JPWO2008041592A1 - 耐酸化性の優れたNi基化合物超合金及びその製造方法と耐熱構造材 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2006年9月26日に出願された特願2006−261569号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
K.Tomihisa,Y.Kaneno,T.Takasugi,Intermetallics,10(2002)247
このような背景から本願発明者らは、これら従来のNi基超合金よりも更に特性の優れた超合金を開発するべく、研究開発を進めており、その一環として、Alを5〜13at%、Vを9.5〜17.5at%、Tiを0〜3.5at%、Bを1000重量ppm以下、残部Niからなり、初析L12相と(L12相+D022相)の共析組織からなる2重複相組織を有するNi基化合物超合金の研究開発を行っている。
このNi基化合物超合金は、その密度が7.5〜8.5g/cm3の範囲であって、前述のNi基超合金よりは軽量化されており、1000℃程度までの高温強度もNi基超合金とほぼ同等であるという特徴を有している。
ところが、前述のNi基化合物超合金は、耐酸化性が劣るという問題があった。
(1)本発明の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金は、Al:5at%より大、13at%以下、V:3at%以上、9.5at%以下、Ti:0at%以上、3.5at%以下、残部は不純物を除きNiからなり、初析L12相と(L12相+D022相及びまたはD024相及びまたはD0a相)の共析組織からなる複相構造を有してなることを特徴とする。
(2)本発明の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金は、前記組成に加え、Nb:3at%以上、9.5at%以下を含み、前記Vの含有量が前記Nbの含有量以上とされてなることを特徴とする。
(3)本発明の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金は、図2に示すNi3Al−Ni3Ti−Ni3V擬3元系状態図において、A点(Al:14.0at%、Ti:0at%、(V+Nb):11.0at%、Ni:75at%)、B点(Al:12.5at%、Ti:2.8at%、(V+Nb):9.8at%、Ni:75at%)、C点(Al:8.0at%、Ti:3.8at%、(V+Nb):13.3at%、Ni:75at%)、D点(Al:2.3at%、Ti:2.0at%、(V+Nb):20.8at%、Ni:75at%)、E点(Al:2.0at%、Ti:0at%、(V+Nb):23.0at%、Ni:75at%)を結ぶ範囲の組成で示される初析L12相と(L12相+D022相及びまたはD024相及びまたはD0a相)の共析組織からなる複相構造を有してなることを特徴とする。
(5)本発明の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金は、(1)または(2)または(4)のいずれかに記載の組成に加え、B:1000重量ppm以下を含むことを特徴とする。
(6)本発明の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金は、初析L12相と(L12相+D022相及びまたはD024相及びまたはD0a相)との共析組織からなる2重複相組織を有していることを特徴とする。
(7)本発明の耐酸化性の優れた耐熱構造材は、(1)〜(6)のいずれかに記載のNi基化合物超合金からなることを特徴とする。
(9)本発明の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金の製造方法は、前記組成に加え、Nb:3at%以上、9.5at%以下、前記Vの含有量が前記Nbの含有量以上とされてなる組成の合金材を用いることを特徴とする。
(10)本発明の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金の製造方法は、図2に示すNi3Al−Ni3Ti−Ni3V擬3元系状態図において、A点(Al:14.0at%、Ti:0at%、(V+Nb):11.0at%、Ni:75at%)、B点(Al:12.5at%、Ti:2.8at%、(V+Nb):9.8at%、Ni:75at%)、C点(Al:8.0at%、Ti:3.8at%、(V+Nb):13.3at%、Ni:75at%)、D点(Al:2.3at%、Ti:2.0at%、(V+Nb):20.8at%、Ni:75at%)、E点(Al:2.0at%、Ti:0at%、(V+Nb):23.0at%、Ni:75at%)を結ぶ範囲の組成の合金材に対して、初析L12相とAl相が共存する温度で第1熱処理を行い、その後、L12相とD022相及びまたはD024相及びまたはD0a相とが共存する温度に冷却するか、その温度で第2熱処理を行うことによって、Al相を(L12相+D022相及びまたはD024相及びまたはD0a相)の共析組織に変化させて複相組織を形成することを特徴とする。
(12)本発明の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金の製造方法は、前記合金材として、前記組成に加え、B:1000重量ppm以下を含むものを用いることを特徴とする。
(13)本発明の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金の製造方法は、前記第1熱処理は、前記合金材を図1の第1状態にする温度で行うことを特徴とする。
(14)本発明の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金の製造方法は、前記第2熱処理は、1173K〜1273Kで行うことを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、初析L12相と(L12相+D022相及びまたはD0a相)の共析組織からなる複相構造を具備し、一般的な従来のNi基超合金よりも比重が若干軽く、1273K(1000℃)程度までの高温強度もNi基超合金並に優れ、しかも耐酸化性に優れているNi基化合物超合金を製造することができる。
本願発明に係るNi基化合物超合金は、Al:5at%より大、13at%以下、V:3at%以上、9.5at%以下、Nb:3at%以上、9.5at%以下、Ti:0at%以上、3.5at%以下、残部は不純物を除きNiからなり、前記Vの含有量が前記Nbの含有量以上とされてなり、初析L12相と(L12相+D022相及びまたはD024相及びまたはD0a相)共析組織からなる複相構造を具備してなることを特徴とする。
前記Ni基化合物超合金において、前記組成に加えてCo:15at%以下を含んでいても良く、前記組成に加え、Cr:5at%以下を含んでいても良く、前記組成に加え、B:1000重量ppm以下を含んでいても良い。また、前記組成に加え、初析L12相と(L12相+D022相及びまたはD024相及びまたはD0a相)共析組織からなる複相構造を具備してなることが好ましく、初析L12相と(L12相+D022相及びまたはD024相及びまたはD0a相)共析組織とからなる2重複相組織とされていることが最も好ましい。
本実施形態において合金材に対し均質化熱処理後に第1熱処理を行う。この第1熱処理は、初析L12相とAl相とが共存する温度で行われる。初析L12相とAl相とが共存する温度とは、具体的には、合金材が図1のAl+L12の状態になる温度、即ち、図1に示すAl:5〜10at%の範囲であるならば、△印と○印の間の温度である。
本実施形態において初析L12相とAl相が共存する温度で第1熱処理を行うとは、図1のAl+L12と記載された領域において、熱処理することを意味する。L12相とはNi3Al型金属間化合物相であり、Al相はfcc型Ni固溶体相である。
この状態により、後述の実施例の結果などから、立方体状もしくは直方体状の初析L12相が、初析L12相の間にAl相が存在する組織を呈する。このような初析L12相とその間隙の相とからなる組織を「上部複相組織」と呼ぶことができる。
前記第1熱処理を行う時間は特に限定されないが、合金材全体が初析L12相とA1相とからなる組織になる程度の時間を行うことが望ましい。第1熱処理を行う時間は例えば5〜20時間である。
第2熱処理を行う温度は、例えば、1173〜1281K程度である。第2熱処理を行う時間は,例えば5〜20時間程度である。第2熱処理を行わずに単に水焼入れ等の冷却を行うことによってもAl相をL12相とD022相に分離させることはできるが、比較的高い温度での熱処理により,この分離をより確実にすることができる。第2熱処理の後は、自然冷却又は強制冷却によって、室温にまで合金材を冷却してもよい。なお,本明細書において、「〜」は、特に銘記しない限り端の点を含むものとする。
Al:5at%より大、13at%以下、V:3at%以上、9.5at%以下と規定した理由は、図1の縦断面状態図、図2の状態図や、後述する具体例から明らかになるように、この範囲であれば、初析L12相とAl相とが共存する温度で第1熱処理を行うことができ、かつ、L12相とD022相及びまたはD024相及びまたはD0a相とが共存する温度に冷却するか、この温度で第2熱処理を行うことができて、複相組織を形成することができるからである。
CoはNiに全率固溶する元素であるので、組織中のNiが構成する金属間化合物、Ni3Al、Ni3V、(Ni3Ti)等の内部に含まれる。Ni基合金の特性を維持するために、添加量は最大で15at%とする。
Cr は耐酸化性向上に有効であるが、Ni3Alへの固溶量が少ないため、5at%を超える量を添加しても不要な析出物を生成するおそれがあるので、上限を5at%とすることが好ましい。
Tiの含有量は、0at%以上で3.5at%以下であり、好ましくは0.5〜3.5at%以下であり、さらに好ましくは1〜3.5at%、最も好ましくは2〜3at%である。本発明のNi基化合物超合金は、Tiを含んでいることが好ましいが、含んでいなくてもよい。
Niの含有量は、好ましくは73〜77at%であり、さらに好ましくは74〜76at%である。このような範囲であれば、Niの含有量と(Al、Ti、V)の含有量の合計が3:1に近くなり、Ni、Al、Ti又はVの固溶体相が実質的に存在しないからである。
前記組成の各添加元素の他に、本発明では、Moを1〜2at%含有させても良い。Moは高温強度の向上に効果のある元素であり、Vに全率固溶する元素である。その添加量は、V>Mo+Nbであることが好ましい。また更に、延性を向上させる方法として、結晶粒界を強化させる方法が考えられる。そのためには、C、Zr、Hfといった元素を最大で0.2at%まで微量添加することが可能となる。また、0.2at%以下の微量範囲でC、Zr、Hfのいずれかの元素を含有させても良い。
本発明のNi基化合物超合金は、高温での機械的特性が優れ、耐酸化性にも優れていることが後述の実施例において実験的に実証されるが、これらの優れた特性は、上部複相組織と下部複相組織とを含む複相組織を呈していることが原因となっており、更に好ましくは、前記上部複相組織と下部複相組織の2重複相組織を有していることが、より優れた特性を得る上での要因となっていると考えられる。
なお、これらの複相組織あるいは2重複相組織が本発明に係るNi基化合物超合金の全体を構成していることが望ましいが、全体がこの組織である必然性はなく、少なくとも一部に、あるいはより好ましくは全組織の50%以上が複相組織となっていれば良い。
本発明のNi基化合物超合金は、高温での機械的特性が優れているので、耐熱構造材として利用可能である。また、成分元素のうち、Vの一部をNbに置換して耐酸化性を高め、更にCoとCrを適量添加することによっても耐酸化性を高めている。
また、Vの一部をNbに置換する組成にすると、多少軽量化の面では不利であるが、一般的なNi基超合金よりも0.5g/cm3程度は軽量化できる。
以上説明のNi基化合物超合金は、1523K(1250℃)より少し低温側の温度域、例えば1273K〜1373K(1000〜1100℃)までの高温度域においての有効利用が可能であり、ターボチャージャー、エンジンの低圧タービン翼などに好適である。これらの温度域において高温強度が高い場合、同じ耐圧で軽量化できる効果があり、エンジン効率や燃費などの面で有効である。
鋳造材は、通常、数百ミクロン〜数ミリオーダーの結晶粒を有する多結晶であり、結晶粒と結晶粒の間の境界(結晶粒界)で破壊されやすいという弱点と、引け巣等の鋳造欠陥があるという弱点を有している。この弱点を改善するのが、鍛造材である。鍛造材は、鋳造材に対して熱間鍛造及び再結晶焼鈍を行うことによって作製される。熱間鍛造及び再結晶焼鈍は、通常は、第1熱処理の温度よりも高い温度で行われる。
鋳造材、鍛造材及び単結晶材を熱処理して作製した複相組織を有するNi基化合物超合金について圧縮試験や引張試験を行えば、いずれにおいても優れた機械特性を得ることができる。
以下の具体例では、熱処理を施すことによって複相組織を有するNi基化合物超合金を作製し、その機械的特性を調べた。
以下の具体例において、1373Kでの熱処理は、初析L12相とA1相とが共存する温度での第1熱処理(1次析出熱処理)に相当し、1373Kでの熱処理を行った後に行う水焼入れは、L12相とD022相とが共存する温度への冷却に相当する。また、1373Kでの熱処理を行った後に行う1173K又は1273Kでの熱処理は、L12相とD022相とが共存する温度での第2熱処理(2次析出熱処理)に相当する。
本発明組成系の試料の作成に先立ち、本発明類似合金の組成範囲を規定するための鋳造材として、表1のNo.1〜20に示す割合のNi、Al、Ti、Vの地金(それぞれ純度99.9重量%)をアーク溶解炉で溶製した。アーク溶解炉の雰囲気は、まず、溶解室内を真空排気し、その後不活性ガス(アルゴンガス)に置換した。電極は、非消耗タングステン電極を用い、鋳型には水冷式銅ハースを使用した。また、これらの他に添加元素を含有させる場合は、地金内に必要な合金組成に応じてCo、Cr、Mo、B、C、Hfなどの元素を添加した地金を用いるか溶解時に別途これらの元素の鋳塊を追加すればよい。
以下の説明では、上記鋳造材を「試料」と呼ぶ。
図1の縦断面状態図によれば、Al量5at%より大で13at%以下の組成の試料は、1373KではA1+L12相というNi基超合金の組織になり、共析温度(1281K)以下の温度に冷却することによってA1→L12+D022,D024,D0aという共析反応が起こり、初析L12相と(L12+D022,D024,D0a)共析組織からなる2重複相組織が形成されるということが分かる。
No.1〜No.20の試料を石英管に真空封入し、これらの試料のそれぞれに対して1273K×7日間の熱処理を施し、その後、水焼入れを行った。その後、1273Kでの状態図を作成するために、No.1〜No.20の試料のそれぞれについて、組織観察及び各構成相の分析を行った。組織観察は、OM(Optical Microscope)、SEM、TEMを用いて行い、各構成相の分析は、SEM−EPMA(Scanning Electron Microscope-Electron Probe MicroAnalyzer)により行った。前記観察及び分析の結果を表1に示し、前記観察及び分析によって得られた1273KにおけるNi3Al−Ni3Ti−Ni3V擬3元系状態図を図2に示す。
本発明では、前記の組成範囲において、Vの量を少なくしてVの一部をNbに置換してゆく形で実現するので、特に、図2に示すNi3Al−Ni3Ti−Ni3V擬3元系状態図において、A点(Al:14.0at%、Ti:0at%、(V+Nb):11.0at%、Ni:75at%)、B点(Al:12.5at%、Ti:2.8at%、(V+Nb):9.8at%、Ni:75at%)、C点(Al:8.0at%、Ti:3.8at%、(V+Nb):13.3at%、Ni:75at%)、D点(Al:2.3at%、Ti:2.0at%、(V+Nb):20.8at%、Ni:75at%)、E点(Al:2.0at%、Ti:0at%、(V+Nb):23.0at%、Ni:75at%)を結ぶ範囲の組成とすることで複相組織あるいは2重複相組織を確実に呈する目的のNi基化合物超合金が得られる。
表2に示すNo.21、22、28の試料を用い、圧縮試験は、常温〜1273Kの範囲で、2×2×5mm3の角状の試験片を用いて、真空中、ひずみ速度3.3×10−4s−1の条件で行った。その結果を図3に示す。図3には298K、673K、773K、873K、973K、1073K、1173K、1273Kの各温度において測定した0.2%降伏応力(MPa)を示す。
図3に示す圧縮試験結果から、0.2%降伏応力において、1273K(1000℃)においても300MPaの値を確保することができること、300K〜1073Kまでの温度範囲において600MPaを超える降伏応力値を確保できることが判明した。従って本発明試料では高温強度の優れた特性が得られた。
図4はNo.21〜28の各試料(サイズ10×10×10mm)を大気中において1000℃で所定時間焼成した場合の剥離を含む重量増加量を測定した結果を示す。
また、図4に表1のNo.10の試料(Al:7.5%)とCMSX−4試料(米国Cannon-Muskegon社:商品名)(Ti:1.0重量%、Co:9.0、Cr:6.5、Mo:0.6、Al:5.6、Ta:6.5、Hf:0.10、希土類(Re)3.0、残部Ni)と、Al:14%の試料(Al:14%、Ti:2.5%、V:8.5%、Ni:75%)、Co:5%の試料(Co:5%、Al:7.5%、Ti:2.5%、V:15%、Ni:75%)を対比して示した。
図4に示す結果から、Al:14%試料、Co:5%試料に比較し、No.21〜28の試料はいずれにおいても重量増加が抑制されていることが明らかである。なお、CMSX−4試料はNi基超合金として著名な合金であるが、この合金試料よりもNo.22、23、28の試料は明らかに耐酸化性に優れている。また、No.21の試料は400時間以下ではCMSX−4試料よりも耐酸化性に優れている。また、No.24、25の試料は200時間まではCMSX−4試料よりも優れている。
また、本発明者らが研究しているNi3Al−Ni3Ti−Ni3V系の合金の試料(図4のAl:7.5%試料)に比べ、概ねいずれの試料も耐酸化性については優れていることが判明した。
図5にNo.21の試料の金属組織写真(図5(A)参照)と同試料の金属組織写真の部分拡大(5000倍)(図5(B)参照)、No.22の試料の金属組織写真(図5(A)参照)とNo.23の試料の金属組織写真(図5(A)参照)を示す。図5(A)に示す各試料写真の倍率は100倍、各写真に縮尺として100μmの白線を記載している。
No.21の試料写真では濃淡が薄いので判別し難いが、ほぼ全体にNi3Al(L12)相の存在を確認することができた。同試料の金属組織写真の部分拡大(5000倍)から、初析L12相と(L12+D022)共析組織とからなる2重複相組織になっていることが明瞭になった。
No.22、23の試料写真では明確にNi3Al(L12)相が表示されているが、Ni3Al(L12)相の量が少なくなっていることが明らかである。写真の如くNi3Al(L12)粒子の量が減少してゆくと、複相組織を形成することが出来難くなる傾向となる。(No.21の試料は表2に示す如くV:7at%、Nb3at%、No.22の試料はV、Nb:5at%、No.23の試料はV:0at%、Nb:10at%の試料である。)
これらの金属組織において、複相組織を含むもの、あるいは2重複相組織を含むものは、高温でも大きな組織変化が生じにくく、安定なので高温強度が高い。そして、これらの複相組織をできるだけ微細かつ整合よく配置した組織とすることが、より高温における優れた機械特性の組織にできる上で重要である。
図6に示す金属組織写真の微細粒状の部分がL12−D024−D0a組織であり、写真組織の大部分を占めている。この微細粒状部分を2500倍に拡大すると図8に示す如く不定形のNi3Al(L12)粒子が多数敷き詰められた組織状態となっていることを確認できた。なお、Ni3Al(L12)粒子が多数敷き詰められた組織状態においてNi3Al(L12)粒子間の粒界には図5で示した試料と同様にL12−D024−D0a相が存在していることは、明らかである。
以上の組織写真から、No.28の試料の如くVとNbの複合添加に加えて、Cr、Coを複合添加した試料にあっても複相組織を有していることが明らかである。
なお、図6と図7の金属組織写真においては、左下側にNi3Ti相が見えているが、このような粗大な板状形態のNi3Ti相は存在しない方が好ましい。
また、No.21の試料の比重は7.90、No.22の試料の比重は7.95、No.23の試料の比重は8.07、No.24の試料の比重は7.90、No.25の試料の比重は7.87、No.26の試料の比重は7.88、No.27の試料の比重は7.8、No.28の試料の比重は7.86であり、一般的なNi基超合金のMarM247(登録商標):8.54g/cm3やCMSX−4(登録商標):8.70g/cm3に比べて軽量化できていることが明らかである。
図9に示す結果から、本願発明組成系のNi基化合物超合金において、単にCoやCrを添加した組成系としただけでは、耐酸化性を大きく改善することができないことが明らかである。また、Alについても同様のことが明らかになり、本願発明において先に説明した如く特定の範囲を選択することが重要である。
図10に示す酸化試験結果から、本発明に係るNo.41〜48の試料はいずれにおいてもNo.10の試料よりも良好な耐酸化性を示した。特に、No.28、41、46、42、47の試料がこれらの順に優れた耐酸化性を有している。
図11、図12に示す酸化試験結果から、本発明に係るNo.51〜58の試料、No.63〜67の試料はいずれにおいてもNo.10の試料よりも良好な耐酸化性を示した。なお、No.67の試料は、Co、Cr、Al、Ti、V、Nbを規定量添加した上にZrを1.5at%含有した試料であるが、No.10の試料よりも優れた耐酸化性を示したので、本発明に係る組成にZrを添加した組成系においても耐酸化性に優れたNi基化合物超合金を得られることが明らかとなった。
図14はNo.41の試料の表面を1000倍に拡大した金属組織写真、図15は同試料の表面を5000倍に拡大した金属組織写真を示すが、先の図6、図8に示す試料の金属組織写真と同様に、金属組織写真の微細粒状の部分がL12−D024−D0a組織であり、写真組織の全体を占めている。この微細粒状部分を5000倍に拡大すると図15に示す如く不定形のNi3Al(L12)粒子が多数敷き詰められた組織状態となっていることを確認できた。なお、Ni3Al(L12)粒子が多数敷き詰められた組織状態においてNi3Al(L12)粒子間の粒界には先の試料と同様にL12−D024−D0a相が存在していることが明らかである。なお、図14に示す11個の白点が示す縮尺は30μm、図15に示す11個の白点が示す縮尺は6μmである。
図16はNo.47の試料の表面を5000倍に拡大した金属組織写真、図17はNo.48の試料の表面を5000倍に拡大した金属組織写真、図18はNo.52の試料の表面を2500倍に拡大した金属組織写真、図19はNo.57の試料の表面を2500倍に拡大した金属組織写真、図20はNo.65の試料の表面を50倍に拡大した金属組織写真、図21はNo.65の試料の表面を100倍に拡大した金属組織写真、図22はNo.65の試料の表面を5000倍に拡大した金属組織写真を示す。なお、図16、図17に示す白線の縮尺は5μm、図18、図19に示す白線の縮尺は10μm、図20に示す白線の縮尺は500μm、図21に示す白線の縮尺は10μm、図22に示す白線の縮尺は5μmである。
これらの金属組織写真から、No.47、48、52、57、65のいずれの試料においても金属組織写真の微細粒状の部分がL12−D024−D0a組織であり、写真組織の全体を占めていることが明らかとなった。
図24と図25を比較して明らかなように、No.65の試料において均質化熱処理温度を高くすると組織を微細化することが可能である。また、組織を微細化することにより引張強度の向上効果を見込むことができる。
Claims (14)
- Al:5at%より大、13at%以下、V:3at%以上、9.5at%以下、Ti:0at%以上、3.5at%以下、残部は不純物を除きNiからなり、初析L12相と(L12相+D022相及びまたはD024相及びまたはD0a相)の共析組織からなる複相構造を有してなることを特徴とする耐酸化性の優れたNi基化合物超合金。
- 前記組成に加え、Nb:3at%以上、9.5at%以下を含み、前記Vの含有量が前記Nbの含有量以上とされてなることを特徴とする請求項1に記載のNi基化合物超合金。
- 図2に示すNi3Al−Ni3Ti−Ni3V擬3元系状態図において、A点(Al:14.0at%、Ti:0at%、(V+Nb):11.0at%、Ni:75at%)、B点(Al:12.5at%、Ti:2.8at%、(V+Nb):9.8at%、Ni:75at%)、C点(Al:8.0at%、Ti:3.8at%、(V+Nb):13.3at%、Ni:75at%)、D点(Al:2.3at%、Ti:2.0at%、(V+Nb):20.8at%、Ni:75at%)、E点(Al:2.0at%、Ti:0at%、(V+Nb):23.0at%、Ni:75at%)を結ぶ範囲の組成で示される初析L12相と(L12相+D022相及びまたはD024相及びまたはD0a相)の共析組織からなる複相構造を有してなることを特徴とする耐酸化性の優れたNi基化合物超合金。
- 前記組成に加え、Co:15at%以下、Cr:5at%以下の少なくとも1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金。
- 前記組成に加え、B:1000重量ppm以下を含むことを特徴とする請求項4に記載の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金。
- 初析L12相と(L12相+D022相及びまたはD024相及びまたはD0a相)の共析組織からなる2重複相組織を有していることを特徴とする請求項1に記載のNi基化合物超合金。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のNi基化合物超合金からなることを特徴とする耐酸化性に優れた耐熱構造材。
- Al:5at%より大、13at%以下、V:3at%以上、9.5at%以下、Ti:0at%以上、3.5at%以下、残部は不純物を除きNiからなる合金材に対して、初析L12相とAl相が共存する温度で第1熱処理を行い、その後、初析L12相とD022相及びまたはD024相及びまたはD0a相とが共存する温度に冷却するか、その温度で第2熱処理を行うことによって、Al相を(L12相+D022相及びまたはD024相及びまたはD0a相)の共析組織に変化させて複相組織を形成することを特徴とする耐酸化性の優れたNi基化合物超合金の製造方法。
- 前記組成に加え、Nb:3at%以上、9.5at%以下、前記Vの含有量が前記Nbの含有量以上とされてなる組成の合金材を用いることを特徴とする請求項8に記載のNi基化合物超合金の製造方法。
- 図2に示すNi3Al−Ni3Ti−Ni3V擬3元系状態図において、A点(Al:14.0at%、Ti:0at%、(V+Nb):11.0at%、Ni:75at%)、B点(Al:12.5at%、Ti:2.8at%、(V+Nb):9.8at%、Ni:75at%)、C点(Al:8.0at%、Ti:3.8at%、(V+Nb):13.3at%、Ni:75at%)、D点(Al:2.3at%、Ti:2.0at%、(V+Nb):20.8at%、Ni:75at%)、E点(Al:2.0at%、Ti:0at%、(V+Nb):23.0at%、Ni:75at%)を結ぶ範囲の組成の合金材に対して、初析L12相とAl相が共存する温度で第1熱処理を行い、その後、L12相とD022相及びまたはD024相及びまたはD0a相が共存する温度に冷却するか、その温度で第2熱処理を行うことによって、Al相を(L12相+D022相及びまたはD024相及びまたはD0a相)の共析組織に変化させて複相組織を形成することを特徴とする耐酸化性の優れたNi基化合物超合金の製造方法。
- 前記合金材として、前記組成に加え、Co:15at%以下、Cr:5at%以下の少なくとも1種または2種以上を含む合金材を用いることを特徴とする請求項8に記載の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金の製造方法。
- 前記合金材として、前記組成に加え、B:1000ppm以下を含むことを特徴とする請求項8に記載の耐酸化性に優れたNi基化合物超合金の製造方法。
- 前記第1熱処理は、前記合金材を図1の第1状態にする温度で行うことを特徴とする請求項8に記載の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金の製造方法。
- 前記第2熱処理は、1173K〜1273Kで行うことを特徴とする請求項8に記載の耐酸化性の優れたNi基化合物超合金の製造方法。
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