JP5033051B2 - 耐軟化性に優れた熱交換器用銅合金管 - Google Patents

耐軟化性に優れた熱交換器用銅合金管 Download PDF

Info

Publication number
JP5033051B2
JP5033051B2 JP2008122515A JP2008122515A JP5033051B2 JP 5033051 B2 JP5033051 B2 JP 5033051B2 JP 2008122515 A JP2008122515 A JP 2008122515A JP 2008122515 A JP2008122515 A JP 2008122515A JP 5033051 B2 JP5033051 B2 JP 5033051B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
copper alloy
tube
alloy tube
heat transfer
solid solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008122515A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009270166A (ja
Inventor
敏晃 ▲高▼木
康博 有賀
護 長尾
崇 白井
雅人 渡辺
明彦 石橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2008122515A priority Critical patent/JP5033051B2/ja
Publication of JP2009270166A publication Critical patent/JP2009270166A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5033051B2 publication Critical patent/JP5033051B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Metal Extraction Processes (AREA)

Description

本発明は、特に、HFC系フロンや二酸化炭素などを冷媒とした熱交換器用として好適な、耐圧破壊強度及び加工性が優れた、高強度な熱交換器用銅合金管に関するものである。
例えば、エアコンの熱交換器は、主として、ヘアピン状に曲げ加工したU字形銅管(以下、銅管という場合は銅合金管も含む)と、アルミニウム又はアルミニウム合金板からなるフィン(以下、アルミニウムフィンという)から構成される。より具体的には、熱交換器の伝熱部は、U字形に曲げ加工した銅管をアルミニウムフィンの貫通孔に通し、U字形銅管内に治具を挿入して拡管することにより、銅管とアルミニウムフィンとを密着させる。そして、更に、このU字形銅管の開放端を拡管して、この拡管開放端部に、同じくU字形に曲げ加工したベンド銅管を挿入し、りん銅ろう等のろう材により、ベンド銅管を銅管の拡管開放端部にろう付けすることにより接続して、熱交換器とされる。
このため、熱交換器に使用される銅管には、基本特性としての熱伝導率とともに、上記熱交換器製作時の曲げ加工性及びろう付け性が良好であることが要求される。これらの特性が良好である銅管材料として、適切な強度を有するりん脱酸銅が、これまで広く使用されている。
一方、エアコン等の熱交換器に使用する冷媒には、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)系フロンが広く使用されてきた。しかし、HCFCはオゾン破壊係数が大きいことから、地球環境保護の点より、近年、その値が小さいHFC(ハイドロフルオロカーボン)系フロンが使用されるようになってきた。また、給湯器、自動車用空調機器又は自動販売機等に使用される熱交換器には、近年、自然冷媒である二酸化炭素が使用されるようになってきた。
ただ、これらHFC系フロンや二酸化炭素を新しい冷媒にして、HCFC系フロンと同じ伝熱性能を維持するためには、運転時の凝縮圧力を大きくする必要がある。通常、熱交換器において、これらの冷媒が使用される圧力(熱交換器の伝熱管内を流れる圧力)は、凝縮器(二酸化炭素においてはガスクーラ)において最大となる。この凝縮器やガスクーラにおいて、例えば、HCFC系フロンのR22では1.8MPa程度の凝縮圧力である。これに対して、同じ伝熱性能を維持するためには、HFC系フロンのR410Aでは3MPa、また二酸化炭素冷媒では7乃至10MPa(超臨界状態)程度の凝縮圧力が必要である。したがって、これらの新たな冷媒の運転圧力は、従来の冷媒R22の運転圧力の1.6乃至6倍程度に増大している。
ところが、りん脱酸銅製伝熱管の場合、引張強さが小さいことから、これらの新冷媒による冷媒の運転圧力の増大に対応して、伝熱管を強化するためには、伝熱管の肉厚を厚くする必要がある。また、熱交換器の組立の際、ろう付け部は800℃以上の温度に数秒乃至数十秒間加熱されるため、ろう付け部及びその近傍ではその他の部分に比べて結晶粒が粗大化し、軟化により強度が低下した状態となってしまう。これらのことから、新冷媒の熱交換器に、りん脱酸銅製伝熱管を用いる場合には、これまでよりも肉厚をより厚くする必要がある。したがって、HFC系フロンや二酸化炭素の新冷媒に対して、伝熱管としてりん脱酸銅を使用すると、伝熱管の厚肉化の分だけ、熱交換器の質量が増大し、価格が上昇する。
このため、引張強さが高く、加工性が優れていて、良好な熱伝導率を有する伝熱管が、伝熱管の薄肉化のために、強く要望されるようになっている。この点、伝熱管の引張強さと肉厚との間には一定の関係がある。例えば、伝熱管内を流れる冷媒の運転圧力をP、伝熱管の外径をD、伝熱管の引張強さ(伝熱管長手方向)をσ、伝熱管の肉厚をt(内面溝付管の場合は底肉厚)とすると、これらの間には、P=2×σ×t/(D−0.8×t)の関係がある。この式を肉厚tに関して整理すると、t=(D×P)/(2×σ+0.8×P)となり、伝熱管の引張強さが大きいほど、肉厚を薄くできることがわかる。実際に伝熱管を選定する場合には、前記冷媒の運転圧力Pに、更に安全率S(通常2.5乃至4程度)を乗じた圧力に対して算出される引張強さ及び肉厚の伝熱管を使用する。
このような伝熱管の薄肉化の要望に応えるべく、りん脱酸銅に替えて、りん脱酸銅よりも強度が高い、Co−P系あるいはSn−P系などの銅合金管が従来から種々提案されている。例えば、Co−P系としては、Co:0.02〜0.2%、P:0.01〜0.05%、C:1〜20ppmを含有し、不純物の酸素を規制した、0.2%耐力と疲れ強さが優れた熱交換器用継目無銅合金管が提案されている(特許文献1参照)。
また、Sn−P系銅合金管としては、Sn:0.1〜1.0%、P:0.005〜0.1%を含有し、OやHなどの不純物を規制し、Znを選択的に添加した組成からなり、更に平均結晶粒径が30μm以下であるような、熱交換器用銅合金管が提案されている(特許文献2、3、4参照)。
一方、伝熱管の破壊強度を高めるための技術としては、Al、Siなどの合金元素を添加した熱交換器用銅合金管が提案されている(特許文献5、6参照)。更に、Sn−P系の銅合金管ではないが、Snの量が多いりん青銅の銅合金板において、板の破壊強度を高めるために、X線回折強度で規定される集合組織を規定することが公知である(特許文献7参照)。
また、銅合金の分野では、Sn−P系の銅合金ではないが、析出物による強化も公知であり、析出物を形成しやすいCr、Ti、Zrなどの元素を添加して析出物を形成させることが公知である(特許文献8参照)。このような析出物による強化では、この特許文献8のように、破壊の起点となって、曲げ加工性や破壊強度などを低下させる、粗大な析出物を一方で抑制することも公知である。
特開2000−199023号公報 特許3794971号公報 特開2004−292917号公報 特開2006−274313号公報 特開昭63−50439号公報 特開2003−301250号公報 特開2004−27331号公報 特開2005−113259号公報
ところで、素材銅合金管を、前記した熱交換器の伝熱管として組み立てるためには、前記した通り、600℃以上の高温のろう付けのための加熱工程(加熱処理)を受けることが避けられない。このため、素材銅合金管の段階で結晶粒径を予め微細化していても、この加熱処理を受けた部分の銅合金管の結晶粒径は必ず粗大化してしまう。
このような加熱処理による結晶粒径の粗大化は、この粗大化部分の伝熱管(銅合金管)強度の大幅な低下を招く。この点、添加合金元素による強化が図られている、前記Sn−P系などの高強度化された銅合金管であっても、また、前記析出物による強化であっても、やはり結晶粒径の微細化による強化に依存している部分が大きい。
このため、素材である銅合金管が幾ら高強度であっても、前記ろう付けによって結晶粒径が粗大化した伝熱管(銅合金管)としての部分の強度は、他の伝熱管部分の強度に比して、大きく低下しやすい。
従来のSn−P系などの銅合金管では、前記したろう付けによる結晶粒径粗大化の強度低下(軟化)が避けられず、特に、前記した薄肉化された銅合金管では、冷媒の運転圧力による引張力によって発生する亀裂を抑制する、破壊強度を確保することが困難となる。このため、Sn−P系などの高強度化された銅合金管の場合でも、新冷媒による冷媒の運転圧力の増大に対応して、十分な破壊強度を得るためには、それなりの管肉厚が必要で、薄肉化することが難しかったのが実情である。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、特にろう付けによる軟化を抑制し、伝熱管に加わる引張力に対する伝熱管の亀裂発生を抑制した、耐軟化性に優れた熱交換器用銅合金管を提供することを目的とする。
上記目的のために、本発明耐軟化性に優れた熱交換器用銅合金管の要旨は、Sn:0.1〜3.0質量%、P:0.005〜0.1質量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有し、平均結晶粒径が30μm以下であり、Sn:0.1〜3.0質量%、P:0.005〜0.1質量%以下を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有し、平均結晶粒径が30μm以下であり、二次イオン質量分析法により分析した銅合金管のPの平均カウント数が、Cuの平均カウント数に対する比(Pの平均カウント数/Cuの平均カウント数)で0.0012以上、前記含有するPが銅合金管マトリックス中に固溶していることとする。
ここで、前記銅合金管が、Zn:0.01〜1.0質量%を含有することが好ましい。また、前記銅合金管が、Fe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti及びAgからなる群から選択された1種または2種以上の元素を合計で0.07質量%未満含有することが好ましい。
本発明は、Sn−P系銅合金管の耐軟化性を優れさせるための前提として、素材銅合金管の平均結晶粒径を微細化させるとともに、Sn−P系銅合金管を高強度とする。その上で、前記したろう付けによる結晶粒径粗大化による強度低下が、伝熱管に例え生じたとしても、これを補うために、素材銅合金管の合金元素であるPの固溶量を増しておく。
即ち、このPの固溶強化によって、前記したろう付けによる結晶粒径粗大化の強度低下が伝熱管に生じたとしても、伝熱管の強度低下を抑制する。Pの固溶量は、通常のろう付けのための加熱処理によっては殆ど変化せず、素材銅合金管にてPの固溶強化を図っておけば、伝熱管のろう付け加熱部分においても、Pの固溶量と固溶強化は、そのまま確保、発揮される。したがって、このPの固溶強化によって、ろう付けによる結晶粒径粗大化の強度低下が伝熱管に生じたとしても、伝熱管に加わる引張力に対して、伝熱管の亀裂発生を抑制する、耐軟化性に優れたものとすることができる。この結果、新冷媒による冷媒の運転圧力の増大に対応して、伝熱管を強化し、伝熱管の薄肉化を可能とする。
但し、Pの固溶強化といっても、素材銅合金管のPの固溶量を直接測定することは、銅合金管ならずとも、他の金属材料においても、周知の通り、かなり難しい。このため、通常は、抽出残渣法などで、Pの析出物量の方を測定して、P全体の含有量との差から、間接的にPの固溶量を求めることが一般的である。
これに対して、本発明者らは、いくつかの測定の前提条件は必要ではあるものの、二次イオン質量分析法を用いれば、Pの固溶量を、銅合金管の厚み方向のP濃度として分析できることを知見した。本発明では、この知見に基づき、Pの固溶量を、二次イオン質量分析法による銅合金管の厚み方向のP濃度として規定して、Pの固溶量を確保し、Pの固溶強化を図る。
(銅合金成分組成)
以下に、先ず、本発明のSn−P系銅合金管の銅合金成分組成について説明する。本発明では、銅合金の成分組成を、熱交換器用銅管としての要求特性を満たし、生産性も高いSn−P系銅合金とする。熱交換器用銅管の要求特性としては、熱伝導率が高く、熱交換器製作時の曲げ加工性及びろう付け性が良好であるなどを満たす必要がある。生産性としては、シャフト炉造塊や熱間押出が可能である必要がある。
このために、本発明銅合金の成分組成は、Sn:0.1〜3.0質量%、P:0.005〜0.1質量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成とする。これに、更に、選択的に、Zn:0.01〜1.0質量%を含有しても、Fe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti及びAgからなる群から選択された1種または2種以上の元素を合計で0.07質量%未満含有してもよい。以下に、これら銅合金成分組成の各元素の成分含有理由及び限定理由について説明する。
Sn:0.1〜3.0質量%
Snは、銅合金管の引張り強さを向上させ、結晶粒の粗大化を抑制させる効果を有し、りん脱酸銅管に比べて、管の肉厚を薄くすることが可能になる。銅合金管のSn含有量が3.0質量%を超えると、鋳塊における凝固偏析が激しくなり、通常の熱間押出及び/又は加工熱処理により偏析が完全に解消しないことがあり、銅合金管の金属組織、機械的性質、曲げ加工性、ろう付け後の組織及び機械的性質が不均一となる。また、押出圧力が高くなり、Sn含有量が3.0質量%以下の銅合金と同一の押出圧力で押出成形するためには、押出温度を上げることが必要になり、それにより押出材の表面酸化が増加し、生産性の低下及び銅合金管の表面欠陥が増加する。一方、Snが0.1質量%未満であると、前記した十分な引張強さ及び細かい結晶粒径を得ることができなくなる。
P:0.005〜0.1質量%
Pは、固溶強化によって、前記したろう付けによる結晶粒径粗大化の強度低下が伝熱管に生じたとしても、伝熱管の強度低下を抑制する最重要元素である。また、PはSnと同様、銅合金管の引張り強さを向上させ、結晶粒の粗大化を抑制させる効果を有し、りん脱酸銅管に比べて管の肉厚を薄くすることが可能になる。
P含有量が少なすぎると、Pの固溶量も少なくなり、Pの固溶強化によって、前記結晶粒径粗大化による伝熱管の強度低下分を補償できず、伝熱管の強度低下を抑制できなくなる。また、脱酸不足により酸素量が増加してPの酸化物が発生し、鋳塊の健全性が低下し、銅合金管として曲げ加工性が低下する。更に、素材銅合金管の段階で、予め細かい結晶粒径を得ることができなくなる。その一方で、逆に、銅合金管のP含有量が多すぎると、熱間押出時に割れが生じやすくなり、応力腐食割れ感受性が高くなると共に、熱伝導率の低下が大きくなる。したがって、P含有量は0.005〜0.1質量%の範囲とする。
Zn:0.01乃至1.0質量%
Znを含有することにより、銅合金管の熱伝導率を大きく低下させることなく、耐軟化性、強度、耐熱性及び疲れ強さを向上させることができる。また、Znの添加により、冷間圧延、抽伸及び転造等に用いる工具の磨耗を低減させることができ、抽伸プラグ及び溝付プラグ等の寿命を延命させる効果があり、生産コストの低減に寄与する。Znの含有量が1.0質量%を超えると、管の長手方向や管円周方向の引張強さが却って低下し、耐軟化性が低下する。また、応力腐食割れ感受性が高くなる。また、Znの含有量が0.01質量%未満であると、上述の効果が十分得られなくなる。従って、選択的に含有させる場合のZnの含有量は0.001乃至1.0質量%とすることが必要である。
Fe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti及びAgからなる群から選択された1種または2種以上の元素を合計0.07質量%未満
Fe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti、Zr及びAgはいずれも本発明の銅合金の強度、耐軟化性や耐圧破壊強度、及び耐熱性を向上させ、結晶粒を微細化して曲げ加工性を改善する。ただ、前記元素の中から選択する1種または2種以上の元素の含有量が0.07質量%を超えると、押出圧力が上昇するため、これらの元素を添加しないものと同一の押出力で押出を行おうとすると、熱間押出温度を上げることが必要になる。これにより、押出材の表面酸化が多くなるため、本発明の銅合金管において表面欠陥が多発し、特に薄肉化されたSn−P系などの銅合金管の伝熱管としての耐軟化性を向上できない。このため、選択的に含有させる場合には、Fe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti、Zr及びAgからなる群から選択された1種または2種以上の元素を合計0.07質量%未満とすることが望ましい。前記含有量は、0.05質量%未満とすることがより望ましく、0.03質量%未満とすることが更に望ましい。
不純物:
その他の元素は不純物であり、特に薄肉化されたSn−P系などの銅合金管の伝熱管としての耐軟化性を向上させるために、含有量は極力少ない方が好ましい。しかし、これら不純物を低減するためのコストとの関係もあり、以下に、代表的な不純物元素の現実的な許容量(上限量)を示す。
S:
銅合金管のSは、Cuと化合物を形成して母相中に存在する。原料として用いる低品位銅地金、スクラップ等の配合割合が増加すると、Sの含有量が増える。Sは鋳塊時の鋳塊割れや熱間押出割れを助長する。また、押出材を冷間圧延したり、抽伸加工すると、Cu−S化合物が管の軸方向に伸張し、銅合金母相とCu−S化合物の界面で割れが発生しやすくなる。このため、加工中の半製品及び加工後の製品において、表面疵や割れ等になりやすく、特に薄肉化されたSn−P系銅合金管の伝熱管としての耐軟化性を低下させる。また、管の曲げ加工を行う際、割れ発生の起点となり、曲げ部で割れが発生する頻度が高くなる。したがって、S含有量は0.005質量%以下、望ましくは0.003質量%以下、更に望ましくは0.0015質量%以下にする。S含有量を減らすためには、低品位のCu地金及びスクラップの使用量を少なくし、溶解雰囲気のSOxガスを低減し、適正な炉材を選定し、Mg及びCa等のSと親和性が強い元素を溶湯に微量添加する等の対策が有効である。
As、Bi、Sb、Pb、Se、Te等
S以外の不純物元素As、Bi、Sb、Pb、Se、Te等についても同様に、鋳塊、熱間押出材、及び冷間加工材の健全性を低下させ、特に薄肉化されたSn−P系などの銅合金管の伝熱管としての耐軟化性を低下させる。したがって、これらの元素の合計含有量(総量)は極力少なく、0.0015質量%以下、望ましくは0.0010質量%以下、更に望ましくは0.0005質量%以下とすることが好ましい。
O:
銅合金管において、Oの含有量が0.005質量%を超えると、Cu又はSnの酸化物が鋳塊に巻き込まれ、鋳塊の健全性が低下し、特に薄肉化されたSn−P系などの銅合金管の伝熱管としての耐軟化性を低下させる。このため、Oの含有量は好ましくは0.005質量%以下とすることが好ましい。曲げ加工性をより改善するには、Oの含有量を0.003質量%以下とすることが望ましく、0.0015%以下とすることが更に望ましい。
H:
溶解鋳造時に溶湯に取り込まれる水素(H)が多くなると、凝固時に固溶量が減少した水素が鋳塊の粒界に析出し、多数のピンホールを形成し、熱間押出時に割れを発生させる。また、押出後も圧延及び抽伸加工した銅合金管を焼鈍すると、焼鈍時にHが粒界に濃縮し、これに起因して膨れが発生しやすくなり、特に薄肉化されたSn−P系などの銅合金管の伝熱管としての耐軟化性を低下させる。このため、Hの含有量を0.0002質量%以下とすることが好ましい。製品歩留りも含めて、耐軟化性をより向上させるには、Hの含有量を0.0001質量%以下とすることが望ましい。なお、Hの含有量を低減するには、溶解鋳造時の原料の乾燥、溶湯被覆木炭の赤熱、溶湯と接触する雰囲気の露点の低下、りん添加前の溶湯を酸化気味にする等の対策が有効である。
次に、本発明のSn−P系銅合金管組織として特徴的なP固溶量や、平均結晶粒径、あるいは特性(強度)について、以下に順に説明する。
ここで、これらの銅合金管のPの固溶量、平均結晶粒径、強度は、熱交換器としての使用状態で効いてくる。このため、熱交換器としての使用状態あるいは使用状態に近い、熱交換器用の最終製品として出荷されるあるいは熱交換器に組み立てされる前の銅合金管、また、熱交換器としての組立後(熱交換器としての使用中や使用後を含む)の伝熱管の状態で規定する。したがって、本発明の各規定を満たしているか否かは、これらの状態や部分での銅合金管や伝熱管の、Pの固溶量、平均結晶粒径、強度を測定して判断される。
(P固溶量)
本発明では、Pの固溶強化を図り、伝熱管としての耐軟化性を向上させる。このために、二次イオン質量分析法により分析した、銅合金管のPの平均カウント数が、Cuの平均カウント数に対する比(Pの平均カウント数/Cuの平均カウント数)で0.0012以上、前記含有するPを銅合金管マトリックス中に固溶させる。ここで、互いの平均カウント数を1×105 に規格化した場合には、120×105 以上、Pを銅合金管マトリックス中に固溶させる。なお、前記Pの平均カウント数である、Pの固溶量の上限は、前記したPの含有量自体と、素材銅合金管の製造方法(条件、能力)によって自ずと定まるために、特に定めない。
前記した通り、Pの固溶量は、通常のろう付けのための600℃以上の加熱処理によっては殆ど変化しない。このため、素材銅合金管にて、前記Pの平均カウント数(Pの固溶量)を予め確保しておけば、伝熱管のろう付け加熱部分においても、前記Pの平均カウント数(Pの固溶量)と固溶強化は、そのまま確保、発揮される。したがって、ろう付けによる結晶粒径粗大化の強度低下が伝熱管に生じたとしても、これを補償して、特に、伝熱管に加わる引張力による亀裂発生を抑制し、耐軟化性を優れたものとすることができる。この結果、新冷媒による冷媒の運転圧力の増大に対応して、伝熱管を強化し、伝熱管の薄肉化を可能とする。
これに対して、含有するPの銅合金管マトリックス中への固溶量が、前記Cuの平均カウント数に対する比(Pの平均カウント数/Cuの平均カウント数)で0.0012未満(120×105 未満)であれば、含有するPの固溶量が少なすぎる。この結果、Pによる固溶強化が不足して、Pの固溶強化によって、前記結晶粒径粗大化による伝熱管の強度低下分を補償できず、伝熱管の強度低下を抑制できなくなる。
(Pの二次イオン質量分析法)
二次イオン質量分析法を用いれば、Pの固溶量を、銅合金管の厚み方向のP濃度(前記Pの平均カウント数)として分析できる。二次イオン質量分析法(分析装置)は通称SIMS(Secondary I on Mass Spectrometry)として知られ、半導体などの薄膜、多層膜の膜厚(厚み)方向の組成分析に用いられている。SIMSの測定原理は、Csや酸素の1次イオンを加速して、試料表面に照射してスパッタリングし、例えば本発明のPやCuなどの放出される2次イオンを検出して、四重極型質量分析計などによりPやCuなどの成分(組成)分析をするものである。
したがって、このSIMSを用いて、素材銅合金管なり伝熱管なりの、表面から厚み方向に順次スパッタしてPの濃度を分析していけば、最大で約2μm程度までの長さ範囲(深さ方向距離)の、管厚み方向に亙るPやCuの濃度(組成)変化、分布を求めることができる。
本発明における、具体的なSIMSの測定条件は、Cs1次イオンを、加圧電圧:14.5kv、真空度6.7×10-8Paにて、14.5keV程度に加速し、銅合金管や伝熱管の試料表面にイオンビームとして照射するものとする。測定の目安として、管の分析領域は8μmφとし、電流20nA、にて行う。分析深さは、管表面から0.6μmの深さ方向距離とする。そして、管の厚み方向に亙ってほぼ一定のカウント数にて存在するP濃度の領域を選択しつつ、10箇所程度測定し、その平均をPの平均カウント数とする。Cuの平均カウント数も同様にして測定する。
(SIMSによるPのカウント数とP固溶との関係)
図1に、このSIMSによる、管表面から0.6μmの深さ方向の距離に亙る、Pの固溶量である、Pのカウント数の変化(P濃度の変化)を示す。図1において、縦軸がPの平均カウント数のCuの平均カウント数に対する比(以下、P/Cuの平均カウント数比とも言う)、横軸が管表面から0.6μmの深さ方向距離を示す。横軸はSiでのスパッタレイトから換算して算出した。ここで、P、Cuの平均カウント数とは、横軸の各深さ位置における各P、Cuのカウント数を平均化したものである。
図1の黒丸は後述する実施例表2の発明例1、白丸は発明例5を各々示す。例えば、発明例1のPの平均カウント数のCuの平均カウント数に対する比(P/Cuの平均カウント数比)は、表2にも示す通り、0.0012以上の0.00365で、Cuのカウント数を1×105 に規格化した場合は120以上の365である。ここで、特徴的には、図1の横軸の各深さ位置における各Pのカウント数(P/Cu平均カウント数比)は、一定(安定)しており、殆ど変化していない。これはCuとともに、Pの管の深さ方向のカウント数が一定(安定)であることを示している。
そして、このカウント数の一定性(安定性)が、このSIMSによるPのカウント数として測定されるP濃度が、Pの固溶量を示すことを裏付けている。即ち、この測定している深さ方向に亙って、仮にPの析出物が存在し、これをSIMSにて検出した場合には、必ず、このカウント数(Pの濃度)は、その位置で急増し、Pの析出物存在位置において極大値(ピーク値)を示すはずである。言い換えると、Pの析出物が存在する場合には、各深さ位置における各Pのカウント数が、一定(安定)で殆ど変化していない上記Pのカウント数に比して、明らかに(容易に判別できる形で)大きく変化する。
勿論、管におけるPの固溶、析出を、代表して再現性良く判別するためには、それなりに、最小で10個程度の測定部位を変えた測定数(試料のN数)が必要である。しかし、Pの固溶に有利なことに、Sn−P系銅合金管では、SnとPともに、析出物を形成しにくい元素である。このことも、Sn−P系銅合金管では、前記管の厚み方向に亙ってほぼ一定のカウント数にて存在するP濃度が、Pの析出物ではなく、Pの固溶量を示すことを裏付けている。とは言え、Sn−P系銅合金管でも、Pの析出物が皆無とは言えず、数は少ないものの、必ず存在する。このために、確率的には低いものの、これらのPの析出物をSIMSにて検出して、P固溶量測定の外乱となる可能性もある。このためには、固溶しているPのみをカウントするように、管の厚み方向に亙ってほぼ一定(略一定)のカウント数にて存在する領域、即ち、管の厚み方向に亙ってPの析出物が存在しない領域における、Pの平均カウント数によって、Pの固溶量(P/Cuの平均カウント数比)を測定することが好ましい。
(析出物)
前記した通り、Sn−P系銅合金管でも、数は少ないものの、不純物であるFeなどと必ずPの晶析出物を生成する。そして、これら存在するPの晶析出物が粗大化した場合には、数は少なくても、やはり破壊の起点となって、耐軟化性や加工性などを低下させる可能性があるため、析出物のサイズは、重心直径で3μm以下であることが望ましい。また、Pの晶析出物が増加すると、Pの固溶量が確保できない場合がある。これら析出物は、SEMまたは、TEMにより確認できる。
但し、このような粗大析出物規定は、前記特許文献8のような、析出物による強化に伴う、析出物の粗大化防止規定ではない。本発明は、前記した通り、あくまでPによる固溶強化であり、このP固溶強化に伴う、残余の析出物の粗大化防止であり、前提となるPによる強化機構が全く異なる。本発明のSn−P系銅合金管では、前記した通り、SnとPともに析出物を形成しにくい元素であり、析出物が形成されていても、その数は、前記特許文献8のような析出物強化に比して極端に少なく、前記した破壊の起点とはなっても、析出物強化に寄与しているとはとても言えない。
(平均結晶粒径)
本発明銅合金管では平均結晶粒径が30μm以下であることとする。厚みが比較的厚い場合には、結晶粒径は耐軟化性にあまり影響ない。しかし、軽量化、薄肉化の要求により、伝熱管の厚みが特に1.0mm以下に薄肉化された場合には、この結晶粒径の大きさの耐軟化性への影響が著しく大きくなる。
即ち、結晶粒径微細化による強化は、銅合金管が薄肉なほど効果が大きく、平均結晶粒径が大き過ぎると、伝熱管に加わる引張力によって亀裂が発生する際の「ひずみの集中」を避けることができず、伝熱管に亀裂が生じやすくなる。このため、運転圧力が高いHFC系フロン冷媒及び炭酸ガス冷媒用の熱交換器に銅合金管を使用したときに信頼性が低下する。
また、銅合金管が熱交換器に加工されたとき、ろう付けによる熱影響を受けて、伝熱管の加熱された部分の結晶粒径は必ず粗大化する。これに対して、予め銅合金管の平均結晶粒径を30μm以下に微細化させていないと、粗大化によって平均結晶粒径が100μmを超える可能性が高くなるり、ろう付け部において耐圧強度の低下が大きくなる。これらの結果、素材銅合金管の結晶粒径が粗大な場合、上記Pの固溶強化を幾ら行っても、伝熱管の耐軟化性を向上させることが困難となる。更に、結晶粒径が粗大化すると、銅合金管をエアコン等の熱交換器に組み込む際に曲げ加工したときに、曲げ部に割れが発生しやすくなる問題も生じる。
このように、本発明では、この結晶粒径粗大化部分の強度低下を、Pの固溶強化によって補償し、伝熱管の強度低下を抑制するためにも、素材銅合金管の平均結晶粒径は上記30μm以下に微細化させる。また、このように、素材銅合金管の平均結晶粒径を微細化させておくと、ろう付けによる熱影響を受け結晶粒径が粗大化しない伝熱管部分では、前記結晶粒微細化効果およびPの固溶強化の複合効果によって耐軟化性が向上する。
本発明で言う結晶粒径とは、銅合金管や伝熱管組織における、結晶粒の最大径である。この結晶粒径は、銅合金管や伝熱管を0.05〜0.1mm機械研磨した後電解エッチングした表面を、光学顕微鏡を用いて観察する。そして、銅合金管や伝熱管の長手方向(軸方向)に平行の面について、JIS H0501に定められた切断法(ラインインターセプト法)により、顕微鏡倍率は500倍として、銅合金管の肉厚方向の平均結晶粒径を測定する。
この際、1 測定ライン長さは0.2mmとし、1 視野当たり各3本で合計5視野を観察することにより、全測定ライン長さを0.2mm×15の3mmとする。この平均結晶粒径は、これを銅合金管の長手方向の任意の10箇所で測定した結果を平均し、平均結晶粒径(μm)とする。
(引張強さ)
本発明銅合金管では管長手方向(管軸方向)の引張強さσLを250MPa以上の高強度とする。銅合金管の厚みが肉厚1.0mm以下で、0.8mm程度に薄肉化された際に、前記新冷媒使用時の耐軟化性(破壊強度、耐圧強度)を得るためには、前提として、250MPa以上の高強度化が必要である。また、銅合金管の強度が低いと、エアコン等の熱交換器に組み込んだときのろう付け後に低下する強度も十分に保証できない。
但し、幾ら銅合金管を高強度化しても、上記結晶粒微細化効果およびPの固溶強化を行わなければ、却って、管円周方向の引張強さσTと伸びδとの互いのバランスが悪くなる。このため、特に薄肉化されたSn−P系などの銅合金管の伝熱管としての耐軟化性を向上できない場合が生じる。
(銅合金管の製造方法)
次に、本発明銅合金管の製造方法について、平滑管の場合を例として以下に説明する。本発明の銅合金管は、工程自体は常法により製造可能であるが、銅合金管の組織を前記した本発明規定内とするために必要な特別な条件もある。
先ず、原料の電気銅を木炭被覆の状態で溶解し、銅が溶解した後、Sn及びZnを所定量添加し、更に、脱酸を兼ねてCu−15質量%P中間合金としてPを添加する。このとき、Sn及びCu−P母合金の替わりに、Cu−Sn−Pの母合金を使用することもできる。成分調整が終了した後、半連続鋳造により所定の寸法のビレットを作製する。
(ビレットの冷却速度)
この際、前記半連続鋳造において、引き抜かれるビレット(鋳塊)の冷却速度を0.5℃/秒以上と比較的速くする。このビレットの冷却速度が遅いと、Pの晶析出物が増して、かつ粗大化する可能性が高い。このため、Pの固溶量も少なくなる。したがって、二次イオン質量分析法により分析した銅合金管のPのカウント数が、Cuに対して0.0012以上、マトリックス中に固溶させることができなくなる可能性が高い。
得られたビレットは加熱炉で加熱し、均質化処理を行なう。なお、熱間押出前に、ビレットを750乃至950℃に1分乃至2時間程度保持して均質化による偏析改善を行うことが望ましい。
その後、ビレットにピアシングによる穿孔加工を行い、750乃至950℃で熱間押出を行う。本発明の銅合金管を製造するには、Snの偏析解消及び製品管における組織の結晶粒径微細化が前提として必要であるが、そのためには熱間押出による断面減少率([穿孔されたビレットのドーナツ状の面積−熱間押出後の素管の断面積]/[穿孔されたビレットのドーナツ状の面積]×100%)を88%以上、望ましくは93%以上とする。
(熱間押出後の急冷)
更に、熱間押出後の素管を水冷等の方法により、表面温度が300℃になるまでの冷却速度が10℃/秒以上、望ましくは15℃/秒以上、更に望ましくは20℃/秒以上となるように急冷することが好ましい。熱間押出後の素管冷却速度が遅いと、Pの析出物が増して、かつ粗大化する可能性が高い。このため、前記粗大な析出物規定やP固溶量規定を満足できなくなる可能性が高い。
次に、押出素管に圧延加工を行ない、外径と肉厚を低減させる。このときの加工率を断面減少率で92%以下とすることにより、圧延時の製品不良を低減できる。また、圧延素管に抽伸加工を行なって所定の寸法の素管を製造する。通常、抽伸加工は複数台の抽伸機を用いて行うが、各抽伸機による加工率(断面減少率)は35%以下にすることにより、素管における表面欠陥及び内部割れを低減できる。
(最終焼鈍処理)
その後、需要家において管に曲げ加工を行う場合及び抽伸管を使用して内面溝付管を製造する場合等には、抽伸管に最終の焼鈍処理を行い、調質種別でO材とする。本発明の銅合金管を連続的に焼鈍するには、銅管コイル等の焼鈍に通常使用されるローラーハース炉、又は高周波誘導コイルに通電しながら銅管を前記コイルに通す高周波誘導コイルによる加熱を利用することができる。
ローラーハース炉によって本発明の銅合金管を製造するには、抽伸管の実体温度が400乃至700℃となり、その温度で抽伸管が1分乃至120分間程度加熱されるように焼鈍することが望ましい。
抽伸管の実体温度が400℃より低いと完全な再結晶組織にならず(繊維状の加工組織が残存)、需要家における曲げ加工及び内面溝付管の加工が困難になる。また、700℃を超える温度では、結晶粒が粗大化し、管の曲げ加工性が却って低下し、また内面溝付加工においては管の引張り強さが低下してしまう。このため、管長手方向の伸びが大きく、管内面のフィンを正しい形状に形成することが難しくなる。したがって、抽伸管の実体温度が400乃至700℃の範囲で焼鈍することが望ましい。
また、この温度範囲における加熱時間が1分より短いと、完全な再結晶組織にならないため、前述の問題が発生する。また、120分を超えて焼鈍を行っても、結晶粒径に変化がなく、焼鈍の効果は飽和してしまうため、前記温度範囲における加熱時間は1分乃至120分が適当である。
(最終焼鈍時の昇温速度)
ここで、銅合金管の結晶粒を粗大化させないためには、炉や加熱のタイプにかかわらず、室温から所定温度までの平均昇温速度が速いほうが望ましい。昇温速度が5℃/分より遅いと、同じ温度に加熱しても結晶粒が粗大化しやすく、耐圧耐軟化性及び曲げ加工性の点から望ましくないと共に、生産性を阻害することになる。従って、室温から所定温度までの平均昇温速度は5℃/分以上、より望ましくは10℃/分以上が好ましい。
(最終焼鈍後の急冷)
更に、これらの最終焼鈍後の冷却速度が遅いと、炉や加熱のタイプにかかわらず、Pの析出物が増して、かつ粗大化する可能性が高い。このため、前記粗大な析出物規定やP固溶量規定を満足できなくなる可能性が高い。したがって、これらの最終焼鈍後の冷却速度は1.0℃/分以上、好ましくは5.0℃/分以上、より好ましくは20.0℃/分以上と、できるだけ速くする。
以上が平滑管の製造方法であるが、このように焼鈍した平滑管に、必要に応じて各種加工率の抽伸加工を行い、引張り強さを向上させた加工管としてもよい。また、内面溝付管の場合は、焼鈍した平滑管に溝付転造加工を行う。このようにして、内面溝付管を製造した後、通常更に焼鈍を行う。また、このように焼鈍した内面溝付に、必要に応じて軽加工率の抽伸加工を行い、引張り強さを向上させてもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。合金元素量の成分組成や製造条件を各々変えて、P固溶量、結晶粒径などの組織を種々変えたSn−P系銅合金管(平滑管)を製造した。これら銅合金管の平均結晶粒径、P固溶量などの組織、機械的な性質を調査するとともに、耐軟化性として破壊強度を測定、評価した。これらの結果を表1、2に示す。
(平滑管の製造条件)
(a)電気銅を原料として、溶湯中に所定のSnを添加し、更に必要に応じて、Znを添加した後、Cu−P母合金を添加することにより、所定組成の溶湯を作製した。これら溶製した銅合金の成分組成を、銅合金管の成分組成として、表1に示す。
(b)鋳造温度1200℃で、直径300mm×長さ6500mmの鋳塊を半連続鋳造する際の、鋳造ビレットの冷却速度を変え、得られた鋳造ビレットから、長さ450mmの短尺ビレットを切り出した。これらの鋳造ビレットの冷却速度を表2に示す。
(c)この短尺ビレットをビレットヒーターで650℃に加熱した後、加熱炉(インダクションヒーター)で950℃に加熱し、950℃に到達した後2分経過後、加熱炉から取り出し、熱間押出機で、ビレット中心に直径80mmのピアシング加工を施した。その後、直ちに(遅滞なく)、同じ熱間押出機で、外径96mm、肉厚9.5mmの押出素管を作製した(断面減少率:96.6%)。この熱間押出後の押出素管の300℃までの平均冷却速度は40℃/秒とした。
(d)この際、各例とも共通して、熱間押出後の押出素管を、できるだけ加工組織が少ない再結晶組織とするために、加熱炉取り出しから熱間押出完了(水冷等の冷却後)までの所要時間を、共通して5.0分以下の短時間で行った。
(e)この押出素管を圧延して、外径35mm、肉厚2.3mmの圧延素管を作製し、圧延素管を、1回の抽伸工程における断面減少率が35%以下になるように、引き抜き抽伸加工を繰り返し、最終焼鈍して、外径9.52mm、肉厚0.80mmの銅合金管−O材を得た。
(f)最終焼鈍は、焼鈍炉にて、還元性ガス雰囲気中で、前記抽伸管を450乃至630℃に加熱し(平均昇温速度12℃/分)、この温度に30乃至120分保持し、冷却帯を通過させて室温まで急冷し、供試材とした。
(g)この際、発明例は、これら最終焼鈍後の冷却速度は1℃/分以上のできるだけ速い冷却速度とした。各例の最終焼鈍後の冷却速度を表2に示す。
これら製造した銅合金管(外径9.52mm、肉厚0.80mm、O材)の平均結晶粒径、P固溶量、機械的な性質、破壊強度などの特性を表3に示す。なお、前記表1において、発明例、比較例の各例ともに、共通して、銅合金管のS含有量は0.005質量%以下、As、Bi、Sb、Pb、Se、Teの合計含有量(総量)は0.0005質量%以下、Oの含有量は0.003質量%以下、Hの含有量は0.0001質量%以下であった。
(引張試験)
管の長手方向と円周方向の引張強さは、前記製造した銅合金管を管長手方向に切れ目を入れて切り開き平らにした後に、長手方向から試験片を切り出し、長さ290mm、幅10mmの引張試験片を作成して、その試験片をインストロン社製5566型精密万能試験機にて管長手方向の引張強さσLと伸びとを測定した。なお、引張試験片は管を切り開いて平らにして引張強さを測定したが、円管と管を切り開いて平らにした材料の断面部分の硬度測定を行ったが同じ値を示し、管を切り開くことによる引張強さへの影響はないものと判断した。
(組織)
P固溶量は、前記した二次イオン質量分析法(SIMS)の測定条件により、管の厚み方向に亙ってほぼ一定のカウント数にて存在するP濃度の領域における、前記したP/Cu平均カウント数比にて測定した。また、銅合金管の肉厚方向の平均結晶粒径(μm)も、前記した切断法により測定した。
(耐軟化性)
前記製造した銅合金管から500mmの長さの銅合金管を試験用に採取して、銅合金管の一方の端部を金属製治具(ボルト)にて耐圧的に閉塞した。そして、もう一方の開放側端部から、ポンプにて管内に負荷される水圧を徐々に高めていき(昇圧速度:1.5MPa/秒程度)、完全に管が破裂する際の水圧(MPa)を、ブルドン管式圧力計で読み取り、伝熱管の破壊強度(耐圧強度、耐圧性能、破壊圧力)とした。この試験を同一銅合金管に対して5回(試験管5個に対して)行い、各水圧(MPa)の平均値を破壊強度とし、耐軟化性を評価した。
(加熱後の銅合金管特性)
また、銅合金管が熱交換器用伝熱管として、ろう付けされることを模擬して、前記製造した銅合金管から試験用に採取した500mmの長さの銅合金管を800℃に10分間加熱した後の、平均結晶粒径、引張強さσL、破壊強度を、前記した同じ要領にて測定した。
表1、2に示すように、発明例1〜14は、本発明範囲内の銅合金管成分組成を有し、好ましい製造条件範囲内で製造されている。この結果、発明例は、銅合金管の平均結晶粒径が30μm以下であり、二次イオン質量分析法により分析した銅合金管のPの固溶量(P/Cuの平均カウント数比)が0.0012以上、マトリックス中に固溶している。
この結果、発明例は、銅合金管の長手方向の引張強さσLが250MPa以上であり、この引張強さと伸びのバランスにも優れ、また耐軟化性(破壊強度)に優れている。また、重要なことには、発明例は、表2に示すように、銅合金管が加熱されて平均結晶粒径が粗大化しても、加熱前の特性に比して、銅合金管の引張強さσLや耐軟化性の大幅な低下を招いてはいない。この事実は、発明例では、Pの固溶強化によって、結晶粒径粗大化による銅合金管(伝熱管)の強度低下分を補償しており、伝熱管の強度低下を抑制できていることを示している。
これら発明例の耐軟化性能は、ろう付けなどの加熱後であっても、前記したHFC系フロンR410Aや二酸化炭素冷媒などの運転圧力、即ち、従来の冷媒R22の運転圧力の1.6乃至6倍程度の新たな冷媒の運転圧力に、薄肉化されても耐用可能であることを示している。
これに対し、比較例19、20、21は、本発明範囲内の銅合金管成分組成を有しているものの、比較例19は鋳造ビレット冷却速度が0.5℃/秒未満と遅すぎる。比較例20は熱間押出後の冷却速度が10℃/秒未満と遅過ぎる。比較例21は最終焼鈍冷却速度が1.0℃ /分未満と遅過ぎる。この結果、これら比較例は、銅合金管の平均結晶粒径が30μm以下であり、管の長手方向の引張強さσLが250MPa以上であるものの、Pの固溶量(P/Cuの平均カウント数比)が少なすぎる。この結果、これら比較例は、上記発明例に比して、耐軟化性に劣る。
また、重要なことには、これらP固溶量が少なすぎる比較例は、表2に示すように、銅合金管が加熱されて平均結晶粒径が粗大化すると、加熱前の特性に比して、銅合金管の引張強さσLや耐軟化性(破壊強度)が大幅に低下している。この事実は、比較例では、Pによる固溶強化が不足して、前記結晶粒径粗大化による伝熱管の強度低下分を補償できていないことを示している。
比較例15、17は、Sn、Pの各含有量が下限未満と少なすぎる。このため、前記好ましい製造条件範囲内で製造されているものの、Sn含有量や、P固溶量が少なすぎ、耐軟化性が劣る。また、P固溶量が少なすぎる比較例17は、銅合金管が加熱されて平均結晶粒径が粗大化すると、加熱前の特性に比して、銅合金管の引張強さσLや耐軟化性(破壊強度)が大幅に低下している。この事実も、比較例では、Pによる固溶強化が不足して、前記結晶粒径粗大化による伝熱管の強度低下分を補償できていないことを示している。したがって、これらのP固溶量が少なすぎる比較例は、前記発明例がPの固溶強化によって結晶粒径粗大化による銅合金管の強度低下分を補償していることを裏付けている。
比較例16、18は、Sn、Pの各含有量が上限を超えて多すぎる。このため、比較例16は、鋳塊における凝固偏析が激しく、銅合金管への熱間押出をしなかった。また、比較例18は、熱間押出時に割れ(熱間割れ)が生じて、銅合金管への熱間押出を中止した。したがって、これらは銅合金管の組織や特性の調査ができなかった。
比較例21はZnの含有量が上限を超えて多すぎる。このため、前記好ましい製造条件範囲内で製造され、P固溶量が発明範囲内であるものの、銅合金管の長手方向の引張強さが発明例に比して劣り、耐軟化性にも劣る。また、腐食促進試験にて応力腐食割れを生じたため、実用的ではない。
以上の結果から、新たな冷媒の高い運転圧力に薄肉化されても耐用可能である、耐軟化性に優れた銅合金管を得るための、本発明の成分組成、P固溶量、平均結晶粒径などの組織の規定、更には、この組織を得るための好ましい製造条件の意義が裏付けられる。
Figure 0005033051
Figure 0005033051
本発明の銅合金管は、新たな冷媒の高い運転圧力に、1.0mm以下に薄肉化されても耐用可能である、耐軟化性に優れている。このため、二酸化炭素及びHFC系フロン等の新しい冷媒を使用する熱交換器の伝熱管(平滑管及び内面溝付管)、前記熱交換器の蒸発器と凝縮器を接続する冷媒配管又は機内配管に使用することができる。また、本発明の銅合金管はろう付け加熱後も優れた耐圧破壊強度を有するため、ろう付け部を有する伝熱管、水配管、灯油配管、ヒートパイプ、四方弁及びコントロール銅管等に使用することができる。
銅合金管表面から深さ方向距離に亙る、Pの固溶量であるSIMSによるPのカウント数の変化(P濃度の変化)を示す説明図である。

Claims (3)

  1. Sn:0.1〜3.0質量%、P:0.005〜0.1質量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有し、平均結晶粒径が30μm以下であり、二次イオン質量分析法により分析した銅合金管のPの平均カウント数が、Cuの平均カウント数に対する比(Pの平均カウント数/Cuの平均カウント数)で0.0012以上、前記含有するPが銅合金管マトリックス中に固溶していることを特徴とする、耐軟化性に優れた熱交換器用銅合金管。
  2. 前記銅合金管が、更に、Zn:0.01〜1.0質量%を含有する請求項1に記載の耐軟化性に優れた熱交換器用銅合金管。
  3. 前記銅合金管が、更に、Fe、Ni、Mn、Mg、Cr、Ti及びAgからなる群から選択された1種または2種以上の元素を合計で0.07質量%未満含有する請求項1または2に記載の耐軟化性に優れた熱交換器用銅合金管。
JP2008122515A 2008-05-08 2008-05-08 耐軟化性に優れた熱交換器用銅合金管 Active JP5033051B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008122515A JP5033051B2 (ja) 2008-05-08 2008-05-08 耐軟化性に優れた熱交換器用銅合金管

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008122515A JP5033051B2 (ja) 2008-05-08 2008-05-08 耐軟化性に優れた熱交換器用銅合金管

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009270166A JP2009270166A (ja) 2009-11-19
JP5033051B2 true JP5033051B2 (ja) 2012-09-26

Family

ID=41436982

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008122515A Active JP5033051B2 (ja) 2008-05-08 2008-05-08 耐軟化性に優れた熱交換器用銅合金管

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5033051B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
MX2012006044A (es) * 2009-11-25 2012-09-28 Luvata Espoo Oy Aleaciones de cobre y tubos de intercambio de calor.
JP5499300B2 (ja) * 2010-10-05 2014-05-21 株式会社神戸製鋼所 熱交換器用銅合金管

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009270166A (ja) 2009-11-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4630323B2 (ja) 破壊強度に優れた熱交換器用銅合金管
JP4629080B2 (ja) 熱交換器用銅合金管
JP4694527B2 (ja) 耐熱高強度熱交換器用銅合金管及びその製造方法
TWI396757B (zh) 高強度、高熱傳導銅合金管及其製造方法
JP5464659B2 (ja) 破壊強度および曲げ加工性に優れた熱交換器用銅管
JP3794971B2 (ja) 熱交換器用銅合金管
JP5111922B2 (ja) 熱交換器用銅合金管
JP4818179B2 (ja) 銅合金管
JP5107841B2 (ja) 曲げ加工性に優れた熱交換器用銅合金管
JP5078368B2 (ja) 熱交換器用銅合金管の製造方法
JP5033051B2 (ja) 耐軟化性に優れた熱交換器用銅合金管
JP5078410B2 (ja) 銅合金管
JP5499300B2 (ja) 熱交換器用銅合金管
JP5960672B2 (ja) 高強度銅合金管
TWI608110B (zh) 傳熱管用銅合金無縫管
KR101911214B1 (ko) 고내식성 구리관
JP5602707B2 (ja) ろう付け後の強度に優れた高強度銅管
JP5336296B2 (ja) 加工性に優れた熱交換器用銅合金管
JP2014043622A (ja) 高強度銅合金管
JP2013189664A (ja) 銅合金管
JP5544591B2 (ja) 銅合金管

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20101014

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120607

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120619

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120629

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5033051

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150706

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250