JPWO2011092844A1 - 樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラー及び該フィラーを含有してなる樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、携帯電話やノートパソコン等の電子機器、モバイル機器に使用されているリチウム二次電池は、高エネルギー密度を有していることから、1990年代初頭に実用化されて以来、高い生産量と使用量の伸び率を示している。また、近時、それら民生用の主電源以外に、鉛蓄バッテリーの代替として車載化への検討も行われており、更なる性能向上と安全性が求められている。従って、多孔質樹脂フィルムからなるセパレータの要求物性も、イオン透過性や、強度など、より高い性能と安全性が求められている。
例えば、熱可塑性樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物からなるフィルム状物を、予熱部、延伸部及び熱処理部を有する延伸装置を用いてTD方向に延伸する多孔性フィルムの製造方法が提案されている(特許文献1)。
例えば、ポリオレフィン樹脂と無機充填剤とからなる多孔性樹脂シートと支持体との積層体からなる反射体が提案されている(特許文献2)。
尚、本発明において、表面処理とは被覆処理を意味する。
飽和脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられ、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、両者とも炭素数10〜18のものが一般的である。
脂環族カルボン酸としては、シクロペンタン環やシクロヘキサン環の末端にカルボキシル基を持つナフテン酸等が挙げられ、樹脂酸としてアビエチン酸、ピマル酸、ネオアビエチン酸等が挙げられる。
使用量が0.1 重量%未満では充分な分散効果が得られ難く、一方、15重量%を越えると、多孔質膜のブリードや強度、耐熱性等の低下が生じやすい。従って、好ましくは0.5〜4重量%、さらに好ましくは1〜3重量%である。
多価カルボン酸としては、ポリアクリル酸及びその塩が例示され、共重合物としては、アクリル酸・マレイン酸の共重合物(重合比100 :80等)及びその塩が例示され、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸等で代表される水溶性ポリカルボン酸及びそれらの塩が例示される。
ホスホン酸系や多価カルボン酸の塩としては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩が挙げられる。
中でもニトリロトリスメチレンスルホン酸又はその塩は、樹脂混練時のトルクアップやヤケなどのトラブルが起こりにくく、ハンドリング性の面から好適に用いることができる。
使用量が0.001重量%未満では充分な分散効果が得られ難く、一方、5重量%を越えて添加しても効果の更なる向上が認められ難い。
また、原料である石灰石においては不純物に留意して選択することが好ましく、焼成時の燃料は一般にコークスや重油、軽油、灯油等が使用されているが、コスト的に許される限り、不純物の観点から焼成には軽油や灯油で行うことがより好ましい。
また、石灰乳や反応で得られた炭酸カルシウム粒子は、それが水スラリー形態の時点でデカンテーションといった重力や遠心力、浮力選鉱等を利用した分級、ならびに篩・フィルター等で不純物および粗大粒子を除去することが好ましい。
さらに乾燥・解砕後に得られた炭酸カルシウム粉体または表面処理炭酸カルシウム粉体に対しても、空気分級等の分級操作を行い、乾燥によって生じた凝集体を除去することが好ましい。
なお、空気分級をはじめ、乾燥工程で使用する空気や工程中での空気輸送、保管など、大気中のホコリや塵(カーボンや微細金属)も、絶縁性が要求される用途に使用される場合は、これらの影響を与える要因のため、各種フィルター等による対策を施すことも効果的である。
(a)0.1≦D50≦1.0(μm)
(b)Da≦5(μm)
(c)3≦Sw≦60(m2 /g )
(d)0.05≦As≦0.3(mg/m2 )
但し、
D50:レーザー回折式(Malvern 社製MASTERSIZER2000 )における粒度分布において、大きな粒子側から起算した重量累計50%平均粒子径(μm)、
Da :レーザー回折式(Malvern 社製MASTERSIZER2000 )における粒度分布における最大粒子径(μm)、
Sw :窒素吸着法によるBET比表面積(m2 /g)、
As :次式により算出される単位比表面積当たりの表面処理率:
{200℃〜500℃の表面処理炭酸カルシウムフィラー1g当たりの熱減量(mg/g)}/Sw(g/m2 )。
(a)式は、MASTERSIZER2000 で測定した平均粒子径(D50)で、0.1〜1.0μmであることが好ましい。平均粒子径(D50)を、0.1μm未満にすることは技術上可能であるが、コストの点で好ましくなく、1.0μmを超えると、一次粒子の凝集体として構成される二次粒子の凝集力が強くなり、樹脂中で一部の粒子が二次粒子のまま存在することが多くなり、それらは例えば光反射用の多孔質フィルムや電池セパレータフィルム中で、所望の大きさを超えるボイド生成の原因となり、反射光のムラや低下、セパレータフィルムの強度低下が発生し易くなるので好ましくない。
電池セパレータは、一般的に空孔率が50%前後と高く、より高圧で、より速い流速でイオンがセパレータを行き来し合うため、樹脂強度もより高強度が必要であることから、より1次粒子に近い分散であることが望ましい。そのため、より好ましくは0.1〜0.8μm、更に好ましくは0.1〜0.5μmである。
<測定方法>
MASTERSIZER2000 レーザー回折式粒度分布計)を用い、測定に用いる媒体としてメタノールを用いる。測定する前に、本発明の樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラーの懸濁化を一定にするため、前処理として超音波分散機(日本精機製作所製)を使用し、400μAで6分間の一定条件で予備分散する。
前記した如く、表面処理剤量は炭酸カルシウム粒子の比表面積や表面処理剤の種類等によって異なるため、表面処理率(As)も一概に規定できないが、通常、0.05〜0.3mg/m2 であることが好ましい。表面処理率(As)が0.05mg/m2 未満では十分な分散効果が得られない場合があり、一方、0.3mg/m2 超えても、更なる効果向上が得られにくいばかりか、処理剤過多による表面処理剤成分あるいは樹脂成分への遊離の原因になる場合がある。従って、より好ましくは、0.1〜0.3mg/m2 、更に好ましくは0.15〜0.25mg/m2 である。
<測定方法>
熱天秤(リガク社製TG−8110型)にて、直径10mmで0.5mlの白金製容器に表面処理炭酸カルシウムフィラー100mgを入れ、15℃/分の昇温速度で昇温して200℃から500℃までの熱減量を測定し、表面処理炭酸カルシウムフィラー1g当りの熱減量率(mg/g)を求め、この値をBET比表面積で除して求める。
本発明で使用される樹脂は、フィルム用樹脂であれば特に限定されないが、ポリエステル系樹脂(PET、PBT、PEN、PC、PLA)、ポリエチレン系樹脂(PE、HDPE、LDPE、EVA、EVOH、EEA、UHMW−PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン−エチレン共重合体、エチレン又はプロピレンと他のモノマーの共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂(PVC、PVDC、PVA)、スチレン系樹脂(PS、MS、AS、ABS)、ポリエーテル系樹脂(POM、PPE、PSF、PES、PPS、PEI)、アクリル系樹脂(PMMA)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド系樹脂(PA6、PA6−6、PA6T、PA9T、アラミド)、生分解性樹脂、熱硬化性系樹脂(フェノール、メラミン、エポキシ)等を例示することができ、これらは単独で又は必要に応じ2種類以上組み合わせて使用される。
本発明の樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラーとこれらの樹脂との配合割合は特に限定されず、樹脂の種類や用途、所望する物性やコストによって大きく異なり、それらに応じて適宜決定すればよいが、例えば、電池用セパレータフィルムに使用される場合は、通常、樹脂100 重量部に対して100 〜380 重量部であり、好ましくは130 〜330 重量部程度である。
本発明の樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラーとこれらの樹脂との配合割合は特に限定されず、樹脂の種類や用途、所望する物性やコストによって大きく異なり、それらに応じて適宜決定すればよいが、通常、樹脂100 重量部に対して60〜150 重量部であり、好ましくは80〜120 重量部程度である。
樹脂の形状にはペレット状、及び任意の粒径に調整されたパウダー(グラニュー)状のいずれでもよいが、粒子の分散性においてはパウダー状の樹脂を用いた方が好ましい。
上記樹脂組成物は混合機で混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で加熱混練し、一旦マスターバッチと称される本発明の樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラーや各種添加剤を含有するペレットを作製し、Tダイ押出、あるいはインフレーション成形等の公知の成形機を用いて、溶融、製膜される。その後、必要に応じて一軸または二軸で延伸して均一な微孔径を有するフィルム製品としてもよい。
また、上記フィルムに印刷適性を付与する目的で、フィルム表面にプラズマ放電等の表面処理を施しインク受理層をコートさせたり、フィルムの少なくとも片面に保護層として、耐熱樹脂(芳香族パラアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂などの有機溶媒液を塗工液として塗っても何ら差し支えない。
また酸処理して本発明の樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラーを溶解させて、微細な孔を有する多孔質フィルム製品としても差し支えない。
尚、以下の記載において、特に断らないかぎり%は重量%、部は重量部を意味する。
灯油を熱源に灰色緻密質石灰石をコマ炉式キルンで焼成して得られた生石灰を溶解して消石灰スラリーとし、炭酸ガスと反応させ炭酸カルシウムを合成した。該炭酸カルシウム水スラリーを篩で異物や粗大粒子の除去を行った後に、該炭酸カルシウムスラリーをオストワルド熟成により粒子成長を行わせ、BET比表面積13m2 /g の炭酸カルシウムが10%含有する水スラリーを得た。
次に、界面活性剤(A) としてラウリン酸石鹸(商品名:LK−2;日本油脂社製)と、アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(以下、キレート化合物と記す)(B)としてホスホン酸(商品名:Dequest2000 ;ThermPhos 社製)を、炭酸カルシウム固形分に対して各々2.5 %と0.5 %を表面処理し、表面処理炭酸カルシウムスラリーを得た。
その後、脱水・乾燥・解砕し、更に得られた乾粉を精密空気分級機(ターボクラシファイヤ)で分級を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
界面活性剤(A)としてステアリン酸石鹸(商品名:SK−1;日本油脂社製)を3.8 %に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
キレート化合物(B)としてホスホン酸ナトリウム(商品名:Dequest2006 ;ThermPhos 社製)に変更した以外は実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
界面活性剤(A)として不飽和脂肪酸石鹸(商品名:マルセル石鹸;日本油脂社製)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
キレート化合物(B)としてポリカルボン酸(商品名:AKM−0531;日本油脂社)に変更した以外は実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
実施例1と同様の操作で、オストワルド熟成により、BET比表面積18m2 /gの炭酸カルシウムが10%含有する水スラリーを得た。
次に、界面活性剤(A) としてステアリン酸石鹸(商品名:SK−1;日本油脂社製)と、キレート化合物(B)としてホスホン酸系(商品名:Dequest2000 ;ThermPhos 社製)を、炭酸カルシウム固形分に対して各々4.5 %と3.2 %を表面処理し、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
実施例1と同様の操作で、オストワルド熟成により、BET比表面積22m2 /gの炭酸カルシウムが10%含有する水スラリーを得た。
次に、界面活性剤(A)として不飽和脂肪酸石鹸(商品名:マルセル石鹸;日本油脂社製)と、キレート化合物(B)としてホスホン酸系(商品名:Dequest2000 ;ThermPhos 社製)を、炭酸カルシウム固形分に対して各々6.0 %と1.5 %を表面処理し、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
消石灰スラリーと炭酸ガスを反応させ炭酸カルシウムを合成するときに、水酸化カルシウムに対して粒子成長抑制剤であるクエン酸を1.0%添加させることと、界面活性剤(A)とキレート化合物(B)の添加量を、それぞれ10%と2.0 %に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、BET比表面積35m2 /gの炭酸カルシウムスラリーを得、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
粒子成長抑制剤であるクエン酸を3.0 %添加することと、界面活性剤(A)とキレート化合物(B)の添加量を、それぞれ18.5%と2.5 %に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、BET比表面積57m2 /gの炭酸カルシウムスラリーを得、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
キレート化合物(B)のホスホン酸(商品名:Dequest2000 ;ThermPhos 社製)の添加量を0.1 %に変更する以外は、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
界面活性剤(A) として下記に示すような組成で別途作製した混合処理剤A1を炭酸カルシウムに対して2.5 %と、キレート化合物(B)として縮合リン酸系(商品名:ヘキサメタリン酸ナトリウム;ラサ工業社製)を、炭酸カルシウム固形分に対して0.5 %を表面処理し、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表2に示す。
ステアリン酸カリウム 60%
オレイン酸ナトリウム 8%
パルチミン酸ナトリウム 20%
ミリスチン酸ナトリウム 2%
ラウリン酸ナトリウム 10%
キレート化合物(B)としてポリ塩化アルミニウムに変更した以外は比較例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表2に示す。
WO 2004/035476号公報の記載の実施例1の如く、11.8% の水酸化カルシウム−水懸濁液10kgに、クエン酸(キレート剤:Caイオンとのpka3.16 )を理論上反応して得られる炭酸カルシウム(1.492 kg)の5%添加し、強力に攪拌しつつ100%炭酸ガスを12L/min.で吹き込んで炭酸化を行い、pHが7.8 になった時点で反応を終了した。尚、炭酸化反応中に系内の粘度が最大に達した時点で2kgの水を加えた。
得られた炭酸カルシウムの懸濁液をスプレードライヤーで乾燥し、衝撃式ピンミルであるコロフレックス(アルパイン社製)で解砕後にヘンシェルミキサーを用いて炭酸カルシウムに対してステアリン酸を9%添加し115 ℃で表面処理を行い、解砕して表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表2に示す。
実施例1と同様にBET比表面積13m2 /gの炭酸カルシウムスラリーを得、脱水・乾燥・粉砕して無処理の炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた無処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表2に示す。
界面活性剤(A) としてラウリン酸石鹸(商品名:LK−2;日本油脂社製)を2.5 %を表面処理し、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表2に示す。
実施例1〜10及び比較例1〜5で得られた炭酸カルシウムフィラーを40℃×80%RHと23℃×50%RHの条件下に交互に12時間ずつ放置することによる貯蔵を1サイクルとし、それを7サイクル(1週間)行ったあと、Malvern 社製MASTERSIZER 2000レーザー回折式粒度分布計粒度分布測定を行い、炭酸カルシウムフィラーの粉体物性(平均粒子径D50、1μm以上の粒子の量、最大粒子径)を測定した。得られた炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1、表2に示す。
比較例1〜3、5で得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーは、調製直後と、耐候性・経時安定性試験後、即ち、梅雨時期を想定した温度・湿度を変化させた貯蔵を繰り返した後とでは、粉体物性(平均粒径D50、粗大粒子の量、最大粒子径)の変化率が大きく、凝集等の物性劣化が認められた。
これに対し、実施例1〜10の炭酸カルシウム粉体は、耐候性・経時安定性試験の前後で、物性変化は殆ど認められなかった。
ポロエチレン樹脂(三井化学(株)製ハイゼックスミリオン340M) 100部とポリエチレンワックス( 三井化学(株)製ハイワックス110 P) 50部、実施例1〜10及び比較例1〜5で得られた炭酸カルシウムフィラーで耐候性・経時安定性試験後のものを300部の割合でヘンシェルミキサーに仕込み、3分間混合して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を東洋精機(株)製二軸混練機2D25Wで溶融混練を行いペレットを得た。次に、東洋精機(株)製二軸混練機2D25W にTダイを装着し、得られたペレットを溶融混練、製膜し厚さ100μmのフィルムを得た。
得られたフィルムをテンターオーブン中で110 ℃の温度下で長さ方向に約5倍延伸し、多孔質フィルムを得た。
得られた多孔質フィルムについて下記の方法で各種物性を評価した。結果を表3、表4に示す。
JIS-P8117 に準じ、多孔質フィルムのガーレ値を東洋精機(株)製B型デンソメーターで測定した。ガーレ通気度の値が大きい程、気体やイオンの透過性が高く好ましい。
ガーレ通気度は、一般的に多孔質フィルムの細孔径に比例するが、ガーレ値が高過ぎる場合、セパレータが何らかの表面ダメージを受けている可能性があり、一方、ガーレ値が低過ぎる場合は、ピンホール若しくは膜圧が薄くなっている可能性があり、何れも好ましくない。従って、ガーレ値の範囲は、通常50〜500(sec./100ml) であり、好ましくは100 〜300(sec./100ml) である。上記範囲外の場合は、何らかの問題がある可能性がある。
直径12mmのワッシャーに固定した多孔質フィルムに、直径1mm、針先曲率半径0.5 mmの金属製の針を200mm/分の速さで突き刺した際に、孔が開口する最大荷重を測定し、突き刺し強度値(gf)を得た。
正極活物質(LiMn2O4 )と導電剤(アセチレンブラック)を混合したものを正極とし、金属LiをNiメッシュに厚着したものを負極として、正極と負極の間に多孔質フィルムを挟み、定電流充放電試験機(ナガノ社製BTS2004H) にて測定を行った。なお、電解液は、LiClO4電解液(PC/DMC 有機溶媒) を用い、定電流充放電の条件は、0.9mA 、3.5 〜4.3Vの間で行い、測定サイクル数1000とした。
測定サイクル数1 と1000の充電容量と放電容量から、下記の基準により充放電のサイクル特性を評価した。
5点:充放電量や容量減少において、極めて安定である。
4点:充放電量や容量減少において、安定である。
3点:充放電量や容量減少において、許容範囲である。
2点:充放電量や容量減少において、問題箇所がる。
1点:充放電量や容量減少において、不良である。
多孔質フィルムの膜厚を膜厚計を用いて測定した。膜厚が小さいとイオンの透過性に有利であるが、両極間の絶縁性や突き刺し強度が弱くなるため、良好なイオンの透過性を維持しつつ膜厚が大きいものが好ましい。
多孔質フィルム中の未溶融のポリマーゲルや、凝集フィラー、異物などの0.5mm2以上の欠点を目視によりカウントした。50m2 分を測定し、1m2 当たりの平均値を欠点数とした。
ポリプロピレン樹脂(住友化学(株)社製FS2011DG2 、MI=2.0 g/10min)100部、実施例1〜10及び比較例1〜5で得られた炭酸カルシウムフィラーで耐候性・経時安定性試験後のもの110部、ステアリン酸カルシウム1部、ヒンダードアミンン系光安定剤1部をヘンシェルミキサーに仕込み5分間混合して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を東洋精機(株)製二軸混練機2D25W で溶融混練を行い、ペレットを得た。次に、東洋精機(株)製二軸混練機2D25W にTダイを装着し、得られたペレットを溶融混練、製膜し未延伸シートを得た。得られた未延伸シートをテンターオーブン中で140℃の温度下で約7倍に延伸し、厚さ180μmの多孔質延伸シートを作製した。
得られた多孔質延伸シートにポリエステル系ホットメルト型接着剤をグラビアコーターで7μm の厚さで塗工した。この接着剤を塗工した多孔質シートに板状支持体である厚さ200 μm のアルミニウムシートを温度75℃でラミネートして光反射体を得た。
得られた光反射体について下記の耐久性試験を行い、耐久性試験前後の拡散反射率、輝度ムラ、色調変化を下記の方法で評価・測定した。評価結果を表5、表6に示す。
拡散反射率の測定は、紫外可視分光光度計(UV3101PC,島津製作所社製) を用い、
400〜1000nmの波長領域を測定し、550nmの拡散反射率を代表値とした。
拡散反射率が高い程、光反射体の色相が良好と言える。尚、変化率は下記の式で求められ、小さい方が良好である。
変化率(%)=(耐久性試験前の拡散反射率−耐久性試験後の拡散反射率)/耐久性試験前の拡散反射率
耐久性試験はJIS K7350-2 に準拠し、キセノンウェザーメーター(SX75,スガ試験機社製)を用い、波長=300〜400nm、放射照度=180W/m2 、ブラックパネル温度=83℃、湿度=50%RHの条件で、144hr照射した。
輝度ムラの評価は、図1に示す如く、24インチタイプの直下型方式の面光源表示装置を用いた。
上記装置に光反射体1を面光源表示装置の反射体として成形加工したものを用い、内部に冷陰極ランプ2、正面にLCDセル3を設置する。これを点灯、照射して正面方向の輝度ムラが発生しているか否かを下記の基準で目視評価した。
○ 均一な輝度でムラがない。
△ 輝度に少しムラがある。
× ムラがある。
連続点灯時の変色(黄変)評価は、ソーラーシミュレーターYSS−150A(山下電装社製)を用いて、光反射体の表面から10cm離れた位置に設置したキセノンランプを照射強度500mw/cm2 で24時間点灯照射した後の光反射体の色調変化を測色計(S&Mカラーコンピュータ、スガ試験機(株)社製)を用いて、上記耐久性試験の前後に測定した各指数値から色差ΔEH値を読み取り(JIS-Z-8730)、下記の基準で評価した。
◎ 色調に全く変化が無く極めて良好である(ΔEH<0.3 )。
○ 色調に変化が無く良好である(0.3 ≦ΔEH<1 )。
× 色調に変化があり不良である(ΔEH≧1 )。
例えば、携帯電話やノートパソコン等の電子機器、モバイル機器に使用されているリチウム二次電池は、高エネルギー密度を有していることから、1990年代初頭に実用化されて以来、高い生産量と使用量の伸び率を示している。また、近時、それら民生用の主電源以外に、鉛蓄バッテリーの代替として車載化への検討も行われており、更なる性能向上と安全性が求められている。従って、多孔質樹脂フィルムからなるセパレータの要求物性も、イオン透過性や、強度など、より高い性能と安全性が求められている。
例えば、熱可塑性樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物からなるフィルム状物を、予熱部、延伸部及び熱処理部を有する延伸装置を用いてTD方向に延伸する多孔性フィルムの製造方法が提案されている(特許文献1)。
例えば、ポリオレフィン樹脂と無機充填剤とからなる多孔性樹脂シートと支持体との積層体からなる反射体が提案されている(特許文献2)。
尚、本発明において、表面処理とは被覆処理を意味する。
飽和脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられ、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、両者とも炭素数10〜18のものが一般的である。
脂環族カルボン酸としては、シクロペンタン環やシクロヘキサン環の末端にカルボキシル基を持つナフテン酸等が挙げられ、樹脂酸としてアビエチン酸、ピマル酸、ネオアビエチン酸等が挙げられる。
使用量が0.1 重量%未満では充分な分散効果が得られ難く、一方、15重量%を越えると、多孔質膜のブリードや強度、耐熱性等の低下が生じやすい。従って、好ましくは0.5〜4重量%、さらに好ましくは1〜3重量%である。
ホスホン酸の塩としては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩が挙げられる。
中でもニトリロトリスメチレンスルホン酸又はその塩は、樹脂混練時のトルクアップやヤケなどのトラブルが起こりにくく、ハンドリング性の面から好適に用いることができる。
使用量が0.001重量%未満では充分な分散効果が得られ難く、一方、5重量%を越えて添加しても効果の更なる向上が認められ難い。
また、原料である石灰石においては不純物に留意して選択することが好ましく、焼成時の燃料は一般にコークスや重油、軽油、灯油等が使用されているが、コスト的に許される限り、不純物の観点から焼成には軽油や灯油で行うことがより好ましい。
また、石灰乳や反応で得られた炭酸カルシウム粒子は、それが水スラリー形態の時点でデカンテーションといった重力や遠心力、浮力選鉱等を利用した分級、ならびに篩・フィルター等で不純物および粗大粒子を除去することが好ましい。
さらに乾燥・解砕後に得られた炭酸カルシウム粉体または表面処理炭酸カルシウム粉体に対しても、空気分級等の分級操作を行い、乾燥によって生じた凝集体を除去することが好ましい。
なお、空気分級をはじめ、乾燥工程で使用する空気や工程中での空気輸送、保管など、大気中のホコリや塵(カーボンや微細金属)も、絶縁性が要求される用途に使用される場合は、これらの影響を与える要因のため、各種フィルター等による対策を施すことも効果的である。
(a)0.1≦D50≦1.0(μm)
(b)Da≦5(μm)
(c)3≦Sw≦60(m2 /g )
(d)0.05≦As≦0.3(mg/m2 )
但し、
D50:レーザー回折式(Malvern 社製MASTERSIZER2000 )における粒度分布において、大きな粒子側から起算した重量累計50%平均粒子径(μm)、
Da :レーザー回折式(Malvern 社製MASTERSIZER2000 )における粒度分布における最大粒子径(μm)、
Sw :窒素吸着法によるBET比表面積(m2 /g)、
As :次式により算出される単位比表面積当たりの表面処理率:
{200℃〜500℃の表面処理炭酸カルシウムフィラー1g当たりの熱減量(mg/g)}/Sw(g/m2 )。
(a)式は、MASTERSIZER2000 で測定した平均粒子径(D50)で、0.1〜1.0μmであることが好ましい。平均粒子径(D50)を、0.1μm未満にすることは技術上可能であるが、コストの点で好ましくなく、1.0μmを超えると、一次粒子の凝集体として構成される二次粒子の凝集力が強くなり、樹脂中で一部の粒子が二次粒子のまま存在することが多くなり、それらは例えば光反射用の多孔質フィルムや電池セパレータフィルム中で、所望の大きさを超えるボイド生成の原因となり、反射光のムラや低下、セパレータフィルムの強度低下が発生し易くなるので好ましくない。
電池セパレータは、一般的に空孔率が50%前後と高く、より高圧で、より速い流速でイオンがセパレータを行き来し合うため、樹脂強度もより高強度が必要であることから、より1次粒子に近い分散であることが望ましい。そのため、より好ましくは0.1〜0.8μm、更に好ましくは0.1〜0.5μmである。
<測定方法>
MASTERSIZER2000 レーザー回折式粒度分布計)を用い、測定に用いる媒体としてメタノールを用いる。測定する前に、本発明の樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラーの懸濁化を一定にするため、前処理として超音波分散機(日本精機製作所製)を使用し、400μAで6分間の一定条件で予備分散する。
前記した如く、表面処理剤量は炭酸カルシウム粒子の比表面積や表面処理剤の種類等によって異なるため、表面処理率(As)も一概に規定できないが、通常、0.05〜0.3mg/m2 であることが好ましい。表面処理率(As)が0.05mg/m2 未満では十分な分散効果が得られない場合があり、一方、0.3mg/m2 超えても、更なる効果向上が得られにくいばかりか、処理剤過多による表面処理剤成分あるいは樹脂成分への遊離の原因になる場合がある。従って、より好ましくは、0.1〜0.3mg/m2 、更に好ましくは0.15〜0.25mg/m2 である。
<測定方法>
熱天秤(リガク社製TG−8110型)にて、直径10mmで0.5mlの白金製容器に表面処理炭酸カルシウムフィラー100mgを入れ、15℃/分の昇温速度で昇温して200℃から500℃までの熱減量を測定し、表面処理炭酸カルシウムフィラー1g当りの熱減量率(mg/g)を求め、この値をBET比表面積で除して求める。
本発明で使用される樹脂は、フィルム用樹脂であれば特に限定されないが、ポリエステル系樹脂(PET、PBT、PEN、PC、PLA)、ポリエチレン系樹脂(PE、HDPE、LDPE、EVA、EVOH、EEA、UHMW−PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン−エチレン共重合体、エチレン又はプロピレンと他のモノマーの共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂(PVC、PVDC、PVA)、スチレン系樹脂(PS、MS、AS、ABS)、ポリエーテル系樹脂(POM、PPE、PSF、PES、PPS、PEI)、アクリル系樹脂(PMMA)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド系樹脂(PA6、PA6−6、PA6T、PA9T、アラミド)、生分解性樹脂、熱硬化性系樹脂(フェノール、メラミン、エポキシ)等を例示することができ、これらは単独で又は必要に応じ2種類以上組み合わせて使用される。
本発明の樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラーとこれらの樹脂との配合割合は特に限定されず、樹脂の種類や用途、所望する物性やコストによって大きく異なり、それらに応じて適宜決定すればよいが、例えば、電池用セパレータフィルムに使用される場合は、通常、樹脂100 重量部に対して100 〜380 重量部であり、好ましくは130 〜330 重量部程度である。
本発明の樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラーとこれらの樹脂との配合割合は特に限定されず、樹脂の種類や用途、所望する物性やコストによって大きく異なり、それらに応じて適宜決定すればよいが、通常、樹脂100 重量部に対して60〜150 重量部であり、好ましくは80〜120 重量部程度である。
樹脂の形状にはペレット状、及び任意の粒径に調整されたパウダー(グラニュー)状のいずれでもよいが、粒子の分散性においてはパウダー状の樹脂を用いた方が好ましい。
上記樹脂組成物は混合機で混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で加熱混練し、一旦マスターバッチと称される本発明の樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラーや各種添加剤を含有するペレットを作製し、Tダイ押出、あるいはインフレーション成形等の公知の成形機を用いて、溶融、製膜される。その後、必要に応じて一軸または二軸で延伸して均一な微孔径を有するフィルム製品としてもよい。
また、上記フィルムに印刷適性を付与する目的で、フィルム表面にプラズマ放電等の表面処理を施しインク受理層をコートさせたり、フィルムの少なくとも片面に保護層として、耐熱樹脂(芳香族パラアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂などの有機溶媒液を塗工液として塗っても何ら差し支えない。
また酸処理して本発明の樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラーを溶解させて、微細な孔を有する多孔質フィルム製品としても差し支えない。
尚、以下の記載において、特に断らないかぎり%は重量%、部は重量部を意味する。
灯油を熱源に灰色緻密質石灰石をコマ炉式キルンで焼成して得られた生石灰を溶解して消石灰スラリーとし、炭酸ガスと反応させ炭酸カルシウムを合成した。該炭酸カルシウム水スラリーを篩で異物や粗大粒子の除去を行った後に、該炭酸カルシウムスラリーをオストワルド熟成により粒子成長を行わせ、BET比表面積13m2 /g の炭酸カルシウムが10%含有する水スラリーを得た。
次に、界面活性剤(A) としてラウリン酸石鹸(商品名:LK−2;日本油脂社製)と、アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(以下、キレート化合物と記す)(B)としてホスホン酸(商品名:Dequest2000 ;ThermPhos 社製)を、炭酸カルシウム固形分に対して各々2.5 %と0.5 %を表面処理し、表面処理炭酸カルシウムスラリーを得た。
その後、脱水・乾燥・解砕し、更に得られた乾粉を精密空気分級機(ターボクラシファイヤ)で分級を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
界面活性剤(A)としてステアリン酸石鹸(商品名:SK−1;日本油脂社製)を3.8 %に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
キレート化合物(B)としてホスホン酸ナトリウム(商品名:Dequest2006 ;ThermPhos 社製)に変更した以外は実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
界面活性剤(A)として不飽和脂肪酸石鹸(商品名:マルセル石鹸;日本油脂社製)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
実施例1と同様の操作で、オストワルド熟成により、BET比表面積18m2 /gの炭酸カルシウムが10%含有する水スラリーを得た。
次に、界面活性剤(A) としてステアリン酸石鹸(商品名:SK−1;日本油脂社製)と、キレート化合物(B)としてホスホン酸系(商品名:Dequest2000 ;ThermPhos 社製)を、炭酸カルシウム固形分に対して各々4.5 %と3.2 %を表面処理し、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
実施例1と同様の操作で、オストワルド熟成により、BET比表面積22m2 /gの炭酸カルシウムが10%含有する水スラリーを得た。
次に、界面活性剤(A)として不飽和脂肪酸石鹸(商品名:マルセル石鹸;日本油脂社製)と、キレート化合物(B)としてホスホン酸系(商品名:Dequest2000 ;ThermPhos 社製)を、炭酸カルシウム固形分に対して各々6.0 %と1.5 %を表面処理し、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
消石灰スラリーと炭酸ガスを反応させ炭酸カルシウムを合成するときに、水酸化カルシウムに対して粒子成長抑制剤であるクエン酸を1.0%添加させることと、界面活性剤(A)とキレート化合物(B)の添加量を、それぞれ10%と2.0 %に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、BET比表面積35m2 /gの炭酸カルシウムスラリーを得、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
粒子成長抑制剤であるクエン酸を3.0 %添加することと、界面活性剤(A)とキレート化合物(B)の添加量を、それぞれ18.5%と2.5 %に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、BET比表面積57m2 /gの炭酸カルシウムスラリーを得、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
キレート化合物(B)のホスホン酸(商品名:Dequest2000 ;ThermPhos 社製)の添加量を0.1 %に変更する以外は、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1に示す。
界面活性剤(A) として下記に示すような組成で別途作製した混合処理剤A1を炭酸カルシウムに対して2.5 %と、キレート化合物(B)として縮合リン酸系(商品名:ヘキサメタリン酸ナトリウム;ラサ工業社製)を、炭酸カルシウム固形分に対して0.5 %を表面処理し、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表2に示す。
ステアリン酸カリウム 60%
オレイン酸ナトリウム 8%
パルチミン酸ナトリウム 20%
ミリスチン酸ナトリウム 2%
ラウリン酸ナトリウム 10%
キレート化合物(B)としてポリ塩化アルミニウムに変更した以外は比較例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表2に示す。
WO 2004/035476号公報の記載の実施例1の如く、11.8% の水酸化カルシウム−水懸濁液10kgに、クエン酸(キレート剤:Caイオンとのpka3.16 )を理論上反応して得られる炭酸カルシウム(1.492 kg)の5%添加し、強力に攪拌しつつ100%炭酸ガスを12L/min.で吹き込んで炭酸化を行い、pHが7.8 になった時点で反応を終了した。尚、炭酸化反応中に系内の粘度が最大に達した時点で2kgの水を加えた。
得られた炭酸カルシウムの懸濁液をスプレードライヤーで乾燥し、衝撃式ピンミルであるコロフレックス(アルパイン社製)で解砕後にヘンシェルミキサーを用いて炭酸カルシウムに対してステアリン酸を9%添加し115 ℃で表面処理を行い、解砕して表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表2に示す。
実施例1と同様にBET比表面積13m2 /gの炭酸カルシウムスラリーを得、脱水・乾燥・粉砕して無処理の炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた無処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表2に示す。
界面活性剤(A) としてラウリン酸石鹸(商品名:LK−2;日本油脂社製)を2.5 %を表面処理し、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウムフィラーを得た。得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表2に示す。
実施例1〜9及び比較例1〜5で得られた炭酸カルシウムフィラーを40℃×80%RHと23℃×50%RHの条件下に交互に12時間ずつ放置することによる貯蔵を1サイクルとし、それを7サイクル(1週間)行ったあと、Malvern 社製MASTERSIZER 2000レーザー回折式粒度分布計粒度分布測定を行い、炭酸カルシウムフィラーの粉体物性(平均粒子径D50、1μm以上の粒子の量、最大粒子径)を測定した。得られた炭酸カルシウムフィラーの各種物性を表1、表2に示す。
比較例1〜3、5で得られた表面処理炭酸カルシウムフィラーは、調製直後と、耐候性・経時安定性試験後、即ち、梅雨時期を想定した温度・湿度を変化させた貯蔵を繰り返した後とでは、粉体物性(平均粒径D50、粗大粒子の量、最大粒子径)の変化率が大きく、凝集等の物性劣化が認められた。
これに対し、実施例1〜9の炭酸カルシウム粉体は、耐候性・経時安定性試験の前後で、物性変化は殆ど認められなかった。
ポロエチレン樹脂(三井化学(株)製ハイゼックスミリオン340M) 100部とポリエチレンワックス( 三井化学(株)製ハイワックス110 P) 50部、実施例1〜9及び比較例1〜5で得られた炭酸カルシウムフィラーで耐候性・経時安定性試験後のものを300部の割合でヘンシェルミキサーに仕込み、3分間混合して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を東洋精機(株)製二軸混練機2D25Wで溶融混練を行いペレットを得た。次に、東洋精機(株)製二軸混練機2D25W にTダイを装着し、得られたペレットを溶融混練、製膜し厚さ100μmのフィルムを得た。
得られたフィルムをテンターオーブン中で110 ℃の温度下で長さ方向に約5倍延伸し、多孔質フィルムを得た。
得られた多孔質フィルムについて下記の方法で各種物性を評価した。結果を表3、表4に示す。
JIS-P8117 に準じ、多孔質フィルムのガーレ値を東洋精機(株)製B型デンソメーターで測定した。ガーレ通気度の値が大きい程、気体やイオンの透過性が高く好ましい。
ガーレ通気度は、一般的に多孔質フィルムの細孔径に比例するが、ガーレ値が高過ぎる場合、セパレータが何らかの表面ダメージを受けている可能性があり、一方、ガーレ値が低過ぎる場合は、ピンホール若しくは膜圧が薄くなっている可能性があり、何れも好ましくない。従って、ガーレ値の範囲は、通常50〜500(sec./100ml) であり、好ましくは100 〜300(sec./100ml) である。上記範囲外の場合は、何らかの問題がある可能性がある。
直径12mmのワッシャーに固定した多孔質フィルムに、直径1mm、針先曲率半径0.5 mmの金属製の針を200mm/分の速さで突き刺した際に、孔が開口する最大荷重を測定し、突き刺し強度値(gf)を得た。
正極活物質(LiMn2O4 )と導電剤(アセチレンブラック)を混合したものを正極とし、金属LiをNiメッシュに厚着したものを負極として、正極と負極の間に多孔質フィルムを挟み、定電流充放電試験機(ナガノ社製BTS2004H) にて測定を行った。なお、電解液は、LiClO4電解液(PC/DMC 有機溶媒) を用い、定電流充放電の条件は、0.9mA 、3.5 〜4.3Vの間で行い、測定サイクル数1000とした。
測定サイクル数1 と1000の充電容量と放電容量から、下記の基準により充放電のサイクル特性を評価した。
5点:充放電量や容量減少において、極めて安定である。
4点:充放電量や容量減少において、安定である。
3点:充放電量や容量減少において、許容範囲である。
2点:充放電量や容量減少において、問題箇所がる。
1点:充放電量や容量減少において、不良である。
多孔質フィルムの膜厚を膜厚計を用いて測定した。膜厚が小さいとイオンの透過性に有利であるが、両極間の絶縁性や突き刺し強度が弱くなるため、良好なイオンの透過性を維持しつつ膜厚が大きいものが好ましい。
多孔質フィルム中の未溶融のポリマーゲルや、凝集フィラー、異物などの0.5mm2以上の欠点を目視によりカウントした。50m2 分を測定し、1m2 当たりの平均値を欠点数とした。
ポリプロピレン樹脂(住友化学(株)社製FS2011DG2 、MI=2.0 g/10min)100部、実施例1〜9及び比較例1〜5で得られた炭酸カルシウムフィラーで耐候性・経時安定性試験後のもの110部、ステアリン酸カルシウム1部、ヒンダードアミンン系光安定剤1部をヘンシェルミキサーに仕込み5分間混合して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を東洋精機(株)製二軸混練機2D25W で溶融混練を行い、ペレットを得た。次に、東洋精機(株)製二軸混練機2D25W にTダイを装着し、得られたペレットを溶融混練、製膜し未延伸シートを得た。得られた未延伸シートをテンターオーブン中で140℃の温度下で約7倍に延伸し、厚さ180μmの多孔質延伸シートを作製した。
得られた多孔質延伸シートにポリエステル系ホットメルト型接着剤をグラビアコーターで7μm の厚さで塗工した。この接着剤を塗工した多孔質シートに板状支持体である厚さ200 μm のアルミニウムシートを温度75℃でラミネートして光反射体を得た。
得られた光反射体について下記の耐久性試験を行い、耐久性試験前後の拡散反射率、輝度ムラ、色調変化を下記の方法で評価・測定した。評価結果を表5、表6に示す。
拡散反射率の測定は、紫外可視分光光度計(UV3101PC,島津製作所社製) を用い、
400〜1000nmの波長領域を測定し、550nmの拡散反射率を代表値とした。
拡散反射率が高い程、光反射体の色相が良好と言える。尚、変化率は下記の式で求められ、小さい方が良好である。
変化率(%)=(耐久性試験前の拡散反射率−耐久性試験後の拡散反射率)/耐久性試験前の拡散反射率
耐久性試験はJIS K7350-2 に準拠し、キセノンウェザーメーター(SX75,スガ試験機社製)を用い、波長=300〜400nm、放射照度=180W/m2 、ブラックパネル温度=83℃、湿度=50%RHの条件で、144hr照射した。
輝度ムラの評価は、図1に示す如く、24インチタイプの直下型方式の面光源表示装置を用いた。
上記装置に光反射体1を面光源表示装置の反射体として成形加工したものを用い、内部に冷陰極ランプ2、正面にLCDセル3を設置する。これを点灯、照射して正面方向の輝度ムラが発生しているか否かを下記の基準で目視評価した。
○ 均一な輝度でムラがない。
△ 輝度に少しムラがある。
× ムラがある。
連続点灯時の変色(黄変)評価は、ソーラーシミュレーターYSS−150A(山下電装社製)を用いて、光反射体の表面から10cm離れた位置に設置したキセノンランプを照射強度500mw/cm2 で24時間点灯照射した後の光反射体の色調変化を測色計(S&Mカラーコンピュータ、スガ試験機(株)社製)を用いて、上記耐久性試験の前後に測定した各指数値から色差ΔEH値を読み取り(JIS-Z-8730)、下記の基準で評価した。
◎ 色調に全く変化が無く極めて良好である(ΔEH<0.3 )。
○ 色調に変化が無く良好である(0.3 ≦ΔEH<1 )。
× 色調に変化があり不良である(ΔEH≧1 )。
(a)0.1≦D50≦1.0(μm)
(b)Da≦5(μm)
(c)3≦Sw≦57(m2 /g )
(d)0.05≦As≦0.3(mg/m2 )
但し、
D50:レーザー回折式(Malvern 社製MASTERSIZER2000 )における粒度分布において、大きな粒子側から起算した重量累計50%平均粒子径(μm)、
Da :レーザー回折式(Malvern 社製MASTERSIZER2000 )における粒度分布における最大粒子径(μm)、
Sw :窒素吸着法によるBET比表面積(m2 /g)、
As :次式により算出される単位比表面積当たりの表面処理率:
{200℃〜500℃の表面処理炭酸カルシウムフィラー1g当たりの熱減量(mg/g)}/Sw(g/m2 )。
Claims (6)
- 炭酸カルシウム粒子に、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、樹脂酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤(A)と、ホスホン酸、多価カルボン酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の、アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B)とで表面処理されたことを特徴とする樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラー。
- 界面活性剤(A)が、飽和脂肪酸及びその塩からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラー。
- 請求項1又は2に記載の樹脂用表面処理炭酸カルシウムフィラーを樹脂に配合してなることを特徴とする樹脂組成物。
- 樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項3記載の樹脂組成物。
- 請求項3又は4に記載の樹脂組成物からなることを特徴とする電池セパレータ。
- 請求項3又は4に記載の樹脂組成物からなることを特徴とする光反射板。
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