JPWO2010122817A1 - 医療用樹脂製製品及び呼吸補助チューブ - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は,生体内の組織の損傷を防ぐことができ,その結果,炎症反応および,感染を回避することができる呼吸補助チューブを提供することを目的とする。【課題手段】 本発明は,2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを含むポリマーで呼吸補助チューブをコーティングすることで,呼吸補助チューブへの細胞接着を抑制することができるという知見に基づくものである。さらに,本発明はMPCを含むポリマーで呼吸補助チューブをコーティングすることで,呼吸補助チューブ使用後の粘膜剥離,組織損傷を防ぐことができ,その結果,炎症反応を回避することができるという知見に基づくものである。【選択図】 図5

Description

本発明は,可塑剤の溶出を防止した医療用樹脂製製品,及び2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を含むポリマーでコーティングした呼吸補助チューブなどに関する。
医療用樹脂製製品は広く知られており,様々な医療現場で用いられている。しかし,特に塩化ビニル製の医療用樹脂製製品を使用すると原因不明の炎症を惹起するなどの問題がある。医療用樹脂製製品の例は,呼吸補助チューブである。
従来,呼吸補助チューブは,手術の際に広く使用されている。例えば,特開2003−102827号には,熱可塑性材料で製造された気管チューブが開示されている。特開2003−102827号に開示された気管チューブは,反撥性が小さい。このため,気管内チューブを気管に挿入した際に生ずる痛みを抑えることができる。
しかし,呼吸補助チューブは,組織粘膜との接着性が高い。このため,呼吸補助チューブを取り外すとき,呼吸補助チューブが接着していた組織表面の細胞がはがれてしまう。痰の喀出困難や,呼吸補助チューブ使用後に,気管組織への炎症が生じるという問題がある。
また,呼吸補助チューブを取り外すときに気管壁の細胞に加え,繊毛が剥離してしまう。これにより,患者は痰を排出することができなくなる。そして,痰が肺に逆流することで,肺炎を惹き起こすという問題もあった。
特開2003−102827
本発明は,炎症の発生を抑えることができる医療用樹脂製製品を提供することを目的とする。
本発明は,生体内の組織の損傷を防ぐことができる呼吸補助チューブを提供することを目的とする。
本発明は,繊毛の剥離,気管組織の損傷を防ぐことができる呼吸補助チューブを提供することを目的とする。
本発明の第一の側面は,ホスホリルコリン誘導体を繰り返し単位として含むポリマーを有する医療用樹脂製製品に関する。すなわち,本発明者らは,医療用樹脂製製品を使用すると微量の可塑剤が溶出し,溶出した可塑剤が,例えば炎症を惹起していたことを初めて見出した。そして,本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品は,ホスホリルコリン誘導体を繰り返し単位として含むポリマーを有することで,可塑剤の溶出を防止でき,これにより炎症を防止できるという知見に基づくものである。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品は,表面にコーティング層を有する医療用樹脂製製品であって,
コーティング層は,下記式(A1)で示されるホスホリルコリン誘導体からなる繰り返し単位を含むポリマーを有する,
医療用樹脂製製品に関する。
Figure 2010122817
式(A1)において,
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, Aは,式(A3)で示されるいずれかの基を示し,
Figure 2010122817
は,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,Aは,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,Aは,式(A4)で示される基を示し,
Figure 2010122817
式(A3)中, Aは,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,Aは,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, 式(A4)中,
〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示す。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,
は,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
は,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
は,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
は,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示す,
上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,
は,C1-5アルキレン基を示し,
は,C1-5アルキル基を示し,
は,式(−CO−)で示される基を示し,
は,C1-5アルキレン基を示し,
は,C1-5アルキレン基を示し,
〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,又はC1-5アルキル基を示す,
上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,
は,C1-2アルキレン基を示し,
は,C1-2アルキル基を示し,
は,式(−CO−)で示される基を示し,
は,C1-3アルキレン基を示し,
は,C1-3アルキレン基を示し,
〜A11は,同一でも異なっても良く,C1-2アルキル基を示す,
上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,
1は,メチレン基を示し,
は,メチル基を示し,
は,式(−CO−)で示される基を示し,
は,エチレン基を示し,
は,エチレン基を示し,
〜A11は,いずれもメチル基を示す,
上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,医療用樹脂製製品が,塩化ビニル樹脂を主成分とする,上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,医療用樹脂製製品が,可塑剤を含有する,上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,医療用樹脂製製品が,樹脂部分を有する医療用嘴管,樹脂部分を有する体液誘導管,樹脂部分を有する血液体外循環機器,樹脂部分を有する採血用器具,樹脂部分を有する輸血用器具,樹脂部分を有する輸液用器具,樹脂部分を有する医薬品注入器,樹脂部分を有する縫合糸,又は樹脂部分を有する採尿用器具である,上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,医療用樹脂製製品が,樹脂部分を有する管,樹脂部分を有する袋,樹脂部分を有するチューブ,又は樹脂部分を有するカテーテルを有する,上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,医療用樹脂製製品が,カフ付チューブ,気管内チューブ,気管支チューブ,気管切開チューブ,喉頭気管チューブ,又は食道チューブのいずれかである,上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,コーティング層が,トレハロースをさらに含む,上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,
ホスホリルコリン誘導体は,下記式(A2)で示されるホスホリルコリン誘導体とモノマーとのコポリマーである,上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
Figure 2010122817
式(A2)において,
A1及びnA2は,同一でも異なっても良く20〜2000の数を示し,
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
は,式(A3)で示されるいずれかの基を示し,
Figure 2010122817
は,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,式(A4)で示される基を示し,
Figure 2010122817
式(A3)中,
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
式(A4)中,
〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
は,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,置換されてもよいC1-10アルコキシ基,又は式−N(B)で示される基を示し,
は,式(A5)で示されるいずれかの基,C1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,C2-7アルキニレン基,又は式(−COO−B−)で示される基を示し,
Figure 2010122817
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
式(A5)中,
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
及びBは,同一でも異なってもよく,水素原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
はC1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,又はC2-7アルキニレン基を示す。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,
は,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
は,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
は,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
は,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
は,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
は,式(A5)で示されるいずれかの基を示し,
は,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
は,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示す,
上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,
は,C1-5アルキレン基を示し,
は,C1-5アルキル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,C1-5アルキレン基を示し, Aは,C1-5アルキレン基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,又はC1-5アルキル基を示し,
は,C1-5アルキル基を示し,
は,C2-7アルキル基を示し,
は,式(−CO−)で示される基を示し,
は,C1-5アルキレン基を示す,
上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,
は,C1-2アルキレン基を示し,
は,C1-2アルキル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,C1-3アルキレン基を示し, Aは,C1-3アルキレン基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,C1-2アルキル基を示し,
は,C1-2アルキル基を示し,
は,C3-5アルキル基を示し,
は,式(−CO−)で示される基を示し,
は,C1-2アルキレン基を示す,
上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,
1は,メチレン基を示し,
は,メチル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,エチレン基を示し, Aは,エチレン基を示し, A〜A11は,いずれもメチル基を示し,
は,メチル基を示し,
は,ブチル基を示し,
は,式(−CO−)で示される基を示し,
は,メチレン基を示す,
上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,
は,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し, Aは,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し, Aは,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し, Aは,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し, Aは,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
は,式−N(B)で示される基を示し,
は,C1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,C2-7アルキニレン基,又は式(−COO−B−)で示される基を示し,
は,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し
及びBは,同一でも異なってもよく,水素原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し, BはC1-8アルキレン基を示す,上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,
は,C1-5アルキレン基を示し,
は,C1-5アルキル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,C1-5アルキレン基を示し, Aは,C1-5アルキレン基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,C1-5アルキル基を示し,
は,C1-5アルキル基を示し,
は,式−N(B)で示される基を示し,
は,C1-8アルキレン基を示し,
は,C1-5アルキレン基を示し,
及びBは,同一でも異なってもよく,水素原子,又はC1-5アルキル基を示す,上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,
は,C1-2アルキレン基を示し,
は,C1-2アルキル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,C1-3アルキレン基を示し, Aは,C1-3アルキレン基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,C1-2アルキル基を示し,
は,C1-2アルキル基を示し,
は,式−N(B)で示される基を示し,
は,C2-5アルキレン基を示し,
は,C1-2アルキレン基を示し,
及びBは,同一でも異なってもよく,水素原子,又はC1-2アルキル基を示す,上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,
1は,メチレン基を示し,
は,メチル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,エチレン基を示し, Aは,エチレン基を示し, A〜A11は,いずれもメチル基を示し,
は,メチル基を示し,
は,アミノ基を示し,
は,C2-5アルキレン基を示し,
は,メチレン基を示す,
上記に記載の医療用樹脂製製品に関する。
上記に記載の医療用樹脂製製品は,好ましい要素を適宜組み合わせて用いることができるものである。式(A1)で示されるホスホリルコリン誘導体の好ましい例は,MPCである。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい利用態様は, 表面にコーティング層を形成する工程を含む医療用樹脂製製品の可塑剤溶出防止方法であって,
コーティング層は,下記式(A1)で示されるホスホリルコリン誘導体からなる繰り返し単位を含むポリマーを有する,方法に関する。
Figure 2010122817
式(A1)において,
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
は,式(A3)で示されるいずれかの基を示し,
Figure 2010122817
は,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,式(A4)で示される基を示し,
Figure 2010122817
式(A3)中,
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
式(A4)中,
〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示す。
上記に記載の医療用樹脂製製品の可塑剤溶出防止方法は,先に説明した医療用樹脂製製品の好ましい要素を適宜組み合わせて用いることができるものである。
上記方法の好ましい態様は,ホスホリルコリン誘導体は,下記式(A2)で示されるホスホリルコリン誘導体と疎水性モノマーとのコポリマーである方法に関する。
Figure 2010122817
式(A2)において,
A1及びnA2は,同一でも異なっても良く20〜2000の数を示し,
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
は,式(A3)で示されるいずれかの基を示し,
Figure 2010122817
は,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,式(A4)で示される基を示し,
Figure 2010122817
式(A3)中,
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
式(A4)中,
〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
は,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,置換されてもよいC1-10アルコキシ基,又は式−N(B)で示される基を示し,
は,式(A5)で示されるいずれかの基,C1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,C2-7アルキニレン基,又は式(−COO−B−)で示される基を示し,
Figure 2010122817
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
式(A5)中,
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
及びBは,同一でも異なってもよく,水素原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
はC1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,又はC2-7アルキニレン基を示す。
上記に記載の医療用樹脂製製品の可塑剤溶出防止方法は,先に説明した医療用樹脂製製品の好ましい要素を適宜組み合わせて用いることができるものである。
本発明の第2の側面は,呼吸補助チューブに関する。この呼吸補助チューブは,上記に記載の医療用樹脂製製品の下位概念である。すなわち,この呼吸補助チューブは,可塑剤溶出を防止できるほか,さらに本発明の第2の側面に関する効果を奏するものである。
すなわち,本発明の第2の側面は,2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下,「MPC」ともいう)を含むポリマーで呼吸補助チューブをコーティングすることで,呼吸補助チューブへの細胞接着を抑制することができるという知見に基づくものである。さらに,本発明はMPCを含むポリマーで呼吸補助チューブをコーティングすることで,呼吸補助チューブを着脱するときに,組織損傷や繊毛の剥離,損傷を防ぐことができるという知見に基づくものである。
本発明の第2の側面は,表面にコーティング層を有する呼吸補助チューブに関する。呼吸補助チューブのコーティング層は,2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を含むポリマーを有する。後述する実施例に示されたとおり,呼吸補助チューブは,MPCを含むポリマーでコーティングされることで,呼吸補助チューブの使用時および着脱時に,細胞が剥離される事態を防ぐことができる。その結果,呼吸補助チューブ使用による炎症反応を回避することができる。さらに,後述する実施例に示されたとおり,本発明の呼吸補助チューブは着脱時に生体組織を損傷させない。このため,本発明の呼吸補助チューブは気管内壁の繊毛が剥離する事態を防ぐことができる。よって,本発明の呼吸補助チューブを用いると,肺炎を回避することができる。
本発明の第2の側面の好ましい態様は,呼吸補助チューブのコーティング層が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)と疎水性モノマーとのコポリマーを含む。このコポリマーは,下記式(I)で表される。
Figure 2010122817
ここで,式(I)中,n及びnは同一でも異なってもよく,20〜1500の整数を示すものである。Rは,H又はC1-3アルキル基を示す。Rは,C4-15アルキル基,C4-15アルケニル基,又はC4-15アルキニル基を示す。後述するように,コポリマーの疎水性基と,呼吸補助チューブ表面上の疎水性基とが疎水性結合により結合する。よって,コーティング層は,細胞膜のような二重膜状となる。このコーティング層は,生体内の細胞やタンパク質との接着性が低い。よって,MPCと疎水性モノマーとのコポリマーを含むコーティング層を有する呼吸補助チューブを用いれば,呼吸補助チューブ使用後,生体組織を損傷することがない。よって,呼吸補助チューブ使用による炎症反応を回避することができる。
本発明の第2の側面の好ましい態様は,呼吸補助チューブのコーティング層が,下記式(II)で表される,前記2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)と塩基性モノマーとのコポリマーを含む。
Figure 2010122817
ここで,式(II)中,n及びnは同一でも異なってもよく,20〜1500の整数を示すものである。Rは,H又はC1-3アルキル基を示す。Rは,C1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,C2-7アルキニレン基,又は式(−COO−R−)で示される基を示す。ここで,RはC1-8アルキル基,C2-7アルケニル基,又はC2-7アルキニル基を示す。後述するように,コポリマーに含まれる塩基性残基が,呼吸補助チューブの表面のカルボキシル基やグルリシル基などと反応して,イオン結合で結合する。よって,コーティング層は,細胞膜のような二重膜状となる。このコーティング層は,生体内の細胞やタンパク質との接着性が低い。よって,MPCと塩基性モノマーとのコポリマーを含むコーティング層を有する呼吸補助チューブを用いれば,呼吸補助チューブと生体組織が結着する事態を防ぐことができる。よって,本発明の呼吸補助チューブは,呼吸補助チューブ使用後,生体組織を損傷しない。従って,呼吸補助チューブ使用による炎症反応が回避される。
本発明の第2の側面の好ましい態様は,コーティング層は,1×100〜1×10μmである,上記に記載の呼吸補助チューブである。このようにコーティング層を設けることで,呼吸補助チューブ使用時および着脱時における生体組織の損傷を防ぐことができる。よって,呼吸補助チューブ使用による炎症反応が回避される。
本発明の第2の側面の好ましい態様は,呼吸補助チューブのコーティング層は,トレハロースをさらに含む。後述する実施例で示されたとおり,MPCとトレハロースを含むコーティング層は,細胞の接着性を低下させることができる。よって,本発明の呼吸補助チューブは,呼吸補助チューブ使用することによる,生体組織の細胞剥離を防ぐことができる。従って,呼吸補助チューブ使用による炎症反応が回避される。
本発明の第2の側面の好ましい態様は,呼吸補助チューブは,気管内チューブ,気管支チューブ,気管切開チューブ,喉頭気管チューブ,又は食道チューブのいずれかである。さらに,呼吸補助チューブは,カフ付チューブであってもよい。後述する実施例に示されたとおり,本発明の呼吸補助チューブは,呼吸補助チューブの着脱時に,生体組織の細胞を剥離しない。よって,呼吸補助チューブ使用による炎症反応を回避することができる。
本発明の第3の側面は,呼吸補助チューブをコーティングする方法に関する。本発明の方法は,2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を含むポリマーを0.01〜50重量%有するコーティング液で,呼吸補助チューブをコーティングするコーティング工程を含む。後述する実施例に示されたとおり,このような製造工程を経て製造した呼吸補助チューブは,細胞接着性が低い。よって,呼吸補助チューブの着脱によって,細胞の剥離が起こらない。したがって,本発明の呼吸補助チューブは,呼吸補助チューブ使用による炎症反応を回避することができる。
本発明の第3の側面の好ましい態様は,コーティング工程は,コーティング液に呼吸補助チューブを浸漬する浸漬工程と,浸漬工程で浸漬させた呼吸補助チューブを乾燥する乾燥工程を含む。浸漬工程と乾燥工程は,2〜20回繰り返される。後述する実施例に示されたとおり,このような製造工程を経て製造した呼吸補助チューブは,細胞接着性が低い。よって,本発明の呼吸補助チューブは,呼吸補助チューブを抜去した後,気管粘膜細胞の剥離が起こらない。したがって,呼吸補助チューブ使用による炎症反応が回避される。
本発明によれば,炎症の発生を抑えることができる医療用樹脂製製品を提供することができる。特に,本発明によれば,気管内チューブを含む呼吸補助チューブの内壁及び外壁の両方にバイオフィルム層を形成することができる。このバイオフィルム層の親水性により,痰等がカプセル状に成長して肺内に入って肺炎等を惹起する事態を効果的に防止できる。このように本発明によれば呼吸補助チューブの内壁及び外壁にバイオフィルムを形成させることで,感染症の発生を防止できる。
本発明によれば,生体組織の損傷を防ぐことができる呼吸補助チューブを提供することができる。本発明によれば,生体組織の損傷を防ぐことができるので,炎症反応を回避することができる。特に,本発明によれば呼吸補助チューブの外壁にバイオフィルム層を形成できる。このバイオフィルム層は,比較的滑らかであり,その摩擦係数はチューブそのものの摩擦係数より小さい。このため,このバイオフィルム層を有する呼吸補助チューブを比較的容易に患者の気管等に挿入できる。また,呼吸補助チューブを患者の気管等に挿入した後に,呼吸補助チューブが気管内で移動する。この際,呼吸補助チューブと患者の組織とが摩擦を起こす。本発明によれば,呼吸補助チューブの外壁を滑らかなバイオフィルム層で覆うことができるので,摩擦を少なくして,生体組織の損傷を防止できる。このように本発明は,MPCコーティングによって,気道粘膜への摩擦抵抗が減ることにより気道及び声帯への損傷を軽減でき,これらの生体組織からの出血を抑制できる。本発明よれば,繊毛の損傷を防ぐことできる呼吸補助チューブを提供することができる。よって,本発明によれば,痰が肺に入る事態を防止でき,肺炎を防ぐことができる。本発明によれば,気道の繊毛細胞を損傷しないので,喀痰及び肺からの細菌を含んだ分泌物の喀出を阻害しなくなり,肺炎の発症を抑えることができる。
図1は,本発明の呼吸補助チューブの一例を示す図面に替わる写真である。図1Aはカフ付気管内チューブ,図1Bはカフ付気管支チューブ,図1Cはカフ付気管切開チューブ,図1Dはカフ付喉頭気管チューブ,図1Eは食道チューブを示す図面に替わる写真である。 図2は,ヘマトキシリン(Hematoxylin)染色したカフ付気管チューブの図面に替わる写真である。 図3は,ヘマトキシリン(Hematoxylin)染色したカフ部の図面に替わる写真を示す。図3A〜図3Cは,PMB3070コーティングしていない気管チューブのカフ部(コントロール)の写真である。図3D〜図3Fは,0.5重量%PMB3070を用いて10回コーティングした(0.5%PMB3070×10)気管チューブのカフ部の写真である。図3G〜図3Iは,5.0重量%PMB3070で1回コーティングした(5.0%PMB3070×1)気管チューブのカフ部の写真である。図3A,図3D,及び図3Gは,1倍率のカフ部の写真である。図3B,図3E,及び図3Hは,カフ部を50倍で撮影した顕微鏡写真である。図3C,図3F,及び図3Iは,カフ部を400倍で撮影した顕微鏡写真である。 図4は,ヘマトキシリン(Hematoxylin)染色した部分を2値化して,その割合を画像ソフトで算出した図面に替わるグラフである。 図5は,気管チューブ挿入後の気管損傷具合を示す図面に替わる写真である。 図6は,PMB3070及びトレハロースでコーティングすることで細胞の接着性が低下することを示す図面に替わる写真である。図6Aはコントロールディッシュ(コーティングしていない細胞培養ディッシュ),図6B〜図6FはPMB3070及びトレハロースでコーティングしたディッシュへの細胞の接着性を示す図面に替わる写真である。 図7は,PMB3070でコーティングした気管チューブによる気管粘膜損傷抑制効果を示す図面に替わる写真である。図7A及び図7Bはコントロールを示し,未処理の気管チューブを用いた時の気管組織を,それぞれ100倍又は200倍で撮影した結果を示す図面に替わる写真である。図7B及び図7Cは,PMB3070でコーティングした気管チューブを用いた時の気管組織を,それぞれ100倍又は200倍で撮影したときの結果を示す図面に替わる写真である。 図8は,MPCコーティングによる可塑剤溶出防止の可能性を示すために吸光スペクトルを測定した結果を示す図面に替わるグラフである。図8(a)は,浸漬を開始してから12時間後の浸漬液の吸光スペクトルを示す。図8(b)は,浸漬を開始してから24時間後の浸漬液の吸光スペクトルを示す。 図9は,MPCコート回数を変化させたときのDEHP溶出の時間変化を示す図面に替わるグラフである。 図10は,PVCから放出されるDEHP由来炎症反応のMPCコーティングによる抑制効果を示す図面に替わるグラフである。図10(a)は,培地中のTNF−αの測定結果を示す。図10(b)は,培地中のプロスタグランジンE(PGE2)の測定結果を示す。 図11は,8時間PVCシートを浸漬した培地を用いたPVCから放出されるDEHP由来炎症反応を示す図面に替わるグラフである。図11(a)は,培地中のTNF−αの測定結果を示す。図11(b)は,培地中のプロスタグランジンE(PGE2)の測定結果を示す。 図12は,HE染色の結果を示す図面に替わる写真である。図12(a)はMPCコーティングを行っていないPVC製呼吸補助チューブ(MPC−)のHE染色の結果を示す。図12(b)は図12(a)の拡大図を示す。図12(c)はMPCコーティングを行ったPVC製呼吸補助チューブ(MPCコーティング(1x))のHE染色の結果を示す。図12(d)は図12(c)の拡大図を示す。 図13は,PAS染色の結果を示す図面に替わる写真である。図13(a)はMPCコーティングを行っていないPVC製呼吸補助チューブ(MPC−)のPAS染色の結果を示す。図13(b)は図13(a)の拡大図を示す。図13(c)はMPCコーティングを行ったPVC製呼吸補助チューブ(MPCコーティング(1x))のPAS染色の結果を示す。図13(d)は図13(c)の拡大図を示す。 図14は,気管粘膜上皮の剥離が認められた周囲組織におけるHE染色及びPAS染色の結果を示す図面に替わる写真である。図14(a)は,MPCコーティングを行っていないPVC製呼吸補助チューブ(MPC−)のHE染色の結果を示す。図14(b)は,MPCコーティングを行っていないPVC製呼吸補助チューブ(MPC−)のPAS染色の結果を示す。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品は,表面にコーティング層を有する医療用樹脂製製品に関する。「医療用樹脂製製品」とは,樹脂でできた部分を有する医療用製品を意味する。本発明において医療用樹脂製製品は,特に患者の器官と接する部分に樹脂製の部分を含むものであることが好ましい。
「コーティング層」とは,樹脂部分の表面にその樹脂とは別の樹脂を用いて表面に層を形成したものであってもよいし,医療用樹脂製製品を製造する際にその樹脂に以下に説明する本発明のポリマーを含有させ,これが表面にも存在するものであってもよい。
そして,コーティング層は,下記式(A1)で示されるホスホリルコリン誘導体からなる繰り返し単位を含むポリマー(「本発明のポリマー1」)を有する。実施例において実証されたとおり,本発明のポリマー1は,可塑剤の溶出を効果的に防止する。
Figure 2010122817
ポリマー1の数平均分子量の例は,1×10〜5×10であり,3×10〜4×10が好ましく,5×10〜3×10がより好ましく,1×10〜3×10がさらに好ましい。このようなポリマーは,公知の方法を用いて製造してもよく,市販のものを使用してもよい。特にポリマー1の例であるMPCポリマーは広く合成されている。このため,MPCポリマーの製造方法に公知の方法を応用することで本発明のポリマー1を製造することができる。
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示す。Aの好ましい例は,無置換のC1-10アルキレン基,又は無置換のC2-10アルケニレン基である。Aのさらに好ましい例は,C1-5アルキレン基であり,メチレン基又はエチレン基がさらに好ましい。
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示す。Aの好ましい例は,水素原子,ハロゲン原子,無置換のC1-10アルキル基,無置換のC2-10アルケニル基,無置換のC2-10アルキニル基,又は無置換のC1-10アルコキシ基である。Aのさらに好ましい例は,C1-5アルキル基であり,メチル基又はエチル基がさらに好ましい。
は,式(A3)で示されるいずれかの基を示す。Aの好ましいものは,式(−CO−)で示される基である。
Figure 2010122817
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示す。Aの好ましい例は,単結合,無置換のC1-10アルキレン基,又は無置換のC2-10アルケニレン基であり,単結合,又はC1-5アルキレン基がさらに好ましく,メチレン基が特に好ましい。
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示す。Aの好ましい例は,水素原子,ハロゲン原子,無置換のC1-10アルキル基,無置換のC2-10アルケニル基,無置換のC2-10アルキニル基,又は無置換のC1-10アルコキシ基であり,水素原子,又はC1-5アルキル基が好ましく,メチル基がさらに好ましい。
は,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示す。Aの好ましい例は,無置換のC1-10アルキレン基,又は無置換のC2-10アルケニレン基であり,C1-3アルキレン基がさらに好ましい。
は,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示す。Aの好ましい例は,無置換のC1-10アルキレン基,又は無置換のC2-10アルケニレン基であり,C1-3アルキレン基がさらに好ましい。
は,式(A4)で示される基を示す。
Figure 2010122817
〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示す。A〜A11の好ましい例は,水素原子,ハロゲン原子,無置換のC1-10アルキル基,無置換のC2-10アルケニル基,無置換のC2-10アルキニル基,又は無置換のC1-10アルコキシ基であり,メチル基又はエチル基がさらに好ましい。
本発明の第一の側面の医療用樹脂製製品の好ましい態様は,ホスホリルコリン誘導体は,下記式(A2)で示されるホスホリルコリン誘導体とモノマーとのコポリマー(ポリマー2)である。
Figure 2010122817
A1及びnA2は,同一でも異なっても良く20〜2000の数を示す。nA1及びnA2及びポリマー2の分子量は,後述する式(I)又は(II)で示される化合物と同様である。また,A,A,A,A,A,及びAは,先に説明したと同様である。
は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示す。
は,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,置換されてもよいC1-10アルコキシ基,又は式−N(B)で示される基を示す。
は,式(A5)で示されるいずれかの基,C1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,C2-7アルキニレン基,又は式(−COO−B−)で示される基を示す。
Figure 2010122817
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示す。
は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示す。Bは,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示す。
及びBは,同一でも異なってもよく,水素原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示す。BはC1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,又はC2-7アルキニレン基を示す。
ホスホリルコリン誘導体とコポリマーを構成するモノマー単位の例は,疎水性のモノマー及び塩基性のモノマーである。ホスホリルコリン誘導体とコポリマーを構成するモノマー単位が,疎水性のモノマーであるもののうち好ましい例は,以下のものである。
は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示す。好ましいBは,C1-5アルキル基であり,さらに好ましいBは,メチル基又はエチル基である。
は,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示す。好ましいBは,C2-7アルキル基であり,より好ましいBは,C3-5アルキル基である。
は,式(A5)で示されるいずれかの基を示す。好ましいBは,式(−CO−)で示される基である。
は,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示す。好ましいBは,C1-5アルキレン基であり,より好ましいBは,C1-2アルキレン基である。
は,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示す。好ましいBは,単結合,又はC1-5アルキレン基がさらに好ましく,メチレン基が特に好ましい。
は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示す。好ましいBは,水素原子,又はC1-5アルキル基が好ましく,メチル基がさらに好ましい。
ホスホリルコリン誘導体とコポリマーを構成するモノマー単位が,塩基性のモノマーであるもののうち好ましい例は,以下の通りである。
は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示す。好ましいBは,C1-5アルキル基であり,さらに好ましいBは,メチル基又はエチル基である。
は,式−N(B)で示される基である。
は,C1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,C2-7アルキニレン基又は式(−COO−B−)で示される基を示す。好ましいBは,C1-8アルキレン基であり,さらに好ましいBは,C2-5アルキレン基である。
は,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示す。好ましいBは,C1-5アルキレン基であり,より好ましいBは,C1-2アルキレン基である。
及びBは,同一でも異なってもよく,水素原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示す。好ましいB及びBの例は,水素原子,又はC1-5アルキル基であり,さらに好ましいB及びBの例は,水素原子,又はC1-2アルキル基である。
はC1-8アルキレン基を示し,好ましいBはC1-5アルキレン基であり,さらに好ましいBはC1-2アルキレン基である。
本発明は,医療用樹脂製製品を製造する際のポリマー1又はポリマー2の使用をも提供する。また,ポリマー1又はポリマー2を用いる可塑剤の溶出防止方法をも提供する。本発明は,ポリマー1又はポリマー2を含むコーティング層を形成する工程を含む,可塑剤の溶出防止方法をも提供する。本発明は,ポリマー1又はポリマー2を含むコーティング層を形成する工程を含む,医療用樹脂製製品の製造方法をも提供する。コーティング層を形成する方法は,後述するコーティング層を作製する方法と同様である。
本発明はさらに,医療用樹脂製製品に含まれる可塑剤が溶出することにより惹起される疾患を防止するためのポリマー1又はポリマー2の使用をも提供する。そして,可塑剤が溶出することにより惹起される疾患の例は,炎症である。本発明は,ポリマー1又はポリマー2を用いた,医療用樹脂製製品に含まれる可塑剤が溶出することにより惹起される疾患の予防方法をも提供する。
本明細書において,用語「単結合」とは,そこに炭素原子は存在しない結合様式を意味する。たとえば,CH−(単結合)−CHは,エタン分子を意味する。ハロゲン原子の例は,フッ素,塩素,臭素及びヨウ素である。
用語「Cm-n」は,炭素数がm個以上n個以下を意味する。
たとえば,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,置換されてもよいC1-10アルキレン基,置換されてもよいC2-10アルケニレン基,及び置換されてもよいC1-10アルコキシ基における置換基の例は,ハロゲン原子,水酸基,ニトロ基,及びシアノ基である。置換基の数は特に限定されず,0個,1個又は数個(2個〜5個)があげられる。また,ある分子が複数の置換基を有する場合,それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
1-10アルキル基は,炭素数が1〜10個の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を示す。C1-10アルキル基の例は,メチル基,エチル基,n−プロピル基,iso−プロピル基,n−ブチル基,iso−ブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,n−ペンチル基,1,1−ジメチルプロピル基,1,2−ジメチルプロピル基,2,2−ジメチルプロピル基,1−エチルプロピル基,2−エチルプロピル基,n−ヘキシル基,1−メチル−2−エチルプロピル基,1−エチル−2−メチルプロピル基,1,1,2−トリメチルプロピル基,1−プロピルプロピル基,1−メチルブチル基,2−メチルブチル基,1,1−ジメチルブチル基,1,2−ジメチルブチル基,2,2−ジメチルブチル基,1,3−ジメチルブチル基,2,3−ジメチルブチル基,2−エチルブチル基,2−メチルペンチル基,及び3−メチルペンチル基である。
2-10アルケニル基は,炭素数が2〜10個の直鎖状または分枝鎖状のアルケニル基を示す。C2-10アルケニル基の例は,ビニル基,アリル基,1−プロペニル基,2−プロペニル基,イソプロペニル基,2−メチル−1−プロペニル基,3−メチル−1−プロペニル基,2−メチル−2−プロペニル基,3−メチル−2−プロペニル基,1−ブテニル基,2−ブテニル基,3−ブテニル基,1−ペンテニル基,1−ヘキセニル基,1,3−ヘキサンジエニル基,及び1,6−ヘキサンジエニル基である。
2-10アルキニル基は,2〜10個の直鎖状または分枝鎖状のアルキニル基である。C2-10アルキニル基の例は,エチニル基,1−プロピニル基,2−プロピニル基,1−ブチニル基,2−ブチニル基,3−ブチニル基,3−メチル−1−プロピニル基,1−エチニル−2プロピニル基,2−メチル−3−プロピニル基,1−ペンチニル基,1−ヘキシニル基,1,3−ヘキサンジインイル基,及び1,6−ヘキサンジインイル基である。
1-10アルキレン基は,C1−10アルキル基から任意の位置の水素原子がさらに1個の除かれた二価の基を意味する。C1-10アルキレン基の例は,メチレン基,エチレン基,メチルエチレン基,プロピレン基,エチルエチレン基,1,1−ジメチルエチレン基,1,2−ジメチルエチレン基,トリメチレン基,1−メチルトリメチレン基,1−エチルトリメチレン基,2−メチルトリメチレン基,1,1−ジメチルトリメチレン基,テトラメチレン基,ペンタメチレン基,及びヘキサメチレン基である。
2-10アルケニレン基は,C2-10アルケニル基から水素原子がさらに1個の除かれた基を意味する。C2-10アルケニレン基の例は,ビニレン基,プロペニレン基,ブテニレン基,ペンテニレン基,及びヘキセニレン基である。
2-7アルキニレン基とは,C2-7アルキニル基から水素原子がさらに1個の除かれた基を意味する。C2-7アルキニレン基の例は,エチニレン基,プロピニレン基,ブチニレン基,ペンチニレン基,及びヘキシニレン基である。
1-10アルコキシ基は,C1-10アルキル基と水酸基とが結合した基を意味する。C1-10アルコキシ基の例は,メトキシ基,エトキシ基,n−プロポキシ基,iso−プロポキシ基,sec−プロポキシ基,n−ブトキシ基,iso−ブトキシ基,sec−ブトキシ基,tert−ブトキシ基,n−ペンチルオキシ基,iso−ペンチルオキシ基,sec−ペンチルオキシ基,n−ヘキソキシ基,iso−ヘキソキシ基,1,1−ジメチルプロピルオキシ基,1,2−ジメチルプロポキシ基,2,2−ジメチルプロピルオキシ基,2−エチルプロポキシ基,1−メチル−2−エチルプロポキシ基,1−エチル−2−メチルプロポキシ基,1,1,2−トリメチルプロポキシ基,1,1,2−トリメチルプロポキシ基,1,1−ジメチルブトキシ基,1,2−ジメチルブトキシ基,2,2−ジメチルブトキシ基,2,3−ジメチルブチルオキシ基,1,3−ジメチルブチルオキシ基,2−エチルブトキシ基,1,3−ジメチルブトキシ基,2−メチルペントキシ基,3−メチルペントキシ基,及びヘキシルオキシ基である。
本発明の第2の側面は,表面にコーティング層を有する呼吸補助チューブに関する。本発明の呼吸補助チューブはコーティング層を有し,コーティング層は2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)(下記式(III))を含むポリマー(以下「MPCポリマー」ともいう)を有する。
Figure 2010122817
本発明において,呼吸補助チューブの表面とは,生体組織と接触する呼吸補助チューブの表面をいう。生体組織と接触する表面は,呼吸補助チューブの着脱時及び使用時に生体組織と接触する,呼吸補助チューブの外表面を示す。しかし生体組織と接触する表面は,呼吸補助チューブの外表面全体に限定されず,外表面の一部であってもよい。
本発明の呼吸補助チューブとしては,気管内チューブ,気管支チューブ,気管切開チューブ,喉頭気管チューブ,又は食道チューブがあげられる(図1)。本発明において,呼吸補助チューブは,カフ付のチューブであってもよいし,カフなしのチューブであってもよい。なお,新生児及び幼児に使用する場合は,カフなしのチューブを用いる。これは,新生児及び乳児の気管の形状が,馬蹄形ではなく丸いためである。
本発明の呼吸補助チューブの例は,ラリンゲルマスクである。
本発明の呼吸補助チューブの一例として,カフ付気管チューブを説明する。カフ付気管チューブは,チューブ本体と;チューブ本体の先端の近傍に,チューブ本体の外周を取り巻くように気密に取り付けられた,球状,又は楕円球状の薄膜からなるカフ部と;を有する。カフ付気管チューブは,カフ付気管チューブを挿入した気管内で,カフを膨縮させることができるようにカフ膨張用チューブが設けられていてもよい。カフ膨張用チューブは,パイロットバルーンと,パイロットバルーンに連通している小径チューブと,を有する。パイロットバルーンは,小径チューブの一端で,小径チューブと連通する。小径チューブの他端は,チューブ本体と連通する。小径チューブとチューブ本体との連通部は,カフ部と,カフ部が取り付けられていないチューブ本体との間に設けられる。本発明において,チューブ本体の長さは20〜50cmがあげられ,チューブの厚さは0.5〜5mmがあげられる。カフ部分を除くチューブの内径は,4〜12mmがあげられる。カフ部の内径は,膨張時,1〜5cmがあげられる。カフ部を形成する薄膜の厚さは,0.01〜1mmがあげられる。カフ容量としては,10〜100mLがあげられるが,カフ部容量は,使用用途に応じて10mL未満,又は100mLとなるように設計してもよい。カフ部は,膨縮させて使用するため,シリコンゴムなど膨縮特性を有する材料で製造されることが望ましい。なお,図2に示すようにチューブには,チューブ内壁から内方向に向かう突起が形成されていてもよく,この突起はチューブの長手方向に対し螺旋状に形成されてもよい。なお,上記のとおり,本発明において,気管チューブの形状及び大きさは,特に限定されず,当業者であれば,患者の年齢や性別,使用目的などに応じて適宜選択することができる。
本発明において,呼吸補助チューブは,ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレンープロピレン共重合体などを用いたポリオレフィンエラストマー,ポリ塩化ビニル,エチレン−酢酸ビニル共重合体,ポリアミドエラストマー,ポリウレタン等の熱可塑性樹脂,シリコンゴム,又はラテックスゴム等で製造されていればよい。呼吸補助チューブを挿入する体内は,その形状が様々に変化する。そのため,呼吸補助チューブを挿入したとき,呼吸補助チューブが硬いと,形状の変化に対応できず,患者の体組織を圧迫する場合がある。それにより,呼吸補助チューブを挿入された患者に痛みを生じさせる。一方,呼吸補助チューブが軟化していると,呼吸補助チューブを挿入した体内の形状の変化に応じて,呼吸補助チューブの形状が変化するので,患者に負担をかけることがない。よって,呼吸補助チューブの材料としては,フタル酸エステル,ポリ塩化ビニル,エチレン−酢酸ビニル共重合体,ポリアミドエラストマー,又はポリウレタン等の熱可塑性樹脂であり,さらに好ましくはポリ塩化ビニルである。ポリ塩化ビニルは,体外では硬化体であるが,体内に入ると体温で軟化するので,患者が感じる疼痛を抑えることができる。しかし,このような材料で製造した呼吸補助チューブは,生体組織との接着性が高い。そのため,呼吸補助チューブを使用するとき,呼吸補助チューブと生体組織が接触すると,呼吸補助チューブを取り出す際に生体組織を剥離し,損傷させてしまう。そのため,後述する実施例に示されたように,熱可塑性樹脂で製造された呼吸補助チューブは,MPCポリマーでコーティングすることで,体温で軟化するという好ましい特徴を保ちつつ,生体組織を剥離しないというさらに好ましい特徴を有することになる。本発明の呼吸補助チューブは,公知の製造方法で製造してもよく,また市販の呼吸補助チューブを用いてもよい。
上記のとおり,呼吸補助チューブとの材料として可塑性を有する材料(可塑剤)を用いることは,患者が感じる疼痛を抑えることができるので好ましい。しかし,可塑剤を含む呼吸補助チューブは,生体組織と接触している部分から可塑剤が生体組織に移行する可能性がある。可塑剤が生体組織に移行すると,生体組織が損傷し,炎症反応が引き起こされる。しかし,後述するとおり,本発明の呼吸補助チューブを用いると,呼吸補助チューブと生体組織の間にMPCを含む層が存在する。この層によって,呼吸補助チューブの材料に用いられる可塑剤が,生体組織に移行することを防止することができる。よって,本発明の呼吸補助チューブを用いれば,呼吸補助チューブが生体組織に接触することによって引き起こされる炎症反応を予防することができる。
本発明において,呼吸補助チューブのコーティング層とは,呼吸補助チューブ表面にMPCポリマーが結合することで形成される層である。本発明のコーティング層に含まれる物質は,MPCポリマーだけに限られない。後述するような,呼吸補助チューブのコーティング工程でもちいる溶媒中の成分が含まれてもよい。本発明のコーティング層に含まれるMPCポリマー割合は,コーティング層に含まれる物質の全量を100重量部としたときに,60〜100重量部があげられ,90〜99重量部でもよく,80〜95重量部でもよい。本発明の呼吸補助チューブコーティング層の厚みは,1×10〜1×10μmがあげられ,好ましくは5×10〜1×10μmであり,より好ましくは1×10〜5×10μmである。本発明において,コーティング層の厚みとは,コーティング層中で,呼吸補助チューブ外表面と,コーティング層上層面の距離が最も離れている部分の厚みをいう。ここで,コーティング層上層面は,呼吸補助チューブ外表面と接していない側のコーティング層面をいう。本発明において,コーティング層の厚みは,均一であることが好ましいが,厚みが異なっていてもよい。厚みを異ならせる場合として,使用時に生体組織と接触する頻度の高い部位の厚みを大きくすることがあげられる。このようなコーティング層の厚みは,公知の膜厚計をもちいて測定することができる。
次に,MPCポリマーの一例を,下記式(IV)に示す。
Figure 2010122817
ここで,nは,50〜2000の整数があげられ,100〜1500が好ましく,200〜1000がより好ましく,350〜800がさらに好ましい。よって,MPCポリマーの数平均分子量としては,1×10〜5×10があげられ,3×10〜4×10が好ましく,5×10〜3×10がより好ましく,1×10〜3×10がさらに好ましい。
このようなMPCポリマーは,公知の方法を用いて製造してもよく,市販のものを使用してもよい。MPCポリマーの製造例を以下に示す。まず,2−ブロモエチルホスホリルジクロリドと,2−ヒドロキシエチルホスホリルジクロリドと,2−ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて,2−メタクリロイルオキシエチル−2’−ブロモエチルリン酸を得,更にこれをトリメチルアミンとメタノール溶液中で反応させる(特開平05−070321)。その後,MPCを溶媒中で重合開始剤の存在下,互いに反応させることでMPCポリマーを得ることができる。ここで使用される溶媒は,MPCを溶解するものであればよい。MPCを溶解させる溶媒は,例えば,水,メタノール,エタノール,プロパノール,t−ブタノール,ベンゼン,トルエン,ジメチルホルムアミド,テトラヒドロフラン,クロロホルム又はこれらの混合溶媒があげられる。また,重合開始剤として,公知のラジカル開始剤を用いればよく,2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN),アゾビスマレノニトリル等の脂肪酸アゾ化合物,過酸化ベンゾイル,過酸化ラウロイル,過硫酸カリウムなどの有機過酸化物があげられる。これらの溶媒や重合開始剤などは,当業者であれば,MPCポリマーを製造するために適宜選択して用いることができる。
上記式(IV)に示したとおり,本発明のMPCポリマーは,生体膜構成成分であるリン酸脂質極性基(ホスホリルコリン基(−O−PO−O−CHCH−N(CH)を有する。このホスホリルコリン基は,細胞膜(脂質2重膜)に含まれる。そのため,コーティング層にホスホリルコリン基を有する呼吸補助チューブは,生体から疑似生体膜成分として認識される。よって,MPCポリマーをコーティング層に有する本発明の呼吸補助チューブは,優れた生体適合性を示す。従って,本発明の呼吸補助チューブは,生体内に用いるチューブとして,好適に使用することができる。
さらに本発明のMPCポリマーとして,MPCモノマーと,塩基性のモノマー及び疎水性のモノマーのいずれか(下記式(V))又は両方(下記式(VI))とを含むコポリマーを用いてもよい。塩基性モノマー及び疎水性モノマーとしては,MPCと重合することができるものであればよく,当業者であれば,公知の化合物の中から適宜選択して用いることができる。
Figure 2010122817
ここで,Xは塩基性モノマー又は疎水性モノマーを示し,n及びnは同一でも異なってもよく,20〜1500の整数を示す。
Figure 2010122817
ここで,Y及びZは,塩基性モノマー及び疎水性モノマーを示し,n,n及びn10はそれぞれ同一でも異なってもよく,20〜1500の整数を示す。
次に,塩基性モノマーについて説明する。
本発明の塩基性モノマーとして,下記式(VII)に示す化合物が挙げられる。
Figure 2010122817
式(VII)中,Rは,H又はC1-3アルキル基を示し,好ましくは,H又はメチル基である。Rは,C1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,又はC2-7アルキニレン基を示し,好ましくはC1-5アルキル基であり,より好ましくはC1-3アルキル基である。Rは,直鎖でも分鎖でもよいが,直鎖の方が好ましい。上記式(VII)に示される化合物は公知であり,当業者であれば適宜製造することができる。
MPCモノマーと塩基性モノマーを反応させて得られるコポリマー(以下,「塩基性コポリマー」ともいう)について説明する。塩基性コポリマーは,下記式(II)で表わされる。
Figure 2010122817
式(II)中,Rは,H,又はC1-3アルキル基を示し,好ましくは,H,又はメチル基である。Rは,C1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,C2-7アルキニレン基,又は式(−COO−R−で示される基)を示す。ここで,RはC1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,又はC2-7アルキニレン基を示す。R及びRは,好ましくはC1-5アルキル基であり,より好ましくはC1-3アルキル基である。R及びRは,直鎖でも分鎖でもよいが,直鎖の方が好ましい。また,式(II)中,n及びnは同一でも異なってもよく,20〜1500の整数があげられ,100〜1000が好ましく,200〜800がより好ましい。なお,上記塩基性コポリマーは,公知の方法で製造したものでもよく,市販の塩基性コポリマーでもよい。
本発明のコーティング層に含まれる塩基性コポリマーの数平均分子量としては,1×10〜5×10があげられる。数平均分子量が小さすぎても,大きすぎても,コーティング層が均一になりにくい。すなわち,所望の厚みを得ることが難しい。そのため,塩基性コポリマーの数平均分子量としては,5×10〜3×10が好ましく,1×10〜3×10がより好ましい。本発明のコーティング層に含まれる塩基性コポリマー中のMPCと塩基性モノマーのモル比(n:n)としては,1:10〜10:1があげられる。塩基性コポリマー中,MPC比が高いと呼吸補助チューブと塩基性コポリマーの結合力が低下する。一方,塩基性モノマー比が高いと,生体親和性が低下する。よって,コーティング層中のMPCと塩基性モノマーのモル比(n:n)としては,1:5〜5:1が好ましく,1:3〜3:1がより好ましい。
本発明において,塩基性コポリマーを含むコーティング層は,塩基性コポリマー中の塩基が,呼吸補助チューブの表面に存在するカルボキシル基やグルリシル基などと反応し,イオン結合で結合している。よって,得られるコーティング層は,細胞膜のような二重膜状になる。この二重膜状のコーティング層は,生体内の細胞やタンパク質との接着性が低い。よって,このようなコーティング層を有する呼吸補助チューブは,患者の生体組織に与える影響が少ないので,呼吸補助チューブ使用後に炎症がおこる可能性を軽減することができる。よって,塩基性コポリマーを含むコーティング層を有する呼吸補助チューブは,好適に生体内に使用することができる。
次に,疎水性モノマーについて説明する。
本発明の疎水性モノマーとして,下記式(VIII)に示す化合物があげられる。
Figure 2010122817
式(VIII)中,Rは,H又はC1-3アルキル基を示し,好ましくはH又はメチル基である。Rは,C4-15アルキル基,C4-15アルケニル基,又はC4-15アルキニル基を示し,好ましくはC4-10アルキル基,C5-10アルケニル基,又はC5-10アルキニル基であり,より好ましくはC4-8アルキル基である。Rは,直鎖であっても,分鎖であってもよく,特に限定されない。なお,上記式(VIII)に示されるようなメタクリル酸エステルは公知であり,当業者であれば適宜製造することができる。
MPCモノマーと疎水性モノマーを反応させて得られるコポリマー(以下,「疎水性コポリマー」ともいう)について説明する。疎水性コポリマーは,下記式(I)で表わされる。
Figure 2010122817
式(I)中,Rは,H,又はC1-3アルキル基を示し,好ましくは,H又はメチル基である。Rは,C4-15アルキル基,C4-15アルケニル基,又はC4-15アルキニル基を示し,好ましくは,C4-8アルキル基である。Rは,直鎖であっても,分鎖であってもよく,特に限定されない。n及びnは同一でも異なってもよく,20〜1500の整数があげられ,100〜1100が好ましく,150〜800がより好ましい。なお,上記疎水性コポリマーは,公知の方法で製造したものでもよく,市販の塩基性コポリマーでもよい。
本発明のコーティング層に含まれる疎水性コポリマーの数平均分子量としては,1×10〜5×10があげられ,5×10〜4×10が好ましく,1×10〜3×10がより好ましい。疎水性コポリマー中のMPCと疎水性モノマーのモル比(n:n)としては,1:10〜10:1があげられる。疎水性コポリマー中,MPC比が大きいと,疎水性コポリマーと呼吸補助チューブとの結合力が低下する。一方,疎水性モノマー比が大きい,生体親和性が低下する。よって,コポリマー中のMPCと疎水性モノマーのモル比(n:n)としては,1:5〜5:1が好ましく,1:3〜3:1がより好ましい。
本発明において,疎水性コポリマーを含むコーティング層は,塩基性コポリマー中の疎水性基が,呼吸補助チューブの表面に存在する疎水性基と疎水結合により結合している。これにより,得られるコーティング層は,細胞膜のような二重膜状になる。このコーティング層は,生体内の細胞やタンパク質との接着性が低い。よって,このようなコーティング層を有する呼吸補助チューブは,患者の生体組織に与える影響が少ないので,呼吸補助チューブ使用後に炎症がおこる可能性を軽減することができる。よって,疎水性コポリマーを含むコーティング層を有する呼吸補助チューブは,好適に生体内に使用することができる。
従来の呼吸補助チューブは,呼吸補助チューブ表面と生体組織の細胞表面との接着性が高いため,呼吸補助チューブを生体内から取り出すとき,生体組織の細胞が剥離されていた。そのため,従来の呼吸補助チューブは,細胞の剥離が原因で炎症反応が起こるという問題があった。しかし,後述する実施例に示されたとおり,本発明の呼吸補助チューブは,着脱時,生体組織の細胞が呼吸補助チューブに接着し剥離される事態を防ぐことができる。よって,本発明の呼吸補助チューブは,生体組織の損傷を防ぐことができる。その結果,本発明の呼吸補助チューブは,呼吸補助チューブ使用による炎症反応を回避することができる。さらに,後述する実施例に示されたとおり,本発明の呼吸補助チューブは,着脱時に生体組織を損傷させないので,気管内の繊毛が抜ける事態を防ぐことができる。よって,痰を排出する繊毛の機能が損なわれないので,本発明の呼吸補助チューブは,痰が肺に入ることでおこる肺炎を回避することができる。さらに,後述する実施例に示されたとおり,本発明の呼吸補助チューブは,呼吸補助チューブの使用時又は着脱時に,チューブと生体組織とが擦れても摩擦を生じない。よって,呼吸補助チューブと接触する生体組織が損傷する事態が防止される。よって,組織損傷後の患者自身の治癒力による肉芽形成や瘢痕形成が回避される。したがって,本発明の呼吸補助チューブは,肉芽形成や瘢痕形成により引き起こされる呼吸障害などの疾患を回避することができる。
本発明のさらに好ましい態様は,呼吸補助チューブのコーティング層に,トレハロースを含む。トレハロースには,互いに結合様式が相違するα,α体,α,β体及びβ,β体と呼ばれる3種類の異性体が存在する。本発明において,これら異性体の1又は複数が全体として有効量含まれてさえいれば,その調製方法,純度及び性状は問わない。本発明において,コーティング層中,MPCポリマー,疎水性コポリマー,又は塩基性コポリマーと,トレハロースの全量を100重量部としたときに,コーティング層に含まれるトレハロースの量は,0.1〜40重量部があげられ,0.5〜20重量部が好ましく,1〜10重量部がさらに好ましい。呼吸補助チューブは,コーティング層にトレハロースを含むことで,生体適合性がさらによくなる。さらに,コーティング層にトレハロースを含むことで,MPCポリマー,疎水性コポリマー,又は塩基性コポリマーの呼吸補助チューブへの結合性が高くなる。
次に,呼吸補助チューブのコーティング層を作製する方法を説明する。
本発明の呼吸補助チューブコーティング層を作製する方法は,コーティング剤を含むコーティング液でコーティングするコーティング工程を含む。なお,本発明において,コーティング剤は,MPCポリマー,疎水性コポリマー,又は塩基性コポリマーのいずれか1又は2以上を含む。本発明において,コーティング剤は,トレハロースをさらに含んでもよい。本方法において,呼吸補助チューブにコーティング液をコーティング方法は,浸漬法,ブラシ塗布法,スプレー法,又はスピンコート法など,公知の方法を用いればよい。
コーティング液中のMPCポリマー,疎水性コポリマー,又は塩基性コポリマーの量は,コーティング液の全重量を100重量部としたとき,0.01〜50重量部があげられる。コーティング液中のポリマー又はコポリマーの量が多すぎると,コーティング液の粘度が高くなる。そのため,呼吸補助チューブのコーティング層の厚みは,不均一になりやすくなる。一方,コーティング液中のポリマー又はコポリマーの量が少なすぎると,所望のコーティング層を得るために,コーティング回数を増やさなければならず,手間がかかる。そのため,コーティング液中,ポリマー又はコポリマーの量としては,0.1〜30重量部が好ましく,0.5〜10重量部がより好ましい。本発明において,コーティング液にさらにトレハロースを含む場合,トレハロースの量は,コーティング液の全重量を100重量部としたとき,0.1〜20重量部があげられ,好ましくは0.5〜15重量部であり,さらに好ましくは1〜10重量部である。
本発明のコーティング工程で用いるコーティング液は,溶液状,又はスラリー状で用いることができる。コーティング層の厚みを均一にするためには,コーティング液は,溶液状(コーティング溶液)で用いることが好ましい。コーティング溶液は,コーティング剤を,溶媒に溶解して調整すればよい。このような溶媒として,例えば,水,酢酸緩衝液,リン酸緩衝液,トリス−塩酸緩衝液,炭酸緩衝液,グッドの緩衝液等の各種緩衝溶液;メタノール,エタノール,プロパノール,エチレングリコール,グリセリン,ジメチルスルオキシド,ジメチルホルムアミド等の各種有機溶媒の単独液あるいは2種以上の混合液が挙げられる。当業者であれば,呼吸補助チューブの材質やコーティング剤の性質等に応じて適宜選択して用いることができる。
本発明のコーティング工程を,浸漬法をもとに具体的に説明する。浸漬法では,本発明のコーティング工程は,呼吸補助チューブをコーティング液中に浸漬する浸漬工程と,浸漬した呼吸補助チューブを取り出して乾燥させる乾燥工程とを含む。本発明において,浸漬工程中の,コーティング液の温度は5℃〜100℃があげられる。コーティング液の温度が高すぎると,コーティング液の粘性が低下し,呼吸補助チューブに付着させにくくなる。一方,コーティング液の温度が低すぎると,コーティング液の粘性が上昇し,呼吸補助チューブのコーティング層の厚さを均一にすることが難しくなる。よって,コーティング液の温度は,10〜50℃が好ましく,15〜30℃がより好ましい。浸漬時間としては,5秒〜5時間があげられる。本発明において,乾燥工程中の温度は,特に限定されず,5〜100℃があげられる。乾燥工程は,無風下,又は0.1m/s〜10m/sの風速下で行えばよい。また,本発明において,浸漬工程及び乾燥工程ともに,常圧下で行ってもよいし,加圧下でも行ってもよい。当業者であれば,用いる呼吸補助チューブの材料やコーティング液の特性に応じて,適宜設定することができる。
本発明において,コーティングは1回又は複数回行う。コーティングを複数回行う場合,コーティング回数は2〜20回があげられるが,21回以上行ってもよい。また,コーティングを複数回行う場合は,同一の方法でコーティングを行ってもよいし,異なる方法でコーティングを行ってもよい。本発明において,コーティングにより形成されるコーティング層の厚みとしては,1×10〜1×10μmがあげられ,好ましくは5×10〜1×10μmであり,より好ましくは1×10〜5×10μmである。当業者であれば,コーティング回数等を変更することによって,使用目的に応じて適宜コーティング層の厚みを調整することができる。そして,当業者であれば,公知の膜厚計を用いて,コーティング層の厚さを測定することができる。
本発明において,呼吸補助チューブにコーティング層を作製する箇所として,呼吸補助チューブの使用時又は着脱時に生体組織と接触する全体部分又は一部分があげられる。当業者であれば,呼吸補助チューブの使用目的に応じて,呼吸補助チューブと生体組織の接触部位を把握することができる。なお,本発明において,コーティングする呼吸補助チューブは,呼吸補助チューブ外表面全体をコーティングしてもよいし,生体組織と接触する箇所のみをコーティングしてもよい。例えば,カフ付呼吸補助チューブをコーティングする場合,カフ付呼吸補助チューブは,その外表面を全部コーティングされてもよいし,生体組織と接触するカフ部分のみをコーティングされてもよい。なお,呼吸補助チューブのコーティングは,外表面全体に加えて,呼吸補助チューブの内腔壁全体に行ってもよい。呼吸補助チューブの外表面と内腔壁をコーティングすることによって,菌体外多糖からなるバイオフィルムが呼吸補助チューブに付着できなくなる。このバイオフィルムは,細菌から呼吸補助チューブ表面に産生され,増殖場所に細菌を付着させたり,外的な攻撃から細菌を守ったりする役割を担う。よって,呼吸補助チューブの外表面に加えて内腔壁全体もコーティングした呼吸補助チューブは,長期にわたって呼吸管理が必要な患者において,呼吸補助チューブ上に細菌が増殖(バイオフィルム形成)するのを防ぐことができる。よって,患者が細菌性の人工呼吸器関連肺炎(Ventilator−associated pneumonia(VAP))に罹患する事態を回避することができる。
本発明の呼吸補助チューブは,呼吸を確保するために,口,鼻腔,又は切開口から挿管して用いることができる。上記のとおり,MPCポリマーでコーティングした本発明の呼吸補助チューブは,呼吸補助チューブの使用時および着脱時において,生体組織への損傷を防ぐことができる。その結果,呼吸補助チューブ使用時における炎症反応を回避することができる。また,本発明の呼吸補助チューブは,術後肺炎などが発症するリスクを軽減することができる。さらに,本発明の呼吸補助チューブは,肉芽形成又は瘢痕形成を防ぐことができる。さらに,本発明の呼吸補助チューブは,呼吸補助チューブの製造材料である可塑剤が,生体組織に移行する事態を防ぐことができる。さらに,本発明の呼吸補助チューブは,使用中に呼吸補助チューブ内にバイオフィルムが形成される事態を防ぐことができる。従って,本発明の呼吸補助チューブは,呼吸補助チューブを生体内で短時間使用することで起こりうる呼吸器合併症(術後肺炎,術後無気肺,呼吸不全など)を回避することができることに加えて,呼吸補助チューブを生体内で長期間使用することで起こりうる人工呼吸器関連肺炎をも回避することができる。
以下,本発明の実施例を説明する。しかし,本発明は,実施例に限定されることはなく,当業者であれば,適宜変更を加えることができる。特に,本発明のコーティング層は,親水性及び疎水性を有しており,MPCとある程度類似した構造を有するポリマーを含むことで,効果を発揮する。よって,本発明は,以下に説明するMPC等に限定されるものではない。
呼吸補助チューブとして,カフ付気管チューブを用いた。カフ付気管チューブをコーティング溶液でコーティング後,イヌの気管に挿入した。挿入4〜5時間後,カフ付気管チューブを取り外し,カフ付気管チューブに付着する細胞量と,イヌの気管損傷を調べた。なお,本発明のポリマーとして,2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とn−ブチルメタクリレートからなるコポリマー(PMB3070)(日油社製)を用いた。PMB3070の溶媒は,100%エタノールを用いた。なお,PMB3070は,上記式(I)であらわされ,Rメチル基,Rはブチル基,nは約300,nは約700である。また,PMB3070の数平均分子量は,2.5×10である。
PMB3070は,0.5重量%又は5.0重量%となるように,100%エタノールで溶解した。カフ付気管チューブは,それぞれのコーティング溶液に浸漬することでコーティングした。下記の表1にコーティング条件を示した。
Figure 2010122817
イヌの気管から脱管したカフ付気管チューブに付着した細胞量は,Hematoxylin染色で染色して調べた。その結果を図2〜図3に示した。図2は,Hematoxylin染色したカフ付気管チューブの図面に替わる写真である。図2に示したとおり,0.5重量%PMB3070溶液で10回コーティングしたカフ付気管チューブ,及び5.0重量%PMB3070溶液で1回コーティングしたカフ付気管チューブは,コントロールと比較して,カフ付気管チューブに付着した細胞量が少ないことが分かった。
図3は,Hematoxylin染色したカフ部の図面に替わる写真を示す。図3A〜図3Cは,PMB3070コーティングしていない気管内チューブのカフ部(コントロール)の写真である。図3D〜図3Fは,0.5重量%PMB3070を用いて10回コーティングした(0.5%PMB3070×10)気管内チューブのカフ部の写真である。図3G〜図3Iは,5.0重量%PMB3070で1回コーティングした(5.0%PMB3070×1)気管内チューブのカフ部の写真である。図3A,図3D,及び図3Gは,1倍率のカフ部の写真である。図3B,図3E,及び図3Hは,カフ部を50倍で撮影した顕微鏡写真である。図3C,図3F,及び図3Iは,カフ部を400倍で撮影した顕微鏡写真である。この結果,コントロール(図3A〜図3C)には,イヌの気管粘膜の細胞が接着しているのに対し,0.5%PMB3070×10(図3D〜図3F)は,カフ部全体的が薄く染色されているが,細胞の接着はあまり見られなかった。さらに,5.0%PMB3070×1(図3G〜図3I)では,カフ部は全く染色されておらず,細胞付着も見られなかった。このことから,気管内チューブをPMB3070でコーティングすることによって,気管内チューブが接着した組織表面の細胞の剥離を効果的に防ぐことができることが示された。
次に,Hematoxylin染色した部分を2値化して,その割合を画像ソフトで算出した。その結果を図4に示した。図4Aの縦軸は,染色された領域の割合(%)を示す。図4Bの縦軸は,コントロールの染色領域の割合を100%としたとき,他の条件のカフ部の染色割合を示す。図4A及び図4Bで示したように,コントロールと比較して,0.5%PMB3070×10は,細胞接着が約40%抑制されることが分かった。さらに,5.0%PMB3070×1は,コントロールと比較して,99%以上細胞接着が抑制されることが分かった。このことからも,気管内チューブをPMB3070でコーティングすることによって,気管内チューブが接着した組織表面の細胞の剥離を効果的に防ぐことができることが分かる。
イヌに,カフ付気管チューブを4〜5時間挿入後,イヌを安楽殺し,カフ付気管チューブを脱管した。脱管後,解剖し,気管の損傷具合を観察した。その結果を図5に示した。図5Aは,PMB3070未処理(コントロール)のカフ付気管チューブを挿入したイヌの気管を示す。図5Bは,5.0重量%PMB3070で1回コーティングした(5.0%PMB3070×1)カフ付気管チューブを挿入したイヌの気管を示す。この結果,コントロールでは,気管粘膜の剥離が認められた(図5A)。一方,5.0%PMB3070×1では気管の粘膜細胞の剥離が認められなかった(図5B)。すなわち,気管内チューブをPMB3070でコーティングすることによって,挿入した部位の細胞の剥離を防ぐことができることが示された。
35mmディッシュに各種コーティング液100μLを塗布(コーティング)し,40℃で30分間乾燥した。乾燥後,35mmディッシュをクリーンベンチ内で30分間,UV滅菌した。滅菌した35mmディッシュをPBS(−)で2回洗浄し,L929細胞を播種した。播種後,細胞は3〜4日間培養した。その結果を図6に示した。細胞培養培地には,ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)に10%FBS(ウシ胎児血清)を添加した培地を用いた。コントロールとして,コーティング液でコーティングしていない35mmディッシュを用いた。コーティング液は,PMB3070とトレハロースを50%エタノール溶液に溶解したものを用いた。PMB3070とトレハロースの濃度を下記表2に示した。
Figure 2010122817
図6は,PMB3070及びトレハロースでコーティングすることによって,細胞接着性が低下することを示す図面に替わる写真を示す。その結果,コントロール(図6A)と比較して,PMB3070及びトレハロースでコーティングしたディッシュは細胞接着性が低下することが示された。また,コーティング液中のPMB3070濃度が高くなるにつれて,細胞接着性が低下することが示された。以上より,PMB3070及びトレハロースを含むコーティング液で,呼吸補助チューブをコーティングすることで,呼吸補助チューブの細胞(組織)接着性が低下するといえる。すなわち,PMB3070及びトレハロースで呼吸補助チューブをコーティングすることによって,呼吸補助チューブを取り外す際に引き起こる細胞の剥離を防ぐことができることが示されたといえる。
PMB3070でコーティングした気管チューブによる気管粘膜損傷抑制を検討した。カフ付気管チューブのカフ部にPMB3070ポリマーをコーティングしたもの(5.0%PMB3070)と処理していないもの(コントロール)を,イヌの気管に挿入した。挿入4〜5時間後,カフ付気管内チューブを取り外し,気管組織を採材した。採材したカフ付気管チューブのカフ部があたっていると思われる部分をデジタルカメラにて撮影後,十分量の10%中性ホルマリン溶液に浸し,組織を約1週間固定した。固定後,気管組織を十分に洗浄し,脱灰液に3〜4時間浸し,脱灰した。脱灰後,アルコールにて脱水・脱脂を行い,さらにキシレンに浸透させ,アルコールを除去した。十分にアルコールを除去した後,パラフィンに浸透させ包埋した。パラフィンが固まり,ブロックが作製されたら,ミクロトームにて薄切片を作製した。切片をHE(ヘマトキシリン−エオジン)染色し,顕微鏡(倍率:100倍,200倍)で観察した。その結果を図7に示した。
図7A及び図7Bはコントロール(コーティングなし),図7C及び図7Dは,5.0%PMB3070を含む液でコーティングしたカフ付気管チューブを挿入した,イヌの気管組織を示す図面に替わる写真をしめす。PMB3070をコーティングしていないコントロールのカフ付気管チューブを挿入したイヌの気管組織(図7A及び図7B)は,上皮層の一部が薄くなっており,さらには剥離している部分も見られる。そして,マクロファージなどの好中球がところどころ見られ(黒っぽい球状の細胞),炎症が誘起されている。一方,PMB3070をコーティングしたカフ付気管チューブを挿入したイヌの気管組織(図7C及び図7D)では,上皮細胞の剥離がなく,均一な粘膜層が維持されている。また,好中球の遊走が見られず,炎症がほとんど起こっていないことが示された。
上記のとおり,PMB3070をコーティングしたカフ付気管チューブを着脱したイヌの気管組織では,上皮細胞が剥離していない(図7C及び図7D)。よって,カフ付気管チューブをPMB3070でコーティングすることによって,カフ付気管チューブの使用時および着脱時,チューブと気管組織とが擦れて,気管組織が損傷する事態を防止することができることが示された。
そして,図7A及び図7Bでは,粘膜下組織の深部まで炎症が誘起されていることから,カフ付気管チューブから可塑剤が気管組織に移行している可能性が示唆される。一方,図7C及び図7Dでは,粘膜下組織の深部に炎症が見られない。よって,カフ付気管チューブをPMB3070でコーティングすることによって,カフ付気管チューブから可塑剤が気管組織に移行する事態を防止することができることが示された。
実施例5では,MPCコーティングによる可塑剤溶出防止効果について検討した。すなわち,たとえば気管チューブに含まれる可塑剤であるフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DEHP)が細胞の炎症を誘起している可能性があると考えた。そこで,コーティング層(MPCコーティング)を形成することによってDEHPの溶出が抑制されているか検討した。
ポリ塩化ビニル製のシート(PVCシート)用意した。本実施例では,2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とn−ブチルメタクリレートからなるコポリマー(PMB3070)(日油社製)を用いた。PMB3070は,0.5重量%となるように,100%エタノールで溶解した。
PMB3070溶液を用いて一度コーティングしたPVCシート[MPC(1×)],PMB3070溶液を用いて三度コーティングしたPVCシート[MPC(3×)],及びコーティングしないPVCシート(対照実験:[MPC−])を用意した。それぞれのシートを超純水50mlに浸漬し,37℃に維持した。0.5,1,2,4,6,8,12,24,72hの各時間に浸漬液を採取し,吸光光度計にて200nm〜500nmの吸光スペクトルを測定した。
図8は,MPCコーティングによる可塑剤溶出防止の可能性を示すために吸光スペクトルを測定した結果を示す図面に替わるグラフである。図8(a)は,浸漬を開始してから12時間後の浸漬液の吸光スペクトルを示す。図8(b)は,浸漬を開始してから24時間後の浸漬液の吸光スペクトルを示す。図8(a)から,12時間後の時点で,MPCコーティングしていないPVCシートにおいて,270nm付近に強い吸収が観測された。これは,DEHPが溶出したことを意味する。一方MPCコーティングを行うことによってDEHPの溶出が抑制されることが確認された。さらにMPCを積層することで溶出効果が増強されることも明らかとなった。図8(b)から,24時間後では,12時間後と比較してDEHPの溶出が増加することがわかる。一方,MPCコーティングを行うことによって,24時間後においても,DEHPの溶出が抑制されることがわかった。
図9は,MPCコート回数を変化させたときのDEHP溶出の時間変化を示す図面に替わるグラフである。MPCコーティングしていないPVCシートでは浸漬を開始してから1時間後からDEHPの溶出が見られ,8時間付近で一度定常状態に達した。DEHPの溶出は,浸漬を開始してから12時間後あたりから増加する傾向にあった。一方,MPCコーティングによってDEHPの溶出が抑制されることが明確に確認された。さらに,定常状態にあるDEHPの溶出量は,MPC−(対照実験),MPC(1×),MPC(3×)の順番に減少した。このことから,MPCコーティングを積層することによってDEHPの溶出をより抑制できることが明らかとなった。この結果は,PVCシートから溶出したDEHPがMPCによってトラップされている可能性を示唆している。
実施例6では,可塑剤が溶出することによって生じる炎症反応のMPCコーティングによる抑制効果について検討した。DEHPを含まないPVCシート(DEHP−),MPCをコーティングしていないPVCシート(MPC−),MPCを一回コーティングしたPVCシート[MPC(1x)],MPCを三回コーティングしたPVCシート[MPC(3x)]を用意した。それぞれのシートを10%FBSを含むDMEM培地中に浸漬し,8時間37℃で放置した。その間,0,1,2,4,8時間後に培地を採取した。対照実験として,PVCシートを含まない通常の培地(-)も37℃で保温し,同様の時間に培地を採取した。6ウェル中で培養しているRAW264.7細胞に上記PVC漬浸培地を加えて,8時間培養後,培地中のTNF−α及びプロスタグランジンE(PGE2)を,ELISA法を用いて測定した。その結果を図10に示す。
図10は,PVCから放出されるDEHP由来炎症反応のMPCコーティングによる抑制効果を示す図面に替わるグラフである。図10(a)は,培地中のTNF−αの測定結果を示す。図10(b)は,培地中のプロスタグランジンE(PGE2)の測定結果を示す。図10から,DEHPを含まないPVCシート(DEHP−)を浸漬した培地を用いてもTNF−αやPGE2の上昇は確認されなかった。一方,DEHPを含む通常のPVCシートを浸漬した培地を用いると,TNF−α及びPGE2の経時的な産生昂進が確認された。よって,PVCシートからDEHPが溶出され,炎症反応が惹起さることが明らかとなった。
図11は,8時間PVCシートを浸漬した培地を用いたPVCから放出されるDEHP由来炎症反応を示す図面に替わるグラフである。図11(a)は,培地中のTNF−αの測定結果を示す。図11(b)は,培地中のプロスタグランジンE(PGE2)の測定結果を示す。実験によって,PVCシートから溶出されるDEHPによって,TNF−αやPGE2の産生が上昇し,炎症反応が誘起されることが確認された。さらに,DEHPによって生じる炎症反応は,MPCコーティングを行うことによって明らかに抑制されることがわかった。この結果から,MPCコーティングは生体にとって有害となりえるDEHPのPVCからの溶出を抑制できることが明らかとなった。DEHPの溶出抑制効果は,MPCコーティング層を積層することによって増強されることもわかった。
MPCコーティングチューブによる
気道粘膜損傷予防効果の検討
実施例7では,PVCチューブが気道粘膜に与える組織損傷が,MPCコーティングを行うことによって抑制されるか否かを検討した。
MPCコーティングを行ったPVC製呼吸補助チューブ及びMPCコーティングを行っていないPVC製呼吸補助チューブ[MPCコーティング(1x)及びMPC−]を挿管したイヌからカフ部に接触していた部位及びその周囲の気管壁を採材した。採取した組織を10%ホルマリン固定後にパラフィン包埋切片を作製した。切片をヘマトキシリン-エオジン染色 (HE染色),糖質の一般染色として用いられるPAS染色を行い,組織学的に解析した。
図12は,HE染色の結果を示す図面に替わる写真である。図12(a)はMPCコーティングを行っていないPVC製呼吸補助チューブ(MPC−)のHE染色の結果を示す。図12(b)は図12(a)の拡大図を示す。図12(c)はMPCコーティングを行ったPVC製呼吸補助チューブ(MPCコーティング(1x))のHE染色の結果を示す。図12(d)は図12(c)の拡大図を示す。図12から,気道粘膜組織がカフ部に接触することによって大きく損傷されることが明らかとなった。さらに,組織損傷がMPCコーティングを行うことによって抑制されることがわかった。
図13は,PAS染色の結果を示す図面に替わる写真である。図13(a)はMPCコーティングを行っていないPVC製呼吸補助チューブ(MPC−)のPAS染色の結果を示す。図13(b)は図13(a)の拡大図を示す。図13(c)はMPCコーティングを行ったPVC製呼吸補助チューブ(MPCコーティング(1x))のPAS染色の結果を示す。図13(d)は図13(c)の拡大図を示す。図13から,粘液分泌を司る杯細胞 (矢印)の産生が気道粘膜損傷に伴って昂進していることが明らかとなった。さらにMPCコーティングを行うことによって杯産生昂進が抑制される傾向にあることが明らかとなった。
図14は,気管粘膜上皮の剥離が認められた周囲組織におけるHE染色及びPAS染色の結果を示す図面に替わる写真である。図14(a)は,MPCコーティングを行っていないPVC製呼吸補助チューブ(MPC−)のHE染色の結果を示す。図14(b)は,MPCコーティングを行っていないPVC製呼吸補助チューブ(MPC−)のPAS染色の結果を示す。図14から,気管粘膜上皮の剥離が認められた周囲組織でも杯細胞の著しい増加が認められた。
本発明は,医療機器産業で広く利用されうる。

Claims (31)

  1. 表面にコーティング層を有する医療用樹脂製製品であって,
    前記コーティング層は,下記式(A1)で示されるホスホリルコリン誘導体からなる繰り返し単位を含むポリマーを有する,
    医療用樹脂製製品。
    Figure 2010122817
    式(A1)において,
    は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
    は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, Aは,式(A3)で示されるいずれかの基を示し,
    Figure 2010122817
    は,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Aは,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Aは,式(A4)で示される基を示し,
    Figure 2010122817
    式(A3)中, Aは,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Aは,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, 式(A4)中, A〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示す。
  2. は,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
    は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し, Aは,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し, Aは,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し, Aは,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し, Aは,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示す,請求項1に記載の医療用樹脂製製品。
  3. は,C1-5アルキレン基を示し,
    は,C1-5アルキル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,C1-5アルキレン基を示し, Aは,C1-5アルキレン基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,又はC1-5アルキル基を示す,請求項1に記載の医療用樹脂製製品。
  4. は,C1-2アルキレン基を示し,
    は,C1-2アルキル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,C1-3アルキレン基を示し, Aは,C1-3アルキレン基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,C1-2アルキル基を示す,請求項1に記載の医療用樹脂製製品。
  5. 1は,メチレン基を示し,
    は,メチル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,エチレン基を示し, Aは,エチレン基を示し, A〜A11は,いずれもメチル基を示す,請求項1に記載の医療用樹脂製製品。
  6. 前記医療用樹脂製製品は, 塩化ビニル樹脂を主成分とする, 請求項1に記載の医療用樹脂製製品。
  7. 前記医療用樹脂製製品は, 可塑剤を含有する, 請求項1に記載の医療用樹脂製製品。
  8. 前記医療用樹脂製製品は, 樹脂部分を有する医療用嘴管,樹脂部分を有する体液誘導管,樹脂部分を有する血液体外循環機器,樹脂部分を有する採血用器具,樹脂部分を有する輸血用器具,樹脂部分を有する輸液用器具,樹脂部分を有する医薬品注入器,樹脂部分を有する縫合糸,又は樹脂部分を有する採尿用器具である, 請求項1に記載の医療用樹脂製製品。
  9. 前記医療用樹脂製製品は, 樹脂部分を有する管,樹脂部分を有する袋,樹脂部分を有するチューブ,又は樹脂部分を有するカテーテルを有する, 請求項1に記載の医療用樹脂製製品。
  10. 前記医療用樹脂製製品は,カフ付チューブ,気管内チューブ,気管支チューブ,気管切開チューブ,喉頭気管チューブ,又は食道チューブのいずれかである,請求項1に記載の医療用樹脂製製品。
  11. 前記コーティング層は,トレハロースをさらに含む,請求項1に記載の医療用樹脂製製品。
  12. 前記ホスホリルコリン誘導体は,下記式(A2)で示されるホスホリルコリン誘導体とモノマーとのコポリマーである,
    請求項1に記載の医療用樹脂製製品。
    Figure 2010122817
    式(A2)において,
    A1及びnA2は,同一でも異なっても良く20〜2000の数を示し,
    は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
    は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, Aは,式(A3)で示されるいずれかの基を示し,
    Figure 2010122817
    は,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Aは,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Aは,式(A4)で示される基を示し,
    Figure 2010122817
    式(A3)中, Aは,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Aは,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, 式(A4)中,
    〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,

    は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
    は,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,置換されてもよいC1-10アルコキシ基,又は式−N(B)で示される基を示し,
    は,式(A5)で示されるいずれかの基,C1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,C2-7アルキニレン基,又は式(−COO−B−)で示される基を示し,
    Figure 2010122817
    は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,

    式(A5)中,
    は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Bは,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, B及びBは,同一でも異なってもよく,水素原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, BはC1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,又はC2-7アルキニレン基を示す。
  13. は,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
    は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し, Aは,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し, Aは,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し, Aは,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し, Aは,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
    は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
    は,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
    は,式(A5)で示されるいずれかの基を示し,
    は,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
    は,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し, Bは,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示す, 請求項12に記載の医療用樹脂製製品。
  14. は,C1-5アルキレン基を示し,
    は,C1-5アルキル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,C1-5アルキレン基を示し, Aは,C1-5アルキレン基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,又はC1-5アルキル基を示し,
    は,C1-5アルキル基を示し,
    は,C2-7アルキル基を示し,
    は,式(−CO−)で示される基を示し,
    は,C1-5アルキレン基を示す,
    請求項12に記載の医療用樹脂製製品。
  15. は,C1-2アルキレン基を示し,
    は,C1-2アルキル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,C1-3アルキレン基を示し, Aは,C1-3アルキレン基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,C1-2アルキル基を示し,
    は,C1-2アルキル基を示し,
    は,C3-5アルキル基を示し,
    は,式(−CO−)で示される基を示し,
    は,C1-2アルキレン基を示す,
    請求項12に記載の医療用樹脂製製品。
  16. 1は,メチレン基を示し,
    は,メチル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,エチレン基を示し, Aは,エチレン基を示し, A〜A11は,いずれもメチル基を示し,
    は,メチル基を示し,
    は,ブチル基を示し,
    は,式(−CO−)で示される基を示し,
    は,メチレン基を示す,
    請求項12に記載の医療用樹脂製製品。
  17. は,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し,
    は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し, Aは,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し, Aは,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し, Aは,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し, Aは,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
    は,水素原子,ハロゲン原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し,
    は,式−N(B)で示される基を示し,
    は,C1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,C2-7アルキニレン基,又は式(−COO−B−)で示される基を示し,
    は,単結合,C1-10アルキレン基,又はC2-10アルケニレン基を示し
    及びBは,同一でも異なってもよく,水素原子,C1-10アルキル基,C2-10アルケニル基,C2-10アルキニル基,又はC1-10アルコキシ基を示し, BはC1-8アルキレンを示す, 請求項12に記載の医療用樹脂製製品。
  18. は,C1-5アルキレン基を示し,
    は,C1-5アルキル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,C1-5アルキレン基を示し, Aは,C1-5アルキレン基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,C1-5アルキル基を示し,
    は,C1-5アルキル基を示し,
    は,式−N(B)で示される基を示し,
    は,C1-8アルキレン基を示し,
    は,C1-5アルキレン基を示し,
    及びBは,同一でも異なってもよく,水素原子,又はC1-5アルキル基を示す,

    請求項12に記載の医療用樹脂製製品。
  19. は,C1-2アルキレン基を示し,
    は,C1-2アルキル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,C1-3アルキレン基を示し, Aは,C1-3アルキレン基を示し, A〜A11は,同一でも異なっても良く,C1-2アルキル基を示し,
    は,C1-2アルキル基を示し,
    は,式−N(B)で示される基を示し,
    は,C2-5アルキレン基を示し,
    は,C1-2アルキレン基を示し,
    及びBは,同一でも異なってもよく,水素原子,又はC1-2アルキル基を示す,請求項12に記載の医療用樹脂製製品。
  20. 1は,メチレン基を示し,
    は,メチル基を示し, Aは,式(−CO−)で示される基を示し, Aは,エチレン基を示し, Aは,エチレン基を示し, A〜A11は,いずれもメチル基を示し,
    は,メチル基を示し,
    は,アミノ基を示し,
    は,C2-5アルキレン基を示し,
    は,メチレン基を示す,
    請求項12に記載の医療用樹脂製製品。
  21. 表面にコーティング層を形成する工程を含む医療用樹脂製製品の可塑剤溶出防止方法であって,
    前記コーティング層は,下記式(A1)で示されるホスホリルコリン誘導体からなる繰り返し単位を含むポリマーを有する,方法。
    Figure 2010122817
    式(A1)において,
    は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
    は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, Aは,式(A3)で示されるいずれかの基を示し,
    Figure 2010122817
    は,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Aは,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Aは,式(A4)で示される基を示し,
    Figure 2010122817
    式(A3)中, Aは,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Aは,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, 式(A4)中, A〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示す。
  22. 前記ホスホリルコリン誘導体は,下記式(A2)で示されるホスホリルコリン誘導体と疎水性モノマーとのコポリマーである,
    請求項21に記載の方法。
    Figure 2010122817
    式(A2)において,
    A1及びnA2は,同一でも異なっても良く20〜2000の数を示し,
    は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,
    は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, Aは,式(A3)で示されるいずれかの基を示し,
    Figure 2010122817
    は,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Aは,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Aは,式(A4)で示される基を示し,
    Figure 2010122817
    式(A3)中, Aは,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Aは,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, 式(A4)中,
    〜A11は,同一でも異なっても良く,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,

    は,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し,
    は,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,置換されてもよいC1-10アルコキシ基,又は式−N(B)で示される基を示し,
    は,式(A5)で示されるいずれかの基,C1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,C2-7アルキニレン基,又は式(−COO−B−)で示される基を示し,
    Figure 2010122817
    は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し,

    式(A5)中,
    は,単結合,置換されてもよいC1-10アルキレン基,又は置換されてもよいC2-10アルケニレン基を示し, Bは,水素原子,ハロゲン原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, B及びBは,同一でも異なってもよく,水素原子,置換されてもよいC1-10アルキル基,置換されてもよいC2-10アルケニル基,置換されてもよいC2-10アルキニル基,又は置換されてもよいC1-10アルコキシ基を示し, BはC1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,又はC2-7アルキニレン基を示す。
  23. 表面にコーティング層を有する呼吸補助チューブであって,
    前記呼吸補助チューブのコーティング層は,
    2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを含むポリマーを有する,
    呼吸補助チューブ。
  24. 表面にコーティング層を有する呼吸補助チューブであって,
    前記呼吸補助チューブのコーティング層は,
    2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと疎水性モノマーとのコポリマーを含み,
    前記コポリマーは,下記式(I)で表わされ,
    Figure 2010122817
    ここで,式(I)中,n及びnは同一でも異なってもよく,20〜1500の整数を示すものであり,
    は,H又はC1-3アルキル基を示し,
    は,C4-15アルキル基,C4-15アルケニル基,又はC4-15アルキニル基を示す,
    呼吸補助チューブ。
  25. 表面にコーティング層を有する呼吸補助チューブであって,
    前記呼吸補助チューブのコーティング層は,
    2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと塩基性モノマーとのコポリマーを含み,
    前記コポリマーは,下記式(II)で表わされ,
    Figure 2010122817
    ここで,式(II)中,n及びnは同一でも異なってもよく,20〜1500の整数を示すものであり,
    は,H又はC1-3アルキル基を示し,Rは,C1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,C2-7アルキニレン基,又は式(−COO−R−)で示される基を示し,ここで,RはC1-8アルキレン基,C2-7アルケニレン基,又はC2-7アルキニレン基を示す,
    呼吸補助チューブ。
  26. 前記コーティング層の厚さは,1×10〜1×10μmである,請求項23〜25のいずれかに記載の呼吸補助チューブ。
  27. 前記コーティング層は,トレハロースをさらに含む,請求項23〜25のいずれかに記載の呼吸補助チューブ。
  28. 前記呼吸補助チューブは,気管内チューブ,気管支チューブ,気管切開チューブ,喉頭気管チューブ,又は食道チューブのいずれかである,請求項23〜25のいずれかに記載の呼吸補助チューブ。
  29. 前記呼吸補助チューブは,カフ付チューブである,請求項28に記載のチューブ。
  30. 呼吸補助チューブをコーティングする方法であって,
    2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを含むポリマーを0.01〜50重量%有するコーティング液で,呼吸補助チューブをコーティングするコーティング工程を含む,
    方法。
  31. 前記コーティング工程は,
    前記コーティング液に,呼吸補助チューブを浸漬する浸漬工程と,
    前記浸漬工程で浸漬させた呼吸補助チューブを乾燥する乾燥工程と,
    を含み,
    前記浸漬工程と前記乾燥工程は,
    2〜20回繰り返される,
    請求項30に記載の方法。
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