JPWO2011115133A1 - 拡管接合型熱交換器ならびに熱交換器用管材及びフィン材 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1には、熱交換管および熱交換管にろう付されたフィンを備えた熱交換器において、熱交換管外周面の表層部の電位をA、熱交換管における表層部を除いた部分の電位をB、フィンの電位をC、熱交換管とフィンとのろう付部に形成されているフィレットの電位をDとした場合、これらの電位が、電位的にA≦C≦D<Bとなっている熱交換器が提案されている。
一般に家庭用エアコンに用いられる拡管接合型の熱交換器は、従来、アルミニウムフィンと銅管とで構成されている。銅はアルミニウムよりも電位が貴であるので、アルミニウムフィンと銅管の電位バランスを考慮しなくてもアルミニウムフィンが必然的に犠牲防食作用を果たしていた。近年、銅管に代わって、アルミニウム管が採用されるようになった。アルミニウム管は、銅管よりも腐食されやすく、かつ孔食によって貫通孔が形成されやすいという性質を有しているので、熱交換器の寿命を延ばすためにアルミニウム管に孔食が形成されるのを防ぐ技術が必要である。従来のアルミニウムフィンと銅管の組合せでの設計思想を適用すれば、アルミニウムフィンにZnを添加してフィンの電位を卑化すればよいが、その場合、アルミニウムフィンのみが腐食してアルミニウムフィンとアルミニウム管との電気的接続が断たれると、アルミニウム管の腐食が一気に進行してアルミニウム管に貫通孔が形成されてしまうという問題が発生する。このように、従来の熱交換器の電位の関係に類似させるように電位を設定しても熱交換器の寿命を延ばすことは難しい。これに対して、一般に自動車用熱交換器として用いられる、主要な部材が全てアルミニウムからなるろう付接合型の熱交換器では、電位的に類似した部材間の防食メカニズムの思想があった。それは、ろう付工程では約600℃でろう材を流動させ、同時に各種元素の拡散が生じるため、Siを含有する高電位のろう材層(フィレット)がフィンとチューブの界面に存在するため、フィレットと各部材とのバランスを考慮することが必要であったからである。このように、拡管接合型の熱交換器とろう付接合型の熱交換器とは、電位バランスについての設計思想が異なっており、ろう付接合型の熱交換器での電位バランスの考え方を拡管接合型の熱交換器にそのまま適用することはできない。
本発明における請求項3に記載の発明は、Siの含有量が0.2〜1.0mass%である請求項2に記載の熱交換器である。
本発明における請求項4に記載の発明は、前記管の内面に溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器である。
本発明における請求項5に記載の発明は、前記フィンは、Zn:0.3〜3.0mass%、In:0.001〜0.1mass%、Sn:0.001〜0.1mass%のうち少なくとも一種を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金である請求項1に記載の熱交換器である。このような組合せの場合に、熱交換器としての耐久性が特に高まるからである。
また、本発明における請求項8に記載の発明は、Siの含有量が0.2〜1.0mass%である請求項7に記載の熱交換器用管材である。
1.拡管接合型熱交換器
1−1.管
1−1−1.組成
1−1−2.Zn拡散層
1−1−3.管の製造方法
1−2.フィン
1−2−1.組成
1−2−2.フィンの製造方法
1−2−3.フィンのプレコーティング
1−3.各部材の孔食電位
2.拡管接合型熱交換器の製造方法
///////////////////////////////////////////////////////
本発明の一実施形態の拡管接合型熱交換器は、Znの溶射及び拡散熱処理によって形成されたZn拡散層を外面に有し且つアルミニウム合金からなる管と、Zn、In、及びSnからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有しアルミニウム合金からなるフィンとを拡管接合した拡管接合型熱交換器である。該フィンの孔食電位は、前記Zn拡散層の表面Zn濃度の2/3のZn濃度を有する部位の孔食電位よりも貴であり、且つ前記表面Zn濃度の1/3のZn濃度を有する部位の孔食電位よりも卑である。
以下、各構成要素について詳細に説明する。
上記の管は、Znの溶射及び拡散熱処理によって形成されたZn拡散層を外面に有し且つアルミニウム合金からなる。上記の管には、通常の押出管、コンフォーム押出管、ポートフォール管のいずれもが好適に用いられる。
アルミニウム合金とは、Alを主成分とする合金である。アルミニウム合金中のAlの含有量は、例えば、90〜99.9mass%である。Alの含有量は、例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5又は99.9mass%である。Alの含有量は、ここで例示した数値の何れか2つの範囲内であってもよい。合金系として、JIS3003、3004等に代表される3000系合金やJIS6061、6063等に代表される6000系合金が好適に用いられる。
アルミニウム合金からなる管には、その外面にZn溶射した後、Zn拡散熱処理を施すことにより、Znの拡散した層(Zn拡散層)が設けられる。Zn拡散層は、管のZnが拡散していない部分よりも孔食電位が卑であるため犠牲防食作用によって管を防食し、管の耐久寿命を向上させることができる。
上記の管は、上記組成のアルミニウム合金鋳塊を通常の方法にて350〜600℃に加熱して押出した後にZn溶射及びZn拡散処理を行うか、または前記押出し加工後に抽伸加工を行い、Zn溶射及びZn拡散処理を行うことにより製造される。この後、熱交換効率を向上させるため、管は、押出し加工時に内面に溝を形成するか、押出し加工後に転造加工等を施し、内面に溝(例:直線溝またはらせん溝)を形成しても良い。
上記フィンの孔食電位は、上記Znが拡散した管表面のZn濃度の2/3のZn濃度を有する部位の孔食電位よりも貴とし、前記管の表面Zn濃度の1/3のZn濃度を有する部位より卑とする。腐食の初期段階において、フィン材は、高濃度にZnを含有する管表面の孔食電位よりも貴であるため、管表面の犠牲防食作用によって防食される。管の腐食が進行し、管の高濃度にZnが拡散した層が腐食、消失し、フィン材の孔食電位が管よりも卑になると、フィン材の犠牲防食作用によって管が防食される。この一連の働きによって、管およびフィン、つまりは熱交換器の耐食性を向上させることができる。
フィンに上記作用を発現させるために、フィンには、Zn、In、及びSnからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するアルミニウム合金であればよいが、Znを含有するアルミニウム合金が最も望ましい。Zn、In、及びSnは孔食電位を卑にする働きがあり、これらの元素が拡散した部位と拡散していない部位との孔食電位差が大きくなり、犠牲防食作用を高める。
この効果を得るためには、Zn含有量を0.3mass%以上とするのが望ましい。一方、Zn含有量が多すぎるとフィン材自体の腐食速度が増大し、管に対する犠牲防食作用が不十分になる場合があるが、Zn含有量が3.0mass%以下であれば犠牲防食作用が十分に得られる。従って、Zn含有量の上限は3.0mass%とするのが望ましい。更に望ましいZnの含有量は0.5〜2.0mass%である。Znの代わりに又はZnに加えて、Zn以外の孔食電位を卑化させる元素であるIn又はSnを含有させてもよい。これらは、In:0.001〜0.1mass%、Sn:0.001〜0.1mass%含有されるのが望ましい。
フィンは、上記組成の素材を用いて通常の半連続鋳造を行い、400〜600℃の温度で1〜10時間予備加熱を行い、熱間圧延を行なう。その後、冷間圧延によって所定の板厚まで圧延される。冷間圧延の途中又は冷間圧延後において、1〜2回程度の焼鈍工程を経ても良い。焼鈍工程は、通常はバッチ式の炉を用いて200〜500℃で1〜10時間加熱されるか、連続式の炉を用いて200〜550℃で5〜60分加熱される。これをプレス加工してフィンを作製する。
上記フィンは、有機系又は無機系の親水性皮膜を表面にプレコートすることにより、熱交換器の熱交換効率を向上させることができる。ルームエアコンの冷房運転時にフィン表面に水滴が付着しフィン間に水滴のブリッジが形成されると、フィン間を通過する空気等の冷却気体の抵抗が増大し冷却効率が低下する。親水性皮膜をプレコーティングすることによって、フィン表面の接触角を小さくし、水膜として流下させて水滴形成を防ぐことにより、冷却効率の低下を防止できる。有機系又は無機系の親水性皮膜は、例えば有機系塗料又は無機系塗料を塗布し、これを乾燥することによって形成することができる。
孔食電位の異なる部材が電気的に接合されている場合、犠牲防食作用により孔食電位の卑な部材から優先的に溶解し、孔食電位の貴な部材の腐食が抑制される。本実施形態において、管の表面にZnを溶射し、肉厚方向へ拡散処理を行うことにより、孔食電位を、(Znが拡散している管表面)<(フィン)<(管のZnの拡散していない部位)とする。それにより、腐食の初期は、管表面のZn拡散層によって、管の肉厚方向への腐食およびフィンの腐食が抑制され、Zn拡散層がなくなるまで腐食が進行した場合には、フィンによって管の孔食が抑制される。
上記の拡管接合型熱交換器は、管材とフィン材とを接合することによって得られる。フィン材は打ち抜き、成形加工を行い、管材を挿入する孔にバーリング加工を施した後、該孔に管材を挿入する。その後、拡管用の治具を管材内部に押し込み機械的に拡管するか、または管内部に水等による圧力を付与する液圧拡管によって管径を広げフィンと密着させ接合する。
1.ミニコアの製造方法
2.ミニコアの評価
(1)孔食電位の測定
(2)腐食試験
///////////////////////////////////
表1に示す組成及び構成を有する管材を、表2に示す組成を有するフィン材の穴部に挿入し、管材を液圧拡管することによって、実際の熱交換器に似せたコア(以後、ミニコアと呼ぶ。)を形成した。実施例1〜21及び比較例1〜8のミニコアは、表3に示す種類の管材とフィン材から形成された管とフィンを有している。また、親水性皮膜によるプレコートの有無と種類も表3に示した。なお、表1及び表2に記載の各組成は、残部がAlと不可避的不純物からなる。
以下の方法により、実施例1〜21及び比較例1〜8のミニコアの評価を行った。
上記のようにして作製したミニコアの各部位の孔食電位を測定した。孔食電位は、以下の方法で測定した。3電極型セルを用い、動電位法における分極曲線の測定を室温で電位掃引速度20mV/minにて行った。アノード分極曲線の測定には、予め窒素ガスを吹き込み十分に脱気を行った5%NaCl水溶液を試験液に用いた。試験電極は供試材を所定の大きさに切り出し、露出部分1×1cm2を残し、シール及びエポキシ樹脂で被覆し使用した。対極には白金電極を、参照電極には飽和KCl溶液中の銀・塩化銀電極(Ag/AgCl)を用いた。アノード分極曲線の一例を図2に示す。図2のアノード分極曲線において、アノード電流密度が急激に上昇したときの電位を孔食電位とした。
測定結果を表4に示す。表1中、(1)管表面、(2)Znの拡散していない管、及び(3)フィンの孔食電位は実測したものである。それ以外の値は、(1)〜(3)の実測値および表1のデータに基づいて算出したものである。
作製したミニコアを用い、JISのH8601に準じるCASS試験を2000時間行なった。試験後、ミニコアのフィンを取り去り、チューブに付着した腐食生成物を濃硝酸とリン酸−クロム酸混液で除去した後に、フィン下の管の腐食深さを焦点深度法にて測定した。結果を表5に示す。腐食深さが0.40mm未満のものを合格とし、0.40mm以上を不合格とした。
Claims (10)
- Znの溶射及び拡散熱処理によって形成されたZn拡散層を外面に有し且つアルミニウム合金からなる管と、Zn、In、及びSnからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するアルミニウム合金からなるフィンとを拡管接合した拡管接合型熱交換器であって、フィンの孔食電位が、前記Zn拡散層の表面Zn濃度の2/3のZn濃度を有する部位の孔食電位よりも貴であり、且つ前記表面Zn濃度の1/3のZn濃度を有する部位の孔食電位よりも卑である拡管接合型熱交換器。
- 前記管は、Si:0.05〜1.0mass%、Cu:0.05〜0.7mass%、Mn:0.3〜1.5mass%、Fe:0.7mass%以下を含有し、残部Al及び不可避的不純物である組成を有し、前記表面Zn濃度は、0.5〜10.0mass%であり、前記Zn拡散層は、厚さが150〜400μmである請求項1に記載の熱交換器。
- Siの含有量が0.2〜1.0mass%である請求項2に記載の熱交換器。
- 前記管の内面に溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
- 前記フィンは、Zn:0.3〜3.0mass%、In:0.001〜0.1mass%、Sn:0.001〜0.1mass%のうち少なくとも一種を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金である請求項1に記載の熱交換器。
- 前記フィンは、有機系親水性皮膜もしくは無機系親水性皮膜を表面に有する請求項1〜5に記載の熱交換器。
- 請求項1の熱交換器の製造に用いる熱交換器用管材であって、前記管材は、Znの溶射及び拡散熱処理によって形成されたZn拡散層を外面に有し、Si:0.05〜1.0mass%、Cu:0.05〜0.7mass%、Mn:0.3〜1.5mass%、Fe:0.7mass%以下を含有し、残部Al及び不可避的不純物である組成を有するアルミニウム合金からなり、前記表面Zn濃度は、0.5〜10.0mass%であり、前記Zn拡散層は、厚さが150〜400μmである熱交換器用管材。
- Siの含有量が0.2〜1.0mass%である請求項7に記載の熱交換器用管材。
- 請求項1の熱交換器の製造に用いる熱交換器用フィン材であって、前記フィン材は、Zn:0.3〜3.0mass%、In:0.001〜0.1mass%、Sn:0.001〜0.1mass%のうち少なくとも一種を含有し、残部Al及び不可避的不純物である組成を有するアルミニウム合金からなる熱交換器用フィン材。
- 前記フィン材は、有機系親水性皮膜もしくは無機系親水性皮膜を表面に有する請求項9に記載の熱交換器用フィン材。
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