JP2012149315A - 銅合金管 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定組成のSn−P系銅合金管の結晶粒組織を微細化させるとともに、SnやPよりも酸化傾向の強い元素であるMgあるいはBを添加して、ろう付け処理時の高温での優先的な粒界酸化を抑制して、銅管にひずみが加わった場合の脆化割れを抑制し、1.0mm以下に銅合金管が薄肉化された場合でも耐高温脆化特性を向上させる。
【選択図】なし
Description
本発明における銅管の銅合金組成は、銅合金管に要求される、耐軟化性、破壊強度および曲げ加工性などの諸特性に優れさせ、また、製造のしやすさからしても、最も重要な組成として、Sn:0.3〜2.0質量%、P:0.005〜0.1質量%、Mg:0.005〜0.5質量%を各々含有するとともに、0.5%≦2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」≦2.0%を満たし、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成とする。
Sn(すず、錫)は、室温における伸びを低下させることなく、固溶強化により銅管の引張強さを向上させ、結晶粒の粗大化を抑制させる効果を有する。このため、種々の冷媒を使用する伝熱管の銅合金中に含有させた場合、りん脱酸銅管に比べて管の肉厚を薄くすることが可能になる。
P(リン、燐)はSnと同様、銅合金管の引張り強さを向上させ、結晶粒の粗大化を抑制させる効果を有する。銅管のP含有量が0.1質量%を超えると、熱間押出時に割れが生じやすくなり、応力腐食割れ感受性が高くなると共に、熱伝導率の低下が大きくなる。一方、P含有量が0.005質量%未満であると、脱酸不足により酸素量が増加してSnの酸化物が発生し、鋳塊の健全性が低下し、銅管として曲げ加工性が低下する。したがって、P含有量の範囲は0.005〜0.1質量%の範囲とする。
Mg(マグネシウム)は、SnやPよりも酸化傾向の強い元素であり、前記ろう付け処理時の高温での優先的な粒界酸化を抑制する効果を有する。これによって、薄肉化されたSn−P系銅合金管であっても、前記ろう付け処理時に、肉厚に対する脆い酸化層の厚さが大きくならずに抑制され、銅管にひずみが加わった場合でも、脆化割れを抑制でき1.0mm以下に薄肉化されても、耐高温脆化特性に優れたSn−P系銅合金管とすることができる。
B(ボロン、ホウ素)は、Mg同様、SnやPよりも酸化傾向の強い元素であり、Mgと同じく、前記ろう付け処理時の高温での優先的な粒界酸化を抑制する効果を有する。これによって、薄肉化されたSn−P系銅合金管であっても、前記ろう付け処理時に、肉厚に対する脆い酸化層の厚さが大きくならずに抑制され、銅管にひずみが加わった場合でも、脆化割れを抑制でき1.0mm以下に薄肉化されても、耐高温脆化特性に優れたSn−P系銅合金管とすることができる。
その他の元素は不純物であり、特に薄肉化されたSn−P系銅管の破壊強度を向上させるために、含有量は極力少ない方が好ましい。ただ、これら不純物を低減するための、地金溶解原料使用のコストや、溶解、鋳造での精錬コストとの兼ね合いもあり、以下に、現実的な許容量(上限量)を示す。Zn、Fe、Ni、Mn、Cr、Ti、Zr及びAgなどは合計で1.0質量%までの含有は許容する。Sは0.005質量%までの含有は許容する。As、Bi、Sb、Pb、Se、Te等は合計で0.0015質量%までの含有は許容する。Oは0.005質量%までの含有は許容する。Hは0.0002質量%までの含有は許容する。
銅管組織において結晶粒径が小さいほど、破壊強度と曲げ加工性バランスが向上することが知られている。本発明でも、この機構を利用して、銅合金管の平均結晶粒径を微細化する。すなわち、後述するSEM−EBSP法による測定結果で、Sn−P系銅合金管の軸方向に平行な断面における前記平均結晶粒径を20μm以下に微細化し、破壊強度と曲げ加工性とのバランスを向上させる。
本発明で規定するように銅管組織の結晶粒を制御するためには、押出素管の抽伸加工途中で、通常は行わない、中間焼鈍を入れて、この中間焼鈍により一度再結晶させ、結晶粒径を小さくしてから、最終焼鈍すれば良い。一般に、熱間押出後の結晶粒径は数10〜100μmと大きい。このため最終焼鈍時の核生成サイトとなる結晶粒界が少なく、結晶粒径が大きくなってしまう。これに対して、本発明のように、抽伸の途中で中間焼鈍を行い再結晶することで、最終焼鈍時の核生成サイトとなる結晶粒界が増加し、その結果、最終焼鈍後の結晶粒径を小さくできる。本発明によれば、このように、1.0mm以下に薄肉化されても、耐高温脆化特性を向上させたSn−P系銅合金管を製造しやすい利点もある。
前記平均結晶粒径は、電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope:FESEM)に、後方散乱電子回折像[EBSP: Electron Back Scattering(Scattered) Pattern]システムを搭載した結晶方位解析法を用いて、各々測定する。これらの測定位置は、銅管の長手方向での銅管の材質は均一であるのでいずれの部位の測定でも差し支えない。ただ、製造される銅管の長手方向の両端部だけは避けることが好ましい。
本発明銅管の製造方法について、平滑管の場合を例として以下に説明する。本発明のSn−P系銅管は、基本的な工程自体は常法により製造可能であるが、銅管の結晶粒組織を微細化するためには、抽伸工程において中間焼鈍を特に施す必要がある。以下に、各工程を具体的に説明する。
溶解:
(a)電気銅を原料として、Sn−P系銅管は溶湯中に所定のSnを添加し、更に必要に応じて選択的な添加元素を添加した後、Cu−P母合金を添加することにより、所定組成の溶湯を作製した。これら溶製した銅合金の成分組成を、表1に示す銅管の成分組成とした。なお、表1において、発明例、比較例の各例ともに、共通して、銅管のZn、Fe、Ni、Mn、Cr、Ti、Zr及びAgの含有量は合計でも0質量%、S含有量は0.005質量%未満、As、Bi、Sb、Pb、Se、Teの合計含有量(総量)は0質量%、Oの含有量は0.003質量%未満、Hの含有量は0.0001質量%未満であった。
(b)鋳造温度1200℃で、直径300mm×長さ6500mmの鋳塊を半連続鋳造し、得られた鋳塊から、長さ450mmのビレットを切り出した。
(c)このビレットをビレットヒーターで650℃に加熱した後、加熱炉(インダクションヒーター)で950℃に加熱し、950℃に到達した後2分経過後、加熱炉から取り出し、熱間押出機で、ビレット中心に直径80mmのピアシング加工を施した後、直ちに(遅滞なく)、同じ熱間押出機で、外径96mm、肉厚9.5mmの押出素管を作製した(断面減少率:96.6%)。熱間押出後の押出素管を水冷して300℃まで平均冷却速度を40℃/秒とした。
(d)押出素管を圧延して、外径35mm、肉厚2.3mmの圧延素管を作製し、圧延素管を、1回の抽伸工程における断面減少率が35%以下になるように、引き抜き抽伸加工を行い、外径22mm、肉厚1.2mm〜外径10mm、肉厚0.91mmとした。これに続く中間焼鈍までの減面率は80〜97%である。
(e)その後、中間焼鈍として、加熱炉(インダクションヒーター)で、300〜400℃の範囲の昇温速度を150℃/分以上として、表1に各々示す温度に加熱し、この各温度にて、共通して30分保持し、冷却帯を通過させて室温まで徐冷し、供試材とした。
(f)この中間焼鈍の後、引き続いて、引き抜き抽伸加工を行い、外径9.52mm、肉厚0.80mmとし、この後半の抽伸加工における断面減面率を種々変更した銅管を作成した。このときの断面減面率(%)を表1に示す。
(g)最終焼鈍として、前記ローラーハース炉によって、還元性ガス雰囲気中で、前記抽伸管を500℃×60分(平均昇温速度は共通して12℃/分)にて焼鈍し、その後水冷して供試材とした。
前記製造した銅管中央部の軸方向に平行な断面組織における平均結晶粒径を、SEMにEBSPシステムを搭載した前記結晶方位解析法により測定した。測定範囲は、銅管肉厚方向0.80mm×管の軸方向1.5mmの矩形領域とした。
前記供試材の引張試験は、JIS11号試験片を用いて、5882型インストロン社製万能試験機により、室温、試験速度10.0mm/min、GL=50mmの条件で、引張強さ(MPa)を測定した。同一条件の試験片を3本試験し、それらの平均値を採用した。
前記製造した銅管から500mmの長さの銅管を試験用に採取して、銅管の一方の端部を金属製治具(ボルト)にて耐圧的に閉塞した。そして、もう一方の開放側端部から、ポンプにて管内に負荷される水圧を徐々に高めていき(昇圧速度:1.5MPa/秒程度)、完全に管が破裂する際の水圧(MPa)を、ブルドン管式圧力計で読み取り、伝熱管の破壊強度(耐圧強度、耐圧性能、破壊圧力)とした。この試験を同一銅管に対して5回(試験管5個に対して)行い、各水圧(MPa)の平均値を室温での破壊強度とした。また破壊強度から銅管の肉厚や外径の影響を取り除いた換算応力を、破壊圧力として求めた。ここで換算応力σは、破壊強度をP、銅管の外径をD、銅管の肉厚をtとしたとき下記の式から求めた。
σ=P×(D−0.8t)/(2×t)
熱交換器の伝熱部を模擬して、前記製造した銅合金管を、各例について10本づつ、ピッチが30mmのU字形に曲げ加工した。この際、銅合金管の曲げ部における割れ、亀裂の発生を目視にて調査し、10本とも割れ、亀裂が全くなく曲げ加工できたものを、曲げ加工性が良好な○として評価した。また、10本とも割れ、亀裂は無いが、しわが発生しており、曲げ半径がより小さく、曲げ加工条件を厳しくした場合には、割れ、亀裂が発生する可能性があるものを、曲げ加工性が劣る△として評価した。更に、曲げ加工した10本の中に、割れ、亀裂が1本でも発生したものを曲げ加工性が不良な×として評価した。
前記製造した銅合金管を800℃の高温で引張試験して、破断伸び(%)を測定し、1mm以下に薄肉化された銅合金管の前記ろう付け処理の際に脆化割れを生じない、耐高温脆化特性に優れる尺度とした。具体的には、前記製造した銅合金管(長さ260mmL)の両端部を長さ80mmLづつ、つち打ちした試験片を用い、AG−G型オートグラフ引張試験機により、昇温速度50℃/minにて昇温して、800℃に到達後15分の保持を行った。その後、この高温の試験片の、試験速度10.0mm/min、GL=50mmの条件での、破断伸び(%)を測定した。同一条件の試験片を3本試験し、それらの平均値を採用した。
表1に示すとおり、発明例1〜12は、銅合金組成が本発明範囲で、抽伸(中間焼鈍)条件が適正であるので、この銅合金管組織の、銅合金管軸方向に平行な断面における平均結晶粒径が20μm以下である。このため、引張強さや破壊圧力が高いにも関わらず、曲げ加工性がよい。しかも、ろう付けの加熱相当である、銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びが25%以上であり、耐高温脆化特性が優れている。これは本発明銅合金組成による、粒界酸化の抑制効果が大きいものと推考される。
比較例1〜12は、表1に示すとおり、銅管の組成が本発明の範囲を外れている。
Claims (3)
- Sn:0.3〜2.0質量%、P:0.005〜0.1質量%、Mg:0.005〜0.5質量%を各々含有するとともに、0.5%≦2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」≦2.0%を満たし、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有する銅合金からなり、管の軸方向に平行な断面における平均結晶粒径が20μm以下である組織を有することを特徴とする銅合金管。
- Sn:0.4〜2.0質量%、P:0.005〜0.1質量%、B:0.001〜0.06質量%を各々含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有する銅合金からなり、管の軸方向に平行な断面における平均結晶粒径が20μm以下である組織を有することを特徴とする銅合金管。
- 前記銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びが25%以上である請求項1または2に記載の銅合金管。
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