JP7130954B2 - 食肉加工食品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、食肉または食肉加工食品の食感等の改良においても、リパーゼを利用する技術が報告されている。
たとえば、獣鳥鯨肉および魚介類の肉類の細断処理と同時にリパーゼ等の各種酵素を添加して処理することにより、肉類加工食材の食味、食感を向上させる方法(特許文献1)、家畜または家禽の脂肪にリパーゼを作用させることにより、黒毛和牛肉に特有な肉用香気を生成する方法(特許文献2)、肉系食品素材中の脂肪をプロテアーゼおよびリパーゼにより乳化して、好ましい食感を有する食肉加工食品を製造する方法(特許文献3)等が開示されている。
従って、脂肪の含有量にかかわらず、良好な食感を有する食肉加工食品を安定的に提供する方法が求められている。
[1]食品にリパーゼを添加し、食品1mgあたりの脂肪酸含有量を13μg以上、80μg以下とする、食肉加工食品の製造方法。
[2]食品中の脂肪酸の総含有量に対するステアリン酸の含有量を19重量%以下とする、[1]に記載の製造方法。
[3]さらにトランスグルタミナーゼを添加する、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]食肉加工食品がソーセージである、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]食品にリパーゼを添加し、食品1mgあたりの脂肪酸含有量を13μg以上、80μg以下とする、食肉加工食品のジューシーさの向上方法。
[6]食品中の脂肪酸の総含有量に対するステアリン酸の含有量を19重量%以下とする、[5]に記載の向上方法。
[7]食肉加工食品がソーセージである、[5]または[6]に記載の向上方法。
[8]脂肪酸を食品1mgあたり13μg以上80μg以下含有し、食品中の脂肪酸の総含有量に対するステアリン酸の含有量が19重量%以下である、食肉加工食品。
[9]ソーセージである、[8]に記載の食肉加工食品。
また、本発明により、脂肪を高含有量で含有する食肉加工食品においても、脂肪の分離が抑制される。
加工手段としては、乾燥、塩漬け、味噌漬け、醤油漬け、水煮、燻煙、発酵等が挙げられるが、これらに限定されない。
食肉加工食品の具体例としては、ハム、ベーコン、ソーセージ、ハンバーグ、ミートボール、シュウマイ、ギョーザ、つくね、メンチカツ、乾燥肉等が挙げられる。
ここで、「脂肪酸」とは遊離の脂肪酸を意味し、脂肪等の構成脂肪酸のように、食品中に遊離した状態で存在しない脂肪酸は含まない。
すなわち、本発明の製造方法は、食肉等の食品素材に含有される脂質、主として脂肪(トリグリセリド)を分解処理する工程を含み、その際にトリグリセリドから遊離される脂肪酸を含めて、食品1mgあたりの脂肪酸含有量を13μg以上とする。食品1mgあたりの脂肪酸含有量が13μg以上であれば、食肉加工食品のジューシーさが向上する。
なお、食肉加工食品のジューシーさの向上効果の観点からは、食品1mgあたりの脂肪酸含有量は15μg以上とすることが好ましく、17μg以上とすることがより好ましい。
また、食肉加工食品の風味に及ぼす影響という観点からは、食品1mgあたりの脂肪酸含有量は80μg以下とすることが好ましく、60μg以下とすることがより好ましく、40μg以下とすることがさらに好ましく、30μg以下とすることがより一層好ましい。
なお、本発明の製造方法において、食品中の脂肪酸の総含有量に対するステアリン酸(C18:0)の含有量は、通常5重量%以上である。
また、食品中のオレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2(n-6))およびα-リノレン酸(C18:3(n-3))の含有量の和と、ステアリン酸(C18:0)の含有量との比[(C18:1+C18:2+C18:3)/C18:0]が3以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましい。
なお、本発明の製造方法において、食品中のオレイン酸、リノール酸およびα-リノレン酸の含有量の和と、ステアリン酸の含有量との比[(C18:1+C18:2+C18:3)/C18:0]は、通常10以下である。
ここで、「食品中の脂肪酸の総含有量」とは、食品中に遊離した状態で存在する脂肪酸の総含有量をいう。
また、「ステアリン酸」、「オレイン酸」、「リノール酸」および「α-リノレン酸」は、それぞれ遊離のステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびα-リノレン酸を意味する。
また、リパーゼはその基原、種類等により、力価や基質特異性および位置特異性が異なるため、使用するリパーゼを選択することにより、食肉加工食品における脂肪酸含有量や、その脂肪酸組成を適宜調整することができる。
本発明の目的には、微生物由来のリパーゼが好ましく用いられ、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属細菌、ペニシリウム(Penicillium)属真菌、カンジダ(Candida)属真菌、アスペルギルス(Aspergillus)属真菌由来のリパーゼ等が挙げられる。
本発明においては、リパーゼQLM(アルカリゲネス(Alcaligenes)属細菌由来、名糖産業株式会社製)、リパーゼR(ペニシリウム ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)由来、天野エンザイム株式会社製)、リパーゼA(アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)由来、天野エンザイム株式会社製)等、各社より提供されている市販のリパーゼを用いることができる。
なお、リパーゼの酵素活性については、たとえば、基質とするオリーブ油の乳化液にリパーゼを一定時間作用させ、遊離した脂肪酸の量をアルカリで定量することにより、酵素活性を算出することができる。本明細書では、37℃にて、1分間に1μmolの脂肪酸を遊離する酵素量を、1Uと定義した。
なお、リパーゼによる脂肪の加水分解処理は、各種漬け込み処理の後に行ってもよい。また、成形やケーシング等への充填は、漬け込み処理の後に行ってもよい。
他の食品素材としては、牛脂、豚脂等の動物性脂肪;パン、小麦粉、米、オートミール、コーンミール、春雨等のデンプン質の素材;大豆タンパク質等の植物性タンパク質等を用いることができる。
食品素材中における食肉の含有量は、通常30重量%~90重量%であり、好ましくは50重量%~90重量%である。
また、食品素材中における脂肪の含有量は、通常10重量%~50重量%であり、好ましくは25重量%~45重量%である。
なお、食肉加工食品のジューシーさの観点からは、アルギニンを添加することが好ましい。アルギニンとしては、L-アルギニン、D-アルギニン、DL-アルギニンのいずれを用いてもよいが、L-アルギニンを用いることが好ましい。
アルギニンは、食肉100重量部に対し、好ましくは0.0001重量部~10重量部、より好ましくは0.001重量部~5重量部添加することができる。
トランスグルタミナーゼは、タンパク質上のグルタミンのアミノ基と第1級アミンを縮合させ、アミン上の置換基をグルタミンに転移させて、アンモニアが生成する反応を触媒する転移酵素であり、通常は第1級アミンとしてタンパク質上のリシンのアミノ基が用いられ、架橋酵素として作用する。
従って、食肉等の食品素材にトランスグルタミナーゼを作用させると、食肉等の食品素材に含まれるタンパク質が架橋される。
微生物由来のカルシウム非依存性トランスグルタミナーゼとしては、ストレプトマイセス属に属する放線菌により産生されるトランスグルタミナーゼが挙げられ、特許第2572716号公報に記載された方法等に従って得ることができるが、味の素株式会社から提供されている「アクティバTG-K」、「アクティバTG-S」等、市販の製品を用いることもできる。
本発明においては、トランスグルタミナーゼの添加量は、食肉およびタンパク質食品素材の総含有量1gあたり0.0001U(ユニット)以上であることが好ましく、0.1U以上であることがより好ましい。
なお、トランスグルタミナーゼの酵素活性については、たとえば、ベンジルオキシカルボニル-L-グルタミニルグリシンとヒドロキシルアミンを基質として反応を行わせ、生成したヒドロキサム酸の鉄錯体を、トリクロロ酢酸存在下で形成させた後、525nmの吸光度を測定して、ヒドロキサム酸の生成量を検量線より求めることにより、酵素活性を算出することができる。本明細書では、37℃、pH6.0で1分間に1μmolのヒドロキサム酸を生成する酵素量を、1Uと定義した(特開昭64-27471号公報参照)。
本発明において、食肉加工食品に過度の弾力が付与されると、食肉加工食品の食感が損なわれることがあるため、トランスグルタミナーゼの添加量は、食肉およびタンパク質食品素材の総含有量1gあたり100U以下であることが好ましく、10U以下であることがより好ましい。
また、本発明の製造方法によれば、脂肪含有量の高い食肉加工食品において、脂肪の分離が抑制される。従って、本発明の製造方法は、脂肪含有量の高い食肉加工食品の製造に好適に用いられ、特にソーセージの製造に好適に用いることができる。
食肉に必要に応じて脂肪等を加えて肉挽き機(チョッパー)により挽き肉とし、食塩および必要に応じて結合剤、保存料、酸化防止剤等の食品添加物を添加してニーダーにて混練し、低温で熟成させた後(すなわち塩漬け処理の後)、調味料を添加して混合し、次いでリパーゼおよび必要に応じてトランスグルタミナーゼを添加して、ミキサー等にて混合する。前記混合物を、動物の腸やコラーゲンケーシング等のケーシングに充填して、乾燥、燻煙、蒸し煮等の加熱処理を行い、次いで冷却する。
なお、リパーゼおよびトランスグルタミナーゼは、食塩や食品添加物とともに添加してもよい。
また、食肉加工食品の風味を損なうことなくジューシーさを向上させるためには、食品1mgあたりの脂肪酸含有量は80μg以下とすることが好ましく、60μg以下とすることがより好ましく、40μg以下とすることがさらに好ましく、30μg以下とすることがより一層好ましい。
ここで、「脂肪酸」とは、上記したように、遊離の脂肪酸を意味する。
また、食品中のオレイン酸、リノール酸およびα-リノレン酸の含有量の和と、ステアリン酸の含有量との比[(C18:1+C18:2+C18:3)/C18:0]が3以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましい。なお、前記のオレイン酸、リノール酸およびα-リノレン酸の含有量の和と、ステアリン酸の含有量との比は、通常10以下である。
ここで、「食品中の脂肪酸の総含有量」とは、上記したように、食品中における遊離の脂肪酸の総含有量を意味し、「ステアリン酸」等は、遊離のステアリン酸等を意味する。
上記の通り、用いるリパーゼの基原、種類等により、食品中の脂肪酸含有量および脂肪酸組成を、上記した値となるように調整することができる。
また、食肉加工食品の風味を考慮した場合、食品1mgあたりの脂肪酸含有量は80μg以下であることが好ましく、60μg以下であることがより好ましく、40μg以下であることがさらに好ましく、30μg以下であることがより一層好ましい。
ここで、「脂肪酸」とは、上記したように、遊離の脂肪酸を意味する。
また、食品中のオレイン酸、リノール酸およびα-リノレン酸の含有量の和と、ステアリン酸の含有量との比[(C18:1+C18:2+C18:3)/C18:0]は、通常10以下であるが、3以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましい。
ここで、「食品中の脂肪酸の総含有量」とは、上記したように、食品中における遊離の脂肪酸の総含有量を意味し、「ステアリン酸」等は、遊離のステアリン酸等を意味する。
従って、本発明の食肉加工食品は、脂肪を高含有量で含有する食品として好適に提供することができ、特にソーセージとして好適に提供される。
表1中のAを肉挽き機(チョッパー)により5mm角のミンチとし、ニーダー(「卓上ニーダーPNV-5」、株式会社入江商会製)にて、前記ミンチに表1中のBおよび水を添加して10分間混合した後、冷蔵庫にて一晩静置して塩漬け処理した。次いで、表1中のCを添加してニーダーにて10分間混合し、各リパーゼを表2に示す量にて添加し、スタンダードミキサー(「キッチンエイド(KitchenAid) KSM5WH」、ワールプール・コーポレーション製)にて2速で1分間混合した後、真空包装した。
次に、コラーゲンケーシング(デブロ(Devro)株式会社製)に充填し、60℃で30分間乾燥した後、燻煙(60℃、10分)および蒸煮(75℃、30分)を行い、一晩冷却して、粗挽きソーセージを製造した。
(1)豚ウデ肉および豚脂としては、国産豚ウデ肉および豚脂を用いた。
(2)食塩としては、一般的な食品用の製品を用い、重合リン酸塩、亜硝酸ナトリウムおよびL-アスコルビン酸ナトリウムとしては、食品添加物として市販されている製品を用いた。
(3)調味料としては、「ホワイトペッパー、ナツメグ」(株式会社ギャバン製)および「グルタミン酸ナトリウム」(味の素株式会社製)を用いた。
(4)リパーゼとしては、表2に示される市販の各種リパーゼ(A~G)を用いた。
上記実施例1~4および比較例1~3で製造した粗挽きソーセージ(以下「実施例1のソーセージ」のように称することがある)について、下記に示す方法でそれぞれの脂肪酸含有量および脂肪酸組成の分析を行った。その際、リパーゼを添加しない他は、上記実施例および比較例と同様に製造した粗挽きソーセージを対照とした。
<脂肪酸含有量および脂肪酸組成の分析方法>
対照、実施例および比較例の各ソーセージを、それぞれ厚さ0.1cmにスライスし、水を添加してすり潰し、メタノールおよびクロロホルムを加えて、洗い込みながら試験管に移し、超音波処理後、ヴォルテックス ミキサー(Vortex Mixer)で撹拌した。水およびクロロホルムを添加して分層させ、クロロホルム層(下層)を別の試験管に回収した。水層(上層)にクロロホルムを再度添加して分層させ、クロロホルム層を回収し、先に回収したクロロホルム層に合わせた。本操作を3回実施した。
次いで回収したクロロホルム層から脂肪酸を固相抽出した後、溶媒を乾燥留去した。前記の乾燥物にベンゼン0.5mL、メタノール0.2mLおよびトリメチルシリルジアゾメタン1mLを加えて、脂肪酸をトリメチルシリル化し、下記条件にてガスクロマトグラフィーにより分析した。検出されたピークと各標準品のピークとの比較、および検出された各ピークと各標準品のピークの面積比により、それぞれの試料に含有される脂肪酸の含有量および組成を求めた。
<ガスクロマトグラフィー分析条件>
測定機器:ガスクロマトグラフ「GC-2010」、株式会社島津製作所製
カラム:オメガワックス(Omegawax) 320、長さ;30m、内径;0.32mm、膜厚;0.25μm、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社製
測定温度:カラム温度;50℃で1分保持した後、270℃まで8℃/分で昇温、
注入口温度;250℃
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)、270℃
上記実施例および比較例の各ソーセージの食感(ジューシーさおよび風味)について、2名のパネラーに評価させ、下記評価基準により点数化させて、2名のパネラーによる平均値にて表5に示した。
<評価基準>
(i)ジューシーさ
対照に比べて非常にある;9点
対照に比べてかなりある;8点
対照に比べてある;7点
対照に比べてややある;6点
対照と同等である;5点
対照に比べてややない;4点
対照に比べてない;3点
対照に比べてかなりない;2点
対照に比べて非常にない;1点
(ii)風味
対照に比べて非常によい;9点
対照に比べてかなりよい;8点
対照に比べてよい;7点
対照に比べてややよい;6点
対照と同等である;5点
対照に比べてやや異風味がある;4点
対照に比べて異風味がある;3点
対照に比べてかなり異風味がある;2点
対照に比べて非常に異風味がある;1点
対照ならびに実施例および比較例の各ソーセージについて、ソーセージに含有される脂肪の分離の有無を観察し、観察結果を下記評価基準にて表5に併せて示した。
<評価基準>
脂肪の分離が認められない;○
脂肪の一部の分離が認められる;△
脂肪の分離が明確に認められる;×
一方、比較例1、2の各ソーセージでは、ソーセージ1mgあたりの脂肪酸の総含有量がそれぞれ12.0μgおよび12.7μgと13μg未満であり、対照のソーセージに比べて脂肪酸の総含有量はやや増加したものの、ジューシーさは対照と同等であると評価された。
また、表3に示されるように、ソーセージ1mgあたりの脂肪酸の総含有量が17μg以上であるものの、80μgを超えている比較例3のソーセージでは、ジューシーさは大幅に向上したものの、異風味がかなり感じられた。
さらに、表3に示されるように、ソーセージ1mgあたりの脂肪酸の総含有量が17μg以上で30μg以下であり、さらに表4に示されるように、脂肪酸の総含有量に対するステアリン酸(C18:0)の含有量が18重量%以下で、オレイン酸、リノール酸およびα-リノレン酸の含有量の和とステアリン酸の含有量との比[(C18:1+C18:2+C18:3)/C18:0]が3.5以上である実施例1~3のソーセージでは、表5に示されるように、風味が損なわれることなくジューシーさが向上しており、脂肪の分離も認められなかった。
以上の結果から、食肉加工食品において、食品1mgあたりの脂肪酸含有量が17μg以上、30μg以下であり、さらに脂肪酸の総含有量に対するステアリン酸(C18:0)の含有量が18重量%以下で、オレイン酸、リノール酸およびα-リノレン酸の含有量の和とステアリン酸の含有量との比[(C18:1+C18:2+C18:3)/C18:0]が3.5以上となるように調整することが、風味を損なうことなくジューシーさを向上させ、かつ脂肪の分離を抑制するために、より好ましいことが示唆された。
上記実施例3のソーセージの製造において、リパーゼに加えてトランスグルタミナーゼ(「アクティバTG-S」、味の素株式会社製、トランスグルタミナーゼ活性=100U/g)を、食肉の含有量1gあたり0.2Uとなるように添加した他は、実施例3と同様に製造した。
実施例5で製造したソーセージ(以下「実施例5のソーセージ」と称する)について、試験例2と同様にジューシーさおよび風味の官能評価を行い、さらに下記評価基準に従い、弾力の官能評価を行った。評価結果は、表6に示した。
<弾力の評価基準>
対照に比べて非常にある;9点
対照に比べてかなりある;8点
対照に比べてある;7点
対照に比べてややある;6点
対照と同等である;5点
対照に比べてややない;4点
対照に比べてない;3点
対照に比べてかなりない;2点
対照に比べて非常にない;1点
従って、本発明の製造方法において、リパーゼに加えてトランスグルタミナーゼを作用させることにより、ジューシーさが向上し、さらに弾力のある食感が付与された食肉加工食品が得られることが示唆された。
以下の通り、結着剤(重合リン酸塩)を添加せずに、粗挽きソーセージを製造した。
表7中のAを肉挽き機(チョッパー)により5mm角のミンチとし、ニーダー(「卓上ニーダーPNV-5」、株式会社入江商会製)にて、前記ミンチに表7中のBを添加して(仕込み量=3.5kg)、5分間混合した。1kgずつ小分けし、表7中のD、リパーゼ(市販製剤(表2中のリパーゼC)、1.81U/食肉および脂肪の総含有量1g)およびトランスグルタミナーゼ(「アクティバTG」、味の素株式会社製、0.017U/食肉の含有量1g)を添加し、スタンダードミキサー(「キッチンエイド(KitchenAid) KSM5WH」、ワールプール・コーポレーション製)にて2速で1分間混合した後、冷蔵庫(5℃)にて72時間静置(塩漬け処理)した。次いで、表7中のCを添加して、スタンダードミキサー(「キッチンエイド(KitchenAid) KSM5WH」、ワールプール・コーポレーション製)にて2速で1分間混合した後、真空包装した。
次に、コラーゲンケーシング(デブロ(Devro)株式会社製)10本に充填し、60℃で30分間乾燥した後、燻煙(60℃、10分)および蒸煮(75℃、30分)を行い、5℃で2~3時間冷却して、5本ずつ真空包装し、粗挽きソーセージを製造した。
上記実施例6で製造した粗挽きソーセージ(以下「実施例6のソーセージ」と称する)について、ソーセージに含有される脂肪の分離の有無を観察し、脂肪の分離のないソーセージの割合を算出した。また、ソーセージの食感について、3名のパネラーにより、官能評価を行った。
その際、リパーゼおよびトランスグルタミナーゼを添加しない他は、実施例6と同様に製造した粗挽きソーセージを対照とした。
評価結果は、加熱工程(乾燥、燻煙および蒸煮)後の歩留まりならびに最終的な歩留まりとともに、表8に示した。
これに対し、リパーゼおよびトランスグルタミナーゼを添加せずに製造した対照のソーセージでは、歩留まりがよくなく、20%を超えるソーセージに脂肪の分離が見られ、食感についてもよい評価が得られなかった。
従って、本発明は、脂肪を高含有量で含有する食肉加工食品、特にソーセージの製造に好適に利用され得る。
Claims (7)
- 食品にリパーゼを添加し、食品1mgあたりの脂肪酸含有量を13μg以上、80μg以下とし、かつ、食品中の脂肪酸の総含有量に対するステアリン酸の含有量を18重量%以下とし、さらに、食品中のオレイン酸、リノール酸およびα-リノレン酸の含有量の和と、ステアリン酸の含有量との比[(C18:1+C18:2+C18:3)/C18:0]を3.5以上とする、食肉加工食品の製造方法。
- さらにトランスグルタミナーゼを添加する、請求項1に記載の製造方法。
- 食肉加工食品がソーセージである、請求項1または2に記載の製造方法。
- 食品にリパーゼを添加し、食品1mgあたりの脂肪酸含有量を13μg以上、80μg以下とし、かつ、食品中の脂肪酸の総含有量に対するステアリン酸の含有量を18重量%以下とし、さらに、食品中のオレイン酸、リノール酸およびα-リノレン酸の含有量の和と、ステアリン酸の含有量との比[(C18:1+C18:2+C18:3)/C18:0]を3.5以上とする、食肉加工食品のジューシーさの向上方法。
- 食肉加工食品がソーセージである、請求項4に記載の向上方法。
- 脂肪酸を食品1mgあたり13μg以上80μg以下含有し、食品中の脂肪酸の総含有量に対するステアリン酸の含有量が18重量%以下であり、かつ、食品中のオレイン酸、リノール酸およびα-リノレン酸の含有量の和と、ステアリン酸の含有量との比[(C18:1+C18:2+C18:3)/C18:0]が3.5以上である、食肉加工食品。
- ソーセージである、請求項6に記載の食肉加工食品。
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JP2018102297A (ja) | 2018-07-05 |
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