JPWO2008047453A1 - 往復動エンジン - Google Patents

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Abstract

ピストン2は、燃焼圧力を受けるクラウン部3とピストンリング溝4、5、6を有するランド部7とからなるピストン上部体8と、このピストン上部体8の下側に形成したスカート部9とピストンピン10を支持するピンボス部11とを備える。なお、上記ランド部7は上記ピストン上部体8の外周面16をも指す。以下、ランド部7をピストン上部体8の外周面16と称す。さて、上記ピストン2において、12はスラスト側を示し、13は反スラスト側を示す。ピストン2は、上記ピストン上部体8が、ピストン2の中心線14に対して反スラスト側13に偏心して形成されている。

Description

本発明は、運転中、ピストンをスラスト側から反スラスト側に向かってガス圧により支持すると共に、反スラスト側において、ピストンをシリンダ壁に添い当て、ピストンに首振り、揺動、横振れ等の振れをさせないように下降させ、もって、ピストンとシリンダとのフリクションロス、ピストンとピストンリングとのフリクションロスの低減を図った往復動エンジンに関する。
もちろん、本発明は、4サイクルガソリンエンジン、2サイクルガソリンエンジン、ディーゼルエンジンとして使用できる往復動エンジンに関するものである。
国際公開第WO92/02722号パンフレット 特開平4−347352号公報 特開平5−26106号公報 特許第2988010号公報
ピストンに働くスラスト力による、スラスト側におけるピストンとシリンダとのフリクションロスを低減する技術として、国際公開第WO92/02722号パンフレット、特開平4−347352号公報、特開平5−26106号公報、特許第2988010号公報(特許文献1から4参照)等がある。これらに記載の技術は、ピストン上部体に備える圧縮用のピストンリングの間、即ち第2ランド部にガス室を形成し、機関運転の膨張行程初期において、このガス室に、ピストン上方の高圧ガスを導入させ、この導入させたガス圧により、コネクチングロッドの傾きから生じるスラスト力に対抗してピストンを支持し、ピストンとシリンダ内面とのフリクションロスの低減を図ったものである。
ところで、往復動エンジンのピストン上部体の径は、スカート部の最大径部に比べ小さく、ピストン全体として台形状になっている。即ち、ピストン上部体はシリンダ内径に対して隙間(クリアランス)をもってシリンダに組込まれている。即ち、ピストンのピストン上部体は、スラスト側及び反スラスト側の両方において、シリンダ内面との間に必ず隙間が存在する。このため、従来の技術のように、圧縮用のピストンリングの間、即ち、第2ランド部にガス室を形成し、このガス室に膨張行程初期にピストン上方の高圧ガスを導入し、導入したガス圧によってピストンを支持しても、上死点でのピストンの揺動現象は変わりない。即ち、上記隙間の存在のため、機関運転中、特に上死点での反転時、モーメント荷重、スラスト力によりピストンは首振り、揺動を起す。ピストンのピストン上部体及びスカート部がシリンダに衝突する。このためピストンとシリンダ、ピストンリングとシリンダ、ピストンリングとピストンリング溝との間でフリクションロスを生じさせている。また、ピストンの振れにより、ブローバイガスの発生を起こしている。
そこで、本発明は、機関運転中、ピストンの首振り、揺動、横揺れ等ピストンの振れを抑え、ピストンリングとシリンダ、ピストンリングとピストン溝とのフリクションロスの低減、ブローバイガス発生の低減を図ると共に、ピストン上部体の効果的な冷却、混合ガスの燃焼速度が高められる往復動エンジンの提供を図ったものである。
本発明の往復動エンジンは、燃焼圧力を受けるクラウン部とピストンリングを装着したランド部とからなるピストン上部体と、このピストン上部体の下側に形成されたスカート部とを備えたピストンにおいて、上記ピストン上部体がピストン中心線に対して反スラスト側に偏心して形成され、反スラスト側において、ピストン上部体の外周面とスカート部の最大径部の外周面とが垂直線上にそろえて形成され、ピストンがシリンダに直立姿勢に収められた状態で、反スラスト側においてピストン上部体の外周面とスカート部の最大径部の外周面とがシリンダの内面に添い当り状態となり、かつ、スラスト側においてピストン上部体の外周面とシリンダの内面との間に隙間が生じ、且つピストン上部体の外周面に装着された第1ピストンリングと第2ピストンリングとの間の第2ランド部にガス室を形成し、上記シリンダの内面のスラスト側の上部位において、複数の凹所が形成され、ピストンが上死点または上死点近傍に位置するとき、上記凹所を通してピストン上方の高圧ガスを上記環状ガス室に流入させ、ガス室に流入した高圧ガスによりピストンをスラスト側から支持し、ピストンは反スラスト側においてピストン上部体の外周面とスカート部とがシリンダ内面に接して下降するようにした。
上記の構成によれば、ピストン上部体が反スラスト側に偏心し、ピストン上部体の外周面とスカート部の最大径部の外周面とが垂直線上にそろえて形成してあるため、シリンダ内に組み込まれているピストンは、直立姿勢で、反スラスト側において、上記ピストン上部体の外周面とスカート部の最大径部の外周面とが、シリンダ内面に添い当り接した状態となっている。
上記の状態にあるピストンが上死点において、上面に圧縮ガス、膨張ガスが作用すると、ガス圧は、ピストン上部体のスラスト側の外周面に作用するが、反スラスト側の外周面、即ち反スラスト側のトップランドに回り込めない。ピストンはスラスト側から支持された状態となる。
この様な状態にあるピストンに揺動させるモーメント荷重が作用しても、ピストンは直立姿勢を保ったまま、反スラスト側において、シリンダの内面に接している。上死点または上死点近傍において上記状態にあるとき、ピストンの上方の膨張ガスがシリンダの内面のスラスト側の上部位に設けられた凹所からピストンのガス室に流入する。この時ピストンにはコネクチングロッドのスラスト側への傾きによりスラスト力側圧作用しスラスト側に横振れを起こそうとするが、上記環状ガス室に流入し保持したガスによって、スラスト側より支持されピストンは直立姿勢を保ったまま、かつ反スラスト側がシリンダの内面に接したまま振れを抑えらて下降する。
即ち、ピストンは、スラスト側からガス圧による弾性的支持、押圧により反スラスト側に添い当っている。このため、ピストンは横振れ、揺動、シリンダとの衝突が抑えられる。従って、ピストンとシリンダ、また特に側圧の働くスラスト側におけるピストンとシリンダ、ピストンリングとピストン及び、ピストンリングとシリンダ内面とのフリクションロスが大きく低減される。またピストンの振動が抑えられるためブローバイガスの吹き抜けが防止される。
更に、ピストンは、高温高圧のガス圧を受けるクラウン部を有するピストン上部体が、反スラスト側において、シリンダに接しているため、従来のピストンリングのみのシリンダとの接触に比べ、シリンダとの接触面積が広く増加し、ピストンからシリンダへの熱の流れが大きく、ピストン上面の冷却が効果的に行われる。これ故、異常燃焼が防止でき、またエンジン全体の熱上昇が低く吸収効率が良好に確保できる。
また、膨張行程初期、ピストンが上死点または上死点近傍に位置し、ピストンの第1ピストンリングが複数の凹所を通過するとき、ピストン上方の燃焼中のガス圧がピストンの環状ガス室に急激に流入するため、ピストン上方の燃焼中のガスに流動が生じ当該ガスが乱され、燃焼速度が速くなり、燃焼時間が短縮される。
本発明によれば、機関運転中、ピストンの首振り、揺動等ピストンの横振れを抑え、ピストンリングとシリンダ、ピストンリングとピストン溝とのフリクションロスの低減、ブローバイガス発生の低減を図ると共に、ピストン上部体の効果的な冷却、混合ガスの燃焼速度が高められる往復動エンジンを提供し得る。
以下、本発明の実施形態を図面に示した実施例について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の例の縦断面説明図、
図2は、図1に示す例の動作説明図、
図3は、図1に示す例の動作説明図、
図4は、図1に示す例の横断面説明図、
図5は、図1に示す例のピストンの説明図、
図6は、図5に示す例のピストンの平面図、
図7は、本発明の実施の形態の他の例のピストン説明図、
図8は、図7に示す例の縦断面説明図、
図9は、図8に示す他の例の一部拡大説明図、
図10は、本発明の実施の形態の更に他の例の縦断面説明図、
図11は、図10に示す更に他の例の動作説明図、
図12は、図10に示す更に他の例の横断面説明図、
図13は、図10に示す更に他の例の主にピストンの説明図、そして、
図14は、図13に示すピストンの平面図である。
第1図から第9図には、本発明の往復動エンジンの第1実施例が示してあり、第10から第14図には、本発明の往復動エンジンの第2実施例が示してある。
第5図及び第6図には、第1実施例の往復動エンジン1のピストン2が示してある。上記ピストン2は、燃焼圧力を受けるクラウン部3とピストンリング溝4、5、6を有するランド部7とからなるピストン上部体8と、このピストン上部体8の下側に形成したスカート部9とピストンピン10を支持するピンボス部11とを備える。なお、上記ランド部7は上記ピストン上部体8の外周面16をも指す。以下、ランド部7をピストン上部体8の外周面16と称す。さて、上記ピストン2において、12はスラスト側を示し、13は反スラスト側を示す。
ピストン2は、上記ピストン上部体8が、ピストン2の中心線14に対して反スラスト側13に偏心して形成されている。15は 上記ピストン上部体8の中心線を示す。第5図に示すように、ピストン2は、直立姿勢で、反スラスト側13において、上記ピストン上部体8の外周面16とスカート部9の最大径部の外周面17とが垂直線18上にそろえて、形成されている。
一方、スラスト側12において、ピストン上部体8の外周面19は、スカート部17の最大径部の外周面20を通る垂直線21から内側に位置し、隙間22がある。
ピストン2は、上記の如く形状であるため、第1図から第3図に示すように、シリンダ23に組込まれ、直立姿勢にあるとき、反スラスト側13において、ピストン上部体8の外周面16とスカート部9の最大径部の外周面17とが同時に、共にシリンダ23の内面24に添い当り接している。他方、スラスト側12においては、ピストン上部体8の外周面19とシリンダ23の内面24との間には隙間(クリアランス)25が存在する。
ピストン上部体8のピストンリング溝4には、圧縮用のピストンリングが装着される。即ち、クラウン部3に一番近いところのピストンリング溝4には第1ピストンリング26が装着され、次に近いピストンリング溝5には、第2ピストンリング27が装着される。なお、第1ピストンリングはトップリング、第2ピストンリングはセカンドリングのことである。そして、一番下のリング溝6にはオイルかきリング28が装着されている。
第1ピストンリング26が装着されるピストンリング溝4と第2ピストンリング27が装着されるピストンリング溝5とは、ピストン2の軸線29に直交する面に対して傾斜して形成されている。そして、上記ピストンリング溝4とピストンリング溝5とは、互いに相手に対して、反対側へ傾斜して設けられ、反スラスト側13からスラスト側12に向かって、次第に離反するように設けられている。
従って、ピストンリング溝4とピストンリング溝5との間に囲まれた第2ランド部30はスラスト側12では広く、反スラスト側13で狭くなっている。オイルかきリング28を装着するリング溝6はピストン軸線29に直交する面に平行である。
さて、第1図から第4図には、ピストンリング溝4、5及び6のそれぞれに、第1ピストンリング26、第2ピストンリング27及びオイルかきリング28が装着されたピストン2がシリンダ23内に組込まれ、直立姿勢で機関運転中の状態が示されている。
ピストン2には、第1ピストンリング26、第2ピストンリング27との間に形成された第2ランド部30とシリンダ23の内面24とにより囲まれて環状ガス室31が形成されている。この環状ガス室31はスラスト側12では広く、反スラスト側13に向かって次第に狭くなっている。これは、環状ガス室31に流入させた高圧ガスによりピストン2をスラスト側12から広く強く押し、反スラスト側13へのガスの回り込みを少なくして押返しを小さくするためのものである。
次に、シリンダ23には、スラスト側12の内面24において、その上部位33のところに、凹所34が、複数個(3〜4個)、円周方向35に沿って、並べて設けられている。なお、凹所34、34、34はシリンダ内面24から深く、くぼみ状に形成してある。これら凹所34、34、34は、後述するがガス圧の通路の役目をする。これら凹所34、34、34の位置は、ピストン2が上死点または上死点近傍の位置にあるとき、ピストン2の第1のピストンリング26がこれら凹所34、34、34の上を通過中であるように定めてある。このように、ピストン2が上死点又は上死点近傍にあって、第1ピストンリング26が凹所34、34、34の上を通過中のときに、これら凹所34、34、34のそれぞれの凹み空間36、36、36と第1ピストンリング26の外周面との間が通路となり、ピストン2の上方の燃焼室37とピストン2の環状ガス室31とが連通し合い、ピストン2上方の高圧ガス圧38が上記環状ガス室31に矢印41で示すように流入するようになっている。また、上記凹所34、34、34は、ピストン2が上死点に位置したとき、第2ピストンリング27に繋がらないようにも設けられている。これは、燃焼室37の高圧ガス38が、ピストン2から下に吹き抜きさないようにするためである。さて、機関運転時、特に、ピストン2が上死点または上死点近傍に位置するとき、圧縮行程終期から膨張行程初期において、第1ピストンリング26が凹所34、34、34上を通過するとき、ピストン2の上方の燃焼室37の高圧ガス38が、凹所34、34、34を通ってピストン2の環状ガス室31に流入する。これと同時に、ピストン2はピストン上部体8において環状ガス室31内の流入高圧ガス39によって支持され、スラスト側12から反スラスト側13に向って押される状態となる。ピストン2は、上記のような作用するガス圧39を環状ガス室31内で保持して、ピストン上部体8の反スラスト側13の外周面16とスカート部9の最大径部の外周面17がシリンダ23の内面24に接した状態で膨張行程において下降する。
上記のようになる本第1実施例往復動エンジン1によれば、ピストン2は、ピストン上部体8が反スラスト側13に偏心eされて設け、ピストン上部体8の外周面16とスカート部9の最大径部の外周面17とが垂直線18上にそろえて形成されているため、シリンダ23内に組み込まれているピストン2は、直立姿勢で反スラスト側13において、上記ピストン上部体8の外周面16とスカート部9の外周面17がシリンダ23の内面に添い当り接している。
ピストン上面から見れば、第4図に示すように反スラスト側13においてピストン上部体8の外周面16、特にトップランド43がシリンダ23の内面24に円弧状に内接している。
一方、スラスト側32においては、ピストン上部体8の外周面19とシリンダ23の内面24との間に円弧状隙間25が存在する。
上記の状態にあるピストン2の上面に圧縮ガス、膨張ガス38が作用すると、ガス圧は、ピストン上部体8のスラスト側12の外周面におけるトップランド46に作用するが、反スラスト側13の外周面16、即ち反スラスト側13のトップランド46に回り込めない。ピストン2はスラスト側12から支持された状態となる。
従って、ピストン2が上死点または上死点近傍の位置に達し、ピストン2に揺動させるモーメント荷重が作用しても、ピストン2は直立姿勢を保ったまま、反スラスト側13において、シリンダ23の内面に接している。上死点または上死点近傍において上記状態にあるとき、ピストン2の上方の膨張ガス38がシリンダ23の内面24のスラスト側32の上部位33に設けられた凹所34、34、34からピストン2の環状ガス室31に流入する。この時ピストン2にはコネクチングロッド47のスラスト側32への傾きによりスラスト力(側圧)42が作用しスラスト側32への横振れを起こそうとするが、上記環状ガス室31に流入し保持した高圧ガス39によって、スラスト側32より支持されピストン2は反スラスト側13がシリンダ23の内面24に接して降下する。
即ち、圧縮行程から膨張行程に至り、コネクチングロッド44の傾きの反転、モーメント荷重の反転にもかかわらずピストン2は、横揺れを抑えられて下降する。即ち、ピストン2は側圧の働くスラスト側32において、環状ガス室31に流入し保持した高圧ガス39によりピストン上部体8が弾性的に支持され、反スラスト側45のシリンダ23の内面24に添い当てられた状態で「振れ」を起こすことなく降下する。このため、ピストン2は横振れ、揺動が抑えられ、シリンダ23の内面24との衝突が抑えられる。
この結果、ピストン2とシリンダ23の内面24とフリクションロス、第1ピストンリング26とピストン2とのフリクションロス、及び第1ピストンリング26とシリンダ23の内面24とのフリクションロスが大きく低減される。また、ピストン2の振動が抑えられるためブローバイガスの吹き抜けが防止される。
またもちろん膨張行程において、スラスト力42の働くスラスト側12において、ピストン2は環状ガス室31の高圧ガス39により支持され、ピストン2とシリンダ23の内面24とのフリクションロスも低減される。特に、スラスト側12においてピストン2はピストン上部体8が環状ガス室31の高圧ガス39により支持されるため、ピストン2とシリンダ23の内面24との接触面積が小さく、結果、オイルの引きづり抵抗がちいさくなる。
更に、ピストン2は高温高圧のガス圧を受けるクラウン部3を有するピストン上部体8が反スラスト側13において、シリンダ23の内面24に接しているために、従来のピストンリングのみの接触に比べ、シリンダ23の内面24との接触面積が広く、ピストン2からシリンダ23への熱の取り出しが大きく、ピストン2の上面の冷却が効果的に行われる。これ故、異常燃焼の防止ができ、またエンジン全体の熱上昇が低く、吸入効果が良好に確保できる。また機関運転の膨張行程初期、ピストン2が上死点または上死点近傍に位置し、ピストン2の第1ピストンリング26がシリンダ23に設けた複数の凹所34、34、34を通過するとき、ピストン2の上方のガス圧38がピストン2の環状ガス室31に急激流入するため、燃焼室37の燃焼中ガスに流動が生じ、当該ガスが乱され燃焼速度が高められる。
第7図、第8図及び第9図には、ピストン2の第2ピストンリングが、2枚の薄いピストンリング43、43の重ね合わせ構造からなる往復動エンジン1において、第1図に示すように、ピストン2のピストンリング溝5に挿入した1枚のピストンリング27の代わりに、第7図、第8図及び第9図に示すように、2枚の薄いピストンリング43、43を挿入したものである。
この往復動エンジン1によると、ピストンリング溝5に2枚のピストンリング43、43が重ね合わせて挿入してあるため、夫々もピストンリング43及び43の間にオイルが侵入、介在し、このため、シリンダ23の内面24のと間における油膜の形成がよくガス圧シールがより確実となり、かつピストンリング43、43とシリンダ内面24とは常に良好な流体潤滑が確保される。
ピストンリング溝5がピストン2の軸線29に対して傾斜して形成されているも、夫々のピストンリング43及び43は独立して動き、それぞれがシリンダ23の内面24に対して接触している。
このため、2重のガスシール部44、44が形成されることになりガスシールがより確実となる。
更に、夫々のピストンリング43、43の合口45、45を互いに相手に対してずらせることにより両合口間にラビリンス効果が発生することとなり、合口45、45からのプロパンガスの発生を止めることとなる。
従って、第8図に示すような往復動エンジン1によると、ピストン2の環状ガス室31に流入した高圧ガス39がより確実に保持される。機関運動時の膨張行程で、ピストン2がスラスト側12において大きなスラスト力42を受けるも、環状ガス室31に流入、保持した高圧ガス39により、ピストン2のピストン上部体8はシリンダ23の内面24からガスフロートされた状態(浮かせられた状態)となって下降する。
このため、スラスト力42の作用するスラスト側12においても、フリクションロスがより低減される。
反スラスト側13において、ピストン上部体8の外周面16及びスカート部9の最大径部の外周面17がシリンダ23の内面24に接して移動するようにしたピストン2は、第2ピストンリング43、43が2枚の重ね合わせとなって高圧ガス39が確実に保持されるためこの高圧ガス39によりピストン2は反スラスト側13に弾性をもって押され、反スラスト側13の内面24に沿って下降する。ピストン2は揺れを抑えられて、静かで、ソフトに下降する。
第2実施例の往復動エンジン48は第10図から第14図に、そのうち特に、第13図及び第14図に本実施例往復動エンジン48のピストン49が示してある。
上記ピストン49は、燃焼圧力を受けるクラウン部50とピストンリング溝51、52、53を有するランド部54とからなるピストン上部体55とこのピストン上部体55の下側に形成したスカート部56とピストンピン57を支持するピンボス部58を備える。
79はスラスト側を示し、80は反スラスト側を示す。
さて、ピストン49は、上記ピストン上部体55が、ピストン49の中心線61に対して反スラスト側80に偏心して設けられている。なお、62はピストン上部体55の中心線を示す。ピストン49は、直立姿勢で反スラスト側80において、上記ピストン上部体55の外周面63とスカート部56の最大径部の外周面64とが垂直線65上にそろえて形成してある。
一方、ピストン49はスラスト側79において、ピストン上部体55の外周面66は、スカート部56の最大径部の外周面67を通る垂直線68から内側に位置し、隙間69がある。ピストン49は上記の如くの形状であるため、第10図に示すように、シリンダ70内に組込まれ、直立姿勢にあるとき、反スラスト側80において、ピストン上部体55の外周面63とスカート部56の最大径部の外周面64とが、共にシリンダの内面71に添い当り接している。
一方、スラスト側79においては、ピストン上部体55の外周面66とシリンダ70の内面71とには隙間72が存在する。
ピストン上部体55のピストンリング溝51、52には圧縮用のピストンリングを装着する。クラウン部50に一番近いピストンリング溝51には第1ピストンリング73が装着され、次に近いピストンリング溝52には第2ピストンリング74が装着される。もちろん、第1ピストンリング73はコンプレッション用のトップリング、第2ピストンリング74はコンプレッション用のセカンドリングである。そして、一番下のリング溝53にはオイルかきリング75が装着されている。上記ピストン49において、第1ピストンリング73が装着されたところのピストンリング溝51と第2ピストンリング74が装着されるピストンリング溝52は、共に、ピストン49の軸線76に直交する面に平行に形成されている。上記ピストンリング溝51とピストンリング溝52との間には、必要な間隔の第2ランド部77を有し、この第2ランド部77により後述する環状ガス室78が形成される。
第10図には、ピストンリング溝51、52、53のそれぞれに、第1ピストンリング73、第2ピストンリング74、オイルかきリング75が装着されたピストン49がシリンダ70に組込まれ、直立姿勢で機関運転中の状態が示されている。
ピストン49には、第1ピストンリング73と第2ピストンリング74との間に形成された第2ランド部77とシリンダ70の内面71とにとり囲まれて、環状ガス室78が形成されている。この環状ガス室78はスラスト側79から反スラスト側80にかけて平行した形状である。
次に、シリンダ70のスラスト側79の内面71において、シリンダ70の上部位81のところに、内面71より深くくぼんで形成された凹所82、82、82が複数個(3〜4個)、円周方向83に沿って並べて設けられている。これら凹所82、82、82の位置はピストン49が上死点または上死点近傍の位置に達したとき、ピストン49の第1ピストンリング73がこれら凹所82、82、82の上を通過中になるように定められている。
このように、ピストン49が上死点又は上死点近傍にあって、第1ピストンリング73が凹所82、82、82の上を通過中のとき、これら凹所82、82、82の凹み空間84と第1ピストンリング73の外周面との間が通路となり、ピストン49の上方の燃焼室85とピストン49の環状ガス室78とが連通し合い、ピストン49上方の高圧ガス86が上記環状ガス室78に流入するようになっている。
また、上記凹所82、82、82はピストン49が上死点に位置したとき、第2ピストンリング74に繋がらないようにも設けられている。これは、燃焼室85の高圧ガス86がピストン49下へ吹き抜けさせないためである。
さて、機関運動時、特に、ピストン49が上死点または上死点近傍に位置するとき、圧縮行程終期から膨張行程初期において、第1ピストンリング73が凹所82、82、82上を通過するとき、ピストン49の上方の燃焼室85の燃焼膨張中の高圧ガス86が、凹所82、82、82を通ってピストン49の環状ガス室78に流入する。これと同時に、ピストン49はピストン上部体55において環状ガス室78内に流入した高圧ガス87によって支持され、スラスト側79から反スラスト側80に向かって押される状態となる。ピストン49は上記のような作用する高圧ガス87を環状ガス室78内で保持し、ピストン上部体55の反スラスト側80の外周面63、スカート部56の最大径部の外周面64がシリンダ70の内面71に接した状態で膨張行程において降下する。
上記のようになる本第2実施例往復動エンジン48によれば、ピストン49は反スラスト側80においてピストン上部体55の外周面63とスカート部56の最大径部の外周面64とが垂直線65上にそろえて形成されているため、シリンダ内に組み込まれているピストン49は直立状態で反スラスト側80においてピストン上部体55の外周面63及びスカート部56の最大径部の外周面64はシリンダ70の内面71に接している。これを、ピストン上面から見れば、第12図に示すように反スラスト側80においてピストン上部体55の外周面63、特にトップランド88がシリンダ70の内面71に円弧状に内接している。
一方、スラスト側79においては、ピストン上部体55の外周面66とシリンダ70の内面71との間に円弧状隙間72が存在する。
上記の状態にあるピストン49の上面に圧縮ガス、膨張ガス86が作用すると、ガス圧は、ピストン上部体55のスラスト側79の外周面66におけるトップランド88に作用するが、反スラスト側80の外周面63、即ち反スラスト側80のトップランド88に回り込めない。ピストン49はスラスト側79から支持された状態となる。
従って、ピストン49が上死点または上死点近傍の位置に達し、ピストン49に揺動させるモーメント荷重が作用しても、ピストン49は直立姿勢を保ったまま、反スラスト側80において、シリンダ70の内面に接している。上死点または上死点近傍において上記状態にあるとき、ピストン49の上方の膨張高圧ガス86がシリンダ70の内面71のスラスト側79の上部位81に設けられた凹所82、82、82からピストン49の環状ガス室78に流入する。この時ピストン49にはコネクチングロッド89のスラスト側79への傾きによりスラスト力(側圧)90が作用しスラスト側79への横振れを起こそうとするが、上記環状ガス室78に流入し保持した高圧ガス87によって、スラスト側79より支持されピストン49は直立姿勢を保ったまま、かつ反スラスト側80がシリンダ70の内面71に接して揺れを抑えて下降する。
即ち、圧縮行程から膨張行程に至り、コネクチングロッド89の傾きの反転、モーメント荷重の反転にもかかわらずピストン49は揺れを抑えられて下降する。即ち、ピストン49は側圧の働くスラスト側49において、環状ガス室78に流入し保持した高圧ガス87によりピストン上部体55部が弾性的に支持され、反スラスト側90のシリンダ70の内面71に添い当てられた状態で「振れ」を起こすことなく降下する。このため、ピストン49は横振れ、揺動が抑えられ、シリンダ70の内面71との衝突が抑えられる。
この結果、ピストン49とシリンダ70の内面71とフリクションロス、第1ピストンリング59とピストン49とのフリクションロス、及び第1ピストンリング59とシリンダ70の内面71とのフリクションロスが大きく低減される。また、ピストン49の振動が抑えられるためブローバイガスの吹き抜けが防止される。

Claims (1)

  1. 燃焼圧力を受けるクラウン部とピストンリングを装着したランド部とからなるピストン上部体と、このピストン上部体の下側に形成されたスカート部とを備えたピストンにおいて、上記ピストン上部体がピストン中心線に対して反スラスト側に偏心して形成され、反スラスト側において、ピストン上部体の外周面とスカート部の最大径部の外周面とが垂直線上にそろえて形成され、ピストンがシリンダに直立姿勢に収められた状態で、反スラスト側においてピストン上部体の外周面とスカート部の最大径部の外周面とがシリンダの内面に添い当り状態となり、かつ、スラスト側においてピストン上部体の外周面とシリンダの内面との間に隙間が生じ、ピストン上部体の外周面に装着された第1ピストンリングと第2ピストンリングとの間の第2ランド部にガス室を形成し、上記シリンダの内面のスラスト側の上部位において、複数の凹所が形成され、ピストンが上死点または上死点近傍に位置するとき、上記凹所を通してピストン上方の高圧ガスを上記環状ガス室に流入させ、ガス室に流入した高圧ガスによりピストンをスラスト側から支持し、ピストンは反スラスト側においてピストン上部体の外周面とスカート部とがシリンダ内面に接して下降するようにした往復動エンジン。
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