JP2010156002A - 銅合金管およびその製造方法ならびにヒートポンプ給湯機 - Google Patents
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Abstract
【課題】流路形状によらずスケールの付着し難いヒートポンプ給湯機に好適な銅合金管を提供する。
【解決手段】Sn:0.24〜0.30質量%、Zr:0.03〜0.05質量%、P:0.004〜0.015質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金を、熱間押出、圧延、抽伸加工して所定の形状・寸法の管とし、600〜800℃で20分以上の熱処理による焼鈍を行って表面にSn,Zr,Pを濃縮させたことにより、炭酸カルシウムがスケールとして付着し難くした銅合金管。
【選択図】なし
【解決手段】Sn:0.24〜0.30質量%、Zr:0.03〜0.05質量%、P:0.004〜0.015質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金を、熱間押出、圧延、抽伸加工して所定の形状・寸法の管とし、600〜800℃で20分以上の熱処理による焼鈍を行って表面にSn,Zr,Pを濃縮させたことにより、炭酸カルシウムがスケールとして付着し難くした銅合金管。
【選択図】なし
Description
本発明は、給湯器等の熱交換器に用いられる銅合金管およびこれを用いたヒートポンプ給湯機に関し、特にスケールの付着を抑制できるものに関する。
近年、エコキュート(関西電力株式会社の登録商標)の愛称で知られる自然冷媒ヒートポンプ給湯機は、貯湯式で割安な深夜電力を使用するため、従来の燃焼型給湯器に比べてランニングコストが低く、また代替フロンより格段に温暖化係数の小さい二酸化炭素を冷媒とするため、環境負荷が小さい等の特徴を備え、業務用、家庭用として普及が進んでいる。
一般に、給湯器等の熱交換器では、管の内部に加熱した水を流して使用する。実際の管内部に流れる水である地下水や上水には、カルシウムイオン(Ca2+)や炭酸水素イオン(HCO3 -)が微量含まれているため、熱交換器で水が加熱されると、下式の反応により炭酸カルシウム(CaCO3)が生成し、この炭酸カルシウムがスケールとして管内壁に付着することが知られている。管の材料としては銅または銅合金が熱伝導に優れている点で好適であるが、銅または銅合金の酸化皮膜として存在するCu2Oは正に帯電しているため、負に帯電している炭酸カルシウムが付着し易いという問題がある。
Ca2++2HCO3 -→Ca(HCO3)2→CO2+H2O+CaCO3
Ca2++2HCO3 -→Ca(HCO3)2→CO2+H2O+CaCO3
また、この反応は高温になるほど進行する。特に、自然冷媒ヒートポンプ給湯機は、タンクでの貯湯の必要上、出湯温度が約90℃で、燃焼型給湯器の約60℃よりも高温であり、炭酸カルシウムがより生成し易い環境となっている。熱交換器の長期間の使用で管へのスケールの付着が多くなると、圧力損失が増加したり、管の閉塞が発生する虞がある。このため、現状では、熱交換効率よりも流路の確保を優先させた設計の管が採用されている。
例えば、特許文献1には、スケールの付着し易い高温の水が流れる出口部分の配管の口径を大きくしたヒートポンプ給湯機が開示されている。また、特許文献2には、内面に螺旋状の突条を形成したコルゲート管を用いて、水流の撹拌により付着したスケールを破砕し、かつ熱交換効率を向上させた給湯用熱交換器が開示されている。また、特許文献3には、管内に形状記憶合金からなる螺旋状線材を備えて、この線材が、水温が上昇すると管内を摺動して付着したスケールを剥離させる熱交換器が開示されている。
特開2005−77062号公報
特開2008−249163号公報
特開2006−266514号公報
しかしながら、前記従来の熱交換器はいずれも配管の形状等に特徴を有するため、熱交換器の設計の自由度が小さく、例えば熱交換器の小型化・軽量化を阻害する虞がある。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、流路形状によらずスケールの付着し難い銅合金からなる管、およびこれを用いたヒートポンプ給湯機を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明に係る銅合金管は、Sn:0.24〜0.30質量%、Zr:0.03〜0.05質量%、P:0.004〜0.015質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、600〜800℃で20分以上の熱処理を施されていることを特徴とする。
また、本発明に係る銅合金管の製造方法は、Sn:0.24〜0.30質量%、Zr:0.03〜0.05質量%、P:0.004〜0.015質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金を熱間押出により押出素管とする押出工程と、前記押出素管を圧延して圧延素管とする圧延工程と、前記圧延素管を抽伸加工して抽伸管とする抽伸工程と、前記抽伸管を焼鈍する焼鈍工程と、を行う銅合金管の製造方法であって、前記圧延工程より後に600〜800℃で20分以上の熱処理を施すことを特徴とする。さらに、前記熱処理は60分以上であることが好ましい。
このように、Sn,Zr,Pを所定範囲で含有する銅合金とすることにより、銅合金管の表面を、炭酸カルシウムを付着し難くさせながら、管とするための成形性を保持することができる。また、所定の温度および時間で熱処理を施すことにより、管の表面にSn,Zr,Pが濃縮されて炭酸カルシウムを付着させ難くすることができる。
また、本発明に係るヒートポンプ給湯機は、前記銅合金管を、水を媒体とする伝熱部に使用することを特徴とする。
このように、スケールが付着し難い銅合金管を、水、特に炭酸カルシウムが生成し易い高温の水道水を流通させるヒートポンプ給湯機の配管に適用することで、圧力損失が少なく、管の閉塞が発生し難くすることができる。
本発明に係る銅合金管によれば、水道水等の水を媒体として流通させる熱交換器の配管として、スケールの付着し難い配管が得られ、また、銅合金の材質としてスケールが付着し難いため、流路断面を拡径する必要がなく、熱交換効率を低下させることがない。また、管形状や配管の設計に自由度があって汎用性が高い。また、本発明に係る銅合金管の製造方法によれば、スケールが付着し難い銅合金管が容易に得られる。そして、本発明に係るヒートポンプ給湯機によれば、連続運転時間を長くして、メンテナンスを容易なものとすることができ、また配管形状の制約が少ないため小型化等が容易である。
以下、本発明に係る銅合金管およびこれを用いたヒートポンプ給湯機について、詳細に説明する。
〔銅合金管〕
本発明に係る銅合金管は、熱交換器、特にヒートポンプ給湯機の水を流通させる配管に適用され、平滑管、内面溝付管等の用途に応じた形状および寸法とするが、特に限定するものではない。本発明に係る銅合金管を形成する銅合金は、Sn:0.24〜0.30質量%、Zr:0.03〜0.05質量%、P:0.004〜0.015質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる。以下、この銅合金を構成する各要素について説明する。
本発明に係る銅合金管は、熱交換器、特にヒートポンプ給湯機の水を流通させる配管に適用され、平滑管、内面溝付管等の用途に応じた形状および寸法とするが、特に限定するものではない。本発明に係る銅合金管を形成する銅合金は、Sn:0.24〜0.30質量%、Zr:0.03〜0.05質量%、P:0.004〜0.015質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる。以下、この銅合金を構成する各要素について説明する。
(Sn:0.24〜0.30質量%)
Snは、固溶硬化によって引張強さを向上させたり、リン銅ろう等のろう付けによる熱影響に対して結晶粒度の粗大化が抑制されて耐熱性が向上する。さらに、Snは銅合金管の表面を、炭酸カルシウムを付着させ難くする。Snの含有量が0.24質量%未満ではこれらの効果が不十分である。一方、Snの含有量が0.30質量%を超えると、熱間押出工程における熱間変形抵抗が高くなって生産性が低下する。したがって、Snの含有量は0.24〜0.30質量%とする。
Snは、固溶硬化によって引張強さを向上させたり、リン銅ろう等のろう付けによる熱影響に対して結晶粒度の粗大化が抑制されて耐熱性が向上する。さらに、Snは銅合金管の表面を、炭酸カルシウムを付着させ難くする。Snの含有量が0.24質量%未満ではこれらの効果が不十分である。一方、Snの含有量が0.30質量%を超えると、熱間押出工程における熱間変形抵抗が高くなって生産性が低下する。したがって、Snの含有量は0.24〜0.30質量%とする。
(Zr:0.03〜0.05質量%)
Zrは、銅合金中に固溶、および単体や化合物として析出し、析出硬化によって引張強度を向上させる。化合物としては、Cu3Zr等のCu−Zr化合物、ZrP3,ZrP等のP−Zr化合物、ZrO3等のZr酸化物、ZrCu3O4等のZr−Cu−O複合酸化物等がある。また、Zrは、固溶体としても単体やこれらの化合物のいずれの析出物としても銅合金管の表面を、炭酸カルシウムを付着させ難くする。Zrの含有量が0.03質量%未満ではこれらの効果が不十分である。一方、Zrの含有量が0.05質量%を超えても、炭酸カルシウムの付着抑制効果が飽和する上、銅合金管の曲げ加工性等の加工性が低下する。したがって、Zrの含有量は0.03〜0.05質量%とする。
Zrは、銅合金中に固溶、および単体や化合物として析出し、析出硬化によって引張強度を向上させる。化合物としては、Cu3Zr等のCu−Zr化合物、ZrP3,ZrP等のP−Zr化合物、ZrO3等のZr酸化物、ZrCu3O4等のZr−Cu−O複合酸化物等がある。また、Zrは、固溶体としても単体やこれらの化合物のいずれの析出物としても銅合金管の表面を、炭酸カルシウムを付着させ難くする。Zrの含有量が0.03質量%未満ではこれらの効果が不十分である。一方、Zrの含有量が0.05質量%を超えても、炭酸カルシウムの付着抑制効果が飽和する上、銅合金管の曲げ加工性等の加工性が低下する。したがって、Zrの含有量は0.03〜0.05質量%とする。
(P:0.004〜0.015質量%)
Pは銅合金の脱酸のために添加される。また、Pは銅合金管の表面を、炭酸カルシウムを付着させ難くする。Pの含有量が0.004質量%未満では、脱酸不足により水素脆化の虞がある。一方、Pの含有量が0.015質量%を超えると、銅合金管の応力腐食割れ感受性が増大する。したがって、Pの含有量は0.004〜0.015質量%とする。
Pは銅合金の脱酸のために添加される。また、Pは銅合金管の表面を、炭酸カルシウムを付着させ難くする。Pの含有量が0.004質量%未満では、脱酸不足により水素脆化の虞がある。一方、Pの含有量が0.015質量%を超えると、銅合金管の応力腐食割れ感受性が増大する。したがって、Pの含有量は0.004〜0.015質量%とする。
〔銅合金管の製造方法〕
次に、本発明に係る銅合金管の製造方法の一例を示す。
はじめに、原料の電気銅を木炭被覆の元で溶解し、銅が溶解した後、SnおよびZrを所定量添加し、さらに脱酸のために15質量%程度のPを含有する銅合金を添加し、成分調整した後、半連続鋳造により所定の寸法のビレットを作製する。次に、必要に応じて、偏析改善のため、ビレットを750〜950℃に加熱して0.1〜2時間程度保持して均質化処理を行う。その後、ビレットを750〜850℃で熱間押出しにより押出素管とする(押出工程)。押出素管を圧延して圧延素管とし(圧延工程)、さらに抽伸加工にて所定の寸法の抽伸管(素管)を製造する(抽伸工程)。圧延における加工率を92%以下、抽伸加工における加工率を35%以下とすることにより、それぞれの加工時の製品不良を低減できる。
次に、本発明に係る銅合金管の製造方法の一例を示す。
はじめに、原料の電気銅を木炭被覆の元で溶解し、銅が溶解した後、SnおよびZrを所定量添加し、さらに脱酸のために15質量%程度のPを含有する銅合金を添加し、成分調整した後、半連続鋳造により所定の寸法のビレットを作製する。次に、必要に応じて、偏析改善のため、ビレットを750〜950℃に加熱して0.1〜2時間程度保持して均質化処理を行う。その後、ビレットを750〜850℃で熱間押出しにより押出素管とする(押出工程)。押出素管を圧延して圧延素管とし(圧延工程)、さらに抽伸加工にて所定の寸法の抽伸管(素管)を製造する(抽伸工程)。圧延における加工率を92%以下、抽伸加工における加工率を35%以下とすることにより、それぞれの加工時の製品不良を低減できる。
前記抽伸管はそのまま、あるいはさらに抽伸加工を行って平滑管とする。または、抽伸管を焼鈍(中間焼鈍)した後、溝付転造加工を行って内面溝付管とする。得られた平滑管または内面溝付管を焼鈍して銅合金管が得られる(焼鈍工程)。焼鈍することで銅合金が再結晶を生じて、抽伸加工等により加工硬化した管が軟質化し、曲げ加工等の可能な銅合金管となる。
(熱処理:600〜800℃で20分以上)
本発明に係る銅合金管は、600℃以上の熱処理を施されることにより、管の表面にSn,Zr,Pが濃縮されるため、炭酸カルシウムを付着させ難くなる。また、処理時間が短いとこれらの成分の濃縮が不十分であるため、20分以上とし、好ましくは60分以上である。一方、温度が高すぎると銅合金管の強度が低下するため、800℃以下とし、好ましくは700℃以下である。したがって、熱処理の条件は600〜800℃で20分以上とする。また、処理時間の上限は特に規定しないが、生産性の点から400分以下とすることが好ましい。なお、熱処理後の管を圧延すると、表面に濃縮させた成分が肉厚方向深部に浸入する(戻る)ため、この熱処理は圧延工程の完了以降に行う。
本発明に係る銅合金管は、600℃以上の熱処理を施されることにより、管の表面にSn,Zr,Pが濃縮されるため、炭酸カルシウムを付着させ難くなる。また、処理時間が短いとこれらの成分の濃縮が不十分であるため、20分以上とし、好ましくは60分以上である。一方、温度が高すぎると銅合金管の強度が低下するため、800℃以下とし、好ましくは700℃以下である。したがって、熱処理の条件は600〜800℃で20分以上とする。また、処理時間の上限は特に規定しないが、生産性の点から400分以下とすることが好ましい。なお、熱処理後の管を圧延すると、表面に濃縮させた成分が肉厚方向深部に浸入する(戻る)ため、この熱処理は圧延工程の完了以降に行う。
前記熱処理は、通常の焼鈍の目的すなわち軟質化も満たすため、焼鈍工程として行うことで、本発明に係る銅合金管を製造することができ、内面溝付管においては、溝付転造加工の前の中間焼鈍として行ってもよい。また、前記したように、熱処理は圧延工程完了以降に行えばよいので、抽伸加工の前や、あるいは抽伸加工を2回以上繰り返す場合はその間に熱処理を行う工程を設けてもよい。このように、既に前記条件の熱処理を行った場合は、焼鈍工程では加工硬化した管が軟質化すなわち再結晶すればよいので、450℃以上で15分以上行えば、本発明に係る銅合金管が得られる。
〔ヒートポンプ給湯機〕
本発明に係るヒートポンプ給湯機は、前記の銅合金管を、水を流通させこの水に伝熱する配管として用いたものであり、その配管の外側に冷媒(二酸化炭素)用の管を螺旋状に巻回する等して近接して配置したものを、コの字型等に曲げて備えられたものである。その他の仕様に関しては特に規定するものではなく、ヒートポンプ給湯機の用途等に応じて本発明に係る銅合金管を用いる。
本発明に係るヒートポンプ給湯機は、前記の銅合金管を、水を流通させこの水に伝熱する配管として用いたものであり、その配管の外側に冷媒(二酸化炭素)用の管を螺旋状に巻回する等して近接して配置したものを、コの字型等に曲げて備えられたものである。その他の仕様に関しては特に規定するものではなく、ヒートポンプ給湯機の用途等に応じて本発明に係る銅合金管を用いる。
以上、本発明を実施するための最良の形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例によって制限を受けるものではなく、請求項に示した範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(銅合金管作製)
供試材を、以下の工程により作製した。
まず、電気銅を原料とした溶湯中にSn,Zrを添加した後、Cu−P合金を添加して脱酸した溶湯を、鋳造温度1200℃で、直径300mm、長さ3000mmの鋳塊を半連続鋳造した。鋳塊から長さ475mmのビレットを切り出し、均質化処理として、ビレットを900℃に加熱した後、1.5時間保持し、冷却した。
供試材を、以下の工程により作製した。
まず、電気銅を原料とした溶湯中にSn,Zrを添加した後、Cu−P合金を添加して脱酸した溶湯を、鋳造温度1200℃で、直径300mm、長さ3000mmの鋳塊を半連続鋳造した。鋳塊から長さ475mmのビレットを切り出し、均質化処理として、ビレットを900℃に加熱した後、1.5時間保持し、冷却した。
均質化したビレットを830℃に加熱して3分間保持した後、熱間押出しにより、外径94mm、肉厚10mmの押出素管を作製した。この押出素管を外径38mm、肉厚2.1mmに圧延し、さらに加工率35%以下で抽伸して、外径9.52mm、肉厚0.8mmの平滑管を作製した。平滑管を焼鈍炉にて表1に示す条件で焼鈍して供試材とした。供試材より所定量の試料を採取し、組成を分析して表1に示す。
(スケール付着性評価)
銅合金管の評価として、スケール付着性を評価した。供試材を長さ50mmに切り出し、質量を測定して、脱脂剤(サーフクリーナー53:日本ペイント(株)製)で洗浄して試料とした。また、カルシウムイオン(Ca2+)および炭酸水素イオン(HCO3 -)が水道水より高濃度で含まれて炭酸カルシウムが生成し易いスケール付着試験液として、炭酸水素ナトリウムNaHCO3:1.5g/L、硝酸カルシウムCa(NO3)2・4H2O:1.3g/Lの混合水溶液(Ca:354ppm)を20℃で作製した(炭酸水素ナトリウム、硝酸カルシウム:和光純薬工業(株)製の特級試薬)。
銅合金管の評価として、スケール付着性を評価した。供試材を長さ50mmに切り出し、質量を測定して、脱脂剤(サーフクリーナー53:日本ペイント(株)製)で洗浄して試料とした。また、カルシウムイオン(Ca2+)および炭酸水素イオン(HCO3 -)が水道水より高濃度で含まれて炭酸カルシウムが生成し易いスケール付着試験液として、炭酸水素ナトリウムNaHCO3:1.5g/L、硝酸カルシウムCa(NO3)2・4H2O:1.3g/Lの混合水溶液(Ca:354ppm)を20℃で作製した(炭酸水素ナトリウム、硝酸カルシウム:和光純薬工業(株)製の特級試薬)。
試料の一端をチューブポンプの吸引側のチューブに接続し、試料の外側表面をテフロン(登録商標)のテープで覆った。この試料と、チューブポンプの排出側のチューブをビーカーに入れた混合水溶液100mLに浸漬した。そして、チューブポンプにより流速1L/minで、試料(銅合金管)内に混合水溶液を循環させながら、室温(20℃)から90℃まで昇温した時点で1サイクル終了とし、次サイクルとしてビーカー内を新たな混合水溶液(20℃)に入れ替えて、同様に循環・昇温を繰り返した。なお、1サイクルにおける混合水溶液の90℃までの昇温には約8分間かかった。
試験は、試料各仕様につき、3,10,20サイクル行った。各サイクルでの試験後、試料はテープおよびチューブを外して、室内に静置して自然乾燥させた後、質量を測定した。そして、試験前に測定した質量との差分から、試料の管内表面の単位面積当たりのスケール付着量を算出し、表1に示す。
(合金成分による評価)
供試材のうち、No.6,7はリン脱酸銅からなる比較例(従来例)である。これらの比較例に対して、Sn,Zrを本発明の範囲で含有する銅合金からなる実施例No.1〜5は、表1に示すようにスケールの付着量が少なく、スケール付着抑制効果を得られた。また、図1に、熱処理条件(焼鈍条件)を同じとする実施例No.4,5および比較例No.7のスケール付着量をグラフで示す。
供試材のうち、No.6,7はリン脱酸銅からなる比較例(従来例)である。これらの比較例に対して、Sn,Zrを本発明の範囲で含有する銅合金からなる実施例No.1〜5は、表1に示すようにスケールの付着量が少なく、スケール付着抑制効果を得られた。また、図1に、熱処理条件(焼鈍条件)を同じとする実施例No.4,5および比較例No.7のスケール付着量をグラフで示す。
(熱処理条件による評価)
比較例No.8は、合金組成は本発明の範囲であるが焼鈍温度が低く、合金中のSn,Zr,Pが供試材の表面に濃縮されないため、これらの元素によるスケール付着抑制効果が得られなかった。図2に、合金組成を同じとする実施例No.2〜4および比較例No.8の20サイクル後のスケール付着量を熱処理時間(焼鈍時間)との相関のグラフで示す。なお、焼鈍温度の低い比較例No.8は、熱処理時間0としてプロットした。図2に示すように、焼鈍時間を長くすることにより、供試材の表面にSn,Zr,Pが次第に濃縮されるため、スケール付着抑制効果が向上し、特に焼鈍時間60分間以上(実施例No.3,4)で効果が大きくなる。
比較例No.8は、合金組成は本発明の範囲であるが焼鈍温度が低く、合金中のSn,Zr,Pが供試材の表面に濃縮されないため、これらの元素によるスケール付着抑制効果が得られなかった。図2に、合金組成を同じとする実施例No.2〜4および比較例No.8の20サイクル後のスケール付着量を熱処理時間(焼鈍時間)との相関のグラフで示す。なお、焼鈍温度の低い比較例No.8は、熱処理時間0としてプロットした。図2に示すように、焼鈍時間を長くすることにより、供試材の表面にSn,Zr,Pが次第に濃縮されるため、スケール付着抑制効果が向上し、特に焼鈍時間60分間以上(実施例No.3,4)で効果が大きくなる。
Claims (6)
- Sn:0.24〜0.30質量%、Zr:0.03〜0.05質量%、P:0.004〜0.015質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、600〜800℃で20分以上の熱処理を施されていることを特徴とする銅合金管。
- 請求項1に記載の銅合金管を、水を媒体とする伝熱部に使用することを特徴とするヒートポンプ給湯機。
- Sn:0.24〜0.30質量%、Zr:0.03〜0.05質量%、P:0.004〜0.015質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金を熱間押出により押出素管とする押出工程と、前記押出素管を圧延して圧延素管とする圧延工程と、前記圧延素管を抽伸加工して抽伸管とする抽伸工程と、前記抽伸管を焼鈍する焼鈍工程と、を行う銅合金管の製造方法であって、
前記圧延工程より後に、600〜800℃で20分以上の熱処理を施すことを特徴とする銅合金管の製造方法。 - 前記熱処理が、60分以上であることを特徴とする請求項3に記載の銅合金管の製造方法。
- 前記熱処理を、前記抽伸工程において、抽伸加工の前に行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の銅合金管の製造方法。
- 前記熱処理を、前記焼鈍工程において行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の銅合金管の製造方法。
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