JP2000096140A - 高靱性制振合金の製造方法 - Google Patents

高靱性制振合金の製造方法

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JP2000096140A
JP2000096140A JP10268827A JP26882798A JP2000096140A JP 2000096140 A JP2000096140 A JP 2000096140A JP 10268827 A JP10268827 A JP 10268827A JP 26882798 A JP26882798 A JP 26882798A JP 2000096140 A JP2000096140 A JP 2000096140A
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tempering
vibration damping
temperature
rolling
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Toshinaga Hasegawa
俊永 長谷川
Yukio Tomita
幸男 冨田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 不純物レベルが比較的高くても、制振性だけ
でなく強度靱性にも優れた低Cr系構造用制振合金の製
造方法を提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.03%以下、Si:
0.01〜3.5%、Mn:0.3〜3.0%、P:
0.02%以下、S:0.010%以下、Cr:0.0
1〜5.0%、Al:0.002〜3.5%、N:0.
01%以下を含有し、残部Fe及び不可避不純物からな
る鋼を、1000℃〜1250℃で加熱し、950℃以
下の累積圧下率が30〜80%で圧延仕上げ温度が70
0〜900℃の熱間圧延を行った後、(AC1変態点−5
0℃)〜(AC1変態点+50℃)で焼戻しまたは焼きな
ましを施した後、さらに、600℃〜800℃で焼戻し
または焼きなましを施すことを特徴とする高靱性制振合
金の製造方法。鋼がCu,Ni,Mo,W,Nb,T
a,V,Ti,Zr,B,Ca,Mg,REMの1種以
上を含有することが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶、橋梁、産業
機械、建築用等の構造材料として使用できる強度と靱性
を兼ね備えた制振合金の製造方法に関わるものである。
【0002】
【従来の技術】最近、船舶、橋梁、産業機械、建築物に
対しても静粛性や振動抑制の要求が高まりつつあり、そ
の対策の一つとして、その構造材料に高い制振性が要求
される場合が増えている。すなわち、例えば、橋梁上の
高速鉄道走行時や大規模土木、建築作業時の騒音、振動
を構造材料そのものの制振効果で抑えようとするもの
で、このような目的のための構造材料は、強度、靱性、
加工性さらには溶接性等の構造材料として必要な基本特
性と制振性とを兼ね備える必要がある。上記特性を満足
するためには、従来一般的に用いられてきている樹脂サ
ンドイッチ型の制振鋼板では不十分である。すなわち、
樹脂サンドイッチ型の制振鋼板の溶接性や曲げ加工性は
一般の鋼材に比べて劣っており、その使用には制限が生
じる。
【0003】樹脂サンドイッチ型制振鋼板に代わる金属
材料、特に溶接性やコストの点で構造材料として有利な
鉄系材料としては、振動による交番応力作用下での磁壁
移動の非可逆運動によるヒステリシスに起因して制振性
を発現する機構を利用した強磁性型制振合金が代表的で
ある。そのためには、フェライト単相組織とすることが
有利となるため、フェライト安定化元素を添加する。具
体的にはAl,Siを添加した材料と、Crを添加した
例が開示されている。前者の例としては、特開平4−9
9148号公報に示されるように、Alを最高7.05
%及びSiを最高4.5%まで添加した強磁性型制振合
金があり、後者の例としては、特開昭52−73118
号公報に示されるように、Crを8〜30%添加した強
磁性型制振合金や、特開平6−22058号公報で開示
されているようなCr量が1〜5%と比較的少ない強磁
性型制振合金がある。
【0004】しかし、これらの強磁性型制振合金はフェ
ライト安定化元素であるAl,Si,Cr等を多量に添
加している上、フェライト単相で変態を生じないために
粗粒であったり、また、変態を生じる場合でも制振性を
確保するために結晶粒径を粗大にする必要性があるため
に、構造材料として必要な靭性を達成することが困難で
あった。靱性を損なわずに制振性を改善する方法とし
て、焼戻しまたは焼きならし条件を工夫して集合組織を
最適化する技術が、例えば、特願平9−187238号
で示されているが、靱性及び制振性は結晶粒径と集合組
織以外に不純物元素としてのC,Nによる強く影響を受
け、その悪影響を回避するためには製造方法や化学組成
に制限を生じるために、達成される靱性、制振性に限界
があり、また、C,N量の上限が厳しいために、製造工
程の管理の煩雑さやそのための製造コスト上昇の問題が
あった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、Cr量が5
%程度以下の、オーステナイト(γ)/フェライト
(α)変態を示す低合金系強磁性型制振合金において、
不純物元素としてのC,N量の許容量が高く、靱性と制
振性とをともに良好とする新たな製造方法を提供するも
のである。
【0006】
【課題を解決するための手段】強磁性型制振合金におい
ては、化学組成の他に制振性に最も大きな影響を有する
因子は結晶粒径、転位密度、固溶C,N、さらに、析出
物である。すなわち、結晶粒径は粗大な方が制振性が良
好となり、転位密度、固溶C,N、析出物についてはそ
の量を極力することが制振性向上につながる。変態を有
するCr量が5%程度以下の低合金系強磁性型制振合金
においては、該変態の故に、変態のない高Cr系制振合
金に比べて結晶粒径は微細となる傾向が強く、その分制
振性が劣る場合が多い。
【0007】結晶粒径を制御する方法としては、焼きな
らしでは細粒傾向が強いため、特開平10−72643
号公報で示されているような、高温フェライト域で焼戻
しまたは焼きなましを行う方が好ましいが、不純物元素
としてのCが多い場合、粒径を大きくするために焼戻し
温度または焼きなまし温度を高くすると、粒径の粗大化
から予想される以上に靱性が顕著に劣化するため、制振
性と靱性とを同時に向上させることには限度がある。例
えば、特開平10−72643号公報では、C量は実質
的には0.005%以下になっている。
【0008】CまたはNが多いと高温焼戻しまたは高温
焼きなましで靱性、制振性が劣化するのは、第1には、
炭化物が高温焼戻しまたは高温焼きなましの加熱段階で
γに逆変態し、最終的には硬質で靱性の劣るマルテンサ
イト相が形成されること、及び、該マルテンサイト相に
よってまわりのマトリックスに歪や転位を生じるため
と、第2には、高温α域に加熱されることにより析出物
が分解して固溶C,Nが増加する、あるいは冷却中に再
析出する際に微細析出物を形成するためである。従っ
て、高温焼戻しまたは高温焼きなましによって粒径を適
正化した上で靱性、制振性を劣化させないためには、上
記、劣化要因を解消させればよいことになる。
【0009】本発明は、上記の新たな知見に基づいて発
明するに至ったものであり、その要旨は以下の通りであ
る。 (1)重量%で、C:0.03%以下、Si:0.01
〜3.5%、Mn:0.3〜3.0%、P:0.02%
以下、S:0.010%以下、Cr:0.01〜5.0
%、Al:0.002〜3.5%、N:0.01%以下
を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなる鋼を、1
000〜1250℃で加熱し、950℃以下の累積圧下
率が30〜80%で圧延仕上げ温度が700〜900℃
の熱間圧延を行った後、(AC1変態点−50℃)〜(A
C1変態点+50℃)で焼戻しまたは焼きなましを施した
後、さらに、600〜800℃で焼戻しまたは焼きなま
しを施すことを特徴とする高靱性制振合金の製造方法。
【0010】(2)鋼が、重量%で、Cu:0.05〜
1.5%、Ni:0.05〜2.0%、Mo:0.05
〜2.0%、W:0.05〜2.0%、Nb:0.00
5〜0.2%、Ta:0.005〜0.5%、V:0.
005〜0.5%、Ti:0.002〜0.02%、Z
r:0.002〜0.10%、B:0.0003〜0.
003%の1種または2種以上をさらに含有することを
特徴とする前記(1)に記載の高靱性制振合金の製造方
法。 (3)鋼が、重量%で、Ca:0.001〜0.05
%、Mg:0.0002〜0.01%、REM:0.0
01〜0.05%の1種または2種以上をさらに含有す
ることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の高
靱性制振合金の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】強磁性型制振合金の制振性は、外
力が付加されたときの磁壁移動の際のエネルギー損失に
よって発現されるため、磁壁移動が移動がある程度容易
であることが制振性向上の必要条件となっている。従っ
て、従来の強磁性型制振合金は結晶粒径を粗大化させる
ために、フェライト安定化元素を多量に添加してγ/α
変態を消滅させて変態のないフェライト単相とするか、
高温焼戻し等の製造方法の工夫によって結晶粒の粗大化
を図ることが一般的であった。
【0012】しかし、結晶粒径を粗大化させることは一
方では靭性の劣化につながるため、変態のないフェライ
ト単相合金ではその極端に粗大な結晶粒径のために靱性
確保が本質的に困難であった。一方、低Cr系の強磁性
型制振合金のようにγ/α変態を有する場合は、熱処理
によって結晶粒径の制御はある程度可能であるものの、
フェライト単相合金とは逆に、粗粒にする方が困難で、
粗粒化のためにはAC1変態点近傍の高温で焼戻しあるい
は焼きなまし(ここでの焼戻しと焼きなましとの違いは
冷却が放冷か徐冷かの違いだけであるため、以降は両者
を“焼戻し”と総称する)を施す必要があった。
【0013】低Cr系制振合金において、高温焼戻しに
より結晶粒径を制御する場合、制振性を高めた上で、靱
性を構造材料として必要な程度確保することは必ずしも
容易でない。すなわち、焼戻し温度が低すぎれば十分に
粗粒化されずに制振性が劣り、逆に高すぎて、わずかに
二相域温度となると、逆変態γが形成されて最終的にマ
ルテンサイト〜ベイナイトに変態し、該組織が靱性を劣
化させ、かつ、γから該組織への変態時に歪が導入され
るために制振性も同時に劣化する。また、焼戻し温度が
適当でも、焼戻し前の製造履歴によっては混粒組織を呈
したりすることもある。
【0014】本発明者らは、Cr量が0.01〜5.0
%程度の低Cr系制振合金の制振性と靱性とを支配して
いる組織因子の解明と、結晶粒径の制御のための手段を
検討した。その結果、制振性、靱性の支配因子に関して
は、平均結晶粒径で150〜200μm以上の粗粒にな
ると制振性は飽和するため、一定以上の粗粒化は不要で
あることと、靱性に対しては結晶粒径だけでなく、第二
相や固溶元素、特に固溶C,Nの影響が大きく、粗粒で
も十分高い靱性を確保できる可能性があることを見出
し、この新たな知見に基づいて、制振性と靱性とを両立
させるための製造方法を確立するに至った。
【0015】すなわち、制振性向上に最も有効な結晶粒
径を、ミクロ的にもマクロ的にも均一、安定的に得るた
めには、熱処理前の熱間圧延を適正化することを前提と
した上で、AC1直下から二相域温度、具体的には(AC1
変態点−50℃)〜(AC1変態点+50℃)の温度範囲
で焼戻しを施すことが好ましいことが分かった。該温度
域よりも低い温度での焼戻しでは、場合によっては適当
な結晶粒径を得られる場合もあるが、化学組成や熱間圧
延条件によっては十分な粗粒が得られなかったり、混粒
となったりして好ましくなく、安定して所望の組織を得
るためにはむしろなるべく高温で焼き戻す方がよい。た
だし、前述した通り、AC1直下から二相域温度での焼戻
しだけでは、固溶C,Nの増加、第二相(マルテンサイ
ト〜ベイナイト)の増加・生成により靭性は大幅に劣化
し、場合によっては制振性も同時に劣化する。
【0016】しかし、靭性に対しては結晶粒径だけでな
く、固溶C,N第二相(マルテンサイト〜ベイナイト)
の影響も大きいことから、これらの靱性阻害要因の悪影
響を除ければ粗粒組織でも靱性の大幅な向上を望める。
具体的には(AC1変態点−50℃)〜(AC1変態点+5
0℃)の温度範囲で焼戻しを施した後に、さらに、60
0℃〜800℃で焼き戻しを施すと、固溶C,Nは析出
物を形成して減少し、第二相も焼戻されてその悪影響を
大幅に低減することで、靱性と制振性との両立が達成さ
れる。
【0017】本発明は以上の点を基本要件として、さら
に詳細な実験により発明に至ったものであり、以下にそ
の具体的要件の規定について述べる。制振合金の特性を
発現するためには、上述の組織要件を満足するだけでな
く、当然化学組成の限定も必要であるが、まず、組織要
件を満足するための製造方法に関わる要件の限定理由か
ら述べる。本発明の製造方法に関わる最も重要な点は、
本発明を満足する化学組成を有する鋼を、1000℃〜
1250℃で加熱し、950℃以下の累積圧下率が30
〜80%で圧延仕上げ温度が700〜900℃の熱間圧
延を行った後、(AC1変態点−50℃)〜(AC1変態点
+50℃)で焼戻しまたは焼きなましを施した後、さら
に、600℃〜800℃で焼戻しまたは焼きなましを施
すことにある。
【0018】熱間圧延に先だって、γ化、溶体化のため
に鋼を1000℃〜1250℃に加熱するが、加熱温度
が1000℃未満であると、溶体化が不十分となって最
終組織が不均一となったり、粗大析出物が形成されて材
質上好ましくなく、逆に1250℃超であると、加熱γ
粒径が極端に粗大となって、後の熱間圧延によるγの再
結晶が均一に生ぜず、γの混粒組織となって最終組織の
不均一化につながるため、これも好ましくない。従っ
て、本発明においては加熱温度を1000℃〜1250
℃に限定する。
【0019】1000℃〜1250℃で加熱した後、熱
間圧延を施す。熱間圧延の目的は、形状調整の他に、圧
延後の焼戻しにおいて、結晶粒径を整粒でかつ、一定の
粗粒とするためである。すなわち、950℃以下の累積
圧下率が30〜80%で圧延仕上げ温度が700〜90
0℃の熱間圧延を施すと、後続の(AC1変態点−50
℃)〜(AC1変態点+50℃)で焼戻した後、さらに、
600℃〜800℃で焼戻しを施したときの結晶粒径が
制振性と靱性とが同時に良好となる約50〜150μm
の整粒組織とすることができる。
【0020】圧延仕上げ温度が700℃〜900℃で熱
間圧延を施すと、γ及び、または圧延中に変態するαに
加工歪が導入されて、後の焼戻しの際に粗粒化が容易に
起こり、制振性向上に好ましい。圧延仕上げ温度が90
0℃超の圧延では加工歪が十分導入されず、焼戻しでの
粒径に対して何ら効果を示さない。一方、700℃未満
で圧延を仕上げると、焼戻し段階で加工αが微細に再結
晶するため、本発明の焼戻しを施しても、最終組織のα
粒径が微細となり、靱性は良好であるものの、制振性が
劣化する。
【0021】該仕上げ温度範囲で熱間圧延を施すに際し
て、γ及び、または圧延中に変態するαに必要な加工歪
を導入するためには、一定以上の累積圧下率が必要とな
る。また、該圧延の開始温度が高すぎると、導入された
歪が回復により消滅するため、開始温度も規定する必要
がある。すなわち、950℃以下の累積圧下率を30〜
80%とする必要がある。950℃以下の圧延での累積
圧下率が30%未満では導入される加工歪が不十分なた
め、焼戻し後の粗粒化が不十分となる。一方、950℃
以下の圧延での累積圧下率が80%超では、焼戻し後の
粒径が細粒となるため、制振性に好ましくない。なお、
950℃超での圧延は材質に影響を及ぼさないため、鋼
片厚に比べて仕上げ厚が薄い場合に板厚調整のために、
950℃超での圧延を施すことには何ら問題はない。
【0022】以上の熱間圧延が終了した後の鋼板は通
常、放冷するが、本発明の化学組成範囲では、C量が非
常に低いために、焼入れ性が小さく、冷却速度による組
織変化は小さいため、加速冷却しても特に特性の変化は
ない。従って、圧延後に加速冷却してもかまわない。な
お、放冷より遅い冷却も、極端な徐冷でない限り、組
織、特性への影響は小さい。すなわち、圧延により導入
された転位を変態前に消滅させるような極端な徐冷は好
ましくない。また、600℃以下での極端な徐冷は析出
物の粗大析出を生じるため、やはり好ましくない。徐冷
によるこれら二つの悪影響を顕在化させないためには、
圧延後の冷却速度は0.5℃/min以上であることが
好ましい。
【0023】以上の熱間圧延を施した後に、2回焼戻し
を施すのが本発明の要件となっている。すなわち、先
ず、(AC1変態点−50℃)〜(AC1変態点+50℃)
で焼戻しを施した後、さらに、600℃〜800℃で焼
戻しを施す。1回目の焼戻しはα粒径の調整を目的とし
たもので、(AC1変態点−50℃)未満の低温では粗粒
化が十分でなく、(AC1変態点+50℃)超では加熱段
階でのγの比率が多いために、γ相の存在のためにαの
粗粒化が抑制されるためと、焼戻しの冷却段階で形成さ
れる制振性に好ましくない第二相の比率が過剰となるた
め、(AC1変態点−50℃)〜(AC1変態点+50℃)
の範囲に限定する。
【0024】2回目の焼戻しは粒径以外の制振性及び靭
性に影響を及ぼす組織因子を調整するための熱処理であ
って、焼戻し温度を600℃〜800℃の範囲とするこ
とで、固溶C,Nが析出物として固定され、かつ1回目
の焼戻しで形成されたマルテンサイト、ベイナイト等の
硬質第二相が焼き戻されることにより、さらには該硬質
第二相の変態時の膨張に起因して周りのαマトリックス
に導入された転位が消滅することにより靱性と制振性と
が改善される。この2回目の焼戻し温度が600℃未満
であると、焼戻し効果が不十分となって、靱性、制振性
ともに改善が不十分となる。
【0025】一方、800℃超であると、再度析出物の
固溶が生じてC,Nの固溶量が増加し、また、化学組成
によってはCやMn等の偏析部でAC1変態点を超えてし
まうために、再度硬質第二相が生成する場合も生じるた
め、靱性、制振性が劣化する場合がある。従って、本発
明では確実に1回目の焼戻しで生じた特性劣化要因の改
善が図られる焼戻し温度範囲として、2回目の焼戻し温
度を600℃〜800℃に限定する。
【0026】以上が本発明における焼戻し条件に関する
説明である。1回目、2回目の焼戻しとも、加熱・保持
後の冷却は、固溶元素の析出、転位密度の減少の観点か
らは、放冷または放冷よりも冷却速度の遅い徐冷が好ま
しいが、10℃/s以下の冷却速度であれば、加速冷却
しても特性に悪影響を及ぼさない。また、焼戻し温度で
の保持時間は、焼戻し効果を確実に発揮させるためには
1分以上とすることが好ましい。また、保持が1分以上
であれば、昇温時間、速度等の加熱条件の如何は問わな
い。
【0027】以上が、本発明における製造法に関わる要
件の説明であるが、該製造方法により効果を発揮するた
めには個々の化学成分についても下記に述べる理由によ
り、各々限定する必要がある。Cは、固溶状態の方が析
出物となっている場合よりも靭性、制振性に悪影響を及
ぼすが、制振性に対しては、影響の度合いは異なるもの
の、いずれの状態でも磁壁移動の障害として作用して好
ましくないため、その悪影響が許容できる量として上限
を0.03%とする。
【0028】Siは、脱酸剤として必要な元素で、脱酸
不足のための欠陥を生じさせないために0.01%以上
添加する必要がある。Siは脱酸剤としての効果以外
に、強度上昇や、フェライト安定化元素として粗粒化に
も有効であるが、3.5%を超えて添加しても、上記の
効果が飽和する一方で、粗大な酸化物のために制振性が
劣化するようになり、靱性の劣化も著しくなるため、上
限を3.5%とする。
【0029】Mnは強度確保のために0.3%以上添加
するが、過剰に添加すると、変態点の低下のために、粗
粒化が困難となって制振性を劣化させるため、また、溶
接性の低下も招くため、許容できる範囲を実験から求め
て上限を3.0%と定める。P,Sは不純物元素とし
て、偏析や介在物となって制振性、靱性への悪影響が著
しく大きいため、極力低減することが好ましいが、許容
できる範囲として、Pは0.02%以下、Sは0.01
0%以下とする。
【0030】Crは、フェライト安定化元素であり、結
晶粒粗大化を通して、また固溶Crにより制振性を高め
る元素であり、強磁性型の制振合金において重要な元素
である。効果を発揮するためには0.01%以上の添加
が必要である。Cr量を高めるほど制振性は向上する
が、5.0%を超える添加では制振性向上効果が飽和す
る一方で、靭性の劣化が生じるため、本発明においては
上限を5.0%とする。
【0031】Alは脱酸剤としても重要であるが、制振
性を向上させるために重要な元素でもある。効果を発揮
させるためには0.002%以上必要であるが、過剰に
添加するとAl2 3 、AlN等の介在物,析出物が粗
大化して靱性の低下を招くため、上限を3.5%に限定
する。Nは、Cと同様、固溶状態でも析出状態でも制振
性に対して悪影響を与える元素であるため、極力その低
減が好ましいが、Alが本発明の範囲で添加されていれ
ば、制振性や靭性にあまり悪影響を及ぼさないため、
0.01%までの添加は許容する。
【0032】以上が本発明の鋼材の基本成分の限定理由
であるが、本発明においては、強度・靱性の調整のため
に、必要に応じて、Cu,Ni,Mo,W,Nb,T
a,V,Ti,Zr,Bの1種または2種以上を含有す
ることができる。Cuは、母材の強度と靱性を同時に向
上できる元素であるが、効果を発揮するためには0.0
5%以上必要であり、逆に、1.5%超では熱間加工性
に問題を生じるため、0.05〜1.5%の範囲に限定
する。
【0033】Niは、Cuと同様に母材の強度と靭性を
同時に向上できる元素であり、特に靱性向上に有効な元
素であるが、効果を発揮させるためには0.05%以上
含有させる必要がある。含有量が多くなると強度、靱性
は向上するが2.0%を超えて添加しても効果が飽和す
る一方で、制振性や溶接性が劣化するため、上限を2.
0%とする。Moは、母材の強度向上に有効な元素であ
るが、明瞭な効果を生じるためには0.05%以上必要
であり、一方、2.0%を超えて添加すると、制振性と
ともに靱性及び溶接性が劣化する傾向を有するため、各
々0.05〜2.0%の範囲とする。
【0034】WもMoと同様、固溶強化及び析出強化に
より母材強度の上昇に有効であるが、効果を発揮するた
めには0.05%以上必要である。一方、2.0%を超
えて過剰に含有すると、制振性と靱性の劣化が顕著とな
るため、上限を2.0%とする。Nbは、Nb(C,
N)を形成することで強度、靱性の向上に有利な元素で
あるが、過剰の含有では析出物により制振性と靱性がと
もに劣化する。従って、制振性、靭性の劣化を招かず
に、効果を発揮できる範囲として、0.005〜0.2
0%の範囲に限定する。
【0035】Taも強度・靱性の向上に有効な元素であ
るが、効果を発揮するためには0.005%以上の含有
が必要である。一方、0.50%を超えると、析出脆化
や粗大な析出物、介在物による制振性と靱性の劣化を生
じるため、上限を0.50%とする。VもVNを形成し
て強度向上に有効な元素であるが、過剰の含有では析出
物により制振性、靱性が劣化する。従って、靱性の大き
な劣化を招かずに、効果を発揮できる範囲として、0.
005〜0.50%の範囲に限定する。
【0036】Tiは析出強化により母材強度向上に寄与
するとともに、TiNの形成により加熱オーステナイト
粒径微細化にも有効な元素であり、靱性向上にも有効な
元素であるが、効果を発揮するためには0.002%以
上の含有が必要である。一方、0.02%を超えると、
粗大な析出物、介在物を形成して制振性と靱性、さらに
延性を劣化させるため、上限を0.02%とする。Zr
も窒化物を形成する元素であり、Tiと同様の効果を有
するが、その効果を発揮するためには0.002%以上
の含有が必要である。一方、0.10%を超えると、T
iと同様、粗大な析出物、介在物を形成して制振性や靱
性を劣化させるため、0.002〜0.10%の範囲に
限定する。
【0037】Bは微量で確実にNと結びつくため、固溶
N固定による靱性、制振性向上や、焼入性向上による強
度・靱性向上に有効な元素であるが、効果を発揮するた
めには0.0003%以上必要である。一方、0.00
30%を超えて過剰に含有するとBNが粗大となり、制
振性や靱性に悪影響を及ぼす。また溶接性も劣化させる
ため、上限を0.0030%とする。
【0038】さらに、延性の向上、継手靱性の向上のた
めに、必要に応じて、Ca,Mg,REMの1種または
2種以上を含有することができる。Ca,Mg,REM
はいずれも硫化物の熱間圧延中の展伸を抑制して延性特
性向上に有効である。酸化物を微細化させて継手靭性の
向上にも有効に働く。その効果を発揮するための下限の
含有量は、各々、Caは0.001%、Mgは0.00
02%、REMは0.001%である。一方、過剰に含
有すると、硫化物や酸化物の粗大化を生じ、制振性や延
性の劣化を招くため、上限を各々、Caは0.05%、
Mgは0.01%、REMは0.05%とする。
【0039】
【実施例】以上が、本発明の要件についての説明である
が、さらに、実施例に基づいて本発明の効果を示す。表
1に示す化学組成の供試鋼を用いて、表2に示す製造条
件で鋼板を製造した。製造した鋼板の、機械的性質(引
張特性、2mmVノッチシャルピー衝撃特性、制振性)
の測定結果も合わせて表2に示す。引張特性は圧延方向
に平行な方向(L方向)の板厚中心部から丸棒引張試験
片を採取して実施した。靱性評価は2mmVノッチシャ
ルピー衝撃試験における破面遷移温度(vTrs)で評
価したが、試験片は引張特性と同様、L方向板厚中心部
から採取した。制振性は、試験片長手方向が圧延方向と
平行になるようにして採取した、元厚(20mm)×4
0mm幅×400mm長さの形状の試験片を用いて、機
械インピーダンス法により損失係数(η)を求めた。
【0040】表2のうちの試験No1〜16は、本発明
の化学組成を有する鋼A〜Lを用いて、本発明の製造方
法により製造した鋼板であり、いずれも良好な制振性と
強度、靱性とが同時に達成されていることが明らかであ
る。一方、同様に表2の結果から、本発明の範囲を逸脱
している試験No17〜25の鋼板は本発明により製造
された試験No1〜16の鋼板に比べて、制振性と靱性
のいずれか一方あるいは両方が大幅に劣っていることが
明らかである。試験No17〜21は化学組成が本発明
を満足していないために、製造方法は本発明を満足して
いるものの、十分な特性を達成できなかった例である。
【0041】すなわち、試験No17は、制振性に最も
悪影響を及ぼすCが過剰なため、2回焼戻しを施しても
制振性の改善が図られない。また、靱性も非常に劣る。
試験No18は、Siが過剰なために靱性の劣化が著し
く、制振性の向上も図られていない。試験No19は、
Cと同様に制振性を劣化させるNが過剰なため、制振性
が大きく劣化している。靱性も劣る。試験No20は、
Niが過剰に添加されているため、靱性は比較的良好で
あるものの、制振性が劣る。試験No21は、Moが過
剰なため、靱性、制振性ともに劣る。
【0042】一方、試験No22〜No25は、化学組
成は本発明を満足しているが、製造法が本発明の範囲を
逸脱しているために、制振性と靱性のいずれか一方ある
いは両方が、本発明により製造したものに比べて劣って
いる例である。すなわち、試験No22、23は、焼戻
しが1回だけであるため、Cが0.01%を超えるよう
な鋼では制振性の確保ができない例である。特に、焼戻
し温度が850℃である試験No23の場合は、該焼戻
し温度がAC1変態点を超えているため、靱性の劣化も大
きい。
【0043】試験No24は、2回焼戻しを行っている
ものの、1回目の焼戻し温度が低すぎるため、1回目の
焼戻しの目的である、結晶粒径の制御が十分行われてお
らず,制振性の改善が図られていない。試験No25は
焼戻しではなく、焼きならしを施した例で、本発明法の
ような高い制振性は達成されていない。以上の実施例か
らも、本発明によれば、CやNが比較的高めでも、制振
性と強度・靱性とを両立させることが可能なであること
が明白である。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【発明の効果】本発明の製造方法により、制振性だけで
なく、構造材料として必要な強度、靱性等の確保が可能
となり、その結果、船舶、橋梁、産業機械、建設等へ構
造材料として使用可能な制振合金の提供が可能となり、
産業上の効果は極めて大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K032 AA00 AA01 AA02 AA04 AA08 AA11 AA12 AA14 AA15 AA16 AA17 AA19 AA20 AA21 AA22 AA23 AA24 AA27 AA29 AA31 AA32 AA33 AA35 AA36 AA37 AA39 AA40 BA01 CA02 CA03 CB02 CC02 CC03 CC04 CF02 CF03

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C:0.03%以下、 Si:0.01〜3.5%、 Mn:0.3〜3.0%、 P:0.02%以下、 S:0.010%以下、 Cr:0.01〜5.0%、 Al:0.002〜3.5%、 N:0.01%以下 を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなる鋼を、1
    000〜1250℃で加熱し、950℃以下の累積圧下
    率が30〜80%で圧延仕上げ温度が700〜900℃
    の熱間圧延を行った後、(AC1変態点−50℃)〜(A
    C1変態点+50℃)で焼戻しまたは焼きなましを施した
    後、さらに、600〜800℃で焼戻しまたは焼きなま
    しを施すことを特徴とする高靱性制振合金の製造方法。
  2. 【請求項2】 鋼が、重量%で、 Cu:0.05〜1.5%、 Ni:0.05〜2.0%、 Mo:0.05〜2.0%、 W:0.05〜2.0%、 Nb:0.005〜0.2%、 Ta:0.005〜0.5%、 V:0.005〜0.5%、 Ti:0.002〜0.02%、 Zr:0.002〜0.10%、 B:0.0003〜0.003% の1種または2種以上をさらに含有することを特徴とす
    る請求項1に記載の高靱性制振合金の製造方法。
  3. 【請求項3】 鋼が、重量%で、 Ca:0.001〜0.05%、 Mg:0.0002〜0.01%、 REM:0.001〜0.05% の1種または2種以上をさらに含有することを特徴とす
    る請求項1または2に記載の高靱性制振合金の製造方
    法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100544671B1 (ko) * 2001-12-26 2006-01-23 주식회사 포스코 용융아연 취화 균열에 대한 저항성이 우수한 강재 및 그제조방법
RU2623947C1 (ru) * 2016-05-04 2017-06-29 Публичное акционерное общество "Северсталь" (ПАО "Северсталь") Демпфирующая сталь и изделие, выполненное из нее
CN111074175A (zh) * 2019-12-31 2020-04-28 江苏新华合金有限公司 一种FeAl4棒材及其生产工艺

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RU2623947C1 (ru) * 2016-05-04 2017-06-29 Публичное акционерное общество "Северсталь" (ПАО "Северсталь") Демпфирующая сталь и изделие, выполненное из нее
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