JPWO2010050218A1 - 膜電極接合体及び燃料電池 - Google Patents

膜電極接合体及び燃料電池

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Abstract

本発明の膜電極接合体は、高分子電解質膜と、高分子電解質膜を挟んで互いに対向する一対の触媒層と、高分子電解質膜及び一対の触媒層を挟んで互いに対向するアノードガス拡散層及びカソードガス拡散層とを有し、アノードガス拡散層の多孔度は60%以上であり、カソードガス拡散層の多孔度はアノードガス拡散層の多孔度より大きく、アノードガス拡散層は導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されている。これにより、発電性能を一層向上させることができる。

Description

本発明は、例えば、自動車などの移動体、分散発電システム、家庭用のコージェネレーションシステムなどの駆動源として使用される燃料電池、及び当該燃料電池が備える膜電極接合体に関する。
燃料電池(例えば、高分子電解質形燃料電池)は、水素を含有する燃料ガスと空気など酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる装置である。
燃料電池は、一般的には複数のセルを積層し、それらをボルトなどの締結部材で加圧締結することにより構成されている。1つのセルは、膜電極接合体(以下、MEA:Membrane-Electrode-Assemblyという)を一対の板状の導電性のセパレータで挟んで構成されている。
MEAは、高分子電解質膜と、当該高分子電解質膜の両面に配置された一対の電極層によって構成されている。一対の電極層の一方はアノード電極(燃料極ともいう)であり、他方はカソード電極(空気極ともいう)である。一対の電極層は、金属触媒をカーボン粉末に坦持したカーボン粉末を主成分とする触媒層と、当該触媒層の上に配置される多孔質で導電性を有するガス拡散層とで構成されている。ガス拡散層は、一般に、炭素繊維からなる基材の表面に、カーボンと撥水材からなるコーティング層を設けて構成されている。(例えば、特許文献1:特開2003−197202号公報参照)。前記アノード電極に燃料ガスが接触するとともに前記カソード電極に酸化剤ガスが接触することにより、電気化学反応が発生し、電力と熱とが発生する。
近年、燃料電池の発電性能の向上のために、発電温度を従来よりも高温化して、熱回収温度を高くする検討が行われている。また、燃料電池システムの簡素化のために、MEAの電極層に供給する加湿量を従来よりも低減して運転(低加湿運転)することが検討されている。このような高温・低加湿運転を行う場合、前記構成を有する従来の燃料電池においては、ガス拡散層の炭素繊維基材の多孔度が通常80%以上と高くなるために、ガス拡散層内の保水性を十分に高く保つことができない。そのため、電極層の内部が乾燥し、高分子電解質膜のプロトン伝導抵抗が増加して、発電性能(電圧)が低下するという課題がある。
このため、ガス拡散層の多孔度を低くすることが求められている。ガス拡散層の多孔度を低くするためには、炭素繊維を基材として用いずにガス拡散層を構成する必要がある。炭素繊維を基材として用いないガス拡散層としては、例えば、特許文献2(特開2007−242444号公報)に開示されたものがある。
特許文献2には、ガス供給及び生成水の排出をより確実に行うことを目的として、フッ素樹脂とカーボン粒子とを含み、空孔率(本発明の多孔度に相当する)を60%以下としたガス拡散層が開示されている。この特許文献2のガス拡散層によれば、空孔率を60%以下と低くしているので、高温・低加湿運転を行う場合においてもガス拡散層内の保水性を高く保つことができ、燃料電池の発電性能の向上を図ることができる。
特開2003−197202号公報 特開2007−242444号公報
しかしながら、燃料電池においては一層高いレベルの発電性能が求められており、前記特許文献2の構成では未だ不十分である。
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、高温・低加湿の運転条件下において、発電性能を一層向上させることができる膜電極接合体及び燃料電池を提供することにある。
本発明の発明者らは、前記従来技術の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下のことを見出した。
すなわち、燃料電池において、発電に伴い生成される生成水は、カソード電極で主に発生する。このため、アノード電極よりもカソード電極の方が比較的湿潤しやすい。一方、アノード電極には水素を含む燃料ガスが供給され、カソード電極には酸素を含む酸化剤ガスが供給されるが、酸素は水素に比べてガス拡散性が低いという性質がある。
そこで、本発明の発明者らは、アノード電極が備えるアノードガス拡散層にはより保水性の高いガス拡散層を用いる一方で、カソード電極が備えるカソードガス拡散層にはよりガス拡散性の高いガス拡散層を用いることで発電性能が向上することを見出し、本発明に想到した。
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜を挟んで互いに対向する一対の触媒層と、
前記高分子電解質膜及び前記一対の触媒層を挟んで互いに対向するアノードガス拡散層及びカソードガス拡散層と、を有し、
前記アノードガス拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成され、
前記アノードガス拡散層の多孔度は、60%以下であり、
前記カソードガス拡散層の多孔度は、前記アノードガス拡散層の多孔度より大きい、
膜電極接合体を提供する。
ここで、「導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材」とは、炭素繊維を基材として使用することなく、導電性粒子と高分子樹脂とで支持される構造(いわゆる自己支持体構造)を持つ多孔質部材を意味する。導電性粒子と高分子樹脂とで多孔質部材を構成する場合、例えば、後述するように界面活性剤と分散溶媒とを用いる。この場合、製造工程中に、焼成により界面活性剤と分散溶媒とを除去するが、十分に除去できずにそれらが多孔質部材中に残留することが有り得る。従って、炭素繊維を基材として使用しない自己支持体構造である限り、そのようにして残留した界面活性剤と分散溶媒が多孔質部材に含まれてもよいことを意味する。また、炭素繊維を基材として使用しない自己支持体構造であれば、他の材料(例えば、短繊維の炭素繊維など)が多孔質部材に含まれても良いことも意味する。
本発明の第2態様によれば、前記アノードガス拡散層の多孔度は、42%以上である、第1態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第3態様によれば、前記カソードガス拡散層の多孔度は、60%より大きい、第1又は2態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第4態様によれば、前記カソードガス拡散層の厚さは、前記アノードガス拡散層の厚さより薄い、第1〜3態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第5態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層の厚さは、150μm以上600μm以下である、第4態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第6態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層の厚さは、200μm以上400μm以下である、第5態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第7態様によれば、前記カソードガス拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されている、第1〜6態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第8態様によれば、前記カソードガス拡散層の多孔度は、76%以下である、第7態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第9態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層に含まれる前記導電性粒子は、平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料で構成されている、第7又は8態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第10態様によれば、前記アノードガス拡散層に含まれる平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料は、平均粒子径が小さいカーボン材料と、平均粒径が大きいカーボン材料との配合比率が、1:0.7〜1:2である、第9態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第11態様によれば、前記カソードガス拡散層に含まれる高分子樹脂の単位体積当たりの重量は、前記アノードガス拡散層に含まれる高分子樹脂の単位体積当たりの重量より大きい、第7〜10態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第12態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層は、前記高分子樹脂を10重量%以上17重量%以下含む、第11態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第13態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層は、前記高分子樹脂よりも少ない重量の炭素繊維を含んでいる、第7〜12態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第14態様によれば、前記カソードガス拡散層に含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量は、前記アノードガス拡散層に含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量より大きい、第13態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第15態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層は、前記炭素繊維を2.0重量%以上7.5重量%以下含む、第14態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第16態様によれば、前記炭素繊維は、気相成長法炭素繊維、ミルドファイバー、チョップファイバーのうちのいずれか1つである、第13〜15態様にいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第17態様によれば、第1〜16態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体と、
前記膜電極接合体を挟むように配置された一対のセパレータと、
を備える、燃料電池を提供する。
本発明の第18態様によれば、前記燃料電池を運転する際に、前記燃料電池に供給される燃料ガス及び酸化剤ガスの露点は、前記燃料電池の運転温度より低い、第17態様に記載の燃料電池を提供する。
本発明にかかる膜電極接合体及び燃料電池よれば、前記アノードガス拡散層を導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成して、その多孔度を60%以下としているので、前記アノードガス拡散層の保水性を高くすることができる。一方、前記カソードガス拡散層の多孔度は、前記アノードガス拡散層の多孔度より大きくしているので、ガス拡散性を高くすることができる。これにより、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層とを同一構成としている従来の膜電極接合体及び燃料電池に比べて、発電性能を一層向上させることができる。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施の形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
図1は、本発明の実施形態にかかる燃料電池の断面図であり、 図2は、アセチレンブラックの平均粒子径を測定した結果を示すグラフであり、 図3は、グラファイトの平均粒子径を測定した結果を示すグラフであり、 図4は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されるガス拡散層の製造方法を示すフローチャートであり、 図5は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とし、炭素繊維が添加された多孔質部材で構成されるガス拡散層の製造方法を示すフローチャートであり、 図6は、本発明の実施形態の変形例にかかる燃料電池の断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の全ての図において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
《実施形態》
図1は、本発明の実施形態にかかる燃料電池の基本構成を示す断面図である。本実施形態にかかる燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気などの酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる高分子電解質型燃料電池である。なお、本発明は、高分子電解質形燃料電池に限定されるものではなく、種々の燃料電池に適用可能である。
本実施形態にかかる燃料電池は、図1に示すように、膜電極接合体10(以下、MEA:Membrane-Electrode-Assemblyという)と、MEA10の両面に配置された一対の板状の導電性セパレータ20A、20Cとを有するセル(単電池)1を備えている。なお、本実施形態にかかる燃料電池は、このセル1を複数個積層して構成されていてもよい。この場合、互いに積層されたセル1は、燃料ガス及び酸化剤ガスがリークしないように且つ接触抵抗を減らすために、ボルトなどの締結部材(図示せず)により所定の締結圧にて加圧締結されていることが好ましい。
MEA10は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜11と、この高分子電解質膜11の両面に形成された一対の電極層とを有している。一対の電極層の一方は、アノード電極(燃料極ともいう)12Aであり、他方はカソード電極(空気極ともいう)12Cである。アノード電極12Aは、高分子電解質膜11の一方の面上に形成され、白金属触媒を坦持したカーボン粉末を主成分とする一対のアノード触媒層13Aと、このアノード触媒層13A上に形成され、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つアノードガス拡散層14Aとを有している。カソード電極12Cは、高分子電解質膜11の他方の面上に形成され、白金属触媒を坦持したカーボン粉末を主成分とする一対のカソード触媒層13Cと、このカソード触媒層13C上に形成され、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つカソードガス拡散層14Cとを有している。
アノード電極12A側に配置されたアノードセパレータ20Aには、アノードガス拡散層14Aと当接する主面に、燃料ガスを流すための燃料ガス流路21Aが設けられている。燃料ガス流路溝21Aは、例えば、互いに略平行な複数の溝で構成されている。カソード電極12C側に配置されたカソードセパレータ20Cには、カソードガス拡散層14Cと当接する主面に、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路21Cが設けられている。酸化剤ガス流路溝21Cは、例えば、互いに略平行な複数の溝で構成されている。なお、アノードセパレータ20A及びカソードセパレータ20Cには、冷却水などが通る冷却水流路(図示せず)が設けられていてもよい。燃料ガス流路21Aを通じてアノード電極12Aに燃料ガスが供給されるとともに、酸化剤ガス流路21Cを通じてカソード電極12Cに酸化剤ガスが供給されることで、電気化学反応が起こり、電力と熱とが発生する。
なお、前記では、燃料ガス流路21Aをアノードセパレータ20Aに設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、燃料ガス流路21Aは、アノードガス拡散層14Aに設けてもよい。この場合、アノードセパレータ20Aは平板状であってもよい。同様に、前記では、酸化剤ガス流路21Cをカソードセパレータ20Cに設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、酸化剤ガス流路21Cは、カソードガス拡散層14Cに設けてもよい。この場合、カソードセパレータ20Cは平板状であってもよい。
アノードセパレータ20Aと高分子電解質膜11との間には、燃料ガスが外部に漏れることを防ぐために、アノード触媒層13A及びアノードガス拡散層14Aの側面を覆うようにシール材としてアノードガスケット15Aが配置されている。また、カソードセパレータ20Cと高分子電解質膜11との間には、酸化剤ガスが外部に漏れることを防ぐために、カソード触媒層13C及びカソードガス拡散層14Cの側面を覆うようにシール材としてカソードガスケット15Cが配置されている。
アノードガスケット15A及びカソードガスケット15Cとしては、一般的な熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いることができる。例えば、アノードガスケット15A及びカソードガスケット15Cとして、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、液晶性ポリマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン、ガラス繊維強化樹脂などを用いることができる。
なお、アノードガスケット20A及びカソードガスケット20Cは、それらの一部がアノードガス拡散層14A又はカソードガス拡散層14Cの周縁部に含浸しているほうが好ましい。これにより、発電耐久性及び強度を向上させることができる。
また、アノードガスケット20A及びカソードガスケット20Cに代えて、アノードセパレータ20Aとカソードセパレータ20Cとの間に、高分子電解質膜11、アノード触媒層13A、アノードガス拡散層14A、カソード触媒層13C及びカソードガス拡散層14Cの側面を覆うように、ガスケットを配置してもよい。これにより、高分子電解質膜11の劣化を抑制し、MEA10のハンドリング性、量産時の作業性を向上させることができる。
次に、本発明の実施形態にかかるアノードガス拡散層14Aの構成についてさらに詳細に説明する。
アノードガス拡散層14Aは、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分としたシート状で且つゴム状の多孔質部材で構成されている。アノードガス拡散層14Aの多孔度は、60%以下に設定されている。これにより、高温・低加湿運転を行う場合においてもアノードガス拡散層14A内の保水性を高く保つことができる。なお、アノードガス拡散層14Aの多孔度は、42%以上であることが好ましい。アノードガス拡散層14Aの多孔度を42%以上とすることで、アノードガス拡散層14Aを容易に製造することができる。
前記導電性粒子の材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、活性炭などのカーボン材料が挙げられる。このカーボンブラックとしては、アセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、バルカンなどが挙げられる。なお、それらの中でもカーボンブラックの主成分としてアセチレンブラックが用いられることが、不純物含有量が少なく、電気伝導性が高いという観点から好ましい。また、グラファイトの主成分としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。なお、これらの中でもグラファイトの主成分として人造黒鉛が用いられることが、不純物が少ないという観点から好ましい。
また、前記導電性粒子は、平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料を混合して構成されることが好ましい。これにより、平均粒子径が大きな粒子同士の隙間に平均粒子径が小さな粒子が入り込むことができるので、アノードガス拡散層14Aの全体の多孔度を60%以下にすることが容易になる。充填構造を作成しやすい導電性粒子としては、グラファイトが挙げられる。従って、導電性粒子は、アセチレンブラックとグラファイトとを混合して構成されることが好ましい。
なお、アセチレンブラックの平均粒子径D50(相対粒子量が50%の時の粒子径:メディアン径ともいう)を、レーザ回折式粒度測定装置マイクロトラックHRAを使用して測定したところ、図2に示すようにD50=5μmであった。また、アセチレンブラックと同様にしてグラファイトの平均粒子径D50を測定したところ、図3に示すようにD50=16μmであった。これらの平均粒子径の測定は、10wt%の界面活性剤を含有した蒸留水にアセチレンブラック又はグラファイトの粒子を分散させ、粒度分布が安定した時点で行った。
なお、前記導電性粒子を3種類以上のカーボン材料を混合して構成した場合には、分散、混練、圧延条件などの最適化が困難である。また、前記導電性粒子を1種類のカーボン粉末のみで構成した場合には、どのようなカーボン粉末を用いても粒子間の空孔を埋めることが困難であり、多孔度を60%以下にすることが困難である。このため、前記導電性粒子は、2種類のカーボン材料を混合して構成することが好ましい。
また、カーボン材料の原料形態としては、例えば、粉末状、繊維状、粒状などが挙げられる。それらの中でも粉末状がカーボン材料の原料形態として採用されることが、分散性、取り扱い性の観点から好ましい。
なお、前記導電性粒子を平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料を混合して構成する場合、平均粒子径が小さいカーボン材料と平均粒子径が大きいカーボン材料との配合比率は1:0.7〜1:2であることが好ましい。この理由については、実験データを参照しながら後で詳しく説明する。
前記高分子樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などが挙げられる。これらの中でも前記高分子樹脂としてPTFEが使用されることが、耐熱性、撥水性、耐薬品性の観点から好ましい。PTFEの原料形態としては、ディスパージョン、粉末状などがあげられる。それらの中でもディスパージョンがPTFEの原料形態として採用されることが、作業性の観点から好ましい。
アノードガス拡散層14Aの製造方法としては、例えば、図4に示すような方法が挙げられる。
まず、ステップS1では、平均粒子径が異なる2種類の炭素粉末(導電性粒子)と高分子樹脂と界面活性剤と水(分散溶媒)を混練する(混練工程)。より具体的には、導電性粒子と高分子樹脂と界面活性剤と分散溶媒とを攪拌・混錬機に投入し、それらを混錬して粉砕及び造粒する。この後、それらの混錬物の中に高分子樹脂材料を添加してさらに分散させる。なお、高分子樹脂材料を他の材料と別に混錬機に投入せずに、高分子樹脂材料を含む全ての材料を同時に混練機に投入しても良い。
次いで、ステップS2では、混錬して得た混練物を押し出し成形し、プレス機にて圧延してシート状にする(圧延工程)。
次いで、ステップS3では、シート状にした混錬物を焼成し、当該混錬物から界面活性剤と水とを除去する(焼成工程)。
次いで、ステップS4では、プレス機の圧延力とギャップを調整して前記混錬物を再圧延し、当該混錬物の多孔度と厚さを調整する(再圧延工程)。
これにより、所望の多孔度及び厚さを有するアノードガス拡散層14Aを製造することができる。なお、アノードガス拡散層14Aの製造方法は、前記方法に限定されるものではなく、他の方法であってもよい。例えば、前記各製造工程の間に適宜、他の工程が含まれていても良い。
次に、本発明の実施形態にかかるカソードガス拡散層14Cの構成についてさらに詳細に説明する。
カソードガス拡散層14Cは、アノードガス拡散層14Aよりも、多孔度が高くなるように構成されている。このように構成した理由は以下の通りである。
すなわち、燃料電池は、水素と酸素との反応によって水を生成して発電する。この生成水は、主にカソード電極12C側で生成される。カソードガス拡散層14C内に生成水が適量存在する場合には、高分子電解質膜11の保水に役立って性能向上に寄与し得る。しかしながら、カソードガス拡散層14C内に過剰な生成水が存在する場合には、酸化剤ガス流路21Cを通じて分配される空気がカソード触媒層13Cに到達することが阻害されるおそれがある。このため、カソード電極12Cは、アノード電極12Aに比べて、高いガス拡散性を有することが求められる。本実施形態においては、アノードガス拡散層14Aよりもカソードガス拡散層14Cの多孔度を高くすることによって、カソードガス拡散層14Cの空孔量を多くし、高いガス拡散性が得られるようにしている。
また、カソードガス拡散層14Cの多孔度は、60%より大きいことが好ましい。これにより、生成水の排出性を高めてガス拡散性を高くすることができ、発電性能を一層高めることができる。なお、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材でカソードガス拡散層14Cを構成する場合、多孔度が76%より大きくなると、どのような材料を用いたとしても十分な強度を得ることができない。このため、カソードガス拡散層14Cの多孔度は、76%以下であることが好ましい。
なお、本実施形態においては、アノードガス拡散層14Aに比べて、カソードガス拡散層14Cは、多孔度を60%以下にする必要性がないので、カソードガス拡散層14Cは、炭素繊維を基材とした多孔質部材で構成されてもよい。また、カソードガス拡散層14Cは、アノードガス拡散層14Aと同様に、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されてもよい。これにより、アノードガス拡散層14Aとカソードガス拡散層14Cの製造を効率的に行うことができる。なお、この場合、カソードガス拡散層14Cの製造方法は、前述したアノードガス拡散層14Aの製造方法と同様とすることができる。
なお、前記構成の場合、カソードガス拡散層14Cに含まれる前記導電性粒子は、1種類のカーボン材料で構成されることが好ましい。前述したように、カソードガス拡散層14Cには、高いガス拡散性が求められる。このため、粒子径が揃った1種類のカーボン材料でカソードガス拡散層14Cを製造することにより、細孔を作りやすくなり、高い多孔度のガス拡散層を得ることが容易になる。
また、前記構成の場合、カソードガス拡散層14Cに含まれる高分子樹脂の単位体積当たりの重量は、アノードガス拡散層14Aに含まれる高分子樹脂の単位体積当たりの重量より大きいことが好ましい。高分子樹脂は、一般的に撥水性を有するので、高分子樹脂がガス拡散層中に占める割合(組成比率)が高くなるほど水分を排出しやすくなる。一方、高分子樹脂は、前記割合が低いほど親水性が高くなり、水分をガス拡散層内に閉じ込めやすくなる。従って、アノードガス拡散層14Aよりもカソードガス拡散層14Cに含まれる高分子樹脂の量を増やすことによって、アノードガス拡散層14Aには高い保水性を持たせる一方で、カソードガス拡散層14Cには高いガス拡散性を持たせることができる。これにより、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
また、高分子樹脂は、バインダー効果を有しているので、薄いガス拡散層を製造する場合には、高分子樹脂の組成比率を高くすることによって、強度を高くすることができる。なお、高分子樹脂の組成比率は10%〜17%であることが好ましい。高分子樹脂の組成比率が10%以下である場合には、ガス拡散層の強度が著しく低下し、自己支持体として製造することが困難である。また、高分子樹脂は絶縁体であるので、高分子樹脂の組成比率が17%以上である場合には、ガス拡散層の内部抵抗が増加して、電圧が低下するおそれがある。なお、高分子樹脂の組成比率が10%〜17%であることが好ましい理由については、実験データを参照しながら後で詳しく説明する。
以上、本実施形態にかかる燃料電池によれば、アノードガス拡散層14Aを導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成して、その多孔度を60%以下としているので、高温・低加湿の運転条件下においても、アノードガス拡散層14Aの保水性を高くすることができる。ここで、高温・低加湿の運転条件とは、例えば、燃料電池に供給される燃料ガス及び酸化剤ガスの露点が燃料電池の運転温度よりも低い運転条件をいう。高温・低加湿の運転条件下においては、高分子電解質膜11の乾燥による発電性能の低下が特に顕著となる。従って、高温・低加湿の運転条件下においては、特に、ガス拡散層(特に、アノードガス拡散層14A)に保水性の高いものを用いることが望まれる。一方、本実施形態にかかる燃料電池において、カソードガス拡散層14Cの多孔度は、アノードガス拡散層14Aの多孔度より大きくしているので、ガス拡散性を高くすることができる。すなわち、アノードガス拡散層14Aとカソードガス拡散層14Cとを、従来のように同じ構成とするのではなく、それぞれに適した構成としているので、従来に比べて発電性能を一層向上させることができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cには、導電性粒子及び高分子樹脂以外に、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの製造時に使用する界面活性剤及び分散溶媒などが微量含まれていてもよい。分散溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、エチレングリコールなどにグリコール類が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン系、アルキルアミンオキシドなどの両性イオン系が挙げられる。製造時に使用する分散溶媒の量及び界面活性剤の量は、導電性粒子の種類、高分子樹脂の種類、それらの配合比率などに応じて適宜設定すればよい。なお、一般的には、分散溶媒の量及び界面活性剤の量が多いほど、導電性粒子と高分子樹脂とが均一に分散しやすい一方で、流動性が高くなり、ガス拡散層のシート化が難しくなる傾向がある。
また、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cには、それらに含まれる高分子樹脂よりも少ない重量(基材としては成立しない重量)の炭素繊維が含まれてもよい。すなわち、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cは、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とし、基材としては成立しない重量の炭素繊維が添加されたシート状で且つゴム状の多孔質部材で構成されてもよい。この場合、炭素繊維を基材として使用しないので、燃料電池の低コスト化を図ることができる。また、炭素繊維は補強効果があるので、炭素繊維の配合比率を高くすることによって、強度の高いガス拡散層を製造することができる。これにより、バインダーとして作用する高分子樹脂の配合量を少なくすることが可能となる。また、絶縁体である高分子樹脂の配合比率を低くすることができるので、発電性能の向上を図ることができる。ガス拡散層に炭素繊維を含有させることは、薄いガス拡散層を製造するときに、特に有効である。
前記のような炭素繊維が添加されたガス拡散層の製造方法としては、例えば、図5に示すような方法が挙げられる。
まず、ステップS11では、導電性粒子と高分子樹脂と炭素繊維と界面活性剤と分散溶媒とを混錬する。
ステップS12では、混錬して得た混錬物をロールプレス機又は平板プレス機などで圧延してシート状に成形する。
ステップS13では、シート状に成形した混錬物を焼成して、前記混錬物中から界面活性剤と分散溶媒とを除去する。
ステップS14では、界面活性剤と分散溶媒とを除去した混錬物を再圧延して厚さを調整する。
これにより、前記のような炭素繊維が添加されたガス拡散層を製造することができる。
また、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cにおいて、炭素繊維の組成比率は、2.0%以上7.5%未満であることが好ましい。炭素繊維の組成比率が7.5%以上である場合には、炭素繊維が高分子電解質膜11を突き刺して、高分子電解質膜11を損傷させるおそれがある。また、炭素繊維には、ガス拡散層の内部抵抗を低下させるのにも役立つ。このため、炭素繊維の組成比率を2.0%以上とすると、内部抵抗を低下させる効果を十分に得ることができる。なお、炭素繊維の組成比率が2.0%以上7.5%未満であることが好ましい理由については、実験データを参照しながら後で詳しく説明する。
また、カソードガス拡散層14Cに含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量は、アノードガス拡散層14Aに含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量より大きいことが好ましい。炭素繊維は炭素粒子に比べて嵩密度が小さく細孔量が多いため、ガス拡散層の多孔度を高くするには、炭素繊維の組成比率を高くすることが有効である。従って、カソードガス拡散層14Cに含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量を、アノードガス拡散層14Aに含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量より大きくすることによって、カソードガス拡散層14Cの多孔度に対してアノードガス拡散層14Aの多孔度をより大きくすることができる。
上述の炭素繊維の材料としては、例えば、気相成長法炭素繊維(以下、VGCFという)、ミルドファイバー、カットファイバー、チョップファイバーなどが挙げられる。前記炭素繊維としてVGCFを使用する場合、例えば、繊維径0.15μm、繊維長15μmのものを使用すればよい。また、前記炭素繊維としてミルドファイバー、カットファイバー、又はチョップファイバーを使用する場合、例えば、繊維径5〜20μm、繊維長20μm〜100μmであるものを使用すればよい。
前記ミルドファイバー、カットファイバー、又はチョップファイバーの原料は、PAN系、ピッチ系、レイヨン系のいずれでもよい。また、前記ファイバーは、原糸(長繊維フィラメント又は短繊維ステーブル)を切断、裁断することにより作製された短繊維の束を分散させて使用することが好ましい。
また、燃料電池において、発電性能を向上させるには、発電温度、燃料極側加湿露点、空気極側加湿露点、燃料ガス利用率、空気利用率、セパレータの流路形状、触媒層の仕様等の最適化を図ることが有効である。特に、ガス拡散層を構成する物性パラメータのうち、厚さと多孔度は、電圧変動に対する感度が高い。このため、高温・低加湿の運転条件下において、発電性能を向上させるには、ガス拡散層の厚さ又は多孔度の最適化を図ることが、より有効である。
従って、図6に示すように、アノードガス拡散層14Aのよりもカソードガス拡散層14Cの厚さを薄くすることが好ましい。拡散法則に従うと、ガス拡散層の厚さ以外の物性が同一の場合、セパレータから触媒層までの距離が短いほど(すなわちガス拡散層の厚さが薄いほど)、反応ガスが触媒層に到達しやすくなる。カソードガス拡散層14Cは生成水によってガス拡散性が低下しやすいため、カソードガス拡散層14Cの厚さをアノードガス拡散層14Aの厚さよりも薄くすることによって、ガス拡散性を高くすることができる。これにより、発電性能を向上させることができる。
また、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの厚さは、150μm以上600μm以下であることが好ましい。この理由については、実験データを参照しながら後で詳しく説明する。また、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの厚さは、200μm以上400μm以下であることがさらに好ましい。アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの厚さが200μmより小さい場合には、発電性能が顕著に低下することを実験により確認している。これは、ガス拡散層の厚さが薄くなることでガス拡散性が高くなり、保水性が低下して高分子電解質膜が乾燥し、膜抵抗が増加するためと考えられる。一方、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの厚さが400μmより大きい場合にも、発電性能が顕著に低下することを実験により確認している。これは、ガス拡散層の厚さが厚くなることで、ガス拡散層の内部抵抗が増加するためと考えられる。この理由についても、実験データを参照しながら後で詳しく説明する。
(導電性粒子の配合比率について)
次に、表1を用いて、平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料(導電性粒子)を用いてガス拡散層を構成した場合における、平均粒子径の大きな導電性粒子と平均粒子径の小さな導電性粒子との好ましい配合比率について説明する。なお、ここでは、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層とを同じ構成(厚さ、多孔度等)としている。
Figure 2010050218

表1は、ガス拡散層の厚さを400μmで固定し、平均粒子径の大きな導電性粒子の一例としてのグラファイトと平均粒子径の小さな導電性粒子の一例としてのアセチレンブラックとの配合比率を変化させたときの、ガス拡散層の多孔度、燃料電池の抵抗値及び電圧値を示す表である。ここでは、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率が異なる燃料電池のサンプル1〜7を以下で説明するように製造して、各サンプル1〜7のガス拡散層の多孔度、抵抗値及び電圧値を測定した。
以下、各サンプル1〜7に共通する燃料電池の製造方法について説明する。
まず、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製デンカブラック:登録商標)とグラファイト(和光純薬工業株式会社製)を合計150g、界面活性剤(トライトンX:登録商標)7.5g、水170gをミキサーに投入する。その後、ミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記各材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物に高分子樹脂としてPTFEディスパージョン70g(旭硝子株式会社製AD911)を混合して、さらに5分間攪拌する。
このようにして得られた混練物をミキサーの中から40g取り出し、延伸ロール機(ギャップ600μmに設定)にて圧延してシート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて300℃で30分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(ギャップ400μm)にて圧延して厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。このようにして、厚さ400μmのゴム状のガス拡散層を製造する。
前記ガス拡散層の製造と同時的に又はそれに続いて、高分子電解質膜(Dupont社製Nafion112:登録商標)の両面に、触媒層として、白金坦持カーボン(田中貴金属社製TEC10E50E)とイオン交換樹脂(旭硝子株式会社製Flemion:登録商標)の混合物を塗布する。その後、当該混合物を乾燥して膜・触媒層接合体を得る。なお、このとき、高分子電解質膜の大きさは15cm角とし、触媒層の大きさは5.8cm角とする。また、白金の使用量は、アノード電極側0.35mg/cmとし、カソード電極側0.6mg/cmとする。
次いで、前記膜・触媒層接合体の両面に前記製造したガス拡散層を配置して、ホットプレス接合(80℃、10kgf/cm)し、MEAを製造する。
次いで、製造したMEAを一対のセパレータ(東海カーボン製)で挟み込み、この状態で位置ずれしないように締結圧力が10kgf/cmとなるまで加圧する。
以上のようにして、燃料電池の単電池(セル)を製造する。
サンプル1〜7は、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率を異ならせるだけで製造することができる。
次に、ガス拡散層の多孔度の測定方法(算出方法)について説明する。
まず、ガス拡散層を構成する各材料の真密度と組成比率から、製造したガス拡散層の見かけ真密度を算出する。
次いで、製造したガス拡散層の重量、厚さ、縦横寸法を測定して、製造したガス拡散層の密度を算出する。
次いで、多孔度=(ガス拡散層の密度)/(見かけ真密度)×100の式に、前記算出したガス拡散層の密度及び見かけ真密度を代入し、多孔度を算出する。
以上のようにして、製造したガス拡散層の多孔度を測定することができる。
なお、製造したガス拡散層の細孔径分布を、水銀ポロシメータを用いて測定したところ、累積細孔量から算出できる多孔度と、前記のようにして算出した多孔度とが一致していることを確認している。
表1を参照してサンプル2〜7を比較すると、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率が1:2から1:0になる程(すなわち、グラファイトの占有率が低くなる程)、多孔度が高くなることが分かる。また、前記配合比率が1:0である(すなわち、アセチレンブラックのみである)サンプル7では、多孔度は70%であった。なお、延伸ロール機のギャップを調整するなどしたが、アセチレンブラック単体では多孔度を70%未満にすることができなかった。
一方、前記配合比率が1:2から1:2.3になると(すなわち、グラファイトの量がアセチレンブラックの量の2倍よりも多くなると)、多孔度は65%と大幅に高くなった。なお、多孔度が42%未満のガス拡散層の製造を試みたが、前記配合比率、混錬条件、焼成条件、圧延条件などを変えても製造できなかった。これは、前記配合比率が1:2のとき最密充填構造が形成される一方、グラファイトの量がアセチレンブラックの量の2倍よりも多くなると最密充填構造が形成されないためと考えられる。
次に、表1に示したサンプル1〜7の抵抗値及び電圧値の測定方法について説明する。
まず、各サンプルにそれぞれ電子負荷機(菊水電気製PLZ−4W)を接続する。
次いで、アノード電極に燃料ガスとして純水素を流し、カソード電極に酸化剤ガスとして空気を流す。このとき、利用率は、それぞれ70%、40%とする。また、ガス加湿露点は、アノード電極65℃、カソード電極35℃に設定する。また、セル温度は、90℃に設定する。
次いで、電流密度0.2A/cm時の電圧値と抵抗値とを測定する。なお、発電中の抵抗値の測定には、交流4端子法式抵抗計(鶴賀電機製MODEL3566)を使用する。
なお、測定した抵抗値には、高分子電解質膜の湿潤状態を示すプロトン伝導抵抗(膜抵抗)と、ガス拡散層を含む各部材の内部抵抗(電気伝導抵抗)と、各部材間の接触抵抗(電気伝導抵抗)とが含まれている。
表1を参照してサンプル1〜7を比較すると、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率が1:2から1:0になる程、言い換えれば、多孔度が大きくなる程、抵抗値は高くなり、電圧値は低くなることが分かる。また、前記配合比率が1:0.7であるサンプル5と、前記配合比率が1:0.5であるサンプル6とを比較すると、抵抗値及び電圧値が急激に変化していることが分かる。すなわち、多孔度が60%よりも大きくなると、抵抗値が急激に高くなり、電圧値が急激に低くなることが分かる。一方、前記配合比率が1:2であるサンプル2と前記配合比率が1:2.3であるサンプル1とを比較すると、サンプル1の方が、抵抗値が大幅に高く、電圧値が大幅に低くなっていることが分かる。すなわち、多孔度が60%よりも大きくなると、抵抗値が急激に高くなり、電圧値が急激に低くなることが分かる。
これは、多孔度が60%よりも大きい場合には、ガス拡散層が疎な構造であるため、燃料電池内のガスと水の移動が容易となって系外に水又は水蒸気が排出されやすくなり、保水性が低下するためであると考えられる。保水性が低下した場合には、抵抗成分(特に膜抵抗)が増加し、これにより電圧は低下することとなる。
なお、多孔度が42%未満であるガス拡散層はここでは製造していないが、多孔度が低いとガス拡散性能が低下するため、十分な電気化学反応が起こらず、電圧値は低下すると考えられる。
従って、以上の試験結果及び考察から、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率は、1:0.7〜1:2であることが好ましいと考えられる。また、表1の各サンプルの電圧値を考慮すると、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率は、1:1.5〜1:2であることがさらに好ましいと考えられる。また、多孔度は42%以上60%以下であることが好ましいと考えられる。また、表1の各サンプルの電圧値を考慮すると、多孔度は42%以上50%以下であることがさらに好ましいと考えられる。
(厚さについて)
次に、表2を用いて、ガス拡散層の好ましい厚さについて説明する。なお、ここでは、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層とを同じ構成(厚さ、多孔度等)としている。
Figure 2010050218

表2は、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率を1:2で固定し、ガス拡散層の厚さを変化させたときの、燃料電池の抵抗値及び電圧値を示す表である。なお、多孔度は、前記配合比率により決まるため一律45%となる。ここでは、ガス拡散層の厚さが異なる燃料電池のサンプル8〜16を以下で説明するように製造して、各サンプルの抵抗値及び電圧値を測定した。なお、抵抗値及び電圧値の測定方法は、表1にて説明したサンプル1〜7の抵抗値及び電圧値の測定方法と同様である。
以下、各サンプルに共通する燃料電池の製造方法について説明する。なお、表1にて説明したサンプル1〜7の製造方法と同様の部分については、重複する説明を省略しながら説明する。
まず、アセチレンブラック50gとグラファイト100g、界面活性剤7.5g、水170gをミキサーに投入する。その後、ミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記各材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物に高分子樹脂としてPTFEディスパージョン35gを混合して、さらに5分間攪拌する。
このようにして得られた混練物をミキサーの中から取り出し、延伸ロール機のギャップを調整して圧延し、シート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて300℃で30分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機のギャップを調整して圧延し、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行う。この後、再圧延した前記混錬物を6cm角に裁断して、ゴム状のガス拡散層を製造する。
前記ガス拡散層の製造と同時的に又はそれに続いて、高分子電解質膜の両面に、触媒層として、白金坦持カーボンとイオン交換樹脂の混合物を塗布する。その後、当該混合物を乾燥して膜・触媒層接合体を得る。
次いで、前記膜・触媒層接合体の両面に前記製造したガス拡散層を配置して、ホットプレス接合し、MEAを製造する。この後、製造したMEAを一対のセパレータで挟み込み、この状態で位置ずれしないように締結圧力が10kgf/cmとなるまで加圧する。
以上のようにして、燃料電池の単電池(セル)を製造する。
サンプル8〜16は、圧延時に延伸ロール機のギャップを変更することで製造することができる。
表2を参照して、厚さが300μmであるサンプル10と厚さが250μmであるサンプル9の抵抗値及び電圧値を比較すると、サンプル9の方が、抵抗値が大幅に高く、電圧値が大幅に低くなっていることが分かる。これは、厚さが薄くなることでガス拡散層のガス透過性が向上したために、低加湿運転下での保水性(保湿性)が低下して高分子電解質膜が乾燥し、膜抵抗が増加したためと考えられる。
また、表2を参照して、厚さが600μmであるサンプル14と厚さが650μmであるサンプル15の抵抗値及び電圧値を比較すると、サンプル15のほうが、抵抗値が大幅に高く、電圧値が大幅に低くなっていることが分かる。これは、厚さが厚くなることでガス拡散層の内部抵抗(電気伝導抵抗)が増加したためと考えられる。また、厚さが厚くなることでガス拡散層のガス透過性が低下し、燃料ガス及び酸化剤ガスが触媒層に到達しにくくなったために十分な電気化学反応が起こらなかったためと考えられる。
従って、以上の試験結果及び考察から、ガス拡散層の厚みは、300μm以上600μm以下であることが好ましいと考えられる。また、表2の各サンプルの電圧値を考慮すると、ガス拡散層の厚みは350μm以上500μm以下であることがさらに好ましいと考えられる。
なお、前記サンプル2の製造方法とは異なる2つの製造方法により、サンプル2のガス拡散層と同じ配合比率、厚さ、多孔度を有するガス拡散層を製造し、当該ガス拡散層を備える燃料電池の抵抗値及び電圧値を測定したところ、サンプル2と同じ抵抗値及び電圧値であることを確認している。
一方の製造方法は、具体的には次のような方法である。
まず、前記ミキサーで混練して得た混練物を、延伸ロール機に代えて押出成形機(2軸フルフライトスクリューの長さ50cm、Tダイの幅7cm、ギャップ600μm)を用い、厚さ600μm、幅7cmのシート状に成形する。この後、シート状にした前記混錬物を、プログラム制御式の焼成炉にて300℃で30分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、延伸ロール機のギャップを400μmに調整して再圧延し、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行う。この後、再圧延した前記混錬物を6cm角に裁断する。このようにして、サンプル2と同様の厚さ400μm、多孔度42%のゴム状のガス拡散層を得た。
また、他方の製造方法は、具体的には次のような方法である。
まず、サンプル2と同じ組成の材料を、ミキサーに代えて押出成形機(2軸フルフライトスクリューの長さ100cm、Tダイの幅7cm、ギャップ600μm)を用いて、混練し、押し出しし、且つシート状に成形する。この後、シート状にした混錬物を、プログラム制御式の焼成炉にて300℃で30分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、延伸ロール機のギャップを400μmに調整して再圧延し、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行う。この後、再圧延した前記混錬物を6cm角に裁断する。このようにして、サンプル2と同様の厚さ400μm、多孔度42%のゴム状のガス拡散層を得た。
(炭素繊維の配合比率について)
次に、表3を用いて、炭素繊維の好ましい配合比率について説明する。なお、ここでは、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層とを同じ構成(厚さ、多孔度等)としている。
Figure 2010050218

表3は、ガス拡散層の厚さを400μm、高分子樹脂の一例としてのPTFEの配合比率を10%に固定し、炭素繊維の一例としてのVGCFの配合比率を変化させたときの、内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷(マイクロショート)の有無を示す表である。ここでは、VGCFの配合比率が異なるガス拡散層のサンプル17〜23を以下で説明するように製造して、各サンプル17〜23のガス拡散層の内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷の有無を調べた。なお、炭素繊維は、高分子電解質膜よりも通常硬い材料で構成されるので、炭素繊維の配合比率によっては、高分子電解質膜を突き刺し、高分子電解質膜に損傷を与える恐れがある。高分子電解質膜の損傷は、燃料電池としての耐久性の低下に繋がる恐れがある。このため、表3では、高分子電解質膜の損傷の有無について記載している。
以下、各サンプル17〜23に共通するガス拡散層の製造方法について説明する。
まず、平均粒子径が小さい導電性粒子の一例としてのアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製デンカブラック:登録商標)と、平均粒子径が大きい導電性粒子の一例としてのグラファイト(和光純薬工業株式会社製)と、VGCF(昭和電工製、繊維径0.15μm、繊維長15μm)と、界面活性剤(トライトンX:登録商標)4gと、分散溶媒の一例としての水200gとをミキサーに投入する。このとき、アセチレンブラックとグラファイトとVGCFの合計量は133gとし、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率は1:1.6となるようにする。
前記各材料をミキサー内に投入後、ミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記各材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物に高分子樹脂としてPTFEディスパージョン25g(旭硝子株式会社製AD911、固形分比60%)を混合して、さらに5分間攪拌する。
このようにして得られた混練物をミキサーの中から20g取り出し、延伸ロール機(ギャップ600μmに設定)にて圧延してシート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて300℃で2時間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(ギャップ400μm)にて圧延して厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。このようにして、厚さ400μmのゴム状のガス拡散層を製造する。
サンプル17〜23は、VGCFの配合比率を異ならせるだけで製造することができる。
なお、例えば、サンプル18では、アセチレンブラック50g、グラファイト80g、VGCF3gとしている。この場合、VGCFの配合比率(重量換算)とPTFEの配合比率(重量換算)は、次のようにして求めることができる。
VGCFの配合比率:VGCF3g÷(アセチレンブラック50g+グラファイト80g+VGCF3g+PTFE25g×60%)×100=約2.0%
PTFEの配合比率:PTFE25g×60%÷(アセチレンブラック50g+グラファイト80g+VGCF3g+PTFE25g×60%)×100=約10.0%
次に、表3に示したサンプル17〜23のガス拡散層の内部抵抗(電気伝導性)の測定方法について説明する。
まず、各サンプルを直径4cmになるように型抜きする。
次いで、各サンプルにそれぞれ、圧縮試験機(島津製作所製、EZ−graph)を用いて圧力(面圧)が1.5kg/cmになるように圧縮荷重をかける。
この状態で、交流4端子法式抵抗計(鶴賀電機製、MODEL3566)を用いて内部抵抗値を測定する。
次に、表3に示したサンプル17〜23のガス拡散層が取り付けられた高分子電解質膜の損傷の有無の判定方法について説明する。
まず、高分子電解質膜の損傷の有無の判定のため、各サンプル毎に、擬似燃料電池セル(触媒層無し)を製造する。具体的には、VGCFの配合比率が同じである1組のサンプルを高分子電解質膜(Dupont社製Nafion112:登録商標)の両面に配置してホットプレス接合(80℃、10kgf/cm)し、MEAを製造する。この後、製造したMEAを一対のセパレータ(東海カーボン製)で挟み込み、この状態で位置ずれしないように締結圧力が10kgf/cmとなるまで加圧する。このようにして擬似燃料電池セルを製造する。
次いで、前記のようにした擬似燃料電池セルに電気化学測定システム(北斗電工社製、HZ−3000)を接続する。
次いで、前記擬似燃料電池セルに0.4Vの負荷をかけ、その時の電流値を測定する。
ここで、高分子電解質膜に損傷があった場合、マイクロショートにより300mA以上の高電流が測定されると考えられる。
このため、測定された電流値が300mA以上であった場合、損傷「有り」と判定し、測定された電流値が300mA未満であった場合、損傷「無し」と判定する。
次に、前記のようにして測定又は判定された試験結果についての考察を述べる。
表3を参照してサンプル17〜23の内部抵抗値を比較すると、VGCFの配合比率が低くなる程、内部抵抗値が増加することが分かる。また、VGCFの配合比率が2.0重量%であるサンプル18と、VGCFの配合比率が1.5重量%であるサンプル17とを比較すると、内部抵抗値が大幅に変化していることが分かる。すなわち、VGCFの配合比率が2.0重量%より低い場合には、内部抵抗値が急激に高くなることが分かる。このため、VGCFの配合比率は2.0重量%以上であることが好ましいと考えられる。
表3を参照して高分子電解質膜の損傷の有無を検討すると、VGCFの配合比率が7.5重量%以下であるサンプル17〜21を用いた擬似燃料電池セルでは高分子電解質膜に損傷が無かった。これに対して、VGCFの配合比率が7.5重量%より大きいサンプル22,23を用いた擬似燃料電池セルでは高分子電解質膜に損傷が有った。
従って、以上の試験結果及び考察から、VGCFの配合比率は2.0重量%以上7.5重量%以下であることが好ましいと考えられる。
なお、VGCFに代えてチョップファイバー(クレハ株式会社製M−201F、繊維径12.5μm、繊維長150μm)を用いた以外はサンプル18と同じの製造方法でガス拡散層を製造し、当該ガス拡散層の内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷の有無を調べたところ、サンプル18と同じ結果を得た。すなわち、内部抵抗値は50mΩ・cmであり、高分子電解質膜の損傷は無かった。また、VGCFに代えて、ミルドファイバー(クレハ株式会社製M−2007S、繊維径14.5μm、繊維長90μm)、カットファイバー(東レ株式会社製T008−3、繊維径7μm)、又はミルドファイバー(東レ株式会社製MLD−30、繊維径7μm、繊維長30μm)を用いた場合においても、同様に、サンプル18と同じ結果を得た。
(高分子樹脂の配合比率について)
次に、表4を用いて、高分子樹脂の好ましい配合比率について説明する。なお、ここでは、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層とを同じ構成(厚さ、多孔度等)としている。
Figure 2010050218

表4は、ガス拡散層の厚さを400μm、炭素繊維の一例としてのVGCFの配合比率を2.0重量%に固定し、高分子樹脂の一例としてのPTFEの配合比率を変化させたときの、内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷の有無を示す表である。PTFEディスパージョンの混合量を異ならせた点以外は、表3にて説明したサンプル18と同様の製造方法でサンプル24〜29のガス拡散層を製造している。また、内部抵抗値の測定方法及び高分子電解質膜の損傷の有無の判定方法は、表3にて説明したサンプル17〜23の内部抵抗値の測定方法及び高分子電解質膜の損傷の有無の判定方法と同様である。
次に、前記のようにして測定又は判定された試験結果についての考察を述べる。
表4を参照してサンプル24〜29の内部抵抗値を比較すると、PTFEの配合比率が高くなる程、内部抵抗値が増加することが分かる。また、PTFEの配合比率が17重量%であるサンプル27と、PTFEの配合比率が20重量%であるサンプル28とを比較すると、内部抵抗値が大幅に変化していることが分かる。すなわち、PTFEの配合比率が17重量%より高い場合には、内部抵抗値が急激に高くなることが分かる。
なお、PTFEの配合比率が10重量%未満であるシート状のガス拡散層の製造を試みたが、VGCFの配合比率、混練時間、混練速度、圧延条件などの様々な条件を変えても、製造することができなかった。これは、PTFEの配合比率が低くなることで、PTFEのバインダーとしての機能が弱くなり、導電性材料同士の結着性が低下したためと考えられる。
従って、以上の試験結果及び考察から、PTFEの配合比率は10重量%以上17重量%以下であることが好ましいと考えられる。
一方、高分子電解質膜の損傷の有無については、サンプル24〜29とも高分子電解質膜の損傷は無かった。これにより、高分子電解質膜の損傷の有無はPTFEの配合比率に影響されないことが分かる。
(厚さについて)
次に、表5を用いて、炭素繊維を添加したときのガス拡散層の好ましい厚さについて説明する。なお、ここでは、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層とを同じ構成(厚さ、多孔度等)としている。
Figure 2010050218

表5は、炭素繊維の一例としてのVGCFの配合比率を2.0重量%、高分子樹脂の一例としてのPTFEの配合比率を10重量%に固定し、ガス拡散層の厚さを変化させたときの、内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷の有無を示す表である。ここでは、厚さが異なるガス拡散層のサンプル30〜35を以下で説明するように製造して、各サンプルの内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷の有無を調べた。なお、内部抵抗値の測定方法及び高分子電解質膜の損傷の有無の判定方法は、表3にて説明したサンプル17〜23の内部抵抗値の測定方法及び高分子電解質膜の損傷の有無の判定方法と同様である。
以下、各サンプルに共通するガス拡散層の製造方法について説明する。なお、表3にて説明したサンプル17〜23の製造方法と同様の部分については、重複する説明を省略しながら説明する。
まず、アセチレンブラック50gと、グラファイト80gと、VGCF3gと、界面活性剤4gと、水200gとをミキサーに投入する。前記各材料をミキサー内に投入後、ミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記各材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物にPTFEディスパージョン25gを混合して、さらに5分間攪拌する。
このようにして得られた混練物をミキサーの中から取り出し、延伸ロール機のギャップを調整して圧延し、シート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて300℃で2時間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機のギャップを調整して圧延し、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行う。この後、再圧延した前記混錬物を6cm角に裁断する。
以上のようにして、ゴム状のガス拡散層を製造する。
サンプル30〜35は、圧延時に延伸ロール機のギャップを変更することで製造することができる。
次に、前記のようにして測定又は判定された試験結果についての考察を述べる。
表5を参照してサンプル30〜35の内部抵抗値を比較すると、ガス拡散層の厚みが厚くなる程、内部抵抗値が増加することが分かる。また、厚さが600μmであるサンプル33と厚さが650μmであるサンプル34の内部抵抗値を比較すると、サンプル34の方が、内部抵抗値が大幅に高くなっていることが分かる。なお、厚さが150μm未満であるシート状のガス拡散層の製造を試みたが、強度が不足し、安定的に内部抵抗を測定することができなかった。また、仮に製造できたとしても、厚さが薄くなることでガス拡散層のガス透過性が向上するために、低加湿運転下での保水性(保湿性)が低下して高分子電解質膜が乾燥し、内部抵抗は増加すると推測される。
従って、以上の試験結果及び考察から、ガス拡散層の厚さは150μm以上600μm以下であることが好ましいと考えられる。
一方、高分子電解質膜の損傷の有無については、サンプル30〜35とも高分子電解質膜の損傷は無かった。これにより、高分子電解質膜の損傷の有無はガス拡散層の厚さに影響されないことが分かる。
なお、前記サンプル18の製造方法とは異なる2つの製造方法により、サンプル18のガス拡散層と同様のVGCFの配合比率(2.0重量%)、PTFEの配合比率(10重量%)、及び厚さ(400μm)を有するガス拡散層を製造し、内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷の有無を調べたところ、サンプル18と同じ結果を得た。すなわち、内部抵抗値は50mΩ・cmであり、高分子電解質膜の損傷は無かった。
一方の製造方法は、具体的には次のような方法である。
まず、前記ミキサーで混練して得た混練物を、延伸ロール機に代えて押出成形機(2軸フルフライトスクリューの長さ50cm、Tダイの幅7cm、ギャップ600μm)を用い、厚さ600μm、幅7cmのシート状に成形する。この後、シート状にした前記混錬物を、プログラム制御式の焼成炉にて300℃で30分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、延伸ロール機のギャップを400μmに調整して再圧延し、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行う。この後、再圧延した前記混錬物を6cm角に裁断する。このようにして、サンプル18と同様のVGCFの配合比率、PTFEの配合比率、厚さを有するガス拡散層を得た。
また、他方の製造方法は具体的には次のような方法である。
まず、サンプル18と同じ組成の材料を、ミキサーに代えて押出成形機(2軸フルフライトスクリューの長さ100cm、Tダイの幅7cm、ギャップ600μm)を用いて、混練し、押し出しし、且つシート状に成形する。この後、シート状にした混錬物を、プログラム制御式の焼成炉にて300℃で30分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、延伸ロール機のギャップを400μmに調整して再圧延し、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行う。この後、再圧延した前記混錬物を6cm角に裁断する。このようにして、サンプル18と同様のVGCFの配合比率、PTFEの配合比率、厚さを有するガス拡散層を得た。
なお、炭素繊維を全く使用することなくPTFEの配合量の低減を試みたところ、PTFEの配合比率が20重量%の場合、前記各サンプルと同様の製造方法によってシート状のガス拡散層を製造することができた。しかしながら、当該ガス拡散層の内部抵抗値は、PTFEの配合比率が20重量%であるサンプル28の内部抵抗値(78mΩ・cm)よりも高くなった。これにより、炭素繊維を使用することが内部抵抗値の増加の抑制に効果があることが分かる。
また、炭素繊維を全く使用することなくPTFEの配合比率の低減を試みたが、シート状のガス拡散層としての強度を十分に確保することができなかった。すなわち、炭素繊維を使用した場合にはPTFEの配合比率を20重量%未満にすることが可能であるが、炭素繊維を使用しない場合にはPTFEの配合比率を20重量%未満にすることができなかった。このことから、炭素繊維を使用することが、シート状のガス拡散層としての強度の強化に効果があることが分かる。
次に、本実施形態にかかる燃料電池の発電性能を検証した結果について説明する。
まず、表6を用いて、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの多孔度の違いによる発電性能の検証結果について説明する。
Figure 2010050218

表6において、サンプル36は、本実施形態にかかる燃料電池であり、サンプル37〜39は、その比較例として製造した燃料電池である。サンプル36〜39は、多孔度55%のガス拡散層と多孔度70%のガス拡散層の2種類のガス拡散層を用意し、それらを組み合わせて構成したものである。具体的には、サンプル36は、アノードガス拡散層14Aとして多孔度55%のガス拡散層を用い、カソードガス拡散層14Cとして多孔度70%のガス拡散層を用いた燃料電池である。サンプル37は、アノードガス拡散層14Aとして多孔度70%のガス拡散層を用い、カソードガス拡散層14Cとして多孔度70%のガス拡散層を用いた燃料電池である。サンプル38は、アノードガス拡散層14Aとして多孔度70%のガス拡散層を用い、カソードガス拡散層14Cとして多孔度55%のガス拡散層を用いた燃料電池である。サンプル39は、アノードガス拡散層14Aとして多孔度55%のガス拡散層を用い、カソードガス拡散層14Cとして多孔度55%のガス拡散層を用いた燃料電池である。各ガス拡散層の厚さは、全て400μmとしている。
厚さ400μm、多孔度55%のガス拡散層、すなわち、サンプル36及び39のアノードガス拡散層14Aと、サンプル38及び39のカソードガス拡散層14Cは、以下のようにして製造している。
まず、平均粒径が小さい導電性粒子の一例としてのアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製デンカブラック:登録商標、粒子径D50=5μm)50gと、平均粒子径が大きい導電性粒子の一例としての人造黒鉛粉末(昭和電工製SCMG−AR、D50=20μm)100gと、VGCF(昭和電工製:繊維径0.15μm、繊維長15μm)2gと、界面活性剤(トライトンX:登録商標)12gと、分散溶媒の一例としての水500gとをプラネタリミキサーに投入する。
前記各材料をプラネタリミキサーに投入後、プラネタリミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記各材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物に高分子樹脂としてPTFEディスパージョン35g(旭硝子株式会社製AD911、固形分比60%)を混合して、さらに、プラネタリミキサーの回転数を100rpmとして5分間攪拌する。
このようにして得られた混練物をプラネタリミキサーの中から20g取り出し、延伸ロール機(圧力200kg/cm、ギャップ600μmに設定)にて圧延してシート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて、300℃で20分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(圧力500kg/cm、ギャップ380μm)にて圧延して、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。
これにより、厚さ400μm、多孔度55%のガス拡散層を得ることができる。
なお、製造したガス拡散層の炭素繊維(VGCF)の配合比率を計算により求めたところ、シート全体の3.9%(重量換算)であった。また、製造したガス拡散層のPTFEの配合比率を計算により求めたところ、12%(重量換算)であった。
また、多孔度70%のガス拡散層、すなわち、サンプル37及び38のアノードガス拡散層14Aとサンプル36及び37のカソードガス拡散層14Cは、以下のようにして製造している。
まず、導電性粒子の一例としてのアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製デンカブラック)100gと、VGCF(昭和電工製:繊維径0.15μm、繊維長15μm)5gと、界面活性剤(トライトンX:登録商標)12gと、分散溶媒の一例としての水500gとをミキサーに投入する。なお、使用するカーボン粉末は1種類だけである。
前記各材料をミキサーに投入後、ミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物に高分子樹脂としてPTFEディスパージョン35g(旭硝子株式会社製AD911、固形分比60%)を混合して、さらに、ミキサーの回転数を100rpmとして5分間攪拌する。
このようにして得られた混練物をミキサーの中から10g取り出し、延伸ロール機(圧力10kg/cm、ギャップ500μmに設定)にて圧延して、シート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて、300℃で20分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(圧力20kg/cm、ギャップ400μm)にて圧延し、厚さ調整、及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。
これにより、厚さ400μm、多孔度70%のガス拡散層を得ることができる。
なお、製造したガス拡散層の炭素繊維(VGCF)の配合比率を計算により求めたところ、シート全体の4.0%(重量換算)であった。また、製造したガス拡散層のPTFEの配合比率を計算により求めたところ、17%(重量換算)であった。
次に、前記製造した55%及び70%のガス拡散層を用いて、サンプル36〜39の燃料電池の製造方法について説明する。
高分子電解質膜(Dupont社製Nafion112:登録商標)の両面に、触媒層として、白金坦持カーボン(田中貴金属社製TEC10E50E)とイオン交換樹脂(旭硝子株式会社製Flemion:登録商標)の混合物を塗布する。その後、当該混合物を乾燥して膜・触媒層接合体を得る。なお、このとき、高分子電解質膜の大きさは15cm角とし、触媒層の大きさは5.8cm角とする。また、白金の使用量は、アノード電極側0.35mg/cmとカソード電極側0.6mg/cmとする。
次いで、前記膜・触媒層接合体の両面に、前記製造した多孔度55%又は70%のガス拡散層を配置して、MEAを製造する。
次いで、製造したMEAを一対のカーボンセパレータ(東海カーボン社製)で挟み込み、この状態で位置ずれしないように締結圧力が10kgf/cmとなるまで加圧する。
以上のようにして、サンプル36〜39の燃料電池を製造する。
次に、表6に示したサンプル36〜39の電圧値の測定方法について説明する。
まず、各サンプルにそれぞれ電子負荷機(菊水電気製PLZ−4W)を接続する。アノード電極に燃料ガスとして純水素を流し、カソード電極に酸化剤ガスとして空気を流す。このとき、利用率は、それぞれ70%、40%とする。また、ガス加湿露点は、アノード電極65℃、カソード電極65℃に設定する。また、セル温度は、90℃に設定する。
次いで、電流密度0.2A/cm時の電圧値を測定する。
以上のようにして、表6に示す各サンプル36〜39の電圧値を得た。
表6から分かるように、本実施形態にかかる燃料電池の構成を有するサンプル36が最も高い電圧値を得ることができた。すなわち、本実施形態にかかる燃料電池によれば、従来に比べて発電性能を一層向上させることができることが確認された。
なお、前記では、炭素繊維としてVGCFを用いてサンプル36〜39を製造したが、VGCFに代えて、チョップファイバー(クレハ株式会社製M−201F:繊維径12.5μm、繊維長150μm)、ミルドファイバー(クレハ株式会社製M−2007S:繊維径14.5μm、繊維長90μm)、又はカットファイバー(東レ株式会社製T008−3:繊維径7μm)を用いてサンプル36〜39を製造しても、同様の電圧値が得られた。
また、前記では、プラネタリミキサーで混錬した混錬物を圧延ロール機を用いてシート状に成形したが、圧延ロール機に代えて押出成形機(2軸フルフライトスクリュー、長さ50cm、回転速度10rpm、Tダイの幅7cm、ギャップ600μm)を用いてシート状に成形するようにしても、同様の電圧値が得られた。
また、前記では、プラネタリミキサーで混錬した混錬物を圧延ロール機を用いてシート状に成形したが、押出成形機(2軸フルフライトスクリュー混錬羽根形状、長さ100cm、Tダイの幅7cm、ギャップ600μm)に材料を直接投入して、混錬、押し出し、シート成形するようにしても、同様の電圧値が得られた。
次に、表7を用いて、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの好ましい厚さについて説明する。
Figure 2010050218

表7において、サンプル40〜43は、サンプル36のアノードガス拡散層14A又はカソードガス拡散層14Cの厚さを、200μm又は600μmにしたものである。従って、サンプル40〜43において、アノードガス拡散層14Aの多孔度は55%であり、カソードガス拡散層の多孔度は70%である。
厚さ200μm、多孔度55%のガス拡散層は、以下のようにして製造することができる。
まず、前述した厚さ400μm、多孔度55%のガス拡散層と同様にして、アセチレンブラックと、人造黒鉛粉末と、VGCFと、界面活性剤と、水と、高分子樹脂との混錬物をプラネタリミキサーにて作成する。
次いで、前記混錬物をプラネタリミキサーの中から10g取り出し、延伸ロール機(圧力200kg/cm、ギャップ350μmに設定)にて圧延してシート状にする。
次いで、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて、300℃で20分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
次いで、界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(圧力500kg/cm、ギャップ180μm)にて圧延して、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。
これにより、厚さ200μm、多孔度55%のガス拡散層を得ることができる。
厚さ600μm、多孔度55%のガス拡散層は、以下のようにして製造することができる。
まず、前述した厚さ400μm、多孔度55%のガス拡散層と同様にして、アセチレンブラックと、人造黒鉛粉末と、VGCFと、界面活性剤と、水と、高分子樹脂との混錬物をプラネタリミキサーにて作成する。
次いで、前記混錬物をプラネタリミキサーの中から20g取り出し、延伸ロール機(圧力200kg/cm、ギャップ850μmに設定)にて圧延してシート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて、300℃で20分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
次いで、界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(圧力500kg/cm、ギャップ580μm)にて圧延して、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。
これにより、厚さ600μm、多孔度55%のガス拡散層を得ることができる。
厚さ200μm、多孔度70%のガス拡散層は、以下のようにして製造することができる。
まず、前述した厚さ400μm、多孔度70%のガス拡散層と同様にして、アセチレンブラックと、VGCFと、界面活性剤と、水と、高分子樹脂との混錬物をミキサーにて作成する。
次いで、前記混錬物をプラネタリミキサーの中から10g取り出し、延伸ロール機(圧力10kg/cm、ギャップ300μmに設定)にて圧延してシート状にする。
次いで、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて、300℃で20分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
次いで、界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(圧力20kg/cm、ギャップ200μm)にて圧延して、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。
これにより、厚さ200μm、多孔度70%のガス拡散層を得ることができる。
また、厚さ200μm、多孔度70%のガス拡散層は、以下のようにして製造することもできる。
まず、アセチレンブラック100g、人造黒鉛粉末15gと、VGCF2gと、チョップファイバー5g(クレハ製M201F:繊維径12.5μm、繊維長150μm)と、界面活性剤(トライトンX:登録商標)20gと、水400gとをミキサーに投入する。
次いで、ミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記各材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物に高分子樹脂としてPTFEディスパージョン36gを混合して、さらに、ミキサーの回転数を100rpmとして5分間攪拌する。なお、使用したカーボン粉末は2種類である。
このようにして得られた混練物をミキサーの中から10g取り出し、延伸ロール機(圧力10kg/cm、ギャップ300μmに設定)にて圧延して、シート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて、300℃で20分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(圧力20kg/cm、ギャップ200μm)にて圧延し、厚さ調整、及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。
これにより、厚さ200μm、多孔度70%のガス拡散層を得ることができる。
なお、製造したガス拡散層の炭素繊維(VGCFとチョップファイバーとの合計)の配合比率を計算により求めたところ、シート全体の4.9%(重量換算)であった。また、製造したガス拡散層のPTFEの配合比率を計算により求めたところ、15%(重量換算)であった。
表7に示す各サンプル40〜43の電圧値は、空気の利用率を90%とした以外は、表6に示す各サンプル36〜39の電圧値と同じ測定条件で測定して得たものである。
表7から分かるように、サンプル40においては、サンプル36よりやや高い電圧値を得ることができた。すなわち、400μmの厚さのアノードガス拡散層14Aよりもカソードガス拡散層14Cの厚さを薄くすることで、従来に比べて発電性能を一層向上させることができることが確認された。これは、カソードガス拡散層14Cを薄くすることによって、発電性能が低下すると通常考えられるが、それ以上にカソードガス拡散層14Cのガス拡散性が向上するためと考えられる。
また、表7から分かるように、サンプル41においては、サンプル36とほぼ同等の電圧値を得ることができた。すなわち、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの厚さを共に200μmまで薄くしても、発電性能はほとんど低下しないことが確認された。
また、表7から分かるように、サンプル42においては、サンプル36と比べて電圧値が大きく低下した。すなわち、400μmの厚さのカソードガス拡散層14Cよりもアノードガス拡散層14Aの厚さを薄くすると、発電性能が低下することが確認された。これは、アノードガス拡散層14Aの厚さが薄いことで保水性が低下し、且つ、カソードガス拡散層14Cの厚さが厚いことでガス拡散性が低下するためと考えられる。
また、表7から分かるように、サンプル43においては、サンプル36と比べて電圧値が大きく低下した。すなわち、アノードガス拡散層14Aの厚さを600μmまで厚くすると、発電性能が低下することが確認された。これは、アノードガス拡散層14Aの厚さが厚いことで保水性は高くなるが、その厚さが厚過ぎるために、保水性が高くなったことによる発電性能の向上効果よりも、アノードガス拡散層14Aのガス拡散性の低下による発電性能の低下が上回ったためと考えられる。
従って、表7より、アノードガス拡散層14Aの厚さは、200μm以上400μm以下であることが好ましく、カソードガス拡散層14Cの厚さは、アノードガス拡散層14Aの厚さより薄いことが好ましいことが分かる。
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明にかかる膜電極接合体及び燃料電池は、発電性能を一層向上させることができるので、例えば、自動車などの移動体、分散発電システム、家庭用のコージェネレーションシステムなどの駆動源として使用される燃料電池に有用である。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
2008年10月31日に出願された日本国特許出願No.2008−281458号、同日に出願された日本国特許出願No.2008−281553号、及び2009年6月8日に出願された日本国特許出願No.2009−137118号の明細書、図面、及び特許請求の範囲の開示内容は、全体として参照されて本明細書の中に取り入れられるものである。
1 燃料電池
10 膜電極接合体
11 高分子電解質膜
12A アノード電極
12C カソード電極
13A アノード触媒層
13C カソード触媒層
14A アノードガス拡散層
14C カソードガス拡散層
15A アノードガスケット
15C カソードガスケット
20A アノードセパレータ
20C カソードセパレータ
21A 燃料ガス流路溝
21C 酸化剤ガス流路溝
本発明は、例えば、自動車などの移動体、分散発電システム、家庭用のコージェネレーションシステムなどの駆動源として使用される燃料電池、及び当該燃料電池が備える膜電極接合体に関する。
燃料電池(例えば、高分子電解質形燃料電池)は、水素を含有する燃料ガスと空気など酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる装置である。
燃料電池は、一般的には複数のセルを積層し、それらをボルトなどの締結部材で加圧締結することにより構成されている。1つのセルは、膜電極接合体(以下、MEA:Membrane-Electrode-Assemblyという)を一対の板状の導電性のセパレータで挟んで構成されている。
MEAは、高分子電解質膜と、当該高分子電解質膜の両面に配置された一対の電極層によって構成されている。一対の電極層の一方はアノード電極(燃料極ともいう)であり、他方はカソード電極(空気極ともいう)である。一対の電極層は、金属触媒をカーボン粉末に坦持したカーボン粉末を主成分とする触媒層と、当該触媒層の上に配置される多孔質で導電性を有するガス拡散層とで構成されている。ガス拡散層は、一般に、炭素繊維からなる基材の表面に、カーボンと撥水材からなるコーティング層を設けて構成されている。(例えば、特許文献1:特開2003−197202号公報参照)。前記アノード電極に燃料ガスが接触するとともに前記カソード電極に酸化剤ガスが接触することにより、電気化学反応が発生し、電力と熱とが発生する。
近年、燃料電池の発電性能の向上のために、発電温度を従来よりも高温化して、熱回収温度を高くする検討が行われている。また、燃料電池システムの簡素化のために、MEAの電極層に供給する加湿量を従来よりも低減して運転(低加湿運転)することが検討されている。このような高温・低加湿運転を行う場合、前記構成を有する従来の燃料電池においては、ガス拡散層の炭素繊維基材の多孔度が通常80%以上と高くなるために、ガス拡散層内の保水性を十分に高く保つことができない。そのため、電極層の内部が乾燥し、高分子電解質膜のプロトン伝導抵抗が増加して、発電性能(電圧)が低下するという課題がある。
このため、ガス拡散層の多孔度を低くすることが求められている。ガス拡散層の多孔度を低くするためには、炭素繊維を基材として用いずにガス拡散層を構成する必要がある。炭素繊維を基材として用いないガス拡散層としては、例えば、特許文献2(特開2007−242444号公報)に開示されたものがある。
特許文献2には、ガス供給及び生成水の排出をより確実に行うことを目的として、フッ素樹脂とカーボン粒子とを含み、空孔率(本発明の多孔度に相当する)を60%以下としたガス拡散層が開示されている。この特許文献2のガス拡散層によれば、空孔率を60%以下と低くしているので、高温・低加湿運転を行う場合においてもガス拡散層内の保水性を高く保つことができ、燃料電池の発電性能の向上を図ることができる。
特開2003−197202号公報 特開2007−242444号公報
しかしながら、燃料電池においては一層高いレベルの発電性能が求められており、前記特許文献2の構成では未だ不十分である。
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、高温・低加湿の運転条件下において、発電性能を一層向上させることができる膜電極接合体及び燃料電池を提供することにある。
本発明の発明者らは、前記従来技術の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下のことを見出した。
すなわち、燃料電池において、発電に伴い生成される生成水は、カソード電極で主に発生する。このため、アノード電極よりもカソード電極の方が比較的湿潤しやすい。一方、アノード電極には水素を含む燃料ガスが供給され、カソード電極には酸素を含む酸化剤ガスが供給されるが、酸素は水素に比べてガス拡散性が低いという性質がある。
そこで、本発明の発明者らは、アノード電極が備えるアノードガス拡散層にはより保水性の高いガス拡散層を用いる一方で、カソード電極が備えるカソードガス拡散層にはよりガス拡散性の高いガス拡散層を用いることで発電性能が向上することを見出し、本発明に想到した。
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜を挟んで互いに対向する一対の触媒層と、
前記高分子電解質膜及び前記一対の触媒層を挟んで互いに対向するアノードガス拡散層及びカソードガス拡散層と、を有し、
前記アノードガス拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成され、
前記アノードガス拡散層の多孔度は、60%以下であり、
前記カソードガス拡散層の多孔度は、前記アノードガス拡散層の多孔度より大きい、
膜電極接合体を提供する。
ここで、「導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材」とは、炭素繊維を基材として使用することなく、導電性粒子と高分子樹脂とで支持される構造(いわゆる自己支持体構造)を持つ多孔質部材を意味する。導電性粒子と高分子樹脂とで多孔質部材を構成する場合、例えば、後述するように界面活性剤と分散溶媒とを用いる。この場合、製造工程中に、焼成により界面活性剤と分散溶媒とを除去するが、十分に除去できずにそれらが多孔質部材中に残留することが有り得る。従って、炭素繊維を基材として使用しない自己支持体構造である限り、そのようにして残留した界面活性剤と分散溶媒が多孔質部材に含まれてもよいことを意味する。また、炭素繊維を基材として使用しない自己支持体構造であれば、他の材料(例えば、短繊維の炭素繊維など)が多孔質部材に含まれても良いことも意味する。
本発明の第2態様によれば、前記アノードガス拡散層の多孔度は、42%以上である、第1態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第3態様によれば、前記カソードガス拡散層の多孔度は、60%より大きい、第1又は2態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第4態様によれば、前記カソードガス拡散層の厚さは、前記アノードガス拡散層の厚さより薄い、第1〜3態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第5態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層の厚さは、150μm以上600μm以下である、第4態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第6態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層の厚さは、200μm以上400μm以下である、第5態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第7態様によれば、前記カソードガス拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されている、第1〜6態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第8態様によれば、前記カソードガス拡散層の多孔度は、76%以下である、第7態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第9態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層に含まれる前記導電性粒子は、平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料で構成されている、第7又は8態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第10態様によれば、前記アノードガス拡散層に含まれる平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料は、平均粒子径が小さいカーボン材料と、平均粒径が大きいカーボン材料との配合比率が、1:0.7〜1:2である、第9態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第11態様によれば、前記カソードガス拡散層に含まれる高分子樹脂の単位体積当たりの重量は、前記アノードガス拡散層に含まれる高分子樹脂の単位体積当たりの重量より大きい、第7〜10態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第12態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層は、前記高分子樹脂を10重量%以上17重量%以下含む、第11態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第13態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層は、前記高分子樹脂よりも少ない重量の炭素繊維を含んでいる、第7〜12態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第14態様によれば、前記カソードガス拡散層に含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量は、前記アノードガス拡散層に含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量より大きい、第13態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第15態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層は、前記炭素繊維を2.0重量%以上7.5重量%以下含む、第14態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第16態様によれば、前記炭素繊維は、気相成長法炭素繊維、ミルドファイバー、チョップファイバーのうちのいずれか1つである、第13〜15態様にいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第17態様によれば、第1〜16態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体と、
前記膜電極接合体を挟むように配置された一対のセパレータと、
を備える、燃料電池を提供する。
本発明の第18態様によれば、前記燃料電池を運転する際に、前記燃料電池に供給される燃料ガス及び酸化剤ガスの露点は、前記燃料電池の運転温度より低い、第17態様に記載の燃料電池を提供する。
本発明にかかる膜電極接合体及び燃料電池よれば、前記アノードガス拡散層を導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成して、その多孔度を60%以下としているので、前記アノードガス拡散層の保水性を高くすることができる。一方、前記カソードガス拡散層の多孔度は、前記アノードガス拡散層の多孔度より大きくしているので、ガス拡散性を高くすることができる。これにより、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層とを同一構成としている従来の膜電極接合体及び燃料電池に比べて、発電性能を一層向上させることができる。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施の形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
図1は、本発明の実施形態にかかる燃料電池の断面図であり、 図2は、アセチレンブラックの平均粒子径を測定した結果を示すグラフであり、 図3は、グラファイトの平均粒子径を測定した結果を示すグラフであり、 図4は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されるガス拡散層の製造方法を示すフローチャートであり、 図5は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とし、炭素繊維が添加された多孔質部材で構成されるガス拡散層の製造方法を示すフローチャートであり、 図6は、本発明の実施形態の変形例にかかる燃料電池の断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の全ての図において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
《実施形態》
図1は、本発明の実施形態にかかる燃料電池の基本構成を示す断面図である。本実施形態にかかる燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気などの酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる高分子電解質型燃料電池である。なお、本発明は、高分子電解質形燃料電池に限定されるものではなく、種々の燃料電池に適用可能である。
本実施形態にかかる燃料電池は、図1に示すように、膜電極接合体10(以下、MEA:Membrane-Electrode-Assemblyという)と、MEA10の両面に配置された一対の板状の導電性セパレータ20A、20Cとを有するセル(単電池)1を備えている。なお、本実施形態にかかる燃料電池は、このセル1を複数個積層して構成されていてもよい。この場合、互いに積層されたセル1は、燃料ガス及び酸化剤ガスがリークしないように且つ接触抵抗を減らすために、ボルトなどの締結部材(図示せず)により所定の締結圧にて加圧締結されていることが好ましい。
MEA10は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜11と、この高分子電解質膜11の両面に形成された一対の電極層とを有している。一対の電極層の一方は、アノード電極(燃料極ともいう)12Aであり、他方はカソード電極(空気極ともいう)12Cである。アノード電極12Aは、高分子電解質膜11の一方の面上に形成され、白金属触媒を坦持したカーボン粉末を主成分とする一対のアノード触媒層13Aと、このアノード触媒層13A上に形成され、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つアノードガス拡散層14Aとを有している。カソード電極12Cは、高分子電解質膜11の他方の面上に形成され、白金属触媒を坦持したカーボン粉末を主成分とする一対のカソード触媒層13Cと、このカソード触媒層13C上に形成され、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つカソードガス拡散層14Cとを有している。
アノード電極12A側に配置されたアノードセパレータ20Aには、アノードガス拡散層14Aと当接する主面に、燃料ガスを流すための燃料ガス流路21Aが設けられている。燃料ガス流路溝21Aは、例えば、互いに略平行な複数の溝で構成されている。カソード電極12C側に配置されたカソードセパレータ20Cには、カソードガス拡散層14Cと当接する主面に、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路21Cが設けられている。酸化剤ガス流路溝21Cは、例えば、互いに略平行な複数の溝で構成されている。なお、アノードセパレータ20A及びカソードセパレータ20Cには、冷却水などが通る冷却水流路(図示せず)が設けられていてもよい。燃料ガス流路21Aを通じてアノード電極12Aに燃料ガスが供給されるとともに、酸化剤ガス流路21Cを通じてカソード電極12Cに酸化剤ガスが供給されることで、電気化学反応が起こり、電力と熱とが発生する。
なお、前記では、燃料ガス流路21Aをアノードセパレータ20Aに設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、燃料ガス流路21Aは、アノードガス拡散層14Aに設けてもよい。この場合、アノードセパレータ20Aは平板状であってもよい。同様に、前記では、酸化剤ガス流路21Cをカソードセパレータ20Cに設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、酸化剤ガス流路21Cは、カソードガス拡散層14Cに設けてもよい。この場合、カソードセパレータ20Cは平板状であってもよい。
アノードセパレータ20Aと高分子電解質膜11との間には、燃料ガスが外部に漏れることを防ぐために、アノード触媒層13A及びアノードガス拡散層14Aの側面を覆うようにシール材としてアノードガスケット15Aが配置されている。また、カソードセパレータ20Cと高分子電解質膜11との間には、酸化剤ガスが外部に漏れることを防ぐために、カソード触媒層13C及びカソードガス拡散層14Cの側面を覆うようにシール材としてカソードガスケット15Cが配置されている。
アノードガスケット15A及びカソードガスケット15Cとしては、一般的な熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いることができる。例えば、アノードガスケット15A及びカソードガスケット15Cとして、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、液晶性ポリマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン、ガラス繊維強化樹脂などを用いることができる。
なお、アノードガスケット20A及びカソードガスケット20Cは、それらの一部がアノードガス拡散層14A又はカソードガス拡散層14Cの周縁部に含浸しているほうが好ましい。これにより、発電耐久性及び強度を向上させることができる。
また、アノードガスケット20A及びカソードガスケット20Cに代えて、アノードセパレータ20Aとカソードセパレータ20Cとの間に、高分子電解質膜11、アノード触媒層13A、アノードガス拡散層14A、カソード触媒層13C及びカソードガス拡散層14Cの側面を覆うように、ガスケットを配置してもよい。これにより、高分子電解質膜11の劣化を抑制し、MEA10のハンドリング性、量産時の作業性を向上させることができる。
次に、本発明の実施形態にかかるアノードガス拡散層14Aの構成についてさらに詳細に説明する。
アノードガス拡散層14Aは、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分としたシート状で且つゴム状の多孔質部材で構成されている。アノードガス拡散層14Aの多孔度は、60%以下に設定されている。これにより、高温・低加湿運転を行う場合においてもアノードガス拡散層14A内の保水性を高く保つことができる。なお、アノードガス拡散層14Aの多孔度は、42%以上であることが好ましい。アノードガス拡散層14Aの多孔度を42%以上とすることで、アノードガス拡散層14Aを容易に製造することができる。
前記導電性粒子の材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、活性炭などのカーボン材料が挙げられる。このカーボンブラックとしては、アセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、バルカンなどが挙げられる。なお、それらの中でもカーボンブラックの主成分としてアセチレンブラックが用いられることが、不純物含有量が少なく、電気伝導性が高いという観点から好ましい。また、グラファイトの主成分としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。なお、これらの中でもグラファイトの主成分として人造黒鉛が用いられることが、不純物が少ないという観点から好ましい。
また、前記導電性粒子は、平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料を混合して構成されることが好ましい。これにより、平均粒子径が大きな粒子同士の隙間に平均粒子径が小さな粒子が入り込むことができるので、アノードガス拡散層14Aの全体の多孔度を60%以下にすることが容易になる。充填構造を作成しやすい導電性粒子としては、グラファイトが挙げられる。従って、導電性粒子は、アセチレンブラックとグラファイトとを混合して構成されることが好ましい。
なお、アセチレンブラックの平均粒子径D50(相対粒子量が50%の時の粒子径:メディアン径ともいう)を、レーザ回折式粒度測定装置マイクロトラックHRAを使用して測定したところ、図2に示すようにD50=5μmであった。また、アセチレンブラックと同様にしてグラファイトの平均粒子径D50を測定したところ、図3に示すようにD50=16μmであった。これらの平均粒子径の測定は、10wt%の界面活性剤を含有した蒸留水にアセチレンブラック又はグラファイトの粒子を分散させ、粒度分布が安定した時点で行った。
なお、前記導電性粒子を3種類以上のカーボン材料を混合して構成した場合には、分散、混練、圧延条件などの最適化が困難である。また、前記導電性粒子を1種類のカーボン粉末のみで構成した場合には、どのようなカーボン粉末を用いても粒子間の空孔を埋めることが困難であり、多孔度を60%以下にすることが困難である。このため、前記導電性粒子は、2種類のカーボン材料を混合して構成することが好ましい。
また、カーボン材料の原料形態としては、例えば、粉末状、繊維状、粒状などが挙げられる。それらの中でも粉末状がカーボン材料の原料形態として採用されることが、分散性、取り扱い性の観点から好ましい。
なお、前記導電性粒子を平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料を混合して構成する場合、平均粒子径が小さいカーボン材料と平均粒子径が大きいカーボン材料との配合比率は1:0.7〜1:2であることが好ましい。この理由については、実験データを参照しながら後で詳しく説明する。
前記高分子樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などが挙げられる。これらの中でも前記高分子樹脂としてPTFEが使用されることが、耐熱性、撥水性、耐薬品性の観点から好ましい。PTFEの原料形態としては、ディスパージョン、粉末状などがあげられる。それらの中でもディスパージョンがPTFEの原料形態として採用されることが、作業性の観点から好ましい。
アノードガス拡散層14Aの製造方法としては、例えば、図4に示すような方法が挙げられる。
まず、ステップS1では、平均粒子径が異なる2種類の炭素粉末(導電性粒子)と高分子樹脂と界面活性剤と水(分散溶媒)を混練する(混練工程)。より具体的には、導電性粒子と高分子樹脂と界面活性剤と分散溶媒とを攪拌・混錬機に投入し、それらを混錬して粉砕及び造粒する。この後、それらの混錬物の中に高分子樹脂材料を添加してさらに分散させる。なお、高分子樹脂材料を他の材料と別に混錬機に投入せずに、高分子樹脂材料を含む全ての材料を同時に混練機に投入しても良い。
次いで、ステップS2では、混錬して得た混練物を押し出し成形し、プレス機にて圧延してシート状にする(圧延工程)。
次いで、ステップS3では、シート状にした混錬物を焼成し、当該混錬物から界面活性剤と水とを除去する(焼成工程)。
次いで、ステップS4では、プレス機の圧延力とギャップを調整して前記混錬物を再圧延し、当該混錬物の多孔度と厚さを調整する(再圧延工程)。
これにより、所望の多孔度及び厚さを有するアノードガス拡散層14Aを製造することができる。なお、アノードガス拡散層14Aの製造方法は、前記方法に限定されるものではなく、他の方法であってもよい。例えば、前記各製造工程の間に適宜、他の工程が含まれていても良い。
次に、本発明の実施形態にかかるカソードガス拡散層14Cの構成についてさらに詳細に説明する。
カソードガス拡散層14Cは、アノードガス拡散層14Aよりも、多孔度が高くなるように構成されている。このように構成した理由は以下の通りである。
すなわち、燃料電池は、水素と酸素との反応によって水を生成して発電する。この生成水は、主にカソード電極12C側で生成される。カソードガス拡散層14C内に生成水が適量存在する場合には、高分子電解質膜11の保水に役立って性能向上に寄与し得る。しかしながら、カソードガス拡散層14C内に過剰な生成水が存在する場合には、酸化剤ガス流路21Cを通じて分配される空気がカソード触媒層13Cに到達することが阻害されるおそれがある。このため、カソード電極12Cは、アノード電極12Aに比べて、高いガス拡散性を有することが求められる。本実施形態においては、アノードガス拡散層14Aよりもカソードガス拡散層14Cの多孔度を高くすることによって、カソードガス拡散層14Cの空孔量を多くし、高いガス拡散性が得られるようにしている。
また、カソードガス拡散層14Cの多孔度は、60%より大きいことが好ましい。これにより、生成水の排出性を高めてガス拡散性を高くすることができ、発電性能を一層高めることができる。なお、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材でカソードガス拡散層14Cを構成する場合、多孔度が76%より大きくなると、どのような材料を用いたとしても十分な強度を得ることができない。このため、カソードガス拡散層14Cの多孔度は、76%以下であることが好ましい。
なお、本実施形態においては、アノードガス拡散層14Aに比べて、カソードガス拡散層14Cは、多孔度を60%以下にする必要性がないので、カソードガス拡散層14Cは、炭素繊維を基材とした多孔質部材で構成されてもよい。また、カソードガス拡散層14Cは、アノードガス拡散層14Aと同様に、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されてもよい。これにより、アノードガス拡散層14Aとカソードガス拡散層14Cの製造を効率的に行うことができる。なお、この場合、カソードガス拡散層14Cの製造方法は、前述したアノードガス拡散層14Aの製造方法と同様とすることができる。
なお、前記構成の場合、カソードガス拡散層14Cに含まれる前記導電性粒子は、1種類のカーボン材料で構成されることが好ましい。前述したように、カソードガス拡散層14Cには、高いガス拡散性が求められる。このため、粒子径が揃った1種類のカーボン材料でカソードガス拡散層14Cを製造することにより、細孔を作りやすくなり、高い多孔度のガス拡散層を得ることが容易になる。
また、前記構成の場合、カソードガス拡散層14Cに含まれる高分子樹脂の単位体積当たりの重量は、アノードガス拡散層14Aに含まれる高分子樹脂の単位体積当たりの重量より大きいことが好ましい。高分子樹脂は、一般的に撥水性を有するので、高分子樹脂がガス拡散層中に占める割合(組成比率)が高くなるほど水分を排出しやすくなる。一方、高分子樹脂は、前記割合が低いほど親水性が高くなり、水分をガス拡散層内に閉じ込めやすくなる。従って、アノードガス拡散層14Aよりもカソードガス拡散層14Cに含まれる高分子樹脂の量を増やすことによって、アノードガス拡散層14Aには高い保水性を持たせる一方で、カソードガス拡散層14Cには高いガス拡散性を持たせることができる。これにより、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
また、高分子樹脂は、バインダー効果を有しているので、薄いガス拡散層を製造する場合には、高分子樹脂の組成比率を高くすることによって、強度を高くすることができる。なお、高分子樹脂の組成比率は10%〜17%であることが好ましい。高分子樹脂の組成比率が10%以下である場合には、ガス拡散層の強度が著しく低下し、自己支持体として製造することが困難である。また、高分子樹脂は絶縁体であるので、高分子樹脂の組成比率が17%以上である場合には、ガス拡散層の内部抵抗が増加して、電圧が低下するおそれがある。なお、高分子樹脂の組成比率が10%〜17%であることが好ましい理由については、実験データを参照しながら後で詳しく説明する。
以上、本実施形態にかかる燃料電池によれば、アノードガス拡散層14Aを導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成して、その多孔度を60%以下としているので、高温・低加湿の運転条件下においても、アノードガス拡散層14Aの保水性を高くすることができる。ここで、高温・低加湿の運転条件とは、例えば、燃料電池に供給される燃料ガス及び酸化剤ガスの露点が燃料電池の運転温度よりも低い運転条件をいう。高温・低加湿の運転条件下においては、高分子電解質膜11の乾燥による発電性能の低下が特に顕著となる。従って、高温・低加湿の運転条件下においては、特に、ガス拡散層(特に、アノードガス拡散層14A)に保水性の高いものを用いることが望まれる。一方、本実施形態にかかる燃料電池において、カソードガス拡散層14Cの多孔度は、アノードガス拡散層14Aの多孔度より大きくしているので、ガス拡散性を高くすることができる。すなわち、アノードガス拡散層14Aとカソードガス拡散層14Cとを、従来のように同じ構成とするのではなく、それぞれに適した構成としているので、従来に比べて発電性能を一層向上させることができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cには、導電性粒子及び高分子樹脂以外に、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの製造時に使用する界面活性剤及び分散溶媒などが微量含まれていてもよい。分散溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、エチレングリコールなどにグリコール類が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン系、アルキルアミンオキシドなどの両性イオン系が挙げられる。製造時に使用する分散溶媒の量及び界面活性剤の量は、導電性粒子の種類、高分子樹脂の種類、それらの配合比率などに応じて適宜設定すればよい。なお、一般的には、分散溶媒の量及び界面活性剤の量が多いほど、導電性粒子と高分子樹脂とが均一に分散しやすい一方で、流動性が高くなり、ガス拡散層のシート化が難しくなる傾向がある。
また、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cには、それらに含まれる高分子樹脂よりも少ない重量(基材としては成立しない重量)の炭素繊維が含まれてもよい。すなわち、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cは、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とし、基材としては成立しない重量の炭素繊維が添加されたシート状で且つゴム状の多孔質部材で構成されてもよい。この場合、炭素繊維を基材として使用しないので、燃料電池の低コスト化を図ることができる。また、炭素繊維は補強効果があるので、炭素繊維の配合比率を高くすることによって、強度の高いガス拡散層を製造することができる。これにより、バインダーとして作用する高分子樹脂の配合量を少なくすることが可能となる。また、絶縁体である高分子樹脂の配合比率を低くすることができるので、発電性能の向上を図ることができる。ガス拡散層に炭素繊維を含有させることは、薄いガス拡散層を製造するときに、特に有効である。
前記のような炭素繊維が添加されたガス拡散層の製造方法としては、例えば、図5に示すような方法が挙げられる。
まず、ステップS11では、導電性粒子と高分子樹脂と炭素繊維と界面活性剤と分散溶媒とを混錬する。
ステップS12では、混錬して得た混錬物をロールプレス機又は平板プレス機などで圧延してシート状に成形する。
ステップS13では、シート状に成形した混錬物を焼成して、前記混錬物中から界面活性剤と分散溶媒とを除去する。
ステップS14では、界面活性剤と分散溶媒とを除去した混錬物を再圧延して厚さを調整する。
これにより、前記のような炭素繊維が添加されたガス拡散層を製造することができる。
また、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cにおいて、炭素繊維の組成比率は、2.0%以上7.5%未満であることが好ましい。炭素繊維の組成比率が7.5%以上である場合には、炭素繊維が高分子電解質膜11を突き刺して、高分子電解質膜11を損傷させるおそれがある。また、炭素繊維には、ガス拡散層の内部抵抗を低下させるのにも役立つ。このため、炭素繊維の組成比率を2.0%以上とすると、内部抵抗を低下させる効果を十分に得ることができる。なお、炭素繊維の組成比率が2.0%以上7.5%未満であることが好ましい理由については、実験データを参照しながら後で詳しく説明する。
また、カソードガス拡散層14Cに含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量は、アノードガス拡散層14Aに含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量より大きいことが好ましい。炭素繊維は炭素粒子に比べて嵩密度が小さく細孔量が多いため、ガス拡散層の多孔度を高くするには、炭素繊維の組成比率を高くすることが有効である。従って、カソードガス拡散層14Cに含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量を、アノードガス拡散層14Aに含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量より大きくすることによって、カソードガス拡散層14Cの多孔度に対してアノードガス拡散層14Aの多孔度をより大きくすることができる。
上述の炭素繊維の材料としては、例えば、気相成長法炭素繊維(以下、VGCFという)、ミルドファイバー、カットファイバー、チョップファイバーなどが挙げられる。前記炭素繊維としてVGCFを使用する場合、例えば、繊維径0.15μm、繊維長15μmのものを使用すればよい。また、前記炭素繊維としてミルドファイバー、カットファイバー、又はチョップファイバーを使用する場合、例えば、繊維径5〜20μm、繊維長20μm〜100μmであるものを使用すればよい。
前記ミルドファイバー、カットファイバー、又はチョップファイバーの原料は、PAN系、ピッチ系、レイヨン系のいずれでもよい。また、前記ファイバーは、原糸(長繊維フィラメント又は短繊維ステーブル)を切断、裁断することにより作製された短繊維の束を分散させて使用することが好ましい。
また、燃料電池において、発電性能を向上させるには、発電温度、燃料極側加湿露点、空気極側加湿露点、燃料ガス利用率、空気利用率、セパレータの流路形状、触媒層の仕様等の最適化を図ることが有効である。特に、ガス拡散層を構成する物性パラメータのうち、厚さと多孔度は、電圧変動に対する感度が高い。このため、高温・低加湿の運転条件下において、発電性能を向上させるには、ガス拡散層の厚さ又は多孔度の最適化を図ることが、より有効である。
従って、図6に示すように、アノードガス拡散層14Aのよりもカソードガス拡散層14Cの厚さを薄くすることが好ましい。拡散法則に従うと、ガス拡散層の厚さ以外の物性が同一の場合、セパレータから触媒層までの距離が短いほど(すなわちガス拡散層の厚さが薄いほど)、反応ガスが触媒層に到達しやすくなる。カソードガス拡散層14Cは生成水によってガス拡散性が低下しやすいため、カソードガス拡散層14Cの厚さをアノードガス拡散層14Aの厚さよりも薄くすることによって、ガス拡散性を高くすることができる。これにより、発電性能を向上させることができる。
また、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの厚さは、150μm以上600μm以下であることが好ましい。この理由については、実験データを参照しながら後で詳しく説明する。また、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの厚さは、200μm以上400μm以下であることがさらに好ましい。アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの厚さが200μmより小さい場合には、発電性能が顕著に低下することを実験により確認している。これは、ガス拡散層の厚さが薄くなることでガス拡散性が高くなり、保水性が低下して高分子電解質膜が乾燥し、膜抵抗が増加するためと考えられる。一方、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの厚さが400μmより大きい場合にも、発電性能が顕著に低下することを実験により確認している。これは、ガス拡散層の厚さが厚くなることで、ガス拡散層の内部抵抗が増加するためと考えられる。この理由についても、実験データを参照しながら後で詳しく説明する。
(導電性粒子の配合比率について)
次に、表1を用いて、平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料(導電性粒子)を用いてガス拡散層を構成した場合における、平均粒子径の大きな導電性粒子と平均粒子径の小さな導電性粒子との好ましい配合比率について説明する。なお、ここでは、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層とを同じ構成(厚さ、多孔度等)としている。
Figure 2010050218

表1は、ガス拡散層の厚さを400μmで固定し、平均粒子径の大きな導電性粒子の一例としてのグラファイトと平均粒子径の小さな導電性粒子の一例としてのアセチレンブラックとの配合比率を変化させたときの、ガス拡散層の多孔度、燃料電池の抵抗値及び電圧値を示す表である。ここでは、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率が異なる燃料電池のサンプル1〜7を以下で説明するように製造して、各サンプル1〜7のガス拡散層の多孔度、抵抗値及び電圧値を測定した。
以下、各サンプル1〜7に共通する燃料電池の製造方法について説明する。
まず、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製デンカブラック:登録商標)とグラファイト(和光純薬工業株式会社製)を合計150g、界面活性剤(トライトンX:登録商標)7.5g、水170gをミキサーに投入する。その後、ミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記各材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物に高分子樹脂としてPTFEディスパージョン70g(旭硝子株式会社製AD911)を混合して、さらに5分間攪拌する。
このようにして得られた混練物をミキサーの中から40g取り出し、延伸ロール機(ギャップ600μmに設定)にて圧延してシート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて300℃で30分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(ギャップ400μm)にて圧延して厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。このようにして、厚さ400μmのゴム状のガス拡散層を製造する。
前記ガス拡散層の製造と同時的に又はそれに続いて、高分子電解質膜(Dupont社製Nafion112:登録商標)の両面に、触媒層として、白金坦持カーボン(田中貴金属社製TEC10E50E)とイオン交換樹脂(旭硝子株式会社製Flemion:登録商標)の混合物を塗布する。その後、当該混合物を乾燥して膜・触媒層接合体を得る。なお、このとき、高分子電解質膜の大きさは15cm角とし、触媒層の大きさは5.8cm角とする。また、白金の使用量は、アノード電極側0.35mg/cmとし、カソード電極側0.6mg/cmとする。
次いで、前記膜・触媒層接合体の両面に前記製造したガス拡散層を配置して、ホットプレス接合(80℃、10kgf/cm)し、MEAを製造する。
次いで、製造したMEAを一対のセパレータ(東海カーボン製)で挟み込み、この状態で位置ずれしないように締結圧力が10kgf/cmとなるまで加圧する。
以上のようにして、燃料電池の単電池(セル)を製造する。
サンプル1〜7は、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率を異ならせるだけで製造することができる。
次に、ガス拡散層の多孔度の測定方法(算出方法)について説明する。
まず、ガス拡散層を構成する各材料の真密度と組成比率から、製造したガス拡散層の見かけ真密度を算出する。
次いで、製造したガス拡散層の重量、厚さ、縦横寸法を測定して、製造したガス拡散層の密度を算出する。
次いで、多孔度=(ガス拡散層の密度)/(見かけ真密度)×100の式に、前記算出したガス拡散層の密度及び見かけ真密度を代入し、多孔度を算出する。
以上のようにして、製造したガス拡散層の多孔度を測定することができる。
なお、製造したガス拡散層の細孔径分布を、水銀ポロシメータを用いて測定したところ、累積細孔量から算出できる多孔度と、前記のようにして算出した多孔度とが一致していることを確認している。
表1を参照してサンプル2〜7を比較すると、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率が1:2から1:0になる程(すなわち、グラファイトの占有率が低くなる程)、多孔度が高くなることが分かる。また、前記配合比率が1:0である(すなわち、アセチレンブラックのみである)サンプル7では、多孔度は70%であった。なお、延伸ロール機のギャップを調整するなどしたが、アセチレンブラック単体では多孔度を70%未満にすることができなかった。
一方、前記配合比率が1:2から1:2.3になると(すなわち、グラファイトの量がアセチレンブラックの量の2倍よりも多くなると)、多孔度は65%と大幅に高くなった。なお、多孔度が42%未満のガス拡散層の製造を試みたが、前記配合比率、混錬条件、焼成条件、圧延条件などを変えても製造できなかった。これは、前記配合比率が1:2のとき最密充填構造が形成される一方、グラファイトの量がアセチレンブラックの量の2倍よりも多くなると最密充填構造が形成されないためと考えられる。
次に、表1に示したサンプル1〜7の抵抗値及び電圧値の測定方法について説明する。
まず、各サンプルにそれぞれ電子負荷機(菊水電気製PLZ−4W)を接続する。
次いで、アノード電極に燃料ガスとして純水素を流し、カソード電極に酸化剤ガスとして空気を流す。このとき、利用率は、それぞれ70%、40%とする。また、ガス加湿露点は、アノード電極65℃、カソード電極35℃に設定する。また、セル温度は、90℃に設定する。
次いで、電流密度0.2A/cm時の電圧値と抵抗値とを測定する。なお、発電中の抵抗値の測定には、交流4端子法式抵抗計(鶴賀電機製MODEL3566)を使用する。
なお、測定した抵抗値には、高分子電解質膜の湿潤状態を示すプロトン伝導抵抗(膜抵抗)と、ガス拡散層を含む各部材の内部抵抗(電気伝導抵抗)と、各部材間の接触抵抗(電気伝導抵抗)とが含まれている。
表1を参照してサンプル1〜7を比較すると、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率が1:2から1:0になる程、言い換えれば、多孔度が大きくなる程、抵抗値は高くなり、電圧値は低くなることが分かる。また、前記配合比率が1:0.7であるサンプル5と、前記配合比率が1:0.5であるサンプル6とを比較すると、抵抗値及び電圧値が急激に変化していることが分かる。すなわち、多孔度が60%よりも大きくなると、抵抗値が急激に高くなり、電圧値が急激に低くなることが分かる。一方、前記配合比率が1:2であるサンプル2と前記配合比率が1:2.3であるサンプル1とを比較すると、サンプル1の方が、抵抗値が大幅に高く、電圧値が大幅に低くなっていることが分かる。すなわち、多孔度が60%よりも大きくなると、抵抗値が急激に高くなり、電圧値が急激に低くなることが分かる。
これは、多孔度が60%よりも大きい場合には、ガス拡散層が疎な構造であるため、燃料電池内のガスと水の移動が容易となって系外に水又は水蒸気が排出されやすくなり、保水性が低下するためであると考えられる。保水性が低下した場合には、抵抗成分(特に膜抵抗)が増加し、これにより電圧は低下することとなる。
なお、多孔度が42%未満であるガス拡散層はここでは製造していないが、多孔度が低いとガス拡散性能が低下するため、十分な電気化学反応が起こらず、電圧値は低下すると考えられる。
従って、以上の試験結果及び考察から、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率は、1:0.7〜1:2であることが好ましいと考えられる。また、表1の各サンプルの電圧値を考慮すると、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率は、1:1.5〜1:2であることがさらに好ましいと考えられる。また、多孔度は42%以上60%以下であることが好ましいと考えられる。また、表1の各サンプルの電圧値を考慮すると、多孔度は42%以上50%以下であることがさらに好ましいと考えられる。
(厚さについて)
次に、表2を用いて、ガス拡散層の好ましい厚さについて説明する。なお、ここでは、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層とを同じ構成(厚さ、多孔度等)としている。
Figure 2010050218

表2は、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率を1:2で固定し、ガス拡散層の厚さを変化させたときの、燃料電池の抵抗値及び電圧値を示す表である。なお、多孔度は、前記配合比率により決まるため一律45%となる。ここでは、ガス拡散層の厚さが異なる燃料電池のサンプル8〜16を以下で説明するように製造して、各サンプルの抵抗値及び電圧値を測定した。なお、抵抗値及び電圧値の測定方法は、表1にて説明したサンプル1〜7の抵抗値及び電圧値の測定方法と同様である。
以下、各サンプルに共通する燃料電池の製造方法について説明する。なお、表1にて説明したサンプル1〜7の製造方法と同様の部分については、重複する説明を省略しながら説明する。
まず、アセチレンブラック50gとグラファイト100g、界面活性剤7.5g、水170gをミキサーに投入する。その後、ミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記各材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物に高分子樹脂としてPTFEディスパージョン35gを混合して、さらに5分間攪拌する。
このようにして得られた混練物をミキサーの中から取り出し、延伸ロール機のギャップを調整して圧延し、シート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて300℃で30分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機のギャップを調整して圧延し、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行う。この後、再圧延した前記混錬物を6cm角に裁断して、ゴム状のガス拡散層を製造する。
前記ガス拡散層の製造と同時的に又はそれに続いて、高分子電解質膜の両面に、触媒層として、白金坦持カーボンとイオン交換樹脂の混合物を塗布する。その後、当該混合物を乾燥して膜・触媒層接合体を得る。
次いで、前記膜・触媒層接合体の両面に前記製造したガス拡散層を配置して、ホットプレス接合し、MEAを製造する。この後、製造したMEAを一対のセパレータで挟み込み、この状態で位置ずれしないように締結圧力が10kgf/cmとなるまで加圧する。
以上のようにして、燃料電池の単電池(セル)を製造する。
サンプル8〜16は、圧延時に延伸ロール機のギャップを変更することで製造することができる。
表2を参照して、厚さが300μmであるサンプル10と厚さが250μmであるサンプル9の抵抗値及び電圧値を比較すると、サンプル9の方が、抵抗値が大幅に高く、電圧値が大幅に低くなっていることが分かる。これは、厚さが薄くなることでガス拡散層のガス透過性が向上したために、低加湿運転下での保水性(保湿性)が低下して高分子電解質膜が乾燥し、膜抵抗が増加したためと考えられる。
また、表2を参照して、厚さが600μmであるサンプル14と厚さが650μmであるサンプル15の抵抗値及び電圧値を比較すると、サンプル15のほうが、抵抗値が大幅に高く、電圧値が大幅に低くなっていることが分かる。これは、厚さが厚くなることでガス拡散層の内部抵抗(電気伝導抵抗)が増加したためと考えられる。また、厚さが厚くなることでガス拡散層のガス透過性が低下し、燃料ガス及び酸化剤ガスが触媒層に到達しにくくなったために十分な電気化学反応が起こらなかったためと考えられる。
従って、以上の試験結果及び考察から、ガス拡散層の厚みは、300μm以上600μm以下であることが好ましいと考えられる。また、表2の各サンプルの電圧値を考慮すると、ガス拡散層の厚みは350μm以上500μm以下であることがさらに好ましいと考えられる。
なお、前記サンプル2の製造方法とは異なる2つの製造方法により、サンプル2のガス拡散層と同じ配合比率、厚さ、多孔度を有するガス拡散層を製造し、当該ガス拡散層を備える燃料電池の抵抗値及び電圧値を測定したところ、サンプル2と同じ抵抗値及び電圧値であることを確認している。
一方の製造方法は、具体的には次のような方法である。
まず、前記ミキサーで混練して得た混練物を、延伸ロール機に代えて押出成形機(2軸フルフライトスクリューの長さ50cm、Tダイの幅7cm、ギャップ600μm)を用い、厚さ600μm、幅7cmのシート状に成形する。この後、シート状にした前記混錬物を、プログラム制御式の焼成炉にて300℃で30分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、延伸ロール機のギャップを400μmに調整して再圧延し、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行う。この後、再圧延した前記混錬物を6cm角に裁断する。このようにして、サンプル2と同様の厚さ400μm、多孔度42%のゴム状のガス拡散層を得た。
また、他方の製造方法は、具体的には次のような方法である。
まず、サンプル2と同じ組成の材料を、ミキサーに代えて押出成形機(2軸フルフライトスクリューの長さ100cm、Tダイの幅7cm、ギャップ600μm)を用いて、混練し、押し出しし、且つシート状に成形する。この後、シート状にした混錬物を、プログラム制御式の焼成炉にて300℃で30分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、延伸ロール機のギャップを400μmに調整して再圧延し、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行う。この後、再圧延した前記混錬物を6cm角に裁断する。このようにして、サンプル2と同様の厚さ400μm、多孔度42%のゴム状のガス拡散層を得た。
(炭素繊維の配合比率について)
次に、表3を用いて、炭素繊維の好ましい配合比率について説明する。なお、ここでは、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層とを同じ構成(厚さ、多孔度等)としている。
Figure 2010050218

表3は、ガス拡散層の厚さを400μm、高分子樹脂の一例としてのPTFEの配合比率を10%に固定し、炭素繊維の一例としてのVGCFの配合比率を変化させたときの、内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷(マイクロショート)の有無を示す表である。ここでは、VGCFの配合比率が異なるガス拡散層のサンプル17〜23を以下で説明するように製造して、各サンプル17〜23のガス拡散層の内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷の有無を調べた。なお、炭素繊維は、高分子電解質膜よりも通常硬い材料で構成されるので、炭素繊維の配合比率によっては、高分子電解質膜を突き刺し、高分子電解質膜に損傷を与える恐れがある。高分子電解質膜の損傷は、燃料電池としての耐久性の低下に繋がる恐れがある。このため、表3では、高分子電解質膜の損傷の有無について記載している。
以下、各サンプル17〜23に共通するガス拡散層の製造方法について説明する。
まず、平均粒子径が小さい導電性粒子の一例としてのアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製デンカブラック:登録商標)と、平均粒子径が大きい導電性粒子の一例としてのグラファイト(和光純薬工業株式会社製)と、VGCF(昭和電工製、繊維径0.15μm、繊維長15μm)と、界面活性剤(トライトンX:登録商標)4gと、分散溶媒の一例としての水200gとをミキサーに投入する。このとき、アセチレンブラックとグラファイトとVGCFの合計量は133gとし、アセチレンブラックとグラファイトの配合比率は1:1.6となるようにする。
前記各材料をミキサー内に投入後、ミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記各材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物に高分子樹脂としてPTFEディスパージョン25g(旭硝子株式会社製AD911、固形分比60%)を混合して、さらに5分間攪拌する。
このようにして得られた混練物をミキサーの中から20g取り出し、延伸ロール機(ギャップ600μmに設定)にて圧延してシート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて300℃で2時間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(ギャップ400μm)にて圧延して厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。このようにして、厚さ400μmのゴム状のガス拡散層を製造する。
サンプル17〜23は、VGCFの配合比率を異ならせるだけで製造することができる。
なお、例えば、サンプル18では、アセチレンブラック50g、グラファイト80g、VGCF3gとしている。この場合、VGCFの配合比率(重量換算)とPTFEの配合比率(重量換算)は、次のようにして求めることができる。
VGCFの配合比率:VGCF3g÷(アセチレンブラック50g+グラファイト80g+VGCF3g+PTFE25g×60%)×100=約2.0%
PTFEの配合比率:PTFE25g×60%÷(アセチレンブラック50g+グラファイト80g+VGCF3g+PTFE25g×60%)×100=約10.0%
次に、表3に示したサンプル17〜23のガス拡散層の内部抵抗(電気伝導性)の測定方法について説明する。
まず、各サンプルを直径4cmになるように型抜きする。
次いで、各サンプルにそれぞれ、圧縮試験機(島津製作所製、EZ−graph)を用いて圧力(面圧)が1.5kg/cmになるように圧縮荷重をかける。
この状態で、交流4端子法式抵抗計(鶴賀電機製、MODEL3566)を用いて内部抵抗値を測定する。
次に、表3に示したサンプル17〜23のガス拡散層が取り付けられた高分子電解質膜の損傷の有無の判定方法について説明する。
まず、高分子電解質膜の損傷の有無の判定のため、各サンプル毎に、擬似燃料電池セル(触媒層無し)を製造する。具体的には、VGCFの配合比率が同じである1組のサンプルを高分子電解質膜(Dupont社製Nafion112:登録商標)の両面に配置してホットプレス接合(80℃、10kgf/cm)し、MEAを製造する。この後、製造したMEAを一対のセパレータ(東海カーボン製)で挟み込み、この状態で位置ずれしないように締結圧力が10kgf/cmとなるまで加圧する。このようにして擬似燃料電池セルを製造する。
次いで、前記のようにした擬似燃料電池セルに電気化学測定システム(北斗電工社製、HZ−3000)を接続する。
次いで、前記擬似燃料電池セルに0.4Vの負荷をかけ、その時の電流値を測定する。
ここで、高分子電解質膜に損傷があった場合、マイクロショートにより300mA以上の高電流が測定されると考えられる。
このため、測定された電流値が300mA以上であった場合、損傷「有り」と判定し、測定された電流値が300mA未満であった場合、損傷「無し」と判定する。
次に、前記のようにして測定又は判定された試験結果についての考察を述べる。
表3を参照してサンプル17〜23の内部抵抗値を比較すると、VGCFの配合比率が低くなる程、内部抵抗値が増加することが分かる。また、VGCFの配合比率が2.0重量%であるサンプル18と、VGCFの配合比率が1.5重量%であるサンプル17とを比較すると、内部抵抗値が大幅に変化していることが分かる。すなわち、VGCFの配合比率が2.0重量%より低い場合には、内部抵抗値が急激に高くなることが分かる。このため、VGCFの配合比率は2.0重量%以上であることが好ましいと考えられる。
表3を参照して高分子電解質膜の損傷の有無を検討すると、VGCFの配合比率が7.5重量%以下であるサンプル17〜21を用いた擬似燃料電池セルでは高分子電解質膜に損傷が無かった。これに対して、VGCFの配合比率が7.5重量%より大きいサンプル22,23を用いた擬似燃料電池セルでは高分子電解質膜に損傷が有った。
従って、以上の試験結果及び考察から、VGCFの配合比率は2.0重量%以上7.5重量%以下であることが好ましいと考えられる。
なお、VGCFに代えてチョップファイバー(クレハ株式会社製M−201F、繊維径12.5μm、繊維長150μm)を用いた以外はサンプル18と同じの製造方法でガス拡散層を製造し、当該ガス拡散層の内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷の有無を調べたところ、サンプル18と同じ結果を得た。すなわち、内部抵抗値は50mΩ・cmであり、高分子電解質膜の損傷は無かった。また、VGCFに代えて、ミルドファイバー(クレハ株式会社製M−2007S、繊維径14.5μm、繊維長90μm)、カットファイバー(東レ株式会社製T008−3、繊維径7μm)、又はミルドファイバー(東レ株式会社製MLD−30、繊維径7μm、繊維長30μm)を用いた場合においても、同様に、サンプル18と同じ結果を得た。
(高分子樹脂の配合比率について)
次に、表4を用いて、高分子樹脂の好ましい配合比率について説明する。なお、ここでは、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層とを同じ構成(厚さ、多孔度等)としている。
Figure 2010050218

表4は、ガス拡散層の厚さを400μm、炭素繊維の一例としてのVGCFの配合比率を2.0重量%に固定し、高分子樹脂の一例としてのPTFEの配合比率を変化させたときの、内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷の有無を示す表である。PTFEディスパージョンの混合量を異ならせた点以外は、表3にて説明したサンプル18と同様の製造方法でサンプル24〜29のガス拡散層を製造している。また、内部抵抗値の測定方法及び高分子電解質膜の損傷の有無の判定方法は、表3にて説明したサンプル17〜23の内部抵抗値の測定方法及び高分子電解質膜の損傷の有無の判定方法と同様である。
次に、前記のようにして測定又は判定された試験結果についての考察を述べる。
表4を参照してサンプル24〜29の内部抵抗値を比較すると、PTFEの配合比率が高くなる程、内部抵抗値が増加することが分かる。また、PTFEの配合比率が17重量%であるサンプル27と、PTFEの配合比率が20重量%であるサンプル28とを比較すると、内部抵抗値が大幅に変化していることが分かる。すなわち、PTFEの配合比率が17重量%より高い場合には、内部抵抗値が急激に高くなることが分かる。
なお、PTFEの配合比率が10重量%未満であるシート状のガス拡散層の製造を試みたが、VGCFの配合比率、混練時間、混練速度、圧延条件などの様々な条件を変えても、製造することができなかった。これは、PTFEの配合比率が低くなることで、PTFEのバインダーとしての機能が弱くなり、導電性材料同士の結着性が低下したためと考えられる。
従って、以上の試験結果及び考察から、PTFEの配合比率は10重量%以上17重量%以下であることが好ましいと考えられる。
一方、高分子電解質膜の損傷の有無については、サンプル24〜29とも高分子電解質膜の損傷は無かった。これにより、高分子電解質膜の損傷の有無はPTFEの配合比率に影響されないことが分かる。
(厚さについて)
次に、表5を用いて、炭素繊維を添加したときのガス拡散層の好ましい厚さについて説明する。なお、ここでは、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層とを同じ構成(厚さ、多孔度等)としている。
Figure 2010050218

表5は、炭素繊維の一例としてのVGCFの配合比率を2.0重量%、高分子樹脂の一例としてのPTFEの配合比率を10重量%に固定し、ガス拡散層の厚さを変化させたときの、内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷の有無を示す表である。ここでは、厚さが異なるガス拡散層のサンプル30〜35を以下で説明するように製造して、各サンプルの内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷の有無を調べた。なお、内部抵抗値の測定方法及び高分子電解質膜の損傷の有無の判定方法は、表3にて説明したサンプル17〜23の内部抵抗値の測定方法及び高分子電解質膜の損傷の有無の判定方法と同様である。
以下、各サンプルに共通するガス拡散層の製造方法について説明する。なお、表3にて説明したサンプル17〜23の製造方法と同様の部分については、重複する説明を省略しながら説明する。
まず、アセチレンブラック50gと、グラファイト80gと、VGCF3gと、界面活性剤4gと、水200gとをミキサーに投入する。前記各材料をミキサー内に投入後、ミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記各材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物にPTFEディスパージョン25gを混合して、さらに5分間攪拌する。
このようにして得られた混練物をミキサーの中から取り出し、延伸ロール機のギャップを調整して圧延し、シート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて300℃で2時間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機のギャップを調整して圧延し、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行う。この後、再圧延した前記混錬物を6cm角に裁断する。
以上のようにして、ゴム状のガス拡散層を製造する。
サンプル30〜35は、圧延時に延伸ロール機のギャップを変更することで製造することができる。
次に、前記のようにして測定又は判定された試験結果についての考察を述べる。
表5を参照してサンプル30〜35の内部抵抗値を比較すると、ガス拡散層の厚みが厚くなる程、内部抵抗値が増加することが分かる。また、厚さが600μmであるサンプル33と厚さが650μmであるサンプル34の内部抵抗値を比較すると、サンプル34の方が、内部抵抗値が大幅に高くなっていることが分かる。なお、厚さが150μm未満であるシート状のガス拡散層の製造を試みたが、強度が不足し、安定的に内部抵抗を測定することができなかった。また、仮に製造できたとしても、厚さが薄くなることでガス拡散層のガス透過性が向上するために、低加湿運転下での保水性(保湿性)が低下して高分子電解質膜が乾燥し、内部抵抗は増加すると推測される。
従って、以上の試験結果及び考察から、ガス拡散層の厚さは150μm以上600μm以下であることが好ましいと考えられる。
一方、高分子電解質膜の損傷の有無については、サンプル30〜35とも高分子電解質膜の損傷は無かった。これにより、高分子電解質膜の損傷の有無はガス拡散層の厚さに影響されないことが分かる。
なお、前記サンプル18の製造方法とは異なる2つの製造方法により、サンプル18のガス拡散層と同様のVGCFの配合比率(2.0重量%)、PTFEの配合比率(10重量%)、及び厚さ(400μm)を有するガス拡散層を製造し、内部抵抗値及び高分子電解質膜の損傷の有無を調べたところ、サンプル18と同じ結果を得た。すなわち、内部抵抗値は50mΩ・cmであり、高分子電解質膜の損傷は無かった。
一方の製造方法は、具体的には次のような方法である。
まず、前記ミキサーで混練して得た混練物を、延伸ロール機に代えて押出成形機(2軸フルフライトスクリューの長さ50cm、Tダイの幅7cm、ギャップ600μm)を用い、厚さ600μm、幅7cmのシート状に成形する。この後、シート状にした前記混錬物を、プログラム制御式の焼成炉にて300℃で30分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、延伸ロール機のギャップを400μmに調整して再圧延し、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行う。この後、再圧延した前記混錬物を6cm角に裁断する。このようにして、サンプル18と同様のVGCFの配合比率、PTFEの配合比率、厚さを有するガス拡散層を得た。
また、他方の製造方法は具体的には次のような方法である。
まず、サンプル18と同じ組成の材料を、ミキサーに代えて押出成形機(2軸フルフライトスクリューの長さ100cm、Tダイの幅7cm、ギャップ600μm)を用いて、混練し、押し出しし、且つシート状に成形する。この後、シート状にした混錬物を、プログラム制御式の焼成炉にて300℃で30分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、延伸ロール機のギャップを400μmに調整して再圧延し、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行う。この後、再圧延した前記混錬物を6cm角に裁断する。このようにして、サンプル18と同様のVGCFの配合比率、PTFEの配合比率、厚さを有するガス拡散層を得た。
なお、炭素繊維を全く使用することなくPTFEの配合量の低減を試みたところ、PTFEの配合比率が20重量%の場合、前記各サンプルと同様の製造方法によってシート状のガス拡散層を製造することができた。しかしながら、当該ガス拡散層の内部抵抗値は、PTFEの配合比率が20重量%であるサンプル28の内部抵抗値(78mΩ・cm)よりも高くなった。これにより、炭素繊維を使用することが内部抵抗値の増加の抑制に効果があることが分かる。
また、炭素繊維を全く使用することなくPTFEの配合比率の低減を試みたが、シート状のガス拡散層としての強度を十分に確保することができなかった。すなわち、炭素繊維を使用した場合にはPTFEの配合比率を20重量%未満にすることが可能であるが、炭素繊維を使用しない場合にはPTFEの配合比率を20重量%未満にすることができなかった。このことから、炭素繊維を使用することが、シート状のガス拡散層としての強度の強化に効果があることが分かる。
次に、本実施形態にかかる燃料電池の発電性能を検証した結果について説明する。
まず、表6を用いて、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの多孔度の違いによる発電性能の検証結果について説明する。
Figure 2010050218

表6において、サンプル36は、本実施形態にかかる燃料電池であり、サンプル37〜39は、その比較例として製造した燃料電池である。サンプル36〜39は、多孔度55%のガス拡散層と多孔度70%のガス拡散層の2種類のガス拡散層を用意し、それらを組み合わせて構成したものである。具体的には、サンプル36は、アノードガス拡散層14Aとして多孔度55%のガス拡散層を用い、カソードガス拡散層14Cとして多孔度70%のガス拡散層を用いた燃料電池である。サンプル37は、アノードガス拡散層14Aとして多孔度70%のガス拡散層を用い、カソードガス拡散層14Cとして多孔度70%のガス拡散層を用いた燃料電池である。サンプル38は、アノードガス拡散層14Aとして多孔度70%のガス拡散層を用い、カソードガス拡散層14Cとして多孔度55%のガス拡散層を用いた燃料電池である。サンプル39は、アノードガス拡散層14Aとして多孔度55%のガス拡散層を用い、カソードガス拡散層14Cとして多孔度55%のガス拡散層を用いた燃料電池である。各ガス拡散層の厚さは、全て400μmとしている。
厚さ400μm、多孔度55%のガス拡散層、すなわち、サンプル36及び39のアノードガス拡散層14Aと、サンプル38及び39のカソードガス拡散層14Cは、以下のようにして製造している。
まず、平均粒径が小さい導電性粒子の一例としてのアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製デンカブラック:登録商標、粒子径D50=5μm)50gと、平均粒子径が大きい導電性粒子の一例としての人造黒鉛粉末(昭和電工製SCMG−AR、D50=20μm)100gと、VGCF(昭和電工製:繊維径0.15μm、繊維長15μm)2gと、界面活性剤(トライトンX:登録商標)12gと、分散溶媒の一例としての水500gとをプラネタリミキサーに投入する。
前記各材料をプラネタリミキサーに投入後、プラネタリミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記各材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物に高分子樹脂としてPTFEディスパージョン35g(旭硝子株式会社製AD911、固形分比60%)を混合して、さらに、プラネタリミキサーの回転数を100rpmとして5分間攪拌する。
このようにして得られた混練物をプラネタリミキサーの中から20g取り出し、延伸ロール機(圧力200kg/cm、ギャップ600μmに設定)にて圧延してシート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて、300℃で20分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(圧力500kg/cm、ギャップ380μm)にて圧延して、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。
これにより、厚さ400μm、多孔度55%のガス拡散層を得ることができる。
なお、製造したガス拡散層の炭素繊維(VGCF)の配合比率を計算により求めたところ、シート全体の3.9%(重量換算)であった。また、製造したガス拡散層のPTFEの配合比率を計算により求めたところ、12%(重量換算)であった。
また、多孔度70%のガス拡散層、すなわち、サンプル37及び38のアノードガス拡散層14Aとサンプル36及び37のカソードガス拡散層14Cは、以下のようにして製造している。
まず、導電性粒子の一例としてのアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製デンカブラック)100gと、VGCF(昭和電工製:繊維径0.15μm、繊維長15μm)5gと、界面活性剤(トライトンX:登録商標)12gと、分散溶媒の一例としての水500gとをミキサーに投入する。なお、使用するカーボン粉末は1種類だけである。
前記各材料をミキサーに投入後、ミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物に高分子樹脂としてPTFEディスパージョン35g(旭硝子株式会社製AD911、固形分比60%)を混合して、さらに、ミキサーの回転数を100rpmとして5分間攪拌する。
このようにして得られた混練物をミキサーの中から10g取り出し、延伸ロール機(圧力10kg/cm、ギャップ500μmに設定)にて圧延して、シート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて、300℃で20分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(圧力20kg/cm、ギャップ400μm)にて圧延し、厚さ調整、及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。
これにより、厚さ400μm、多孔度70%のガス拡散層を得ることができる。
なお、製造したガス拡散層の炭素繊維(VGCF)の配合比率を計算により求めたところ、シート全体の4.0%(重量換算)であった。また、製造したガス拡散層のPTFEの配合比率を計算により求めたところ、17%(重量換算)であった。
次に、前記製造した55%及び70%のガス拡散層を用いて、サンプル36〜39の燃料電池の製造方法について説明する。
高分子電解質膜(Dupont社製Nafion112:登録商標)の両面に、触媒層として、白金坦持カーボン(田中貴金属社製TEC10E50E)とイオン交換樹脂(旭硝子株式会社製Flemion:登録商標)の混合物を塗布する。その後、当該混合物を乾燥して膜・触媒層接合体を得る。なお、このとき、高分子電解質膜の大きさは15cm角とし、触媒層の大きさは5.8cm角とする。また、白金の使用量は、アノード電極側0.35mg/cmとカソード電極側0.6mg/cmとする。
次いで、前記膜・触媒層接合体の両面に、前記製造した多孔度55%又は70%のガス拡散層を配置して、MEAを製造する。
次いで、製造したMEAを一対のカーボンセパレータ(東海カーボン社製)で挟み込み、この状態で位置ずれしないように締結圧力が10kgf/cmとなるまで加圧する。
以上のようにして、サンプル36〜39の燃料電池を製造する。
次に、表6に示したサンプル36〜39の電圧値の測定方法について説明する。
まず、各サンプルにそれぞれ電子負荷機(菊水電気製PLZ−4W)を接続する。アノード電極に燃料ガスとして純水素を流し、カソード電極に酸化剤ガスとして空気を流す。このとき、利用率は、それぞれ70%、40%とする。また、ガス加湿露点は、アノード電極65℃、カソード電極65℃に設定する。また、セル温度は、90℃に設定する。
次いで、電流密度0.2A/cm時の電圧値を測定する。
以上のようにして、表6に示す各サンプル36〜39の電圧値を得た。
表6から分かるように、本実施形態にかかる燃料電池の構成を有するサンプル36が最も高い電圧値を得ることができた。すなわち、本実施形態にかかる燃料電池によれば、従来に比べて発電性能を一層向上させることができることが確認された。
なお、前記では、炭素繊維としてVGCFを用いてサンプル36〜39を製造したが、VGCFに代えて、チョップファイバー(クレハ株式会社製M−201F:繊維径12.5μm、繊維長150μm)、ミルドファイバー(クレハ株式会社製M−2007S:繊維径14.5μm、繊維長90μm)、又はカットファイバー(東レ株式会社製T008−3:繊維径7μm)を用いてサンプル36〜39を製造しても、同様の電圧値が得られた。
また、前記では、プラネタリミキサーで混錬した混錬物を圧延ロール機を用いてシート状に成形したが、圧延ロール機に代えて押出成形機(2軸フルフライトスクリュー、長さ50cm、回転速度10rpm、Tダイの幅7cm、ギャップ600μm)を用いてシート状に成形するようにしても、同様の電圧値が得られた。
また、前記では、プラネタリミキサーで混錬した混錬物を圧延ロール機を用いてシート状に成形したが、押出成形機(2軸フルフライトスクリュー混錬羽根形状、長さ100cm、Tダイの幅7cm、ギャップ600μm)に材料を直接投入して、混錬、押し出し、シート成形するようにしても、同様の電圧値が得られた。
次に、表7を用いて、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの好ましい厚さについて説明する。
Figure 2010050218

表7において、サンプル40〜43は、サンプル36のアノードガス拡散層14A又はカソードガス拡散層14Cの厚さを、200μm又は600μmにしたものである。従って、サンプル40〜43において、アノードガス拡散層14Aの多孔度は55%であり、カソードガス拡散層の多孔度は70%である。
厚さ200μm、多孔度55%のガス拡散層は、以下のようにして製造することができる。
まず、前述した厚さ400μm、多孔度55%のガス拡散層と同様にして、アセチレンブラックと、人造黒鉛粉末と、VGCFと、界面活性剤と、水と、高分子樹脂との混錬物をプラネタリミキサーにて作成する。
次いで、前記混錬物をプラネタリミキサーの中から10g取り出し、延伸ロール機(圧力200kg/cm、ギャップ350μmに設定)にて圧延してシート状にする。
次いで、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて、300℃で20分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
次いで、界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(圧力500kg/cm、ギャップ180μm)にて圧延して、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。
これにより、厚さ200μm、多孔度55%のガス拡散層を得ることができる。
厚さ600μm、多孔度55%のガス拡散層は、以下のようにして製造することができる。
まず、前述した厚さ400μm、多孔度55%のガス拡散層と同様にして、アセチレンブラックと、人造黒鉛粉末と、VGCFと、界面活性剤と、水と、高分子樹脂との混錬物をプラネタリミキサーにて作成する。
次いで、前記混錬物をプラネタリミキサーの中から20g取り出し、延伸ロール機(圧力200kg/cm、ギャップ850μmに設定)にて圧延してシート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて、300℃で20分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
次いで、界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(圧力500kg/cm、ギャップ580μm)にて圧延して、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。
これにより、厚さ600μm、多孔度55%のガス拡散層を得ることができる。
厚さ200μm、多孔度70%のガス拡散層は、以下のようにして製造することができる。
まず、前述した厚さ400μm、多孔度70%のガス拡散層と同様にして、アセチレンブラックと、VGCFと、界面活性剤と、水と、高分子樹脂との混錬物をミキサーにて作成する。
次いで、前記混錬物をプラネタリミキサーの中から10g取り出し、延伸ロール機(圧力10kg/cm、ギャップ300μmに設定)にて圧延してシート状にする。
次いで、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて、300℃で20分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
次いで、界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(圧力20kg/cm、ギャップ200μm)にて圧延して、厚さ調整及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。
これにより、厚さ200μm、多孔度70%のガス拡散層を得ることができる。
また、厚さ200μm、多孔度70%のガス拡散層は、以下のようにして製造することもできる。
まず、アセチレンブラック100g、人造黒鉛粉末15gと、VGCF2gと、チョップファイバー5g(クレハ製M201F:繊維径12.5μm、繊維長150μm)と、界面活性剤(トライトンX:登録商標)20gと、水400gとをミキサーに投入する。
次いで、ミキサーの回転数を100rpmとして60分間、前記各材料を混錬する。60分経過後、前記混錬して得た混錬物に高分子樹脂としてPTFEディスパージョン36gを混合して、さらに、ミキサーの回転数を100rpmとして5分間攪拌する。なお、使用したカーボン粉末は2種類である。
このようにして得られた混練物をミキサーの中から10g取り出し、延伸ロール機(圧力10kg/cm、ギャップ300μmに設定)にて圧延して、シート状にする。この後、シート状にした前記混錬物をプログラム制御式の焼成炉にて、300℃で20分間焼成し、前記混錬物中の界面活性剤と水を除去する。
界面活性剤と水を除去した前記混錬物を焼成炉から取り出し、再び延伸ロール機(圧力20kg/cm、ギャップ200μm)にて圧延し、厚さ調整、及び厚さバラツキの低減を行ったのち、6cm角に裁断する。
これにより、厚さ200μm、多孔度70%のガス拡散層を得ることができる。
なお、製造したガス拡散層の炭素繊維(VGCFとチョップファイバーとの合計)の配合比率を計算により求めたところ、シート全体の4.9%(重量換算)であった。また、製造したガス拡散層のPTFEの配合比率を計算により求めたところ、15%(重量換算)であった。
表7に示す各サンプル40〜43の電圧値は、空気の利用率を90%とした以外は、表6に示す各サンプル36〜39の電圧値と同じ測定条件で測定して得たものである。
表7から分かるように、サンプル40においては、サンプル36よりやや高い電圧値を得ることができた。すなわち、400μmの厚さのアノードガス拡散層14Aよりもカソードガス拡散層14Cの厚さを薄くすることで、従来に比べて発電性能を一層向上させることができることが確認された。これは、カソードガス拡散層14Cを薄くすることによって、発電性能が低下すると通常考えられるが、それ以上にカソードガス拡散層14Cのガス拡散性が向上するためと考えられる。
また、表7から分かるように、サンプル41においては、サンプル36とほぼ同等の電圧値を得ることができた。すなわち、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの厚さを共に200μmまで薄くしても、発電性能はほとんど低下しないことが確認された。
また、表7から分かるように、サンプル42においては、サンプル36と比べて電圧値が大きく低下した。すなわち、400μmの厚さのカソードガス拡散層14Cよりもアノードガス拡散層14Aの厚さを薄くすると、発電性能が低下することが確認された。これは、アノードガス拡散層14Aの厚さが薄いことで保水性が低下し、且つ、カソードガス拡散層14Cの厚さが厚いことでガス拡散性が低下するためと考えられる。
また、表7から分かるように、サンプル43においては、サンプル36と比べて電圧値が大きく低下した。すなわち、アノードガス拡散層14Aの厚さを600μmまで厚くすると、発電性能が低下することが確認された。これは、アノードガス拡散層14Aの厚さが厚いことで保水性は高くなるが、その厚さが厚過ぎるために、保水性が高くなったことによる発電性能の向上効果よりも、アノードガス拡散層14Aのガス拡散性の低下による発電性能の低下が上回ったためと考えられる。
従って、表7より、アノードガス拡散層14Aの厚さは、200μm以上400μm以下であることが好ましく、カソードガス拡散層14Cの厚さは、アノードガス拡散層14Aの厚さより薄いことが好ましいことが分かる。
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明にかかる膜電極接合体及び燃料電池は、発電性能を一層向上させることができるので、例えば、自動車などの移動体、分散発電システム、家庭用のコージェネレーションシステムなどの駆動源として使用される燃料電池に有用である。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
2008年10月31日に出願された日本国特許出願No.2008−281458号、同日に出願された日本国特許出願No.2008−281553号、及び2009年6月8日に出願された日本国特許出願No.2009−137118号の明細書、図面、及び特許請求の範囲の開示内容は、全体として参照されて本明細書の中に取り入れられるものである。
1 燃料電池
10 膜電極接合体
11 高分子電解質膜
12A アノード電極
12C カソード電極
13A アノード触媒層
13C カソード触媒層
14A アノードガス拡散層
14C カソードガス拡散層
15A アノードガスケット
15C カソードガスケット
20A アノードセパレータ
20C カソードセパレータ
21A 燃料ガス流路溝
21C 酸化剤ガス流路溝
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜を挟んで互いに対向する一対の触媒層と、
前記高分子電解質膜及び前記一対の触媒層を挟んで互いに対向するアノードガス拡散層及びカソードガス拡散層と、を有し、
前記アノードガス拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成され、
前記アノードガス拡散層の多孔度は、60%以下であり、
前記カソードガス拡散層の多孔度は、60%より大きい、
膜電極接合体を提供する。
本発明の第態様によれば、前記カソードガス拡散層の厚さは、前記アノードガス拡散層の厚さより薄い、第1又は2態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層の厚さは、150μm以上600μm以下である、第態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層の厚さは、200μm以上400μm以下である、第態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第態様によれば、前記カソードガス拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されている、第1〜態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第態様によれば、前記カソードガス拡散層の多孔度は、76%以下である、第態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層に含まれる前記導電性粒子は、平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料で構成されている、第又は態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第態様によれば、前記アノードガス拡散層に含まれる平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料は、平均粒子径が小さいカーボン材料と、平均粒径が大きいカーボン材料との配合比率が、1:0.7〜1:2である、第態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第10態様によれば、前記カソードガス拡散層に含まれる高分子樹脂の単位体積当たりの重量は、前記アノードガス拡散層に含まれる高分子樹脂の単位体積当たりの重量より大きい、第態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第11態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層は、前記高分子樹脂を10重量%以上17重量%以下含む、第10態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第12態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層は、前記高分子樹脂よりも少ない重量の炭素繊維を含んでいる、第11態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第13態様によれば、前記カソードガス拡散層に含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量は、前記アノードガス拡散層に含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量より大きい、第12態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第14態様によれば、前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層は、前記炭素繊維を2.0重量%以上7.5重量%以下含む、第13態様に記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第15態様によれば、前記炭素繊維は、気相成長法炭素繊維、ミルドファイバー、チョップファイバーのうちのいずれか1つである、第1214態様にいずれか1つに記載の膜電極接合体を提供する。
本発明の第16態様によれば、第1〜15態様のいずれか1つに記載の膜電極接合体と、
前記膜電極接合体を挟むように配置された一対のセパレータと、
を備える、燃料電池を提供する。
本発明の第17態様によれば、前記燃料電池を運転する際に、前記燃料電池に供給される燃料ガス及び酸化剤ガスの露点は、前記燃料電池の運転温度より低い、第16態様に記載の燃料電池を提供する。

Claims (18)

  1. 高分子電解質膜と、
    前記高分子電解質膜を挟んで互いに対向する一対の触媒層と、
    前記高分子電解質膜及び前記一対の触媒層を挟んで互いに対向するアノードガス拡散層及びカソードガス拡散層と、を有し、
    前記アノードガス拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成され、
    前記アノードガス拡散層の多孔度は、60%以下であり、
    前記カソードガス拡散層の多孔度は、前記アノードガス拡散層の多孔度より大きい、
    膜電極接合体。
  2. 前記アノードガス拡散層の多孔度は、42%以上である、請求項1に記載の膜電極接合体。
  3. 前記カソードガス拡散層の多孔度は、60%より大きい、請求項1又は2に記載の膜電極接合体。
  4. 前記カソードガス拡散層の厚さは、前記アノードガス拡散層の厚さより薄い、請求項1〜3のいずれか1つに記載の膜電極接合体。
  5. 前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層の厚さは、150μm以上600μm以下である、請求項4に記載の膜電極接合体。
  6. 前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層の厚さは、200μm以上400μm以下である、請求項5に記載の膜電極接合体。
  7. 前記カソードガス拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されている、請求項1〜6のいずれか1つに記載の膜電極接合体。
  8. 前記カソードガス拡散層の多孔度は、76%以下である、請求項7に記載の膜電極接合体。
  9. 前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層に含まれる前記導電性粒子は、平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料で構成されている、請求項7又は8に記載の膜電極接合体。
  10. 前記アノードガス拡散層に含まれる平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料は、平均粒子径が小さいカーボン材料と、平均粒径が大きいカーボン材料との配合比率が、1:0.7〜1:2である、請求項9に記載の膜電極接合体。
  11. 前記カソードガス拡散層に含まれる高分子樹脂の単位体積当たりの重量は、前記アノードガス拡散層に含まれる高分子樹脂の単位体積当たりの重量より大きい、請求項7〜10のいずれか1つに記載の膜電極接合体。
  12. 前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層は、前記高分子樹脂を10重量%以上17重量%以下含む、請求項11に記載の膜電極接合体。
  13. 前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層は、前記高分子樹脂よりも少ない重量の炭素繊維を含んでいる、請求項7〜12のいずれか1つに記載の膜電極接合体。
  14. 前記カソードガス拡散層に含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量は、前記アノードガス拡散層に含まれる炭素繊維の単位体積当たりの重量より大きい、請求項13に記載の膜電極接合体。
  15. 前記アノードガス拡散層及び前記カソードガス拡散層は、前記炭素繊維を2.0重量%以上7.5重量%以下含む、請求項14に記載の膜電極接合体。
  16. 前記炭素繊維は、気相成長法炭素繊維、ミルドファイバー、チョップファイバーのうちのいずれか1つである、請求項13〜15のいずれか1つに記載の膜電極接合体。
  17. 請求項1〜16のいずれか1つに記載の膜電極接合体と、
    前記膜電極接合体を挟むように配置された一対のセパレータと、
    を備える、燃料電池。
  18. 前記燃料電池を運転する際に、前記燃料電池に供給される燃料ガス及び酸化剤ガスの露点は、前記燃料電池の運転温度より低い、請求項17に記載の燃料電池。
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