JPWO2011108565A1 - 車両の旋回制御装置 - Google Patents

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Abstract

本発明の車両の旋回制御装置は、操舵量検知装置および車速検知装置の検知信号に基づいて算出した第1規範ヨーレートを増加方向に補正する補正量を決定し、この補正量にしたがって前記第1規範ヨーレートから第2規範ヨーレートを算出する補正部と、前記第2規範ヨーレートと実際に検知されたヨーレートとのヨーレート偏差を算出し、前記ヨーレート偏差を打ち消す方向への制動力制御量を決定する制動力制御量演算部と、前記制動力制御量に基づいて制動力を制御する制動制御装置と、を備える。前記補正部は、所定の運転状態を判別した際に、前記補正量を低減する複数の補正規制部を備える。

Description

本発明は、制動を利用して車両の旋回を制御する車両の旋回制御装置に関する。
本願は、2010年03月04日に、日本国に出願された特願2010−047835号と、特願2010−047836号と、特願2010−047837号と、特願2010−047838号とに基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
この種の旋回制御装置には、車両の左右方向の加速度(以下、横加速度という)および車速に基づいて算出される横加速度規範ヨーレートと車両の実ヨーレートとの偏差を0に近づける方向に特定の車輪を制動制御することにより、車両挙動の安定化を図るものが知られている。
また、別の旋回制御装置として、この装置による制動時に、車両の旋回状態(例えば、ステアリングホイールの操舵角や操舵角の変化率)に応じて、前輪の左右の制動力を異ならせるとともに後輪の左右の制動力を異ならせるように制御することによりヨーモーメントをアシストし、車両の回頭性の向上を図るものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、操舵角速度または操舵角加速度に基づき算出した第1ヨーモーメントと、操舵角と車速とヨーレートとに基づき算出した第2ヨーモーメントと、を加算して修正ヨーモーメントを算出し、この修正ヨーモーメントを発生するように前輪の左右の制動力を異ならせるとともに後輪の左右の制動力を異ならせるように制御して、車両の回頭性の向上を図るものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許第2572860号公報 特開2005−153716号公報
しかしながら、前記特許文献1に記載の旋回制御装置では、この装置の制動時であって、かつ車両が旋回している時に常にヨーモーメントをアシストするので、ヨーモーメントが過大となって車両の安定性が低減する場合が考えられ、現実的ではない。
一方、前記特許文献2に記載の旋回制御装置は、車両の急旋回時(操舵角速度や操舵角加速度が大きいとき)に前記第1ヨーモーメントが大きく反映されるようになっている。このときには車両の回頭性が向上するが、通常旋回時にはこの車両の回頭性の向上は効果的に行われない。そのため、車両の通常旋回時であっても、その回頭性を向上することができる旋回制御装置が切望されている。
そこで、この発明は、車両の通常旋回時の回頭性をも向上させることができる車両の旋回制御装置を提供する。
この発明に係る車両の旋回制御装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
(1)本発明の車両の旋回制御装置は、車両の走行状態に基づいて前記車両の左右車輪に制動力を付与することにより車体にヨーモーメントを発生可能である。この車両の旋回制御装置は、車両の操舵量を検知する操舵量検知装置と、前記車両の車速を検知または推定する車速検知装置と、前記車両の左右方向の加速度を検知する横加速度検知装置と、前記車両のヨーレートを検知するヨーレート検知装置と、前記横加速度検知装置および前記車速検知装置の検知信号に基づいて第1規範ヨーレートを算出する制御量演算部と、前記操舵量検知装置および前記車速検知装置の検知信号に基づいて前記第1規範ヨーレートを増加方向に補正する補正量を決定し、この補正量にしたがって前記第1規範ヨーレートから第2規範ヨーレートを算出する補正部と、前記第2規範ヨーレートと前記ヨーレート検知装置により検知された実ヨーレートとのヨーレート偏差を算出し、前記ヨーレート偏差を打ち消す方向への第1の制動力制御量を決定する第1制動力制御量演算部と、前記第1制動力制御量演算部により決定された前記制動力制御量に基づいて前記制動力を制御する制動制御装置と、を備える。前記補正部は、所定の運転状態を判別した際に前記第1規範ヨーレートを補正する際の前記補正量を低減する複数の補正規制部を備える。
(2)上記(1)に記載の車両の旋回制御装置は、前記補正部が、車速が大きいほど前記第2規範ヨーレートが小さくなるように前記補正量を決定する第1補正規制部を有していてもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の車両の旋回制御装置は、前記車両の前後方向への荷重移動量を推定する荷重移動量推定装置を更に備え、前記補正部は、前記荷重移動量推定装置が推定した前方への荷重移動量が大きいほど前記第2規範ヨーレートが小さくなるように前記補正量を決定する第2補正規制部を有していてもよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載の車両の旋回制御装置は、前記補正部が、所定のレーンチェンジ条件を満たした場合に前記補正量を低減する第3補正規制部を有していてもよい。
(5)上記(4)に記載の車両の旋回制御装置は、車両の車輪と路面との間の摩擦係数を推定する路面摩擦推定装置を更に備え、前記第3補正規制部は、前記路面摩擦推定装置により推定された摩擦係数が大きい場合に、前記補正量を低減してもよい。
(6)上記(4)または(5)に記載の車両の旋回制御装置は、前記第3補正規制部が、前記操舵量検知装置により検知された操舵量が大きい場合に前記レーンチェンジ条件を満たしたと判定して、前記補正量を低減してもよい。
(7)上記(4)から(6)のいずれかに記載の車両の旋回制御装置は、前記第3補正規制部が、前記ヨーレート検知装置の検知信号に基づいて算出される実ヨーレートの減少率が大きい場合に前記レーンチェンジ条件を満たしたと判定して、前記補正量を低減してもよい。
(8)上記(4)から(7)のいずれかに記載の車両の旋回制御装置は、前記第3補正規制部が、前記横加速度検知装置の検知信号に基づいて算出される横加速度の減少率が大きい場合に前記レーンチェンジ条件を満たしたと判定して、前記補正量を低減してもよい。
(9)上記(1)から(8)のいずれかに記載の車両の旋回制御装置は、アクセル開度またはアクセルペダル操作量に基づいて要求トルクの大きさを検知する要求トルク検知装置を更に備え、前記補正部は、前記要求トルク検知装置の検知信号が所定値よりも小さいときに、車速が小さいほど前記第2規範ヨーレートが大きくなるように前記補正量を決定する第4補正規制部を有していてもよい。
(10)上記(1)から(8)のいずれかに記載の車両の旋回制御装置は、アクセル開度またはアクセルペダル操作量に基づいて要求トルクの大きさを検知する要求トルク検知装置を更に備え、前記補正部は、アクセル開度を検知するアクセル開度検知装置によりアクセル開度が全閉近傍であることが検知された場合に前記補正量をさらに増加させる第4補正規制部を有していてもよい。
(11)上記(10)に記載の車両の旋回制御装置は、前記第4補正規制部が、車速が大きいほど、前記補正量を増加させる調整量を低減させてもよい。
(12)上記(10)または(11)に記載の車両の旋回制御装置は、前記第4補正規制部が、車速が所定速度を越えたときには、前記補正量を減少方向へ調整してもよい。
(13)上記(10)から(12)のいずれかに記載の車両の旋回制御装置は、前記第4補正規制部が、前記アクセル開度の全閉方向への戻し速度が大きいほど、前記補正量を増加させる調整量を大きくしてもよい。
(14)上記(1)から(13)のいずれかに記載の車両の旋回制御装置は、前記補正部が、前記操舵量検知装置の検知信号に基づいて算出される転舵速度または転舵量が大きいほど前記第2規範ヨーレートが大きくなるように補正量を決定してもよい。
(15)上記(1)から(14)のいずれかに記載の車両の旋回制御装置は、前記操舵量検知装置および前記車速検知装置の検出信号に基づいて第2の制動力制御量を決定する第2制動力制御量演算部を更に備え、前記制動制御装置は、前記第1制動力制御量演算部が決定した前記第1の制動力制御量と前記第2制動力制御量演算部が決定した前記第2の制動力制御量とを加算または乗算することにより得られる総制動力制御量に基づいて前記制動力を制御してもよい。
(16)上記(15)のに記載の車両の旋回制御装置は、所定の運転状態のときに前記第2制動力制御量演算部が決定した前記第2の制動力制御量を無効にする無効化機構を更に備えてもよい。
(17)上記(15)または(16)に記載の車両の旋回制御装置は、前記第2制動力制御量演算部が、前記操舵量検知装置の検出信号に基づいて車速が低速であるほど高ゲインとなるように前記第2の制動力制御量を決定するように構成されていてもよい。
(18)本発明の車両の旋回制御装置は、車両の走行状態に基づいて左右車輪に制動力を付与することにより車体にヨーモーメントを発生可能である。前記車両の旋回制御装置は、前記車両の操舵量を検知する操舵量検知装置と、前記車両の車速を検知または推定する車速検知装置と、前記操舵量検知装置の検知信号に基づいて前記操舵量が大きいほど高ゲインとなる旋回アシスト量を決定するアシスト量設定装置と、前記アシスト量設定装置により決定された前記旋回アシスト量に基づいて制動力制御量を決定する制動力制御量演算部と、前記制動力制御量演算部により決定された制動力制御量に基づいて前記制動力を制御する制動制御装置と、を備える。
(19)上記(18)に記載の車両の旋回制御装置は、前記アシスト量設定装置が、前記車速検知装置の検知信号に基づいて、前記車速が低速であるほど高ゲインとなる前記旋回アシスト量を決定してもよい。
上記(1)に記載の車両の旋回制御装置によれば、横加速度と車速に基づいて算出される第1規範ヨーレートを増加方向に補正して第2規範ヨーレートを算出し、この第2規範ヨーレートと実ヨーレートとのヨーレート偏差を打ち消す方向に制動力を制御してヨーモーメントを発生させることができるので、通常の旋回時にも回頭性が向上し、操舵の応答性が向上する。
さらに、補正部によって、車体の状況や路面状況に応じてヨーレートの収束性が向上し、車両が低速であっても操舵に対する車両のトレース性が向上し、車両挙動の安定性を制御できる。
この発明の第1実施形態に係る車両の旋回制御装置における制御ブロック図である。 同実施形態における補正部のブロック図である。 同実施形態における横G規範ヨーレートと舵角規範ヨーレートと限界規範ヨーレートとの関係を説明する図である。 同実施形態における配分係数HB1の算出方法を説明する図である。 同実施形態における補正係数HS1の算出方法を説明する図である。 同実施形態における補正係数HS2決定処理を示すフローチャートである。 同実施形態における補正係数HS3の算出方法を説明する図である。 同実施形態における制動力制御量算出(制動量演算部)のブロック図である。 この発明の第2実施形態に係る車両の旋回制御装置における制御ブロック図である。 同実施形態における制動力制御量算出(制動量演算部)のブロック図である。 この発明の第3実施形態に係る車両の旋回制御装置における、補正係数HS3の算出方法を説明する図である。 同実施形態における補正係数HS3の別の算出方法を説明する図である。 この発明の第4実施形態に係る車両の旋回制御装置における制御ブロック図である。 同実施形態における制動力制御量算出(制動量演算部)のブロック図である。 車両が中速で走行している際の、同実施形態における車両の旋回制御装置のヨーモーメント増大作用を説明する図である。 車両が低速で走行している際の、同実施形態における車両の旋回制御装置のヨーモーメント増大作用を説明する図である。
以下、この発明に係る車両の旋回制御装置の実施形態例を図1から図15Bの図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
初めに、この発明の第1実施形態に係る車両の旋回制御装置を図1から図10の図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る車両の旋回制御装置における制御ブロック図である。
本実施形態の車両の旋回制御装置1A(1)は、ブレーキ制御部2と、ブレーキ装置(制動制御装置)10とを備えている。
ブレーキ制御部2は、車両の走行状態に応じて車両の前後左右輪の制動力制御量を決定する。ブレーキ装置10は、ブレーキ制御部2によって決定された各輪の制動力制御量に基づいて、各輪の制動力を制御する。
ブレーキ制御部2には、車両のステアリングホイールの操舵角(操舵量)を検知する操舵角センサ(操舵量検知装置)3、車速を検知する車速センサ(車速検知装置)4、車両の左右方向(車幅方向)の加速度すなわち横加速度(以下、横Gと略す)を検知する横加速度センサ(横加速度検知装置、以下、横Gセンサと略す)5、車両のヨーレートを検知するヨーレートセンサ(ヨーレート検知装置)6、および車両のアクセル開度を検知するアクセル開度センサ(要求トルク検知装置)7から、それぞれのセンサで得られた検出値に応じた検知信号が入力される。また、このブレーキ制御部2には、車両の車輪と路面との摩擦係数を算出するμ算出部(路面摩擦推定装置)8から、算出した摩擦係数に応じた電気信号が入力される。
ブレーキ制御部2は、舵角規範ヨーレート演算部11、定常規範ヨーレート演算部12、横G規範ヨーレート演算部(制御量演算部)14、補正部15、限界ヨーレート偏差演算部16、第1制動力制御演算部(フィードバック制御量演算部、以下、FB制御量演算部と略す)19と、を備えている。
舵角規範ヨーレート演算部11は、操舵角センサ3により検知されたステアリングホイールの舵角と、車速センサ4により検知された車両の車速とに基づいて、舵角規範ヨーレートを算出する。運転者が車両を積極的に曲げたいときにはステアリングホイールの操舵角を大きくするので、舵角規範ヨーレートは大きくなる。つまり、舵角に基づいて算出される舵角規範ヨーレートが大きいときは、車両を曲げたいという運転者の操舵意志が大きいと推定できる。
定常規範ヨーレート演算部12は、定常規範ヨーレートゲインテーブル21を参照して車速に応じた定常規範ヨーレートゲインKvを算出し、舵角規範ヨーレートに定常規範ヨーレートゲインKvを乗じて定常規範ヨーレートω_highを算出する。本実施形態における定常規範ヨーレートゲインテーブル21は、横軸が車速、縦軸が定常規範ヨーレートゲインKvであり、車速が大きくなるほど定常規範ヨーレートゲインKvは1に収束し、車速が小さくなるほど定常規範ヨーレートゲインKvが大きくなるように設定されている。
横G規範ヨーレート演算部14は、横Gセンサ5により検知された横Gと、車速センサ4により検知された車速とに基づいて、横G規範ヨーレート(第1規範ヨーレート)ω_lowを算出する。横G規範ヨーレートω_lowは、現在の横Gで発生することができるヨーレートであり、例えばω_low=Gy/Vで表される。ここでGyは横Gセンサ5により検知された横加速度検出値、Vは車速センサ4により検知された車体速である。
補正部15は、定常規範ヨーレートω_highと横G規範ヨーレートω_lowとに基づいて限界規範ヨーレート(第2規範ヨーレート)ω_TARを算出する。補正部15における限界規範ヨーレートω_TARの算出方法については後で詳述する。
限界ヨーレート偏差演算部16は、限界規範ヨーレートω_TARからヨーレートセンサ6により検知されたヨーレート(実ヨーレート)を減算し、限界ヨーレート偏差Δωfbを算出する。
FB制御量演算部19は、限界ヨーレート偏差Δωfbに基づいてフィードバック制御量(制動力制御量、以下、FB制御量と略す)を算出し、ブレーキ装置10に指令値として出力する。
次に、図2から図7の図面を参照して、補正部15における限界規範ヨーレートω_TARの算出方法を説明する。
図2に示すように、補正部15は、配分係数HB1演算部(第1補正規制部)31、基準限界規範ヨーレート演算部32、補正係数HS1演算部(第2補正規制部)33、補正係数HS2演算部(第3補正規制部)34、補正係数HS3演算部(第4補正規制部)35を備えている。
補正部15では、基準限界規範ヨーレート演算部32において、配分係数HB1演算部31で算出した配分係数HB1と、定常規範ヨーレートω_highと、横G規範ヨーレートω_lowと、に基づいて基準限界規範ヨーレートω_t1が算出される。さらに、この基準限界規範ヨーレートω_t1に、補正係数HS1演算部33で算出した補正係数HS1、および補正係数HS2演算部34で算出した補正係数HS2を乗じ、この値にさらに補正係数HS3演算部35で算出した補正係数HS3を加算することにより、限界規範ヨーレートω_TARが算出される(下記式(1)参照)。なお、配分係数HB1、補正係数HS1、補正係数HS2、および補正係数HS3によって、横G規範ヨーレートω_lowを増加する方向に補正する補正量が決定される。
ω_TAR=ω_t1×HS1×HS2+HS3 ・・・ 式(1)
この限界規範ヨーレートω_TARは、フィードバック制御におけるヨーレートの目標値となる。
詳述すると、基準限界規範ヨーレート演算部32は、操舵角に基づいて算出された定常規範ヨーレートω_highに関連させて、従来の操舵アシストブレーキ制御におけるフィードバック制御において目標値としていた横G規範ヨーレートω_lowを増加する方向に補正して、基準限界規範ヨーレートω_t1を算出する。これにより、車体に発生しているヨーモーメントを安定させる制御と、操舵の応答性を向上させる制御の両立を図っている。
ここで、横G規範ヨーレートの増加補正について図3を参照して説明する。図3は、車両が直進している状態からステアリングホイールを回転し、このステアリングホイールを所定の操舵角に保持するまでの舵角規範ヨーレートと横G規範ヨーレートの時間的変化を示している。このように、通常、舵角規範ヨーレートは横G規範ヨーレートよりも大きい。そこで、横G規範ヨーレートを増加補正する方法として、舵角規範ヨーレートに近づけるように補正することとし、舵角規範ヨーレートにどの程度近づけるかを走行状態に応じて調整する。この調整方法として、横G規範ヨーレートと舵角規範ヨーレートの配分係数という概念を採用した。
そして、本実施形態では、これをさらに発展させて、横G規範ヨーレートを増加補正する方法として、舵角規範ヨーレートに基づいて算出された定常規範ヨーレートω_highに横G規範ヨーレートを近づけるように補正することとした。
詳述すると、本実施系形態では、配分係数HB1演算部31により算出された配分係数HB1と、横G規範ヨーレートω_lowと、定常規範ヨーレートω_highとに基づいて、下記式(2)から基準限界規範ヨーレートω_t1を算出する。
ω_t1=HB1×ω_high+(1−HB1)×ω_low ・・・ 式(2)
ここで、配分係数HB1は0から1の数値である。HB1=0の場合には基準限界規範ヨーレートω_t1は横G規範ヨーレートω_lowとなる。一方、HB1=1の場合には基準限界規範ヨーレートω_t1は定常規範ヨーレートω_highとなる。
次に、図4を参照して、配分係数HB1演算部31において算出される配分係数HB1について説明する。
配分係数HB1は、車速に応じて算出される配分係数HB1aと、ヨーレート変化率に応じて算出される配分係数HB1bと、ヨーレート偏差積分に応じて算出される配分係数HB1cと、転舵速度に応じて算出される配分係数HB1dとを乗算して算出される(下記式(3)参照)。
HB1=HB1a×HB1b×HB1c×HB1d ・・・ 式(3)
各配分係数HB1a,HB1b,HB1c,HB1dは、それぞれ図4に示す配分係数テーブル40,41,42,43を参照して算出される。以下に、本実施形態における各配分係数テーブル40,41,42,43を説明する。
配分係数HB1aを算出する配分係数テーブル40において、横軸は車速であり、縦軸は配分係数HB1aである。この配分係数テーブル40は、低車速域ではHB1a=1で一定となり、車速が所定値以上になると車速が高くなるにしたがって配分係数HB1aが徐々に小さくなっていき、高速域ではHB1a=0で一定となる。これにより、車速が低いときには、FB制御量演算部19において目標値となる限界規範ヨーレートω_TARを大きくして、車両の回頭性および追従性を向上させられる。一方、車速が高いときには、FB制御量演算部19において目標値となる限界規範ヨーレートω_TARを大きくしないようにして、車両挙動の安定性を確保することができる。
配分係数HB1bを算出する配分係数テーブル41において、横軸はヨーレート変化率であり、縦軸は配分係数HB1bである。この配分係数テーブル41は、ヨーレート変化率が小さい領域ではHB1b=1で一定となり、ヨーレート変化率が所定値以上になるとヨーレート変化率が大きくなるにしたがって配分係数HB1bが徐々に小さくなっていき、ヨーレート変化率が大きい領域ではHB1b=0で一定となる。ここで、ヨーレート変化率とは、ヨーレートセンサ6で検知される実ヨーレートの時間的変化であり、実ヨーレートを時間微分することにより算出することができる。例えば、車両が激しいスラローム走行をしているときや、車両挙動が不安定であるときなどには、大きなヨーレート変化率が現れる。
このようなときには、FB制御量演算部19において目標値となる限界規範ヨーレートω_TARを大きくすべきではないので、ヨーレート変化率が大きいときには配分係数HB1bを小さい値にして、限界規範ヨーレートω_TARを大きくしないようにする。
配分係数HB1cを算出する配分係数テーブル42において、横軸はヨーレート偏差積分値であり、縦軸は配分係数HB1cである。この配分係数テーブル42は、ヨーレート偏差積分値が小さい領域ではHB1c=1で一定となり、ヨーレート偏差積分値が所定値以上になるとヨーレート偏差積分値が大きくなるにしたがって配分係数HB1cが徐々に小さくなっていき、ヨーレート偏差積分値が大きい領域ではHB1c=0で一定となる。ここで、ヨーレート偏差積分値とは、限界規範ヨーレートとヨーレートセンサ6で検知される実ヨーレートとの偏差すなわち限界ヨーレート偏差Δωfbを、ステアリングホイールの操舵を開始したときから積算した値である。例えば、限界ヨーレート偏差Δωfbが小さくてもその状態が長時間続いた場合には、ヨーレート偏差積分値が大きくなる。このようなときは、ゆっくりではあるが徐々に車がスピン状態になっている可能性があるので、FB制御量演算部19において目標値となる限界規範ヨーレートω_TARを大きくすべきではない。そこで、ヨーレート偏差積分値が大きいときには配分係数HB1cを小さい値にして、限界規範ヨーレートω_TARを大きくしないようにする。
配分係数HB1dを算出する配分係数テーブル43において、横軸は転舵速度であり、縦軸は配分係数HB1dである。この配分係数テーブル43は、転舵速度が大きいほど配分係数HB1dが大きくなり、且つ、転舵速度が正の場合には転舵速度が負の場合よりも配分係数HB1dが大きくなるように設定されている。ここで、転舵速度は操舵角センサ3で検知されるステアリングホイールの操舵角の時間変化量と舵角に基づき決定される値であり、操舵角を時間微分して舵角と比較することにより算出する。転舵速度が正の場合とは、ステアリングホイールを中立位置(直進方向位置)から離間する方向に回転操作している状態にて、同方向に向けた時間変化量が生じているとき、およびステアリングホイールを中立位置(直進方向位置)に向けて回転操作している状態にて、同方向への時間変化量が生じているときである。一方、転舵速度が負の場合とは、ステアリングホイールを中立位置(直進方向位置)から離間する方向に回転操作している状態で中立位置に向く方向に時間変化量が生じているとき、およびステアリングホイールを中立位置に戻す方向に回転操作している状態にて中立位置から離間する方向に時間変化量が生じているときである。
転舵速度が正の場合は、運転者が車両を大きく曲げたいという操作意志が大きいと推定できるので、転舵速度が大きくなるほど配分係数HB1dを大きい値にして(最大値はHB1d=1で一定)、限界規範ヨーレートω_TARが大きくなるようにする。これにより、操舵に対する車両の応答性を向上させる。一方、転舵速度が負の場合は、運転者が操作を収束させたい状態と推定できるので、転舵速度の絶対値が大きくなるほど配分係数HB1dを小さい値にして(最小値はHB1d=0で一定)、限界規範ヨーレートω_TARを大きくしないようにする。
これにより、前方障害物からの回避操作やレーンチェンジなどのときの操舵に対する車両の応答性が向上する。
なお、配分係数HB1dは転舵速度に代えて転舵角(転舵量)に基づいて算出してもよい。転舵角が大きいほど、運転者が車両を積極的に曲げたいという操作意志が大きいと推定できるからである。この場合の、転舵角は操舵角と同義である。
次に、図5を参照して、補正係数HS1演算部(第2補正規制部)33において算出される補正係数HS1について説明する。
この補正係数HS1は、運転者が車両を前荷重にしてステアリングホイールを切ることにより車両を曲げる操作を行うときなどを想定した補正係数である。
図5に示すように、補正係数HS1は、操舵速度に応じて算出される補正係数HS1aと、車両の前荷重に応じて算出される補正係数HS1bとを乗算して算出される(下記式(4)参照)。
HS1=HS1a×HS1b ・・・ 式(4)
車両の前荷重とは車両前方への荷重移動量であり、例えば、車両の前後方向の加速度を検知する図示しない前後加速度センサに基づいて推定することができる。この場合、前後加速度センサは、前後方向への荷重移動量を推定する荷重移動量推定装置と言うことができる。
各補正係数HS1a,HS1bは、それぞれ図5に示す補正係数テーブル44,45を参照して算出される。本実施形態における補正係数テーブル44,45を説明する。
補正係数HS1aを算出する補正係数テーブル44において、横軸は操舵速度であり、縦軸は補正係数HS1aである。この補正係数HS1aテーブル44は、操舵速度が小さい領域ではHS1a=1で一定となり、操舵速度が所定値以上になると操舵速度が大きくなるにしたがって補正係数HS1aが徐々に小さくなっていき、操舵速度が大きい領域ではHS1a=0で一定となる。
補正係数HS1bを算出する補正係数テーブル45において、横軸は前荷重(車両前方への荷重移動量)であり、縦軸は補正係数HS1bである。この補正係数HS1bテーブル45は、前荷重が小さい領域ではHS1b=1で一定となり、前荷重が所定値以上になると前荷重が大きくなるにしたがって補正係数HS1bが徐々に小さくなっていき、前荷重が大きい領域ではHS1b=0で一定となる。
前述したように車両を前荷重にしてステアリングホイールを切ると車両を曲げ易くなるが、前荷重が大きくなるにしたがって車両挙動が不安定になり易く、また、操舵速度が大きいほど車両挙動が不安定になり易い。補正係数HS1は、このような操舵時の限界規範ヨーレートω_TARを調整するための補正係数である。
補正係数HS1を上述のように算出する結果、操舵速度が小さい領域で且つ前荷重が小さい領域では補正係数HS1は1となるので、限界規範ヨーレートω_TARを大きくすることができ、車両の回頭性を向上できる。これに対して、操舵速度および前荷重が大きくなるにしたがって補正係数HS1は1よりも小さくなっていくので、限界規範ヨーレートω_TARを小さくでき、車両挙動の安定性を確保できる。
次に、補正係数HS2演算部(第3補正規制部)34において算出される補正係数HS2について説明する。
この補正係数HS2は、車輪と路面との摩擦係数(以下μと略す)が高い路面(以下、高μ路と略す)でレーンチェンジ(操舵をして、車両の進行方向をすぐに元の進行方向に戻す操作)をする場合を想定した補正係数である。
補正係数HS2は、1を最大値として、下記の条件を満たした場合に所定の減少カウント値を初期値から減算し、下記のいずれの条件も満たさない場合に1に向けて所定の増加カウント値を加算するよう構成されるゲインである。条件としては、(a)摩擦係数μが高いと判断されたとき(または高摩擦係数の路面走行に対応する前後または横方向加速度が検出されているとき)、(b)操舵角が大きいと判断されたとき、(c)横G減少率が大きいと判断されたとき、(d)ヨーレート減少率が大きいと判断されたとき、に所定の減少カウント値を減算する。なお、上記条件は、(a)から(d)のうち少なくとも1つまたは複数を任意に組み合わせたものであればよい。特に高摩擦係数時の車両挙動の収束性を考慮すると、上記(a)と、(b)から(d)のいずれかを組合わせて用いることが好ましい。
なお、摩擦係数μは、μ算出部8により算出される。横G減少率とは、横Gの減少速度であり、横Gセンサ5で検知される横Gに基づいて算出する。ヨーレート減少率とは、ヨーレートセンサ6で検知される実ヨーレートの減少速度である。
図6のフローチャートに従って、補正係数HS2を決定する処理の一例を説明する。
初めに、ステップS01において、摩擦係数μが閾値μthよりも大きいか否かを判定する。
ステップS01における判定結果が「YES」(μ>μth)である場合には、ステップS02に進み、操舵角δが閾値δthよりも大きいか(δ>δth)、あるいは、横G減少率ΔGが閾値ΔGthよりも大きいか(ΔG>ΔGth)、あるいは、ヨーレート減少率γが閾値γthよりも大きいか(γ>γth)のうち1つでも満たすものがあるか否かを判定する。
ステップS02における判定結果が「YES」である場合には、ステップS03に進み、減算処理により補正係数HS2を決定し、本ルーチンの実行を一旦終了する。この減算処理は、補正係数HS2の初期値から所定の減算カウント値を減算していき、補正係数HS2が0に収束していくようにする。
一方、ステップS01における判定結果が「NO」(μ≦μth)である場合、および、ステップS02における判定結果が「NO」である場合には、ステップS04に進み、加算処理により補正係数HS2を決定し、本ルーチンの実行を一旦終了する。この加算処理は、所定の増加カウント値を加算していき、補正係数HS2が1に収束していくようにする。
なお、補正係数HS2の初期値は0から1の間の所定値とする。
高μ路においてレーンチェンジを行ったときに、ヨーレートおよび横Gが急激に減少する場合には、操舵により進行したい方向と逆の方向へ大きなヨーレートが発生することがある。この時に、限界規範ヨーレートω_TARを大きくすると、操舵に対する車両のトレース性が悪化する虞がある。補正係数HS2はこれを抑制するためのものである。つまり、摩擦係数μ、操舵角、横G減少率、およびヨーレート減少率が大きい場合には、補正係数HS2を小さい値とすることで、限界規範ヨーレートω_TARを大きくしないようにし、これによりレーンチェンジ後のヨーレートの収束性を向上する。
次に、図7を参照して、補正係数HS3演算部(第4補正規制部)35において算出される補正係数HS3について説明する。
この補正係数HS3は、運転者がタックインをしたときなどを想定した補正係数である。タックインは、旋回中にアクセルペダルを急に戻したときに車両が前荷重となって旋回方向の内側に入り込む現象であるが、運転者によってはこれを利用して積極的に旋回操作を行う場合がある。しかしながら、このタックインを利用した旋回操作は、車両への要求トルクが大きいとき(換言すると、アクセル開度が大きいとき)からアクセルを開放するときや、車速が大きいときには、車両挙動が不安定になり易い。補正係数HS3は、タックイン時の限界規範ヨーレートω_TARを調整するための補正係数である。
図7に示すように、補正係数HS3は、車速に応じて算出される補正係数HS3aと、車両の要求トルクに応じて算出される補正係数HS3bとを乗算して算出される(下記式(6)参照)。
HS3=HS3a×HS3b ・・・ 式(6)
なお、車両の要求トルクは、アクセル開度センサ7で検知したアクセル開度から算出することができ、アクセル開度が大きくなるにしたがって要求トルクが大きくなる。
各補正係数HS3a,HS3bは、それぞれ図7に示す補正係数テーブル51,52を参照して算出される。本実施形態における補正係数テーブル51,52を説明する。
補正係数HS3aを算出する補正係数テーブル51において、横軸は車速であり、縦軸は補正係数HS3aである。この補正係数HS3aテーブル51は、車速が所定値よりも小さい領域ではHS3aは正の一定値であり、車速が前記所定値以上になると車速が大きくなるにしたがって補正係数HS3aが徐々に小さくなっていき、所定速度V0を越えると負の値となり、車速が非常に大きい領域ではHS3aは負の一定値となる。
補正係数HS3bを算出する補正係数テーブル52において、横軸は車両の要求トルクであり、縦軸は補正係数HS3bである。この補正係数HS3bテーブル52は、要求トルクが所定値T0よりも小さい領域ではHS3bが正の値で、要求トルクが所定値T0以上の領域では補正係数HS3b=0となる。ここで、前記所定値T0は極めて小さい値であり、例えば、アクセル開度がゼロに近いときに対応した要求トルクに設定する。
このように補正係数テーブル51,52を設定することにより、要求トルクが所定値T0以上の場合(すなわち、タックイン状態ではないと判断されるとき)には、車速の大きさに関わらず補正係数HS3が0となり、限界規範ヨーレートω_TARを補正しないようにすることができる。
また、要求トルクが所定値T0以下の場合(すなわち、タックイン状態であると判断されるとき)であって、かつ車速がV0よりも小さいときには、補正係数HS3が正の値となるので、限界規範ヨーレートω_TARを大きくできる。一方、要求トルクが所定値T0以下の場合であって、かつ車速がV0以上のときには、補正係数HS3が負の値となるので、限界規範ヨーレートω_TARを小さくできる。さらに、車速がV0よりも小さい場合であって、かつ要求トルクが同じときには、車速が小さいほど補正係数H3を正値の大きな値にして、限界規範ヨーレートω_TARを大きくできる。これにより、車速が低中速のタックイン時の、車両の回頭性を向上させられる。特に、車速が小さいときほどタックイン時の車両の回頭性が向上する。一方、車速がV0以上の場合であって、かつ要求トルクが同じときには、車速が大きいほど補正係数H3を負値の大きな値にして、限界規範ヨーレートω_TARを小さくできる。これにより、車速が大きいときに過大なヨーモーメントが発生してオーバーステア状態となるのを抑制でき、車両の挙動が不安定になるのを防止できる。
次に、図8を参照して、FB制御量演算部19において実行されるブレーキ制御量(以下、FB制御量という)の算出について説明する。
FB制御量演算部19では、限界ヨーレート偏差演算部16で演算された限界ヨーレート偏差Δωfbに基づいて、FR旋回内輪のFB増圧量ΔP1fb、前輪側の旋回外輪(以下、FR旋回外輪と略す)のFB増圧量ΔP3fb、RR旋回内輪のFB増圧量ΔP2fb、および後輪側の旋回外輪(以下、RR旋回外輪と略す)のFB増圧量ΔP4fbを算出する。これらΔP1fb、ΔP3fb、ΔP2fb、およびΔP4fbが第1の制動力制御量である。なお、以降の旋回方向は、偏差Δωfbの符号が正で、かつ規範ヨーレートおよび実ヨーレートがともに正の場合を例に説明する。
FR旋回内輪のFB増圧量ΔP1fbは、限界ヨーレート偏差Δωfbに基づき、増圧量テーブル80を参照して算出する。増圧量テーブル80において、横軸は限界ヨーレート偏差Δωfbであり、縦軸はFB増圧量ΔP1fbである。本実施形態では、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以下の場合にはFB増圧量ΔP1fbが0であり、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以上の場合には限界ヨーレート偏差Δωfbが大きくなるにしたがってFB増圧量ΔP1fbが増大していく。
RR旋回内輪のFB増圧量ΔP2fbは、限界ヨーレート偏差Δωfbに基づき、増圧量テーブル81を参照して算出する。増圧量テーブル81において、横軸は限界ヨーレート偏差Δωfbであり、縦軸はFB増圧量ΔP2fbである。本実施形態では、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以下の場合にはFB増圧量ΔP2fbは0であり、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以上では限界ヨーレート偏差Δωfbが大きくなるにしたがってFB増圧量ΔP2fbが増大していく。
FR旋回外輪のFB増圧量ΔP3fbは、限界ヨーレート偏差Δωfbに基づき、増圧量テーブル82を参照して算出する。増圧量テーブル82において、横軸は限界ヨーレート偏差Δωfbであり、縦軸はFB増圧量ΔP3fbである。本実施形態では、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以上の場合にはFB増圧量ΔP3fbが0であり、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以下の場合には限界ヨーレート偏差Δωfbの絶対値が大きくなるにしたがってFB増圧量ΔP3fbが増大していく。
RR旋回外輪のFB増圧量ΔP4fbは、限界ヨーレート偏差Δωfbに基づき、増圧量テーブル83を参照して算出する。増圧量テーブル83において、横軸は限界ヨーレート偏差Δωfbであり、縦軸はFB増圧量ΔP4fbである。本実施形態では、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以上の場合にはFB増圧量ΔP4fbが0であり、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以下の場合には限界ヨーレート偏差Δωfbの絶対値が大きくなるにしたがってFB増圧量ΔP4fbが増大していく。
つまり、FB制御量演算部19では、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以上の場合は、実ヨーレートが限界規範ヨーレートよりも小さいので、ヨーレートを増大させる方向(換言すれば、限界ヨーレート偏差Δωfbを打ち消す方向)に、各輪のFB制御量を設定する。具体的には、FR旋回内輪およびRR旋回内輪のブレーキ液圧を増大させる方向にFB増圧量を設定し、FR旋回外輪およびRR旋回外輪のブレーキ液圧を増大させないようにFB増圧量を設定する。
一方、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以下の場合は、実ヨーレートが限界規範ヨーレートよりも大きいので、ヨーレートを減少させる方向(換言すれば、限界ヨーレート偏差Δωfbを打ち消す方向)に、各輪のFB制御量を設定する。具体的には、FR旋回外輪およびRR旋回外輪のブレーキ液圧を増大させる方向にFB増圧量を設定し、FR旋回内輪およびRR旋回内輪のブレーキ液圧を増大させないようにFB増圧量を設定する。
そして、FB制御量演算部19は、FR旋回内輪のFB増圧量ΔP1fbと、RR旋回内輪のFB増圧量ΔP2fbと、FR旋回外輪のFB増圧量ΔP3fbと、RR旋回外輪のFB増圧量ΔP4fbとを、ブレーキ装置10に出力する。
ブレーキ装置10は、入力した各輪の制御量に応じて、各輪のブレーキ圧を制御する。
本実施形態の車両の旋回制御装置によれば、補正部15により、操舵角に基づいて算出される定常規範ヨーレートω_highに関連させて、横G規範ヨーレートω_lowを増加する方向に補正し、限界規範ヨーレートω_TARを算出しているので、車体に発生しているヨーモーメントを安定させる制御と、操舵の応答性を向上させる制御とを両立することができる。その結果、運転者の旋回意志が応答良く反映され、操舵フィールが向上する。
また、横G規範ヨーレートω_lowを増加する方向に補正して限界規範ヨーレートω_TARとしているので、FB制御量演算部19における目標値を大きくすることができ、車両の回頭性が向上する。これにより、車両を走路に沿って旋回させることが可能となり、路面追従性能(トレース性)が向上する。
さらに、補正部15に配分係数HB1演算部31、補正係数HS1演算部33、補正係数HS2演算部34、補正係数HS3演算部35が設けられているので、車体の状況や路面状況(例えば高μ路でのレーンチェンジ後など)に応じてヨーレートの収束性等が向上し、車両が低速であっても操舵に対する車両のトレース性が向上する。
<第2実施形態>
次に、この発明に係る車両の旋回制御装置の第2実施形態を図9および図10の図面を参照して説明する。
図9は、第2実施形態に係る車両の旋回制御装置1B(1)における制御ブロック図である。前述した第1実施形態の車両の旋回制御装置1Aでは、限界規範ヨーレートω_TARと実ヨーレートとの偏差(すなわち、限界ヨーレート偏差Δωfb)を打ち消す方向に制御量(FB制御量)を求め、このFB制御量のみでブレーキ圧を制御するようにしている。これに対し、第2実施形態の旋回制御装置1Bでは、操舵角と車速に基づいてフィードフォワード制御量(以下、FF制御量と略す)を算出し、前記FB制御量とFF制御量とを加算して得た値を総制御量とし、この総制御量に基づいて各輪のブレーキ圧を制御する。
以下、第2実施形態に係る車両の旋回制御装置について説明するが、図9の制御ブロック図においてフィードバック制御系、すなわち、舵角規範ヨーレート演算部11、定常規範ヨーレート演算部12、横G規範ヨーレート演算部14、補正部15、限界ヨーレート偏差演算部16、FB制御量演算部19については第1実施形態と同じであるので、同一態様部分に同一符号を付して説明を省略する。以下、第1実施形態との相違点をフィードフォワード制御系を中心に説明する。
第2実施形態に係る車両の旋回制御装置1B(1)は、第1実施形態の車両の旋回制御装置1Aの構成に加えて、フィードフォワード制御系として、定常ヨーレート偏差演算部13とフィードフォワード制御量演算部(第2制動力制御演算部、以下、FF制御量演算部と略す)18とを備えている。そして、FF制御量演算部18と第1実施形態におけるFB制御量演算部19とにより制動力制御量演算部17が構成されている。
定常ヨーレート偏差演算部13には、舵角規範ヨーレート演算部11で算出された舵角規範ヨーレートに対して時間変化量平滑化処理あるいはピークホールド処理などを行ってノイズを除去した舵角規範ヨーレートが入力される。そして、定常ヨーレート偏差演算部13は、定常規範ヨーレートω_highからノイズ除去後の舵角規範ヨーレートを減算し、定常ヨーレート偏差Δωffを算出する。
制動力制御量演算部17は、FF制御量演算部18において定常ヨーレート偏差Δωffに基づいてフィードフォワード制御量を算出し、FB制御量演算部19において限界ヨーレート偏差Δωfbに基づいてフィードバック制御量(FB制御量)を算出し、さらにFF制御量とFB制御量を加算して総制御量を算出し、ブレーキ装置10に指令値として出力する。
次に、図10を参照して、制動力制御量演算部17において実行されるブレーキ制御量演算について説明する。
FF制御量演算部18におけるFF制御量の算出について説明する。
まず、操舵角センサ3で検知された操舵角に基づいて、前輪側の旋回内輪(以下、FR旋回内輪と略す)と後輪側の旋回内輪(以下、RR旋回内輪と略す)に対する増圧配分を決定する。次いで、この増圧配分に基づいて、FR旋回内輪に対する増圧係数K1frとRR旋回内輪に対する増圧係数K1rrとを算出する。ここで、操舵による荷重移動が大きい場合には、操舵角に応じて、FR旋回内輪に対する増圧係数K1frが大きくなるように設定してもよい。
そして、FR旋回内輪に対する増圧係数K1frとRR旋回内輪に対する増圧係数K1rrに基づいて、FR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP1ffの算出と、RR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP2ffの算出が、並行して実施される。なお、これらΔP1ffとΔP2ffとが、第2の制動力制御量である。
まず、FR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP1ffの算出を説明する。定常ヨーレート偏差演算部13で演算された定常ヨーレート偏差Δωffに増加係数K1frを乗じて、FR旋回内輪に対する定常ヨーレート偏差Δω1ffを算出する。
次に、第1増圧量テーブル60を参照し、FR旋回内輪に対する定常ヨーレート偏差Δω1ffに応じて、FR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkを算出する。第1増圧量テーブル60において、横軸は定常ヨーレート偏差Δω1ffであり、縦軸はブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkである。本実施形態では、FR旋回内輪に対する定常ヨーレート偏差Δω1ffが0以下の場合にはブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkは0であり、FR旋回内輪に対する定常ヨーレート偏差Δω1ffが0以上では定常ヨーレート偏差Δω1ffが大きくなるにしたがってブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkが増大していく。
次に、第1リミット処理部61において、FR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkが上限値を超えないようにリミット処理を行う。上限値は、第1上限値算出部62によって算出される任意の値であり、この値を超えないよう設定することで液圧増圧量ΔPlffkの急変動を抑制する。
次に、リミット処理されたFR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkに、車速に応じたゲインを乗じて、FR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP1ffを算出する。なお、車速に応じたゲインは、第1ゲインテーブル63に基づいて算出される。この第1ゲインテーブル63において、横軸は車速であり、縦軸はゲインであって、車速が小さい領域ではゲイン=1で一定となり、車速が所定値以上になると車速が大きくなるにしたがってゲインが徐々に小さくなっていき、車速が大きい領域ではゲイン=0で一定となる。
このように車速に応じたゲインをFR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkに乗じる結果、車速が大きいときには、FR旋回内輪のFF増圧量ΔP1ffは0となる。換言すると、高車速時にはFR旋回内輪のFF増圧量ΔP1ffが無効とされる。これにより、高車速時に操舵アシストブレーキに起因して車両挙動が不安定になるのを防止できる。本実施形態において、ゲインテーブル63は無効化機構を構成する。なお、車速に応じたゲインを乗じるのに替えて、高車速ほど値が低くなる任意の制限値を与え、この制限値をΔPlffが上回らないように設定してもよい。
RR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP2ffの算出は、FR旋回内輪に対するFF増圧量ΔPfr1の算出と同じであるので、簡単に説明する。
定常ヨーレート偏差演算部13で演算された定常ヨーレート偏差Δωffに、RR旋回内輪に対する増加係数K1rrを乗じて、RR旋回内輪に対する定常ヨーレート偏差Δω2ffを算出する。
次に、第2増圧量テーブル64を参照し、RR旋回内輪に対する定常ヨーレート偏差Δω2ffに応じて、RR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP2ffkを算出する。第2増圧量テーブル64は第1増圧量テーブル60と同じであるので説明を省略する。
次に、第2リミット処理部65において、RR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP2ffkが上限値を超えないようにリミット処理を行う。上限値は、第2上限値算出部66によって算出される。第2上限値算出部66は第1上限値算出部62と同じである。
次に、リミット処理されたRR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP2ffkに、第2ゲインテーブル67により算出したゲインを乗じて、RR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP2ffを算出する。第2ゲインテーブル67は第1ゲインテーブル63と同じであるので、説明を省略する。本実施形態において、第2ゲインテーブル67は無効化機構を構成する。
また、FF制御量演算部18は、内輪減圧量算出部70を備えている。内輪減圧量算出部70は、高速時や高横Gの時には制動により車両挙動が不安定となるという前提の下に、予め旋回内輪のブレーキ液圧を制限するためのものである。
内輪減圧量算出部70では、第1減圧率テーブル71を参照して車速に応じた減圧率を算出するとともに、第2減圧率テーブル72を参照して横Gに応じた減圧率を算出し、これら減圧率を乗じることで総減圧率を算出する。
第1減圧率テーブル71において、横軸は車速であり、縦軸は減圧率であって、車速が小さい領域では減圧率=0で一定となり、車速が所定値以上になると車速が大きくなるにしたがって減圧率が徐々に大きくなっていき、車速が大きい領域では減圧率=1で一定となる。
第2減圧率テーブル72において、横軸は横Gであり、縦軸は減圧率であって、横Gが小さい領域では減圧率=0で一定となり、横Gが所定値以上になると横Gが大きくなるにしたがって減圧率が徐々に大きくなっていき、横Gが大きい領域では減圧率=1で一定となる。
これにより、総減圧率は、走行時の車速および横Gに応じて、0から1の間の値に設定される。
そして、このようにして求めた総減圧率にブレーキ装置10のマスタシリンダ圧を乗じ、さらにマイナス1を乗じて内輪減圧量ΔPdを求める。
FB制御量演算部19におけるFB制御量の算出については第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
そして、制動力制御量演算部17は、FR旋回内輪のFF増圧量ΔP1ffとFR旋回内輪のFB増圧量ΔP1fbと内輪減圧量ΔPdとを加算した値をFR旋回内輪に対する総制御量とし、RR旋回内輪のFF増圧量ΔP2ffとRR旋回内輪のFB増圧量ΔP2fbと内輪減圧量ΔPdとを加算した値をRR旋回内輪に対する総制御量とし、FR旋回外輪のFB増圧量ΔP3fbをFR旋回外輪の総制御量とし、RR旋回外輪のFB増圧量ΔP4fbをRR旋回外輪の総制御量として、ブレーキ装置10に出力する。
ブレーキ装置10は、入力した各輪の制御量に応じて、各輪のブレーキ圧を制御する。
本実施形態の車両の旋回制御装置によれば、第1実施形態の場合と同様、補正部15により、操舵角に基づいて算出される定常規範ヨーレートω_highに関連させて、横G規範ヨーレートω_lowをその値が増加する方向に補正し、限界規範ヨーレートω_TARを算出している。このため、車体に発生しているヨーモーメントを安定させる制御と、操舵の応答性を向上させる制御とを両立することができる。その結果、運転者の旋回意志が応答良く車両の挙動に反映され、操舵フィールが向上する。
また、横G規範ヨーレートω_lowを増加する方向に補正して限界規範ヨーレートω_TARとしているので、FB制御量演算部19における目標値を大きくすることができ、車両の回頭性が向上する。これにより、車両を走路に沿って旋回させることが可能となり、路面追従性能(トレース性)が向上する。
さらに、補正部15に、配分係数HB1演算部31、補正係数HS1演算部33、補正係数HS2演算部34、補正係数HS3演算部35が設けられているので、車体の状況や路面状況(例えば高μ路でのレーンチェンジ後など)に応じてヨーレートの収束性が向上し、車両が低速であっても操舵に対する車両のトレース性が向上する。
また、本実施形態の車両の旋回制御装置によれば、車体挙動に基づき算出されたFB制御量に、操舵入力に基づき算出されたFF制御量を加えた総制御量に基づいてブレーキ圧を制御しているので、車両挙動の安定性を確保しつつ、操舵の応答性および追従性を向上させることができる。例えば、定常円旋回時などのように、操舵入力後に操舵保持という過程において、制御量の変動が抑制されて車両の路面追従性が向上する。
<第3実施形態>
次に、この発明に係る車両の旋回制御装置の第3実施形態を図11および図12の図面を参照して説明する。本実施形態が上述の第1実施形態と異なる点は、第1実施形態では、タックイン状態か否かを要求トルクに基づいて判定しているのに対し、第3実施形態では、アクセルペダルまたはアクセル開度の戻し速度(以下、戻し速度と略す)に基づいてタックイン状態か否かを判定している点、あるいは、要求トルクと戻し速度の両方に基づいてタックイン状態か否かを判定している点である。すなわち、本実施形態のこの判定方法は、上記第1実施形態に加え、第2実施形態にも適用可能である。以下、これらの判定方法を詳述する。
戻し速度に基づいてタックイン状態か否かを判定する場合には、図11に示すように、車速に応じて算出される補正係数HS3aと、戻し速度に応じて算出される補正係数HS3cを乗算して補正係数HS3を算出する(HS3=HS3a×HS3c)。
補正係数HS3cは、図11に示す補正係数テーブル53を参照して算出される。補正係数テーブル53において、横軸は戻し速度であり、縦軸は補正係数HS3cである。この補正係数HS3cテーブル53は、戻し速度が所定値以下の領域では補正係数HS3c=0で一定となり、戻し速度が前記所定値を越えると戻し速度が大きくなるにしたがって補正係数HS3cが徐々に大きくなっていき、最大値Aに収束し一定となる。ここで、前記所定値は、タックイン操作であるか否かの判定閾値となる戻し速度に設定する。
このようにすると、アクセルペダルまたはアクセル開度を戻す速度が前記所定値よりも遅いときにはタックイン状態ではないと判定して、補正係数HS3cを0とすることで補正係数HS3による限界規範ヨーレートω_TARの補正を行わないようにする。一方、アクセルペダルまたはアクセル開度を戻す速度が前記所定値よりも早いときにはタックイン状態であると判定して、車速に応じた補正係数HS3を算出し、補正係数HS3による限界規範ヨーレートω_TARの補正を行う。
要求トルクと戻し速度の両方に基づいてタックイン状態か否かを判定する場合には、図12に示すように、車速に応じて算出される補正係数HS3aと、車両の要求トルクに応じて算出される補正係数HS3bと、戻し速度に応じて算出される補正係数HS3cとを乗算して、補正係数HS3を算出する(HS3=HS3a×HS3b×HS3c)。このようにすると、タックイン状態か否かの判定精度が向上するので、タックインではないときに補正係数HS3に基づき限界規範ヨーレートω_TARが調整処理されるのを抑制することができ、補正係数HS3による不要な制御介入を抑制できる。
このように、アクセルペダルまたはアクセル開度の戻し速度に基づいてタックイン状態か否かを判定した場合や、あるいは、要求トルクと戻し速度の両方に基づいてタックイン状態か否かを判定した場合であっても補正係数HS3を算出でき、上記第1実施形態あるいは第2実施形態と同様な効果が得られる。
<第4実施形態>
以下、この発明に係る車両の旋回制御装置の第4実施形態を図13から図15Bの図面を参照して説明する。
図13は、第4実施形態に係る車両の旋回制御装置における制御ブロック図である。
本実施形態の車両の旋回制御装置1C(1)は、ブレーキ制御部2と、ブレーキ装置(制動制御装置)10とを備えている。
ブレーキ制御部2は、車両の走行状態に応じて前後左右輪の制動力制御量を決定する。ブレーキ装置10は、ブレーキ制御部2によって決定された各輪の制動力制御量に基づいて、各輪の制動力を制御する。
ブレーキ制御部2には、車両のステアリングホイールの操舵角(操舵量)を検知する操舵角センサ(操舵量検知装置)3、車速を検知する車速センサ(車速検知装置)4、車両の左右方向(車幅方向)の加速度すなわち横加速度(以下、横Gと略す)を検知する横加速度センサ(以下、横Gセンサと略す)5、および車両のヨーレートを検知するヨーレートセンサ6から、それぞれのセンサで得られた検出値に応じた検知信号が入力される。
ブレーキ制御部2は、アシスト量演算部(アシスト量設定装置)23、横G規範ヨーレート演算部14、ヨーレート偏差演算部16、および制動力制御量演算部17を備えている。制動力制御量演算部17は、第2制動力制御演算部(フィードフォワード制御量演算部、以下、FF制御量演算部と略す)18と、第1制動力制御演算部(フィードバック制御量演算部、以下、FB制御量演算部と略す)19と、を備えている。
アシスト量演算部23は、操舵角センサ3により検知された舵角と車速センサ4により検知された車速とに基づいて、車両の旋回をアシストするためのブレーキによるアシスト量(旋回アシスト量)Asを演算する。詳述すると、アシスト量演算部23は、舵角ゲインテ−ブル24を参照して舵角に応じたゲインKsを算出するとともに、車速ゲインテーブル25を参照して車速に応じたゲインKvを算出し、これらゲインKs,Kvを乗算した積をアシスト量Asに設定する(As=Ks×Kv)。
本実施形態における舵角ゲインテーブル24は、横軸が舵角、縦軸が舵角ゲインKsであり、正の舵角はステアリングホイールを中立位置(直進方向位置)から時計回り方向に回転したときの操舵角とし、負の舵角はステアリングホイールを中立位置から反時計回り方向に回転したときの操舵角とする。この舵角ゲインテ−ブル24では、舵角の絶対値が所定値未満の範囲では舵角ゲインKsは0で一定となり、舵角の絶対値が前記所定値に達すると舵角ゲインKsが正の一定値に急増し、前記所定値を越えると舵角の絶対値が大きくなるにしたがって舵角ゲインKsが徐々に大きくなるように設定されている。
一方、本実施形態における車速ゲインテーブル25は、横軸が車速、縦軸が車速ゲインKvであり、車速が大きくなるほど車速ゲインKvは小さくなって1に収束し、車速が小さくなるほど車速ゲインKvが大きくなるように設定されている。
このように舵角ゲインテ−ブル24と車速ゲインテーブル25が設定されているので、舵角の絶対値が所定値未満では、車速の如何に関わらずアシスト量Asは0となる。一方、舵角の絶対値が所定値以上になると舵角の絶対値が大きくなるほどアシスト量Asが増大し、且つ、車速が小さいほどアシスト量Asが大きく、車速が大きくなるほどアシスト量Asが減少する。
横G規範ヨーレート演算部14は、横Gセンサ5により検知された横Gと、車速センサ4により検知された車速とに基づいて、横G規範ヨーレートω_lowを算出する。横G規範ヨーレートω_lowは、現在の横Gで発生することができるヨーレートであり、例えばω_low=Gy/Vで表される。ここでGyは横Gセンサ5により検知された横加速度検出値、Vは車速センサ4により検知された車体速である。
ヨーレート偏差演算部16は、横G規範ヨーレートω_lowからヨーレートセンサ6により検知されたヨーレート(実ヨーレート)を減算し、ヨーレート偏差Δωfbを算出する。
制動力制御量演算部17は、FF制御量演算部18においてアシスト量Asに基づいてフィードフォワード制御量(以下、FF制御量と略す)を算出し、FB制御量演算部19においてヨーレート偏差Δωfbに基づいてフィードバック制御量(FB制御量と略す)を算出し、これらFF制御量とFB制御量を加算して各輪に対する総制御量を算出する。そして、この加算した値をブレーキ装置10に指令値として出力する。なお、本実施形態において、制動力制御量演算部17は制動力制御量演算部を構成する。
次に、図14を参照して、制動力制御量演算部17において実行されるブレーキ制御量演算について説明する。
初めに、FF制御量演算部18におけるFF制御量の算出について説明する。
まず、操舵角センサ3で検知されたステアリングホイールの操舵角に基づいて、車両の前輪側の旋回内輪(以下、FR旋回内輪と略す)と後輪側の旋回内輪(以下、RR旋回内輪と略す)に対する増圧配分を決定する。次いで、この増圧配分に基づいて、FR旋回内輪に対する増圧係数K1frとRR旋回内輪に対する増圧係数K1rrとを算出する。ここで、操舵による荷重移動が大きい場合には、操舵角に応じて、FR旋回内輪に対する増圧係数K1frが大きくなるように設定してもよい。
そして、FR旋回内輪に対する増圧係数K1frとRR旋回内輪に対する増圧係数K1rrとに基づいて、FR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP1ffの算出と、RR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP2ffの算出とが、並行して実施される。
まず、FR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP1ffの算出を説明する。アシスト量演算部23で演算されたアシスト量Asに増加係数K1frを乗じて、FR旋回内輪に対するアシスト量As1を算出する。
次に、第1増圧量テーブル68を参照し、FR旋回内輪に対するアシスト量As1に応じて、FR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkを算出する。第1増圧量テーブル68において、横軸はアシスト量As1であり、縦軸はブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkである。
本実施形態では、FR旋回内輪に対するアシスト量As1が0以下の場合にはブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkは0である。一方、FR旋回内輪に対するアシスト量AFAs1が0以上ではアシスト量As1が大きくなるにしたがってブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkが増大していく。
次に、第1リミット処理部61において、FR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkが上限値を超えないようにリミット処理を行う。上限値は、第1上限値算出部62によって算出される任意の値であり、この値を超えないよう設定することで液圧増圧量ΔPlffkの急変動を抑制する。
次に、リミット処理されたFR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkに、車速に応じたゲインを乗じて、FR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP1ffを算出する。なお、車速に応じたゲインは、第1ゲインテーブル63に基づいて算出される。この第1ゲインテーブル63において、横軸は車速であり、縦軸はゲインであって、車速が小さい領域ではゲイン=1で一定となる。一方、車速が所定値以上になると車速が大きくなるにしたがってゲインが徐々に小さくなっていき、車速が大きい領域ではゲイン=0で一定となる。
このように車速に応じたゲインを乗じる結果、車速が大きいときには、FR旋回内輪のFF増圧量ΔP1ffは0となる。換言すると、高車速時にはFR旋回内輪のFF増圧量ΔP1ffが無効とされる。これにより、高車速時に旋回アシストブレーキに起因して車両挙動が不安定になるのを防止することができる。本実施形態において、第1ゲインテーブル63は無効化機構を構成する。なお、車速に応じたゲインを乗じるのに替えて、高車速ほど値が低くなる任意の制限値を与え、この制限値をΔPlffが上回らないように設定してもよい。
RR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP2ffの算出は、FR旋回内輪に対するFF増圧量ΔPfr1の算出と同じであるので、簡単に説明する。
アシスト量演算部23で演算されたアシスト量Asに、RR旋回内輪に対する増加係数K1rrを乗じて、RR旋回内輪に対するアシスト量As2を算出する。
次に、第2増圧量テーブル69を参照し、RR旋回内輪に対するアシスト量As2に応じて、RR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP2ffkを算出する。第2増圧量テーブル69は、第1増圧量テーブル68と同じであるので説明を省略する。
次に、第2リミット処理部65において、RR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP2ffkが上限値を超えないようにリミット処理を行う。上限値は、第2上限値算出部66によって算出される。第2上限値算出部66は、第1上限値算出部62と同じである。
次に、リミット処理されたRR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP2ffkに、第2ゲインテーブル67により算出したゲインを乗じて、RR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP2ffを算出する。第2ゲインテーブル67は、第1ゲインテーブル63と同じであるので、説明を省略する。本実施形態において、第2ゲインテーブル67は無効化機構を構成する。
また、FF制御量演算部18は、内輪減圧量算出部70を備えている。内輪減圧量算出部70は、車両の高速走行時や車両に高横Gが加わっている時には制動により車両挙動が不安定となるという前提の下に、予め旋回内輪のブレーキ液圧を制限するためのものである。
内輪減圧量算出部70では、第1減圧率テーブル71を参照して車速に応じた減圧率を算出するとともに、第2減圧率テーブル72を参照して横Gに応じた減圧率を算出し、これら減圧率を乗じることで総減圧率を算出する。
第1減圧率テーブル71において、横軸は車速であり、縦軸は減圧率であって、車速が小さい領域では減圧率=0で一定となり、車速が所定値以上になると車速が大きくなるにしたがって減圧率が徐々に大きくなっていき、車速が大きい領域では減圧率=1で一定となる。
第2減圧率テーブル72において、横軸は横Gであり、縦軸は減圧率であって、横Gが小さい領域では減圧率=0で一定となり、横Gが所定値以上になると横Gが大きくなるにしたがって減圧率が徐々に大きくなっていき、横Gが大きい領域では減圧率=1で一定となる。
これにより、総減圧率は、走行時の車速および横Gに応じて、0から1の間の値に設定されることとなる。
そして、このようにして設定された総減圧率にブレーキ装置10のマスタシリンダ圧を乗じ、さらにマイナス1を乗じて内輪減圧量ΔPdを求める。
次に、FB制御量演算部19におけるFB制御量の算出について説明する。
FB制御量演算部19では、ヨーレート偏差演算部16で演算されたヨーレート偏差Δωfbに基づいて、FR旋回内輪のFB増圧量ΔP1fb、前輪側の旋回外輪(以下、FR旋回外輪と略す)のFB増圧量ΔP3fb、RR旋回内輪のFB増圧量ΔP2fb、および後輪側の旋回外輪(以下、RR旋回外輪と略す)のFB増圧量ΔP4fbを算出する。なお、以降の旋回方向は偏差Δωfbの符号が正で、規範ヨーレートおよび実ヨーレートがともに正の場合を例に説明する。
FR旋回内輪のFB増圧量ΔP1fbは、ヨーレート偏差Δωfbに基づき、第1増圧量テーブル80を参照して算出する。第1増圧量テーブル80において、横軸はヨーレート偏差Δωfbであり、縦軸はFB増圧量ΔP1fbである。本実施形態では、ヨーレート偏差Δωfbが0以下の場合にはFB増圧量ΔP1fbは0であり、ヨーレート偏差Δωfbが0以上ではヨーレート偏差Δωfbが大きくなるにしたがってFB増圧量ΔP1fbが増大していく。
RR旋回内輪のFB増圧量ΔP2fbは、ヨーレート偏差Δωfbに基づき、第2増圧量テーブル81を参照して算出する。第2増圧量テーブル81において、横軸はヨーレート偏差Δωfbであり、縦軸はFB増圧量ΔP2fbである。本実施形態では、ヨーレート偏差Δωfbが0以下の場合にはFB増圧量ΔP2fbは0であり、ヨーレート偏差Δωfbが0以上ではヨーレート偏差Δωfbが大きくなるにしたがってFB増圧量ΔP2fbが増大していく。
FR旋回外輪のFB増圧量ΔP3fbは、ヨーレート偏差Δωfbに基づき、第3増圧量テーブル82を参照して算出する。第3増圧量テーブル82において、横軸はヨーレート偏差Δωfbであり、縦軸はFB増圧量ΔP3fbである。本実施形態では、ヨーレート偏差Δωfbが0以上の場合にはFB増圧量ΔP3fbは0であり、ヨーレート偏差Δωfbが0以下ではヨーレート偏差Δωfbの絶対値が大きくなるにしたがってFB増圧量ΔP3fbが増大していく。
RR旋回外輪のFB増圧量ΔP4fbは、ヨーレート偏差Δωfbに基づき、第4増圧量テーブル83を参照して算出する。第4増圧量テーブル83において、横軸はヨーレート偏差Δωfbであり、縦軸はFB増圧量ΔP4fbである。本実施形態では、ヨーレート偏差Δωfbが0以上の場合にはFB増圧量ΔP4fbは0であり、ヨーレート偏差Δωfbが0以下ではヨーレート偏差Δωfbの絶対値が大きくなるにしたがってFB増圧量ΔP4fbが増大していく。
つまり、FB制御量演算部19では、ヨーレート偏差Δωfbが0以上の場合は、実ヨーレートが横G規範ヨーレートω_lowよりも小さいので、ヨーレートを増大させる方向(換言すれば、ヨーレート偏差Δωfbを打ち消す方向)に、各輪のFB制御量を設定する。具体的には、FR旋回内輪およびRR旋回内輪のブレーキ液圧を増大させる方向にFB増圧量を設定し、FR旋回外輪およびRR旋回外輪のブレーキ液圧を増大させないようにFB増圧量を設定する。
一方、ヨーレート偏差Δωfbが0以下の場合は、実ヨーレートが横G規範ヨーレートω_lowよりも大きいので、ヨーレートを減少させる方向(換言すれば、ヨーレート偏差Δωfbを打ち消す方向)に、各輪のFB制御量を設定する。具体的には、FR旋回外輪およびRR旋回外輪のブレーキ液圧を増大させる方向にFB増圧量を設定し、FR旋回内輪およびRR旋回内輪のブレーキ液圧を増大させないようにFB増圧量を設定する。
そして、制動力制御量演算部17は、FR旋回内輪のFF増圧量ΔP1ffとFR旋回内輪のFB増圧量ΔP1fbと内輪減圧量ΔPdとを加算した値をFR旋回内輪に対する総制御量とし、RR旋回内輪のFF増圧量ΔP2ffとRR旋回内輪のFB増圧量ΔP2fbと内輪減圧量ΔPdとを加算した値をRR旋回内輪に対する総制御量とし、FR旋回外輪のFB増圧量ΔP3fbをFR旋回外輪の総制御量とし、RR旋回外輪のFB増圧量ΔP4fbをRR旋回外輪の総制御量として、これらの値をブレーキ装置10に出力する。
ブレーキ装置10は、入力された各輪の制御量に応じて、各輪のブレーキ圧を制御する。
本実施形態の車両の旋回制御装置によれば、旋回操舵時に、舵角に対して発生するヨーモーメントに加えて、操舵入力(操舵角)に基づき算出されたFF制御量に基づいてブレーキ圧を制御することによりヨーモーメントを発生することができるので、通常操舵時にヨーモーメント量を増加させて車両の旋回をアシストすることができ、車両の回頭性および応答性が向上する。しかも、アシスト量Asは車速が低速ほど高ゲインとなるように決定されるので、低速域ほど車両の回頭性および応答性が向上する。一方、車速が増加するにしたがってアシスト量Asが低減するので、高速時に制動力が過大となって車両の安定性が低下するのを抑制できる。
図15A、15Bは、本実施形態における操舵角と車両に発生するヨーモーメントの関係を模式的に示したグラフである。図15Aは、車両が中速で走行している時の関係を、図15Bは、車両が低速で走行している時の関係を示している。いずれの場合も、制動により発生するヨーモーメントの分だけ車両に発生するヨーモーメントを増大させることができ、中速よりも低速の方がヨーモーメントの増大量が大きい。
本実施形態の車両の旋回制御装置によれば、操舵入力(操舵角)に基づき算出されたFF制御量に、車体挙動(横Gとヨーレート)に基づき算出されたFB制御量を加えた総制御量に基づいてブレーキ圧を制御しているので、旋回アシストブレーキ制御の介入タイミングが早まり、操舵の応答性を向上させつつ、旋回時の車両の安定性および操舵の追従性を向上させることができる。例えば、定常円旋回時などのように、操舵入力後に操舵保持という過程において、制御量の変動が抑制されて路面への追従性が向上する。
なお、本実施形態では、操舵入力(操舵角)に基づき算出されたFF制御量に、車体挙動(横Gとヨーレート)に基づき算出されたFB制御量を加えた総制御量に基づいてブレーキ圧を制御しているが、車体挙動(横Gとヨーレート)に基づき算出されたFB制御量を加えずに、操舵入力(操舵角)に基づき算出されたFF制御量のみに基づいてブレーキ圧を制御し、旋回をアシストすることも可能である。このように構成しても、この発明は成立する。
〔他の実施形態例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、前述した実施例2では、FF制御量とFB制御量を加算して総制御量を算出したが、FF制御量とFB制御量を乗算して総制御量を算出することも可能である。
また、車速センサの検出値に替えて、車輪速センサの検出値に基づき推定される推定車速を用いてもよい。
また、前述した実施例2では、FF制御量演算部18において、高車速時にFR旋回内輪のFF増圧量ΔP1ffおよびRR旋回内輪のFF増圧量ΔP2ffを無効とすることで、高車速時に操舵(旋回)アシストブレーキに起因して車両挙動が不安定になるのを防止したが、操舵速度が極めて大きいときやABS作動時にも旋回内輪のFF増圧量を無効にしてもよい。
本発明の車両の旋回制御装置によれば、車体に発生しているヨーモーメントを安定させる制御と、操舵の応答性を向上させる制御とを両立できる。その結果、低速走行であっても運転者の旋回意志が応答良く反映され、操舵フィールが向上する。また、車両の回頭性が向上して、路面追従性能が向上する。
1(1A,1B,1C) 車両の旋回制御装置
2 ブレーキ制御部
3 操舵角センサ(操舵量検知装置)
4 車速センサ(車速検知装置)
5 横Gセンサ(横加速度検知装置)
6 ヨーレートセンサ(ヨーレート検知装置)
7 アクセル開度センサ(要求トルク検知装置)
8 μ算出部(路面摩擦推定装置)
10 ブレーキ装置(制動制御装置)
11 舵角規範ヨーレート演算部
12 定常規範ヨーレート演算部
13 定常ヨーレート偏差演算部
14 横G規範ヨーレート演算部
15 補正部
17 制動力制御量演算部
18 FF制御量演算部(第2制動力制御量演算部)
19 FB制御量演算部(第1制動力制御量演算部)
23 アシスト量演算部(アシスト量設定装置)
31 配分係数HB1演算部(第1補正規制部)
33 補正係数HS1演算部(第2補正規制部)
34 補正係数HS2演算部(第3補正規制部)
35 補正係数HS3演算部(第4補正規制部)
63 第1ゲインテーブル(無効化機構)
67 第2ゲインテーブル(無効化機構)

Claims (19)

  1. 車両の走行状態に基づいて前記車両の左右車輪に制動力を付与することにより車体にヨーモーメントを発生可能な車両の旋回制御装置であって、
    前記車両の旋回制御装置は、
    車両の操舵量を検知する操舵量検知装置と、
    前記車両の車速を検知または推定する車速検知装置と、
    前記車両の左右方向の加速度を検知する横加速度検知装置と、
    前記車両のヨーレートを検知するヨーレート検知装置と、
    前記横加速度検知装置および前記車速検知装置の検知信号に基づいて第1規範ヨーレートを算出する制御量演算部と、
    前記操舵量検知装置および前記車速検知装置の検知信号に基づいて前記第1規範ヨーレートを増加方向に補正する補正量を決定し、この補正量にしたがって前記第1規範ヨーレートから第2規範ヨーレートを算出する補正部と、
    前記第2規範ヨーレートと前記ヨーレート検知装置により検知された実ヨーレートとのヨーレート偏差を算出し、前記ヨーレート偏差を打ち消す方向への第1の制動力制御量を決定する第1制動力制御量演算部と、
    前記第1制動力制御量演算部により決定された前記第1の制動力制御量に基づいて前記制動力を制御する制動制御装置と、
    を備え、
    前記補正部は、所定の運転状態を判別した際に前記第1規範ヨーレートを補正する際の前記補正量を低減する複数の補正規制部を備えることを特徴とする車両の旋回制御装置。
  2. 前記補正部は、車速が大きいほど前記第2規範ヨーレートが小さくなるように前記補正量を決定する第1補正規制部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両の旋回制御装置。
  3. 前記車両の前後方向への荷重移動量を推定する荷重移動量推定装置を更に備え、
    前記補正部は、前記荷重移動量推定装置が推定した前方への荷重移動量が大きいほど前記第2規範ヨーレートが小さくなるように前記補正量を決定する第2補正規制部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の旋回制御装置。
  4. 前記補正部は、所定のレーンチェンジ条件を満たした場合に前記補正量を低減する第3補正規制部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の旋回制御装置。
  5. 車両の車輪と路面との間の摩擦係数を推定する路面摩擦推定装置を更に備え、
    前記第3補正規制部は、前記路面摩擦推定装置により推定された摩擦係数が大きい場合に、前記補正量を低減することを特徴とする請求項4に記載の車両の旋回制御装置。
  6. 前記第3補正規制部は、前記操舵量検知装置により検知された操舵量が大きい場合に前記レーンチェンジ条件を満たしたと判定して、前記補正量を低減することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両の旋回制御装置。
  7. 前記第3補正規制部は、前記ヨーレート検知装置の検知信号に基づいて算出される実ヨーレートの減少率が大きい場合に前記レーンチェンジ条件を満たしたと判定して、前記補正量を低減することを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の車両の旋回制御装置。
  8. 前記第3補正規制部は、前記横加速度検知装置の検知信号に基づいて算出される横加速度の減少率が大きい場合に前記レーンチェンジ条件を満たしたと判定して、前記補正量を低減することを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の車両の旋回制御装置。
  9. アクセル開度またはアクセルペダル操作量に基づいて要求トルクの大きさを検知する要求トルク検知装置を更に備え、
    前記補正部は、前記要求トルク検知装置の検知信号が所定値よりも小さいときに、車速が小さいほど前記第2規範ヨーレートが大きくなるように前記補正量を決定する第4補正規制部を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両の旋回制御装置。
  10. アクセル開度またはアクセルペダル操作量に基づいて要求トルクの大きさを検知する要求トルク検知装置を更に備え、
    前記補正部は、アクセル開度を検知するアクセル開度検知装置によりアクセル開度が全閉近傍であることが検知された場合に前記補正量をさらに増加させる第4補正規制部を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両の旋回制御装置。
  11. 前記第4補正規制部は、車速が大きいほど、前記補正量を増加させる調整量を低減することを特徴とする請求項10に記載の車両の旋回制御装置。
  12. 前記第4補正規制部は、車速が所定速度を越えたときには、前記補正量を減少方向へ調整することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の車両の旋回制御装置。
  13. 前記第4補正規制部は、前記アクセル開度の全閉方向への戻し速度が大きいほど、前記補正量を増加させる調整量を大きくすることを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の車両の旋回制御装置。
  14. 前記補正部は、前記操舵量検知装置の検知信号に基づいて算出される転舵速度または転舵量が大きいほど前記第2規範ヨーレートが大きくなるように補正量を決定することを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の車両の旋回制御装置。
  15. 前記操舵量検知装置および前記車速検知装置の検出信号に基づいて第2の制動力制御量を決定する第2制動力制御量演算部を更に備え、
    前記制動制御装置は、前記第1制動力制御量演算部が決定した前記第1の制動力制御量と前記第2制動力制御量演算部が決定した前記第2の制動力制御量とを加算または乗算することにより得られる総制動力制御量に基づいて前記制動力を制御することを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の車両の旋回制御装置。
  16. 所定の運転状態のときに前記第2制動力制御量演算部が決定した前記第2の制動力制御量を無効にする無効化機構を更に備えることを特徴とする請求項15に記載の車両の旋回制御装置。
  17. 前記第2制動力制御量演算部は、前記操舵量検知装置の検出信号に基づいて車速が低速であるほど高ゲインとなるように前記第2の制動力制御量を決定するように構成されていることを特徴とする請求項15または請求項16に記載の車両の旋回制御装置。
  18. 車両の走行状態に基づいて左右車輪に制動力を付与することにより車体にヨーモーメントを発生可能な車両の旋回制御装置であって、
    前記車両の旋回制御装置は、
    前記車両の操舵量を検知する操舵量検知装置と、
    前記車両の車速を検知または推定する車速検知装置と、
    前記操舵量検知装置の検知信号に基づいて前記操舵量が大きいほど高ゲインとなる旋回アシスト量を決定するアシスト量設定装置と、
    前記アシスト量設定装置により決定された前記旋回アシスト量に基づいて制動力制御量を決定する制動力制御量演算部と、
    前記制動力制御量演算部により決定された制動力制御量に基づいて前記制動力を制御する制動制御装置と、
    を備えることを特徴とする車両の旋回制御装置。
  19. 前記アシスト量設定装置は、前記車速検知装置の検知信号に基づいて、前記車速が低速であるほど高ゲインとなる前記旋回アシスト量を決定することを特徴とする請求項18に記載の車両の旋回制御装置。
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