JP2007071526A - 耐食性皮膜付き熱交換器及び潜熱回収型給湯器。 - Google Patents

耐食性皮膜付き熱交換器及び潜熱回収型給湯器。 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性皮膜の剥離及び塗装ムラ等による熱交換器の耐久性低下及び構成金属の溶出が防止された耐食性皮膜付き熱交換器及び潜熱回収型熱交換器を提供する。
【解決手段】銅製フィン2が複数段に配置され、各フィン2を挿通した状態で銅管が拡管又はろう付けされてフィンに固定されている。そして、これらの銅管及びフィンの表面に耐食性塗料が塗布されて耐食性皮膜3が形成されている。そして、フィン2の端部はヘム曲げ加工されて、曲げ部20が形成されている。折り返し面21は0.15mm以上の曲率半径で湾曲している。また、フィン間の銅管表面に形成された耐食性皮膜の最も薄い部分の厚さAは、2≦A≦300μmである。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐食性及び耐酸性向上を目的として形成される耐食性皮膜を有する熱交換器に関し、特に、風呂釜、給湯器、及び瞬間湯沸し器等に使用される耐食性皮膜付き熱交換器及び潜熱回収型給湯器等の潜熱回収部に使用される2次熱交換器に関する。
従来のガス給湯器は、耐熱性と汎用性が優れたりん脱酸銅製フィン材と同材質の管材とから構成される熱交換器に、ガスバーナーで加熱された気体を接触させ、管内を通流する水道水等の水と熱交換させることで、約80℃までの熱水を得ていた。
この熱交換器においては、銅管の外周面にガスの燃焼成分が接触し、銅管内には水が通流するようになっている。前記燃焼ガスはメタン及びプロパン等の炭化水素の燃焼により発生したものであり、この燃焼ガス中には水蒸気が含まれている。このため、銅管の外側の燃焼ガスが、水が通流する銅管に接触して急激に降温されることにより、熱交換器の温度が100℃以下になる領域において、燃焼ガス中に含まれる水蒸気が凝縮して、凝縮水が銅管の外周面に付着する。
また、同時に、燃焼ガス成分中に窒素酸化物NOx及び硫黄酸化物SOxが多量に生成し、発生した凝縮水に溶け込んで、この凝縮水のpHを2〜3程度にまで低下させてしまう。これにより、pHが2〜3程度の酸性凝縮水が熱交換器を構成する銅又は銅合金部材を腐食させてしまう。
そこで、従来、熱交換領域ではなるべく酸性凝縮水を生成させないように、燃焼ガスは高温のまま排ガスとして捨てられていた。
一方、地球環境負荷の軽減が要求され始め、ガス給湯器も高効率のものが求められるようになり、従来捨てられていた約200℃以上の排ガスを利用して、低温燃焼ガス領域の潜熱を利用して熱交換させる種々の潜熱回収型2次熱交換器が開発され、普及が進み始めている。
潜熱回収型給湯器は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に開示されている。
潜熱回収部(2次熱交換器)では、燃焼ガスの凝縮時に発生する潜熱を積極的に利用するため、2次熱交換器を構成する材質は、pH2〜3の凝縮水に対して耐食性を有していることが必要であり、2次熱交換器は、チタン又はステンレスで製造されている。
しかし、この2次熱交換器には、更に一層の熱交換性能の向上が求められており、1次熱交換器と同様に、チタン及びステンレスよりも熱伝導性が優れた銅又は銅合金製のフィン及び伝熱管を備えた銅製熱交換器の2次熱交換器への適用が要望されている。
また、銅製熱交換器を2次熱交換器に適用することにより、従来型給湯器のように全ての構成部材を銅又は銅合金で製造した銅製熱交換器と同じ製造方法で2次熱交換器を製造できるため、製造コストを低減することができる。銅及び銅合金は、pH2〜3の酸性水には溶解してしまうため、銅管の漏洩を引き起してしまう他、凝縮水を中和して排出する際にも、排出規制に引っ掛かるため、銅の排出は回避する必要がある。従って、例え、腐食による機能損失に影響しないフィン材からの銅の溶出であっても、回避する必要がある。
この酸性水による銅の溶出を防止するために、銅製熱交換器を構成する銅管及び銅製フィンの表面に、種々の耐酸性皮膜を塗布することが提案されている。この耐酸性皮膜としては、無機ゾルゲルセラミック皮膜(特許文献5、特許文献6、特許文献7)、有機無機ハイブリッドセラミック皮膜(特許文献8、特許文献9)、フッ素系樹脂塗料(特許文献10)が提案されている。
特開平11−148723号公報 特開平11−141994号公報 特開平11−153360号公報 特開平11-159885号公報 特開2001−280890号公報 特開2001−280891号公報 特開2003−239085号公報 特開2004−170005号公報 特開2004−125235号公報 特開2004−094999号公報 特開2003−239085号公報
これらの皮膜は、塗布対象材を皮膜の溶液中に浸漬するディッピング処理により比較的容易に塗装できるため、実用的な防食技術として有望である。しかしながら、熱交換器の構造に起因して、塗膜が薄くなる部位が形成され、この部位で皮膜の欠陥が生じやすくなり、基材の溶出を抑制できなくなる不具合が生じる。この耐食性皮膜の塗膜厚が薄くなってしまう原因として、以下の2点が挙げられる。
(a)図4(a)、(b)に示すように、銅管1が挿通するフィン材2は、切断されたままの状態では、その表面と端面との角部4が鋭敏になっており、この角部4で塗布された塗料3の膜厚が薄くなる。
(b)図5(a)に示すように、適長間隔をおいて平行に配置されたフィン材2を銅管1が挿通して支持する構造において、フィン材2の表面に塗料3が引き込まれ、銅管1表面の塗膜厚さが薄くなる。また、このフィン材2間の銅管1表面の部分の塗膜厚が薄くなることによりこの部分で皮膜のカスレ5が生じるが、このカスレ5の部分を補おうために、更に塗料付着量を増やそうとすると、図5(b)に示すように、表面張力によりフィン材2間を塗料3が充填してしまうブリッジング6が生じてしまう。
カスレ5が生じた部分は、塗膜が存在しないか、又は少なくとも塗膜が薄い(膜厚2μm以下)状態であり、このまま使用すれば、選択的にこの部位から銅基材が腐食される。更に、このカスレ5の部位から皮膜の剥離が生じ、熱交換器全体からの銅の溶出を抑制できなくなる。
しかし、フィン材2間の銅管1表面に塗料を残してカスレ5を抑制するために、塗料の粘度を上げて塗料付着量を増加させようとすると、その他の部分で塗膜が厚くなりすぎて、熱交換器全体の伝熱性能の低下を引起すため好ましくない。
また、塗料付着量を増加させようとするとブリッジング6が生じ、この状態で塗料が固化するが、そうすると、燃焼ガスと熱交換器との熱交換が行われるフィン2の伝熱面積を減少させてしまう。これにより、熱交換器としての機能を果たさなくなってしまうため、この塗料のブリッジング6は必ず回避する必要がある。なお、塗料3の粘度を低くすれば、図5(a)のように表面張力によりフィン材2の表面に引っ張られる塗料3の量が減少し、カスレ5もブリッジング6も発生せずに塗装できそうであるが、塗料の粘度は、防食に必要な皮膜厚さを得ることを前提に決められ、熱交換器の伝熱性能が確保される範囲内でなるべく厚く塗布した方が耐食性が優れたものとなる。このためには、所望の皮膜厚さが得られるまで塗料の粘度を上げることが有効であるため、フィン材2間に塗料3が引き込まれることを防止するために塗料の粘度を小さくすることには、限界がある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、耐食性皮膜の剥離及び塗装ムラ等による熱交換器の耐久性低下及び構成金属の溶出が防止された耐食性皮膜付き熱交換器及び潜熱回収型熱交換器を提供することを目的とする。
本願第1発明に係る耐食性皮膜付き熱交換器は、複数段に配置された金属製フィンと、各フィンを挿通した状態で拡管及び/又はろう付けされて前記フィンに固定された金属製伝熱管と、前記フィンの表面に塗布された耐食性皮膜とを有し、前記フィンはその少なくとも1辺の端部がヘム曲げ加工されていることを特徴とする。
本願第1発明においては、フィンの端部にヘム曲げ加工が施されているので、この端部の角部は丸くなっており、耐食性皮膜を塗布したときにこの角部で皮膜厚が薄くなることはない。これにより、皮膜のカスレを防止でき、耐食性を向上させることができる。
本願第2発明に係る耐食性皮膜付き熱交換器は、複数段に配置された金属製フィンと、各フィンを挿通した状態で拡管及び/又はろう付けされて前記フィンに固定された金属製伝熱管と、前記フィンの少なくとも1辺の端部にアルカリ水溶液を接触させることにより形成された酸化皮膜と、この酸化皮膜上を含む前記フィンの表面上に塗布された耐食性皮膜とを有し、前記酸化皮膜は、CuO及びCu(OH)のうち少なくとも一方を含み厚さが10乃至1000nmであることを特徴とする。
本願第2発明においては、前記フィンの端部の角部にも均一に酸化皮膜が形成されるので、その上に塗布される耐食性皮膜の塗料がムラなく付着し、また形成された耐食性皮膜の密着強度を損なわず、前記フィンの端部の角部から耐食性皮膜が剥離することを防止できる。
これらの耐食性皮膜付き熱交換器において、前記酸化皮膜と前記耐食性皮膜との間に、プライマ層を有することが好ましい。このプライマ層を形成することにより、酸化皮膜の効果により、プライマ塗装後のフィン端部の角部の露出が抑制されるので、耐食性皮膜の密着性をより強固なものにすることができる。
また、本願第1発明の耐食性皮膜付き熱交換器のように、ヘム曲げ加工したフィンを有する熱交換器において、前記フィンの少なくとも1辺の端部にアルカリ水溶液を接触させて酸化皮膜を形成した上で、この酸化皮膜の上に耐食性皮膜を形成しても良い。これにより、塗料の粘度によっては懸念される折返し端部の段差における角部の露出も確実に防止することができるので、無用の粘度調整を考慮する必要がなくなり、熱交換器の設計の自由度を向上させることができる。
このヘム曲げ加工した熱交換器においても、プライマ層を形成した後に、耐食性皮膜を形成しても良い。フィン端部からの剥離は、ヘム曲げ加工により抑制されるので、プライマ層の本来の性能を引き出すことができ、耐食性皮膜の密着強度を有効に向上させることができる。
この耐食性皮膜付き熱交換器において、前記耐食性皮膜は、相隣接するフィンの間の前記伝熱管の表面にも形成されており、このフィン間の伝熱管表面に形成された前記耐食性皮膜の最も薄い部分の厚さAが、2≦A≦300μmであることが好ましい。
伝熱管表面の耐食性皮膜の薄い部分が2μmを下回るのは、塗料が表面張力でフィン側に引き寄せられることによりもたらされる(カスレ現象)。アルカリ水溶液に接触させて前記酸化皮膜を形成させる処理により、伝熱管表面のカスレを改善する効果があるため、アルカリ処理は、熱交換器全体に実施すると更に好ましい。
このように耐食性皮膜の厚さAが2μm以上であると、フィン及び伝熱管に対して十分な耐食性を発揮する。一方、この耐食性皮膜の厚さAが300μmを超えると、伝熱性能が低下する。なお、最も薄い部分とは、通常、フィン間の中央の位置の伝熱管の表面であり、フィンと伝熱管の外表面との接触部に形成される隅部においては、塗料が表面張力によりフィンの表面に沿って広がり、塗料の厚さが厚くなる。
また、例えば、前記フィン及び伝熱管が、銅又は銅合金製であり、前記耐食性皮膜は、3フッ化型フッ素系樹脂に架橋剤を配合させて硬化させるフッ素系樹脂塗料の皮膜である。
更に、本発明に係る潜熱回収型給湯器は、本発明に係る耐食性皮膜付き熱交換器を2次熱交換器とすることを特徴とする。
本発明によれば、潜熱回収型給湯器に使用する2次熱交換器の外表面に優れた耐久性を有する耐食性皮膜を形成する場合において、耐食性にとって致命的な耐食性皮膜のカスレを抑制することができるので、実機運転中に発生する酸性ドレン水による腐食を抑制し、長期間性能を落とさずに伝熱性能を発揮することができる。また、本発明によれば、耐食性皮膜の塗料の塗装性も向上するため、製造工程での2度塗り等、無用の工程を設ける必要が無いため、同様の皮膜を形成する上で、コストの上昇を抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1(a)、(b)は本発明の実施形態に係る耐食性皮膜付き熱交換器の断面図である。本実施形態においては、フィン2の端部にヘム曲げ加工を施す。このように、フィン端部にヘム曲げ加工を施すことにより、この曲げ部20の折り返し面21は一定の曲率半径Rを持って湾曲する。このため、浸漬法により、このフィン2の表面に耐食性塗料3を塗布すると、この塗料3はこの折り返し面21の表面にも十分に厚く付着し、塗料が固化した後に、角部でかすれがない十分な厚さの皮膜が形成される。図1(a)はこの塗布された塗料3の粘度が高い場合であり、図1(b)は塗料3の粘度が低い場合である。両者はフィン2の表面で付着厚に大小の差が出るが、いずれも、曲げ部20及びその折り返し面21で、同様に、塗料3が十分に厚く付着する。
なお、ヘム曲げ加工前にフィンの端部であった断面角部、即ち、曲げ部20の折り返されて内側を向いた端面の断面角部は、従来と同様に直角をなしているが、この部分はヘム曲げ加工が十分になされてフィンの表面に接触するように重ねられていれば、この角部の上に、塗料3がその粘性により付着し、十分な付着厚さでこの角部を被覆する。よって、かすれが生じることはない。
上述の作用効果は、折り返し面21の曲率半径Rが大きいほど、大きなものとなるが、所要の皮膜厚さを得るための塗料粘度を考慮すれば、曲率半径Rは0.15mm以上とすればよい。なお、曲率半径Rはフィンの板厚に依存し、ヘム曲げ加工の折り返し部をフィンに表面に接触させる場合には、フィン2の厚さは曲率半径Rと同様になり、フィン2の厚さも0.15mm以上であることが好ましい。但し、フィンの板厚が大きくなりすぎると、曲げ部の折り返された部分の端面において、フィンの表面との間の段差が大きくなり、端面の角部が塗料3に覆われずに露出しやすくなる。このため、フィンの板厚は1.00mm以下であることが好ましい。
このようにして、フィンの端部をヘム曲げ加工して曲げ部20を形成し、折り返し面21の曲率半径を0.15mm以上とすることにより、塗膜のカスレを誘発する角部を無くし、端部に十分な厚さの耐食性皮膜を形成することができる。
また、本実施例においては、基材として銅又は銅合金からなる熱交換器に、先ず、その熱交換器の表面、即ち、フィン表面及び銅管外表面を脱脂洗浄して、表面に付着している油分を除去する。次に、この熱交換器の表面を酸により洗浄して、前記表面に形成されている酸化物を除去する。その後、この熱交換器をpHが10以上で酸化剤を含み常温の水溶性アルカリ水溶液に浸漬する。
このようにして、塗膜のカスレを誘発するフィン端部の角部にCu2O及びCu(OH)2のうち、少なくとも一方を含み、厚さが10乃至1000nmである酸化皮膜を形成し、端部に十分な厚さの耐食性皮膜を形成できる。
また、前記アルカリ性水溶液は、通常洗浄液等に使用されるものでも良く、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムといった無機化合物の水溶液、又は水酸化テトラメチルアンモニウム若しくはコリンといった有機化合物の水溶液を使用することもできる。
更に、アルカリ性水溶液に添加される酸化剤には、溶存空気、酸素、過酸化物、次塩素酸塩、亜塩素酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、ペルオキソ硫酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、過マンガン酸塩、クロム酸、並びに第3B族(第IIIB族)、第4B族(第IVB族)及び第5B族(第VB族)に属する可溶性金属イオン等があるが、この他に銅又は銅合金表面の酸化剤として作用するものであれば、全て適用できる。
更に、メタ珪酸塩類及びアルキルベンゼンスルホン酸塩類等、例えば、メタ珪酸ナトリウム及びラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムのように、洗浄剤原料の添加も可能である。
アルカリ水溶液中における前記酸化剤の濃度は、酸化剤の種類及び処理溶液の温度等に依存するエッチングスピード及び表面酸化能力に応じて適宜選択されるが、通常、濃度は40乃至300g/リットルの範囲である。例えば、過酸化水素の場合、規定の酸化皮膜厚さを得るためには、生産性を考慮して処理能力を向上させるのであれば、濃度は40乃至200g/リットルであることが好ましく、濃度が50乃至90g/リットルであることがより好ましい。また、必要に応じて、処理溶液温度を90℃程度まで上昇させることにより、より優れた処理能力を得ることができる。但し、高温で処理を行うと、均一な酸化皮膜を得ることが困難になり、作業者の危険性も高まり、コストも上昇するため、特に必要が無ければ、常温で処理を行うか、高温でも過酸化水素の濃度を40g/リットル以下にして処理を行うことが好ましい。
本実施形態においては、複数個の平行に配置されたフィン2を伝熱管である銅管1が挿通しているが、このフィン2の間隔(フィンピッチ)を、従来よりも大きく、好ましくは3.0mm以上とする。図5(b)に示すように、従来は、塗料の付着量を増大させようとして、塗料の粘度を上げると、表面張力によりフィン2間に塗料3が多量に残存し、ブリッジング6が発生してしまう。これに対し、本発明においては、塗料3の粘度に応じてフィンピッチを適正な値に広げるので、ブリッジングが起こりにくくなり、図2(b)に示すように、塗料3が表面張力によりフィン2の表面に沿って拡大してくるものの、フィン2の表面と銅管1の表面との間の隅部に塗料3が若干貯まるだけで、塗料3がフィン2間を充填するまでには至らず、塗料3はフィン2間の銅管1の外表面をフィン2の平坦な部分と同様の厚さで被覆する。これにより、塗料3はフィン2間の銅管1の表面もほぼ均一に被覆する。このフィン2間の伝熱管である銅管1の表面に形成された塗料3による耐食性皮膜の厚さAは、2≦A≦300μmであることが好ましい。厚さAが2μm未満であると、かすれとなり、十分な耐食性が得られない。逆に、耐食性皮膜の厚さAが300μmを超えると、伝熱性能が低下する。よって、この耐食性皮膜の厚さAは2乃至300μmであることが好ましい。なお、この耐食性皮膜の厚さは、フィン間の銅管表面に限らず、銅管が露出している部分の全ての部分で、このような厚さに耐食性皮膜を形成することが好ましい。
なお、フィンピッチは前述の如く好ましくは3.0mm以上であるが、この好ましいフィンピッチは塗料の粘度に依存する。塗料粘度が大きくなれば、好ましいフィンピッチの値もそれに合わせて大きくすることが好ましい。しかし、フィンピッチが大きくなると、設置できるフィン数が減少するので、伝熱性能が低下する虞がある。よって、フィンピッチを大きくすることには限界がある。
塗装に使用される耐食性塗料は、潜熱回収型2次熱交換器に適用する場合には、無機ゾルゲルセラミック皮膜,有機無機ハイブリッドセラミック皮膜,及びフッ素系樹脂塗料があるが、この潜熱回収型2次熱交換器以外の用途においても、その用途における耐食性の要求に耐えるものであれば特に制限はない。例えば、耐食性塗料として、汎用的なエポキシ樹脂塗料,シリコーン樹脂塗料なども適用可能である。
特にフッ素系樹脂塗料の中には、フッ素樹脂の有する一般的な特性上、化学的に非常に安定であり、1次熱交換器の排熱温度に耐える耐熱性を有するのみならず、その組成によっては使用によって生じた皮膜欠陥を自己補修する機能を有するものもあるので、更に一層の優れた耐久性を必要とする潜熱回収型給湯器用2次熱交換器の耐酸性皮膜用途として好適である。
フッ素系樹脂塗料の具体的な組成としては、潜熱回収型給湯器用2次熱交換器の用途に使用可能であれば、特に制限は無いが、フルオロエチレン類と、ビニルエーテル類、ビニルエステル類及びアクリル酸エステルよりなる群から選択される1種以上の化合物を、必須的に含むモノマー成分を重合してなる共重合体を含む組成物より形成されてなるものであることが望ましい。上記フルオロエチレン類としては、モノクロロトリフルオロエチレン又はテトラフルオロエチレン及びその混合物が推奨される。
これらの塗料には、その塗装性が許容する範囲で、皮膜の要件に応じて適宜、無機フィラー・金属微粒子・ウィスカー等を添加することができる。
塗装の下地処理として、皮膜の条件及び塗装性改善の目的に応じて、適宜、脱脂又は酸洗等による表面調整,下地塗装,アルカリ性水溶液による下地処理(特許文献11)及び酸化剤等による表面処理を実施することができる、これにより、より均一な耐食性皮膜の形成が可能となる。
なお、下地塗装とは、上記耐食性皮膜の下地に塗装することで、上記皮膜の基材との密着強度向上を促し、上記皮膜塗装中に生じる塗料のムラを無くして、塗装性を向上させるために、基材に塗料を塗装することである。
上記耐食性皮膜が、密着性に優れたものである場合は、この下地塗装は必ずしも必要ではないが、下地塗装を設けることで、基材−皮膜間の密着性がより長期間に亘って良好となるため、例えば、より長期の耐久性が要求される業務用の給湯器などの熱交換器に適用される場合などでは、こうした下地塗装を設けることが推奨される。
また、フィンピッチを広く取り、塗装ムラに対する対策が施されている場合でも、上記耐食性皮膜に塗装性が悪い(ムラの出易い)塗料が選ばれている場合は、下地塗装の適用による改善が期待できる。
また、下地塗装も耐食性を有するので、上記皮膜に欠陥が生じた場合でも、下地塗装の存在により、皮膜欠陥のそれ以上の進行が緩やかになるといった利点もある。
下地塗装の素材としては、エポキシ樹脂系及びシリコーン樹脂系など、従来から樹脂塗装金属製品の下地塗装として一般的な各種素材が挙げられる。また、この下地塗装には、リン酸亜鉛等の公知の防錆顔料を添加することが好ましい。
下地塗装の厚さの上限値は、上記皮膜との合計の厚さが、下地塗装としての機能を十分に発揮でき、かつ熱交換器の伝熱性能を妨げない程度の範囲内で決められれば、特に制限は無い。
熱交換器を構成する伝熱管及びフィンの材質としては、伝熱性能に優れた銅又は銅合金を使用することが好ましい。この銅又は銅合金としては、無酸素銅、りん脱酸銅、タフピッチ銅、Cu−Fe−P、Cu−Mn−P、Cu−Ni−Si、Cu−Sn−P及びCu−Zn等があるが、この他の銅合金でも熱交換器に加工できるものであれば全て適用することができる。
また、銅又は銅合金の他、熱交換器の熱交換性能が許容する範囲で、空気熱交換器に使用されるアルミニウム又はアルミニウム合金製フィン材、ステンレス及びチタン等の耐食性を必要とする熱交換器構成材料に適用可能である。
以下、本発明の効果を実証するために行った実験結果について説明する。
図6は市販のガス焚き熱交換器(給湯器)(24号サイズ,給湯ガス消費量44.8kW,ガス種13A)の概念を示す。前記給湯器の熱交換器は顕熱回収部(1次熱交換器)及び潜熱回収部(2次熱交換器)より構成されており、潜熱回収部はステンレス製2次熱交換器である。前記ステンレス製2次熱交換器を下記に示す銅製2次熱交換器に交換して耐食性の試験を行った。
銅製熱交換器の仕様と製造方法は以下のとおりである。
先ず、耐食性皮膜を有する銅製熱交換器を以下の方法で作製した。貫通孔を設けて多段に整列させた種々の板厚のりん脱酸銅製フィン(JIS H3100 C1220)及びりん脱酸銅管(JIS H3300 C1220)とからなる熱交換器を作製し、給湯器に組込んで供試体とした。フィンと管とをろう付けするためのろう材には、りん銅ろう(JIS Z3264 BCuP−2)を使用した。ろう付け方法は、真空炉内に、多段に整列させたフィンの貫通孔に管を貫通させた状態の供試体に、図3に示す外径16.5mmの貫通孔31に設けた孔部30に棒状のりん銅ろうを差し込んで保持し、熱交換器を850℃に保温した加熱炉内に入れ、その温度で30分保持してろう材を溶解させ、フィン42と管41とをろう付けした。加熱炉内を窒素雰囲気とするために、真空ポンプで一旦真空に引いた後、窒素ガスをパージする作業を3回繰返した後に加熱を開始した。
多段に並べた銅製フィンで構成する熱交換領域の寸法は130mm×200mm×60mmの立方体とし、曲げピッチが38mmのフィン管を3本銅製フィンに挿通し、水路は1パスとした。フィンピッチは、表1に示すように、2.5mm又は5mmである。フィンピッチによって1台の熱交換器に使用するフィンの枚数は異なる。
Figure 2007071526
次に、ろう付け後の供試材の塗装方法について説明する。塗料には、市販のフッ素系2液硬化タイプ耐酸性塗料を使用した。耐酸性皮膜塗料塗布前に、供試材をアセトンに浸漬して3分間超音波洗浄し、供試材を脱脂した。主液と硬化剤(第2液)を所定の割合で混合し、所定の皮膜厚さになるようにシンナーで稀釈した。
塗料に供試材を浸漬し、一定速度で引上げ後、塗料が供試材表面で流動しなくなる程度まで大気中で放置し、自然乾燥させた。
自然乾燥させた供試材は、雰囲気温度制御可能な乾燥炉を使用し、加熱して皮膜塗料を焼き付け硬化させ。設定温度を110℃として昇温された加熱乾燥炉の中に、皮膜塗料を塗布した供試材を設置して30分間保持し、皮膜を形成した。
各塗装仕様により得られた皮膜厚さは、別途塗装サンプルを制作して以下の方法により測定した。幅25mm×長さ15mm×板厚0.5mmのリン脱酸銅板(JIS H3100 C1220)を使用して同様に塗装し、塗装後の板厚をマイクロメータで測定し、基材の板厚を差し引いて2で除した値を算出した。これによれば、各塗装仕様は、プライマ層が30〜50μm、耐食性皮膜が45〜65μmであり、両方を塗装した場合に、80〜110μmになるように、シンナーの混合割合を調整し、供試材の塗装にも使用した。
なお、本塗料は、顔料(カーボンブラック)により黒色を呈するものであり、問題となるカスレは、その部分で銅素地の色調が現れることにより、目視での判断が可能である。市販品の中には無色透明の耐酸性皮膜塗料も存在しているが、その場合は、対象箇所を、皮膜が剥離などの損傷を受けないように丁寧に切り出し、カーボン又は金蒸着などで帯電させた切り出しサンプルを、SEM等で断面観察するなどで皮膜厚差を確認することができる。黒色と量におけるカスレの生じる皮膜厚さは2μm未満のときであり、無色透明の皮膜においても2μm未満になっているかどうかで判断が可能である。
塗装された銅製熱交換器に差し替えられた潜熱回収型給湯器を連続運転することにより、皮膜の耐久性を評価した。この連続運転中に、1次熱交換器との熱交換により温度が低下した燃焼ガスは2次熱交換器の部分で更に熱交換するが、2次熱交換器の表面には燃焼ガス中のSOxやNOxが溶け込んだ水蒸気が結露するため、2次熱交換器は常に腐食性の結露水にさらされる。連続運転中、5千時間経過毎に運転を停止し、2次熱交換器の外観を目視で観察し、フィン及び管の腐食の有無及び表面に塗布した皮膜の残存状況を確認した。5000時間毎の試験サイクルを繰返し、腐食または皮膜の欠損が確認されたものは試験を中止し、その累計時間を熱交換器の寿命とした。
フィン端面に、ヘム曲げ及びアルカリ処理のいずれの処理も施されていない全ての比較例5〜8、21〜24は、プライマ層の有無に拘わらず、フィン端面にカスレを生じ、同部位から皮膜の剥離が生じた。
実施例1〜4と実施例9〜12との比較から、フィン端面の角部露出の抑制効果は、ヘム曲げありのもの(実施例1〜4)の方がヘム曲げなし・アルカリ処理ありのもの(実施例9〜12)より優れていた。実施例9,11,13,15,17,19によれば、伝熱管表面のカスレ抑制にアルカリ処理は有効であった。
比較例21〜24によれば、プライマ塗装は、アルカリ処理の有無に拘わらず、基材との密着強度向上に有効であったが、塗装性の向上にはつながらず、端面の露出及び伝熱管表面のカスレ防止には効果が無かった。
実施例1、3、25及び27は、フィン端面のカスレが発生しなかったが、フィン間隔が2.5mmと小さいので、最初の塗装でフィン間の銅管表面に塗膜のカスレが生じたので、伝熱性能は低下するが、確保するために、ブリッジングが生じる程度に多量の塗料をフィン間に残留させた。このため、25000時間以上に渡り、良好な耐食性を維持することができた。
(a)、(b)は本発明の実施形態に係る耐食性皮膜付き熱交換器のフィンを示す断面図である。 同じく、(a)、(b)は夫々フィンピッチと塗料付着との関係を示す正面図である。 同じく供試体のフィンを示す平面図である。 (a)、(b)は夫々従来の耐食性皮膜付き熱交換器の斜視図、及びフィンを示す断面図である。 (a)、(b)は夫々従来の耐食性皮膜付き熱交換器の欠点を示す正面図である。 評価試験に供した潜熱回収型給湯器の概念図である。
符号の説明
1、41:銅管
2、42:フィン
3:塗料
4:角部
5:カスレ
6:ブリッジング
30;切欠
31:孔

Claims (8)

  1. 複数段に配置された金属製フィンと、各フィンを挿通した状態で拡管及び/又はろう付けされて前記フィンに固定された金属製伝熱管と、前記フィンの表面に塗布された耐食性皮膜とを有し、前記フィンはその少なくとも1辺の端部がヘム曲げ加工されていることを特徴とする耐食性皮膜付き熱交換器。
  2. 複数段に配置された金属製フィンと、各フィンを挿通した状態で拡管及び/又はろう付けされて前記フィンに固定された金属製伝熱管と、前記フィンの少なくとも1辺の端部にアルカリ水溶液を接触させることにより形成された酸化皮膜と、この酸化皮膜上を含む前記フィンの表面上に塗布された耐食性皮膜とを有し、前記酸化皮膜は、CuO及びCu(OH)のうち少なくとも一方を含み厚さが10乃至1000nmであることを特徴とする耐食性皮膜付き熱交換器。
  3. 前記フィンの少なくとも1辺の端部にアルカリ水溶液を接触させることにより形成された酸化皮膜を有し、この酸化皮膜は、CuO及びCu(OH)のうち少なくとも一方を含み厚さが10乃至1000nmであると共に、この酸化皮膜の上に前記耐食性皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐食性皮膜付き熱交換器。
  4. 前記酸化皮膜と前記耐食性皮膜との間に、プライマ層を有することを特徴とする請求項3に記載の耐食性皮膜付き熱交換器。
  5. 前記耐食性皮膜は、相隣接するフィンの間の前記伝熱管の表面にも形成されており、このフィン間の伝熱管表面に形成された前記耐食性皮膜の最も薄い部分の厚さAが、2≦A≦300μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の耐食性皮膜付き熱交換器。
  6. 前記フィン及び伝熱管が、銅又は銅合金製であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の耐食性皮膜付き熱交換器。
  7. 前記耐食性皮膜は、3フッ化型フッ素系樹脂に架橋剤を配合させて硬化させるフッ素系樹脂塗料の皮膜であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の耐食性皮膜付き熱交換器。
  8. 前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載の耐食性皮膜付き熱交換器を2次熱交換器とすることを特徴とする潜熱回収型給湯器。


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