JP6817766B2 - 気管用チューブにおける痰の固着を低減する方法 - Google Patents

気管用チューブにおける痰の固着を低減する方法 Download PDF

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Description

本発明は、気管に挿入可能な気管用チューブにおける痰の固着を低減する方法、およびこの用途に用いられる気管用チューブに関する。
気道確保を必要とする患者の気道確保を行うための方法としては、口または鼻から咽頭を経由して気管に気管用チューブを気管に挿入する方法である気管挿管、気管内挿管が長期にわたっている場合や気管挿管ができない場合には、気管とその上部の皮膚を切開してその部分から気管に気管切開チューブと呼ばれる気管用チューブを挿入する方法である気管切開(外科的気管切開)する方法が挙げられる。緊急に気道確保が必要な場合には、輪状甲状膜(輪状甲状靭帯)を切開して気管カニューレを挿入する方法である輪状甲状膜切開、輪状甲状膜を穿刺して気管カニューレを挿入する方法である輪状甲状膜穿刺などの方法が挙げられる。
これらの種々の方法に用いる気管用チューブ(以下、総称して気管用チューブと記載する)は、手術室、ICU病棟、療養病棟等において、呼吸管理、気道確保(喀痰吸引)の目的で使用される医療機器である。
しかし、気管用チューブを気管内に挿入することによって気管が刺激されるため、痰などの分泌物が多量となって、気管用チューブの狭窄・閉塞を引き起こし、呼吸困難・窒息といった事象を発生させるおそれがある。痰は、通常であれば気管の繊毛運動によって排出されるが、気管用チューブには繊毛が無いため、痰が付着しやすい。そのため、気管用チューブ内の痰を定期的に吸引して気管用チューブの狭窄を防止し、閉塞しないようにしなければならない。痰は、主に水分と糖タンパク質(ムチン)で構成されており、粘度は数百〜数十万cP程度と幅広く、粘度が高いほど気管用チューブ内に付着しやすく、除去の際に取り残しの残渣が出やすい。気管用チューブ内に取り残された痰が乾燥して、さらに痰が付着しやすくなることもある。極力取り残しが少なくなるように注意深く吸引しなければならないため、看護者・介護者の負担は大きい。除去できなかった喀痰がチューブ内面に固着し、閉塞に至ると気管用チューブの交換が必要になり、患者の身体へ負担がかかる。そのため、気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法が求められている。
特許文献1では、湿潤時に表面が潤滑性を有する医療用具が記載され、体液や生理食塩水などの水系液体中において表面が潤滑性を有し、操作性の向上や組織粘膜の損傷の低減が可能な医療用具が記載されている。特許文献1の段落[0020]には、医療用具の例示として、「酸素カテーテル、酸素カヌラ、気管内チューブのチューブやカフ、気管切開チューブのチューブやカフ、気管内吸引カテーテルなどの経口または経鼻的に気道ないし気管内に挿入ないし留置されるカテーテル類」の記載がある。
特許文献2では、チューブ体の内周面の少なくとも一部に、呼吸路に露出する撥痰性層を有する気管用チューブ(請求項1)が記載されている。
非特許文献1には、「近年、物質表面上の水構造が血液適合性に影響を与える最も重要な要素の一つであることが指摘されている。」こと、「ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(以下、PMEAということがある)のポリマー内の水構造に注目してPMEAの優れた血液適合性の理由を調査した。」ことが記載されている。水和PMEAのDSC分析により、水和PMEAの含水率(Hydrated water)、不凍水(Nonfreezing water)、自由水(Free water)とは別の特異な水(即ち、0℃以下でも凍結しない分子運動性の高い水)中間水(freezing Bound Water)の存在が認められ、689頁、表IIに3種類の水の含量が記載されている。
しかし、いずれの従来技術でも、気管用チューブにおける痰の固着は、患者や医療従事にとって解決できない大きな問題であり、さらなる痰の固着を低減する方法が求められている。
特許第3631781号 特開2016−131839
Published online 13 January 2004 in Wiley InterScience (www.interscience.wiley.com). DOl: 10.1002/jbm.a.20088, 2004 Wiley Periodicals. Inc.「ポリ(メタ)アクリレート中の水の血液適合性‐熱分析に基づく水構造の効果」
本発明の目的は、従来技術の問題点を解決し、気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法を提供しようとする。
本発明は、以下の発明を提供する。
[1]気管内の肺側に配置される先端部、前記先端部と反対側に配置される基端部、および、前記基端部から前記先端部にかけて貫通する気道確保用ルーメンを有し、前記管腔体の前記気道確保用ルーメンを形成する内面の少なくとも一部に親水性皮膜を備える気管用チューブにおいて、前記気管用チューブが非浸漬状態で患者の体外と体内とを連通し、呼吸気中の水分および/または喀痰中の水分によって前記親水性皮膜上に水層を形成でき、
前記水層により、気管用チューブ内の喀痰が、患者の呼吸の流れによって前記内面を移動できるように前記気管用チューブが配置される、気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法。
[2]前記親水性皮膜が、下記式(1):


ただし、式(1)中、R11は、水素原子またはメチル基であり、Zは酸素原子または−NH−であり、R12 は、炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R13およびR14は、
それぞれ独立して炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R15は、炭素原子数1〜6のアルキレン基である、で示される繰り返し単位(A)と、
式(2)中、R21は、水素原子またはメチル基であり、R22は、炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R23は、炭素原子数1〜4のアルキル基である、
で示される繰り返し単位(B)と、を有し、前記繰り返し単位(A)が、前記共重合体の全構成単位中、0.6〜7モル%含まれるX共重合体を含む親水性皮膜Aである[1]に記載の気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法。
[3]前記式(2)中、R21は、水素原子またはメチル基であり、R22は、炭素原子数1〜3のアルキレン基であり、R23は、炭素原子数1または2のアルキル基である、[1]または[2]に記載の気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法。
[4]前記式(1)中、R11はメチル基であり、Zは酸素原子または−NH−であり、R12 は炭素原子数1〜4のアルキレン基であり、R13およびR14はそれぞれ独立して炭素原子数1または2のアルキル基であり、R15は炭素原子数1〜4のアルキレン基である、[1]ないし[3]のいずれか1に記載の気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法。
[5]前記共重合体は、前記繰り返し単位(A)を0.6〜7モル%、前記繰り返し単位(B)を99.4〜93モル%(前記繰り返し単位(A)および前記繰り返し単位(B) の合計量は100モル%である)から構成される、[1]ないし[4]のいずれか1に記載の気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法。
[6]前記水層が、前記親水性皮膜表面から順に、強固定層、中間固定層および弱固定層の3層である、[1]ないし[5]のいずれか1に記載の気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法。
[7]前記親水性皮膜が、潤滑性を発現する部位とエポキシ基を有する部位とからなる共重合体を含有するB共重合体を含む親水性皮膜Bである[1]に記載の気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法。
[8]前記潤滑性を発現する部位が、アクリルアミドもしくはアクリルアミド誘導体よりなる重合体である[7]に記載の気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法。
[9]気管内の肺側に配置される先端部、前記先端部と反対側に配置される基端部、および、前記基端部から前記先端部にかけて貫通する気道確保用ルーメンを有し、前記管腔体の前記気道確保用ルーメンを形成する内面の少なくとも先端側に親水性皮膜を備える気管用チューブであって、非浸漬状態で患者の体外と体内とを連通するように配置され、呼吸気中の水分および/または喀痰中の水分によって前記気管用チューブの前記親水性皮膜上に水層を形成し、気管用チューブ内の喀痰が、前記水層により、患者の呼吸の流れによって前記内面を移動する、気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する用途に用いられる気管用チューブ。
本発明の気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法の第一の実施形態では、気管用チューブ内の喀痰が、患者の呼吸の流れによって前記内面を移動できるようになるので気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減できる。第二から第六の実施形態では、従来技術の構成では移動しない程度の小さな喀痰を患者の呼吸の流れによって移動させて集めて塊として除去しやすくする方法が提供される。本発明はこれらのいずれかの効果を達成する。
図1は、本発明の一つの実施形態の気管切開チューブを患者に装着した状態を示す図である。 図2(A)は、図1に示す本発明の実施形態の気管切開チューブの要部を示す断面図である。図2(B)は、図2(A)に示すA−A線に沿って切断した断面図である。図2(C)は、本発明の第1の実施形態にかかる気管切開チューブの内部に付着した痰を吸引する状態を示す断面図である。 タンパク質の生体適合性発現機構の予測を説明する模式図である。 図4は、親水性皮膜上の水層を説明する模式図である。図4(A)は、親水性皮膜A表面の水層を説明する模式図である。図4(B)は、親水性皮膜B表面の水層を説明する模式図である。 実施例1の試験で用いた、気管用チューブ、人工呼吸器および人工肺を備えるシステムを説明する図である。
(1)以下に本発明の一つの実施形態を図面を用いて説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
本発明の方法は、
(1−1)気道確保用ルーメンを形成する内面の少なくとも一部に特定の親水性皮膜を備える気管用チューブを、非浸漬状態で呼気湿度と痰の水分とが存在する環境下に配置することによって、
(1−2)呼吸気中の水分および/または喀痰中の水分によって特定の親水性皮膜上に特定の水層を形成することにある。
(1−3)前記特定の水層により、気管用チューブ内の喀痰が、患者の呼吸の流れによって気道確保用ルーメンの内面を移動できるようになり、
(1−4)その結果、気管用チューブ内面への喀痰の固着が低減される方法である。
ここで、「非浸漬状態で呼気湿度と痰の水分とが存在する環境下」とは、医療機器の該当する表面、つまり本発明では気管用チューブの気道確保用ルーメン内表面が、液体(水系溶媒、体液および分泌液など)に接触しない、もしくは少なくとも一部が接触しない状態をいう。この状態は、浸漬状態である、医療機器の該当表面が液体(水系溶媒、体液および分泌液など)に接触している、具体的にはカテーテル外表面が体液または血液に浸漬または接触している状態ではなく、気道確保用ルーメン内表面が液体とは接触していないが、呼吸器中の水分および/または喀痰中の水分と接触することによって特定の親水性皮膜上に水層を形成できる状態をいう。
1.本発明に用いる気管用チューブの構造の一例とその使用方法の説明
まず、本発明に用いる気管用チューブの一つの実施形態について、図1および図2を参照して説明する。図1および図2に示す気管用チューブは、いわゆる気管切開チューブである。
図1に示す気管切開チューブ101は、患者の呼吸管理を行うための器具であり、気管を切開して形成された切開孔から気管7に直接挿入された状態で使用される。気管切開チューブ101は、気管切開チューブ101の主要部を構成する管腔体102と、管腔体102を患者に対して固定するための固定部127とを備える。
図2(A)および図2(B)に示すように、管腔体102の気道確保用ルーメンを形成する内面(内周面)上には以下で示す特定の親水性皮膜150が形成されている。親水性皮膜150は、気道確保用ルーメン全体に形成されていてもよいが少なくとも一部に形成されていればよい。
図2(C)に示すように親水性皮膜150は、管腔体102の気道確保用ルーメンを形成する内面(内周面)全面に形成されている。
以下、気管切開チューブ101を構成する各部材について説明する。
管腔体102は、両端が開口し、かつ、長さ方向に沿って均一な外径および内径を有する筒形状に形成される。管腔体102の内部には、管腔体102の長さ方向に沿って呼気が通る空間である気道確保用ルーメン102aが形成されている。
管腔体102は、先端部122と、先端部122と反対側に配置される基端部121と、基端部121と先端部122との間に位置する湾曲部123を有する。湾曲部123は先端部122の中心軸と基端部121の中心軸が角度θで交差するように湾曲しており、この実施形態では、管腔体102は略L字状に形成される。つまり、角度θは約90°である。
なお、管腔体102は、患者の体位の変化等に合わせて上記θが約90°から約120°までの範囲で変化しうる程度の可撓性を有する。上記θがこの範囲内で変化しても、親水性皮膜150は、管腔体102から剥離したり、脱落したりはしない。
管腔体102の材質としては、例えば、シリコーン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂を挙げることができる。
図2(A)に示されるように、仰向けに寝ている(仰臥位)の患者に対して、気管7の管壁と気管7の上部の皮膚5を切開することで形成された気管切開孔から管腔体102の先端部122が気管7内に挿入される。このとき、管腔体102の先端部122は、気管7の管壁を構成する粘膜(皮膚側気管粘膜7a、体内側気管粘膜7b)から所定の間隔を隔てるように、肺側に向けて気管7内に配置される。
また、管腔体102の基端部121は、気管切開孔から体外に露出しており、この基端部121に、人工呼吸器(図示せず)が取り付けられている。人工呼吸器が作動することで、気道確保用ルーメン102a内に呼気および/または吸気が通る。これにより、患者の呼吸を持続させ、呼吸管理を行っている。その結果、呼吸に必要な酸素の通り道である気道が閉塞することを防止することができ、患者の呼吸管理を行うことができる。
固定部127は、管腔体102の基端部121に取り付けられている。固定部127は、管腔体102を患者に装着した際に、皮膚5に当接することで、先端部122を気管7内の適切な位置に固定するものであり、固定板128と、接着部129とを有している。
固定板128は、平板状の部材で、中央部に、固定板128を貫通する収納孔131が形成されている。そして、固定板128の表面には、接着部129が取り付けられ、固定板128の裏面は、患者の皮膚5に当接される。
接着部129は、管腔体102を固定部127に接着するもので、中央に略円形の貫通孔130が形成されたリング形状を有している。接着部129の貫通孔130は、固定板128の収納孔131と連通しており、貫通孔130の大きさは、管腔体102の外径に合わせて設定される。
このような固定板128の収納孔131および接着部129の貫通孔130に、管腔体102が貫通され、例えば、接着剤により固定される。
図2(A)、図2(B)で示す実施形態では、親水性皮膜150は、管腔体102の気道確保用ルーメンを形成する内面全体に配置されている。
気管切開チューブ101内の痰を、吸引カテーテルを用いて吸引する場合について、図2(C)を参照して説明する。
図1で示すように、気管切開チューブ101を装着される患者は、通常頭部を挙上し仰向きで寝ていることが多いため、痰などの異物は重力方向である背側に溜まりやすい。つまり、図2(C)中の下側に痰が溜まりやすい。
そこで、管腔体102の基端部121側から吸引カテーテル601を管腔体102に挿入し、吸引カテーテル601の先端を管腔体102の内面上に沿わせながら先端部122付近まで進めて、痰Zを吸引して除去することができる。
また、吸引カテーテル601を先端部122付近で抜き挿ししたり、回転させたりすることにより、痰Zを、吸引カテーテル601の先端で押し出したり、吸引カテーテル601の外側に付着させたりして、除去することもできる。
本発明の気管用チューブの内面の材料は、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリフロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンや変性ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)ポリ力一ボネ一卜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂等の各種高分子材料、セラミック、カーボン、およびこれらの複合材料等が例示できる。
本発明に用いる親水性皮膜
本発明の方法に好適な親水性皮膜は、アルコキシ基を有するアクリレートを主成分とする材料からなり、好ましくは、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(以下PMEAということがある)を主成分とする親水性皮膜Aと、グリシジルメタアクリレート(以下、GMAということがある)を主成分とする親水性皮膜Bが挙げられる。ここで、主成分とするとは、50質量%以上の成分をいい、他の成分を含有していてもよい。親水性皮膜Aは、後に詳述するように好ましくはPMEAを主成分とする(B)成分と(A)成分との共重合体である。親水性皮膜Bは後に詳述するように潤滑性を発現する部位とエポキシ基を有する部位とからなる共重合体であり、好ましくはアクリルアミドもしくはアクリルアミド誘導体よりなる重合体と、エポキシ基を有する部位とからなる共重合体である。共重合体の構造は特に制限されず、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
PMEAを主成分とする(B)成分と(A)成分との共重合体である親水性皮膜AとGMAを主成分とする親水性皮膜Bは、血液適合性に優れる材料であり、親水性皮膜Aと親水性皮膜Bでは図4(A)、図4(B)で示す複数の層の水層が形成されると考えられる。このため図3に示す左側の図で説明するように、その表面では非浸漬状態で複数の水層が安定に存在し材料表面または不凍水(強固定層)をシールドしているため、タンパク質、細胞の水和構造が破壊されない。その結果図3に示す右側の図で説明するようなタンパク質の吸着変性が起こりにくいと考えられている。
共重合体の重量平均分子量は好ましくは1,000〜1000000である。この範囲に含まれる場合には溶解性の点から好ましい。共重合体の重量平均分子量は、皮膜層の被覆のしやすさの点から、より好ましくは50000〜500000である。本発明において、「重量平均分子量」は、標準物質としてポリスチレン、移動相としてテ卜ラヒドロフラン(THF) を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC) により測定した値を採用するものとする。
PMEAと水との界面では、時間分解赤外分光(in situ ATR-IR)法により不凍水、中間水、自由水が、それぞれ異なる吸着時間で観測されている。吸着初期では不凍水(以下強固定層という)はカルボニル基と水素結合し、吸着中期では中間水(以下中固定層という)が側鎖末端メトキシ基と相互作用し、吸着後期ではバルク水と類似した水素結合構造を持つ自由水(弱固定層という)の結合が観察されている。PMEAと同様に血液適合性に優れる材料である親水性皮膜BもPMEAと類似した吸着水の働きが行なわれているものと考えられる。
2.1[A共重合体]
A共重合体は、下記式(1)で表される繰り返し単位(A)および下記式(2)で表される繰り返し単位(B)を有し、かつ、全繰り返し単位に対する繰り返し単位(A)の含有量が0.6〜7モル%である共重合体である。
ただし、R11は、水素原子またはメチル基であり、Zは酸素原子または−NH−であり、R12 は、炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R13およびR14は、それぞれ独立して炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R15は、炭素原子数1〜6のアルキレン基である、で示される繰り返し単位(A)と、式(2)、R21は、水素原子またはメチル基であり、R22は、炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R23は、炭素原子数1〜4のアルキル基である、で示される繰り返し単位(B)と、を有する。
前記式(2)中、R21は、水素原子またはメチル基であり、R22は、炭素原子数1〜3のアルキレン基であり、R23は、炭素原子数1または2のアルキル基である。
前記式(1)中、R11はメチル基であり、Zは酸素原子または−NH−であり、R12 は炭素原子数1〜4のアルキレン基であり、R13およびR14はそれぞれ独立して炭素原子数1または2のアルキル基であり、R15は炭素原子数1〜4のアルキレン基である。
A共重合体は、前記繰り返し単位(A)を0. 6 〜7モル%、前記繰り返し単位(B)を99.4〜93モル%(前記繰り返し単位(A)および前記繰り返し単位(B)の合計量は100モル%である)から構成される。
親水性皮膜Aの形成する複数の水層は、図4(A)に示すように親水性皮膜A表面から順に、強固定層、中間固定層および弱固定層の3層である。
上記式(1)中、R11は水素原子またはメチル基であり、抗血栓性向上の観点から、好ましくはメチル基である。Zは酸素原子または−NH−である。抗血栓性に関して、酸素原子または−NH−は、同等であるが、耐久性の観点からは、Zが−NH−であると好ましい。Zが−NH−である場合、上記式(1)中において、アミド構造を構成する。そのため、Zが酸素原子である場合(すなわち、上記式(1)においてのエステル構造を構成する場合)よりも耐加水分解性に優れ、長期間にわたって生体成分と接触する用途に適している。
上記式(1)中、R12は、炭素原子数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、卜リメチレン基、プロピレン基、テ卜ラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。これらのうち、抗血栓性向上の観点から、炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であると好ましく、メチレン基、エチレン基、卜リメチレン基であるとより好ましく、エチレン基、卜リメチレン基であると特に好ましい。
上記式(1)中、R13およびR14は、それぞれ独立して炭素原子数1〜4のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。これらのうち、抗血栓性向上の観点から、炭素原子数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基であると好ましく、炭素原子数1または2のアルキル基(メチル基、エチル基)であるとより好ましく、メチル基であると特に好ましい。
上記式(1)中、R15は、炭素原子数1〜6の直鎖または分岐鎖アルキレン基であり、具体的には、上記R12の説明に記載されたものと同様の基が挙げられる。これらのうち、抗血栓性向上の観点から、炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であると好ましく、メチレン基、エチレン基卜リメチレン基であるとより好ましく、卜リメチレン基であると特に好ましい。
以上より、繰り返し単位(A)について、上記式(1)中、R11はメチル基であり、Zは酸素原子または−NH−であり、R12は炭素原子数1〜4のアルキレン基であり、R13およびR14はそれぞれ独立して炭素原子数1または2のアルキル基であり、R15は炭素原子数1〜4のアルキレン基であると好ましい。さらに、上記式(1)中、R11はメチル基であり、R12は炭素原子数2または3のアルキレン基であり、Zは酸素原子または−NH−でありR13およびR14は炭素原子数1のアルキル基(メチル基)であり、R15は炭素原子数3のアルキレン基であると特に好ましい。
A共重合体は、上記繰り返し単位(A)を形成するモノマー(以下、「モノマーa」 とも称する。)と、以下で詳述する繰り返し単位(B)を形成するモノマー (以下、「モノマーb」 とも称する。)との重合反応によって得ることができる。モノマーaとしては、たとえば、Zが酸素原子の場合、または、Zが−NH−の場合として、以下の化合物を用いることができる。下記のモノマーは1種単独で、または2種以上が混合して用いられてもよい。また、Zが酸素原子である化合物と、Zが−NH−である化合物の両方を混合して用いてもよい。
Zが酸素原子である場合、モノマーaとしては、たとえば、[2 - (メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル- (3-スルホブロピル)アンモニウムヒドロキシド、[2- (アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル- (3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、{2- [ (メタ)アクリロイルオキシ]エチル}ジメチル− (2−スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、{2−[ (メタ)アクリロイルオキシ]エチル}ジエチル− (2-スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、{2− [ (メタ)アクリロイルオキシ]エチル}ジエチル− (3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、{3− [ (メタ)アクリロイルオキシ]プロピル}ジメチル−(2−スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、{3− [ (メタ)アクリロイルオキシ]プロピル}ジメチル−(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、{3−[ (メタ)アクリロイルオキシ]プロピル}ジエチル−(2−スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、{3− [ (メタ)アクリロイルオキシ]プロピル}ジエチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド等が挙げられるが、好ましくは[2− (メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル- (3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシドである。
また、Zが−NH−である場合、モノマーaとしては、たとえば、[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、[3- (アクリロイルアミノ)ブロピル]ジメチル(3-スルホブロピル)アンモニウムヒドロキシド、{2− [ (メタ)アクリロイルアミノ]エチル}ジメチル(2−スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、{2− [ (メタ)アクリロイルアミノ]エチル}ジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、{2 - [ (メタ)アクリロイルアミノ]エチル}ジエチル(2-スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、{2− [ (メタ)アクリロイルアミノ]エチル}ジエチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、{3− [ (メタ)アクリロイルアミノ]プロピル}ジメチル(2−スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、{3− [ (メタ)アクリロイルアミノ]プロピル}ジエチル(2−スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、{3− [ (メタ)アクリロイルアミノ]プロピル}ジエチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド等が挙げられるが、好ましくは[3− (メタクリロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシドである。
かようなベタイン骨格を有するモノマーを用いることにより、気管用チューブの内面に高い抗血栓性を付与することができる。なお、本明細書中、「 (メタ)アクリル」とは「アクリル」および/または「メタクリル」を示すものであり、「 (メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」および/または「メタクリロイル」を示すものとする。
(繰り返し単位(B))
本発明において、A共重合体は、上記式(2)で示される繰り返し単位(B)を必須に含む。
上記式(2)中、R21は水素原子またはメチル基であり、抗血栓性向上の観点から、好ましくは水素原子である。
上記式(2)中、R22は、炭素原子数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、卜リメチレン基、プロピレン基、テ卜ラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。これらのうち、抗血栓性向上の観点から、炭素原子数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であると好ましく、メチレン基、エチレン基であるとより好ましく、エチレン基であると特に好ましい。
上記式(2)中、R23は、炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。これらのうち、抗血栓性向上の観点から、炭素原子数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基であると好ましく、炭素原子数1または2のアルキル基(メチル基、エチル基)であるとより好ましく、メチル基であると特に好ましい。
以上より、繰り返し単位(B)について、上記式(2)中、R21は、水素原子またはメチル基であり、R22は、炭素原子数1〜3のアルキレン基であり、R23は、炭素原子数1または2のアルキル基であると好ましい。さらに、上記式(2)中、R21は、水素原子またはメチル基であり、R22は、炭素原子数2のアルキレン基(エチレン基)であり、R23は、炭素原子数1のアルキル基(メチル基)であると特に好ましい。
上記繰り返し単位(B)を構成するモノマーbとしては、アクリル酸メ卜キシメチル、アクリル酸メトキシエチル(MEA)、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸エトキシプロピル、アクリルエ卜キシブチル、アクリル酸プロポキシメチル、アクリル酸プロポキシエチル、アクリル酸プロポキシプロピル、アクリル酸プロポキシブチル、アクリル酸ブトキシメチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブトキシプロピル、アクリル酸ブトキシブチル、メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸メ卜キシブチル、メタクリル酸エ卜キシメチル、メタクリル酸エ卜キシエチル、メタクリル酸エトキシプロピル、メタクリル酸エトキシブチル、メタクリル酸プロポキシメチル、メタクリル酸プロポキシエチル、メタクリル酸プロポキシプロピル、メタクリル酸プロポキシブチル、メタクリル酸ブトキシメチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸ブトキシプロピル、メタクリル酸ブトキシブチルが挙げられる。モノマーbとしては、好ましくはアクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル(MEA)、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸エ卜キシエチル、メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エ卜キシメチル、メタクリル酸エ卜キシエチルであり、入手が容易であるという観点から、より好ましくはアクリル酸メ卜キシエチル(MEA) である。上記モノマーは、1種単独で、または2種以上が混合して用いられてもよい。
(各繰り返し単位の含有比率)
本発明において、共重合体は、共重合体の全構成単位(100モル%)中、繰り返し単位(A)を、0.6〜7モル%含む。繰り返し単位(A)は、親水性が高いため、共重合体に多く含まれる場合、当該共重合体は良好な抗血栓性を示す。一方で、繰り返し単位(A)が多すぎると、共重合体の水溶性が高くなり、医療用具に医療材料を適用した際、医療材料が剥離してしまう虞がある。
共重合体の全構成単位中、繰り返し単位(A)が0.6モル%未満の割合で存在すると、十分な抗血栓の向上効果が得られず、血栓が形成されやすい条件下で長時間使用されるような過酷な環境中で血栓が形成されてしまう。
一方、繰り返し単位(A)が7モル%を超えて存在すると、繰り返し単位(A)による水溶性付与作用により、体液(例えば、血液)と接触した際に、医療用具に被覆された医療材料が基材から剥離して体液中に溶出(混入)する危険性がある。
抗血栓性を向上させると共に、医療材料の剥離を防止するという観点から、繰り返し単位(A)は、全構成単位中、0. 8〜6モル%であると好ましく、0.9〜4.7モル%であるとより好ましく、1〜4モル%であると特に好ましい。
医療材料に含まれる共重合体において、全構成単位中、繰り返し単位(A)が上記範囲内であれば、繰り返し単位(B)の含有比率は特に制限されないが、共重合体の全構成単位中、繰り返し単位(B)は、例えば60モル%以上含まれていると好ましく、80モル%以上含まれているとより好ましく、90モル%以上含まれていると特に好ましい。一方、その上限は、上記繰り返し単位(A)との関係から、99. 4モル%である。
医療材料に含まれる共重合体は、上記繰り返し単位(A)および(B)以外の構成単位を含んでいてもよいが、上記繰り返し単位(A)および(B)のみから構成されていると好ましい。すなわち、医療材料に含まれる共重合体において、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)の合計量が100モル%であると好ましい。
よって、共重合体は、繰り返し単位(A)を0.6〜7モル%、繰り返し単位(B)を99.4〜93モル%(前記繰り返し単位(A)および前記繰り返し単位(B)の合計量は100モル%である)から構成されると好ましい。上記組成の共重合体とすることにより、血栓が形成されやすい過酷な条件下においても高い抗血栓性を示すと共に、医療用具に被覆された医療材料が基材から剥離して体液中に溶出(混入)することを防止することができる。
さらに、A共重合体は、繰り返し単位(A)を0.8〜6モル%、繰り返し単位(B)を99.2〜94モル%(前記繰り返し単位(A)および前記繰り返し単位(B)の合計量は100モル%である)から構成されるとより好ましい。さらにまた、上記共重合体は、繰り返し単位(A)を0.9〜4.7モル%、繰り返し単位(B)を99.1〜95.3モル%(前記繰り返し単位(A)および前記繰り返し単位(B)の合計量は100モル%である)から構成されるとさらにより好ましい。さらに、上記共重合体は、繰り返し単位(A)を1〜4モル%、繰り返し単位(B)を99〜96モル%(前記繰り返し単位(A)および前記繰り返し単位(B)の合計量は100モル%である)から構成されると特に好ましい。
本発明において、共重合体における繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)、または他のモノマーに由来する繰り返し単位の割合は、NMR法により決定された値を採用するものとする。例えば、繰り返し単位(A)、および繰り返し単位(B)で構成される共重合体の場合、繰り返し単位(A)および(B)において、それぞれ特徴的な構造である、窒素原子上のアルキレン基(すなわち、 R15) と、アルコキシ基(すなわち、−OR23)のH−NMRの積分値を求め、当該積分値の比率に基づいて、共重合体における繰り返し単位(A)、と繰り返し単位(B)との割合を解析できる。また、HNMRの測定において、ピークが重なる場合は、13C−NMRを用いて算出することができる。
(他の構成単位)
上記のように、親水性皮膜Aに含まれる共重合体は、繰り返し単位(A)および(B)のみからなると好ましいが、その他の繰り返し単位を含んでいてもよい。すなわち、本発明の他の実施形態において、医療材料に含まれる共重合体は、モノマーa、モノマーb、および、これらと共重合可能な他のモノマー(以下、単に「他のモノマー」とも称する。)に由来する構成単位(繰り返し単位)を含んでいてもよい。
モノマーaおよびモノマーbと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノイソプロピルアクリレート、ジアミノメチルアクリレート、ジアミノエチルアクリレート、ジアミノフチルアクリレート、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、アミノメチルメタクリレート、アミノエチルメタクリレート、ジアミノメチルメタクリレート、ジアミノエチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレー卜、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチレン、プロピレン、N−ビニルアセ卜アミド、N−イソプロペニルアセ卜アミド、N− (メタ)アクリロイルモルホリン等がある。
共重合体の全構成単位中、上記他のモノマーに由来する繰り返し単位の割合は特に制限されないが、例えば、0モル%を超えて39モル%未満であり、好ましくは0モル%を超えて33モル%未満であり、より好ましくは0モル%を超えて9モル%未満であり、特に好ましくは、0モル%を超えて3モル%未満である。
上記A共重合体の製造方法は、WO2015/125890に記載されている。
2.2[親水性皮膜B]
親水性皮膜Bは、潤滑性を発現する部位と架橋性を有する部位とからなるB共重合体を有する。架橋性基を有する部位は、好ましくは、エポキシ基を有する部位であり、より好ましくはGMA(グリシジルメタアクリレート、Methacrylic acid glycidyl ester)を主成分とする。潤滑性を発現する部位は、特に限定されないが合成の容易性や操作性などを考慮すると、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体よりなる重合体、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、糖、リン脂質を側鎖に有する単量体を構成成分とする重合体あるいは無水マレイン酸系重合体などが挙げられる。無水マレイン酸系重合体としては、水溶解性に限定されず、無水マレイン酸系高分子を主成分としていれば不溶化されたものであっても、非浸漬状態で、呼気湿度と痰の水分とが存在する環境下に配置されることによって、呼吸気中の水分および/または喀痰中の水分によって親水性皮膜Bの皮膜上に複数の水層が形成されるものであれば良い。さらに、有機溶媒にも可溶な重合体、すなわち両親媒性重合体が好ましい。
一方マクロモノマーにおいては、枝の部分が潤滑性を発現する部位で、幹の部分が加熱処理により架橋または高分子化するドメインを有する部位であることが望ましい。具体的には、グリシジルメタアクリレートとジメチルアクリルアミドとのマクロモノマー、グリシジルメタアクリレートと無水マレイン酸・ヒドロキシエチルメタアクリレート共重合体とのマクロモノマー、グリシジルメタアクリレートと無水マレイン酸・アクリルアミド共重合体とのマクロモノマー等が例示される。
以下にB共重合体の具体例を挙げて説明するが、本発明に用いるB共重合体はこれらに限定されるものではなく、特許第3522839号公報および特許3631781号公報に詳述されている。
アジピン酸2塩化物72.3g中に50℃でトリエチレングリコール29.7gを滴下した後、50℃で3時間塩酸を減圧除去して得られたオリゴエステル22.5gにメチルエチルケトン4.5gを加え、水酸化ナトリウム5g,31%過酸化水素6.93g,界面活性剤ジオクチルホスフェート0.44g、水120gよりなる溶液中に滴下し、−5℃で20分間反応させた。得られた生成物は、水洗、メタノール洗浄を繰り返した後、乾燥させて分子内に複数のパーオキサイド基を有するポリ過酸化物を(PPO)を得た。続いて、このPPOを重合開始剤として0.5g、グリシジルメタクリレート(GMA)9.5gを、ベンゼン30gを溶媒として、65℃2時間、減圧下で撹拌しながら重合した。反応物は、ジエチルエーテルで再沈して、分子内にパーオキサイド基を有するポリGMAを得た。続いて、このポリGMA1gを重合開始剤とし、親水性モノマーとしてジメチルアクリルアミド(DMAA)8gをDMSO中に仕込み、70℃、18時間重合させることにより、反応性ドメインとしてポリGMA、水膨潤性の親水性ドメインとしてポリDMAAを有するブロックコポリマー(B1)を得た。B1の組成(モル比)を1 H−NMRで分析したところ、DMAA:GMA=7.1:1であった。同様の方法で、GMAの代わりにヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を使用して、ブロックポリマー(B2)(DMAA:HEMA(モル比)=6.4:1)を得る。
2.3.[親水性皮膜が有してもよい他の成分]
本発明の親水性皮膜は、上記の共重合体以外の、他の成分を含んでいてもよい。当該他の成分としては、例えば、重合において反応しなかった未反応のモノマーや、架橋剤、増粘剤、防腐剤、pH調整剤等の各種添加剤が挙げられる。
得られた共重合体に含まれる、未反応の重合モノマーは、共重合体全体に対して0.01質量%以下であることが好ましい。未反応の重合モノマーは少ないほど好ましいので、下限は特段制限されないが、例えば0質量%である。残留モノマーの含量は、例えば高速液体クロマ卜グラフィーなど、当業者に知られた方法により測定できる。
コーティング液の形態で用いる場合、用いる溶媒としては共重合体を溶解できるものであれば特に制限されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、水、クロロホルム、テ卜ラヒドロフラン、アセトン、ジオキサン、ベンゼン等の非プロトン供与性の有機溶媒が例示できる。上記溶媒は、1種単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。混合溶媒としては、水−アルコール系溶媒が好ましく、特に、水−メタノール混合溶媒が好ましい。
コーティング液に含まれる共重合体の量は、任意に設定でき、共重合体を飽和量まで溶解させた溶液として用いることもできるが、例えば、コーティング剤全体に対して0.01〜50質量%であると好ましく、0.1〜50質量%であるとより好ましい。
コーティング剤は、共重合体と上記溶媒とによって構成されても良いが、任意に、架橋剤、増粘剤、防腐剤、pH調整剤等、他の成分を含んでも良い。架橋剤を含むことにより、共重合体がより強固に基材表面へ固定化されうる。
3.本発明の親水性皮膜により形成される複数の水層
以上の親水性皮膜Aを内表面の少なくとも一部に有する気管用チューブを、患者の体外と体内とを連通し、呼吸気中の水分および/または喀痰中の水分が存在するが、気管用チューブの表面が直接液体(水系溶媒、体液および分泌液など)に接触しない、もしくは少なくとも一部が接触しない状態に配置すると、親水性皮膜上に複数の水層が形成される。複数の水層を模式的に図4(A)および表1に示す。
表1および図4(A)は、滑らかな親水性皮膜Aと水との接触界面の状態を示している。表1の浸漬状態では親水性皮膜Aが水または体液と接触している状態で、この状態は本発明の方法に用いる気管用チューブにはない。本発明方法の気管用チューブは非浸漬状態に置かれ、設置した初期状態または良好な状態に維持されて継続使用されている状態では、気道確保用ルーメンの内部は呼気の湿気で満たされる。親水性皮膜Aと接する水は、親水性皮膜Aの表面から強固定層(不凍水)・水層厚さ+、中固定層(中間水)・水層厚さ++、弱固定層(自由水)・水層厚さ−(−はその層がないことを示す)の順で形成されるが、痰のない呼気湿度の場合は、弱固定層(自由水)は見られない。この状態で痰が発生しそれが気管用チューブ外に排出されないと気道確保用ルーメンの内部は、呼気湿度に痰の水分が加わる。親水性皮膜Aと接する水は、親水性皮膜Aの表面から強固定層(不凍水)・水層厚さ+、中固定層(中間水)・水層厚さ+++、弱固定層(自由水)・水層厚さ+の順で形成される。+は、水層厚さを模式的に示す単位であるので+が多いほど、水層厚さが厚いことを示す。この状態を図4(A)に示す。親水性皮膜A150上に、強固定層W、中固定層Wおよび弱固定層Wが、この順に配置され、これにより、強固定層Wが、中固定層Wおよび弱固定層Wによって保護され、親水性皮膜A150上で痰が移動できるようになる。W層の上には水層は存在しない。
上記表1で示すように、親水性皮膜Aを気道確保用ルーメンを形成する内面の少なくとも一部に有する気管用チューブを、患者の体外と体内とを連通し、呼吸気中の水分(呼気湿度)の状態に置くと親水性皮膜A表面に強固定層と中固定層が形成される。この状態で患者の体内で痰が生じ、痰の水分が呼気湿度に加わると、中固定層の厚さが増強され、弱固定層が生成する。親水性皮膜A内表面上の気管用チューブ内の喀痰が、患者の呼吸の流れによって親水性皮膜A表面を移動できるようになるので気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減できる。また従来技術の構成では移動しない程度の小さな喀痰を患者の呼吸の流れによって移動させて集めて塊として除去し易くすることができる。
親水性皮膜Bを内表面の少なくとも一部に有する気管用チューブを、患者の体外と体内とを連通し、呼吸気中の水分および/または喀痰中の水分が存在するが、気管用チューブの表面が直接液体(水系溶媒、体液および分泌液など)に接触しない、もしくは少なくとも一部が接触しない状態に配置すると、親水性皮膜上に複数の水層が形成される。複数の水層を模式的に図4(B)および表2に示す。
表2および図4(B)は、滑らかな親水性皮膜Bと水との接触界面の状態を示している。表2の浸漬状態では親水性皮膜Bが水または体液と接触している状態で、この状態は本発明の方法に用いる気管用チューブにはない。本発明方法の気管用チューブは非浸漬状態に置かれ、設置した初期状態または良好な状態に維持されて継続使用されている状態では、気道確保用ルーメンの内部は呼気の湿気で満たされる。親水性皮膜Bと接する水は、親水性皮膜Bの表面から強固定層(不凍水)・水層厚さ++、弱固定層(自由水)・水層厚さ+の順で形成される。痰のない呼気湿度の場合でも、親水性皮膜Bによって弱固定層(自由水)が見られる。この状態で痰が発生しそれが気管用チューブ外に排出されないと気道確保用ルーメンの内部は、呼気湿度に痰の水分が加わる。親水性皮膜Bと接する水は、親水性皮膜Bの表面から強固定層(不凍水)・水層厚さ++、弱固定層(自由水)・水層厚さ++の順で形成される。この状態を図4(B)に示す。親水性皮膜B150上に、強固定層W、および弱固定層Wが、この順に配置され、これにより、強固定層Wが、弱固定層Wによって保護され、親水性皮膜B150上で痰が移動できるようになる。W層の上には水層は存在しない。
上記表2で示すように、親水性皮膜Bを気道確保用ルーメンを形成する内表面の少なくとも一部に有する気管用チューブを、患者の体外と体内とを連通し、呼吸気中の水分(呼気湿度)の状態に置くと親水性皮膜B表面に強固定層と中固定層が形成される。この状態で患者の体内で痰が生じ、痰の水分が呼気湿度に加わると、弱固定層の厚さが増強される。親水性皮膜B内表面上の気管用チューブ内の喀痰が、患者の呼吸の流れによって親水性皮膜B表面を移動できるようになるので気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減できる。また従来技術の構成では移動しない程度の小さな喀痰を患者の呼吸の流れによって移動させて集めて塊として除去し易くすることができる。
本発明の方法は、気道確保用ルーメンを形成する内面の少なくとも一部に特定の親水性皮膜を備える気管用チューブを、非浸漬状態で呼気湿度と痰の水分とが存在する環境下に配置することによって、呼吸気中の水分および/または喀痰中の水分によって特定の親水性皮膜上に特定の水層を形成することにある。その結果得られる複数の水層により、気管用チューブ内の喀痰が、患者の呼吸の流れによって気道確保用ルーメンの内面を移動でき、気管用チューブ内面への喀痰の固着が低減される方法である。
気管用チューブの気道確保用ルーメンを形成する内面の少なくとも一部が以上の条件になるように気管用チューブを配置するには、特定の親水性皮膜を有する気道確保用ルーメンが痰を動かせる水層を形成できるように人工呼吸器の湿度、呼吸器の呼気・吸気の速度を調整する。または痰の状態によっては人工呼吸器の調整は不要である場合もあり、その場合は、人工呼吸器は使用しない場合もあり、また、人工呼吸器の特別な調整の必要は無く、この条件で使用し続ければ痰の付着は低減できると判断する場合もある。
本発明の方法で、気管用チューブ内面の喀痰が移動できその固着が低減されるので以下の効果の内少なくとも一つを生じる。
本発明の気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法の第一の実施形態では、気管用チューブ内の喀痰が、患者の呼吸の流れによって気管用チューブの内面を移動できるようになるので気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減できる。
第二の実施形態では、従来技術の構成では移動しない程度の小さな喀痰の表面に図3Aに示すように中間固定層または弱固定層でたんぱく質または細胞の水和構造を形成し、患者の呼吸の流れによって気管用チューブの気道確保用ルーメンを上下動し、呼気によって基端側に移動し、吸気によって先端側に移動するステップによって気管用チューブの軸方向に形成されている従来技術の構成では移動しない程度の喀痰を集めて塊をつくることができるので、喀痰の塊を効率よく吸引、回収でき、気管用チューブの気道確保用ルーメンが閉塞しにくい。
さらに第三の実施形態では、タンパク質の水和構造を形成した喀痰の塊が、呼吸の流れによって気管用チューブ内面の周方向に回転するステップができ、従来技術の構成では、周方向に形成されている移動しない程度の喀痰を移動させて塊として集める方法が提供される。
第四の実施形態では水和構造を形成した喀痰を移動可能として集めて塊として吸引カテーテルの吸引ステップにより、容易に回収・除去する方法が提供される。
さらに第五の実施形態では、タンパク質の水和構造を形成した喀痰の塊が、呼吸の流れによって気管用チューブ内面から剥離されるステップを含み、気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減することができる。
また第六の実施形態では、ある時間毎に患者を体位変換(例えば側臥位の左から右)するステップにより、水和構造を形成した喀痰の塊を周方向に移動させ、周方向に形成されている従来技術の気管用チューブの構成では移動しない程度の小さな喀痰の塊を集めて、吸引除去することができる。
1.実施例1:3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド(式(1)中のZ=−NH−)とMEAとの共重合体(繰り返し単位(A):4.7モル%)の合成(特許文献2の実施例1参照)
アクリル酸メトキシエチル(MEA)5g(38.4mmo1)と[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド0.55g(1.9mmo1)とをメタノール22gに溶解し、四口フラスコに入れ、50℃でNバブリングを1時間行った。
その後、2,2‘ アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70 、和光純薬工業製)0.006gをメタノール1mLに溶解した溶液を、重合モノマーを溶解したメタノール溶液に加え、50℃で5時間重合させた。重合液をジエチルエーテルに滴下し、析出した共重合体を回収し、重合体(1)を得た。当該重合体(1)における繰り返し単位(A)の含有比率を‘H−NMRにより測定したところ、上記の仕込み量から計算される値と同様の比率であった。また、繰り返し単位(B)の含有比率も仕込み量から計算される値と同様の比率(95.3モル%)であった。
2.図5に断面図で示す気管用チューブ101と模擬気管70とを人工呼吸器(図示せず)および人工肺(図示せず)に連通した試験システム100を用いた。人工呼吸器は空気を挿入排気するポンプで人工肺は挿入空気の湿度を下記の条件に制御する。
気管用チューブ:内径8mm、長さ100mm、約110度湾曲。
気管用チューブの下流には内径11.5mmの樹脂チューブを模擬気管として人工肺まで100mm長とした。
各部の接続箇所は気体、液体が漏れないように密封した。
3.[人工呼吸器、気管用チューブ、模擬気管、人工肺を備える試験システム]
呼吸器内科の急性期、慢性期のドクター2名の指導により、人工呼吸器(図示せず)と気管用チューブと模擬気管と、人工肺(図示せず)とを組み合わせた実験システムに痰を投入し、吸引カテーテル601を使って喀痰の吸引操作を行った。
人工呼吸器は、IPAP(呼気陽圧)18.0cmH
EPAP(吸気陽圧)3.0cmH
呼吸回数 15bpm(15回/分)
模擬痰は、カネヨコンクせんたく糊(カネヨ石鹸(株)製)を用いて粘度約5,000〜10,000cpsとして赤に着色して観察した。
親水性皮膜Aを模擬気管用チューブの内面に1〜1000nmの塗布量として全長にコートした。
親水性皮膜A表面の水層は60分間人工呼吸器と模擬肺とを運転した後に観測された。親水性皮膜Aの水層は、別にDSC(示差走査熱量計)を用いて3層(自由水、中間水、不凍水)であることを確認した。
模擬痰投与量 0.25mL/回
模擬痰投入 15分に1回(気管用チューブの基端から50mm先端側に投入)
吸引操作 60分に1回
吸引条件 −20kPa,20秒/回
痰投与・吸引は、経時加速(4倍)条件で行った。
[結果:吸引カテーテルにより除去される]
投入した模擬痰が移動しながら、少しずつ塊となって徐々に親水性皮膜A上を先端側に移動した。次に、吸引操作を行ったところ、模擬痰は気管用チューブの先端側から容易に吸引カテーテルで容易に除去できた。吸引できた塊は0.01〜0.2gであった。
[結果:模擬痰が基端側に移動して一部排出される]
投入した模擬痰が移動しながら、少しずつ塊となって徐々に親水性皮膜A上を先端側に移動した。次に、気管用チューブ内に大きさが約0.2〜0.5gの模擬痰が溜まり、溜まった模擬痰は模擬気管用チューブ内を、呼気、吸気に連れて上下に移動したが呼気の加勢で徐々に基端側に上昇していく、もしくは吸気の加勢で徐々に先端側に下降していくのが観測できた。そのまま吸引せずに観察を続けたら、模擬痰の塊が気管用チューブの先端から模擬気管に排出された。
本発明の気管用チューブの気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法は、例えば、WO2016/052340公報に記載の以下の気管用チューブまたはこれらの変形例に好適に利用できる。本発明の方法はこれらの気管用チューブに限定されない。
気管用チューブが、気管切開チューブである。
気管用チューブが、複管式気管切開チューブである。
気管用チューブが、複管式気管切開チューブの内管である。
気管用チューブが、気管内チューブである。
気管用チューブが、輪状甲状膜の穿刺孔または切開孔を介して気管に挿入可能な気管力ニューレである。
気管用チューブが、輪状甲状膜に穿刺可能な気管力ニューレである。
気管用チューブが、小気管切開チューブである。
5 皮膚
7 気管
7a 皮膚側気管粘膜
7b 体内側気管粘膜
70 模擬気管
80 試験システム
100 気管用チューブ
101 気管切開チューブ
102 管腔体
102a 気道確保用ルーメン
106 カフ
121 基端部
122 先端部
123 湾曲部
127 固定部
128 固定板
129 接着部
130 貫通孔
131 収納孔
150 親水性皮膜、親水性皮膜A、親水性皮膜B
152 接着層
601 吸引カテーテル
強固定層
中固定層
弱固定層
Z 痰

Claims (6)

  1. 気管内の肺側に配置される先端部、前記先端部と反対側に配置される基端部、および、前記基端部から前記先端部にかけて貫通する気道確保用ルーメンを形成する管腔体を有し、前記管腔体の前記気道確保用ルーメンを形成する内面の少なくとも一部に親水性皮膜を備え、
    前記親水性皮膜が、下記式(1):
    ただし、式(1)中、R11は、水素原子またはメチル基であり、Zは酸素原子または−NH−であり、R12は、炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R13およびR14は、それぞれ独立して炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R15は、炭素原子数1〜6のアルキレン基である、で示される繰り返し単位(A)と、
    式(2)中、R21は、水素原子またはメチル基であり、R22は、炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R23は、炭素原子数1〜4のアルキル基である、
    で示される繰り返し単位(B)と、を有し、前記繰り返し単位(A)が、前記共重合体の全構成単位中、0.6〜7モル%含まれるX共重合体を含む親水性皮膜Aである気管用チューブにおいて、前記気管用チューブが非浸漬状態で患者の体外と体内とを連通し、呼吸気中の水分および/または喀痰中の水分によって前記親水性皮膜上に水層を形成でき、
    前記水層により、気管用チューブ内の喀痰が、患者の呼吸の流れによって前記内面を移 動できるようにすることによる、気管用チューブ内面への喀痰の固着を 低減する方法。
  2. 前記式(2)中、R21は、水素原子またはメチル基であり、R22は、炭素原子数1〜3のアルキレン基であり、R23は、炭素原子数1または2のアルキル基である、請求項に記載の気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法。
  3. 前記式(1)中、R11はメチル基であり、Zは酸素原子または−NH−であり、R12は炭素原子数1〜4のアルキレン基であり、R13およびR14はそれぞれ独立して炭素原子数1または2のアルキル基であり、R15は炭素原子数1〜4のアルキレン基である、請求項1または2に記載の気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法。
  4. 前記共重合体は、前記繰り返し単位(A)を0.6〜7モル%、前記繰り返し単位(B)を99.4〜93モル%(前記繰り返し単位(A)および前記繰り返し単位(B)の合計量は100モル%である)から構成される、請求項1ないしのいずれか1項に記載の気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法。
  5. 前記水層が、前記親水性皮膜表面から順に、強固定層、中間固定層および弱固定層の3層である、請求項1ないしのいずれか1項に記載の気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する方法。
  6. 気管内の肺側に配置される先端部、前記先端部と反対側に配置される基端部、および、前記基端部から前記先端部にかけて貫通する気道確保用ルーメンを形成する管腔体を有し、前記管腔体の前記気道確保用ルーメンを形成する内面の少なくとも先端側に親水性皮膜を備える気管用チューブであって、
    前記親水性皮膜が、下記式(1):
    ただし、式(1)中、R 11 は、水素原子またはメチル基であり、Zは酸素原子または−NH−であり、R 12 は、炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R 13 およびR 14 は、それぞれ独立して炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R 15 は、炭素原子数1〜6のアルキレン基である、で示される繰り返し単位(A)と、
    式(2)中、R 21 は、水素原子またはメチル基であり、R 22 は、炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R 23 は、炭素原子数1〜4のアルキル基である、
    で示される繰り返し単位(B)と、を有し、前記繰り返し単位(A)が、前記共重合体の全構成単位中、0.6〜7モル%含まれるX共重合体を含む親水性皮膜Aであり、
    非浸漬状態で患者の体外と体内とを連通するように配置され、呼吸気中の水分および/または喀痰中の水分によって前記気管用チューブの前記親水性皮膜上に水層を形成し、気管用チューブ内の喀痰が、前記水層により、患者の呼吸の流れによって前記内面を移動する、気管用チューブ内面への喀痰の固着を低減する用途に用いられる気管用チューブ。
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