JPWO2010134518A1 - 電極の表面処理方法および電極ならびに有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 - Google Patents

電極の表面処理方法および電極ならびに有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

[課題]電極の仕事関数を簡便な操作により高める方法、および仕事関数の高い陽極を備え、発光特性(発光効率、寿命)に優れ、輝度ムラや欠陥の少ない良質な発光面を有し漏れ電流の少ない有機EL素子を提供すること。[解決手段]金属酸化物からなる電極と、下記式(1)で表されるシラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物ならびに水を含有する溶液とを接触させる接触工程を含むことを特徴とする電極の表面処理方法、および該方法で表面処理された、金属酸化物からなる陽極の上に、発光層と陰極とがこの順序で積層されてなる有機EL素子。Si(OR)p(X)q(OH)4-p-q・・・(1)〔式(1)において、ORは、それぞれ独立にアルコキシ基またはアリールオキシ基であり、Xは、それぞれ独立に前記OR以外の他の加水分解性基であり、pは1〜4の整数であり、qは0〜3の整数であり、p+q≦4である。〕

Description

本発明は、電極の表面処理方法および電極ならびに有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法に関する。
有機エレクトロルミネッセンス(以下「有機EL」とも記す。)素子は、たとえば図1に示すように、基板1の上に、陽極2、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層5、陰極6をこの順に積層することによって形成される。そして、陽極2に正電圧を、陰極6に負電圧を印加すると、電子輸送層5を介して発光層4に注入された電子と、正孔輸送層3を介して発光層4に注入されたホールとが、発光層4内で再結合して、発光が起こる。
有機EL素子をフルカラーディスプレー、照明用発光素子として応用展開することを考えた場合、素子駆動電圧の低電圧化を行い、更なる高発光効率化を図ることが必要である。このような素子駆動電圧の低電圧化を実現するためには、陽極2からの正孔(ホール)および陰極6からの電子の、発光層4への注入効率を高める必要がある。そして陽極2からの正孔注入効率を高める方法として、陽極2の仕事関数を大きくして、正孔輸送層3とのエネルギー障壁を小さくする方法が挙げられる。
ここで、一般に陽極として用いられるITO(酸化インジウム錫)の場合、原理的には−6.0eV程度の仕事関数を示すと考えられるが、従来行なわれている一般的な有機溶剤等による洗浄を行った場合には、−4.8〜−4.7eV程度の仕事関数しか示さない。これは、陽極の表面に有機溶剤等による残留炭素成分などの汚れが残っているため、またはITO表面の酸素分子が欠損することによると考えられている。このため、洗浄工程の後、UVオゾン洗浄や、酸素プラズマ処理等の処理を行なう場合もある。
一方、陽極金属の仕事関数を大きくする方法として、陽極表面を酸処理する方法が特開平4−14795号公報(特許文献1)や、特開平9−120890号公報(特許文献2)で試みられている。すなわち特許文献1では、陽極の表面を酸処理し、その後有機溶剤で洗浄乾燥することによって、陽極の仕事関数を酸処理前よりも0.1〜0.3eV程度大きくし、このように陽極の仕事関数を大きくすることで素子の駆動電圧の低電圧化を図っている。また特許文献2では、陽極の表面を研磨処理し、次いで酸処理し、さらに有機溶剤による洗浄・乾燥を行うことによって、陽極表面の平坦化、最表面への細孔形成を行い、素子の駆動電圧の低電圧化及び寿命改善を図っている。
しかし、特許文献1や特許文献2に開示される方法では、陽極を酸処理した後、有機溶剤等による洗浄を行っているため、陽極の表面に有機溶剤等による残留炭素分が残り、仕事関数の増大効果は不十分なものであった。また、有機エレクトロルミネッセンス素子を連続駆動した場合、輝度が減少していき、さらに素子の抵抗が増大するという問題もあった。
また特開2001−319777号公報(特許文献3)には、陽極を酸処理した後、洗浄を行なわないで有機発光層等を形成することにより、陽極の仕事関数を大きくして、素子駆動電圧の低電圧化を可能とした素子が提案されているが、この素子の場合、寿命特性が不十分であり、改善の余地があった。
さらに特開2004−63210号公報(特許文献4)には、低圧水銀ランプ照射による紫外線洗浄、エキシマランプ照射による紫外線洗浄、常圧プラズマ洗浄、真空プラズマ洗浄等によって陽極表面を洗浄した後、さらに酸、ハロゲン等により表面処理を行って陽極の仕事関数を高める方法が提案されているが、操作が煩雑であるなどの問題があった。
特開2007−242481号公報(特許文献5)には、金属酸化物からなる電極を、非イオン系界面活性剤および/またはカルボン酸系界面活性剤と接触させることを特徴とする電極の表面処理方法が開示されており、この方法によれば、酸化インジウム錫(以下「ITO」とも記す。)などの金属酸化物からなる電極の仕事関数を容易に高めることができ、またこの方法を用いることにより、陽極の仕事関数を大きくしてホールの注入効率を高め、素子駆動電圧の低電圧化を可能とし、さらに連続駆動時の寿命特性や色度の安定性を改善できると共に抵抗増大を極力抑えた有機EL素子を製造できると記載されている。しかしながら、寿命特性の点でさらなる改善の余地があった。
また特許文献6(米国特許第6127004号明細書)には、有機EL素子を製造する際に、陽極上にプラズマ表面処理によってフッ化炭素化合物からなる膜を形成しておくと有機EL素子の発光効率を高められることが記載されている。
さらに特許文献7(特開平9−63771号公報)には、有機EL素子を製造する際に、ITO陽極上に金属酸化物膜を形成しておくと、有機EL素子の発光効率を高められることが記載され、この金属酸化物としては、RuOx、MoOx、VOxなどが挙げられ、この金属酸化物膜の形成方法としては、電子ビーム蒸着、直流スパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、ICB蒸着法などが挙げられている。
しかしながら、特許文献6および7に記載の発明においては、陽極上に膜を形成するための操作を真空雰囲気で行う必要があり、操作が煩雑である。
一方、特開平9−7770号公報(特許文献8)には、表面が平滑な陽極を用いると、ピンホール等によるショートを防止し、発光輝度および発光効率を向上させ、耐久性および信頼性に著しく優れた有機EL薄膜素子を実現できることが記載されている。
特開平4−14795号公報 特開平9−120890号公報 特開2001−319777号公報 特開2004−63210号公報 特開2007−242481号公報 米国特許第6127004号明細書 特開平9−63771号公報 特開平9−7770号公報
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、電極の仕事関数を簡便な操作により高める方法を提供することを目的とする。
本発明は、仕事関数の高い陽極を備えた有機EL素子を、簡便な操作により製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、発光特性(発光効率、寿命)の向上した有機EL素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、特に発光層を塗布法によって形成する場合に、均一で平滑性の高い発光層を形成することができ、その結果、輝度ムラや欠陥の少ない良質な発光面を有し漏れ電流の少ない有機EL素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、たとえば以下の[1]〜[16]に関する。
[1]
金属酸化物からなる電極と、下記式(1)で表されるシラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物ならびに水を含有する溶液とを接触させる接触工程を含むことを特徴とする電極の表面処理方法。
Si(OR)p(X)q(OH)4-p-q・・・(1)
〔式(1)において、ORは、それぞれ独立にアルコキシ基またはアリールオキシ基であり、
Xは、それぞれ独立に前記OR以外の他の加水分解性基であり、
pは1〜4の整数であり、qは0〜3の整数であり、p+q≦4である。〕
[2]
前記シラン化合物がテトラアルコキシシランであることを特徴とする前記[1]に記載の電極の表面処理方法。
[3]
前記テトラアルコキシシランが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランおよびテトラブトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記[2]に記載の電極の表面処理方法。
[4]
前記溶液が前記シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物をSi原子換算で0.001〜10質量%含むことを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
[5]
前記溶液が、10〜80質量%の水と90〜20質量%の炭素原子数1〜3のアルコール(ただし、両者の合計量は100質量%である。)とを含有することを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれか記載の電極の表面処理方法。
[6]
前記溶液のpHが1.0〜5.0であることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
[7]
前記溶液のpHが9.0〜12であることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
[8]
前記溶液を前記電極表面に塗布する(以下「第1の接触方法」ともいう。)ことにより前記接触工程を行うことを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
[9]
前記塗布の方法が、前記電極表面に前記溶液の液溜まり部を形成し、前記液溜まり部を、前記電極をその表面の面内方向に回転させることにより、前記電極表面の全体を覆うように広げる方法であることを特徴とする前記[8]に記載の電極の表面処理方法。
[10]
前記溶液に前記電極を浸漬する(以下「第2の接触方法」ともいう。)ことにより、または前記溶液を前記電極に吹き付ける(以下「第3の接触方法」ともいう。)ことにより、前記接触工程を行うことを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
[11]
前記接触工程の直後に、電極を水で洗浄する洗浄工程をさらに含むことを特徴とする前記[10]に記載の電極の表面処理方法。
[12]
前記接触工程の後のいずれかの段階で(ただし、前記洗浄工程を含む場合には前記洗浄工程の後のいずれかの段階で)電極を60〜250℃に加熱する加熱工程をさらに含むことを特徴とする前記[1]〜[11]のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
[13]
前記接触工程の後のいずれかの段階で(ただし、前記洗浄工程を含む場合には前記洗浄工程の後のいずれかの段階で)電極に紫外線を照射するUV照射工程をさらに含むことを特徴とする前記[1]〜[12]のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
[14]
前記[1]〜[13]のいずれかに記載の方法で表面処理された、金属酸化物からなる電極。
[15]
前記[1]〜[13]のいずれかに記載の方法で表面処理され、大気中で紫外線光電子分光分析法により測定された仕事関数が−4.9〜−6.0eVであることを特徴とする、酸化インジウム錫からなる電極。
[16]
前記[1]〜[13]のいずれかに記載の方法で表面処理された金属酸化物からなる陽極の表面処理された面の上に、発光層と陰極とがこの順序で積層された有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明の電極の表面処理方法によれば、酸化インジウム錫(以下「ITO」とも記す。)などの金属酸化物からなる電極の仕事関数を容易に高めることができる。
本発明によれば、仕事関数の高い金属酸化物からなる電極(陽極)を備えた有機EL素子を、容易に製造することができる。
本発明によれば、有機EL素子の発光特性(発光効率、寿命)を向上させることができる。
本発明によれば、表面処理された陽極の、発光層形成用溶液に対する濡れ性が向上するため、特に発光層を塗布法によって形成する場合に、均一で平滑性の高い発光層を形成することができ、その結果、輝度ムラや欠陥の少ない良質な発光面を有し漏れ電流の少ない有機EL素子およびその製造方法が提供される。
図1は、本発明の方法により製造される有機EL素子の一実施態様の断面図である。
以下、本発明の、電極の表面処理方法および電極、ならびに有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法についてより詳細に説明する。
[電極の表面処理方法および電極]
<接触工程>
本発明の電極の表面処理方法は、金属酸化物からなる電極と、特定のシラン化合物(1)および/またはその部分加水分解縮合物ならびに水を含有する溶液(以下「電極処理用溶液」ともいう。)とを接触させる接触工程(または「接触処理工程」ともいう。)を含むことを特徴としている。
なお、この電極を有機EL素子の陽極として使用する場合は、通常、金属酸化物からなる電極が付いた基板(以下「電極付き基板」とも記す。)と前記電極処理用溶液とを接触させることによりこの接触工程を行う。
前記電極の材料である金属酸化物としては、具体的には、酸化インジウム錫(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)等が挙げられる。
本発明で用いられるシラン化合物(1)は、下記式(1)で表される。
Si(OR)p(X)q(OH)4-p-q・・・(1)
〔式(1)において、ORは、それぞれ独立にアルコキシ基またはアリールオキシ基であり、
Xは、それぞれ独立に前記OR以外の他の加水分解性基であり、
pは1〜4の整数であり、qは0〜3の整数であり、p+q≦4である。〕
上記アルコキシ基の例としては、炭素数1〜15のアルコキシ基が挙げられ、より具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基およびデシルオキシ基が挙げられ、中でも、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましい。
上記アリールオキシ基の例としては、炭素数6〜15のアリールオキシ基が挙げられ、より具体的には、フェノシキ基およびベンジルオキシ基が挙げられる。
上記他の加水分解性基Xの例としては、塩素、臭素等のハロゲノ基、エステル基(−O−COR;Rは、炭素数1〜15のアルキル基(例:メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基)、または炭素数6〜15のアリール基(例:フェニル基、ナフチル基))、アミノ基が挙げられる。
上記アルコキシシランの具体例としては、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラヘキシルオキシシラン、テトラオクチルオキシシラン、テトラデシルオキシシラン等のテトラアルコキシシラン;
テトラフェノシキシラン、テトラベンジルオキシシラン等のアリールオキシシラン;
メトキシトリエトキシシラン、メトキシトリブトシキシラン、メトキシトリオクチルオキシシラン、エトキシトリプロポキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、ブトキシトリメトキシシラン、ブトキシトリエトキシシラン、フェノキシトリエトキシシラン;
ジエトキシジメトキシシラン、ジエトキシジブトシキシラン;
クロロトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、トリクロロエトキシシラン;
ジアセトキシジメトキシシラン、クロロメトキシトリエトキシシラン、6−クロロヘキシルオキシトリメトキシシラン、6,6,6−トリフルオロヘキシルオキシトリメトキシシラン、4−クロロベンジルオキシトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)ジγ−アミノジメトキシシランなどが挙げられる。
これらの中では、テトラアルコキシシランが好ましい。テトラアルコキシシランが用いられると、他の化合物、たとえば、ハロゲノ基等の前記他の加水分解性基を含む化合物が用いられる場合と比べて、その加水分解反応の進行が比較的緩やかであり、またゲル化が起き難いため、加水分解反応の制御が容易であり、本発明の表面処理方法による電極の表面処理の再現性が高い。
さらに、テトラアルコキシシランの中でも、入手容易性、取扱い容易性、副生物の取扱い容易性などの観点からテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランおよびテトラブトキシシランが好ましく、テトラエトキシシランが特に好ましい。
これらの化合物は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記電極処理用溶液は水を含んでいる。
また、前記電極処理用溶液は、好ましくは水以外の有機溶媒を含む。この場合の水の割合は、水と前記溶媒との合計量を100質量%とすると、0.1質量%以上、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは15〜60質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。なお、この割合は、前記電極処理用溶液中での前記シラン化合物(1)の加水分解の開始時における割合である。
水以外の有機溶媒が存在すると、前記シラン化合物(1)および/またはその部分加水分解縮合物の溶解性を高めて前記電極処理用溶液をより均一化し、この溶液を用いた電極の表面処理をより均一に行うことができる。
前記溶媒としては、水と相溶し、水酸基を有する化合物およびエーテル結合を有する化合物が好ましい。
前記水酸基を有する化合物としては、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセルソルブ類が挙げられ;
前記エーテル結合を有する化合物としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類が挙げられる。これらの中でも、アルコール類および環状エーテル類がさらに好ましい。
これらの化合物は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記電極処理用溶液は、好ましくは、水と炭素数1〜3のアルコールとを含み、この場合の水の割合は、水とアルコールとの合計量を100質量%とすると、0.1質量%以上、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは15〜60質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。なお、この割合は、前記電極処理用溶液中での前記シラン化合物(1)の加水分解の開始時における割合である。
前記金属酸化物電極と前記電極処理用溶液とを接触させると、前記金属酸化物電極の表面に、前記シラン化合物(1)の加水分解縮合物からなる膜が形成されるのではないかと考えられる。
加水分解縮合物を生じるシラン化合物は前記シラン化合物(1)には限られないが、本発明の表面処理方法においては、前記シラン化合物(1)を用いることにより、再現性よくかつ均一に表面処理を行うことができる。この理由としては、前記シラン化合物(1)の加水分解速度が過度に高くないため加水分解反応の制御が容易であること、および加水分解反応によって生じる副生物がアルコール等であり水との相溶性が高いため、加水分解反応が進行しても溶液の均質性が高いことが考えられる。
前記シラン化合物(1)および加水分解に伴い生成するその重縮合化合物は、一般的に水への溶解性は低く、エタノールなどのアルコール類やTHF等の極性有機溶媒への溶解性がより高い。このため、溶媒として水以外の極性溶媒を併用すると、加水分解反応中に沈殿を起こさず均一な反応を進めることができる。
前記電極処理用溶液は、加水分解反応の進行が緩やかになるため加水分解反応の制御がより容易になり、表面処理の再現性をより高められるというという観点からは、酸性(たとえばpH=1.0〜5.0、好ましくは1.5〜5.0)であることが好ましく、たとえば前記電極の材質がITOである場合には、pHは、好ましくは1.5〜5.0である。
一方、耐久性を高めるという観点からは、塩基性(たとえばpH=9.0〜12、好ましくは9.0〜11)であることが好ましく、たとえば前記電極の材質がITOである場合には、pHは、好ましくは9.0〜11である。
なお、上記のpHは、前記電極処理用溶液中での前記シラン化合物(1)の加水分解開始時におけるpHである。
前記電極処理用溶液中の前記アルコキシシランの濃度は、Si原子換算で、通常10質量%以下であり、好ましくは0.001〜5質量%であり、より好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜1質量%である。前記濃度が高いと、前記接触工程に要する時間を短くすることができ、前記濃度が低いと前記接触工程の再現性および制御が容易になり前記接触工程が安定化し、また接触工程後の前記溶液の洗浄が容易となる。一方、前記濃度がこの範囲より高いと、前記接触工程の再現および制御が困難となったり、前記接触工程終了後に電極表面から前記溶液を除去することが困難になったりする場合があり、前記濃度がこの範囲よりも低いと、前記接触工程に要する時間が長くなったり、接触処理工程中の溶液の濃度変化が接触処理の程度に及ぼす影響が大きくなり、接触処理工程が不安定になったりする場合がある。
前記接触工程を不溶物、ゲル分を含む溶液を用いて行うと、不溶物、ゲル分が前記電極または前記電極付き基板表面に付着するために、電極の表面処理が均質に行われなくなり、この電極を有機EL素子の陽極として用いた場合に、有機EL素子の発光面で輝度ムラが発生することがある。このため、前記溶液を調製する際には、攪拌により溶液を均一とし、濾過により溶液中の不溶物、ゲル分などを除去することが好ましい。この濾過に用いる濾過フィルターの平均ポアサイズは、好ましくは0.5μm以下であり、さらに好ましくは0.2μm以下であり、その下限値は、たとえば0.05μmである。
前記電極処理用溶液の粘度は、好ましくは、前記電極処理用溶液に前記電極を浸漬したり、前記電極処理用溶液を前記電極に吹き付けたり、前記電極処理用溶液を前記電極に塗布したりできる程度の粘度(JIS Z 8803に準拠、0.1〜100mPa・s程度)である。
前記電極処理用溶液は、界面活性剤をさらに含んでいても良い。界面活性剤を用いると、前記電極処理用溶液の表面張力が低下し、前記電極処理用溶液が前記電極に濡れやすくなるため、上述した接触処理をより均一に行うことができる。
この界面活性剤としては、具体的には、非イオン系界面活性剤および/またはカルボン酸系界面活性剤が使用される。
前記非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アシルグリセリンなどが挙げられ、前記カルボン酸系界面活性剤としては、脂肪族モノカルボン酸塩(脂肪酸石けん)、アルカノイルサルコシンなどが挙げられる。
これらの界面活性剤は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記接触工程は、好ましくは、前記電極処理用溶液を処理対象である電極または電極付き基板に塗布する(第1の接触方法)ことにより、前記電極処理用溶液に処理対象である電極または電極付き基板を浸漬する(第2の接触方法)ことにより、または前記電極処理用溶液を処理対象である電極または電極付き基板に吹き付ける(第3の接触方法)ことにより行われる。これらの方法で接触工程が行われると、電極または電極付き基板の表面全体が同時にかつ均一に処理される。これらの方法の中でも、電極または電極付き基板の表面を特に均一に処理できる点で、第1の接触方法が好ましい。電極または電極付き基板の表面が均一に処理されたことは、たとえば、この処理された電極を用いて作成された有機EL素子の輝度ムラが小さいことなどから確認できる。
(第1の接触方法)
前記第1の接触方法により接触工程を行う場合、前記電極処理用溶液を処理対象に塗布する方法としては、前記電極表面に前記電極処理用溶液の液溜まり部を形成し、前記液溜まり部を、前記電極をその表面の面内方向に回転させることにより、前記電極表面の全体を覆うように広げる方法(以下「回転法」ともいう。)が挙げられる。回転法では、たとえば、回転ヘッドに固定された電極または電極付き基板表面の回転軸付近に、前記溶液を滴下するなどして液溜まり部を形成し、次に電極または電極付き基板をその重心を軸とした面内方向に高速で回転させることにより、電極または電極付き基板の表面の全体に前記溶液の膜を形成する。この回転により、余分な量の前記溶液は除去される。
回転法で塗布を行なった場合には、電極または電極付き基板の表面の全体に前記溶液膜が均一な厚さで均質に形成されるため、電極または電極付き基板の表面を均一に処理することができる。
回転法は、後述する第2の接触方法および第3の接触方法と比較して、電極または電極付き基板の表面をより均一にかつ短時間で処理できる点で好ましい。また、前記回転の速度を調節することで電極の表面処理の程度を微調整できるという利点もある。
回転法としては、具体的には、スピンコートおよびキャスティングの手法が挙げられ、その実施には、従来公知のスピンコート装置およびキャスティング装置を使用することができる。
回転速度は、電極または電極付き基板の大きさまたは重量にもよるが、通常、毎分10回転から毎分10000回転程度である。回転速度を小さくするほど、電極または電極付き基板の表面に残留する溶液の膜の厚さは大きくなり、表面処理を促進することができ、回転速度を大きくするほど、前記厚さは小さくなり、表面処理を抑えることができる。
前記電極処理用溶液を処理対象に塗布する方法としては、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法およびインクジェットプリント法等の印刷法も挙げられる。
印刷法を用いる場合、従来公知の印刷装置を用い、印刷で使用するインクに替えて前記溶液を用いることにより、電極または電極付き基板の表面に前記溶液の膜を均一な厚さで形成できる。
印刷法による前記溶液の塗布に要する時間は、通常1分以内、好ましくは0.1秒〜5秒である。
前記電極処理用溶液を処理対象に塗布する方法としては、ディップコート法も挙げられる。
ディップコート法を用いる場合、前記溶液が入った槽を準備し、まず、電極または電極付き基板を、その処理面の法線方向が前記溶液の液面に対して垂直になるように保持したまま前記溶液内に浸漬させる。次に、電極または電極付き基板を、前記溶液の液面に対して垂直方向に一定の速度で引き上げる。こうすることで、電極または電極付き基板表面に前記溶液の膜を均一な厚さで均質に形成できるため、電極または電極付き基板の表面を均一に処理することができる。また、引き上げ速度を調節することで、表面処理の程度を微調整できる。
ディップコート法には、従来公知のディップコート装置を使用することができる。引き上げ速度は、通常、毎秒0.1mmから毎秒100mmである。速度を小さくするほど、電極または電極付き基板の表面に形成される溶液の膜の厚さは小さくなり、速度を大きくするほど、前記膜の厚さは大きくなる。
ディップコート法による前記溶液の塗布に要する時間(すなわち、基板を浸漬し始めてから引き上げ終わるまでの時間)は、通常5分以内、好ましくは30秒〜3分である。
前記電極処理用溶液を処理対象に塗布する方法としては、スプレーコート法も挙げられる。
スプレーコート法を用いる場合、電極または電極付き基板の表面に、たとえばスプレーガンを用いて、溶液を噴霧し、均一な厚さの前記溶液の膜を形成する。
スプレーコート法による前記溶液の塗布に要する時間は、通常5分以内、好ましくは1秒〜1分である。
第1の接触方法によれば、電極または電極付き基板の表面に、前記溶液の膜を均一な厚さで形成することができる。また、前記溶液の膜厚を調節することにより、表面処理の程度を調節することができ、溶液の膜厚が大きいほど表面処理を促進することができ、溶液膜厚は小さいほど表面処理を抑えることができる。これらの方法は、後述する第2の接触方法または第3の接触方法と比較して、電極または電極付き基板の表面をより均一に処理できる点で好ましい。
第1の接触方法(回転法、印刷法、ディップコート法、スプレーコート法)により接触工程を行なう場合、形成される溶液の膜の厚さは、好ましくは0.1〜500μm、より好ましくは0.5〜250μmである。
また、第1の接触方法(回転法、印刷法、ディップコート法、スプレーコート法)により接触工程を行なう場合には、塗布操作に要する時間が通常は比較的短いため、電極処理用溶液を電極または電極付き基板に塗布する操作の終了時において、電極または電極付き基板の表面の改質(表面処理)が充分に進行していない場合もあり得る。しかしながら、このような場合であっても、塗布操作の終了直後に、表面に前記溶液が残存する電極または電極付き基板を大気中に曝露することによって、電極または電極付き基板の表面処理を進行させることができる。第1の接触方法が回転法であった場合には、曝露の際に、電極または電極付き基板の回転が維持されていても良い。後述する洗浄工程が行なわれる場合には、曝露時間、すなわち塗布操作終了から洗浄工程開始までの時間は、通常10秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上である。上限値は特に制限はなく、たとえば1日であってもよい。
(第2の接触方法)
前記第2の接触方法により接触工程を行う場合には、前記溶液の濃度および温度、浸漬の時間、ならびに攪拌装置を管理することで、電極の表面処理の再現性を高めることができる。
第2の接触方法において、電極または電極付き基板を前記溶液に浸漬する時間は、通常5分以上であり、前記溶液のpH等に大きく影響されるので一概には決められないが、目安としては、好ましくは15分以上、より好ましくは30分以上であり、その上限は特に制限されないが、たとえば48時間であってもよい。
第2の接触方法により接触工程が行われる場合には、前記電極表面を、より一層ムラ無く処理する観点から、浸漬の際に、前記電極を揺り動かしたり、前記溶液を攪拌したり、前記溶液に超音波を照射したりすることが好ましい。
第2の接触方法を適用した場合、電極処理用溶液への電極または電極付き基板の浸漬の終了時には、電極または電極付き基板の表面の改質(表面処理)は充分に進行している。
第2の接触方法により接触工程を行った後には、後述するように、洗浄工程を設けることが好ましい。
(第3の接触方法)
前記第3の接触方法により接触工程を行う場合、溶液を吹き付けるための部材を固定し、この部材に対して電極または電極付き基板を移動させながら前記溶液の吹き付けを行えば、電極または電極付き基板を連続的に処理することができ、また、大型の電極付き基板も容易に処理できる。
第3の接触方法において、電極または電極付き基板に前記溶液を吹き付ける時間は、通常5分以上、好ましくは10分〜1時間である。
第3の接触方法により接触工程が行われる場合には、前記電極表面を、より一層ムラ無く処理する観点から、前記電極全体に前記溶液を吹き付けたり、超音波ノズルを用いて前記溶液を吹き付けたり、2流体ノズルを用いて前記溶液を吹き付けたり、高圧ノズルを用いて前記溶液を吹き付けたりすることが好ましい。
第3の接触方法を適用した場合、電極または電極付き基板への電極処理用溶液の吹き付けの終了時には、電極または電極付き基板の表面の改質(表面処理)は充分に進行している。
第3の接触方法により接触工程を行った後には、後述するように、洗浄工程を設けることが好ましい。
接触工程における前記溶液の温度は、好ましくは10℃〜90℃であり、さらに好ましくは25〜60℃である。温度がこの範囲よりも高いと、接触工程に要する時間が短くなり過ぎて、電極の表面処理の再現困難となったり、前記電極表面が腐食(溶解)したり、溶媒の蒸発量が増えて前記溶液の濃度変化が大きくなり、電極を、一の電極内で、また複数の電極間で均一に表面処理することが困難となったりする場合がある。一方、温度がこの範囲よりも低いと、接触工程に要する時間が過度に長くなる場合がある。
前記接触工程に要する時間は、溶液濃度や接触工程における温度などを考慮しつつ、上記の範囲内で適宜設定すればよい。
前記接触工程は、大気圧下で行うことできるため、真空チャンバーの使用等の煩雑な操作を必要としない。
本発明の表面処理方法によれば、金属酸化物からなる電極の仕事関数が高められる。ここで「仕事関数が高い」とは「仕事関数の絶対値が大きい」の意味である。
本発明の表面処理方法によれば、表面処理前の電極の表面状態にもよるが、たとえば電極がITO電極である場合には、その仕事関数(絶対値)を、接触前の通常−4.8eV程度から、−4.9eV以上、好ましくは−5.0〜−6.0eVにまで高めることができる。
なお、前記仕事関数の値は、大気中で紫外線光電子分光分析法により測定された値である。
本発明の表面処理方法によれば、金属酸化物からなる電極の処理面の平滑性を高めることができる。たとえば電極がITO電極である場合には、表面処理の条件等にもよるが、表面処理されたITO電極の表面粗さ(Ra)は、好ましくは0.6nm以下、さらに好ましくは0.4nm以下である。
また、表面が粗い電極を有機EL素子の陽極として用いた場合には、陽極表面の凸部によって発光層にピンホールが形成され、有機EL素子にショートや漏れ電流を生じさせると考えられるところ、本発明の方法で表面処理された電極は表面が平滑であるから、この電極を有機EL素子の陽極として用いた場合に、有機EL素子のショートを防止し、かつ漏れ電流を低減できると考えられる。
本発明の電極は、本発明の電極の表面処理方法によって表面処理された、金属酸化物からなる電極であり、この電極を有機EL素子の陽極として用いると、有機EL素子の発光効率が高め、発光寿命を延ばすことができ、また、均一で平滑性の高い発光層を形成することができ、輝度ムラや欠陥のない良質な発光面を有し漏れ電流の無い有機EL素子を製造することができる。
また本発明の電極は、表面処理されていない電極よりも、有機EL素子の有機EL化合物層形成に用いられる化合物溶液に対する濡れ性が高い。したがって、本発明の電極を有機EL素子の陽極として用いると、陽極上に化合物溶液を均一に塗布し、均一な有機EL化合物層を形成することができる。特に、有機EL化合物が高分子化合物である場合に、その効果は顕著である。
電極がITOからなる場合、表面処理の条件などにもよるが、ITO電極の水に対する接触角は、表面処理前は10〜90°程度であるのに対し、表面処理により5°以下とすることができる。
<洗浄工程>
前記接触工程後の電極に残存する溶液を放置すると、電極の表面処理がさらに進行するために、また溶媒蒸発後に電極表面に溶質が析出するために、前記電極を有機EL素子の陽極として使用した場合であれば、有機EL素子の電気的短絡、発光面の傷などが生じることがある。このため、本発明の電極の表面処理方法においては、特に前記接触工程を第2の接触方法または第3の接触方法により行った場合には、前記接触工程の後に、電極を水で洗浄する洗浄工程をさらに設け、接触工程後の電極表面から、前記溶液を除去することが好ましい。また、前記接触工程を第2の接触方法または第3の接触方法により行った場合には、接触工程の直後(たとえば1分以内、好ましくは30秒以内)に、この洗浄工程を開始することが好ましい。
一方、第1の接触方法(回転法、印刷法、ディップコート法、スプレーコート法)により接触工程が行われた場合には、洗浄工程を設けてもよいが、電極または電極付き基板上に残留する前記溶液の量が少ないため、一般的には洗浄工程を省略できることが多い。
前記洗浄の方法としては、ブラシ洗浄法(電極または電極付き基板に水をかけながら、該電極または電極付き基板を、回転させたロール状ブラシで洗浄する方法)、二流体洗浄法(圧縮空気(0.2〜1.0MPaに加圧)と洗浄水(0.2〜1.0MPaに加圧)とを、ノズルを通じて同時に電極または電極付き基板に噴射して、該電極または電極付き基板を洗浄する方法)、超音波洗浄法(内部に超音波発信部を備えたノズルから超音波を帯びた水を電極または電極付き基板に噴射して、該電極または電極付き基板を洗浄する方法)、高圧ジェット洗浄法(0.2〜10.0MPaに加圧した水を電極または電極付き基板に噴射して、該電極または電極付き基板を洗浄する方法)およびスピン洗浄法(電極または電極付き基板を、回転させつつそこに水をかけながら洗浄する方法)などが挙げられる。これらの方法により洗浄を行うと、前記溶液をより確実に除去することができる。前記ブラシ洗浄法に用いられるブラシの材質としてはナイロン、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。
またブラシ洗浄法で洗浄する場合には、前記溶液をより確実に除去するために、電極または電極付き基板をあらかじめ水と接触(例:電極等へ水を噴射、水中へ電極等を浸漬)させることが好ましい。
<加熱工程>
また、本発明の電極の表面処理方法は、前記接触工程の後(前記洗浄工程がある場合には洗浄工程の後)に電極を60〜250℃、好ましくは80〜200℃に加熱する加熱工程をさらに含むことが好ましい。前記電極を有機EL素子の陽極として用いる場合であれば、この加熱工程は、有機EL素子の発光層を形成する以前に行われる。この加熱の手段としては、赤外線照射、温風照射、ハロゲンランプ照射、UVランプなどによる紫外線照射などが挙げられる。
この加熱工程を設けると、電極の表面処理による効果がさらに高められる。
たとえば、前記電極を有機EL素子の陽極として用いる場合であれば、有機EL素子の発光効率がさらに高められる。その機構としては、たとえば、前記の接触工程によって電極上の一部に水が残存、または水酸基(≡Si−OH)が形成されると、この水または水酸基由来の水が、経時的に発光層(有機EL層)を通過し、Ba、Ca、アルカリ金属などから構成される陰極バッファー層を劣化させ、その結果発光効率が低下すると考えられるところ、この加熱工程により電極表面が脱水されるため、陰極バッファー層がせず、その結果発光効率が向上することが考えられる。
また、加熱工程を経た電極または電極付き基板の表面に水分または有機物が吸着することを防止するために、電極または電極付き基板を、加熱処理後速やかに、水分または有機物を含まない雰囲気(たとえば、窒素、アルゴン、乾燥空気)中に移すことが好ましく、加熱処理を該雰囲気中で行うことがさらに好ましい。
<UV照射工程>
また、本発明の電極の表面処理方法は、前記接触工程の後(前記洗浄工程がある場合には洗浄工程の後)に電極に紫外線(波長領域:200〜400nm)を照射するUV照射工程をさらに含むことが好ましい。前記電極を有機EL素子の陽極として用いる場合であれば、この加熱工程は、有機EL素子の発光層を形成する以前に行われる。本発明の電極の表面処理方法が前記加熱工程を有する場合であれば、UV照射工程は、該加熱工程の前、後および加熱工程と同時のいずれの段階で行われてもよい。
紫外線の光源としては、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ジュウテリウムランプなどが挙げられる。
紫外線照射量は、被照射体(電極または電極付き基板)において、好ましくは0.01〜10J/cm2である。
紫外線照射量は、電極または電極付き基板の全面に渡って均一に行うことが好ましく、一度に全面に紫外線を照射できない場合であれば、電極または電極付き基板、あるいは紫外線の光源を移動させることにより全面への照射を行ってもよい。
[有機EL素子およびその製造方法]
本発明の有機EL素子は、前記方法で表面処理された金属酸化物からなる電極(陽極)の表面処理された面の上に発光層と陰極とがこの順序で積層された構造を有している。
このような本発明の有機EL素子は、前記方法で表面処理された金属酸化物からなる電極(陽極)の表面処理された面の上に、発光層と陰極とをこの順序で積層することにより製造することができる。
以下、本発明の有機EL素子の構成を説明する。
<1.素子構成>
図1は、本発明の有機EL素子構成の一例を示す断面図であり、透明基板上に設けた陽極と陰極の間に正孔輸送層、発光層、電子輸送層を順次設けたものである。
また、本発明の有機EL素子の構成は図1の例に限定されず、陽極と陰極の間に順次、1)陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層、2)陽極バッファー層/発光層/電子輸送層、3)陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層、4)陽極バッファー層/正孔輸送性化合物、発光性化合物、電子輸送性化合物を含む層、5)陽極バッファー層/正孔輸送性化合物、発光性化合物を含む層、6)陽極バッファー層/発光性化合物、電子輸送性化合物を含む層、7)陽極バッファー層/正孔電子輸送性化合物、発光性化合物を含む層、8)陽極バッファー層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層を設けた素子構成などを挙げることができる。また、図1に示した発光層は1層であるが、発光層を2層以上有していてもよい。さらに、陽極バッファー層を用いずに直接的に、正孔輸送性化合物を含む層が陽極の表面に接していてもかまわない。
なお、本明細書中においては、特に断りのない限り、電子輸送性化合物、正孔輸送性化合物、発光性化合物の全てあるいは一種類以上からなる化合物を有機EL化合物、また層を有機EL化合物層と呼ぶこととする。
<2.陽極>
本発明の有機EL素子は、陽極として、前記方法で表面処理された金属酸化物からなる電極を有している。
前記電極としては、−5〜80℃の温度範囲で面抵抗が好ましくは1000オーム□以下、より好ましくは100オーム□以下であり、かつアルカリ性水溶液に対してその電気抵抗が顕著に変化しない物質を用いることができる。
有機EL素子の陽極側から光を取り出す場合(ボトムエミッション)には、陽極は可視光に対して透明(380〜680nmの光に対する平均透過率が50%以上)であることが必要であるから、陽極の材料としては、酸化インジウム錫(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)などが挙げられ、有機EL素子の陽極として入手が容易であることを考慮すると、これらの中でもITOが好ましい。
また、有機EL素子の陰極側から光を取り出す場合(トップエミッション)には、陽極の光透過度は制限されず、陽極の材料としては、ITO、IZO、ステンレス、あるいは銅、銀、金、白金、タングステン、チタン、タンタルもしくはニオブの単体、またはこれらの合金を使用できる。
陽極の厚さは、ボトムエミッションの場合には、高い光透過率を実現するために、好ましくは2〜300nmであり、トップエミッションの場合には、好ましくは2nm〜2mmである。
<3.陽極バッファー層:バイトロンなどを使う場合>
陽極バッファー層をウェットプロセスにて塗布して作製する場合には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法などを用いて成膜することが出来る。
上記ウェットプロセスによる成膜で用い得る化合物は、陽極表面とその上層に含まれる有機EL化合物に良好な付着性を有した化合物であれば特に制限はないが、これまで一般に用いられてきた陽極バッファーを適用することがより好ましい。例えば、ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸塩との混合物であるPEDOT−PSS、ポリアニリンとポリスチレンスルホン酸塩との混合物であるPANIなどの導電性ポリマーを挙げることができる。さらに、これら導電性ポリマーにトルエン、イソプロピルアルコールなどの有機溶剤を添加して用いてもよい。また、界面活性剤などの第三成分を含む導電性ポリマーでもよい。前記界面活性剤としては、例えばアルキル基、アルキルアリール基、フルオロアルキル基、アルキルシロキサン基、硫酸塩、スルホン酸塩、カルボキシレート、アミド、ベタイン構造、及び第4級化アンモニウム基からなる群から選択される1種の基を含む界面活性剤が用いられるが、フッ化物ベースの非イオン性界面活性剤も用い得る。
<4.有機EL化合物>
本発明の有機EL素子における有機EL化合物層、すなわち発光層、正孔輸送層、及び電子輸送層に使用する化合物としては、低分子化合物及び高分子化合物のいずれをも使用することができる。
本発明の有機EL素子の発光層を形成するための有機EL化合物としては、大森裕:応用物理、第70巻、第12号、1419−1425頁(2001年)に記載されている発光性低分子化合物及び発光性高分子化合物などを例示することができる。この中でも、素子作製プロセスが簡素化されるという点で発光性高分子化合物が好ましく、発光効率が高い点で燐光発光性化合物が好ましい。従って、特に燐光発光性高分子化合物が好ましい。
また、発光性高分子化合物は、共役発光性高分子化合物と非共役発光性高分子化合物とに分類することもできるが、中でも非共役発光性高分子化合物が好ましい。
上記の理由から、本発明で用いられる発光材料としては、燐光発光性非共役高分子化合物(前記燐光発光性高分子であり、かつ前記非共役発光性高分子化合物でもある発光材料)が特に好ましい。
本発明の有機EL素子における発光層は、好ましくは、燐光を発光する燐光発光性単位とキャリアを輸送するキャリア輸送性単位とを一つの分子内に備えた、燐光発光性高分子を少なくとも含む。前記燐光発光性高分子は、重合性置換基を有する燐光発光性化合物と、重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物とを共重合することによって得られる。燐光発光性化合物はイリジウム、白金および金の中から一つ選ばれる金属元素を含む金属錯体であり、中でもイリジウム錯体が好ましい。
前記重合性置換基を有する燐光発光性化合物としては、例えば下記式(E−1)〜(E−49)に示す金属錯体の一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換した化合物を挙げることができる。
Figure 2010134518
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Figure 2010134518
Figure 2010134518
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なお、上記式(E−35)、(E−46)〜(E−49)において、Phはフェニル基を表す。
これらの燐光発光性化合物における重合性置換基としては、例えばビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアミド基及びその誘導体などが挙げられ、中でもビニル基、メタクリレート基、スチリル基及びその誘導体が好ましい。これらの置換基は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を介して金属錯体に結合していてもよい。
前記重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物は、ホール輸送性および電子輸送性の内のいずれか一方または両方の機能を有する有機化合物における一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換した化合物を挙げることができる。このような化合物の代表的な例として、下記式(E−50)〜(E−67)に示した化合物を挙げることができる。
Figure 2010134518
Figure 2010134518
例示したこれらのキャリア輸送性化合物における重合性置換基はビニル基であるが、ビニル基をアクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアミド基及びその誘導体などの重合性置換基で置換した化合物であってもよい。また、これらの重合性置換基は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を介して結合していてもよい。
重合性置換基を有する燐光発光性化合物と、重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物の重合方法は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、付加重合のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましい。また、重合体の分子量は重量平均分子量で1,000〜2,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。ここでの分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定されるポリスチレン換算分子量である。
前記燐光発光性高分子は、一つの燐光発光性化合物と一つのキャリア輸送性化合物、一つの燐光発光性化合物と二つ以上のキャリア輸送性化合物を共重合したものであってもよく、また二つ以上の燐光発光性化合物をキャリア輸送性化合物と共重合したものであってもよい。
燐光発光性高分子におけるモノマーの配列は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれでもよく、燐光発光性化合物構造の繰り返し単位数をm、キャリア輸送性化合物構造の繰り返し単位数をnとしたとき(m、nは1以上の整数)、全繰り返し単位数に対する燐光発光性化合物構造の繰り返し単位数の割合、すなわちm/(m+n)の値は0.001〜0.5が好ましく、0.001〜0.2がより好ましい。
燐光発光性高分子のさらに具体的な例と合成法は、例えば特開2003−342325号公報、特開2003−119179号公報、特開2003−113246号公報、特開2003−206320号公報、特開2003−147021号公報、特開2003−171391号公報、特開2004−346312号公報、特開2005−97589号公報に開示されている。
本発明の方法により製造される有機EL素子における発光層は、好ましくは前記燐光発光性化合物を含む層であるが、発光層のキャリア輸送性を補う目的で正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物が含まれていてもよい。これらの目的で用いられる正孔輸送性化合物としては、例えば、TPD(N,N'−ジメチル−N,N'−(3−メチルフェニル)−1,1'−ビフェニル−4,4'ジアミン)、α−NPD(4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)、m−MTDATA(4、4',4''−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)などの低分子トリフェニルアミン誘導体や、ポリビニルカルバゾール、前記トリフェニルアミン誘導体に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平8−157575号公報に開示されているトリフェニルアミン骨格の高分子化合物、ポリパラフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレンなどが挙げられ、また、電子輸送性化合物としては、例えば、Alq3(アルミニウムトリスキノリノレート)などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアリールボラン誘導体などの低分子材料や、上記の低分子電子輸送性化合物に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平10−1665号公報に開示されているポリPBDなどの既知の電子輸送性化合物が使用できる。
<5.有機EL化合物層の形成法>
上記の有機EL化合物層は、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法などにより形成することが可能である。発光性低分子化合物の場合は主として抵抗加熱蒸着法及び電子ビーム蒸着法が用いられ、発光性高分子化合物の場合は主にスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法が用いられる。
<6.正孔ブロック層>
また、正孔が発光層を通過することを抑え、発光層内で電子と効率よく再結合させる目的で、発光層の陰極側に隣接して正孔ブロック層を設けてもよい。この正孔ブロック層には発光性化合物より最高占有分子軌道(Highest Occupied Molecular Orbital;HOMO)準位の深い化合物を用いることができ、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、アルミニウム錯体などを例示することができる。
さらに、励起子(エキシトン)が陰極金属で失活することを防ぐ目的で、発光層の陰極側に隣接してエキシトンブロック層を設けてもよい。このエキシトンブロック層には発光性化合物より励起三重項エネルギーの大きな化合物を用いることができ、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、アルミニウム錯体などを例示することができる。
<7.陰極>
本発明の有機EL光素子の陰極材料としては、仕事関数が低く、かつ化学的に安定なものが使用され、Al、MgAg合金、AlLiやAlCaなどのAlとアルカリ金属の合金などの既知の陰極材料を例示することができるが、化学的安定性を考慮すると仕事関数は−2.9eV以下であることが好ましい。これらの陰極材料の成膜方法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができる。陰極の厚さは10nm〜1μmが好ましく、50〜500nmがより好ましい。
また、陰極から有機層への電子注入障壁を下げて電子の注入効率を上げる目的で、陰極バッファー層として、陰極より仕事関数の低い金属層を陰極と陰極に隣接する有機層の間に挿入してもよい。このような目的に使用できる低仕事関数の金属としては、アルカリ金属(Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Sr、Ba、Ca、Mg)、希土類金属(Pr、Sm、Eu、Yb)等を挙げることができる。また、陰極より仕事関数の低いものであれば、合金または金属化合物も使用することができる。これらの陰極バッファー層の成膜方法としては、蒸着法やスパッタ法などを用いることができる。陰極バッファー層の厚さは0.05〜50nmが好ましく、0.1〜20nmがより好ましく、0.5〜10nmがより一層好ましい。
さらに、陰極バッファー層は、上記の低仕事関数の物質と電子輸送性化合物の混合物として形成することもできる。なお、ここで用いられる電子輸送性化合物としては前述の電子輸送層に用いられる有機化合物を用いることができる。この場合の成膜方法としては共蒸着法を用いることができる。また、溶液による塗布成膜が可能な場合は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、インクジェット法、印刷法、スプレー法、ディスペンサー法などの既述の成膜方法を用いることができる。この場合の陰極バッファー層の厚さは0.1〜100nmが好ましく、0.5〜50nmがより好ましく、1〜20nmがより一層好ましい。陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
<8.封止>
陰極作製後、該有機EL素子を保護する保護層を装着していてもよい。該有機EL素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層および/または保護カバーを装着することが好ましい。該保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板、金属などを用いることができ、該カバーを熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子がキズつくのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にタメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
<9.基板種類>
本発明に係る有機EL素子の基板には、有機EL素子に要求される機械的強度を満たし、かつ前記アルカリ性水溶液に浸漬した場合に、実質的に溶解、変形などしない材料が用いられる。
ボトムエミッション型の有機EL素子には、可視光に対して透明な基板が用いられ、具体的には、ソーダガラス、無アルカリガラスなどのガラス;アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂などの透明プラスチック;シリコンなどからなる基板を使用できる。
トップエミッション型の有機EL素子においては、ボトムエミッション型の有機EL素子に用いられる基板に加えて、銅、銀、金、白金、タングステン、チタン、タンタルもしくはニオブの単体、またはこれらの合金、あるいはステンレスなどからなる基板を使用できる。
基板の厚さは、要求される機械的強度にもよるが、好ましくは、0.1〜10mm、より好ましくは0.25〜2mmである。
以下、本発明について実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により何等限定されるものではない。
[ITO膜付ガラス基板]
表面処理に供するITO膜付ガラス基板としては、ジオマテック(株)製のフラットITO(形状:200mm角の正方形、ITO電極の仕事関数:−4.8eV、水に対する接触角:25°)を用いた。
[測定方法]
1.ITO電極(ITO膜);
<仕事関数>
大気光電子分光法(AC-2:理研計器社製)により仕事関数を測定した。
<表面粗さ>
原子間力顕微鏡(キーエンス製、原子間力顕微鏡、型式VN-8010)を用いて、表面粗さRaを測定した(観察視野1μm、JIS1994法による)。
<接触角>
ITO膜付ガラス基板の表面に直径100μmの水滴を滴下し、CA-D(協和界面科学(株)製)を用いて液滴法(θ/2法)により接触角を測定した。なお、表1において接触角4°未満とは、滴下された水滴が円状にならず、接触角を数値化できなかった場合を示す。
2.有機EL素子;
<発光効率>
有機EL素子に、定電圧電源(ケイスレー製、SM2400)を用いて段階的に電圧を印加し、この有機EL素子の発光強度を輝度計(トプコン製、BM-9)で定量した。また、電流密度に対する発光強度の比から発光効率を決定した。
<発光寿命>
さらに、この有機EL素子に同装置を用いて定電流を印加し続け、一定時間おきに輝度を測定することで、発光寿命(初期輝度が半減するまでの時間)を測定した。
<輝度ムラ>
発光面の任意の4cm四方の領域中において任意の点10箇所の輝度を測定し、この輝度のバラツキの大小で輝度ムラを評価した。具体的には、10点の輝度の標準偏差を10点の輝度の平均値で割った値(相対標準偏差)を求め、この値が小さいほど輝度ムラが小さいと判断した。
<漏れ電流>
有機EL素子に5Vの逆電圧をかけた際の単位素子面積あたりの電流値を測定し、この値が小さいほど漏れ電流が小さいと判断した。
[製造例1]
脱水トルエンに、前記式E−2で表される化合物(重合性置換基を有するイリジウム錯体)、前記式E−54で表される化合物(正孔輸送性化合物)、および前記式E−66で表される化合物(電子輸送性化合物)をE−2:E−54:E−66=1:4:5(質量比)の割合で溶解させ、さらに重合開始剤としてV-601(和光純薬工業(株)製)を溶解させ、これらを、凍結脱気操作を行った後に真空密閉し、70℃で100時間攪拌して反応させた。反応後、反応液をアセトン中に滴下して沈殿を生じさせ、さらにトルエン−アセトンでの再沈殿精製を3回繰り返して燐光発光性高分子化合物を精製した。ここで、アセトンおよびトルエンとしては、高純度グレード(和光純薬工業(株)製)を蒸留したものを用いた。
また、再沈殿精製操作後の溶剤を高速液体クロマトグラフィーで分析し、3回目の再沈殿精製後の溶剤中に400nm以上での吸収を有する物質が検出されないことを確認した。
精製された燐光発光性高分子化合物を、室温で2日間掛けて真空乾燥させた。
高速液体クロマトグラフィー(検出波長254nm)により、得られた燐光発光性高分子化合物(ELP)の純度が99.9%を超えることを確認した。
[実施例1]
純水(電気伝導率:1μS/cm)125mL(125g)とエタノール375mL(296g)とを混合し、攪拌して、混合溶媒(水の割合:30質量%)を得た。この混合溶媒に、テトラエトキシシラン(関東化学(株)製)0.005molを滴下して、Si原子換算濃度が0.03重量%、pHが7.0である表面処理用溶液1を調製し、1時間放置した。室温(25℃)で、この表面処理用溶液1に、ITO膜付ガラス基板を浸漬し、この溶液をマグネットスターラーで2時間攪拌した。攪拌後の溶液は透明であり、溶液中に沈殿物は観測されなかった。
次に、ITO膜付ガラス基板を取り出し、直ちに純水を満たしたビーカー内に移し、5分間少し揺り動かすことで、ITO膜付ガラス基板を洗浄した。この基板を取り出し、直ちにスピン乾燥装置にセットし、3000rpmで回転させてITO膜付ガラス基板表面を乾燥させた。
ITO膜付ガラス基板表面を室温で1時間放置してさらに乾燥させた後に、ITO膜表面の仕事関数、およびITO膜の表面粗さを測定した。結果を表1に示す。
これらの測定後に、この基板のITO膜側に、大気中で、発光溶液(製造例1で得られた燐光発光性高分子化合物(ELP)の3質量%トルエン溶液)をスピンコート法(回転数:3000rpm)により塗布し、次いで基板を窒素雰囲気下に120℃で1時間放置した。その後、基板を真空蒸着室に投入し、真空蒸着装置でこの基板の発光層上に陰極バッファー層として厚さ0.5nmのLiF膜を形成し、続いて陰極として厚さ150nmのAl膜を形成することにより、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子の発光効率、発光寿命、輝度ムラおよび漏れ電流を表3に示す。
[実施例2]
純水(電気伝導率:1μS/cm)500mLに、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)0.012molを溶解させ、これらを攪拌して溶液を得た。この溶液に、テトラエトキシシラン(関東化学(株)製)0.005molを滴下して、Si原子換算濃度が0.03重量%、pHが10である表面処理用溶液2を調製し、1時間放置した。室温(25℃)で、この表面処理用溶液2にITO膜付ガラス基板を浸漬し、この溶液をマグネットスターラーで0.5時間攪拌した。攪拌後の溶液中には沈殿物が観測された。
以降は実施例1と同様の方法により、ITO膜付ガラス基板の処理および有機EL素子の作成を行なった。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[実施例3]
純水(電気伝導率:1μS/cm)125mLとエタノール375mLとを混合し、攪拌して、混合溶媒を得た。この混合溶媒に、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)0.012molを溶解させ、これらを攪拌して溶液を得た。この溶液に、テトラエトキシシラン(関東化学(株)製)0.005molを滴下して、Si原子換算濃度が0.03重量%、pHが10である表面処理用溶液3を調製し、1時間放置した。室温(25℃)で、この表面処理用溶液3にITO膜付ガラス基板を浸漬し、この溶液をマグネットスターラーで0.5時間攪拌した。攪拌後の溶液は透明であり、溶液中に沈殿物は観測されなかった。
以降は実施例1と同様の方法により、ITO膜付ガラス基板の処理および有機EL素子の作成を行なった。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[実施例4]
塩酸(塩化水素(HCl)濃度:12mol/L、関東化学(株)製)1.15mLと純水(電気伝導率:1μS/cm)125mLとエタノール375mLとを混合し、攪拌して溶液を得た。この溶液に、テトラエトキシシラン(関東化学(株)製)0.005molを滴下して、Si原子換算濃度が0.03重量%、pHが1.8である表面処理用溶液4を調製し、1時間放置した。室温(25℃)で、この表面処理用溶液4にITO膜付ガラス基板を浸漬し、この溶液をマグネットスターラーで2時間攪拌した。攪拌後の溶液は透明であり、溶液中に沈殿物は観測されなかった。
以降は実施例1と同様の方法により、ITO膜付ガラス基板の処理および有機EL素子の作成を行なった。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[実施例5]
酢酸0.5mLと純水(電気伝導率:1μS/cm)125mL(125g)とイソプロパノール400mL(314g)とを混合し、攪拌して溶液(水の割合:28質量%)を得た。この溶液に、テトラエトキシシラン(関東化学(株)製)0.005molを滴下して、Si原子換算濃度が0.03重量%、pHが5.0である表面処理用溶液5を調製し、1時間放置した。室温(25℃)で、この表面処理用溶液5にITO膜付ガラス基板を浸漬し、この溶液をマグネットスターラーで6時間攪拌した。攪拌後の溶液は透明であり、溶液中に沈殿物は観測されなかった。
以降は実施例1と同様の方法により、ITO膜付ガラス基板の処理および有機EL素子の作成を行なった。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[実施例6]
塩酸(塩化水素(HCl)濃度:12mol/L、関東化学(株)製)1.15mLと純水(電気伝導率:1μS/cm)125mLとエタノール375mLとを混合し、攪拌して溶液を得た。この溶液に、テトラn−ブトキシシラン0.005molを滴下して、Si原子換算濃度が0.03重量%、pHが2.0である表面処理用溶液6を調製し、1時間放置した。室温(25℃)で、この表面処理用溶液6にITO膜付ガラス基板を浸漬し、この溶液をマグネットスターラーで10時間攪拌した。攪拌後の溶液は透明であり、溶液中に沈殿物は観測されなかった。
以降は実施例1と同様の方法により、ITO膜付ガラス基板の処理および有機EL素子の作成を行なった。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[実施例7]
純水(電気伝導率:1μS/cm)125mLとエタノール375mLとを混合し、攪拌して溶液を得た。この溶液に、クロロトリエトキシシラン0.005molを滴下して、Si原子換算濃度が0.03重量%、pHが1.7である表面処理用溶液7を調製し、1時間放置した。室温(25℃)で、この表面処理用溶液7にITO膜付ガラス基板を浸漬し、この溶液をマグネットスターラーで2時間攪拌した。攪拌後の溶液は透明であり、溶液中に沈殿物は観測されなかった。
以降は実施例1と同様の方法により、ITO膜付ガラス基板の処理および有機EL素子の作成を行なった。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[実施例8]
実施例4と同様に表面処理用溶液4を調製し、室温で1時間放置した。この溶液をスピンコート装置に固定したITO膜付ガラス基板の上に基板全体を覆うように滴下し、直ちに、ITO膜付ガラス基板をスピン回転数3000rpmで30秒間回転させることにより、溶液のスピン塗布を行った。
ITO膜付ガラス基板表面を室温で1時間放置して乾燥させた後に、ITO膜表面の仕事関数、およびITO膜の表面粗さを測定した。結果を表3に示す。
次いで、こうして処理されたITO膜付ガラス基板を用いた以外は実施例1と同様の方法で、有機EL素子を作成した。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[実施例9]
実施例4と同様に表面処理用溶液4を調製し、室温で1時間放置した。この溶液をスピンコート装置に固定したITO膜付ガラス基板の上に滴下し、直ちに、ITO膜付ガラス基板をスピン回転数3000rpmで30秒間回転させることにより、基板全体を覆うように溶液のスピン塗布を行った。
次いでITO膜付ガラス基板表面を室温で1分間放置した後、ITO膜付ガラス基板を、純水をかけながらスピン回転数500rpmで回転させ、さらに純水をかけずに回転数3000rpmで30秒間回転させた。
その後、ITO膜付ガラス基板表面を室温で1時間放置して乾燥させた後に、ITO膜表面の仕事関数、およびITO膜の表面粗さを測定した。結果を表3に示す。
次いで、こうして処理されたITO膜付ガラス基板を用いた以外は実施例1と同様の方法で、有機EL素子を作成した。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[実施例10]
実施例4と同様に表面処理用溶液4を調製し、室温で1時間放置した。この溶液に、ディップコート装置に固定したITO膜付ガラス基板を浸漬し、直ちに基板を毎秒1mmの速度で溶液から引き上げた。基板を浸漬し始めてから引き上げ終わるまでの時間は3分間であった。
水溶液から引き上げたITO膜付ガラス基板表面を室温で1時間放置して乾燥させた後に、ITO膜表面の仕事関数、およびITO膜の表面粗さを測定した。結果を表3に示す。
次いで、こうして処理されたITO膜付ガラス基板を用いた以外は実施例1と同様の方法で、有機EL素子を作成した。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[実施例11]
実施例4と同様に表面処理用溶液4を調製し、室温で1時間放置した。バーコーター(第一理化(株)製 No.3)を用いて、ITO膜付ガラス基板上に、2秒間かけて100mm/秒の速度でこの水溶液を引き伸ばし、その膜を形成した。
次いで、ITO膜付ガラス基板表面を室温で1時間放置して乾燥させた後に、ITO膜表面の仕事関数、およびITO膜の表面粗さを測定した。結果を表3に示す。
次いで、こうして処理されたITO膜付ガラス基板を用いた以外は実施例1と同様の方法で、有機EL素子を作成した。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[実施例12]
純水(電気伝導率:1μS/cm)50mL(50g)とテトラヒドロフラン450mL(400g)とを混合し、攪拌して、混合溶媒(水の割合:11質量%)を得た。この混合溶媒に、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)0.012molを溶解させ、これらを攪拌して溶液を得た。この溶液に、テトラフェノキシシラン(関東化学(株)製)0.005molを滴下して、Si原子換算濃度が0.03重量%、pHが9.5である表面処理用溶液5を調製し、1時間放置した。室温(25℃)で、この表面処理用溶液5にITO膜付ガラス基板を浸漬し、この溶液をマグネットスターラーで0.5時間攪拌した。攪拌後の溶液は透明であり、溶液中に沈殿物は観測されなかった。
以降は実施例1と同様の方法により、ITO膜付ガラス基板の処理および有機EL素子の作成を行なった。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[比較例1]
ITO膜付ガラス基板を純水を満たしたビーカー内に移し、マグネットスターラーで2時間攪拌した。この基板を取り出し、直ちにスピン乾燥装置にセットし、3000rpmで回転させてITO膜付ガラス基板表面を乾燥させた。
ITO膜付ガラス基板表面を室温で1時間放置してさらに乾燥させた後に、ITO膜表面の仕事関数および表面粗さを実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
これらの測定後に、この基板のITO膜側に、実施例1と同様の方法により、発光層、陰極バッファー層および陰極を形成することにより、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[比較例2]
純水(電気伝導率:1μS/cm)125mLとエタノール375mLとを混合し、攪拌して、pHが7.0である溶液C2を調製した。表面処理用溶液1に替えて溶液C2を使用した以外は実施例1と同様の方法により、ITO膜付ガラス基板の処理および有機EL素子の作成を行なった。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[比較例3]
純水(電気伝導率:1μS/cm)125mLとエタノール375mLとを混合し、攪拌して、混合溶媒を得た。この混合溶媒に、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)0.012molを溶解させ、これらを攪拌して、pHが10.0である溶液C3を調製した。表面処理用溶液3に替えて溶液C3を使用した以外は実施例3と同様の方法により、ITO膜付ガラス基板の処理および有機EL素子の作成を行なった。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
[比較例4]
塩酸(塩化水素(HCl)濃度:12mol/L、関東化学(株)製)1.15mLと純水(電気伝導率:1μS/cm)125mLとエタノール375mLとを混合し、攪拌して、pHが1.8である溶液C4を調製した。表面処理用溶液4に替えて溶液C4を使用した以外は実施例4と同様の方法により、ITO膜付ガラス基板の処理および有機EL素子の作成を行なった。
ITO膜および有機EL素子の測定結果を表3に示す。
Figure 2010134518
Figure 2010134518
Figure 2010134518
表3に示されるように、ITO膜(陽極)の表面処理により、ITO膜(陽極)の仕事関数が高められ、表面粗さが小さくなるとともに、有機EL素子の発光効率が高められ、発光寿命が延びた。
1 透明基板
2 陽極
3 正孔輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 陰極

Claims (16)

  1. 金属酸化物からなる電極と、下記式(1)で表されるシラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物ならびに水を含有する溶液とを接触させる接触工程を含むことを特徴とする電極の表面処理方法。
    Si(OR)p(X)q(OH)4-p-q・・・(1)
    〔式(1)において、ORは、それぞれ独立にアルコキシ基またはアリールオキシ基であり、
    Xは、それぞれ独立に前記OR以外の他の加水分解性基であり、
    pは1〜4の整数であり、qは0〜3の整数であり、p+q≦4である。〕
  2. 前記シラン化合物がテトラアルコキシシランであることを特徴とする請求項1に記載の電極の表面処理方法。
  3. 前記テトラアルコキシシランが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランおよびテトラブトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の電極の表面処理方法。
  4. 前記溶液が前記シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物をSi原子換算で0.001〜10質量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
  5. 前記溶液が、10〜80質量%の水と90〜20質量%の炭素原子数1〜3のアルコール(ただし、両者の合計量は100質量%である。)とを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
  6. 前記溶液のpHが1.0〜5.0であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
  7. 前記溶液のpHが9.0〜12であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
  8. 前記溶液を前記電極表面に塗布することにより前記接触工程を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
  9. 前記塗布の方法が、前記電極表面に前記溶液の液溜まり部を形成し、前記液溜まり部を、前記電極をその表面の面内方向に回転させることにより、前記電極表面の全体を覆うように広げる方法であることを特徴とする請求項8に記載の電極の表面処理方法。
  10. 前記溶液に前記電極を浸漬することにより、または前記溶液を前記電極に吹き付けることにより、前記接触工程を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
  11. 前記接触工程の直後に、電極を水で洗浄する洗浄工程をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の電極の表面処理方法。
  12. 前記接触工程の後のいずれかの段階で(ただし、前記洗浄工程を含む場合には前記洗浄工程の後のいずれかの段階で)電極を60〜250℃に加熱する加熱工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
  13. 前記接触工程の後のいずれかの段階で(ただし、前記洗浄工程を含む場合には前記洗浄工程の後のいずれかの段階で)電極に紫外線を照射するUV照射工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の電極の表面処理方法。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の方法で表面処理された、金属酸化物からなる電極。
  15. 請求項1〜13のいずれかに記載の方法で表面処理され、大気中で紫外線光電子分光分析法により測定された仕事関数が−4.9〜−6.0eVであることを特徴とする、酸化インジウム錫からなる電極。
  16. 請求項1〜13のいずれかに記載の方法で表面処理された金属酸化物からなる陽極の表面処理された面の上に、発光層と陰極とがこの順序で積層されてなる有機エレクトロルミネッセンス素子。
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