JP5565776B2 - Wが添加されたNi3(Si,Ti)系金属間化合物及びその製造方法 - Google Patents

Wが添加されたNi3(Si,Ti)系金属間化合物及びその製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、Wが添加されたNi3(Si,Ti)系金属間化合物及びその製造方法に関する。
ニッケル系金属間化合物であるNi3Si金属間化合物は、高温強度、耐食性、耐酸化性などに優れた特性を有している。しかし、多結晶体のNi3Si金属間化合物は、粒界割れを起こしやすいため脆く、常温で、より延性があり、塑性加工も可能な金属間化合物が求められている。そこで、このNi3Si金属間化合物を改良する研究開発が進められている。
例えば、加工性(延性)を有する金属間化合物として、ニッケル系金属間化合物であるNi3(Si,Ti)系金属間化合物が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
このようなNi3(Si,Ti)系金属間化合物について、例えば、Ni、Si、Ti及びBからなるNi3(Si,Ti)系金属間化合物の箔の製造方法が知られており、この製造方法で製造されたNi3(Si,Ti)系金属間化合物の箔が室温から600℃の温度範囲で優れた強度特性を有することが知られている(例えば、特許文献1参照)。このNi3(Si,Ti)系金属間化合物は、例えば自動車排ガス浄化装置の触媒担体や航空機用構造材料への応用が期待される。
また、塑性加工が可能なNi3(Si,Ti)系金属間化合物として、所定量のNb及びCrが含有されたNi3(Si,Ti)系金属間化合物が知られ、このNi3(Si,Ti)系金属間化合物は、箔に容易に加工できることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、箔への加工は明らかでないが、延性を備えるNi3(Si,Ti)系金属間化合物として、Ni、Si、Ti及びCuを含むNi3(Si,Ti)系金属間化合物(例えば、特許文献3及び4参照)が知られている。ほか、Ni3(Si,Ti)系金属間化合物ではないが、高濃度のCoとTiが添加されたNi基超合金が知られている(例えば、特許文献5参照)。この合金は(Ni/Co)3(Al/Ti/Ta)を含むガンマプライム相を有する。
T. Takasugi et al., Journal of Materials Science 26, pp.1173-1178 (1991)
特開2007−84903 特開2008−266754 特開平4−246144 特開平5−320794 特開2009−97094
しかし、従来のNi3(Si,Ti)系金属間化合物は、その機械的特性、例えば、塑性加工後の機械的特性(圧延により作製された箔の強度や延性など)が十分に検討されていない。また、その機械的特性が十分に検討されたNi3(Si,Ti)系金属間化合物であっても、例えば、圧延により作製された箔が高温になると、その延性が徐々に減少したり、高温での延性や耐酸化性等を向上させるために高価な金属(例えば、Nb)が添加されたりする。このため、Ni3(Si,Ti)系金属間化合物の機械的特性について、十分な検討が望まれ、Ni3(Si,Ti)系金属間化合物の高温での延性を向上させることが望まれている。また、比較的安価な金属で形成されるNi3(Si,Ti)系金属間化合物が望まれている。
この発明は、高温で優れた延性を有するNi3(Si,Ti)系金属間化合物を提供するものであり、かつ、より優れた強度特性を有するNi3(Si,Ti)系金属間化合物を提供するものである。
この発明によれば、主成分であるNi、7.5〜12.5原子%のSi、4.5〜11.5原子%のTi及び0.5〜5.0原子%のWからなる合計100原子%の組成を有する金属間化合物の重量に対して25〜500重量ppmのBを含有することを特徴とするNi3(Si,Ti)系金属間化合物が提供される。
この発明の発明者らは、Ni3(Si,Ti)中のTiに代えて高融点金属元素を添加することを発案し、鋭意研究を行った。その結果、Ni,Si,Ti及びBに加え、さらにWを含むNi3(Si,Ti)系金属間化合物が、室温から高温の温度領域で優れた延性特性を有することを見出し、この発明の完成に至った。この発明の金属間化合物は、特に高温で優れた延性特性を有するので、高温で塑性加工をすることができる。このため、より少ない工程で所望の形状に加工することができる。また、この発明の金属間化合物は高温で延性を有するため、高温で短い時間に金属破断が進行することはない。
また、この発明のNi3(Si,Ti)系金属間化合物は、箔または板(以下、箔ともいう)へ容易に加工することができ、その箔は延性及び強度に優れる。このため、この発明のNi3(Si,Ti)系金属間化合物は、箔の材料に適する。
また、この発明のNi3(Si,Ti)系金属間化合物は、Nb等と比較して安価なWを用いるので、その素材費が比較的安価である。
また、この発明の発明者らは、この発明の金属間化合物が、特許文献1に開示されたNi,Si,TiおよびBからなるNi3(Si,Ti)系金属間化合物に比べ、より優れた強度特性を有することを見出した。
実施例試料1のSEM写真である。 実施例試料1のX線回折プロファイルである。上段がHf添加試料(参考試料)のX線回折プロファイルであり、下段がW添加試料(実施例試料1)のX線回折プロファイルである。 実施例試料1のEPMA元素マッピング図である。 本発明の実証実験1におけるビッカース硬さ試験の結果であり、各試料の焼鈍温度とビッカース硬さとの関係を示したグラフである。 本発明の実証実験1における室温引張試験の結果であり、実施例試料1及び比較例試料について、室温引張試験における試料に加えた応力と試料に生じたひずみとの関係を示すグラフ(公称応力−公称ひずみ曲線)である。 本発明の実証実験1における室温引張試験の結果であり、実施例試料1について、引張強度、0.2%耐力(または降伏強度)および伸びと焼鈍温度との関係を示したグラフである。 冷間圧延箔(実施例試料1)並びに600℃及び900℃の温度で焼鈍がされた冷間圧延箔(実施例試料1)を室温で引張試験したときの各破面のSEM写真である。 本発明の実証実験1における高温引張試験の結果であり、実施例試料1について、高温引張試験における試料に加えた応力と試料に生じたひずみとの関係を示すグラフ(公称応力−公称ひずみ曲線)である。 本発明の実証実験1における高温引張試験の結果であり、実施例試料1及び比較例試料について、引張強度、降伏強度および伸びと試験温度との関係を示したグラフである。 冷間圧延箔(実施例試料1)及び900℃で1時間の焼鈍処理がされた実施例試料1を高温で引張試験したときの各破面のSEM写真である。 実施例試料2のSEM写真である。 実施例試料3のSEM写真である。 実施例試料1〜3のSEM写真である。 実証実験2のビッカース硬さ試験の結果を示すグラフである。
この発明のNi3(Si,Ti)系金属間化合物は、ある観点によれば、主成分であるNi、7.5〜12.5原子%のSi、4.5〜11.5原子%のTi及び0.5〜5.0原子%のWからなる合計100原子%の組成を有する金属間化合物の重量に対して25〜500重量ppmのBを含有することを特徴とする。
まず、この発明の種々の実施形態を例示する。なお、この明細書において、「〜」は、端の点を含む。また、この明細書において、Ni3(Si,Ti)を基本組成とする金属間化合物(以下、「Ni3(Si,Ti)系金属間化合物」と呼ぶ。
この発明の実施形態に係る金属間化合物は、上記発明の構成に加えて、L12相とNi固溶体相とからなってもよい。
また、この発明の実施形態に係る金属間化合物は、好ましくは、主成分であるNi、7.5〜12.5原子%のSi、5.5〜11.5原子%のTi及び0.5〜4.0原子%のWからなる合計100原子%の組成を有する金属間化合物の重量に対して25〜500重量ppmのBを含有し、より好ましくは、主成分であるNi、10.0〜12.0原子%のSi、6.5〜10.5原子%のTi及び1.0〜3.0原子%のWからなる合計100原子%の組成を有する金属間化合物の重量に対して25〜100重量ppmのBを含有する。さらに、これらの実施形態に係る金属間化合物は、L12相とNi固溶体相とからなってもよい。
また、この発明の実施形態に係る金属間化合物は、Niが主成分で、Siが10.0〜12.0原子%、Ti及びWが9.5〜12.0原子%であり、これらの元素からなる合計100原子%の組成を有する金属間化合物の重量に対して25〜100重量ppmのBを含有してよい。また、この実施形態において、上記Ti及びWは、好ましくは、5.5〜11.5原子%のTi及び0.5〜4.0原子%のWであり、より好ましくは、6.5〜10.5原子%のTi及び1.0〜3.0原子%のWである。
また、この発明の実施形態に係る金属間化合物は、圧延率85〜99%の冷間圧延加工を行って得られたものであってもよい。このような冷間圧延加工により強度(例えば引張強度)に優れた金属間化合物が得られる。
また、この発明の実施形態に係る金属間化合物は、前記冷間圧延加工後に300〜1050℃で焼鈍を行って得られたものであってもよい。また、この焼鈍は、650〜1050℃であってよく、650℃以上の温度で焼鈍を行うと、延性に優れた金属間化合物が提供される。
また、この発明は、上記発明のNi3(Si,Ti)系金属間化合物からなり、厚さが20〜300μmであるNi3(Si,Ti)系金属間化合物圧延箔も提供する。この発明によれば、優れた延性特性を有するNi3(Si,Ti)系金属間化合物圧延箔が提供される。ここで、圧延箔には、圧延された板も含まれ、特に上記の冷間圧延加工により得られた圧延箔、又は上記の冷間圧延加工及び上記焼鈍により得られた圧延箔は、延性及び強度に優れる。
この発明は、別の観点によれば、主成分であるNi、7.5〜12.5原子%のSi、4.5〜11.5原子%のTi及び0.5〜5.0原子%のWからなる合計100原子%の組成を有する金属間化合物の重量に対して25〜500重量ppmのBを含有する鋳塊を作製する鋳塊作製工程と、前記鋳塊に対して均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、前記均質化熱処理工程後の前記鋳塊に対して圧延率10%以上の圧延をする圧延加工と900〜1100℃での焼鈍とを3回以上繰り返して、板状材料を作製する加工熱処理工程と、前記板状材料に対して圧延率85〜99%で冷間圧延加工を行う冷間圧延工程と、を備えるNi3(Si,Ti)系金属間化合物圧延板または箔の製造方法も提供する。
また、この発明の金属間化合物圧延板または箔の製造方法において、前記加工熱処理工程の圧延加工は、冷間又は350℃以下での温間圧延であってもよい。さらに、前記加工熱処理工程の圧延加工は、250〜350℃での温間圧延であってもよい。
なお、ここで示した種々の実施形態は、互いに組み合わせることができる。
〔各元素の含有量〕
次に、各元素の含有量について説明する。
Niの含有量は、例えば,78.5〜81.0原子%であり、好ましくは,78.5〜80.5原子%である。Niの具体的な含有量は、例えば,78.5,79.0,79.5,80.0,80.5又は81.0原子%である。Niの含有量の範囲は、ここで例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
Siの含有量は、7.5〜12.5原子%であり、好ましくは、10.0〜12.0原子%である。Siの具体的な含有量は、例えば,7.5,8.0,8.5,9.0,9.5,10.0,10.5,11.0,11.5,12.0又は12.5原子%である。Siの含有量の範囲は、ここで例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
Tiの含有量は、4.5〜11.5原子%であり、好ましくは、5.5〜11.5原子%であり、より好ましくは、6.5〜10.5原子%である。Tiの具体的な含有量は、例えば、4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5,9.0,9.5,10.0,10.5,11.0又は11.5原子%である。Tiの含有量の範囲は、ここに例示した数値のいずれか2つの間であってもよい。
Wの含有量は、0.5〜5.0原子%であり、好ましくは、0.5〜4.0原子%であり、より好ましくは、1.0〜3.0原子%である。Wの具体的な含有量は、例えば,0.5,1.0,1.5,2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,4.5又は5.0原子%である。Wの含有量の範囲は、ここで例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
上記各元素の含有量は、Ni,Si,Ti及びWの含有量の合計が100原子%になるように適宜調整される。
Bの含有量は、25〜500重量ppm,好ましくは,25〜100重量ppmである。Bの具体的な含有量は、例えば,25,40,50,60,75,100,150,200,300,400又は500重量ppmである。Bの含有量の範囲は、ここで例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
この発明の実施形態に係る金属間化合物の具体的な組成は、例えば、表1〜3に示す組成に上記含有量のBを添加したものである。
〔圧延板または箔及びその製造方法〕
次に、Ni3(Si,Ti)系金属間化合物の圧延板または箔について説明する。
このNi3(Si,Ti)系金属間化合物圧延板または箔は、上記実施形態の組成のNi3(Si,Ti)系金属間化合物の板状または箔状のものである。このNi3(Si,Ti)系金属間化合物圧延板または箔の厚さは、特に限定されないが、例えば10μm〜10mmであり、好ましくは、10〜1000μm、さらに好ましくは20〜300μmである。以下、この圧延板または箔の製造工程について説明する。
(1)鋳塊作製工程
まず、上記実施形態で示した組成の鋳塊を作製する。例えば、上記実施形態の組成のNi3(Si,Ti)系金属間化合物となるように、Ni、Si、Ti、W及びBを適量秤量し、これらを溶解炉で加熱することにより溶解し、この溶湯を鋳型に流し込んで鋳造することにより、鋳塊を得ることができる。溶解炉はこれらの金属などを溶解することができれば特に限定されないが、たとえば、真空誘導溶解炉やアーク溶解炉を用いることができる。
(2)均質化熱処理工程
鋳塊作製工程により得られた鋳塊に対して均質化熱処理を行う。均質化熱処理を行うと、鋳塊の元素の偏析を無くし鋳塊全体の組成を均質一様にすることができる。均質化熱処理は、例えば、この鋳塊を真空中において24〜48時間、950〜1100℃の熱処理を行うことにより実施する。
(3)加工熱処理工程
次に、均質化熱処理がされた鋳塊に対して圧延加工および焼鈍を繰り返し行って板状に加工し板状材料とする。まず、均質化熱処理が施された鋳塊に対して圧延加工をすることにより、板状の材料とする。圧延加工後に焼鈍を行うことにより加工硬化を除去した後、さらに圧延加工を行う。この圧延加工と焼鈍を繰り返し行うことにより、鋳塊を所望の厚さの板状材料とすることができる。
圧延加工の方法は、特に限定されないが、たとえば圧延機に試料を通過させることにより試料を圧延加工することができる。たとえば圧延機を用い材料を圧延加工する場合、圧延加工は、1パスでの圧延率が0.5〜1.5%になるように行うことが好ましく、10〜20パス行うことが好ましい。このように圧延機による圧延加工を繰り返し、圧延加工全体での圧延率が10%以上、好ましくは10〜50%、さらに好ましくは15〜30%、になるように行うとよい。なお、この明細書において、「1パスでの」と明示しない場合、「圧延率」とは、複数パスでの圧延加工による厚さの総減少量の割合を意味する。
また、圧延温度は特に制限されず、冷間圧延又は温間圧延のいずれであってもよい。冷間圧延であってもよいが、この実施形態では350℃以下(より好ましくは、250〜350℃)の温度範囲での温間圧延とすることが望ましい。これにより、圧延後の焼鈍を行う場合の実施回数を減らすことができる。通常の金属であれば、圧延温度は高いほうが加工性に優れるが、このNi3(Si,Ti)系金属間化合物は、降伏強度の逆温度依存性を示すため、圧延温度を上げると変形しにくくなる性質があるので、350℃以下(より好ましくは、250〜350℃)の温間圧延が好ましい。
焼鈍の条件は、試料の加工硬化を除去することができる条件であればよい。焼鈍は、例えば、真空中で1〜5時間、900〜1100℃で保持することにより行うことができる。
圧延加工および焼鈍は、所望の厚さの板状材料が得られるまで繰り返す。具体的には、圧延加工および焼鈍は、3回以上、好ましくは4回以上繰り返す。
(4)完全軟化焼鈍工程
上記の加工熱処理がされた板状材料に対し、軟化焼鈍処理を行ってもよい。軟化焼鈍処理を行うと、上記で加工熱処理された板状材料の内部応力を除去することができる。このため、次に述べる冷間圧延の前処理として好ましい。軟化焼鈍処理は、例えば、この鋳塊を真空中において0.5〜5時間、900〜1050℃の熱処理を行うことにより実施する。
(5)冷間圧延工程
次に、この板状材料に対して圧延率85〜99%で冷間圧延加工を行う。この冷間圧延加工によって所望のNi3(Si,Ti)系金属間化合物圧延板または箔が得られる。冷間圧延加工の方法は、特に限定されないが、たとえば、圧延機に板状材料を通過させることにより試料を冷間圧延加工することができる。
また、一度の冷間圧延加工によって所望の厚さの箔が得られない場合、冷間圧延加工の後に焼鈍を行ってその後再度冷間圧延加工を行うことによって厚さをさらに薄くすることができる。この際の焼鈍は、例えば、真空中で0.5〜2時間、800〜1000℃で保持することにより行うことができる。
また、この冷間圧延加工による加工硬化により試料の強度特性を向上させることができる。従って、冷間圧延加工後のNi3(Si,Ti)系金属間化合物圧延板または箔は、非常に高い強度特性を有し、構造材料などとして使用することができる。
(6)焼鈍工程
冷間圧延工程により得られたNi3(Si,Ti)系金属間化合物圧延板または箔に対し焼鈍を行うことができる。この焼鈍は、真空中にて、100〜1050℃で行う。また、この焼鈍の時間は、たとえば、0.5〜2時間である。この焼鈍工程により、当該板または箔の延性特性が向上する。また、当該板または箔を100〜700℃の温度で使用する場合、使用する温度以上の温度で焼鈍を行うことにより当該板または箔の特性を安定させることができる。
〔実証実験1〕
次に、この発明の効果を確認するため効果実証実験について説明する。この効果実証実験では、まず、対象の金属間化合物の特性を調べるための実証実験1を行った。以下、実証実験1について説明する。
(試料の作製)
(1)鋳塊試料作製工程
表4は、この実証実験1で作製した金属間化合物の組成、および比較のために作製した特許文献1で開示されている金属間化合物の組成を示した表である。
まず、表4に示した2種類の組成になるようにそれぞれの金属(それぞれの純度は99.9重量%以上)及びBを秤量した。次いで、これらの秤量された金属及びBをアーク溶解炉で溶解、鋳造して、厚さ10mm以上の鋳塊を作製した。アーク溶解炉の雰囲気は、溶解室内を真空排気し、その後不活性ガス(アルゴンガス)に置換した。電極は、非消耗タングステン電極を用い、鋳型には水冷式銅ハースを使用した。
なお、Wを2.0at.%含む試料がこの発明の実施例であり、以下、「実施例試料1」と呼ぶ。また、Wを含んでいない試料を「比較例試料」と呼び、基本的組成のみからなるという意味で、図において、単に「Ni3(Si,Ti)」とも記載する。
(2)均質化熱処理工程
次いで、上記鋳塊を均質化するために、真空中で48時間、1050℃で保持する均質化熱処理工程を行った。この均質化熱処理により得られた鋳塊を「均質化熱処理鋳塊」と呼ぶ。
(3)温間圧延工程
次いで、上記均質化熱処理鋳塊を厚さ10mmに切断し、この切断された鋳塊に対して、温間圧延加工と中間焼鈍を5度繰り返すことにより厚さ2mmの板材を作製した。温間圧延加工は、試料を大気中で300℃に加熱し、2段圧延機を用いて、1パスの圧下量を約0.1mmとして、10〜20パスの圧延することにより、実施した。また、試料は、1パス毎に加熱した。
中間焼鈍は、真空中で5時間、1000℃で保持することにより実施した。
(4)完全軟化焼鈍工程
次いで、この板材に、真空中で1時間、1050℃で保持することにより、完全軟化焼鈍を行った。
(5)冷間圧延工程
次いで、上記工程で得られた板材に対して、室温で冷間圧延加工を行い、箔を作製した。冷間圧延加工は、途中で焼鈍を行わずに圧延率が90%となるように行った。冷間圧延加工は、板厚0.5mm程度まではダイス鋼ロールを使用し、その後は超硬ロールに変えて冷間圧延を行った。なお、ダイス鋼ロールも超硬ロールも同一の2段圧延機を使用した。作製された箔の厚さは、0.2mmであった。冷間圧延加工によって得られ且つ冷間圧延後に焼鈍を行っていない箔を、以下「冷間圧延箔」と呼ぶ。
(6)焼鈍工程
次いで、上記工程で得られた冷間圧延箔を真空中で1時間、500、600、700、800、900又は1000℃で保持し焼鈍を行った。なお、以下「焼鈍」という記載は、特に言及しない限りこの冷間圧延加工後の焼鈍をいう。
以上により、試料を作製した。
(試料の評価)
(1)組織観察
上記均質化熱処理工程後に得られた試料(実施例試料1)について、組織観察を行った。具体的には、均質化熱処理鋳塊(実施例試料1)の組織のSEM写真の撮影を行った。図1にその写真を示す。
図1を参照すると、実施例試料1は、2相組織を呈していることがわかる。すなわち、この実施例試料1は、母相(マトリックス)と、母相中に形成された第2相とからなる2相組織で構成されている。なお、ビッカース硬さは、399Hvであった。
さらに、この均質化熱処理鋳塊(実施例試料1)について、組織中の構成相を同定するためX線測定を行った。図2にその結果を示す。図2は、実施例試料1のX線回折プロファイルである。参考として,Ni77.5Si11.0Ti9.5Hf2.0+50wt.ppm(B以外はat.%である。以下「Hf添加試料」と呼ぶ。)のX線回折プロファイルも同時に示す。上段がHf添加試料(参考試料)のX線回折プロファイルであり、下段が実施例試料1のX線回折プロファイルである。なお、図の中の点は、既知の材料であるNi3(Si,Ti)(比較例試料)、Ni3Hf、Ni5Hfのプロファイルのピーク位置である。また、ここに示したHf添加試料は、実施例試料1と同じ方法(鋳塊試料作製工程及び均質化熱処理工程)で作製している。
図2を参照すると、実施例試料1のX線回折プロファイルは、Ni3(Si,Ti)のプロファイルのピーク位置と一致していることがわかる。実施例試料1が先に示したSEM写真(図1)から2相組織であることやX線回折プロファイルでは,fcc−Ni固溶体相とL12相からの回折線とが重なり分離できないことから判断すると、実施例試料1は、L12結晶構造をとるNi3(Si,Ti)相と面心立方構造(fcc)をとるNi固溶体相(以下、fcc−Ni固溶体相ともいう。)との2相組織であると同定できる。比較例試料のNi3(Si,Ti)がL12相からなる単相であることから、母相(マトリックス)がL12相であり、第2相がfcc−Ni固溶体相であることがわかる。
さらに、実施例試料1について、組織分析のためにEPMA測定も行った。図3にその結果を示す。図3は、実施例試料1のEPMA元素マッピング図である。図3の左上の図がSEM写真、右上の図がNiのマッピング図、中央左の図がSiのマッピング図、中央右の図がTiのマッピング図、左下の図がWのマッピング図、右下の図がBマッピング図である。
図3に示されるように、Ni、Ti、Bの元素のマッピングでは組織全体にわたり均一な組成となっているが、Si、Wの元素のマッピングでは2つの相の組織の間でその元素濃度が異なっていることがわかる。このEPMA測定で点分析を行った(上記2つの相それぞれについて点分析を行った)ところ、表5に示すように、fcc−Ni固溶体相(第2相)は、L12相(マトリックス)よりもSi濃度が低く、その代わりW濃度が高いことがわかった。
(2)ビッカース硬さ試験
次に、(i)均質化熱処理鋳塊(実施例試料1)及び(ii)冷間圧延箔(実施例試料1)並びに(iii)各温度で焼鈍がなされた冷間圧延箔(実施例試料1)について、ビッカース硬さ試験を行った。ビッカース硬さ試験は、各試料に正4角錐のダイヤモンド製圧子を押し込むことにより、行った。その際の荷重は300gを主として用い、保持時間は20秒とした。
図4にその結果を示す。図4は、ビッカース硬さ試験の結果を示した図であり、各試料の焼鈍温度とビッカース硬さとの関係を示したグラフである。なお、図4において、左端の点は(i)の均質化熱処理鋳塊の特性を示し、実線で結ばれた各点は(ii)の冷間圧延箔及び(iii)の各温度で焼鈍がなされた冷間圧延箔(実施例試料1)の特性を示している。また、上記の実線で結ばれた各点のうち、室温付近にある点が(ii)の冷間圧延箔の特性を示している。
図4を参照すると、実施例試料1の金属間化合物は、冷間圧延工程を加えることにより600Hvを超える高い値を示すことがわかる。また、500℃又は600℃焼鈍を行うことによりさらにビッカース硬さの値が上昇することがわかる。そして、700℃付近の温度より高い温度で焼鈍を行うと、再結晶のため軟化しているが、1000℃の焼鈍であっても均質化熱処理鋳塊と比較して硬いことがわかる。これは、冷間圧延等の加工処理により組織が微細化したことによるものと推察される。
(3)室温引張試験
次に、実施例試料1及び比較例試料の、(i)冷間圧延箔、及び(ii)各温度で焼鈍された冷間圧延箔について、室温引張試験を行った。室温引張試験に用いた試料の大きさは、平行部長さ10mm、幅4mmであった。室温引張試験は、室温、大気中で歪み速度8.4×10-5-1の条件で行った。
図5、図6にその結果を示す。図5は、実施例試料1及び比較例試料について、室温引張試験における試料に加えた応力と試料に生じたひずみとの関係を示すグラフ(公称応力−公称ひずみ曲線)である。図6は、実施例試料1について、引張強度、0.2%耐力(又は降伏強度)および伸びと焼鈍温度との関係を示したグラフである。なお、図5の冷間圧延箔は、焼鈍を行っていない箔(すなわち上記(i)の冷間圧延箔)のデータを示し、グラフ中の数値は、焼鈍の条件を示している。また、図5の実線は実施例試料1のデータを示しており、同図の点線は比較例試料のデータを示している。図5右下の線は、公称ひずみ0.1の大きさを示し、図5の横軸は左端を0としこの尺度で記載されている。また、図6の冷間圧延箔は、焼鈍を行っていない箔のデータを示している。図6において、○(円形状)印の点が引張強度であり、△(三角形状)印の点が0.2%耐力(又は降伏強度)、□(四角形状)印の点が伸びを示している。
図5を参照すると、実施例試料1は比較例試料よりも引張強度、延性とも向上していることがわかる。例えば、900℃で1時間の焼鈍処理(900℃−1h焼鈍)がされた比較例試料は、その引張強度が1480MPaであり、その降伏強度が790MPaであるが、一方で同じ焼鈍処理がされた実施例試料1は、その引張強度が1790MPa、その降伏強度が1150MPaであり、その数値が大きく向上している。また、600℃で1時間の焼鈍処理がされた実施例試料1は、2400MPaを超える引張強度を示しており、実施例試料1が極めて高い引張強度特性を備えていることがわかる。比較例試料に対して実施例試料1の引張強度が高い理由として、fcc−Ni固溶体相が分散することによってL12マトリックスの結晶粒径が微細化される、あるいは、L12相とfcc−Ni固溶体相の界面が強化に寄与している,などの可能性が考えられる。
さらに、図6によれば、実施例試料1は、冷間圧延箔後の焼鈍の温度が600℃を超えると、その引張強度及び降伏強度が低下するものの、その伸びは大幅に改善することがわかる。さらに、焼鈍の温度が800℃を超えると、伸び(塑性伸び)は30%程度まで達し、実施例試料1が一般の金属と比べても遜色のない延性を備えることがわかる。
次いで、室温引張試験での破壊形態を調査するため、引張試験後の実施例試料1について破面観察を行った。図7に、冷間圧延箔(実施例試料1)及び600℃並びに900℃の温度で焼鈍がされた冷間圧延箔(実施例試料1)の各破面のSEM写真を示す。図7は、実施例試料1について、それぞれ、(1)が冷間圧延箔の破面、(2)が600℃で焼鈍された冷間圧延箔の破面、(3)が900℃で焼鈍された冷間圧延箔の破面を示している。
図7の(1)から(3)を参照すると、(1)の冷間圧延箔は図5や図6に示されるように、引張試験では明瞭な伸びは示さないものの、詳細に観察すると、浅いディンプル状破面であることが確認された。また、図7の(2)及び(3)に示される実施例試料1の破面には、ディンプルが観察され、延性的な破面であることが確認された。このことから、この実施例試料1は、冷間圧延箔であっても、ある程度の延性を備えていることがわかった。
(4)高温引張試験
次に、900℃で1時間焼鈍を行った実施例試料1及び比較例試料について、室温及び高温において引張試験を行った。高温引張試験に用いた箔の大きさは、平行部の長さ10mm、幅4mmであった。高温引張試験は、真空中で歪み速度8.4×10-5-1、温度は、室温〜700℃で行った。
図8、図9にその結果を示す。図8は、実施例試料1について、高温引張試験における試料に加えた応力と試料に生じたひずみとの関係を示すグラフ(公称応力−公称ひずみ曲線)である。図9は、実施例試料1及び比較例試料について、引張強度、降伏強度および伸びと試験温度との関係を示したグラフである。なお、図8に示される数値は、試験温度を示している。また、図9の実線のグラフ(図9の(1),(2)及び(3))は実施例試料1のデータを示しており、同図の点線のグラフ(図9の(4),(5)及び(6))は比較例試料のデータを示している。また同図において、○(円形状)印の点が引張強度であり、△(三角形状)印の点が降伏強度、□(四角形状)印の点が伸びを示している。
図8を参照すると、実施例試料1は、500℃で1200MPaを超える引張強度を示し、実施例試料1が高温において優れた引張強度を備えることがわかる。また、実施例試料1は試験温度の上昇とともに引張強度が低下するものの、高温においても伸びが改善され、特に700℃で優れた延性を示すことがわかる。
次に、図9を参照すると、実施例試料1は、引張強度及び降伏応力並びに伸びの各特性が比較例試料の特性よりも優れた値を示すことがわかる。より詳細には、実施例試料1は、600℃まで、引張強度、降伏応力とも比較例試料よりも高い値を示すことがわかる。また、比較例試料は、高温になるに従い伸びが減少し、600℃でほぼ伸びが消失しているが、一方、実施例試料1は、600℃でも伸びが消失することなく、その伸びの値は、高温において比較例試料よりも優れた値を示している。この600℃のデータは高温で発生する粒界破壊が抑制されたためと考えられる。なお、実施例試料1は700℃で100%超の伸びを示している。
次いで、高温引張試験においても、引張試験後の実施例試料1について破面観察を行った。図10に、冷間圧延箔(実施例試料1)及び900℃で1時間の焼鈍処理がされた実施例試料1の各破面のSEM写真を示す。図10は、それぞれ、(1)が冷間圧延箔の破面、(2)が500℃で引張測定された実施例試料1の破面、(3)が600℃で引張測定された実施例試料1の破面、(4)が700℃で引張測定された実施例試料1の破面を示している。
図10の(1)から(4)を参照すると、冷間圧延箔及び各温度で引張測定された実施例試料1、ともに粒界破壊が抑制されていることが確認できた。このため、延性が維持されて優れた伸び特性を示すと考えられる。
以上の実証実験1の結果からわかるように、実施例試料1は、室温において、比較例試料と比較して優れた引張強度、延性を備えている。また、高温においても、優れた引張強度を備え、特に高い延性を示す。したがって、実施例試料1は、高温で短時間に金属破断が進行しない特性を有する。
〔実証実験2〕
次に、W含有量を変更して、実証実験1の実施例試料1と同様の金属間化合物が得られるかを確認するため、実証実験2を行った。以下、実証実験2について説明する。
(試料の作製)
実証実験2では、表6に示した2種類の組成の試料を作製した。表6は、この実証実験2で作製した金属間化合物の組成を示した表である。
この実証実験2の試料は、上記実証実験1で説明した(1)鋳塊試料作製工程及び(2)均質化熱処理工程により作製した。すなわち、上記(1)鋳塊試料作製工程において、表6の組成になるようにそれぞれの金属(それぞれの純度は99.9重量%以上)及びBを秤量した点以外は、上記実証実験1と同じ条件で作製した。
なお、表6の試料は両者ともこの発明の実施例であり、Wを0.5at.%含む試料を以下、「実施例試料2」と呼び、Wを4.0at.%含む試料を以下、「実施例試料3」と呼ぶ。
(試料の評価)
(1)組織観察
まず、作製された試料について、組織観察(SEM観察)を行った。図11〜図13にその結果を示す。図11は、実施例試料2のSEM写真であり、図12は実施例試料3のSEM写真である。また、図13は実施例試料1〜3のSEM写真である。ここで、図11及び図12において、各図の(1)及び(2)が倍率100倍、(3)及び(4)が倍率500倍の写真であり、各図の(1)及び(3)が2次電子像(SEI:secondary electron image)、(2)及び(4)が後方散乱電子像(BEI:back scattered electron image)である。また、図13において、(1)が実施例試料2、(3)が実施例試料3のSEM写真であり、(2)は、参考として、実証実験1の実施例試料1のSEM写真を示している。
図11を参照すると、微量の第2相(実証実験1で確認されたfcc−Ni固溶体相)が実施例試料2の母相中に分散していることがわかる。ごく一部の領域で第2相がやや多く観察されたが、図11の(1)(2)に示されるように、実施例試料2では、第2相がほぼ均一に母相中に分散していた。
一方、図12を参照すると、第2相(fcc−Ni固溶体相)が実施例試料3の全面を覆うように多量に形成されていることがわかる。実施例試料3は、実施例試料2と比べて第2相の体積率が高くなっていることがわかる。
また、図13を参照すると、実施例試料1〜3のいずれの試料も母相に第2相が分散していることがわかる。図13において、白く写っている領域(明部)がfcc−Ni固溶体相であり、黒く写っている領域(暗部)がL12相であることを考慮すると、実施例試料2(W含有量が0.5at.%)、実施例試料1(W含有量が2.0at.%)、実施例試料3(W含有量が4.0at.%)の順で、第2相の体積率が高くなっているおり、Wの含有量に応じて第2相の体積率が高くなっていることがわかる。
(2)ビッカース硬さ試験
次に、実施例試料2及び3について、ビッカース硬さ試験を行った。ビッカース硬さ試験は、実証実験1と同様に、各試料に正4角錐のダイヤモンド製圧子を押し込むことにより、行った。条件は、荷重を1kg、保持時間を20秒とした。
図14にその結果を示す。図14は、実証実験2のビッカース硬さ試験の結果を示すグラフである。
図14を参照すると、実施例試料2のほうが実施例試料3よりもやや硬い傾向があるものの、その硬さはほぼ同等であった。表7に、実施例試料1を含め、Wを含有する試料のビッカース硬さを示す。
表7を参照すると、これらの試料は、母相(L12相)の体積率又は第2相(fcc−Ni固溶体相)の体積率が大きく異なりその組織が大きく異なるにもかかわらず、試料の硬さはほぼ同等であることがわかる。この結果から、実施例試料2及び3も実施例試料1と同様に、実証実験1と同様の冷間圧延工程を施すことが可能であり、焼鈍を施した場合を含め同等の効果が得られることが予想される。
産業上の利用の可能性
この発明によれば、例えば、ステンレス鋼箔、ニッケル箔等の代替材料として、化学装置用材料(触媒担体、化学容器部材等)、電気・電子用材料、構造用材料に適用できる。これらの材料に適用した場合、この発明の金属間化合物は、高温で優れた延性特性を有するので、高温加工が可能であり、製造が容易である。また、この発明の金属間化合物は、高温で短い時間に金属破断が進行することはないので、他の構造部材に貼り付けてその構造物を保護するために用いたり、積層物の基材に用いたりできる。

Claims (8)

  1. 主成分であるNi、7.5〜12.5原子%のSi、4.5〜11.5原子%のTi及び0.5〜5.0原子%のWからなる合計100原子%の組成を有する金属間化合物の重量に対して25〜500重量ppmのBを含有することを特徴とするNi3(Si,Ti)系金属間化合物。
  2. L12相とNi固溶体相とからなる請求項1に記載のNi3(Si,Ti)系金属間化合物。
  3. 主成分であるNi、7.5〜12.5原子%のSi、5.5〜11.5原子%のTi及び0.5〜4.0原子%のWからなる合計100原子%の組成を有する金属間化合物の重量に対して25〜500重量ppmのBを含有する請求項1又は2に記載のNi3(Si,Ti)系金属間化合物。
  4. 主成分であるNi、10.0〜12.0原子%のSi、6.5〜10.5原子%のTi及び1.0〜3.0原子%のWからなる合計100原子%の組成を有する金属間化合物の重量に対して25〜100重量ppmのBを含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のNi3(Si,Ti)系金属間化合物。
  5. 圧延率85〜99%の冷間圧延加工を行って得られた請求項1〜4のいずれか1つに記載のNi3(Si,Ti)系金属間化合物。
  6. 前記冷間圧延加工後に300〜1050℃で焼鈍を行って得られた請求項5に記載のNi3(Si,Ti)系金属間化合物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つに記載のNi3(Si,Ti)系金属間化合物からなり、厚さが20〜300μmであるNi3(Si,Ti)系金属間化合物圧延箔。
  8. 主成分であるNi、7.5〜12.5原子%のSi、4.5〜11.5原子%のTi及び0.5〜5.0原子%のWからなる合計100原子%の組成を有する金属間化合物の重量に対して25〜500重量ppmのBを含有する鋳塊を作製する鋳塊作製工程と、
    前記鋳塊に対して均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、
    前記均質化熱処理工程後の前記鋳塊に対して圧延率10%以上の圧延をする圧延加工と900〜1100℃での焼鈍とを3回以上繰り返して、板状材料を作製する加工熱処理工程と、
    前記板状材料に対して圧延率85〜99%で冷間圧延加工を行う冷間圧延工程と、
    を備えるNi3(Si,Ti)系金属間化合物圧延板または箔の製造方法。
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