以下、本発明を詳細に説明する。
本発明によれば、遊離長鎖脂肪酸またはその塩および乳化剤を含有する、飲食品であって、該遊離長鎖脂肪酸またはその塩と乳化剤とは、水中油型の乳化物の状態にある、飲食品が提供される。遊離長鎖脂肪酸またはその塩の量は好ましくは約0.01重量%〜約10重量%である。
本発明によれば、風味が改善された飲食品の製造方法であって、水中油型の乳化物を飲食品に添加する工程を包含し、該乳化物は、遊離長鎖脂肪酸またはその塩と、乳化剤と、水とを含有する、方法が提供される。
本発明によれば、風味を改善するための香料製剤であって、水中油型の乳化物を含有し、該乳化物は、遊離長鎖脂肪酸またはその塩と、乳化剤と、水とを含有し、該乳化物のメジアン粒子径が、約0.01μm以上約1.5μm以下である、香料製剤が提供される。
本発明によれば、遊離長鎖脂肪酸またはその塩を乳化物の形態で含有する、高嗜好性の飲食品およびその製造方法が提供される。本発明によればまた、遊離長鎖脂肪酸またはその塩と、中カロリー食材とを含有する、ある程度カロリーが低く、高嗜好性でかつ長期にわたって好まれる飲食品およびその製造方法が提供される。本発明によればさらに、ゼロカロリー飲食品または低カロリー飲食品であって、遊離長鎖脂肪酸またはその塩を含む飲食品およびその製造方法が提供される。本発明によればさらに、遊離長鎖脂肪酸またはその塩と、中カロリー食材とを含有する油脂代用材料およびその製造方法が提供される。
(1.材料)
(1.1 遊離脂肪酸およびその塩)
本発明では、遊離脂肪酸またはその塩が用いられ得る。本明細書中で用語「遊離脂肪酸またはその塩」という場合、酸の形態の脂肪酸、イオン化した脂肪酸および塩の形態の脂肪酸を包含する。遊離脂肪酸の塩は、食用可能であれば任意の塩であり得る。例えば、有利脂肪酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩などであり得る。「遊離脂肪酸またはその塩」という場合、油脂に構成脂肪酸として含まれる脂肪酸残基(すなわち、グリセリンに結合している脂肪酸)はその概念に含まれない。本明細書中で用語「油脂」(oil and fat)とは、主にトリグリセリドから構成される常温(約20℃)で液体状の混合物(すなわち、油(oil))および主にトリグリセリドから構成される常温(約20℃)で固体状の混合物(すなわち、脂(fat))をいう。
脂肪酸は、任意の脂肪酸(すなわち、炭化水素にカルボキシル基が結合した化合物)であり得る。脂肪酸は、脂肪族モノカルボン酸であっても脂肪族ジカルボン酸であってもよい。好ましくは、脂肪族モノカルボン酸である。脂肪酸の炭化水素には分岐があってもよいが、好ましくは直鎖である。脂肪酸は、任意の炭素数の脂肪酸であり得る。本発明で使用される脂肪酸は好ましくは遊離長鎖脂肪酸である。本明細書中では用語「長鎖脂肪酸」とは、炭素数が14以上の脂肪酸をいう。本明細書中では用語「中鎖脂肪酸」とは、炭素数が6〜13の脂肪酸をいう。本明細書中では用語「短鎖脂肪酸」とは、炭素数が5以下の脂肪酸をいう。本発明で使用される長鎖脂肪酸の炭素数は好ましくは、14、16または18である。本発明で使用される長鎖脂肪酸の炭素数は好ましくは30以下の整数である。本発明で使用される長鎖脂肪酸の炭素数の上限は例えば、28、26、24、22、20、18などであり得る。脂肪酸は体温(約37℃)で固体であっても液体であってもよいが、固体である脂肪酸が好ましい。
本発明においては、遊離長鎖脂肪酸が使用される。遊離長鎖脂肪酸は、中鎖脂肪酸または短鎖脂肪酸と比較して、風味等において、著しく優れた性能を示す。従って、本発明においては、中鎖脂肪酸または短鎖脂肪酸を用いずに、遊離長鎖脂肪酸のみを用いることが好ましい。
ただし、本発明においては、必要に応じて、遊離中鎖脂肪酸または遊離短鎖脂肪酸を遊離長鎖脂肪酸に併用してもよい。その場合、使用される遊離長鎖脂肪酸100重量部に対して、遊離中鎖脂肪酸または遊離短鎖脂肪酸の量を約100重量部以下とすることが好ましく、約50重量部以下とすることがより好ましく、約30重量部以下とすることがさらに好ましく、約10重量部以下とすることが特に好ましい。
本発明で使用される脂肪酸は飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。二重結合を含まない脂肪酸を飽和脂肪酸という。不飽和脂肪酸中の不飽和二重結合の数に限定はないが、好ましくは1〜4、例えば1、2、または3である。飽和脂肪酸の例としては、酪酸(C4:0)、カプロン酸(C6:0)、カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、アラキジン酸(C20:0)、ベヘン酸(C22:0)、リグノセリン酸(C24:0)、セロチン酸(C26:0)、モンタン酸(C28:0)、メリシン酸(C30:0)などが挙げられる。飽和脂肪酸は好ましくは、酪酸(C4:0)、カプロン酸(C6:0)、カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、アラキジン酸(C20:0)およびベヘン酸(C22:0)からなる群より選択される。本発明の特定の実施形態においては飽和脂肪酸を用いることが好ましい。飽和脂肪酸は好ましくは、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)およびステアリン酸(C18:0)からなる群より選択される。ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸は、常温で固体である。
二重結合を含む脂肪酸を不飽和脂肪酸という。不飽和脂肪酸の例としては、ミリストレイン酸(C14:1)、パルミトオレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)、γ−リノレン酸(C18:3)、エイコセン酸(C20:1)、ジホモ−γ−リノレン酸(C20:3)、アラキドン酸(C20:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、エルカ酸(C22:1)、ドコサペンタエン酸(C22:5)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)などが挙げられる。本発明の別の特定の実施形態においては不飽和脂肪酸を用いることが好ましい。不飽和脂肪酸は好ましくは、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)およびγ−リノレン酸(C18:3)からなる群より選択される。脂肪酸は特定の実施形態においては好ましくはオレイン酸(C18:1)である。脂肪酸は別の特定の実施形態においては好ましくはリノール酸(C18:2)である。不飽和脂肪酸を使用する場合には、不飽和脂肪酸の酸化を防ぐために酸化防止剤を併用することが好ましい。
複数種類の遊離脂肪酸、または遊離脂肪酸を含む混合物(例えば、香料製剤)を混合することにより、遊離脂肪酸分子の会合が抑制され、乳化粒子がより細かく、均一になる。そのため、複数種類の遊離脂肪酸または遊離脂肪酸を含む混合物を使用することが好ましい。
脂肪酸にはこってりとした油脂のコクがあるが、高濃度の場合、独特のフレーバーもある。例えば、ミリスチン酸には、熟成したチーズのフレーバーがある。パルミチン酸には、こげた牛肉の脂身のフレーバーがある。ステアリン酸には、鉄板焼きの鉄板のフレーバーがある。オレイン酸には、劣化したオリーブ油のフレーバーがある。種々の脂肪酸をブレンドすることにより、様々の脂肪の特徴を再現することができる。例えば、牛脂肪の風味を再現したい場合には、パルミチン酸:ステアリン酸=2:1で混合することにより、再現できる。
脂肪酸は一般に、舌の味覚神経を刺激して、嗜好性に関与するシグナルを与えると考えられる。このため、脂肪酸を添加した飲食品は高い嗜好性を有する。
(1.2 乳化剤)
本発明の飲食品が風味の向上した飲食品の場合、本発明の飲食品は、乳化剤を含有する。本明細書中では、乳化剤(emulsifier)とは、液体中の固体または液体中の液体懸濁液に加えて個々の懸濁粒子を分離させる物質をいう。すなわち、本明細書中で使用される乳化剤は、厳密な意味での乳化剤および分散剤(dispersant)を包含する総称である。厳密な意味では、「乳化剤」とは、液体中の液体の液体懸濁液に加えて個々の懸濁粒子を分離させる物質をいう。厳密な意味では、「分散剤」とは、液体中の固体の液体懸濁液に加えて個々の懸濁粒子を分離させる物質をいう。本発明においては、脂肪酸が固体であるか液体であるかは飲食品の温度がその脂肪酸の融点よりも高いかどうかによって決まる。そのため、同じ脂肪酸と乳化剤を使用しても、融点よりも高い温度では乳化物を形成し、融点以下の温度では分散物を形成する。そのため、本明細書中では、乳化剤と分散剤とを総称して「乳化剤」といい、乳化物と分散物を総称して「乳化物」という。乳化剤は、分子内に親水基および親油基の両方を含み、従って水と油との界面に吸着層を作りやすい物質である。乳化剤は、例えば、公知の各種界面活性剤であり得る。
本発明の飲食品が水を主成分とする飲食品の場合、乳化剤(すなわち、分散剤または乳化剤)を使用することが好ましい。分散剤または乳化剤は、当該分野で公知の任意の分散剤または乳化剤であり得る。
本発明において使用され得る乳化剤の例としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステルともいう)などの非イオン性界面活性剤;アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、グァーガム、レシチン、アルギン酸、ゼラチンなどの天然物が挙げられる。レシチンとしては、大豆レシチンまたは卵黄レシチンなどが挙げられる。レシチンは、酵素分解レシチンであってもよい。これらの乳化剤は、1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上が組み合わされて用いられてもよい。
本発明の飲食品の製造においては、好ましくは、アラビアガムまたはショ糖脂肪酸エステルを用いる。
(1.2.1 ポリグリセリン脂肪酸モノエステル)
本明細書中では、「ポリグリセリン脂肪酸モノエステル」とは、ポリグリセリンと1分子の脂肪酸とがエステル結合することにより形成される化合物をいう。ポリグリセリンとは、グリセリンを脱水縮合するなどして得られる重合度2以上の化合物をいう。本明細書中では、「ポリグリセリン脂肪酸モノエステル」とは、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルのみからなるものをいう。このとき、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、1種類のポリグリセリン脂肪酸モノエステルであっても、複数種類のポリグリセリン脂肪酸モノエステルの混合物であってもよい。ポリグリセリン脂肪酸モノエステルは単独で用いられてもよく、複数種類組み合わせて用いられてもよい。
本明細書中では、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルに加えて、ポリグリセリン脂肪酸モノエステル以外の化合物を含む組成物を、「ポリグリセリン脂肪酸モノエステル含有組成物」という。工業的製造プロセスでは通常、他のエステルが混入する。このような他のエステルが混入した製品をポリグリセリン脂肪酸モノエステル含有組成物として用いることができる。同様に、「ペンタグリセリンモノステアレート含有組成物」とは、ペンタグリセリンモノステアレートに加えて、ペンタグリセリンモノステアレート以外の化合物を含む組成物をいう。他のポリグリセリン脂肪酸モノエステルについても同様に考えられる。
ポリグリセリンの重合度は好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、特に好ましくは4以上である。ポリグリセリンの重合度は好ましくは10以下であり、より好ましくは8以下であり、特に好ましくは6以下である。常法ではしばしば、ポリグリセリンは、種々の重合度のポリグリセリンの混合物として得られる。そのため、通常市販されるポリグリセリンは、グリセリンと種々の重合度のグリセリン重合体との混合物である。このような混合物は、分類上水酸基価から得られる平均重合度により、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン等の名称で市販されることが多い。本発明で用いるポリグリセリン脂肪酸モノエステルを製造するためには、実質的に純粋なポリグリセリンを用いることが好ましい。ポリグリセリンは、常法によりグリセリンから製造され得る。本発明のポリグリセリンは、例えば、グリセリンを苛性ソーダなどのアルカリ触媒の存在下、高温条件下にて重合し、脱臭、脱色等の精製をすることにより製造され得る。あるいは、グリシドール、エピクロロヒドリン、グリセリンとエピクロロヒドリン、モノクロロヒドリン、ジクロロヒドリンまたはグリシドールを原料として化学合成して得られた反応物を脱臭、脱色することにより製造され得る。さらに分子蒸留、RO膜、クロマトグラフィー処理などの精製を行ってもよい。
ポリグリセリンとエステル化してポリグリセリン脂肪酸モノエステルを形成する脂肪酸は、脂肪族モノカルボン酸であっても脂肪族ジカルボン酸であってもよい。好ましくは、脂肪族モノカルボン酸である。脂肪酸は、任意の炭素数の脂肪酸であり得る。脂肪酸の炭素数は好ましくは、12以上であり、より好ましくは14以上であり、さらに好ましくは16以上である。脂肪酸の炭素数は好ましくは、22以下であり、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは18以下である。脂肪酸は飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。二重結合を含まない脂肪酸を飽和脂肪酸という。ステアリン酸が好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とを公知の方法によってエステル化した後、精製を行うことにより製造され得る。例えば、アルカリ触媒下、酸触媒下、または無触媒下にて、常圧もしくは減圧下においてエステル化が行われ得る。このような方法では通常、目的とするポリグリセリン脂肪酸モノエステル以外のエステルが混入するので、このような方法で得られるものは、ポリグリセリン脂肪酸モノエステル含有組成物である。
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸モノエステルまたはポリグリセリン脂肪酸モノエステル含有組成物は、原料となるポリグリセリンの重合度、脂肪酸の種類等によって種々のHLB値のものであり得る。ポリグリセリン脂肪酸モノエステルまたはポリグリセリン脂肪酸モノエステル含有組成物のHLB値は好ましくは約6以上であり、より好ましくは約12以上であり、最も好ましくは約14以上である。
本明細書中で用いられる場合、「HLB値」とは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)をいい、一般に、20×MH/Mにより計算され、ここで、MH=親水基部分の分子量であり、M=分子全体の分子量である。HLB値は、分子中の親水基の量が0%のとき0であり、100%のとき20である。HLB値は、乳化剤では乳化剤分子を形成する親水性および疎水性の基の大きさと強さを表し、疎水性の高い乳化剤はHLB値が小さく、親水性の高い乳化剤はHLB値が大きい。
本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸モノエステル含有組成物は、最も好ましくは実質的に純粋なペンタグリセリンモノステアレート含有組成物である。ペンタグリセリンモノステアレートは、モノステアリン酸ペンタグリセリンともいう。
「実質的に純粋な」とは、純度が70重量%以上のものをいう。本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸モノエステル含有組成物中のポリグリセリン脂肪酸モノエステルの純度は、好ましくは約70重量%以上であり、より好ましくは約75重量%以上であり、さらに好ましくは約80重量%以上であり、より好ましくは約85重量%以上であり、より好ましくは約90重量%以上であり、より好ましくは約95重量%以上であり、より好ましくは約96重量%以上であり、より好ましくは約97重量%以上であり、より好ましくは約98重量%以上であり、より好ましくは約99重量%以上であり、最も好ましくは約100重量%である。
本発明の飲食品中のポリグリセリン脂肪酸モノエステルの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約0.05重量%以上であり、より好ましくは約0.06重量%以上であり、さらに好ましくは約0.07重量%以上であり、さらにより好ましくは約0.08重量%以上であり、特に好ましくは約0.09重量%以上であり、最も好ましくは約0.1重量%以上である。本発明の飲食品中でのポリグリセリン脂肪酸モノエステルの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約0.35重量%以下であり、より好ましくは約0.3重量%以下であり、最も好ましくは約0.25重量%以下である。ポリグリセリン脂肪酸モノエステルの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルの量が多すぎると風味が悪化する場合がある。
本発明の飲食品を製造するために使用される乳化物中でのポリグリセリン脂肪酸モノエステルの量は、長鎖遊離脂肪酸を乳化するに有効な量である。乳化物中でのポリグリセリン脂肪酸モノエステルの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.2重量%以上であり、特に好ましくは約0.3重量%以上であり、最も好ましくは約0.4重量%以上である。乳化物中でのポリグリセリン脂肪酸モノエステルの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約1.0重量%以下であり、より好ましくは約0.8重量%以下であり、最も好ましくは約0.6重量%以下である。ポリグリセリン脂肪酸モノエステルの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルの量が多すぎると風味が悪化する場合がある。
(1.2.2 アラビアガム)
本明細書中では、用語「アラビアガム」(gum arabic)とは、アカシアの分泌液から得られた、多糖類を主成分とするものをいう。より詳細には、アラビアガムは、ネムノキ科アカシア属アラビアゴムノキ(学名:Acacia senegal)またはその同属近縁植物の樹皮の傷口からの分泌物を乾燥させたものである。アラビアガムは、吸水するとゼラチン様に膨潤する。アラビアガムは、A.senegal、A.abysinica、A.glaucophylla、A.giraffae、A.reficiens、A.fistulaなどから採取され得る。アラビアガムは、水に対する溶解性が高く、その水溶液は強い粘性を示し、良好な乳化安定性を示す。そのため、アラビアガムは、乳化剤または安定剤として飲料および食品に広く用いられている。アラビアガムの主成分は多糖類である。アラビアガムは、アラビノガラクタン(約75%〜約94%)、アラビノガラクタン−プロテイン(約5%〜約20%)、糖タンパク質(約1%〜約5%)などの混合物である。
アラビアガムは天然物であるためHLBが一定でない。アラビアガムのHLBは通常、約10〜約12である。
本発明の飲食品中のアラビアガムの量は、乳化する脂肪酸の重量を基準として、好ましくは約10重量%以上であり、より好ましくは約50重量%以上であり、さらに好ましくは約100重量%以上であり、特に好ましくは約150重量%以上であり、最も好ましくは約200重量%以上である。本発明の飲食品中でのアラビアガムの量は、乳化する脂肪酸の重量を基準として、好ましくは約500重量%以下であり、より好ましくは約400重量%以下であり、最も好ましくは約300重量%以下である。アラビアガムの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、アラビアガムの量が多すぎると高粘度となり、得られる飲食品の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明の飲食品を製造するために使用される乳化物中でのアラビアガムの量は、長鎖遊離脂肪酸を乳化するに有効な量である。乳化物中でのアラビアガムの量は、乳化する脂肪酸の重量を基準として、好ましくは約10重量%以上であり、より好ましくは約50重量%以上であり、特に好ましくは約100重量%以上であり、最も好ましくは約200重量%以上である。乳化物中でのアラビアガムの量は、乳化する脂肪酸の重量を基準として、好ましくは約500重量%以下であり、より好ましくは約400重量%以下であり、最も好ましくは約300重量%以下である。アラビアガムの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、アラビアガムの量が多すぎると高粘度となり、得られる飲食品の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
(1.2.3 グリセリン脂肪酸エステル)
本明細書中では、用語「グリセリン脂肪酸エステル」とは、グリセリンと脂肪酸とがエステル結合しているものをいう。グリセリンとエステル化してグリセリン脂肪酸エステルを形成している脂肪酸は、任意の炭素数の脂肪酸であり得る。
本発明の飲食品中のグリセリン脂肪酸エステルの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、特に好ましくは約0.1重量%以上である。本発明の飲食品中でのグリセリン脂肪酸エステルの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約5重量%以下である。グリセリン脂肪酸エステルの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、グリセリン脂肪酸エステルの量が多すぎると風味に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明の飲食品を製造するために使用される乳化物中でのグリセリン脂肪酸エステルの量は、長鎖遊離脂肪酸を乳化するに有効な量である。乳化物中でのグリセリン脂肪酸エステルの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約0.1重量%以上である。乳化物中でのグリセリン脂肪酸エステルの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下であり、最も好ましくは約1重量%以下である。グリセリン脂肪酸エステルの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、グリセリン脂肪酸エステルの量が多すぎると風味に悪影響を及ぼす場合がある。
(1.2.4 有機酸モノグリセリド)
本明細書中では、用語「有機酸モノグリセリド」とは、モノグリセリドの水酸基にさらに有機酸が結合しているものをいう。有機酸の例としては、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸およびジアセチル酒石酸が挙げられる。
本発明の飲食品中の有機酸モノグリセリドの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、特に好ましくは約0.1重量%以上である。本発明の飲食品中での有機酸モノグリセリドの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下である。有機酸モノグリセリドの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、有機酸モノグリセリドの量が多すぎると風味に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明の飲食品を製造するために使用される乳化物中での有機酸モノグリセリドの量は、長鎖遊離脂肪酸を乳化するに有効な量である。乳化物中での有機酸モノグリセリドの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約0.1重量%以上である。乳化物中での有機酸モノグリセリドの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下である。有機酸モノグリセリドの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、有機酸モノグリセリドの量が多すぎると風味に悪影響を及ぼす場合がある。
(1.2.5 プロピレングリコール脂肪酸エステル)
本明細書中では、用語「プロピレングリコール脂肪酸エステル」とは、プロピレングリコールと脂肪酸とがエステル結合した化合物をいう。プロピレングリコールとエステル化してプロピレングリコール脂肪酸エステルを形成している脂肪酸は、任意の炭素数の脂肪酸であり得る。
本発明の飲食品中のプロピレングリコール脂肪酸エステルの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、特に好ましくは約0.1重量%以上である。本発明の飲食品中でのプロピレングリコール脂肪酸エステルの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下である。プロピレングリコール脂肪酸エステルの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、プロピレングリコール脂肪酸エステルの量が多すぎると風味が悪化する場合がある。
本発明の飲食品を製造するために使用される乳化物中でのプロピレングリコール脂肪酸エステルの量は、長鎖遊離脂肪酸を乳化するに有効な量である。乳化物中でのプロピレングリコール脂肪酸エステルの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約0.1重量%以上である。乳化物中でのプロピレングリコール脂肪酸エステルの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下である。プロピレングリコール脂肪酸エステルの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、プロピレングリコール脂肪酸エステルの量が多すぎると風味が悪化する場合がある。
(1.2.6 ソルビタン脂肪酸エステル)
本明細書中では、用語「ソルビタン脂肪酸エステル」とは、ソルビタンまたはソルバイドまたはソルビトールと脂肪酸とがエステル結合した化合物をいう。ソルビタンはソルビトールの1分子脱水物であり、ソルビトールの分子内脱水により製造される。ソルビタンは、1,4−ソルビタン、3,6−ソルビタンおよび1,5−ソルビタンのいずれかであり得る。工業的には、ソルビトールを分子内脱水すると、1分子脱水物である1,4−ソルビタン、3,6−ソルビタンおよび1,5−ソルビタンと、2分子脱水物である1,4,3,6−ソルバイドと、ソルビトールとの混合物となる。ソルビタン脂肪酸エステルはこのような混合物と脂肪酸とをエステル結合させることにより製造される。そのため、工業的に製造されるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタン脂肪酸エステルだけでなく、ソルバイド脂肪酸エステルおよびソルビトール脂肪酸エステルをも含む。ソルビタン脂肪酸エステルにおいては、ソルビタン部分またはソルバイド部分またはソルビトール部分が親水基として作用し、脂肪酸部分が親油基として作用する。ソルビタンには4つの水酸基(OH)があり、ソルバイドには2つの水酸基があり、ソルビトールには6つの水酸基がある。その水酸基のうちの一部または全てに脂肪酸をエステル結合させることによりソルビタン脂肪酸エステルが生成される。
ソルビタン脂肪酸エステルのHLB値は好ましくは約6以上であり、より好ましくは約12以上である。
本発明の飲食品中のソルビタン脂肪酸エステルの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、特に好ましくは約0.1重量%以上である。本発明の飲食品中でのソルビタン脂肪酸エステルの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下である。ソルビタン脂肪酸エステルの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、ソルビタン脂肪酸エステルの量が多すぎると風味が悪化する場合がある。
本発明の飲食品を製造するために使用される乳化物中でのソルビタン脂肪酸エステルの量は、長鎖遊離脂肪酸を乳化するに有効な量である。乳化物中でのソルビタン脂肪酸エステルの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約0.1重量%以上である。乳化物中でのソルビタン脂肪酸エステルの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下である。ソルビタン脂肪酸エステルの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、ソルビタン脂肪酸エステルの量が多すぎると風味が悪化する場合がある。
(1.2.7 ショ糖脂肪酸エステル)
本明細書中では、用語「ショ糖脂肪酸エステル」とは、ショ糖と脂肪酸とがエステル結合した化合物をいう。ショ糖脂肪酸エステルは、当該分野でシュガーエステルとも呼ばれる。ショ糖脂肪酸エステルにおいては、ショ糖部分が親水基として作用し、脂肪酸部分が親油基として作用する。ショ糖には8つの水酸基(OH)がある。その水酸基のうちの一部または全てに脂肪酸をエステル結合させることによりショ糖脂肪酸エステルが生成される。
ショ糖とエステル化してショ糖脂肪酸エステルを形成している脂肪酸は、任意の炭素数の脂肪酸であり得る。脂肪酸は飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖と脂肪酸とを公知の方法によってエステル化した後、精製を行うことにより製造され得る。例えば、溶媒の存在下でのミクロエマルジョン法または無溶媒法によってエステル化が行われ得る。このような方法では通常、目的とするショ糖脂肪酸エステル以外のエステルが混入するので、このような方法で得られるものは、ショ糖脂肪酸エステル含有組成物である。ショ糖脂肪酸エステル含有組成物は種々な会社から販売されている。例えば、第一工業製薬株式会社からは、構成脂肪酸の約100%がステアリン酸であり、約70%がモノエステルであるショ糖脂肪酸がDKエステルF−160として販売されている。
本発明の飲食品中のショ糖脂肪酸エステルの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、特に好ましくは約0.1重量%以上である。本発明の飲食品中でのショ糖脂肪酸エステルの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下である。ショ糖脂肪酸エステルの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、ショ糖脂肪酸エステルの量が多すぎると風味が悪化する場合がある。
本発明の飲食品を製造するために使用される乳化物中でのショ糖脂肪酸エステルの量は、長鎖遊離脂肪酸を乳化するに有効な量である。乳化物中でのショ糖脂肪酸エステルの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約0.1重量%以上である。乳化物中でのショ糖脂肪酸エステルの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下である。ショ糖脂肪酸エステルの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、ショ糖脂肪酸エステルの量が多すぎると風味が悪化する場合がある。
(1.2.8 キサンタンガム)
本明細書中では、用語「キサンタンガム」とは、キサントモナスの培養液から得られた、多糖類を主成分とするものをいう。
本発明の飲食品中のキサンタンガムの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.005重量%以上であり、特に好ましくは約0.01重量%以上であり、最も好ましくは約0.1重量%以上である。本発明の飲食品中でのキサンタンガムの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。キサンタンガムの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、キサンタンガムが多すぎると飲食品の物性が高粘度化し食感に悪影響を与える場合がある。
本発明の飲食品を製造するために使用される乳化物中でのキサンタンガムの量は、長鎖遊離脂肪酸を乳化するに有効な量である。乳化物中でのキサンタンガムの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。乳化物中でのキサンタンガムの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。キサンタンガムの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、キサンタンガムの量が多すぎると飲食品の物性が高粘度化し食感に悪影響を与える場合がある。
(1.2.9 グァーガム)
本明細書中では、用語「グァーガム」とは、グァーの種子から得られた、多糖類を主成分とするものをいう。
本発明の飲食品中のグァーガムの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.005重量%以上であり、特に好ましくは約0.01重量%以上であり、最も好ましくは約0.1重量%以上である。本発明の飲食品中でのグァーガムの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。グァーガムの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、グァーガムの量が多すぎると飲食品の物性が高粘度化し食感に悪影響を与える場合がある。
本発明の飲食品を製造するために使用される乳化物中でのグァーガムの量は、長鎖遊離脂肪酸を乳化するに有効な量である。乳化物中でのグァーガムの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。乳化物中でのグァーガムの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。グァーガムの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、グァーガムの量が多すぎると飲食品の物性が高粘度化し食感に悪影響を与える場合がある。
(1.2.10 レシチン)
本明細書中では、用語「レシチン」とは、リン脂質の一種であり、一般式CH2OR1CHOR2CH2OPO2OHR3(R1とR2は脂肪酸であり、R3はコリンである)をもつものをいう。レシチンは、植物レシチン、卵黄レシチン、酵素処理レシチン、または酵素分解レシチンであり得る。植物レシチンは、アブラナまたはダイズの種子から得られた、レシチンを主成分とするものである。卵黄レシチンは、卵黄から得られた、レシチンを主成分とするものである。酵素処理レシチンは、植物レシチンまたは卵黄レシチンから得られた、ホスファチジルグリセロールを主成分である。酵素分解レシチンは、植物レシチンまたは卵黄レシチンから得られた、フォスファチジン酸およびリゾレシチンを主成分とするものである。
本発明の飲食品中のレシチンの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.005重量%以上であり、特に好ましくは約0.01重量%以上であり、最も好ましくは約0.1重量%以上である。本発明の飲食品中でのレシチンの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。レシチンの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、レシチンが多すぎると飲食品の物性が高粘度化し食感に悪影響を与える場合がある。
本発明の飲食品を製造するために使用される乳化物中でのレシチンの量は、長鎖遊離脂肪酸を乳化するに有効な量である。乳化物中でのレシチンの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。乳化物中でのレシチンの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。レシチンの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、レシチンの量が多すぎると飲食品の物性が高粘度化し食感に悪影響を与える場合がある。
(1.2.11 ゼラチン)
本明細書中では、用語「ゼラチン」とは、動物の皮膚、白色結合組織、骨などを構成するコラーゲンを熱湯で処理して得られるタンパク質をいう。
本発明の飲食品中のゼラチンの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.005重量%以上であり、特に好ましくは約0.01重量%以上であり、最も好ましくは約0.1重量%以上である。本発明の飲食品中でのゼラチンの量は、飲食品全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。ゼラチンの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、ゼラチンの量が多すぎると飲食品の物性が高粘度化し食感に悪影響を与える場合がある。
本発明の飲食品を製造するために使用される乳化物中でのゼラチンの量は、長鎖遊離脂肪酸を乳化するに有効な量である。乳化物中でのゼラチンの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。乳化物中でのゼラチンの量は、乳化物全体の重量を基準として、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。ゼラチンの量が少なすぎると乳化作用および安定化効果が発揮されにくい場合があり、ゼラチンの量が多すぎると飲食品の物性が高粘度化し食感に悪影響を与える場合がある。
(1.3 中カロリー食材)
いくつかの実施形態では、本発明では、中カロリー食材を用いることが好ましい。本明細書中では用語「中カロリー食材」とは、経口摂取した場合に得られる100gあたりのエネルギー量が200kcal以上400kcal以下であることをいう。一般的に、脂質は1gあたり9kcalとエネルギー換算され、炭水化物およびタンパク質は1gあたり4kcalとエネルギー換算される。しかし、例えば、難消化性糖質などには生体内でほとんど消化されないためにエネルギー換算係数が0のものがある。
エネルギー換算計数とは、その物質1g当りの熱量のことである。エネルギー換算計数は、理論上は密閉した容器に酸素と共に詰めて、燃やした時に水の温度が何度上昇するかで計算するが、人体は密閉容器ではないため、体内への吸収率、燃焼効率などを考慮して、数値が補正されている。エネルギー換算係数は、日本食品標準成分表で採用されたエネルギー換算係数を用いることが好ましい。例えば、穀類、動物性食品、油脂類、大豆及び大豆製品のうち主要な食品については、「日本人における利用エネルギー測定調査」(科学技術庁資源調査所資料)の結果に基づく係数を適用することが好ましい。これら以外の食品については、原則としてFAO/WHO合同特別専門委員会報告のエネルギー換算係数を適用することが好ましい。適用すべきエネルギー換算係数が明らかでない食品については、Atwaterの係数を適用することが好ましい。
中カロリー食材は、経口摂取した場合に得られる100gあたりのエネルギー量が200kcal以上600kcal以下である食材であれば任意の食材であり得る。中カロリー食材の例としては、糖質、タンパク質、アミノ酸、グァーガム(グァーフラワー、グァルガム)、グァーガム酵素分解物、小麦胚芽、水溶性大豆食物繊維(WSSF)、タマリンドシードガムおよびプルランが挙げられる。中カロリー食材は好ましくは糖質、タンパク質およびアミノ酸からなる群より選択される。
糖質の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、より高重合度のグルカンなどの糖質が挙げられる。糖質としては、1種類のものを単独で用いてもよいし、複数種のものを混合して用いてもよい。
甘味が必要とされる飲食品の場合、糖質は、甘味料として使用されてもよい。
単糖類の例としては、果糖、ブドウ糖、キシロース、ソルボース、ガラクトース、異性化糖などが挙げられる。
二糖類の例としては、麦芽糖、乳糖、トレハロース、ショ糖、異性化乳糖、パラチノースなどがある。
オリゴ糖類の例としては、マルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ダイズオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラクトスクロース、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、シュクロオリゴ糖、テアンオリゴ糖、海藻オリゴ糖などが挙げられる。マルトオリゴ糖は、本明細書中では、約2個〜約10個のグルコースが脱水縮合して生じた物質であって、α−1,4結合によって連結された物質をいう。マルトオリゴ糖は、好ましくは約3個〜約10個の糖単位、より好ましくは約4個〜約10個の糖単位、さらに好ましくは約5個〜約10個の糖単位を有する。マルトオリゴ糖の例としては、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、マルトオクタオース、マルトノナオース、マルトデカオースなどのマルトオリゴ糖が挙げられる。マルトオリゴ糖は、単品であってもよいし、複数のマルトオリゴ糖の混合物であってもよい。コストが低いため、マルトオリゴ糖の混合物が好ましい。オリゴ糖は、直鎖状のオリゴ糖であってもよいし、分枝状のオリゴ糖であってもよい。オリゴ糖は、その分子内に、環状部分を有し得る。本発明では、直鎖状のオリゴ糖が好ましい。
より高重合度のグルカンの例としては、任意の分子量の直鎖状、分枝状または環状のグルカンが挙げられる。糖質は甘味のある糖質であっても甘味のない糖質であってもよい。代用油脂を調製するためには無味無臭の糖を用いることが好ましい。
グルカンは、α−グルカンであってもβ−グルカンであってもよい。消化されてエネルギーを放出する観点からα−グルカンであることが好ましい。β−グルカンは消化されないので、中カロリー食材としてではなく、低カロリー食材として含有され得る。
本明細書中では「α−グルカン」とは、D−グルコースを構成単位とする糖であって、α−1,4−グルコシド結合によって連結された糖単位を少なくとも2糖単位以上有する糖をいう。α−グルカンは、直鎖状、分岐状または環状の分子であり得る。直鎖状α−グルカンとα−1,4−グルカンとは同義語である。直鎖状α−グルカンでは、α−1,4−グルコシド結合によってのみ糖単位の間が連結されている。α−1,6−グルコシド結合を1つ以上含むα−グルカンは、分岐状α−グルカンである。α−グルカンは、好ましくは、直鎖状の部分をある程度含む。本発明で使用されるα−グルカンは、好ましくは、アミロース、環状構造を有するグルカンまたは分岐構造を有するグルカンであり、より好ましくは環状構造を有するグルカンである。1分子のα−グルカンに含まれる糖単位の数を、このα−グルカンの重合度という。
α−グルカンは、任意の分岐の数(すなわち、α−1,6−グルコシド結合の数)を有し得る。分岐の数は、例えば、0〜約10000個、好ましくは0〜約1000個、より好ましくは0〜約500個、さらに好ましくは0〜約100個、さらに好ましくは0〜50個、さらに好ましくは0〜約25個、さらに好ましくは0個であり得る。
分岐状α−グルカンが用いられる場合、α−1,6−グルコシド結合を1としたときのα−1,6−グルコシド結合の数に対するα−1,4−グルコシド結合の数の比は、好ましくは約1〜約10000であり、より好ましくは約10〜約5000であり、さらに好ましくは約50〜約1000であり、さらに好ましくは約100〜約500である。
α−1,6−グルコシド結合は、α−グルカン中に無秩序に分布していてもよいし、均質に分布していてもよい。
α−グルカンは、D−グルコースのみから構成されていてもよいし、α−グルカンの性質を損なわない程度に修飾された誘導体であってもよい。修飾されていないことが好ましい。α−グルカンの性質を損なわない程度の修飾としては、エステル化、エーテル化、架橋などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの修飾は、当該分野で公知の方法に従って行われ得る。
α−グルカンの例としては、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、デキストリン、プルラン、カップリングシュガー、澱粉、環状グルカン(例えば、低分子グルカン、高分子グルカンおよび高度分岐環状グルカン)およびこれらの誘導体が挙げられる。
アミロースとは、α−1,4結合によって連結されたグルコース単位から構成される直鎖分子である。アミロースは、天然の澱粉中に含まれる。
アミロペクチンとは、α−1,4結合によって連結されたグルコース単位に、α1,6結合でグルコース単位が連結された、分枝状分子である。アミロペクチンは天然の澱粉中に含まれる。アミロペクチンとしては、例えば、アミロペクチン100%からなるワキシーコーンスターチが用いられ得る。例えば、重合度が約1×105程度以上のアミロペクチンが用いられ得る。
グリコーゲンは、グルコースから構成されるグルカンの一種であり、高頻度の枝分かれを有するグルカンである。グリコーゲンは、動植物の貯蔵多糖としてほとんどあらゆる細胞に顆粒状態で広く分布している。グリコーゲンは、植物中では、例えば、トウモロコシの種子などに存在する。グリコーゲンは、代表的には、グルコースのα−1,4−結合の糖鎖に対して、グルコースおよそ3単位おきに1本程度の割合で、平均重合度12〜18のグルコースのα−1,4−結合の糖鎖がα−1,6−結合で結合している。また、α−1,6−結合で結合している分枝にも同様にグルコースのα−1,4−結合の糖鎖がα−1,6−結合で結合している。そのため、グリコーゲンは網状構造を形成する。グリコーゲンの分子量は代表的には約1×105〜約1×108であり、好ましくは約1×106〜約1×107である。
プルランは、マルトトリオースが規則正しく、階段状にα−1,6−結合した、分子量約10万〜約30万(例えば、約20万)のグルカンである。プルランは、例えば、澱粉を原料として黒酵母Aureobasidium pullulansを培養することにより製造される。プルランは、例えば、林原商事から入手され得る。
カップリングシュガーは、ショ糖、グルコシルスクロース、マルトシルスクロースを主成分とする混合物である。カップリングシュガーは、例えば、ショ糖と澱粉との混合溶液にBacillus megateriumなどが産生するサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させることにより製造される。カップリングシュガーは、例えば、林原商事から入手され得る。
澱粉は、アミロースとアミロペクチンとの混合物である。澱粉としては、通常市販されている澱粉であればどのような澱粉でも用いられ得る。澱粉に含まれるアミロースとアミロペクチンとの比率は、澱粉を産生する植物の種類によって異なる。モチゴメ、モチトウモロコシなどの有する澱粉のほとんどはアミロペクチンである。他方、アミロースのみからなり、かつアミロペクチンを含まない澱粉は、通常の植物からは得られない。
澱粉は、天然の澱粉、澱粉分解物および化工澱粉に区分される。
天然の澱粉は、原料により、いも類澱粉および穀類澱粉に分けられる。いも類澱粉の例としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉、およびわらび澱粉などが挙げられる。穀類澱粉の例としては、コーンスターチ、小麦澱粉、および米澱粉などが挙げられる。天然の澱粉の例は、澱粉を生産する植物の品種改良の結果、アミロースの含量を50%〜70%まで高めたハイアミロース澱粉(例えば、ハイアミロースコーンスターチ)である。天然の澱粉の別の例は、澱粉を生産する植物の品種改良の結果、アミロースを含まないワキシー澱粉である。
可溶性澱粉は、天然の澱粉に種々の処理を施すことにより得られる、水溶性の澱粉をいう。
化工澱粉は、天然の澱粉に加水分解、エステル化、またはα化などの処理を施して、より利用しやすい性質を持たせた澱粉である。糊化開始温度、糊の粘度、糊の透明度、老化安定性などを様々な組み合わせで有する幅広い種類の化工澱粉が入手可能である。化工澱粉の種類には種々ある。このような澱粉の例は、澱粉の糊化温度以下において澱粉粒子を酸に浸漬することにより、澱粉分子は切断するが、澱粉粒子は破壊していない澱粉である。化工澱粉はまた湿熱処理澱粉(難消化性澱粉)であり得る。
澱粉分解物は、澱粉に酵素処理または加水分解などの処理を施して得られる、処理前よりも分子量が小さいオリゴ糖もしくは多糖である。澱粉分解物の例としては、澱粉枝切り酵素分解物、澱粉ホスホリラーゼ分解物および澱粉部分加水分解物が挙げられる。
澱粉枝切り酵素分解物は、澱粉に枝切り酵素を作用させることによって得られる。枝切り酵素の作用時間を種々に変更することによって、任意の程度に分岐部分(すなわち、α−1,6−グルコシド結合)が切断された澱粉枝切り酵素分解物が得られる。枝切り酵素分解物の例としては、糖単位数4〜約10000のうちα−1,6−グルコシド結合を1個〜約20個有する分解物、糖単位数3〜約500のα−1,6−グルコシド結合を全く有さない分解物、マルトオリゴ糖およびアミロースが挙げられる。澱粉枝切り酵素分解物の場合、分解された澱粉の種類によって得られる分解物の分子量の分布が異なり得る。澱粉枝切り酵素分解物は、種々の長さの糖鎖の混合物であり得る。
澱粉ホスホリラーゼ分解物は、澱粉にグルカンホスホリラーゼ(ホスホリラーゼともいう)を作用させることによって得られる。グルカンホスホリラーゼは、澱粉の非還元性末端からグルコース残基を1糖単位ずつ他の基質へと転移させる。グルカンホスホリラーゼは、α−1,6−グルコシド結合を切断することができないので、グルカンホスホリラーゼを澱粉に充分に長時間作用させると、α−1,6−グルコシド結合の部分で切断が終わった分解物が得られる。本発明では、澱粉ホスホリラーゼ分解物の有する糖単位数は、好ましくは約10〜約100,000、より好ましくは約50〜約50,000、さらにより好ましくは約100〜約10,000である。澱粉ホスホリラーゼ分解物は、分解された澱粉の種類によって得られる分解産物の分子量の分布が異なり得る。澱粉ホスホリラーゼ分解物は、種々の長さの糖鎖の混合物であり得る。
デキストリンおよび澱粉部分加水分解物は、澱粉を、酸、アルカリ、酵素などの作用によって部分的に分解して得られる分解物をいう。本発明では、デキストリンおよび澱粉部分加水分解物の有する糖単位数は、好ましくは約10〜約100,000、より好ましくは約50〜約50,000、さらにより好ましくは約100〜約10,000である。デキストリンおよび澱粉部分加水分解物の場合、分解された澱粉の種類によって得られる分解産物の分子量の分布が異なり得る。デキストリンおよび澱粉部分加水分解物は、種々の長さを持つ糖鎖の混合物であり得る。
澱粉は、可溶性澱粉、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、澱粉枝切り酵素分解物、澱粉ホスホリラーゼ分解物、澱粉部分加水分解物、化工澱粉、およびこれらの誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
本明細書中で「環状構造を有するグルカン」とは、α−1,4結合および/またはα−1,6結合で結合したグルコシル残基から形成される環状構造を有するグルカンをいう。重合度6以上のものが公知であり使用可能である。例えば、重合度6、7または8の環状グルカンは、デンプンなどに酵素CGTaseを作用させることにより容易に得られる。
環状構造を有するグルカンの重合度は、環状構造を有する限り、任意であり得る。環状構造を有するグルカンの重合度の下限は、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などであり得る。環状構造を有するグルカンの重合度の上限は、例えば、約10,000、約9,000、約8,000、約7,000、約6,000、約5,000、約4,000、約3,000、約2,000、約1,000、約500、約400、約300、約200、約100、約50などであり得る。
高分子量環状グルカンの例としては、江崎グリコ株式会社から販売されている高分子量環状グルカンが挙げられる。
本発明で用いられる高分子量環状グルカンは、14〜約5000個のα−1,4−グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンであって、該グルカンが、(i)α−1,4−グルコシド結合のみで構成される環状構造に加えて非環状構造を有するグルカン、(ii)α−1,4−グルコシド結合と少なくとも1個のα−1,6−グルコシド結合とで構成される環状構造に加えて非環状構造を有するグルカン、(iii)α−1,4−グルコシド結合のみで構成される環状構造のみを有するグリカン、および(iv)α−1,4−グルコシド結合と少なくとも1個のα−1,6−グルコシド結合とで構成される環状構造のみを有するグルカン、からなる群より選択される、グルカンであり得る。このような高分子量環状グルカンおよびその製造方法は、日本国特許第3150266号に詳細に記載されている。
本発明で用いられるこのような高分子量環状グルカンは、重量平均重合度が14以上であれば、任意の重合度のものを用い得る。高度分岐環状グルカンの重量平均重合度は好ましくは、約50以上であり、より好ましくは約80以上であり、さらに好ましくは約100以上であり、最も好ましくは約200以上である。高度分岐環状グルカンの重量平均重合度に特に上限はないが、例えば、約5,000以下、約4,000以下、約3,000以下、約2,000以下、約1,000以下などであり得る。
このような高分子量環状グルカンに存在する環状構造部分における重量平均重合度は、好ましくは、約10以上であり、好ましくは約20以上であり、より好ましくは約30以上であり、最も好ましくは約40以上である。このような高分子量環状グルカンに存在する環状構造部分における重量平均重合度は、好ましくは、約500以下であり、好ましくは約400以下であり、より好ましくは約300以下であり、特に好ましくは約200以下であり、最も好ましくは約100以下である。
高度分岐環状グルカンの例としては、江崎グリコ株式会社から販売されている高度分岐環状グルカンが挙げられる。
本明細書中では、「高度分岐環状グルカン」とは、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上であるグルカンをいう。高度分岐環状グルカンおよびその製造方法は、特開平8−134104号(日本国特許第3107358号)に詳細に記載されている。
本発明で用いられる高度分岐環状グルカンは、内分岐環状構造部分に1つと外分岐構造部分とを合わせて分子全体として少なくとも2つの分岐を有すればよい。
本発明で用いられる高度分岐環状グルカンは、重量平均重合度が50以上であれば、任意の重合度のものであり得る。高度分岐環状グルカンの重量平均重合度は好ましくは、約50以上であり、より好ましくは約80以上であり、さらに好ましくは約100以上であり、最も好ましくは約200以上である。高度分岐環状グルカンの重量平均重合度に特に上限はないが、例えば、約10,000以下、約8,000以下、約7,000、約6,000以下、約5,000以下、約4,000以下、約3,000以下、約2,000以下、約1,000以下などであり得る。
高度分岐環状グルカンに存在する内分岐環状構造部分における重量平均重合度は、好ましくは、約10以上であり、好ましくは約20以上であり、より好ましくは約30以上であり、最も好ましくは約40以上である。高度分岐環状グルカンに存在する内分岐環状構造部分における重量平均重合度は、好ましくは、約500以下であり、好ましくは約400以下であり、より好ましくは約300以下であり、特に好ましくは約200以下であり、最も好ましくは約100以下である。
高度分岐環状グルカンに存在する外分岐構造部分における重量平均重合度は、好ましくは約40以上であり、より好ましくは約100以上、さらに好ましくは約300以上、さらにより好ましくは約500以上である。なお、この「外分岐構造部分における重量平均重合度」とは、1つの内分岐環状構造部分に結合している複数の外分岐構造部分の重合度の合計である。外分岐構造部分における重量平均重合度の上限は特にないが、例えば、約10,000以下、約9,000以下、約8,000以下、約7,000以下、約6,000以下、約5,000以下、約4,000以下、約3,000以下、約2,000以下、約1,000以下、約500以下などであり得る。
1つの内分岐環状構造部分に結合している複数の外分岐構造部分の数は、少なくとも1個であれば任意の数であり得る。1つの内分岐環状構造部分に結合している外分岐構造部分の数は、内分岐環状構造部分の重合度に依存して、例えば、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上などであり得る。高度分岐環状グルカンに存在する、1つの内分岐環状構造部分に結合している外分岐構造部分の数は、内分岐環状構造部分の重合度に依存して、例えば、約200個以下、約150個以下、約100個以下、約50個以下、約40個以下、約30個以下、約20個以下、約10個以下などであり得る。
高度分岐環状グルカンに存在する、内分岐環状構造部分のα−1,6−グルコシド結合は少なくとも1個あればよく、例えば、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上などであり得る。高度分岐環状グルカンに存在する、内分岐環状構造部分のα−1,6−グルコシド結合は例えば、約200個以下、約150個以下、約100個以下、約50個以下、約40個以下、約30個以下、約20個以下、約10個以下などであり得る。
高度分岐環状グルカンは、1種類の重合度のものを単独で用いてもよいし、種々の重合度のものの混合物として用いてもよい。好ましくは、高度分岐環状グルカンの重合度は、最大の重合度のものと最小の重合度のものとの重合度の比が約100以下、より好ましくは約50以下、さらにより好ましくは約10以下である。
タンパク質としては、任意のタンパク質を用い得る。タンパク質は、植物性タンパク質であっても動物性タンパク質であってもよい。タンパク質の例としては、ダイズタンパク質、ホエイプロテインおよびホエイタンパク質精製物(例えば、β−ラクトグロブリン精製物、α−ラクトアルブミン精製物または血清アルブミン精製物)が挙げられる。
アミノ酸としては、任意のアミノ酸を用い得る。アミノ酸は天然に存在する形態であることが好ましい。すなわち、L異性体とD異性体とが存在するアミノ酸については、L異性体であることが好ましい。アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、システイン、シスチン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、プロリン、4−ヒドロキシプロリンおよびオルニチンからなる群より選択され得る。
グァーガム(グァーフラワー、グァルガム)、グァーガム酵素分解物、小麦胚芽、湿熱処理澱粉(難消化性澱粉)、水溶性大豆食物繊維(WSSF)、タマリンドシードガムおよびプルランは、厚生労働省による食物繊維素材のエネルギー換算係数において、エネルギー換算係数(kcal/g)が2であることが示されている。
本発明で用いられる中カロリー食材はこれらに限定されず、例えば、カボチャ、サツマイモ、ジャガイモなどの野菜として、または肉として、用いられてもよい。
(1.4 低カロリー食材)
本発明では、場合によって、低カロリー食材を用いることが好ましい。本明細書中では用語「低カロリー食材」とは、100gあたりエネルギー量が0kcal以上200kcal未満である食材をいう。
低カロリー食材の例としては、ミネラルオイル、多糖類、水および低カロリー甘味料が挙げられる。低カロリー食材としては、1種類のみを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。
ミネラルオイルとは、石油から得られる直鎖飽和炭化水素の混合物であり、わずかに臭うが、無色の液状で非揮発性である。ミネラルオイルは水に不溶である。ミネラルオイルは流動パラフィンとも呼ばれる。ミネラルオイルは化学的に安定な物質であり、通常の条件では酸化を受けない。
低カロリー食材として使用され得る多糖類は、100gあたりのエネルギー量が200kcalである多糖であれば任意の多糖であり得る。このような多糖の例としては、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウム種皮、ペクチン、寒天粉末、カラギーナン、低分子化アルギン酸ナトリウム、グルコマンナン、キサンタンガム、ジェランガム、カードラン、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、ビートファイバー、グァーガム酵素分解物、難消化性澱粉、水溶性大豆食物繊維、カラゲナンなどが挙げられる。寒天粉末、キサンタンガム、低分子化アルギン酸ナトリウム、サイリウム種皮、ジェランガム、セルロースおよびポリデキストロースは、厚生労働省による食物繊維素材のエネルギー換算係数においても、エネルギー換算係数(kcal/g)が0であることが示されている。アラビアガム、難消化性デキストリンおよびビートファイバーは、エネルギー換算係数(kcal/g)が1であることが示されている。多糖類としては、1種類のみを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。
水は、軟水、中間水および硬水のいずれであってもよい。軟水とは、硬度10°以下の水をいい、中間水とは、硬度10°以上20°未満の水をいい、硬水とは、硬度20°以上の水をいう。水は、好ましくは軟水または中間水であり、より好ましくは軟水である。
低カロリー甘味料の例としては、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、パラチニットが挙げられる。エリスリトールは、ブドウ糖を原料とし、酵母を用いる発酵法により得られる甘味料であり、経口摂取されたエリスリトールの大部分は、小腸で吸収された後、代謝されることなく速やかに尿中に排泄されるので、エネルギーを有さない。難消化性糖質のエネルギー換算係数においても、エネルギー換算係数(kcal/g)が0であることが示されている。エリスリトールは、多数の会社によって販売されており、市販の製品を利用し得る。
(1.5 他の食材)
本発明の飲食品においては、遊離長鎖脂肪酸またはその塩による油脂代用効果を妨害しない限り、必要に応じて他の食材を含むことができる。他の食材としては、脂質(例えば、油脂)、米、麺類、具材、甘味料、酸味料、香料、色素、保存料、pH安定剤、調味料、ビタミン、ポリフェノールおよびミネラルが挙げられる。これらの他の食材は、そのエネルギー量により、上記の中カロリー食材または低カロリー食材に分類され得る。また、これらの食材には、中カロリー食材と分類される成分が含まれ得るが、このような成分の量は、中カロリー食材の含有量として計算される。これらの食材には、低カロリー食材と分類される成分が含まれ得るが、このような成分の量は、低カロリー食材の含有量として計算される。
本発明においては、通常の油脂の約100分の1の量の遊離長鎖脂肪酸で油脂を代用し得るが、本発明の飲食品は、一部油脂を含んでいてもよい。このような油脂は、一般に用いられる任意の油脂であり得る。このような油脂は、天然の油脂であってもよいし、半合成油脂であってもよいし、合成油脂であってもよい。このような油脂は単独で用いられても、混合して用いられてもよい。例えば、通常のチョコレートの原料に用いられているカカオバターは、複数種の油脂の混合物である。一般に、天然の油脂は、複数種の油脂の混合物である。純粋な油脂に夾雑物(例えば、種類の異なる油脂)が混ざると純粋な油脂の融点よりも融点が下がる傾向がある。
天然の油脂は、油脂原料を脱脂することによって得られ得る。天然の油脂の製造方法および入手方法は当業者に公知である。例えば、ココアバターは、原料のカカオ豆を選別し、焙焼し、種皮と胚乳(ニブ)とを分離し、ニブを磨砕機によってすりつぶしてカカオマスを得て、このカカオマスを脱脂することによって得られる。ココアバターは、天然から得られる材料であるので、チョコレートなどの高級感を出すために有用である。天然の油脂の例としては、ココアバター、ヤシ油、パーム油、パーム核油、菜種油などが挙げられる。
半合成油脂は、例えば、原料の油脂に水素添加することによって合成され得る。天然の油脂の価格および供給が一般に不安定であるのに比べて、半合成油脂は価格も安く供給も安定していることが多いという利点がある。半合成油脂の合成方法は、当業者に公知である。半合成油脂の例としては、硬化ヤシ油、硬化パーム油、硬化大豆油、硬化菜種油などが挙げられる。
合成油脂の合成方法は、当業者に公知である。天然の油脂および半合成油脂の組成は比較的変動しやすいのに比べて、合成油脂は、組成が均一なものを得ることができるという利点がある。
本明細書中では、用語「脂質」とは、水に不溶であるが、エーテル、クロロホルムなどの有機溶媒に可溶で、生体内で代謝される成分の総称である。このうち、栄養上重要なものは下記のとおりである。
・脂肪酸:炭化水素にCOOH基がついたもの
・脂肪:グリセリンに脂肪酸が結合したもの。脂肪酸3分子が結合したものが、トリグリセリドで中性脂肪という。グリセリンに脂肪酸2分子が結合したものであってもよい。
・リン脂質:グリセリンに脂肪酸2分子とリン酸−塩基が1分子結合したもの
・糖脂質:脂肪酸、長鎖塩基などからなる疎水性部分と、ヘキソース、またはその類縁化合物などからなる。
親水性部分からなる脂質としては、例えば、以下のものがある。
・ステロール類:4個の炭化水素からなるステロイド核を持つ物質。コレステロールなど。好ましくは、脂質とは、長鎖の脂肪族炭化水素およびその誘導体をいう。脂質は好ましくは油脂である。例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、アルデヒドなどが例示される。油脂以外の脂質の例としては、グリセロール、ジアシルグリセロール、脂肪リン脂質、ステロール、脂溶性ビタミン、プロスタグランジンなどが挙げられる。
米は、目的とする食品に通常含まれる任意の米であり得る。米は、炊飯後の状態で含まれてもよく、喫食前にその食品が調理されるのであれば、本発明の食品に未加熱の状態で含まれていてもよい。米とは、イネの種子から籾殻を除去したもの(すなわち、玄米)およびその加工品をいう。米としては、精白米、玄米、胚芽米、発芽玄米が挙げられる。米は、精白米であることが好ましい。米は、ジャポニカ米であっても、インディカ米であってもよい。米は、ジャポニカ米であることが好ましい。
麺類は、目的とする食品に通常含まれる任意の麺類であり得る。麺類の例としては、うどん(生麺および乾麺を含む)、そうめん(生麺および乾麺を含む)、中華麺(生麺および乾麺を含む)、そば(生麺および乾麺を含む)、マカロニ(生の状態および乾いた状態を含む)、スパゲッティ(生麺および乾麺を含む)が挙げられる。
具材は、目的とする飲食品に通常含まれる任意の具材であり得る。具材の例としては、シイタケ、キクラゲ、シメジ、マツタケ、ナラタケ、エリンギ、エノキダケなどのキノコ類;ニンジン、ジャガイモ、サツマイモ、カボチャ、トウモロコシ、ゴボウ、コンニャク、タマネギ、ネギ、チャイブス、ホウレンソウ、チンゲンサイ、キャベツ、ミツバ、ニラ、タケノコ、トマト、山菜(例えば、ゼンマイおよびワラビ)などの野菜;グリーンピース、アズキ、ソラマメ、エンドウマメ、ダイズなどの豆類;牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類;エビ、カニ、サケ、ホタテ、タラコ等の魚介類;鶏卵(例えば、全卵、卵白、卵黄およびそれらの加工品)などの卵類;ソーセージ、ハム、ベーコン、ミンチ肉等の畜産加工品類;イチゴ、キウイ、ブルーベリー、バナナなどの果実;ワカメ、コンブなどの海藻が挙げられる。
甘味料としては、当該分野で用いられる任意の香料が用いられ得る。
酸味料としては、当該分野で用いられる任意の酸味料が用いられ得る。
香料としては、当該分野で用いられる任意の香料が用いられ得る。香料の例としては、果実系香料、ハーブ系香料、黒糖系香料、ピーナッツ系香料が挙げられる。
色素としては、当該分野で用いられる任意の色素が用いられ得る。色素の例としては、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素、ベタシアニン系色素などが挙げられる。具体的な色素名の例としては、クチナシ色素、ベニバナ色素、ウコン色素、ベニコウジ色素、カロテン、アナトー色素、パプリカ色素、デュナリエラ色素、パーム油色素、シタン色素、ビートレッド、コチニール色素、ラック色素、シソ色素、アカカヤベツ色素、アカダイコン色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ブドウ果皮色素、ブドウ果汁色素、ブルーベリー色素、エルダーベリー色素、クロロフィル、スピルリナ色素、カカオ色素、タマリンド色素、カキ色素、コウリャン色素、炭末色素、アカネ色素、ボイセンベリー色素、ハイビスカス色素、タマネギ色素および食用合成色素(黄色4号、黄色5号、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、青色1号、青色2号)が挙げられる。
保存料としては、当該分野で用いられる任意の保存料が用いられ得る。
pH安定剤としては、当該分野で用いられる任意のpH安定剤が用いられ得る。
調味料としては、当該分野で用いられる任意の調味料が用いられ得る。調味料の例としては、例えば、醤油、ソース、油、酒、食塩、酢、アミノ酸調味料、核酸調味料、コンソメなどが挙げられる。調味料の形態は、生、乾燥品、ペースト、ピューレ、粉末等の任意の形態であってよい。なお、本明細書中では、糖質および甘味料は調味料の概念に含まれない。
ビタミンとしては、当該分野で用いられる任意のビタミンが用いられ得る。ビタミンの例としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸および葉酸が挙げられる。
ポリフェノールとしては、当該分野で用いられる任意のポリフェノールが用いられ得る。ポリフェノールの例としては、例えば、カテキン、タンニン、ウーロン茶ポリフェノール、クロロゲン酸、カカオマスポリフェノール、フラボノイド(例えば、アントシアニン、ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、ルチン、ナリンジン、ケルセチン、イソフラボンおよびナリンゲニン)が挙げられる。
ミネラルとしては、当該分野で用いられる任意のミネラルが用いられ得る。ミネラルの例としては、カルシウム、鉄、亜鉛およびマグネシウムが挙げられる。
酸化防止剤としては、当該分野で用いられる任意の酸化防止剤が用いられ得る。酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸、トコフェロール、ヘスペレチン、ルチン、酵素処理ルチン、カテキン、オリザノール、ジブチルヒドロキシトルエン、および亜硫酸塩が挙げられる。
(2.本発明の飲食品およびその製造方法)
乳化した遊離長鎖脂肪酸またはその塩を含有する本発明の飲食品は、通常の飲食品と比較して、および乳化していない遊離長鎖脂肪酸またはその塩を含有する飲食品と比較して、風味が改善されている。
本明細書において、「風味が改善された飲食品」は、好ましくは、油脂の風味が付与されたかまたは油脂の風味が強化された飲食品である。風味が改善された飲食品は、遊離長鎖脂肪酸またはその塩を添加していない対照飲食品と比較して、好ましくは、コクが増すかまたはコクが付与される。本発明の食品は、好ましくは、油脂のコクが付与されることが所望される食品である。
本発明の飲食品は、遊離長鎖脂肪酸またはその塩を含有するので、遊離脂肪酸を含有していない通常の飲食品と比較して嗜好性が非常に高い。遊離長鎖脂肪酸またはその塩は、通常油脂が使用される飲食品に油脂の代用品として添加されてもよく、あるいは、通常は油脂を含まない飲食品に添加されてもよい。
本発明の飲食品は、任意の形態であり得る。本発明の飲食品は、例えば、固体状(例えば、粉末状、ブロック状など)、半固体状(例えば、スラリー状、ゲル状など)または液状であり得る。特定の場合には、本発明の飲食品は、粉末または液状であることが好ましい。
本発明の飲食品は、食品または飲料である。食品の例としては、以下が挙げられる:穀類加工食品(例えば、米、麦または小麦粉から製造された製品(例えば、ごはん、もち、てんぷら粉、パン、麺、パスタ、ビーフンなど));いも及びでんぷん食品(例えば、イモ類加工食品(例えば、くずきり、はるさめなど));甘味料類(例えば、角砂糖、粉飴など);菓子類(例えば、スナック菓子、クラッカー、ビスケット、クッキー、ケーキ、パイ、カステラ、ウエハース、ボーロ、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンディー、錠菓、清涼菓子、チューインガム、ゼリー、ゼリー菓子、プリン、ブランマンジェ、米菓子、豆菓子、甘納豆、ようかん、くずもち、しるこ、中華まん、シリアル、クッキーミックス、プリンミックス、ゼリーミックスなど);アイスクリーム類(例えば、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓など);油脂類(例えば、植物油、バター、マーガリン、治療用油脂など);種実類(例えば、ごま、松の実、種実類加工食品(ねりごま、すりごま)など);大豆および大豆製品(例えば、豆類加工食品(例えば、大豆水煮、豆腐、みそなど));魚介および練製品(例えば、魚介類加工食品(例えば、水産練製品など)、かずのこ、くらげなど);畜産加工品(例えば、肉類加工食品(例えば、ハム、ソーセージ、ベーコン、ミートローフなど));卵類(例えば、卵類加工食品(例えば、ゆで卵、温泉卵、スモーク卵、スクランブルエッグ、ハムエッグ、目玉焼き、だしまき卵、ポーチトエッグ、卵丼など));乳製品(例えば、ヨーグルト、チーズ、クリーム、粉乳、練乳など);野菜およびきのこ類(例えば、野菜加工食品またはきのこ加工食品(例えば、野菜またはきのこを炒めるか、煮るか、または蒸すことによって製造される食品、漬物、やまいもパウダーなど);果実加工品およびペースト類(例えば、ドライフルーツ、ジャム、マーマレード、フルーツうらごし、マッシュ、フルーツソース、ペースト、あんなど);海藻類(例えば、のり、こんぶ、わかめ、もずく、海藻類加工食品(例えば、海藻サラダ、海藻スープ、海藻の酢の物など);調味料類(例えば、しょうゆ、食酢、ソース類、マヨネーズ類、ドレッシング類、ケチャップ類、ルウ、みりん、料理酒、だしの素、つゆ、たれ、ごはんの素、ミックス調味料、漬け物の素、味付け塩こしょうなど);香辛料類(例えば、からし、こしょう、さんしょう、しょうが、とうがらし、にんにく、わさび、カレー粉、花、椒五香粉、ゆずみそなど);半料理食品および調理済食品(例えば、かゆ、ごはんの素、ハンバーグ、ミートボール、チキンナゲット、カレー、シチュー、ピザ、グラタン、スパゲッティー、焼そば、肉まん、中華惣菜、卵豆腐、茶碗蒸し、ファーストフードなど);冷凍食品(例えば、米飯類、グラタン、ピザ、めん類、いも製品、大豆製品、魚介料理、肉料理、卵料理、惣菜、菓子類、ミックスベジタブルなど);缶詰およびびん詰類(例えば、種実類、豆類、魚介類、肉類、野菜類、果実類、きのこ類、ソース類、デザート、スープ類、植物たんぱく製品、治療用缶詰など);即席食品(例えば、袋入りめん類、生タイプめん類、カップめん、ごはん類、カレー、シチュー、スープ、ソース、ごはんの素、植物たんぱく食品など);煮豆および佃煮類(例えば、煮豆、しいたけのり、なめたけなど);ふりかけおよびそぼろ(例えば、かつおふりかけ、ゆかり、お茶漬け、そぼろなど);ベビーフード(例えば、米およびめん料理、魚料理、肉料理、卵料理、乳製品料理、野菜料理、スープ、フルーツ、ジュース、水分補給飲料、茶、デザート、菓子、ソース、ふりかけなど);粉乳(例えば、一般調整粉乳、特殊調整粉乳、妊婦および授乳婦用粉乳など);経腸栄養食品(例えば、経腸栄養剤、濃厚流動食、栄養補給食品、栄養補助食品、経腸栄養剤、濃厚流動食用フレーバー、デザートなど);その他の食品(例えば、栄養補助食品、ブレンダー食、とろみ食品、検査用食品、シリアル食品、スポーツ用食品、非常食など)。
なお、チューインガム、茶葉のように最終的に飲み込まない部分がある食品については、遊離長鎖脂肪酸、低カロリー食材、中カロリー食材などの含有量は、飲み込まれない部分(例えば、チューインガムの場合はガムベース)の量を除外して計算される。
飲料類の例としては、以下が挙げられる:乳、乳飲料、豆乳、豆乳飲料、ジュース、炭酸飲料、コーヒー、ココア、茶、アルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク、ミネラルウォーター、しるこ、ドリンクスープ。
本発明の飲食品は、製造の任意の段階で乳化した遊離長鎖脂肪酸またはその塩(および必要に応じて糖質、タンパク質、アミノ酸または脂質)を添加すること以外は、その飲食品の通常の原料から通常の手順で、通常の組成で製造され得る。乳化した遊離長鎖脂肪酸またはその塩および必要に応じて糖質、タンパク質、アミノ酸または脂質)は、例えば、直接まぶす、砂糖、食塩等の粉体に分散して噴霧する、水、だし等の液体に溶解して浸漬または噴霧するなど、当該分野で公知の任意の方法によって食品に添加され得る。また、食品が、シュークリーム、アンパンなどのように複数の異なる組成を有する部分から構成される場合、乳化した遊離長鎖脂肪酸は複数の部分のうちのいずれか1つの部分に含まれてもよく、複数の部分のうちのいくつかの部分に含まれていてもよく、全ての部分に含まれていてもよい。
本発明の飲食品は、好ましくは、遊離長鎖脂肪酸濃度の100倍よりも高濃度の脂質を含有しない。例えば、油脂を10%含む食品に0.1%の脂肪酸を添加しても、油様の風味を付与する効果を感じられないためである。
添加方法としては、使用する遊離長鎖脂肪酸乳化物の全量を一度に飲食品中に投入してもよく、時間をかけて少量ずつ投入してもよい。遊離長鎖脂肪酸乳化物を添加するタイミングは、飲食品の加熱前、加熱中または加熱後のいずれであってもよい。添加の際もしくは添加の後には、必要に応じて飲食品の撹拌を行って、飲食品中の材料全体の表面に均一に遊離長鎖脂肪酸乳化物を接触させるようにすることが好ましい。
従って、飲食品の製造の1つの好ましい実施形態では、調理済みの飲食品に遊離長鎖脂肪酸乳化物を添加し、必要に応じて添加された飲食品を攪拌する。
飲食品の製造の1つの好ましい実施形態では、調理前の食材、または調理の途中の飲食品に遊離長鎖脂肪酸乳化物を添加し、その後調理を行う。
遊離長鎖脂肪酸乳化物を添加した後に調理を行う場合、その調理方法としては、任意の調理方法が採用され得る。例えば、加熱調理であってもよく、加圧調理であってもよい。例えば、茹でたり、煮たり、蒸したりすることが可能である。また、調理の際に水分を揮発させて水分量を減らすような調理方法であってもよい。
通常の加熱調理における加熱条件であれば、加熱により遊離長鎖脂肪酸乳化物の効果が著しく損なわれることはない。すなわち、100℃までの加熱温度を用いる加熱調理方法であれば、本発明に好適に使用可能である。
なお、飲食品の調理方法として、油で揚げることは好ましくない。油で揚げた際に、大量の油が添加されることにより、遊離長鎖脂肪酸の効果が発揮されにくいためである。
飲食品を製造するための食材としては、目的とする飲食品のために必要な任意の食材を使用することが可能である。食材は固体状であってもよく、液体状であってもよい。
本発明の飲食品では、好ましくは、乳化した遊離長鎖脂肪酸またはその塩が使用される。遊離長鎖脂肪酸またはその塩の乳化物の直径は、味孔の直径(約6ミクロン)よりも小さいことが好ましい。脂肪酸レセプターは味蕾の中にあり、味孔を通らなければ、脂肪酸は味蕾に入ることができない。本発明で使用される乳化物のメジアン粒子径(メジアン直径)は、小さければ小さいほどよく、理想的には脂肪酸1分子の大きさである。メジアン粒子径は、例えば、約0.05μm以上、約0.06μm以上、約0.07μm以上、約0.08μm以上、約0.09μm以上、約0.1μm以上、約0.11μm以上、約0.12μm以上、約0.13μm以上、約0.14μm以上または約0.15μm以上などであり得る。本発明で使用される乳化物のメジアン粒子径(メジアン直径)は、好ましくは約6μm以下であり、より好ましくは約5μm以下であり、さらに好ましくは約2μm以下であり、さらにより好ましくは約1μm以下であり、特に好ましくは約0.5μm以下であり、そして最も好ましくは約0.1μm以下である。
乳化物の直径の粒度分布に関しては、粒子径が5μm以下の粒子の割合は、約60%以上であることが好ましく、約70%以上であることがより好ましく、約80%以上であることがさらに好ましく、約90%以上であることが特に好ましく、約95%以上であることが最も好ましい。さらに好適な実施形態では、粒子径が3μm以下の粒子の割合は、約60%以上であることが好ましく、約70%以上であることがより好ましく、約80%以上であることがさらに好ましく、約90%以上であることが特に好ましく、約95%以上であることが最も好ましい。なおさらに好適な実施形態では、粒子径が1μm以下の粒子の割合は、約60%以上であることが好ましく、約70%以上であることがより好ましく、約80%以上であることがさらに好ましく、約90%以上であることが特に好ましく、約95%以上であることが最も好ましい。特に好適な実施形態では、粒子径が0.5μm以下の粒子の割合は、約60%以上であることが好ましく、約70%以上であることがより好ましく、約80%以上であることがさらに好ましく、約90%以上であることが特に好ましく、約95%以上であることが最も好ましい。最も好適な実施形態では、粒子径が0.2μm以下の粒子の割合は、約60%以上であることが好ましく、約70%以上であることがより好ましく、約80%以上であることがさらに好ましく、約90%以上であることが特に好ましく、約95%以上であることが最も好ましい。
本発明で使用される乳化物は、水中油型(O/W型)の乳化物である。この乳化物は、当該分野で公知の方法に従って調製され得る。その調製方法の一例を以下に説明する。
まず、遊離長鎖脂肪酸と乳化剤と水と必要に応じて他の材料とを混合する。遊離長鎖長鎖脂肪酸と乳化剤と水と必要に応じて他の材料との添加の順序は、任意である。遊離脂肪酸と乳化剤とを予め混合した後、これに水を添加することによって混合物を得てもよい。あるいは、遊離長鎖脂肪酸および乳化剤を同時に水に添加してもよく;遊離長鎖脂肪酸の添加の後に乳化剤を添加してもよく;そして乳化剤の添加の後に遊離長鎖脂肪酸を添加してもよい。遊離長鎖脂肪酸と乳化剤とを予め混合した後、これに水を添加することが好ましい。
遊離長鎖脂肪酸および乳化剤と混合される水の温度は、遊離長鎖脂肪酸の融点以上であることが好ましく、約60℃以上であることがより好ましく、約70℃以上であること特に好ましく、約80℃以上であることが最も好ましい。遊離長鎖脂肪酸および乳化剤と混合される水の温度は、約100℃以下であることが好ましく、約95℃以下であることがさらに好ましく、約90℃以下であることが最も好ましい。
乳化物中の遊離長鎖脂肪酸の濃度は、所望の粒子径の乳化物が得られる限り、任意である。得られる乳化物中の遊離長鎖脂肪酸の濃度は、全ての遊離長鎖脂肪酸の合計として、好ましくは約0.5重量%以上であり、より好ましくは約1重量%以上、特に好ましくは約1.5重量%以上であり、そして最も好ましくは約2重量%以上である。得られる乳化物中の遊離長鎖脂肪酸の濃度は、全ての遊離長鎖脂肪酸の合計として、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約20重量%以下であり、特に好ましくは約10重量%以下である。得られる乳化物中の遊離長鎖脂肪酸の濃度は、全ての遊離長鎖脂肪酸の合計として、例えば、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下または約3重量%以下であってもよい。遊離長鎖脂肪酸の濃度が高すぎると、乳化物が得られない場合や、乳化物が安定せず、分離する場合がある。遊離長鎖脂肪酸の濃度が低すぎると、遊離長鎖脂肪酸の効果が得られない場合がある。
乳化物中の乳化剤の濃度は、所望の粒子径の乳化物が得られる限り、任意である。得られる乳化物中の乳化剤の濃度は、好ましくは約0.05重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上、特に好ましくは約0.5重量%以上であり、そして最も好ましくは約0.2重量%以上である。得られる乳化物中の乳化剤の濃度は、好ましくは約2重量%以下であり、より好ましくは約1.5重量%以下であり、特に好ましくは約1重量%以下であり、そして最も好ましくは約0.5重量%以下である。乳化剤の濃度が高すぎると、乳化剤の味が強すぎて風味が悪くなる場合がある。乳化剤の濃度が低すぎると、乳化効果が得られない場合がある。
遊離長鎖脂肪酸と乳化剤と水と必要に応じて任意の材料との混合物を、ホモジナイザーで乳化することにより、乳化物が形成される。例えば、特殊機化工業社製ROBO MICSを使用した場合、約15000rpmで約30分間の処理により乳化物が得られる。
この乳化物は、遊離長鎖脂肪酸乳化物として、そのまま飲食品の材料と混合するために使用され得る。この乳化物を粉末化すると乳化物が安定化されて長期保存が可能になり、取り扱いやすくなる。そのため、この乳化物を粉末化することが好ましい。粉末化は、当該分野で公知の方法によって行われ得る。例えば、この乳化物は、スプレードライによって粉末化され得る。使用され得るスプレードライヤーの一例は、大川原化工株式会社製OC−20である。乳化物を粉末化する場合には、バインダーを用いることが好ましい。バインダーとしては当該分野で公知の任意のバインダーが使用され得る。本発明で使用するために好適なバインダーの例としては、デキストリンおよび糖アルコールが挙げられる。デキストリンは、任意の重合度のものであり得る。デキストリンのDEは、例えば、1以上であることが好ましく、約2以上であることがより好ましい。デキストリンのDEは、例えば、20以下であることが好ましく、約15以下であることがより好ましい。糖アルコールの例としては、還元パラチノース(パラチニットともいう)、パラチノース、ラクチトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールおよびマンニトールが挙げられる。還元パラチノースが好ましい。
本明細書中では、「DE」とは、デンプン、デキストリンなどの糖の分解程度を示す指標であって、固形分中のグルコースに換算した直接還元糖百分率である。従って、理論的には、DE=100のものはグルコースである。
得られた粉末は、チョコレートのような水をほとんど使用しない飲食物の場合には、飲食品の製造のためにそのまま使用してもよい(すなわち、乳化物は、粉末として飲食品のための食材に添加される)が、他の飲食物の場合には、水と混合して乳化物にしてから使用することが好ましい。粉末を水と混合して乳化物を得る場合の水の温度は、脂肪酸の融点以下であることが好ましく、約20℃以下であることがより好ましく、約10℃以下であることが特に好ましく、約5℃以下であることが最も好ましい。この水の温度は、約1℃以上であることが好ましく、約2℃以上であることがさらに好ましく、約3℃以上であることが最も好ましい。
粉末を水と混合して乳化物を得る場合には、粉末を水と混合した後に、この混合物に超音波をかけることが好ましい。乳化物に超音波を投射することにより、乳化物中の乳化粒子の直径が小さくなる。超音波を投射する方法は、混合物中に遊離長鎖脂肪酸を実質的に均一に溶解させ得る方法である限り、その超音波の投射方法、周波数、時間などの条件は特に限定されない。超音波投射が可能な超音波発振機としては、例えば、UH600(SMT株式会社製)、RUS−600(株式会社日本精機製作所製)等が使用可能であるがこれらに限定されない。超音波を投射する際の温度および圧力も、遊離長鎖脂肪酸および乳化剤を含む混合物が液体状態を保つ条件であればよい。例えば、遊離脂肪酸および乳化剤を含む混合物を容器に入れ、バス型ソニケーターを使用して、任意の温度で超音波を投射することが行われ得る。
超音波処理の時間は、約1分以上であることが好ましく、約3分以上であることがより好ましく、約5分以上であることがさらに好ましく、約10分以上であることが特に好ましく、そして約15分以上であることが最も好ましい。超音波処理の時間は、約5時間以下であることが好ましく、約3時間以下であることがより好ましく、約2時間以下であることがさらに好ましく、約1時間分以下であることが特に好ましく、そして約30分以下であることが最も好ましい。
超音波を投射する際またはその前後に、ボルテックスミキサー、ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、またはハイブリットミキサーなどの撹拌装置を用いてもよい。また、乳化後に吉田機械興行株式会社製乳化装置ナノマイザーNM2−L200−D10またはNM2−2000ARなどで処理することにより、乳化物の粒子径をさらに小さくすることができる。ナノマイザーを使用する場合、その通過させる回数を増やすことにより、乳化物の粒子径をさらに小さくすることができる。ナノマイザーでの処理回数は2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、または10回以上であることが好ましい。ナノマイザーでの処理回数に特に上限はないが、処理回数の上限は、例えば、約50回以下、約40回以下、約30回以下、約20回以下、約15回以下などであり得る。
超音波の投射後、この溶液中の未溶解または未分散の遊離長鎖脂肪酸および乳化剤を含む固形物をろ過、遠心分離などにより取り除くことが好ましい。超音波を投射した後の乳化物から固形物を取り除く方法は、フィルターによるろ過、遠心分離など、乳化した遊離脂肪酸と未乳化の固形物とを分離できる限りにおいて特に限定されるものではない。フィルターによるろ過の場合、乳化した遊離長鎖脂肪酸は通過し、未乳化の固形物は通過しない孔径を有するフィルターを使用する。好ましくは、孔径約1μmのフィルターを用いる。遠心分離の場合、溶解した遊離長鎖脂肪酸が上清に残り、未溶解の固形物が沈澱または浮遊物に分かれる条件を選択する。好ましくは、約800〜約4,000×g、約5〜約30分間と同等の遠心力をかけることにより分離する。このようにして、遊離長鎖脂肪酸が乳化した乳化物が得られる。
(2.1 乳化した遊離長鎖脂肪酸またはその塩を含有する飲食品)
1つの実施形態では、本発明の飲食品は、飲食品の総重量を基準として、約0.01重量%〜約10重量%の遊離長鎖脂肪酸またはその塩および乳化剤を含有する。
この実施形態では、本発明の飲食品に含まれる乳化した遊離長鎖脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.5重量%以上であり、最も好ましくは約1.0重量%以上である。この実施形態では、本発明の飲食品に含まれる乳化した遊離長鎖脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約8重量%以下であり、さらに好ましくは約5重量%以下であり、特に好ましくは約4重量%以下であり、最も好ましくは約3重量%以下である。
好ましい遊離長鎖脂肪酸の種類については、上記1.1に記載の通りである。また、遊離長鎖脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合、不飽和脂肪酸の酸化を防止するために、本発明の飲食品は酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤の含有量は、その飲食品に応じて適切に設定され得る。
酸化防止剤の含有量は、不飽和脂肪酸1gあたり、1つの実施形態では約0.001g以上であり、好ましくは約0.01g以上であり、より好ましくは約0.1g以上であり、さらに好ましくは約0.5g以上であり、最も好ましくは約1.0g以上である。酸化防止剤の含有量は、不飽和脂肪酸1gあたり、好ましくは約100g以下であり、より好ましくは約10g以下であり、さらに好ましくは約5g以下であり、最も好ましくは約3g以下である。
酸化防止剤の含有量は、飲食品の全体量を基準として、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上であり、最も好ましくは約1重量%以上である。酸化防止剤の含有量は、飲食品の全体量を基準として、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下であり、さらに好ましくは約5重量%以下であり、最も好ましくは約3重量%以下である。
酸化防止剤の含有量は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約1重量%以上であり、さらに好ましくは約5重量%以上であり、最も好ましくは約10重量%以上である。酸化防止剤の含有量は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約90重量%以下であり、より好ましくは約50重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
(2.2 遊離長鎖脂肪酸またはその塩を含有する、高嗜好性の飲食品)
1つの実施形態では、本発明の飲食品は、飲食品の総重量を基準として、約0.01重量%〜約10重量%の遊離長鎖脂肪酸またはその塩を含有する。
この実施形態での高嗜好性飲食品に含まれる遊離長鎖脂肪酸またはその塩の含有量は、上記2.1に記載の範囲と同様である。
好ましい遊離長鎖脂肪酸の種類については、上記1.1に記載の通りである。また、遊離長鎖脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合、不飽和脂肪酸の酸化を防止するために、高嗜好性飲食品は酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤の含有量は、その飲食品に応じて適切に設定され得る。酸化防止剤の好適な含有量は、上記2.1に記載の範囲と同様である。
高嗜好性飲食品は、特定の場合には、糖質、タンパク質、アミノ酸または脂質を含有することが好ましい。糖質、タンパク質、アミノ酸および脂質の好ましい種類については、上記1.3および1.5に記載の通りである。糖質、タンパク質、アミノ酸および脂質の含有量は、その飲食品に応じて適切に設定され得る。
糖質、タンパク質、アミノ酸および脂質の含有量の合計は、飲食品の全体量を基準として、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約5重量%以上であり、さらに好ましくは約10重量%以上であり、最も好ましくは約15重量%以上である。糖質、タンパク質、アミノ酸および脂質の含有量の合計は、飲食品の全体量を基準として、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
糖質、タンパク質、アミノ酸および脂質の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約5重量%以上であり、さらに好ましくは約10重量%以上であり、最も好ましくは約20重量%以上である。糖質、タンパク質、アミノ酸および脂質の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約90重量%以下であり、より好ましくは約75重量%以下であり、さらに好ましくは約50重量%以下であり、最も好ましくは約30重量%以下である。
糖質、タンパク質、アミノ酸および脂質の含有量の合計は、遊離脂肪酸1gあたり、好ましくは約5g以上であり、より好ましくは約10g以上であり、さらに好ましくは約15g以上であり、最も好ましくは約20g以上である。糖質、タンパク質、アミノ酸および脂質の含有量の合計は、遊離脂肪酸1gあたり、好ましくは100g以下であり、より好ましくは約50g以下であり、さらに好ましくは約25g以下であり、最も好ましくは約15g以下である。
(2.3 遊離脂肪酸またはその塩と、中カロリー食材とを含有する、ある程度カロリーが低く、高嗜好性でかつ長期にわたって好まれる飲食品)
1つの実施形態では、本発明の飲食品は、100gあたりのカロリーが30kcal〜600kcalの飲食品であって、該飲食品は、約0.01重量%〜約10重量%の遊離脂肪酸またはその塩と、中カロリー食材を含有し、該中カロリー食材のエネルギー量が100gあたり200kcal〜600kcalである、飲食品である。
この実施形態では、飲食品に含まれる遊離長鎖脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.5重量%以上であり、最も好ましくは約1.0重量%以上である。この実施形態では、飲食品に含まれる遊離長鎖脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約8重量%以下であり、さらに好ましくは約5重量%以下であり、特に好ましくは約4重量%以下であり、最も好ましくは約3重量%以下である。
好ましい遊離長鎖脂肪酸の種類については、上記1.1に記載の通りである。また、遊離長鎖脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合、不飽和脂肪酸の酸化を防止するために、飲食品は酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤の含有量は、その飲食品に応じて適切に設定され得る。酸化防止剤の好適な含有量は、上記2.1に記載の範囲と同様である。
飲食品に含まれる中カロリー食材については、上記1.3に記載の通りである。中カロリー食材の含有量は、その飲食品に応じて適切に設定され得る。
中カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の全体量を基準として、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約5重量%以上であり、さらに好ましくは約10重量%以上であり、最も好ましくは約15重量%以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の全体量を基準として、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
中カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約3重量%以上であり、さらに好ましくは約5重量%以上であり、最も好ましくは約10重量%以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
中カロリー食材の含有量の合計は、遊離長鎖脂肪酸1gあたり、好ましくは約1g以上であり、より好ましくは約5g以上であり、さらに好ましくは約10g以上であり、最も好ましくは約20g以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、遊離長鎖脂肪酸1gあたり、好ましくは約40g以下であり、より好ましくは約35g以下であり、さらに好ましくは約30g以下であり、最も好ましくは約25g以下である。
飲食品はまた、低カロリー食材を含んでもよい。低カロリー食材については、上記1.4に記載の通りである。低カロリー食材の含有量は、その飲食品に応じて適切に設定され得る。
低カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の全体量を基準として、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約5重量%以上であり、さらに好ましくは約10重量%以上であり、最も好ましくは約15重量%以上である。低カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の全体量を基準として、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
低カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約3重量%以上であり、さらに好ましくは約5重量%以上であり、最も好ましくは約10重量%以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
低カロリー食材の含有量の合計は、遊離脂肪酸1gあたり、好ましくは約1g以上であり、より好ましくは約5g以上であり、さらに好ましくは約10g以上であり、最も好ましくは約20g以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、遊離脂肪酸1gあたり、好ましくは約40g以下であり、より好ましくは約35g以下であり、さらに好ましくは約30g以下であり、最も好ましくは約25g以下である。
(2.4 低カロリー飲食品であって、遊離脂肪酸またはその塩を含む、飲食品)
1つの実施形態では、本発明の飲食品は、低カロリー飲食品である。1つの実施形態では、本発明の飲食品は、ゼロカロリー飲食品である。
本明細書中では、用語「ゼロカロリー飲食品」とは、100gあたりのエネルギー量が5kcal以下である飲食品をいう。本明細書中では、用語「低カロリー飲食品」とは、100gあたりのエネルギー量が、飲料の場合は20kcal以下、食品の場合は40kcal以下である飲食品をいう。すなわち、低カロリー飲食品は、ゼロカロリー飲食品を包含する。ゼロカロリー飲食品は、ノンカロリー飲食品ともいわれる。健康増進法によれば、栄養成分が少ないことを強調する表示の基準として、「低」、「軽」、「ひかえめ」、「低減」、「カット」などのエネルギー表示が可能である。また、「無」、「ゼロ」、「ノン」などのエネルギー表示は、100gあたりのエネルギーが5kcal以下とされている。ゼロカロリー飲食品または低カロリー食品のカロリー数は、当該分野で公知の方法に従って実際に測定されてもよく、あるいは、食品成分表および厚生労働省によるエネルギー換算計数に基づいて計算されてもよい。
本発明の低カロリー飲食品の100gあたりのエネルギー量は、好ましくは約40kcal以下であり、より好ましくは約30kcal以下であり、さらに好ましくは約20kcal以下であり、特に好ましくは約10kcal以下であり、とりわけ好ましくは約5kcal以下であり、そして最も好ましくは約0kcalである。
この実施形態では、飲食品に含まれる遊離脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.5重量%以上であり、最も好ましくは約1.0重量%以上である。この実施形態では、飲食品に含まれる遊離脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約4重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下であり、さらに好ましくは約2重量%以下であり、特に好ましくは約1.5重量%以下であり、最も好ましくは約1重量%以下である。
好ましい遊離脂肪酸の種類については、上記1.1に記載の通りである。また、遊離脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合、不飽和脂肪酸の酸化を防止するために、飲食品は酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤の含有量は、その飲食品に応じて適切に設定され得る。酸化防止剤の好適な含有量は、上記2.1に記載の範囲と同様である。
飲食品に含まれる中カロリー食材については、上記1.3に記載の通りである。中カロリー食材の含有量は、その飲食品に応じて適切に設定され得る。
中カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の全体量を基準として、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約5重量%以上であり、さらに好ましくは約10重量%以上であり、最も好ましくは約15重量%以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の全体量を基準として、好ましくは約8重量%以下であり、より好ましくは約7重量%以下であり、さらに好ましくは約6重量%以下であり、最も好ましくは約5重量%以下である。
中カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約3重量%以上であり、さらに好ましくは約5重量%以上であり、最も好ましくは約10重量%以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
中カロリー食材の含有量の合計は、遊離脂肪酸1gあたり、好ましくは約1g以上であり、より好ましくは約5g以上であり、さらに好ましくは約10g以上であり、最も好ましくは約20g以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、遊離脂肪酸1gあたり、好ましくは約40g以下であり、より好ましくは約35g以下であり、さらに好ましくは約30g以下であり、最も好ましくは約25g以下である。
飲食品はまた、低カロリー食材を含んでもよい。低カロリー食材については、上記1.4に記載の通りである。低カロリー食材の含有量は、その飲食品に応じて適切に設定され得る。
低カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の全体量を基準として、好ましくは約10重量%以上であり、より好ましくは約15重量%以上であり、さらに好ましくは約20重量%以上であり、最も好ましくは約30重量%以上である。低カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の全体量を基準として、好ましくは約90重量%以下であり、例えば、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下などであり得る。
低カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約3重量%以上であり、さらに好ましくは約5重量%以上であり、最も好ましくは約10重量%以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
低カロリー食材の含有量の合計は、遊離脂肪酸1gあたり、好ましくは約1g以上であり、より好ましくは約5g以上であり、さらに好ましくは約10g以上であり、最も好ましくは約20g以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、遊離脂肪酸1gあたり、好ましくは約40g以下であり、より好ましくは約35g以下であり、さらに好ましくは約30g以下であり、最も好ましくは約25g以下である。
(3.油脂代用材料およびその製造方法)
本発明により、油脂の代わりに使用され得る油脂代用材料が提供される。本明細書中では用語「油脂代用材料」とは、油脂の代わりに使用される材料のことをいう。なお、油脂代用材料には、油脂は含まない。
油脂代用材料は、油脂の全量を置換して使用してもよく、油脂の一部を置換して(すなわち、油脂と混合して)使用してもよい。
本発明の油脂代用材料は、遊離脂肪酸またはその塩を含む。好ましい遊離脂肪酸の種類については、上記1.1に記載の通りである。
油脂代用材料に含まれる遊離脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.5重量%以上であり、最も好ましくは約1.0重量%以上である。この実施形態では、油脂代用材料に含まれる遊離脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約8重量%以下であり、さらに好ましくは約5重量%以下であり、特に好ましくは約4重量%以下であり、最も好ましくは約3重量%以下である。
遊離脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合、不飽和脂肪酸の酸化を防止するために、高嗜好性飲食品は酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤の含有量は、その飲食品に応じて適切に設定され得る。酸化防止剤の好適な含有量は、上記2.1に記載の範囲と同様である。
より好ましい実施形態では、本発明の油脂代用材料は、中カロリー食材をさらに含有する。中カロリー食材については、上記1.3に記載の通りである。中カロリー食材の含有量は、適切に設定され得る。
中カロリー食材の含有量の合計は、油脂代用材料の全体量を基準として、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約5重量%以上であり、さらに好ましくは約10重量%以上であり、最も好ましくは約15重量%以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、油脂代用材料の全体量を基準として、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
中カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約3重量%以上であり、さらに好ましくは約5重量%以上であり、最も好ましくは約10重量%以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
中カロリー食材の含有量の合計は、遊離脂肪酸1gあたり、好ましくは約1g以上であり、より好ましくは約5g以上であり、さらに好ましくは約10g以上であり、最も好ましくは約20g以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、遊離脂肪酸1gあたり、好ましくは約40g以下であり、より好ましくは約35g以下であり、さらに好ましくは約30g以下であり、最も好ましくは約25g以下である。
より好ましい実施形態では、本発明の油脂代用材料は、低カロリー食材をさらに含有する。低カロリー食材については、上記1.4に記載の通りである。低カロリー食材の含有量は、適切に設定され得る。
低カロリー食材の含有量の合計は、油脂代用材料の全体量を基準として、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約5重量%以上であり、さらに好ましくは約10重量%以上であり、最も好ましくは約15重量%以上である。低カロリー食材の含有量の合計は、油脂代用材料の全体量を基準として、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
低カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約3重量%以上であり、さらに好ましくは約5重量%以上であり、最も好ましくは約10重量%以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、飲食品の固形分を基準として、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
低カロリー食材の含有量の合計は、遊離脂肪酸1gあたり、好ましくは約1g以上であり、より好ましくは約5g以上であり、さらに好ましくは約10g以上であり、最も好ましくは約20g以上である。中カロリー食材の含有量の合計は、遊離脂肪酸1gあたり、好ましくは約40g以下であり、より好ましくは約35g以下であり、さらに好ましくは約30g以下であり、最も好ましくは約25g以下である。
(4.香料製剤およびその製造方法)
本発明により、油脂の風味を添加するために使用され得る香料製剤が提供される。本明細書中では用語「香料製剤」とは、風味を付与するために使用される材料のことをいう。
本発明の香料製剤は、乳化した遊離長鎖遊離脂肪酸またはその塩を含む。好ましい遊離脂肪酸の種類については、上記1.1に記載の通りである。
香料製剤が液体香料(すなわち、乳化香料)である場合、香料製剤に含まれる遊離長鎖遊離脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.5重量%以上であり、さらに好ましくは約1重量%以上であり、特に好ましくは約5重量%以上である。この実施形態では、香料製剤に含まれる遊離脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約15重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下であり、さらに好ましくは約9重量%以下であり、特に好ましくは約8重量%以下であり、最も好ましくは約7重量%以下である。
香料製剤が液体香料(すなわち、乳化香料)である場合、香料製剤に含まれる乳化剤の含有量は、乳化剤の種類によって変動するが、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.5重量%以上であり、最も好ましくは約1.0重量%以上である。この実施形態では、香料製剤に含まれる遊離脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約20重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下であり、さらに好ましくは約5重量%以下である。
香料製剤が粉末香料である場合、香料製剤に含まれる遊離長鎖遊離脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約5以上であり、さらに好ましくは約10重量%以上であり、特に好ましくは約50重量%以上である。この実施形態では、香料製剤に含まれる遊離脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約80重量%以下であり、より好ましくは約70重量%以下であり、特に好ましくは約60重量%以下であり、最も好ましくは約50重量%以下である。粉末の溶けやすさ等の扱いやすさが担保される限り、脂肪酸濃度は高いほどよい。
香料製剤が粉末香料である場合、香料製剤に含まれる乳化剤の含有量は、乳化剤の種類によって変動するが、好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約1重量%以上である。この実施形態では、香料製剤に含まれる遊離脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、特に好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
香料製剤が粉末である場合、香料製剤は、バインダー(賦形剤ともいう)を含むことが好ましい。香料製剤に含まれるバインダーの含有量は、好ましくは約10重量%以上であり、より好ましくは約15重量%以上であり、さらに好ましくは約20重量%以上であり、特に好ましくは約25重量%以上であり、最も好ましくは約30重量%以上である。この実施形態では、香料製剤に含まれる遊離脂肪酸またはその塩の含有量は、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、特に好ましくは約30重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。
本発明の香料製剤は、喫食状態での遊離長鎖脂肪酸濃度が約0.01〜約10重量%となるように調整されたものであることが好ましい。
上記香料製剤を使用して遊離長鎖脂肪酸濃度が約0.01〜約1重量%となった食品もまた、本発明の範囲内にある。
遊離長鎖脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合、不飽和脂肪酸の酸化を防止するために、香料製剤は酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤の含有量は、適切に設定され得る。酸化防止剤の好適な含有量は、不飽和脂肪酸1gあたり、1つの実施形態では約0.001g以上であり、好ましくは約0.01g以上であり、より好ましくは約0.1g以上であり、さらに好ましくは約0.5g以上であり、最も好ましくは約1.0g以上である。酸化防止剤の含有量は、不飽和脂肪酸1gあたり、好ましくは約100g以下であり、より好ましくは約10g以下であり、さらに好ましくは約5g以下であり、最も好ましくは約3g以下である。
以下の製造例では、以下の材料を使用した:
ミリスチン酸:市販の香料原料。
パルミチン酸:市販の香料原料。
ステアリン酸:市販の香料原料。
オレイン酸:市販の香料原料。
デキストリン(DE10):市販品。
デキストリン(DE2):市販品。
アラビアガム:市販品。
モノステアリン酸ペンタグリセリン:太陽化学株式会社社製、商品名サンソフトA181EP、HLB13。
還元パラチノース:純度100%、市販品。
(製造例1:ミリスチン酸を使用した場合の乳化物の調製および粒度分布の測定)
以下の表1に記載の配合で乳化物を調製した。詳細には、まず水以外の材料を混合した後、水で10倍に希釈して混合物を得た。このときの水の温度は約80℃であった。よく混合し、材料を溶解させた後、この混合物を、ホモジナイザー(特殊機化工業社製ROBO MICS)を15000rpmで30分間用いて乳化することにより、脂肪酸乳化物を得た。取り扱いやすくするために、この脂肪酸乳化物を、スプレードライヤー(大川原化工株式会社製OC−20)により粉末化した。
得られた粉末を10倍量の5℃の水と混合した。この混合物を容器に入れ、バス型ソニケーターを使用して超音波をかけて乳化物を得た。発振周波数は約16kHzであり、超音波処理時間は、約15分間であった。
その後、株式会社堀場製作所製レーザ回折式粒子径分布測定装置LA−700を使用してこれらの乳化物の粒度分布を調べ、そのメジアン粒子径を計算した。粒度分布を図2に示す。メジアン粒子径を以下の表1に示す。
この結果、いずれの製造例においてもメジアン粒子径が2μm以下となり、粒度の細かい良好な乳化物が得られた。なお、乳化物を乾燥すると乳化した粒子の直径が大きくなりやすいが、本発明の方法を用いることにより、直径の細かい粒子を得ることができることは極めて驚くべきことである。
(製造例2:パルミチン酸を使用した場合の乳化物の調製および粒度分布の測定)
以下の表2に記載の配合を用いたこと以外は製造例1と同様の方法で超音波処理をした乳化物を調製した。
その後、株式会社堀場製作所製レーザ回折式粒子径分布測定装置LA−700を使用してこれらの乳化物の粒度分布を調べ、そのメジアン粒子径を計算した。粒度分布を図3に示す。メジアン粒子径を以下の表2に示す。
この結果、いずれの製造例においてもメジアン粒子径が1μm以下となり、粒度の細かい良好な乳化物が得られた。なお、乳化物を乾燥すると乳化した粒子の直径が大きくなりやすいが、本発明の方法を用いることにより、直径の細かい粒子を得ることができることは極めて驚くべきことである。
(製造例3:ステアリン酸を使用した場合の乳化物の調製および粒度分布の測定)
以下の表3に記載の配合を用いたこと以外は製造例1と同様の方法で超音波処理をした乳化物を調製した。
その後、株式会社堀場製作所製レーザ回折式粒子径分布測定装置LA−700を使用してこれらの乳化物の粒度分布を調べ、そのメジアン粒子径を計算した。粒度分布を図4に示す。メジアン粒子径を以下の表3に示す。
この結果、いずれの製造例においてもメジアン粒子径が2μm以下となり、粒度の細かい良好な乳化物が得られた。なお、乳化物を乾燥すると乳化した粒子の直径が大きくなりやすいが、本発明の方法を用いることにより、直径の細かい粒子を得ることができることは極めて驚くべきことである。
(製造例4:オレイン酸を使用した場合の乳化物の調製および粒度分布の測定)
以下の表4に記載の配合を用いたこと以外は製造例1と同様の方法で超音波処理をした乳化物を調製した。
その後、株式会社堀場製作所製レーザ回折式粒子径分布測定装置LA−700を使用してこれらの乳化物の粒度分布を調べ、そのメジアン粒子径を計算した。粒度分布を図5に示す。メジアン粒子径を以下の表4に示す。
この結果、いずれの製造例においてもメジアン粒子径が2μm以下となり、粒度の細かい良好な乳化物が得られた。なお、乳化物を乾燥すると乳化した粒子の直径が大きくなりやすいが、本発明の方法を用いることにより、直径の細かい粒子を得ることができることは極めて驚くべきことである。
(製造例5:脂肪酸混合物を使用した場合の乳化物の調製および粒度分布の測定)
以下の表5に記載の配合を用いたこと以外は製造例1と同様の方法で超音波処理をした乳化物を調製した(食品実施例5A、5Bおよび5C)。
その後、株式会社堀場製作所製レーザ回折式粒子径分布測定装置LA−700を使用してこれらの乳化物の粒度分布を調べ、そのメジアン粒子径を計算した。粒度分布を図6に示す。メジアン粒子径を以下の表5に示す。
この結果、いずれの製造例においてもメジアン粒子径が約0.5μmとなり、粒度の細かい良好な乳化物が得られた。複数種の脂肪酸、または脂肪酸を含む混合物(通常は香料製剤)を混合することで、脂肪酸分子の会合が抑制され、粒子がより細かく、より均一になることがわかった。なお、乳化物を乾燥すると乳化した粒子の直径が大きくなりやすいが、本発明の方法を用いることにより、直径の細かい粒子を得ることができることは極めて驚くべきことである。
(食品実施例および食品比較例)
以下の食品実施例1から42において使用した各種脂肪酸乳化物は以下のとおりである:
ミリスチン酸乳化物:製造例1Dと同じ方法で製造した超音波処理後の脂肪酸乳化物;
パルミチン酸乳化物:製造例2Dと同じ方法で製造した超音波処理後の脂肪酸乳化物;
ステアリン酸乳化物:製造例3Dと同じ方法で製造した超音波処理後の脂肪酸乳化物;および
オレイン酸乳化物:製造例4Dと同じ方法で製造した超音波処理後の脂肪酸乳化物。
食品比較例では、脂肪酸を添加しなかったか、または乳化処理をしていない脂肪酸を使用した。ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸は、常温では固体であるが、加熱して溶解して液状となった脂肪酸を食品に添加し、混合することで、均一に混合することができた。その後、食品全体を添加した脂肪酸の融点以下に冷やすことで、脂肪酸が固体になった。
食品実施例および食品比較例では、得られた飲食物を熟練者によって官能評価した。総合評価は、無添加のものと比較して、◎:大幅に風味が向上した、○:風味が向上した、△:大きな変化はなかった、×風味が劣化した、として評価した。
(食品実施例1:白飯)
炊飯器を用い、常法に従って白飯を炊飯した。製造例1D、2D、または3Dのいずれかと同じ方法で製造した超音波処理後の脂肪酸乳化物を使用した。この脂肪酸乳化物の脂肪酸濃度は、2重量%であった。この脂肪酸乳化物を、白飯に対して0.1重量%の割合で白飯に添加して全体にほぼ均一にゆきわたるまで混合して白飯を得た(食品実施例1A〜1C)。食品比較例1は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例1A〜1Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られた白飯を、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加した白飯(食品実施例1A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、油の風味が付与された。その油の風味は、パルミチン酸よりやや軽かった。米のほぐれ性が向上した。総合評価は、○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加した白飯(食品実施例1B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、油の風味が付与された。その油の風味は、ステアリン酸よりやや軽かった。米のほぐれ性が向上した。総合評価は、○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加した白飯(食品実施例1C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、油の風味が付与された。米のほぐれ性が向上した。総合評価は、○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例1)の白飯は、通常に炊飯した白飯の風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加した白飯(食品比較例1A)、乳化しないパルミチン酸を添加した白飯(食品比較例1B)、および乳化しないステアリン酸を添加した白飯(食品比較例1C)のそれぞれについては、いずれも、均一に混合すると、食品表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加した白飯(食品比較例1A)、乳化しないパルミチン酸を添加した白飯(食品比較例1B)、または乳化しないステアリン酸を添加した白飯(食品比較例1C)は、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への不快な刺激はなかったが、蝋の様な食感と香りがあったため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例2:スパゲッティー)
3重量%の食塩水で乾燥スパゲッティーをゆでて水切りした。ゆでて水切りしたスパゲッティーに対して0.1重量%の割合で、2重量%脂肪酸乳化物をこのスパゲッティーに添加して全体にほぼ均一にゆきわたるまで混合してスパゲッティーを得た(食品実施例2A〜2C)。食品比較例2は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例2A〜2Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたスパゲッティーを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したスパゲッティー(食品実施例2A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、油の風味が付与され、食べやすくなった。その油の風味は、パルミチン酸よりやや軽かった。麺線のほぐれ性が向上した。総合評価は、○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したスパゲッティー(食品実施例2B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、油の風味が付与され、食べやすくなった。その油の風味は、ステアリン酸よりやや軽かった。麺線のほぐれ性が向上した。総合評価は、◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したスパゲッティー(食品実施例2C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、油の風味が付与され、食べやすくなった。麺線のほぐれ性が向上した。総合評価は、◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例2)のスパゲッティーは、通常にゆでたスパゲッティーの風味であるが、油脂の風味がないために物足らなかった。麺線が付着しやすく、ほぐれにくかった。
乳化しないミリスチン酸を添加したスパゲッティー(食品比較例2A)、乳化しないパルミチン酸を添加したスパゲッティー(食品比較例2B)、および乳化しないステアリン酸を添加したスパゲッティー(食品比較例2C)のそれぞれについては、いずれも、均一に混合すると、食品表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したスパゲッティー(食品比較例2A)、乳化しないパルミチン酸を添加したスパゲッティー(食品比較例2B)、および乳化しないステアリン酸を添加したスパゲッティー(食品比較例2C)のぞれぞれについては、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への不快な刺激はなかったが、蝋の様な食感と香りがあったため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例3:パン)
以下の表6に記載の配合および(1)から(6)の手順で、油脂の少ないコッペパンを焼いた。
ここで使用した脂肪酸パウダー溶液は、製造例1D、2D、3Dまたは4Dのいずれかと同じ方法で製造した超音波処理後の脂肪酸乳化物であった(食品実施例3A〜3D)。この脂肪酸乳化物の脂肪酸濃度は、2重量%であった。パンでの脂肪酸添加濃度は0.2重量%であった。食品比較例3は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。
得られたパンを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したパン(食品実施例3A)、製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したパン(食品実施例3B)、および製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したパン(食品実施例3C)のいずれでも、温かい状態および冷めた状態の両方で、油の風味が付与され、食べやすくなった。脂肪酸種による差は小さかった。総合評価は、○であった。このパンには温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例4Dのオレイン酸乳化物を添加したパン(食品実施例3D)は、オレイン酸特有の油脂のにおいが付与されたが、無添加のものと比べると風味が向上した。総合評価は、○であった。このパンには、温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例3)のパンは、パサパサとして食べにくかった。
(食品実施例4:マッシュポテト)
市販の乾燥マッシュポテト70gに対して60℃に調整した無脂肪牛乳を添加して混合してマッシュポテトを戻した後、食塩2.1gを加えて調味した。その後、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を、調味後のマッシュポテトに対して0.1重量%の割合でこのマッシュポテトに添加して全体にほぼ均一にゆきわたるまで混合した(食品実施例4A〜C)。食品比較例4は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例4A〜4Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたマッシュポテトを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したマッシュポテト(食品実施例4A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、油の風味が付与され、食べやすくなった。パルミチン酸乳化物を添加した場合よりも風味が軽くなった。ミルク様の風味が付与された。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したマッシュポテト(食品実施例4B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、油の風味が付与され、食べやすくなった。ステアリン酸乳化物を添加した場合よりも風味が軽くなり、より食べやすくなった。かすかにミルク様の風味が付与された。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したマッシュポテト(実施例4C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、油の風味が付与され、食べやすくなった。ミルク様の風味が付与された。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例4)のマッシュポテトは、油脂の風味がないために物足らなかった。また、風味が重く、食べにくかった。
乳化しないミリスチン酸を添加したマッシュポテト(食品比較例4A)、乳化しないパルミチン酸を添加したマッシュポテト(食品比較例4B)、および乳化しないステアリン酸を添加したマッシュポテト(食品比較例4C)のそれぞれについては、いずれも、均一に混合すると、食品表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したマッシュポテト(食品比較例4A)、乳化しないパルミチン酸を添加したマッシュポテト(食品比較例4B)、および乳化しないステアリン酸を添加したマッシュポテト(食品比較例4C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への不快な刺激はなかったが、蝋の様な食感と香りがあったため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例5:砂糖水)
20重量%のショ糖水溶液を作製した後、2重量の脂肪酸乳化物(パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を、脂肪酸の添加濃度が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例5Aおよび5B)。食品比較例5は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例5A〜5Bは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。パルミチン酸およびステアリン酸は、常温では固体であるが、溶解して液状となった脂肪酸を食品に添加し、混合することで、均一に混合することができた。その後、食品全体を添加した脂肪酸の融点以下に冷やすことで、脂肪酸が固体になった。
得られたショ糖水溶液を、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したショ糖水溶液(食品実施例5A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、口に入れた瞬間の甘味を強く感じた。全体的な風味にまとまりとが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したショ糖水溶液(食品実施例5B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、口に入れた瞬間の甘味を強く感じた。全体的な風味にまとまりと重みが付与された。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例5)のショ糖水溶液は、甘さを有する通常の砂糖水であった。
乳化しないパルミチン酸を添加したショ糖水溶液(食品比較例5A)、および乳化しないステアリン酸を添加したショ糖水溶液(食品比較例5B)のそれぞれについては、いずれも、温かい状態では、液面に液状の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲むと、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、飲料とするに耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないパルミチン酸を添加したショ糖水溶液(食品比較例5A)、および乳化しないステアリン酸を添加したショ糖水溶液(食品比較例5B)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲んでも、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。
総合評価は△であった。
(食品実施例6:豆乳)
スジャータ成分無調整豆乳(めいらく;脂質3.0重量%)に2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を脂肪酸の添加量が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例6A〜C)。食品比較例6は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例6A〜6Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られた豆乳を、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加した豆乳(食品実施例6A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、軽くさわやかなコクが付与された。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加した豆乳(食品実施例6B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、青臭さがマスキングされ、飲みやすくなった。コクと甘味が付与された。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加した豆乳(食品実施例6C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、青臭さがマスキングされ、飲みやすくなった。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例6)の豆乳は、通常の豆乳の風味であるが、豆乳に特有の青臭さを有した。
乳化しないミリスチン酸を添加した豆乳(食品比較例6A)、乳化しないパルミチン酸を添加した豆乳(食品比較例6B)、および乳化しないステアリン酸を添加した豆乳(食品比較例6C)のそれぞれについては、いずれも、温かい状態では、液面に液状の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲むと、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、飲料とするに耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加した豆乳(食品比較例6A)、乳化しないパルミチン酸を添加した豆乳(食品比較例6B)、および乳化しないステアリン酸を添加した豆乳(食品比較例6C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲んでも、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例7:味噌汁)
生味噌タイプの即席味噌汁(脂質4.6重量%、塩分相当量8.8重量%)の具を用いず味噌のみを90℃の湯150gに溶解後、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を味噌汁中の脂肪酸濃度が0.1重量%または0.2重量%となるように添加して混合した(食品実施例7A〜C)。食品比較例7は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例7A〜7Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られた味噌汁を、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加した味噌汁(食品実施例7A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、コクと厚みが付与された。添加濃度が0.2重量%の場合、0.1重量%と比較して、さらにコクと厚みが付与された。0.1重量%の場合および0.2重量%の場合の両方で、パルミチン酸より軽い風味となった。いずれの場合も、総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加した味噌汁(食品実施例7B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、コクと厚みが付与された。添加濃度が0.2重量%の場合、0.1重量%と比較して、さらにコクと厚みが付与された。0.1重量%の場合および0.2重量%の場合の両方で、ステアリン酸より軽い風味となった。0.1重量%の場合の総合評価は○であり、0.2重量%の場合の総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加した味噌汁(食品実施例7C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、コクと厚みが付与された。添加濃度が0.2重量%の場合、0.1重量%と比較して、さらにコクと厚みが付与された。0.1重量%の場合の総合評価は○であり、0.2重量%の場合の総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例7)の味噌汁は、通常の味噌汁の風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加した味噌汁(食品比較例7A)、乳化しないパルミチン酸を添加した味噌汁(食品比較例7B)、および乳化しないステアリン酸を添加した味噌汁(食品比較例7C)のそれぞれについては、いずれも、温かい状態では、液面に液状の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲むと、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、飲料とするに耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加した味噌汁(食品比較例7A)、乳化しないパルミチン酸を添加した味噌汁(食品比較例7B)、および乳化しないステアリン酸を添加した味噌汁(食品比較例7C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲んでも、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例8:ピーナツバター)
ピーナツバタークリーミー(タイショウ製;脂質50.5重量%)に2重量%のパルミチン酸乳濁物を溶かし込んだ(食品実施例8)。ピーナツバターに対する脂肪酸添加濃度は、0.3重量%であった。食品比較例8は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例8Aは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。パルミチン酸は、常温では固体であるが、溶解して液状となった脂肪酸を食品に添加し、混合することで、均一に混合することができた。その後、食品全体を添加した脂肪酸の融点以下に冷やすことで、脂肪酸が固体になった。
得られたピーナツバターを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したピーナツバター(食品実施例8)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、油脂のコクが付与された。総合評価は、○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例8)のピーナツバターは、甘味と油脂のコクを有するピーナツバターであった。
乳化しないパルミチン酸を添加したピーナツバター(食品比較例8A)は、均一に混合すると、食品表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないパルミチン酸を添加したピーナツバター(食品比較例8A)は、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への不快な刺激はなかったが、蝋の様な食感と香りがあったため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例9:もやし炒め)
生のもやしをフライパンで2分加熱後、生のもやしの重量に対して0.6重量%の食塩を混ぜ合わせた。その後2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を添加した(食品実施例9A〜C)。炒める工程でもやしの水分が蒸発するため、もやし炒め全体に対する最終的な脂肪酸添加濃度は、0.6重量%であった。食品比較例9は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例9A〜9Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたもやし炒めを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したもやし炒め(食品実施例9A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとバターのようなコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は、○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したもやし炒め(食品実施例9B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりと鶏油のようなコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したもやし炒め(食品実施例9C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりと牛脂のようなコクが付与された。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例9)のもやし炒めは、油脂分がないため、全体にまとまりがなく、コクに欠けた。
乳化しないミリスチン酸を添加したもやし炒め(食品比較例9A)、乳化しないパルミチン酸を添加したもやし炒め(食品比較例9B)、および乳化しないステアリン酸を添加したもやし炒め(食品比較例9C)のそれぞれは、均一に混合すると、食品表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したもやし炒め(食品比較例9A)、乳化しないパルミチン酸を添加したもやし炒め(食品比較例9B)、および乳化しないステアリン酸を添加したもやし炒め(食品比較例9C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への不快な刺激はなかったが、蝋の様な食感と香りがあったため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例10:たまねぎ炒め)
みじん切りにしたたまねぎはテフロン(登録商標)加工フライパンを用いて重量が50%になるまで炒めた後、生たまねぎの重量に対して0.6重量%の食塩を加えて軽く炒め合わせた後、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を生たまねぎの重量の0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例10A〜C)。食品比較例10は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例10A〜10Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたたまねぎ炒めを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したたまねぎ炒め(食品実施例10A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は、○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したたまねぎ炒め(食品実施例10B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は、◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したたまねぎ炒め(食品実施例10C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加のたまねぎ炒め(食品比較例10)は、コクとまとまりに欠けた。
乳化しないミリスチン酸を添加したたまねぎ炒め(食品比較例10A)、乳化しないパルミチン酸を添加したたまねぎ炒め(食品比較例10B)、および乳化しないステアリン酸を添加したたまねぎ炒め(食品比較例10C)のそれぞれについては、いずれも、均一に混合すると、食品表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したたまねぎ炒め(食品比較例10A)、乳化しないパルミチン酸を添加したたまねぎ炒め(食品比較例10B)、および乳化しないステアリン酸を添加したたまねぎ炒め(食品比較例10C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への不快な刺激はなかったが、蝋の様な食感と香りがあったため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例11:オレンジジュース)
市販のオレンジジュースに2重量%の脂肪酸乳化物(パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を、脂肪酸濃度が0.1重量%になるように添加した(食品実施例11Aおよび11B)。食品比較例11は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例11Aおよび11Bは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたオレンジジュースを、冷たい状態(約25℃)で熟練者によって官能評価した。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したオレンジジュース(食品実施例11A)には、甘味と厚みが付与され全体のまとまりが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したオレンジジュース(食品実施例11B)には、甘味と厚みが付与され全体のまとまりが付与された。パルミチン酸より重く硬い風味となった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例11)のオレンジジュースは、通常のオレンジジュースの風味であった。
乳化しないパルミチン酸を添加したオレンジジュース(食品比較例11A)および乳化しないステアリン酸を添加したオレンジジュース(食品比較例11B)のそれぞれについては、いずれも、液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲んでも、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例12:りんごジュース)
市販のりんごジュースに2重量%の脂肪酸乳化物(パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を、脂肪酸濃度が0.1重量%になるように添加した(食品実施例12Aおよび12B)。パルミチン酸乳化物については、脂肪酸濃度が0.2重量%になるものも作製した。食品比較例12は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例12Aおよび12Bは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたりんごジュースを、冷たい状態(約25℃)で熟練者によって官能評価した。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したりんごジュース(食品実施例12A)には、甘味と厚みが付与され全体のまとまりが付与された。0.2重量%添加した場合は、パルミチン酸特有の石鹸のような風味がかすかに付与された。0.1重量%添加した場合の総合評価は◎であり、0.2重量%添加した場合の総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したりんごジュース(食品実施例12B)には、甘味と厚みが付与され全体のまとまりが付与された。パルミチン酸より重く硬い風味となった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例12)のりんごジュースは、通常のりんごジュースの風味であった。
乳化しないパルミチン酸を添加したりんごジュース(食品比較例12A)および乳化しないステアリン酸を添加したりんごジュース(食品比較例12B)のそれぞれについては、いずれも、液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲んでも、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例13:ミックスジュース)
市販のミックスジュース(りんご、オレンジ、もも、バナナおよびレモンの果実を原料とする)に2重量%の脂肪酸乳化物(パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を、脂肪酸濃度が0.1重量%になるように添加した(食品実施例13Aおよび13B)。食品比較例13は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例13Aおよび13Bは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたミックスジュースを、冷たい状態(約25℃)で熟練者によって官能評価した。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したミックスジュース(食品実施例13A)には、甘味と厚みが付与され全体のまとまりが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したミックスジュース(食品実施例13B)には、甘味と厚みが付与され全体のまとまりが付与された。パルミチン酸より重く硬い風味となった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例13)のミックスジュースは、通常のミックスジュースの風味であった。
乳化しないパルミチン酸を添加したミックスジュース(食品比較例13A)および乳化しないステアリン酸を添加したミックスジュース(食品比較例13B)のそれぞれについては、いずれも、液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲んでも、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例14:イチゴジャム)
市販のイチゴジャム(アヲハタ製;糖度50度、脂質0重量%)の果肉以外の部分に、2重量%の脂肪酸乳化物(パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を、脂肪酸濃度が0.1重量%になるように添加して混合した(食品実施例14Aおよび14B)。食品比較例14は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例14Aおよび14Bは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたイチゴジャムを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したイチゴジャム(食品実施例14A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、口に入れた瞬間の甘味を強く感じた。全体的な風味にまとまりと重みが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したイチゴジャム(食品実施例14B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、口に入れた瞬間の甘味を強く感じた。全体的な風味にまとまりと重みが付与された。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例14)のイチゴジャムは、通常のイチゴジャムの風味であった。
乳化しないパルミチン酸を添加したイチゴジャム(食品比較例14A)および乳化しないステアリン酸を添加したイチゴジャム(食品比較例14B)のそれぞれについては、いずれも、均一に混合すると、食品表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないパルミチン酸を添加したイチゴジャム(食品比較例14A)および乳化しないステアリン酸を添加したイチゴジャム(食品比較例14B)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への不快な刺激はなかったが、蝋の様な食感と香りがあったため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例15:きのこソテー)
きのこ(えのき、しめじ、しいたけおよびマッシュルームを使用した)を油脂を使わずにソテーし、塩コショウで調味した。その後2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を、ソテー後の重量全体に対して脂肪酸添加濃度が0.1重量%になるように添加して混合した(食品実施例15A〜C)。食品比較例15は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例15A〜15Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたきのこソテーを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したきのこソテー(食品実施例15A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとバターのようなコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は、○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したきのこソテー(食品実施例15B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりと鶏油のようなコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したきのこソテー(食品実施例15C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりと牛脂のようなコクが付与された。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例15)のきのこソテーは、油脂分がないため、全体にまとまりがなく、コクに欠けた。
乳化しないミリスチン酸を添加したきのこソテー(食品比較例15A)、乳化しないパルミチン酸を添加したきのこソテー(食品比較例15B)および乳化しないステアリン酸を添加したきのこソテー(食品比較例15C)のそれぞれについては、いずれも、均一に混合すると、食品表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したきのこソテー(食品比較例15A)、乳化しないパルミチン酸を添加したきのこソテー(食品比較例15B)および乳化しないステアリン酸を添加したきのこソテー(食品比較例15C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への不快な刺激はなかったが、蝋の様な食感と香りがあったため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例16:わかめの酢の物)
乾燥わかめを60℃の湯に3分間浸漬することにより戻し、20℃の水で水洗後、水分を絞った。酢50g、砂糖8gおよび食塩0.8gを混ぜ合わせて、この混合物に、もどして水を絞ったわかめを5分漬け込んだ。その後、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を酢の物全体に対して脂肪酸濃度が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例16A〜C)。食品実施例16Dでは、オレイン酸乳化物を、酢の物全体に対して脂肪酸濃度が0.05重量%となるように添加して混合した。食品比較例16は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例16A〜16Dは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られた酢の物を、冷たい状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加した酢の物(食品実施例16A)には、酢カドが取れ、全体的なまとまりが付与された。甘味が強調された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加した酢の物(食品実施例16B)には、酢カドが取れ、全体的なまとまりが付与された。甘味が強調された。ステアリン酸よりは効果が低かった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加した酢の物(食品実施例16C)には、酢カドが取れ、全体的なまとまりが付与された。甘味が強調された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例4Dのオレイン酸乳化物を添加した酢の物(食品実施例16D)には、酢カドが取れ、全体的なまとまりとコクが付与された。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例16)の酢の物は、通常の酢の物の風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加した酢の物(食品比較例16A)、乳化しないパルミチン酸を添加した酢の物(食品比較例16B)および乳化しないステアリン酸を添加した酢の物(食品比較例16C)のそれぞれについては、いずれも、わかめの部分には変化がなかったが、酢混合液の液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。喫食しても、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。乳化しないオレイン酸を添加した酢の物(食品比較例16D)では、わかめの部分には変化がなかったが、酢混合液の液面に固形の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。喫食すると、脂肪酸の融点が体温よりも低いため、溶解した。液状の脂肪酸には口腔内粘膜に対する刺激性があるため、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
(食品実施例17:エビ塩焼き)
むきえびを0.3重量%の食塩で揉み洗いし、ぬめりを取った後、充分に水洗し、水気をふき取った。熱したテフロン(登録商標)加工フライパンにむきえびを入れ、表面が白っぽくなるまで焼いた後、生むきえびに対して酒を10重量%、食塩を0.6重量%加えて、むきえびに完全に火が通るまで炒めた。火からおろした後、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を、加熱前のむきえびの重量に対して脂肪酸濃度が0.1重量%になるように添加して混合した(食品実施例17A〜C)。食品比較例17は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例17A〜17Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたエビ塩焼きを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したエビ塩焼き(食品実施例17A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、エビの生臭さが抑えられ、バターで焼いたようなコクが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したエビ塩焼き(食品実施例17B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、ステアリン酸よりも強くエビの生臭さが抑えられた。油脂で焼いたようなコクが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したエビ塩焼き(食品実施例17C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、エビの生臭さが抑えられ、油脂で焼いたようなコクが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例17)のエビ塩焼きは、エビの生臭さがあり、コクがなかった。
乳化しないミリスチン酸を添加したアサリ酒蒸し(食品比較例17A)、乳化しないパルミチン酸を添加したエビ塩焼き(食品比較例17B)および乳化しないステアリン酸を添加したエビ塩焼き(食品比較例17C)のそれぞれについては、いずれも、均一に混合すると、食品表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したエビ塩焼き(食品比較例17A)、乳化しないパルミチン酸を添加したエビ塩焼き(食品比較例17B)および乳化しないステアリン酸を添加したエビ塩焼き(食品比較例17C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への不快な刺激はなかったが、蝋の様な食感と香りがあったため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例18:アサリ酒蒸し)
殻つきの生きたあさりを3%食塩水に2時間浸漬し、砂抜きをした後、揉み洗い、水洗した。熱したテフロン(登録商標)加工フライパンにあさりをいれ、殻を含めた生あさりに対して20重量%の酒、殻を除いた生あさり(計算値、廃棄率60%に従い計算)に対して0.8重量%の食塩を加えて、加熱した。火からおろした後殻を除いた加熱あさり(計算値、廃棄率60%に従い計算)に対して脂肪酸濃度が0.1重量%になるように、2重量%の脂肪酸乳化物を(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)それぞれの濃度で添加して混合した(食品実施例18A〜C)。食品比較例18は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例18A〜18Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたアサリ酒蒸しを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したアサリ酒蒸し(食品実施例18A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、アサリの生臭さが抑えられ、バターで仕上げたようなコクが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したアサリ酒蒸し(食品実施例18B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、ステアリン酸よりも強くアサリの生臭さが抑えられた。サラダ油で仕上げたようなコクが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したアサリ酒蒸し(食品実施例18C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、アサリの生臭さが抑えられ、サラダ油で仕上げたようなコクが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例18)のアサリ酒蒸しは、アサリの生臭さがあり、コクがなかった。
乳化しないミリスチン酸を添加したアサリ酒蒸し(食品比較例18A)、乳化しないパルミチン酸を添加したアサリ酒蒸し(食品比較例18B)および乳化しないステアリン酸を添加したアサリ酒蒸し(食品比較例18C)のそれぞれについては、いずれも、汁の部分には脂肪酸が浮いて均一に混ざらず、アサリの表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したアサリ酒蒸し(食品比較例18A)、乳化しないパルミチン酸を添加したアサリ酒蒸し(食品比較例18B)および乳化しないステアリン酸を添加したアサリ酒蒸し(食品比較例18C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への不快な刺激はなかったが、蝋の様な食感と香りがあったため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例19:マグロ油漬け)
ノンオイルツナ(いなば製;マグロ肉のスープ煮缶詰;脂質0.4重量%、塩分相当量1.0重量%)を液汁も含めて用いた。2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を、対象の重量に対して0.1重量%の濃度となるように添加して混合してツナ混合物を得た(食品実施例19A〜C)。食品比較例19は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例19A〜19Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合してツナ混合物を得た。
得られたツナ混合物を、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したツナ混合物(食品実施例19A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、厚みのある風味となり、しっかりとしたコクが付与された。マグロの魚臭さが抑えられた。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したツナ混合物(食品実施例19B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、厚みのある風味となり、しっかりとしたコクが付与された。マグロの魚臭さが抑えられた。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したツナ混合物(食品実施例19C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、厚みのある風味となり、しっかりとしたコクが付与された。マグロの魚臭さが抑えられた。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例19)のツナは、通常のノンオイルツナ缶詰の風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したツナ混合物(食品比較例19A)、乳化しないパルミチン酸を添加したツナ混合物(食品比較例19B)および乳化しないステアリン酸を添加したツナ混合物(食品比較例19C)では、表面にテリが生じた。これらを温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。温かい状態での総合評価はいずれも×であった。脂肪酸の融点以下では、全体的に白っぽくなり、ゲル上に固化した。口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。冷たい状態での総合評価はいずれも△であった。
(食品実施例20:からし明太子)
辛子明太子(タイショウ製)に、辛子明太子全体に対して脂肪酸濃度が0.1重量%になるように、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を添加して混合した(食品実施例20A〜C)。食品比較例20は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例20A〜20Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたからし明太子を、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したからし明太子(食品実施例20A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりと、サラダオイルで和えたようなコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したからし明太子(食品実施例20B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりと、サラダオイルで和えたようなコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したからし明太子(食品実施例20C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりと、サラダオイルで和えたようなコクが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例20)のからし明太子は、通常のからし明太子の風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したからし明太子(食品比較例20A)、乳化しないパルミチン酸を添加したからし明太子(食品比較例20B)および乳化しないステアリン酸を添加したからし明太子(食品比較例20C)のそれぞれについては、いずれも、からし明太子の表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したからし明太子(食品比較例20A)、乳化しないパルミチン酸を添加したからし明太子(食品比較例20B)および乳化しないステアリン酸を添加したからし明太子(食品比較例20C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への不快な刺激はなかったが、蝋の様な食感と香りがあったため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例21:ハンバーグ)
市販のハンバーグ種を崩して混ぜ合わせた後、ハンバーグ種全体に対して脂肪酸濃度が0.2重量%になるように、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を添加して混合し、形成した(食品実施例21A〜C)。熱したテフロン(登録商標)加工フライパンにて表面を焼き、ガスオーブンで200℃、8分間加熱調理した。食品比較例21は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例21A〜21Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたハンバーグを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したハンバーグ(食品実施例21A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、風味に厚みと乳製品のようなコクが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したハンバーグ(食品実施例21B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、風味に厚みとコクが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したハンバーグ(食品実施例21C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、風味に厚みとコクが付与された。パルミチン酸より硬く重い風味となった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例21)のハンバーグは、通常のハンバーグの風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したハンバーグ(食品比較例21A)、乳化しないパルミチン酸を添加したハンバーグ(食品比較例21B)および乳化しないステアリン酸を添加したハンバーグ(食品比較例21C)のそれぞれについては、いずれも、ハンバーグの表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したハンバーグ(食品比較例21A)、乳化しないパルミチン酸を添加したハンバーグ(食品比較例21B)および乳化しないステアリン酸を添加したハンバーグ(食品比較例21C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への不快な刺激はなかったが、蝋の様な食感と香りがあったため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例22:スクランブルエッグ)
全卵に食塩を0.3重量%添加後、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を全卵全体に対して脂肪酸濃度が0.1重量%となるように添加して混合した後、加熱調理してスクランブルエッグとした(食品実施例22A〜C)。食品実施例22Dでは、オレイン酸乳化物を、全卵全体に対して脂肪酸濃度が0.05重量%となるように添加してから調理した。食品比較例22は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例22A〜22Dは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合してから調理した。
得られたスクランブルエッグを、温かい状態(約70℃)および冷たい状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したスクランブルエッグ(食品実施例22A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したスクランブルエッグ(食品実施例22B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したスクランブルエッグ(食品実施例22C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例4Dのオレイン酸乳化物を添加したスクランブルエッグ(食品実施例22D)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。オレイン酸特有の油脂のにおいは感じられなかった。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例22)のスクランブルエッグは、油脂を配合していないため、味のまとまりとコクに欠けた。
乳化しないミリスチン酸を添加したスクランブルエッグ(食品比較例22A)、乳化しないパルミチン酸を添加したスクランブルエッグ(食品比較例22B)、乳化しないステアリン酸を添加したスクランブルエッグ(食品比較例22C)および乳化しないオレイン酸を添加したスクランブルエッグ(食品比較例22D)のそれぞれについては、いずれも、スクランブルエッグの表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したスクランブルエッグ(食品比較例22A)、乳化しないパルミチン酸を添加したスクランブルエッグ(食品比較例22B)、乳化しないステアリン酸を添加したスクランブルエッグ(食品比較例22C)および乳化しないオレイン酸を添加したスクランブルエッグ(食品比較例22D)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。食品比較例22A〜22Cでは、固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上せず、総合評価は△であった。食品比較例22Dでは、乳化しないオレイン酸を添加したスクランブルエッグ(食品比較例22D)は、液状の脂肪酸には口腔内粘膜に対する刺激性があるため、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
(食品実施例23:無脂肪牛乳)
おいしい無脂肪牛乳(森永;脂質0.4重量%)に、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を脂肪酸の添加量が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例23A〜C)。食品比較例23は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例23A〜23Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られた牛乳を、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加した牛乳(食品実施例23A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、牛乳らしい甘味、厚みが付与された。白濁性が付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加した牛乳(食品実施例23B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、牛乳らしい甘味、厚みが付与された。白濁性が付与された。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加した牛乳(食品実施例23C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、牛乳らしい甘味、厚みが付与された。白濁性が付与された。パルミチン酸より硬く重い風味となった。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例23)の牛乳は、乳脂肪がないために、牛乳特有のおいしさがなかった。白濁性に欠けた。
乳化しないミリスチン酸を添加した牛乳(食品比較例23A)、乳化しないパルミチン酸を添加した牛乳(食品比較例23B)および乳化しないステアリン酸を添加した牛乳(食品比較例23C)のそれぞれについては、いずれも、液面に液状の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲むと、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、飲料とするに耐えなかった。色調の変化はなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加した牛乳(食品比較例23A)、乳化しないパルミチン酸を添加した牛乳(食品比較例23B)および乳化しないステアリン酸を添加した牛乳(食品比較例23C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲んでも、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。色調の変化はなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例24:カッテージチーズ)
雪印北海道100カッテージチーズ(雪印;脂質4.0重量%)に、チーズ全体に対して脂肪酸濃度が0.1重量%になるように、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を添加して混合した(食品実施例24A〜C)。食品比較例24は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例24A〜24Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたチーズを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したチーズ(食品実施例24A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したハンバーグ(食品実施例24B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したチーズ(食品実施例24C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例24)のカッテージチーズは、通常のカッテージチーズの風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したカッテージチーズ(食品比較例24A)、乳化しないパルミチン酸を添加したカッテージチーズ(食品比較例24B)および乳化しないステアリン酸を添加したカッテージチーズ(食品比較例24C)のそれぞれについては、いずれも、カッテージチーズの表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。色調の変化はなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したカッテージチーズ(食品比較例24A)、乳化しないパルミチン酸を添加したカッテージチーズ(食品比較例24B)および乳化しないステアリン酸を添加したカッテージチーズ(食品比較例24C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への不快な刺激はなかったが、蝋の様な食感と香りがあったため、添加した食品の風味は向上しなかった。色調の変化はなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例25:ホットケーキ)
ホットケーキミックス(森永;脂質3.6重量%)200gに卵50g、水150gを混ぜ合わせた後、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)をホットケーキミックス全体に対して脂肪酸濃度が0.1重量%となるように添加して混合した後、加熱調理してホットケーキを得た(食品実施例25A〜C)。食品実施例25Dでは、オレイン酸乳化物を、ホットケーキミックス全体に対して脂肪酸濃度が0.05重量%となるように添加してから調理した。食品比較例25は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例25A〜25Dは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合してから調理した。
得られたホットケーキを、温かい状態(約70℃)および冷たい状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したホットケーキ(食品実施例25A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、バターのような甘味、厚みが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したホットケーキ(食品実施例25B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、油脂のコク、甘味、厚みが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したホットケーキ(食品実施例25C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、油脂のコク、甘味、厚みが付与された。パルミチン酸より硬く重い風味となった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例4Dのオレイン酸乳化物を添加したホットケーキ(食品実施例25D)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、油脂のコク、甘味、厚みが付与された。軽くやわらかい物性となった。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例25)のホットケーキは、乳脂肪がないために、特有のおいしさに欠けた。
乳化しないミリスチン酸を添加したホットケーキ(食品比較例25A)、乳化しないパルミチン酸を添加したホットケーキ(食品比較例25B)、乳化しないステアリン酸を添加したホットケーキ(食品比較例25C)および乳化しないオレイン酸を添加したホットケーキ(食品比較例25D)のそれぞれについては、いずれも、温かい状態で、ホットケーキの表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したホットケーキ(食品比較例25A)、乳化しないパルミチン酸を添加したホットケーキ(食品比較例25B)、乳化しないステアリン酸を添加したホットケーキ(食品比較例25C)および乳化しないオレイン酸を添加したホットケーキ(食品比較例25D)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、脂肪酸が固体になり、肪酸の色が白色・不透明であるため、食品全体が白っぽく変化した。固体となった脂肪酸は固いため、食品全体の物性も固く変化する。食品比較例25A〜25Cでは、固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上せず、総合評価は△であった。乳化しないオレイン酸を添加したホットケーキ(食品比較例25D)は、液状の脂肪酸には口腔内粘膜に対する刺激性があるため、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
(食品実施例26:ビスケット)
以下の表7に記載の配合および(1)から(6)の手順で、最小限の油脂を使用した、油脂の少ないハードビスケットを焼いた。
ここで使用した脂肪酸パウダー溶液は、製造例1D、2D、3Dまたは4Dのいずれかと同じ方法で製造した超音波処理後の脂肪酸乳化物であった(食品実施例26A〜D)。この脂肪酸乳化物の脂肪酸濃度は、2重量%であった。ビスケットでの脂肪酸添加濃度は0.2重量%であった。食品比較例26は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。
得られたビスケットを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したビスケット(食品実施例26A)、製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したビスケット(食品実施例26B)および製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したビスケット(食品実施例26C)では、温かい状態および冷めた状態の両方で、油の風味が付与され、食べやすくなった。脂肪酸種による差は小さかった。総合評価は○であった。
製造例4Dのオレイン酸乳化物を添加したビスケット(食品実施例26D)では、温かい状態および冷めた状態の両方で、オレイン酸特有の油脂のにおいが付与された。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例26)のビスケットは、乳脂肪がないために、特有のおいしさに欠けた。このビスケットは、固く、食べにくかった。
(食品実施例27:チョコレート)
以下の表8に記載の配合で、当該分野で公知の準チョコレートを製造した。
なお、脂肪酸パウダー中に脂肪酸を20%含むため、上の配合で脂肪酸0.2%の準チョコレートとなる。
ここで使用した脂肪酸パウダーは、製造例1D、2D、または3Dのいずれかと同じ方法で製造した脂肪酸乳化物の粉末であった(食品実施例27A〜D)。食品比較例27は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。
得られたチョコレートを、冷たい状態(約25℃)で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したチョコレート(食品実施例27A)では、油の風味が付与され、食べやすくなった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したチョコレート(食品実施例27B)および製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したチョコレート(食品実施例27C)では、油の風味が付与され、食べやすくなった。食感がかたくなった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例4Dのオレイン酸乳化物を添加したチョコレート(食品実施例27D)では、オレイン酸特有の油脂のにおいが付与された。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例27)のチョコレートは、うまみの少ないチョコレートであった。
(食品実施例28:キャンディー)
以下の表9に記載の配合および(1)から(5)の手順で、キャンディーを製造した。
ここで使用した脂肪酸パウダー溶液は、製造例1D、2D、3Dまたは4Dのいずれかと同じ方法で製造した超音波処理後の脂肪酸乳化物であった(食品実施例28A〜D)。この脂肪酸乳化物の脂肪酸濃度は、2重量%であった。キャンディーでの脂肪酸添加濃度は0.2重量%であった。食品比較例28は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。
得られたキャンディーを、冷たい状態(約25℃)で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したキャンディー(食品実施例28A)では、強い甘味とまとまりが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したキャンディー(食品実施例28B)では、強い甘味とまとまりが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したキャンディー(食品実施例28C)では、強い甘味とまとまりが付与された。パルミチン酸より硬く重い風味となった。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例4Dのオレイン酸乳化物を添加したキャンディー(食品実施例28D)では、強い甘味とまとまりが付与された。オレイン酸特有の油脂のにおいが付与された。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例28)のキャンディーは、通常の砂糖あめの味であった。
(食品実施例29:コーヒー)
ブレンディー(AGF製)6gを90℃の湯400gで溶解し、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を脂肪酸の添加量が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例29A〜C)。食品比較例29は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例29A〜29Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたコーヒーを、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約27℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したコーヒー(食品実施例29A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、クリームを添加したような、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したコーヒー(食品実施例29B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、クリームを添加したような、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したコーヒー(食品実施例29C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、クリームを添加したような、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例29)のコーヒーは、通常のコーヒーの風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したコーヒー(食品比較例29A)、乳化しないパルミチン酸を添加したコーヒー(食品比較例29B)および乳化しないステアリン酸を添加したコーヒー(食品比較例29C)のそれぞれについては、いずれも、液面に液状の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲むと、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、飲料とするに耐えなかった。色調の変化はなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したコーヒー(食品比較例29A)、乳化しないパルミチン酸を添加したコーヒー(食品比較例29B)および乳化しないステアリン酸を添加したコーヒー(食品比較例29C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲んでも、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。色調の変化はなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例30:紅茶)
紅茶Day&Day TeaBag(日東紅茶製)1袋を90℃の湯200gで3分間蒸らした後、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を脂肪酸の添加量が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例30A〜C)。食品比較例30は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例30A〜30Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られた紅茶を、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加した紅茶(食品実施例30A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、クリームを添加したような、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加した紅茶(食品実施例30B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、クリームを添加したような、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加した紅茶(食品実施例30C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、クリームを添加したような、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例30)の紅茶は、通常の紅茶の風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加した紅茶(食品比較例30A)、乳化しないパルミチン酸を添加した牛乳(食品比較例30B)および乳化しないステアリン酸を添加した牛乳(食品比較例30C)のそれぞれについては、いずれも、液面に液状の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲むと、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、飲料とするに耐えなかった。色調の変化はなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加した紅茶(食品比較例30A)、乳化しないパルミチン酸を添加した紅茶(食品比較例30B)および乳化しないステアリン酸を添加した紅茶(食品比較例30C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲んでも、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。色調の変化はなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例31:コーラ)
コカコーラ(コカコーラ製)に、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を脂肪酸の添加量が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例31A〜C)。食品実施例31Dでは、2重量%のオレイン酸乳化物を、脂肪酸の添加量が0.05重量%となるように添加して混合した。食品比較例31は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例31A〜31Dは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたコーラを、冷たい状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したコーラ(食品実施例31A)には、強い甘味とまとまりが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したコーラ(食品実施例31B)には、強い甘味とまとまりが付与された。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したコーラ(食品実施例31C)には、強い甘味とまとまりが付与された。パルミチン酸より硬く重い風味となった。総合評価は◎であった。不快な刺激はなかった。
製造例4Dのオレイン酸乳化物を添加したコーラ(食品実施例31D)には、強い甘味とまとまりが付与された。オレイン酸特有の油脂のにおいが付与された。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例31)のコーラは、通常のコーラの風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したコーラ(食品比較例31A)、乳化しないパルミチン酸を添加したコーラ(食品比較例31B)、および乳化しないステアリン酸を添加したコーラ(食品比較例31C)はいずれも、液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲んでも、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。色調の変化はなかった。総合評価は△であった。乳化しないオレイン酸を添加したコーラ(食品比較例31D)は、液状の脂肪酸には口腔内粘膜に対する刺激性があるため、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、飲用に耐えなかった。総合評価は×であった。
(食品実施例32:しょうゆ)
特選丸大豆しょうゆ(キッコーマン)に2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)をしょうゆ中の脂肪酸濃度が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例32A〜C)。食品比較例32は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例32A〜32Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたしょうゆを、冷たい状態(約25℃)で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したしょうゆ(食品実施例32A)には、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。やや白濁した。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したしょうゆ(食品実施例32B)には、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。やや白濁した。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したしょうゆ(食品実施例32C)には、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。やや白濁した。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例32)のしょうゆは、通常のしょうゆの風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したしょうゆ(食品比較例32A)、乳化しないパルミチン酸を添加したしょうゆ(食品比較例32B)および乳化しないステアリン酸を添加したしょうゆ(食品比較例32C)のそれぞれについては、いずれも、液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。喫食しても、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例33:麺つゆ)
本つゆ、かつお昆布合わせだし3倍濃縮タイプ(キッコーマン製;脂質0重量%)に2倍量の水を加えた後、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)を本つゆ中の脂肪酸濃度が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例33A〜C)。食品比較例33は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例33A〜33Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られた麺つゆを、冷たい状態(約25℃)で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加した麺つゆ(食品実施例33A)には、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。やや白濁した。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加した麺つゆ(食品実施例33B)には、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。やや白濁した。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加した麺つゆ(食品実施例33C)には、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。やや白濁した。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例33)の麺つゆは、通常の麺つゆの風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加した麺つゆ(食品比較例33A)、乳化しないパルミチン酸を添加した麺つゆ(食品比較例33B)および乳化しないステアリン酸を添加した麺つゆ(食品比較例33C)のそれぞれについては、いずれも、液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲んでも、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例34:ケチャップ)
トマトケチャップ(カゴメ製;脂質0重量%、塩分相当量3.8重量%)に2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)をトマトケチャップ中の脂肪酸濃度が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例34A〜C)。食品比較例34は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例34A〜34Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたトマトケチャップを、冷たい状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したトマトケチャップ(食品実施例34A)には、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したケチャップ(食品実施例34B)には、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したケチャップ(食品実施例34C)には、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。総合評価は○であった。不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例34)のケチャップは、通常のトマトケチャップの風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したケチャップ(食品比較例34A)、乳化しないパルミチン酸を添加したケチャップ(食品比較例34B)および乳化しないステアリン酸を添加したケチャップ(食品比較例34C)のそれぞれについては、いずれも、均一に混合すると、食品表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
(食品実施例35:マヨネーズ)
油脂を半分に減量したマヨネーズ(キューピー製;34.7重量%、塩分2.7重量%)または通常の油量のマヨネーズ(キューピー製;脂質74.7重量%、塩分2重量%)に2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)をマヨネーズ中の脂肪酸添加濃度が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例35A−1〜35C−2)。食品比較例35は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。
得られたマヨネーズを、冷たい状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加した油脂減量マヨネーズ(食品実施例35A−1)では、油脂特有のおいしさが付与された。製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加した通常油脂マヨネーズ(食品実施例35A−2)では、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。食品実施例35A−1および食品実施例35A−2のいずれでも、パルミチン酸より軽い風味となった。食品実施例35A−1および食品実施例35A−2のいずれでも、総合評価は○であり、不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加した油脂減量マヨネーズ(食品実施例35B−1)では、油脂特有のおいしさが付与された。製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加した通常油脂マヨネーズ(食品実施例35B−2)では、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。食品実施例35B−1および食品実施例35B−2のいずれでも、ステアリン酸より軽い風味となった。食品実施例35B−1および食品実施例35B−2のいずれでも、総合評価は○であり、不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加した油脂減量マヨネーズ(食品実施例35C−1)では、油脂特有のおいしさが付与された。製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加した通常油脂マヨネーズ(食品実施例35C−2)では、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。食品実施例35C−1および食品実施例35C−2のいずれでも、総合評価は○であり、不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例35)のマヨネーズは、油脂減量マヨネーズも通常油脂マヨネーズも、通常のマヨネーズの風味であった。
(食品実施例36:ウスターソース)
カゴメソース、ウスター(カゴメ製;脂質0重量%、塩分相当量9.7重量%)に2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)をウスターソースの脂肪酸添加濃度が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例36A〜C)。食品比較例36は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例36A〜36Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたウスターソースを、温かい状態(約70℃)および冷たい状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したウスターソース(食品実施例36A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したウスターソース(食品実施例36B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したウスターソース(食品実施例36C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例36)のウスターソースは、通常のウスターソースの風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したウスターソース(食品比較例36A)、乳化しないパルミチン酸を添加したウスターソース(食品比較例36B)および乳化しないステアリン酸を添加したウスターソース(食品比較例36C)のそれぞれについては、いずれも、温かい状態では、均一に混合すると、食品表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したウスターソース(食品比較例36A)、乳化しないパルミチン酸を添加したウスターソース(食品比較例36B)および乳化しないステアリン酸を添加したウスターソース(食品比較例36C)のそれぞれについては、いずれも、脂肪酸の融点以下では、全体的に白っぽくなり、物性が硬化した。口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例37:お好み焼き用ソース)
お好みソース(オタフク製;脂質0.1重量%、塩分5.1重量%)に2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)をお好みソースへの脂肪酸添加濃度が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例37A〜C)。食品比較例37は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例37A〜37Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたお好みソースを、温かい状態(約70℃)および冷たい状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したお好みソース(食品実施例37A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したお好みソース(食品実施例37B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したお好みソース(食品実施例37C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、牛脂様の風味が付与された。全体的な風味にまとまりとコクが付与された。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例37)のお好みソースは、通常のお好みソースの風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したお好みソース(食品比較例37A)、乳化しないパルミチン酸を添加したお好みソース(食品比較例37B)および乳化しないステアリン酸を添加したお好みソース(食品比較例37C)のそれぞれについては、いずれも、温かい状態では、均一に混合すると、食品表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したお好みソース(食品比較例37A)、乳化しないパルミチン酸を添加したお好みソース(食品比較例37B)および乳化しないステアリン酸を添加したお好みソース(食品比較例37C)のそれぞれについては、いずれも、脂肪酸の融点以下では、全体的に白っぽくなり、物性が硬化した。口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例38:インスタントスープ(粉末のコーンスープ))
クノール、コーンクリーム(味の素製;脂質17.3重量%、塩分5.6重量%)19.6gを湯150gに溶かした後、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)をクリームスープ全体への脂肪酸添加濃度が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例38A〜C)。食品比較例38は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例38A〜38Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたクリームスープを、温かい状態(約70℃)および冷たい状態(約27℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したクリームスープ(食品実施例38A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したクリームスープ(食品実施例38B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したクリームスープ(食品実施例38C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例38)のクリームスープは、通常のクリームスープの風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したクリームスープ(食品比較例38A)、乳化しないパルミチン酸を添加したクリームスープ(食品比較例38B)および乳化しないステアリン酸を添加したクリームスープ(食品比較例38C)のそれぞれについては、いずれも、温かい状態では、液面に液状の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲むと、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、飲料とするに耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したクリームスープ(食品比較例38A)、乳化しないパルミチン酸を添加したクリームスープ(食品比較例38B)および乳化しないステアリン酸を添加したクリームスープ(食品比較例38C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。飲んでも、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。固体の脂肪酸には口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例39:インスタントラーメン(塩ラーメン))
サッポロ一番塩ラーメン(サンヨー食品製;脂質16.6重量%、塩分2.3重量%)を湯500g中で3分間煮沸、付属のスープの素を加えた後、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)をスープを含めたラーメン全体への脂肪酸添加濃度が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例39A〜C)。食品比較例39は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例39A〜39Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたラーメンを、温かい状態(約70℃)および冷たい状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したラーメン(食品実施例39A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したラーメン(食品実施例39B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したラーメン(食品実施例39C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例39)のラーメンは、通常のラーメンの風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したラーメン(食品比較例39A)、乳化しないパルミチン酸を添加したラーメン(食品比較例39B)および乳化しないステアリン酸を添加したラーメン(食品比較例39C)のそれぞれについては、いずれも、温かい状態では、麺の表面にテリが生じた。また、スープの液面に液状の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したラーメン(食品比較例39A)、乳化しないパルミチン酸を添加したラーメン(食品比較例39B)および乳化しないステアリン酸を添加したラーメン(食品比較例39C)のそれぞれについては、いずれも、冷めた状態では、麺が全体的に白っぽくなり、物性が硬化した。スープの液面に固体の脂肪酸が浮き、均一に混ざらなかった。スープを飲んでも、脂肪酸の融点が体温よりも高いため、溶解しなかった。口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例40:ミートソース)
市販ミートソース缶詰を電子レンジで加熱した後、2重量%の脂肪酸乳化物(ミリスチン酸乳化物、パルミチン酸乳化物またはステアリン酸乳化物)をミートソースへの脂肪酸添加濃度が0.1重量%となるように添加して混合した(食品実施例40A〜C)。食品比較例40は、脂肪酸乳化物を添加しなかった。食品比較例40A〜40Cは、乳化していない脂肪酸を加熱して液状にした後、同じ濃度で添加して混合した。
得られたミートソースを、温かい状態(約70℃)および冷たい状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
製造例1Dのミリスチン酸乳化物を添加したミートソース(食品実施例40A)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。パルミチン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
製造例2Dのパルミチン酸乳化物を添加したミートソース(食品実施例40B)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。ステアリン酸より軽い風味となった。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
製造例3Dのステアリン酸乳化物を添加したミートソース(食品実施例40C)には、温かい状態および冷めた状態の両方で、全体的な風味にまとまりとコクが付与された。総合評価は○であった。温かい状態および冷めた状態の両方で、不快な刺激はなかった。
無添加(食品比較例40)のミートソースは、通常のミートソースの風味であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したミートソース(食品比較例40A)、乳化しないパルミチン酸を添加したミートソース(食品比較例40B)および乳化しないステアリン酸を添加したミートソース(食品比較例40C)のそれぞれについては、いずれも、温かい状態では、均一に混合すると、食品表面にテリが生じた。温かい状態で喫食すると、液状の脂肪酸が口腔内粘膜を刺激し、特に咽頭にピリピリとした刺激があった。刺激は非常に不快であり、喫食に耐えなかった。総合評価は×であった。
乳化しないミリスチン酸を添加したミートソース(食品比較例40A)、乳化しないパルミチン酸を添加したミートソース(食品比較例40B)および乳化しないステアリン酸を添加したミートソース(食品比較例40C)のそれぞれについては、いずれも、脂肪酸の融点以下では、全体的に白っぽくなり、物性が硬化した。口腔内粘膜への刺激はないが、蝋の様な食感と香りがあるため、添加した食品の風味は向上しなかった。総合評価は△であった。
(食品実施例41 無脂肪牛乳)
おいしい無脂肪牛乳(森永;脂質0.4重量%)に、2重量%の脂肪酸乳化物(パルミチン酸:ステアリン酸=100:40の混合物である乳化物(実施例41A);またはミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=8:100:40:1の混合物である乳化物(実施例41B))を脂肪酸の添加量が合計0.05重量%となるように添加して混合した。
得られた牛乳を、温かい状態(約70℃)および冷めた状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。
実施例41Aの牛乳にも、実施例41Bの牛乳にも、温かい状態および冷めた状態の両方で、牛乳らしい甘味、厚みが付与された。白濁性が付与された。総合評価は◎であった。温かい状態および冷めた状態の両方で不快な刺激はなかった。
(製造例6:粒子径の小さな脂肪酸乳化物の製造)
製造例5Aの脂肪酸粉末を10倍量の5℃の水と混合し、次いで1重量%のモノステアリン酸ペンタグリセリンを添加して混合した。この混合物を吉田機械興行社製ナノマイザーNM2−2000ARで0回(無処理)〜10回処理して乳化物を得た(0回〜10回
パス)。ジェネレータとして、「衝突K型」ジェネレータを使用した。ジェネレータ通過時の圧力のかけ方について4種類検討した。
条件1:200MPaの圧力をかけて、ジェネレータを通過させた。
条件2:200MPaの圧力をかけ、ジェネレータ出口で2MPaの背圧(流れと逆方向の圧力)をかけた。
条件3:50MPaの圧力をかけ、ジェネレータ出口で2MPaの背圧をかけた。
条件4:150MPaの圧力をかけ、ジェネレータ出口で2MPaの背圧をかけた。
その後、パス回数0、1、3、5および10回の乳化物について、株式会社堀場製作所製レーザ回折式粒子径分布測定装置LA−700を使用してこれらの乳化物の粒度分布を調べ、そのメジアン粒子径を計算した。メジアン粒子径を以下の表10に示す。
この結果、ナノマイザーでの処理回数が多いほどメジアン粒子径が小さくなることがわかった。また、条件2で10回処理することにより、メジアン粒子径が最も小さくなることがわかった。すなわち、無処理のときのメジアン粒子径は3.22μmであるのに対し、10回処理するとメジアン粒子径は0.209μmになった。
この各乳化物を温かい状態(約70℃)および冷たい状態(約25℃)の両方で舐めることにより、熟練者によって味を官能評価した。その結果、温かい状態および冷たい状態の両方で、メジアン粒子径が小さいほど、脂肪の味が強い傾向があることがわかった。
(食品実施例42)
市販のチキンスープの素(粉末)を約100℃の水(お湯)に濃度3重量%になるように添加して溶解し、これに製造例6で製造した16種類の乳化物のいずれかを脂肪酸添加濃度が0.1%になるように添加して16種類のチキンスープを得た。それぞれのチキンスープを温かい状態(約70℃)および冷たい状態(約25℃)の両方で熟練者によって官能評価した。その結果、温かい状態および冷たい状態の両方で、メジアン粒子径が小さいほど、脂肪の味が強く、コクが強くなる傾向があることがわかった。このことから、同じ量の脂肪酸を使用しても、メジアン粒子径が小さいほど、脂肪の風味が強くなり、コクが強くなる傾向があることがわかった。
(嗜好性の評価方法:リックメーターを用いた嗜好性の評価)
マウスのような動物を用いた嗜好性の評価においては、リックメーターが用いられる。リックメーターの概略図を図7に示す。マウスは、導電性の床に置かれ、評価しようとする溶液を含む容器と床とは、A/D変換器を挟んだ電線で結ばれている。評価しようとする溶液を含む容器にストローを通し、ストローの先の溶液をマウスが舐めるとマウスを通して床に電気が流れるため、A/D変換器を通った電気のパルス数を数えることにより、マウスのリック回数が測定され得る。「リック」とは、溶液を舐める行為をいう。リックメーターを用いた測定では、例えば、10秒間〜180秒間という短時間でも測定が可能であり、消化管以降の情報(満腹感など)の影響が極めて少なくなるために、口腔内の認識(知覚)に焦点をあてて嗜好性を評価することができる。
実験プロトコル:
実験プロトコルを図8に示す。
8週齢のBALB/c雄マウスを使用した。まず、トレーニング(Training)期間として、1日目にリック装置に入れ、環境に馴れさせた。2日目に、50%コーン油溶液を呈示して、摂取することを学習させるとともに、コーン油に馴れさせた。
試験を3日目〜8日目に行った。試験の30分前から絶水および絶食させた。試験開始時(0時)に評価対象の溶液を含む容器をリック装置に取り付けて、リック開始から10秒後まで、20秒後まで、30秒後まで、40秒後まで、50秒後まで、60秒後までの1分間のリック回数を測定した。その後29分間溶液を呈示して、合計30分間の溶液提示後、この容器を取り外し、翌日の測定時まで提示しなかった。
(実施例1および比較例1:リノレン酸によるコーン油の嗜好性の代用)
遊離脂肪酸が口腔内で油脂を認識する手がかりとなることを検証するため、マウスが溶液を舐める頻度で、その嗜好性を数値化するリック測定を用いてリノール酸とコーン油の1分間のリック回数を比較した。
呈示溶液として脂肪酸(実施例:リノール酸;0、0.125、0.25、0.5、1、2、4%)(n=9)または油脂(比較例:油脂(コーン油;0、1、5、10、100%)(n=9)を用いた。脂肪酸または油脂をミネラルオイルで希釈することにより濃度0.125%〜4%のいずれかの濃度の溶液を作製し、マウスごとにランダムに提示した。0%の溶液としては100%ミネラルオイルを用いた。
これらの呈示溶液を用いて、上記「嗜好性の評価方法」のプロトコルに従ってリック回数およびリック頻度を測定した。結果を図9〜図13に示す。
図9は、コーン油の濃度と累積リック数との関連を示すグラフである。図9は、コーン油の濃度がリック回数に及ぼす影響を示す。横軸は時間(秒)を示し、縦軸は累積リック数を示す。0%コーン油(100%ミネラルオイル)のリック回数は極めて少ないことから、ミネラルオイルはマウスに好まれないこと、コーン油の濃度が上がるほどリック回数が増えることからコーン油がマウスに好まれることが示される。
図10は、60秒間の累積リック数とコーン油の濃度との関係を示すグラフである。このデータは、図9の60秒間の累積リック数と同じデータである。横軸はコーン油の濃度を示し、縦軸は60秒間の累積リック数を示す。図10は、濃度依存的にリック回数が増加したことを示す。従って、コーン油の嗜好性は濃度依存的(0〜100%)に高くなることが明らかとなった。
図11は、リノール酸の濃度と累積リック数との関連を示すグラフである。図11は、リノール酸の濃度がリック回数に及ぼす影響を示す。横軸は時間(秒)を示し、縦軸は累積リック数を示す。0%リノール酸(100%ミネラルオイル)のリック回数は極めて少ないことから、ミネラルオイルはマウスに好まれないこと、リノール酸の濃度が上がるほどリック回数が増えることからリノール酸がマウスに好まれることが示される。リノール酸は0.25%以上の濃度で好まれ、1%という濃度で最もリック回数が多かった。
図12は、60秒間の累積リック数とリノール酸の濃度との関係を示すグラフである。このデータは、図11の60秒間の累積リック数と同じデータである。横軸はリノール酸の濃度を示し、縦軸は60秒間の累積リック数を示す。図12は、リノール酸の濃度1%付近でリック回数が最大になることを示す。これにより、脂肪酸の嗜好性には至適濃度(0.5〜2%)が存在することが明らかとなった。
図13は、1%リノール酸含有ミネラルオイルと100%コーン油の60秒間のリック回数(リック頻度;Licking rate)を比較したグラフである。1%脂肪酸のリック速度は100%油脂と同程度であった。
従って、リックテストにおいて、動物は低濃度の脂肪酸に応答すること、および低濃度の脂肪酸の嗜好性は高濃度の油脂に匹敵するほど高いことが示唆された。このように、ラット嗜好性試験より、食用油脂のおいしさは1〜2%の長鎖脂肪酸で代替できることがわかった。
(実施例2および実施例3:他の脂肪酸によるコーン油の嗜好性の代用)
実施例1のリノール酸の代わりにオレイン酸(実施例2)およびリノレン酸(実施例3)を用いてリック頻度を測定したところ、オレイン酸およびリノレン酸のいずれも、リノール酸と同等に食用油脂を代替し得ることが示された。
(実施例4および比較例4:レバー押しオペラント実験)
マウスを用いてレバー押しオペラント実験を行った。
呈示溶液として脂肪酸(実施例4:リノール酸1%)または油脂(比較例4:コーン油100%)を用いた。脂肪酸をミネラルオイルで希釈することにより濃度1%の濃度の溶液を作製した。
この結果、コーン油を用いた場合も、ミネラルオイルに脂肪酸を加えて作製された脂肪酸溶液を用いた場合も、レバー押しオペラント実験により、執着行動(強化効果)が観察された。
(実施例5:脂肪酸およびミネラルオイルを代用油脂材料としたサラダ油代用品の作製)
カネダ株式会社製ミネラルオイルK−280(99重量部)にリノール酸1重量部を添加して混合することにより、リノール酸1%含有ミネラルオイルを作製した。リノール酸1%含有ミネラルオイルを十分訓練されたパネラー5名により官能評価したところ、サラダ油様の良好な風味であった。
(実施例6および比較例6−1、6−2:脂肪酸およびミネラルオイルを代用油脂材料として用いたドレッシングの作製)
上記実施例5で作製したリノール酸1%含有ミネラルオイル(実施例6−1)、市販のサラダオイル(比較例6−1)またはミネラルオイル(比較例6−2)を以下の表1Aに示す配合で用い、これらの材料を充分に混合することにより、サラダ用ドレッシングを作製した。
実施例6、比較例6−1および6−2のドレッシングを、十分訓練されたパネラー5名により官能評価したところ、実施例6および比較例6−1は同程度に良好な風味を有したものの、比較例6−2の風味は好ましくなかった。
(実施例7および比較例7−1、7−2:脂肪酸およびミネラルオイルを代用油脂材料として用いたマヨネーズの作製)
以下の表2Aに示す配合を用いた。まず、卵黄と食酢とを混合し、その後、上記実施例5で作製したリノール酸1%含有ミネラルオイル(実施例7)または市販のサラダオイル(比較例7)を少しずつ加えて攪拌し、さらに食塩を加えて攪拌することにより、マヨネーズを作製した。
実施例7、比較例7−1および7−2のマヨネーズを、十分訓練されたパネラー5名により官能評価したところ、実施例7および比較例7−1は同程度に良好な風味を有したものの、比較例7−2の風味はやや好ましくなかった。
このことから、脂肪酸を含むミネラルオイルが食用油脂の代替材料として有用であることが示された。ミネラルオイルのエネルギー量は100gあたり0kcalであり、リノール酸およびサラダ油のエネルギー量はいずれも100gあたり900kcalである。1%リノール酸含有ミネラルオイルのエネルギー量は100gあたり9kcalである。そのため、油脂を100分の1のエネルギー量の油脂代替材料で代用できることがわかった。
これらの実験結果は、油脂のおいしさには油脂の物性ではなく、油脂の分解産物である脂肪酸の情報が大きな役割を果たすことを示唆している。
(実施例8、比較例8−1、8−2:さらに糖質を加えた油脂代用材料の検討)
エネルギー情報が与える影響を検討した。
水、20%高分岐環状グルカン水溶液または1%リノール酸および20%高分岐環状グルカンを含む水溶液を作製した。高分岐環状グルカンとしては、江崎グリコ株式会社製のクラスターデキストリン(CCD;重量平均分子量15万)を用いた。
経日的に摂取量は増加し、脂肪に対する嗜好性は増大する。このため、本実施例では、コーン油を3日以上摂取させ、脂肪を好んで摂取するマウスを使用した。8週齢のBALB/c雄マウスを各群9匹使用した。上記の「嗜好性の評価方法」のプロトコルに従って、マウスを30分間絶水絶食させ、その後、各種の溶液(水(比較例8−1)、20%高分岐環状デキストリン水溶液(比較例8−1)または1%リノール酸および20%高分岐環状デキストリンを含む水溶液(実施例8))をマウスに呈示して、リックセンサーによりリック回数およびリック頻度を測定した。結果を図14Aおよび図14Bに示す。
図14Aは、1分間のリック数の推移を示すグラフである。横軸は時間(秒)を示し、縦軸は累積リック数を示す。マウスは水のみまたはCCDのみに対しては嗜好性を示さなかった。しかし、CCDに1% リノール酸を添加したものに対して高い嗜好性を示し、時間の経過にともなってリック数が極めて増加した。
図14Bは、各溶液に対する60秒間の累積リック数(Initial licking rate)を示すグラフである。Initial licking rateは1分間の総リック数であり、溶液に対する嗜好性の指標となる。このデータは、図14Aの60秒間の累積リック数と同じデータである。横軸は試験した溶液を示し、縦軸は60秒間の累積リック数を示す。図14Bにおいては、マウスは水のみおよびCCDのみに対しては嗜好性を示さないが、CCDに1% リノール酸を添加したものに対して高い嗜好性を示すことが明らかとなった。このように、20%CCD水溶液に1%脂肪酸を添加したもののエネルギー量は、0.8kcal/mlであり、同重量の油脂の1/10以下のカロリーである。そのため、20%CCD水溶液に1%脂肪酸を添加したもので食品の油脂を代用すれば、その食品のエネルギー量を低減できる。
(実施例9、比較例9:糖質を加えた油脂代用材料の検討)
エネルギー情報が与える影響を4日間にわたって検討した。
20%高分岐環状グルカン水溶液または1%リノール酸および20%高分岐環状グルカンを含む水溶液を作製した。高分岐環状グルカンとしては、江崎グリコ株式会社製のクラスターデキストリン(CCD;重量平均分子量15万)を用いた。
マウスに初めて脂肪を与えたときは新奇恐怖の影響もありほとんど飲まない。しかし、時間を経ると新奇恐怖の影響は無くなる。経日的に摂取量は増加し、脂肪に対する嗜好性は増大する。本実施例では、脂肪の摂取経験のないマウスを使用した。8週齢のBALB/c雄マウスを各群9匹使用した。マウスを30分間絶水絶食させ、その後、各種の溶液(20%高分岐環状グルカン水溶液(比較例9)または1%リノール酸および20%高分岐環状グルカンを含む水溶液(実施例9))をマウスに10分間呈示して、その摂取量を測定した。この10分間の呈示を4日間繰り返した。結果を図15に示す。
図15は、各種溶液の摂取量の経日変化を示すグラフである。横軸は日数(日目)を示し、縦軸は摂取量(g/10分間)を示す。1日目には、1%リノール酸に対して新奇恐怖があるため、1%リノール酸を含む溶液よりも、含まない溶液(20%CCDのみ)の方が摂取量が多かった。しかし、2日目では、20%CCDにリノール酸を加えたものの摂取量が増大した。これは新奇恐怖の影響がなくなり、且つ、リノール酸による嗜好性とエネルギーが得られるという情報の両方が合わさり、摂取量の増大を引き起こしたものと考えられる。CCDのみの溶液はエネルギーを得られるという情報が摂取量を増大させたものと考えられる。
この実験の結果および上記実施例7を組み合わせると、油脂のおいしさは口腔内刺激とエネルギー情報から成り、両者を組み合わせると理想的な油脂代替物ができることがわかった。
(実施例10:脂肪酸およびミネラルオイルで一部代用した油脂混合物)
1%のリノール酸と75%のミネラルオイルと24%の市販の食用油脂とを混合して油脂混合物を得た。
この油脂混合物について、実施例4と同様にレバー押しオペラント実験を行ったところ、実験動物は油脂と同様の執着行動を見せた。このことから、脂肪酸とミネラルオイルとを用いることによって、高度な嗜好性を維持したままカロリーを1/4以下に減らすことが可能であることがわかる。
(実施例11:脂肪酸およびミネラルオイルで一部代用した油脂混合物)
1%のリノール酸と75%のミネラルオイルと24%の市販の食用油脂とを混合して油脂混合物を得た。
この油脂混合物について、実施例1と同様にリック試験を行ったところ、実験動物は油脂と同様の回数のリック数を示した。このことから、脂肪酸とミネラルオイルとを用いることによって、高度な嗜好性を維持したままカロリーを1/4以下に減らすことが可能であることがわかる。
(食品実施例43:乳化状態の遊離長鎖脂肪酸を含有するバニラアイス)
以下の材料および作製手順でバニラアイスを作製した。
材料:
作製手順:
40℃の温水に脱脂粉乳、グラニュー糖、水あめおよびポリデキストロースを添加して混合し、これらの材料を溶解した。次いでこの混合液を60〜70℃まで加温し、完全に溶解した後に、安定剤および脂肪酸乳化物をさらに添加して混合し、バニラアイスミックスを得た。このバニラアイスミックスを、ホモジナイザーを用いて均質化した(処理条件:150kg/cm2)。均質化後のバニラアイスミックスを68℃で30分間殺菌した。殺菌後のバニラアイスミックスを10℃まで冷却し、バニラ香料を添加して混合した後、5℃で4時間エージングした。次いでこのエージングしたバニラアイスミックスをフリージングした後、カップに充填し、−30℃で30分冷却することにより急速硬化させてバニラアイスを得た。
作製したバニラアイスを、十分訓練された熟練者5名によって官能評価した。官能評価においては、脂肪酸無添加のものを3点とし、以下の評価基準に基づいて5段階で評価した。
評価基準:
5:油脂様のコクがあり、バニラアイスとして非常に好ましい風味を有している。
4:油脂様のコクがあり、バニラアイスとして好ましい風味を有している。
3:油脂様のコクにかけるが、バニラアイスの風味を有している。
2:異味があり、バニラアイスとしてやや好ましくない。
1:異味があり、バニラアイスとして好ましくない。
評価結果を以下の表13に示す。
この結果、0.002重量%〜0.4重量%のパルミチン酸を添加した場合に、脂肪酸無添加のバニラアイスと比較して優れた風味が得られることがわかった。さらに、0.006重量%および0.12重量%のミリスチン酸およびステアリン酸を添加した場合にも脂肪酸無添加のバニラアイスと比較して優れた風味が得られることがわかった。ミリスチン酸およびステアリン酸はパルミチン酸と同様に優れた風味が得られることから、ミリスチン酸およびステアリン酸についても、試験していない濃度においても良好な風味が得られるものと考えられる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。