図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る車両用空調システム10は、自動車(車両)12に搭載されており、乗員用のキャビン(車室)14の空調を行う。
空調システム10は、コンプレッサ(圧縮機)16を介して冷媒体を循環させるヒートポンプ循環路18を備える。ヒートポンプ循環路18には、冷媒体と外気とで熱交換を行うコンデンサユニット(コンデンサ)20と、前記コンデンサユニット20から送られる前記冷媒体を減圧させる膨張弁22と、前記膨張弁22を通過した前記冷媒体と空調用空気とで熱交換を行う第1エバポレータ(エバポレータ)24と、前記コンプレッサ16から送出される前記冷媒体と前記第1エバポレータ24を通過した前記空調用空気とで熱交換を行うヒータ26とが配置される。
ヒートポンプ循環路18から分岐路28が分岐するとともに、前記分岐路28には、キャビン14から排出される熱媒体(キャビン14からの排熱気体)と冷媒体で熱交換を行う第2エバポレータ(後方エバポレータ)30が配置される。
ここで熱交換される熱媒体は、キャビン14からの排熱気体であるため、前記キャビン14の持つ熱を無駄に捨てずに有効利用することができる。また、空調システム10の暖気起動時に、キャビン14の暖気に供された熱を回収し、再投入することができるため、迅速な立ち上がりが遂行されるという利点がある。
コンデンサユニット20は、ヒータ26の下流に直列に連結され、冷房時に、冷媒体が流通されるメインコンデンサ(凝縮部)32、気液分離式冷媒体貯留部(サブクールタンク)34及びサブコンデンサ(過冷却用熱交換器)36を備える。メインコンデンサ32の上流側には、電磁弁38aが配置される。
ヒートポンプ循環路18には、暖房時に、メインコンデンサ32をバイパスしてヒータ26と気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36とを連結するためのバイパス手段40が設けられる。バイパス手段40は、ヒートポンプ循環路18から分岐してコンデンサユニット20を構成する気液分離式冷媒体貯留部34に接続される第1バイパス路42aを備える。この第1バイパス路42aには、電磁弁38bが配置される。
膨張弁22は、空調用空気を冷却する第1エバポレータ24から送出された冷媒体の温度を検出する手段(図示せず)を有する。この膨張弁22は、第1エバポレータ24から送出された冷媒体の温度に応じて、開度を自動的に変更させることにより、冷媒体流量を変更可能に構成される。
ヒートポンプ循環路18には、膨張弁22に近接する部位と、分岐路28の入り口側との接続部位に対応して、三方弁44aが配置される。ヒートポンプ循環路18には、第1エバポレータ24をバイパスする第2バイパス路42bの出口部と前記ヒートポンプ循環路18との接続部位に対応して、三方弁44bが配置される。第2エバポレータ30は、自動車12の後部側に配置される(図2参照)。
第1エバポレータ24とヒータ26との間には、前記第1エバポレータ24により冷却された空調用空気を前記ヒータ26を迂回させてキャビン14に送出するためのエアミックスダンパ46が設けられる。
自動車12には、外気を空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口48が形成される。この外気取り入れ口48の下流には、第1エバポレータ24及びヒータ26の順に配置される。空調システム10は、電磁弁38a、38bの開閉制御及び三方弁44a、44bの切換制御を行って暖房運転と冷房運転とを切り換え制御する流路切換手段として機能するとともに、前記空調システム10全体の駆動制御を行うための制御部(ECU)50を備える(図1参照)。
この空調システム10の動作について、図3に示すサイクル図に沿って以下に説明する。
先ず、空調システム10の暖房時には、図2に示すように、コンプレッサ16が駆動され、前記コンプレッサ16からヒートポンプ循環路18に冷媒体が送出される。この冷媒体は、ヒータ26に供給され、このヒータ26で空調用空気と熱交換(放熱)を行い、前記空調用空気を昇温させる。
ヒータ26から排出される冷媒体は、電磁弁38aが閉塞される一方、電磁弁38bが開放されるため、第1バイパス路42aを通り、メインコンデンサ32を迂回して気液分離式冷媒体貯留部34に直接送られる。冷媒体は、気液分離式冷媒体貯留部34からサブコンデンサ36を通って冷却された後、膨張弁22に送られる。
膨張弁22で減圧された冷媒体は、三方弁44aを介して分岐路28に分岐され、第2エバポレータ30に導入される。第2エバポレータ30では、冷媒体がキャビン14内の熱源と熱交換を行った後、第1エバポレータ24を迂回して第2バイパス路42bから膨張弁22を通って、再度、コンプレッサ16に送られる。
この場合、第1の実施形態では、ヒータ26の下流に、メインコンデンサ32、気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36が直列に連結されている。そして、ヒートポンプ循環路18には、暖房時に、メインコンデンサ32をバイパスしてヒータ26と気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36とを連結するためのバイパス手段40が設けられている。
従って、暖房時には、図2に示すように、ヒータ26の下流は、メインコンデンサ32をバイパスして気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36に連結させることができる。このため、気液分離式冷媒体貯留部34は、サブクールタンクとして機能するとともに、サブコンデンサ36は、サブクールコンデンサとして機能することができる(図3中、気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36を参照)。
これにより、冷媒体は、完全な液媒体として膨張弁22に導入することが可能になり、前記膨張弁22で気体の巻き込みが発生することを良好に阻止することができる。従って、ヒートポンプ循環路18には、冷媒体を安定して循環させることが可能になり、空調性能の向上や、良好な空調性能の維持が容易に図られる。
しかも、気液分離式冷媒体貯留部34は、サブクールタンクとして用いられている。このため、十分な冷媒体量を確保することができ、特に外気温度が上昇した際の暖房運転や除湿暖房運転等の過渡運転時にも、冷媒体不足による空調性能の低下を抑制することが可能になる。
さらに、第1の実施形態では、暖房時のためにのみ使用されるサブクールタンク及びサブクール部を設ける必要がない。後述する冷房時の放熱器であるコンデンサユニット20を構成する気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36を共用することができるからである。また、これら暖房時のためにのみ使用する機器がないため、空調システム10を納めた車両のフロント部分におけるシステム搭載空間が有効に縮小される。
これにより、簡単且つ経済的な構成で、冷媒体を安定して循環させることにより、熱交換効率の向上を図り、良好な空調性能を維持することが可能になる。
次に、空調システム10による除湿暖房運転について説明する。
この除湿暖房運転時には、図4に示すように、三方弁44bが操作されることにより、第2バイパス路42bが閉塞されて、第1エバポレータ24がヒートポンプ循環路18に接続される。このため、コンプレッサ16の作用下に、ヒートポンプ循環路18に送出される冷媒体は、ヒータ26を通って放熱された後、気液分離式冷媒体貯留部34、サブコンデンサ36及び膨張弁22を通過して低圧及び低温となる。この冷媒体は、第2エバポレータ30で吸熱された後、第1エバポレータ24に送られる。
第1エバポレータ24では、空調用空気から吸熱することにより、前記空調用空気が一旦冷却された後、ヒータ26の放熱作用下に昇温され、キャビン14に送出される。従って、空調用空気は、第1エバポレータ24で冷却されることにより、外気から取り込まれた空気に含まれる水蒸気が除去されて、除湿処理が施されることになる。
その際、第1エバポレータ24を通過する空調用空気が低温であっても、第2エバポレータ30によりキャビン14から排出される高温低湿度の熱源から十分な吸熱がなされており、前記第1エバポレータ24に流入される冷媒体が暖められている。これにより、除湿暖房運転時でも、第2エバポレータ30が凍結することがなく、連続運転が可能になる。
しかも、冷媒体は、気液分離式冷媒体貯留部34に供給されるため、この気液分離式冷媒体貯留部34がサブクールタンクとして機能する。従って、除湿暖房運転等の過渡運転時のように、冷媒体が分配運転される際にも、前記冷媒体の不足が生じることがなく、安定した空調性能を発揮させることができる。
さらにまた、空調システム10による冷房運転が、図5に示されている。
この冷房運転時には、電磁弁38aが開放されるとともに、電磁弁38bが閉塞されて、コンデンサユニット20がヒートポンプ循環路18に接続される。一方、三方弁44a、44bの切替作用下に、分岐路28がヒートポンプ循環路18から遮断され、且つ第1エバポレータ24が前記ヒートポンプ循環路18に接続される。そして、エアミックスダンパ46は、全閉姿勢に配置される。
このため、コンプレッサ16の作用下に、圧縮されて高温となった冷媒体は、ヒータ26を通過してコンデンサユニット20で冷却される。この冷媒体は、膨張弁22でさらに低温及び低圧の冷媒体となった後、第1エバポレータ24に供給される。従って、第1エバポレータ24では、低温の冷媒体が通過して空調用空気と熱交換することにより、前記空調用空気が冷却される一方、冷媒体は、吸熱後に膨張弁22からコンプレッサ16に戻される。
第1エバポレータ24により冷却された空調用空気は、エアミックスダンパ46の閉塞によってヒータ26で暖められることがなく、キャビン14に送出されるため、前記キャビン14の冷房が行われる。この冷房運転時には、気液分離式冷媒体貯留部34により、冷媒体量の増減に対する緩衝作用を有することができる。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る車両用空調システム60の概略構成説明図である。なお、第1の実施形態に係る空調システム10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3以降の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
空調システム60では、ヒートポンプ循環路18には、暖房時に、メインコンデンサ32をバイパスしてヒータ26と気液分離式冷媒体貯留部34とを連結するためのバイパス手段62が設けられる。バイパス手段62は、第1バイパス路42aと、前記第1バイパス路42aに配設され、冷媒体に圧損を付与する圧力損失部として、例えば、絞り弁や流量調整弁等の流量制御弁64とを備える。流量制御弁64は、アクチュエータ、例えば、モータ66を介して開度が調整される。
この第2の実施形態では、図7のサイクル図に示すように、圧力損失部として流量制御弁64が用いられるため、暖房時のサブクール領域を増加させることができる。このため、特に外気温が極低温である際には、流量制御弁64の作用下に、ヒータ26でのエンタルピー差を大きくすることが可能になる。
しかも、サブクール量を大きくすることにより、過冷却熱交換部である気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36の入口温度を、極低温の外気温度と同等な温度まで下げることができる。従って、過冷却熱交換部での外気放熱を最小に抑制することが可能になる。
さらに、サブクール量が大きくなるため、ヒータ26を高温及び/又は高圧に高めることができる(圧力aから圧力a1に高めることができる)。これにより、ヒータ26の暖房性能を有効に向上させることが可能になる。
図8は、本発明の第3の実施形態に係る車両用空調システム70の概略構成説明図である。
空調システム70では、ヒートポンプ循環路18には、暖房時に、メインコンデンサ32をバイパスしてヒータ26と気液分離式冷媒体貯留部34とを連結するためのバイパス手段72が設けられる。バイパス手段72は、第1バイパス路42aと、前記第1バイパス路42aに配設され、冷媒体に圧損を付与する圧力損失部として、キャピラリ74とを備える。キャピラリ74の上流には、電磁弁38bが配置される。
この第3の実施形態では、圧力損失部としてキャピラリ74が用いられるため、暖房時のサブクール領域を増加させることができる等、上記の第2の実施形態と同様の効果が得られる。
図9は、本発明の第4の実施形態に係る車両用空調システム80の概略ブロック図であり、図10は、前記空調システム80の概略構成説明図である。
空調システム80では、ヒートポンプ循環路18には、冷媒体と外気とで熱交換を行うコンデンサ82と、暖房時に、前記コンデンサ82をバイパスしてヒータ26と気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36とを連結するためのバイパス手段84とが設けられる。
コンデンサ82は、凝縮部86、タンク部88及び過冷却部90を一体に備える。コンデンサ82とヒータ26との間には、前記コンデンサ82の上流側に近接して電磁弁38aが配置される。
バイパス手段84は、第1バイパス路42aを備えるとともに、前記第1バイパス路42aには、気液分離式冷媒体貯留部34、サブコンデンサ36及び電磁弁38bが配置される。
この空調システム80の動作は、図3に示すサイクル図と同様に行われる。具体的には、暖房時には、図10に示すように、コンプレッサ16が駆動され、前記コンプレッサ16からヒートポンプ循環路18に冷媒体が送出される。この冷媒体は、ヒータ26に供給され、このヒータ26で空調用空気と熱交換(放熱)を行い、前記空調用空気を昇温させる。
ヒータ26から排出される冷媒体は、電磁弁38aが閉塞される一方、電磁弁38bが開放されるため、第1バイパス路42aを通り、コンデンサ82を迂回して気液分離式冷媒体貯留部34に直接送られる。冷媒体は、気液分離式冷媒体貯留部34からサブコンデンサ36を通って冷却された後、膨張弁22に送られる。
この場合、第4の実施形態では、ヒータ26の下流に、第1バイパス路42aを介して気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36が直列に連結されている。そして、ヒートポンプ循環路18には、暖房時に、コンデンサ82をバイパスしてヒータ26と気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36とを連結するためのバイパス手段84が設けられている。
従って、暖房時には、図10に示すように、ヒータ26の下流は、コンデンサ82をバイパスして気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36に連結させることができる。このため、気液分離式冷媒体貯留部34は、サブクールタンクとして機能し、前記気液分離式冷媒体貯留部34に供給されて冷媒体に含まれる気体が分離された液状冷媒体は、サブコンデンサ36を通ることにより外気温度域まで冷却される。
これにより、冷媒体は、完全な液媒体として膨張弁22に導入することが可能になり、前記膨張弁22で気体の巻き込みが発生することを良好に阻止することができる。従って、ヒートポンプ循環路18には、冷媒体を安定して循環させることが可能になり、熱交換効率の向上や、良好な空調性能の維持が容易に図られる。
しかも、気液分離式冷媒体貯留部34は、サブクールタンクとして用いられている。このため、十分な冷媒体量を確保することができ、特に外気温度が上昇した際の暖房運転や除湿暖房運転等の過渡運転時にも、冷媒体の不足による空調性能の低下を抑制することが可能になる等、上記の第1以降の実施形態と同様の効果が得られる。
さらに、サブコンデンサ36は、自由に配置されるため、レイアウト性が有効に向上する。その際、サブコンデンサ36の配置場所は、外気が流通される場所であればよく、前記サブコンデンサ36を容易且つ良好に設置することができる。
次に、空調システム80による除湿暖房運転について説明する。
この除湿暖房運転時には、図11に示すように、三方弁44bが操作されることにより、第2バイパス路42bが閉塞されて、第1エバポレータ24がヒートポンプ循環路18に接続される。このため、コンプレッサ16の作用下に、ヒートポンプ循環路18に送出される冷媒体は、ヒータ26を通って放熱された後、気液分離式冷媒体貯留部34、サブコンデンサ36及び膨張弁22を通過して低圧及び低温となる。この冷媒体は、第2エバポレータ30で吸熱された後、第1エバポレータ24に送られる。
第1エバポレータ24では、空調用空気から吸熱することにより、前記空調用空気が一旦冷却された後、ヒータ26の放熱作用下に昇温され、キャビン14に送出される。従って、空調用空気は、第1エバポレータ24で冷却されることにより、外気から取り込まれた空気に含まれる水蒸気が除去されて、除湿処理が施されることになる。
さらにまた、空調システム80による冷房運転が、図12に示されている。
この冷房運転時には、電磁弁38aが開放されるとともに、電磁弁38bが閉塞されて、コンデンサ82がヒートポンプ循環路18に接続される。一方、三方弁44a、44bの切替作用下に、分岐路28がヒートポンプ循環路18から遮断され、且つ第1エバポレータ24が前記ヒートポンプ循環路18に接続される。そして、エアミックスダンパ46は、全閉姿勢に配置される。
このため、コンプレッサ16の作用下に、圧縮されて高温となった冷媒体は、ヒータ26を通過してコンデンサ82で冷却される。この冷媒体は、膨張弁22でさらに低温及び低圧の冷媒体となった後、第1エバポレータ24に供給される。従って、第1エバポレータ24では、低温の冷媒体が通過して空調用空気と熱交換することにより、前記空調用空気が冷却される一方、冷媒体は、吸熱後に膨張弁22からコンプレッサ16に戻される。
第1エバポレータ24により冷却された空調用空気は、エアミックスダンパ46の閉塞によってヒータ26で暖められることがなく、キャビン14に送出されるため、前記キャビン14の冷房が行われる。この冷房運転時には、気液分離式冷媒体貯留部34により、冷媒体量の増減に対する緩衝作用を有することができる。
図13は、本発明の第5の実施形態に係る車両用空調システム100の概略構成説明図である。
空調システム100では、ヒートポンプ循環路18には、暖房時に、コンデンサ82をバイパスしてヒータ26と気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36とを連結するためのバイパス手段102が設けられる。バイパス手段102は、コンデンサ82に並列される第1バイパス路42aを備え、前記第1バイパス路42aには、電磁弁38bが配置される。
ヒートポンプ循環路18には、コンデンサ82の出口側と膨張弁22の入口側との間に位置して、気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36とが配設される。
この第5の実施形態では、空調システム100の暖房時には、図13に示すように、電磁弁38aが閉塞される一方、電磁弁38bが開放されている。このため、コンプレッサ16が駆動され、ヒータ26から排出される冷媒体は、第1バイパス路42aを通り、コンデンサ82を迂回して気液分離式冷媒体貯留部34に直接送られる。冷媒体は、気液分離式冷媒体貯留部34からサブコンデンサ36を通って冷却された後、膨張弁22に送られる。
従って、気液分離式冷媒体貯留部34は、サブクールタンクとして機能し、冷媒体に含まれる気体が分離された液状冷媒体は、サブコンデンサ36を通って完全な液媒体が得られる。これにより、ヒートポンプ循環路18には、冷媒体を安定して循環させることが可能になり、熱交換効率の向上や、良好な空調性能の維持が容易に図られる等、上記の第1以降の実施形態と同様の効果が得られる。
一方、空調システム100の冷房運転時には、図14に示すように、電磁弁38aが開放されるとともに、電磁弁38bが閉塞されるとともに、三方弁44a、44bの切替制御が行われている。このため、コンプレッサ16の作用下に、圧縮されて高温となった冷媒体は、ヒータ26を通過してコンデンサ82で冷却される。
この冷媒体は、気液分離式冷媒体貯留部34、サブコンデンサ36及び膨張弁22でさらに低温及び低圧の冷媒体となった後、第1エバポレータ24に供給される。従って、冷房運転時には、暖房運転時と同様に、気液分離式冷媒体貯留部34により、冷媒体量の増減に対する緩衝作用を有することができる。
図15は、本発明の第3の実施形態に係る車両用空調システム110の概略構成説明図である。
空調システム110では、ヒートポンプ循環路18には、暖房時に、コンデンサ82をバイパスしてヒータ26と気液分離式冷媒体貯留部34とを連結するためのバイパス手段112が設けられる。バイパス手段112は、第1バイパス路42aを備え、前記第1バイパス路42aには、電磁弁38b、気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36が配置される。気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36は、第1エバポレータ24とヒータ26との間に配設される。
この第6の実施形態では、空調システム110の暖房時には、図15に示すように、電磁弁38aが閉塞される一方、電磁弁38bが開放されている。このため、コンプレッサ16が駆動され、ヒータ26から排出される冷媒体は、第1バイパス路42aを通り、コンデンサ82を迂回して気液分離式冷媒体貯留部34に直接送られる。冷媒体は、気液分離式冷媒体貯留部34からサブコンデンサ36を通って冷却された後、膨張弁22に送られる。
一方、空調システム110の冷房運転時には、図16に示すように、電磁弁38aが開放され、且つ、電磁弁38bが閉塞されるとともに、三方弁44a、44bの切替制御が行われている。このため、コンプレッサ16の作用下に、圧縮されて高温となった冷媒体は、ヒータ26を通過してコンデンサ82で冷却される。
従って、第6の実施形態では、ヒートポンプ循環路18には、冷媒体を安定して循環させることが可能になり、熱交換効率の向上や、良好な空調性能の維持が容易に図られる等、上記の第1以降の実施形態と同様の効果が得られる。
図17は、本発明の第7の実施形態に係る車両用空調システム120の概略構成説明図である。
空調システム120では、ヒートポンプ循環路18には、暖房時に、コンデンサ82をバイパスしてヒータ26と気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36とを連結するためのバイパス手段122が設けられる。
バイパス手段122は、第1バイパス路42aに配設され、冷媒体に圧損を付与する圧力損失部として、例えば、絞り弁や流量調整弁等の流量制御弁124とを備える。流量制御弁124は、アクチュエータ、例えば、モータ126を介して開度が調整される。
この第6の実施形態では、図7のサイクル図と同様に、圧力損失部として流量制御弁124が用いられるため、暖房時のサブクール領域を増加させることができる。このため、特に外気温が極低温である際には、流量制御弁124の作用下に、ヒータ26でのエンタルピー差を大きくすることが可能になる。
しかも、サブクール量を大きくすることにより、気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36の入口温度を、極低温の外気温度と同等な温度まで下げることができる。従って、過冷却熱交換部での外気放熱を最小に抑制することが可能になる。
さらに、サブクール量が大きくなるため、ヒータ26を高温/高圧に高めることができ、前記ヒータ26の暖房性能を有効に向上させることが可能になる。
なお、第7の実施形態は、実質的に第4の実施形態を基本に構成しているが、これに限定されるものではなく、第5の実施形態又は第6の実施形態を基本に構成してもよい。また、以下に説明する第8の実施形態においても、同様である。
図18は、本発明の第8の実施形態に係る車両用空調システム130の概略構成説明図である。
空調システム130では、ヒートポンプ循環路18には、暖房時に、コンデンサ82をバイパスしてヒータ26と気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36とを連結するためのバイパス手段132が設けられる。バイパス手段132は、第1バイパス路42aに配設され、冷媒体に圧損を付与する圧力損失部として、キャピラリ134を備える。キャピラリ134の上流には、電磁弁38bが配置されるとともに、前記キャピラリ134の下流には、気液分離式冷媒体貯留部34及びサブコンデンサ36が配設される。
この第8の実施形態では、圧力損失部としてキャピラリ134が用いられるため、暖房時のサブクール領域を増加させることができる等、上記の第7の実施形態と同様の効果が得られる。
なお、上記の各実施形態に対し、第2エバポレータ30と熱交換される熱媒体は、キャビン14からの排熱気体の他、モータ類の放熱やバッテリの放熱、内燃機関を備える際には、該内燃機関の放熱、制御部50からの熱、さらには外気熱等、前記第2エバポレータ30に流れ込む冷媒体よりも高温な媒体であれば、いずれでも適用可能である。
また、流路切り換え用の三方弁44a、44bは、3方向の分岐と弁機構とが一体に構成されるもの以外に、分岐ブロックと電磁弁との組み合わせで流路切り換え可能に構成されていてもよい。