JPWO2010119911A1 - 被削性に優れた低比重鍛造用鋼 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1には、C:0.01超〜5%、Si:3.0%以下、Mn:0.01〜30.0%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Al:3.0〜10.0%、N:0.001〜0.05%を含有し、比重<7.20で、引張り強度:TS(MPa)と破断伸びEl(%)の積の値:TS×Elが10000MPa・%以上である高強度低比重鋼板が記載されている。
また、特許文献2には、特許文献1の鋼板と同様の組成を有し、Alを10超〜32.0%として、さらに低比重とした高強度低比重鋼板が記載されている。
このように、熱間圧延して製造される鋼板では、圧延過程での圧延条件制御により組織の微細化が可能であるから、素材として比較的多量のAlを含有する鋼を製造することができる。
特許文献3には、Mn:5.0〜15.0(未満)%、Al:0.5〜10.0%、Si:0.5〜10.0%、C:0.01〜1.5%からなり、α相分率10〜95%であるγ+αの2相を備えた低比重鉄合金が記載されている。
この鉄合金の硬さと冷間加工率はγとαの比に大きく依存するので、工業的な使用のためには、安定的にγとαの比を調整する必要がある。
しかし、熱間加工から始まり各種熱処理を経た後に目的とするγ/α比を正しく得ることは至難であり、工業的な生産には適さないという問題がある。
さらに、この合金は、優れた硬さを得ることを目的としており、Sは含有されておらず、被削性については全く考慮されていない。
この粗大なフェライト組織の鋼は、熱間鍛造の際に鍛造割れやキズが発生し、常温では機械的性質が劣化するため、鍛造用としては使用することができない。
以上のような検討の結果なされた本発明の要旨は、次の通りである。
(2)さらに、質量%で、V:0.05〜0.30%、Nb:0.05〜0.30%、Ti:0.005〜0.050%の1種または2種以上を含有することを特徴とする、(1)に記載の被削性に優れた低比重鍛造用鋼。
その結果、オーステナイト組織とするためのC、Mn、Alの最適な含有量、及び、被削性を確保するためのSなどの最適な含有量を見出した。
以下、本発明の鋼組成の限定条件について説明する。なお、%は質量%を意味する。
Cは、鍛造品の強度を向上させるために、また、鍛造加熱時にオーステナイト単相に変態する温度域を広げることで安定的な加工を可能とするために必須の元素である。この目的のためには0.05%以上必要であるが、0.50%を超えると過度に強度が上昇し、延性が低下するため、好ましくない。Cのより好ましい範囲は、0.15〜0.45%である。
Siは0.01%以上を添加すると固溶強化元素として作用する。多量に添加した場合には比重を低減する作用もある。しかし、1.50%超の添加は靭性、延性の低下をもたらす。Siのより好ましい範囲は、0.05〜0.50%である。
Mnは、オーステナイト形成元素として知られており、本発明においても鍛造加熱時に組織をオーステナイトに変態させるために添加する。組織全体または一部をオーステナイトに変態させるには3.0%以上が必要である。Mn量が多くなるとそれだけ鍛造加熱時のオーステナイト変態量も増加するが、Mnの含有量が7.0%を超えると、鋼を過剰に強化して被削性を低下させる原因となることから、その上限を7.0%とする。
Pは、わずかながら加熱時のオーステナイト変態量を低減する。一般的な製造範囲である0.050%以下ではその効果による影響が小さいため、上限を0.050%とする。また、製鋼技術上の制約から下限を0.001%とする。
Sは、本発明の鋼では、その全てが鋼中に化合物MnSとして分散晶析出し、被削性を向上させる。また、晶析出したMnS粒子は高温加熱時の組織粗大化を抑制して、鋼の強度と延性を向上させる効果もある。被削性を向上させるために必要なMnS粒子を確保するためには0.020%以上のS添加が必要である。一方、0.200%を超える添加はMnS粒子を粗大化させるため、靭性の低下を招く。Sのより好ましい範囲は、0.030〜0.100%である。
Alは、鋼の比重を低減させると共に被削性を向上させる元素である。Alの添加量が増加すればそれに応じて鋼の比重が低下する。しかし、過度な量を添加すると、加熱時にオーステナイト変態が全く起こらず、常温から液相線温度までフェライト組織となり、熱間鍛造後のフェライト組織は非常に粗大化する。その結果、熱間鍛造の際に割れやキズが発生しやすくなり、また鍛造品の靭性や延性は極めて低いものとなる。
Crは、本発明の鋼組成の範囲において固溶強化元素であり、鋼強化のため0.01%以上を添加する。しかし、コスト抑制のため1.0%以下に限定する。
Nは、AlNを形成し、加熱時の組織粗大化を防止して靭性、延性を向上させる作用がある。組織粗大化を防止するためには少なくとも0.0040%以上が必要である。しかしボイドのない健全な鋳造組織を得るために上限を0.0200%とする。
−3.3×%C+0.2×%Si−0.31×%Mn+0.17×%Al+0.62≦0 ・・(式1)
なお、各元素の係数や定数は、実験的に定めたものである。
これらインゴットを1230℃に加熱して断面サイズ30mm角の棒鋼に鍛伸して、試験の出発材とした。この出発材の30mm角の棒鋼を200mm長さに切断し、熱間鍛造品を再現する目的で1200℃の炉に20分挿入して均熱した後、炉から取り出して油冷し、続いて600℃で1時間の焼き戻し処理をして供試材とした。
ドリル穿孔試験は、直径3.0mmのドリルを用いて、切削速度1〜100m/min、送り速度0.25mm/rev、突き出し量45mm、で9mm深さの穴を開ける方法で行った。切削油剤は水溶性切削油を使用した。
表2より、本発明の鋼は、7.20〜7.44の比重を有していることがわかる。この比重は、通常の含V非調質鋼の比重、例えばS55CVの7.79よりも約5〜7%小さな比重となっている。
また、鍛造を模した処理後の機械的性質は、800MPaを超える引張り強さ、700MPaを超える0.2%耐力を示しており、自動車用足回り部品に適用するのに十分なシャルピー衝撃値を備えていることがわかる。しかも、VL1000で比較した被削性は同じ硬さの調質鋼よりも29%以上優れている。
Cが少ない鋼No.18、Mnが少ない鋼No.19では、耐力、引張強さがともに低下している。また、被削性が従来鋼並みである。Siが多い鋼No.20では、衝撃値が低くなっている。Mnが多い鋼No.21では、優れた機械的性質を実現しているが、Mnの合金コストが高い。Pが多い鋼No.22およびSが多い鋼No.23では、衝撃値が低くなっている。
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.05〜0.50%、
Si:0.01〜1.50%、
Mn:3.0〜7.0%、
P :0.001〜0.050%、
S :0.020〜0.200%、
Al:3.0〜6.0%、
Cr:0.01〜1.00%、
N:0.0040〜0.0200%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、被削性に優れた低比重鍛造用鋼。 - さらに、質量%で、
V:0.05〜0.30%、
Nb:0.05〜0.30%、
Ti:0.005〜0.050%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする、被削性に優れた低比重鍛造用鋼。
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