JP2012149315A - 銅合金管 - Google Patents

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Abstract

【課題】1.0mm以下に薄肉化されても、耐高温脆化特性が優れ、併せて破壊強度および曲げ加工性に優れたSn−P系銅合金管を提供する。
【解決手段】特定組成のSn−P系銅合金管の結晶粒組織を微細化させるとともに、SnやPよりも酸化傾向の強い元素であるMgあるいはBを添加して、ろう付け処理時の高温での優先的な粒界酸化を抑制して、銅管にひずみが加わった場合の脆化割れを抑制し、1.0mm以下に銅合金管が薄肉化された場合でも耐高温脆化特性を向上させる。
【選択図】なし

Description

本発明はSn−P系の銅合金管(銅管)に関するものである。以下の記載では、この「銅合金管」を略して「銅管」ともいう。
エアコンなどの熱交換器に使用される銅管には、加工性(曲げ、拡管・フレア、縮管・絞りなど)及びろう付け性が良好であることが要求される。従って、これらの特性が良好であり、更に熱伝導率が良く、適切な強度を有するりん脱酸銅が広く使用されている。
近年、熱交換器に使用する冷媒が、地球環境保護の点より、オゾン破壊係数が小さいものに大きく変化してきた。ただ、新たに採用された冷媒の運転圧力は、従来の冷媒R22の1.6乃至6倍程度に増大している。また、一方では、銅地金高騰に伴う銅管コスト増大を抑制すべく、銅使用量低減のための銅管薄肉化の要求も強くなっている。
これに対しては、使用される銅管の引張り強さが大きいほど、肉厚を薄くできる。しかし、従来のりん脱酸銅管では、引張り強さが小さいことから、前記運転圧力の増大に対応するには、管の肉厚を逆に厚くする必要があり、0.5mm以下などに、肉厚を薄くできない。
また、熱交換器の組立の際にろう付け処理される銅管のろう付け部は、必然的に800℃以上の温度に数秒乃至数十秒間加熱される。このため、ろう付け部及びその近傍では、その他の部分に比べて、銅管組織の結晶粒が粗大化し、軟化により強度が低下する、という大きな問題もある。
これらの事情から、従来のりん脱酸銅管では、肉厚をより厚くする必要があり、前記した運転圧力が増大したもとでの銅管薄肉化の要求に、とても対応できない。このため、このりん脱酸銅に代わって、これらの要求に対応できる銅管が強く要望されることになる。
このような要望に応えて、従来のりん脱酸銅に替えて、より強度が高いSn−P系銅合金からなる銅管(以下、Sn−P系銅管あるいはSn−P系銅合金管と言う)が従来から種々提案されている。このSn−P系銅管は、基本的に、Sn:0.1〜1.0%、P:0.005〜0.1%を含有し、OやHなどの不純物を規制し、Znを選択的に添加した銅合金組成からなる。また、その銅管組織として、例えば平均結晶粒径を30μm以下とした微細な結晶粒径からなることが基本である(特許文献1、2、3、4参照)。
また、このSn−P系銅管において、Goss方位の集積率などの集合組織を制御して、破壊圧力を向上させる方法も開示されている(特許文献5参照)。更に、破壊強度と引張強さ(破壊強度/引張強さ)の比を、りん脱酸銅よりも大きくすることで、高い破壊圧力と良好な曲げ加工性を兼備した銅管も提案されている(特許文献6参照)。
また、Sn−P系銅管の破壊強度および曲げ加工性ともに優れさせるために、平均結晶粒径の2倍以上の粗大な結晶粒の数を規制することも、特許文献7で提案されている。この特許文献7では、Sn−P系銅合金管を0.5mm以下に薄肉化した場合の、曲げ半径が小さい厳しいU字曲げ加工における割れの原因となる、前記粗大な結晶粒を規制している。
ただ、強度が高く、前記薄肉化の要望に応えたSn−P系銅管であっても、前記熱交換器組立の際のろう付けで、800℃以上の高温にさらされ、結晶粒が粗大化して、軟化や強度低下が起こる問題は、りん脱酸銅と同様に、やはり避けがたい。したがって、例えSn−P系銅管であっても、このろう付けによる軟化の問題については、なお改善の余地があった。
このため、この軟化抑制を課題としたSn−P系銅管も従来から提案されており、特許文献8などでは、Pを銅合金管マトリックス中に一定量固溶させ、ろう付けによって結晶粒が粗大化しても、Pの固溶強化によって伝熱管の強度低下を抑制している。
特開2000−199023号公報 特許第3794971号公報 特開2004−292917号公報 特開2006−274313号公報 特開2009−102690号公報 特開2008−174785号公報 特開2010−65270号公報 特開2009−270166号公報
このように連綿と特性が改善されてきたSn−P系銅合金管ではあるが、前記ろう付け処理の際の高温での脆化割れの問題に、いまだ改善の余地を残している。すなわち、Sn−P系銅合金管のろう付け処理の際に、800℃以上の高温に曝されるとともに、銅管にひずみが加わった場合、1mm以下程度に薄肉化された銅合金管では、脆化割れが起こる場合がある。したがって、Sn−P系銅合金管には、1mm以下程度に薄肉化された場合に、前記ろう付け処理の際に脆化割れを生じない、という技術的な課題が依然としてある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、前記ろう付け処理の際の脆化割れの発生が無い、耐高温脆化特性に優れたSn−P系銅合金管を提供することを目的とする。
上記目的のための、本発明の銅合金管の最も重要な要旨は、Sn:0.3〜2.0質量%、P:0.005〜0.1質量%、Mg:0.005〜0.5質量%を各々含有するとともに、0.5%≦2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」≦2.0%を満たし、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有する銅合金からなり、管の軸方向に平行な断面における平均結晶粒径が20μm以下である組織を有することである。
上記目的のための、本発明の銅合金管の次に重要な要旨は、Sn:0.4〜2.0質量%、P:0.005〜0.1質量%、B:0.001〜0.06質量%を各々含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有する銅合金からなり、管の軸方向に平行な断面における平均結晶粒径が20μm以下である組織を有することである。
本発明者らは、Sn−P系銅合金管の前記ろう付け処理の際の脆化割れの発生の機構について改めて検討した。この結果、高温における機械的特性を調査したところ、ろう付け相当温度である800℃以上の高温では、Sn−P系銅合金管の伸びが、室温における伸びの半分以下のレベルにまで低下することを知見した。また、脆化割れが生じた破断部を観察すると、粒界脆化割れしていることを知見した。
このため、Sn−P系銅合金管のろう付け時に脆化割れが生じる原因は、高温で結晶粒の粒界が優先的に酸化されることによって、粒界が脆化することに起因すると推測される。特に、従来の肉厚が厚い銅管と比べて、薄肉化された銅管では、肉厚に対する脆い酸化層(粒界が酸化された結晶粒層)の厚さが大きく、その影響が大きくなるため、銅管にひずみが加わった場合には、脆化割れの原因となりやすい。
これに対して、本発明者らは、微量のMgやBを添加することで、Sn−P系銅合金管の高温での伸びが改善することを見出した。すなわち、MgやBは、SnやPよりも、酸化傾向の強い元素であり、これらの元素が添加されると、これらの元素の酸化が優先的に生じて、前記粒界の側の酸化が大きく抑制されるものと考えられる。
したがって、本発明によれば、薄肉化されたSn−P系銅合金管であっても、ろう付け時に、肉厚に対する脆い酸化層の厚さが大きくならずに抑制される。このため、1.0mm以下に薄肉化された銅管にひずみが加わった場合でも、高温での脆化割れを抑制でき、耐高温脆化特性に優れたSn−P系銅合金管を提供することができる。
以下に、本発明の実施の形態につき、要件ごとに順に具体的に説明する。
銅合金組成:
本発明における銅管の銅合金組成は、銅合金管に要求される、耐軟化性、破壊強度および曲げ加工性などの諸特性に優れさせ、また、製造のしやすさからしても、最も重要な組成として、Sn:0.3〜2.0質量%、P:0.005〜0.1質量%、Mg:0.005〜0.5質量%を各々含有するとともに、0.5%≦2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」≦2.0%を満たし、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成とする。
次に、製造のしやすさやコスト的にはMgに劣るものの、銅合金管に要求される、耐軟化性、破壊強度および曲げ加工性などの諸特性に優れさせるために、次に重要な組成として、Sn:0.4〜2.0質量%、P:0.005〜0.1質量%、B:0.001〜0.06質量%を各々含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成とする。
ここで、本発明と従来技術との銅合金の組成の違いについて説明しておく。前記特許文献1はMgやBを含んでいないし、前記特許文献2〜8もBを含んでいない。また、前記特許文献2〜4は、MgをFe、Ni、Co、Mn、Mg、Cr、Ti、Zr及びAg等と同じ不純物として扱い、これらの元素の合計量で0.03質量%以下に規制している。これに対して、前記特許文献5〜7は、MgをFe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti、Zr及びAgと同じく、銅合金の強度、耐軟化性や耐圧破壊強度、及び耐熱性を向上させ、結晶粒を微細化して曲げ加工性を改善する元素として扱っている。但し、Mgの含有量は、Fe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti及びAgからなる群から選択された1種または2種以上の元素の合計で0.07質量%未満としている。そして、これら特許文献の実施例表1でのMgの含有量は、共通して、最大でも0.02%程度である。また、これらMgを0.02質量%含有する実施例表1では、共通してSnの含有量が0.4質量%であり、2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」が0.45となって、本発明で必須とする0.5%≦2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」≦2.0%の関係から低めに外れる(後述する表1の比較例3に相当する)。
次に、各元素の添加(含有)理由及び組成限定理由などについて説明するが、記載含有量は全て質量%である。
Sn:0.3〜2.0質量%
Sn(すず、錫)は、室温における伸びを低下させることなく、固溶強化により銅管の引張強さを向上させ、結晶粒の粗大化を抑制させる効果を有する。このため、種々の冷媒を使用する伝熱管の銅合金中に含有させた場合、りん脱酸銅管に比べて管の肉厚を薄くすることが可能になる。
ただ、銅合金管のSn含有量が2.0質量%を超えると、鋳塊における凝固偏析が激しくなり、通常の熱間押出及び/又は加工熱処理により偏析が完全に解消しないことがあり、銅合金管の金属組織、機械的性質、曲げ加工性、ろう付け後の組織及び機械的性質が不均一となる。また、押出圧力が高くなり、Sn含有量が2.0質量%以下の銅合金と同一の押出圧力で押出成形するためには、押出温度を上げることが必要になり、それにより押出材の表面酸化が増加し、生産性の低下及び銅合金管の表面欠陥が増加する。このためSn含有量は2.0質量%以下、好ましくは1.20質量%以下とする。
一方、Sn含有量が少な過ぎると、固溶強化により銅管の引張強さを向上させることや、前記した十分な強度及び細かい結晶粒径を得ることができなくなる。このため、後述するBを含有する場合は、Snの含有量の下限を0.4質量%以上とする。一方、後述するMgは、Snと同様に、固溶強化能が高く、引張強さを向上させる効果が高い。このため、Mgを含有する場合は、Snの含有量を少なくすることができるため、Snの含有量の下限を0.3質量%以上とする。したがって、Mgを含有する場合は、Sn含有量の範囲は0.3〜2.0質量%の範囲とし、Bを含有する場合は0.4〜2.0質量%の範囲とすることが好ましい。
P:0.005〜0.1質量%
P(リン、燐)はSnと同様、銅合金管の引張り強さを向上させ、結晶粒の粗大化を抑制させる効果を有する。銅管のP含有量が0.1質量%を超えると、熱間押出時に割れが生じやすくなり、応力腐食割れ感受性が高くなると共に、熱伝導率の低下が大きくなる。一方、P含有量が0.005質量%未満であると、脱酸不足により酸素量が増加してSnの酸化物が発生し、鋳塊の健全性が低下し、銅管として曲げ加工性が低下する。したがって、P含有量の範囲は0.005〜0.1質量%の範囲とする。
本発明では、これらに加えて、更に、Mg:0.005〜0.5質量%、B:0.001〜0.06質量%のいずれか1種を含有させる。ただ、本発明ではMgとBとを同時には含有させない。すなわち、MgとBとを各々の下限量以上では同時には含有させない。但し、MgとBとを(各々の下限量以上)いずれか含有させる場合には、他方の元素の下限量未満や不純物レベルでの含有は許容し、また、他方の元素の含有量が0質量%であっても良い。これは、MgとBとがともに、Sn、Pと同様に、固溶強化の効果があり、同時の積極的添加や含有では、固溶の限界から、お互いの含有効果が相殺されるからである。
Mg:0.005〜0.5質量%
Mg(マグネシウム)は、SnやPよりも酸化傾向の強い元素であり、前記ろう付け処理時の高温での優先的な粒界酸化を抑制する効果を有する。これによって、薄肉化されたSn−P系銅合金管であっても、前記ろう付け処理時に、肉厚に対する脆い酸化層の厚さが大きくならずに抑制され、銅管にひずみが加わった場合でも、脆化割れを抑制でき1.0mm以下に薄肉化されても、耐高温脆化特性に優れたSn−P系銅合金管とすることができる。
Mg含有量が0.005質量%未満の場合、前記粒界酸化の抑制効果が小さく、高温での伸びが小さくなってしまい、銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びが25%未満となる。一方、Mg含有量が0.5質量%を超える場合は、粗大なMgリン化物が多数生成し、室温での伸びの方を低下させてしまう。したがって、Mgの含有量は0.005〜0.5質量%の範囲、好ましくは0.02質量%を超え、0.1質量%以下、より好ましくは0.03質量%を超え、0.1質量%以下の範囲とする。
また、Mgは、Snと同様に、固溶強化能が高く、銅合金管の引張り強さを向上させ、結晶粒の粗大化を抑制させる効果も有する。このため、Mgを含有する場合は、Sn含有量との関係で、0.5%≦2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」≦2.0%の関係を満たすものとする。2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」が0.5%よりも小さくなると、MgやSnの固溶強化量が少なすぎるため、十分な強度を得ることができなくなってしまう。また、銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びが低くなる。一方、2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」が2.0%よりも大きくなると、MgやSnの固溶強化量が多すぎるために、強度が高くなりすぎ、却って曲げ加工性が低下してしまう。
B:0.001〜0.06質量%
B(ボロン、ホウ素)は、Mg同様、SnやPよりも酸化傾向の強い元素であり、Mgと同じく、前記ろう付け処理時の高温での優先的な粒界酸化を抑制する効果を有する。これによって、薄肉化されたSn−P系銅合金管であっても、前記ろう付け処理時に、肉厚に対する脆い酸化層の厚さが大きくならずに抑制され、銅管にひずみが加わった場合でも、脆化割れを抑制でき1.0mm以下に薄肉化されても、耐高温脆化特性に優れたSn−P系銅合金管とすることができる。
B含有量が0.001質量%未満の場合、粒界酸化の抑制効果が小さく、前記高温での伸びが小さくなってしまい、銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びが25%未満となる。またB含有量が0.06質量%を超えると、鋳塊における凝固偏析が激しくなり、通常の熱間押出及び/又は加工熱処理により偏析が完全に解消しないことが起こる。このため、銅合金管の金属組織、機械的性質、曲げ加工性、ろう付け後の組織及び機械的性質が、部位によって不均一となる問題が生じる。
また、BはSn、Mg、Pと同様、銅合金管の引張り強さを向上させ、結晶粒の粗大化を抑制させる効果を有する。この効果を発揮させるためには、Bを含有する場合に、Sn含有量との関係で、0.5%≦「B質量%」+「Sn質量%」≦2.0%を満たすよう制御することが好ましい。「B質量%」+「Sn質量%」が0.5%よりも小さくなると、BやSnの固溶強化量が少なすぎるため、十分な強度を得ることができなくなってしまう。一方、「B質量%」+「Sn質量%」が2.0%よりも大きくなると、BやSnの固溶強化量が多すぎるために、強度が高くなりすぎ、却って曲げ加工性が低下してしまう。
その他の元素:
その他の元素は不純物であり、特に薄肉化されたSn−P系銅管の破壊強度を向上させるために、含有量は極力少ない方が好ましい。ただ、これら不純物を低減するための、地金溶解原料使用のコストや、溶解、鋳造での精錬コストとの兼ね合いもあり、以下に、現実的な許容量(上限量)を示す。Zn、Fe、Ni、Mn、Cr、Ti、Zr及びAgなどは合計で1.0質量%までの含有は許容する。Sは0.005質量%までの含有は許容する。As、Bi、Sb、Pb、Se、Te等は合計で0.0015質量%までの含有は許容する。Oは0.005質量%までの含有は許容する。Hは0.0002質量%までの含有は許容する。
銅管結晶粒組織:
銅管組織において結晶粒径が小さいほど、破壊強度と曲げ加工性バランスが向上することが知られている。本発明でも、この機構を利用して、銅合金管の平均結晶粒径を微細化する。すなわち、後述するSEM−EBSP法による測定結果で、Sn−P系銅合金管の軸方向に平行な断面における前記平均結晶粒径を20μm以下に微細化し、破壊強度と曲げ加工性とのバランスを向上させる。
因みに、銅管の厚みが比較的厚い場合には、平均結晶粒径は、破壊強度と曲げ加工性バランスにあまり影響ない。しかし、軽量化、薄肉化の要求により、伝熱管の厚みが特に1.0mm以下に薄肉化された場合には、この結晶粒径の大きさの破壊強度と曲げ加工性バランスへの影響が著しく大きくなる。平均結晶粒径が前記上限を超えて大き過ぎると、伝熱管に加わる引張力によって亀裂が発生する際の「ひずみの集中」を避けることができず、伝熱管に亀裂が生じやすくなる。このため、前記した運転圧力が高い代替冷媒を用いた熱交換器用銅管を使用したときの信頼性が低下する。また、結晶粒径が粗大化すると、銅管を曲げ加工したときに、曲げ部に割れが発生しやすくなる問題も生じる。なお、結晶粒微細化の効果の点からは、前記平均結晶粒径は小さい程良いが、製造上の条件等にもよるが2〜3μm程度までの微細化も考えられる。
更に、銅管が熱交換器に加工されたとき、800℃以上の高温にさらされる、ろう付けによる熱影響を受けて、伝熱管の加熱された部分の結晶粒径は必ず粗大化する。これに対して、予め銅管の平均結晶粒径を前記した範囲に微細化させていないと、粗大化によって平均結晶粒径が100μmを超える可能性が高くなるり、ろう付け部において耐圧強度の低下が大きくなり、耐軟化性が低下する。
結晶粒の制御方法:
本発明で規定するように銅管組織の結晶粒を制御するためには、押出素管の抽伸加工途中で、通常は行わない、中間焼鈍を入れて、この中間焼鈍により一度再結晶させ、結晶粒径を小さくしてから、最終焼鈍すれば良い。一般に、熱間押出後の結晶粒径は数10〜100μmと大きい。このため最終焼鈍時の核生成サイトとなる結晶粒界が少なく、結晶粒径が大きくなってしまう。これに対して、本発明のように、抽伸の途中で中間焼鈍を行い再結晶することで、最終焼鈍時の核生成サイトとなる結晶粒界が増加し、その結果、最終焼鈍後の結晶粒径を小さくできる。本発明によれば、このように、1.0mm以下に薄肉化されても、耐高温脆化特性を向上させたSn−P系銅合金管を製造しやすい利点もある。
平均結晶粒径の測定方法:
前記平均結晶粒径は、電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope:FESEM)に、後方散乱電子回折像[EBSP: Electron Back Scattering(Scattered) Pattern]システムを搭載した結晶方位解析法を用いて、各々測定する。これらの測定位置は、銅管の長手方向での銅管の材質は均一であるのでいずれの部位の測定でも差し支えない。ただ、製造される銅管の長手方向の両端部だけは避けることが好ましい。
上記EBSP法は、FESEM の鏡筒内にセットした試料に電子線を照射してスクリーン上にEBSPを投影する。これを高感度カメラで撮影して、コンピュータに画像として取り込む。コンピュータでは、この画像を解析して、既知の結晶系を用いたシミュレーションによるパターンとの比較によって、結晶の方位が決定される。算出された結晶の方位は3次元オイラー角として、位置座標(x、y)などとともに記録される。このプロセスが全測定点に対して自動的に行なわれるので、測定終了時には数万〜数十万点の結晶方位データが得られる。
ここで、通常の銅合金の圧延板の場合、主に、Cube方位、Goss方位、Brass方位、Copper方位、S方位等と呼ばれる多くの方位因子からなる集合組織を形成し、それらに応じた結晶面が存在する。これらの事実は、例えば、長島晋一編著、「集合組織」(丸善株式会社刊)や軽金属学会「軽金属」解説Vol.43、1993、P285-293などの記載されている。本発明銅管は押出・圧延・抽伸によって製造されるが、この場合も、前記圧延板の集合組織と同様に、押出素管の押出面と押出方向(押出素管を圧延加工する場合は圧延面と圧延方向)で表され、押出面は{ABC}で表現され、押出方向は<DEF>で表現される。
本発明においては、基本的に、これらの結晶面から±15°以内の方位のずれのものは同一の結晶面(方位因子)に属するものとし、また、隣り合う結晶粒の方位差が5°以上の結晶粒の境界を結晶粒界と定義する。 その上で、本発明においては、測定エリア、管軸方向1000μm×管周方向800μmに対して1.0μmのピッチで電子線を照射して、この広範な測定範囲(領域) を各々測定する。その上で、上記結晶方位解析法により測定した結晶粒の数をn、それぞれの測定した結晶粒径をxとした時、上記平均結晶粒径を(Σx)/nで算出する。
銅管の製造方法:
本発明銅管の製造方法について、平滑管の場合を例として以下に説明する。本発明のSn−P系銅管は、基本的な工程自体は常法により製造可能であるが、銅管の結晶粒組織を微細化するためには、抽伸工程において中間焼鈍を特に施す必要がある。以下に、各工程を具体的に説明する。
先ず、原料の電気銅を木炭被覆の状態で溶解し、銅が溶解した後、所定のSn−P系銅合金組成となるように、Sn、Mg、Bなどの合金元素を所定量添加する。この際、脱酸を兼ねてCu−15質量%P中間合金としてPを添加することが好ましい。また、Sn及びCu−P母合金の替わりに、Cu−Sn−Pの母合金を使用することもできる。これらの成分調整が終了した後、半連続鋳造により所定の寸法のビレットを作製する。得られたビレットを加熱炉で加熱し、均質化処理を行なう。なお、熱間押出前に、ビレットを750乃至950℃に1分乃至2時間程度保持して均質化による偏析改善を行うことが望ましい。
その後、ビレットにピアシングによる穿孔加工を行い、750乃至950℃で熱間押出を行う。この際、Sn−P系銅管のSnの偏析解消や製品管における組織の微細化の達成が必要である。そのために、Sn−P系銅管の熱間押出による断面減少率([穿孔されたビレットのドーナツ状の面積−熱間押出後の素管の断面積]/[穿孔されたビレットのドーナツ状の面積]×100%)を88%以上、望ましくは93%以上とする。
更に熱間押出後の素管を水冷等の方法により、表面温度が300℃になるまでの冷却速度が10℃/秒以上、望ましくは15℃/秒以上、更に望ましくは20℃/秒以上となるように冷却することが好ましい。
次に、押出素管に圧延加工を行ない、外径と肉厚を低減させる。このときの加工率を断面減少率で92%以下とすることにより、圧延時の製品不良を低減できる。この圧延素管に抽伸加工を行なって所定の寸法および肉厚の素管を製造する。この抽伸加工の際に、肉厚を1.0mm以下に薄肉化する場合には、合計加工率を、断面減少率で95%以上とする。この際、抽伸加工は通常複数台の抽伸機を用いて行うが、各抽伸機による加工率(断面減少率)を35%以下とすることにより、素管における表面欠陥及び内部割れを低減できる。
この抽伸加工の途中あるいは後で、中間焼鈍を400℃以上、700℃以下の温度範囲で2分〜1時間行う。中間焼鈍温度が400℃よりも低いと、中間焼鈍工程で再結晶が生じず、結晶粒径が大きいまま最終焼鈍工程に持ち越される。このため、従来のSn−P系銅合金管同様に、平均結晶粒径が20μm以上となりやすく、破壊圧力が低くなる。
一方、中間焼鈍温度が700℃よりも高いと、中間焼鈍後の結晶粒径が大きくなってしまい、結晶粒径が大きいまま最終焼鈍工程に持ち越される。このため、従来のSn−P系銅合金管同様に、最終焼鈍工程で生成する結晶粒は、比較的大きくなりやすく、破壊圧力が低くなる。
この中間焼鈍後、更に、抽伸加工を行って平滑管を製作するが、この中間焼鈍後の断面減面率は35%以上80%以下とする。減面率が35%よりも低いと、蓄積ひずみ量が小さすぎ、再結晶核の生成に必要な駆動力を高められない。このため、その後の最終焼鈍で、再結晶核の生成によるひずみのない等軸な結晶粒が生成しにくくなり、伸長粒となりやく、耐軟化性が劣ることとなる。一方、減面率が80%を超えて高すぎると、最終の銅管の外径が小さくなりすぎ、また銅管の肉厚が薄くなりすぎてしまい、冷媒の内圧に耐えられなくなってしまう。
また、この中間焼鈍の昇温の際に、300〜400℃の範囲の昇温速度は150℃/分以上に速めることが好ましい。この温度範囲では、回復による転位密度の減少が顕著であり、昇温速度を大きくして、なるべく回復を生じさせないことが好ましい。一方、400℃以上では再結晶核の生成が生じ始めるため、この温度以上では、昇温速度が結晶粒のバラツキに与える影響は小さく、速める必要はない。中間焼鈍の使用加熱炉はインダクションヒーターを用い、設定温度を高温にし、保持時間を短時間とすることで、前記300〜400℃の範囲の昇温速度を大きくできる。
この抽伸工程の後、抽伸素管に最終の焼鈍処理を行う。銅管を連続的に焼鈍するには、銅管コイル等の焼鈍に通常使用されるローラーハース炉、又は高周波誘導コイルに通電しながら、抽伸素管を前記コイル内に通す、高周波誘導コイルによる加熱を利用することができる。
この最終焼鈍では、抽伸素管の実体温度が350乃至700℃となり、その温度で抽伸素管が1分乃至120分間程度加熱されるように焼鈍することが望ましい。抽伸素管の実体温度が350℃より低いと完全な再結晶組織にならず、繊維状の加工組織が残存し、需要家における曲げ加工が困難になる。また、700℃を超える温度では、結晶粒が粗大化し、管の曲げ加工性が却って低下してしまう。したがって、抽伸管の実体温度が350乃至700℃の範囲で焼鈍することが望ましい。
また、この温度範囲における加熱時間が1分より短いと、完全な再結晶組織にならないため、前記した問題が発生する。また、120分を超えて焼鈍を行っても、結晶粒径に変化がなく、焼鈍の効果は飽和してしまうため、効率が悪い。このため、前記温度範囲における加熱時間は1分乃至120分が適当である。
以上が平滑管の製造方法であるが、このように最終焼鈍した平滑管に、必要に応じて各種加工率の抽伸加工を行い、引張り強さを向上させた加工管としてもよい。内面溝付管の場合は平滑管に溝付転造加工を行い、内面溝付管を製造した後、更に最終の焼鈍を行う。また、このように焼鈍した内面溝付管に、必要に応じて軽加工率の抽伸加工を行い、引張り強さを向上させてもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。表1に示す種々の化学組成や、表2に示す製造条件(抽伸における中間焼鈍の有無)とし、結晶粒組織を異なせた種々のSn−P系銅管を、平滑管として製造した。
これらの銅合金管の軸方向に平行な断面における平均結晶粒径、引張強さ、破壊強度、曲げ加工性、高温脆化特性について測定、評価した。これらの結果も表1に示す。これらSn−P系銅管(平滑管)の具体的な製造方法や測定、評価方法は以下の通りである。
(平滑管の製造条件)
溶解:
(a)電気銅を原料として、Sn−P系銅管は溶湯中に所定のSnを添加し、更に必要に応じて選択的な添加元素を添加した後、Cu−P母合金を添加することにより、所定組成の溶湯を作製した。これら溶製した銅合金の成分組成を、表1に示す銅管の成分組成とした。なお、表1において、発明例、比較例の各例ともに、共通して、銅管のZn、Fe、Ni、Mn、Cr、Ti、Zr及びAgの含有量は合計でも0質量%、S含有量は0.005質量%未満、As、Bi、Sb、Pb、Se、Teの合計含有量(総量)は0質量%、Oの含有量は0.003質量%未満、Hの含有量は0.0001質量%未満であった。
鋳造:
(b)鋳造温度1200℃で、直径300mm×長さ6500mmの鋳塊を半連続鋳造し、得られた鋳塊から、長さ450mmのビレットを切り出した。
熱間押出:
(c)このビレットをビレットヒーターで650℃に加熱した後、加熱炉(インダクションヒーター)で950℃に加熱し、950℃に到達した後2分経過後、加熱炉から取り出し、熱間押出機で、ビレット中心に直径80mmのピアシング加工を施した後、直ちに(遅滞なく)、同じ熱間押出機で、外径96mm、肉厚9.5mmの押出素管を作製した(断面減少率:96.6%)。熱間押出後の押出素管を水冷して300℃まで平均冷却速度を40℃/秒とした。
圧延、抽伸(前半):
(d)押出素管を圧延して、外径35mm、肉厚2.3mmの圧延素管を作製し、圧延素管を、1回の抽伸工程における断面減少率が35%以下になるように、引き抜き抽伸加工を行い、外径22mm、肉厚1.2mm〜外径10mm、肉厚0.91mmとした。これに続く中間焼鈍までの減面率は80〜97%である。
中間焼鈍:
(e)その後、中間焼鈍として、加熱炉(インダクションヒーター)で、300〜400℃の範囲の昇温速度を150℃/分以上として、表1に各々示す温度に加熱し、この各温度にて、共通して30分保持し、冷却帯を通過させて室温まで徐冷し、供試材とした。
抽伸(後半):
(f)この中間焼鈍の後、引き続いて、引き抜き抽伸加工を行い、外径9.52mm、肉厚0.80mmとし、この後半の抽伸加工における断面減面率を種々変更した銅管を作成した。このときの断面減面率(%)を表1に示す。
最終焼鈍:
(g)最終焼鈍として、前記ローラーハース炉によって、還元性ガス雰囲気中で、前記抽伸管を500℃×60分(平均昇温速度は共通して12℃/分)にて焼鈍し、その後水冷して供試材とした。
(h)これら製造した銅管(外径9.52mm、肉厚0.80mm)の平均結晶粒径、引張強さ、破壊強度、曲げ加工性、耐高温脆化特性などの銅管特性を測定した。
(結晶粒組織)
前記製造した銅管中央部の軸方向に平行な断面組織における平均結晶粒径を、SEMにEBSPシステムを搭載した前記結晶方位解析法により測定した。測定範囲は、銅管肉厚方向0.80mm×管の軸方向1.5mmの矩形領域とした。
(引張試験)
前記供試材の引張試験は、JIS11号試験片を用いて、5882型インストロン社製万能試験機により、室温、試験速度10.0mm/min、GL=50mmの条件で、引張強さ(MPa)を測定した。同一条件の試験片を3本試験し、それらの平均値を採用した。
(破壊強度)
前記製造した銅管から500mmの長さの銅管を試験用に採取して、銅管の一方の端部を金属製治具(ボルト)にて耐圧的に閉塞した。そして、もう一方の開放側端部から、ポンプにて管内に負荷される水圧を徐々に高めていき(昇圧速度:1.5MPa/秒程度)、完全に管が破裂する際の水圧(MPa)を、ブルドン管式圧力計で読み取り、伝熱管の破壊強度(耐圧強度、耐圧性能、破壊圧力)とした。この試験を同一銅管に対して5回(試験管5個に対して)行い、各水圧(MPa)の平均値を室温での破壊強度とした。また破壊強度から銅管の肉厚や外径の影響を取り除いた換算応力を、破壊圧力として求めた。ここで換算応力σは、破壊強度をP、銅管の外径をD、銅管の肉厚をtとしたとき下記の式から求めた。
σ=P×(D−0.8t)/(2×t)
(曲げ加工試験)
熱交換器の伝熱部を模擬して、前記製造した銅合金管を、各例について10本づつ、ピッチが30mmのU字形に曲げ加工した。この際、銅合金管の曲げ部における割れ、亀裂の発生を目視にて調査し、10本とも割れ、亀裂が全くなく曲げ加工できたものを、曲げ加工性が良好な○として評価した。また、10本とも割れ、亀裂は無いが、しわが発生しており、曲げ半径がより小さく、曲げ加工条件を厳しくした場合には、割れ、亀裂が発生する可能性があるものを、曲げ加工性が劣る△として評価した。更に、曲げ加工した10本の中に、割れ、亀裂が1本でも発生したものを曲げ加工性が不良な×として評価した。
(耐軟化性)
前記製造した銅合金管を800℃の高温で引張試験して、破断伸び(%)を測定し、1mm以下に薄肉化された銅合金管の前記ろう付け処理の際に脆化割れを生じない、耐高温脆化特性に優れる尺度とした。具体的には、前記製造した銅合金管(長さ260mmL)の両端部を長さ80mmLづつ、つち打ちした試験片を用い、AG−G型オートグラフ引張試験機により、昇温速度50℃/minにて昇温して、800℃に到達後15分の保持を行った。その後、この高温の試験片の、試験速度10.0mm/min、GL=50mmの条件での、破断伸び(%)を測定した。同一条件の試験片を3本試験し、それらの平均値を採用した。
(発明例)
表1に示すとおり、発明例1〜12は、銅合金組成が本発明範囲で、抽伸(中間焼鈍)条件が適正であるので、この銅合金管組織の、銅合金管軸方向に平行な断面における平均結晶粒径が20μm以下である。このため、引張強さや破壊圧力が高いにも関わらず、曲げ加工性がよい。しかも、ろう付けの加熱相当である、銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びが25%以上であり、耐高温脆化特性が優れている。これは本発明銅合金組成による、粒界酸化の抑制効果が大きいものと推考される。
(比較例)
比較例1〜12は、表1に示すとおり、銅管の組成が本発明の範囲を外れている。
比較例1はMg、Bを含んでいない。このため、抽伸(中間焼鈍)条件は適切な範囲で、また、平均結晶粒径が20μm以下であるにも関わらず、銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びが21%程度と低く、耐高温脆化特性が劣っている。これは、比較例1の銅合金組成に、粒界酸化の抑制効果がないものと推考される。
比較例2はSn含有量が少なすぎる。このため、抽伸(中間焼鈍)条件は適切な範囲で、平均結晶粒径が20μm以下であるにも関わらず、強度が低く、破壊圧力も低すぎる。
比較例3は、MgとSnの各含有量は各規定範囲内であるものの、2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」が0.5%以上を満たさない。このため銅合金管に必要な引張強さと破壊圧力が低すぎる。また、抽伸途中での中間焼鈍を施していない。このため、平均結晶粒径も大きくなりすぎ、銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びも24%程度と低い。
比較例4も、比較例3と同じ組成で、2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」が0.5%以上を満たさないが、比較例3と違い、抽伸途中での中間焼鈍を施している。このため、銅合金管組織の銅合金管軸方向に平行な断面における平均結晶粒径は20μm以下であり、曲げ加工性もよい。また、ろう付けの加熱相当である、銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びが25%以上であり、耐高温脆化特性が優れている。しかし、銅合金管に必要な引張強さと破壊圧力が低すぎる。
比較例5は、Mg含有量が高すぎ、2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」が2.0%以下を満たさない。このため、強度が高すぎてしまい、曲げ加工性が劣化してしまう。また強度が高すぎるため、抽伸(中間焼鈍)条件は適切な範囲で、また、平均結晶粒径が20μm以下であるにも関わらず、銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びも18%程度と低い。
比較例6は、MgとSnの各含有量は各規定範囲内であるものの、2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」が2.0%以下を満たさない。このため、強度が高すぎてしまい、曲げ加工性が劣化してしまう。また強度が高すぎるため、抽伸(中間焼鈍)条件は適切な範囲で、また、平均結晶粒径が20μm以下であるにも関わらず、銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びが17%程度と低い。
比較例7〜10は、表1に示すとおり、銅管の組成は本発明の範囲内だが、抽伸(中間焼鈍)条件が適切な範囲を外れている。
比較例7は抽伸途中での中間焼鈍を施しておらず、比較例8は抽伸途中での中間焼鈍温度が低く過ぎる。このため、比較例7、8は平均結晶粒径も大きくなりすぎ、銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びも20%、19%程度と各々低く、耐高温脆化特性が劣っている。
比較例9は抽伸途中での中間焼鈍温度が高過ぎる。このため、平均結晶粒径も大きくなりすぎ、銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びも19%、20%程度と各々低く、耐高温脆化特性が劣っている。
比較例10は中間焼鈍後の抽伸での減面率が小さすぎる。このため、蓄積ひずみ量が小さすぎて、再結晶核の生成に必要な駆動力を高められないので、その後の最終焼鈍で、平均結晶粒径も大きくなりすぎている。したがって、銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びも17%程度と低く、耐高温脆化特性が劣っている。
比較例11〜13も、表1に示すとおり、抽伸(中間焼鈍)条件は適切な範囲だが、銅管の組成が本発明の範囲を外れている。
比較例11はSn含有量が高すぎるため、押出加工できずに、銅管が製造できなかった。
比較例12はP含有量が高すぎるため、押出加工後に割れが生じ、やはり銅管が製造できなかった。
比較例13はB含有量が高すぎるため、押出加工後に割れが生じ、やはり銅管が製造できなかった。
以上の結果から、1.0mm以下に薄肉化されても、耐高温脆化特性が優れ、併せて破壊強度および曲げ加工性に優れたSn−P系銅合金管を得るための、本発明の成分組成、結晶粒組織の規定、更には、このような組織を得るための好ましい製造条件の意義が裏付けられる。また、耐高温脆化特性が優れるための、本発明銅合金組成による粒界酸化の抑制効果も裏付けられる。
Figure 2012149315
以上説明したように、本発明によれば、1.0mm以下に薄肉化されても、耐高温脆化特性が優れ、併せて破壊強度および曲げ加工性に優れたSn−P系銅合金管を提供できる。この結果、新たな代替冷媒による高い運転圧力に薄肉化されて用いられる熱交換器用伝熱管などに好適に適用することができる。

Claims (3)

  1. Sn:0.3〜2.0質量%、P:0.005〜0.1質量%、Mg:0.005〜0.5質量%を各々含有するとともに、0.5%≦2.5×「Mg質量%」+「Sn質量%」≦2.0%を満たし、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有する銅合金からなり、管の軸方向に平行な断面における平均結晶粒径が20μm以下である組織を有することを特徴とする銅合金管。
  2. Sn:0.4〜2.0質量%、P:0.005〜0.1質量%、B:0.001〜0.06質量%を各々含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有する銅合金からなり、管の軸方向に平行な断面における平均結晶粒径が20μm以下である組織を有することを特徴とする銅合金管。
  3. 前記銅合金管の800℃の高温引張試験における伸びが25%以上である請求項1または2に記載の銅合金管。
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