JPWO2010032697A1 - 乳酸生産細菌及び乳酸生産方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、D−乳酸及びL−乳酸のいずれか一方を分解していずれか他方を生産するように、1種類以上のNAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ及び1種類以上の非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼの各酵素活性が共に強化されている乳酸生産大腸菌と、これらを用いた乳酸生産方法とを提供する。

Description

本発明は、乳酸生産細菌及び乳酸生産方法に関する。
乳酸にはL−乳酸とD−乳酸があり、L−乳酸は工業生産されているポリ乳酸の原料であり、一方、D−乳酸についてもポリマー原料や農薬、医薬の中間体として近年注目が集まりつつある。但し、上記いずれの用途においても、原料たる乳酸には高い光学純度が要求されるのが事実である。
自然界には乳酸を効率良く生産する微生物が存在し、一部では、それらを用いた乳酸製造法が行われているが、副生物、例えば酢酸、エタノール、アセトイン、ピルビン酸といった化合物も生産され、最終産物である乳酸の品質低下につながることがある。また光学異性体の混入が原因で、光学純度の低下をきたす事も重大な問題となる。
そのような乳酸の純度低下を回避するために、近年発展してきた遺伝子組換え技術を利用して微生物の特定遺伝子を破壊して、狙った副生物の生産を特異的に阻害する方法が開発されている。特に、乳酸菌や糸状菌など、元来乳酸を高生産できる微生物での適用よりも、ゲノム情報が豊富で、遺伝子組換え宿主としての実績が十分にあるエシェリヒア・コリ、酵母等で、光学純度の高い乳酸生産技術の開発が試みられている。
例えば、Biotechnol Lett. 2006 Oct;28(19):1527−1535(Grabarらの文献)によれば、大腸菌のピルビン酸からD−乳酸への代謝経路の遺伝子であるD−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ldhA)、およびメチルグリオキサールからD−乳酸への代謝経路の遺伝子であるmsgA遺伝子を破壊し、Pediococcus acidilactici由来L−乳酸脱水素酵素を生産する大腸菌を、1mMのベタインを含むミネラルで構成された合成培地で培養することによって、光学純度の高いL−乳酸の生産に成功している。
本文献によれば、msgA遺伝子を破壊していない大腸菌は、ベタイン存在下では、D−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ldhA)を破壊したとしても、大腸菌が生合成するメチルグリオキサールに由来するD−乳酸が生産される為、原料中にD−乳酸の混入が無くても96%e.e.程度の光学純度しか得られないことが示されている。
また、本文献中の大腸菌にはD−乳酸を分解する為のFAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(dld)が存在しているが、msgA遺伝子を破壊しなければ、ベタイン存在下では光学純度は95〜96%程度となることが示されている。すなわち、大腸菌に内在するdld遺伝子の発現のみでは大腸菌が合成するわずかなD−乳酸すら十分分解することができず、高い光学純度が得られないことが示されている。また、ベタインが存在しない培地では、原料中にD−乳酸が含まれていなければ99%以上の高い光学純度の乳酸を生産することが可能であるが、所望の乳酸の生産速度が半分程度に低下してしまうことが示されている。
これらのことから、msgA遺伝子の破壊とベタインの添加が無ければ高いL−乳酸の生産性と高い光学純度の両立は困難であることが示されている。
また、本文献は、大腸菌が生産するD−乳酸の生産を抑制し、D−乳酸の含まれていない培地を用いて光学純度の高いL−乳酸を生産するものであって、培地成分にD−乳酸が含まれる場合に光学純度を高める方法を記載したものではない。
特開2004−187643号公報には、高い光学純度を得るために乳酸ラセマーゼの活性を低下させる方法が開示されている。この方法は乳酸生産菌自体がDL−乳酸をつくってしまう場合には有効であるが、培地中にDL−乳酸が含まれる場合には効果が望めない。
また、Biotech.Bioeng.,Vol.73(1),pp80−82(2001)には、L−乳酸デヒドロゲナーゼを使ってDL−乳酸混合液をD−乳酸溶液にするという方法が開示されているが、報告中の実験では1mLという小スケールであり、乳酸の濃度は10mM程度と低く、一般に1000mM以上となる乳酸生産菌を用いた工業的生産においても有効であるとは考えられない。
一方、WO2005/033324号パンフレットによれば、dld遺伝子を破壊した大腸菌を用いて、コーンスティープリカーを含む培地から光学純度の高いD−乳酸の生産に成功している。コーンスティープリカーにはDL−乳酸が含まれており、dld遺伝子を破壊した大腸菌は、微好気条件でのD−乳酸の分解を抑制し、L−乳酸を分解しながらD−乳酸を生産することにより、光学純度の高いD−乳酸の生産に成功している。本文献によれば、通気は、糖の代謝速度や光学異性体の分解速度、不純物の生産速度に影響を与え、通気を過剰にすれば糖の代謝速度が低下するため乳酸の生産速度が低下することが示されている。そのため、乳酸の生産を目的とする場合、通気量には上限があり、最適な通気量を求めることが必要であることが示されている。すなわち、好気的な代謝反応であるL−乳酸の分解のために供給できる酸素量はD−乳酸の生産速度を低下させない量までである。
ところで、工業的には乳酸の生産速度は高いことが望ましく、光学純度の低下をもたらす光学異性体も、極力、速やかに分解されることが望ましい。L−乳酸またはD−乳酸をピルビン酸へ分解する酵素は、FMN(flavin mononucleotide)またはFAD(flavin adenine dinucleotide )などの補酵素を利用するか、直接酸素を利用して乳酸をピルビン酸へ変換する。補酵素を利用する酵素は、その補酵素の再生のために呼吸、すなわち酸素を利用することが効率的である為、結局いずれの酵素も、供給可能な酸素量に酵素活性が制限を受ける。
しかしながら、酸素の供給量を増加させれば、光学純度を低下させる乳酸は速やかに分解されるが、糖の代謝速度が低下することになり、所望の乳酸の生産速度が大幅に低下する。このため、酸素量に拘わらず細胞外の原料由来の乳酸の分解速度を向上させ、より短時間に所望の乳酸の光学純度を向上させることは極めて困難であった。
従って、本発明は、光学純度が高い乳酸をより短時間に生産する乳酸生産大腸菌及び乳酸生産方法を提供することにある。
本発明は以下のとおりである。
[1] D−乳酸及びL−乳酸のいずれか一方を分解していずれか他方を生産するように、1種類以上のNAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ及び1種類以上の非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼの各酵素活性が共に強化されている乳酸生産大腸菌。
[2] 前記NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼの活性強化が、ピルビン酸からD−乳酸及びL−乳酸のいずれか一方を生成するものであり、且つ、前記非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼの活性強化が、前記D−乳酸及びL−乳酸のいずれか他方を基質として分解するものである[1]に記載の乳酸生産大腸菌。
[3] 前記NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の活性強化が、LdhAの活性強化であり、前記D−乳酸を生産し得る[1]又は[2]に記載の乳酸生産大腸菌。
[4] 前記非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ酵素の活性強化が、LldDの活性強化、L−乳酸オキシダーゼの活性強化、LldRの不活若しくは低減化、又はこれらの一つ以上の組み合わせであり、前記D−乳酸を生産し得る[3]に記載の乳酸生産大腸菌。
[5] 前記L−乳酸オキシダーゼがLoxおよびLctOの少なくとも一方である[4]に記載の乳酸生産大腸菌。
[6] 前記非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ酵素の活性強化が、LldDをコードする遺伝子のORF中の33位にサイレント変異を有する変異体lldD遺伝子によるものである[4]又は[5]に記載の乳酸生産大腸菌。
[7] 前記変異体LldDが、配列番号41の塩基配列で表されるものである[6]に記載の乳酸生産大腸菌。
[8] Dld活性及びPfl活性からなる群より選択された少なくとも一つが不活化または低減化している[3]〜[7]のいずれか記載の乳酸生産大腸菌。
[9] 前記NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の活性強化が、NAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼの活性強化であり、前記L−乳酸を生産し得る[1]又は[2]に記載の乳酸生産大腸菌。
[10] 前記非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ酵素の活性強化が、Dldの活性強化であり、前記L−乳酸を生産し得る[9]記載の乳酸生産大腸菌。
[11] 前記L−乳酸デヒドロゲナーゼが、ビフィドバクテリウム属菌に由来するものである[9]または[10]に記載の乳酸生産大腸菌。
[12] 前記DldがLact deh membドメインを有する[10]または[11]のいずれか記載の乳酸生産大腸菌。
[13] 前記Dldが大腸菌、ザイモモナス及びコリネバクテリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する[10]〜[12]のいずれか記載の乳酸生産大腸菌。
[14] LdhA活性、LldD活性、Pfl活性の少なくとも一つ以上が不活化または低減化されている[9]〜[13]のいずれか記載の乳酸生産大腸菌。
[15] Mdh及びAspAの活性からなる群より選択された少なくとも一つが不活化または低減化されている[1]〜[14]のいずれか記載の乳酸生産大腸菌。
[16] スクロース非PTS遺伝子群及びFruKからなる群より選択された少なくとも一つが強化されている[1]〜[15]のいずれか記載の乳酸生産大腸菌。
[17] FruR活性が不活化または低減化されている[1]〜[16]のいずれか記載の乳酸生産大腸菌。
[18] [1]〜[17]のいずれか記載の乳酸生産大腸菌を用いて乳酸を生産する乳酸生産方法。
[19] [3]〜[8]のいずれか記載の乳酸生産大腸菌を用いてD−乳酸を生産するD−乳酸生産方法。
[20] [9]〜[14]のいずれか記載の乳酸生産大腸菌を用いてL−乳酸を生産するL−乳酸生産方法。
本発明の乳酸生産大腸菌は、D−乳酸及びL−乳酸のいずれか一方を分解していずれか他方を生産するように、1種類以上のNAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ酵素及び1種類以上の非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ酵素の各酵素活性が共に強化されている乳酸生産大腸菌である。
本発明の大腸菌は、乳酸代謝系における1種類以上のNAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ酵素及び1種類以上の非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ酵素の各酵素活性が共に強化されて、D−乳酸及びL−乳酸のいずれか一方を生成するためにいずれか他方を分解しうるので、D−乳酸及びL−乳酸のいずれか一方の生産と共に、光学純度を低下させる光学異性体のみの速やかな分解を同時に進行させることができる。
この結果、光学純度が高い乳酸をより短時間に生産する乳酸生産大腸菌及び乳酸生産方法を提供することができる。
本発明において酵素活性の「強化」とは、酵素をコードする遺伝子を宿主細菌の菌体外から菌体内に導入することの他に、宿主細菌がゲノム上に保有する酵素遺伝子のプロモーター活性を強化すること又は他のプロモーターと置換することによって酵素遺伝子を強発現させたもの、或いは当該酵素遺伝子のリプレッサー活性を低減化又は不活化することの結果として当該酵素活性を強化させることを含む。
本発明における酵素活性の「低減化」とは、当該酵素をコードする遺伝子の遺伝子組換えにより、それらの処理を行う前の状態よりも有意に当該酵素の活性が低下している状態を指す。
本発明において酵素活性の「不活化」とは、既存のいずれの測定系によっても、測定対象の当該酵素の活性が検出限界以下である状態を指す。
なお、本発明において「宿主」とは、ひとつ以上の遺伝子の菌体外からの導入を受けた結果、本発明の乳酸生産大腸菌となる当該大腸菌を意味する。
本明細書中で示された数値範囲は、記載された数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明の乳酸生産大腸菌では、D−乳酸及びL−乳酸のいずれか一方を生成するためにいずれか他方を分解していずれか一方の乳酸を生成するように、1種類以上のNAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ及び1種類以上の非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼの各酵素活性が共に強化されていればよい。具体的には、前記NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼの活性強化が、ピルビン酸からD−乳酸及びL−乳酸のいずれか一方を生成するものであり、且つ、前記非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼが、前記D−乳酸及びL−乳酸のいずれか他方を基質として分解するものであることが好ましい。この結果、ピルビン酸からD−乳酸又はL−乳酸が確実に生成し、他方の分解が促進されるので、光学純度が高い乳酸が、より具体的に効率よく得られる。
このようなNAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ酵素とは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.1.1.27または、酵素番号1.1.1.28に分類されるNADを補酵素とする乳酸デヒドロゲナーゼを意味する。この酵素は、乳酸代謝系において、NADを補酵素としてL−乳酸又はD−乳酸とピルビン酸との間の酸化還元反応を行う。基質量及びNADの量等に応じて酸化還元反応を行う機能を有するが、光学純度の高い乳酸を生産する観点から、ピルビン酸からD−乳酸又はL−乳酸を生成するNAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼの活性強化であることが好ましい。
NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ酵素活性を宿主細菌に導入しうる遺伝子としては、この酵素を保有する生物から得られるNAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の塩基配列を有するDNA、又はその公知の塩基配列に基づいて合成された合成DNA配列を利用することができる。好適なものとしては、エシェリヒア属菌(Escherichia)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、アエロバクター属菌(Aerobacter)、クロストリジウム属菌(Clostridium)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)に由来するもの、特にエシェリヒア属菌(Escherichia)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)に由来するものを挙げることができ、例えばエシェリヒア・コリMG1655株由来の遺伝子、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)由来の遺伝子の塩基配列を有するDNAが例示される。
また本発明における非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ酵素とは、NAD以外を補酵素とする乳酸デヒドロゲナーゼ、または酸素を直接利用して乳酸を酸化する乳酸オキシダーゼを意味する。これらの酵素は、乳酸代謝系において、FADやFMNなどを補酵素として、または直接酸素を利用して、L−乳酸又はD−乳酸とピルビン酸との間の酸化還元反応を行う酵素である。基質量及び補酵素量などに応じて酸化還元反応を行う機能を有する酵素であり、本発明では、D−乳酸及びL−乳酸のいずれか一方を基質としてピルビン酸まで分解し得る機能を強化する酵素であることが好ましい。
非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ酵素活性を宿主細菌に導入しうる遺伝子としては、この酵素を保有する生物から得られる非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼをコードする遺伝子の塩基配列を有するDNA、又はその公知の塩基配列に基づいて合成された合成DNA配列を利用することができる。好適なものとしては、エシェリヒア属菌(Escherichia)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、アエロバクター属菌(Aerobacter)、クロストリジウム属菌(Clostridium)、エンテロコッカス属菌(Enterococcus)、ストレプトコッカス属菌(Streptococcus)、ペディオコッカス属菌(Pediococcus)、ラクトコッカス属菌(Lactococcus)、アエロコッカス(Aerococcus)属菌、コリネバクテリウム属菌(Corynebacterium)、ザイモモナス属菌(Zymomonas)に由来するもの、特にエシェリヒア属菌(Escherichia)、エンテロコッカス属菌(Enterococcus)、コリネバクテリウム属菌(Corynebacterium)、ザイモモナス属菌(Zymomonas)に由来するものを挙げることができ、例えばエシェリヒア・コリMG1655株、Enterococcus sp. ATCC9625株、コリネバクテリウム・グルタミカム NBRC12168株、ザイモモナス・モビルス ATCC31821株由来の遺伝子の塩基配列を有するDNAが例示される。
このように非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ及びNAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼを組み合わせて、且つそれぞれの活性強化をすることによって、一方の光学異性体を生成する一方で、光学純度を低下させる他方の光学異性体の分解を行うので、乳酸を高い光学純度で且つ迅速に生産することができる。
本発明の乳酸生産大腸菌は、上述した各酵素活性の強化に寄与するいずれの遺伝子を強化するものであってもよいが、D−乳酸又はL−乳酸それぞれの光学純度及び生産効率の観点から、後述する各遺伝子で強化したものであることが好ましい。
以下、D−乳酸を生産するD−乳酸生産菌とL−乳酸を生産するL−乳酸生産菌とに分けて説明する。
<D−乳酸生産菌>
本発明におけるD−乳酸生産菌では、NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の活性強化としてLdhAの活性が強化されていることが好ましい。
本発明におけるNAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼとして活性が強化されるD−乳酸デヒドロゲナーゼ(LdhA)とは、ピルビン酸とNADHからD−乳酸とNADを生成する酵素を指す。なお、一般にはLdhAはL−乳酸を生産するものとD−乳酸を生産するもののどちらも知られているが、本発明においては、混乱を避けるため、D−乳酸を生産するもののみをLdhAと表記する。
ldhA遺伝子としては、この酵素活性を保有する生物から得られる遺伝子の塩基配列を有するDNA又はその公知の塩基配列に基づいて合成された合成DNA配列であってもよい。
好適なldhA遺伝子の例としては、上述したNAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼについて記述した菌に由来するものを挙げることができ、具体的にはBunchら(Microbiology1, 43(Pt 1), pp.187-195 (1997))が取得した遺伝子、またはエシェリヒア・コリのゲノムDNAを鋳型に後述する配列番号19および配列番号20よりPCRにより増幅されるDNAフラグメントに含まれる配列をもつ遺伝子を例示できる。
本発明におけるLdhA活性を増強する方策の一つとして、LdhAをコードする遺伝子を、解糖系、核酸生合成系又はアミノ酸生合成系に関わる蛋白質の発現を司る遺伝子のプロモーターと連結した状態で発現プラスミドに組込み、それを所望の細菌へ導入する方法が有効である。その場合の解糖系、核酸生合成系又はアミノ酸生合成系に関わる蛋白質の発現を司る遺伝子のプロモーターとは、恒常的に細菌内、好ましくはエシェリヒア・コリ内で機能する強力なプロモーターで、且つグルコース存在下でも発現の抑制を受けにくいプロモーターを指し、具体的にはグリセルアルデヒド−3リン酸デヒドロゲナーゼのプロモーターやセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼプロモーターが例示できる。このようにして得られた大腸菌は、通気条件下でD−乳酸を生産させる時にldhAの発現が増強されていないものと比較してD−乳酸の蓄積量が向上し、D−乳酸の光学純度を向上させることが可能となる。
また発明におけるD−乳酸生産菌では、非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ酵素の活性強化が、LldDの活性強化、L−乳酸オキシダーゼの活性強化、LldRの不活若しくは低減化、又はこれらの1つ以上の組み合わせであることが好ましい。
これにより、L−乳酸を効率よくピルビン酸に分解することができ、D−乳酸を生産する際に光学純度を迅速に高めることができる。
本発明における非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ酵素として活性が強化される非NAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼ(LldD)とは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.1.2.3に分類され、L−乳酸とFMNからピルビン酸とFMNHを生成する酵素を指す。このlldD遺伝子としては、この酵素活性を保有する生物から得られる遺伝子の塩基配列を有するDNA又はその公知の塩基配列に基づいて合成された合成DNA配列であってもよい。
好適なものとしては、エシェリヒア属菌(Escherichia)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、シゲラ属菌(Shigella)、シトロバクター属菌(Citrobacter)、サルモネラ属菌(Salmonella)に由来するもの、特にエシェリヒア属菌(Escherichia)に由来するものを挙げることができ、例えばエシェリヒア・コリMG1655株由来の遺伝子の塩基配列を有するDNAが例示される。
また、LldDは、L−乳酸のより迅速な分解を図る観点から、lldD遺伝子のORFをコードする配列の33番目がサイレント変異を生じる変異体lldD遺伝子より発現されるLldDであることが好ましく、33番目の塩基がCからTとなる変異体lldD(C33T変異体lldD)(配列番号41)であることが更に好ましい。C33T変異体lldD遺伝子を公知の遺伝子組換え技術により大腸菌に導入することで、容易に高活性大腸菌株を得ることができる。この高活性株を用いることによって、より高速でL−乳酸を分解することができ、D−乳酸の光学純度を向上させることができる。
また、非NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ酵素として活性が強化されるL−乳酸オキシダーゼとは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.13.12.−−に分類され、L−乳酸と酸素存在下で、ピルビン酸と過酸化水素を生成する酵素を指す。これらの遺伝子lox、lctOとしては、この酵素活性を保有する生物から得られる遺伝子の塩基配列を有するDNA又はその公知の塩基配列に基づいて合成された合成DNA配列であってもよい。
好適なものとしては、エンテロコッカス属菌(Enterococcus)、ストレプトコッカス属菌(Streptococcus)、ペディオコッカス属菌(Pediococcus)、ラクトコッカス属菌(Lactococcus)、アエロコッカス属菌(Aerococcus)に由来するものを挙げることができ、これらの中でも、Enterococcus sp. ATCC9625及びLactococcus・lactis ATCC 19435から単離したものであることが特に好ましい。
本発明におけるLldD、L−乳酸オキシダーゼ活性を増強する方策の一つとして、LldDまたは上記L−乳酸オキシダーゼをコードする遺伝子を、解糖系、核酸生合成系又はアミノ酸生合成系に関わる蛋白質の発現を司る遺伝子のプロモーターと連結した状態で発現プラスミドに組込み、それを所望の大腸菌へ導入する方法が有効である。その場合の解糖系、核酸生合成系又はアミノ酸生合成系に関わる蛋白質の発現を司る遺伝子のプロモーターとは、恒常的に細菌内、好ましくはエシェリヒア・コリ内で機能する強力なプロモーターで、且つグルコース存在下でも発現の抑制を受けにくいプロモーターを指し、具体的にはグリセルアルデヒド−3リン酸デヒドロゲナーゼのプロモーターやセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼプロモーターが例示できる。このようにして得られた大腸菌は、通気条件下でD−乳酸を生産させる時にLldDまたはL−乳酸オキシダーゼの発現が増強されていないものと比較してD−乳酸の蓄積量が向上し、D−乳酸の光学純度を向上させることが可能となる。
また、LldD及びL−乳酸オキシダーゼは、それぞれ公知の配列をそのまま使用してもよく、また場合によっては、それぞれの酵素活性を損なわない変異体であってもよい。このような変異体としては、アミノ酸の付加、削除、転換などが挙げられる。このような活性を損なわない変異体については、当業界で公知の方法によって得ることができる。
また、非NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の活性強化として、不活化又は低減化されるLldRは、上記のL−乳酸デヒドロゲナーゼ(LldD)の転写を抑制する制御因子である。LldRの活性を低減化又は不活化することにより、LldD活性の抑制を阻止することができ、又はLldD活性を効果的に強化することができる。
更に、本発明のD−乳酸生産菌は、Dld活性及びPfl活性からなる群より選択された少なくとも一つが不活化または低減化していることが好ましい。
本発明におけるDld(FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼ)とは、D−乳酸から、補酵素である酸化型フラビンアデニンジヌクレオチドの存在下でピルビン酸を生成する反応を触媒する酵素の総称を意味する。このDldの活性を不活化又は低減化することによって、生産物であるD−乳酸の分解を抑制することができる。
また本発明におけるPfl(ピルベートホルメートリアーゼ)とは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号2.3.1.54に分類され、ホルメートアセチルトランスフェラーゼとも呼ばれる酵素である。本酵素はピルビン酸からギ酸を生成する反応を可逆的に触媒する酵素の総称を指す。このPflの活性を不活化又は低減化することによって、D−乳酸の生成原料であるピルビン酸の分解を抑制することができる。
本発明におけるLdhA活性が強化されると共にDld活性若しくはPfl活性又はこれら双方が不活化あるいは低減化されている微生物として、WO2005/033324号に記載のエシェリヒア・コリMT−10994(FERM BP−10058)株が例示できる。
また、本発明のD−乳酸生産菌は、上記に加えて、Mdh及びAspAの活性からなる群より選択された少なくとも一つが不活化または低減化されていることが、副生物の生産量を抑制する観点から、好ましい。
Mdh(リンゴ酸デヒドロゲナーゼ)とは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.1.1.37に分類され、リンゴ酸から、補酵素である酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの存在下でオキサロ酢酸を生成する反応を可逆的に触媒する酵素の総称を指す。このため、Mdhの活性を不活化又は低減化することにより、コハク酸の副生を抑えることができる。
またAspA(アスパラギン酸アンモニアリアーゼ)国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号4.3.1.1.に分類され、アスパルターゼとも呼ばれる酵素である。本酵素はL−アスパラギン酸からフマル酸を生成する反応を可逆的に触媒する酵素の総称を意味する。このため、AspAの活性を不活化又は低減化することにより、フマル酸の副生を抑えることができる。
本発明のD−乳酸生産菌は、グルコースなどの糖を原料としてD−乳酸を生産することができるが、他の糖を原料としてD−乳酸を生産可能にするためにスクロース非PTS遺伝子群及びFruKからなる群より選択された少なくとも一つが強化されていてもよく、スクロース非PTS遺伝子群及びFruKの双方が強化されていることがより好ましく、スクロース非PTS遺伝子群のうちcscAのみとFruKとが共に強化されていることが更に好ましい。
本発明におけるスクロース非PTS遺伝子群とは、微生物のスクロース資化経路のうち非PTS系に関与する遺伝子群のことをいう。詳しくは、リプレッサー蛋白質(cscR)、スクロース加水分解酵素(cscA)、フルクトキナーゼ(cscK)、スクロース透過酵素(cscB)で構成される遺伝子群である。本発明においてスクロース非PTS遺伝子群の遺伝子が選択される場合、スクロース非PTS遺伝子群のうちの1種又は2種以上の遺伝子が選択されていてもよく、例えば、cscAのみ、cscA及びcscKの組み合わせ、cscA及びcscBの組み合わせ、cscA及びcscRの組み合わせ、cscAとcscBとcscRの組み合わせ、cscAとcscKとcscRの組み合わせなどが挙げられる。なかでも、乳酸を更に効率よく生産するという観点から、cscA遺伝子のみが選択されることが好ましい。なお、本発明のある特定の態様では、「スクロース非PTS遺伝子群のうちの1種又は2種以上の遺伝子」のうち、リプレッサー蛋白質(cscR)、スクロース加水分解酵素(cscA)、フルクトキナーゼ(cscK)及びスクロース透過酵素(cscB)の組み合わせと、スクロース加水分解酵素(cscA)、フルクトキナーゼ(cscK)及びスクロース透過酵素(cscB)の組み合わせ以外が好ましい。
本発明におけるスクロース加水分解酵素(インベルターゼ、CscA)とは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号3.2.1.26に分類され、スクロースからD−グルコースとD−フルクトースを生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
この酵素は、K12株等の大腸菌には本来保有されていない酵素であり、プロトン共輸送移送系、インベルターゼ、フルクトキナーゼ及びスクロース特異的リプレッサーを含む非PTS代謝経路の酵素の1つである(Canadian Journal of Microbiology, (1991) vol.45, pp418-422参照)。本発明においてこのcscAのみを付与することにより、菌体外におけるスクロースをペリプラズムでグルコース及びフルクトースに分解して細胞外へ放出し、グルコースPTS及びフルクトースPTSを介して細胞質内にリン酸化して取り込む。この結果、フルクトースを細菌におけるフルクトース代謝系へ供給して、解糖系を利用した資化を可能にすることができる。
本発明の宿主細菌に導入されるスクロース加水分解酵素(インベルターゼ、CscA)の遺伝子としては、この酵素を保有する生物から得られるスクロース加水分解酵素(インベルターゼ、CscA)をコードする遺伝子の塩基配列を有するDNA、又はその公知の塩基配列に基づいて合成された合成DNA配列を利用することができる。好適なものとしては、アーウィニア属菌(Erwinia)、ポルテウス属菌(Proteus)、ビブリオ属菌(Vibrio)、アグロバクテリウム属菌(Agrobacterium)、リヒゾビウム属菌(Rhizobium)、スタフィロコッカス属菌(Staphylococcus),ビフィドバクテリウム属菌(Bifidobacterium)、エシェリヒア属菌(Escherichia)に由来するものを挙げることができ、例えばエシェリヒア・コリO157株由来の遺伝子の塩基配列を有するDNAが例示される。特に好ましくは、エシェリヒア・コリO157株由来の遺伝子の塩基配列を有するDNAである。またCscAには、CscAを菌体のペリプラズムへ移行させるためのシグナル配列が付加されていることが好ましい。
本発明の宿主細菌に導入されるリプレッサー蛋白質(CscR)の遺伝子としては、この酵素を保有する生物から得られるリプレッサータンパク質(CscR)をコードする遺伝子の塩基配列を有するDNA、又はその公知の塩基配列に基づいて合成された合成DNA配列を利用することができる。好適なものとしては、アーウィニア属菌(Erwinia)、ポルテウス属菌(Proteus)、ビブリオ属菌(Vibrio)、アグロバクテリウム属菌(Agrobacterium)、リヒゾビウム属菌(Rhizobium)、スタフィロコッカス属菌(Staphylococcus),ビフィドバクテリウム属菌(Bifidobacterium)、エシェリヒア属菌(Escherichia)に由来するものを挙げることができ、例えばエシェリヒア・コリO157株由来の遺伝子の塩基配列を有するDNAが例示される。特に好ましくは、エシェリヒア・コリO157株由来の遺伝子の塩基配列を有するDNAである。
本発明の宿主細菌に導入されるフルクトキナーゼ(CscK)の遺伝子としては、この酵素を保有する生物から得られるフルクトキナーゼ(CscK)をコードする遺伝子の塩基配列を有するDNA、又はその公知の塩基配列に基づいて合成された合成DNA配列を利用することができる。好適なものとしては、アーウィニア属菌(Erwinia)、ポルテウス属菌(Proteus)、ビブリオ属菌(Vibrio)、アグロバクテリウム属菌(Agrobacterium)、リヒゾビウム属菌(Rhizobium)、スタフィロコッカス属菌(Staphylococcus),ビフィドバクテリウム属菌(Bifidobacterium)、エシェリヒア属菌(Escherichia)に由来するものを挙げることができ、例えばエシェリヒア・コリO157株由来の遺伝子の塩基配列を有するDNAが例示される。特に好ましくは、エシェリヒア・コリO157株由来の遺伝子の塩基配列を有するDNAである。
本発明の宿主細菌に導入されるスクロース透過酵素(CscB)の遺伝子としては、この酵素を保有する生物から得られる、スクロース透過酵素(CscB)をコードする遺伝子の塩基配列を有するDNA、又はその公知の塩基配列に基づいて合成された合成DNA配列を利用することができる。好適なものとしては、アーウィニア属菌(Erwinia)、ポルテウス属菌(Proteus)、ビブリオ属菌(Vibrio)、アグロバクテリウム属菌(Agrobacterium)、リヒゾビウム属菌(Rhizobium)、スタフィロコッカス属菌(Staphylococcus),ビフィドバクテリウム属菌(Bifidobacterium)、エシェリヒア属菌(Escherichia)に由来するものを挙げることができ、例えばエシェリヒア・コリO157株由来の遺伝子の塩基配列を有するDNAが例示される。特に好ましくは、エシェリヒア・コリO157株由来の遺伝子の塩基配列を有するDNAである。
本発明におけるフルクトース−1−リン酸キナーゼ(FruK)は、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号2.7.1.56に分類され、ホスホフルクトキナーゼ1とも呼ばれる酵素である。細菌類、例えば大腸菌においてグルコース存在下でのフルクトース取り込みが一般に抑制されるのに対して、FruKの発現強化がグルコースの存在下にもかかわらず、フルクトースの取り込みを促進し、D−乳酸生産細菌においてD−乳酸の生産性の向上に寄与するという知見はこれまでに全くみられていない。また、上記CscAによってスクロースからできたフルクトースが細胞内に取り込まれてフルクトース−1−リン酸に代謝された後、一連のフルクトース代謝系におけるFruKの発現強化のみで乳酸の生産性が向上することも予想外であった。
本発明の宿主大腸菌に導入されるフルクトース−1−リン酸キナーゼ(FruK)の遺伝子としては、この酵素を保有する生物から得られるフルクトース−1−リン酸キナーゼをコードする遺伝子(fruK)の塩基配列を有するDNA、又はその公知の塩基配列に基づいて合成された合成DNA配列を利用することができる。好適なものとしては、エシェリヒア属菌(Escherichia)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、アエロバクター属菌(Aerobacter)、クロストリジウム属菌(Clostridium)に由来するもの、特にエシェリヒア属菌(Escherichia)に由来するものを挙げることができ、例えばエシェリヒア・コリMG1655株由来の遺伝子の塩基配列を有するDNAが例示される。特に好ましくは、エシェリヒア・コリMG1655株由来の遺伝子の塩基配列を有するDNAである。
本発明において、より好ましくは、スクロース加水分解酵素(CscA)及びフルクトースリン酸キナーゼがいずれも、エシェリヒア・コリO157細菌又はエシェリヒア・コリMG1655由来の各蛋白質をコードする遺伝子の導入により得られたものとすることができる。これらの細菌由来の遺伝子とすることにより、確実に機能発現させることができる。
また本発明に係るD−乳酸生産菌は、更に、FruR活性が不活化又は低減化されていることが、フルクトースの取り込みを促進できる観点から、好ましい。
本発明において活性が低減されるFruRの遺伝子としては、宿主細菌が本来保有するものであればよく、宿主細菌が本来有するFruRをコードする遺伝子の塩基配列を有するDNA、又はその公知の塩基配列に基づいて組み込まれた合成DNA配列としてもよい。
このようなD−乳酸生産菌を、後述する生産方法に用いることによって、光学純度高く且つ迅速にD−乳酸を生産することができる。
<L−乳酸生産菌>
本発明におけるL−乳酸生産菌では、NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の活性強化として、NAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼの活性が強化されていることが好ましい。
本発明におけるNAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼとして活性が強化されるL−乳酸デヒドロゲナーゼとは、ピルビン酸とNADHからL−乳酸とNADを生成する酵素を指す。NAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼの遺伝子としては、この酵素活性を保有する生物から得られる遺伝子の塩基配列を有するDNA又はその公知の塩基配列に基づいて合成された合成DNA配列であってもよい。
好適なNAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子としては、大腸菌で発現可能でL−乳酸を生産できるNAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子であれば特に限定しないが、例えば、ビフィドバクテリウム属、エンテロバクター属、ラクトコッカス属、ラクトバチルス属由来のNAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼを挙げることができ、特に乳酸の生産性の観点からビフィドバクテリウム・ロンガムに由来するNAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼ(Ldh2)であることが好ましい。
また、NAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼ活性を増強する方策の一つとしては、D−乳酸生産大腸菌におけるldhAについて説明したプロモーターの使用などを挙げることができ、前述した事項をそのまま適用することができる。そのようなL−乳酸デヒドロゲナーゼ活性が増強された細菌は、通気条件下でL−乳酸を生産させる時にL−乳酸デヒドロゲナーゼの発現が増強されていないものと比較してL−乳酸の蓄積量が向上し、L−乳酸の光学純度を向上させることが可能となる。
本発明におけるL−乳酸生産菌では、非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ酵素として、Dldの活性が強化されていることが光学純度向上の観点から好ましい。
本発明におけるDld(FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼ)とは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.1.2.4に分類され、D−乳酸から、補酵素である酸化型フラビンアデニンジヌクレオチドの存在下でピルビン酸を生成する反応を触媒する酵素の総称を意味する。
Dldの活性強化のために宿主菌に導入可能なdld遺伝子は、如何なる微生物に由来するものであってもよく、エシェリヒア属菌(Escherichia)、コリネバクテリウム属菌(Corynebacterium)、ザイモモナス属菌(Zymomonas)に由来するものを挙げることができる。
中でも、Lact deh membドメインを共通して有する大腸菌、ザイモモナス及びコリネバクテリウムからなる群より選択された少なくとも1つのdld遺伝子であることが光学純度向上の観点からより好ましく、大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミカム、ザイモモナス・モビリスにそれぞれ由来するdld遺伝子であることが特に好ましい。なおザイモモナス属及びコネリバクテリウム属のdld遺伝子は、更にFADオキシダーゼドメインも共通して有している。このLact deh membドメインとは、細胞膜に配位する乳酸デヒドロゲナーゼが共通して持つ類似性の高いアミノ酸配列である。
Lact deh membドメイン又はFADオキシダーゼドメインの配列の有無についての情報は、酵素のアミノ酸配列をPfam database(Nucleic Acids Research (2008) Database Issue 36:D281-D288)等を用いて入力、検索することによって得られる。例えば、http://pfam.sanger.ac.uk/searchにアミノ酸配列を入力し、初期状態で検索することにより所望のアミノ酸配列中にLact deh membドメイン又はFADオキシダーゼドメインの配列が存在するかどうかを知ることができる。
非NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の活性強化として、この酵素遺伝子の転写を抑制する制御因子がある場合には、これを低減化又は不活化してもよい。
また、Dld活性を増強する方策の一つとしては、D−乳酸生産大腸菌におけるldhAについて説明したプロモーターの使用などを挙げることができ、前述した事項をそのまま適用することができる。
また、本発明に係るL−乳酸生産菌では、LdhA活性、LldD活性及びPfl活性からなる群より選択された少なくとも一つが不活化または低減化されていることが、好ましい。
ここで活性が不活化または低減化の対象となるLdhA、LldD及びPflに関する事項については、前述した事項をそのまま適用することができる。
LdhA活性の不活化又は低減化により、L−乳酸を生成する原料となるピルビン酸の分解を抑制することができる。
LldD活性の不活化又は低減化により、生産物であるL−乳酸の消費を抑制することができる。
また本発明におけるL−乳酸生産菌では、前述したD−乳酸生産菌と同様に、上記に加えて、Mdh及びAspAの活性からなる群より選択された少なくとも一つが不活化または低減化されていることが、副生物の生産量を抑制する観点から、好ましい。
更に本発明におけるL−乳酸生産菌では、前述したD−乳酸生産菌と同様に、他の糖を原料としてL−乳酸を生産可能にするためにCscA及びFruKからなる群より選択された少なくとも一つが強化されていてもよく、CscA及びFruKの双方が強化されていることが更に好ましい。更にまた、本発明のL−乳酸生産菌では、FruR活性が不活化又は低減化されていることが、フルクトースの取り込みを促進できる観点から、好ましい。
不活化若しくは低減化、または強化の対象となるMdh及びAspA並びに、スクロース非PTS遺伝子群、FruK及びFruRに関する事項については、前述したものをそのまま適用することができる。
<乳酸生産方法>
次に本発明の乳酸生産方法について説明する。
本発明の乳酸生産方法は、上述した乳酸生産菌を用いて乳酸を生産する方法である。
特に、上記のD−乳酸生産菌を用いて培養することにより、D−乳酸を高い光学純度で且つ効率よく生産することができる。同様に上記のL−乳酸生産菌を用いて培養することにより、L−乳酸を高い光学純度で且つ効率よく生産することができる。
本発明のこれらの乳酸生産方法は、具体的には、上述した各乳酸生産菌を培養液で培養すること、前記培養により得られた培養物から乳酸生産菌が生成した特定の乳酸を回収することを含む。
本発明の乳酸生産方法では、乳酸製造の原料として通常用いられる植物由来原料を用いることができる。植物由来原料としては、植物から得られる炭素源であればよい。具体的には、根、茎、幹、枝、葉、花又は種子等の器官、それらを含む植物体、それら植物器官の分解産物を指し、更に植物体、植物器官、またはそれらの分解産物から得られる炭素源のうち、微生物が培養において炭素源として利用し得るものも、植物由来原料に包含される。
このような植物由来原料に包含される炭素源には、一般的なものとしてデンプン、グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース等の糖類、またはこれら成分を多く含む草木質分解産物やセルロース加水分解物など、またはこれらの組み合わせを挙げることができ、更には植物油由来のグリセリンまたは脂肪酸も、本発明における炭素源に含んでもよい。
特に本発明における乳酸生産大腸菌がCscA活性を有するものである場合には、スクロース資化能を備えており、スクロースを含む植物原料であっても良好に資化して乳酸を生産することができる。
本発明における植物由来原料の例示としては、穀物等の農作物、トウモロコシ、米、小麦、大豆、サトウキビ、ビート、綿等、またはこれらの組み合わせを好ましく挙げることができ、その原料としての使用形態は、未加工品、絞り汁、粉砕物等、特に限定されない。また、上記の炭素源のみの形態であってもよい。
植物由来原料と乳酸生産細菌との混合は、乳酸生産細菌の活性によって異なるが、一般に、培地中の植物由来原料の濃度として、グルコース換算で初発の糖濃度を混合物の全質量に対して20質量%以下とすることができ、細菌の耐糖性の観点から好ましくは、初発の糖濃度を15質量%以下とすることができる。この他の各成分は、微生物の培地に通常添加される量で添加されればよく、特に制限されない。
また培地中の乳酸生産細菌の含有量としては、細菌の種類及び活性によって異なるが一般に、初発の菌濃度を培養液に対して0.1質量%〜30質量%、培養条件制御の観点から好ましくは1質量%〜10質量%とすることができる。
本発明の培養とは、培地を用いて本発明に係る微生物を培養することである。その際、使用される培地としては、炭素源、窒素源、無機イオン、及び乳酸を生産するために微生物が要求する有機微量元素、核酸、ビタミン類等が含まれた培地であれば特に制限はない。
なかでも、2種以上のアミノ酸が添加された培地で培養することが、生産速度の観点から好ましい。本発明における2種以上のアミノ酸が添加された培地とは、天然に存在する各種アミノ酸の中から少なくとも2種以上を含有する培地を意味し、酵母エキス、カザミノ酸、ペプトン、ホエー、廃糖蜜、コーンスティープリカーなどの天然物や天然物抽出物の加水分解物を含有する培地も含む。より好ましい結果を得るためには酵母エキス、ペプトン、ホエー、廃糖蜜及びコーンスティープリカーより選ばれる少なくとも1種類、もしくはそれらの混合物が0.5質量%から20質量%含む培地が好ましく、2質量%から15質量%ではさらに好ましい。特にコーンスティープリカー添加は大きな効果が得られ、このとき硫酸アンモニウムなどの塩は添加しないほうがむしろよい結果となる場合がある。培地は通常液体培地である。
培養条件としては作成された菌体、培養装置により変動するが、例えば培養温度は20℃から40℃、より好ましくは25℃から35℃で培養することが好ましく、pHはNaOH、NH等で6.0から8.0、より好ましくは7.0から7.6で調整し、培養することが好ましい。培養時間は特に限定されないが、菌体が十分に増殖し、且つ乳酸が生成するに必要な時間である。
培養に際しては通常は温度、pH、通気条件、攪拌速度を制御し得る培養槽を用いるのが一般的であるが、本発明の培養に際しては培養槽を使用することに限定されない。培養槽を用いて培養する場合には、必要により、予め前培養として種培養を行い、これを必要量予め調製しておいた培養槽内の培地に接種してもよい。
本発明における培養物とは、上述した方法により生産された菌体、培養液、及びそれらの処理物を指す。
以上のようにして得られた培養液等の培養物から乳酸を回収する方法は、例えば培養液からならば通常知られた方法が利用でき、例えば酸性化した後直接蒸留する方法、ラクチドを形成させて蒸留する方法、アルコールと触媒を加えエステル化した後蒸留する方法、有機溶媒中に抽出する方法、イオン交換カラムで分離する方法、電気透析により濃縮分離する方法などやそれらを組み合わせた方法が採用できる。また、本発明の方法により生産された菌体は、乳酸の生産に適した酵素群を生産していることから、これを利用してさらに乳酸を生産し、回収することも培養物から乳酸を回収する方法の一部とみなされる。
本発明の乳酸生産方法では、光学純度の高い乳酸を生産することができるので、培養物に含まれる乳酸を回収すれば、D−乳酸又はL−乳酸を純度よく得ることができる。
本発明で得られた微生物を培養して乳酸を生産させる際には、通気を全く行わなくともよいが、より好ましい結果を得るためには通気を行った方がよい。ここで言う通気条件下とは必ずしも培養液中を空気が通過する必要はなく、培養槽の形状によっては適度に培養液を撹拌しながら培養液上の空気層が換気されるような上面通気も含み、培養槽の内部に酸素を含む気体を流入させることを意味する。液中に通気する場合は内圧、撹拌羽根位置、撹拌羽根形状、撹拌速度の組み合わせにより溶存酸素濃度が変化するために乳酸の生産性および乳酸以外の有機酸量などを指標に次のように最適条件を求めることができる。
例えば、ABLE社製培養装置BMJ−01等の比較的小型の培養槽で培養する場合は、500gの培養液を使用した際、空気を常圧で0.01vvm〜1vvm、撹拌速度50rpm〜500rpm、より好ましくは、常圧で0.1vvm〜0.5vvm、撹拌速度100rpm〜400rpmで達成し得る通気条件で好ましい結果を得ることができる。この条件は通気撹拌条件が温度30℃の水を対象とした場合常圧で酸素移動速度係数kLaが1/h以上400/h以下となる条件で達成し得る酸素供給を可能とする条件である。
また、最適な通気条件の別の指標としては、pGAP−cscA−lox−lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株が嫌気培養で生産するギ酸、酢酸、コハク酸若しくはエタノール又はこれらの組み合わせが総量で、5.0g/L以下、さらに好ましくは1.0g/L以下になり且つ、乳酸が生産されるような通気量、撹拌速度により達成される通気条件である。
また、最適な通気条件の別の指標としては、0.3%の光学異性体であるL−乳酸を含む培地でpGAP−cscA−lox−lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株を培養した際に、10〜100時間以内にL−乳酸の濃度が0.02質量%以下に低下するような通気量、攪拌速度である。
上述した通気条件は培養初期から終了まで一貫して行う必要はなく、培養工程の一部で行うことでも好ましい結果を得ることができる。上記のように通気を行うことで乳酸の生産性の向上、光学異性体の削減を達成することができる。
本発明の乳酸生産方法によれば、L−乳酸又はD−乳酸を高い光学純度で得ることができ、生産原料に光学純度を低下させる他方の光学異性体が含まれている場合でも、目的ではない光学異性体を分解することにより、目的とする光学異性体を生産することができる。
本発明の乳酸生産方法では、定法のHPLCやF−キット D−/L−乳酸(ジェイ・ケイ・インターナショナル 製品番号1112821)を用いて光学純度を確認することができる。特に上記F−キットに従い、得られた上清中のL−乳酸量、及びD−乳酸量を測定し、下記式に代入して求めた方法により測定して、98%e.e.以上の光学純度で目的とするL−又はD−乳酸を得ることができ、好ましくは99.5%e.e.以上の光学純度で目的とするL−又はD−乳酸を得ることができる。
光学純度(%e.e.)
=100×(D乳酸濃度−L乳酸濃度)/(D乳酸濃度+L乳酸濃度)
上記式において乳酸濃度は、質量基準である。
また本発明の乳酸生産方法によれば、NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ及び非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼの双方を共に強化されていない大腸菌を用いてD−乳酸又はL−乳酸を製造する場合と比較して、上述したような高い光学純度の光学異性体を迅速に生産することができる。
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
-- D−乳酸生産菌 --
[実施例1]
<エシェリヒア・コリMG1655株dld遺伝子欠失株の作製>
エシェリヒア・コリのゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number U00096)、エシェリヒア・コリのFAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼ(以下Dldと略すことがある)をコードする遺伝子の塩基配列も報告されている(Genbank accession number M10038)。
エシェリヒア・コリMG1655株ゲノムDNAのdld遺伝子近傍領域の遺伝子情報に基づいて、CAACACCAAGCTTTCGCG(配列番号1)、TTCCACTCCTTGTGGTGGC(配列番号2)、AACTGCAGAAATTACGGATGGCAGAG(配列番号3)及びTGTTCTAGAAAGTTCTTTGAC(配列番号4)のオリゴヌクレオチドプライマーを4種合成した。
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAを、Current Protocols in Molecular Biology(JohnWiley & Sons)記載の方法により調製し、得られたゲノムDNAを鋳型とし、配列番号1と配列番号2のプライマーを用いて、通常の条件でPCRを行うことにより約1.4kbpのDNA断片(以下dld−L断片と呼ぶことがある)を増幅し、配列番号3と配列番号4のプライマーを用いて、通常の条件でPCRを行うことにより約1.2kbpのDNA断片(以下dld−R断片と呼ぶことがある)を増幅した。得られたdld−L断片、dld−R断片をそれぞれ、制限酵素HindIIIとPstI、PstIとXbaIで消化した。このフラグメントを温度感受性プラスミドpTH18cs1(Hashimoto-Gotoh, T., et.al., Gene, Vol.241(1), pp185-191 (2000))をHindIII、XbaIで消化して得られるフラグメントと混合し、リガーゼを用いて結合した後、DH5αコンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地で30℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収した。得られたプラスミドをpTHΔdldと命名した。
なおエシェリヒア・コリMG1655株は細胞・微生物・遺伝子バンクであるアメリカンタイプカルチャーコレクションより入手することができる。
[実施例2]
実施例1で得られたプラスミドpTHΔdldをMG1655株に30℃で形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体を寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した。次にこれらの培養菌体が得られるようにクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。
さらにもう一度、42℃で生育するシングルコロニーを得る操作を繰り返し、相同組換えによりプラスミド全体が染色体に組込まれたクローンを選択した。本クローンがプラスミドを細胞質中に持たないことを確認した。
次に上記クローンをLB寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した後に、LB液体培地(3ml/試験管)に接種し、42℃で3〜4時間、振とう培養した。これをシングルコロニーが得られるように適当に希釈(10−2〜10−6程度)し、LB寒天プレートに塗布し、42℃で一晩培養し、コロニーを得た。出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップしてそれぞれをLB寒天プレートとクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、LB寒天プレートにのみ生育するクロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。さらにはこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRによりdldを含む約2.0kb断片を増幅させ、dld遺伝子領域が欠失している株を選抜し、以上を満足するクローンをdld欠失株とし、得られた株をMG1655Δdld株と命名した。
[実施例3]
<エシェリヒア・コリMG1655pfl、dld遺伝子欠失株作製>
エシェリヒア・コリのゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number U00096)、エシェリヒア・コリのピルベートホルメートリアーゼ(以下Pflと呼ぶことがある)をコードする遺伝子の塩基配列も報告されている(Genbank accession number AE000192)。Pflをコードする遺伝子の塩基配列近傍領域をクローニングするため、GCACGAAAGCTTTGATTACG(配列番号5)、TTATTGCATGCTTAGATTTGACTGAAATCG(配列番号6)TTATTGCATGCTTATTTACTGCGTACTTCG(配列番号7)AAGGCCTACGAAAAGCTGCAG(配列番号8)のオリゴヌクレオチドプライマーを4種合成した。
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAを鋳型とし、配列番号5と配列番号6のプライマーを用いて、通常の条件でPCRを行うことにより約1.8kbpのDNA断片(以下pflB−L断片と呼ぶことがある)を増幅し、また、配列番号7と配列番号8のプライマーを用いて、通常の条件でPCRを行うことにより約1.3kbpのDNA断片(以下pflB−R断片と呼ぶことがある)を増幅した。このDNA断片をアガロース電気泳動にて分離、回収し、pflB−L断片をHindIII及びSphIで、pflB−R断片をSphI及びPstIでそれぞれ消化した。この消化断片2種と、温度感受性プラスミドpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)のHindIII及びPstI消化物とをT4DNAリガーゼで反応した後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換して、PflBをコードする遺伝子の5´上流近傍断片と3´下流近傍断片の2つの断片を含むプラスミドを得、pTHΔpflと命名した。
得られたプラスミドpTHΔpflを、実施例2で得られたMG1655Δdld株に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体を寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した。次にこれらの培養菌体が得られるようにクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。
得られたクローンから、実施例2と同様の方法に従ってpfl遺伝子が破壊されたMG1655Δdld株を得、MG1655ΔpflΔdld株と命名した。
[実施例4]
<エシェリヒア・コリMG1655ΔpflΔdldΔmdh株の作製>
エシェリヒア・コリのゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number U00096)、エシェリヒア・コリのmdh遺伝子の塩基配列も報告されている(Genbank accession number AE000403)。Mdhをコードする遺伝子(939bp)の塩基配列近傍領域をクローニングするため、AAAGGTACCAGAATACCTTCTGCTTTGCCC(配列番号9)、AAAGGATCCCCTAAACTCCTTATTATATTG(配列番号10)、AAAGGATCCAAACCGGAGCACAGACTCCGG(配列番号11)及びAAATCTAGAATCAGATCATCGTCGCCTTAC(配列番号12)のオリゴヌクレオチドプライマーを4種合成した。
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAを鋳型とし、配列番号9と配列番号10、配列番号11と配列番号12の組み合わせで、通常の条件でPCRを行うことにより約800bp(以下mdh−L断片と呼ぶことがある)のDNA断片と、約1,000bp(以下mdh−R断片と呼ぶことがある)のDNA断片をそれぞれ増幅した。このDNA断片をアガロース電気泳動にて分離、回収し、mdh−L断片をKpnI及びBamHIで、mdh−R断片をBamHI及びXbaIでそれぞれ消化した。この消化断片2種と、温度感受性プラスミドpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)のKpnI及びXbaI消化物とをT4DNAリガーゼで反応した後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換して、mdhをコードする遺伝子の5´上流近傍断片と3´下流近傍断片の2つの断片を含むプラスミドを得、本プラスミドをpTHΔmdhと命名した。
プラスミドpTHΔmdhを実施例3で得られたエシェリヒア・コリMG1655ΔpflΔdld株に形質転換し、実施例2と同様の方法に従って、mdh遺伝子が破壊されたMG1655ΔpflΔdld株を取得した。本株をMG1655ΔpflΔdldΔmdh株と命名した。
[実施例5]
<エシェリヒア・コリMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp株の作製>
エシェリヒア・コリのゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number U00096)、エシェリヒア・コリのaspA遺伝子の塩基配列も報告されている(Genbank accession number AE000486)。AspAをコードする遺伝子(1,482bp)の塩基配列近傍領域をクローニングするため、TTTTGAGCTCGATCAGGATTGCGTTGGTGG(配列番号13)、CGAACAGTAATCGTACAGGG(配列番号14)、TACGATTACTGTTCGGCATCGACCGAATACCCGAG(配列番号15)及びTTTTTCTAGACCTGGCACGCCTCTCTTCTC(配列番号16)に示すオリゴヌクレオチドプライマーを4種合成した。
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAを鋳型とし、配列番号13と配列番号14、配列番号15と配列番号16の組み合わせで、上記プライマーを用いて、通常の条件でPCRを行うことにより約910bp(以下aspA−L断片と呼ぶことがある)のDNA断片と、約1,100bp(以下aspA−R断片と呼ぶことがある)のDNA断片をそれぞれ増幅した。このDNA断片をアガロース電気泳動にて分離、回収し、aspA−L断片とaspA−R断片の両者ともにDNA Blunting Kit(宝バイオ)で末端を平滑化した後、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて定法にて5´末端をリン酸化した。また、温度感受性プラスミドpTH18cs1を、SmaI消化後、アルカリフォスファターゼにて脱リン酸化処理を行った。上記のリン酸化した2種類の断片と、脱リン酸化したプラスミドをT4DNAリガーゼで反応した後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換して、AspAをコードする遺伝子の5´上流近傍断片と3´下流近傍断片の2つの断片を含むプラスミドを得て、このプラスミドをpTHΔaspと命名した。
プラスミドpTHΔaspを実施例4で得られたエシェリヒア・コリMG1655ΔpflΔdldΔmdh株に形質転換し、最終的にaspA遺伝子が破壊されたMG1655ΔpflΔdldΔmdh株を得、MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp株と命名した。本株を得る詳細な方法は、本発明の実施例2に記載された方法に準じた。
[実施例6]
<エシェリヒア・コリMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp株のゲノム上ldhAプロモーターのGAPDHプロモーターへの置換>
エシェリヒア・コリのldhA遺伝子の塩基配列はすでに報告されている(GenBank accession number U36928)。グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーターを取得するためエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いてAACGAATTCTCGCAATGATTGACACGATTC(配列番号17)、及びACAGAATTCGCTATTTGTTAGTGAATAAAAGG(配列番号18)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素EcoRIで消化することで約100bpのGAPDHプロモーターをコードするフラグメントを得た。さらにD−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ldhA)を取得するためにエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いてGGAATTCCGGAGAAAGTCTTATGAAACT(配列番号19)、及びCCCAAGCTTTTAAACCAGTTCGTTCGGGC(配列番号20)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素EcoRI及びHindIIIで消化することで約1.0kbpのD−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ldhA)フラグメントを得た。上記の2つのDNAフラグメントとプラスミドpUC18を制限酵素EcoRI及びHindIIIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で30℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP-ldhAを回収した。
さらにエシェリヒア・コリMG1655株のldhA遺伝子5’近傍領域の遺伝子情報に基づいて作成された、AAGGTACCACCAGAGCGTTCTCAAGC(配列番号21)とGCTCTAGATTCTCCAGTGATGTTGAATCAC(配列番号22)を用いて、エシェリヒア・コリゲノムDNAを鋳型としてPCRを行うことにより約1000bpのDNA断片を増幅した。
また、エシェリヒア・コリMG1655株のグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーターの配列情報に基づいて作製されたGGTCTAGAGCAATGATTCACACGATTCG(配列番号23)とエシェリヒア・コリMG1655株のldhA遺伝子の配列情報に基づいて作製されたAACTGCAGGTTCGTTCTCATACACGTCC(配列番号24)を用いて、先に作製したプラスミドpGAPldhAを鋳型としてPCRを行い、GAPDHプロモーターとldhA遺伝子の開始コドン近傍領域からなる約850bpのDNAフラグメントを得た。
上記により得られたフラグメントをそれぞれ、制限酵素KpnIとXbaI、XbaIとPstIで消化した。得られたフラグメントと、温度感受性プラスミドpTH18cs1をKpnIとPstIで消化して得られるフラグメントとを混合し、リガーゼを用いて結合し、その後、DH5αコンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に30℃で形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地で30℃一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収し、pTH−GAPldhAと命名した。
得られたプラスミドpTH−GAPldhAを、実施例5で得られたエシェリヒア・コリMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp株に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこれらの培養菌体が得られるようにクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをクロラムフェニコールを含まないLB液体培地で30℃一晩培養し、さらにクロラムフェニコールを含まないLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをクロラムフェニコールを含まないLB寒天プレートとクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、クロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。さらにはこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRによりGAPDHプロモーターとldhA遺伝子を含む約800bp断片を増幅させ、ldhAプロモーター領域がGAPDHプロモーターに置換されている株を選抜し、以上を満足するクローンをMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株と命名した。
<lldR破壊株の作製>
lldR遺伝子を破壊するプラスミドを以下の方法で作製した。
エシェリヒア・コリのlldR遺伝子の塩基配列はすでに報告されている(GenBank accession number U00096 3777077〜3777853)。
lldRをコードする遺伝子の塩基配列近傍領域をクローニングするため、GGGAATTCGACATCATTCGCTCGTCTATTCTTTCGATA(配列番号25)、GGGTACCTTAAGGAATCATCCACGTTAAGACAT(配列番号26)を用いて、エシェリヒア・コリゲノムDNAを鋳型としてPCRを行うことによりlldR上流のDNA断片を増幅し、制限酵素EcoRI、KpnIで切断した。次に、ATGGTACCCGGAGAAAGTCTTATGATTATTTCCGCAGCCAGCGATTATCG(配列番号27)、GATGTCGACCTATGCCGCATTCCCTTTCGCCATG(配列番号28)をプライマーとしてエシェリヒア・コリゲノムDNAを鋳型としてPCRを行うことによりlldR下流のDNA断片を増幅し、制限酵素KpnI、SalIで切断した。この消化断片2種と、温度感受性プラスミドpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)のEcoRI及びSalI消化物とをT4DNAリガーゼで反応した後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換して、LldDをコードする遺伝子の5´上流近傍断片と3´下流近傍断片の2つの断片を含むプラスミドを得、本プラスミドをpTHΔlldRと命名した。
得られたプラスミドを、MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこれらの培養菌体が得られるようにクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをクロラムフェニコールを含まないLB液体培地で30℃一晩培養し、さらにクロラムフェニコールを含まないLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップしてそれぞれをクロラムフェニコールを含まないLB寒天プレートとクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、クロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。さらにはこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRによりlldR周辺を増幅させ、lldR領域が欠損している株を選抜し、以上を満足するクローンをMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔlldR/GAPldhAゲノム挿入株と命名した。
[実施例7]
<エシェリヒア・コリMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株の作製>
エシェリヒア・コリのゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number U00096)、エシェリヒア・コリMG1655のfruR遺伝子の塩基配列は既に報告されている。すなわち、fruR遺伝子はGenBank accession number U00096に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の88028〜89032に記載されている。
fruRをコードする遺伝子(1005bp)の塩基配列近傍領域をクローニングするため、TACTGCAGATCTCAATAACCGCTATCTGG(配列番号29)、GCTCTAGATAGCCATTGTACTGGTATGG(配列番号30)、TATCTAGATGCTCAGCCGTAGCTAAGC(配列番号31)及びCGAATTCATCCATCTGACATTCGCTGG(配列番号32)に示すオリゴヌクレオチドプライマーを4種合成した。
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAを鋳型とし、配列番号29と配列番号30、配列番号31と配列番号32の組み合わせで上記プライマーを用いて、通常の条件でPCRを行うことにより約950bp(以下fruR−L断片と呼ぶことがある)及び、約880bp(以下fruR−R断片と呼ぶことがある)のDNA断片を増幅した。このDNA断片をアガロース電気泳動にて分離、回収し、fruR−L断片をPstI及びXbaIで、fruR−R断片をXbaI及びEcoRIでそれぞれ消化した。この消化断片2種と、温度感受性プラスミドpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)のPstI及びEcoRI消化物とをT4DNAリガーゼで反応した後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換して、FruRをコードする遺伝子の5’上流近傍断片と3’下流近傍断片の2つの断片を含むプラスミドを得、本プラスミドをpTHΔfruRと命名した。
プラスミドpTHΔfruRを実施例6で得られたエシェリヒア・コリMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株に形質転換し、実施例2と同様の方法に従って、fruR遺伝子が破壊されたMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株を取得した。本株をMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株と命名した。
[実施例8]
<エシェリヒア・コリO157由来スクロース加水分解酵素(インベルターゼ)遺伝子発現ベクターおよび該発現ベクター形質転換体の構築>
エシェリヒア・コリO157のインベルターゼのアミノ酸配列と遺伝子の塩基配列は既に報告されている。すなわち、インベルターゼをコードする遺伝子(cscA)はGenBank accession number AE005174に記載のエシェリヒア・コリO157株ゲノム配列の3274383〜3275816に記載されている。上記の遺伝子を発現させるために必要なプロモーターの塩基配列として、GenBank accession number X02662の塩基配列情報において、397−440に記されているエシェリヒア・コリ由来のグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(以下GAPDHと呼ぶことがある)のプロモーター配列を使用することができる。
GAPDHプロモーターを取得するためエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いてCGAGCTACATATGCAATGATTGACACGATTCCG(配列番号33)、及びTCTAGAGCTATTTGTTAGTGAATAAAAGG(配列番号34)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素NdeIで消化することで約110bpのGAPDHプロモーターにあたるDNAフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントとプラスミドpBR322(GenBank accession number J01749)を制限酵素NdeI及びPvuIIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpBRgapPを回収した。
インベルターゼ遺伝子を取得するために、エシェリヒア・コリO157のゲノムDNA(SIGMA−ALDRICH:IRMM449)をテンプレートに用いて、GATCTAGACGGAGAAAGTCTTATGACGCAATCTCGATTGCATG(配列番号35)、及びATGGTACCTTAACCCAGTTGCCAGAGTGC(配列番号36)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素XbaIで消化することで約1.4kbpのインベルターゼ遺伝子フラグメントを得た。得られたDNAフラグメントと先に作成したプラスミドpBRgapPを制限酵素XbaI及びPshAIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP−cscAを回収した。
このプラスミドpGAP-cscAを実施例7で作成したMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株コンピテントセルに形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃一晩培養することにより、MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株/pGAP−cscA株を得た。
また実施例6で作成したMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株コンピテントセルに形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃一晩培養することにより、MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株/pGAP−cscA株を得た
[実施例9]
<lox遺伝子の単離>
特開平10−248574に開示されているL−乳酸酸化酵素の塩基配列を基に、ATTCTAGACGGAGAAAGTCTTATGGAAAAAACATATCAAGCAGGTACAAATG(配列番号37)、CAGGTACCTTAAATAAAACGATTCTCACGCAATTTTA(配列番号38)に示すオリゴヌクレオチドプライマーを2種設計し、合成した。配列番号37のプライマーは5’末端側にXbaI認識部位とldhAのSD配列を有している。配列番号38のプライマーは5’末端にKpnI認識部位を有している。Enterococcus sp. ATCC9625(特開平10−248574中ではLactococcus lactis (subsp. Cremoris IFO3427と記述されている)より染色体DNAを単離し、これを鋳型としてPCRを行い、増幅されたDNA断片を単離した。増幅されたDNA断片を精製し、XbaIで消化した。実施例8で得られたpBRgapPを制限酵素XbaI及びPshAIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP−loxを回収した。
DNAシークエンサーにより、単離したlox遺伝子の塩基配列を決定した。
[実施例10]
<lldDの単離>
エシェリヒア・コリのゲノムDNAの全塩基配列は公知であり、エシェリヒア・コリのFMN依存型L−乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子(lldD)の塩基配列も報告されている。(Genbank accession number U00096、3777850〜3779040)。lldDをクローニングするため、ATTCTAGACGGAGAAAGTCTTATGATTATTTCCGCAGCCAGCGATTATCG(配列番号39)、GATGGTACCCTATGCCGCATTCCCTTTCGCCATG(配列番号40)に示すオリゴヌクレオチドプライマーを2種設計し、合成した。
エシェリヒア・コリK12株のゲノムDNAを通常の方法で単離し、得られたDNAを鋳型として、PCRを行った。増幅されたDNA断片を精製し、XbaIで消化した。実施例8で得られたpBRgapPを制限酵素XbaI及びPshAIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP−lldDを回収した。DNAシークエンサーにより、単離したlldDの塩基配列を決定した。
<変異lldDの作製>
変異lldDを作製するために上記で用いた配列番号39、配列番号40に示すオリゴヌクレオチドプライマーを用いてpGAP−lldDを鋳型としてGeneMorph(登録商標) II Random Mutagenesis Kit(Stratagene)のプロトコールに従いlldDの変異遺伝子をPCRを用いて作製した。増幅されたDNA断片を精製し、XbaIで消化した。実施例8で得られたpBRgapPを制限酵素XbaI及びPshAIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーを1ウエル2mlの容量の96穴ディープウエルプレートに300μLの培地(1%グルコース,1.2%ペプトン,2%酵母エキス、(pH7.5))を添加したものに植菌し、33度24時間攪拌培養した。培養終了後、集菌し、上清を除いた後、200μlの溶菌酵素液(0.285mg/mlLysozyme、1.5U/mlDNaseI、2mMMgCl2)を加えて35回ピペッティングにより混合した。35℃15分インキュベートした後、さらに35回ピペッティングにより混合、溶菌したことを目視で確認した後、10μlを取り、190μlの反応液(20mg/ml phenazine methosulfate、 3mg/ml 3−[4,5−dimethylthiazol−2−yl]−2,5−diphenyltetrazolium bromide 0.5MKPB(pH7.0))に添加した。次に40μlの100mM L−乳酸ナトリウム(pH7.0)添加し、570nmの吸光度の増加速度を観察した。
コントロールと比較して1.5倍以上の増加速度を示すコロニーからプラスミドを抽出し、DNAシークエンサーにより、単離した変異lldDの塩基配列を決定した。配列を配列番号41に示す。得られたプラスミドをpGAP−変異lldDとした。
<Lox,LldD同時強化プラスミドの構築>
pGAP−変異lldDを鋳型としてATCGTCGACCGGAGAAAGTCTTATGATTATTTCCGCAGCCAGCGATTATCG(配列番号42)、GATGTCGACCTATGCCGCATTCCCTTTCGCCATG(配列番号28)をプライマーにPCRによって得られたlldDフラグメントを制限酵素SalIで切断し、精製したフラグメントをpGAP−loxを制限酵素SalIで切断したフラグメントと混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体よりプラスミドpGAP−lox−変異lldDを得た。変異lldDの挿入方向はシークエンスにより確認した。
[実施例11]
<lctOの単離>
Lactococcus lactis IL1403のL−乳酸酸化酵素をコードする遺伝子の塩基配列は公開されている。(Genbank accession number AE006357、4813〜3662)この塩基配列情報を基に、L. lactis subsp. lactis ATCC 19435からL−乳酸酸化酵素遺伝子を単離するため、AATTCTAGACGGAGAAAGTCTTATGCATCTATCATCTACAGATGTAAACTTTA(配列番号43)、ACAGGTACCTTAGTCAATCAATGAGGTATGTTTGATTT(配列番号44)に示すオリゴヌクレオチドプライマーを2種設計し、合成した。配列番号43のプライマーは5’末端側にXbaI認識部位とldhのSD配列を有している。配列番号44のプライマーは5’末端にKpnI認識部位を有している。
L. lactis subsp. lactis ATCC 19435のゲノムDNAを単離し、これを鋳型として配列番号43、44に示すオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、通常の条件でPCRを行った。増幅されたDNA断片を精製し、XbaIで消化した。実施例8で得られたpBRgapPを制限酵素XbaI及びPshAIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃一晩培養し、得られた菌体からlctOを含むプラスミドを得て、pGAP−lctOと命名した。
DNAシークエンサーにより、単離したlctOの塩基配列を決定した。
[実施例12]
<乳酸生産用プラスミドの構築>
実施例8で得られたpGAP−cscAを制限酵素KpnI、SalIで切断し、精製したフラグメントを得た。ATGGTACCCGGAGAAAGTCTTATGGAAAAAACATATCAAGCAGGTACAAATG(配列番号45)、CAGTCGACTTAAATAAAACGATTCTCACGCAATTTTA(配列番号46)をプライマーとして実施例9と同様にPCRを行ったloxのフラグメント、ATGGTACCCGGAGAAAGTCTTATGATTATTTCCGCAGCCAGCGATTATCG(配列番号27)、GATGTCGACCTATGCCGCATTCCCTTTCGCCATG(配列番号28)をプライマーとして実施例10と同様にPCRを行ったlldDのフラグメント、及びAATGGTACCCGGAGAAAGTCTTATGCATCTATCATCTACAGATGTAAACTTTA(配列番号47)、ACAGTCGACTTAGTCAATCAATGAGGTATGTTTGATTT(配列番号48)をプライマーとして実施例11と同様にPCRを行ったlctOのフラグメントをそれぞれを制限酵素KpnI,SalIで切断し、それぞれのフラグメントに上記で得たpGAP−cscAのフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体よりpGAP−cscA−lox, pGAP−cscA−lldD,pGAP−cscA−lctOを得た。さらに大腸菌のゲノムDNAを鋳型としてATCGTCGACCGGAGAAAGTCTTATGATTATTTCCGCAGCCAGCGATTATCG(配列番号42)、GATGTCGACCTATGCCGCATTCCCTTTCGCCATG(配列番号28)をプライマーにPCRによって得られたlldDフラグメントを制限酵素SalIで切断し、精製したフラグメントをpGAP−cscA−loxを制限酵素SalIで切断したフラグメントと混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体よりプラスミド pGAP−cscA−lox−lldDを得た。 挿入方向はシークエンスを行って確認した。さらに大腸菌のゲノムDNAを鋳型としてATCGTCGACCGGAGAAAGTCTTATGATTATTTCCGCAGCCAGCGATTATCG(配列番号42)、GATGTCGACCTATGCCGCATTCCCTTTCGCCATG(配列番号28)をプライマーにPCRによって得られたlldDフラグメントを制限酵素SalIで切断し、精製したフラグメントをpGAP−cscA−lctOを制限酵素SalIで切断したフラグメントと混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体よりプラスミド pGAP−cscA−lctO−lldDを得た。これらプラスミドを、実施例7で得られたMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株に形質転換し、pGAP−cscA−lox/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株, pGAP−cscA−lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株,pGAP−cscA−lctO/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株、pGAP−cscA−lox−lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株、pGAP−cscA−lctO−lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株を得た。
[実施例13]
<LldD強化の効果>
プラスミドpBRgapP、及びpGAP−lldDを実施例6で作製したMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株に形質転換し、pBRgapP/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株及びpGAP−lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株を作製した。
前培養として500ml容バッフル付き三角フラスコに100mlの50μg/ml濃度のアンピシリンを含むLB培地(Difco cat.244620)をいれ、上記D−乳酸生産菌を別々に植菌し、一晩35℃、120rpmで攪拌培養を行った後、1L容培養槽(ABLE社製培養装置BMJ−01)に培地(12%グルコース、3%コーンスティープリカー:日本食品化工製 Lot(190718C)以下、同じ)500mLを入れたものに別々に0.5%植菌した。培養は大気圧下、通気量0.5vvm、攪拌速度200rpm、培養温度35℃、pH7.2で48時間行った。得られた培養液中の乳酸の測定はHPLCで定法に従って測定した。また得られた乳酸の光学純度についてはF−キット D−/L−乳酸(ジェイ・ケイ・インターナショナル 製品番号1112821)に従い、得られた上清中のL−乳酸量、及びD−乳酸量を測定し、次式に代入して求めた。
光学純度(%e.e.)
=100×(D乳酸濃度−L乳酸濃度)/(D乳酸濃度+L乳酸濃度)
結果を表1に示す。表1に示されるように、lldDを強化することにより、得られる乳酸の光学純度が向上することが判明した。
Figure 2010032697
<変異lldDによるLldD強化の効果>
実施例10で得られたpGAP−変異lldDを実施例6で作製したMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株に形質転換し、pGAP−変異lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株を作製した。前培養として500ml容バッフル付き三角フラスコに100mlの50μg/ml濃度のアンピシリンを含むLB培地(Difco cat.244620)をいれ、上記D−乳酸生産菌を別々に植菌し、一晩35℃、120rpmで攪拌培養を行った後、1L容培養槽(ABLE社製培養装置BMJ−01)に培地(12%グルコース、5%コーンスティープリカー)500mLを入れたものに別々に0.5%植菌した。培養は大気圧下、通気量0.5vvm、攪拌速度200rpm、培養温度35℃、pH7.5で30時間行った。得られた培養液中の乳酸の測定はHPLCで定法に従って測定した。また得られた乳酸の光学純度については、F−キット D−/L−乳酸(ジェイ・ケイ・インターナショナル 製品番号1112821)に従い、得られた上清中のL−乳酸量、及びD−乳酸量を測定し、次式に代入して求めた。
光学純度(%e.e.)
=100×(D乳酸濃度−L乳酸濃度)/(D乳酸濃度+L乳酸濃度)。
比較の為、上記で作製した変異導入前のpGAP−lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株を同様に培養した。
結果を表2に示す。表2に示されるように、変異体lldDを用いることによって、変異導入前のlldDと比較して、得られる乳酸の光学純度が向上することが判明した。
Figure 2010032697
<lldR破壊の効果>
実施例10で得られたpGAP−lldDを実施例6で得られたlldR破壊株、MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔlldR/GAPldhAゲノム挿入株に形質転換し、得られたコロニーを前培養として500ml容バッフル付き三角フラスコに100mlの50μg/ml濃度のアンピシリンを含むLB培地(Difco cat.244620)をいれ、上記D−乳酸生産菌を植菌した。一晩35℃、120rpmで攪拌培養を行った後、1L容培養槽(ABLE社製培養装置BMJ−01)に培地(12%グルコース、5%コーンスティープリカー)500mLを入れたものに別々に0.5%植菌した。培養は大気圧下、通気量0.5vvm、攪拌速度200rpm、培養温度35℃、pH7.5で30時間行った。得られた培養液中の乳酸濃度の測定はHPLCで定法に従って測定した。また得られた乳酸の光学純度についてはF−キット D−/L−乳酸(ジェイ・ケイ・インターナショナル 製品番号1112821)に従い、得られた上清中のL−乳酸量、及びD−乳酸量を測定し、次式に代入して求めた。
光学純度(%e.e.)
=100×(D乳酸濃度−L乳酸濃度)/(D乳酸濃度+L乳酸濃度)。
比較の為、lldRを破壊していないpGAP−lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株を同様に培養した。
結果を表3に示す。表3に示されるように、lldRの破壊は、lldR破壊前と比較して、得られる乳酸の光学純度が向上することが判明した。
Figure 2010032697
<Lox強化の効果>
実施例9で得られたpGAP−lox及び実施例10で得られたpGAP−lox−変異lldDを実施例6で得られたlldR破壊株、MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔlldR/GAPldhAゲノム挿入株に形質転換し、得られたコロニーを前培養として500ml容バッフル付き三角フラスコに100mlの50μg/ml濃度のアンピシリンを含むLB培地(Difco cat.244620)をいれ、上記D−乳酸生産菌を別々に植菌した。一晩35℃、120rpmで攪拌培養を行った後、1L容培養槽(ABLE社製培養装置BMJ−01)に培地(12%グルコース、5%コーンスティープリカー)500mLを入れたものに別々に0.5%植菌した。培養は大気圧下、通気量0.5vvm、攪拌速度200rpm、培養温度35℃、pH7.4で24時間行った。得られた培養液中の乳酸濃度の測定はHPLCで定法に従って測定した。また得られた乳酸の光学純度についてはF−キット D−/L−乳酸(ジェイ・ケイ・インターナショナル 製品番号1112821)に従い、得られた上清中のL−乳酸量、及びD−乳酸量を測定し、次式に代入して求めた。
光学純度(%e.e.)
=100×(D乳酸濃度−L乳酸濃度)/(D乳酸濃度+L乳酸濃度)。
比較の為、上記で得られた変異lldD強化株であるpGAP−変異lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔlldR/GAPldhAゲノム挿入株を同様に培養した。結果を表4に示す。表4に示されるように、Loxの強化は変異lldD遺伝子による強化以上に光学純度を向上させる効果があることが判明した。Loxと変異lldDの同時強化はさらに、得られる乳酸の光学純度を向上させる効果があることが判明した。
Figure 2010032697
<糖蜜からのD−乳酸の生産>
実施例12で得られたpGAP−cscA−lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株、pGAP−cscA−lox−lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株を前培養として、表5に示す前培養培地20mlを入れた100ml容バッフル付三角フラスコに、別々に植菌し、一晩35℃、120rpmで攪拌培養を行った。1L容培養槽(ABLE社製培養装置BMJ−01)に表6に示す培地500mLを入れたものに別々に0.5%植菌した。培養は大気圧下、通気量0.5vvm、攪拌速度350rpm、培養温度35℃、pH7.5で48時間行った。得られた培養液中の乳酸濃度の測定はHPLCで定法に従って測定した。また得られた乳酸の光学純度についてはF−キット D−/L−乳酸(ジェイ・ケイ・インターナショナル 製品番号1112821)に従い、得られた上清中のL−乳酸量、及びD−乳酸量を測定し、次式に代入して求めた。
光学純度(%e.e.)
=100×(D乳酸濃度−L乳酸濃度)/(D乳酸濃度+L乳酸濃度)。
Figure 2010032697
Figure 2010032697
比較として実施例8で得られたpGAP−cscAを実施例7で得られたMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株に組み換えたpGAP−cscA/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株についても同様の培養を行った。
結果を表7に示す。表7に示されるように、糖蜜を原料とした場合にも、LldD、Loxの強化により、得られる乳酸の光学純度が向上することが判明した。
Figure 2010032697
<LctO強化の効果>
実施例12で得られたpGAP−cscA−lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株,及びpGAP−cscA−lctO−lldD/MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔaspΔfruR/GAPldhAゲノム挿入株を前培養として、10gの炭酸カルシウム(純正化学 1級)を入れ、予め殺菌した100ml容バッフル付三角フラスコに、表8に示す培地20mlを入れたフラスコにそれぞれ植菌し、一晩35℃、120rpmで攪拌培養を行った。その後、10gの炭酸カルシウム(純正化学 1級)を入れ、予め殺菌した100ml容バッフル付三角フラスコに、表8に示す培地20mlを入れたフラスコに前培養液1mlを加え、35℃、100rpmで24時間攪拌培養を行った。
Figure 2010032697
培養終了時に、得られた培養液中の乳酸の測定はHPLCで定法に従って測定した。また得られた乳酸の光学純度についてはF−キット D−/L−乳酸(ジェイ・ケイ・インターナショナル 製品番号1112821)に従い、得られた上清中のL−乳酸量、及びD−乳酸量を測定し、次式に代入して求めた。
光学純度(%e.e.)
=100×(D乳酸濃度−L乳酸濃度)/(D乳酸濃度+L乳酸濃度)
結果を表9に示す。表9に示されるように、lctO強化により、得られる乳酸の光学純度が向上することが確認された。
Figure 2010032697
-- L−乳酸生産菌 --
[実施例14]
<ビフィドバクテリウム由来ldh2遺伝子発現ベクターおよび該発現ベクター形質転換体MG1655Δpfl/pGAP−ldh2株の構築>
ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium・longum)のNAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列と遺伝子の塩基配列は既に報告されている。すなわち、NAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(ldh2)はGenBank accession number M33585に記載のビフィドバクテリウムゲノム配列の555〜1517に記載されている。
上記の遺伝子を発現させるために必要なプロモーターの塩基配列として、GenBank accession number X02662の塩基配列情報において、397−440に記されているエシェリヒア・コリ由来のグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(以下GAPDHと呼ぶことがある)のプロモーター配列を使用することができる。
GAPDHプロモーターを取得するためエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いてCGAGCTACATATGCAATGATTGACACGATTCCG(配列番号33)、及びTCTAGAGCTATTTGTTAGTGAATAAAAGG(配列番号34)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素NdeIで消化することで約110bpのGAPDHプロモーターにあたるDNAフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントとプラスミドpBR322(GenBank accession number J01749)を制限酵素NdeI及びPvuIIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpBRgapPを回収した。
NAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を取得するために、ビフィドバクテリウム・ロンガム(ATCC 15707)をテンプレートに用いて、AATCTAGACGGAGAAAGTCTTATGGCGGAAACTACCGTTAAGC(配列番号49)、及びCTGTCTAGATCAGAAGCCGAACTGGGCG(配列番号50)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素XbaIで消化することで約1.0kbpのL−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子フラグメントを得た。得られたDNAフラグメントと先に作成したプラスミドpBRgapPを制限酵素XbaIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP−ldh2を回収した。
このプラスミドpGAP−ldh2を実施例3で作成したpTHΔpflを用い、実施例2と同様な手法でpfl遺伝子を欠失させたMG1655株(MG1655Δpfl株と呼ぶ)のコンピテントセルに形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃一晩培養することにより、MG1655Δpfl/pGAP−ldh2株を得た。
[実施例15]
<MG1655Δpfl/pGAP−ldh2株によるL−乳酸生産>
実施例13と同様に、MG1655Δpfl/pGAP−ldh2株のグルコースからのL−乳酸生産を調べた。
下記の表10に示す培地475g入れたものに、実施例13と同様の方法で前培養したフラスコ内容物25mlを植菌した。
Figure 2010032697
培養は大気圧下、通気量0.25L/min、攪拌速度200rpm、培養温度35℃、pH7.5(24% NaOHで調整)で18時間行った。
18時間培養後の培養液中のL−乳酸濃度は、97.02g/Lだった。
この結果より、ビフィドバクテリウム由来のNAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼを用いて、グルコースからL−乳酸を生産できることを確認した。
[実施例16]
<MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株/pGAP-ldh2株の構築>
実施例14で作成したpGAP−ldh2プラスミドを実施例6で構築したD−乳酸生産株に導入した形質転換体を作成した。具体的には以下のように行った。
プラスミドpGAP−ldh2を実施例6で作成したMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株のコンピテントセルに形質転換した。アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃一晩培養することにより、MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株/pGAP−ldh2株を得た。
[実施例17]
<MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株/pGAP−ldh2株によるL−乳酸生産>
実施例13と同様に、MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株/pGAP−ldh2株のグルコースからのL−乳酸生産を調べた。
培養は大気圧下、通気量0.25L/min、攪拌速度200rpm、培養温度35℃、pH7.5(24% NaOHで調整)で18時間行った。
18時間培養後の培養液中のL−乳酸濃度は、116.84g/Lだった。
この結果より、D−乳酸生産大腸菌株に、プラスミドpGAP−ldh2を組み込むことにより、グルコースを原料としてL−乳酸を生産できることを確認した。L−乳酸が生産されたことは、F−キット D−/L−乳酸(ジェイ・ケイ・インターナショナル 製品番号1112821)に従い、L−乳酸量、及びD−乳酸量を測定することで確認した。
[実施例18]
<MG1655ΔpflΔmdhΔaspΔlldDΔldhA/GAPldh2ゲノム挿入株の構築>
実施例15で用いたD−乳酸生産用大腸菌株(MG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株)のldhA遺伝子をldh2遺伝子に置き換え、更にL−乳酸の分解を触媒する酵素の遺伝子lldDを破壊して、L−乳酸生産用大腸菌株を構築した。具体的には、以下のようにして行った。
(ldhA遺伝子破壊株の作成)
MG1655ゲノムDNAのldhA遺伝子近傍領域の遺伝子情報に基づいて、AAGGTACCACCAGAGCGTTCTCAAGC(配列番号21)、GCTCTAGATTCTCCAGTGATGTTGAATCAC(配列番号22)、GCTCTAGAGCATTCCTGACAGCAGAAGC(配列番号51)及びAACTGCAGTCGGCGTGTAGTAGTGAACC(配列番号52)のオリゴヌクレオチドプライマーを4種合成した。これらのプライマーを用い、実施例1と同様の手法で遺伝子破壊用プラスミドpTHΔldhAを構築した。更に、pTHΔldhAをMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株コンピテントセルに形質転換し、実施例2と同様な手法を用いてldhA欠失株を選択した。得られた株をMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入ΔldhA株と命名した。
(dld遺伝子復帰株の作成)
大腸菌MG1655ゲノムDNAのdld遺伝子近傍領域の遺伝子情報に基づいて、CAACACCAAGCTTTCGCG(配列番号1)、TGTTCTAGAAAGTTCTTTGAC(配列番号4)のオリゴヌクレオチドプライマーを2種合成した。これらのプライマーを用い、大腸菌MG1655のゲノムDNAをテンプレートにしてPCRを実施し、得られたDNA断片を制限酵素HindIII、XbaIで切断した。さらにプラスミドpTH18cs1を制限酵素HindIII、XbaIで切断し、上記dld断片と混合した後、リガーゼで結合し、プラスミドpTHDLDを構築した。更に、pTHDLDをMG1655ΔpflΔdldΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入株コンピテントセルに形質転換し、実施例2と同様な手法を用いてdld復帰株を選択した。得られた株をMG1655ΔpflΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入ΔldhA株と命名した。
(lldD遺伝子破壊株の作成)
MG1655株ゲノムDNAのlldD遺伝子近傍領域の遺伝子情報に基づいて、GGAAGCTTCAAATTGGCGTCTCTGATCT(配列番号53)、AAACCCGGGCCATCCATATAGTGGAACAGGAACGG(配列番号54)、GGGCTCGAGTGGCGATGACGCTGACTGG(配列番号55)及びCGTCTAGAACGGGTAAATCTGGTGGTGACCGTCACCCG(配列番号56)のオリゴヌクレオチドプライマーを4種合成した。これらのプライマーを用い、実施例1と同様の手法で遺伝子破壊用プラスミドpTHΔlldDを構築した。更に、pTHΔlldDをMG1655ΔpflΔmdhΔasp/GAPldhAゲノム挿入ΔldhA株コンピテントセルに形質転換し、実施例2と同様な手法を用いてlldD欠失株を選択した。得られた株をMG1655ΔpflΔmdhΔaspΔlldD/GAPldhAゲノム挿入ΔldhA株と命名した。
(ldh2遺伝子ゲノム挿入株の作成)
ビフィドバクテリウム・ロンガムのNAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列と遺伝子の塩基配列は既に報告されている。すなわち、NAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(ldh2)はGenBank accession number M33585に記載のビフィドバクテリウムゲノム配列の555〜1517に記載されている。
L−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(ldh2)を取得する為にビフィドバクテリウム ロンガム(ATCC15707)のゲノムDNAをテンプレートに用いてAAGAATTCCGGAGAAAGTCTTATGGCGGAAACTACCGTTAAGC(配列番号57)、CTGTCTAGATCAGAAGCCGAACTGGGCG(配列番号50)のオリゴヌクレオチドプライマーを2種合成した。これらのプライマーを用いてPCRを実施し、得られたDNA断片を制限酵素EcoRI、及びXbaIで切断した。
GAPDHプロモーターを取得するためエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いてGGTCTAGAGCAATGATTGACACGATTCCG(配列番号58)、CGGAATTCCGCTATTTGTTAGTGAATAAAAG(配列番号59)のオリゴヌクレオチドプライマーを2種合成した。得られたDNA断片を制限酵素EcoRI、及びXbaIで切断した。
実施例15で得られたpTHΔldhAをXbaIで切断したプラスミド、上記で得られたビフィドバクテリウム・ロンガム由来ldh2のEcoRI−XbaI断片、及び大腸菌由来GAPDHプロモーターのEcoRI−XbaI断片を混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpTHΔldhA::GAPldh2を回収した。得られたプラスミドをMG1655ΔpflΔmdhΔaspΔlldD/GAPldhAゲノム挿入ΔldhA株に形質転換し、実施例2と同様の方法を用いてldh2ゲノム挿入株をldh2をPCRで増幅することにより選択した。
得られた株をMG1655ΔpflΔmdhΔaspΔlldDΔldhA/GAPldh2ゲノム挿入株と命名した。
[実施例19]
<MG1655ΔpflΔmdhΔaspΔlldDΔldhA/GAPldh2ゲノム挿入/pGAP−cscA株の構築>
実施例16で構築したL−乳酸生産用大腸菌株にスクロース加水分解酵素(インベルターゼ)遺伝子発現ベクターを導入し、スクロースからL−乳酸を生産する大腸菌株を構築した。具体的には以下のようにして行った。
実施例8で構築したプラスミドpGAP−cscAを実施例16で作成したMG1655ΔpflΔmdhΔaspΔlldDΔldhA/GAPldh2ゲノム挿入株コンピテントセルに形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃一晩培養することにより、MG1655ΔpflΔmdhΔaspΔlldDΔldhA/GAPldh2ゲノム挿入/pGAP−cscA株を得た。
[実施例20]
<大腸菌由来FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼ発現大腸菌の構築>
MG1655株ゲノムDNAのdld遺伝子近傍領域の遺伝子情報に基づいて、CGGGTACCTTCGCCACCACAAGGAGTGGA(配列番号60)、GGTCTAGAGTCGACTTACTCCACTTCCTGCCAGTT(配列番号61)のオリゴヌクレオチドプライマーを2種合成した。これらのプライマーを用いてPCRを実施し、得られたDNA断片を制限酵素KpnI、及びSalIで切断した。このフラグメントと実施例8で作製したpGAP−cscAをKpnI、SalIで切断したフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP−cscA−dld(EC)を回収した。
[実施例21]
<コリネバクテリウム・グルタミカム由来FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼ発現大腸菌の構築>
コリネバクテリウム・グルタミカム由来FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列と遺伝子の塩基配列はGenBank accession number BX927150に記載のコリネバクテリウム・グルタミカムゲノム配列の261009〜259294に記載されている。
FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(dld)を取得する為にコリネバクテリウム・グルタミカム(NBRC12168)のゲノムDNAをテンプレートに用いてGCGGTACCCGGAGAAAGTCTTATGACGCAACCAGGACAG(配列番号62)、TGGGTACCTTAGGCCCAGTCCTTGTGCGGCGACGTGC(配列番号63)のオリゴヌクレオチドプライマーを2種合成した。コリネバクテリウム・グルタミカム(NBRC12168)はNITE Biological Resource Centerより入手できる。これらのプライマーを用いてPCRを実施し、得られたDNA断片を制限酵素KpnIで切断した。このフラグメントと実施例8で作製したpGAP−cscAをKpnIで切断したフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP−cscA−dld(CG)を回収した。
[実施例22]
<ザイモモナス・モビルス由来FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼ発現大腸菌の構築>
ザイモモナス・モビルス由来FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列と遺伝子の塩基配列はGenBank accession number AE008692に記載のザイモモナス・モビルスゲノム配列の256658〜258382に記載されている。
FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(dld)を取得する為にザイモモナス・モビルス(ATCC 31821)のゲノムDNAをテンプレートに用いてGCGGTACCCGGAGAAAGTCTTATGGTGCAGCTTCCTTC(配列番号64)、GTGGTACCCTATCTCCAATAAGCGGCCTTGCTGGTATG(配列番号65)のオリゴヌクレオチドプライマーを2種合成し、PCRを実施した。得られたDNA断片を制限酵素KpnIで切断した。このフラグメントと実施例8で作製したpGAP−cscAをKpnIで切断したフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP−cscA−dld(ZM)を回収した。
[実施例23]
<キサントモナス・キャンペストリス由来FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼ発現大腸菌の構築>
キサントモナス・キャンペストリス由来FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列と遺伝子の塩基配列はGenBank accession number AE012169に記載のキサントモナス・キャンペストリスゲノム配列の10284〜8890に記載されている。
FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(dld)を取得する為にキサントモナス・キャンペストリス(ATCC 33913)のゲノムDNAをテンプレートに用いてAACCCGGGCGGAGAAAGTCTTATGACTGATGGACTTCCCACCGC(配列番号66)、ATCCCGGGTCACTCTGCGGGCGATGTGGGCAGCACCTTGCCCGGATTC(配列番号67)のオリゴヌクレオチドプライマーを2種合成し、PCRを実施した。得られたDNA断片を制限酵素SmaIで切断した。このフラグメントと実施例8で作製したpGAP−cscAをKpnIで切断し、DNA Blunting Kit(TAKARA Cat.6025)を用いて制限酵素切断個所を平滑化したフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP−cscA−dld(XC)を回収した。
[実施例24]
<キサントモナス・オリゼ由来FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼ発現大腸菌の構築>
キサントモナス・オリゼ由来FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列と遺伝子の塩基配列はGenBank accession number AE013598に記載のキサントモナス・オリゼゲノム配列の4098235〜4099662に記載されている。
FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(dld)を取得する為にキサントモナス・オリゼ(JCM 20241)のゲノムDNAをテンプレートに用いてTTGGTACCGGAGAAAGTCTTATGACCGATGTACTTCCCACCGCAC(配列番号68)、TTGGTACCTAGGCGGGCGGCAACACCTTGCCAGGATTCAAGATCCCA(配列番号69)のオリゴヌクレオチドプライマーを2種合成し、PCRを実施した。得られたDNA断片を制限酵素KpnIで切断した。このフラグメントと実施例8で作製したpGAP−cscAをKpnIで切断したフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP−cscA−dld(XO)を回収した。
JCM 20241はJapan Collection of Microorganismsより入手することができる。
[実施例25]
<D−lactate dehydrogenase, membrane binding domein保有/非保有FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼ発現大腸菌により生産されるL−乳酸の光学純度>
実施例18で構築したMG1655ΔpflΔmdhΔaspΔlldDΔfruRΔldhA/GAPldh2ゲノム挿入株に次の各プラスミドを形質転換し、由来の異なるFAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼ発現大腸菌を作成した。
(A):実施例8で得られたpGAP−cscA
(B):実施例20で得られたpGAP−cscA−dld(EC)
(C):実施例21で得られたpGAP−cscA−dld(CG)
(D):実施例22で得られたpGAP−cscA−dld(ZM)
(E):実施例23で得られたpGAP−cscA−dld(XC)
(F):実施例24で得られたpGAP−cscA−dld(XO)
前培養として、表11に示す前培養培地20mlを入れた100ml容バッフル付三角フラスコに、各FAD依存型D−乳酸デヒドロゲナーゼ発現株を植菌し、一晩35℃、120rpmで攪拌培養を行った。その後、10gの炭酸カルシウム(純正化学 1級)を入れ、予め殺菌した100ml容バッフル付三角フラスコに、表12に示す培地20mlを入れたフラスコに前培養液1mlを加え、35℃、100rpmで24時間攪拌培養を行った。
Figure 2010032697
Figure 2010032697
培養終了後、遠心分離により上清を得た。光学純度は、F−キット D−/L−乳酸(ジェイ・ケイ・インターナショナル 製品番号1112821)に従い、得られた上清中のL−乳酸量、及びD−乳酸量を測定し、次式に代入して求めた。
光学純度(%e.e.)
=100×(L乳酸濃度−D乳酸濃度)/(L乳酸濃度+D乳酸濃度)。
結果を表13に示す。表13に示されるように、Lact-deh-membドメインを持つ、大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミカム、ザイモモナス・モビルス由来のdldを発現する大腸菌が特に高い光学純度を短時間に達成することが判明した。
Figure 2010032697
2008年9月16日に出願の日本国出願番号第2008−237177号、2009年2月13日に出願の日本国出願番号第2009−32042号及び2009年2月13日に出願の日本国出願番号第2009−32043号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (20)

  1. D−乳酸及びL−乳酸のいずれか一方を分解していずれか他方を生産するように、1種類以上のNAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ及び1種類以上の非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼの各酵素活性が共に強化されている乳酸生産大腸菌。
  2. 前記NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼの活性強化が、ピルビン酸からD−乳酸及びL−乳酸のいずれか一方を生成するものであり、且つ、前記非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼの活性強化が、前記D−乳酸及びL−乳酸のいずれか他方を基質として分解するものである請求項1に記載の乳酸生産大腸菌。
  3. 前記NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の活性強化が、LdhAの活性強化であり、前記D−乳酸を生産し得る請求項2に記載の乳酸生産大腸菌。
  4. 前記非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ酵素の活性強化が、LldDの活性強化、L−乳酸オキシダーゼの活性強化、LldRの不活化若しくは低減化、又はこれらの一つ以上の組み合わせであり、前記D−乳酸を生産し得る請求項3に記載の乳酸生産大腸菌。
  5. 前記L−乳酸オキシダーゼがLoxおよびLctOの少なくとも一方である請求項4に記載の乳酸生産大腸菌。
  6. 前記非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ酵素の活性強化が、LldDをコードする遺伝子のORF中の33位にサイレント変異を有する変異体lldD遺伝子によるものである請求項4記載の乳酸生産大腸菌。
  7. 前記変異体LldDが、配列番号41の塩基配列で表されるものである請求項6記載の乳酸生産大腸菌。
  8. Dld活性及びPfl活性からなる群より選択された少なくとも一つが不活化または低減化している請求項3に記載の乳酸生産大腸菌。
  9. 前記NAD依存型乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の活性強化が、NAD依存型L−乳酸デヒドロゲナーゼの活性強化であり、前記L−乳酸を生産し得る請求項2に記載の乳酸生産大腸菌。
  10. 前記非NAD依存型乳酸オキシドレダクターゼ酵素の活性強化が、Dldの活性強化であり、前記L−乳酸を生産し得る請求項9記載の乳酸生産大腸菌。
  11. 前記L−乳酸デヒドロゲナーゼが、ビフィドバクテリウム属菌に由来するものである請求項9に記載の乳酸生産大腸菌。
  12. 前記DldがLact deh membドメインを有する請求項10に記載の乳酸生産大腸菌。
  13. 前記Dldが大腸菌、ザイモモナス及びコリネバクテリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する請求項10に記載の乳酸生産大腸菌。
  14. LdhA活性、LldD活性及びPfl活性の少なくとも一つが不活化または低減化されている請求項9に記載の乳酸生産大腸菌。
  15. Mdh及びAspAの活性からなる群より選択された少なくとも一つが不活化または低減化されている請求項1記載の乳酸生産大腸菌。
  16. スクロース非PTS遺伝子群及びFruKからなる群より選択された少なくとも一つが強化されている請求項1記載の乳酸生産大腸菌。
  17. FruR活性が不活化または低減化されている請求項1記載の乳酸生産大腸菌。
  18. 請求項1記載の乳酸生産大腸菌を用いて乳酸を生産する乳酸生産方法。
  19. 請求項3記載の乳酸生産大腸菌を用いてD−乳酸を生産するD−乳酸生産方法。
  20. 請求項9の乳酸生産大腸菌を用いてL−乳酸を生産するL−乳酸生産方法。
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