JP2010065270A - 曲げ加工性に優れた熱交換器用銅合金管 - Google Patents

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Abstract

【課題】二酸化炭素及びHFC系フロン等の新たな冷媒の高い運転圧力に、薄肉化されても使用可能な熱交換器用銅合金管を提供することを目的とする。
【解決手段】銅合金管がSn、Pを含有する特定組成を有するとともに、結晶粒径が微細で、かつ粗大な結晶粒が実質的に存在しない組織を有して、0.5mm以下に薄肉化されても、曲げ半径がより小さいような、HFC系フロンや二酸化炭素などを冷媒とした熱交換器用伝熱管への曲げ加工を可能とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、特に、HFC系フロンや二酸化炭素などを冷媒とした熱交換器用として好適な、薄肉化されても曲げ加工性に優れた、高強度な熱交換器用銅合金管に関するものである。
例えば、エアコンの熱交換器は、主として、ヘアピン状に曲げ加工したU字形銅管(以下、銅管という場合は銅合金管も含む)と、アルミニウム又はアルミニウム合金板からなるフィン(以下、アルミニウムフィンという)から構成される。より具体的には、熱交換器の伝熱部は、U字形に曲げ加工した銅管をアルミニウムフィンの貫通孔に通し、U字形銅管内に治具を挿入して拡管することにより、銅管とアルミニウムフィンとを密着させる。そして、更に、このU字形銅管の開放端を拡管して、この拡管開放端部に、同じくU字形に曲げ加工したベンド銅管を挿入し、りん銅ろう等のろう材により、ベンド銅管を銅管の拡管開放端部にろう付けすることにより接続して、熱交換器とされる。
このため、熱交換器の伝熱管に使用される銅管には、基本特性としての熱伝導率とともに、上記熱交換器の伝熱管製作時の曲げ加工性及びろう付け性が良好であることが要求される。これらの特性が良好である銅管材料として、適切な強度を有するりん脱酸銅が、これまで広く使用されている。
一方、エアコン等の熱交換器に使用する冷媒には、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)系フロンが広く使用されてきた。しかし、HCFCはオゾン破壊係数が大きいことから、地球環境保護の点より、近年、その値が小さいHFC(ハイドロフルオロカーボン)系フロンが使用されるようになってきた。また、給湯器、自動車用空調機器又は自動販売機等に使用される熱交換器には、近年、自然冷媒である二酸化炭素が使用されるようになってきた。
ただ、これらHFC系フロンや二酸化炭素を新しい冷媒にして、HCFC系フロンと同じ伝熱性能を維持するためには、運転時の凝縮圧力を大きくする必要がある。通常、熱交換器において、これらの冷媒が使用される圧力(熱交換器の伝熱管内を流れる圧力)は、凝縮器(二酸化炭素においてはガスクーラ)において最大となる。この凝縮器やガスクーラにおいて、例えば、HCFC系フロンのR22では1.8MPa程度の凝縮圧力である。これに対して、同じ伝熱性能を維持するためには、HFC系フロンのR410Aでは3MPa、また二酸化炭素冷媒では7乃至10MPa(超臨界状態)程度の凝縮圧力が必要である。したがって、これらの新たな冷媒の運転圧力は、従来の冷媒R22の運転圧力の1.6乃至6倍程度に増大している。
ところが、りん脱酸銅製伝熱管の場合、引張強さが小さいことから、これらの新冷媒による冷媒の運転圧力の増大に対応して、伝熱管を強化するためには、伝熱管の肉厚を厚くする必要がある。また、熱交換器の組立の際、ろう付け部は800℃以上の温度に数秒乃至数十秒間加熱されるため、ろう付け部及びその近傍ではその他の部分に比べて結晶粒が粗大化し、軟化により強度が低下した状態となってしまう。これらのことから、新冷媒の熱交換器に、りん脱酸銅製伝熱管を用いる場合には、これまでよりも伝熱管の肉厚をより厚くする必要がある。したがって、HFC系フロンや二酸化炭素の新冷媒に対して、伝熱管としてりん脱酸銅を使用すると、伝熱管の厚肉化の分だけ、熱交換器の質量が増大し、価格が上昇する。
このため、引張強さが高く、加工性が優れていて、良好な熱伝導率を有する伝熱管が、伝熱管の薄肉化のために、強く要望されるようになっている。この点、伝熱管の引張強さと肉厚との間には一定の関係がある。例えば、伝熱管内を流れる冷媒の運転圧力をP、伝熱管の外径をD、伝熱管の引張強さ(伝熱管長手方向)をσ、伝熱管の肉厚をt(内面溝付管の場合は底肉厚)とすると、これらの間には、P=2×σ×t/(D−0.8×t)の関係がある。この式を肉厚tに関して整理すると、t=(D×P)/(2×σ+0.8×P)となり、伝熱管の引張強さが大きいほど、肉厚を薄くできることがわかる。実際に伝熱管を選定する場合には、前記冷媒の運転圧力Pに、更に安全率S(通常2.5乃至4程度)を乗じた圧力に対して算出される引張強さ及び肉厚の伝熱管を使用する。
このような伝熱管の薄肉化の要望に応えるべく、りん脱酸銅に替えて、りん脱酸銅よりも強度が高い、Co−P系あるいはSn−P系などの銅合金管が従来から種々提案されている。例えば、Co−P系としては、Co:0.02〜0.2%、P:0.01〜0.05%、C:1〜20ppmを含有し、不純物の酸素を規制した、0.2%耐力と疲れ強さが優れた熱交換器用継目無銅合金管が提案されている(特許文献1参照)。
また、Sn−P系銅合金管としては、Sn:0.1〜1.0%、P:0.005〜0.1%を含有し、OやHなどの不純物を規制し、Znを選択的に添加した組成からなり、更に平均結晶粒径が30μm以下であるような、熱交換器用銅合金管が提案されている(特許文献2、3、4参照)。
一方、伝熱管の破壊強度を高めるための技術としては、Al、Siなどの合金元素を添加した熱交換器用銅合金管が提案されている(特許文献5、6参照)。更に、Sn−P系の銅合金管ではないが、Snの量が多いりん青銅の銅合金板において、板の破壊強度を高めるために、X線回折強度で規定される集合組織を規定することが公知である(特許文献7参照)。
また、銅合金の分野では、Sn−P系の銅合金ではないが、析出物による強化も公知であり、析出物を形成しやすいCr、Ti、Zrなどの元素を添加して析出物を形成させることが公知である(特許文献8参照)。このような析出物による強化では、この特許文献8のように、破壊の起点となって、曲げ加工性や破壊強度などを低下させる、粗大な析出物を一方で抑制することも公知である。
特開2000−199023号公報 特許第3794971号公報 特開2004−292917号公報 特開2006−274313号公報 特開昭63−50439号公報 特開2003−301250号公報 特開2004−27331号公報 特開2005−113259号公報
ところで、前記した伝熱管の薄肉化要求により、素材銅合金管の肉厚は、0.5mm以下の、例えば0.3mm程度にまで薄肉化される傾向にある。しかし、このように薄肉化された素材銅合金管は、熱交換器用伝熱管製作時の前記曲げ加工の際に、特に割れやすくなる。そして、このような曲げ加工の際に割れやすくなる傾向は、素材銅合金管が薄肉化されるほど、また、ヘアピン状の前記U字曲げ加工における曲げ半径が小さいほど、更に、銅合金管が高強度となるほど、大きくなる。
このため、前記Sn−P系などの高強度化された銅合金管の場合でも、曲げ半径が小さい場合の曲げ加工の際の割れを抑制するためには、それなりの管肉厚が必要で、0.5mm以下に薄肉化することが難しかったのが実情である。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、前記薄肉化および高強度化されても、曲げ加工性に優れた熱交換器用銅合金管を提供することを目的とする。
上記目的のために、本発明耐軟化性に優れた熱交換器用銅合金管の要旨は、Sn:0.1〜3.0質量%、P:0.005〜0.1質量%以下を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有し、倍率400倍の光学顕微鏡にて測定された平均結晶粒径が30μm以下であり、更に、この平均結晶粒径測定視野内における、前記平均結晶粒径値の2倍以上の結晶粒径を有する粗大結晶粒の平均個数が4個以下である組織を有することとする。
ここで、前記銅合金管が、Zn:0.01〜1.0質量%を含有することが好ましい。また、前記銅合金管が、Fe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti及びAgからなる群から選択された1種または2種以上の元素を合計で0.07質量%未満含有することが好ましい。更に、前記本発明は、前記銅合金管の肉厚が0.5mm以下である場合に好適である。
本発明は、Sn−P系銅合金管が0.5mm以下に薄肉化されても、熱交換器伝熱管への曲げ加工の際の割れを抑制するために、単に平均結晶粒径を細かくするだけでなく、粗大な結晶粒の個数を規制して、粗大な結晶粒自体をできるだけ無くすようにする。
Sn−P系銅合金管の平均結晶粒径を規定し、平均的な結晶粒径を細かくするだけでは、例え絶対数が少なくても、粗大な結晶粒自体の存在は許容されることとなる。そして、このような粗大な結晶粒は、その絶対数が少なくても、高強度化されて、しかも0.5mm以下に薄肉化されたSn−P系銅合金管では、前記U字曲げ加工における曲げ半径が小さい曲げ加工の際には、加工割れ発生の決定的な原因となりうる。これに対して、Sn−P系銅合金管が0.5mmを超えて厚肉化されていた従来の銅合金管では、例え、このような粗大な結晶粒が存在していても、薄肉化された銅合金管ほどには、前記曲げ加工の際の割れの決定的な原因とはなり得ない。
本発明は、Sn−P系銅合金管の、平均結晶粒径を細かくするだけでなく、粗大な結晶粒自体を規制する。これによって、素材Sn−P系銅合金管の曲げ加工性を向上させ、前記U字曲げ加工における曲げ半径が小さい曲げ加工や、新冷媒による冷媒の運転圧力の増大に対応する伝熱管の薄肉化を可能とする。
(銅合金成分組成)
以下に、先ず、本発明のSn−P系銅合金管の銅合金成分組成について説明する。本発明では、銅合金の成分組成を、熱交換器用銅管としての要求特性を満たし、生産性も高いSn−P系銅合金とする。熱交換器用銅管の要求特性としては、熱伝導率が高く、熱交換器製作時の曲げ加工性及びろう付け性が良好であるなどを満たす必要がある。生産性としては、シャフト炉造塊や熱間押出が可能である必要がある。
このために、本発明銅合金の成分組成は、Sn:0.1〜3.0質量%、P:0.005〜0.1質量%以下を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成とする。これに、更に、選択的に、Zn:0.01〜1.0質量%を含有しても、Fe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti及びAgからなる群から選択された1種または2種以上の元素を合計で0.07質量%未満含有してもよい。以下に、これら銅合金成分組成の各元素の成分含有理由及び限定理由について説明する。
Sn:0.1〜3.0質量%
Snは、銅合金管の引張り強さを向上させ、結晶粒の粗大化を抑制させる効果を有し、りん脱酸銅管に比べて、管の肉厚を薄くすることが可能になる。銅合金管のSn含有量が3.0質量%を超えると、鋳塊における凝固偏析が激しくなり、通常の熱間押出及び/又は加工熱処理により偏析が完全に解消しないことがあり、銅合金管の金属組織、機械的性質、曲げ加工性、ろう付け後の組織及び機械的性質が不均一となる。また、押出圧力が高くなり、Sn含有量が3.0質量%以下の銅合金と同一の押出圧力で押出成形するためには、押出温度を上げることが必要になり、それにより押出材の表面酸化が増加し、生産性の低下及び銅合金管の表面欠陥が増加する。一方、Snが0.1質量%未満であると、Sn−P系銅合金管が0.5mm以下に薄肉化された場合に、十分な引張強さ及び細かい結晶粒径を得ることができなくなる。
P:0.005〜0.1質量%
Pは、固溶強化によって、銅合金管の引張り強さを向上させ、伝熱管の強度を保証する重要元素である。また、PはSnと同様、結晶粒の粗大化を抑制させる効果を有し、りん脱酸銅管に比べて管の肉厚を薄くすることが可能になる。
P含有量が少なすぎると、Pの固溶強化が不足して、Sn−P系銅合金管が0.5mm以下に薄肉化された場合の強度が不足する。また、脱酸不足により、酸素量が増加してPの酸化物が発生し、鋳塊の健全性が低下し、銅合金管として曲げ加工性が低下する。更に、素材銅合金管における細かい結晶粒径を得ることができなくなる。その一方で、逆に、銅合金管のP含有量が多すぎると、熱間押出時に割れが生じやすくなり、応力腐食割れ感受性が高くなると共に、熱伝導率の低下が大きくなる。したがって、P含有量は0.005〜0.1質量%の範囲とする。
Zn:0.01乃至1.0質量%
Znを含有することにより、銅合金管の熱伝導率を大きく低下させることなく、強度、耐圧破壊強度、耐熱性及び疲れ強さを向上させることができる。また、Znの添加により、冷間圧延、抽伸及び転造等に用いる工具の磨耗を低減させることができ、抽伸プラグ及び溝付プラグ等の寿命を延命させる効果があり、生産コストの低減に寄与する。Znの含有量が1.0質量%を超えると、管の長手方向や管円周方向の引張強さが却って低下し、破壊強度が低下する。また、応力腐食割れ感受性が高くなる。また、Znの含有量が0.01質量%未満であると、上述の効果が十分得られなくなる。従って、選択的に含有させる場合のZnの含有量は0.001乃至1.0質量%とすることが必要である。
Fe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti及びAg:
Fe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti、Zr及びAgはいずれも本発明の銅合金の強度、耐圧破壊強度、及び耐熱性を向上させ、結晶粒を微細化して曲げ加工性を改善する。ただ、前記元素の中から選択する1種または2種以上の元素の含有量が0.07質量%を超えると、押出圧力が上昇するため、これらの元素を添加しないものと同一の押出力で押出を行おうとすると、熱間押出温度を上げることが必要になる。これにより、押出材の表面酸化が多くなるため、本発明の銅合金管において表面欠陥が多発し、特に薄肉化されたSn−P系銅合金管の伝熱管としての破壊強度を向上できない。このため、選択的に含有させる場合には、Fe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti、Zr及びAgからなる群から選択された1種または2種以上の元素を合計で0.07質量%未満とすることが望ましい。前記合計含有量は0.05質量%未満とすることがより望ましく、0.03質量%未満とすることが更に望ましい。
不純物:
その他の元素は不純物であり、特に薄肉化された銅合金管の曲げ加工性や伝熱管としての破壊強度を向上させるために、含有量は極力少ない方が好ましい。しかし、これら不純物を低減するためのコストとの関係もあり、以下に、代表的な不純物元素の現実的な許容量(上限量)を示す。
S:
銅合金管のSは、Cuと化合物を形成して母相中に存在する。原料として用いる低品位銅地金、スクラップ等の配合割合が増加すると、Sの含有量が増える。Sは鋳塊時の鋳塊割れや熱間押出割れを助長する。また、押出材を冷間圧延したり、抽伸加工すると、Cu−S化合物が管の軸方向に伸張し、銅合金母相とCu−S化合物の界面で割れが発生しやすくなる。このため、加工中の半製品及び加工後の製品において、表面疵や割れ等になりやすく、特に薄肉化されたSn−P系銅合金管の伝熱管としての破壊強度を低下させる。また、管の曲げ加工を行う際、割れ発生の起点となり、曲げ部で割れが発生する頻度が高くなる。したがって、S含有量は0.005質量%以下、望ましくは0.003質量%以下、更に望ましくは0.0015質量%以下にする。S含有量を減らすためには、低品位のCu地金及びスクラップの使用量を少なくし、溶解雰囲気のSOxガスを低減し、適正な炉材を選定し、Mg及びCa等のSと親和性が強い元素を溶湯に微量添加する等の対策が有効である。
As、Bi、Sb、Pb、Se、Te等:
S以外の不純物元素As、Bi、Sb、Pb、Se、Te等についても同様に、鋳塊、熱間押出材、及び冷間加工材の健全性を低下させ、特に薄肉化されたSn−P系銅合金管の曲げ加工性や伝熱管としての破壊強度を低下させる。したがって、これらの元素の合計含有量(総量)は極力少なく、0.0015質量%以下、望ましくは0.0010質量%以下、更に望ましくは0.0005質量%以下とすることが好ましい。
O:
銅合金管において、Oの含有量が0.005質量%を超えると、Cu又はSnの酸化物が鋳塊に巻き込まれ、鋳塊の健全性が低下し、特に薄肉化されたSn−P系銅合金管の曲げ加工性や伝熱管としての破壊強度を低下させる。このため、Oの含有量は好ましくは0.005質量%以下とすることが好ましい。曲げ加工性をより改善するには、Oの含有量を0.003質量%以下とすることが望ましく、0.0015%以下とすることが更に望ましい。
H:
溶解鋳造時に溶湯に取り込まれる水素(H)が多くなると、凝固時に固溶量が減少した水素が鋳塊の粒界に析出し、多数のピンホールを形成し、熱間押出時に割れを発生させる。また、押出後も圧延及び抽伸加工した銅合金管を焼鈍すると、焼鈍時にHが粒界に濃縮し、これに起因して膨れが発生しやすくなり、特に薄肉化されたSn−P系銅合金管の曲げ加工性や伝熱管としての破壊強度を低下させる。このため、Hの含有量を0.0002質量%以下とすることが好ましい。製品歩留りも含めて、破壊強度をより向上させるには、Hの含有量を0.0001質量%以下とすることが望ましい。なお、Hの含有量を低減するには、溶解鋳造時の原料の乾燥、溶湯被覆木炭の赤熱、溶湯と接触する雰囲気の露点の低下、りん添加前の溶湯を酸化気味にする等の対策が有効である。
次に、本発明のSn−P系銅合金管組織あるいは特性(強度)について、以下に順に説明する。ここで、銅合金管の組織は、熱交換器としての使用状態で効いてくる。このため、熱交換器としての使用状態あるいは使用状態に近い、熱交換器用の最終製品として出荷されるあるいは熱交換器に組み立てされる前の銅合金管、また、熱交換器としての組立後(熱交換器としての使用中や使用後を含む)の伝熱管の状態で規定する。したがって、本発明の各規定を満たしているか否かは、これらの状態や部分での銅合金管や伝熱管の、平均結晶粒径、粗大結晶粒平均個数、強度を測定して判断される。
(平均結晶粒径)
本発明銅合金管では平均結晶粒径が30μm以下であることとする。銅合金管(伝熱管)の厚みが比較的厚い場合には、結晶粒径は、銅合金管の熱交換器伝熱管への曲げ加工性や伝熱管の破壊強度にあまり大きくは影響しない。しかし、軽量化、薄肉化の要求により、Sn−P系銅合金管が0.5mm以下に薄肉化された場合には、結晶粒径は、曲げ加工の際の割れ発生への影響が著しく大きくなる。また、伝熱管の破壊強度への影響も大きくなる。
前記U字曲げ加工における曲げ半径が小さく、銅合金管が薄肉化されると、管の外周にかけられる(負荷される)塑性ひずみの量が一段と大きくなる。通常、破壊の起点は、金属の最も脆弱なミクロ組織であるが、銅管の場合には、最も脆弱なミクロ組織が結晶粒界であって、破壊の起点は、この結晶粒界に対応している。したがって、曲げ加工における管の外周に当たる位置に、周囲の結晶粒(平均結晶粒径)よりも、粗大な結晶粒が存在する場合には、この粗大な結晶粒における結晶粒界が破壊の起点となりやすい。この粗大な結晶粒が破壊の起点となりやすい傾向は、前記した通り、素材銅合金管が薄肉化されるほど、また、ヘアピン状の前記U字曲げ加工における曲げ半径が小さいほど、更に、銅合金管が高強度となるほど、大きくなる。これに対して、結晶粒径を微細化させるとともに、これに加えて、後述する通り、粗大な結晶粒自体を規制すると、曲げ加工における管の外周において、上記破壊の起点となる粗大な結晶粒界を無くすことができ、曲げ加工性を向上できる。
また、素材銅合金管の平均結晶粒径が大き過ぎたり、粗大な結晶粒自体が存在すると、伝熱管に加わる引張力によって亀裂が発生する際の「ひずみの集中」を避けることができず、割れや亀裂が生じやすくなる。このため、伝熱管の耐圧強度が低下する。更に、銅合金管が熱交換器に加工されたとき、ろう付けによる熱影響を受けて、伝熱管の加熱された部分の結晶粒径は必ず粗大化する。これに対して、予め銅合金管の平均結晶粒径を30μm以下に微細化させていないと、粗大化によって平均結晶粒径が100μmを超える可能性が高くなり、ろう付け部において耐圧強度の低下が大きくなる。これらの結果、素材銅合金管の結晶粒径が粗大な場合、上記Pなどの添加合金元素による強化を幾ら行っても、運転圧力が高いHFC系フロン冷媒及び炭酸ガス冷媒用の熱交換器に銅合金管を使用したときに割れが発生しやすくなる。これに対して、結晶粒径を微細化させるとともに、これに加えて、後述する通り、粗大な結晶粒自体を規制すると、伝熱管の耐圧強度も向上できる。
(粗大結晶粒平均個数)
本発明では、上記平均結晶粒径の微細化に加えて、曲げ加工における管の外周において、上記破壊の起点となる粗大な結晶粒界を無くし、Sn−P系銅合金管が0.5mm以下に薄肉化された際の、熱交換器伝熱管への曲げ加工の際の割れを抑制する。このために、上記粗大な結晶粒界の主因となる、粗大な結晶粒自体を規制する。即ち、上記平均結晶粒径の測定視野内における、前記平均結晶粒径値の2倍以上の結晶粒径を有する結晶粒の平均個数を4個以下とする。
Sn−P系銅合金管の平均結晶粒径を細かくするだけでは、絶対数が少なくても、粗大な結晶粒自体の存在は許容されることとなる。そして、このような粗大な結晶粒は、前記した通り、その存在数が少なくても、高強度化されて、しかも0.5mm以下に薄肉化されたSn−P系銅合金管では、ヘアピン状の前記U字曲げ加工における曲げ半径が小さいほど、曲げ加工の際の割れの決定的な原因となりうる。また、粗大な結晶粒は、前記した通り、このようなSn−P系銅合金管では、その存在数が少なくても、伝熱管に加わる引張力によるひずみが集中しやすく、割れや亀裂の起点となり、伝熱管の耐圧強度を低下させる。
したがって、本発明は、Sn−P系銅合金管の平均結晶粒径を細かくするだけでなく、上記した通り、粗大な結晶粒自体を規制する。これによって、素材Sn−P系銅合金管の曲げ加工性を向上させ、新冷媒による冷媒の運転圧力の増大に対応する、伝熱管の薄肉化を可能とする。
(平均結晶粒径測定)
結晶粒径の平均結晶粒径は、銅合金管の軸方向に平行の断面で測定される。この際、製造された銅合金管の組織は管の周方向で概ね均一ではあるが、平均結晶粒径や粗大な結晶粒の前記した曲げ加工に対する影響を考慮すると、特に、曲げ加工における銅合金管の外周に相当する位置から試料が採取されることが好ましい。
これらの採取試料は0.05〜0.1mm機械研磨した後、電解エッチングした表面を、倍率400倍の光学顕微鏡を用いて測定される。即ち、試料の銅合金管の長手方向(軸方向)に平行の面について、JIS H0501に定められた切断法(ラインインターセプト法)により、視野内の銅合金管の肉厚方向の平均結晶粒径を測定する。より具体的には、銅合金管の表面から内側への管肉厚方向に直線を引き、この直線上に位置する個々の結晶粒の切片長さを、個々の結晶粒径として測定する。これを管軸方向に任意の10箇所で測定し、平均結晶粒径を算出する。この際、1 測定ライン長さは0.2mmとし、1 視野当たり測定ラインを各3本として、1測定箇所当たり、5視野を観察する(1 視野当たりの全測定ライン長さは0.2mm×15=3mm)。そして、測定ライン毎に順次測定した平均結晶粒径を、1 視野当たり(測定ライン3本)、5視野当たり/1測定箇所、10測定箇所当たりで順次平均化して、本発明で言う、平均結晶粒径とする。
(粗大結晶粒の個数測定)
また、この測定された平均結晶粒径値の2倍以上の結晶粒径を有する、粗大な結晶粒の平均個数は、この平均結晶粒径と同じ測定視野内から求める。即ち、上記引かれた直線上に位置する個々の結晶粒の切片長さ(個々の結晶粒径)の内、測定された平均結晶粒径値の2倍以上の切片長さを有する結晶粒の個数を測定し、これを1 測定ライン当たりの粗大な結晶粒の個数とする。そして、測定ライン毎に順次測定したこの粗大な結晶粒の個数を、1 視野当たり(測定ライン3本)、5視野当たり/1測定箇所、10測定箇所当たりで順次平均化して、本発明で言う、粗大な結晶粒の平均個数とする。
(引張強さ)
本発明銅合金管では管長手方向(管軸方向)の引張強さσLを250MPa以上の高強度とする。銅合金管の厚みが肉厚0.5mm以下に薄肉化された際に、前記新冷媒使用時の破壊強度(耐圧強度)を得るためには、前提として、250MPa以上の高強度化が必要である。また、銅合金管の強度が低いと、エアコン等の熱交換器に組み込んだときのろう付け後に低下する強度も十分に保証できない。
(銅合金管の製造方法)
次に、本発明銅合金管の製造方法について、平滑管の場合を例として以下に説明する。本発明の銅合金管は、工程自体は常法により製造可能であるが、銅合金管の組織を前記した本発明規定内とするために必要な特別な条件もある。
先ず、原料の電気銅を木炭被覆の状態で溶解し、銅が溶解した後、Sn及びZnを所定量添加し、更に、脱酸を兼ねてCu−15質量%P中間合金としてPを添加する。このとき、Sn及びCu−P母合金の替わりに、Cu−Sn−Pの母合金を使用することもできる。成分調整が終了した後、半連続鋳造により所定の寸法のビレットを作製する。
得られたビレットは、熱間押出前に、ビレットを750乃至950℃に1分乃至2時間程度、加熱、保持する均質化処理によって、偏析改善などの均質化を行うことが望ましい。
その後、ビレットにピアシングによる穿孔加工を行い、750乃至900℃で熱間押出を行う。本発明の銅合金管を製造するには、製品管における組織の結晶粒径微細化が必要であるが、そのための前提として、熱間押出による断面減少率([穿孔されたビレットのドーナツ状の面積−熱間押出後の素管の断面積]/[穿孔されたビレットのドーナツ状の面積]×100%)を88%以上、望ましくは93%以上とする。押出後の素管(押出素管)は、後の圧延加工、抽伸工程での加工度を確保するために、管の肉厚を6mm以上確保する。そして、押出素管の肉厚は、後の冷間圧延設備能力を考慮すると、14mm以下とすることが好ましいが、冷間圧延設備能力が十分高ければ、14mm以上であっても良い。
更に、熱間押出後の素管を水冷等の方法により、表面温度が300℃になるまでの冷却速度が10℃/秒以上、望ましくは15℃/秒以上、更に望ましくは20℃/秒以上となるように急冷することが好ましい。熱間押出後の素管冷却速度が遅いと、結晶粒径が粗大化する可能性が高い。
次に、この押出素管に圧延加工を行ない、外径と肉厚を低減させ、素管の肉厚を0.3mm以下とする。このときの加工率を断面減少率で92%以下とすることにより、圧延時の製品不良を低減できる。さらに、圧延素管に抽伸加工を行なって所定の寸法の素管を製造する。通常、抽伸加工は複数台の抽伸機を用いて行うが、各抽伸機による加工率(断面減少率)は、パス1回当たり、35%以下にすることにより、素管における表面欠陥及び内部割れを低減できる。
但し、最終焼鈍処理での再結晶進行のためのひずみエネルギを蓄積させるために、押出素管から抽伸素管までの肉厚減少率は、圧延加工と抽伸加工との合計で96%以上とすることが好ましい。この合計肉厚減少率(加工率)が少ないと、最終焼鈍処理での再結晶進行のためのひずみエネルギが少なくなり、再結晶しにくくなり、本発明で規定する微細組織とすることが難しくなる。
(最終焼鈍処理)
その後、需要家において管に曲げ加工を行う場合及び抽伸管を使用して内面溝付管を製造する場合等には、抽伸管に最終の焼鈍処理を行い、調質種別でO材とする。この最終焼鈍処理が、銅合金管の平均結晶粒径を30μm以下とし、この平均結晶粒径値の2倍以上の結晶粒径を有する粗大結晶粒の平均個数を4個以下として、本発明で規定する微細組織とするために、極めて重要となる。
即ち、この最終焼鈍処理における、昇温(加熱)速度、一定の焼鈍温度(保持温度)と保持時間、冷却速度を各々最適範囲に納めることによって、再現性よく本発明で規定する上記微細組織とできる。これらの条件が、各々最適範囲を外れた場合には、再現性よく本発明で規定する上記微細組織とはできない。
この最終焼鈍処理では、圧延、抽伸工程で蓄積されたひずみエネルギを駆動力にして、再結晶を進行させて、等軸な歪みのない、微細かつ粒径の整った(粗大結晶粒が無いか極力少ない)結晶粒を得る。このためには、最終焼鈍処理で、結晶粒個々の再結晶挙動をできるだけ均一化して、再結晶開始時期、結晶粒の成長速度を均等化することと、再結晶完了後の静的な粒成長を極力抑制する必要がある。このために、前記した、昇温(加熱)速度、一定の焼鈍温度(加熱保持温度)と保持時間、冷却速度を各々最適範囲に納めることが必要である。
(最終焼鈍時の昇温速度)
銅合金管の結晶粒を粗大化させず、また、粗大結晶粒を実質的に無くすためには、炉や加熱のタイプにかかわらず、室温から所定焼鈍温度までの、特に350〜450℃までの温度領域における平均昇温速度H1を大きくする。具体的には、この温度領域における銅合金管の滞在時間を5秒以内とするために、昇温速度H1は20℃/s以上とする。この350〜450℃までの温度領域は、銅合金管の再結晶挙動における核生成頻度が高まる温度領域であり、この温度領域の昇温速度H1が20℃/s未満と小さくなると、銅合金管内部の金属組織にて核生成開始のタイミングが異なる再結晶粒が分布する。その結果、結晶粒径のばらつきが大きくなり、結晶粒径の粗大化や粗大な結晶粒生成の要因となる。
(最終焼鈍時の保持温度と時間)
再現性よく本発明で規定する上記微細組織とするためには、最終焼鈍時の保持温度は450〜700℃、保持時間は1〜120分とすることが好ましい。抽伸管の焼鈍温度が450℃より低いと、完全な再結晶組織にならず(繊維状の加工組織が残存)し、需要家における曲げ加工及び内面溝付管の加工が困難になる。また、700℃を超える温度では、結晶粒が粗大化し、管の曲げ加工性が却って低下し、また内面溝付加工においては管の引張り強さが低下してしまう。このため、管長手方向の伸びが大きく、管内面のフィンを正しい形状に形成することが難しくなる。また、この温度範囲における加熱保持時間が1分より短いと、完全な再結晶組織にならないため、前述の問題が発生する。また、120分を超えて焼鈍を行っても、結晶粒径に変化がなく、焼鈍の効果は飽和してしまうため、前記温度範囲における加熱時間は1分乃至120分が適当である。
ただ、再現性よく本発明で規定する上記微細組織とするためには、これらの個別の規定条件の他に、これらの要件同士のバランスも重要である。このため、前記した特に350〜450℃までの温度領域における平均昇温速度H1などの焼鈍の個別の規定条件を満たした上で、更に、下記昇温速度、焼鈍温度(加熱保持温度)と保持時間などが、実験的により求めた、次式1を満たすことが好ましい。
2000<((T+273)/2)×log((T+273)/H2)+T×{log(t)+1}<2500:式1、
ここで、T:焼鈍温度(℃)、H2:室温からの焼鈍温度までの平均昇温速度(℃/分)、t:焼鈍温度保持時間(分)、C(実験で求めた定数)=1である。この式1において、2000未満では前記再結晶が十分に完了せず、また、2500を超えると、結晶粒径が粗大化して、平均結晶粒径を30μm以下とできず、前記粗大結晶粒の平均個数も4個以下ともできなくなる。
(最終焼鈍後の急冷)
更に、これらの最終焼鈍後の冷却速度が小さいと、炉や加熱のタイプにかかわらず、結晶粒径が粗大化する。この結果、再現性よく、銅合金管の平均結晶粒径を30μm以下とできず、前記粗大結晶粒の平均個数も4個以下とできなくなる可能性が高い。このため、最終焼鈍後の冷却速度は1.0℃/分以上、好ましくは5.0℃/分以上、より好ましくは20.0℃/分以上と、できるだけ速くする。
ここで、銅合金管を連続的に焼鈍するには、銅管コイル等の焼鈍に通常使用されるローラーハース炉、又は高周波誘導コイルに通電しながら銅管を前記コイルに通す高周波誘導コイルによる加熱を利用することができる。
以上が平滑管の製造方法であるが、このように焼鈍した平滑管に、必要に応じて各種加工率の抽伸加工を行い、引張り強さを向上させた加工管としてもよい。また、内面溝付管の場合は、焼鈍した平滑管に溝付転造加工を行う。このようにして、内面溝付管を製造した後、通常は更に焼鈍を行う。また、このように焼鈍した内面溝付に、必要に応じて軽加工率の抽伸加工を行い、引張り強さを向上させてもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。合金元素量の成分組成や製造条件を各々変えて、結晶粒径などの組織を種々変えたSn−P系銅合金管(平滑管)を製造した。これら銅合金管の平均結晶粒径、粗大結晶粒個数などの組織、機械的な性質を調査するとともに、強度や曲げ加工性を測定、評価した。これらの結果を表1、2、3に示す。
(平滑管の製造条件)
(a)電気銅を原料として、溶湯中に所定のSnを添加し、更に必要に応じて、Znを添加した後、Cu−P母合金を添加することにより、所定組成の溶湯を作製した。これら溶製した銅合金の成分組成を、銅合金管の成分組成として、表1に示す。
(b)鋳造温度1200℃で、直径300mm×長さ6500mmの鋳塊を半連続鋳造する際の、鋳造ビレットの冷却速度を変え、得られた鋳造ビレットから、長さ450mmの短尺ビレットを切り出した。各例とも、鋳造ビレットの冷却速度は、共通して15℃ /分と一定にした。
(c)この短尺ビレットをビレットヒーターで650℃に加熱した後、加熱炉(インダクションヒーター)で900℃に加熱し、900℃に到達した後2分経過後、加熱炉から取り出し、熱間押出機で、ビレット中心に直径80mmのピアシング加工を施した。その後、直ちに(遅滞なく)、同じ熱間押出機で、外径96mm、肉厚9.5mmの押出素管を作製した(断面減少率:96.6%)。この熱間押出後の押出素管の300℃までの平均冷却速度は40℃/秒とした。
(d)この際、各例は、共通して、熱間押出後の押出素管を、できるだけ加工組織が少ない再結晶組織とするために、加熱炉取り出しから熱間押出完了(水冷等の冷却後)までの所要時間を、共通して5分以下の短時間で行った。
(e)各例とも共通して、この押出素管を圧延して、断面減少率92%以下で、外径35mm、肉厚2.3mmの圧延素管を作製した。また、引き続き、この圧延素管を、抽伸工程におけるパス1回当たりの断面減少率が35%以下になるように、引き抜き抽伸加工を繰り返した。更に、押出素管から抽伸素管までの肉厚減少率は、圧延加工と抽伸加工との合計で96%以上とした。
(f)この抽伸管を最終焼鈍処理して、外径9.52mm、肉厚0.3mmの薄肉化された銅合金管−O材を得た。
この抽伸管の最終焼鈍処理は、高速加熱と高速冷却とが可能な赤外線加熱のイメージ炉(試験炉)にて、還元性ガス雰囲気中で行った。この際、結晶粒径などの組織を制御するために、350〜450℃までの温度領域の平均昇温速度H1(℃/s)、室温からの平均焼鈍温度までの平均昇温速度H2(℃/分)、焼鈍温度T(℃)、焼鈍温度保持時間t(分)を種々変えた。そして、これらの個別の条件の他に、これらの条件同士のバランスである前記式1の値も種々変えた。但し、各例とも共通して、最終焼鈍後の冷却速度は20.0℃/分以上として大きくして急冷し、各供試材とした。抽伸管の最終焼鈍条件を表2、3に示す。
これら製造した銅合金管(外径9.52mm、肉厚0.3mm、O材)の平均結晶粒径、粗大結晶粒個数、機械的な性質、曲げ加工性などの特性を表2に示す。なお、前記表1において、発明例、比較例の各例ともに、共通して、銅合金管のS含有量は0.005質量%以下、As、Bi、Sb、Pb、Se、Teの合計含有量(総量)は0.0005質量%以下、Oの含有量は0.003質量%以下、Hの含有量は0.0001質量%以下であった。
(引張試験)
管の長手方向と円周方向の引張強さは、前記製造した銅合金管を管長手方向に切れ目を入れて切り開き平らにした後に、長手方向から試験片を切り出し、長さ290mm、幅10mmの引張試験片を作成して、その試験片をインストロン社製5566型精密万能試験機にて管長手方向の引張強さσLと伸びとを測定した。なお、引張試験片は管を切り開いて平らにして引張強さを測定したが、円管と管を切り開いて平らにした材料の断面部分の硬度測定を行ったが同じ値を示し、管を切り開くことによる引張強さへの影響はないものと判断した。
(組織)
前記した切断法による測定方法と条件により、前記製造した銅合金管の曲げ加工における管の外周に当たる位置から試料を採取し、平均結晶粒径(μm)、この平均結晶粒径測定視野内における、前記平均結晶粒径値の2倍以上の結晶粒径を有する結晶粒の平均個数(個)を測定した。
(曲げ加工試験)
熱交換器の伝熱部を模擬して、前記製造した銅合金管を、各例について10本づつ、ピッチが40mmのU字形に曲げおよびピッチが30mmのU字曲げに加工した。この際、銅合金管の曲げ部における割れ、亀裂の発生を目視にて調査し、10本とも割れ、亀裂が全くなく曲げ加工できたものを、曲げ加工性が良好な○として評価した。また、10本とも割れ、亀裂は無いが、しわが発生しており、曲げ半径がより小さく、曲げ加工条件を厳しくした場合には、割れ、亀裂が発生する可能性があるものを、曲げ加工性が劣る△として評価した。更に、曲げ加工した10本の中に、割れ、亀裂が1本でも発生したものを曲げ加工性が不良な×として評価した。
表1、2に示すように、発明例1〜15は、本発明範囲内の銅合金管成分組成を有し、好ましい製造条件範囲内で製造されている。特に、発明例は、最終焼鈍処理における、350〜450℃までの温度領域の平均昇温速度H1、焼鈍温度T(℃)、焼鈍温度保持時間t(分)が各々好ましい範囲内である。また、これとともに、室温からの平均焼鈍温度までの平均昇温速度H2(℃/分)と、焼鈍温度T(℃)、焼鈍温度保持時間t(分)とが、これらの条件同士のバランスである前記式1の値も満たす。
このため、発明例は、銅合金管の平均結晶粒径が30μm以下であり、更に、この平均結晶粒径測定視野内における、前記平均結晶粒径値の2倍以上の粗大な結晶粒径を有する結晶粒の平均個数が4個以下である。この結果、発明例は、銅合金管の長手方向の引張強さσLが250MPa以上であり、高強度化、肉厚0.3mmに薄肉化されても、ピッチ40mmだけでなく、ピッチ30mmの曲げ加工でも割れを生じなかった。したがって、これら発明例は、高強度化、薄肉化されて、より厳しく曲げ加工して前記したHFC系フロンR410Aや二酸化炭素冷媒などの熱交換器の伝熱管用に使用可能であることを示している。
これに対し、表1、3に示すように、比較例20〜25、27、28は、本発明範囲内の銅合金管成分組成(表1の19あるいは5)を有しており、他の製造条件は好ましい範囲内であるものの、最終焼鈍処理条件が最適条件ではない。比較例20は前記式1を満たすものの、350〜450℃までの温度領域における平均昇温速度H1が外れる。比較例21〜25、27、28は、前記平均昇温速度H1を満たすものの、昇温速度H2、焼鈍温度T、焼鈍温度保持時間tなどが最適範囲を外れて前記式1を満たさない。したがって、この式1が2000未満の比較例23、25は前記再結晶が十分に完了せず、未再結晶を含んでいた。また、式1が2500を超える比較例21、22、24、27、28は結晶粒径が粗大化して、平均結晶粒径を30μm以下とできていないか、前記粗大結晶粒の平均個数を4個以下とできていない。この結果、これら比較例は、発明例に比して、曲げ加工性に劣る。
比較例16、18は、表1の合金番号16、18の通り、Sn、Pの各含有量が下限未満と少なすぎる。このため、前記好ましい製造条件範囲内で製造されているものの、表3の通り、強度が低い。
比較例17、19は、表1の合金番号17、19の通り、Sn、Pの各含有量が上限を超えて多すぎる。このため、比較例17は、鋳塊における凝固偏析が激しく、銅合金管への熱間押出を中止した。また、比較例19は、熱間押出時に割れが生じて、銅合金管への熱間押出を中止した。したがって、これら比較例は、表3の通り、銅合金管の組織や特性の調査ができなかった。
比較例26は、表1の合金番号21であり、Znの含有量が上限を超えて多すぎる。このため、前記好ましい製造条件範囲内で製造されているものの、銅合金管の引張強さが発明例に比して劣る。また、表には記載していないが、腐食促進試験にて、応力腐食割れを生じたため、実用的ではない。
以上の結果から、新たな冷媒の高い運転圧力に薄肉化されても使用可能である銅合金管を得るための、本発明の成分組成、平均結晶粒径などの組織の規定、更には、この組織を得るための好ましい製造条件の意義が裏付けられる。
Figure 2010065270
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本発明の銅合金管は、0.5mm以下に薄肉化されても、曲げ半径が小さいような曲げ加工が可能である。このため、二酸化炭素及びHFC系フロン等の新しい冷媒の高い運転圧力にて使用する熱交換器の伝熱管(平滑管及び内面溝付管)、前記熱交換器の蒸発器と凝縮器を接続する冷媒配管又は機内配管などに使用することができる。また、ろう付け部を有する伝熱管、水配管、灯油配管、ヒートパイプ、四方弁及びコントロール銅管等にも使用することができる。

Claims (4)

  1. Sn:0.1〜3.0質量%、P:0.005〜0.1質量%以下を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有し、倍率400倍の光学顕微鏡にて測定された平均結晶粒径が30μm以下であり、更に、この平均結晶粒径測定視野内における、前記平均結晶粒径値の2倍以上の結晶粒径を有する粗大結晶粒の平均個数が4個以下である組織を有することを特徴とする曲げ加工性に優れた熱交換器用銅合金管。
  2. 前記銅合金管が、更に、Zn:0.01〜1.0質量%を含有する請求項1に記載の曲げ加工性に優れた熱交換器用銅合金管。
  3. 前記銅合金管が、更に、Fe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti及びAgからなる群から選択された1種または2種以上の元素を合計で0.07質量%未満含有する請求項1または2に記載の曲げ加工性に優れた熱交換器用銅合金管。
  4. 前記銅合金管の肉厚が0.5mm以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の曲げ加工性に優れた熱交換器用銅合金管。
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