JPS6342510B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

〔産業上の利用分野〕 本発明は通常の食事を摂取できない小児、老
人、ならびに手術前および手術後の患者の栄養管
理に使用され、液状で経口および経管により胃、
腸等の消化器管に簡便かつ安定して供給できる乳
化状栄養組成物に関するものである。 〔従来の技術〕 この種の乳化状栄養食品は天然食品や天然食品
を種々の程度に分解したものなどと種々の栄養剤
を混ぜ合わせて作られ、高カロリーで栄養的にバ
ランスのとれた組成物に調合されている。これら
の栄養食品は嚥下障害、消化管通過障害等の疾病
がある場合、手術後の早期栄養補給が必要である
場合、および長期にわたる栄養管理が必要な場合
などに使用されている。現在このような目的に使
用される栄養食品として、種々のものが市販され
ているが、ほとんどが粉末状の製品である。 〔発明が解決しようとする問題点〕 粉末状の製品は患者などに投与するために、温
湯で溶解して調製する必要があり、そうした場合
に次のような問題点が提起されている。 非衛生的になりやすい。 完全に溶解せず、不溶物が投与時にチユーブ
に詰まりやすい。 溶解時に熱湯を使用すると、たん白質などの
栄養成分が変性を起こす。 泡立ちが多く計量しにくい。 調製液は細菌に汚染されやすいため、数時間
以内に使用しなければならない。 以上の理由により、病院内で所定量のカロリー
液を調製することは、非常に繁雑な作業になつて
いる。 これらの問題点を解決するために市販の粉末製
品を液状に調製し、滅菌処理すると、油の分離、
たん白質の沈澱、凝集物の生成などが起こり、満
足なものは得られないという問題点がある。この
原因としては、滅菌処理における加熱によりたん
白質が変性して凝集および沈澱が起こり、それに
伴い乳化が破壊して油の分離およびクリーミング
が起こるものと推定される。すなわち、従来の技
術では、衛生的に安全でかつ栄養成分を十分に含
有する長期安定な液状栄養組成物の製造は難かし
いという問題点があつた。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明は、これら問題点を解決するためのもの
で、乳化剤としてコハク酸モノグリセリド、リン
ゴ酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリドを
使用して乳化後、高温滅菌処理を行うことによ
り、加熱変性によるたん白質の凝集や沈澱がな
く、かつ乳化破壊による油脂の分離もなく、長期
間保存安定性の良好な液状を保ち、下痢や腹部膨
満感などの副作用がなく、栄養的に優れた乳化状
栄養組成物を提供する。 本発明はたん白質またはその分解物、糖質、脂
質、ビタミン、ミネラル、および水を主成分とす
る乳化状栄養組成物において、乳化剤として、コ
ハク酸モノグリセリド、リンゴ酸モノグリセリ
ド、およびクエン酸モノグリセリドから選ばれる
１種以上を全組成量に対し0.05〜３重量％含有
し、かつ乳化後に高温滅菌処理を行うことを特徴
とする乳化状栄養組成物である。 本発明の栄養組成物は人体に必要な栄養分を十
分に供給するために、たん白質またはその分解
物、糖質、脂質、ビタミン、ミネラルおよび水を
主成分とする。 本発明に使用するたん白質としては、消化し易
く、かつ栄養価の高いものが使用される。例え
ば、鶏卵たん白質、乳たん白質、大豆たん白質、
魚たん白質、肉たん白質、ゼラチンなど、および
これらの酵素分解物が１種単独または２種以上組
み合わせて使用できる。鶏卵たん白質、大豆たん
白質などは加熱によつて凝集が起こるが、本発明
ではそれらを有効に防止することができる。 本発明に使用する糖質としては、でん粉、デキ
ストリンおよびその加水分解物が使用される。ま
たブドウ糖、果糖などの単糖類、マルトース、乳
糖などの二糖類なども１種単独または２種以上組
み合わせて使用できる。 本発明に使用する脂質としては、大豆油、コー
ン油、ナタネ油、ヤシ油、ラード、牛脂、魚油な
どの加工油脂がある。 たん白質またはその分解物、脂質、糖質の配合
割合は、栄養学的な設計のもとでバランス良く調
合される。その配合割合について栄養組成物の固
形分当たり、たん白質またはその分解物は10〜40
重量％、脂質は５〜35重量％、糖質は50〜80重量
％程度である。微量成分であるミネラル類および
ビタミン類は栄養上必要な量を適宜添加される。
また必要に応じて果汁、フレーバ類などを添加し
てもよい。 本発明に用いる乳化剤は、グリセリンとC₁₂〜
C₂₀の脂肪酸との脂肪酸モノグリセリドをさらに
コハク酸、リンゴ酸、クエン酸などでエステル化
したものである。これらの乳化剤は１種単独また
は２種以上の組み合わせ使用が可能である。また
他の乳化剤、例えば大豆または卵黄リン脂質、モ
ノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エス
テル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エ
ステルなどを組み合わせて使用することもでき
る。 コハク酸モノグリセリド、リンゴ酸モノグリセ
リド、およびクエン酸モノグリセリドの使用量は
合計量で全組成量に対し0.05〜３重量％、好まし
くは0.1〜3.0重量％であり、0.05重量％より少な
い場合は乳化機能を発揮することができず、また
３重量％までの範囲でその機能が十分に発揮され
るため３重量％より多い配合量は必要としない。 本発明ではヘキサメタリン酸ナトリウム、リン
酸水素２ナトリウムなどのリン酸塩、およびクエ
ン酸ナトリウムなどのクエン酸塩等の塩類を安定
剤として含むのが好ましい。これらの塩類の使用
量は0.1〜１重量％が好ましい。 本発明の乳化状栄養組成物は、上記たん白質ま
たはその分解物、糖質、脂質、ビタミン、および
ミネラルを、所定熱量すなわち0.5〜5.0kcal／
ml、好ましくは0.5〜1.5kcal／mlになるように水
で溶解し、均質機を用いて均質化処理し、均一な
液状組成物に乳化後、100〜150℃の高温滅菌処理
を行つて製造される。 滅菌手段としては、例えばレトルト滅菌、超高
温瞬間滅菌などが採用される。レトルト滅菌は均
質液を缶、びん、レトルトパウチなどの包装容器
に充填密封したものをオートクレーブにて加熱滅
菌するもので、100〜125℃、３〜30分の条件で滅
菌が行われる。超高温瞬間滅菌は超高温瞬間滅菌
機、例えばスチームインジエクシヨンまたはスチ
ームインフユージヨン型の滅菌機などによつて行
われる。その他かき取り型機なども利用できる。
超高温瞬間滅菌は110〜150℃、２〜10秒の条件で
滅菌が行われる。 完全に滅菌された乳化状栄養組成物は、無菌的
に再度10Kg／cm²以上の圧力で均質化処理しておく
のが好ましく、次いで無菌的に充填して製品とす
る。 〔作用〕 こうして得られる乳化状栄養組成物は、
1kcal／mlの調製液で、粘度が５〜20cP（10℃）
であり、経口および経管により胃、腸等の消化器
管に簡便かつ安定して供給でき、これにより通常
の食事を摂取できない小児、老人ならびに手術前
後の患者等に必要な栄養分を十分に供給すること
ができる。 〔発明の効果〕 本発明によれば、特定の乳化剤を使用して乳化
後高温滅菌処理することにより、次のような効果
が得られる。 １年間室温で保存しても分離、沈澱、凝集し
ない。 滅菌処理後においても良好な乳化安定性が維
持されるので、チユーブ流動性に優れ、脂質の
消化吸収が良好で下痢が起こりにくく、腹部膨
満感などの副作用もない。 液状の製品であるので、直ちに経管または経
口によつて投与することができ、栄養的にも優
れている。 〔実施例〕 つぎに本発明を実施例、比較例および試験例に
より詳細に説明する。以下％は重量基準である。 実施例 １ 43.2ｇ（0.1％に相当）のヘキサメタリン酸ナ
トリウムを35.2Kgの水に溶解させ、この液に860
ｇのカゼインナトリウム、430ｇの大豆たん白質、
および5.7Kgのデキストリンを溶解させた、一方、
860ｇの大豆油と430ｇの中鎖脂肪酸トリグリセリ
ドを配合した油に、104ｇ（0.24％に相当）のク
エン酸モノグリセリドを溶解させ、この配合した
脂質を上記の水溶液に混合し、さらに第１表に示
す配合割合で配合した5.2ｇのビタミンミツクス
および196ｇ（0.45％に相当）のミネラルミツク
スを混合して、プロペラ式撹拌機で70℃、15分間
予備乳化させた。この予備乳化液を１段目250
Kg／cm²、２段目50Kg／cm²の２段階均質化で均質化
処理し、約40の乳化状栄養組成液を得た。この
均質液を400c.c.ずつ缶に充填密封し、直ちにオー
トクレーブ内で115℃、15分間レトルト滅菌し、
缶入りの乳化状栄養組成物を得た。この製品の栄
養組成を第２表に示す。またこの溶液のエネルギ
ーは1kcal／mlである。

【表】

【表】

【表】 この乳化状栄養組成物を１ケ月室温に放置した
ところ、離水、油分分離は認められず、乳化安定
性は良好であつた。製品のレトルト滅菌後の乳化
状態および平均粒子径、保存した時の乳化安定性
について性能試験を行つた結果を第３表に示す。 この乳化状栄養組成物は、径口および径管によ
り栄養補給に使用することができた。 実施例２〜５、比較例１〜４ 第３表に示す乳化剤を用いて、実施例１と同様
にして乳化状栄養組成物を得、同様の試験を行つ
た結果を第３表に示す。 第３表の結果から、本発明の乳化剤を使用した
実施例のものは、レトルト滅菌後および１年保存
後の乳化安定性が著しく優れていることが明らか
である。

【表】 ×：沈澱物、油分分離あり
実施例 ６ 第４表の配合により、実施例１に準じて溶解さ
せ、均質機を用いて乳化させた。 この乳化液を超高温瞬間加熱滅菌装置にて、
140℃、４秒間処理後、70℃で均質圧150Kg／cm²で
無菌的に均質化処理を行い、20℃に冷却し、無菌
容器に無菌充填して乳化状栄養組成物を得た。こ
の溶液のエネルギーは1.5kcal／mlである。 この乳化状栄養組成物を１年間室温で放置した
ところ、離水、油分分離は認められず、乳化安定
性は良好であつた。 この乳化状栄養組成物はそのまま、または水で
希釈して経口、経管により栄養補給に使用するこ
とができた。

【表】 実施例 ７ 第５表の配合により、実施例１に準じて溶解さ
せ、均質機を用いて乳化させた。 この均質液を400c.c.レトルトパウチに充填密封
し、ただちにオートクレーブ内で122℃、８分間
レトルト滅菌して乳化状栄養組成物を得た。この
溶液のエネルギーは3kcal／mlである。 この乳化状栄養組成物を１年間室温に放置した
ところ、離水、油分分離は認められず、乳化安定
性は良好であつた。 この乳化状栄養組成物はそのまま、または水で
希釈して使用することができた。

【表】

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ たん白質またはその分解物、糖質、脂質、ビ
   タミン、ミネラル、および水を主成分とする乳化
   状栄養組成物において、乳化剤として、コハク酸
   モノグリセリド、リンゴ酸モノグリセリド、およ
   びクエン酸モノグリセリドから選ばれる１種以上
   を全組成量に対し0.05〜３重量％含有し、かつ乳
   化後に高温滅菌処理を行うことを特徴とする乳化
   状栄養組成物。 ２ 乳化剤がグリセリンとC₁₂〜C₂₀の脂肪酸との
   脂肪酸モノグリセリドをさらにコハク酸、リンゴ
   酸、またはクエン酸でエステル化したものである
   特許請求の範囲第１項記載の乳化状栄養組成物。 ３ 高温滅菌処理がレトルト滅菌または超高温瞬
   間滅菌である特許請求の範囲第１項または第２項
   記載の乳化状栄養組成物。