JPWO2012014772A1 - ポリアミド樹脂 - Google Patents
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Abstract
Description
また、より軽くて強いポリアミド樹脂材料も求められている。MXD6ポリアミドよりも軽く、吸水率の低いキシリレン系ポリアミド樹脂として、キシレンジアミンとセバシン酸から得られるキシリレンセバカミド樹脂(以下、「XD10系ポリアミド」ともいう。)がある。
r=(1−cN−b(C−N))/(1−cC+a(C−N)) (1)
(式中、a=M1/2、b=M2/2、c=18.015であり、M1はジアミン成分の分子量(g/mol)、M2はジカルボン酸成分の分子量(g/mol)、Nは末端アミノ基濃度(eq/g)、Cは末端カルボキシル基濃度(eq/g)を表す。)
したがって、本発明のポリアミド樹脂は、各種のフィルム、シート、積層フィルム、積層シート、チューブ、ホース、パイプ、中空容器、ボトル等の各種容器、各種電気電子機器用部品等、種々の成形体に好適に使用することができる。
本発明のポリアミド樹脂は、ジアミン構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミン(A−1)及び/又はビス(アミノメチル)シクロヘキサン(A−2)に由来し、ジカルボン酸構成単位の50モル%以上がセバシン酸(B)に由来するポリアミド樹脂であって、硫黄原子濃度が1〜200質量ppmであることを特徴とする。
なお、以下において、「ppm」は、「質量ppm」を意味するものとして定義される。
本発明のポリアミド樹脂が色調に優れることと、このような硫黄含有量との関係は未だ充分解明出来ていないが、硫黄原子濃度を1〜200ppmとすることにより、このように優れた色調となる。
キシリレンジアミン(A−1)に由来する単位は、メタキシリレンジアミンに由来する単位、パラキシリレンジアミンに由来する単位、またはその両方を有することが好ましい。メタキシリレンジアミンに由来する単位にパラキシリレンジアミンに由来する単位が加わることで、ポリアミド樹脂の融点やガラス転移点、耐熱性、結晶化速度を向上させることができる。ジアミン成分に由来する単位中のキシリレンジアミンに由来する単位が70モル%以上であることで、ポリアミド樹脂は優れた弾性率やガスバリア性を発現することができる。
ポリアミド樹脂の柔軟性を向上させる観点からは、ジアミン成分に由来する単位中、メタキシリレンジアミンに由来する単位が70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンに由来する単位と1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンに由来する単位の両方からなる場合の両者の比をコントロールすることで結晶性や融点を任意に制御することが可能となる。
セバシン酸以外の炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する単位を有する場合の割合は、50モル%未満であり、好ましくは40モル%以下である。
さらに、ジアミン成分に由来する単位、ジカルボン酸成分に由来する単位以外にも、ポリアミド樹脂を構成する単位として、本発明の効果を損なわない範囲で、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類に由来する単位も共重合単位として有することもできる。
数平均分子量=2×1,000,000/([COOH]+[NH2])・・・(2)
(式中、[COOH]はポリアミド樹脂中の末端カルボキシル基濃度(μeq/g)を表し、[NH2]はポリアミド樹脂中の末端アミノ基濃度(μeq/g)を表す。)
本発明では、末端アミノ基濃度は、ポリアミド樹脂をフェノール/エタノール混合溶液に溶解したものを希塩酸水溶液で中和滴定して算出した値を用い、末端カルボキシル基濃度は、ポリアミド樹脂をベンジルアルコールに溶解したものを水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム/ベンジルアルコール溶液で中和滴定して算出した値を用いる。
また、ポリアミド樹脂のガラス転移点は、50〜130℃の範囲であることが好ましい。ガラス転移点を上記範囲とすることによりバリア性が良好となる傾向にあり好ましい。
r=(1−cN−b(C−N))/(1−cC+a(C−N))
式中、a:M1/2
b:M2/2
c:18.015
M1:ジアミン成分の分子量(g/mol)
M2:ジカルボン酸成分の分子量(g/mol)
N:末端アミノ基濃度(eq/g)
C:末端カルボキシル基濃度(eq/g)
また、ジアミン成分(メタキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等)を溶融状態のジカルボン酸成分(セバシン酸等)に直接加えて、常圧下又は加圧下で重縮合する方法によってもポリアミド樹脂を製造することができる。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
ポリアミド樹脂の重縮合時に、分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。
また、ポリアミド樹脂は、溶融重合法により製造された後に、固相重合を行うことによって重縮合を行ってもよい。固相重合は特に限定されず、任意の方法、重合条件により行うことができる。
また、セバシン酸(B)が含有するオクタン酸、ノナン酸、ウンデカン酸等のモノカルボン酸は、0〜1質量%が好ましく、0〜0.5質量%がより好ましく、0〜0.4質量%がさらに好ましい。この範囲であると、得られるポリアミド樹脂の品質が良く、重合に影響を及ぼさないため好ましい。
したがって、本発明のポリアミド樹脂は、その工業的製造においては、リンが不可避的に存在することになるが、その量は、前述したように、リン原子濃度として1〜500ppmであることが好ましい。より好ましくは5〜300ppm、さらに好ましくは10〜200ppmである。リン原子濃度が1ppm未満であると、ポリアミド樹脂が黄変しやすい傾向にあり、500ppmを超えると、ポリアミド樹脂合成時の過剰なアミド化反応により重合の制御が難しくなる場合がある。
亜リン酸化合物の具体例としては、亜リン酸、ピロ亜リン酸;亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸金属塩;亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸ジエチル等の亜リン酸化合物;エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム等のフェニルホスホン酸金属塩等が挙げられる。
これらの中でも、好ましい酸化防止剤は、ポリアミド樹脂の重合反応を促進する効果の観点及び着色防止効果の観点から、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩が好ましく、次亜リン酸ナトリウムが特に好ましい。
そのため、アミド化反応速度を調整する観点から、アルカリ金属化合物を共存させることがよく行われる。アルカリ金属化合物の使用量は、アルカリ金属化合物のモル数をリン原子含有化合物のモル数で除した値が、通常0.5〜1、好ましくは0.55〜0.95、更には0.6〜0.9となる範囲が好ましい。このような範囲であると、重縮合速度が適切で、YIが低く品質の優れたポリアミド樹脂を得ることができる。
したがって、本発明のポリアミド樹脂は、その工業的製造においては、ナトリウム化合物が、通常存在することになるが、その量は、前述したように、ナトリウム原子濃度として1〜500ppmであることが好ましく、より好ましくは5〜300ppm、さらに好ましくは10〜200ppmである。ナトリウム化合物はセバシン酸(B)由来であっても良く、セバシン酸(B)と上記アルカリ金属化合物由来の両方であっても良い。
なお本発明における評価のための測定は以下の方法で行った。
セバシン酸又はポリアミド樹脂をプレス機で錠剤成形し、蛍光X線分析(XRF)を実施した。XRF装置は、理学電機工業社(Rigaku Corporation)製蛍光X線分析装置ZSX Primusを用い、管球はRh管球(4kw)を使用した。分析窓用フィルムはPPフィルムを使用し真空雰囲気下でEZスキャンを実施した。なお、照射領域は30mmφである。
セバシン酸及びポリアミド樹脂に含まれるナトリウム原子濃度及びリン原子濃度は、セバシン酸又はポリアミド樹脂を、硝酸中、マイクロウェーブにて分解処理した後、原子吸光分析装置((株)島津製作所(SHIMADZU Corporation)製、商品名:AA−6650)及びICP発光分析装置((株)島津製作所製、商品名:ICPE−9000)を用いて定量した。
セバシン酸中のDMDCの定性・定量は、誘導体化(メチルエステル化)してGC/MS分析により行った。具体的な手法は以下のとおりである。
(a)1mlのリアクティバイアルにセバシン酸8mgを計量する。
(b)三フッ化ホウ素メタノール錯体メタノール溶液(和光純薬工業社(Wako Pure Chemical Industries)製、GC用Assay:14〜15%)0.5mlを加えて栓をする。
(c)100℃に調整したブロックバスで1hr加熱した後、室温になるまで放冷する。
(d)反応液を5mlのリアクティバイアルに移し替え、クロロホルム(純正化学社(JUNSEI Chemical Co.)製、原子吸光分析用)1mlと純水2mlを加える。
(e)5min振り混ぜた後、30min静置する。
(f)有機層(下層)をシリンジで回収し、再度操作(d)及び(e)を行う。
(g)有機層(下層)をシリンジで回収し、GC/MS分析に供する。
(h)MSスペクトルから成分を定性し、TICの面積値から、DMDCの含量(質量%)を算出する。
GC装置:Agilent社製、6890N
MS装置:Agilent社製、5975 inert MDS
カラム:CP−Sil 8CB for amines、30m×0.25mmφ×0.25μmt
キャリアガス:ヘリウム 1ml/min
オーブン温度:80℃で5min保持後、10℃/minの速度で300℃まで昇温し、300℃で13分保持
Injection Split(50:1)、inlet温度300℃、1μl
Interface温度300℃
Ion source温度250℃
Q Pole温度150℃
Mass Range(m/z) 40〜800
Ionization Energy EI 70eV
示差走査熱量測定(DSC)法により、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製DSC−60を用い、30℃から予想される融点以上の温度まで10℃/分の速度で昇温し、ポリアミド樹脂を溶融させた。この時の吸熱ピークのピークトップの温度から融点(Tm)を求めた。溶融後サンプルをドライアイスで冷却し、次いで、10℃/分の速度で融点以上の温度まで昇温し、ガラス転移点(Tg)を求めた。
下記記載の方法で得られたポリアミド樹脂0.3gを30mlのフェノール/エタノール(4:1)混合溶液に20〜30℃で攪拌溶解し、0.01Nの塩酸で滴定して測定した。
下記記載の方法で得られたポリアミド樹脂0.1gを30mlのベンジルアルコールに200℃で溶解し、160℃〜165℃の範囲でフェノールレッド溶液を0.1ml加えた。その溶液を0.132gのKOHをベンジルアルコール200mlに溶解させた滴定液(KOH濃度として0.01mol/l)で滴定して測定した。
(末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比([NH2]/[COOH]))
上記記載の方法で求められた末端アミノ基濃度及び末端カルボキシル基濃度から、算出した。
上記記載の中和滴定により求められたポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH2](μeq/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μeq/g)の値から、次式で算出した。
数平均分子量=2×1,000,000/([COOH]+[NH2])
前記した次式により求めた。
r=(1−cN−b(C−N))/(1−cC+a(C−N))
式中、a:M1/2
b:M2/2
c:18.015
M1:ジアミン成分の分子量(g/mol)
M2:ジカルボン酸成分の分子量(g/mol)
N:末端アミノ基濃度(eq/g)
C:末端カルボキシル基濃度(eq/g)
「油化学(Journal of Oleo Science)7、133(1958年)」に記載の方法に従って、各種産地のトウゴマから抽出したひまし油中リシノレイン酸のアルカリ溶融により、表1に記載の硫黄濃度、ナトリウム濃度、DMDC含量を有するセバシン酸(SA1)〜(SA4)を準備した。セバシン酸(SA1)〜(SA4)の硫黄原子濃度、ナトリウム原子濃度及びDMDC含量(質量%)は、表1に示した。
(実施例1)
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸(SA1)12,135g(60mol)を入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。
これにメタキシリレンジアミン(MXDA)8,172g(60mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分間溶融重合反応を継続した。
その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出して、これをペレット化し、約22kgのポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂の融点は、190℃、ガラス転移点は60℃であった。
このセバシン酸の性状、及び、ポリアミド樹脂の評価結果を表1に記載する。
反応容器に、セバシン酸(SA1)と共に、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)9.3149g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として150ppm)、酢酸ナトリウム4.8301gを入れた以外は実施例1と同様にポリアミド樹脂を合成した。なお、酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム一水和物のモル比は0.67である。得られたポリアミド樹脂の融点は、190℃、ガラス転移点は60℃であった。
セバシン酸を表1記載の性状を有するSA2に変えた以外は、それぞれ実施例1、実施例2と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した。これらのポリアミド樹脂の評価結果を表1に記載する。得られたポリアミド樹脂の融点は、それぞれ190℃、190℃、ガラス転移点は、それぞれ60℃、60℃であった。
セバシン酸を表1記載の性状を有するSA3に変え、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)を3.1050g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として50ppm)、酢酸ナトリウムを1.6100gとした以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した。得られたポリアミド樹脂の融点は、190℃、ガラス転移点は60℃であった。
メタキシリレンジアミン(MXDA)を、メタキシリレンジアミン(MXDA)とパラキシリレンジアミン(PXDA)の6:4の混合ジアミンとし、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)を12.4198g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として200ppm)、酢酸ナトリウムを6.4402gとした以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した。得られたポリアミド樹脂の融点は221℃、ガラス転移点は64℃であった。
攪拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したセバシン酸(SA1)8950g(44mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物13.7401g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として300ppm)、酢酸ナトリウム10.6340gを秤量して仕込んだ。なお、次亜リン酸ナトリウムと酢酸ナトリウムのモル比は1.0である。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素で0.3MPaに加圧し、攪拌しながら160℃に昇温してセバシン酸を均一に溶融した。次いでパラキシリレンジアミン(PXDA)6026g(44mol)を攪拌下で170分を要して滴下した。この間、内温は281℃まで連続的に上昇させた。滴下工程では圧力を0.5MPaに制御し、生成水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。パラキシリレンジアミン滴下終了後、0.4MPa/hrの速度で降圧し、60分間で常圧まで降圧した。この間に内温は299℃まで昇温した。その後0.002MPa/minの速度で降圧し、20分間で0.08MPaまで降圧した。その後攪拌装置のトルクが所定の値となるまで0.08MPaで反応を継続した。0.08MPaでの反応時間は10分であった。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約13kgのポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂の融点は288℃、ガラス転移点は75℃であった。
セバシン酸を表1記載の性状を有するSA4に変えた以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した。得られたポリアミド樹脂の融点は190℃、ガラス転移点は60℃であった。
なお、YI値、曲げ弾性率及びガスバリア性の評価は、以下のようにして行った。
(i)YI値
得られたポリアミド樹脂を用い、ファナック社製射出成形機100Tにて、シリンダー温度をポリアミド樹脂の融点+30℃、金型温度80℃の条件で3mm厚の平板を作製し、JIS K−7105に準拠し、日本電色工業(株)製のSE2000型分光式色彩計で、反射法により測定した。
得られたポリアミド樹脂を用い、ファナック社製射出成形機100Tにて、シリンダー温度をポリアミド樹脂の融点+30℃、金型温度80℃の条件で3mm厚の試験片を作製した。得られた試験片を、150℃にて1時間結晶化処理を行い、JIS K7171に準じて曲げ弾性率(GPa)を求めた。なお、装置は東洋精機株式会社製ストログラフを使用し、測定温度を23℃、測定湿度を50%RHとして測定した。
得られたポリアミド樹脂を、シリンダー径30mmのTダイ付き単軸押出機(プラスチック工学研社製、PTM−30)に供給した。シリンダー温度をポリアミド樹脂の融点+30℃とし、スクリュー回転数30rpmの条件で、Tダイを通じてフィルム状物を押出し冷却ロール上で固化し、厚さ100μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを用いて、23℃、75%RHの雰囲気下にて、JIS K7126に準じてフィルムの酸素透過係数(cc・mm/m2・day・atm)を測定した。測定は、モダンコントロールズ社製、OX−TRAN2/21を使用した。値が低いほど、ガスバリア性が良好であることを示す。
(セバシン酸の調製)
「油化学7、133(1958年)」に記載の方法に従って、各種産地のゴマから抽出したひまし油中、リシノレイン酸のアルカリ溶融により、表2に記載の硫黄濃度、ナトリウム濃度、DMDC含量を有するセバシン酸(SA11)〜(SA13)を準備した。
また、ひまし油由来のセバシン酸(SA14)として、伊藤製油(株)製セバシン酸TAグレードを使用した。さらに、特公昭57−60327による方法で、製油成分(アジピン酸)由来のセバシン酸(SA15)を準備した。
セバシン酸(SA11)〜(SA15)の硫黄原子濃度、ナトリウム原子濃度及びDMDC含量は、表2に示した。
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸(SA11)12,135g(60.00mol)を入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。
これに三菱ガス化学(株)製1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(以下、「14BAC」ともいう。シス/トランスモル比:20/80)8,413.8g(60.00mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの滴下終了後、内温を300℃として40分間溶融重合反応を継続した。
その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出して、これをペレット化し、約22kgのポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂の融点は288℃、ガラス転移点は89℃であった。
反応容器に、セバシン酸(SA11)と共に、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)9.439g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として150質量ppm)、酢酸ナトリウム4.8945gを入れた以外は実施例8と同様にポリアミド樹脂を合成した。なお、酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム一水和物のモル比は0.67である。得られたポリアミド樹脂の融点は288℃、ガラス転移点は89℃であった。
セバシン酸を表2記載の性状を有するSA12に変え、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンのシス/トランスモル比を変えた以外は、実施例10は実施例8と同様に、実施例11は実施例9と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した。これらのポリアミド樹脂の評価結果を表2に記載する。得られたポリアミド樹脂の融点は、それぞれ296℃、261℃、ガラス転移点は、それぞれ91℃、90℃であった。
セバシン酸を表2記載の性状を有するSA13に変え、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)を3.1463g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として50質量ppm)、酢酸ナトリウムを1.6351gとした以外は、実施例8と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した。得られたポリアミド樹脂の融点は288℃、ガラス転移点は89℃であった。
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを、シス体とトランス体の95:5の混合ジアミンとし、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)を12.5853g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として200質量ppm)、酢酸ナトリウムを6.526gとした以外は、実施例8と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した。得られたポリアミド樹脂の融点は207℃、ガラス転移点は87℃であった。
攪拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したセバシン酸(SA11)8950g(44.25mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物13.9232g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として300質量ppm)、酢酸ナトリウム10.7757gを秤量して仕込んだ。なお、次亜リン酸ナトリウムと酢酸ナトリウムのモル比は1.0である。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素で0.3MPaに加圧し、攪拌しながら160℃に昇温してセバシン酸を均一に溶融した。次いで1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン6174.5g(44.03mol)を攪拌下で170分を要して滴下した。この間、内温は291℃まで連続的に上昇させた。滴下工程では圧力を0.5MPaに制御し、生成水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン滴下終了後、0.4MPa/時間の速度で降圧し、60分間で常圧まで降圧した。この間に内温は300℃まで昇温した。その後0.002MPa/分の速度で降圧し、20分間で0.08MPaまで降圧した。その後攪拌装置のトルクが所定の値となるまで0.08MPaで反応を継続した。0.08MPaでの反応時間は10分であった。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約13kgのポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂の融点は288℃、ガラス転移点は89℃であった。
セバシン酸を表2記載の性状を有するSA14、SA15に変えた以外は、実施例8と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した。得られたポリアミド樹脂は、いずれも融点は288℃、ガラス転移点は89℃であった。
なお、YI値、曲げ弾性率及び引張り強さ保持率の評価は、以下のようにして行った。
(i)YI値
得られたポリアミド樹脂を150℃で5時間真空乾燥した後、ファナック社製射出成形機100Tにて、シリンダー温度をポリアミド樹脂の融点+25℃、金型温度30℃の条件で3mm厚の平板を作製し、JIS K7105に準拠し、日本電色工業(株)製のSE2000型分光式色彩計で、反射法により測定した。
得られたポリアミド樹脂を150℃で5時間真空乾燥した後、ファナック社製射出成形機100Tにて、シリンダー温度をポリアミド樹脂の融点+25℃、金型温度30℃の条件で3mm厚の試験片を作製した。得られた試験片を、150℃にて1時間結晶化処理を行い、JIS K7171に準じて曲げ弾性率(GPa)を求めた。なお、装置は東洋精機株式会社製ストログラフを使用し、測定温度を23℃、測定湿度を50%RHとして測定した。
得られたポリアミド樹脂を150℃で5時間真空乾燥した後、住友重機械工業社製射出成形機「SE50」にて、シリンダー温度をポリアミド樹脂の融点+25℃、金型温度30℃の条件で試験片(ISO試験片 4mm厚み)を作製した。
得られた試験片を150℃空気中で保存し、JIS K7113に準じて引張り強さ(MPa)を求めた。なお、150℃、24時間保存後の引張り強さを、150℃、1時間保存後の引張り強さで除して、引張り強さ保持率(%)を求めた。
(実施例15)
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸(SA11)12,135g(60.00mol)を入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。
これに三菱ガス化学(株)製1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC、シス/トランスモル比:74/26)8,413.8g(60.00mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの滴下終了後、内温を240℃として40分間溶融重合反応を継続した。
その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出して、これをペレット化し、約22kgのポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂の融点は、189℃、ガラス転移点は84.5℃であった。
反応容器に、セバシン酸(SA11)と共に、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)9.439g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として150質量ppm)、酢酸ナトリウム4.8945gを入れた以外は実施例1と同様にポリアミド樹脂を合成した。なお、酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム一水和物のモル比は0.67である。得られたポリアミド樹脂の融点は、189℃、ガラス転移点は84.5℃であった。
セバシン酸を表3記載の性状を有するSA12に変え、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンのシス/トランスモル比を変えた以外は、実施例17は実施例15と同様に、実施例17は実施例15と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した。これらのポリアミド樹脂の評価結果を表3に記載する。得られたポリアミド樹脂の融点は、それぞれ204℃、204℃、ガラス転移点は、それぞれ86℃、86℃であった。
セバシン酸を表3記載の性状を有するSA13に変え、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)を3.1463g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として50質量ppm)、酢酸ナトリウムを1.6315gとした以外は、実施例15と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した。得られたポリアミド樹脂の融点は、189℃、ガラス転移点は84.5℃であった。
1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを、シス体とトランス体の96:4の混合ジアミンとし、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)を12.5853g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として200質量ppm)、酢酸ナトリウムを6.526gとした以外は、実施例15と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した。得られたポリアミド樹脂の融点は209℃、ガラス転移点は88℃であった。
攪拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したセバシン酸(SA11)8950g(44.25mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物13.9232g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として300質量ppm)、酢酸ナトリウム10.7757gを秤量して仕込んだ。なお、次亜リン酸ナトリウムと酢酸ナトリウムのモル比は1.0である。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素で0.3MPaに加圧し、攪拌しながら160℃に昇温してセバシン酸を均一に溶融した。次いで1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン6174.5g(44.03mol)を攪拌下で170分を要して滴下した。この間、内温は235℃まで連続的に上昇させた。滴下工程では圧力を0.5MPaに制御し、生成水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン滴下終了後、0.4MPa/時間の速度で降圧し、60分間で常圧まで降圧した。この間に内温は240℃まで昇温した。その後0.002MPa/分の速度で降圧し、20分間で0.08MPaまで降圧した。その後攪拌装置のトルクが所定の値となるまで0.08MPaで反応を継続した。0.08MPaでの反応時間は10分であった。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約13kgのポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂の融点は189℃、ガラス転移点は84.5℃であった。
セバシン酸を表3記載の性状を有するSA14、SA15に変えた以外は、実施例15と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した。得られたポリアミド樹脂はいずれも、融点が189℃、ガラス転移点が84.5℃であった。
(実施例22)
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸(SA11)12,135g(60.00mol)を入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。
これに三菱ガス化学(株)製1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC、シス/トランスモル比:70/30)および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC、シス/トランスモル比:15/85)からなる混合BAC(1,3−BAC/1,4−BAC混合比:70/30) 8,413.8g(60.00mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。混合ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの滴下終了後、内温を240℃として40分間溶融重合反応を継続した。
その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出して、これをペレット化し、約22kgのポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂の融点は、191℃、ガラス転移点は71℃であった。DSC測定では降温結晶化ピークを示さず、ほぼ非晶のポリアミドであることを確認した。
三菱ガス化学(株)製1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC、シス/トランスモル比:70/30)および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC、シス/トランスモル比:15/85)からなる混合BAC(1,3−BAC/1,4−BAC混合比:30/70)を用い、滴下終了後の内温を270℃とした以外は実施例22と同様にしてポリアミド樹脂を得た。融点は255℃、ガラス転移点は92℃であった。
上記で得られた各ポリアミド樹脂を実施例8〜14と同様にして、YI値、曲げ弾性率及び引張り強さ保持率の評価を行った。評価結果を表4に記載する。
Claims (9)
- ジアミン構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミン(A−1)及び/又はビス(アミノメチル)シクロヘキサン(A−2)に由来し、ジカルボン酸構成単位の50モル%以上がセバシン酸(B)に由来するポリアミド樹脂であって、硫黄原子濃度が1〜200質量ppmであることを特徴とするポリアミド樹脂。
- リン原子濃度が1〜500質量ppmであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂。
- ナトリウム原子濃度が1〜500質量ppmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂。
- キシリレンジアミン(A−1)が、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂。
- ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(A−2)が、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂。
- ジカルボン酸構成単位がセバシン酸(B)に由来することを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂。
- 数平均分子量が10,000〜50,000であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂。
- 下記関係式(1)で表される、ジカルボン酸成分に対するジアミン成分の反応モル比(r)が0.98〜1.1であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂。
r=(1−cN−b(C−N))/(1−cC+a(C−N)) (1)
(式中、a=M1/2、b=M2/2、c=18.015であり、M1はジアミン成分の分子量(g/mol)、M2はジカルボン酸成分の分子量(g/mol)、Nは末端アミノ基濃度(eq/g)、Cは末端カルボキシル基濃度(eq/g)を表す。) - 請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂を成形してなる成形品。
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