〜300μmの範囲がより好ましい。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における各評価は、以下に示す方法に従って行った。
(ブロック共重合体(Z0)の分子量)
ブロック共重合体(Z0)および重合体ブロックの数平均分子量、重量平均分子量およびピークトップ分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により下記の条件で測定し、標準ポリスチレン換算によって算出した。
た。
装置:東ソー(株)製「HLC−8220GPC」
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム:東ソー(株)製「TSK−GEL」(TSKgel G3000HXL(内径7.6mm、有効長30cm)を1本、TSKgel Super Multipore HZ−M(内径4.6mm、有効長16cm)を2本の計3本を直列で接続)
カラム温度:40℃
検出器:RI
送液量:0.35mL/分
(ブロック共重合体(Z0)の組成および水添率)
1H−NMR(JOEL社製「ECX−400」)を測定して求めた。
(ブロック共重合体(Z)および高分子電解質膜のイオン交換容量)
試料を密閉できるガラス容器中に、試料を秤量(a(g))し、a×30(g)の塩化ナトリウム飽和水溶液を添加して12時間攪拌した。フェノールフタレイン液を指示薬として、系内に発生した塩化水素を0.01NのNaOH標準水溶液(力価f)にて滴定(b(mL))し、次式により求めた。
イオン交換容量=(0.01×b×f)/a
(ブロック共重合体(Z)の水分散液中における分散粒径の測定)
動的光散乱法による粒径測定装置(大塚電子(株)製「FPAR−1000」)を用いて、水分散液中のブロック共重合体(Z)の分散粒径を測定した。
(高分子電解質膜中に分散された疎水粒子の平均粒径の測定)
各実施例および比較例で得られた高分子電解質膜をエポキシ樹脂で包埋した後、クライオウルトラミクトロームを用いて厚さ約90nmの超薄切片を作製した。この超薄切片をRuO4蒸気で染色し、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製「H7100FA」)を用いて加速電圧100kVの条件で構造観察を行った。
透過型電子顕微鏡で観察した像から、1μm四方の面内に確認できる疎水粒子すべてについて最も長い径と最も短い径を測定し、その算術平均を各疎水粒子の粒径とした。測定した疎水粒子の粒径から、平均粒径を算出した。
(高分子電解質膜の架橋密度の測定)
各実施例および比較例で得られた高分子電解質膜を十分乾燥させた後、トルエン/イソブチルアルコール=7/3(質量比)の混合溶剤に3時間浸漬して、膨潤させたのち取り出して、質量(W1(g))を測定した。次いで、かかる膨潤した高分子電解質膜を23℃で2時間風乾させた後、13Paの減圧条件下、50℃で16時間、乾燥して質量(W2(g))を測定した。これら測定した質量(W1、W2)から、膨潤した高分子電解質膜中の樹脂成分の体積分率vRを算出した。
R=(W2/ρP)/{(W2/ρP)+(W1−W2)/ρS
ここで、ρP、ρSはそれぞれ樹脂成分および溶媒の密度(g/mL)を表す。
ついで、得られたvRを用いて、次に示すフローリー・レーナー式から架橋密度ν(mol/L)を算出した。
ν=−{vR+μvR 2+ln(1−vR)}/VS{vR 1/3−(2/nf)vR
ここで、μは樹脂成分−溶媒相互作用定数(−)、VS(L/mol)は溶媒の分子容、nfは架橋点の官能数(−)を表す。なお、公知文献(例えばP.J.フローリー、「高分子化学」、丸善株式会社、1955年参照)における類似の系を参考に、μは0.4とした。また、1つの架橋点において結合するポリマーが2本であると考えられることから、nfは4とした。
(高分子電解質膜の水線膨張率)
高分子電解質膜を1.0cm×5.0cmに裁断し、23℃の蒸留水に4時間浸漬した。試料を水中から取り出し、試料の4辺それぞれの膨張後の長さを測定し、下記式より各辺の水線膨張率を求め、これらを算術平均して、高分子電解質膜の水線膨張率とした。
各辺の水線膨張率(%)={(膨潤後の長さ−試験前の長さ)/試験前の長さ}×100
(高分子電解質膜の熱水線膨張率)
各実施例および比較例で得られた高分子電解質膜を1.0cm×5.0cmに裁断し、90℃の蒸留水に4時間浸漬した。試料を水中から取り出し、試料の4辺それぞれの膨張後の長さを測定し、下記式より各辺の熱水線膨張率を求め、これらを算術平均して、高分子電解質膜の熱水線膨張率とした。
各辺の熱水線膨張率(%)={(膨潤後の長さ−試験前の長さ)/試験前の長さ}×100
(破断エネルギーの測定)
各実施例および比較例で得られた高分子電解質膜をダンベル型にて打ち抜き、引張り試験機(インストロンジャパン社製、5566型)を用いて引張り速度500mm/minで25℃にて引張り試験を実施した。得られた伸び−応力曲線から数値積分によって破断エネルギー(MPa)を求めた。
(発電試験)
固体高分子型燃料電池用の電極を以下の手順で作製した。Pt担持カーボン(田中貴金属工業(株)製、Pt担持量46質量%)にナフィオン(登録商標、E.I.Du Pont de Nemours&Co.,Inc製)の5質量%メタノール溶液を、Ptとナフィオンとの質量比が1:1になるように添加混合し、Pt担持カーボンが均一に分散されたペーストを調製した。このペーストを転写シートに塗布し、60℃で24時間乾燥させて触媒シートを作製した。
一方、実施例2で得られた高分子電解質膜Bを、上記触媒シート2枚で2つの触媒面が向かい合うように挟み、その外側を2枚の耐熱性フィルムおよび2枚のステンレス板で順に挟み、ホットプレス(130℃、1.5MPa、8min)により高分子電解質膜と触媒シートを接合させた。最後にステンレス板および耐熱性フィルムを外し、転写シートを剥離して膜−電極接合体を作製した。次いで、作製した膜−電極接合体を2枚のカーボンペーパーで挟み、その外側を2枚のガス供給流路の役割を兼ねた導電性のセパレータで挟み、さらにその外側を2枚の集電板および2枚の締付板で挟み、固体高分子型燃料電池用の評価セルを作製した。
セル温度80℃、アノードに相対湿度100%の水素を利用効率67%、カソードに相対湿度100%の空気を利用効率50%に設定して供給し、電流密度1A/cm2におけるセル抵抗値(mΩ・cm2)により評価した。
合成例1(ブロック共重合体1の合成)
窒素置換を十分に行ったオートクレーブ中に、α−メチルスチレン90.9g、シクロヘキサン132g、メチルシクロヘキサン23.1gおよびテトラヒドロフラン3.11gを投入した。続いてsec−ブチルリチウムの1.3mol/Lシクロヘキサン溶液6.8mLを投入し、−10℃で3時間重合反応を行った。重合開始3時間後のポリα−メチルスチレンの数平均分子量をGPC法により測定したところ、ポリスチレン換算で8800であり、α−メチルスチレンの重合転化率は91%であった。
次に、ブタジエン19.5gを加え−10℃で30分間攪拌後、10℃まで昇温し、シクロヘキサン308gを加えた。重合液178gを抜き取り、さらにシクロヘキサン268gを加え希釈した後、1,3−ブタジエン30.0gを加えて、40℃で2時間重合反応を行った後、さらに1,3−ブタジエン30.9gを加えて、40℃で2時間重合反応を行った。
続いて安息香酸フェニルの0.50mol/Lトルエン溶液4.1mLを加え40℃にて1時間攪拌し、重合末端のカップリング反応を行った。
さらに、1H−NMR解析の結果、α−メチルスチレン重合体ブロック含有量は29質量%であり、ブタジエン重合体ブロックのミクロ構造は1,2−結合量が53モル%、1,4−結合量が47モル%であった。得られた重合反応液を水素雰囲気に置換した。
次いで、オクチル酸ニッケルとトリイソブチルアルミニウムから調製したチーグラー系水添触媒を、上記重合反応液中に室温下で添加したのち、0.9MPaの水素で系内を置換し、該反応液を攪拌しながら10分間で60℃まで昇温し、さらに7時間攪拌し、水素添加反応を行った。
クエン酸8.9g、30質量%過酸化水素水5.3gを蒸留水100mLに溶解させた水溶液を反応系内に添加し、50℃にて2時間攪拌後、室温まで冷却した。
攪拌を停止し、水相を抜き取り、残った有機相を蒸留水にて3回洗浄した後、メタノール/アセトン=質量比1/1の混合溶媒中に注いだ。沈澱物をろ集し、メタノールにて洗浄したのち、0.1phr相当の酸化防止剤を添加し、60℃で真空乾燥した。このようにしてα−メチルスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水添物(以下、「ポリマー1」と称する)を得た。
得られたポリマー1をGPC測定した結果、以下の分子量を有するトリブロック共重合体を94%含有していた。
Mt(平均分子量のピークトップ)=74300
Mn(数平均分子量)=72200
Mw(重量平均分子量)=73900
Mw/Mn=1.01
また、ポリマー1の1H−NMR測定により、ブタジエン重合体ブロック部の水素添加率は99%であることが判明した。
100gのポリマー1を、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン1000mLを加え、30℃にて2時間攪拌して溶解させた。ここに、塩化メチレン110mL中、0℃にて無水酢酸46.2mLと硫酸34.9mLとを反応させて得られたスルホン化剤を5分かけて徐々に滴下した。35℃にて8時間攪拌した後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら添加した。析出した固形分をろ集後、90℃の蒸留水で30分間洗浄し、次いでろ過した。洗浄水のpHに変化がなくなるまでこの洗浄およびろ過の操作を繰り返し、最後にろ集した重合体を13Paの減圧条件下、30℃で16時間、乾燥して、プロトン伝導性基としてスルホン酸基を有するブロック共重合体1を得た。得られたブロック共重合体1の1H−NMRからα−メチルスチレン単位あたりのスルホン酸の導入量(スルホン化率)は51.0mol%と算出された。またブロック共重合体1のイオン交換容量は1.05meq/gであった。
合成例2(ブロック共重合体2の合成)
合成例1において、スルホン化剤として、塩化メチレン440mL中に、0℃にて無水酢酸184.8mLと硫酸139.6mLとを反応させて得られたスルホン化剤を20分かけて滴下すること、および滴下終了後30℃にて72時間攪拌させること以外は合成例1と同様の操作でブロック共重合体2を得た。得られたブロック共重合体2の1H−NMRからα−メチルスチレン単位あたりのスルホン酸の導入量(スルホン化率)は88.0mol%であった。またブロック共重合体2のイオン交換容量は2.03meq/gであった。
製造例1(ブロック共重合体1の水分散液の製造)
20gのブロック共重合体1並びに、トルエン56g、イソブチルアルコール24g、およびメタノール250gを用いて、ブロック共重合体1の有機溶剤溶液を調製した。この溶液を撹拌しつつ、125gの水を5分間かけて加えたのち、エバポレータで30℃にて、有機溶剤を除去した。その後、水100g加え、さらにエバポレータで30℃にて濃縮し、固形分濃度25質量%のブロック共重合体1の水分散液を得た。水分散液中のブロック共重合体1の平均粒径は32nmであった。
製造例2(ブロック共重合体2の水分散液の製造)
10gのブロック共重合体2並びに、テトラヒドロフラン45g、イソブチルアルコール45g、およびメタノール50gを用いて、ブロック共重合体2の有機溶剤溶液を調製した。この溶液を撹拌しつつ、150gの水を加えてエバポレータで30℃にて、有機溶剤を除去した。その後、水100g加え、さらにエバポレータで30℃にて濃縮し、固形分濃度6質量%のブロック共重合体2の水分散液を得た。水分散液中のブロック共重合体2の平均粒径は36nmであった。
実施例1
PVA((株)クラレ製、ポバール117(粘度平均重合度1700、ケン化度99.6%))の5質量%水溶液を調製し、製造例1で作製したブロック共重合体1の水分散液:PVA水溶液=92.0:8.0(質量比)で混合して高分子電解質膜用組成物を調製した。該組成物中のブロック共重合体1とPVAの質量比は98.3:1.7であった。これを離型処理ポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製、エステルフィルムK1504)上にバーコーターでコートし、100℃で15分間乾燥させ、さらに100℃、16時間熱処理を行い、高分子電解質膜Aを得た。得られた高分子電解質膜Aの膜厚は30μmであった。
高分子電解質膜Aのイオン交換容量、架橋密度、熱水線膨張率および破断エネルギーを表1に示す。
さらに、高分子電解質膜Aの透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。高分子電解質膜A中に分散された疎水粒子の平均粒径は17nmであった。
実施例2
PVA((株)クラレ製、ポバール117)の5質量%水溶液を調製し、製造例1で作製したブロック共重合体1の水分散液:PVA水溶液=89.9:10.1(質量比)で混合して高分子電解質膜用組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚30μmの高分子電解質膜Bを得た。高分子電解質膜用組成物中のブロック共重合体1とPVAの質量比は97.8:2.2であった。
高分子電解質膜B中に分散された疎水粒子の平均粒径は18nmであった。また、高分子電解質膜Bのイオン交換容量、架橋密度、水線膨張率、熱水線膨張率および破断エネルギーを表1に示す。
高分子電解質膜Bについて発電試験を実施したところ、115mΩ・cm2と十分に低い抵抗値であることが確認された。
実施例3
PVA((株)クラレ製、ポバール117)の5質量%水溶液を調製し、製造例1で作製したブロック共重合体1の水分散液:PVA水溶液=88.2:11.8(質量比)で混合して高分子電解質膜用組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚30μmの高分子電解質膜Cを得た。高分子電解質膜用組成物中のブロック共重合体1とPVAの質量比は97.4:2.6であった。
高分子電解質膜C中に分散された疎水粒子の平均粒径は18nmであった。また、高分子電解質膜Cのイオン交換容量、架橋密度、熱水線膨張率および破断エネルギーを表1に示す。
実施例4
PVA((株)クラレ製、ポバール117)の5質量%水溶液を調製し、製造例1で作製したブロック共重合体1の水分散液:PVA水溶液=82.0:18.0(質量比)で混合して高分子電解質膜用組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚30μmの高分子電解質膜Dを得た。高分子電解質膜用組成物中のブロック共重合体1とPVAの質量比は95.8:4.2であった。
高分子電解質膜D中に分散された疎水粒子の平均粒径は21nmであった。また、高分子電解質膜Dのイオン交換容量、架橋密度、水線膨張率、熱水線膨張率および破断エネルギーを表1に示す。
実施例5
PVA((株)クラレ製、ポバール117)の5質量%水溶液を調製し、製造例1で作製したブロック共重合体1の水分散液:PVA水溶液=75.2:24.8(質量比)で混合して高分子電解質膜用組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚30μmの高分子電解質膜Eを得た。高分子電解質膜用組成物中のブロック共重合体1とPVAの質量比は93.8:6.2であった。
高分子電解質膜E中に分散された疎水粒子の平均粒径は17nmであった。また、高分子電解質膜Eのイオン交換容量、架橋密度、熱水線膨張率および破断エネルギーを表1に示す。
実施例6
PVA((株)クラレ製、ポバール117)の5質量%水溶液を調製し、製造例1で作製したブロック共重合体1の水分散液:PVA水溶液=67.2:32.8(質量比)で混合して高分子電解質膜用組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚30μmの高分子電解質膜Fを得た。高分子電解質膜用組成物中のブロック共重合体1とPVAの質量比は91.1:8.9であった。
高分子電解質膜F中に分散された疎水粒子の平均粒径は16nmであった。また、高分子電解質膜Fのイオン交換容量、架橋密度、水線膨張率、熱水線膨張率および破断エネルギーを表1に示す。
実施例7
PVA((株)クラレ製、ポバール117)の5質量%水溶液を調製し、製造例2で作製したブロック共重合体2の水分散液:PVA水溶液=94.8:5.2(質量比)で混合して、高分子電解質膜用組成物を調製した。高分子電解質膜用組成物中のブロック共重合体2とPVAの質量比は95.6:4.4であった。これを離型処理ポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製、エステルフィルムK1504)上にバーコーターでコートし、100℃で15分間乾燥させ、さらに100℃、16時間熱処理を行い、膜厚30μmの高分子電解質膜Gを得た。
高分子電解質膜G中に分散された疎水粒子の平均粒径は36nmであった。また、高分子電解質膜Gのイオン交換容量、架橋密度、水線膨張率、熱水線膨張率および破断エネルギーを表1に示す。
実施例8
PVA((株)クラレ製、ポバール117)の5質量%水溶液を調製し、製造例2で作製したブロック共重合体2の水分散液:PVA水溶液=92.2:7.8(質量比)で混合した以外は実施例7と同様にして、膜厚30μmの高分子電解質膜Hを得た。高分子電解質膜用組成物中のブロック共重合体2とPVAの質量比は93.4:6.6であった。
高分子電解質膜H中に分散された疎水粒子の平均粒径は32nmであった。また、高分子電解質膜Hのイオン交換容量、架橋密度、水線膨張率、熱水線膨張率および破断エネルギーを表1に示す。
比較例1
PVAを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして膜厚30μmの高分子電解質膜Iを得た。高分子電解質膜I中に分散された疎水粒子の平均粒径は36nmであった。また、高分子電解質膜Iのイオン交換容量、架橋密度、水線膨張率および破断エネルギーを表1に示す。なお、熱水線膨張率は、膨張により破膜したため測定できなかった。
比較例2
PVAを添加しないこと以外は、実施例8と同様にして膜厚30μmの高分子電解質膜Jを得た。高分子電解質膜J中に分散された疎水粒子の平均粒径は38nmであった。また、高分子電解質膜Jのイオン交換容量、架橋密度、水線膨張率および破断エネルギーを表1に示す。なお、水線膨張率および熱水線膨張率は、膨張により破膜したため測定できなかった。
表1に示すとおり、実施例1〜6および比較例1、ならびに実施例7〜8および比較例2の比較から、高分子電解質膜に分散された疎水粒子の平均粒径、および架橋密度が本願発明の範囲内である本発明の高分子電解質膜は、同程度のイオン交換容量における、耐水性、耐熱水性および機械的強度に優れることが分かる。
本発明の高分子電解質膜は、機械的強度および耐水性に優れ、例えば固体高分子型燃料電池用電解質膜、キャパシタ、アクチュエータ、センサー、イオン交換膜、コーティング材等の幅広い用途に用いることができる。

Claims (5)

  1. プロトン伝導性基および芳香環を有する樹脂成分(a)を含むマトリックス中に、プロトン伝導性基を有さない脂肪族炭化水素からなる樹脂成分(b)を含む疎水粒子が分散された構造を有し、溶剤膨潤法で得られる架橋密度が0.02〜1.00mmol/Lの範囲である高分子電解質膜。
  2. 前記疎水粒子がゴム粒子であり、かつ前記マトリックスが、ビニレン単位とビニルアルコール単位とを含む樹脂成分(p)を含有し、該樹脂成分(p)の含有率が1〜12質量%の範囲である、請求項1に記載の高分子電解質膜。
  3. 芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなり、かつプロトン伝導性基を有する重合体ブロック(A)と、不飽和脂肪族炭化水素に由来する構造単位からなり、かつプロトン伝導性基を有さない重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体(Z)、およびポリビニルアルコールの部分脱水物からなる、請求項1又は2に記載の高分子電解質膜。
  4. 前記不飽和脂肪族炭化水素が、炭素数4〜8のアルケンおよび炭素数4〜8の共役ジエンから選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載の高分子電解質膜。
  5. 前記ブロック共重合体(Z)の有機溶剤溶液を調製する工程(1)、
    該ブロック共重合体(Z)の有機溶剤溶液に水を添加した後に該有機溶剤を除去して、ブロック共重合体(Z)の水分散液を調製する工程(2)、および、
    該ブロック共重合体(Z)の水分散液とポリビニルアルコールとを混合し、ブロック共重合体(Z)とポリビニルアルコールとを質量比で99:1〜88:12の範囲で含む組成物を調製して、該組成物を基材に塗布し、次いで加熱する工程(3)を少なくとも有する、請求項3又は4に記載の高分子電解質膜の製造方法。
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