JPWO2010137574A1 - 醤油糖類加熱混合物及び油脂食品 - Google Patents

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Abstract

本発明の醤油糖類加熱混合物は、醤油と糖類の混合水溶液を加熱してなり、0.1%(w/w)水希釈液の430nmにおける吸光度が0.05〜0.40である。本発明の油脂食品は、該醤油糖類加熱混合物に、油脂を添加し乳化又は可溶化してなるものである。本発明の醤油糖類加熱混合物は、乳化剤又は界面活性剤の代替品として有用なものであり、該醤油糖類加熱混合物を使用すれば、乳化安定剤あるいは界面活性剤を全く使用することなく、かつ、pH変化や、熱等によって乳化作用が低下することのない油脂食品を得ることができる。しかも、該油脂食品は、油脂の分離がなく、安定に乳化又は可溶化されたものである。

Description

本発明は、醤油糖類加熱混合物及び油脂食品に関し、さらに詳しくは、醤油と糖類の混合水溶液を加熱して得られ、乳化剤又は界面活性剤の代替品として有用な加熱混合物、及び該加熱混合物を用い、長期間にわたって油脂が分離することのない油脂食品に関する。
従来、水相部に油脂を均一に分散させた乳化油脂食品を得る方法として、合成の乳化剤等を使用しホモジナイザー等により機械的に油脂を分散させる方法が用いられている。この合成の乳化剤等は、風味、栄養、安全性等の観点からできるだけその使用を制限することが望ましく、そのため天然の乳化剤等を用いて油脂を安定に分散させる方法が望まれている。
また、洗剤工業や化粧品工業では、油脂を水相部に可溶化又は乳化分散させる方法として、界面活性剤を利用する方法が用いられている。界面活性剤により油脂が水相部に均一に分散すると、水溶液は白濁することから、これを乳化という。また、分散する油脂の大きさが微小なとき、見かけ上油脂が一部溶解したかのように透明になることから、この現象を可溶化ともいう。油脂を可溶化するためには、界面活性剤が必須とされており、風味、栄養、安全性等の問題により食品への応用は難しいと判断されている。
そこで、本出願人は、先に、乳化剤あるいは界面活性剤を添加することなく、油脂が分離しない油脂食品を得る方法を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、例えば、肉類を熱水抽出して得た水溶性タンパク質を主成分とする抽出物及び糖類が、特定条件下で極めて強力な油脂可溶化能を発現することを見出した。そして、肉類から熱水抽出して得た水溶性タンパク質と糖類を利用して、油脂を可溶化させ、長期間にわたって油脂が分離しない油脂食品を得る方法を開発した(例えば、特許文献1参照)。
一方、食品タンパク質と糖類との間で自然に起こり得る褐変反応、あるいは、加熱反応により起こる褐変反応、いわゆるメイラード反応によって得られる、タンパク質・多糖類の複合体を利用する方法もいくつか提案されているが、これらの方法は十分に満足できるものとはいい難い。例えば、動植物由来のタンパク質(ミルク、卵白、小麦)と多糖類の複合体を利用する方法(例えば、特許文献2〜4参照)は、構成するタンパク質の性質に大きく左右され、pH変化や、熱等によって油脂の可溶化又は乳化分散が弱くなり、さらに無機塩の存在下では、可溶化又は乳化作用が著しく低下してしまう。
そのため、油脂を水相部に安定に可溶化又は乳化分散させ、pH変化や、熱等によって乳化作用が低下することのない油脂食品を得る方法の開発が望まれている。
なお、乳化型の食品としては、例えば、ドレッシングが挙げられ、糖類とともに煮詰めた醤油(以下、「煮詰め醤油」という。)を用いたドレッシングの製造法が知られている(例えば、特許文献5参照)。この製造法において煮詰め醤油を利用する目的は、通常の方法でドレッシング等の調味料に醤油を配合した場合に生じる、味に醤油独特の角が出てしまうという欠点、及び醤油と副原料との相互作用により味の熟成感が得られないという欠点を解消することにある。煮詰め醤油を用いて乳化型のドレッシングを調製する場合、従来どおり乳化剤が必須となる。醤油と糖類の混合水溶液を加熱して得られる醤油・糖類加熱混合物を用いて、乳化剤を添加することなく、水相部に油脂を乳化又は可溶化させる方法は知られていない。
特公昭55−1780号公報 特開平7−258292号公報 特開2005−187401号公報 特開2008−29231号公報 特開2000−69934号公報
したがって、本発明の目的は、水相部に油脂を乳化又は可溶化させてなる、油脂の分離しない油脂食品において、特に合成の乳化剤あるいは界面活性剤を全く使用することなく、かつ、pH変化や、熱等によって乳化作用が低下することのない油脂食品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、醤油と糖類の混合水溶液を、該混合水溶液の0.1%(w/w)水希釈液の430nmにおける吸光度が0.05〜0.40となるまで加熱して得られる加熱混合物が、優れた乳化能を有することを見出した。また、該加熱混合物に油脂を加え、乳化して得られる乳化油脂食品は、油脂が長期間均一に分散され、他の水性溶液(例えば水又は水性調味液等)を混和しても、その乳化能が安定に保持されることを知見した。さらに、検討を進めた結果、上記加熱混合物は、特定濃度の糖の存在下で、油脂を可溶化すること、また、他の調味料等を高濃度に含有させても、油脂が安定に分散されること、さらに、pH変化や、熱等に強く、無機塩が高濃度に存在しても可溶化能が損なわれないことを知見した。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、下記1)〜8)を提供するものである。
1)醤油と糖類の混合水溶液を加熱してなり、0.1%(w/w)水希釈液の430nmにおける吸光度が0.05〜0.40である醤油糖類加熱混合物。
2)上記混合水溶液は、全窒素濃度1.0〜4.5%(w/v)の醤油1重量部に対し糖類0.5〜2.0重量部を混合したものであり、液温70〜95℃で9〜66時間加熱してなる上記1)の醤油糖類加熱混合物。
3)上記1)又は2)の醤油糖類加熱混合物に、油脂を添加し乳化又は可溶化してなる油脂食品。
4)上記醤油糖類加熱混合物に、Brix50%(w/w)以下となるよう水又は水性調味液を添加、混和してなる乳化ベース1重量部に対し、上記油脂0.02〜1.0重量部を添加し乳化してなる上記3)の油脂食品。
5)上記醤油糖類加熱混合物に、Brix30%(w/w)以上となるようさらに糖を添加、混和してなる可溶化ベース1重量部に対し、油脂0.02〜4.0重量部を添加し可溶化してなる上記3)の油脂食品。
6)上記可溶化ベース中に含まれる上記醤油糖類加熱混合物の濃度が2〜70%(w/w)である上記5)の油脂食品。
7)上記3)〜6)のいずれかの油脂食品と水性調味液とを混和してなる乳化食品。
8)米菓用調味液、ドレッシング、タレ又はスープである上記7)の乳化食品。
(1)本発明によれば、優れた乳化能及び可溶化能を有し、乳化剤又は界面活性剤の代替品として有用な醤油糖類加熱混合物を提供することができる。該醤油糖類加熱混合物を用いれば、合成の乳化剤若しくは界面活性剤又は動植物由来のタンパク質を全く使用することなく、長期間にわたって油脂が水相部に均一に乳化又は可溶化され分離することのない油脂食品を容易に得ることができる。
(2)本発明の油脂食品は、醤油、糖類及び食用油脂等、食品の基本的栄養調味成分を使用して得るものであるから、食品の調味に多用しても該食品の風味に影響を与えることが少なく、広く応用が可能である。
(3)本発明の油脂食品は、任意の割合の水性調味液に均一に乳化するため、乳化度が高く安定な乳化食品を得ることができる。また、用いる水性調味液は制限されることがないため、ドレッシングや焼肉用タレ等の様々な乳化食品を提供することができる。
(4)さらに、得られる乳化食品は、調理や殺菌するための加熱処理に対しても、熱変性等による乳化分離を起こすことがない。また、高濃度の塩を含有しても、分散した油滴は極めて安定であるため、食品加工への適性は極めて高い。すなわち、醤油やソース等の含塩調味液や加熱工程を経て製品となる各種の食品に応用しても、微細なコロイド状油滴として、乳化食品中に油脂を安定分散させることができるので、従来より知られている食品加工における種々の問題点を解決することができる。
まず、本発明の醤油糖類加熱混合物について、好ましい実施形態に基づいて以下に詳述する。
本発明の醤油糖類加熱混合物は、下記第一工程〜第二工程を実施することにより得ることができる。
(第一工程)
第一工程では、醤油と糖類とを混和して混合水溶液(以下、醤油糖類混合水溶液という)を調製する。
上記醤油としては、通常の醤油を用いることができ、例えば、濃口醤油、淡口醤油、溜醤油、再仕込醤油、これらの減塩醤油及び膜濃縮醤油等が挙げられる。上記醤油としては、本発明に係る所定の吸光度を有する加熱混合物を容易に得ることができ、得られる加熱混合物の乳化能及び可溶化能(以下、乳化能と可溶化能とをあわせて、単に乳化能という場合もある)が高いことから、全窒素濃度1.0〜4.5%(w/v)、特に2.0〜2.5%(w/v)の醤油を用いることが好ましく、かかる全窒素濃度範囲を満たす濃口若しくは淡口醤油の膜濃縮醤油又は溜醤油を用いることがさらに好ましい。
上記膜濃縮醤油は、膜濃縮を行うことにより含有成分の濃度を調整したものである。膜濃縮を行えば、全窒素濃度についても調整が可能である。例えば、膜濃縮醤油は、醤油又は火入れオリを、逆浸透膜、NF膜(Nano−Filtration膜)、ルーズRO膜又はUF膜(Ultra−Filtraion膜)等の分子篩膜を用いて透過処理し、非透過側から分離して得ることができる(特開平10−234332号公報及び特許第3530753号明細書参照)。又は、醤油の火入れオリを、常法により濾過(セライト濾過又は精密濾過膜による濾過)した後、その濾過液を逆浸透膜により濃縮して得ることができる(特開平4−197154号公報参照)。これらの方法によれば、例えば全窒素濃度が2.0〜2.5%(w/v)の膜濃縮醤油を得ることができる。
前記糖類としては、還元糖を用いる。該還元糖としては、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、グリセルアルデヒド等の単糖類;マルトース(麦芽糖)、ラクトース(乳糖)、アラビノース等のオリゴ糖類;デキストリン、水飴等の水溶性の糖類を挙げることができる。これらの糖類は、単独であるいは併用して用いることができ、あるいは果糖ブドウ糖液糖等の異性化糖として用いることもできる。これらの中でもグルコース又は水飴は、安価で容易に入手することができるので好ましい。
前記醤油に対する前記糖類の混和量は、醤油1重量部に対し糖類0.5〜2.0重量部が好ましく、0.5〜1.5重量部がさらに好ましく、0.7〜1.2重量部が最も好ましい。糖類の混和量が0.5重量部を下回る場合、得られる醤油糖類加熱混合物の乳化能が弱くなる場合があり、反対に混和量が2重量部を上回る場合、粘度が高まり取り扱いが困難となるので好ましくない。
なお、後述するように、本発明の醤油糖類加熱混合物を用いて可溶化状態の油脂食品を得る際には、本発明の醤油糖類加熱混合物の可溶化能をより安定させるため、該醤油糖類加熱混合物にさらに糖を添加して可溶化ベースとするが、上記醤油にあらかじめ糖類を多め(例えば1.2重量部超)に混和しておいてもよい。この際、混和量が2重量部を超えると粘度が高まり、加熱時の取り扱いが困難となる等の問題が生じやすいため、加熱混合物を得た後、さらに糖を添加する方法が好ましい。
(第二工程)
第二工程においては、第一工程で得た醤油糖類混合水溶液を、0.1%(w/w)水希釈液の430nmにおける吸光度が0.05〜0.40、好ましくは0.10〜0.40、さらに好ましくは0.30〜0.40となるように加熱して、本発明の醤油糖類加熱混合物を得る。本発明においてこのことは極めて重要であって、吸光度が0.05未満であるときは、油脂乳化能が低く、油脂食品の油脂が速やかに浮上分離して本発明の目的を達成できない。吸光度は、加熱によるメイラード反応が進行することに伴ってその値が高くなり、吸光度0.05〜0.40の範囲で、優れた油脂乳化能が認められる。一方、反応を過剰に進行させてしまうと、醤油糖類加熱混合物内に不溶性物質が析出し、その油脂乳化能が低下し、油脂食品の油脂が浮上分離して本発明の目的を達成できない。第二工程において、第一工程で得た醤油糖類混合水溶液を加熱する際には、不溶性物質が析出しないように加熱することが必要である。
醤油糖類混合水溶液の加熱の温度及び時間は、上記吸光度となる醤油糖類加熱混合物を得ることができる条件の中から適宜選択することができる。例えば、加熱温度は、液温70〜95℃が好ましく、75〜85℃がより好ましく、また、加熱時間は、9〜66時間が好ましく、18〜60時間がより好ましい。前記の吸光度を有する加熱混合物を得るためには、品温が低いときは加熱時間を長くし、反対に品温が高いときは加熱時間を短くすることが好ましい。加熱の温度及び時間が、上記条件の下限値を下回る場合、乳化能及び可溶化能が低下するので好ましくない。反対に上記条件の上限値を上回る場合、反応が過剰に進行したことによる不溶性の物質が析出し、乳化能及び可溶化能が低下するので好ましくない。
本発明の醤油糖類加熱混合物は、優れた乳化能を有し、そのまま天然の乳化剤として用いることができる。本発明の醤油糖類加熱混合物は、多量の油脂を水又は水性調味液中に均一に、かつ、長期間安定に乳化又は可溶化することができる。本発明の醤油糖類加熱混合物は、その他に、黒色付け(カラメル色素の代替)、風味増強等の用途に用いることもできる。
次に、本発明の油脂食品について説明する。該油脂食品は、本発明の醤油糖類加熱混合物及び油脂を含有し、また、必要により水性溶液等を含有してなるもので、主として、後述の乳化食品(最終製品)の製造に中間品として用いられるものである。
本発明の油脂食品全量中における本発明の醤油糖類加熱混合物の含有量は、該油脂食品に含有させる油脂の量等にもよるが、好ましくは2〜45%(w/w)、より好ましくは6〜30%の範囲から選択する。2%より少ないと、乳化又は可溶化の安定性が低くなる場合がある。45%より多くても、乳化又は可溶化の安定性は大きく変わらない。
また、本発明の油脂食品全量中における油脂の含有量は、乳化食品(最終製品)の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば1〜80%(w/w)の範囲から選択することができる。上限の80%を越えた場合には、乳化又は可溶化の安定性が低くなる場合がある。乳化食品における油脂の安定性等の観点から、油脂食品全量中における油脂の含有量は、30〜70%がより好ましい。
前記油脂としては、食用に供することができる任意の油脂が挙げられ、例えば、綿実油、胡麻油、菜種油、大豆油、パーム油、ヤシ油、オリーブ油等の植物性油脂;豚脂、牛脂、鶏油、鯨油、魚油等の動物性油脂;オレンジオイル、レモンオイル、ユズオイル、パプリカオイル等の精油;及びマスタードオイル等のスパイスオイル等が挙げられ、これらを単独であるいは併用して用いることができる。なお、豚脂、牛脂等常温で固形の油脂を用いる場合は、該油脂の融点以上の温度条件下において用いる必要がある。
上記水性溶液としては、醤油、ソース、みりん、酒類、食酢、果汁、野菜汁、果肉ペースト(ジャム、ケチャップ等)、食塩、糖類、有機酸類、アミノ酸類、呈味性核酸類、節類抽出液、動植物エキス、香料(フレーバー)、香辛料、着色料、栄養強化剤(ビタミン)、保存料又は増粘性物質等の各種食品素材を、それ自体が水性溶液の形態であるものはそのまま用いることができ、また、それ自体が水性溶液の形態でないものは、適宜の濃度で水又は水性溶液の形態の食品素材に含有させて用いることができる。水性溶液は、一種又は二種以上を用いることができる。本発明の油脂食品において水性溶液を用いる場合は、本発明の醤油糖類加熱混合物に添加して用いることができる。
本発明の油脂食品は、本発明の醤油糖類加熱混合物に、前記油脂を添加し乳化するか又は油脂を添加し可溶化することにより得ることができる。以下、本発明の油脂食品である乳化状態の油脂食品及び可溶化状態の油脂食品について、それぞれ、好ましい形態に基づいてさらに説明する。
本発明の醤油糖類加熱混合物に、油脂を添加し乳化してなる本発明の油脂食品について、その好ましい製造方法に基づいて以下説明する。
本発明の醤油糖類加熱混合物に油脂を添加する際には、本発明の醤油糖類加熱混合物そのものに油脂を添加してもよいが、本発明の醤油糖類加熱混合物は粘度が高く、油脂を加える際の取り扱いが困難となる場合がある。この場合、本発明の醤油糖類加熱混合物にあらかじめ水を加えて、粘度を低くし、乳化ベースとして用いることもできる。また、水に代えて又は水とともに、前述の水性溶液を加えてもよい。加える水及び/又は水性溶液の量は、乳化ベースの固形分濃度(Brix)が50%(w/w)以下となる量から適宜選択することができ、20〜50%(w/w)、特に30〜50%となる量から選択することが好ましい。乳化ベース全量中の本発明の醤油糖類加熱混合物の含有量は、35〜90%(w/w)となるように選択することが好ましい。尚、本発明の醤油糖類加熱混合物そのものに油脂を添加する場合は、本発明の醤油糖類加熱混合物そのものが上記のBrixの範囲を満たしていることが好ましい。
次に、上記乳化ベース1重量部に対し、油脂を好ましくは0.02〜1.0重量部加え、油脂を乳化する。また、乳化状態の本発明の油脂食品においては、該油脂食品の全量を基準として、本発明の醤油糖類加熱混合物を2〜50重量%、特に5〜30重量%含有することが好ましく、油脂を20〜80重量%、特に30〜70重量%含有することが好ましい。これらの範囲を満たすことにより、油脂の乳化がより一層安定化される。
乳化状態の本発明の油脂食品は、本発明の醤油糖類加熱混合物又は乳化ベースとしてのその水溶液に油脂を加えて乳化処理を行うことにより得ることができる。乳化処理の方法としては、高速撹拌等の常法を用いることができる。高速撹拌には、ホモジナイザー等の高速撹拌機を用いる。高速撹拌機は、本発明の醤油糖類加熱混合物又はその水溶液と油脂とを高速撹拌することができればよく、各種食品の製造に用いられているものから、適宜選択することができる。好ましくは10,000rpm以上の回転数で撹拌できる高速撹拌機を用い、該回転数において、油脂が均質に分散するのに必要な十分な時間撹拌を行う。より好ましくは回転数14,000〜20,000rpmにおいて、5〜60秒間高速撹拌を行う。例えば16,000rpmにおいて30秒間高速撹拌を行えば、油脂は均質に分散乳化する。
以上により、長期間保存しても油脂が分離しない乳化状態の本発明の油脂食品を得ることができる。
本発明の醤油糖類加熱混合物に、油脂を添加し可溶化してなる本発明の油脂食品について、その好ましい製造方法に基づいて以下説明する。
本発明の醤油糖類加熱混合物に油脂を添加する際には、本発明の醤油糖類加熱混合物そのものに油脂を添加してもよいが、油脂をより安定に可溶化分散させるため、本発明の醤油糖類加熱混合物に糖を添加し可溶化ベースとして用いることもできる。この際、可溶化ベース中のBrixを好ましくは30%(w/w)以上、さらに好ましくは30〜70%とする。添加する糖の量は、本発明の醤油糖類加熱混合物を得た際の醤油に対する糖類の混和量及び加熱条件により適宜選択することができる。
尚、本発明の醤油糖類加熱混合物又は可溶化ベースの粘度が高い場合には、撹拌を容易にするため、それらに水を加えてもよい。水を加える場合も、Brixは上記の範囲となるようにすることが好ましい。また、本発明の醤油糖類加熱混合物そのものに油脂を添加する場合は、本発明の醤油糖類加熱混合物が上記のBrixの範囲を満たしていることが好ましい。
本発明の醤油糖類加熱混合物に添加する糖としては、グルコース、デキストリン又は水飴が好ましい。その他、本発明の醤油糖類加熱混合物を得る際に醤油に混和する糖類として挙げた、これら以外の糖類を用いてもよい。また、これらの糖は、水溶液の形態で本発明の醤油糖類加熱混合物に添加してもよい。糖と醤油の加熱混合物を得る目的とは異なり、ここで加熱混合物に糖を添加するのは、増粘安定性を高めることが主目的のひとつであるため、添加する糖としては、デキストリン若しくは水飴又はこれらの水溶液が最も好ましい。
また、可溶化ベースに占める本発明の醤油糖類加熱混合物の量は、可溶化ベースのBrixが30%(w/w)以上となる量から適宜選択することができる。例えば、可溶化ベース全量中、本発明の醤油糖類加熱混合物が2〜70%(w/w)となるように選択することが好ましく、醤油糖類加熱混合物を添加する量が少なく、可溶化ベースのBrixが低くなる場合は、添加する糖の量を増やし、適宜Brixを調整する必要がある。可溶化状態にある油脂の安定性から、醤油糖類加熱混合物の量は、3〜40%がより好ましく、3〜30%が最も好ましい。可溶化ベースに占める本発明の醤油糖類加熱混合物の量が2%未満では、可溶化率が30%以下となり、十分な可溶化能を有さない。加熱混合物の含有量が3〜40%の範囲では、可溶化ベースに占める加熱混合物の濃度に概ね比例して可溶化率は増大し、可溶化率は最大で約80%に達する。一方、加熱混合物の含有量が40%を越えるよう添加しても、可溶化率を80%以上とするのは困難であり、また、油脂食品における醤油風味が強くなりすぎ、苦味が生じてしまうため、各種食品に汎用するのには適さない。なお、可溶化率は、可溶化ベースに可溶化することができる油脂の最大量を、油脂食品の重量を基準とした重量パーセント濃度(w/w)で表したものである。
次に、上記可溶化ベース1重量部に対し、油脂を0.02〜4.0重量部加えて、油脂を可溶化する。可溶化ベース1重量部に対し、油脂4.0重量部を加えた際の可溶化率は80%であり、最大可溶化率とほぼ等しい。そのため、可溶化ベース1重量部に対し、油脂4.0重量部を超える量を添加しても可溶化することはできない。
上記可溶化ベースへの油脂の可溶化は、従来の乳化食品の製造に必要とされている高速撹拌機や、電気的分散装置等の高度な乳化装置を必要とせず、スプーンや撹拌棒等による人為的撹拌、又は通常の簡単な撹拌装置、例えば、市販の万能混合撹拌装置や蒸気ジャケット付ニーダー等による穏やかな機械的撹拌よって行うことができる。かかる点で、可溶化状態の本発明の油脂食品は、経済的に製造可能なものである。機械的撹拌を行う場合は、1000rpm以下の回転数が好ましく、油脂がより均一に混ざることから、600rpm以下の回転数であることがさらに好ましい。前記回転数において、油脂が均質に分散するのに必要な十分な時間撹拌を行う。撹拌の時間は特に限定されることはないが、前記回転数において1分間以上撹拌することにより、油脂を均一に分散することができる。このような穏やかな撹拌によっても、非常に簡単に可溶化状態の本発明の油脂食品を得ることができる。むしろ、乳化食品の製造に一般に必要とされている高度な乳化装置、例えばホモジナイザー等の前記の高速撹拌機による撹拌は、可溶化ベースの粘度が高いため適さないことがある。
以上により、長期間保存しても油脂が分離しない、可溶化状態の本発明の油脂食品を得ることができる。
なお、本発明の油脂食品は、該油脂食品に含まれる本発明の醤油糖類加熱混合物、油脂、水、水性溶液及び糖の量を適宜選択して、該油脂食品自体をドレッシング、米菓用調味液、タレ等の乳化食品(最終製品)とすることも可能である。しかしながら、油脂がより安定に乳化又は可溶化された乳化食品とするためには、上述のようにして一旦本発明の油脂食品を製造した後、それを適宜水性調味液に混和して、所望の乳化食品とすることが望ましい。
本発明の油脂食品は、任意の割合の水性調味液に乳化するため、該油脂食品を用いると乳化度又は可溶化度が高く安定な乳化食品(最終製品)を得ることができる。該乳化食品中における本発明の油脂食品の量は、乳化食品の種類に応じて適宜選択することができ、例えば10〜100%(w/w)の範囲から選択することができる(なお、残部が水性調味液である)。
なお、水性調味液の割合を多くして、油脂の稀薄な乳化食品とする場合には、水と油脂の比重差に基づく油滴の浮上分離が起こりやすくなるため、キサンタンガムやローカストビーンガム等のような増粘性の安定剤をあらかじめ水性調味液に溶解して用いることが好ましい。これにより、長期間にわたって、油滴が浮上分離しない安定な乳化食品を得ることができる。
本発明の油脂食品と水性調味液とを混和する方法は特に制限されず、人為的撹拌又は穏やかな機械的撹拌でも十分混和可能であり、また高速撹拌でもよい。
このようにして得られた乳化食品は、必要により加熱して風味を整えたり、又は殺菌して製品とすることができる。
水性調味液として、例えば、従来の乳化食品に準じ、醤油を主体の成分とし、これにみりん、酒類(清酒、ワイン等)、食酢、砂糖、香辛料等を適宜添加し、調理した調味液を用いれば、油脂を均質安定に含有する米菓用調味液、ドレッシング、タレ(例えば焼肉用)、スープ(例えば、ラーメン用の濃縮スープ又はストレートスープ)等の乳化食品が得られる。
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
〔実施例1−1〜1−8、比較例1−1〜1−7〕
(醤油糖類加熱混合物の調製)
市販の濃口醤油(全窒素濃度1.65%(w/v))を逆浸透膜(NTR−7450;日東電工社製)で透過処理し、非透過側から分離して得られた膜濃縮醤油(全窒素濃度2.0%(w/v))500mlと、グルコース500g(無水物換算)を混和して、醤油糖類混合水溶液を調製した。当該混合水溶液を液温85℃で0〜96時間加熱して、それぞれ乳化能を異にする醤油糖類加熱混合物を得た。
(色の測定法)
得られた各醤油糖類加熱混合物の色を測定した。色の測定においては、レシオビーム分光光度計U−1100型spectro photometer(日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、0.1%(w/w)水希釈液の430nmにおける吸光度を測定した。吸光度は、溶液の色に濁りがあると正確な測定ができないため、醤油糖類加熱混合物を水で1,000倍希釈後、0.45ミクロンフィルターであらかじめ濾過して測定した。
なお、以降の実施例においても、吸光度の測定は上記の測定法にて行った。
(乳化油脂食品の製造)
上記で得た醤油糖類加熱混合物13gに水7gを混和し、油脂20gを加え、ホモジナイザー(DIAX900;ハイドルフ社製)により高速撹拌(16,000rpm、30秒間)し、乳化油脂食品を得た。各乳化油脂食品を調製後24時間静置し、油脂の乳化分散の様子を目視にて観察した。醤油糖類加熱混合物を調製する際の加熱時間と、得られた醤油糖類加熱混合物の吸光度及び乳化油脂食品の24時間静置後観察結果との相関を表1に示す。なお、下記表1には、得られた乳化油脂食品のpH及びBrixも併記する。
Figure 2010137574
醤油糖類加熱混合物の0.1%(w/w)水希釈液の430nmにおける吸光度が0.05〜0.40、特に0.10〜0.40である場合、醤油糖類加熱混合物は優れた乳化能を有し、これを用いた乳化油脂食品は24時間後も油脂が均一に分散され、乳化安定性が高かった。一方、加熱時間が短く、醤油糖類加熱混合物の上記吸光度が0.05を下回る場合は、乳化能が低く、長期間にわたって油脂を水相部に安定に分散させることができず、油脂の浮上分離が起こってしまった。また、反対に吸光度が0.40となった場合よりもさらに加熱時間を長くしていくと、反応が過剰に進行したことによって、醤油糖類加熱混合物中に不溶性物質が析出し、乳化能が損なわれ油脂の一部が凝集する欠点を有することが判る。
〔実施例1−9〕
(醤油糖類加熱混合物の調製、及び乳化油脂食品の製造)
市販の溜醤油(全窒素濃度2.2%(w/v))500mlと、グルコース500g(無水物換算)を混和して、醤油糖類混合水溶液を調製した。該醤油糖類混合水溶液を液温80℃で48時間加熱して、0.1%(w/w)水希釈液(1,000倍水希釈液)の430nmにおける吸光度が0.40となる醤油糖類加熱混合物を得た。
該醤油糖類加熱混合物13gに水7gを混和し、油脂20gを加え、ホモジナイザーにより高速撹拌(16,000rpm、30秒間)し、乳化油脂食品を得た。乳化油脂食品を調製後24時間静置し、乳化分散の様子を目視にて確認した。得られた醤油糖類加熱混合物は、油脂を均一に分散させ、乳化安定性が高かった。
以上の実施例1の結果より、0.1%(w/w)水希釈液の430nmにおける吸光度が0.05〜0.40となる本発明の醤油糖類加熱混合物は、優れた乳化能を有し、これを用いた乳化油脂食品は、油脂が均一に分散され、乳化安定性が極めて高いことがわかる。
(醤油糖類加熱混合物の調製)
市販の濃口醤油(全窒素濃度1.65%(w/v))を逆浸透膜(NTR−7450;日東電工社製)で透過処理し、非透過側から分離して得られた膜濃縮醤油(全窒素濃度2.0%(w/v))500mlと、グルコース500g(無水物換算)を混和して、醤油糖類混合水溶液を調製した。当該混合水溶液を液温85℃で48時間加熱し、Brix62%(w/w)、0.1%(w/w)水希釈液(1,000倍水希釈液)の430nmにおける吸光度が0.28となる醤油糖類加熱混合物を得た。
(乳化油脂食品の製造)
上記醤油糖類加熱混合物に、下記表2記載の割合で水を加え、乳化ベースを調製した。該乳化ベースに油脂を等量加え、ホモジナイザー(DIAX900;ハイドルフ社製)により高速撹拌(16,000rpm、30秒間)し、乳化油脂食品を調製した。各油脂食品を調製後24時間静置し、油脂の乳化分散の様子を目視にて観察した。また、各油脂食品を所定量取り、これを水に添加し、スプーンで均一に撹拌して0.1%(w/w)水希釈(乳化液)を調製し、濁度計UT−11(コロナ社製)により濁度を調べた。結果を表2に記載する。
Figure 2010137574
表2の示すとおり、醤油糖類加熱混合物に水を加えた乳化ベースを用いることにより、油脂を安定に乳化分散させることができることが分かる。Brix30〜50%(w/w)の乳化ベースを用いた場合に、乳化安定性が特に高い。
(醤油糖類加熱混合物の調製)
市販の濃口醤油(全窒素濃度1.65%(w/v))500mlと、グルコース500g(無水物換算)を混和して、醤油糖類混合水溶液を調製した。当該混合水溶液を液温85℃で48時間加熱して、醤油糖類加熱混合物(430nmにおける0.1%(w/w)水溶液の吸光度0.28)を得た。
(乳化油脂食品の製造)
次いで、上記醤油糖類加熱混合物28gに、市販の濃口醤油22mlを加えて、醤油糖類加熱混合物の粘度を調整した。次いで、該醤油糖類加熱混合物に、サラダ油(日清オイリオ社製)200gを添加後、ホモジナイザーにて高速撹拌し、サラダ油が均一に分散した乳化油脂食品を得た(表3(1)参照)。
(乳化ドレッシングの製造)
次いで、上記乳化油脂食品に表3(2)に示す水性調味液を混合後、80℃で30分加熱殺菌し、乳化型ドレッシングを調製した。本ドレッシングは、室温で2ヶ月間保存しても、油脂が分離することがなく、ドレッシング中に均一に分散され、乳化安定性が高かった。また、乳化が長期間にわたって安定に保持されたことにより、酸化や空気中に分散してしまうことによる香気成分の低下が起こらず、2ヶ月後においても良好な風味を呈していた。
Figure 2010137574
(醤油糖類加熱混合物の調製)
市販の溜醤油(全窒素濃度2.27%(w/v))500mlにグルコース500gを添加、混合して、醤油糖類混合水溶液を調製した。当該混合水溶液を液温80℃で48時間加熱し、醤油糖類加熱混合物を得た。当該加熱混合物は、430nmにおける吸光度が0.4であった。なお、当該加熱混合物は、pH4.8、Brix50、全窒素濃度1.23%(w/v)であった。
(可溶化油脂食品の製造)
上記醤油糖類加熱混合物に、下表4記載のBrixとなるよう水飴(Brix75%)を混和し、可溶化ベースを得た。次いで、該可溶化ベース1重量部に対し、油脂1重量部を加えてスプーンで撹拌して可溶化し、本発明の可溶化状態の油脂食品を得た。
得られた各油脂食品の性状(油脂が可溶化されているか否か)を、油脂分離の有無を基準として目視にて確認した。また、各油脂食品を所定量取り、これを水に添加し、スプーンで均一に撹拌して0.1%(w/w)水希釈(乳化液)を調製し、濁度計UT−11(コロナ社製)により濁度を調べた。それらの結果を表4に示す。なお、乳化液の濁度が高いほど油脂が均一に分散し、可溶化能が高いことを表している。
Figure 2010137574
表4の結果から、本発明の醤油糖類加熱混合物を含有する可溶化ベースを用いると、油脂が浮上分離することがない、油脂が均一に可溶化した油脂食品を得られることがわかる。
(醤油糖類加熱混合物の調製)
市販の溜醤油500ml(全窒素濃度2.27%(w/v))にグルコース500gを添加混合して、醤油糖類混合水溶液を調製した。当該混合水溶液を液温80℃で48時間加熱し、醤油糖類加熱混合物を得た。該醤油糖類加熱混合物は、430nmにおける吸光度が0.4であった。
(可溶化油脂食品の製造)
上記醤油糖類加熱混合物、水飴(Brix75%)及び水を表5記載の割合にて混和し、可溶化ベースを調製した。該可溶化ベースに、可溶化し得る最大量の油脂を加えてスプーンで撹拌して可溶化し、本発明の油脂食品を得た。尚、水は撹拌を容易にする目的で使用した。得られた本発明の油脂食品の可溶化率を表5に示す。
(比較例2)
比較のため、市販の溜醤油500mlにグルコース500gを添加、混合し、醤油糖類混合水溶液を調製した。次いで、該混合水溶液20gを加熱することなく、そのまま水飴(Brix75%)180g及び水20gに混和し、これに油脂を加えスプーンで撹拌して可溶化して油脂食品を得た。得られた比較例の油脂食品の可溶化率を表5に示す。
Figure 2010137574
表5の比較例の結果から、溜醤油にグルコースを等量添加混合しても、加熱を行わない場合(非加熱混合物の場合)には、該混合物は油脂の可溶化能が低いことがわかる(可溶化率23%)。これに対し、溜醤油にグルコースを等量添加混合し加熱して得られる加熱混合物を用いた場合には、油脂の可溶化能が顕著に向上し、高い可溶化率を有することがわかる。また、可溶化ベース中の加熱混合物の含有量(w/w)が2%、特に3%を超える場合、少ない加熱混合物を用いて、多量の油脂を可溶化することができ、可溶化油脂の高濃度含有食品を得ることができることがわかる。
これら実施例4及び実施例5の結果から明らかなように、本発明の醤油糖類加熱混合物を含有する可溶化ベースを用いると、該可溶化ベースに油脂を混和することで、油脂が均一に可溶化された油脂食品を得ることができる。また、可溶化ベース中の本発明の醤油糖類加熱混合物の含有量が3%(w/w)以上であると、可溶化能が特に高い。
(醤油糖類加熱混合物の調製)
市販の濃口醤油(全窒素濃度1.65%(w/v))を逆浸透膜(NTR−7450;日東電工社製)で透過処理し、非透過側から分離して得られた醤油(全窒素濃度2.0%(w/v))500mlと、グルコース500g(無水物換算)を混和して、醤油糖類混合水溶液を調製した。当該混合水溶液を液温85℃で48時間加熱して、Brix(乾物換算)約50%(w/w)の醤油糖類加熱混合物を調製した。該醤油糖類加熱混合物は、430nmにおける吸光度が0.28であった。
(ユズ風味の可溶化油脂食品の製造)
次いで、上記醤油糖類加熱混合物1重量部に対し、水飴(Brix75%)0.7重量部を添加し、可溶化ベースを調製した。該可溶化ベース1重量部に対し、ユズオイル(曽田香料社製)0.02重量部を少しずつ加えスプーンで撹拌して可溶化し、ユズ風味油脂食品を得た。この油脂食品は、室温で2ヶ月間保存しても、全く油脂の分離がなく、安定であった。
(ユズ風味ポン酢醤油の製造)
実施例6で得られたユズ風味油脂食品を用い、表6記載の原料配合で、乳化食品であるユズ風味ポン酢醤油を調製した。このポン酢醤油は、室温で2ヶ月間保存しても、油脂の分離がなく、乳濁性の安定なものであった。
Figure 2010137574
(醤油糖類加熱混合物の調製)
実施例6に記載の方法で調製した膜濃縮醤油500mlにグルコース500gを添加、混合して、醤油糖類混合水溶液を調製した。当該混合水溶液を液温80℃で48時間加熱し、醤油糖類加熱混合物を得た。該醤油糖類加熱混合物は、430nmにおける吸光度が
0.38であった。
(可溶化油脂食品の製造、及び米菓用調味液の製造)
次いで、上記醤油糖類加熱混合物20gに水飴(Brix75%)80gを添加し、可溶化ベースを調製した。該可溶化ベースに100gに対し、サラダ油(食用油脂)9重量部とユズオイル1重量部の混合油100gを加えスプーンで撹拌して可溶化し、ユズベース油脂食品を得た。
該ユズベース油脂食品80gに、表7記載の水性調味液原料を混和して得られた水性調味液約760gを混和して、乳化食品である乳濁性の米菓用調味液を得た。この調味液は、室温で2ヶ月間保存しても、ユズ風味を濃厚に有し、油脂の分離がなく、乳濁性の安定なものであった。
Figure 2010137574
(ユズ風味を濃厚に有する煎餅の製造)
実施例8で得られた米菓用調味液に、常法により調製した煎餅の素焼きの生地をドブ漬した。次いで、該生地を引き上げ、余分な米菓用調味液を振切り、生地の表面に米菓用調味液を塗布した。次に、常法により温度80℃で乾熱乾燥し、調味液の水分を蒸発させ、ユズ風味を濃厚に有する煎餅を得た。
(乳濁性のワサビベース油脂食品の製造、及び米菓用調味液の製造)
実施例8のユズベース油脂食品の製造において、「サラダ油(食用油脂)9重量部とユズオイル1重量部の混合油100g」を用いる代わりに、「サラダ油(食用油脂)10重量部とマスタードオイル10重量部、ワサビ香料11重量部を混合して得られた混合油111g」を用いる以外は全く同様にして、ワサビベース油脂食品を得た。
該ワサビベース油脂食品30gに、表8記載の水性調味液原料を混和して得られた水性調味液約70gを混和し、乳化食品である乳濁性の米菓用調味液を得た。この調味液は、室温で2ヶ月間室温で保存しても、ワサビ風味を濃厚に有し、油脂の分離がなく、乳濁性の安定なものであった。
Figure 2010137574
(ワサビ風味を濃厚に有する「柿の種」の製造)
まず、柿の種の素焼きの生地を中空の回転釜に入れ、これに実施例10に記載の米菓用調味液を少しずつ加え、生地の表面に均一に塗布した。次に、常法により温度80℃で乾熱乾燥し、調味液の水分を蒸発させ、ワサビ風味を濃厚に有する柿の種を得た。
(醤油糖類加熱混合物の調製)
実施例6に記載の方法で調製した膜濃縮醤油500mlにグルコース500gを添加、混合して、醤油糖類混合水溶液を調製した。当該混合水溶液を液温80℃で48時間加熱し、醤油糖類加熱混合物を得た。該醤油糖類加熱混合物は、430nmにおける吸光度が
0.38であった。
(可溶化油脂食品の製造、及び乳化型ラーメンスープの製造)
次いで、上記醤油糖類加熱混合物に、水飴を少しずつ加えてゆるやかに撹拌し、可溶化ベースを調製した。該可溶化ベースに、サラダ油及び豚脂を少しずつ加えてゆるやかに撹拌して可溶化し、油脂食品を得た。次いで、該油脂食品に、水性調味液を加えて加熱し、ラーメンスープのもとを調製した。尚、各原材料の配合は表9に記載の通りである。
該ラーメンスープのもとを2ヶ月間保存した後、お湯を加えると、油脂が水溶液中に安定に乳化分散され、油脂の浮上分離がないラーメンスープが得られた。このことから、醤油糖類加熱混合物を用いて得られる可溶化油脂食品は、加熱による油脂の浮上分離が起こらず、長期間保存しても油脂を水溶液中に安定に乳化分散させることができることが分かる。
Figure 2010137574

Claims (8)

  1. 醤油と糖類の混合水溶液を加熱してなり、0.1%(w/w)水希釈液の430nmにおける吸光度が0.05〜0.40である醤油糖類加熱混合物。
  2. 上記混合水溶液は、全窒素濃度1.0〜4.5%(w/v)の醤油1重量部に対し糖類0.5〜2.0重量部を混合したものであり、液温70〜95℃で9〜66時間加熱してなる請求項1記載の醤油糖類加熱混合物。
  3. 請求項1又は2記載の醤油糖類加熱混合物に、油脂を添加し乳化又は可溶化してなる油脂食品。
  4. 上記醤油糖類加熱混合物に、Brix50%(w/w)以下となるよう水又は水性調味液を添加、混和してなる乳化ベース1重量部に対し、上記油脂0.02〜1.0重量部を添加し乳化してなる請求項3記載の油脂食品。
  5. 上記醤油糖類加熱混合物に、Brix30%(w/w)以上となるようさらに糖を添加、混和してなる可溶化ベース1重量部に対し、上記油脂0.02〜4.0重量部を添加し可溶化してなる請求項3記載の油脂食品。
  6. 上記可溶化ベース中に含まれる上記醤油糖類加熱混合物の濃度が2〜70%(w/w)である請求項5記載の油脂食品。
  7. 請求項3〜6のいずれかに記載の油脂食品と水性調味液とを混和してなる乳化食品。
  8. 米菓用調味液、ドレッシング、タレ又はスープである請求項7に記載の乳化食品。
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