JPWO2010058717A1 - 非水電解液及びそれを用いたリチウム電池 - Google Patents
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Abstract
Description
リチウム二次電池は、主にリチウムを吸蔵放出可能な材料を含む正極及び負極、リチウム塩を含む非水電解液から構成されている。その非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が使用されている。
リチウム二次電池の負極としては、リチウム金属、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金等)、炭素材料が知られている。特に、炭素材料のうち、例えばコークス、黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛)等のリチウムを吸蔵・放出することが可能な炭素材料を用いた非水系電解液二次電池が広く実用化されている。
上記の負極材料はリチウム金属と同等の低い電位でリチウムと電子を貯蔵及び放出するために、特に高温下において、多くの溶媒が還元分解を受ける可能性を有しており、負極材料の種類に拠らず負極上で電解液中の溶媒が一部還元分解してしまい、分解物が負極の表面に沈着して抵抗を増大させたり溶媒の分解によりガスが発生して電池を膨れさせたりすることによりリチウムイオンの移動が妨げられ、高温サイクル特性等の電池特性を低下させるという問題があった。
特許文献2には、非水電解液中に2,4−ジフルオロフェノール等の満充電時の正極電位よりも貴な電池電位に可逆性酸化還元電位を有する有機化合物が添加された非水電解液電池が開示されている。この電池では、過充電状態になった場合でも、電極上での過充電反応が阻害され、過充電電流の遮断と同時に電池温度の上昇が停止し、電池が発熱しないと記載されている。
更に、近年、電気自動車用又はハイブリッド電気自動車用の新しい電源として、出力密度の点から、活性炭等を電極に用いる電気二重層キャパシタ、エネルギー密度と出力密度の両立の観点から、リチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタの蓄電原理を組み合わせた、ハイブリッドキャパシタ(リチウムの吸蔵・放出による容量と電気二重層容量の両方を活用する非対称型キャパシタ)と呼ばれる蓄電装置の開発が行われ、高温でのサイクル特性等の向上が求められている。
そこで、本発明者は、上記問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、水素原子の3〜5個がフッ素で置換されたフェノールを少量添加することにより、高温での充電保存時のガス発生が抑制され、高温サイクル特性を改善できることを見出した。更に、これらの効果がそれぞれの化合物のpKa値と相関があることが分かり、特に、pKa値が5〜7であると優れた特性を示すことを見出し、本発明を完成した。
(1)非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液であって、下記一般式(I)で表されるフッ素含有フェノールを非水電解液中に0.01〜3質量%含有することを特徴とする非水電解液。
本発明の非水電解液は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液であって、前記一般式(I)で表されるフッ素含有フェノールを非水電解液中に0.01〜3質量%含有することを特徴とする。
本発明の非水電解液に含まれるフッ素含有フェノールは、下記一般式(I)で表される。
即ち、一般式(I)で表されるフッ素含有フェノールは、トリフルオロフェノール、テトラフルオロフェノール、及びペンタフルオロフェノールから選ばれる1種以上であり、その具体例としては、2,3,4−トリフルオロフェノール、2,3,5−トリフルオロフェノール、2,3,6−トリフルオロフェノール、2,4,5−トリフルオロフェノール、2,4,6−トリフルオロフェノール、3,4,5−トリフルオロフェノール、2,3,5,6−テトラフルオロフェノール、ペンタフルオロフェノール等が挙げられる。
これらの中でも、一般式(I)において、水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位にフッ素原子を有するものが好ましく、パラ位にフッ素原子を有するものがより好ましい。
一般式(I)で表されるフッ素含有フェノールは、テトラフルオロフェノール及びペンタフルオロフェノールがより好ましく、2,3,5,6−テトラフルオロフェノール、ペンタフルオロフェノールが更に好ましく、ペンタフルオロフェノールが特に好ましい。
高温下、充電状態で電池が保存される場合、正極中に僅かに存在するLiOH等の塩基性の不純物が触媒となり、環状カーボネートや鎖状カーボネート等の非水溶媒が分解し、CO2ガス等を発生することが判明した。表1に示すとおり、一般式(I)で表されるフッ素含有フェノールに属するペンタフルオロフェノール等は、特定の範囲のpKa値を有する酸性化合物であり、フッ素含有フェノールを少量添加することにより、正極表面に存在する不純物のLiOHと反応して安定な皮膜を形成すると考えられる。このため、高温での充電保存時のガス発生を抑制することができると考えられる。
また、このフッ素含有フェノールは、強酸ではないので正極活物質中の金属元素が溶出するといった影響がほとんどないため、正極活物質が劣化しない。更にこのフッ素含有フェノールは、負極上で分解することによりフッ素含有の被膜を形成することができ、負極上での非水溶媒の分解も抑制できるため、優れた高温サイクル特性を示すと考えられる。
前記フッ素含有フェノールのpKa値は、高温サイクル特性や充電保存時のガス発生抑制の観点から、好ましくは5〜7、より好ましくは5〜6.5、更に好ましくは5.3〜5.7である。
本発明の非水電解液において、非水電解液中に含有される一般式(I)で表されるフッ素含有フェノールの含有量は、3質量%を超えると、電極上に過度に被膜が形成されるため高温サイクル特性等の電池特性が低下する場合があり、また、0.01質量%に満たないと正極や負極を保護する効果が十分でないために、高温サイクル特性や充電保存時のガス発生抑制効果が得られなくなる場合がある。したがって、該化合物の含有量は、非水電解液中に0.01質量%以上であり、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。また、その上限は3質量%以下であり、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。該フッ素含有フェノールを2種以上併用する場合は、その総量が上記の範囲であることが好ましい。
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類、アミド類、リン酸エステル類、スルホン類、ラクトン類、ニトリル類、S=O結合含有化合物、芳香族化合物等が挙げられる。
環状カーボネート類としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、トランス又はシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)等が挙げられる。これらの中でも、高温サイクル特性や充電保存時のガス発生抑制の観点から、EC、PC、及び炭素−炭素二重結合又はフッ素を含有する環状カーボネートから選ばれる1種以上が好ましく、EC及び/又はPCと、炭素−炭素二重結合を含む環状カーボネートとフッ素を含有する環状カーボネートを両方含むことが特に好ましい。炭素−炭素二重結合を含有する環状カーボネートとしては、VC、VECが好ましく、フッ素を含有する環状カーボネートとしては、FEC、DFECが好ましい。
環状カーボネートの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒の総容量の10〜40容量%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が10容量%未満であると電解液の電気伝導度が低下し、電池の内部抵抗が増加する場合があり、40容量%を超えると高温サイクル特性や充電保存時のガス発生抑制効果が低下する場合がある。
これらの鎖状カーボネート類は1種類で使用してもよいが、2種類以上を組み合わせて使用すると、上記効果が更に向上するので好ましい。
鎖状カーボネートの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒の総容量の60〜90容量%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が60容量%未満であると電解液の粘度が上昇し、90容量%を超えると電解液の電気伝導度が低下し、高温サイクル特性等の電池特性が低下する場合があるので上記範囲であることが好ましい。
環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の割合は、高温サイクル特性や充電保存時のガス発生抑制効果の向上の観点から、環状カーボネート類:鎖状カーボネート類(容量比)が10:90〜40:60が好ましく、15:85〜35:65がより好ましく、20:80〜30:70が特に好ましい。
アミド類としては、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、リン酸エステル類としては、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル等が挙げられ、スルホン類としては、スルホラン等が挙げられ、ラクトン類としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−アンゲリカラクトン等が挙げられ、ニトリル類としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル等が挙げられる。
S=O結合含有化合物としては、1,3−プロパンスルトン、1,3−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン等のスルトン化合物、エチレンサルファイト、ヘキサヒドロベンゾ[1,3,2]ジオキサチオラン−2−オキシド(1,2−シクロヘキサンジオールサイクリックサルファイトともいう)、5−ビニル−ヘキサヒドロ1,3,2−ベンゾジオキサチオール−2−オキシド等の環状サルファイト化合物、1,4−ブタンジオールジメタンスルホネート、1,3−ブタンジオールジメタンスルホネート等のジスルホン酸ジエステル化合物、ジビニルスルホン、1,2−ビス(ビニルスルホニル)エタン、ビス(2−ビニルスルホニルエチル)エーテル等のビニルスルホン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、少なくとも環状カーボネート類と鎖状カーボネート類を組合せた非水溶媒を用いると、高温サイクル特性や充電保存時のガス発生抑制効果を向上するために好ましい。より具体的には、EC、PC、VC、VEC、FECから選ばれる1種以上の環状カーボネート類と、DMC、MEC、DECから選ばれる1種以上の鎖状カーボネート類との組合せが挙げられる。
本発明に使用される電解質塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4等のリチウム塩、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiCF3SO3、LiC(SO2CF3)3、LiPF4(CF3)2、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiPF3(iso−C3F7)3、LiPF5(iso−C3F7)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF2)2(SO2)2NLi、(CF2)3(SO2)2NLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を含有するリチウム塩、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムやジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム等のオキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、特に好ましい電解質塩は、LiPF6、LiBF4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2であり、最も好ましい電解質塩はLiPF6、LiBF4及びLiN(SO2CF3)2である。これらの電解質塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(LiPF6:LiBF4、LiN(SO2CF3)2、及びLiN(SO2C2F5)2から選ばれる電解質塩)のモル比が70:30よりもLiPF6の割合が低い場合、及び99:1よりもLiPF6の割合が高い場合には高温サイクル特性や充電保存時のガス発生抑制効果が低下する場合がある。したがって、(LiPF6:LiBF4、LiN(SO2CF3)2、及びLiN(SO2C2F5)2から選ばれる電解質塩)のモル比は、70:30〜99:1の範囲が好ましく、80:20〜98:2の範囲がより好ましい。上記範囲の組合せで使用することにより、高温サイクル特性や充電保存時のガス発生抑制効果を更に向上させることができる。
これら全電解質塩が溶解されて使用される濃度は、前記の非水溶媒に対して、通常0.3M以上が好ましく、0.5M以上がより好ましく、0.7M以上が最も好ましい。またその上限は、2.5M以下が好ましく、2.0M以下がより好ましく、1.5M以下が更に好ましく、1.2M以下が最も好ましい。
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩を加え、更に前記一般式(I)で表されるフッ素含有フェノールを該非水電解液中に0.01〜3質量%含有させるように添加して調製することができる。
この際、用いる非水溶媒及び電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
本発明の非水電解液には、例えば、空気や二酸化炭素を含ませることにより、高温サイクル特性や充電保存時のガス発生抑制効果を更に向上させることができる。
本発明においては、高温における充放電特性向上の観点から、非水電解液中に二酸化炭素を溶解させた電解液を用いることが特に好ましい。二酸化炭素の溶解量は、非水電解液の質量に対して0.001質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、非水電解液に二酸化炭素を飽和するまで溶解させることが最も好ましい。
本発明のリチウム電池は、リチウム一次電池及びリチウム二次電池を総称するものであって、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液であって、前記一般式(I)で表されるフッ素含有フェノールを非水電解液中に0.01〜3質量%含有することを特徴とする。該非水電解液中の該フッ素含有フェノールの含有量は、前記のとおり、好ましく0.03〜2質量%、より好ましくは0.05〜1.5質量%、更に好ましくは0.1〜0.5質量%である。
本発明のリチウム電池においては、非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、リチウム二次電池用正極活物質として、リチウム複合金属酸化物及びリチウム含有オリビン型リン酸塩から選ばれる1種以上を用いることができる。これらの正極活物質は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
リチウム複合金属酸化物としては、コバルト、マンガン、及びニッケルから選ばれる1種以上を含有するものが好ましく、その具体例としては、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiCo1-xNixO2(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi1/2Mn3/2O4、LiCo0.98Mg0.02O2等が挙げられる。また、LiCoO2とLiMn2O4、LiCoO2とLiNiO2、LiMn2O4とLiNiO2のように併用してもよい。
これらの中では、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2のような満充電状態における正極の充電電位がLi基準で4.3V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物が好ましく、LiCo1-xMxO2(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cuから選ばれる1種以上の元素を示す。0.001≦x≦0.05)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi1/2Mn3/2O4のような4.4V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物がより好ましい。高充電電圧のリチウム複合金属酸化物を使用すると、充電時における非水電解液との反応により、高温サイクル特性や充電保存時のガス発生抑制効果が低下しやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電池特性の低下を抑制することができる。
これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩の一部は他元素で置換してもよく、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの一部をCo、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W及びZr等から選ばれる1種以上の元素で置換したり、又はこれらの他元素を含有する化合物や炭素材料で被覆することもできる。これらの中では、LiFePO4又はLiMnPO4が好ましい。
また、リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
また、正極中に元素としてNiが含まれる場合、正極活物質中のLiOH等の不純物が増える傾向があるため、一段と高温サイクル特性や充電保存時のガス発生抑制効果が得られやすいので好ましく、正極活物質中のNiの原子濃度が5〜25atomic%である場合がより好ましく、8〜21atomic%である場合が更に好ましい。
正極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.5g/cm3以上であり、電池の容量を更に高めるため、好ましくは2g/cm3以上であり、より好ましくは3g/cm3以上であり、更に好ましくは3.6g/cm3以上である。またその上限は、4.0g/cm3を超えると実質上作製が困難となる場合があるため、4.0g/cm3以下が好ましい。
リチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料としては、易黒鉛化炭素、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛等が挙げられる。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵及び放出能力において、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料が好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm(ナノメータ)以下、特に0.335〜0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが特に好ましい。
負極シートの成形において、例えば、複数の扁平状の黒鉛質微粒子が互いに非平行に集合又は結合した塊状構造を有する人造黒鉛粒子(i)や、鱗片状天然黒鉛粒子に圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し与え、球形化処理を施した黒鉛粒子(ii)を用いることにより、負極の集電体を除く部分の密度が1.5g/cm3になるように加圧成形し、得られた負極シートのX線回折測定による黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕が0.01以上となると、通常、充電時において非水電解液と反応しやすく、高温サイクル特性等の電池特性が低下する場合がある。しかしながら、ここで本発明の電解液を使用すると、上記の効果が一段と向上するので好ましく、該〔I(110)/I(004)〕が0.05以上となることがより好ましく、0.1以上となることが更に好ましい。また、過度に処理し過ぎて結晶性が低下し電池の放電容量が低下する場合があるので、該〔I(110)/I(004)〕の上限は0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。
本発明に係るリチウム二次電池では非水電解液との反応を抑制することができる。また、高結晶性の炭素材料が低結晶性の炭素材料によって被膜されていると非水電解液の分解が一段と抑制されるので好ましい。
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
負極活物質に黒鉛を用いた場合、負極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.4g/cm3以上であり、電池の容量を更に高めるため、好ましくは、1.6g/cm3以上であり、特に好ましくは1.7g/cm3以上である。その上限は、2.0g/cm3を超えると実質上作製が困難となる場合があるため、2.0g/cm3以下が好ましい。
電池用セパレータは特に制限されず、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層又は積層の多孔性フィルム、織布、不織布等を使用できる。
本発明におけるリチウム二次電池は、充電終止電圧が4.2V以上、特に4.3V以上の場合にも高温サイクル特性や充電保存時のガス発生抑制効果に優れ、更に、4.4V以上においてもそれらの特性は良好である。放電終止電圧は、通常2.8V以上、更には2.5V以上とすることができるが、本発明におけるリチウム二次電池は、2.0V以上とすることができる。電流値については特に限定されないが、通常0.1〜3Cの範囲で使用される。また、本発明におけるリチウム電池は、−40〜100℃、好ましくは0〜80℃で充放電することができる。
実施例1〜7、及び比較例1〜3
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2(正極活物質、正極活物質10gを蒸留水100mlに分散させた時の上澄み液のpHは11.1)94質量%、アセチレンブラック(導電剤);3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。
この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の両面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cm3であった。
また、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質)95質量%を、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の両面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.7g/cm3であった。
次に、正極シート、微孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シート及びセパレータの順に積層し、これを渦巻き状に巻回した。この巻回体を負極端子を兼ねるニッケルメッキを施した鉄製の円筒型電池缶に収納した。さらに、表2に記載の化合物を所定量添加して調製した非水電解液を注入し、正極端子を有する電池蓋をガスケットを介してかしめて、18650型円筒電池を作製した。なお正極端子は正極シートとアルミニウムのリードタブを用いて、負極缶は負極シートとニッケルのリードタブを用いて予め電池内部で接続した。
〔高温サイクル特性の評価〕
上記の方法で作製した円筒電池を用いて60℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.2Vまで3時間充電し、次に1Cの定電流下、終止電圧2.75Vまで放電することを1サイクルとし、これを100サイクルに達するまで繰り返した。そして、以下の式により100サイクル後の放電容量維持率を求めた。
放電容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
〔ガス発生量の評価〕
上記と同じ組成の電解液を使用した別の円筒型電池を用いて25℃の恒温槽中、0.2Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.2Vまで7時間充電し、85℃の恒温槽に入れ、開回路の状態で7日間保存を行った後、ガス発生量をアルキメデス法により測定した。ガス発生量は、比較例1のガス発生量を100%としたときの相対値として求めた。
実施例2及び比較例1で用いた人造黒鉛(負極活物質)に変えて、Si(負極活物質)を用いて、負極シートを作製した。Si 80質量%、アセチレンブラック(導電剤)15質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。
この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の負極シートを作製したこと以外は、実施例2及び比較例1と同様にして円筒電池を作製し、電池の評価を行った。結果を表3に示す。
実施例2及び比較例1で用いたLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2(正極活物質)に変えて、LiFePO4(正極活物質)を用いて、正極シートを作製した。LiFePO4 90質量%、アセチレンブラック(導電剤)5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。
この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製したこと、サイクル特性の評価及びガス発生量の評価の際の充電終止電圧を3.6V、放電終止電圧を2.0Vとしたこと以外は、実施例2及び比較例1と同様にして円筒電池を作製し、電池の評価を行った。結果を表4に示す。
実施例8と比較例4の対比から、負極にSiを用いた場合にも同様な効果がみられること、また、実施例9と比較例5の対比から、正極にリチウム含有オリビン型リン酸鉄塩を用いた場合にも同様な効果がみられることから、本発明の効果は、特定の正極や負極に依存した効果でないことが明らかである。
更に、本発明の非水電解液は、リチウム一次電池の高温保存特性を改善する効果も有する。
Claims (13)
- 一般式(I)で表されるフッ素含有フェノールが、オルト位及び/又はパラ位にフッ素原子を有するものである請求項1に記載の非水電解液。
- 一般式(I)で表されるフッ素含有フェノールが、テトラフルオロフェノール及び/又はペンタフルオロフェノールである請求項1又は2に記載の非水電解液。
- 非水溶媒が環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含む請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液。
- 鎖状カーボネートが対称鎖状カーボネート及び非対称鎖状カーボネートを含む請求項4に記載の非水電解液。
- 鎖状カーボネートがジエチルカーボネートを含む請求項4に記載の非水電解液。
- 環状カーボネートが、エチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートと、二重結合又はフッ素を含有する環状カーボネートとを含むものである請求項4に記載の非水電解液。
- 鎖状カーボネートが、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、及びメチルブチルカーボネートから選ばれる1種以上の非対称鎖状カーボネートである請求項4に記載の非水電解液。
- 電解質塩が、LiPF6、LiBF4、LiN(SO2CF3)2、及びLiN(SO2C2F5)2から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載の非水電解液。
- 電解質塩がLiPF6を含み、かつ(LiPF6:LiBF4、LiN(SO2CF3)2、及びLiN(SO2C2F5)2から選ばれる電解質塩)のモル比が、70:30〜99:1の範囲である請求項1〜9のいずれかに記載の非水電解液。
- 正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液からなるリチウム電池であって、前記一般式(I)で表されるフッ素含有フェノールを非水電解液中に0.01〜3質量%含有することを特徴とするリチウム電池。
- 正極が、正極活物質としてリチウム複合金属酸化物及びリチウム含有オリビン型リン酸塩から選ばれる1種以上を含む請求項11に記載のリチウム電池。
- 負極が、負極活物質としてリチウム金属、リチウム合金、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な高結晶性炭素材料、並びにリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物から選ばれる1種以上を含む請求項11に記載のリチウム二次電池。
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