JPWO2010113570A1 - ビニル系樹脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

懸濁重合用分散安定剤存在下で、ビニル系化合物の懸濁重合を行うに際し、リフラックスコンデンサー付きの重合槽を用いて、重合転化率10%以上の時点で、該ビニル系化合物100重量部に対して、下記一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を側鎖に含有するビニルアルコール系重合体であり、ポリオキシアルキレン基変性量が0.01〜10モル%であるポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体(A)を0.001〜5重量部添加することによって、重合中に発生するドライフォームに対する消泡効果に優れ、スケール付着量が少ないビニル系樹脂を得ることができる。(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。)

Description

本発明は、生産性に優れたリフラックスコンデンサー付きの重合槽を用いたビニル系化合物の懸濁重合によるビニル系樹脂の製造方法に関する。更に詳しくは、得られる塩化ビニル系重合体粒子が均一であり、重合槽内における重合の中期〜後期に発生するドライフォームに対する消泡性に優れるビニル系樹脂の製造方法に関する。
最近では、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂の生産において、生産性を向上させるために重合1バッチに要する時間を短縮することが求められており、重合反応熱の除去速度を増加させるためにリフラックスコンデンサー付きの重合槽を用いる方法や、昇温時間を短縮するために予め加熱した水性媒体を仕込む方法(ホットチャージ法)が提案されている。しかしながら、リフラックスコンデンサー付きの重合槽を用いる場合には、ビニル系化合物(モノマー)の気体が凝縮するのに伴ってリフラックスコンデンサー付近の圧力が低下することから、ウェットフォームやドライフォームが激しくなるという問題点があった。ウェットフォームとは、主としてポリビニルアルコールに起因する水を主成分とする発泡である。一方、ドライフォームとは、ポリ塩化ビニル(PVC)や塩化ビニルモノマー(VCM)を主成分とする発泡であり、主として重合の中期〜後期に発生する。発生したドライフォームは、仕込み混合物の液層部表面を覆って浮遊する。この泡は攪拌によってもなかなか消えないため、泡状のまま重合に供される。このため、(1)泡が付着する気相部と液相部との界面部分にスケールが付着して、生産性の低下を招く、(2)スケール付着により重合槽の温度コントロールができなくなる、(3)泡状の重合体が発生して収率の低下を招く、(4)フィッシュアイが生成して製品の品質の低下を招く、(5)泡状重合体に由来する異型粒子の混入により均一な粒子が得られない、などの問題があり、これらはリフラックスコンデンサーの大型化に伴い増大する傾向がある。尚、リフラックスコンデンサーを使用しない場合には、ドライフォームは発生しないが、重合時間が長くなり生産性が低いという問題があった。
これらの対策として、特許文献1(特開平2−180908号公報)には、リフラックスコンデンサーにおける重合反応熱の除去量が全重合反応熱量の10%以下の時点で、ジメチルポリシロキサン等のシリコーンや低けん化度ポリビニルアルコール等を添加する方法が開示されている。
特許文献2(特開平3−212409号公報)には、リフラックスコンデンサーにおける重合反応熱の除去量が全重合反応熱の10%を超えない時点で、塩化ビニルモノマー100重量部に対してけん化度20〜50モル%及び重合度200〜400の水不溶性の部分けん化ポリビニルアルコール0.002〜0.007重量部及びジメチルポリシロキサン等の消泡剤0.001〜0.01重量部を添加する方法が開示されている。
特許文献3(特開昭55−137105号公報)には、重合開始前に、けん化度60〜80%のイオン変性ポリビニルアルコールを添加することが開示されている。
特許文献4(特開平7−179507号公報)には、重合転化率5〜50%の時点で、けん化度70〜85モル%及び重合度700〜3000の水溶性ポリビニルアルコールを添加し、かつ重合を58〜70℃の温度範囲で行う方法が開示されている。
また、特許文献5(特開平7−53607号公報)には、重合転化率5〜50%の時点で、けん化度70〜85モル%及び重合度700〜3000の水溶性ポリビニルアルコールを連続的又は逐次的に添加する方法が開示されている。
特許文献6(特開平7−18007号公報)には、重合転化率30〜60%の時点で、けん化度75〜85モル%及び重合度1500〜2700の水溶性ポリビニルアルコールを添加する方法が開示されている。
特許文献7(特開平8−73512号公報)には、重合率転化率20〜60%の間に、けん化度20〜55モル%、平均重合度150〜600の部分けん化ポリビニルアルコールを添加する方法が開示されている。
特許文献8(特開平10−1503号公報)には、重合転化率30〜90%の時点で、けん化度85モル%以下のビニルアルコール系重合体を添加する方法が開示されている。
特許文献9(特開平11−116630号公報)には、重合転化率30〜90%の時点で、けん化度85モル%以下のビニルアルコール系重合体を連続的又は2回以上に分けて添加する方法が開示されている。
特許文献10(特開2001−122910号公報)には、重合転化率が30%以上の時点で、けん化度が65モル%以上、重合度が700以上でかつ、0.0300≦(3−Y)/X≧0.0330を満足するポリビニルアルコール系樹脂を添加する方法が開示されている。(X:けん化度、Y:ヨード呈色度)
特許文献11(特開2001−233904号公報)には、重合転化率が3%以下の時点から、誘電率が32c.g.s.e.s.u.以下の溶媒の存在下で酢酸ビニル系重合体をけん化して得られた、けん化度が70モル%以下でかつ、η−0.00005Y+0.0085Y≦0.80を満足する、側鎖および/または末端にイオン性基を有し、更にオキシアルキレン基を含有するポリビニルアルコール系重合体を添加する方法が開示されている。(Y:けん化度、η:ブロックキャラクター)
特許文献12(特開昭59−155408号公報)には、オキシアルキレン基を含有する不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することを特徴とする変性PVAの製造方法が開示されている。該変性PVAの製造に用いる不飽和単量体中のオキシアルキレン基としては、繰り返し単位数が1〜50程度のポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等が例示されている。
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法ではドライフォーム発生が激しくなり、塩化ビニル系樹脂のかさ比重が低下しやすいという問題があった。また、特許文献3、4、5、6、7に記載の方法では、リフラックスコンデンサーを使用していないことから、重合時間が長くなり生産性が低いという問題があった。さらに、特許文献8、9、10、11に記載の方法では、リフラックスコンデンサー付きの重合槽を使用しており、生産性の高いものであるが、ドライフォームを抑制する消泡性に関してはまだまだ満足のいくものではなく、スケールが付着する等の問題が残るものであり、更なる改良が望まれている。特許文献12にはオキシアルキレン基を含有する変性PVAの製造方法が開示されているが、ドライフォームの抑制についての記載や示唆は一切ない。
特開平2−180908号公報 特開平3−212409号公報 特開昭55−137105号公報 特開平7−179507号公報 特開平7−53607号公報 特開平7−18007号公報 特開平8−73512号公報 特開平10−1503号公報 特開平11−116630号公報 特開2001−122910号公報 特開2001−233904号公報 特開昭59−155408号公報
本発明は、リフラックスコンデンサー付きの重合槽を用いたビニル系化合物の懸濁重合に際し、得られるビニル系重合体粒子が均一であり、重合の中期〜後期に発生するドライフォームに対する消泡性に優れるビニル系樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、リフラックスコンデンサー付きの重合槽を用いて、懸濁重合用分散安定剤存在下で、ビニル系化合物の懸濁重合を行うに際し、重合転化率10%以上の時点で、該ビニル系化合物100重量部に対して、下記一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を側鎖に含有するビニルアルコール系重合体であり、ポリオキシアルキレン基変性量が0.01〜10モル%であるポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体(A)を0.001〜5重量部添加することによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
Figure 2010113570
式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。ここで、繰り返し単位数mで表されるユニットをユニット1と呼び、繰り返し単位数nで表されるユニットをユニット2と呼ぶことにする。ユニット1とユニット2の配置は、ランダム状、ブロック状のどちらの形態になっても良い。
本発明のビニル系樹脂の製造方法によれば、重合の中期〜後期に発生するドライフォームに対する消泡性に優れることから、ビニル系樹脂の生産性を高めることができる。また、均一な粒子径を持つビニル系重合体粒子が得られることから、高品質のビニル系樹脂を提供できる。
以下に本発明を詳細に説明する。本発明において、リフラックスコンデンサーは、ビニル系化合物の懸濁重合により生じる重合反応熱を効率よく除去するために使用される。重合槽中の懸濁液から発生する未反応のビニル系化合物(モノマー)の気体は、リフラックスコンデンサーにより液化され、重合槽に返されることにより、重合熱が除去される。リフラックスコンデンサーの冷却水の温度は、通常10〜50℃程度である。通常は、重合槽の温度制御は、リフラックスコンデンサーによる除熱のほかに、重合槽のジャケットまたはコイルによる温度制御が併用される。リフラックスコンデンサーにおける重合反応熱の除去量については特に制限はないが、全重合反応熱量の10〜80%が好ましく、20〜60%がより好ましい。
ビニル系化合物の懸濁重合は、懸濁重合用分散安定剤の存在下で行われる。懸濁重合用分散安定剤としては特に制限はないが、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の水溶性高分子等が挙げられるが、中でも、けん化度が60〜95モル%、好ましくは68〜93モル%で、重合度が200〜3500、好ましくは500〜2500のポリビニルアルコールが好適に用いられる。
本発明において、懸濁重合用分散安定剤の使用量は、ビニル系化合物100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.02〜2重量部がより好ましく、0.02〜1重量部が更に好ましい。0.01重量部未満の場合には、ビニル系化合物を懸濁重合する際に重合安定性が低下する場合があり、5重量部を超える場合には、懸濁重合後の廃液が白濁し、化学的酸素要求量(COD)が高くなる場合がある。
本発明においては、リフラックスコンデンサー付きの重合槽を用いて、懸濁重合用分散安定剤の存在下でビニル系化合物を懸濁重合するに際し、重合転化率が10%以上の時点で、上記一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を側鎖に含有するビニルアルコール系重合体(以下、ビニルアルコール系重合体をPVAと略記することがある)であり、ポリオキシアルキレン基変性量が0.01〜10モル%であるポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体(A)(以下、ポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体をPOA変性PVAと略記することがある)が添加される。
POA変性PVA(A)はポリオキシアルキレン(POA)基変性量が0.01〜10モル%である必要がある。POA基変性量が10モル%を超えると、POA変性PVA(A)一分子あたりに含まれる疎水基の割合が高くなり、該PVAの水溶性が低下する場合がある。一方、POA基変性量が0.01モル%未満の場合、POA変性PVA(A)の水溶性は優れているものの、該PVA中に含まれるPOA基の数が少なく、POA変性に基づく物性が発現しない場合がある。
POA基変性量とは、PVAの主鎖メチレン基に対するPOA基のモル分率で表される。POA変性PVA(A)のPOA基変性量は、例えば、該PVAの前駆体であるPOA変性ポリビニルエステル、具体的な一例としては、POA変性ポリ酢酸ビニル(POA変性PVAc)のプロトンNMRから求めることができる。具体的には、n−ヘキサン/アセトンでPOA変性PVAcの再沈精製を3回以上十分に行った後、50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のPOA変性PVAcを作成する。該PVAcをCDClに溶解させ、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて室温で測定する。ビニルエステルの主鎖メチンに由来するピークα(4.7〜5.2ppm)とPOA基のオキシブチレンユニット(ユニット2)の末端メチル基に由来するピークβ(0.8〜1.0ppm)から下記式を用いてPOA基変性量を算出する。
POA基変性量(モル%)={(βのプロトン数/3n)/(αのプロトン数+(βのプロトン数/3n))}×100
nはオキシブチレンユニット(ユニット2)の数
POA変性PVA(A)の粘度平均重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、該PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められる。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
POA変性PVA(A)の重合度は200以上が好ましく、より好ましくは200〜3000であり、さらに好ましくは300〜2500である。重合度が200未満ではドライフォームの抑制効果が不足し、逆にウェットフォームが激しくなる場合があり、3000を超えると得られるビニル系樹脂の可塑剤吸収性が低下する場合がある。
本発明において、POA変性PVA(A)は単独で使用しても、あるいは特性の異なる2種以上を混合して使用してもよい。
POA変性PVA(A)のけん化度は50〜99モル%が好ましく、より好ましくは60〜98モル%であり、さらに好ましくは65〜95モル%である。けん化度が50モル%未満ではドライフォームの抑制効果が得られず発泡する場合があり、99%を超えると、得られるビニル系樹脂の可塑剤吸収性が低下する場合がある。
一般式(I)で示されるPOA基のユニット1の繰り返し単位数mは1≦m≦10である必要があり、1≦m≦5が好ましく、1≦m≦3がより好ましく、1≦m≦2が特に好ましい。また、ユニット2(ポリオキシブチレン)の繰り返し単位数nは3≦n≦20である必要があり、5≦n≦18が好ましく、8≦n≦15が特に好ましい。nが3未満の場合、POA基同士の相互作用が発現せず、POA変性PVA水溶液の粘度が低い場合があり、nが20を超える場合、POA基の疎水性が高くなり、POA変性PVA(A)の水溶性が低下する場合がある。
本発明においてPOA変性PVA(A)を製造するには、一般式(I)で示されるPOA基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合をアルコール系溶媒中または無溶媒で行い、得られたPOA変性ビニルエステル系共重合体をけん化する方法が好ましい。POA基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行う際に採用される温度は0〜200℃が好ましく、30〜140℃がより好ましい。共重合を行う温度が0℃より低い場合は、十分な重合速度が得られないため好ましくない。また、重合を行う温度が200℃より高い場合、目的とするPOA基変性量を有するPOA変性PVA(A)を得ることが困難になるため好ましくない。共重合を行う際に採用される温度を0〜200℃に制御する方法としては、例えば、重合速度を制御することで、重合により生成する発熱と反応器の表面からの放熱とのバランスをとる方法や、適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法等があげられるが、安全性の面からは後者の方法が好ましい。
POA基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行うのに用いられる重合方式としては、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合のいずれでもよい。重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法など公知の任意の方法を用いることができる。その中でも、無溶媒またはアルコール系溶媒中で重合を行う塊状重合法や溶液重合法が好適に採用され、高重合度の共重合物の製造を目的とする場合は乳化重合法が採用される。アルコール系溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。またこれらの溶媒は2種類またはそれ以上の種類を混合して用いることができる。
共重合に使用される開始剤としては、重合方法に応じて従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などが適宜選ばれる。アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などが挙げられ、過酸化物系開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネートなどのパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどが挙げられる。さらには、上記開始剤に過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを組み合わせて開始剤とすることもできる。また、レドックス系開始剤としては、上記の過酸化物と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
また、POA基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を高い温度で行った場合、ビニルエステル系単量体の分解に起因するPVAの着色等が見られることがあるため、その場合には着色防止の目的で重合系に酒石酸のような酸化防止剤を1〜100ppm(ビニルエステル系単量体に対して)程度添加することはなんら差し支えない。
ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられるが、中でも酢酸ビニルが最も好ましい。
POA基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際して、本発明の主旨を損なわない範囲で他の単量体を共重合しても差し支えない。使用しうる単量体として、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレンなどのα−オレフィン;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸I−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸I−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸I−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸I−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、I−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、I−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。
本発明において用いられるPOA変性PVA(A)は、末端にイオン性官能基を有していてもよい。これらのイオン性官能基には、カルボキシル基、スルホン酸基などが挙げられ、その中でもカルボキシル基が好ましい。これらのイオン性基にはその塩も含まれ、POA変性PVA(A)は水分散性であることが好ましいという観点から、アルカリ金属塩が好ましい。POA変性PVA(A)の末端部にイオン性官能基を導入する手法としては、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩などのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合させ、得られる重合体をけん化する等の方法を用いることができる。
また、POA基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際し、得られる共重合体の重合度を調節することなどを目的として、本発明の主旨を損なわない範囲で連鎖移動剤の存在下で共重合を行っても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、などのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;2−ヒドロキシエタンチオールなどのメルカプタン類;トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられ、中でもアルデヒド類およびケトン類が好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数および目的とするビニルエステル系重合体の重合度に応じて決定されるが、一般にビニルエステル系単量体に対して0.1〜10重量%が望ましい。
POA基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体とを共重合して得られたPOA変性PVAcのけん化反応には、従来公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基性触媒またはp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いた加アルコール分解反応ないし加水分解反応を適用することができる。この反応に使用しうる溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類:ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でもメタノールまたはメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒に用いてけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。
一般式(I)で示されるPOA基を有する不飽和単量体としては、下記の一般式(II)で示される不飽和単量体が挙げられる。
Figure 2010113570
R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基、R3は水素原子または−COOMである。ここでMは水素原子、アルカリ金属またはアンモニウム基を表す。R4は水素原子、メチル基または−CH−COOMであり、ここでMは前記定義のとおりである。Xは−O−、−CH−O−、−CO−、−CO−O−または−CO−NR5−であり、ここでR5は水素原子または炭素数1〜4の飽和アルキル基を表す。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。
一般式(II)で示される不飽和単量体のR2としては水素原子、メチル基またはブチル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。さらに、一般式(II)で示される不飽和単量体のR1が水素であり、R2が水素原子またはメチル基であり、R3が水素原子であることが特に好ましい。
例えば、一般式(II)のR1が水素原子、R2が水素原子、R3が水素原子の場合、一般式(II)で示される不飽和単量体として具体的には、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノアクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノアクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノビニルエーテルなどが挙げられる。なかでも、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノアクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノビニルエーテルが好適に用いられ、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノビニルエーテルが特に好適に用いられる。
一般式(II)のR2が炭素数1〜8のアルキル基の場合、一般式(II)で示される不飽和単量体として具体的には、一般式(II)のR1が水素原子、R2が水素原子、R3が水素原子の場合の例として上記に例示した不飽和単量体の末端のOH基が炭素数1〜8のアルコキシ基に置換されたものが挙げられる。なかでも、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノビニルエーテルの末端のOH基がメトキシ基に置換された不飽和単量体が好適に用いられ、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミドの末端のOH基がメトキシ基に置換された不飽和単量体が特に好適に用いられる。
ビニル系化合物の懸濁重合において、POA変性PVA(A)の添加時期は、ビニル系化合物の重合転化率が10%以上の時点であり、15%〜90%が好ましく、18%〜87%がより好ましく、20%〜85%が特に好ましい。また、重合槽の内圧が低下し始める直前あるいは重合槽の内圧が低下し始めた直後に、ドライフォームによる発泡が生じる場合には、この時点で添加するのも好ましい。POA変性PVA(A)の添加方法には特に制限は無いが、水溶液、水性分散液、メタノールなどの有機溶剤溶液、メタノール・水混合溶液などの形態で添加する方法が挙げられる。POA変性PVA(A)の溶液の濃度は、通常0.01〜30重量%である。POA変性PVA(A)の溶液の温度は、特に制限はなく、室温または重合温度まで昇温したものでも良い。POA変性PVA(A)の添加量は、懸濁重合に供されるビニル系化合物100重量部に対して0.001〜5重量部であり、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましい。POA変性PVA(A)の添加量が0.001重量部未満の場合は、ドライフォームの抑制効果が十分でなく、POA変性PVA(A)の添加量が5重量部を超えると、得られる塩化ビニル樹脂のかさ比重が高くなりすぎるという点で好ましくない。
懸濁重合に供するビニル系化合物としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、これらのエステルおよび塩;マレイン酸、フマル酸、これらのエステルおよび無水物;スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。これらのうち、特に好適には塩化ビニルである。塩化ビニルの懸濁重合は単独重合であっても、共重合であってもよい。塩化ビニルと共重合することができる単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類;アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。
ビニル系化合物の懸濁重合に使用することができる重合開始剤としては、従来より塩化ビニル単量体等の重合に使用されているいずれの油溶性触媒または水溶性触媒を用いることもできる。油溶性触媒としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、α−クミルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。水溶性触媒としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの油溶性触媒あるいは水溶性触媒は単独で、または2種類以上を組合せて用いることもできる。
ビニル系化合物の懸濁重合に際し、必要に応じて、重合反応系にその他の各種添加剤を加えることができる。添加剤としては、例えば、アルデヒド類、ハロゲン化炭化水素類、メルカプタン類などの重合調節剤、フェノール化合物、イオウ化合物、N−オキサイド化合物などの重合禁止剤などが挙げられる。また、pH調整剤、架橋剤などを加えることも任意であり、上記の添加剤を複数併用しても差し支えない。
ビニル系化合物の懸濁重合に際し、けん化度60モル%以下の部分けん化ビニルアルコール系重合体を分散安定助剤として用いてもよい。その添加量は懸濁重合用分散安定剤100重量部に対して、0.1〜120重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜110重量部、特に好ましくは1〜100重量部である。分散安定助剤として用いる部分けん化ビニルアルコール系重合体としては、無変性の部分けん化ビニルアルコール系重合体のほかに、側鎖又は末端にカルボキシル基等のイオン性基やオキシアルキレン基を10モル%以下含有する部分けん化ビニルアルコール系重合体等が挙げられる。
また、本発明において、ビニル系化合物の懸濁重合に際し、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロックコポリマーなどの油溶性乳化剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤などを用いても良い。その添加量については特に制限は無いが、ビニル系化合物100重量部あたり0.01〜1.0重量部が好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下の実施例および比較例において、特に断りがない場合、部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
塩化ビニル重合体粒子およびドライフォーム発生状態の評価は以下のようにして行った。
(塩化ビニル重合体粒子の評価)
塩化ビニル重合体粒子について、粒度分布およびスケール付着量を以下の方法にしたがって測定した。
(1)粒度分布
JIS標準篩い42メッシュオンおよび200メッシュパスの含有量を重量%で表示した。含有量が少ないほど粗大粒子あるいは微粉が少なくて均一な粒子が得られていることを示している。
A : 0.5%未満
B : 0.5%以上1%未満
C : 1%以上
(2)かさ比重
JIS K6721に準拠して測定した。
(ドライフォーム発生状態の評価)
重合槽内のドライフォーム発生状態は下記の方法で評価した。
(1)泡立ち
重合終了後、未反応の塩化ビニルモノマーをパージする前に、オートクレーブ側面の覗き窓より、重合槽内の泡立ち状態を観察した。評価基準は下記の通りである。
A : 泡立ちがほとんどない。
B : 泡立ちがある。
C : 泡立ちが著しい。
(2)スケール付着量
重合体スラリーを重合槽から取り出した後の重合槽の内壁におけるスケールの付着状態を目視観察することで評価した。評価基準は下記の通りである。
A : スケールの付着がほとんどない。
B : スケールの付着がある。
C : スケール付着が著しい。
実施例1
(POA変性PVA(A)の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口および開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル400g、メタノール600g、POA基含有モノマー(単量体A)3.3gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてPOA基含有モノマー(単量体A)をメタノールに溶解して濃度20%としたコモノマー溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルと単量体Aの比率)が一定となるようにしながら、60℃で3時間重合した後冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えたコモノマー溶液の総量は75mlであった。また重合停止時の固形分濃度は24.4%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、POA変性PVAcのメタノール溶液(濃度35%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したPOA変性PVAcのメタノール溶液453.4g(溶液中のPOA変性PVAc100.0g)に、2.7gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液のPOA変性PVAc濃度20%、POA変性PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.0055)。アルカリ溶液を添加後約20分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置してPOA変性PVA(A)を得た。POA変性PVA(A)の重合度は520、けん化度は70モル%、POA変性量は0.4モル%であった。
(塩化ビニルの懸濁重合)
重合度2000、けん化度80モル%のPVAを0.1部、脱イオン水(90L)に溶解させ、分散安定剤を調製し、容量200Lのリフラックスコンデンサー付重合槽に仕込んだ。次いで、t−ブチルパーオキシネオペプタノエート0.1部を仕込み、重合槽内の圧力が0.0067MPaとなるまで脱気して酸素を除いた後、塩化ビニル100部を仕込み、攪拌しながら、ジャケットに熱水を通して63℃まで昇温し、重合を開始した。重合開始時の重合槽内の圧力は、1.02MPaであった。引き続き重合を継続し、重合転化率が70%になった時点で、上記で合成したPOA変性PVA(A)の水溶液10L(PVA(A)として0.02部)を添加した。重合槽内の圧力が0.5MPaとなった時点で重合を停止し、未反応モノマーを回収し、重合体スラリーを取り出し、65℃にて一晩乾燥を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。得られた塩化ビニル重合体粒子およびドライフォームの発生状態について、評価結果を表1に示す。
実施例2〜14
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、重合時に使用するPOAコモノマーの種類や添加量等の重合条件、けん化時におけるPVAcの濃度、酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を変更した以外は、実施例1と同様にして合成されたPOA変性PVA(A)を用い、POA変性PVA(A)を表1に示す重合転化率の時点で添加した以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。用いたコモノマーの構造を表2に、得られたPOA変性PVA(A)と塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表1に示す。
比較例1
POA変性PVA(A)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。評価結果を表1に示す。粗大粒子が多くて均一な重合体粒子が得られず、かつ重合後の泡立ちが多く、重合槽内壁面へのスケール付着が多かった。
比較例2
POA変性PVA(A)の代わりに、POA変性量が0.005モル%であるものを合成して使用したこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。評価結果を表1に示す。粗大粒子があり均一な重合体粒子が得られず、かつ重合後の泡立ちがあり、重合槽内壁面へのスケール付着があった。
比較例3
POA変性PVA(A)の代わりに、POA変性量が11モル%であるものを合成して使用したこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行ったが、塩化ビニルがブロック化して重合を行うことができなかったために、塩化ビニル重合体粒子を得ることはできなかった
比較例4
実施例1と同様にして合成されたPOA変性PVA(A)を重合転化率が5%の時点で添加した以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。評価結果を表1に示す。粗大粒子があり均一な重合体粒子が得られず、かつ重合後の泡立ちが多く、重合槽内壁面へのスケール付着が多かった。
比較例5、6
POA変性PVA(A)として、POAコモノマーの種類を表2に示したものを使用した以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。評価結果を表1に示す。粗大粒子があり均一な重合体粒子が得られず、かつ重合後の泡立ちがあり、重合槽内壁面へのスケール付着があった。
Figure 2010113570
Figure 2010113570
実施例において示されているように、本発明の製造方法でビニル系樹脂を製造した場合、重合の中期〜後期に発生するドライフォームに対する消泡性に優れることから、ビニル系樹脂の生産性を高めることができ、また均一な粒子径を持つビニル系重合体粒子が得られることから、高品質のビニル系樹脂を提供できるなど、その工業的な評価はきわめて高い。

Claims (1)

  1. 懸濁重合用分散安定剤の存在下で、ビニル系化合物の懸濁重合を行うに際し、リフラックスコンデンサー付きの重合槽を用いて、重合転化率10%以上の時点で、該ビニル系化合物100重量部に対して、下記一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を側鎖に含有するビニルアルコール系重合体であり、ポリオキシアルキレン基変性量が0.01〜10モル%であるポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体(A)を0.001〜5重量部添加することを特徴とするビニル系樹脂の製造方法。
    Figure 2010113570
    (式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。)
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