しかし、上記特許文献1の透光性樹脂製品は、シリコーン系ハードコート層を有するためにハードコート性には優れているが、一旦傷が付くと自己修復することなく該傷が長期にわたり存在して外観を悪くするし、該製品を二次熱加工することはできなかった。
また、上記特許文献2のハードコートフィルムにおいても、耐磨耗性やリコート性やレベリング性が良好で、視認性に優れたフィルムを得ることができるが、アクリルハードコート層が活性線や熱により硬化しているために、一旦傷が付くと自己修復することができないし、二次熱加工することもできなかった。
本発明は、上記問題を解決したものであって、表面に傷がついても該傷を自己修復して透明性を回復する、自己修復性に優れた合成樹脂成形体を提供することを目的とする。また、基材と表面樹脂層との密着性に優れ且つ気泡や皺も発生しない接着層により積層一体化された、自己修復性に優れた合成樹脂成形体を提供することを目的とする。さらに、成形体を二次熱加工してもクラックや皺などの不都合が発生しない合成樹脂成形体を提供することを目的とする。
そのため、本発明に係る合成樹脂成形体は、合成樹脂基材の少なくとも片面に接着層を介して表面樹脂層を形成してなる成形体であって、該成形体の全光線透過率が75%以上、ヘーズが5%以下の透明性を有し、表面樹脂層に対しての傷付与試験の試験前のヘーズと試験直後のヘーズの変化量が0.3%以上であり、該試験の5分経過後は下記式(1)に基づいて得られる回復率が50%以上となるヘーズを示すことを特徴とするものである。
この傷付与試験は表面樹脂層に対してのみ行われ、真鍮ブラシを用いて行われることが好ましい。
本発明において、前記成形体の傷付与試験前のヘーズが0.1〜1.0%、試験直後のヘーズが0.3〜5.0%、試験前と試験直後のヘーズの変化量が0.2〜4.0%の範囲内であり、傷付与試験の5分経過後のヘーズの回復率が70%以上であることが好ましい。また、表面樹脂層が、ウレタンアクリレート樹脂で形成されていることも好ましい。そして、これらの表面樹脂層にシリカが含まれることも好ましい。さらに、合成樹脂基材が熱可塑性樹脂で形成されると共に表面樹脂層がウレタンアクリレート樹脂で形成された成形体であり、該成形体が熱加工可能であることも好ましい。
更に、本発明における成形体の接着層が、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル当量がポリオールの水酸基のモル当量より多くなるように、ポリイソシアネートとポリオールとを配合して反応させたポリウレタン系樹脂より形成されていることが好ましい。また、この接着層に多く配合されたポリイソシアネートのイソシアネート基が、接着層に残存していることが好ましい。更に、接着層を形成するポリイソシアネートのイソシアネート基のモル当量とポリオールの水酸基のモル当量とのモル当量比が、1.0<イソシアネート基モル当量/水酸基モル当量≦5.0であることが好ましい。
本発明のラミネートフィルムは、これらの合成樹脂成形体の成形に使用されるラミネートフィルムであって、接着性フィルムの表面に、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル当量がポリオールの水酸基のモル当量より多くなるように、ポリイソシアネートとポリオールとを配合して反応させたポリウレタン系樹脂より形成された接着層と、ウレタンアクリレート樹脂より形成された表面樹脂層とが積層されていることを特徴とするものである。
本発明の転写フィルムは、これらの合成樹脂成形体の成形に使用される転写フィルムであって、剥離フィルムの表面に、ウレタンアクリレート樹脂より形成された表面樹脂層と、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル当量がポリオールの水酸基のモル当量より多くなるように、ポリイソシアネートとポリオールとを配合して反応させたポリウレタン系樹脂より形成された接着層とが積層されていることを特徴とするものである。
これらのラミネートフィルムまたは転写フィルムにおいて、表面樹脂層にシリカが含まれていることが好ましい。
本発明の合成樹脂成形体は、合成樹脂基材の表面に表面樹脂層を形成してなる透明成形体であって、表面樹脂層に対して真鍮ブラシなどを用いた傷付与試験を行った前後のヘーズの変化量が0.3%以上で、前記式(1)で求められるヘーズの回復率が50%以上であるので、該透明合成樹脂成形体に砂などが風により擦り付けられたり物が当たったりすると、表面樹脂層に傷が付いてヘーズが高くなって白濁し外観が悪くなる。しかし、時間が経過すると、この傷が自己修復されて外観上傷がない状態となり、ヘーズが回復し、白濁がなくてほぼ元の透明性を有する成形体となる。そのため、本発明の合成樹脂成形体は、耐擦傷性が良好な成形体である。この自己修復性は、傷が時間の経過と共に傷周囲の樹脂の弾力により塞がれて元の状態に修復・復元し、光の散乱による白濁がなくなって元の透明性が回復するものと考えられる。
また、合成樹脂成形体の表面樹脂層に対する傷付与試験前のヘーズが0.1〜1.0%、試験直後のヘーズが0.3〜5.0%、試験前と試験直後のヘーズの変化量が0.2〜4.0%であり、傷付与試験の5分経過後のヘーズの回復率が70%以上であると、成形体は良好な透明性を発揮すると共に、傷付与試験により表面樹脂層に傷を付けるとヘーズが高くなって白濁し一時的に透明性が損なわれるが、5分経過後には試験前のヘーズにまでほぼ回復して、元の白濁のない良好な透明性を有した成形体となる。そのため、合成樹脂成形体が砂などで傷付いて白濁しても、該白濁は一時的なもので、時間の経過により該傷が自己修復により塞がって透明性が回復するので、良好な透明性を長期間に亘り発揮する成形体とすることができる。
また、表面樹脂層がウレタンアクリレート樹脂であると、表面硬度は従来のシリコーン樹脂やアクリル樹脂からなるハードコート層よりも劣るものの、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂基材よりも表面硬度に優れていて、成形体に耐擦傷性を付与することができる。また、該ウレタンアクリレート樹脂は伸縮性を有するので、熱加工性を付与することもできる。そのため、合成樹脂基材が熱可塑性樹脂で形成されると、熱曲げや圧空成形や型押し成形などの二次熱加工も可能となる。
このようなウレタンアクリレート樹脂は、常温においても弾性を有しているので、この樹脂よりなる表面樹脂層(成形体表面)に傷などが付いても、該傷が該樹脂の弾性により容易に塞がれて元の外観に修復、復元し易く、傷のない表面状態として目視することができる。従って、成形体に傷が付いて光が乱反射し一時的に白濁しても、しばらくすると、該傷が塞がって元の状態に復元し、光が乱反射することがなくなり、元の白濁のない透明性を発揮することができる。
さらに、ウレタンアクリレート樹脂などからなる表面樹脂層にシリカが含まれると、表面硬度が僅かに向上して傷が付き難くなるし、ラミネートフィルムによる製造の際にはプレス金型や成形ロールからの剥離が良好に行われるし、転写フィルムによる製造の際には剥離フィルムからの表面樹脂層の剥離が良好に行われて、表面状態の良い合成樹脂成形体とすることができる。
一方、本発明の合成樹脂成形体の接着層が、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル当量がポリオールの水酸基のモル当量より多くなるように、ポリイソシアネートとポリオールとを配合して反応させたポリウレタン系樹脂より形成されていると、未反応のイソシアネート基が合成樹脂基材及び表面樹脂層との間で水酸基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ウレタン結合、尿素結合などの活性水素と反応し、共有結合を生じて密着性を向上させることができる。さらに、ウレタン結合は水素結合などの分子間力を生じさせて密着性をさらに向上させ、また、接着層が合成樹脂基材及び表面樹脂層との界面でお互いが入り込んだ状態で固化し良好な接着性を発揮できる。
また、この接着層は、ポリオールの水酸基と、そのモル当量に見合うポリイソシアネートのイソシアネート基とがウレタン結合をなしているので、熱や水などに対する安定性を有し、煮沸水試験などによっても気泡や皺などが発生することがないし、部分的に剥離することもなく、実使用においても層間剥離などを生ぜず、長期間使用可能である。
さらに、接着層にポリウレタン系樹脂を使用することで、二次熱加工するための加熱により可塑性を示し、しかも、上記に記載の如く、未反応のイソシアネート基が合成樹脂基材及び表面樹脂層との間で共有結合を生じて密着性を向上させているので、加熱による層間の密着性を保持し、合成樹脂基材と表面樹脂層とが剥離することを防止することができ、熱曲げなどの二次熱加工を良好に行うことができる。
そして、接着層のポリウレタン系樹脂を形成するポリイソシアネートのイソシアネート基のモル当量とポリオールの水酸基のモル当量とのモル当量比が、1.0<イソシアネート基モル当量/水酸基モル当量≦5.0であると、水酸基は略全て反応するので、水との相溶性が悪くなり、煮沸水試験時における密着性を向上させることができて極めて良好な密着性を有し、合成樹脂基材と表面樹脂層とが剥離しない合成樹脂成形体とすることができる。
モル当量比が1.0以下であると、ウレタン結合をなした後においても、水酸基が残存することとなり、当該残存水酸基と水とが良好な相溶性を示すので、煮沸水試験での密着性を悪くして層間剥離する恐れがある。一方、モル当量比が5.0より大きいと、接着層の凝集力が弱くなるために、やはり煮沸水試験時の密着性が悪くなる。このように煮沸水試験時の密着性が悪いと、屋外などでの実使用時にクラックや層間剥離という問題が発生する。そのために、モル当量比を上記1.0<イソシアネート基モル当量/水酸基モル当量≦5.0にすると前記問題をなくすことができるので好ましい。
本発明のラミネートフィルムは、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル当量がポリオールの水酸基のモル当量より多くなるように、ポリイソシアネートとポリオールとを配合して反応させたポリウレタン系樹脂より形成された接着層と、ウレタンアクリレート樹脂より形成された表面樹脂層とが積層されているので、該ラミネートフィルムは柔軟性を有し紙管などに巻いても各層が剥離したり皺が入ったりすることがない。そして、接着層は、接着性フィルムとアンカー効果、共有結合、分子間力などにより良好に接着接合しているので、ラミネートの際の熱によっても剥離や皺や気泡などが生じることがない。
本発明の転写フィルムは、ウレタンアクリレート樹脂より形成された表面樹脂層と、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル当量がポリオールの水酸基のモル当量より多くなるように、ポリイソシアネートとポリオールとを配合して反応させたポリウレタン系樹脂より形成された接着層を有するので、該転写フィルムは柔軟性を有し、転写フィルムを紙管などに巻いても各層が剥離したり皺が入ったりすることを防止することができる。そして、接着層は、転写の際の熱により十分に軟化し、樹脂基材の柔らかい表面と十分に密着し、アンカー効果、共有結合、分子間力などにより、良好に接着接合することができる。
このようなラミネートフィルムや転写フィルムの表面樹脂層にシリカが含まれると、該シリカ含有表面樹脂層がラミネートフィルムによる製造の際に使用されるプレス金型や成形ロールから良好に剥離するし、転写フィルムによる製造の際に使用される剥離フィルムから良好に剥離するので、表面状態の良い合成樹脂成形体を製造することができる。
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は本発明の一実施形態に係る合成樹脂成形体を示す断面図、図2は該合成樹脂成形体を形成するために使用される転写フィルムの断面図である。
この実施形態の透明合成樹脂成形体P1は、透明な板状の樹脂基材1の片側の表面に、接着層2と表面樹脂層3とがこの順で積層一体化された厚さ0.1〜20mmの成形体であり、その成形体の全光線透過率は75%以上〜98%以下、ヘーズは5%以下〜0.1%以上となされている。そして、表面樹脂層3に対して傷付与試験を行ない、その試験前と試験直後のヘーズの変化量が0.3%以上であり、しかも、該試験の5分経過後には下記式(1)に基づいて得られる回復率が50%以上となるヘーズを示す自己修復性を有する成形体である。ここで、試験直後のヘーズとは、傷付与試験後40秒以内に測定して得たヘーズをいう。
上記の傷付与試験は、真鍮ブラシを用いて行うと表面樹脂層のみに傷を付けることが容易に行えるので、上記表面樹脂層の自己修復性を測る上で好ましい。なお、樹脂基材1の両表面に接着層2、2、表面樹脂層3、3を積層一体化させて、両表面共に自己修復性能を有する合成樹脂成形体としてもよい。
この実施形態の透明合成樹脂成形体P1の樹脂基材1は、透明な熱可塑性樹脂を板状に成形したものである。この熱可塑性樹脂は限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等のビニル系樹脂、ニトロセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート、非晶質又は結晶質ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリエステル等のエステル系樹脂、ABS樹脂、これらの樹脂の共重合体樹脂、これらの樹脂の混合樹脂などが用いられる。
上記熱可塑性樹脂は、加熱により軟化し二次熱加工できるので、二次熱加工可能な本発明合成樹脂成形体の基材樹脂として好ましく用いられる。特に、熱可塑性ポリカーボネートは耐衝撃性が良好で透明性も有していて、主に屋外用途の基材樹脂として好ましく用いることができ、また、非晶質ポリエチレンテレフタレートは加工性が良好で、深絞りなどを行なう二次熱加工を行なう用途の基材樹脂として好ましく用いられる。そして、このポリカーボネートや非晶質ポリエチレンテレフタレートは、表面硬度が乏しく傷が付き易いので、本発明のように、表面に表面樹脂層3を設けて耐擦傷性を発揮させたり、傷が付いても自己修復させて表面状態を復元し透明性を回復させることで、更に用途を拡大することができる。
この樹脂基材1には、前記各樹脂の成形などに一般に添加される可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤が適宜配合され、成形性、熱安定性、耐候性等が高められている。この樹脂基材1の厚さは用途に応じて適宜変更されるが、通常、0.1〜20mm程度の厚さで用いられる。二次熱加工可能な本発明合成樹脂成形体の樹脂基材1であれば、0.5〜15.0mm程度の厚さであることが二次熱加工の成形性能を発揮させるうえで好ましい。
この実施形態の透明合成樹脂成形体P1は、樹脂基材1を板状体に成形しているが、それ以外の異型形状に成形してもよい。また、樹脂基材1にはフィラーや着色剤などを配合して着色透明や半透明などの透明性を有した基材であってもよいが、合成樹脂成形体P1の全光線透過率が75%以上、ヘーズが5%以下の透明性を必要とするので、75%以上の全光線透過率と5%以下のヘーズの透明性を有する樹脂基材1である必要がある。好ましくは、85〜98%の全光線透過率と0.1〜1.0%のヘーズとを有する樹脂基材1であることが望ましい。
接着層2は、樹脂基材1と表面樹脂層3とを接着一体化するものであり、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などの可塑性を示す硬化性樹脂により形成されていている。これらの樹脂には、必要により前記各樹脂に一般的に添加される紫外線吸収剤、顔料、染料、表面改質剤、重合開始剤などの添加剤が適宜添加されている。これらの樹脂は透光性、特に透明性を有していることが透明合成樹脂成形体P1を作製するうえで好ましい。しかし、樹脂は透光性・透明性を有していなくても、その厚さを薄くすることで、接着層2は透光性や透明性を有することとなるので、必ずしも透光性・透明性を有する必要はない。しかし、樹脂基材1と表面樹脂層3との接着一体化強度を考慮すれば一定以上の厚さが必要なので、全光線透過率が75%以上、ヘーズが5%以下の透明接着層2であることが好ましく、そのためには透光性樹脂で形成することが好ましい。更に、二次熱加工する合成樹脂成形体P1であれば、該接着層2は熱可塑性樹脂や架橋密度が低くて可塑性を有する硬化性樹脂にて形成されている必要がある。
なお、硬化性樹脂が熱可塑性を示すためには、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを共重合する、あるいは、長鎖アルキル基などの柔軟性を示す基を有する硬化性モノマーを重合する等により、架橋密度を低くすることによりなされる。
このような接着層用樹脂のなかで、ポリウレタン系樹脂、特に、完全架橋しておらず架橋密度が低くて可塑性を有する熱硬化性樹脂であるポリウレタン系樹脂は耐熱性と耐水性を有する接着層を形成できるうえに、加熱により軟化するので、ラミネートフィルム用や転写フィルム用や二次熱加工可能な樹脂成形体用の接着層樹脂として好ましく用いられる。該架橋密度が低いポリウレタン系樹脂は、ポリオールの水酸基とポリイソシアネートのイソシアネート基とがモル当量(以下、当量とも記す)となるように配合されて全てがウレタン結合して三次元構造をなしているものではなく、ポリイソシアネートのイソシアネート基当量がポリオールの水酸基当量より多くなるように、換言すれば、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基の数がポリオールに含まれる水酸基の数より多くなるように、ポリイソシアネートとポリオールとが配合されて、水酸基の略全てはイソシアネート基と反応しているが、余分に配合されたポリイソシアネートのイソシアネート基は未反応のまま残り、接着層2の内部に残存した状態でポリウレタン系樹脂を形成しているものが好ましく用いられる。そのため、該ポリウレタン系樹脂を用いた接着層2には、ウレタン結合したウレタン樹脂と未反応ポリイソシアネートとが混在していることとなる。
このポリウレタン系樹脂を形成するポリオールとしては、エーテル系、エステル系、カーボネート系、脂肪族系ポリオールなどが用いられ、ポリイソシアネートとしては2官能、3官能、変性イソシアネートなどが用いられる。具体的なポリオールは、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシヘキサメチレングリコール、種々のタイプのエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、ポリジメチルシロキサンジオール、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、水酸基末端液状ポリブタジエン、水酸基末端液状ポリイソプレンなどが好ましく用いられる。また、具体的なポリイソシアネートは、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが好ましく用いられる。
そして、ポリイソシアネートとポリオールは、そのイソシアネート基と水酸基とのモル当量比が、1.0<イソシアネート基モル当量/水酸基モル当量≦5.0となるように配合するのが好ましい。このように配合すると、未反応のポリイソシアネート基が合成樹脂基材1及び/又は表面樹脂層3との間で水酸基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ウレタン結合、尿素結合などの活性水素と反応し共有結合を生じて密着性を向上させることで、樹脂基材1と表面樹脂層3との接着接合を維持でき、二次熱加工するための加熱による層間の密着性を保持し剥離を防止することができる。さらに、一部ウレタン結合して架橋しているので柔らかくなり過ぎて気泡や皺が発生することを防止でき、また耐水性が良好になり、水に対する安定性を有する。
このように、一部がウレタン結合することにより、接着層2に耐熱性、耐水性を発揮させて、成形体を煮沸水試験しても該接着層2に気泡や膨れや皺が発生することがなくて、長時間使用しても剥離や外観不良が生じない合成樹脂成形体とすることができるのである。
さらに、このウレタン結合は、樹脂基材1及び又は表面樹脂層3の分子と水素結合などの分子間力を有していて、これらとの密着力を向上させて、一層剥離を防止している。
モル当量比(イソシアネート基モル当量/水酸基モル当量)が1.0であると、イソシアネート基と水酸基とが全て反応して三次元構造を形成するために密着性が悪くなり、柔軟性がなくなる。また、モル当量比が1.0未満であると、接着層内に水酸基が未反応で残存し、当該水酸基は水との相溶性が良いために煮沸水試験時の煮沸水によって密着性が悪化し、気泡や膨れや皺などが発生して剥離する恐れがある。一方、当量比が5.0より大きいと、接着層の凝集力が弱くなるために、やはり煮沸水試験時の密着性が悪くて剥離する恐れがある。このように煮沸水試験時の密着性が悪いと、屋外などでの実使用時にクラックや層間剥離や外観が悪くなるという問題を発生するので、上記のように、1.0<イソシアネート基当量/水酸基当量≦5.0となるようにすることで、前記問題をなくすことができるので好ましいのである。さらに好ましい当量比は、1.0<イソシアネート基当量/水酸基当量≦2.0である。
該接着層2の厚さは、0.1〜10μmにすることが好ましい。0.1μm以下であると、接着強度を保つことが困難になるし、柔軟性が乏しくなるので望ましくなく、また10μm以上にしても、接着強度、保形性のさらなる向上が期待できないので、材料の無駄遣いとなるし、更に、透明性も悪くなる。
透明合成樹脂成形体P1の表面樹脂層3は、熱可塑性合成樹脂、熱や紫外線や電子線や湿気などで硬化する硬化性樹脂、切断した端面同士が接合する合成樹脂、ゴムなどより形成されてなり、自己修復性を有するものである。これらの合成樹脂としては、ウレタン系樹脂、軟質塩化ビニル、スチレンやポリエステルやオレフィンやフッ素などの熱可塑性エラストマーなどの復元性を有する樹脂が適宜選択して使用される。
そして、これらの合成樹脂に、シリカやガラスなどの無機粒子、ポリメチルメタクリレートやシリコーンなどの合成樹脂粒子、酸化チタンや酸化アルミニウムなどの金属粒子を添加して、表面樹脂層3を形成することが好ましい。該粒子は表面樹脂層3の表面硬度を向上させることができると共に、ラミネートフィルムを使用して合成樹脂成形体P1を作製する際のプレス金型や成形ロールとの剥離性を向上させ、転写フィルムを使用して合成樹脂成形体P1を作製する際の剥離フィルムとの剥離性を向上させて、表面樹脂層3の表面状態を向上させることができる。特に、シリカは透明性を有するので、透明表面樹脂層3を形成するうえで好ましく用いられる。これらの粒子は、表面樹脂層3に1〜20質量%、好ましくは3〜10質量%程度含ませることが望ましい。また、透明性や分散性の観点から、その平均粒径は1〜200nmであることが好ましい。
さらに、表面樹脂層3には、上記粒子の他に、紫外線吸収剤、界面活性剤、単量体、重合開始剤、表面改質剤、帯電防止剤、顔料、染料、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などの、塗料にするのに必要な一般的な添加剤または性能を向上させるための添加剤が添加されて形成される。
これらの合成樹脂の中で、ウレタン系樹脂は硬化後にはウレタン結合のハードセグメントによる表面硬度性と、ウレタン結合した残りのポリオールとポリイソシアネートの残存有機成分であるソフトセグメントによる柔軟性とを兼持しているので、自己修復機能を有すると共に耐擦傷性と二次熱加工可能な成形体の表面樹脂層3の樹脂として好ましく用いられる。
ウレタン系樹脂のなかでも、ウレタンアクリレート樹脂やウレタンメタアクリレート樹脂で表面樹脂層3を形成すると、アクリレート成分またはメタアクリレート成分によっても表面硬度が高められて耐擦傷性を一層付与させることができると共に、万一該表面樹脂層3に傷が付いても、該傷を周囲の樹脂の上記ソフトセグメントの弾性によりにより塞いで元の表面状態に復元する自己修復性を有することになるので特に好ましい。なお、以下の表面樹脂層3に用いるウレタン系樹脂の説明において、アクリレートとメタアクリレートとの両方を含む意味で(メタ)アクリレートなる用語を使用する。
このウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、(a)1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート樹脂、または、(b)1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートを含有し、該ウレタン(メタ)アクリレートが、ポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレート残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数が異なる2種以上のウレタン(メタ)アクリレートで構成されるウレタン(メタ)アクリレート樹脂、または、(c)1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとカプロラクトン単位の繰り返し数が異なる2種以上のポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート樹脂、または、(d)分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応して得られたウレタン(メタ)アクリレートと、1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートとを含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂であることが好ましい。上記各ポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとしては、特にポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
これらのウレタン(メタ)アクリレート樹脂の中でも、(e)1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートとこれとは異なるヒドロキシ(メタ)アクリレート(特に1級水酸基を有するもの)とを共重合させたヒドロキシ(メタ)アクリル樹脂と、を反応させたウレタン(メタ)アクリレート樹脂が好ましく用いられる。このウレタン(メタ)アクリレート樹脂(e)は、その水酸基価を125〜145とすることが、有機イソシアヌレートのイソシアヌレート基との反応性を高め、表面樹脂層の耐汚染性や外観を良好にするうえで好ましい。
前記有機イソシアネートのうち、1分子中に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、ノルボルナンジイソシアネートなどのジイソシアネートモノマーが好ましく用いられる。また、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては、ジイソシアネートモノマーをイソシアヌレート変性させた下記構造式(A)で表される化合物、ジイソシアネートモノマーをアダクト変性させた下記構造式(B)で表される化合物、ジイソシアネートモノマーをビウレット変性させた下記構造式(C)で表される化合物、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートカプロエート、トリアミノノナントリイソシアネートなどのイソシアネートプレポリマーが好ましく用いられる。
一方、前記ポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートまたはポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、下記構造式(D)で表される化合物である。この具体例としては、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが好ましく用いられる。これらに使用されるカプロラクトンとしては、ε−カプロラクトン、トリメチルカプロラクトンなどが好ましく用いられる。
さらに、前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、下記構造式(E)で表される化合物であり、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが好ましく用いられる。
さらに、1級水酸基を有するヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが好ましく用いられる。
これらの上記ウレタン(メタ)アクリレートにおいて、ポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレート残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数が異なる2種以上のウレタン(メタ)アクリレートが含有されていてもよい。さらに、上記ウレタン(メタ)アクリレートに、1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートとを含有させてもよい。さらに、スチレンなどの環状骨格を有する単量体を添加して擦傷性を向上させたり、メチル(メタ)アクリレートなどの単量体を添加して重合反応性を調整したりすることが好ましく、また、重合開始剤が添加されている。
このようなモノマーや共重合樹脂などを反応して得られたウレタンアクリレート樹脂よりなる表面樹脂層3は自己修復性を有していて、砂や小石や雑巾やブラシやタワシやスポンジなどで表面樹脂層3の表面が傷付けられても、該傷が時間の経過と共に周囲の樹脂、特に樹脂中のソフトセグメントの弾性により塞がれて元の表面状態に回復し、傷が目視できなくなるので、表面硬度がシリコーン系ハードコート剤やアクリル樹脂系ハードコート剤で形成された表面樹脂層より劣っても、恰も傷が付きにくい表面樹脂層3となり、該表面樹脂層3を有する成形体は耐擦傷性を有するものとなる。しかも、ウレタンアクリレート樹脂からなる表面樹脂層3は伸縮性を有するので、樹脂基材1を熱加工可能な熱可塑性樹脂で形成しておけば熱加工可能な成形体にすることができ、熱加工されて屋外で使用される異形成形体を形成するための屋外二次熱加工用板材の表面樹脂層3として特に有用である。
この表面樹脂層3の厚さは、1〜100μmにすることが好ましい。1μm以下であると表面硬度を高くすることができないし、必要な耐擦傷性を付与することができず、ウレタンアクリレート樹脂からなる表面樹脂層3であっても自己修復性が乏しくなる。一方、100μm以上にしても、自己修復性の更なる向上が期待できないので、材料の無駄遣いとなり望ましくない。より好ましくは、5〜20μmである。
そして、樹脂基材1と接着層2と表面樹脂層3とが何れも透光性又は透明である透明合成樹脂成形体P1であるので、上記傷などによって光が乱反射して白濁し一時的に透明性を失うが、時間が経過すると、該傷が塞がって元の表面状態に修復し乱反射することがなくなるので、元の透明性をほぼ発揮することができ、長期化に亘り透明性を維持することができる透明成形体P1となる。しかし、該傷が接着層2、更には樹脂基材1にまで達すると、表面樹脂層3の傷は元の状態に修復するが、接着層2、樹脂基材1の傷は修復することがなくて依然として傷付いたままであるので、該傷により乱反射して白濁し、成形体としての自己修復性は有さなくなる。又、表面樹脂層3が摩擦や磨耗などによりなくなると、自己修復性は有さなくなる。
特に、合成樹脂成形体P1は全光線透過率が75%以上、ヘーズが5%以下の透明性を有しているので、自己修復性機能が効果的に発揮され、砂などにより表面樹脂層3が傷付いて白濁しても時間の経過と共に自己修復して、ほぼ元の前記全光線透過率と前記ヘーズを有する透明性合成樹脂成形体となる。合成樹脂成形体P1の好ましい全光線透過率は80%以上で、ヘーズは3%以下であり、最も好ましい全光線透過率は85〜98%、ヘーズは0.1〜1.0%である。
そして、上記の如き構成の透明合成樹脂成形体P1の表面樹脂層3に対して傷付与試験を行うと、該表面樹脂層3が樹脂、特にウレタンアクリレート樹脂で形成されているので、該成形体表面(表面樹脂層3)に傷が付いて光が乱反射しヘーズが高くなり、その試験前と試験直後のヘーズの変化量(試験後40秒以内に測定したヘーズから試験前のヘーズを差し引いた値)が0.3%以上となる。そして、この高くなったヘーズも、付与された傷が表面樹脂層3を形成するウレタンアクリレート樹脂によって時間と共に塞がれて、表面状態が元の状態に修復されて光の乱反射が小さくなり、傷付与試験の5分経過後には試験前のヘーズにほぼ回復する。この回復は、前記式(1)により得られる回復率が50%以上となるようにすることにより、自己修復性が確実に発揮され透明性をほぼ回復できる。より好ましい回復率は70%以上、最も好ましくは85%以上回復させることが望ましい。
この傷付与試験は、表面樹脂層3のみを傷付ける試験である必要であり、接着層2、更には樹脂基材1までに達する試験では、接着層2又は及び樹脂基材1に付いた傷が修復できないので透明性を回復することができないからである。具体的には、例えば、直径が0.08〜0.2mmの円柱形状をなした真鍮材、これらの真鍮材が多数均一に配置された真鍮ブラシ、真鍮材が多数束ねられた束材が複数個配置された真鍮ブラシ、真鍮材が柄先に多数取付けられた真鍮刷毛、真鍮繊維からなる真鍮ウール、ナイフなどの刃状体、スチールウール、布、テーバー磨耗輪、サンドペーパーなどを用いて、これらで表面樹脂層3のみを傷付けるようにする。特に好ましいのは、真鍮で作製された上記のもの、特に真鍮ブラシであることが好ましく、他の材料であれば硬過ぎて、接着層2や樹脂基材1を傷付ける恐れがあるからである。
上記真鍮ブラシとしては、例えば、トラスコ中山株式会社製の真鍮ブラシである「木柄真鍮ブラシ4行」(真鍮材は丸形で、その直径は約0.15mm、真鍮材の長さは約16mm、真鍮材が約60本束ねられた束材の58束が4行に並べられて木柄に固定されたブラシ)があり、本発明者は、これを1kgの力で表面樹脂層3に押し付けて、前後に滑らせることにより表面樹脂層3のみを傷付けることができた。その他の真鍮ブラシとしては、株式会社トップマン製、京都機械工具株式会社製、株式会社MonotaRO製など、多数市販されている。
合成樹脂成形体P1のうち、その表面樹脂層3に対して上記傷付与試験を行う前の成形体のヘーズが0.1〜1.0%である透明成形体であっても、表面樹脂層3が樹脂、特にウレタンアクリレート樹脂で形成されているので、当該試験後の40秒以内に測定したヘーズは0.3〜5.0%と高くなって白濁し、その試験前後のヘーズの変化量は0.2〜4.0%となる。このように、ウレタンアクリート樹脂より形成された表面樹脂層3を有する合成樹脂成形体P1は、シリコ−ン系などのハードコート剤より形成された表面樹脂層よりも傷付き易くて表面硬度に劣るものの、樹脂基材1の表面硬度を向上させ、一定以上の表面硬度を有する成形体となる。そして、傷付与試験後の5分経過した後には、上記の如く傷が塞がり元の状態に修復されて透明性が回復し、そのヘーズの上記回復率が70%以上となり、試験前の透明性をほぼ維持することとなる。
そして、樹脂基材1が熱可塑性樹脂により形成され、表面樹脂層3がウレタンアクリレート樹脂で形成された透明樹脂成形体P1であると、該合成樹脂成形体P1は耐擦傷性を有していて傷が付きにくいし、又は/及び、傷がついても自己修復性が発揮されて傷が修復されるので元の全光線透過率とヘーズを略回復することができるし、また、熱加工ができるので、砂などが風に飛ばされて擦れる自動車やオートバイなどの車両の窓ガラスや風防面体、或は切削屑などが当たる工作機械カバーや工作機械室の覗き窓、或は屋外で使用される建設機械の窓の保護板、或は人が触るタッチパネルの保護板などの、透明性と耐擦傷性とを必要とする用途、特に、前記に加えて二次熱加工性とを必要とする用途に有用な成形体となる。なお、熱加工としては、上記熱型押し成形加工の他に、圧空成形、真空成形、熱曲げ加工などの公知の熱加工方法が適宜使用される。
上記の如き構成の合成樹脂成形体P1を得るには、例えば、転写方法、直接塗布方法などの方法を用いることができる。
転写方法を用いる場合は、図2に示すように、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートなどの剥離フィルム4の片面に、必要なら離形層を形成した後に、上記のウレタンアクリレート樹脂などの合成樹脂からなる表面樹脂層用塗料を塗布、加熱乾燥、硬化させて表面樹脂層3を形成し、次いで、この表面樹脂層3の上に、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基が水酸基より多く含まれるように混合した接着層用塗料を塗布、加熱乾燥して硬化させた接着層2を形成して、剥離フィルム4と表面樹脂層3と接着層2とがこの順で積層された転写フィルムF1を作製し、紙管に巻取る。そして、押出し成形されている合成樹脂シート1(樹脂基材1)の表面に、接着層2が合成樹脂シート1側となるように転写フィルムF1を重ねて加熱圧着し、剥離フィルム4を剥離して、接着層2と表面樹脂層3とを転写することによって、樹脂基材1と接着層2と表面樹脂層3とが積層一体化した合成樹脂成形体P1を製造することができる。
なお、合成樹脂シートの両面に前記転写フィルムF1を適用して転写すれば、樹脂基材1の両面に接着層2、2と表面樹脂層3、3とが積層一体化した合成樹脂成形体を製造することができる。また、合成樹脂成形体は、プレス成形されるための複数のカレンダーシートからなる樹脂基材1の上面又は上下両面に転写フィルムF1を重ね、熱圧成形して一体化した後に、剥離フィルム4を剥離することによっても製造することができる。
この転写フィルムF1の表面樹脂層3は、ウレタンアクリレート樹脂などで形成されているので、ある程度の柔軟性を有していて紙巻などに巻き取ることができる。そして、接着層2は、上記の如く、イソシアネート基の一部が反応せずに残存しているために、合成樹脂シート1に加熱圧着した時に、該シート1の柔らかい表面と十分密着しアンカー効果で一体化できるうえに、水素結合などの分子間力により良好な接合力を得ることができる。また、この接着層2は柔軟性を有するので、転写フィルムF1を紙管などに巻いても該層2がクッション作用をなして各層が剥離したり皺が入ったりすることを防止することができる。このため、この接着層2を有する転写フィルムF1を用いて製造された合成樹脂成形体P1は、各層の密着・接合・一体化が良好で長期間使用しても剥離することがない。
直接塗布方法を用いる場合は、合成樹脂板(樹脂基材1)を押出し成形やプレス成形にて予め作製し、上記接着層用塗料を該合成樹脂板(樹脂基材1)に塗布、加熱乾燥して硬化させた接着層2を形成し、次に、その上に上記表面樹脂層用塗料を塗布、加熱乾燥、硬化させて表面樹脂層3を形成することにより、樹脂基材1と接着層2と表面樹脂層3とが積層した合成樹脂成形体P1を容易に製造することができる。
図3は本発明の他の実施形態に係る合成樹脂成形体を示す断面図、図4は該合成樹脂成形体を形成するために使用されるラミネートフィルムを示す。
この実施形態の合成樹脂成形体P2は、透明な板状の樹脂基材1の片側の表面に、接着樹脂層5と接着層2と表面樹脂層3とがこの順で積層一体化された成形体であり、その透明合成樹脂成形体P2の全光線透過率は75%以上〜98%以下、ヘーズは5%以下〜0.1%以上となされている。そして、表面樹脂層3に対して傷付与試験を行ない、その試験前と試験直後のヘーズの変化量が0.3%以上であり、しかも、該試験の5分経過後には前記式(1)に基づいて得られる回復率が50%以上となるヘーズを示す自己修復性を有する成形体である。該透明合成樹脂成形体P2の樹脂基材1、接着層2、表面樹脂層3は、前記合成樹脂成形体P1のそれぞれと同じであるので、同じ符号を付して説明を省略する。
接着樹脂層5は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などの、基材樹脂1との接着性に優れた樹脂よりなる層である。該接着樹脂層5は、その厚さを30〜300μmとし、全光線透過率を75%以上、ヘーズを5%以下になされて透明性を有していることが好ましい。
この透明合成樹脂成形体P2を得るには、例えば、ラミネート方法、直接塗布方法などの方法を用いることができる。
ラミネート方法を用いる場合は、図4に示すように、アクリルフィルムなどの接着性樹脂よりなるフィルム(接着樹脂層)5に、前記接着層用塗料を塗布、加熱乾燥して硬化させた接着層2を形成し、次いで、前記表面樹脂層用塗料を塗布、加熱乾燥、硬化させた表面樹脂層3を形成して、ラミネートフィルムF2を作製する。そして、該ラミネートフィルムF2を押出し成形されている合成樹脂シート1(樹脂基材1)にラミネートすることにより、樹脂基材1と接着樹脂層5(アクリルフィルム)と接着層2と表面樹脂層3とが積層した透明合成樹脂成形体P2を製造することができる。なお、プレス成形されるための複数のカレンダーシートからなる樹脂基材1の上面又は上下両面にラミネートフィルムF2を重ね、熱圧成形して一体化することによっても製造することができる。なお、合成樹脂シートの両面に前記転写フィルムF2を適用して転写すれば、樹脂基材1の両面に接着層2、2と表面樹脂層3、3とが積層一体化した合成樹脂成形体を製造することができる。
直接塗布方法を用いる場合は、合成樹脂板(樹脂基材1)を押出し成形やプレス成形にて予め作製し、アクリル樹脂などの接着性樹脂よりなる接着樹脂層用塗料を塗布、乾燥して接着樹脂層5を形成し、次に、その上に上記接着層用塗料を塗布、加熱乾燥し硬化させた接着層2を形成し、次に、その上に上記表面樹脂層用塗料を塗布、加熱乾燥、硬化させた表面樹脂層3を形成することにより、樹脂基材1と接着樹脂層5と接着層2と表面樹脂層3とが積層した合成樹脂成形体P2を容易に製造することができる。
以下、実施例により更に具体的に説明する。
(実施例1〜7)
厚さ50μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに、ウレタンメタアクリレート樹脂塗料(ナトコ株式会社製「自己治癒クリアーNo.3000」)を溶剤(メチルイソブチルケトン)で希釈したウレタンメタアクリレート塗液を塗布、加熱乾燥、硬化させて表面樹脂層(乾燥厚さ10μm)を形成した。次に、水酸基モル当量が3206のエステル系ポリオールを溶剤に溶解したエステル系ポリオール塗液(樹脂分:30.0%)と、イソシアネート基モル当量が198のポリイソシアネート(樹脂分:100.0%)とを、100:0、100:1、100:2、100:3、100:4、100:5、100:10と、混合割合(質量比)を変えて混合し、イソシアネート基と水酸基とのモル当量比(イソシアネート基/水酸基)が0.00、0.54、1.08、1.82、2.16、2.70、5.41である7種類のウレタン塗液を得、この各ウレタン塗液を前記表面樹脂層に塗布、加熱乾燥して硬化させた接着層(厚さ2μm)を形成することにより、7種類の転写フィルムを作製した。
そして、ポリカーボネート樹脂を厚さ5mmの透明なシート(タキロン株式会社製「ポリカーボネートシートPC1600」)に押出し成形しつつ、前記各転写フィルムの接着層をシート面に押し当てて加熱圧着して積層一体化した後に、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して接着層と表面樹脂層とを転写し、ポリカーボネート樹脂基材、接着層、表面樹脂層とがこの順で積層した3層構造の透明ポリカーボネート樹脂成形板を得た。これらを実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7とする。
各実施例の透明ポリカーボネート樹脂成形板の、透明性をJIS K7361−1に基づき、スガ試験機株式会社製直読ヘーズコンピューターHGM−2DPを用いて、全光線透過率とヘーズとを調べた。その結果を表1及び表2に記載する。
また、各実施例の成形板の表面硬度を、JIS K5400に基づき、鉛筆硬度により調べた。その結果を表1及び表2に併記する。
また、自己修復性を新東科学株式会社製表面性測定機、TYPE−HEIDON−14を用いて、室温23℃の雰囲気中にて、荷重1kgの力で真鍮ブラシ(トラスコ中山株式会社製「木柄真鍮ブラシ4行」)を押し付け、5m/分の速度で10回往復して傷を付ける傷付与試験を行った。この傷付与試験終了後、約30秒経過した時点にて、ヘーズを前記と同様に調べ、これを傷付与試験直後のヘーズとした。さらに、試験後5分経過したときのヘーズを前記と同様に調べ、これを傷付与試験の5分経過後のヘーズとした。これらの結果を表1及び表2に併記する。さらに、傷付与試験前、試験後約30秒経過したとき、試験後5分経過したときの各ヘーズとから、試験前後のヘーズ変化量、及び前記式(1)に従ってヘーズの回復率を計算した。この結果を表1及び表2に併記する。
また、試験後5分経過したときの成形板の表面状態を50cm離れた場所から観察し、傷が目視できるか否かを調べた。その結果を表1及び表2に併記する。傷が目視できない成形板には「無」を、また目視できた成形板には「有」と記した。これらのヘーズ、ヘーズ変化量、ヘーズ回復率、目視観察の結果から、自己修復性能を総合判定した。
また、各成形板の表面樹脂層の密着性を、JIS K5600−5−6に基づいて碁盤目密着性を調べた。煮沸水に60分間浸漬した後の各成形板について碁盤目テストを行ない、それぞれの未剥離の数を調べると共に、煮沸水に浸漬した後の各成形板の外観を目視により調べた。その結果を表1及び表2に併記する。皺や膨れや気泡などの不具合が目視できなかった成形板には○を、目視できた成形板にはその不具合状態を記した。なお、煮沸水に浸漬する前の各成形板についても同様に碁盤目テスト、外観を調べた結果、全ての成形板は碁盤目テストで剥離せず、外観も良好であった。
さらに、熱加工性を調べるため、半径50mmの雄型と雌型を作製し、各成形板を乾燥後、加熱(220℃、5分)して、雄型と雌型の間に表面樹脂層が雌型側となるように挟み、型押し成形を行ない、図5に示すような、中央に半径50mmの半円形の凸状半円筒部を有する各熱加工成形体P3を得た。この各熱加工成形体P3の凸状半円筒部の表面を観察し、白化、皺、気泡、クラック等の不具合の有無を調べた。その結果を表1及び表2に併記する。不具合がなかった成形体P3には○を、不具合があった成形体P3にはその状態を記した。
(実施例8、9、10)
実施例1で使用したウレタンメタアクリレート樹脂塗料100に対して、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「MIBK−ST」)を5、10、15の質量比となるように配合し、これらを溶剤(メチルイソブチルケトン)で希釈したシリカ含有ウレタンメタアクリレート塗液を3種類調製した。この各塗液を用いた以外は実施例4と同様にして、転写フィルムを作製し、ボリカーボネートシートに転写することにより、3種類の3層構造の透明ポリカーボネート樹脂成形板を得た。これらを実施例8、実施例9、実施例10とする。
これらの各実施例8、9、10の透明樹脂成形板について、実施例1と同様に、透明性、表面硬度、自己修復性、煮沸水試験、型押し成形の各測定及び試験を行った。その結果を表1及び表2に併記する。
(実施例11)
実施例1で使用したエステル系ポリオールとポリイソシアネートとを混合割合100:3で混合して、水酸基とイソシアネート基との当量比が1.82となるように混合すると共に、更に該混合液100に対してコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「MEK−ST」)を20の質量比となるように添加、混合した接着層用のシリカ含有ウレタン塗液を調製した。そして、この接着層用のシリカ含有ウレタン塗液を用いた以外は、実施例4と同様にして、転写フィルムを作製し、ボリカーボネートシートに転写することにより、3層構造の透明ポリカーボネート樹脂成形板を得た。これを実施例11とする。
この実施例11の透明樹脂成形板に対して、実施例1と同様に、透明性、表面硬度、自己修復性、煮沸水試験、型押し成形の各測定及び試験を行った。その結果を表1及び表2に併記する。
(比較例1)
実施例1で使用した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに、アクリル塗料(GE東芝シリコーン株式会社製紫外線硬化型シリコーン変性アクリル塗料「UVHC3000」)を塗布、乾燥した後に、紫外線照射して硬化させて表面樹脂層(厚さ4μm)を形成した。次に、実施例4で使用した水酸基とイソシアネート基との当量比が1.82であるウレタン塗液を用い、前記表面樹脂層の上に、該ウレタン塗液を塗布、加熱乾燥して硬化させた接着層(厚さ2μm)を形成することにより、転写フィルムを作製した。続いて、実施例4と同様にして、厚さ5mmの透明ポリカーボネートシートに転写して、3層構造の比較例1の透明樹脂成形板を得た。
この比較例1の透明樹脂成形板に対して、実施例1と同様に、透明性、表面硬度、自己修復性、煮沸水試験、型押し成形の各測定及び試験を行った。その結果を表1及び表2に併記する。
(比較例2)
実施例1で使用した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに、シリコーン系ハードコート塗料(株式会社日本ダクロシャムロック製ポリシロキサン系ハードコート処理剤「NP730」)を塗布、加熱乾燥、硬化させてハードコート機能を有する表面樹脂層(厚さ3μm)を形成した。次に、比較例1と同様にして、接着層(厚さ2μm)を形成した転写フィルムを作製した。続いて、実施例4と同様にして、厚さ5mmの透明ポリカーボネートシートに転写して、3層構造の比較例2の透明樹脂成形板を得た。
この比較例2の透明樹脂成形板に対して、実施例1と同様に、透明性、表面硬度、自己修復性、煮沸水試験、型押し成形の各測定及び試験を行った。その結果を表1及び表2に併記する。
(比較例3)
各実施例で押出し成形された厚さ5mmの透明ポリカーボネート樹脂製樹脂基材(タキロン株式会社製ポリカーボネートシートPC1600)を作製し、この樹脂基材に対して、実施例1と同様に、透明性、表面硬度、自己修復性、型押し成形の各測定及び試験を行った。これを比較例3とし、その結果を表1及び表2に併記する。
この表1及び表2から理解されるように、いずれの実施例も比較例も、全光線透過率は89%以上の値を、ヘーズは0.7%以下の値を示して、透明合成樹脂成形板としての性能を有している。
また、鉛筆硬度は、樹脂基材のポリカーボネートシートである比較例3が4Bであるのに対して、表面樹脂層の樹脂がポウレタンメタアクリレート樹脂である各実施例は3Bであり、ポリカーボネート樹脂基材より向上している。一方、表面樹脂層がシリコーン変性アクリル樹脂よりなる比較例1はHB、シリコーン樹脂よりなる比較例2は2Bであり、各実施例より表面硬度が高かった。このように、各実施例のウレタンメタアクリレート樹脂よりなる表面樹脂層の表面硬度は、ポリカーボネート樹脂基材より良好であるが、シリコーン変性アクリル樹脂及びシリコーン樹脂よりなる表面樹脂層より劣っていて、傷が付きやすいことがわかる。
そして、自己修復性を調べた傷付与試験においては、各実施例は試験前のヘーズが0.4〜0.7%、試験後30秒の時点でのヘーズは1.0〜1.3%であり、そのヘーズ変化量が0.5〜0.8%となって傷が付いて透明性が悪くなっていた。そして、5分経過した時点では0.4〜0.7%に変化して、試験前のヘーズにまでほぼ回復していた。その回復率を前記式(1)に基づいて計算すると、60〜100%であった。さらに、試験後5分経過した時点での表面状態の目視観察では、各実施例は傷が観察されず透明性が回復していることがわかった。
このように、各実施例は、その表面樹脂層が自己修復性能を有していて、成形板に傷が付いても元の透明性を回復して維持できることがわかる。そして、表面樹脂層にシリカを添加した実施例8、9、10のうち、実施例10のヘーズ回復率が60%と他の実施例に比べて悪くなっていた。この結果から、表面樹脂層にシリカを添加する場合には10質量比までが好ましいことがわかる。
しかし、シリコーン系アクリル樹脂表面樹脂層を有する比較例1は、試験前のヘーズが0.5%であり、試験直後においても0.5%、試験の5分経過した時点でも0.5%と変化がなく、表面樹脂層には傷が付いていなくて、自己修復性能は不明である。また、シリコーン樹脂表面樹脂層を有する比較例2は、試験前のヘーズ0.5%であり、試験直後には0.7%と高くなり、表面硬度を有するものの傷が付く表面樹脂層であった。そして、試験の5分経過した時点においても0.7%と変化しておらず、傷がそのまま表面樹脂層についたままであり、自己修復していないことがわかる。さらに、ポリカーボネート樹脂基材の比較例3は、試験前は0.4%と透明性を示したが、試験直後は24.2%と非常に悪くなり傷が付き易いものであった。そして、試験の5分経過した時点においても24.2%と変化しておらず、傷がそのまま樹脂基材表面に残ったままであり、自己修復していなかった。
また、煮沸水試験において、実施例7を除く各実施例の樹脂板は、100個のうちの90個以上が剥離せず、実用的な密着性を示した。実施例7は全て剥離したものの該試験前の碁盤目テストでは全て剥離しておらず、煮沸水試験などに類似する苛酷な条件に曝されなければ十分密着性を有していた。実施例のうち、実施例2、3、4、5、6、8、9、10は95個以上が剥離せず、十分な密着性を示していて、ポリカーボネート樹脂成形板が層間剥離しない積層板であることがわかる。そして、実施例3、4、5、6、8、9、10は、煮沸水試験後の外観観察においても皺やクラックなどの不具合が発生しておらず、この結果からも十分に密着していた。しかし、実施例1、11はテープ剥離結果においても外観観察において、他の実施例よりも悪くなっていた。一方、比較例1、2は共にテープ剥離試験において全てが剥離し、更に外観観察においても皺やクラックが発生していて、密着していないことがわかる。
これらの煮沸水試験の結果より、各実施例は各比較例よりも密着性に優れていることがわかる。特に、接着層におけるイソシアネート基の水酸基とのモル当量比が0.54以上〜5.41未満であると、密着性に優れていることがわかる。特に、モル当量比が1.08以上〜2.70以下である接着層を有する樹脂成形板は、テープ剥離試験、外観観察において非常に優れた結果であった。
さらに、型押し成形試験において、実施例3〜11は外観が良好に熱成形できて熱加工性に優れていたが、実施例1、2は熱加工ができるものの気泡が発生し若干熱加工性に劣っていた。一方、比較例1、2はクラックが生じて、熱加工された成形体は白濁して透明性を有さず、外観も悪く、耐擦傷性も有さないものとなっていた。
以上の試験の結果から、表面樹脂層をウレタンアクリレート樹脂で形成し、接着層をイソシアネート基と水酸基とのモル当量比が1.08〜2.70であるウレタン系樹脂で形成した透明ポリカーボネート樹脂成形板は、自己修復性が良好で例え砂などで表面が傷付いても該傷が修復されて透明性を回復でき、その各層の密着性も良好で層間剥離がし難く、さらに型押し成形などの熱加工が可能な、実用的な樹脂成形板であることがわかる。