JPWO2011118810A1 - 栄養組成物 - Google Patents
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Abstract
本発明によれば、高熱量を供給し得る熱量素である脂質を高濃度で含有し、経口摂取および経胃または経腸投与等の経管投与のいずれにも適する栄養組成物であって、乳化安定性に優れ、熱量素としての利用効率にも優れた栄養組成物を提供することができる。本発明の栄養組成物は、脂質中の中鎖脂肪酸含有量が20重量%〜80重量%である脂質を用い、乳化剤として、レシチンおよび有機酸モノグリセリド等、その構造中に脂肪酸を有する乳化剤を用いて、水中油型乳化組成物としてなる。
Description
本発明は、高熱量を供給し得る熱量素である脂質を主成分として含む栄養組成物に関する。より詳しくは、乳化安定性に優れ、経口摂取、経管投与のいずれにも適し、医薬品もしくは飲食品として提供可能な栄養組成物に関する。
現在、経管投与に使用される市販の液状流動食および栄養剤は、熱量として1kcal/mL(g)〜2kcal/mL(g)に調整されているものがほとんどである。またこれら栄養組成物は、それのみで栄養管理(特に寝たきりの高齢者が対象となる)を可能とするような組成となっているものも多い。これらは、1回あたり数百mLを1日に数回に分けて投与されるのが一般的である。
たとえば、1日あたり1000kcalの投与が必要な場合、100mL/hの速度で投与されるとすると、1kcal/mLに調整された液状製剤では10時間、2kcal/mLの製剤でも5時間を要する計算となる。このため通常の食事、すなわち経口による栄養摂取の場合と比較して、栄養補給に要する時間が著しく長くなることは想像に難くない。このため多くのデメリットが発生する。例示すると、(1)長時間栄養投与に拘束されるため、運動療法に割く時間が限られること、(2)経管栄養による栄養投与時は一定の体位であることが求められるため、辱瘡発生のリスクが高まること、(3)看護師やヘルパー等、介護者に投与状況が適切であるか一定時間毎に確認する作業が求められることが少なくなく、そのための労力を要すること、(4)血糖値の推移や胃酸分泌状態等の生理機能応答が、通常の食事で惹起されるものとは異なるおそれがあること、(5)経管栄養準備時に微生物汚染が発生した場合、投与物において微生物が増殖する可能性があり、食中毒発生のリスクが高まることなどが挙げられる。よって可能な限り、栄養投与に際し投与に要する時間短縮を図ることが、より好ましい結果をもたらすと考えられる。
しかし、加齢に伴い胃が縮小した高齢者、脳血管障害、神経筋障害などにより嚥下・咀嚼能力が低下した患者、意識障害等により経口摂取が困難である患者、術後の患者などのように、胃腸管機能が減衰している場合には、胃食道逆流や下痢等の副次作用をきたすおそれがあることから、一度に多くの流動食や栄養剤を投与することは好ましくない。
栄養組成物を長時間または短時間で投与する際に生じる上記のような問題を解決する方法として、栄養組成物の組成を従来の製剤より高濃度とし、かつ製剤用量を小容量とすることが考えられる。高濃度とすることにより、十分量の熱量素を含有させ、小容量とすることにより、患者および介護者への負担を軽減することができる。ただし、一般的に使用されている総合的な栄養組成、すなわちタンパク質、炭水化物、脂質、ミネラル、ビタミンを含有する製剤として高濃度化することは、製剤および成分安定性の見地から困難であるため、主として脂質を含み、熱量素補給に特化した補充液的な形態とすることが好ましいと言える。
かかる高濃度かつ小容量で、熱量素補給を目的とした経口・経腸栄養用脂肪乳剤としては、マイクロリピッド(「Microlipid」;ノバルティス社、登録商標)が市販されている。これはサフラワー油100%の脂質組成で、4.5kcal/mL(脂質50g/100mL)の液状乳化製剤であり、スクリューキャップで閉栓されたガラス瓶入りの形態となっていて、容量は89mL/個である。前記乳化製剤は熱量素補給用途としては好ましい液状組成物ではあるが、脂肪酸組成について特に考慮されておらず、熱量素としての利用効率が良好であるとはいえないこと、経管投与する場合には、別容器を介する必要があるため、衛生面、利便性の観点から使い勝手が悪いこと、十分な乳化安定性を有さず、室温保存時に容易に分離してしまうこと、一包装単位の容量が多く、小容量使用する場合には衛生的でないこと等、十分好ましいと言える製剤ではない。
一方、経管投与に簡便に使用できる脂肪乳剤として、液面と酸素との接触を実質的に回避したプレフィルドシリンジ製剤とする技術(特許文献1、2)が開示されている。しかしこれら技術は専ら経静脈投与に適した製剤技術を提供しているのみであり、経胃または経腸栄養への適用については触れられていない。また開示されている充填容量も数mLであり、熱量素補給の観点から十分精査されていない。市販の脂肪乳剤であるイントラリピッド(テルモ株式会社、登録商標)やイントラリポス(株式会社大塚製薬工場、登録商標)に代表される医薬品製剤についても、経静脈投与を目的としており、離水等製剤安定性の面では良好であるものの、含有脂質濃度は10%または20%で、長鎖脂肪酸を主成分としており、「高濃度の脂質を含有する製剤」という観点から言えば、理想的な経胃または経腸栄養製剤であるとは言えない。
その他、脂肪乳剤の製剤に関する技術として、特許文献3〜5が開示されている。しかし、これらは主に、製剤安定性、特に粒子径の制御による相分離の抑制効果について開示された技術であり、やはり熱量素の投与という観点からは、脂質濃度に関する考察はなんらなされておらず、栄養素投与に関するより好ましい技術を開示するものではない。また前記脂肪乳剤においては、ブドウ糖やグリセリンが乳化安定剤として配合されており、その配合量や被投与者の状態によって、経口および経腸投与に際し、下痢が問題となるリスクを有する。よって、理想的な経胃または経腸栄養を行うための技術としては、不十分な情報開示にとどまっている。さらに、前記脂肪乳剤は経静脈投与を想定していることから、投与時のフィルターの目詰まりを回避するため、乳化粒子の平均粒子径を小さくすべく、製造時に高圧または多回数の乳化処理が必要である。
また、液状栄養組成物のキットに関する技術として、特許文献6〜8が開示されている。これらは各栄養素をそれぞれ分離した状態で製造、保存することを特徴とする技術であるが、熱量素補給に主眼を置いたキットではなく、小容量かつ高濃度で投与可能とすること、特に熱量素である脂質の利用効率の向上については検討されていない。また、かかるキットでは、使用に際し複数の液剤を混合する必要があるが、この操作が煩雑となる場合がある。
すなわち、熱量素として高濃度かつ利用効率の高い脂質を含有し、かつ乳化安定性に優れる一剤式の栄養組成物については、これまで十分満足のできるものは開示されていない。
そこで、本発明の課題は、高熱量を供給する熱量素である脂質を高濃度で含有し、経口摂取および経胃または経腸投与等の経管投与のいずれにも適する栄養組成物であって、乳化安定性に優れ、熱量素としての利用効率にも優れた栄養組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定量の中鎖脂肪酸を含有する脂質を用い、乳化剤として、レシチンおよび有機酸モノグリセリド等、その構造中に脂肪酸を有する乳化剤を用いることにより、熱量素として利用効率の良好な脂質を高濃度に含有しながら、乳化安定性に優れる栄養組成物を得ることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[18]に関する。
[1]脂質中の中鎖脂肪酸含有量が20重量%〜80重量%である脂質と、その構造中に脂肪酸を有する乳化剤を含有してなる水中油型乳化組成物であって、前記脂質および前記乳化剤の総含有量が、組成物全量に対して25(w/v)%〜65(w/v)%である、栄養組成物。
[2]その構造中に脂肪酸を有する乳化剤が、レシチンおよび有機酸モノグリセリドよりなる群から選択した1種または2種以上である、上記[1]に記載の栄養組成物。
[3]有機酸モノグリセリドがクエン酸モノグリセリドである、上記[2]に記載の栄養組成物。
[4]脂質中の中鎖脂肪酸が、中鎖脂肪酸トリグリセリドの形態で含有されている、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[5]さらに、糖類およびグリセリンよりなる群から選択した1種または2種以上を含有する、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[6]糖類およびグリセリンよりなる群から選択した1種または2種以上の含有量が、組成物全量に対して35(w/v)%以下である、上記[5]に記載の栄養組成物。
[7]糖尿病患者用である、上記[6]に記載の栄養組成物。
[8]脂質中のω−3系脂肪酸とω−6系脂肪酸の重量比が1:10〜10:1である脂質を含有する、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[9]リンの含有量が、栄養組成物100kcalあたり20mg以下である、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[10]腎臓病患者用である、上記[9]に記載の栄養組成物。
[11]さらに、タンパク質、食物繊維、ビタミン類およびミネラル類よりなる群から選択される1種または2種以上を含有する、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[12]10mL〜100mLの容量を一包装単位とする、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[13]無菌状態で充填されている、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[14]経口摂取用である、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[15]経胃または経腸投与用である、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[16]上記[1]〜[11]のいずれかに記載の栄養組成物を含有する医薬品。
[17]上記[1]〜[11]のいずれかに記載の栄養組成物を含有する飲食品。
[18]総合栄養組成物と、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の栄養組成物とを含む、経口摂取用または経胃もしくは経腸投与用栄養剤キット。
[1]脂質中の中鎖脂肪酸含有量が20重量%〜80重量%である脂質と、その構造中に脂肪酸を有する乳化剤を含有してなる水中油型乳化組成物であって、前記脂質および前記乳化剤の総含有量が、組成物全量に対して25(w/v)%〜65(w/v)%である、栄養組成物。
[2]その構造中に脂肪酸を有する乳化剤が、レシチンおよび有機酸モノグリセリドよりなる群から選択した1種または2種以上である、上記[1]に記載の栄養組成物。
[3]有機酸モノグリセリドがクエン酸モノグリセリドである、上記[2]に記載の栄養組成物。
[4]脂質中の中鎖脂肪酸が、中鎖脂肪酸トリグリセリドの形態で含有されている、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[5]さらに、糖類およびグリセリンよりなる群から選択した1種または2種以上を含有する、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[6]糖類およびグリセリンよりなる群から選択した1種または2種以上の含有量が、組成物全量に対して35(w/v)%以下である、上記[5]に記載の栄養組成物。
[7]糖尿病患者用である、上記[6]に記載の栄養組成物。
[8]脂質中のω−3系脂肪酸とω−6系脂肪酸の重量比が1:10〜10:1である脂質を含有する、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[9]リンの含有量が、栄養組成物100kcalあたり20mg以下である、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[10]腎臓病患者用である、上記[9]に記載の栄養組成物。
[11]さらに、タンパク質、食物繊維、ビタミン類およびミネラル類よりなる群から選択される1種または2種以上を含有する、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[12]10mL〜100mLの容量を一包装単位とする、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[13]無菌状態で充填されている、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[14]経口摂取用である、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[15]経胃または経腸投与用である、上記[1]または[2]に記載の栄養組成物。
[16]上記[1]〜[11]のいずれかに記載の栄養組成物を含有する医薬品。
[17]上記[1]〜[11]のいずれかに記載の栄養組成物を含有する飲食品。
[18]総合栄養組成物と、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の栄養組成物とを含む、経口摂取用または経胃もしくは経腸投与用栄養剤キット。
本発明の栄養組成物は乳化安定性に優れ、長期間保存した場合、少なくとも1ヶ月は離水やクリーミング等の相分離といった乳化状態の変化が見られない。また、熱量素としての利用効率のよい脂質を高濃度に含有しながら、小容量とすることができるので、経口摂取、経胃または経腸投与等の経管投与のいずれにも適し、熱量供給の必要な患者にとって有用である。
本発明の栄養組成物は中鎖脂肪酸含有量の高い脂質を高濃度含み、レシチン、有機酸モノグリセリド等、その構造中に脂肪酸を有する乳化剤により乳化してなる、水中油型乳化組成物である。
本発明の栄養組成物に含有される「脂質」は、熱量素として利用される脂肪、すなわち油脂類をいう。かかる油脂類としては、医薬品用または飲食品用として提供されているものであれば特に制限なく用いることができるが、たとえば、アボカド油、アマニ油、アーモンド油、エゴマ油、オリーブ油、カカオ脂、グレープシード油、ゴマ油、コメ油、サフラワー油、シソ油、大豆油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヌカ油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、ヘーゼルナッツ油、綿実油、ヤシ油、レタス油等の植物性油脂類;魚油、鶏油、牛脂、豚脂、羊脂等の動物性油脂類;バター油、バター、マーガリン等の乳脂や加工油脂などが挙げられる。本発明においては、これらより1種または2種以上を選択して用いる。
本発明においては、脂質中の中鎖脂肪酸含有量が20重量%〜80重量%であるものを用いる。本発明で「中鎖脂肪酸」とは、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等の炭素数が8〜12の脂肪酸をいい、これらは、脂質中に中鎖脂肪酸トリグリセリドの形態で含まれることが好ましい。中鎖脂肪酸は、一般的に油脂類に存在する長鎖脂肪酸に比べて約4倍消化吸収が早く、吸収後はリンパ管を通らずに門脈を経て肝臓へ運ばれ、速やかに代謝されるという特性を有するため、熱量素として好適に利用され得る。従って、脂質中の中鎖脂肪酸含有量が20重量%未満であると、熱量素としての利用効率が十分ではないため、好ましくない。一方、80重量%を超えると、血中ケトン体の上昇に伴うアシドーシス発症のおそれがある。本発明の目的には、「ココナードMT」、「ココナードRK」、「ココナードML」(花王ケミカル製)、「デリオスSJ」、「デリオスVJ」(コグニス社製)、「アクター M−1」、「アクター M−107FR」(理研ビタミン社製)等、「中鎖脂肪酸トリグリセリド」として市販されている製品を用いることができる。また、ヤシ油、パーム油、パーム核油、バター油、バターなど、中鎖脂肪酸を比較的多く含有する油脂類を用いてもよい。ヤシ油やパーム油等としては、ヤシ等の天然植物より抽出し精製したものを用いてもよいが、市販品を用いるのが便利である。
次に、本発明においては、その構造中に脂肪酸を有する乳化剤を用いる。乳化剤の構造中に含まれる脂肪酸としては、ヤシ油、パーム油、大豆油、ナタネ油等の植物油脂由来の脂肪酸、特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数12〜18程度の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の炭素数18程度の不飽和脂肪酸などが挙げられる。前記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド)、前記グリセリン脂肪酸エステルの誘導体である有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられ、これらより1種または2種以上を選択して用いることができる。特に、レシチンおよび有機酸モノグリセリドよりなる群から選択される少なくとも1種を乳化剤に含ませることにより、乳化安定性に優れ、保存時に少なくとも1ヶ月は水相と油相の分離が生じない組成物を得ることができる。
レシチンとは、リン脂質を含む脂質製品をいうが、本発明において乳化剤として用い得るレシチンとしては、大豆より得られ、ホスファチジルコリンを主成分とする大豆レシチン;アブラナ等の種子より得られる植物レシチン;卵黄より得られる卵黄レシチン;大豆レシチンや植物レシチンまたは卵黄レシチンを酵素分解して得られ、ホスファチジン酸および/またはリゾレシチンを主成分とする酵素分解レシチン;スフィンゴミエリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリンを主成分とする分別レシチン;レシチンを部分的に加水分解して得られる部分水解レシチン、レシチンに水素添加して得られる水素添加レシチン、レシチンに水酸基を導入して得られる水酸化レシチン等の化学修飾レシチンなどが挙げられる。本発明においては、大豆レシチン、酵素分解レシチン、分別レシチンのいずれか1種または2種以上が好ましく使用される。
また、有機酸モノグリセリドは、脂肪酸モノグリセリドの残余の水酸基に有機酸を結合させた前記モノグリセリドの誘導体である。本発明において乳化剤として用い得る有機酸モノグリセリドとしては、酢酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド等が挙げられる。本発明においては、耐酸乳化に優れ、油脂の酸化防止剤の助剤としても使用されることから、クエン酸モノグリセリドが最も好ましく使用される。
さらに、乳化剤として、脂肪酸グリセリンエステル、特に好ましくは脂肪酸モノグリセリドの1種または2種以上と、レシチンおよび有機酸モノグリセリドよりなる群から選択される1種または2種以上を併用することにより、より良好な乳化安定性が得られる。
本発明の栄養組成物において、安定な乳化を保つためには、使用される脂質の総量に対して、その構造中に脂肪酸を有する乳化剤の総量を5重量%〜40重量%、好ましくは10重量%〜30重量とすればよい。また、レシチンおよび有機酸モノグリセリドよりなる群から選択される1種または2種以上は、これらの総量で栄養組成物全量に対して2(w/v)%〜26(w/v)%、その構造中に脂肪酸を有する乳化剤の全量に対して30重量%〜100重量%含有されることが好ましい。
本発明の栄養組成物において、上記脂質と、その構造中に脂肪酸を有する乳化剤とを合わせた含有量は、組成物全量に対し25(w/v)%〜65(w/v)%であり、25(w/v)%〜55(w/v)%であることが好ましく、30(w/v)%〜50(w/v)%であることがより好ましい。
またその構造中に脂肪酸を含まない乳化剤や、その他乳化安定化作用を有する原料、たとえば、寒天、カラギーナン等のゲル化剤や増粘多糖類;リン酸塩、クエン酸塩等のキレート作用を有する塩類などを使用してもよい。これらのうちから保存安定性、耐熱性、吸収性、製造コスト等を考慮して1種または2種以上を選択し、配合量および配合量比を決定することができる。
熱量素を好ましい形態で補給するという観点から、糖質およびグリセリンよりなる群から選択した1種または2種以上を、血糖値の上昇や高浸透圧に由来する消化障害(下痢等)が問題とならない程度であれば含有させることができる。ただし本発明の栄養組成物は、脂質を高濃度で含有するため、さらに糖質等を多量含有させることにより水分量が相対的に低下し、製造適性や風味の低下、粘度上昇に由来する殺菌性、投与時の簡便性等が損なわれるおそれがある。そこで、本発明においては、糖質およびグリセリンよりなる群から選択した1種または2種以上を含有させる場合には、組成物全量に対し35(w/v)%以下、好ましくは10(w/v)%以下とするのがよい。本発明においては、糖質は必ずしも含有させる必要はない。経静脈栄養を含めて、別途栄養組成物として被投与者の体内に糖質が供給される状況にあるのであれば、糖質を含有しない組成物とすることにより、血糖値を制御することが可能となる。すなわち、糖質含有量を考慮することにより、糖尿病患者への適切な熱量素補給源とすることができる。また、慢性閉塞性呼吸器疾患をはじめとした肺疾患に対して、糖質投与による代謝性の二酸化炭素の発生を軽減することができ、肺への換気負荷を少なくすることができるといった利点を有する。
本発明において用い得る糖質としては、ブドウ糖、果糖等の単糖類;ショ糖、麦芽糖等の二糖類;フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、乳果オリゴ糖等のオリゴ糖類;デキストリン、デキストラン、デンプン、グリコーゲン等の多糖類;キシリトール、ソルビトール、還元デキストリン等の糖アルコール類などを挙げることができる。
また必須脂肪酸を必要とする場合においては、脂質中のω−3系脂肪酸とω−6系脂肪酸の重量比が1:10〜10:1であることが好ましく、1:4〜4:1であることがより好ましい。「ω−3系脂肪酸」は、「n−3系脂肪酸」とも表され、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸等が例示される。エイコサペンタエン酸には、インスリン抵抗性を改善する作用が知られているため、糖尿病性腎症の場合にはより好適に用いることができる。本発明においては、これらより1種または2種以上を選択して用いる。また「ω−6系脂肪酸」は、「n−6系脂肪酸」とも表され、リノール酸、γ−リノレン酸およびアラキドン酸等が例示される。本発明においては、これらより1種または2種以上を選択して用いる。
上記ω−3系脂肪酸はシソ油、アマニ油、魚油等に、ω−6系脂肪酸はサフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、ナタネ油、月見草油等に豊富に含まれており、本発明においては、これら油脂類から抽出、精製して用いることができる。また、化学合成法、発酵法等により製造したものを用いることもでき、飲食品用に上市されている市販品を用いることもできる。さらに、脂質源として、前記したω−3系脂肪酸またはω−6系脂肪酸を豊富に含む油脂類をそのまま用いることもできる。さらにまた、かかるω−3系脂肪酸またはω−6系脂肪酸をその構造中に有する乳化剤を用いることにより、上記の脂肪酸組成を達成することもできる。なお、本発明においては、ω−3系脂肪酸として、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸のいずれか、または双方が含まれることが、各種炎症性疾患に対する効果の点で特に好ましい。ω−3系脂肪酸とω−6系脂肪酸との重量比については、使用が想定される患者の栄養状態、他の栄養組成物を併用する場合はその組成物に含まれる必須脂肪酸量、栄養組成物の投与経路、油脂の価格やグレード等を鑑み決定される。
また本発明においては、リンの含有量を調整することにより、腎臓病患者に対する栄養補給製剤として、適切な栄養管理が可能な栄養組成物を提供することができる。この場合のリンの含有量は、栄養組成物100kcalあたり20mg以下とするのが好ましく、10mg以下とするのがより好ましい。リンの配合量を調整するためには、リン酸塩、リン酸エステル等のリン供給源となる成分の配合量を調整する必要があり、乳化剤として用いられるレシチンやリゾレシチン等の使用量を適切に規定する必要がある。リン脂質の使用量を低減させる場合、有機酸モノグリセリドをリン脂質に代替して使用することが好ましい。
本発明の栄養組成物には、さらに他の熱量素として、タンパク質を添加することができる。タンパク質としては、カゼインおよびその塩、ホエー等の乳タンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質、トウモロコシタンパク質、ジャガイモタンパク質、魚肉タンパク質、畜肉タンパク質、卵タンパク質等が挙げられ、これらを多く含む原材料を粉末、顆粒、フレークまたはペレット状に加工したものを用いることもできる。またこれらの加水分解物を用いることもでき、アミノ酸およびその塩より1種または2種以上を選択して用いてもよい。また、これらは、必要に応じて、乳化安定性向上を目的に配合することもできる。
また、本発明の栄養組成物には、他の栄養成分を添加することもできる。かかる栄養成分としては、食物繊維、ビタミン類およびミネラル類が挙げられる。
食物繊維としては、ペクチン、アガロース、グルコマンナン、セルロース、難消化性デキストリン等を挙げることができ、これらより1種または2種以上を選択して用いることができる。なお、本発明の目的には、食物繊維としては、厚生労働省通知(食新発第0217001号、食新発第0217002号)により示されたエネルギー換算係数が0kcal/gでないものが好ましい。かかる食物繊維としては、グアーガムおよびその加水分解物、難消化性デキストリン、小麦胚芽、水溶性大豆食物繊維等が挙げられる。
ビタミン類としては、レチノール、レチナール、レチノイン酸等のビタミンA;β−カロテン等のカロテノイド;エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等のビタミンD;α−トコフェロール、γ−トコフェロール等のビタミンE;フィロキノン、メナキノン等のビタミンKといった脂溶性ビタミン類、チアミン等のビタミンB1、リボフラビン等のビタミンB2、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン等のビタミンB6、シアノコバラミン等のビタミンB12、ニコチン酸、ニコチン酸アミド等のナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸等のビタミンB群;ビタミンCといった水溶性ビタミン類が挙げられる。
ミネラル類としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、ヨウ素、鉄、銅、マンガン、セレン、亜鉛、クロム、モリブデン等、一般的なミネラル類が挙げられる。なお、腎臓病患者用の栄養組成物とする場合には、上述したように、栄養組成物100kcalあたりのリン含有量は20mg以下とすることが好ましい。
なお、本発明の栄養組成物は、組成物の安定性上問題のない範囲で高熱量かつ小容量とすることが好ましく、具体的には、2.5kcal/mL〜6kcal/mLとすることが好ましく、3kcal/mL〜5kcal/mLとすることがより好ましい。
本発明の栄養組成物には、必要に応じて、さらに他の医薬品用または食品用添加物を添加することができる。かかる添加物としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、グルコン酸、水酸化ナトリウム等のpH調整剤;エリソルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル等の抗酸化剤;アスパルテーム、カンゾウエキス、サッカリン等の嬌味剤;乳酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸等の酸味剤;安息香酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル等の防腐剤;ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カルミン、食用青色1号、食用黄色4号、食用赤色2号等の着色剤などが挙げられる。
本発明の栄養組成物は、そのまま、または医薬品もしくは飲食品用担体とともに含有させて、医薬品または飲食品として提供することができる。医薬品としては、経口摂取用製剤または経胃・経腸栄養剤等の経管投与用製剤とすることができる。また、飲食品としては、乳状またはクリーム状の一般食品とすることもできるが、特定保健用食品、栄養機能食品等の保健機能食品、栄養補助食品、その他の健康食品などとすることが好ましい。
なお、かかる場合に、本発明の栄養組成物として、糖質およびグリセリンよりなる群から選択した1種または2種以上の含有量を、組成物全量に対して35(w/v)%以下となるように制御した組成物を用いることにより、糖尿病患者用の医薬品または飲食品とすることができる。また、リンの含有量を栄養組成物100kcalあたり20mg以下となるように制御した組成物を用いることにより、腎臓病患者用の医薬品または飲食品とすることができる。
本発明の栄養組成物の一包装あたりの容量は、一回あたりの使用量、微生物汚染の抑制、ハンドリングの観点などから、必要な熱量を補給する上で支障のない限り、小容量であることが好ましい。具体的には、好ましくは10mL〜100mL、より好ましくは10mL〜50mLを一包装単位とする。一包装単位が前記容量であれば、全量を一回で経管投与する場合に、注入速度に留意する必要がほとんどなく、十分な熱量素の補給が容易である。
本発明の栄養組成物の一包装単位の容量を小容量とすることにより、胃瘻や腸瘻を造設された患者に対する経管投与において有利となる。胃瘻や腸瘻を経た経管栄養法は急速に普及しつつあるが、これは従来の経鼻胃管による栄養管理よりも容易であり、患者の生活の質を向上させることができるためであると言われる。本発明の栄養組成物を経胃瘻または経腸瘻投与に用いれば、投与に要する時間は数分で済むと予想され、患者の状態に合わせて必要な熱量を投与する際、様子を見ながら実施する時間の短縮が可能となる。また、衛生的で廃棄物も少なく、投与操作がより簡便となるため、さらに生活の質の向上につながる可能性がある。さらに浸透圧を調節しやすいため、下痢のリスクも低減できる。またさらに、高齢者においては、加齢に伴い胃が縮小している場合が少なくなく、摂取できる食事の量が極めて少ないことから、小容量で高濃度の脂質を含有する本発明の栄養組成物は有用である。特に胃食道逆流を頻発する場合や、胃容積が縮小し投与容量に制限がある場合に、より効果を発揮する。また、腸瘻を介する場合は酸性の液状物を投与することは好ましくないことから、本発明の栄養組成物のpHは5〜7.5であることが好ましく、5.5〜6.8であることがより好ましい。pHを中性付近に調整することにより、胃壁に障害を持つ患者に対して使用しても、副次作用の発生を少なくすることが可能となる。
小容量の栄養組成物を充填する容器としては、経胃・経腸栄養用チューブ等の経管投与用チューブを介して使用され、該チューブに接続し注入可能な部位を有すると同時に、注入後に空気もしくは水またはゲルにより、上記チューブ内をフラッシングすることが可能な機構を備えた容器であることが好ましい。そのような形態を有し、内容液が無菌に保たれることにより、直接経管チューブを介して使用するのではない場合、たとえば総合栄養流動食に本発明の栄養組成物を添加して使用する場合や、本発明の栄養組成物をキット製剤として使用する場合においても、微生物汚染を極力回避することが可能となる。かかる容器の具体的な形状としては、プレフィルドシリンジ、ブロー成型もしくは多層フィルムによって製袋されたスポイト状容器、口栓付パウチ等、ディスポーザブル用途の容器が挙げられる。
プレフィルドシリンジ等上記容器の材質は、ガラスおよびプラスチックのいずれでも問題ないが、輸送および使用時の安全性、廃棄物処理の観点からプラスチックであることが好ましい。また、透明性、遮光性および耐熱性が良好であり、リサイクル可能で、充填物に対して安定であるものがより好ましい。プラスチック樹脂としては、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン共重合体樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂等の架橋重合体による樹脂が挙げられる。ガスケット部には、プラスチックの他、ゴムまたはエラストマー等の弾性高分子材料を使用することもできるが、シリコーンまたはフッ素樹脂でコーティングした摺動性のよいゴムが好ましい。また経管投与用チューブと接続する部位については、種々の形状に適合するよう、先端部から漸次縮径されて延びるテーパ状を形成しているとよく、先端部の密閉性は、たとえば各種キャップによる閉栓、ネジ口キャップとスパウト形状による嵌合、接続部の一部を切り取ることで開封するような形状とすることによって保たれる。
また、本明細書において「無菌」とは、物質中に微生物が存在しないことをいい、医薬品製剤の場合には、日本薬局方に規定する条件を満たすことをいう。飲食品の場合は、食中毒菌、感染症の病原菌、腐敗の原因となる微生物などが存在せず、常温流通下において、感染あるいは腐敗や経済的損失をもたらすような微生物が存在しない、いわゆるレトルト食品における商業的無菌を意味する。かかる無菌は、アセプティック充填や充填後高温高圧滅菌処理等で達成される。本発明の栄養組成物においては、使用直前まで無菌が保たれ、また経管チューブとの接続、組成物の投与、経管チューブの洗浄に適した容器に充填することにより、微生物汚染を起こすおそれが極めて低減され、簡便に投与することが可能となる。
本発明の栄養組成物は、他の栄養組成物と組み合わせて、経口摂取用、または経胃もしくは経腸投与等の経管投与用の栄養剤キットとして提供することができる。かかるキットにおいて、総合栄養流動食等の総合栄養組成物と併用される場合には、より高熱量を供給することが可能となる。本発明の栄養組成物は、高濃度の脂質を含有しながら小容量であるため、給熱量に対する容積の増加は最小量にとどめられる。従って、投与する組成物の容積量に制限がある場合に、より効果を発揮する。また糖尿病患者に投与する場合など、血糖値の上昇を問題とする場合には、本発明の栄養組成物において、糖質添加量が考慮された組成物を使用することにより効率よく熱量を供給することができるとともに、血糖値の変動リスクが少なく、患者の栄養管理が容易となる。
本発明に係る栄養組成物は、通常の乳化方法により水中油型乳化組成物とすることによって得ることができる。たとえば、水溶性成分を添加する場合は該成分を水に混合した水相を加熱し、これに脂質と乳化剤、さらに油溶性成分を添加する場合は該成分を加えて混合した油相成分を添加し、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー等を用いて混合・均質化処理を行うことにより、調製することができる。なお、使用する乳化剤の種類や性状によっては、乳化剤を水相に添加することもできる。また、一部のビタミン類などのように熱に不安定な成分を添加する場合は、乳化処理して冷却した後に添加、混合することができる。
得られた栄養組成物のエマルション粒子の粒子径は、エマルション、ミセルについての一般的な粒子径測定方法、たとえば、動的光散乱法、レーザー回折法等により測定することができる。本発明に係る栄養組成物については、レーザー回折散乱法を用いて平均粒子径を測定した。
本発明の栄養組成物は調製した後、上述したシリンジ、パウチ等の容器に充填し、滅菌処理を行う。滅菌処理方法は、栄養組成物に含有される成分や充填される容器の熱や圧力に対する安定性等を考慮して選択され、たとえば高圧蒸気滅菌法、フィルターろ過法、エチレンオキシドガス等によるガス滅菌法などを用いることができる。また、アクセプティック充填により、栄養組成物を無菌的に充填することも好ましい。
以下に実施例により、本発明について詳細に説明する。
[実施例1]栄養組成物
(1)表1に示す組成に従い、3Lのステンレスバケツ(以下Aと記す)に調合水740gを計量し、湯浴にて70℃〜80℃に加温した。次いで、TKロボミックス(プライミクス株式会社製)にて、3000rpmの高速攪拌条件下に、デキストリンを添加し、溶解した。
(2)食用油脂である大豆油および中鎖脂肪酸トリグリセリド、ならびに乳化剤である粉末レシチン(酵素分解レシチン)および脂肪酸モノグリセリドをAに投入した。次いで2000mLにメスアップした後、均一な状態となるまで溶解分散させ、高圧ホモジナイザーにより70MPaの均質圧で2回処理した。
(3)アルミパウチに1個あたりの重量が150gとなるように充填し、123℃で10分間レトルト滅菌処理を行い、栄養組成物を得た。
(1)表1に示す組成に従い、3Lのステンレスバケツ(以下Aと記す)に調合水740gを計量し、湯浴にて70℃〜80℃に加温した。次いで、TKロボミックス(プライミクス株式会社製)にて、3000rpmの高速攪拌条件下に、デキストリンを添加し、溶解した。
(2)食用油脂である大豆油および中鎖脂肪酸トリグリセリド、ならびに乳化剤である粉末レシチン(酵素分解レシチン)および脂肪酸モノグリセリドをAに投入した。次いで2000mLにメスアップした後、均一な状態となるまで溶解分散させ、高圧ホモジナイザーにより70MPaの均質圧で2回処理した。
(3)アルミパウチに1個あたりの重量が150gとなるように充填し、123℃で10分間レトルト滅菌処理を行い、栄養組成物を得た。
上記組成物を25℃で保存し、滅菌処理の翌日、回転式粘度計(「BH−80」、東機産業株式会社製)にてローターNo.1、12rpmの条件下、25℃で測定したところ、約300cPであった。また、平均粒子径をレーザー回折散乱法粒度分布測定装置(LS13 320;ベックマン・コールター社製)を用いて測定したところ、0.19μmであった。pHは5.8であった。
[実施例2]栄養組成物
(1)表1に示す組成に従い、3Lのステンレスバケツ(以下Bと記す)に調合水740gを計量し、湯浴にて70℃〜80℃に加温した。次いで、TKロボミックス(プライミクス株式会社製)にて、3000rpmの高速攪拌条件下に、デキストリンを添加し、溶解した。
(2)食用油脂である大豆油および中鎖脂肪酸トリグリセリド、ならびに乳化剤である粉末レシチン(酵素分解レシチン)、クエン酸モノグリセリドおよび脂肪酸モノグリセリドをBに投入した。次いで2000mLにメスアップした後、均一な状態となるまで溶解分散させ、高圧ホモジナイザーにより70MPaの均質圧で2回処理した。
(3)アルミパウチに1個あたりの重量が150gとなるよう充填し、123℃で10分間レトルト滅菌処理を行った。
(1)表1に示す組成に従い、3Lのステンレスバケツ(以下Bと記す)に調合水740gを計量し、湯浴にて70℃〜80℃に加温した。次いで、TKロボミックス(プライミクス株式会社製)にて、3000rpmの高速攪拌条件下に、デキストリンを添加し、溶解した。
(2)食用油脂である大豆油および中鎖脂肪酸トリグリセリド、ならびに乳化剤である粉末レシチン(酵素分解レシチン)、クエン酸モノグリセリドおよび脂肪酸モノグリセリドをBに投入した。次いで2000mLにメスアップした後、均一な状態となるまで溶解分散させ、高圧ホモジナイザーにより70MPaの均質圧で2回処理した。
(3)アルミパウチに1個あたりの重量が150gとなるよう充填し、123℃で10分間レトルト滅菌処理を行った。
上記組成物を25℃で保存し、滅菌処理の翌日、回転式粘度計(「BH−80」、東機産業株式会社製)にてローターNo.1、12rpmの条件下、25℃で測定したところ、約180cPであった。また、平均粒子径をレーザー回折散乱法粒度分布測定装置(LS13 320;ベックマン・コールター社製)を用いて測定したところ、0.19μmであった。pHは4.0であった。
なお、実施例1および2の栄養組成物について、100kcalあたりのリン含有量および1mLあたりの熱量の計算値を、表1中に併せて示した。
[実施例3]栄養組成物
(1)表2に示す組成に従い、3Lのステンレスバケツ(以下Cと記す)に調合水900gを計量し、湯浴にて70℃〜80℃に加温した。
(2)TKロボミックス(プライミクス株式会社製)にて、3000rpmの高速攪拌条件下に、乳化剤である粉末レシチン(酵素分解レシチン)をCに投入した。また、食用油脂である大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ナタネ油および精製魚油、ならびに乳化剤であるペースト状レシチン(大豆レシチン)および脂肪酸モノグリセリドを、あらかじめ混合した後、Cに投入した。なお、各種食用油脂の配合量は、脂質組成において、ω−3系脂肪酸:ω−6系脂肪酸=1:2.7(重量比)となるように調整した。次いで2000mLにメスアップした後、均一な状態となるまで溶解分散させ、高圧ホモジナイザーにより70MPaの均質圧で2回処理した。
(3)アルミパウチに1個あたりの重量が150gとなるよう充填し、123℃で10分間レトルト滅菌処理を行った。
(1)表2に示す組成に従い、3Lのステンレスバケツ(以下Cと記す)に調合水900gを計量し、湯浴にて70℃〜80℃に加温した。
(2)TKロボミックス(プライミクス株式会社製)にて、3000rpmの高速攪拌条件下に、乳化剤である粉末レシチン(酵素分解レシチン)をCに投入した。また、食用油脂である大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ナタネ油および精製魚油、ならびに乳化剤であるペースト状レシチン(大豆レシチン)および脂肪酸モノグリセリドを、あらかじめ混合した後、Cに投入した。なお、各種食用油脂の配合量は、脂質組成において、ω−3系脂肪酸:ω−6系脂肪酸=1:2.7(重量比)となるように調整した。次いで2000mLにメスアップした後、均一な状態となるまで溶解分散させ、高圧ホモジナイザーにより70MPaの均質圧で2回処理した。
(3)アルミパウチに1個あたりの重量が150gとなるよう充填し、123℃で10分間レトルト滅菌処理を行った。
上記組成物を25℃で保存し、滅菌処理の翌日、回転式粘度計(「BH−80」、東機産業株式会社製)にてローターNo.1、12rpmの条件下、25℃で測定したところ、約30cPであった。また、平均粒子径をレーザー回折散乱法粒度分布測定装置(LS13 320;ベックマン・コールター社製)を用いて測定したところ、0.29μmであった。pHは6.0であった。
[実施例4]栄養組成物
(1)表2に示す組成に従い、3Lのステンレスバケツ(以下Dと記す)に調合水900gを計量し、湯浴にて70℃〜80℃に加温した。
(2)TKロボミックス(プライミクス株式会社製)にて、3000rpmの高速攪拌条件下に、乳化剤である粉末レシチン(酵素分解レシチン)をDに投入した。また、食用油脂である大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ナタネ油および精製魚油、ならびに乳化剤であるペースト状レシチン(大豆レシチン)、クエン酸モノグリセリドおよび脂肪酸モノグリセリドを、あらかじめ混合した後、Dに投入した。なお、各種食用油脂の配合量は、脂質組成において、ω−3系脂肪酸:ω−6系脂肪酸=1:2.7(重量比)となるように調整した。次いで2000mLにメスアップした後、均一な状態となるまで溶解分散させ、高圧ホモジナイザーにより70MPaの均質圧で2回処理した。
(3)アルミパウチに1個あたりの重量が150gとなるよう充填し、123℃で10分間レトルト滅菌処理を行った。
(1)表2に示す組成に従い、3Lのステンレスバケツ(以下Dと記す)に調合水900gを計量し、湯浴にて70℃〜80℃に加温した。
(2)TKロボミックス(プライミクス株式会社製)にて、3000rpmの高速攪拌条件下に、乳化剤である粉末レシチン(酵素分解レシチン)をDに投入した。また、食用油脂である大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ナタネ油および精製魚油、ならびに乳化剤であるペースト状レシチン(大豆レシチン)、クエン酸モノグリセリドおよび脂肪酸モノグリセリドを、あらかじめ混合した後、Dに投入した。なお、各種食用油脂の配合量は、脂質組成において、ω−3系脂肪酸:ω−6系脂肪酸=1:2.7(重量比)となるように調整した。次いで2000mLにメスアップした後、均一な状態となるまで溶解分散させ、高圧ホモジナイザーにより70MPaの均質圧で2回処理した。
(3)アルミパウチに1個あたりの重量が150gとなるよう充填し、123℃で10分間レトルト滅菌処理を行った。
上記組成物を25℃で保存し、滅菌処理の翌日、回転式粘度計(「BH−80」、東機産業株式会社製)にてローターNo.1、12rpmの条件下、25℃で測定したところ、約16cPであった。また、平均粒子径をレーザー回折散乱法粒度分布測定装置(LS13 320;ベックマン・コールター社製)を用いて測定したところ、0.20μmであった。pHは4.3であった。
なお、実施例3および4の栄養組成物について、100kcalあたりのリン含有量および1mLあたりの熱量の計算値を、表2中に併せて示した。
[試験例]保存時の乳化安定性の評価
上記実施例1〜4の栄養組成物について、Microlipid(ノバルティス社;登録商標)を比較例として、保存時の乳化安定性を評価した。すなわち、実施例の各栄養組成物および比較例の組成物を室温にて6ヶ月間静置保存し、乳化状態を経時的に観察した。乳化状態は以下の評価基準に従って評価し、その結果を表3に示した。
<評価基準>
○;離水およびクリーミングは認められない
△;離水もしくはクリーミングが少し認められる
×;離水もしくはクリーミングが顕著に認められる
上記実施例1〜4の栄養組成物について、Microlipid(ノバルティス社;登録商標)を比較例として、保存時の乳化安定性を評価した。すなわち、実施例の各栄養組成物および比較例の組成物を室温にて6ヶ月間静置保存し、乳化状態を経時的に観察した。乳化状態は以下の評価基準に従って評価し、その結果を表3に示した。
<評価基準>
○;離水およびクリーミングは認められない
△;離水もしくはクリーミングが少し認められる
×;離水もしくはクリーミングが顕著に認められる
表3より明らかなように、実施例1〜4の栄養組成物は、いずれも良好な乳化安定性を示し、6ヶ月目に実施例2の組成物において若干の離水を認めたものの、3ヶ月以上離水等の相分離は見られなかった。一方、比較例の組成物は、保存1ヶ月目に若干の相分離が見られ、2ヶ月目には相分離は顕著なものとなった。
以上詳述したように、本発明によれば、乳化安定性に優れ、熱量素としての利用効率のよい脂質を高濃度に含有し、かつ小容量とすることができ、経口摂取、経胃または経腸投与等の経管投与のいずれにも適する栄養組成物を提供することができる。従って、前記栄養組成物は、熱量供給の必要な患者にとって有用である。
本出願は、日本国で出願された特願2010−073639を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
Claims (18)
- 脂質中の中鎖脂肪酸含有量が20重量%〜80重量%である脂質と、その構造中に脂肪酸を有する乳化剤を含有してなる水中油型乳化組成物であって、前記脂質および前記乳化剤の総含有量が、組成物全量に対して25(w/v)%〜65(w/v)%である、栄養組成物。
- その構造中に脂肪酸を有する乳化剤が、レシチンおよび有機酸モノグリセリドよりなる群から選択した1種または2種以上である、請求項1に記載の栄養組成物。
- 有機酸モノグリセリドがクエン酸モノグリセリドである、請求項2に記載の栄養組成物。
- 脂質中の中鎖脂肪酸が、中鎖脂肪酸トリグリセリドの形態で含有されている、請求項1または2に記載の栄養組成物。
- さらに、糖類およびグリセリンよりなる群から選択した1種または2種以上を含有する、請求項1または2に記載の栄養組成物。
- 糖類およびグリセリンよりなる群から選択した1種または2種以上の含有量が、組成物全量に対して35(w/v)%以下である、請求項5に記載の栄養組成物。
- 糖尿病患者用である、請求項6に記載の栄養組成物。
- 脂質中のω−3系脂肪酸とω−6系脂肪酸の重量比が1:10〜10:1である脂質を含有する、請求項1または2に記載の栄養組成物。
- リンの含有量が、栄養組成物100kcalあたり20mg以下である、請求項1または2に記載の栄養組成物。
- 腎臓病患者用である、請求項9に記載の栄養組成物。
- さらに、タンパク質、食物繊維、ビタミン類およびミネラル類よりなる群から選択される1種または2種以上を含有する、請求項1または2に記載の栄養組成物。
- 10mL〜100mLの容量を一包装単位とする、請求項1または2に記載の栄養組成物。
- 無菌状態で充填されている、請求項1または2に記載の栄養組成物。
- 経口摂取用である、請求項1または2に記載の栄養組成物。
- 経胃または経腸投与用である、請求項1または2に記載の栄養組成物。
- 請求項1または2に記載の栄養組成物を含有する医薬品。
- 請求項1または2に記載の栄養組成物を含有する飲食品。
- 総合栄養組成物と、請求項1または2に記載の栄養組成物とを含む、経口摂取用または経胃もしくは経腸投与用栄養剤キット。
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