JP2004024967A - 被膜シートの製造方法、反射防止シートの製造方法、反射防止シート、光学素子および画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面に凹凸形状を有するシートの当該凹凸表面に、樹脂材料および溶剤を含有する塗工液を塗工する工程(1)および当該塗工液に硬化処理を施して被膜層を形成する工程(2)を含む被膜シートの製造方法において、前記塗工液の溶剤含有量が90重量%以上であり、かつ、前記塗工工程(1)を施した後に、塗工面を下向きに保持する工程(3)を施し、次いで硬化工程(2)を施すことを特徴とする被膜シートの製造方法。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は被膜シートの製造方法に関する。本発明の製造方法は、たとえば、反射防止シートの製造方法として有用である。さらには本発明は、当該製造方法により得られた反射防止シート、さらには当該反射防止シートを用いた光学素子及び画像表示装置に関する。反射防止フィルムを用いた反射防止偏光板等の光学素子は、液晶ディスプレイ(LCD)、有機EL表示装置、PDP、CRT等の各種画像表示装置において好適に利用できる。
【0002】
【従来の技術】
液晶パネルは近年の研究開発によりディスプレイとしての確固たる地位を確保しつつある。しかし、LCDを、明るい照明下において、使用頻度の高いカーナビゲーション用モニターやビデオカメラ用モニターに用いた場合には、表面反射による視認性の低下が顕著である。このため、これらの機器に装着される偏光板には、反射防止シートが積層されている。また、LCDなどの画像表示装置は、表示装置表面の写り込みにより、画像の視認性が妨げられる。そのため、反射防止シートとしては、光散乱効果による防眩性を付与するために凹凸形状表面の透明樹脂層を設けた反射防止シートが用いられている。凹凸形状表面は、たとえば、基材シート上に微粒子を含有する透明樹脂層により形成することができる。また、透明樹脂層には屈折率を制御するための機能性フィラー等の微粒子を適宜に含有することができる。
【0003】
かかる反射防止シートに代表される光学フィルムは、高分子フィルムに樹脂材料を含有する塗工液を塗工後に、硬化して反射防止層等の光学機能層を形成することにより得られる。前記塗工液の塗工方式としては、スロットダイ、リバースグラビアコート、マイクログラビア等の様々な方式が採用されている。
【0004】
しかし、いずれの塗工方式を用いても、塗工液の塗工工程から硬化工程に移動するまでに、透明樹脂層の凹凸形状表面に塗工した塗工液中の樹脂材料の流動が起こり、凸部に樹脂分が残らない状態となる。特に、塗工液が溶剤を多量に含む場合には、樹脂材料の流動が起こりやすい。その状態のまま、塗工液を硬化すると、凸部表面に直径数μmの大きさで厚みが薄くなり、凹凸面上のハジキにより輝点が現れ、反射防止層の厚み差による干渉ムラができる。このように面内の光学厚みにズレが生じるため反射率特性も理論値より低下する。そのため、従来から凹凸形状表面に干渉ムラによる外観不良のない反射防止層を作製することは、技術的に困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、表面に凹凸形状が形成されているシートの当該凹凸表面に、溶剤を多量に含む塗工液により被膜層を形成する被膜シートの製造方法であって、凹凸形状表面に均一な被膜層を形成することができる被膜シートの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
また本発明は、当該製造方法により得られる反射防止シート、当該反射防止シートが設けられている光学素子、当該光学素子を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。さらには前記被膜シートの製造方法に適用される塗工装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す反射防止シートの製造方法により前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち本発明は、表面に凹凸形状を有するシートの当該凹凸表面に、樹脂材料および溶剤を含有する塗工液を塗工する工程(1)および当該塗工液に硬化処理を施して被膜層を形成する工程(2)を含む被膜シートの製造方法において、
前記塗工液の溶剤含有量が90重量%以上であり、かつ、
前記塗工工程(1)を施した後に、塗工面を下向きに保持する工程(3)を施し、次いで硬化工程(2)を施すことを特徴とする被膜シートの製造方法、に関する。
【0009】
上記本発明の製造方法では、塗工工程(1)の後に、塗工面の下向き保持工程(3)を有する。当該下向き保持工程(3)により、凹凸形状表面の凸部でのハジキの発生を抑えて均一な被膜層を形成している。たとえば、塗工液により反射防止層を形成する場合には、透明樹脂層の凹凸形状表面の凸部でのハジキによる輝点を抑止し、厚み差による干渉ムラを抑え、外観不良を改善した反射防止シートを作製することができる。
【0010】
なお、塗工工程(1)と硬化工程(2)の間に下向き保持工程(3)を設けた場合(図1)と、設けていない場合(図2)のハジキ抑制のメカニズムについて図面を参照しながら説明する。従来例の図2では、凹凸形状表面xに塗工した被塗工液3′の流動が起こり、凸部にハジキが生じる。この状態で硬化工程(2)を施すと、形成される被膜層3の凸部には樹脂分が残らない状態となる。一方、本発明の図1の例では下向き保持工程(3)により、凸部でのハジキが抑えられ、この状態で硬化工程(2)を施すことで、均一な被膜層3が形成される。
【0011】
本発明の製造方法は、塗工液の溶剤含有量が90重量%以上の溶剤を多量に含んだ低濃度、低粘度の塗工液を用いる場合に好適である。塗工液の溶剤の含有量は、98重量%以上の場合にも好適に適用できる。
【0012】
前記被膜シートの製造方法は、前記塗工液の粘度(25℃)が1〜5mmPa・sである場合に好適である。本発明の製造方法は、特に粘度が低く、溶剤を多量に含んだ低濃度、低粘度の塗工液を用いて反射防止層を形成する場合に有用である。
【0013】
なお、本発明の被膜シートの製造方法は、凹凸形状表面の表面粗さ(Ra)が0.1〜0.5μmである場合に好適である。かかる表面粗さを有するものに、被膜層として反射防止層を設けることにより、防眩性の反射防止層を形成できる。なお、表面粗さ(Ra)は、JIS B0601に準じ、触針式表面粗さ測定機として株式会社東京精密製のサーフコム470Aを用いて測定した。
【0014】
前記被膜シートの製造方法において、下向き保持工程(3)の時間は、少なくとも10秒間であることが好ましい。下向き保持工程(3)は、塗工工程(1)の直後に行うのが好ましく、保持時間は10秒間以上、さらには20秒間以上、さらには30秒間以上であるのが好ましい。なお、開放系の塗工方式においては、溶剤成分は300秒間以上の保持により蒸発してしまうと考えられることから保持時間は300秒間以下とするのが好適である。
【0015】
前記被膜シートの製造方法は、表面に凹凸形状を有するシートが、表面に凹凸形状が形成されている透明樹脂層を有するシートであり、被膜層が、当該透明樹脂層よりも屈折率が低い低屈折率材料を含有する塗工液により形成された反射防止層である場合に好適に適用できる。なお、透明樹脂層の屈折率は、1.49〜1.72であり、反射防止層の屈折率が1.30〜1.48であることが好ましい。
【0016】
また本発明は、前記製造方法により得られる反射防止シート、に関する。また光学素子の片面又は両面に、前記反射防止シートが設けられていることを特徴とする光学素子、に関する。また前記反射防止シートまたは光学素子を搭載した画像表示装置、に関する。
【0017】
また本発明は、表面に凹凸形状を有するシートの搬送手段、搬送するシートへの塗工液の塗工手段、シート上に塗工された塗工液を下向きの状態で10秒間以上保持する手段、および硬化処理手段を有することを特徴とする前記被膜シートの製造方法に適用される塗工装置、に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の被膜シートの製造方法を図面(図1、図3)を参酌しながら説明する。本発明の被膜シートの製造方法は、表面に凹凸形状を有するシートに対して特に制限なく適用できる。
【0019】
図1は反射防止シートの製造方法に適用した場合の各工程を表す概念図である。図1では、透明基板1の片面に、凹凸形状表面xが形成されている透明樹脂層2(ハードコート層)を有するシートAを用い、当該透明樹脂層表面xに、塗工液3′を塗工する工程(1)、次いで下向き保持工程(3)を施してから、硬化工程(2)を施して被膜層3(反射防止層3)を形成して、反射防止シートBを製造している。なお、図1では、透明樹脂層2の凹凸形状表面xが、微粒子4により形成されている場合の例である。透明樹脂層2には光散乱効果のため微粒子、屈折率を制御するための機能性フィラーを適宜に含有することができる。
【0020】
図3は、下向き保持工程(3)を設けた塗工装置の概念図である。図3において、連続して走行しているシートAは、凹凸表面xに、塗工部11により、塗工液3′が塗工され、その直後に、塗工面下向き保持ゾーン13を経て、硬化処理部12へ導かれている。
【0021】
透明基板1としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムがあげられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムもあげられる。さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムなどもあげられる。特に光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。
【0022】
透明基板1の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0023】
透明基板1上への透明樹脂層2の形成方法は特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。たとえば、透明樹脂層2の形成に用いた透明基材の表面を、予め、サンドブラストやエンボスロール、化学エッチング等の適宜な方式で粗面化処理してフィルム表面に凹凸形状を付与する方法等により、透明樹脂層2を形成する材料そのものの表面を凹凸形状に形成する方法があげられる。また、透明樹脂層2上に別途透明樹脂層を塗工付加し、当該透明樹脂層表面に、金型による転写方式等により凹凸形状を付与する方法があげられる。また、図1のように透明樹脂層2に微粒子4を分散含有させて凹凸形状を付与する方法などがあげられる。これら凹凸形状の形成方法は、二種以上の方法を組み合わせ、異なる状態の凹凸形状表面を複合させた層として形成してもよい。前記透明樹脂層2の形成方法のなかでも、凹凸形状表面の形成性等の観点より、微粒子を分散含有する透明樹脂層2を設ける方法が好ましい。また本発明の被膜シートの製造方法は、微粒子4により透明樹脂層2に凹凸形状を形成した場合に好適である。
【0024】
以下、微粒子4を分散含有させて透明樹脂層2を設ける方法について説明する。当該透明樹脂層2を形成する樹脂としては微粒子4の分散が可能で、透明樹脂層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できる。前記樹脂としては熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく光拡散層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。
【0025】
紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマーを成分を含むものがあげられる。これらのなかでもアクリルウレタン系のものが好ましい。また、紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。
【0026】
透明樹脂層2の屈折率は1.49〜1.72になるように調整するのが好ましい。また透明樹脂層2の屈折率は、透明基板1の屈折率より高く、被膜層3(反射防止層3)の屈折率が透明基板1の屈折率より低いことが好ましい。反射率の観点から透明樹脂層2には高屈折率が求められ、反射防止層3にはより低い屈折率が求められる。反射防止効果がよく、表示品位の高い反射防止フィルムを得るには、屈折率が前記関係:透明樹脂層2>透明基板1>反射防止層3となるように、透明樹脂層2と反射防止層3の屈折率差になるのが好ましい。
【0027】
透明樹脂層2の屈折率の調整法は特に制限されない。透明樹脂層の屈折率は、透明樹脂層形成用の樹脂に高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子を添加して調整することができる。高屈折率の超微粒子材料としては、たとえば、TiO2 、ZnO、SnO2 、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、ZrO2 を用いるのが好ましい。超微粒子の平均粒子径は通常0.1μm以下程度であるのが好ましい。
【0028】
微粒子4としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスティックなどの透明性を有する、無機または有機の球形もしくは不定形のフィラーを特に制限なく使用することができる。無機または有機の球形もしくは不定形のフィラーとしては、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリウレタン、ポリスチレン、メラミン樹脂等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の無機系粒子や、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモンまたはこれらの複合物等の導電性無機系粒子などがあげられる。前記微粒子の平均粒子径は0.5〜10μm、さらには1〜5μmのものが好ましい。微粒子により微細凹凸形状を形成する場合、微粒子の使用量は樹脂100重量部に対して、1〜30重量部程度とするのが好ましい。
【0029】
なお、透明樹脂層2の形成には、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させることができる。透明樹脂層2の形成に当たり、チクソトロピー剤(0.1μm以下のシリカ、マイカ等)を含有させることにより、突出粒子により凹凸形状を容易に形成することができる。
【0030】
透明樹脂層2の形成方法は特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。たとえば、前記樹脂を塗工し、乾燥後、硬化処理する。前記樹脂が前記フィラー等を含有する場合には表面に凹凸形状を呈するような透明樹脂層2を形成する。前記樹脂の塗工は、ファンテン、ダイコーター、キャスティング、スピンコート、ファンテンメタリング、グラビア等の適宜な方式で塗工される。なお、塗工にあたり、前記樹脂は、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等の一般的な溶剤で希釈してもよく、希釈することなくそのまま塗工することもできる。また、透明樹脂層2の厚さは特に制限されないが、20μm以下、0.5〜20μm程度、特に1〜10μmとするのが好ましい。
【0031】
なお、前記透明樹脂層2は透明基材1に直接または別の層を介して設けることができる。別の層としては、導電層、屈折率を透明樹脂層2と被膜層3(反射防止層3)中の中間に調整した中屈折率層等があげられる。
【0032】
前記の凹凸形状表面には、樹脂材料および溶剤を含有する塗工液を塗工して被膜層3を形成する。樹脂材料として、透明樹脂層2よりも屈折率が低い低屈折率材料を用いて反射防止層3を形成できる。反射防止層3の屈折率は1.30〜1.48になるように調整するのが好ましい。反射防止層3には屈折率を調整するための超微粒子を含有させることができる。
【0033】
低屈折率材料は透明樹脂層2よりも屈折率の低いものであれば特に制限されない。低屈折率材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂系材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド系材料、テトラエトキシシラン、チタンテトラエトキシド等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル系材料等があげられる。前記例示した低屈折率材料の形成材料は、重合済みのポリマーであってもよいし、前駆体となるモノマーまたはオリゴマーであってもよい。また、それぞれの材料は、表面の防汚染性付与するためフッ素基含有化合物を用いることができる。反射防止層は、シロキサン骨格を含むことが耐擦傷性の面から好ましく、低屈折率材料としては、特にゾル−ゲル系材料が好ましい。
【0034】
フッ素基を含有するゾル−ゲル系材料としては、パーフルオロアルキルアルコキシシランを例示できる。パーフルオロアルキルアルコキシシランとしては、たとえば、一般式(1):CF3 (CF2 )n CH2 CH2 Si(OR)3 (式中、Rは、炭素数1〜5個のアルキル基を示し、nは0〜12の整数を示す)で表される化合物があげられる。具体的には、たとえば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシランなどがあげられる。これらのなかでも前記nが2〜6の化合物が好ましい。
【0035】
低屈折率材料は、1種または2種以上の混合物を使用できる。低屈折率材料として、相分離する2種以上の混合物を用いることにより、微細な相分離構造を維持した被膜層を形成することができる。
【0036】
低屈折率層の形成にはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、フッ化マグネシウム、セリア等をアルコール溶媒に分散したゾルなどを添加しても良い。その他、金属塩、金属化合物などの添加剤を適宜に配合することができる。
【0037】
低屈折率材料を含有する塗工液の粘度は特に制限されないが、前述の通り、粘度(25℃)を1〜5mmPa・sに調整するのが好ましい。さらに好ましくは1〜3mmPa・sである。塗工液の溶剤含有量は90重量%以上、さらには98重量%以上が好ましい。
【0038】
なお、塗工液に用いられる溶剤は特に制限されないが、たとえば、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ溶剤;シュウ酸ジエチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤等を例示できる。これら溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
塗工液には、前記低屈折率成分に加えて、必要に応じて更に、相溶化剤、架橋剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、屈折率調整剤などを適宜添加することができる。
【0040】
本発明の被膜シート(反射防止シート)の製造方法では、図3に示す前記塗工液3′の透明樹脂層表面xへの塗工工程(1)、下向き保持工程(3)、硬化工程(2)を順次に施して反射防止層を形成する。
【0041】
塗工工程(1)における、塗工液3′の塗工方法は特に制限されず、通常の方法を採用できる。たとえば、スロットダイ法、リバースグラビアコート法、マイクログラビア法、ディップ法、スピンコート法、刷毛塗り法、ロールコート法、フレキソ印刷法などがあげられる。
【0042】
下向き保持工程(3)の時間は、凹凸形状の凸部において、塗工液3′のハジキがなくなる程度の時間であれば特に制限されない。前記保持時間は前述の通り、10秒間以上とするのが好ましい。また、塗工装置において、搬送されるシートの、塗工面下向き保持ゾーンの長さは、シートの搬送速度等により適宜に調整される。通常は、シートの搬送速度が、1〜5cm/sの場合に、下向き保持ゾーンの長さが、50cm以上、さらには150cm以上にするのが好ましい。また下向き保持工程(3)は、塗工液3′の凸部でのハジキを抑えるため、塗工工程(1)との連続工程で行うのが好ましい。また下向き保持工程(3)は、塗工工程(1)の直後に連続して施すのが好ましい。
【0043】
なお、下向き保持工程(3)において、塗工面を下向きに保持するとは、塗工面(塗工液が塗工されているシートの凹凸形状面)が、鉛直方向の下向きになっており、シートの長手方向(搬送方向)が、鉛直方向に対して略垂直方向(水平方向)にあることをいう。なお、下向き保持工程(3)において、シートの長手方向は、鉛直方向に対して垂直方向に設定するのが好ましいが、塗工面を下向きにして、塗工液の凸部でのハジキを抑えられれば、シートの長手方向は、鉛直方向に対して垂直方向から±30°程度以内の範囲で傾いていてもよい。好ましくは±10°以内である。
【0044】
硬化工程(2)では、塗工液の種類に応じて、乾燥工程、硬化工程が適宜に施される。乾燥工程は、通常、20〜50℃程度、好ましくは23〜30℃である。硬化工程では、塗工液の調製に用いた樹脂(低屈折率材料)の種類に応じて、熱硬化、UV硬化等の硬化処理を施す。
【0045】
被膜層3は最終的な厚さは5μm程度以下とするのが好ましい。反射防止層3を形成する場合には、その厚さは、0.05〜0.3μm程度、特に0.1〜0.3μmとするのが好ましい。反射率低減の観点より、通常、厚み(nm)×屈折率の値が140nm程度となるように設定するのが好ましい。
【0046】
前記反射防止シートの透明基板1には、光学素子を接着することができる。光学素子としては、偏光子があげられる。偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0047】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0048】
前記偏光子は、通常、片側または両側に透明保護フィルムが設けられ偏光板として用いられる。透明保護フィルムは透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。透明保護フィルムとしては前記例示の透明基板と同様の材料のものが用いられる。前記透明保護フィルムは、表裏で同じポリマー材料からなる透明保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる透明保護フィルムを用いてもよい。透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮断性などに優れるものが好ましく用いられる。また透明保護フィルムは、位相差等の光学的異方性が少ないほど好ましい場合が多い。前記の透明保護フィルムを形成するポリマーとしてはトリアセチルセルロースが最適である。前記反射防止シートを、偏光子 (偏光板)の片側または両側に設ける場合、反射防止シートの透明基板は、偏光子の透明保護フィルムを兼ねることができる。透明保護フィルムの厚さは特に制限されないが10〜300μm程度が一般的である。
【0049】
反射防止シートの偏光板への積層は、反射防止シートに透明保護フィルム、偏光子、透明保護フィルムを順次に積層してもよいし、反射防止シートに偏光子、透明保護フィルムを順次に積層したものでもよい。
【0050】
その他、透明保護フィルムの偏光子を接着させない面は、透明樹脂層やスティッキング防止や目的とした処理を施したものであってもよい。ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。なお、前記透明樹脂層、スティッキング防止層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0051】
また偏光板の層間へ、例えば透明樹脂層、プライマー層、接着剤層、粘着剤層、帯電防止層、導電層、ガスバリヤー層、水蒸気遮断層、水分遮断層等を挿入、または偏光板表面へ積層しても良い。また。偏光板の各層を作成する段階では、例えば、導電性粒子あるいは帯電防止剤、各種微粒子、可塑剤等を各層の形成材料に添加、混合等することにより改良を必要に応じておこなっても良い。
【0052】
光学素子としては、実用に際して、前記偏光板に、他の光学素子(光学層)を積層した光学フィルムを用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2 や1/4 等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。楕円偏光板、光学補償付き偏光板等では偏光板側に反射防止シートが付与される。
【0053】
さらに必要に応じて、耐擦傷性、耐久性、耐候性、耐湿熱性、耐熱性、耐湿性、透湿性、帯電防止性、導電性、層間の密着性向上、機械的強度向上等の各種特性、機能等を付与するための処理、または機能層の挿入、積層等を行うこともできる。
【0054】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ、前記透明保護フィルム等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0055】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。
【0056】
反射板は前記偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0057】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0058】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1 /4 波長板(λ/4 板とも言う)が用いられる。1 /2 波長板(λ/2 板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0059】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0060】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0061】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0062】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0063】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0064】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0065】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0066】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を投下するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0067】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0068】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0069】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0070】
前記光学素子への反射防止シートの積層、さらには偏光板への各種光学層の積層は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても行うことができるが、これらを予め積層したのものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0071】
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルム等の光学素子の少なくとも片面には、前記反射防止シートが設けられているが、反射防止シートが設けられていない面には、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0072】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0073】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0074】
偏光板、光学フィルム等の光学素子への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で光学素子上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを光学素子上に移着する方式などがあげられる。粘着層は、各層で異なる組成又は種類等のものの重畳層として設けることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0075】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0076】
なお本発明において、上記した光学素子を形成する偏光子や透明保護フィルムや光学層等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やべンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0077】
本発明の反射防止シートを設けた光学素子は液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学素子、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による光学素子を用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0078】
液晶セルの片側又は両側に前記光学素子を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学素子は液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学素子を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0079】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0080】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0081】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0082】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0083】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0084】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1 /4 波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4 に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0085】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1 /4 波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4 のときには円偏光となる。
【0086】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0087】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何等限定されるものではない。
【0088】
実施例1
(シートA)
ウレタンアクリル系紫外線硬化型樹脂(屈折率1.53,大日本インキ化学工業社製ユニデック)100重量部に対して、微粒子として平均粒子径3.5μmのポリスチレン14重量部、ベンゾフェノン系光重合開始剤3.5重量部及びその固形分が40重量%となるように計量された溶剤(トルエン)とを混合した塗工液を、厚さ80μmのトリアセチルセルロース上に塗布し、120℃で5分間乾燥した後、紫外線照射により硬化処理した。こうして、表面に凹凸形状が形成されている厚さ約5μmの透明樹脂層を有するシートAを得た。凹凸形状表面の表面粗さ(Ra)は0.18μmであった。
【0089】
(塗工液3′)
フッ素含有ポリシロキサン系樹脂(屈折率1.39)1重量部およびエタノール99重量部を含む混合溶液(塗工液)を用いた。塗工液の粘度(25℃)は 1mmPa・sであった。
【0090】
(反射防止層の形成)
図3に示すような塗工装置を用いて反射防止シートBを製造した。塗工液3′は、乾燥厚みが0.1μm、光学設計上の反射率が1.9%となるように、塗工部11で塗工量、塗工スピードを調整しながら前記シートAに塗工された。塗工部11では、ダイコート方式を用いた。シートの搬送スピード(塗工スピード)は5cm/sであり、塗工面の下向き保持ゾーンは150cmであり、下向き保持時間は30秒間であった。その後、90℃の乾燥温度工程を3分間、90℃の熱処理を20時間施し、反射防止シートBを作製した。シートAから、約200mの反射防止シートBを作製した後、得られた反射防止シートBの反射防止層表面の状態を目視観察した。その結果、ハジキ現象による外観不良のない良好な反射防止層が得られていたことを確認した。
【0091】
比較例1
実施例1(反射防止層の形成)において、塗工面の下向き保持ゾーンを設けなかったこと以外は実施例1と同様にして反射防止シートBを作製した。シートAから、約200mの反射防止シートBを作製した後、得られた反射防止シートBの反射防止層表面の状態を目視観察した。その結果、反射防止層にはハジキ現象による輝点の外観不良が発生していた。
【0092】
実施例および比較例で得られた反射防止シート(幅350mm)の反射率を、8°傾斜積分球付き分光光度計により求めた分光反射率を用いて、C光源に対する視感度反射率Y値を計算により求めた。反射率は幅方向に均等に5点について測定し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。表1には、反射率の理論値(1.9%)からのズレを併せて示す。
【0093】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射防止シートの各工程を表す概念図である。
【図2】従来の反射防止シートの各工程を表す概念図である。
【図3】風乾工程を含む塗工装置の概念図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 透明樹脂層
3 被膜層(反射防止層)
3′ 塗工液
13 下向き保持ゾーン
B 反射防止シート
Claims (8)
- 表面に凹凸形状を有するシートの当該凹凸表面に、樹脂材料および溶剤を含有する塗工液を塗工する工程(1)および当該塗工液に硬化処理を施して被膜層を形成する工程(2)を含む被膜シートの製造方法において、
前記塗工液の溶剤含有量が90重量%以上であり、かつ、
前記塗工工程(1)を施した後に、塗工面を下向きに保持する工程(3)を施し、次いで硬化工程(2)を施すことを特徴とする被膜シートの製造方法。 - 前記塗工液の粘度(25℃)が1〜5mmPa・sであることを特徴とする請求項1記載の被膜シートの製造方法。
- 前記下向き保持工程(3)の時間が、10秒間以上であることを特徴とする請求項1または2記載の被膜シートの製造方法。
- 表面に凹凸形状を有するシートが、表面に凹凸形状が形成されている透明樹脂層を有するシートであり、被膜層が、当該透明樹脂層よりも屈折率が低い低屈折率材料を含有する塗工液により形成された反射防止層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被膜シートの製造方法。
- 請求項4記載の製造方法により得られる反射防止シート。
- 光学素子の片面又は両面に、請求項5記載の反射防止シートが設けられていることを特徴とする光学素子。
- 請求項5記載の反射防止シートまたは請求項6記載の光学素子を搭載した画像表示装置。
- 表面に凹凸形状を有するシートの搬送手段、搬送するシートへの塗工液の塗工手段、シート上に塗工された塗工液を下向きの状態で10秒間以上保持する手段、および硬化処理手段を有することを特徴とする請求項3または4記載の被膜シートの製造方法に適用される塗工装置。
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