JP4976820B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フラットパネルディスプレイ、液晶表示機用バックライトや照明光源等に用いることのできる有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法に関するものである。
有機エレクトロルミネッセンス素子は、対向する2つの電極の間に少なくとも一層の有機発光層を備えて形成されるものであり、電流注入によって有機発光層からの発光を得ることができる発光デバイスである。
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性及び寿命は、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する材料や素子構造によって大きく変化することが知られている。例えば、発光特性に関しては、発光材料自体の発光効率、素子内に注入される正負キャリアのバランス、素子膜厚および薄膜の屈折率に依存する光学干渉、材料の移動度などが大きく影響を与える。また寿命特性に関しては、例えばキャリアによる有機材料の酸化劣化、電極材料の有機層への拡散、材料間の相互拡散、界面に於けるキャリア蓄積による劣化、界面の密着強度不足などが影響を与えるとされている。これらの観点で、より発光特性の高い材料や、移動度の高い材料、またキャリア再結合エネルギーを効率よく光に変換できる素子構造などが各種開発され、提案されている。
有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命向上の検討に関しては、材料の観点から、膜質の安定化を図るための材料の耐熱性向上、異種材料への密着性の高い構造を有する材料の開発などがなされている。材料の耐熱性を上げることにより、顕著な寿命特性の向上を示す例としては、例えば、発光層ホストの耐熱性改良による大幅な寿命向上の例がある。また、通電による劣化の少ない材料系の開発が重要であること、例えば、材料への通電、すなわち酸化還元による材料劣化と素子特性の劣化との関係も知られている。
一方、発光効率に関しては、近年のいわゆるリン光材料の登場が顕著な改善の例である。有機発光分子の励起状態は、一重項励起状態と三重項励起状態の2つに分類されるが、一般にそれらの比は1:3である。これまでの蛍光材料は、前者の一重項励起状態からの発光、いわゆる蛍光発光を利用するものであるため、前記の比率に基づき、励起エネルギーの1/4しか光に変換することができず、残りの3/4は熱エネルギーとして消費されていたが、リン光材料は、三重項励起状態のエネルギーも光に変換できるものであり、結果として励起エネルギーを全て光に変換できる可能性を持つ材料系である。実際、外部量子効率が20〜25%という高効率有機エレクトロルミネッセンス素子が報告されており、光取り出し効率を考慮すると、全ての励起エネルギーを光に変換していると考えられる、高効率発光有機エレクトロルミネッセンス素子が得られている。またリン光発光素子の寿命は、当初あまり良好なものではなかったが、最近の報告によると、蛍光材料の寿命を上回るような値が報告されている。これは発光効率が高いが故に、通電電流を少なくできることがその主たる理由ではないかと推定される。
これらの改良は、主として材料の特性に大きく依存するものであるため、適切なエネルギー準位を有し、かつ、より高発光効率、高移動度、高耐久性の材料を得ること、すなわち材料開発が、有機エレクトロルミネッセンス素子の特性を向上させるためには非常に重要である。
一方、素子構造の観点からは、寿命を向上させることのできる素子構造として、例えばホール輸送層と有機発光層等、異種の機能を備える層の界面または全体を混合させたもの、材料の酸化劣化を抑制することができる位置にドーパントをドープする系、金属電極−有機層界面に、両者の密着性を向上させることができる界面層を導入する系などが知られている。また陽極表面をHNOやハロゲンによって処理することによって仕事関数を増大させることによって、寿命が向上する例が知られている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3等参照)。あるいは、表層にプラズマ処理等によってハロゲン元素を含ませることによる方法も知られている(例えば特許文献4,5等参照)。しかし、これらの方法では、駆動中に駆動電圧が上昇するなどの好ましくない挙動も見られ、結果としての寿命向上は必ずしも満足するものではなかった。また処理を行なう際にプラズマ処理装置やイオン注入装置、ラジカルビームガン等、特殊な装置もしくは特殊なプロセスを用いる必要があり、簡便なプロセスとして用いることができなかった。
また、キャリアブロック層を有機発光層に隣接させて設け、有機発光層内での再結合割合を向上させる方法、特に低電圧化の観点で、p−ドープ層やn−ドープ層の導入が素子発光効率の向上方法として提案されている。これらの方法は、素子構造の改良により有機エレクトロルミネッセンス素子の特性を向上させる例として有効に使われているものの例であるが、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命特性をさらに向上させ、有機エレクトロルミネッセンス素子の適用用途をさらに拡大するためには、これまでの技術以外にもあらたな寿命向上技術を見いだすことが必要であった。
特開2003−123989号公報 特開2004−063210号公報 特開2001−319777号公報 特開2005−050828号公報 特許第3631014号公報
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、寿命特性、発光特性のより優れた有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極電極と陰極電極の間に有機発光層を備えて形成される有機エレクトロルミネッセンス素子に於いて、陽極電極は、この陽極電極上に有機物が存在する状態で酸または酸化剤を含有する液体で処理された後に、真空下もしくは酸化性の気体を含む雰囲気下で、前記液体の沸点以上の温度で加熱処理されたものであり、陽極電極上に電荷移動錯体が形成されていることを特徴とするものである。
この発明によれば、陽極電極を酸または酸化剤を含有する液体で処理することによって、陽極電極表面の状態を良好に改質することができると共に、真空下もしくは酸化性の気体を含む雰囲気下で前記液体の沸点以上の温度で加熱処理することによって、酸または酸化剤を含有する液体を除去して残存する液体の悪影響を抑制することができるものであり、陽極電極上に形成する有機層の有機材料と陽極電極とのモルフォロジー的および電気的状態が改善されると考えられ、発光特性や寿命特性を向上することができるものである。
また、陽極電極の表面に有機物が存在する状態で陽極電極を酸または酸化剤を含有する液体によって処理することによって、有機物は陽極電極と電荷移動錯体を形成するものであり、陽極電極へのホール注入特性が向上して発光特性や寿命特性を向上させることができるものである。
また請求項2の発明は、請求項1において、前記有機物は、80℃以上のガラス転移温度を有するか、ガラス転移温度を有さないものであることを特徴とするものである。
また請求項1において、前記酸または酸化剤が、室温もしくは前記加熱処理の温度で気体状態のものであってもよい
この場合、過剰の酸または酸化剤を容易に除去して陽極電極に残存することを抑制することができ、発光特性や寿命特性をより向上することができるものである。
本発明の請求項3に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、陽極電極と陰極電極の間に有機発光層を備えて形成される有機エレクトロルミネッセンス素子を製造するにあたって、陽極電極を酸または酸化剤を含有する液体で処理した後、真空下もしくは酸化性の気体を含む雰囲気下で、前記液体の沸点以上の温度で加熱処理する工程を有することを特徴とするものである。
この発明によれば、酸または酸化剤を含有する溶液で処理し、さらに真空下もしくは酸化性の気体を含む雰囲気下で前記液体の沸点以上の温度で加熱処理することによって、陽極電極表面の状態を良好に改質することができると共に、残存する液体の悪影響を抑制することができるものであり、陽極電極上に形成する有機層の有機材料と陽極電極とのモルフォロジー的および電気的状態を改善して、発光特性や寿命特性を向上した有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができるものである。
また請求項4の発明は、請求項3において、前記陽極電極上に形成される有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する有機層のうち、少なくとも陽極に接する有機層を塗布法によって形成することを特徴とするものである。
この発明によれば、上記のような性質が付与された陽極電極の界面部により密に有機層の有機材料を配置することができるものであり、発光特性や寿命特性をより向上することができるものである。
また請求項5の発明は、請求項3又は4において、陽極電極を酸または酸化剤を含有する液体で処理し、有機層を形成した後に前記加熱処理を行なうにあたって、加熱処理を行なう段階で形成されている有機層のガラス転移温度のうち最も低いガラス転移温度以下の温度で熱処理することを特徴とするものである。
この発明によれば、陽極電極に接する有機層の有機材料と陽極電極との間の接触状態を改善することができ、また陽極電極に接する有機材料のモルフォロジーを乱すことなく、陽極電極と有機材料との間の相互作用を強めることができ、発光特性や寿命特性をより向上することができるものである。
また請求項6の発明は、請求項3乃至5のいずれかにおいて、陽極電極上に有機物が存在する状態で、陽極電極を酸または酸化剤を含有する液体で処理することを特徴とするものである。
この発明によれば、陽極電極のみならず、陽極電極上に存在する有機物も酸化処理されることによって、陽極電極の改質効果と相乗して、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性や寿命特性をより向上することができるものである。
本発明によれば、陽極電極の表面を酸または酸化剤を含有する液体を用いて表面処理し、次いで真空下もしくは酸化性の気体を含む雰囲気下で加熱処理することによって、陽極電極表面の状態が改質され、陽極電極上に形成される有機層の有機材料と陽極電極とのモルフォロジー的および電気的状態の改善で陽極電極からのホール注入特性が向上すると考えられ、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性や寿命特性が向上するものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、対向する2つの電極、すなわち陽極電極1と陰極電極2の間に有機発光層3を備えて形成されるものである。図1は有機エレクトロルミネッセンス素子の積層構造の一例を示すものであり、基板4の上に陽極電極1を設け、この上に有機層9として、ホール注入層5、ホール輸送層6、有機発光層3、電子輸送層7、電子注入層8をこの順に積層して設け、この上に陰極電極2を設けたものである。図1の層構成において有機層9のうち、ホール注入層5、ホール輸送層6、電子輸送層7、電子注入層8は必要に応じて設けられるものであり、必須のものではない。
そして本発明は、陽極電極1として、電極の表面を酸または酸化剤を含有する液体を用いて表面処理し、次いで特定の雰囲気下で加熱処理したものを用いるようにしたものであり、この表面処理した面の側に有機発光層3などの有機層9を形成したものである。
この陽極電極1は金属酸化物を電極材料として形成されるものであり、金属酸化物としては特に限定されないが、ITO、IZO、SnO、AZO、GZOなど、比抵抗が小さいものを好ましく用いることができる。陽極電極1を構成する金属酸化物の表面状態は、できるだけ平坦であることが好ましい。陽極電極1は例えば、これらの電極材料を、基板の表面に真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により薄膜に形成することによって作製することができる。また、有機発光層3における発光を陽極電極1を透過させて外部に照射する場合には、陽極電極1の光透過率は70%以上であることが好ましい。さらに、陽極電極1のシート抵抗は数百Ω/□以下であることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下である。ここで、陽極電極1の膜厚は、陽極電極1の光透過率、シート抵抗等の特性を上記のように制御するために、材料により異なるが、800nm以下、好ましくは10〜500nmの範囲に設定するのがよい。
陽極電極1の表面を処理する酸または酸化剤を含む液体は、特に限定されるものではないが、例えば、O、Br、Cl、I、F、アスタチン、NO、NO、ClO、SO、CO、クロロピクリン、HCl、HBr、HI、HF、HNO、BF、HSO、HPO、過ハロゲン酸、過酸化水素水、Ca(ClO)、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム、塩化鉄、三フッ化臭素、五フッ化臭素、五フッ化ヨウ素等のハロゲン間化合物、ハロゲン酸、ハロゲン酸金属塩等の酸化性ガスなどを溶媒に溶解したものを用いることができる。溶媒種は特に問わないが、例えば水、アルコール、炭化水素系溶剤、ハロゲン含有溶剤等を挙げることができる。また、液体中の酸または酸化剤の濃度は、陽極電極1に対するエッチング等の顕著なダメージを与えず、取り扱いに適したものが適宜用いられるものであり、特に限定されるものではないが、0.01〜90質量%の範囲が好ましい。
これらの酸または酸化物を含む液体を用いて陽極電極1を酸処理する方法については、特に限定されるものではなく、例えば陽極電極1をこの液体に浸漬したり、この液体を陽極電極1に対してスプレーしたりする任意の方法で、陽極電極1に酸または酸化物を含む液体を接触させることによって行なうことができる。処理時間は特に限定されるものではないが、0.1〜20分間程度が好ましい。
本発明では、陽極電極1をこのように酸または酸化剤を含有する液体で処理した後に、真空下もしくは酸化性の気体を含む雰囲気下で、上記の酸または酸化物を含む液体の沸点以上の温度で陽極電極1を加熱処理するものである。真空下で加熱した場合には、酸または酸化物を含む液体の残渣液体を効率よく除去することができる。ここで本発明において真空下とは、100hPa以下の減圧雰囲気をいうものである。
また酸化性の気体を含む雰囲気下で加熱した場合には、酸または酸化物を含む液体の残渣液体を取り除くと同時に、例えば陽極電極1を設けた基板4の表面の酸化が若干進行することが期待できるので好ましい。基板の表面が酸化されることにより、基板表面と有機材料との相互作用もが有機層9の有機材料と陽極電極1とのモルフォロジー的及び電気的状態を改善するものと考えられるためである。またこのように酸化性の気体を含む雰囲気で加熱する場合、低圧雰囲気(例えば100hPa以上、大気圧以下)にして加熱処理することも好ましい。ここで、酸化性の気体としては、特に限定されるものではないが酸素、オゾン、ハロゲン、及びHNOやHCl等の無機酸ガスなどを用いることができる。
加熱処理の温度は用いた酸または酸化物を含む液体の沸点によって異なるものであり、また真空下のように減圧雰囲気下では液体の沸点も低下するため、これらを考慮して適宜設定すればよいが、好ましくは、加熱処理の際の雰囲気圧力に於ける液体の沸点以上でかつ加熱処理の際の雰囲気圧力に於ける水の沸点以上の温度に設定するのがよく、さらに好ましくはこれらの沸点温度+10℃以上である。陽極電極1を酸または酸化剤を含有する液体で処理した後、陽極電極1の上に有機層9を形成する前に加熱処理する場合には、加熱処理の温度の上限は特に規定されないが、250℃程度が実用上の上限である。
上記のように陽極電極1を酸または酸化剤を含有する液体で処理することによって、陽極電極1の表面を改質することができる。特に、例えば酸の気体などを用いて陽極電極1を表面処理した場合に比して、短時間でかつ強い強度で陽極電極1の表面を改質することが可能である。改質状態の詳細は処理系によって異なるが、例えば陽極電極1上への酸または酸化剤の吸着、陽極電極1と酸または酸化剤の反応などが考えられる。またこのように陽極電極1を液体で処理した場合、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際に陽極電極1上に成膜する有機材料等と陽極電極1とが電荷移動錯体を形成し、成膜された有機層9は比抵抗の低下、キャリア濃度の増大、電荷移動度の増大、エネルギーギャップの変化、エネルギー準位の変化などの電気的特性の変化、及び、モルフォロジーの変化、結晶化温度の変化、ガラス転移温度の変化等の耐熱性の変化、陽極電極1の界面との密着性の変化等が起こると考えられ、ホール注入特性が向上し、寿命特性にも好ましい影響を与えるものであり、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性や寿命特性を向上することができるものである。また、陽極電極1を酸または酸化剤を含有する液体で処理した後に、真空下もしくは酸化性の気体を含む雰囲気下で前記液体の沸点以上の温度で加熱処理することによって、陽極電極1から酸または酸化剤を含有する液体を除去することができ、残存する液体の悪影響を抑制することができるものである。
ここで、上記のように陽極電極1の酸処理に用いる酸または酸化剤は、室温もしくは加熱処理の際の加熱温度で気体状態のものであることが好ましい。陽極電極1の上に液体または固体状態で酸または酸化剤が大過剰に残存することは必ずしも好ましくないため、このような酸または酸化剤を用いることにより、酸または酸化剤を含有する溶液で処理した後、もしくは加熱処理後に、大過剰の酸または酸化剤を陽極電極1から速やかに除去することが可能になるものである。室温もしくは加熱処理の際の加熱温度で気体状態の酸や酸化剤としては、Br、Cl、F、HNO、HCl、HBr、HF、I、SO、HSなどを例示することができる。
また、陽極電極1を酸または酸化剤を含有する液体で処理する際に、陽極電極1は表面に有機物が存在する状態であっても構わない。陽極電極1の表面に有機物が存在する状態で陽極電極1を酸または酸化剤を含有する液体によって処理することによって、有機物は陽極電極1と電荷移動錯体を形成するものであり、陽極電極1へのホール注入特性が向上して発光特性や寿命特性を向上させることができるものである。
陽極電極1上に存在する有機物の厚みは、50Å以下であることが好ましく、より好ましくは20Å以下である。有機物の厚みが20Åを超えて大きいと、特に50Åを超えて大きいと、酸または酸化剤によって表面処理する際に過度の反応が起こり、その結果、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性に悪影響を与えることがあるので好ましくない。
陽極電極1の表面に厚み50Å以下の有機物を存在させるための方法としては、例えばアルコール等の有機溶剤の蒸気で陽極電極1の表面を処理する方法、有機溶剤中に陽極電極1を浸漬する方法、紫外線とオゾンによる処理(UV/O3処理)やプラズマ処理を行なった後に大気雰囲気下に陽極電極1を放置する方法、陽極電極1の表面に有機物を蒸着、塗布、スプレー、コーティング等して気相もしくは液相で成膜する方法などを挙げることができる。陽極電極1の表面に化学結合により単分子膜を導入したり、有機物の蒸気に曝したりしてもよい。
有機物の厚みは、例えば触針式の膜厚計、プローブ顕微鏡によるスクラッチと段差評価、触針式膜厚計による段差量評価、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)等による光の吸収量、エリプソメーターや透過/反射式の膜厚計など、光学式の測定手段によって定量的にもしくは半定量的に評価することが可能である。また、有機物の存在は、XPS(X線光電子分光法)やオージェ電子分光法、FT−IR、PL、表面エネルギー測定器等の評価方法によって確認できる。ここで本発明において陽極電極1の表面に存在する有機物の膜厚は50Å以下であり、この領域の膜厚を正確に求めることは比較的困難である。よって、膜厚が50Å以上ではないことを膜厚測定手段によって確認できれば特に問題はない。
陽極電極1上に存在する有機物としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられるホール輸送材料や、ホール注入材料、あるいは、Alq3やアントラセン誘導体など有機発光層や電子輸送層に用いられる材料を挙げることができる。ホール輸送材料もしくはホール注入材料として挙げられる有機物は、例えば4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPB又はα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、トリアリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物などである。また、有機エレクトロルミネッセンス素子用に用いられる材料以外の、有機光感光体材料(OPC材料)やポリチオフェン、ポリパラフェニレンビニレンなどを始めとする有機半導体材料であってもよく、あるいはポリエチレン、ポリ塩化エチレンなどのポリマー類などや、パラフィン類、オレフィン類、脂肪酸類、芳香族化合物など特に有機半導体に属さない材料系であってもよい。
また、陽極電極1の表面に存在する有機物は、80℃以上のガラス転移温度を有するか、ガラス転移温度を有さないものが好ましい。80℃未満のガラス転移温度を有する有機物は耐熱性に劣ることがあるために好ましくないものであり、従って、80℃以上のガラス転移温度を有するか、ガラス転移温度を有さない有機物が好ましいのである。ガラス転移温度の上限は特に設定されるものではないが、通常、200℃程度がガラス転移温度の上限である。
また陽極電極1の表面に存在する有機物として、電子供与性を有し、電子供与によりラジカルカチオン化した際にも安定である有機物が好ましく用いられる。上記に例示した有機物では、ホール輸送材料やホール注入材料がもっともこれに相当する。
また、上記のように処理した陽極電極1の上に有機層9を設けて有機エレクトロルミネッセンス素子を形成するにあたって、この有機層9のうち、少なくとも陽極電極1に接する層は、塗布法によって形成されていることが好ましい。このように陽極電極1に接する層を塗布法によって形成した場合、層形成用の有機材料によって程度は異なるが、例えば蒸着法によって形成した場合よりも、陽極電極1との界面部に密に有機材料が接するようにすることができるものである。塗布プロセスは特に限定されないが、陽極電極1に接する有機材料をその材料が可溶な溶剤に溶解し、場合によっては加熱溶解し、任意の方法、たとえば、スピンコート、ディップコート、スプレーコート、ダイコート、グラビア印刷、スクリーン印刷などによって塗布することができる。陽極電極1に接して形成される層の膜厚は特に限定されないが、実質的に陽極電極1上の界面層を形成できればよいため、例えば0.1〜60nm程度である。塗布膜の厚みは、有機材料を溶解した溶液中の有機材料の濃度や塗布条件等によって制御することが可能である。また、塗布によって形成した陽極電極1に接する層の全体をホール輸送層5として用いても良いし、塗布によって薄く第1層を形成し、その上にさらに蒸着等の任意のプロセスによってホール輸送層5を形成するようにしても構わない。
ここで、陽極電極1を酸または酸化剤を含有する液体で酸処理した後、真空下もしくは酸化性の気体を含む雰囲気下でこの液体の沸点以上の温度で加熱処理するにあたって、加熱処理は酸処理の直後(陽極電極1の上に層形成する前)に行なう他に、有機エレクトロルミネッセンス素子を製造するプロセスの任意の段階で行なうことができる。例えば、陽極電極1に接する層を塗布あるいはその他の方法で形成した後に加熱処理をしたり、この層の上にホール輸送層5を積層して形成した後に加熱処理をしたり、あるいは陰極電極2を形成した最終段階の後で加熱処理をしたりすることができる。このように陽極電極1の上に有機層9を形成した段階で加熱処理を行なう場合、その段階で成膜されている有機層9の有機材料のガラス転移温度のうち、最も低いガラス転移温度以下の温度で加熱処理するものである。加熱処理の温度をこのようにガラス転移温度以下に設定することによって、有機材料のモルフォロジーを乱すことなく、陽極電極1と有機層9の有機材料との相互作用を強めることができ、発光特性や寿命特性を向上することができるものである。
この加熱処理は、雰囲気の影響を避けるため、最も好ましくは真空中、あるいは不活性気体中で行なうことが好ましい。ただし、陽極電極1に接する層のみを形成した後に加熱処理を行なう場合には、酸化性の気体中で加熱処理を行なうようにしてもよい。加熱処理の温度は、上記のようにガラス転移温度以下であるが、好ましくはガラス転移温度−40℃からガラス転移温度の範囲である。また、加熱処理の処理時間は、処理温度によって適宜選択されるものである。
本発明において、有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構成は、本発明の趣旨に反しない限り任意のものを用いることができるものである。そして素子の有機発光層3などの有機層9に使用できる有機材料としては、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体及び各種蛍光色素等、前述の材料系およびその誘導体を始めとするものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。さらに、前記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えばリン光発光を生じるリン光発光材料、及びこれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。また、これらの材料からなる有機層9は、蒸着、転写等乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート、スプレーコート、ダイコート、グラビア印刷等、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
また、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成するその他の部材である、積層された素子を保持する基板4や陰極電極2等には、従来から使用されているものをそのまま使用することができる。
上記の基板4は、有機発光層3で発光した光が基板4を通して出射される場合には光透過性を有するものであり、無色透明の他に、多少着色されているものであっても、すりガラス状のものであってもよい。例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどの透明ガラス板や、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エポキシ等の樹脂、フッ素系樹脂等から任意の方法によって作製されたプラスチックフィルムやプラスチック板などを用いることができる。さらに、基板4内に基板4の母剤と屈折率の異なる粒子、粉体、泡等を含有し、あるいは表面に形状を付与することによって、光拡散効果を有するものも使用可能である。また、有機発光層3で発光した光を基板を通さずに出射させる場合、基板4は必ずしも光透過性を有するものでなくてもよく、素子の発光特性、寿命特性等を損なわない限り、任意の基板4を使うことができる。特に、通電時の素子の発熱による温度上昇を軽減するために、熱伝導性の高い基板4を使用することもできる。
また、上記の陰極電極2は、有機発光層3中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が5eV以下のものであることが好ましい。このような陰極の電極材料としては、アルカリ金属、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属等、及びこれらと他の金属との合金、例えばナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、Al/LiF混合物を例として挙げることができる。またアルミニウム、Al/Al混合物なども使用可能である。また、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、あるいは金属酸化物を陰極の下地として用い、さらに金属等の導電材料を1層以上積層して用いてもよい。例えば、アルカリ金属/Alの積層、アルカリ金属のハロゲン化物/アルカリ土類金属/Alの積層、アルカリ金属の酸化物/Alの積層などを例として挙げることができる。また、ITO、IZOなどに代表される透明電極を用い、陰極電極2の側から光を取り出す構成にしても良い。さらに、陰極電極2との界面の有機層9にリチウム、ナトリウム、セシウム、カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属をドープしても良い。
そして陰極電極2は、例えば、これらの電極材料を真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により、薄膜に形成することによって作製することができる。有機発光層3における発光を陽極電極2の側から取り出す場合には、陰極電極2の光透過率を10%以下にすることが好ましい。また逆に、陰極電極2を透明電極として形成して陰極電極2の側から発光を取り出す場合(陽極と陰極の両電極から光を取り出す場合も含む)には、陰極電極2の光透過率を70%以上にすることが好ましい。この場合の陰極電極2の膜厚は、陰極電極2の光透過率等の特性を制御するために、電極材料により異なるが、通常500nm以下、好ましくは100〜200nmの範囲に形成するのがよい。
このように、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材、構造は本発明の趣旨を損ねない範囲で併用することが可能である。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(陽極電極付き基板A)
30mm角の大きさのガラス基板の表面に、図2のような2mm幅で厚み1100ÅのITOが陽極電極として成膜されたITO付きガラス基板を用意し、この基板を湿式洗浄した。この基板表面の炭素元素濃度は約12質量%であり、陽極電極の表面の有機物の存在を示唆していた。尚、表面の有機物の評価は、オージェ電子分光装置により表面の炭素元素濃度を測定して行なった。
(陽極電極付き基板B)
上記の陽極電極付き基板Aを、30分間UV/O処理した。処理後の基板表面の炭素元素濃度は1%以下であり、陽極電極の表面の有機物がかなり良好に除去されたことを示唆していると考えられる。
(陽極電極付き基板C)
上記の陽極電極付き基板Aを、15分間UV/O処理した後、陽極電極の上に膜厚10ÅのNPDを成膜した。尚、NPDのガラス転移温度は85℃前後である。
(陽極電極付き基板D)
上記の陽極電極付き基板Bを、空気中に1時間放置した。この処理後の基板表面の炭素元素濃度は約9質量%であり、陽極電極の表面の有機物の存在を示唆していた。
(陽極電極付き基板E)
上記の陽極電極付き基板Aを関東化学製臭素水(鹿特級)に2分間浸漬した。次に基板上の液滴をN流を当てることによって除去し、この後、基板を真空中、120℃で10分間ベークした。
(陽極電極付き基板F)
上記の陽極電極付き基板Aを関東化学製臭素水(鹿特級)に2分間浸漬した。次に基板上の液滴をN流を当てることによって除去し、この後、基板を乾燥空気中、120℃で10分ベークした。
(陽極電極付き基板G)
上記の陽極電極付き基板Aを関東化学製臭素水(鹿特級)に2分間浸漬した。次に基板上の液滴をN流を当てることによって除去した。
(陽極電極付き基板H)
上記の陽極電極付き基板Bを関東化学製臭素水(鹿特級)に2分間浸漬した。次に基板上の液滴をN流を当てることによって除去し、この後、基板を真空中、120℃で10分ベークした。
(陽極電極付き基板I)
上記の陽極電極付き基板Cを関東化学製臭素水(鹿特級)に2分間浸漬した。次に基板上の液滴をN流を当てることによって除去し、この後、基板を真空中、120℃で10分ベークした。
(陽極電極付き基板J)
上記の陽極電極付き基板Bをヨウ素のイソプロピルアルコール溶液(濃度75質量%)に5分間浸漬した。次いで基板上の液滴をN2流を当てることによって除去し、この後、基板を真空中、100℃で10分ベークした。
(陽極電極付き基板K)
上記の陽極電極付き基板Bをシャーレ中に入れ、基板の近傍に関東化学製臭素水を1mL滴下した後に速やかにフタをし、10分間Br蒸気に曝すことによって、Brで表面処理した。
(陽極電極付き基板L)
上記の陽極電極付き基板Bを、関東化学製臭化水素酸に1分間浸漬した後に、基板上の液滴をN流を当てることによって除去した。次いで基板を真空下120℃で10分間ベークした。
(陽極電極付き基板M)
上記の陽極電極付き基板A上に、膜厚10ÅのAlqを成膜した。これを塩素水(関東化学(株)製、濃度0.3質量%)に1分間浸漬し、次いで真空下120℃で10分間ベークした。尚、Alqのガラス転移温度は140℃前後である。
(陽極電極付き基板N)
上記の陽極電極付き基板A上に、膜厚10ÅのDNTPD[化1]を成膜した。これをヨウ素のイソプロピルアルコール溶液(濃度75%)に1分間浸漬し、次いで真空下100℃で10分間ベークした。DNTPDのガラス転移温度は105度前後である。
(陽極電極付き基板O)
上記の陽極電極付き基板Dを関東化学製臭素水(鹿特級)に2分間浸漬した。次に基板上の液滴をN流を当てることによって除去し、この後、基板を真空中、120℃で10分ベークした。
(陽極電極付き基板B、H、Kの陽極電極の評価)
上記のようにして得た陽極電極付き基板B、H、Kの陽極電極の表面状態を、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のプローブ顕微鏡「SPI4000」と「SPA−300HV」を用い、形状および位相評価で比較した。なお位相評価とは、カンチレバーを共振振動させるために入力する信号と、実質的なカンチレバーの振動信号との位相のずれを検出することにより、形状像評価と同時に基板の表面物性の分布を知ることのできる評価方法である。位相のずれは、吸着力や粘弾性のような表面物性の差に敏感に反応して生じるものであり、位相のずれの分布で表面物性の分布を知ることが可能である。また、位相分布が広い場合、表面に異なる表面物性を有する部位が存在していることを、位相分布が狭い場合には表面物性が面内で類似であることを意味している。
図3は陽極電極付き基板B、図4は陽極電極付き基板H、図5は陽極電極付き基板Kの評価結果である。左の図が形状像、中央の図が位相像、右の図が位相分布を表す。また、図の右に、平均面粗さと最大高低差を示した。図3〜5に示すように、各処理後の陽極電極の表面形状はほぼ同等であることが確認された。しかし、陽極電極付き基板AをUV処理した陽極電極付き基板Bに対し、臭素のガスに曝して処理した陽極電極付き基板Kでは位相の変化が見られなかったものの、臭素水に浸漬して酸処理をした後に、真空中でベークして加熱処理をした陽極電極付き基板Hでは位相分布が広くなるという変化が見られた。尚、図6のように、陽極電極付き基板Bを水にさらした場合にも位相の差が見られなかったため、位相分布の変化は臭素を含有する液体で処理した場合に特有のものであると考えられる。
すなわち、臭素水で酸処理した後に真空中で加熱処理をした陽極付き電極Hでは、形状が変わらないにもかかわらず位相のみが変化したことから、臭素が強固に陽極電極の表面に吸着したものと考えられる。
また、図7は、陽極電極付き基板B、H、Kの陽極電極の仕事関数を理研計器製光電子分光装置「AC−1」で評価した結果を示す。横軸は、陽極電極付き基板に各処理を施した後に、測定までに要した時間を示し、縦軸は陽極電極付き基板の陽極電極の仕事関数を示す。UV処理した陽極電極付き基板Bは、処理直後に5.3eV程度の仕事関数を示し、仕事関数は時間とともに急速に低下した。またBrガスによる処理を行った陽極電極付き基板Kでは、仕事関数は5.8eV程度に達したものの、やはり時間とともに仕事関数は急激に低下した。一方、臭素水に浸漬して酸処理し、次いで真空中でベークして加熱処理した陽極電極付き基板Hでは、仕事関数は5.4eV程度であり、また時間依存性も非常に小さいものであった。よって、陽極電極付き基板Hの陽極電極の表面は明らかに陽極電極付き基板B及び陽極電極付き基板Kの陽極電極の表面と異なる状態になっていると考えられる。
(陽極電極付き基板H、Kの陽極電極の評価)
島津製作所製「ESCA−1000」を用いて、陽極電極の表面上の臭素量の評価を行った。ここでは束縛エネルギーが180〜210eVの範囲に現れる臭素の3p軌道のピークを用い、臭素量の比較を行った。測定条件は両試料に対して同一であり、ピークの強度から陽極電極上の臭素量の比較を行うことができる。図8(a)に臭素のガスによって処理を行った陽極電極付き基板Kの、図8(b)に臭素水によって処理を行った陽極電極付き基板Hの測定結果を示す。
図8(a)(b)のように、193eVおよび203eV近傍に、臭素に由来するピークが観測された。両者を比較すると、ピークの強度は殆ど同一であり、臭素水で処理したことによって特に多量の臭素存在するわけではないことがわかる。よって、前記プローブ顕微鏡の評価およびこの結果から、処理方法によって陽極電極上への臭素の付着様式が異なる表面が得られており、臭素の陽極電極への付着量や、陽極電極の変質が起こっているのではないと考えられる。
(実施例1)
陽極電極付き基板Eを用い、この基板Eを真空蒸着装置にセットし、1×10−4Pa以下の減圧雰囲気下で、ホール輸送層として、α−NPDを500Åの膜厚で蒸着した。次に有機発光層として、Alqにルブレンを7質量%ドープした材料を500Åの膜厚で蒸着し、電子輸送層としてAlqを200Åの膜厚で、電子注入層としてLiFを5Åの膜厚で蒸着し、最後に陰極電極としてアルミニウムを800Åの膜厚で形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。有機エレクトロルミネッセンス素子の構造は図2の通りである(実施例2以降も同じ)。
(実施例2)
陽極電極付き基板Fを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例3)
陽極電極付き基板Hを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例4)
陽極電極付き基板Iを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例5)
陽極電極付き基板Jを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例6)
陽極電極付き基板Lを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例7)
陽極電極付き基板Mを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例8)
陽極電極付き基板Nを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例9)
陽極電極付き基板Oを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(比較例1)
陽極電極付き基板Aを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(比較例2)
陽極電極付き基板Bを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(比較例3)
陽極電極付き基板Cを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(比較例4)
陽極電極付き基板Dを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(比較例5)
陽極電極付き基板Gを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(比較例6)
陽極電極付き基板Kを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例10)
陽極電極付き基板Eを用い、ホール輸送層としてα−NPDを成膜した後に、真空中、75℃で10分間ベークするようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例11)
脱気・脱水したクロロホルムに溶解したα−NPDを無水窒素雰囲気下で陽極電極付き基板E上に50Å厚で塗布した。次いで、この基板を真空蒸着装置に搬送し、ホール輸送層としてα−NPDを450Åの膜厚で蒸着して成膜し、ホール輸送層を形成した。後のプロセスは実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例12)
実施例11と同様に陽極電極付き基板E上にα−NPDを塗布して成膜した後、真空中、75℃で10分間ベークした。後は実施例11と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例13)
実施例11で調製したα−NPDのクロロホルム溶液に、脱水酸素ガスを3分間吹き込んで酸素を含有させた。これを用いて、後は実施例12と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
上記のようにして実施例1〜13及び比較例1〜6で得た有機エレクトロルミネッセンス素子の効率を測定した。測定は、素子を電源(KEYTHLEY2400)に接続し、27.5mA/cmで定電流駆動した際の輝度で比較した。なお、輝度評価にはトプコン株式会社製「BM−9」を使用した。27.5mA/cm通電時の輝度および電圧を表1に示す。
また実施例1〜13及び比較例1〜6で得た有機エレクトロルミネッセンス素子について、寿命を評価した。寿命の評価は、株式会社イーエッチシー社製有機EL発光特性評価装置「PEL−100T」を用い、30mA/cmで通電した際の輝度が初期輝度の80%になるまでの時間を測定することによって行ない、結果を表1に示す。
表1にみられるように、各実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子は、比較例の有機エレクトロルミネッセンス素子と比較して、同程度の輝度条件で比較したにもかかわらず、輝度が80%にまで低下する時間が長く、寿命特性に優れていることが確認された。また本発明の処理方法は非常に簡便であり、簡素なプロセスで使用可能である。
有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成の一例を示す概略図である。 実施例及び比較例の有機エレクトロルミネッセンス素子の構成を示す平面図である。 プローブ顕微鏡で測定した陽極電極付き基板Bの形状像、位相像、位相分布をカラープリントした図である。 プローブ顕微鏡で測定した陽極電極付き基板Hの形状像、位相像、位相分布をカラープリントした図である。 プローブ顕微鏡で測定した陽極電極付き基板Kの形状像、位相像、位相分布をカラープリントした図である。 プローブ顕微鏡で測定した陽極電極付き基板Bを水にさらしたものの形状像、位相像、位相分布をカラープリントした図である。 光電子分光法で測定した陽極電極付き基板B、H、Kの仕事関数の経時変化である。 (a)は陽極電極付き基板Kの臭素量の測定結果を示すグラフ、(b)は陽極電極付き基板Hの臭素量の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
1 陽極電極
2 陰極電極
3 有機発光層
9 有機層

Claims (6)

  1. 陽極電極と陰極電極の間に有機発光層を備えて形成される有機エレクトロルミネッセンス素子に於いて、陽極電極は、この陽極電極上に有機物が存在する状態で酸または酸化剤を含有する液体で処理された後に、真空下もしくは酸化性の気体を含む雰囲気下で、前記液体の沸点以上の温度で加熱処理されたものであり、陽極電極上に電荷移動錯体が形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記有機物は、80℃以上のガラス転移温度を有するか、ガラス転移温度を有さないものであることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 陽極電極と陰極電極の間に有機発光層を備えて形成される有機エレクトロルミネッセンス素子を製造するにあたって、陽極電極を酸または酸化剤を含有する液体で処理した後、真空下もしくは酸化性の気体を含む雰囲気下で、前記液体の沸点以上の温度で加熱処理する工程を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  4. 前記陽極電極上に形成される有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する有機層のうち、少なくとも陽極に接する有機層を塗布法によって形成することを特徴とする請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  5. 陽極電極を酸または酸化剤を含有する液体で処理し、有機層を形成した後に前記加熱処理を行なうにあたって、加熱処理を行なう段階で形成されている有機層のガラス転移温度のうち最も低いガラス転移温度以下の温度で熱処理することを特徴とする請求項3又は4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  6. 陽極電極上に有機物が存在する状態で、陽極電極を酸または酸化剤を含有する液体で処理することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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