以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者は前記課題に対し鋭意検討の結果、透明支持体上に防眩層及び少なくとも1層の低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルムの製造方法において、
前記防眩層は防眩層形成塗布組成物を溶液状態で透明支持体上に塗布し、塗布した状態の防眩層表面形状は平滑であり、乾燥、加熱、光照射、マイクロ波照射、または電子線照射の少なくとも1つの手段によって平滑の表面形状が防眩性を示す凹凸形状へ変化する機能を有し、
前記防眩層表面形状が平滑な状態で、該平滑な表面上に少なくとも1層の低屈折率層の塗布を行い、前記低屈折率層の塗布後に、
前記手段によって、防眩層表面形状を凹凸形状へ変化させることを特徴とする防眩性反射防止フィルムの製造方法によって、輝点欠陥がなく、耐擦傷性に優れ、低反射率で写り込みやぎらつきが少なく、鮮明性等の視認性に優れた防眩性反射防止フィルムが得られることを見出したものである。
防眩性を生じる凹凸のサイズは、一般的に最表面の算術平均粗さ(Ra)では40nm〜20μm程度であるが、これに対し反射防止層の厚みは50〜200nmであり凹凸のサイズに比較して薄膜である。従来、防眩性を有する基材の凹凸上に反射防止層を液状体で塗布すると、塗布液がレベリングを起こして微細な凹凸を追随しないことにより、反射防止層の膜厚が不均一性となり、輝点欠陥や、傷の発生、ぎらつき等が発生することが多かった。
本発明は、前記防眩層表面形状が平滑な状態で、平滑な表面上に少なくとも1層の低屈折率層の塗布を行い、前記低屈折率層の塗布後に、防眩層表面を乾燥、加熱、光照射、マイクロ波照射、または電子線照射の少なくとも1つの手段によって凹凸形状へ変化させることが特徴である為、極めて均一な低屈折率層の薄膜形成が可能である。従って低屈折率層の不均一性に由来する輝点欠陥、耐擦傷性、写り込みやぎらつき等の欠陥が少なく、低反射で鮮明な画像が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
〔防眩層〕
本発明の防眩性反射防止フィルムには、透明支持体と、低屈折率層、もしくは高屈折率層や低屈折率層等の反射防止層との間に防眩性を有するハードコート層、本発明でいう防眩層を設ける。
(防眩性)
防眩性とは、表面に反射した像の輪郭をぼかすことによって反射像の視認性を低下させて、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイといった画像表示装置等の使用時に反射像の写り込みが気にならないようにするものである。表面に適切な凹凸を設けることによって、このような性質を持たせることができる。
このような凹凸を形成する方法としては、透明支持体への加工、防眩層の形成、反射防止層を形成した後での反射防止フィルムへの加工等を選択できるが、反射防止フィルムへの直接的な加工は、凹凸形状の凸構造部が反射防止層を突き破ったり、反射防止層を変形させて反射防止効果を損なうことがあるため、透明支持体への加工、または防眩層の形成が好ましく、防眩性の効果及び生産効率の観点から、防眩層の形成が特に好ましい。
本発明で言う凹凸形状としては、直円錐、斜円錐、角錐、斜角錐、楔型、凸多角体、半球状等から選ばれる構造、並びにそれらの部分形状を有する構造が挙げられる。なお、半球状は、必ずしもその表面形状は真球形状である必要はなく、楕円体形状や、より変形した凸曲面形状であってもよい。また、凹凸形状の稜線が線状に伸びた、プリズム形状、レンチキュラーレンズ形状、フレネルレンズ形状も挙げられる。その稜線から谷線にかけての斜面は平面状、曲面状、もしくは両者の複合的形状であってもよい。
本発明の防眩層は、防眩層形成塗布組成物を溶液状態で透明支持体上に塗布し、塗布した状態の防眩層表面形状は平滑であり、乾燥、加熱、光照射、マイクロ波照射、または電子線照射の少なくとも1つの手段によって平滑の表面形状が防眩性を示す凹凸形状へ変化する機能を有していることが特徴であるが、表面形状が凹凸形状へ変化しない程度の前記手段を行い、その後に低屈折率層の塗布を行うことも好ましい。
すなわち、上記防眩層形成塗布組成物を溶液状態で透明支持体上に塗布後、表面形状が凹凸形状へ変化しない程度に防眩層を固形化、ゲル化し、その後に低屈折率層の塗布を行うことが好ましい。
これは、防眩層形成塗布組成物を溶液状態で塗布した直後に低屈折率層のような反射防止層を塗布する、または同時に塗布する場合には、両者は溶液状態にある為、粘度や表面張力に差をつけて、各々の層の成分が混合しないで分離を維持させることが必要だからである。
従って、低屈折率層などの反射防止層を塗布する場合、平滑表面の防眩層成分と混合しないために、平滑表面の防眩層は凹凸化しない範囲で乾燥、加熱、光照射、マイクロ波照射、または電子線照射により固形化、ゲル化をすることが好ましい。
また、固形化、ゲル化の程度は、層間の密着性のためには、防眩層と反射防止層は界面が少し交じり合う程度であることが好ましい。
具体的には乾燥する場合は、40℃〜70℃の範囲で、また紫外線照射の場合は5mJ/cm2〜100mJ/cm2の範囲で、所望の硬化状態になるように適宜時間を調整して行うことが好ましい。乾燥時間、紫外線照射時間としては1秒〜10分の範囲であることが好ましく、30秒〜7分であることがより好ましく、1分〜5分であることが更に好ましい。
低屈折率層を塗布する前の防眩層表面が平滑な状態とは、該防眩層表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さ(Ra)が100nm以下であることをいう。本発明の効果を得る上では100nm以下が好ましく、70nm以下であることがより好ましく、60nm以下であることが特に好ましい。
低屈折率層を設けた後の防眩性反射防止フィルムの最表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さ(Ra)は、40〜500nmであることが好ましく、80〜400nmであることがより好ましい。Raが40nm未満では防眩性の効果が弱く、500nmを超えると目視で粗すぎる印象を受ける。算術平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えば光学干渉式表面粗さ計RST/PLUS(WYKO社製)を用いて測定することができる。
(防眩層形成塗布組成物)
本発明の防眩層形成塗布組成物は、透明支持体上に塗布することにより得られる塗膜を乾燥、加熱、光照射、マイクロ波照射、または電子線照射の少なくとも1つの手段によって、表面に凹凸形状を有する樹脂層が形成される組成物である。この防眩層形成塗布組成物に適用できる技術として、特開2000−267086号公報記載の、例えばフッ素基を導入したエポキシ系樹脂とアクリル樹脂等の互いに相分離しやすい複数の樹脂を用いる技術、特開2004−69753号公報記載の、同種の骨格構造を有しかつ互いに反応する異なる官能基を有する第1の樹脂及び第2の樹脂と、架橋樹脂粒子とを混合して含み、塗布・乾燥後に第1の樹脂と第2の樹脂が相分離するような樹脂であって、第1の樹脂と第2の樹脂のSP値の差が1以上、第1の樹脂及び第2の樹脂における同種の骨格構造が、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、またはウレタン樹脂の骨格構造である樹脂を用いる技術、更には、特開2006−3647号公報記載の、第1樹脂及び第2樹脂は互いに反応する官能基を有する樹脂であり、前記第1樹脂の表面張力と前記第2樹脂の表面張力との差Δγが2dyne/cm以上である少なくとも2種の樹脂であり、乾燥、熱により硬化する技術等が開示されている。
本発明では防眩層形成塗布組成物が、第1樹脂及び第2樹脂を含有し、該樹脂は互いに反応する官能基を有する樹脂であり、この第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差△γが2dyne/cm以上である該第1樹脂が、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上を骨格として含み、かつ水酸基を有する樹脂(a−1)であり、かつ第2樹脂がメラミン樹脂(b−1)であり、更に前記第1樹脂がカルボキシル基含有アクリル樹脂(a−2)であって、かつ第2樹脂がエポキシ樹脂(b−2)である複数の樹脂を含有することが好ましい。
上記第1樹脂及び第2樹脂は、塗布組成物を塗布した後に、硬化する際のそれぞれの表面張力の差に基づいて第1樹脂及び第2樹脂が局在化して凹凸形状を形成するものと考えられる。
本発明においては、第1樹脂及び第2樹脂は、互いに反応する官能基を有する樹脂を使用する。第1樹脂が有する官能基と第2樹脂が有する官能基とが反応することによって、樹脂層が硬化する。このような官能基の組み合せとしては、例えば、水酸基とメラミン樹脂のイミノ基、メチロール基、アルコキシド基との組み合せ、水酸基と(ブロック)イソシアネート基との組み合せ、水酸基と酸(無水物)基との組み合せ、水酸基とシラノール基との組み合せ、エポキシ基とカルボキシル基との組み合せ、エポキシ基とアミノ基との組み合せ、エポキシ基と水酸基との組み合せ、エポキシ基とシラノール基との組み合せ、オキサゾリン基とカルボキシル基との組み合せ、活性メチレン基とアクリロイル基との組み合せ等の、異なる官能基の組み合せが挙げられる。なおここにいう「互いに反応する官能基」とは、第1樹脂及び第2樹脂のみを混合しただけでは反応は進行しないかまたは反応速度が遅いが、触媒等を併せて混合することにより互いに反応するものも含まれる。ここで使用できる触媒としては、例えば光開始剤、ラジカル開始剤、酸・塩基触媒、金属触媒などが挙げられる。
本発明で使用される第1樹脂及び第2樹脂は、第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差Δγが2dyne/cm以上である樹脂を使用する。このΔγは3dyne/cmであるのが好ましく、4dyne/cmであるのがより好ましい。Δγの上限は30dyne/cmであるのが好ましく、20dyne/cmであるのがより好ましい。Δγが2dyne/cmより小さい場合は、表面張力の差に基づいて形成される十分な凹凸形状が得られない。また、Δγが30dyne/cmを超える場合は、溶液状態での均一な状態が保てなくなり、安定性が低下する恐れがある。なお、均一な状態が保たれていない溶液(例えば分離した溶液など)を塗布する場合は、得られる樹脂層は二層構造となり、凹凸層を得ることができない。第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差Δγが上記範囲である樹脂を使用することによって、基材に塗布組成物を塗布した後に、表面張力の差に基づいて第1樹脂及び第2樹脂が局在化して、表面にランダムな凹凸を有する樹脂層が得られることとなる。
表面張力とは、異なる相の界面の面積を最小にしようとする力である。本発明で用いられる第1樹脂及び第2樹脂は、水などの液体と比べると粘度が非常に高い。そのため、リング法(吊環法)などによって樹脂の表面張力をそのまま測定するのは非常に困難である。そこで本発明においては、第1樹脂及び第2樹脂の表面張力は、特定の溶媒の表面張力を測定し、次いでその溶媒に樹脂固形分40質量%の濃度で樹脂を溶解させた溶液を調製して表面張力を測定し、得られた測定値から溶媒の表面張力値を減じた値を算出することにより、第1樹脂の表面張力及び第2樹脂の表面張力の差△γを測定している。このような方法において、表面張力の測定は、例えばビック・マリンクロット・インターナショナル社製、ダイノメーターなどを使用して測定することができる。
本発明において用いられる第1樹脂及び第2樹脂は、例えば乾燥工程や光照射等の手段においてそれぞれの表面張力が異なることに起因して局在化が生じると考えられる。そして硬化工程においては、それぞれの樹脂の表面張力が異なるため凝集力も異なることとなり、これにより表面に凹凸を有する樹脂層が形成されることとなると考えられる。本発明の防眩層形成用塗布組成物は、このように使用する樹脂の表面張力に基づいて凹凸が形成されるため、本発明の凹凸樹脂層の表面形状は、特別な規則性を有せず、ランダムな凹凸形状となる。このため、規則性を有する凹凸において生じ得る、光の干渉作用によるモアレ発生などの不都合が生じないという利点がある。
なお、本発明においては、上記のとおり、第1樹脂と第2樹脂とは互いに反応する。そのため、本発明により得られる防眩層においては、これらの第1樹脂及び第2樹脂は成分的に完全な分離状態にあるわけではなく、それぞれの樹脂構成成分の存在量が偏った不均一な状態にあることとなる。
本発明の防眩層形成塗布組成物の具体的な実施態様として、第1樹脂として、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上を骨格として含み、かつ水酸基を有する樹脂(a−1)を使用することができ、そして第2樹脂としてメラミン樹脂(b−1)を使用することができる。この場合、第1樹脂(a−1)が有する水酸基と、第2樹脂(b−1)が有するイミノ基、メチロール基及び/またはアルコキシド基と、が反応して架橋が形成され、硬化する。
第1樹脂として用いることができる樹脂(a−1)として、(メタ)アクリル樹脂、例えば(メタ)アクリルモノマーを重合または共重合した樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂など;オレフィン樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体など;ポリエーテル樹脂、これは分子鎖中にエーテル結合を含む樹脂であり、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど;ポリエステル樹脂、これは分子鎖中にエステル結合を含む樹脂であり、例えば不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリエチレンテレフタレートなど;ポリウレタン樹脂、これは分子鎖中にウレタン結合を含む樹脂である;などが挙げられる。さらにこれらの樹脂の共重合物も使用することができる。そして本発明においては、これらの樹脂であって、かつ水酸基を有する樹脂を使用する。第1樹脂(a−1)の水酸基価(OH価)は、好ましくは10〜400であることが好ましい。樹脂(a−1)のOH価が10未満の場合は硬化が不十分となり、成膜性(樹脂層形成能力)の低下、得られる樹脂層の耐薬品性の低下が生じる恐れがある。一方、OH価が400を超える場合は、架橋密度が高くなりすぎることによる、得られる樹脂層の可撓性の低下、機械的強度の低下が生じる恐れがある。
上記樹脂(a−1)のうち、(メタ)アクリル樹脂またはオレフィン樹脂であって水酸基を有する樹脂が、本発明において特に好ましく使用される。これらの樹脂は、第2樹脂としてメラミン樹脂(b−1)を用いる組み合せにおいて、より良好な凹凸表面を有する樹脂層を形成することができるからである。
この態様において第2樹脂として用いることができるメラミン樹脂(b−1)は、一般に種々の表面張力値を有する樹脂がある。本発明においては、上記樹脂(a−1)の表面張力との差が2以上となるメラミン樹脂(b−1)を使用する。そして、メラミン樹脂(b−1)として、上記第1樹脂(a−1)の表面張力より低い表面張力を有する樹脂を使用するのがより好ましい。メラミン樹脂(b−1)は、一般に市販されているものを用いることができ、例えば日本サイテックインダストリーズ株式会社、大日本インキ株式会社、三井東圧株式会社などから購入することができる。
本発明の防眩層形成用塗布組成物の他の具体的な実施態様として、第1樹脂として、カルボキシル基含有アクリル樹脂(a−2)を使用することができ、そして第2樹脂としてエポキシ樹脂(b−2)を使用することができる。この場合、第1樹脂(a−2)が有するカルボキシル基と、第2樹脂(b−2)が有するエポキシ基とが反応して架橋が形成され、硬化する。
第1樹脂として用いることができる樹脂(a−2)として、アクリル樹脂、例えば(メタ)アクリルモノマーを重合または共重合した樹脂、または(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂など、のアクリル樹脂であって、その骨格上にカルボキシル基を有する樹脂が挙げられる。第1樹脂(a−2)のこのカルボキシル基と、第2樹脂(b−2)が有するエポキシ基とが反応して架橋が形成され、硬化する。第1樹脂(a−2)の酸価は、20〜400であることが好ましく、50〜250であることがより好ましい。第1樹脂(a−2)の酸価が20未満の場合は、硬化が不十分となり、成膜性(樹脂層形成能力)の低下、得られる樹脂層の耐薬品性の低下が生じる恐れがある。一方、酸価が400を超える場合は、架橋密度が高くなりすぎることによる、得られる樹脂層の可撓性の低下、機械的強度の低下が生じる恐れがある。
この態様において第2樹脂として用いることができるエポキシ樹脂(b−2)は、一般的に使用される任意のエポキシ樹脂を使用することができる。使用できるエポキシ樹脂(b−2)として、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、エポキシ基含有ポリマーも、エポキシ樹脂(b−2)として使用することができる。本明細書において「エポキシ樹脂」とは、エポキシ基を有する樹脂をいい、その樹脂の骨格の構造は限定されない。
エポキシ樹脂(b−2)として使用することができるエポキシ基含有ポリマーとして、例えば、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー30〜70質量%、水酸基を有するラジカル重合性モノマー10〜50質量%、及びその他のラジカル重合性モノマーを残量含むモノマー組成物を共重合して得ることができる共重合体が挙げられる。
エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、3,4エポキシシクロヘキサニルメチルメタクリレート等が挙げられる。水酸基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等、アクリル酸4ヒドロキシブチル、プラクセルFM−1(ダイセル社製)等が挙げられる。その他のラジカル重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n、i、及びt−ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等)、メタクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n、i、及びt−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等)、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのモノマーを、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジメチル2,2′−アゾビスイソブチレート等のラジカル重合開始剤の存在下で重合させることによって、エポキシ基含有ポリマーを得ることができる。
これらのエポキシ樹脂(b−2)のうち、エポキシ樹脂(b−2)の表面張力と上記第1樹脂(a−2)の表面張力との差が2以上あるものを使用する。そして上記第1樹脂(a−2)の表面張力より低い表面張力を有するものを使用するのが好ましい。
また第2樹脂として使用するエポキシ樹脂(b−2)は、エポキシ当量100〜5000のエポキシ樹脂を使用するのが好ましく、エポキシ当量160〜2000のエポキシ樹脂を使用するのがより好ましい。
上記のいずれの態様においても、第1樹脂の重量平均分子量は、500〜500000、特に1000〜100000であることが好ましい。第1樹脂の重量平均分子量が500000を超えるとポリマー粘度が高くなり、作業性などが悪くなる恐れがある。一方、重量平均分子量が500未満の場合には、局在化が不十分となる恐れがある。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により求めることができる。
また、第2樹脂の重量平均分子量は、200〜500000、特に400〜100000であることが好ましい。第2樹脂の重量平均分子量が500000を超えるとポリマー粘度が高くなり、作業性などが悪くなる恐れがある。一方、重量平均分子量が200未満の場合には、局在化が不十分となる恐れがある。この重量平均分子量もゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により求めることができる。
本発明の防眩層形成塗布組成物は、第1樹脂と第2樹脂とを溶媒中で混合することによって調製される。用いられる溶媒は特に限定されるものではなく、塗布の下地となる部分の材質や、バインダー樹脂及び塗布方法などを考慮して適宜選択される。溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒;n−ブタン、n−へキサン、シクロヘキサン等の脂肪族系溶媒;i−プロパノール、i−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒が挙げられる。これらの溶媒のうちエステル系、エーテル系、アルコール系溶媒が好ましく、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。また、本発明の防眩層形成塗布組成物は、水系の塗布組成物であってもよい。従って水系の溶媒が用いられてもよい。
第1樹脂と第2樹脂は、樹脂の固形分質量比(第1樹脂/第2樹脂)で表して10/90〜90/10の範囲で用いられるのが好ましく、70/30〜40/60の範囲で用いられるのがより好ましい。このような比率で用いることによって、良好な凹凸表面を有し、そして物理的強度などに優れた樹脂層を得ることができる。
また、本発明の防眩層形成用塗布組成物中には、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤としてはポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのワックス類のようなレオロジーコントロール剤、アセチレンジオール類のような表面調整剤(レベリング剤)、カップリング剤、可塑剤、分散剤等が挙げられる。
具体的なレベリング剤としては以下のシリコーン系界面活性剤或いはポリオキシエーテル化合物を含有させることが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーンが好ましく、具体的には、BYK−UV3500,BYK−UV3510、BYK−333、BYK−331、BYK−337(ビックケミ−ジャパン社製)、TSF4440、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、KF−351、KF−351A、KF−352、KF−353、KF−354、KF−355、KF−615、KF−618、KF−945、KF−6004(ポリエーテル変性シリコーンオイル;信越化学工業社製)等が挙げられるがこれらに限定されない。
また、ポリオキシエーテル化合物の中では、好ましくはポリオキシエチレンオレイルエーテル化合物であり、一般的に一般式(α)で表される化合物である。
一般式(α) C18H35−O(C2H4O)nH
式中、nは2〜40を表す。
オレイル部分に対するエチレンオキシドの平均付加個数(n)は、2〜40であり、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜9、更に好ましくは2〜8である。また一般式(α)の化合物はエチレンオキシドとオレイルアルコールとを反応させて得られる。
具体的商品としては、エマルゲン404(ポリオキシエチレン(4)オレイルエーテル)、エマルゲン408(ポリオキシエチレン(8)オレイルエーテル)、エマルゲン409P(ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル)、エマルゲン420(ポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル)、エマルゲン430(ポリオキシエチレン(30)オレイルエーテル)以上花王社製、日本油脂製NOFABLEEAO−9905(ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル)等が挙げられる。
尚、( )がnの数字を表す。非イオン性のポリオキシエーテル化合物は単独或いは2種以上を併用しても良い。
これらは塗布性を高め、これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
その他、フッ素樹脂を含有しても良い。フッ素樹脂としては、シロキサン(ポリシロキサンを含む)及び/またはオルガノシロキサン(オルガノポリシロキサンを含む)をグラフト化等により共重合させて得られるポリマーを好ましく用いることができる。具体的には、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。これら化合物は混合して用いても良い。
本発明の防眩層形成用塗布組成物中の第1樹脂と第2樹脂の屈折率は同じでも異なっていてもよく、好ましい屈折率差としては0.00〜0.50、更に好ましくは0.01〜0.30である。
本発明の防眩層形成塗布組成物は、必要に応じてさらに他の粒子成分を含んでもよい。このような粒子成分は、特開2000−241807号公報に記載される公知の方法で調製することができる。防眩層に使用できる無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アンチモン酸亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
また有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、またはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることができる。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
その他、フッ素含有アクリル樹脂粒子を用いても良い。フッ素含有アクリル樹脂粒子としては、例えばフッ素含有のアクリル酸エステル或いはメタクリル酸エステルのモノマーまたはポリマーから形成された粒子である。フッ素含有のアクリル酸エステル或いはメタクリル酸エステルの具体例としては、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル−α−フルオロアクリレートが挙げられる。また、フッ素含有アクリル樹脂粒子の中でも、2−(パーフルオロブチル)エチル−α−フルオロアクリレートからなる粒子、フッ素含有ポリメチルメタクリレート粒子、フッ素含有メタアクリル酸を架橋剤の存在下にビニル単量体と共重合させた粒子が好ましく、更に好ましくはフッ素含有ポリメチルメタクリレート粒子である。
フッ素含有(メタ)アクリル酸と共重合可能なビニル単量体としては、ビニル基を有するものであればよく、具体的にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル、及びスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類等が挙げられ、これらは単独でまたは混合して用いることができる。重合反応の際に用いられる架橋剤としては、特に限定されないが、2個以上の不飽和基を有するものを用いることが好ましく、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等の2官能性ジメタクリレートや、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
尚、フッ素含有ポリメチルメタクリレート粒子を製造するための重合反応は、ランダム共重合およびブロック共重合のいずれでもよい。具体的には、例えば特開2000−169658号公報に記載の方法なども挙げることができる。
市販品としては、根上工業製:MF−0043等の市販品が挙げられる。尚、これらのフッ素含有アクリル樹脂粒子は、単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのフッ素含有アクリル樹脂粒子の状態は、粉体或いはエマルジョン等、どのような状態で加えられても良い。
また、特開2004−83707号公報の段落0028〜0055に記載のフッ素含有架橋粒子を用いても良い。
また粒子の屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましく、より好ましくは1.45〜1.65である。尚、粒子の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定できる。
上記粒子の含有量は、上記樹脂100質量部に対して、1質量部〜30質量部が好ましい。
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.01〜5μmが好ましく0.1〜5.0μm、さらには、0.1〜4.0μmであることが特に好ましい。また、粒径の異なる2種以上の微粒子を含有することが好ましい。
但し、本発明の防眩層形成用塗布組成物は、このような粒子を使用することなく表面に凹凸形状を設けることができるものであり、本質的には粒子成分の使用は必要としない。また、このような粒子成分を使用する場合であっても、その使用量は従来のものと比べてかなり少ない量である。例えば、防眩層形成用塗布組成物の固形分質量に対して10質量%を超える量で粒子成分が含まれる場合は、凝集物の生成など粒子成分が含まれることに由来する不利益が生じる恐れがある。
また、本発明の防眩層形成塗布組成物は、共役系導電性ポリマー、イオン性化合物を含有しても良い。π共役系導電性ポリマーとは、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用することができる。例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリフェニレン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体が挙げられる。重合の容易さ、安定性点からは、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類が好ましい。
イオン性化合物としては、イミダゾリウム系、ピリジウム系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、脂肪族ホスホニウム系の陽イオンとBF4 −、PF6 −等の無機イオン系、CF3SO2 −、(CF3SO2)2N−、CF3CO2 −等のフッ素系の陰イオンとからなる化合物等が挙げられる。
上記した共役系導電性ポリマー、イオン性化合物導は防眩層形成用塗布組成物の固形分濃度として、0.01質量%以上、50質量%未満であることが、組成物中で安定に存在する事から好ましい。
また、上記した共役系導電性ポリマー、イオン性化合物導は後述する高屈折率層に添加しても良い。
本発明における、粒子成分を使用することなく防眩層が得られることの利点として、製造装置の洗浄性が向上すること、粒子成分の凝集が発生しないため光学特性が向上すること、などが挙げられる。
本発明の防眩層形成塗布組成物を用いて、防眩層を形成することができ、透明支持体に上記防眩層形成塗布組成物を塗布する塗布工程、得られた塗膜を乾燥させる乾燥工程、及び必要であれば、乾燥させた塗膜を硬化させる硬化工程、を包含する方法によって形成される。
防眩層形成用塗布組成物を基材に塗布する方法は、特に限定されるものではなく、使用する塗布組成物や塗布工程の状況に応じて適宜選択される。例えばスピンコーティング、ロールコーティング、スクリーン印刷、スプレーコーティング、グラビアコーティング、インクジェット法等の種々の塗布方法を採用することができる。
前記したように、上記防眩層形成塗布組成物を溶液状態で透明支持体上に塗布後、表面形状が凹凸形状へ変化しない程度に防眩層を固形化、ゲル化し、その後に低屈折率層の塗布を行うことが好ましい。
こうして得られた防眩層及び低屈折率層の塗膜を乾燥、加熱、光照射、マイクロ波照射、または電子線照射の群より選ばれる手段を用いることによって、第1樹脂及び第2樹脂が局在化するように硬化する。
乾燥は、減圧乾燥によって行われるのが好ましい。減圧乾燥することにより、塗布組成物中に含まれる溶媒を除去し、そして第1樹脂及び第2樹脂を良好に局在化させることができると考えられる。そして第1樹脂及び第2樹脂を良好に局在化させるためには、加熱を伴わずに減圧乾燥を行うことも好ましい。この乾燥段階で熱を加えすぎると、第1樹脂及び第2樹脂がレベリングし、局在化が良好になされない場合がある。
乾燥工程により第1樹脂及び第2樹脂が局在化した塗膜を、更に硬化させることによって凹凸樹脂層が形成される。硬化方法としては、乾燥、加熱、光照射、マイクロ波照射、または電子線照射の群より選ばれる手段によって行われ、特に加熱または紫外線等の光照射を用いることが好ましい。
加熱硬化させる場合は、加熱温度は50〜300℃が好ましく、好ましくは60〜250℃、さらに好ましくは80〜150℃である。加熱時間は加熱温度により変化するが、3〜300分の範囲が適当である。或いは一度巻き取った後、50〜100℃程度の温度で1〜20日間程度エージング処理することもできる。
また光照射によって硬化させる場合は、照射光の露光量は10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、50mJ/cm2〜1J/cm2であるのがより好ましい。ここで照射される光の波長域としては特に限定されないが、紫外線領域の波長を有する光が好ましく用いられる。紫外線は、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用でき、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。また、光照射工程での塗膜の温度分布は均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、塗膜の面内及び層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
光照射による光ラジカル重合の場合は、空気または不活性気体中で行なうことができるが、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くするか、または重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。好ましくは酸素濃度が1体積%以下、更に好ましくは酸素濃度が0.5体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が0.3体積%以下である。
酸素濃度を1体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、より好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。窒素パージすることにより凹凸形状を制御することも可能であり、本発明に係る防眩層形成塗布組成物と共に用いることも好ましい。
また、光照射時の雰囲気温度を制御する方法か、もしくは膜面温度を所定の温度に制御する方法を用いることができる。具体的には、光照射時の膜面温度を60℃以上にすることが好ましく、80℃以上にすることがより好ましく、90℃以上にすることが更に好ましい。さらには、上記の酸素濃度を少なくする方法と膜面温度を高める方法を併用することもできる。
また、電子線も同様に使用できる。電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
更に、マイクロ波照射を行うこともでき、マイクロ波はマグネトロン、クライストロンなどの装置により発生させることができる。マイクロ波の周波数は0.9〜20GHzが好ましいが、通常は電波法やマイクロ波電子管の制約により2.45GHzの周波数のマイクロ波発生装置が一般的である。但し、他の電子機器(例えば、通信装置)などへの影響がなければ0.915GHzの周波数のマイクロ波を用いることもできる。
出力は乾燥する透明支持体の厚みや幅、搬送速度に応じて調整する。単位時間(分)当たりにマイクロ波を照射出来る面積は搬送速度(m/分)によって決まり、搬送速度×透明支持体の幅が単位時間(分)当たりにマイクロ波を照射出来る面積になる。40〜120μmの透明支持体の場合はこの面積1m2当たりのマイクロ波の照射量が0.1〜50kW・分、更に0.2〜20kW・分であることが好ましい。
更に防眩層には、活性エネルギー線硬化樹脂を含有させてもよい。もしくは別の層として積層することもできる。
活性エネルギー線硬化樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性エネルギー線硬化樹脂層が形成される。活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることができる。
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ化学工業(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
これら紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光重合開始剤も光増感剤として使用できる。また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光重合開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製);NKハードB−420、B−500(新中村化学工業(株)製)等を適宜選択して利用できる。
また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、イソボロニルアクリレート等を挙げることができる。
上記防眩層塗布液には溶媒が含まれていてもよく、必要に応じて適宜含有し、希釈されたものであってもよい。塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中でもから適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
活性エネルギー線硬化樹脂を含有させた防眩層は、前述のようにグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することができる。
紫外線硬化性樹脂を用いる場合の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。低屈折率層を塗布した後の照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、紫外線の照射量は、通常50mJ/cm2〜500mJ/cm2、好ましくは70mJ/cm2〜300mJ/cm2、特に好ましくは100mJ/cm2〜250mJ/cm2である。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、さらに好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。
〔低屈折率層〕
本発明の低屈折率層は、前記防眩層形成塗布組成物を溶液状態で透明支持体上に塗布し、該防眩層表面形状が平滑な状態で、前記平滑な表面上に少なくとも1層の低屈折率層の塗布を行い、前記低屈折率層の塗布後に、乾燥、加熱、光照射、マイクロ波照射、または電子線照射の少なくとも1つの手段によって、防眩層表面形状を凹凸形状へ変化させることが特徴である。更に、前記低屈折率層は紫外線照射で硬化する成分を含有することが好ましく、また、前記防眩層と低屈折率層の間に、導電性金属酸化物微粒子を含有する高屈折率層を設けることが好ましい。
本発明に係る低屈折率層の屈折率は、支持体である透明支持体の屈折率より低く、23℃、波長550nm測定で、1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmであることが好ましく、10nm〜0.3μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.2μmであることが最も好ましい。
本発明に用いられる低屈折率層形成用組成物については、外殻層を有し内部が多孔質または空洞の粒子を少なくとも1種類以上含むことが好ましい。特に該外殻層を有し内部が多孔質または空洞である粒子が、中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
なお、低屈折率層形成用組成物には、下記一般式(OSi−1)で表される有機珪素化合物若しくはその加水分解物、或いは、その重縮合物を併せて含有させても良い。
一般式(OSi−1):Si(OR)4
(式中、Rはアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。)
他に溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。
(中空シリカ系微粒子)
中空シリカ系微粒子は、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、または(II)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。なお、低屈折率層には(I)複合粒子または(II)空洞粒子のいずれかが含まれていればよく、また双方が含まれていてもよい。
なお、空洞粒子は内部に空洞を有する粒子であり、空洞は被覆層(粒子壁ともいう。)で覆われている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体または多孔質物質等の内容物で充填されている。このような中空微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される中空微粒子の平均粒子径は、形成される低屈折率層の平均膜厚の3/2〜1/10好ましくは2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの中空微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)、或いはこれらを含む混合溶媒が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することができないことがあり、後述する塗布液成分である重合度の低いケイ酸モノマー、オリゴマー等が容易に複合粒子の内部の空隙部分に進入して粒子の屈折率を増加させ、低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、前記ケイ酸モノマー、オリゴマーが内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持できないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgF等からなるものが挙げられる。このうち特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等との1種または2種以上を挙げることができる。このような多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表したときのモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても細孔容積が小さく、屈折率の低い粒子が得られない。また、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が大きくなり、さらに屈折率が低いものを得ることが難しいことがある。
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
なお、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることができる。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。また多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例表した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
このような中空微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。具体的に、複合粒子が、シリカ、シリカ以外の無機化合物とからなる場合、以下の第1〜第3工程から中空微粒子は製造される。
第1工程:多孔質粒子前駆体の調製
第1工程では、予め、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して多孔質粒子前駆体を調製する。
シリカ原料としては、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機塩基のケイ酸塩を用いる。アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)やケイ酸カリウムが用いられる。有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を挙げることができる。なお、アンモニウムのケイ酸塩または有機塩基のケイ酸塩には、ケイ酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物等を添加したアルカリ性溶液も含まれる。
また、シリカ以外の無機化合物の原料としては、アルカリ可溶の無機化合物が用いられる。具体的には、Al、B、Ti、Zr、Sn、Ce、P、Sb、Mo、Zn、W等から選ばれる元素のオキソ酸、該オキソ酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。より具体的には、アルミン酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、アンチモン酸カリウム、錫酸カリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、燐酸ナトリウムが適当である。
これらの水溶液の添加と同時に混合水溶液のpH値は変化するが、このpH値を所定の範囲に制御するような操作は特に必要ない。水溶液は、最終的に、無機酸化物の種類及びその混合割合によって定まるpH値となる。このときの水溶液の添加速度には特に制限はない。また、複合酸化物粒子の製造に際して、シード粒子の分散液を出発原料と使用することも可能である。当該シード粒子としては、特に制限はないが、SiO2、Al2O3、TiO2またはZrO2等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることができる。さらに前記の製造方法によって得られた多孔質粒子前駆体分散液をシード粒子分散液としてもよい。シード粒子分散液を使用する場合、シード粒子分散液のpHを10以上に調整した後、該シード粒子分散液中に前記化合物の水溶液を、上記したアルカリ水溶液中に攪拌しながら添加する。この場合も、必ずしも分散液のpH制御を行う必要はない。このようにしてシード粒子を用いると、調製する多孔質粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることができる。
上記したシリカ原料及び無機化合物原料はアルカリ側で高い溶解度を有する。しかしながら、この溶解度の大きいpH領域で両者を混合すると、ケイ酸イオン及びアルミン酸イオン等のオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出して微粒子に成長したり、または、シード粒子上に析出して粒子成長が起る。従って、微粒子の析出、成長に際して、従来法のようなpH制御は必ずしも行う必要がない。
第1工程におけるシリカとシリカ以外の無機化合物との複合割合は、シリカに対する無機化合物を酸化物(MOX)に換算し、MOX/SiO2のモル比が、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲内にあることが望ましい。この範囲内において、シリカの割合が少なくなる程、多孔質粒子の細孔容積が増大する。しかしながら、モル比が2.0を越えても、多孔質粒子の細孔の容積はほとんど増加しない。他方、モル比が0.05未満の場合は、細孔容積が小さくなる。空洞粒子を調製する場合、MOX/SiO2のモル比は、0.25〜2.0の範囲内にあることが望ましい。
第2工程:多孔質粒子からのシリカ以外の無機化合物の除去
第2工程では、前記第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、または、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
なお、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体は、珪素と無機化合物構成元素が酸素を介して結合した網目構造の粒子である。このように多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去することにより、一層多孔質で細孔容積の大きい多孔質粒子が得られる。また、多孔質粒子前駆体から無機酸化物(珪素と酸素以外の元素)を除去する量を多くすれば、空洞粒子を調製することができる。
また、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去するに先立って、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体分散液に、シリカのアルカリ金属塩を脱アルカリして得られる、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有するケイ酸液または加水分解性の有機珪素化合物を添加してシリカ保護膜を形成することが好ましい。シリカ保護膜の厚さは0.5〜15nmの厚さであればよい。なおシリカ保護膜を形成しても、この工程での保護膜は多孔質であり厚さが薄いので、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することは可能である。
このようなシリカ保護膜を形成することによって、粒子形状を保持したまま、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することができる。また、後述するシリカ被覆層を形成する際に、多孔質粒子の細孔が被覆層によって閉塞されてしまうことがなく、このため細孔容積を低下させることなく後述するシリカ被覆層を形成することができる。なお、除去する無機化合物の量が少ない場合は粒子が壊れることがないので必ずしも保護膜を形成する必要はない。
また空洞粒子を調製する場合は、このシリカ保護膜を形成しておくことが望ましい。空洞粒子を調製する際には、無機化合物を除去すると、シリカ保護膜と、該シリカ保護膜内の溶媒、未溶解の多孔質固形分とからなる空洞粒子の前駆体が得られ、該空洞粒子の前駆体に後述の被覆層を形成すると、形成された被覆層が、粒子壁となり空洞粒子が形成される。
上記シリカ保護膜形成のために添加するシリカ源の量は、粒子形状を保持できる範囲で少ないことが好ましい。シリカ源の量が多すぎると、シリカ保護膜が厚くなりすぎるので、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去することが困難となることがある。シリカ保護膜形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、一般式RnSi(OR′)4−n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、フッ素置換したテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を無機酸化物粒子の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
多孔質粒子前駆体の分散媒が、水単独、または有機溶媒に対する水の比率が高い場合には、ケイ酸液を用いてシリカ保護膜を形成することも可能である。ケイ酸液を用いる場合には、分散液中にケイ酸液を所定量添加し、同時にアルカリを加えてケイ酸液を多孔質粒子表面に沈着させる。なお、ケイ酸液と上記アルコキシシランを併用してシリカ保護膜を作製してもよい。
第3工程:シリカ被覆層の形成
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有する加水分解性の有機珪素化合物またはケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機珪素化合物またはケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
シリカ被覆層形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、前記したような一般式RnSi(OR′)4−n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いらる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の分散媒が水単独、または有機溶媒との混合溶媒であって、有機溶媒に対する水の比率が高い混合溶媒の場合には、ケイ酸液を用いて被覆層を形成してもよい。ケイ酸液とは、水ガラス等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をイオン交換処理して脱アルカリしたケイ酸の低重合物の水溶液である。
ケイ酸液は、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中に添加され、同時にアルカリを加えてケイ酸低重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)表面に沈着させる。なお、ケイ酸液を上記アルコキシシランと併用して被覆層形成用に使用してもよい。被覆層形成用に使用される有機珪素化合物またはケイ酸液の添加量は、コロイド粒子の表面を十分被覆できる程度であればよく、最終的に得られるシリカ被覆層の厚さが1〜20nmとなるように量で、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中で添加される。また前記シリカ保護膜を形成した場合はシリカ保護膜とシリカ被覆層の合計の厚さが1〜20nmの範囲となるような量で、有機珪素化合物またはケイ酸液は添加される。
次いで、被覆層が形成された粒子の分散液を加熱処理する。加熱処理によって、多孔質粒子の場合は、多孔質粒子表面を被覆したシリカ被覆層が緻密化し、多孔質粒子がシリカ被覆層によって被覆された複合粒子の分散液が得られる。また空洞粒子前駆体の場合、形成された被覆層が緻密化して空洞粒子壁となり、内部が溶媒、気体または多孔質固形分で充填された空洞を有する空洞粒子の分散液が得られる。
このときの加熱処理温度は、シリカ被覆層の微細孔を閉塞できる程度であれば特に制限はなく、80〜300℃の範囲が好ましい。加熱処理温度が80℃未満ではシリカ被覆層の微細孔を完全に閉塞して緻密化できないことがあり、また処理時間に長時間を要してしまうことがある。また加熱処理温度が300℃を越えて長時間処理すると緻密な粒子となることがあり、低屈折率の効果が得られないことがある。
このようにして得られた無機微粒子の屈折率は、1.42未満と低い。このような無機微粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される。なお、中空シリカ系微粒子は触媒化成(株)から市販されているものも好ましく利用することができる。
また、塗布組成物時の安定性から、中空シリカ系微粒子としては、表面に炭化水素主鎖を有するポリマーが共有結合しているものが好ましい。
次に、炭化水素主鎖を有するポリマーが共有結合している中空シリカ系粒子について説明する。
炭化水素主鎖を有するポリマーとは、直接共有結合、または中空シリカ系粒子の表面のシリカと炭化水素主鎖を有するポリマーとの間に結合剤を介在させ、シリカと結合剤とを共有結合し、結合剤とポリマーとが共有結合しているものも言う。結合剤としては、シランカップリング剤が好ましく用いられる。
炭化水素主鎖を有するポリマーが共有結合している中空シリカ系微粒子は、(1)中空シリカ系粒子表面を未処理、もしくはシランカップリング剤などで処理した状態で、中空シリカ系粒子表面と共有結合を形成可能な官能基を有するポリマーを反応させ、中空シリカ系粒子表面にポリマーをグラフトさせる方法、或いは(2)中空シリカ系粒子表面を未処理、もしくはシランカップリング剤などで処理した状態で、中空シリカ系粒子表面から単量体を重合することでポリマー鎖を生長させ、表面グラフトさせる方法等により製造することができる。具体的な製造方法としては、特開2006−257308号公報に記載の方法を用いることができる。
また、中空シリカ系微粒子は、導電性金属酸化物被覆層を有する中空シリカ系粒子を用いてもよく、導電性金属酸化物被覆層としては酸化アンチモン被覆層が好ましい。
外殻層を有し、内部が多孔質または空洞である中空シリカ系微粒子の低屈折率層中の含有量は、10〜50質量%であることが好ましい。低屈折率の効果を得る上で、15質量%以上が好ましく、50質量%を超えるとバインダー成分が少なくなり膜強度が不十分となる。特に好ましくは20〜50質量%である。
また、本発明では低屈折率層に、下記一般式(OSi−2)で表されるフッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有させることもできる。
前記一般式(OSi−2)で表されるフッ素置換アルキル基含有シラン化合物について説明する。
式中、R1〜R6は炭素数1〜16、好ましくは1〜4のアルキル基、炭素数1〜6、好ましくは1〜4のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜12、好ましくは6〜10のアリール基、炭素数7〜14、好ましくは7〜12のアルキルアリール基、アリールアルキル基、炭素数2〜8、好ましくは2〜6のアルケニル基、または炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルコキシ基、水素原子またはハロゲン原子を示す。
Rfは−(CaHbFc)−を表し、aは1〜12の整数、b+cは2aであり、bは0〜24の整数、cは0〜24の整数を示す。このようなRfとしては、フルオロアルキレン基とアルキレン基とを有する基が好ましい。具体的に、このような含フッ素シリコーン系化合物としては、(MeO)3SiC2H4C2F4C2H4Si(MeO)3、(MeO)3SiC2H4C4F8C2H4Si(MeO)3、(MeO)3SiC2H4C6F12C2H4Si(MeO)3、(H5C2O)3SiC2H4C4F8C2H4Si(OC2H5)3、(H5C2O)3SiC2H4C6F12C2H4Si(OC2H5)3で表されるメトキシジシラン化合物等が挙げられる。
バインダーとして、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含んでいると、形成される透明被膜自体が疎水性を有しているので、透明被膜が充分緻密化しておらず、多孔質であったり、またクラックやボイドを有している場合であっても、水分や酸・アルカリ等の薬品による透明被膜への進入が抑制される。さらには、基板表面や下層である導電層中に含まれる金属等の微粒子と水分や酸・アルカリ等の薬品とが反応することもない。このため、このような透明被膜は、優れた耐薬品性を有している。
また、バインダーとして、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含んでいると、このような疎水性のみならず、滑り性がよく(接触抵抗が低く)、このためスクラッチ強度に優れた透明被膜を得ることができる。さらに、バインダーが、このような構成単位を有するフッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含んでいると、下層に導電層が形成されている場合には、バインダーの収縮率が、導電層と同等か近いものであるため導電層と密着性に優れた透明被膜を形成することができる。さらに、透明被膜を加熱処理する際に、収縮率の違いから、導電層が剥離して、透明導電性層に電気的接触のない部分が生じることもない。このため、膜全体として充分な導電性を維持できる。
フッ素置換アルキル基含有シラン化合物と、前記外殻層を有し、内部が多孔質または空洞である中空シリカ系微粒子とを含む透明被膜は、スクラッチ強度が高い上に、消しゴム強度または爪強度で評価される膜強度が高く、鉛筆硬度も高く、強度の上で優れた透明被膜を形成することができる。
本発明に係る低屈折率層にはシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びβ−シアノエチルトリエトキシシランが挙げられる。
また、珪素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが挙げられる。
これらのうち、分子内に二重結合を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、珪素に対して2置換のアルキル基を持つものとしてγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが好ましく、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが特に好ましい。
2種類以上のカップリング剤を併用してもよい。上記に示されるシランカップリング剤に加えて、他のシランカップリング剤を用いてもよい。他のシランカップリング剤には、オルトケイ酸のアルキルエステル(例えば、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸n−プロピル、オルトケイ酸i−プロピル、オルトケイ酸n−ブチル、オルトケイ酸sec−ブチル、オルトケイ酸t−ブチル)及びその加水分解物が挙げられる。
低屈折率層のその他のバインダーとして用いられるポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、フルオロアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂が挙げられる。
低屈折率層は、全体で5〜80質量%のバインダーを含むことが好ましい。バインダーは、中空シリカ系微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。バインダーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持できるように適宜調整する。
(溶媒)
本発明に係る低屈折率層は有機溶媒を含有することが好ましい。具体的な有機溶媒の例としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
低屈折率層塗布組成物中の固形分濃度は1〜4質量%であることが好ましく、該固形分濃度が4質量%以下にすることによって、塗布ムラが生じにくくなり、1質量%以上にすることによって乾燥負荷が軽減される。
〔高屈折率層〕
本発明においては、反射防止層として、前記防眩層と低屈折率層の間に、導電性金属酸化物微粒子を含有する高屈折率層を設けることが好ましい。
金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができ、これらの金属酸化物微粒子はAl、In、Sn、Sb、Nb、ハロゲン元素、Taなどの微量の原子をドープしてあっても良い。また、これらの混合物でもよい。本発明においては、中でも酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアンチモン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を主成分として用いることが特に好ましい。特にアンチモン酸亜鉛粒子を含有することが好ましい。
これら金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒子径は10nm〜200nmの範囲であり、10〜150nmであることが特に好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。粒径が小さ過ぎると凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘイズが著しく上昇し好ましくない。金属酸化物微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、針状或いは不定形状であることが好ましい。
高屈折率層の屈折率は、具体的には、透明支持体の屈折率より高く、23℃、波長550nm測定で、1.5〜2.2の範囲であることが好ましい。高屈折率層の屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子の種類、添加量が支配的である為、金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であることが好ましく、1.85〜2.50であることが更に好ましい。
金属酸化物微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。金属酸化物微粒子の表面を有機化合物で表面修飾することによって、有機溶媒中での分散安定性が向上し、分散粒径の制御が容易になるとともに、経時での凝集、沈降を抑える事もできる。このため、好ましい有機化合物での表面修飾量は金属酸化物粒子に対して0.1質量%〜5質量%、より好ましくは0.5質量%〜3質量%である。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でも後述するシランカップリング剤が好ましい。二種以上の表面処理を組み合せてもよい。
前記金属酸化物微粒子を含有する高屈折率層の厚さは5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。
使用する金属酸化物微粒子と後述する電離放射線硬化型樹脂等のバインダーとの比は、金属酸化物微粒子の種類、粒子サイズなどにより異なるが体積比で前者1に対して後者2から前者2に対して後者1程度が好ましい。
本発明において用いられる金属酸化物微粒子の使用量は高屈折率層中に5質量%〜85質量%が好ましく、10質量%〜80質量%であることがより好ましく、20〜75質量%が最も好ましい。使用量が少ないと所望の屈折率や本発明の効果が得られず、多すぎると膜強度の劣化などが発生する。
上記金属酸化物微粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層を形成するための塗布液に供される。金属酸化物粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、ケトンアルコール(例、ジアセトンアルコール)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
また金属酸化物微粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することができる。分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。分散剤を含有させることも好ましい。
本発明では、更にコア/シェル構造を有する金属酸化物微粒子を含有させてもよい。シェルはコアの周りに1層形成させてもよいし、耐光性を更に向上させるために複数層形成させてもよい。コアは、シェルにより完全に被覆されていることが好ましい。
コアは酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型、アモルファス型等)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ等を用いることができるが、ルチル型の酸化チタンを主成分としてもよい。
シェルは酸化チタン以外の無機化合物を主成分とし、金属の酸化物または硫化物から形成することが好ましい。例えば、二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化鉄、硫化亜鉛等を主成分とした無機化合物が用いられる。この内アルミナ、シリカ、ジルコニア(酸化ジルコニウム)であることが好ましい。また、これらの混合物でもよい。
コアに対するシェルの被覆量は、平均の被覆量で2〜50質量%である。好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは4〜25質量%である。シェルの被覆量が多いと微粒子の屈折率が低下し、被覆量が少な過ぎると耐光性が劣化する。二種以上の無機微粒子を併用してもよい。
コアとなる酸化チタンは、液相法または気相法で作製されたものを使用できる。また、シェルをコアの周りに形成させる手法としては、例えば、米国特許第3,410,708号、特公昭58−47061号、米国特許第2,885,366号、同第3,437,502号、英国特許第1,134,249号、米国特許第3,383,231号、英国特許第2,629,953号、同第1,365,999号に記載されている方法等を用いることができる。
本発明に係る高屈折率層もしくは前述の低屈折率層には、下記一般式(CL1)で表される化合物またはそのキレート化合物を含有することができ、硬度などの物性を改善させることができる。
一般式(CL1) AnMBx-n
式中、Mは金属原子、Aは加水分解可能な官能基または加水分解可能な官能基を有する炭化水素基、Bは金属原子Mに共有結合またはイオン結合した原子団を表す。xは金属原子Mの原子価、nは2以上でx以下の整数を表す。
加水分解可能な官能基Aとしては、例えば、アルコキシル基、クロル原子等のハロゲン、エステル基、アミド基等が挙げられる。上記式(2)に属する金属化合物には、金属原子に直接結合したアルコキシル基を2個以上有するアルコキシド、または、そのキレート化合物が含まれる。好ましい金属化合物としては、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドまたはそれらのキレート化合物を挙げることができる。チタンアルコキシドは反応速度が速くて屈折率が高く、取り扱いも容易であるが、光触媒作用があるため大量に添加すると耐光性が劣化する。ジルコニウムアルコキシドは屈折率が高いが白濁し易いため、塗布する際の露点管理等に注意しなければならない。また、チタンアルコキシドは紫外線硬化樹脂、金属アルコキシドの反応を促進する効果があるため、少量添加するだけでも塗膜の物理的特性を向上させることができる。
チタンアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン等が挙げられる。
ジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−iso−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム等が挙げられる。
遊離の金属化合物に配位させてキレート化合物を形成するのに好ましいキレート化剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等であって分子量1万以下のものを挙げることができる。これらのキレート化剤を用いることにより、水分の混入等に対しても安定で、塗膜の補強効果にも優れるキレート化合物を形成できる。
金属化合物の添加量は、高屈折率層に含まれる該金属化合物由来の金属酸化物の含有量が0.3〜5質量%であるように調整することが好ましい。0.3質量%未満では耐擦傷性が不足し、5質量%を超えると耐光性が劣化する傾向がある。
本発明に用いられる高屈折率層には、電離放射線硬化型樹脂を、金属酸化物微粒子のバインダーとして、塗膜の製膜性や物理的特性の向上のために含有させることができる。電離放射線硬化型樹脂としては、紫外線や電子線のような電離放射線の照射により直接、または光重合開始剤の作用を受けて間接的に重合反応を生じる官能基を2個以上有するモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。官能基としては(メタ)アクリロイルオキシ基等のような不飽和二重結合を有する基、エポキシ基、シラノール基等が挙げられる。中でも不飽和二重結合を2個以上有するラジカル重合性のモノマーやオリゴマーを好ましく用いることができる。必要に応じて光重合開始剤を組み合せてもよい。このような電離放射線硬化型樹脂としては、ポリオールアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートもしくはそれらの混合物が用いられる。例えば多官能アクリレート化合物等が挙げられ、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれる化合物であることが好ましい。ここで、多官能アクリレート化合物とは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基及び/またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。
多官能アクリレート化合物のモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートが好ましく挙げられる。これらの化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。
電離放射線硬化型樹脂の添加量は、高屈折率組成物では固形分中の15質量%以上50質量%未満であることが好ましい。
本発明に用いられる電離放射線硬化型樹脂の硬化促進のために、光重合開始剤と分子中に重合可能な不飽和結合を2個以上有するアクリル系化合物とを質量比で3:7〜1:9含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明に用いられる高屈折率層をコーティングする際に用いられる有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられるが、特に、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類が好ましい。
〔バックコート層〕
本発明の防眩性反射防止フィルムは、防眩層を設けた側と反対側の面にバックコート層を設けることが好ましい。バックコート層は、防眩層やその他の層を設けることで生じるカールを矯正するために設けられる。即ち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることができる。なお、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせるために微粒子が添加されることが好ましい。
バックコート層に添加される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
これらの微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもでアエロジル200V、アエロジルR972Vがヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明の防眩性反射防止フィルムは、防眩層とは裏面側の動摩擦係数が0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%好ましくは0.1〜10質量%であることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1%以下であることが好ましく0.5%以下であることが好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
バックコート層の塗布に用いられる溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、または炭化水素類(トルエン、キシレン)等があげられ、適宜組み合せされて用いられる。
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて透明支持体の表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体または共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマー等が市販されており、この中から好ましいモノを適宜選択することもできる。例えば、バインダーとして用いられる樹脂としてはセルロースジアセテート、セルロースアセテートプロヒオネートなどのセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂のブレンド物を用いることが好ましく、アクリル樹脂からなる微粒子を用いて、微粒子とバインダーとの屈折率差を0〜0.02未満とすることで透明性の高いバックコート層とすることができる。
バックコート層を塗設する順番は本発明の防眩層を塗設する前でも後でも構わないが、バックコート層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。または2回以上に分けてバックコート層を塗布することもできる。また、バックコート層は偏光子との接着性を改善するための易接着層を兼ねることも好ましい。
(防眩性反射防止フィルムの反射率)
本発明に係る防眩性反射防止フィルムの反射率は分光光度計により測定を行うことができる。その際、サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行ってから、可視光領域(400〜700nm)の反射光を測定する。反射率は低いほど好ましいが、可視光領域の波長における平均値が1.5%以下であることが好ましく、最低反射率は0.8%以下であることが好ましい。また、可視光の波長領域において平坦な形状の反射スペクトルを有することが好ましい。
また、反射防止処理を施した表示装置表面の反射色相は、反射防止膜の設計上可視光領域において短波長域や長波長域の反射率が高くなることから赤や青に色づくことが多いが、反射光の色味は用途によって要望が異なり、薄型テレビ等の最表面に使用する場合にはニュートラルな色調が好まれる。この場合、一般に好まれる反射色相範囲は、XYZ表色系(CIE1931表色系)上で0.17≦x≦0.27、0.07≦y≦0.17である。
高屈折率層と低屈折率層の膜厚は、各々の層の屈折率より反射率、反射光の色味を考慮して常法に従って計算で求められる。
なお、本発明における防眩性反射防止フィルムは、ハードコート性を有している事が偏光板化工程等で傷が付きにくい事から好ましい。ここでいうハードコート性とは、鉛筆硬度がH〜8Hであるフィルムをいう。特に好ましくは2H〜6H、更に好ましくは3H〜6H、より好ましくは4H〜6Hである。鉛筆硬度は、作製した防眩性反射防止フィルムを温度23℃、相対湿度55%の条件で2時間以上調湿した後、JIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K 5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。
本発明は各層を塗布する前に表面処理することが好ましい。表面処理方法としては、洗浄法、アルカリ処理法、フレームプラズマ処理法、高周波放電プラズマ法、電子ビーム法、イオンビーム法、スパッタリング法、酸処理、コロナ処理法、大気圧グロー放電プラズマ法等が挙げられる。
コロナ処理とは、大気圧下、電極間に1kV以上の高電圧を印加し、放電することで行う処理のことであり、春日電機(株)や(株)トーヨー電機などで市販されている装置を用いて行うことができる。コロナ放電処理の強度は、電極間距離、単位面積当たりの出力、ジェネレーターの周波数に依存する。コロナ処理装置の一方の電極(A電極)は、市販のものを用いることができるが、材質はアルミニウム、ステンレスなどから選択ができる。もう一方はプラスチックフィルムを抱かせるための電極(B電極)であり、コロナ処理が、安定かつ均一に実施されるように、前記A電極に対して一定の距離に設置されるロール電極である。これも通常市販されているものを用いることができ、材質は、アルミニウム、ステンレス、及びそれらの金属でできたロールに、セラミック、シリコン、EPTゴム、ハイパロンゴムなどがライニングされているロールが好ましく用いられる。本発明に用いられるコロナ処理に用いる周波数は、20kHz以上100kHz以下の周波数であり、30kHz〜60kHzの周波数が好ましい。周波数が低下するとコロナ処理の均一性が劣化し、コロナ処理のムラが発生する。また、周波数が大きくなると、高出力のコロナ処理を行う場合には、特に問題ないが、低出力のコロナ処理を実施する場合には、安定した処理を行うことが難しくなり、結果として、処理ムラが発生する。コロナ処理の出力は、1〜5W・min./m2であるが、2〜4W・min./m2の出力が好ましい。電極とフィルムとの距離は、5mm以上50mm以下であるが、好ましくは、10mm以上35mm以下である。間隙が開いてくると、一定の出力を維持するためにより高電圧が必要になり、ムラが発生し易くなる。また、間隙が狭くなりすぎると、印加する電圧が低くなりすぎ、ムラが発生し易くなる。更にまた、フィルムを搬送して連続処理する際に電極にフィルムが接触し傷が発生する。
アルカリ処理方法としては、防眩層を塗設したフィルムをアルカリ水溶液に浸す方法であれば特に限定されない。
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液等が使用可能であり、中でも水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
アルカリ水溶液のアルカリ濃度、例えば水酸化ナトリウム濃度は0.1〜25質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
アルカリ処理温度は通常10〜80℃、好ましく20〜60℃である。
アルカリ処理時間は5秒〜5分、好ましくは30秒〜3分である。アルカリ処理後のフィルムは酸性水で中和した後、十分に水洗いを行うことが好ましい。
また、大気圧プラズマ処理、常圧プラズマ処理等のプラズマ処理としては、例えば特開2004−352777号公報、特開2004−352777号公報、特開2007−314707号公報等に開示されているプラズマ処理技術を参考にすることができる。
また、処理装置としては、積水化学工業社製の常圧プラズマ処理装置であるAP−Tシリーズ等を用いることができる。
反射防止層の各層は、防眩層上に、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、エクストルージョンコート法やインクジェット法を用いて、塗布により形成することができる。
更に、本発明の防眩性反射防止フィルムは、前記反射防止層を積層し防眩層を凹凸状に固化した後、ロール状に巻き取った状態で50〜160℃で加熱処理を行う製造方法によって製造されることが好ましい。加熱処理の期間は、設定される温度によって適宜決定すればよく、例えば、50℃であれば、好ましくは3日間以上30日未満の期間、160℃であれば10分以上1日以下の範囲が好ましい。通常は、巻外部、巻中央部、巻き芯部の加熱処理効果が偏らないように、比較的低温に設定することが好ましく、50〜60℃付近で7日間程度行うことが好ましい。
加熱処理を安定して行うためには、温湿度が調整可能な場所で行うことが必要であり、塵のないクリーンルーム等の加熱処理室で行うことが好ましい。
機能性薄膜がコーティングされた防眩性反射防止フィルムをロール状に巻き取る際の、巻きコアとしては、円筒上のコアであれは、特に限定されないが、好ましくは中空プラスチックコアであり、プラスチック材料としては加熱処理温度に耐える耐熱性プラスチックが好ましく、例えばフェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。またガラス繊維などの充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。
これらの巻きコアへの巻き数は、100巻き以上であることが好ましく、500巻き以上であることが更に好ましく、巻き厚は5cm以上であることが好ましい。
このようにして長巻のプラスチックフィルム基材上に機能性薄膜がコーティングされ、プラスチックコアに巻き取られたロールを、巻き取った状態で前記加熱処理を行うとき、該ロールを回転させることが好ましく、回転は、1分間に1回転以下の速度が好ましく、連続でも良く断続的な回転であっても良い。又、加熱期間中に該ロールの巻き替えを1回以上行うことが好ましい。
コアに巻き取られた長巻の防眩性反射防止フィルムロールを加熱処理中に回転させる為加熱処理室に専用の回転台を設けることが好ましい。
回転は、断続の場合は停止している時間を10時間以内とすることが好ましく、停止位置は、円周方向に均一となる様にすることが好ましく、停止時間は10分以内とすることがより好ましい。最も好ましくは、連続回転である。
連続回転での回転速度は、1回転に要する時間は好ましくは10時間以下とすることであり、早いと装置的に負担となるため実質的には、15分から2時間の範囲が好ましい。
なお、回転機能を有する専用の台車の場合には、移動や保管中にも防眩性反射防止フィルムロールを回転させることができて好ましく、この場合、保管期間が長い場合に生じるブラックバンド対策として回転が有効に機能する。
〔透明支持体〕
次に、本発明で用いることのできる透明支持体について説明する。
本発明に用いられる透明支持体としては、製造が容易であること、活性線硬化型樹脂層との接着性が良好である、光学的に等方性である、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられる。
本発明でいう透明とは、可視光の透過率60%以上であることを指し、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン社製))、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムまたはガラス板等を挙げることができる。中でも、セルローストリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)フィルムが好ましく、本発明においては、特にセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック、製品名KC8UX2MW、KC4UX2MW、KC8UY、KC4UY、KC5UN、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4UEW、KC4FR−1、KC4FR−2(コニカミノルタオプト(株)製))が、製造上、コスト面、透明性、等方性、接着性等の観点から好ましく用いられる。これらのフィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
(セルロースエステル樹脂)
本発明においては、透明支持体としてはセルロースエステル樹脂(以下、単にセルロースエステルともいう)を含有することが好ましい。セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましく用いられる。
特にアセチル基の置換度をX、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、XとYが下記の範囲にあるセルロースの混合脂肪酸エステルを有するセルロースエステルフィルムであることが好ましい。
2.3≦X+Y≦3.0
0.1≦Y≦2.0
特に、2.4≦X+Y≦2.9
0.3≦Y≦1.5であることが好ましい。
本発明に用いられる透明支持体として、セルロースエステルを用いる場合、セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。これらのセルロースエステルは、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることができる。
アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C2H5COCl、C3H7COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法等を参考にして合成することができる。また、本発明に用いられるセルロースエステルは各置換度に合わせて上記アシル化剤量を混合して反応させたものであり、セルロースエステルはこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
本発明に用いられるセルロースエステルの置換度として、2位、3位、6位が平均的にアシル基で置換されていてもよく、もしくは6位に多くもしくは少なく置換されているセルロースエステルも好ましく用いられる。好ましい6位の置換度は0.7〜0.97、更に好ましくは0.8〜0.97である。
前述のように、本発明に用いられるセルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが特に好ましく用いられる。なお、ブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも分岐していてもよい。
プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネートは耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
セルロースエステルの数平均分子量は、70000〜250000が、成型した場合の機械的強度が強く、かつ、適度なドープ粘度となり好ましく、さらに好ましくは、80000〜150000である。
また、セルロースエステルは、以下に記載するアクリル樹脂を含有しても良く、アクリル樹脂をブレンドすることで、特に優れた耐擦傷性が得られる。
次にアクリル樹脂について説明する。
アクリル樹脂としては、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
アクリル樹脂は、フィルムとしての機械的強度、フィルムを生産する際の流動性の点から重量平均分子量(Mw)が80000〜1000000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)は上記の高速液体クロマトグラフィーを用い測定できる。
アクリル樹脂(A)の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。さらに、生成共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。この分子量とすることで、耐熱性と脆性の両立を図ることができる。アクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。
次に、セルロースエステルはアクリル樹脂の他に、更にアクリル粒子を含有しても良く、アクリル粒子を含有することで、更に優れた膜強度(耐擦傷性・鉛筆硬度)が得られる。
次に、アクリル粒子について説明する。アクリル粒子は、例えば、作製したアクリル樹脂含有フィルムを所定量採取し、溶媒に溶解させて攪拌し、充分に溶解・分散させたところで、アクリル粒子の平均粒子径未満の孔径を有するPTFE製のメンブレンフィルターを用いて濾過し、濾過捕集された不溶物の重さが、アクリル樹脂含有フィルムに添加したアクリル粒子の90質量%以上あることが好ましい。
アクリル粒子は特に限定されるものではないが、2層以上の層構造を有するアクリル粒子であることが好ましく、特に下記多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。
多層構造アクリル系粒状複合体とは、中心部から外周部に向かって最内硬質層重合体、ゴム弾性を示す架橋軟質層重合体、および最外硬質層重合体が、層状に重ね合わされてなる構造を有する粒子状のアクリル系重合体を言う。
アクリル系樹脂組成物に用いられる多層構造アクリル系粒状複合体の好ましい態様としては、以下の様なものが挙げられる。(a)メチルメタクリレート80〜98.9質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート1〜20質量%、および多官能性グラフト剤0.01〜0.3質量%からなる単量体混合物を重合して得られる最内硬質層重合体、(b)上記最内硬質層重合体の存在下に、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレート75〜98.5質量%、多官能性架橋剤0.01〜5質量%および多官能性グラフト剤0.5〜5質量%からなる単量体混合物を重合して得られる架橋軟質層重合体、(c)上記最内硬質層および架橋軟質層からなる重合体の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%とアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%とからなる単量体混合物を重合して得られる最外硬層重合体、よりなる3層構造を有し、かつ得られた3層構造重合体が最内硬質層重合体(a)5〜40質量%、軟質層重合体(b)30〜60質量%、および最外硬質層重合体(c)20〜50質量%からなり、アセトンで分別したときに不溶部があり、その不溶部のメチルエチルケトン膨潤度が1.5〜4.0であるアクリル系粒状複合体、が挙げられる。
なお、特公昭60−17406号あるいは特公平3−39095号において開示されている様に、多層構造アクリル系粒状複合体の各層の組成や粒子径を規定しただけでなく、多層構造アクリル系粒状複合体の引張り弾性率やアセトン不溶部のメチルエチルケトン膨潤度を特定範囲内に設定することにより、さらに充分な耐衝撃性と耐応力白化性のバランスを実現することが可能となる。
ここで、多層構造アクリル系粒状複合体を構成する最内硬質層重合体(a)は、メチルメタクリレート80〜98.9質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート1〜20質量%および多官能性グラフト剤0.01〜0.3質量%からなる単量体混合物を重合して得られるものが好ましい。
ここで、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが好ましく用いられる。
最内硬質層重合体(a)におけるアルキルアクリレート単位の割合は1〜20質量%であり、該単位が1質量%未満では、重合体の熱分解性が大きくなり、一方、該単位が20質量%を越えると、最内硬質層重合体(c)のガラス転移温度が低くなり、3層構造アクリル系粒状複合体の耐衝撃性付与効果が低下するので、いずれも好ましくない。
多官能性グラフト剤としては、異なる重合可能な官能基を有する多官能性単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸のアリルエステル等が挙げられ、アリルメタクリレートが好ましく用いられる。多官能性グラフト剤は、最内硬質層重合体と軟質層重合体を化学的に結合するために用いられ、その最内硬質層重合時に用いる割合は0.01〜0.3質量%である。
アクリル系粒状複合体を構成する架橋軟質層重合体(b)は、上記最内硬質層重合体(a)の存在下に、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート75〜98.5質量%、多官能性架橋剤0.01〜5質量%および多官能性グラフト剤0.5〜5質量%からなる単量体混合物を重合して得られるものが好ましい。
ここで、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレートとしては、n−ブチルアクリレートや2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく用いられる。
また、これらの重合性単量体と共に、25質量%以下の共重合可能な他の単官能性単量体を共重合させることも可能である。
共重合可能な他の単官能性単量体としては、スチレンおよび置換スチレン誘導体が挙げられる。アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレートとスチレンとの比率は、前者が多いほど生成重合体(b)のガラス転移温度が低下し、即ち軟質化できるのである。
一方、樹脂組生物の透明性の観点からは、軟質層重合体(b)の常温での屈折率を最内硬質層重合体(a)、最外硬質層重合体(c)、および硬質熱可塑性アクリル樹脂に近づけるほうが有利であり、これらを勘案して両者の比率を選定する。
例えば、被覆層厚みの小さな用途においては、必ずしもスチレンを共重合しなくとも良い。
多官能性グラフト剤としては、前記の最内層硬質重合体(a)の項で挙げたものを用いることができる。ここで用いる多官能性グラフト剤は、軟質層重合体(b)と最外硬質層重合体(c)を化学的に結合するために用いられ、その最内硬質層重合時に用いる割合は耐衝撃性付与効果の観点から0.5〜5質量%が好ましい。
多官能性架橋剤としては、ジビニル化合物、ジアリル化合物、ジアクリル化合物、ジメタクリル化合物などの一般に知られている架橋剤が使用できるが、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200〜600)が好ましく用いられる。
ここで用いる多官能性架橋剤は、軟質層(b)の重合時に架橋構造を生成し、耐衝撃性付与の効果を発現させるために用いられる。ただし、先の多官能性グラフト剤を軟質層の重合時に用いれば、ある程度は軟質層(b)の架橋構造を生成するので、多官能性架橋剤は必須成分ではないが、多官能性架橋剤を軟質層重合時に用いる割合は耐衝撃性付与効果の観点から0.01〜5質量%が好ましい。
多層構造アクリル系粒状複合体を構成する最外硬質層重合体(c)は、上記最内硬質層重合体(a)および軟質層重合体(b)の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%およびアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%からなる単量体混合物を重合して得られるものが好ましい。
ここで、アクリルアルキレートとしては、前述したものが用いられるが、メチルアクリレートやエチルアクリレートが好ましく用いられる。最外硬質層(c)におけるアルキルアクリレート単位の割合は、1〜20質量%が好ましい。
また、最外硬質層(c)の重合時に、アクリル樹脂(A)との相溶性向上を目的として、分子量を調節するためアルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用い、実施することも可能である。
とりわけ、最外硬質層に、分子量が内側から外側へ向かって次第に小さくなるような勾配を設けることは、伸びと耐衝撃性のバランスを改良するうえで好ましい。具体的な方法としては、最外硬質層を形成するための単量体混合物を2つ以上に分割し、各回ごとに添加する連鎖移動剤量を順次増加するような手法によって、分子量を内側から外側へ向かって小さくすることが可能である。この際に形成される分子量は、各回に用いられる単量体混合物をそれ単独で同条件にて重合し、得られた重合体の分子量を測定することによって調べることもできる。多層構造重合体であるアクリル系粒状複合体の粒子径については、特に限定されるものではないが、10nm以上、1000nm以下であることが好ましく、さらに、20nm以上、500nm以下であることがより好ましく、特に50nm以上、400nm以下であることが最も好ましい。
多層構造重合体であるアクリル系粒状複合体において、コアとシェルの質量比は、特に限定されるものではないが、多層構造重合体全体を100質量部としたときに、コア層が50質量部以上、90質量部以下であることが好ましく、さらに、60質量部以上、80質量部以下であることがより好ましい。
このような多層構造アクリル系粒状複合体の市販品の例としては、例えば、三菱レイヨン社製“メタブレン”、鐘淵化学工業社製“カネエース”、呉羽化学工業社製“パラロイド”、ロームアンドハース社製“アクリロイド”、ガンツ化成工業社製“スタフィロイド”およびクラレ社製“パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
アクリル粒子として好適に使用されるグラフト共重合体であるアクリル粒子(c−1)の具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸エステル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、芳香族ビニル系単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル系単量体からなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体が挙げられる。
グラフト共重合体であるアクリル粒子(c−1)に用いられるゴム質重合体には特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムおよびエチレン系ゴムなどが使用できる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体、エチレン−イソプレン共重合体、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
また、アクリル樹脂およびアクリル粒子のそれぞれの屈折率が近似している場合、基材フィルムの透明性を得ることができるため、好ましい。具体的には、アクリル粒子(C)とアクリル樹脂(A)の屈折率差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。
このような屈折率条件を満たすためには、アクリル樹脂の各単量体単位組成比を調整する方法、および/またはアクリル粒子に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成比を調製する方法などにより、屈折率差を小さくすることができ、透明性に優れたアクリル樹脂含有フィルムを得ることができる。
尚、ここで言う屈折率差とは、アクリル樹脂が可溶な溶媒に、アクリル樹脂含有フィルムを適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離し、この可溶部分(アクリル樹脂と不溶部分(アクリル粒子)をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を示す。
アクリル樹脂に、アクリル粒子を配合する方法には、特に制限はなく、アクリル樹脂とその他の任意成分を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、アクリル粒子を添加しながら一軸または二軸押出機により均一に溶融混練する方法が好ましく用いられる。
アクリル粒子としては、市販のものも使用することができる。例えば、メタブレンW−341(C2)(三菱レイヨン(株)製)を、ケミスノーMR−2G(C3)、MS−300X(C4)(綜研化学(株)製)等を挙げることができる。
アクリル粒子はセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂の総質量に対して、0.5〜45質量%のアクリル粒子を含有することが好ましい。
また、セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルム(以下、セルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルムとも言う)は、張力軟化点が105〜145℃で、かつ延性破壊が起こらないフィルムが好ましい。延性破壊とは、ある材料が有する強度よりも、大きな応力が作用することで生じるものであり、最終破断までに材料の著しい伸びや絞りを伴う破壊と定義される。張力軟化点温度の具体的な測定方法としては、例えば、テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、アクリル樹脂含有フィルムを120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、10Nの張力で引っ張りながら30℃/minの昇温速度で昇温を続け、9Nになった時点での温度を3回測定し、その平均値により求めることができる。
また、セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であることが好ましい。より好ましくは120℃以上である。特に好ましくは150℃以上である。
ガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルムの厚みは、20μm以上であることが好ましい。
より好ましくは30μm以上である。厚みの上限は特に限定される物ではないが、溶液製膜法でフィルム化する場合は、塗布性、発泡、溶媒乾燥などの観点から、上限は250μm程度である。なお、フィルムの厚みは用途により適宜選定することができる。
セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルムは、加工性および耐熱性の両立の点から、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂を95:5〜30:70の質量比で含有することが好ましく、またセルロースエステル樹脂のアシル基の総置換度(T)が2.00〜3.00、アセチル基置換度(ac)が0〜1.89、アセチル基以外のアシル基の炭素数が3〜7であり、重量平均分子量(Mw)が75000〜280000であることが好ましい。また、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量は、アクリル樹脂含有フィルムの55〜100質量%であり、好ましくは60〜99質量%である。
セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルムは、その他のアクリル樹脂を含有して構成されていても良い。セルロースエステル樹脂にアクリル樹脂やアクリル粒子を含有させることで、膜の機械的強度が強くなる。
これらセルロースエステル樹脂を含有するフィルムは、一般的に溶液流延製膜法と呼ばれるセルロースエステル溶解液(ドープ)を、例えば、無限に移送する無端の金属ベルトまたは回転する金属ドラムの流延用支持体上に加圧ダイからドープを流延(キャスティング)し製膜する方法で製造されることが好ましい。
(有機溶媒)
これらドープの調製に用いられる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解でき、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセト酢酸メチル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、アセト酢酸メチル等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
また、下記の製膜工程に示すように、溶媒蒸発工程において流延用支持体上に形成されたウェブ(ドープ膜)から溶媒を乾燥させる時に、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば、上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(沸点56.3℃)、酢酸エチル(沸点76.82℃)等である。
上記記載の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライド或いは酢酸メチルが好ましく用いられる。
上記有機溶媒の他に、0.1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは5〜30質量%で前記アルコールが含まれることが好ましい。これらは上記記載のドープを流延用支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができる。
これらの溶媒のうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、かつ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。好ましくは、メチレンクロライド70〜95質量%に対してエタノール5〜30質量%を含む溶媒を用いることが好ましい。メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることもできる。このとき、冷却溶解法によりドープを調製してもよい。
もしくはメチレンクロライドと酢酸メチルを併用することもでき、例えば10.1〜3の質量比で併用することができる。ここに、更に前述のアルコールを含有させることが好ましい。
(可塑剤)
本発明の防眩性反射防止フィルムにセルロースエステルフィルムを用いる場合、下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。その他のカルボン酸エステルの例には、トリメチロールプロパントリベンゾエート、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることができる。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることができる。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることができる。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
(紫外線吸収剤)
本発明の防眩性反射防止フィルムには、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば下記の紫外線吸収剤を具体例として挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、Ciba製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、Ciba製)
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
また、特開2001−187825号に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤は、長尺フィルムの面品質を向上させ、塗布性にも優れている。特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
また、特開平6−148430号に記載の一般式(1)または一般式(2)、特願2000−156039号の一般式(2)、(6)、(7)記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)も好ましく用いられる。高分子紫外線吸収剤としては、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等が市販されている。
(微粒子)
また、本発明に用いられるセルロースエステルフィルムには滑り性を付与するため微粒子を用いることができる。
微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmが好ましく、さらに好ましいのは7〜20nmである。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されることが好ましい。セルロースエステルフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成のセルロースエステルフィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがセルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。
(セルロースエステルフィルムの製造方法)
本発明のセルロースエステルフィルムは溶液流延法により製造されたものであっても溶融流延法によって製造されたものであっても好ましく用いることができる。
以下、溶液流延法を例にとり、セルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
セルロースエステルフィルムの製造は、セルロースエステル及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、さらに好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルのアシル基置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合せると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤または膨潤させた後、さらに良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高すぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃がさらに好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
または冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチル等の溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材がさらに好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、さらに好ましくは50個/m2以下であり、さらに好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
ここで、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい金属支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃がさらに好ましい。または、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で金属支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、さらに乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明の防眩性反射防止フィルム用のセルロースエステルフィルムを作製するためには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで搬送方向に延伸し、さらにウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向に延伸を行うことが特に好ましい。縦方向、横方向ともに好ましい延伸倍率は1.05〜1.5倍であり、更に好ましくは1.05〜1.3倍であり、1.05〜1.15倍がさらに好ましい。縦方向及び横方向延伸により面積が1.1〜2倍となっていることが好ましい。これは縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率で求めることができる。
剥離直後に縦方向に延伸するために、剥離張力及びその後の搬送張力によって延伸することが好ましい。例えば剥離張力を210N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは220〜300N/mである。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は30〜150℃で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性をよくするためさらに好ましい。
セルロースエステルフィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが好ましく用いられる。特に生産性にも優れているため、セルロースエステルフィルムの膜厚は10〜70μmであることが好ましい。さらに好ましくは20〜60μmである。最も好ましくは30〜60μmである。また、共流延法によって多層構成としたセルロースエステルフィルムも好ましく用いることができる。セルロースエステルが多層構成の場合でも紫外線吸収剤と可塑剤を含有する層を有しており、それがコア層、スキン層、もしくはその両方であってもよい。
本発明の防眩性反射防止フィルムは、幅1.4〜4mのセルロースエステルフィルムが好ましく用いられる。特に生産性の点から1.5〜3mのフィルムが好ましく、2〜3mのフィルムがより好ましい。
〔偏光板〕
本発明の防眩性反射防止フィルムを用いた偏光板について述べる。
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の防眩性反射防止フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した防眩性反射防止フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも該防眩性反射防止フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本発明の防眩性反射防止フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが100〜400nmの位相差を有する光学補償フィルム(位相差フィルム)であることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957号、特願2002−155395号記載の方法で作製することができる。または、さらにディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348号記載の方法で光学異方性層を形成することができる。或いはRoが590nmで0〜5nm、Rtが−20〜+20nmの無配向フィルムも好ましく用いられる。
本発明の防眩性反射防止フィルムと組み合せて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。
裏面側に用いられる偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2(コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。該偏光膜の面上に、本発明の防眩性反射防止フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
〔表示装置〕
本発明の防眩性反射防止フィルムを用いた偏光板の防眩性反射防止フィルム面を表示装置の鑑賞面側に組み込むことによって、種々の視認性に優れた表示装置を作製することができる。本発明の防眩性反射防止フィルムは反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。また、本発明の防眩性反射防止フィルムは反射防止層の反射光の色ムラが著しく少なく、また、反射率が低く、平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。特に画面が30型以上の大画面の画像表示装置では、色ムラや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、特に断りない限り、実施例中の「部」は「質量部」を表す。
実施例1
《防眩性反射防止フィルム1の作製》
〈透明支持体の作製〉
下記のようにして、透明なセルローストリアセテートフィルム(膜厚80μm)の透明支持体1を作製した。
(ドープ組成物)
セルローストリアセテート(平均酢化度61.0%) 100質量部
トリフェニルホスフェート 8質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
メチレンクロライド 430質量部
メタノール 90質量部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解してドープ組成物を得た。
次にこのドープ組成物を濾過し、冷却して33℃に保ちステンレスバンド上に均一に流延し、剥離が可能になるまで溶媒を蒸発させたところで、ステンレスバンドから剥離し、テンターで幅方向に1.1倍に延伸した後、多数のロールで搬送させながら乾燥させ、両端部に高さ10μmのナーリングを設けて巻き取り、膜厚80μm、幅2m、長さ3000mの透明支持体1(セルローストリアセテートフィルム)を得た。
〈バックコート層の形成〉
更に、下記バックコート層塗布液をウェット膜厚14μmとなるようにダイコートし、85℃にて乾燥し巻き取り、バックコート層を設けた。
(バックコート層用塗布液)
アセトン 30質量部
酢酸エチル 45質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
ジアセチルセルロース 0.6質量部
超微粒子シリカ2%アセトン分散液(日本アエロジル(株)製アエロジル200V)
0.2質量部
(防眩性反射防止フィルム1の作製)
〈防眩層1の形成〉
作製した透明支持体1のバックコート層を塗設した面とは反対の面に、下記防眩層1塗布液をダイコートし、60℃で1分乾燥した後、80mJ/cm2の紫外線を高圧水銀灯で照射して硬化後の膜厚が6μmになるように防眩層1を設けた。
(防眩層1塗布液)
〈合成例1〉
(カルボキシル基含有アクリル樹脂溶液1の調製)
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた1Lの反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)を433g仕込み、攪拌下で120℃に昇温した。これにスチレン(ST)155.9g、n−ブチルアクリレート(NBA)52.4g、アクリル酸91.7g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート9.0gからなる、モノマー及び重合開始剤を含む溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。滴下終了後30分120℃で攪拌下保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.5g及びPFG6.9gからなる溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後120℃で2時間攪拌して更に反応を継続し、不揮発分40.0%、重量平均分子量10000の樹脂溶液1を得た。得られた樹脂は、酸価238であり、これは本発明において第1樹脂として使用できる。
〈合成例2〉
(エポキシ基含有アクリル樹脂溶液2の調製)
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた1Lの反応容器にジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を457.6g仕込み、攪拌下で120℃に昇温した。これにメタクリル酸メチル(MMA)32.0g、スチレン(ST)72.0g、グリシジルメタクリレート(GMA)216.0g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6.4gからなる、モノマー及び重合開始剤を含む溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。
滴下終了後30分120℃で攪拌下保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.0g及びプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)7.4gからなる溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後120℃で2時間攪拌して更に反応を継続し、不揮発分40.0%、重量平均分子量16600の樹脂溶液2を得た。得られた樹脂は、エポキシ当量211であり、これは本発明において第2樹脂として使用できる。
(表面張力測定法)
ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)溶媒中に、樹脂固形分40質量%となるように各樹脂を溶解させて、表面張力測定用溶液を調製した。この溶液の表面張力を、ビック・マリンクロット・インターナショナル社製、ダイノメーターを使用して、20℃で測定した。
一方、同条件で溶媒の表面張力を測定したところ、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)溶媒の表面張力は32.0dyne/cmであり、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)溶媒の表面張力は29.0dyne/cmであった。各樹脂についての上記測定値からプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)溶媒の表面張力値を減じ、次いでPGMAC溶媒の表面張力とPFG溶媒の表面張力との差(3.0dyne/cm)を減じることにより、PFG溶媒を基準とした樹脂成分の表面張力概算値であるγ(PFG)を算出した。
上記測定方法を、測定対象としている樹脂の合成時に用いた溶媒と同一の溶媒を用いる測定方法により、表面張力を測定した。こうして得られた第1樹脂のγ(PFG)及び第2樹脂のγ(PFG)の数値の差を求めることにより、第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差△γを求めた。
第1樹脂の表面張力の測定値:33.5dyne/cm
第1樹脂のγ(PFG) :−1.5dyne/cm
第2樹脂の表面張力の測定値:31.5dyne/cm
第2樹脂のγ(PFG) :−3.5dyne/cm
合成例1で示した第1樹脂と合成例2で示した第2樹脂の表面張力との差△γは、上記測定結果より2dyne/cmであった。
(防眩層1塗布液調製)
合成例2のエポキシ基含有アクリル樹脂溶液2(第2樹脂)22.50質量部、及び合成例1のカルボキシル基含有アクリル樹脂溶液1(第1樹脂)15.00質量部を、希釈溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)62.34質量部に加えて混合し、次いでSF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20質量部も加えて混合して、防眩層1塗布液を調製した。
(算術平均粗さ(Ra))
防眩層1表面の算術平均粗さ(Ra)を、JIS B 0601:2001にのっとり、光学干渉式表面粗さ計RST/PLUS(WYKO社製)を用いて1.2mm×0.9mmの面積に対して測定した結果、70nmであった。
〈反射防止層の形成〉
(低屈折率層1の形成)
上記防眩層1上に、下記の低屈折率層塗布液をダイコートし、80℃で5分間乾燥した後、200mJ/cm2の紫外線を高圧水銀灯で照射して膜厚が92nmになるように低屈折率層1を設け、防眩性反射防止フィルム1を作製した。
上記乾燥及び紫外線照射により、防眩層1は第1樹脂と第2樹脂が相分離して凹凸形状を呈し、低屈折率層1表面の算術平均粗さ(Ra)は350nmであった。
また、低屈折率層1の屈折率は1.38であった。屈折率層の屈折率は、分光光度計の分光反射率の測定結果から求めた。分光光度計はU−4000型(日立製作所製)を用いて、試料の測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400〜700nm)の反射率の測定を行った。
(低屈折率層1塗布液)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 430質量部
イソプロピルアルコール 430質量部
テトラエトキシシラン加水分解物A(下記、固型分21%換算) 120質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業社製) 3.0質量部
中空シリカ微粒子1イソプロピルアルコール分散液(平均粒径45nm、粒径変動係数30%) 40質量部
アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製) 3.0質量部
FZ−2207(10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、日本ユニカー社製) 3.0質量部
酢酸 4.0質量部
(テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製)
テトラエトキシシラン230g(商品名:KBE04、信越化学工業社製)とエタノール440gを混合し、これに2%酢酸水溶液120gを添加した後に、室温(25℃)にて28時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
(中空シリカ微粒子1イソプロピルアルコール分散液の調製)
平均粒径5nm、SiO2濃度20質量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として0.98質量%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gとAl2O3として1.02質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO2・Al2O3核粒子分散液を調製した。(工程(a))
この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5質量%)3000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b))
次いで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al2O3多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750g及び28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228質量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をイソプロピルアルコールに置換した固形分濃度20質量%の中空シリカ微粒子1の分散液を調製した。
この中空シリカ微粒子の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、平均粒径は45nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0017、屈折率は1.28であった。ここで、平均粒径及び粒径の変動係数は動的光散乱法により測定した。
《防眩性反射防止フィルム2の作製》
特開2004−69753号公報実施例1記載の下記防眩層2塗布液を調製し、防眩層1塗布液の替わりに用いた以外は、防眩性反射防止フィルム1の作製と同様にして防眩性反射防止フィルム2を作製した。
防眩層2表面の算術平均粗さ(Ra)は60nmであった。
防眩性反射防止フィルム2表面の算術平均粗さ(Ra)は300nmであった。
(防眩層2塗布液調製)
アクリル樹脂A(日本ペイント社製、グリシジルメタクリレート/スチレン=30/70、固形分40%、SP値9.6、重量平均分子量16000) 18質量部
アクリル樹脂B(日本ペイント社製、アクリル酸/スチレン=30/70、固形分40%、SP値13.3、重量平均分子量12500) 9質量部
下記架橋樹脂粒子(日本ペイント社製、平均粒径0.5μm、固形分10%)
72質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1質量部
〈架橋樹脂粒子〉
攪拌加熱装置、温度計、窒素導入管、冷却管及びデカンターを備えた反応容器に、ビスヒドロキシエチルタウリン213部、ネオペンチルグリコール208部、無水フタル酸296部、アゼライン酸376部及びキシレン30部を仕込み昇温した。反応により生成した水はキシレンと共沸させて除去した。還流開始より約3時間かけて反応液温を210℃とし、カルボン酸相当の酸価が135mgKOH/gになるまで攪拌と脱水とを継続して反応させた。液温を140℃まで冷却した後,「カージュラ−E10」(商品名:シェル社製のバーサティック酸グリシジルエステル)500部を30分で滴下し,その後、2時間攪拌を継続して反応を終了した。酸価55mgKOH/g、水酸基価91mg/KOH及び数平均分子量1250の両性イオン基含有ポリエステル樹脂を得た。
この両性イオン基含有ポリエステル樹脂10部、脱イオン水140部ジメチルエタノールアミン1部、スチレン50部及びエチレングリコールジメタクリレート50部をステンレス製ビーカー中で激しく攪拌することによりモノマー懸濁液を調整した。また、アゾビスシアノ吉草酸0.5部、脱イオン水40部及びジメチルエタノールアミン0.32部を混合することにより開始剤水溶液を調製した。
攪拌加熱装置、温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた反応容器に上記両性イオン基含有ポリエステル樹脂5部、脱イオン水280部及びジメチルエタノールアミン0.5部を仕込み、80℃に昇温した。ここに、モノマー懸濁液251部と開始剤水溶液40.82部とを同時に60分かけて滴下し、さらに60分反応を継続した後、反応を終了させた。
以上のようにして得られた架橋樹脂粒子エマルジョンに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、減圧下共沸蒸留により水を除去し、媒体をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに置換して、固形分含有量30%の架橋樹脂粒子のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
《防眩性反射防止フィルム3の作製》
特開2000−267086号公報実施例1記載の下記防眩層3塗布液を調製し、防眩層1塗布液の替わりに用いた以外は、防眩性反射防止フィルム1の作製と同様にして防眩性反射防止フィルム3を作製した。
防眩層3表面の算術平均粗さ(Ra)は65nmであった。
防眩性反射防止フィルム3表面の算術平均粗さ(Ra)は320nmであった。
(防眩層3塗布液調製)
アクリル系樹脂(屈折率1.56)とフッ素基を導入したエポキシ系樹脂(屈折率1.3)を1:2に混合した後に約2時間撹拌した2液混合樹脂を防眩層3塗布液として調製した。
《防眩性反射防止フィルム4の作製》
防眩層1と低屈折率層1の間に下記高屈折率層1を設けた以外は防眩性反射防止フィルム1と同様にして防眩性反射防止フィルム4を作製した。
防眩層1表面の算術平均粗さ(Ra)は76nmであった。
防眩性反射防止フィルム4表面の算術平均粗さ(Ra)は410nmであった。
(高屈折率層の形成)
上記防眩層1の表面に、下記高屈折率層1塗布液をダイコートし、80℃で乾燥した後、100mJ/cm2の紫外線を高圧水銀灯で照射して、硬化後の膜厚が110nmとなるように高屈折率層1を設けた。高屈折率層1の屈折率は1.60であった。
(高屈折率層1塗布液)
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル) 40質量部
イソプロピルアルコール 25質量部
メチルエチルケトン 25質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.9質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.0質量部
ウレタンアクリレート(商品名:U−4HA、新中村化学工業社製) 0.6質量部
粒子分散液A(下記) 20質量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.4質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.2質量部
FZ−2207(10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、日本ユニカー社製) 0.4質量部
(粒子分散液Aの調製)
メタノール分散アンチモン複酸化物コロイド(固形分60%、日産化学工業(株)製、アンチモン酸亜鉛ゾル、商品名:セルナックスCX−Z610M−F2)6.0kgにイソプロピルアルコール12.0kgを攪拌しながら徐々に添加し、粒子分散液Aを調製した。
《防眩性反射防止フィルム5の作製》
下記合成例3の水酸基を含有するアクリル樹脂溶液1を防眩層1塗布液のカルボキシル基含有アクリル樹脂溶液1の替わりに用いて防眩層5とした以外は、防眩性反射防止フィルム1の作製と同様にして、防眩性反射防止フィルム5を作製した。
第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差△γは2.4であった。
防眩層5表面の算術平均粗さ(Ra)は85nmであった。
防眩性反射防止フィルム5表面の算術平均粗さ(Ra)は450nmであった。
〈合成例3〉
(水酸基を含有するアクリル樹脂溶液1の調製)
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた1Lの反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)を320.0g仕込み、攪拌下で110℃に昇温した。これにメタクリル酸メチル(MMA)302.0g、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)128.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)47.0g、メタアクリル酸(MAA)23.0g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6.0gからなる、モノマー及び開始剤溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。滴下終了後30分110℃で攪拌下保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.0g及びPFG12.0gからなる溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後110℃で2時間攪拌して更に反応を継続し、不揮発分55%、重量平均分子量60000の樹脂溶液1を得た。得られた樹脂は、水酸基価140、酸価30であり、これは本発明において第1樹脂として使用できる。
《防眩性反射防止フィルム6の作製:比較例》
防眩性反射防止フィルム1の作製において、防眩層1を塗設後、第1樹脂と第2樹脂が相分離して凹凸形状を呈するように、85℃で5分間乾燥した後、220mJ/cm2の紫外線を照射して防眩層6を作製した以外は同様にして、防眩性反射防止フィルム6を作製した。
防眩層6表面の算術平均粗さ(Ra)は270nmであった。
防眩性反射防止フィルム6表面の算術平均粗さ(Ra)は245nmであった。
《防眩性反射防止フィルム7の作製:比較例》
上記透明支持体1の表面(B面側;流延製膜法において用いられるステンレスバンド等の支持体鏡面に接した面;支持体側)上に、下記の防眩層7塗布液を孔径20μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して防眩層7塗布液を調製し、これをマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射量を100mJ/cm2として塗布層を硬化させ、厚さ5μmの防眩層7を形成した。この防眩層7を用いた以外は、防眩性反射防止フィルム1の作製と同様にして防眩性反射防止フィルム7を作製した。
防眩層7表面の算術平均粗さ(Ra)は133nmであった。
防眩性反射防止フィルム6表面の算術平均粗さ(Ra)は118nmであった。
(防眩層7塗布液調製)
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製) 200質量部
光重合開始剤(イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製))
25質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 110質量部
酢酸エチル 110質量部
合成シリカ微粒子 平均粒子径 1.8μm 40質量部
界面活性剤(シリコーン系界面活性剤;FZ2207(日本ユニカー製)10質量%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液) 固形分で0.6質量部
《防眩性反射防止フィルム8の作製:比較例》
防眩性反射防止フィルム1の作製において、防眩層1を下記ハードコート層1に替えた以外は同様にして低屈折率層を設け反射防止フィルムを作製した後、引き続き、鋳型を設けたロール(凹凸形成後、凸部高さ1μm、凸部大きさ(長辺)10μm、凸部間距離50μmになるような微細凹凸構造を刻印したもの)とバックロールから構成される凹凸形成部で溶媒を含む上記反射防止フィルムを挟んでフィルムの低屈折率層面側に鋳型を設けた熱ロールを押し当てて、反対面側にはバックロールを配置し、両ロール間を通すことによって低屈折率層上に凹凸を形成し、エンボス加工した防眩性反射防止フィルム8を作製した。
ハードコート層1表面の算術平均粗さ(Ra)は20nmであった。
防眩性反射防止フィルム8表面の算術平均粗さ(Ra)は360nmであったが、測定する場所によってばらつきが大きかった。
(ハードコート層1塗布液調製)
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製) 60質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 40質量部
光重合開始剤(イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製))
4質量部
酢酸エチル 50質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 50質量部
シリコ−ン系界面活性剤(BYK−307(ビックケミージャパン社製))
0.5質量部
以上、作製した防眩性反射防止フィルム1〜8について以下の評価を実施した。
《防眩性反射防止フィルムの評価》
(輝点欠陥)
クロスニコル状態の2枚の偏光板の間に配置された防眩性反射防止フィルム試料に、一方の面側から光を通し顕微鏡観察したときの輝点の直径と数をカウントした。
5〜50μmの輝点数は、
◎:100個未満で目視では認められない
○:100個以上〜300個未満で目視でごく僅かに認識されるが使用上問題ない。
×:300個以上で液晶ディスプレイ用としては使用出来ない
(耐擦傷性)
試料に23℃、55%RHの環境下で、#0000のスチールウール(SW)に250g/cm2の荷重をかけ、10往復したときの1cm幅当たりの傷の本数を測定した。なお、傷の本数は荷重をかけた部分の中で最も傷の本数の多い所で測定する。10本/cm以下であれば実用上問題ないが、5本/cm以下が好ましく、3本/cm以下がさらに好ましい。
◎:3本/cm未満
○:3本/cm〜5本/cm未満
△:5本/cm〜10本/cm未満
×:10本/cm以上
(写り込み)
窓のあるオフィスにて、各フィルムを机の上に広げ、天井の蛍光灯照明及び外光のフィルムへの写り込みを下記のように評価した。
◎:蛍光灯の輪郭、及び外光がぼけて写り込みが全く気にならない
○:蛍光灯の輪郭、及び外光の写り込みが僅かに認められる
△:蛍光灯の輪郭が分かり写り込みがやや気になる
×:蛍光灯の輪郭、及び外光の写り込みが気になる
(ぎらつき)
作製したフィルムについて、目視にてぎらつきを判定した。
◎:ぎらつきが全く分からない
○:ぎらつきが極僅かに分かる
△:ややぎらつきが分かる
×:ぎらつきがかなり気になる
(反射率)
作製した防眩性反射防止フィルムについて分光光度計(U−4000、日立製作所製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。反射防止性能は広い波長領域において反射率が小さいほど良好であるため、測定結果から450〜650nmにおける最低反射率を求めた。測定は、観察側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行い、フィルム裏面での光の反射を防止して、反射率の測定を行った。
◎:反射率0.8%未満
○:反射率0.8%以上〜1.2%未満
△:反射率1.2%以上〜1.6%未満
×:反射率1.6%以上
(鮮明性)
〈偏光板、液晶表示パネルの作製〉
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光膜と前記防眩性反射防止フィルム1〜8、裏面側に市販の位相差を有するセルロースエステルフィルム コニカミノルタタックKC4FR−1(コニカミノルタオプト(株)製)を貼り合わせて偏光板を作製した。
工程1:50℃の1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光膜と貼合する側を鹸化した防眩性反射防止フィルム、セルロースエステルフィルムを得た。
工程2:前記偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理した防眩性反射防止フィルム、セルロースエステルフィルムの上にのせて、更に反射防止層が外側になるように積層し、配置した。
工程4:工程3で積層した防眩性反射防止フィルムと偏光膜とセルロースエステルフィルム試料を圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光膜とセルロースエステルフィルムと防眩性反射防止フィルム1〜8とを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板を作製した。
次いで、市販の液晶表示パネル(NEC製 カラー液晶ディスプレイ MultiSync LCD1525J:型名 LA−1529HM)の最表面の偏光板を注意深く剥離し、ここに上記作製した防眩性反射防止フィルムを用いた偏光板を貼合して液晶表示パネルを作製した。
作製した液晶表示パネルを用いて、明るい部屋でバックライト点灯し視認性について以下の基準で目視評価した。
◎:黒がしまって見え、鮮明であり、コントラストが高い
△:黒がしまって見えるが、鮮明さがやや低い
×:黒のしまりがなく、鮮明さが低く、コントラストが低い
以上の評価結果を下記表1に示す。
本発明の防眩性反射防止フィルム1〜5は、比較例防眩性反射防止フィルム6〜8に対し、輝点欠陥、耐擦傷性、写り込み、反射率、ぎらつき、鮮明性について優れていることが分かる。
また、特開2004−69753号公報記載の実施例に使用している他の樹脂に変更して実験したところ、防眩性反射防止フィルム2と同様な結果が得られた。
また、特開2006−3647号公報記載の実施例に使用している他の樹脂に変更して実験したところ、防眩性反射防止フィルム1及び5と同様な結果が得られた。
更に、透明支持体1の替わりに、シクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン(株)製ゼオノア)を用いて同様な実験をしたところ、本発明の構成の防眩性反射防止フィルムは輝点欠陥、耐擦傷性、写り込み、反射率、ぎらつき、鮮明性について優れた効果を再現した。
実施例2
実施例1の防眩性反射防止フィルム1の作製において、防眩層1への紫外線照射量を表2のように変化させた以外は、防眩性反射防止フィルム1と同様にして防眩性反射防止フィルム9〜17を作製した。
得られた防眩性反射防止フィルム9〜17について、実施例1と同様な評価を行い、結果を表2に示した。
防眩層表面の算術平均粗さ(Ra)が100nm以下であり平滑な状態であるといえる本発明の防眩性反射防止フィル9〜14は、比較例防眩性反射防止フィルム15〜17に対し、輝点欠陥、耐擦傷性、写り込み、反射率、ぎらつき、鮮明性について優れていることが分かる。
実施例3
実施例1の防眩性反射防止フィルム1の作製において、透明支持体を下記の透明支持体2及び3に変更した以外は、同様にして、防眩性反射防止フィルム18及び19を作製した。
〈透明支持体2の作製〉
〈セルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1の作製〉
(ドープ液組成2)
アクリル樹脂ダイヤナールBR80(三菱レイヨン(株)製) 70質量部
(MW95000)
CAP482−20(アシル基総置換度2.75、アセチル基置換度0.19、プロピオニル基置換度2.56、Mw=200000 イーストマンケミカル(株)製)
30質量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 1質量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 1質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
ブタノール 5質量部
上記組成物を、加熱しながら十分に溶解し、ドープ液を作製した。なお、CAPとはセルロースアセテートプロピオネート樹脂のことである。
(セルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1の製膜)
上記作製したドープ液を、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。
剥離したアクリル樹脂のウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンターで幅方向に1.1倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は10%であった。
テンターで延伸後130℃で5分間緩和を行った後、120℃、130℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ10μmのナーリング加工を施し、巻き取り、膜厚80μm、長さ4000m、屈折率1.50のルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1を得た。
ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.1倍であった。
〈透明支持体3の作製〉
透明支持体2の作製において、以下のドープ液組成2に変更した以外は、同様にして透明支持体3(アクリル粒子含有のセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1)を作製した。
(アクリル粒子の調製〉
内容積60リットルの還流冷却器付反応器に、イオン交換水38.2リットル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム111.6gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。APS0.36gを投入し、5分間攪拌後にMMA1657g、BA21.6g、およびALMA1.68gからなる単量体混合物を一括添加し、発熱ピークの検出後さらに20分間保持して最内硬質層の重合を完結させた。次に、APS3.48gを投入し、5分間攪拌後にBA8105g、PEGDA(200)31.9g、およびALMA264.0gからなる単量体混合物を120分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに120分間保持して,軟質層の重合を完結させた。
次に、APS1.32gを投入し、5分間攪拌後にMMA2106g、BA201.6gからなる単量体混合物を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに20分間保持して最外硬質層1の重合を完結した。
次いで、APS1.32gを投入し、5分後にMMA3148g、BA201.6g、およびn−OM10.1gからなる単量体混合物を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後にさらに20分間保持した。ついで95℃に昇温し60分間保持して、最外硬質層2の重合を完結させた。
このようにして得られた重合体ラテックスを少量採取し、吸光度法により平粒子径を求めたところ0.10μmであった。残りのラテックスを3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ、次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、3層構造のアクリル粒子を得た。
上記の略号は各々下記材料である。
MMA;メチルメタクリレート
MA;メチルアクリレート
BA;n−ブチルアクリレート
ALMA;アリルメタクリレート
PEGDA;ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200)
n−OM;n−オクチルメルカプタン
APS;過硫酸アンモニウム
(アクリル粒子含有のセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1の作製)
(ドープ液組成3)
ダイヤナールBR80(三菱レイヨン(株)製) 70質量部
CAP482−20 30質量部
上記調製したアクリル粒子 20質量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 1質量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 1質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
ブタノール 5質量部
上記組成物を、加熱しながら十分に溶解し、ドープ液を作製した。
《評価》
上記作製した防眩性反射防止フィルム1、18及び19を、防眩性反射防止層を表面側にして、耐候性試験機(アイ スーパーUV テスター、岩崎電気株式会社社製)により200時間光照射し、耐候性試験サンプルを作製し、実施例1に記載した方法で評価した。更に、耐候性試験サンプルについて、温度23℃、相対湿度55%の条件で2時間調湿した後、鉛筆硬度を下記方法で評価した。得られた結果を表3に示した。なお、表3に示した基材フィルムは以下の略称で示した。
基材フィルム1:セルロースエステルフィルム1
基材フィルム2:セルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1
基材フィルム3:アクリル粒子含有のセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1
(鉛筆硬度)
JIS−S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、500gのおもりを用いて各硬度の鉛筆で導電層表面を5回繰り返し引っ掻き、傷が1本までの硬度を測定した。数字か高いほど、高硬度を示す。
上記表3の結果から分かるように、耐候性試験後の評価では、透明支持体がセルロースエステルフィルムよりもセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂からなる透明支持体2、更にはセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂から構成され、かつアクリル粒子を含有する透明支持体フィルム3の方が、耐傷擦性及び鉛筆硬度といった膜強度について特に優れている。また、前記アクリル樹脂やアクリル粒子を含有する透明支持体2及び3は、輝点欠陥、写り込み、反射率、ぎらつき、鮮明性といった性能の劣化はなく、良好であった。