JPWO2008023582A1 - 乳酸残基を含有するデプシペプチド - Google Patents

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Abstract

下記一般式 (I) で表される化合物または該化合物を重合させて得られるポリマー化合物。R1−Gly−Lac−Pro−R2(I)(式中、−Gly−Lac−Pro− は下記式(II)のグリシン残基、乳酸残基、プロリン残基の結合したトリデプシペプチドを示し、R1は水素原子、アミド結合で結合したアミノ酸、ポリペプチドまたはヒドロキシカルボン酸、R2は水酸基、アミド結合で結合したアミノ酸もしくはポリペプチド、またはエステル結合で結合したヒドロキシカルボン酸を表す)

Description

本発明は、温度応答性材料として使用しうる新規なデプシペプチド化合物およびそれを重合させて得られるデプシペプチドポリマーに関する。更に詳しくは、乳酸残基とアミノ酸残基が脱水縮合されてできたデプシペプチドを構成成分として持つ新規なデプシペプチド化合物およびそれを重合させて得られるデプシペプチドポリマーに関する。
本発明の材料は水、緩衝液または含水溶媒中で温度に応答し凝集または溶解する温度応答性材料として使用しうるため、生体吸収性組成物、環境分解性組成物、細胞接着剤、人工筋肉、マイクロカプセル、バイオマシン、バイオセンサー、分離膜、検査キットなどを構成するのに有用である。
(1)デプシペプチドおよび関連材料の現況:
デプシペプチドは式(A)に示すように主鎖がエステル結合とアミド結合で連結されたポリマーまたはオリゴマーである。その構造の骨格はアミド結合とエステル結合からできている。
Figure 2008023582
骨格に含まれるアミド結合とエステル結合は分子レベルでは3種類の相互作用が知られている。即ちアミド結合同士では、分子レベルでは分子内と分子間に水素結合により、強い相互作用と分子構造の安定化を起こす。よって巨視的には溶媒への不溶化と機械的強度の向上が期待される。またエステル結合同士では、分子レベルでは水素結合による分子間と分子内の相互作用が生じない。よって巨視的には機械的強度の減少による柔軟性または弱さが期待される。即ちアミド結合とエステル結合の間では、分子レベルでは分子内と分子間にエステル部位の酸素原子とアミド部位のNHの間でやや弱い水素結合により、分子構造の構造安定化を起こす。よって巨視的にはアミド結合のみの場合より小さな機械的強度の向上が期待される。従ってデプシペプチドはアミノ酸やヒドロキシカルボン酸によるオリゴマーやポリマーの特徴を生かした材料とすることができる。つまりアミノ酸とヒドロキシカルボン酸の種類や組成、配列を変化させることで幅広い特性を持つ材料を合成することができる。さらに、デプシペプチドの長所として、体内に炎症をおこしにくいこと、酸性成分に弱い物質の薬物運搬材料として利用できること、水素結合と疎水性相互作用といった分子間や分子内相互作用により成型物の強度が極めて高いこと、の3点が挙げられる。このようにデプシペプチドは極めて魅力的な物質である。
実際にポリデプシペプチドについてはさまざまな研究が行われた。例えばヒドロキシカルボン酸の側鎖をH-、CH3-、(CH3)2CH-、(CH3)2CH-CH2-のように疎水性と立体障害の大きさを変化させると生体内での分解速度が2週間から6ヶ月まで幅広く調節することができることがわかっている。また生体組織との接合面に炎症はみられないことも特徴的である(非特許文献1)。
ポリデプシペプチドでは炎症が見られなかったが、一般にポリヒドロキシカルボン酸のみを使用する材料では分解が速い場合、炎症反応を引き起こしやすいことが知られている(非特許文献2)。これは乳酸やグリコール酸のような比較的強い酸性成分が蓄積するためと考えられている。一方、ポリデプシペプチドではデプシペプチドオリゴマーが分解物として生成するために酸性成分が蓄積されず、分解速度が速くても炎症が見られなかったと考えられる。
ポリデプシペプチドは、合成方法の点からも近年改良が行われてきた。例えば反応ステップ数を削減する研究である。すなわち、アミノ基を保護されたアミノ酸のカルボキシル基と、無保護のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸のヒドロキシル基とを、アミノピリジン化合物を触媒として反応させ、ジデプシペプチドを生成することができるようになった(特許文献1、非特許文献3,4)。これらの研究により、ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基の保護基を形成せずに繰り返し配列をもつデプシペプチドをより簡便に製造できるようになった。即ち、実験室レベルの合成設備(数mL〜数百mL)でも、純粋なポリデプシペプチドを数百mg〜数gの単位で一度に合成することが可能となった。工場設備(数L〜数百L)へ規模拡大した場合は数kg単位での製造を十分に行うことができる。
(2)温度応答性材料の現況:
近年、温度を上昇させることで凝集する温度応答性材料の研究に注目が集まっている。これらは水を多く含有する性質を利用して薬物運搬体、創傷被覆材料、人工筋肉、マイクロカプセル、バイオマシン、バイオセンサー、分離膜などへの利用が期待されている。
デプシペプチドを用いた方法によっても近年、温度応答性材料が開発された。(特許文献2、非特許文献5)例えば、-Gly-Val-Gly-Hmb-Pro- と -Gly-Val-Gly-Hmb-Ala-Pro-(Hmb = バリン酸残基)を繰り返し単位とするデプシペプチドポリマーが開示されている。これらはバリン酸(Hmb)と呼ばれるβ分岐型ヒドロキシカルボン酸を有する点を特徴としている。ここで示した配列に於けるバリン酸の位置には、温度応答性の発現のために、β分岐型アミノ酸(またはヒドロキシカルボン酸)が必要であると考えられてきたためである。
デプシペプチドまたはペプチドによる温度応答性材料に於いて、β分岐型アミノ酸の役割は、加熱によりValγCH3(またはHmbγCH3)とProδCH2の疎水性水和した水分子が熱エネルギーによる分子運動の増大で側鎖から遊離して、側鎖間に疎水性相互作用を起こすこと(加熱による温度応答性の凝集現象)、またその逆の過程が起こること(冷却による温度応答性の溶解現象)で、可逆的な温度応答性を引き起こすと考えられてきた。(Val残基での例として、非特許文献6〜9)(Ile残基での例として、非特許文献10)
ペプチドによる温度応答性材料に於いて、実際にβ分岐型アミノ酸ではない、アラニン(Ala)残基の場合、非可逆な温度応答を示し直ちに水に不溶な物質になってしまうことが指摘されている。(非特許文献11)すなわち従来の温度応答性材料には、決まった位置にβ分岐型アミノ酸を導入する必要があり、配列の制限が大きい点で問題があった。
これまでの生体材料として実際に市販されてきたヒドロキシカルボン酸は、主に乳酸とグリコール酸を構成成分としている。これらは多くの使用例があり、長所と短所がわかっている点で優れている。
一方、これまでのデプシペプチドによる温度応答性材料は、その他のヒドロキシカルボン酸である、バリン酸(Hmb)を使用している。これは抗生物質のように多くの天然物に含まれるためほとんど問題はないと予想されるが、生体材料として使用された事例は少ない。そのため、バリン酸(Hmb)を含んだ温度応答性高分子の生体応用には、体内動態を含めて多くの検討が必要と考えられる点で、まだ問題が残っていた。
興味深い研究として、温度応答性材料に関連したポリデプシペプチド配列が、1990年に報告されている。(非特許文献12、13)ここでは-Val-Pro-Gly-Hmb-Gly-と -Val-Ala-Pro-Gly-Hmb-Gly-の2種類の繰り返し配列をもつポリマーが報告されている。これらは、温度応答性が示されていない、合成ステップ数が多い、縮合反応と呼ばれるエステル結合又はアミド結合を生成する最も重要な反応が低収率であること(5つの反応が記載され、それぞれ23、33,54,70、76%)、低収率の結果最終生成物のポリマー体が10 mgしか得られていないこと、の4点に於いて問題があった。実際、論文中には、
この配列の合成がいかに困難であるか述べてある点は注目される。
即ち、本発明者らの報告した事例(特許文献2、非特許文献5)を除き、一般には現在まで、温度応答性材料に関連したポリデプシペプチドおよびオリゴデプシペプチド配列の合成は非常に困難であり、実用的ではないと考えられてきた。
特開2004-269462 WO2006/043644A1 吉田ら、Journal of Biomedical Materials Research、1990年、24巻、1173ページ 敷波保夫、リウマチ科、1999年、21巻第3号、267ページ 片貝ら、Biopolymers、2004年、73巻、641ページ 奥ら、Acta Crystallographica Section E、2004年、E60巻、o927ページ 七里ら、Peptide Science 2004、2005年、633ページ チャンら、Journal of Biomolecular Structure and Dynamics、1989年、6巻、851ページ ウリーら、Biochemistry and Biophysics Research Communication、1977年、79巻、700ページ ウリーら、Biopolymers、1989年、28巻、819ページ ウリーら、Progress in Biophysics and Molecular Biology、1992年、57巻、23ページ ウリーら、Biopolymers、1986年、25巻、1939ページ ラパカら、International Journal of Peptide and Protein Research、1978年、81ページ アラッド&グッドマン、Biopolymers、1990年、29巻、1633ページ アラッド&グッドマン、Biopolymers、1990年、29巻、1651ページ
本発明の課題は、生体材料として好ましい構成成分を有し温度応答性材料として使用しうる、新規なデプシペプチドを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために新たなアミノ酸配列に着目した。即ち従来は不可逆的な温度応答とその結果生じる不溶性のために注目されてこなかった、β分岐型アミノ酸ではないアミノ酸、アラニン(Ala)を持つエラスチン様ポリペプチドの配列、-Gly-Ile-Gly-Ala-Pro-(配列番号1)に着目した。更にアラニン(Ala)をヒドロキシカルボン酸の乳酸(Lac)に置換したデプシペプチド、-X1-X2-Gly-Lac-Pro-(X1およびX2は任意のアミノ酸残基)の化学合成を計画した。
はじめに-X1-X2-Gly-Lac-Pro-の配列を持つポリデプシペプチドとして、poly(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)、およびpoly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)の化学合成を計画した。合成方法や各反応段階での条件を精査することで、実験室規模の設備(数mL〜数百mL)にも関わらず、数百mg〜数gの単位を一度の工程で化学合成することができた。
さらに、これらのポリデプシペプチドは容易に水溶液となり、目視や測定装置によって明瞭な温度応答性が確認された。また、温度応答挙動は可逆的であることがわかった。このように種々の乳酸残基を含むデプシペプチドについて合成を行い温度応答性について鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)下記一般式 (I)
R1−Gly−Lac−Pro−R2 (I)
で表される化合物。
(式中、−Gly−Lac−Pro− は下記式(II)の構造を示し、R1は水素原子、アミド結合で結合したアミノ酸、ポリペプチドまたはヒドロキシカルボン酸、R2は水酸基、アミド結合で結合したアミノ酸もしくはポリペプチド、またはエステル結合で結合したヒドロキシカルボン酸を表す。)
Figure 2008023582
(2)前記一般式(I)が、X1−X2−Gly−Lac−Pro (X1およびX2はα−アミノ酸残基を示
す)である(1)の化合物。
(3)(1)または(2)の化合物を重合させて得られるポリマー。
(4)末端に糖鎖配列、タンパク質、多糖、金属錯体、高分子担体、ゲル、フィルム、ラテックス粒子、金属微粒子、無機微粒子、ガラスプレート、もしくはプラスチックプレートが結合した、(1)もしくは(2)の化合物、または(3)のポリマー。
(5)(1)もしくは(2)の化合物または(3)のポリマーを、水、緩衝液、食塩水、または含水有機溶媒と混合させることにより得られる組成物であって、溶媒和状態、ゲル状態、懸濁物、均一な溶液、または相分離状態を形成する組成物。
(6)加温により水分子を放出し、冷却により水分子を取り込む(5)の組成物。
(7)(1)もしくは(2)の化合物または(3)のポリマーを含む温度応答性組成物。
図1は本発明の一実施態様である、poly(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)をMALDI-TOF質量分析法により測定したスペクトルである。 図2は本発明の一実施態様である、poly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)をMALDI-TOF質量分析法により測定したスペクトルである。 図3は本発明の一実施態様である、poly(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)の水溶液(0.1 mg/mL)を1 mm厚の石英製吸収スペクトル用セルに入れ、0〜80℃の間で10℃毎に温度上昇させ、各温度での温度平衡になった際に測定された、温度変化円偏光二色性スペクトルである。 図4は本発明の一実施態様である、poly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)の水溶液(0.1 mg/mL)を1 mm厚の石英製吸収スペクトル用セルに入れ、10〜70℃の間で10℃毎に温度上昇させ、各温度での温度平衡になった際に測定された、温度変化円偏光二色性スペクトルである。 図5は本発明の一実施態様である、poly(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)の水溶液(10 mg/mL)を1 mm厚の石英製吸収スペクトル用セルに入れ、20〜70℃の間、1℃/5分の速度で温度を上昇、次には下降させた。1℃毎に各温度での350 nmの光に対して透過率(%)を測定し、100−透過率(%) = 濁度(%)としてプロットしたグラフである。 図6は本発明の一実施態様である、poly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)の水溶液(10 mg/mL)を1 mm厚の石英製吸収スペクトル用セルに入れ、20〜70℃の間、1℃/5分の速度で温度を上昇、次には下降させた。1℃毎に各温度での350 nmの光に対して透過率(%)を測定し、100−透過率(%) = 濁度(%)としてプロットしたグラフである。 図7は本発明の一実施態様である、poly(Gly-Val-Gly-Lac-Pro)をMALDI-TOF質量分析法により測定したスペクトルである。 図8は本発明の一実施態様である、poly(Gly-Val-Gly-Lac-Pro)の水溶液(0.1 mg/mL)を1 mm厚の石英製吸収スペクトル用セルに入れ、10〜70℃の間で10℃毎に温度上昇させ、各温度での温度平衡になった際に測定された、温度変化円偏光二色性スペクトルである。 図9は本発明の一実施態様である、poly(Gly-Val-Gly-Lac-Pro)の水溶液(10 mg/mL)を1 mm厚の石英製吸収スペクトル用セルに入れ、20〜70℃の間、1℃/5分の速度で温度を上昇、次には下降させた。1℃毎に各温度での350 nmの光に対して透過率(%)を測定し、100−透過率(%) = 濁度(%)としてプロットしたグラフである。また比較例としてpoly(Gly-Val-Gly-Hmb-Pro) の水溶液(10 mg/mL)を示した。 図10は本発明の一実施態様である、poly(Gly-Val-Gly-Lac-Pro)について濃度の異なる水溶液(10, 20, 30, 40 mg/mL)を1 mm厚の石英製吸収スペクトル用セルに入れ、20〜70℃の間、1℃/5分の速度で温度を上昇させた。1℃毎に各温度での350 nmの光に対して透過率(%)を測定し、100−透過率(%) = 濁度(%)としてプロットしたグラフである。 図11は本発明の一実施態様である、poly(Gly-Val-Gly-Lac-Pro)の水溶液(40 mg/mL)を1 mm厚の石英製吸収スペクトル用セルに入れ、20〜70℃の間、1℃/5分の速度で温度を上昇、次には下降させた。1℃毎に各温度での350 nmの光に対して透過率(%)を測定し、100−透過率(%) = 濁度(%)としてプロットしたグラフである。
本発明の化合物(デプシペプチド)は、下記一般式 (I) で表される。
R1−Gly−Lac−Pro−R2 (I)
式(I)中、−Gly−Lac−Pro− は下記式(II)のグリシン残基と乳酸残基とプロリン残基の結合したトリデプシペプチド構造を示す。
Figure 2008023582
また、R1はアミノ基のH原子、アミド結合で結合したアミノ酸、ポリペプチドまたはヒドロキシカルボン酸を示し、R2はカルボン酸のOH基、アミド結合で結合したアミノ酸もしくはポリペプチド、またはエステル結合で結合したヒドロキシカルボン酸を示す。
なお、R1がアミノ酸またはポリペプチドである場合、R1のアミノ末端にはアミノ基の保護基が付加されていてもよい。また、R2がOH基またはアミノ酸もしくはポリペプチドである場合、R2のカルボキシ末端にはカルボキシル基の保護基が付加されていてもよい。アミノ基の保護基としては、Boc:tert-ブトキシカルボニル(t-Bu-O-CO-)などが挙げられる。カルボキシル基の保護基としては、OSu:N-ヒドロキシスクシンイミドやOBzl:ベンジル(-O-CH2-C6H5)などが挙げられる。
R1及びR2に含まれるアミノ酸(ポリペプチドを構成するものも含む)はα−アミノ酸が好ましい。また、側鎖が修飾されたもの、側鎖にペプチドなどが結合したものなどであってもよい。また、R1及びR2がポリペプチドの場合、アミノ酸の数が2〜20個のものが好ましく、2〜9個のものがより好ましい。
R1及びR2に含まれるアミノ酸(ポリペプチドを構成するものも含む)の種類は、温度応答性組成物の成分に合わせて、応答温度や溶解性や膨潤性の調節を目的として選択が行われる。例えば一般に電荷を帯びることがなければ、アミノ酸側鎖の疎水性が大きいほど応答温度が低温側へ、親水性が大きいほど高温側に調節することが可能である。これは発明者らの関連研究(例えばMacromolecules、1998年、31巻、3383ページ;Macromolecules、1996年、29巻、1065ページなど)やウリーらの研究例(特表2004-501784)により明らかである。
また、R1及びR2に含まれうるヒドロキシカルボン酸としてはバリン酸、乳酸、グリコール酸などが挙げられる。
本発明の化合物は、上記一般式(I)で表される配列が、X1−X2−Gly−Lac−Proであることが好ましい。ここで、X1およびX2は任意のα−アミノ酸残基を示す。
具体的には、Ala-Ile-Gly-Lac-Pro、またはGly-Ile-Gly-Lac-Pro、Gly-Val-Gly-Lac-Proなどが挙げられるがこれらには限定されない。
本発明のポリマー化合物は上記一般式(I)のデプシペプチド化合物を重合させて得られるポリマーである。
ポリマー化合物の構造は直鎖状構造が好ましいが、アミノ酸側鎖から分岐した分岐鎖を有するものであってもよい。
デプシペプチドポリマーの重合度は特に制限されず、一般式(I)のデプシペプチド化合物が2〜10個程度繰り返されたオリゴマーであってもよい。なお、本発明のポリマー化合物に含まれるアミノ酸残基及びヒドロキシ酸残基の総数は好ましくは1000個以下、より好ましくは500個以下である。本発明のポリマー化合物は分子量1500〜10万であることが好ましく、1500〜5万であることがより好ましい。
本発明のポリマー化合物は、一般式(I)のデプシペプチド単位を2種類以上含むものであってもよい。
本発明のポリマー化合物は、例えば、まず、一般式(I)の化合物(デプシペプチド)を合成し、これを重合させることにより得ることができる。
一般式(I)の化合物は後述の実施例のように化学合成によって得ることができる。後述の実施例に記載の化学合成法は、遺伝子組み換えによるポリペプチド温度応答性材料の製造スケールと比較すると、わずか1回〜数回の合成を小規模の実験施設で行うだけで、大規模遺伝子組み換え法製造設備に匹敵する量の温度応答性材料を得ることができる。また従来報告されてきた化学合成の方法(アラッド&グッドマン、Biopolymers、1990年、29巻、1633ページ。)と比較しても100倍以上のスケールで目的物が得られる。
一方、一般式(I)の化合物の重合反応は通常のアミド縮合反応によって行うことができるが、反応性側鎖を有するアミノ酸が含まれる場合は側鎖を保護して重合反応を行うことが好ましい。
また、セグメント縮合と呼ばれる一単位ずつの伸長反応を用いることもできる。
なお、本発明の化合物およびポリマー化合物は保護基を有するものであってもよいが、N末端及びC末端の少なくとも一方のアミノ酸残基が脱保護された場合、水系環境への溶解に適している。
本発明の化合物およびポリマー化合物は、末端に他の化合物や材料が結合したものであってもよい。末端はアミノ末端側とカルボキシ末端側のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。
他の化合物や材料には、ヒドロキシ酸配列、アミノ酸配列、糖鎖配列、タンパク質、多糖、金属錯体または高分子担体、ゲル、フィルム、ラテックス粒子、金属微粒子、プラスチックプレートなどを使用することができる。他の化合物や材料とは、共有結合、配位結合、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合などで結合させることができる。
本発明の化合物およびポリマー化合物は、水、緩衝液、食塩水、または含水有機溶媒と混合することにより、溶媒和状態、ゲル状態、懸濁物、均一な溶液、または相分離状態の組成物を形成することができる。
本発明の化合物およびポリマー化合物は温度応答性を有しているものが好ましい。温度応答性とは、例えば、水中、緩衝液、食塩水、または含水有機溶媒中において、低温側の第一の温度から高温側の第二の温度まで加温されることで凝集する性質をいう。第一の温度、第二の温度はポリマー化合物に含まれるアミノ酸の種類や末端に結合させる他の化合物の種類によって異なり、ポリマー化合物ごとに適宜設定されるが、第二の温度と第一の温度の差は10℃以上であることが好ましい。
なお、凝集は目視、分光光度計を用いた透過率変化やみかけ上の吸光度変化などによって確認することができる。
また、加温により水分子を放出し、冷却により水分子を取り込むという可逆的温度応答性を有するものが好ましい。
このような性質により、本発明の化合物およびポリマー化合物は温度応答性組成物の製造に用いることができる。
温度応答性組成物は、本発明の化合物(デプシペプチドもしくはそのポリマー)または上記他の化合物や材料に結合した本発明の化合物を単独、または、生理学的に許容される担体と組み合わせて使用される。
生理学的に許容される担体は、特に制限されず、粉体、散剤などの固形剤であってもよいが、本発明の化合物は、通常、液体の担体と組み合わせることにより液剤として利用される。すなわち、液剤の担体としては、水、生理食塩水、緩衝液(リン酸緩衝液など)、アルコール水溶液(エタノール水溶液など)、多価アルコール水溶液(5%グリセリン水溶液、エチレングリコール水溶液、プロピレングリコール水溶液など)、糖水溶液(5%グルコース水溶液、ブドウ糖水溶液など)、アルブミン水溶液(5%アルブミン溶液など)などが例示できる。なお、液剤は、溶液剤、懸濁剤、乳剤、軟膏剤、エアゾール剤、貼付剤(パスタ剤、パップ剤)などであってもよい。液剤中の温度応答性材料 (又は温度応答性重合体)の濃度は、重合体の溶液粘度などに応じて、例えば、0.1〜90重量%、好ましくは0.5〜50重量%、さらに好ましくは1〜30重量%(例えば、1〜15重量%)、特に1〜10重量%程度の範囲から選択できる。
温度応答性組成物は、生理的又は薬理的に許容される種々の添加剤、例えば、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体(セルロースエーテル類など)などの高分子、保存剤、安定剤、乳化剤や懸濁化剤、pH調整剤、緩衝剤、薬剤(殺菌剤、消毒剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、鎮痛剤、止血剤など)などを含んでいてもよい。
本発明の温度応答性組成物は、温度に応答して凝集する(例えば、液体からゲルへ変化する)という性質を有しており、さらに生体内での安全性が高いという利点もある。そのため、生体(例えば、患部など)への適用により、塗布部にゲル状の皮膜を形成できる。本発明のポリマーや組成物は生体内で分解吸収される組成物、土壌などの環境下で分解吸収される組成物、細胞接着剤、創傷被覆材料、マイクロカプセル、バイオマシン、バイオセンサー、分離膜、検査キットなどを構成するのに利用できる。これは発明者らの関連研究を踏まえれば容易に開発することが可能である(例えば、吉田ら、Advanced Materials、1997年、9巻、757ページ;廣木ら、Journal of Polymer Science、1998年、36巻、1495ページ;特開平7-233194;吉田ら、Drug Design and Delivery、1991年、7巻、159ページ;真下ら、北関東医学、1991年、41巻、311ページ)。
以下本発明の実施態様である、-Gly-Ile-Gly-Lac-Pro-ユニットの合成方法、およびこれらを用いて得られる、ポリマー化合物 poly(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)の合成方法について詳細をそれぞれ実施例1、2に示す。またその他の実施態様として、-Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-ユニットの合成方法、poly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro) の合成方法、-(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)n- (n = 2, 3, 4) オリゴマーの合成方法について詳細をそれぞれ実施例3、4、5に示す。-Gly-Val-Gly-Lac-Pro-ユニットの合成方法、およびこれらを用いて得られる、ポリマー化合物 poly(Gly-Val-Gly-Lac-Pro)の合成方法について詳細を実施例9に示す。また実施に於いて共通した操作は合成手順1〜3として示した。しかし以下の具体例は本発明を限定するものではなく、例えば保護基や縮合剤を他の慣用のものと置換することなど、適宜変更できることは勿論である。
その他のデプシペプチド単位、つまり例えば、-X1-X2-Gly-Lac-Pro- に於けるX1とX2への任意のアミノ酸残基の導入は実施例のN-α-t-ブトキシカルボニル-L-グリシン(またはN-α-t-ブトキシカルボニル-L-アラニン)とN-α-t-ブトキシカルボニル-L-イソロイシンに代えて、対応するN-α-t-ブトキシカルボニル-アミノ酸を使用することで同様に実施される。
なお、以下の実施例では次のような略号を使用した。
(アミノ酸誘導体)
Boc-Gly-OH:N-α-t-ブトキシカルボニル-グリシン
Boc-Ala-OH:N-α-t-ブトキシカルボニル-L-アラニン
Boc-Ile-OH:N-α-t-ブトキシカルボニル-L-イソロイシン
HCl・H-Pro-OBzl:L-プロリン ベンジルエステル 塩酸塩
(ヒドロキシカルボン酸)
H-Lac-OH:L-乳酸
(アミノ酸の主鎖および側鎖保護基)
Boc:tert-ブトキシカルボニル(t-Bu-O-CO-)
OBzl:ベンジル(-O-CH2-C6H5
(ペプチド合成用試薬、その関連化合物)
DCC:N,N'-ジクロロへキシルカルボジイミド
DCUrea:ジシクロへキシルウレア
HOSu:N-ヒドロキシスクシンイミド
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
TFA:トリフルオロ酢酸
(Boc)2O:ジ-t-ブチルカルボネート
NMM:N-メチルモルホリン
EDC・HCl:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩
DMAP:N,N'-ジメチルアミノピリジン
(溶媒)
THF:テトラヒドロフラン
CHCl3:クロロホルム
CDCl3:重水素化クロロホルム
AcOEt:酢酸エチル
DMF:N,N'-ジメチルホルムアミド
DMSO-d6:重水素化ジメチルスルホキシド
MeOH:メタノール
Et2O:ジエチルエーテル
(その他)
TLC:薄相クロマトグラフィー
[合成手順1:Boc-L-アミノ酸の合成]
L-アミノ酸または側鎖を保護したL-アミノ酸(1.0 mol)を4M NaOH (250 mL, 1.0 mol)に溶かし、氷-MeOHで徐々に冷却しながら最小量のジオキサンに溶かした(Boc)2O (240.0 g, 1.1 mol)を30分かけて徐々に加えた。氷浴で1時間、室温で1時間半攪拌した。析出したNaHCO3をろ別した後、pH3.0にしてAcOEtで抽出する。抽出溶液は10%クエン酸水溶液で洗浄の後、Na2SO4で乾燥させた。乾燥剤をろ別後、ろ液は減圧濃縮し、残渣にヘキサンを加えて結晶化させた。その後、AcOEt-ヘキサンで再結晶を行い、Boc-L-アミノ酸を得た。
[合成手順2:アミノ基末端の脱保護反応、脱Boc化合物の合成]
アミノ基をN-α-t-ブトキシカルボニル保護したペプチド化合物を300 mLナスフラスコに入れドラフト内でTFA(または4M HClのジオキサン溶液)を加え溶解させた。直ちに塩化カルシウム管で蓋をし、水分の混入を防いだ。TLCにより反応の終了を確認後、濃縮しTFA臭(または塩酸臭)がなくなるまで繰り返し蒸留Et2Oを加えて濃縮すると最終的にTFA塩(または塩酸塩)の白色粉末を得る。収率は、ほぼ定量的である。
[合成手順3:縮合反応]
アミノ基をN-α-t-ブトキシカルボニルで保護し、カルボキシル末端を脱保護したペプチド化合物 (2.1 mmol) を300 mL 三角フラスコに入れ蒸留CHCl3に溶かし、HOBt (0.28 g, 2.1 mmol)、EDC・HCl (0.40 g, 2.1 mmol)(またはDCC (0.43 g, 2.1 mmol))を加え攪拌した。次に300 mlのナスフラスコにアミノ基を上記合成手順2で脱保護しTFA塩のペプチド化合物 (1.4 mmol) を入れNMMでTFA塩を中和する。ほぼ等モル(0.15 mL, 1.40 mmol)で中和を確認できるが、結晶性が悪い塩の場合やや多くなることがある。二つの溶液を混合攪拌しながら、直ちに氷冷し反応を開始した。そのままゆっくり室温に戻して一晩攪拌する。この混合物をエバポレーターにより濃縮しAcOEtに溶かしてから、(DCCを使用した場合はAcOEtに不溶のDCUreaを除く)10%クエン酸水溶液、蒸留水、飽和NaHCO3水溶液、蒸留水、飽和食塩水の順に洗浄を行いNa2SO4で乾燥し濃縮してオイル状または無色粉末の縮合生成物を得る。これを、シリカゲルクロマトグラフィー(蒸留CH3Cl-ヘキサンまたはAcOEt-ベンゼン)またはゲルろ過クロマトグラフィー(ファルマシア製LH20、DMFまたはMeOH)により精製する。無色粉末の場合はAcOEt-蒸留Et2Oや蒸留CH3Cl-ヘキサンの溶媒系を
用いて再結晶により精製しても良い。収率はおおよそ70-90%の範囲で得ることができる。
[実施例1]
(1)Boc-Gly-Ile-Gly-Lac-Pro-OBzlの合成
(1a:Boc-Gly-OSuの合成) Boc-Gly-OH (1.54 g, 8.82 mmol) を500 mLのナスフラスコに入れ蒸留CHCl3に溶かし、DCU (2.18 g, 10.6 mmol)、HOSu (1.21 g, 10.6 mmol) を入れ冷却下で攪拌を開始した。一晩放置後、TLCにより反応の終了を確認後、濃縮しDCUreaをろ過した後、AcOEtに溶かし再度析出したDCUreaをろ過した。その後、濃縮しAcOEt-蒸留Et2Oによる再結晶を2回行いBoc-Gly-OSuを得た。収量1.74 g (63.9%). 1H NMR (CDCl3, 300 MHz): 5.04 (1H, Boc-Gly NH); 4.27, 4.23 (2H, Gly αCH2); 2.79 (4H, OSu); 1.40 (9H, Boc t-Bu).
(1b:HCl・H-Pro-OBzlの合成) 排気フード内で1L三口丸底フラスコにベンジルアルコール (200 mL) を入れ冷却攪拌した。そこへ塩化チオニル (20.0 g, 0.168 mol) を1時間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後10分間撹拌させた後、プロリン (28.8 g, 0.250 mol) を加えた。反応系はゆっくり室温に戻しそのまま48時間攪拌を続けた。ベンジルアルコールをロータリーエバポレーターで除き、蒸留Et2Oを加えて結晶化させた。精製は熱エタノールより再結晶を繰り返すことで行った。収量, 45.1 g (74.7%). 1H NMR (CDCl3, 300 MHz): 7.30 (5H, -OBzl C6H5); 5.21 (2H, OBzl -CH2-); 4.80 (1H, Pro αCH); 3.51 (2H, Pro δCH2); 2.20, 1.90 (2H, Pro βCH2); 1.99 (2H, Pro γCH2).
(1c:Boc-Gly-Lac-OHの合成) 500 mLナスフラスコにBoc-Gly-OSu (27.2 g, 100 mmol)とDMAP (4.89 g, 40.0 mmol)を入れ、蒸留THF 100 mLに溶解させた。この時、わずかな溶け残りを1 mLのアセトニトリルを加えて溶解させた。別の300 mLナスフラスコにH-Lac-OH (10.81 g, 120 mmol)を入れ、蒸留THFに溶解させ、ピリジン (9.67 mL, 120 mmol)で中和させた。それを氷冷した500 mLナスフラスコ側に加えた。反応混合物は1時間後に室温へ戻して撹拌を続けた。反応開始から44時間後、TLCによりわずかな未反応物が確認されたが、そのまま溶媒を減圧留去した。残渣にEtOAcを加え、10%クエン酸水溶液で4回、蒸留水で2回洗浄した。洗浄後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で水相に目的物を3回抽出し、氷冷撹拌しながら水相に4M塩酸水溶液を約150 mL加えて、pHを2〜3にした。その後、EtOAcで目的物を抽出した。TLCにて抽出が完了したことを確認後、有機相にNa2SO4を加えて乾燥させた。乾燥剤をろ別後、ろ液は濃縮し、目的物のBoc-Gly-Lac-OHを無色オイルとして得た。収量13.08 g (52.9%). 1H NMR (CDCl3, 300 MHz): 7.90 (1H, Lac -COOH); 6.31 (1H, Lac αCH); 5.19 (1H, Gly NH); 3.98, 3.77 (2H, αCH2) ;1.55 (3H, Lac βCH3) ;1.45 (9H, Boc t-Bu).
(1d:Boc-Gly-Lac-Pro-OBzlの合成) Boc-Gly-Lac-OH (7.17 g, 28.8 mmol) の入った500 mLナスフラスコに蒸留クロロホルムを加え溶解させ、DCC (6.54 g, 31.7 mmol) とHOBt (4.86 g, 31.7 mmol) を加えた。別の300 mLナスフラスコにHCl・H-Pro-OBzl (7.66 g, 31.7 mmol)を入れて蒸留クロロホルムで溶解した。NMM (2.84 mL, 34.1 mmol)を加えて中性になったことを確認した後、500 mLナスフラスコに加えた。氷冷下の攪拌を1時間、その後、反応系を室温に戻し更に42時間撹拌を続けた。TLCにより反応終了を確認した後、析出したDCUreaをろ別し、濃縮した。残渣にAcOEtを加えて30分間冷蔵保存した。ふたたび析出してきたDCUreaをろ別し、10%クエン酸水溶液を加えて1時間攪拌した。これを分液ロートに移し、10%クエン酸水溶液で3回、水で2回、飽和NaCO3水溶液で2回、蒸留水で2回、飽和NaCl水溶液で1回洗浄した後、Na2SO4で乾燥させた。乾燥剤をろ別し、減圧濃縮した。残渣にベンゼンを加え脱水操作を3回行った。残渣はへキサンを加えても結晶化しないため、を試みたが結晶化しなかったため、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 AcOEt-ベンゼン = 1:3 (= v/v))にて精製し、目的物をBoc-Gly-Lac-Pro-OBzlを薄黄色のオイルとして得た。収量5.95 g (収率 47.6%). 1H NMR (CDCl3, 300 MHz): 7.37 (5H, -OBzl C6H5); 5.21 (1H, Lac αCH); 5.19, 5.16 (2H, OBzl -CH2-); 5.20, 5.18 (1H, Gly NH); 5.07 (1H, Pro αCH); 4.61, 4.59 (2H, Gly αCH2); 3.95, 3.93 (2H, Pro δCH2); 3.73, 3.68 (2H, Pro βCH2); 3.55, 3.54 (2H, Pro γCH2); 1.46 (9H, Boc t-Bu); 1.24 (3H, Lac βCH3).
(1e:Boc-Ile-Gly-Lac-Pro-OBzlの合成) HCl・H-Gly-Lac-Pro-OBzl (5.42 g, 14.6 mmol)、NMM (1.61 ml, 14.6 mmol)、Boc-Ile-OH・1/2H2O (4.21 g, 17.52 mmol)、EDC・HCl (3.36 g, 17.52 mmol)、HOBt (2.68 g, 17.52 mmol)を使用し、縮合反応を行い、黄色オイルを得た。収量8.61 g (収率 〜100 %). 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz): 8.30 (1H, Gly NH); 7.35 (5H, -OBzl C6H5); 6.65 (1H, Ile NH); 5.21 (1H, Lac αCH); 5.19, 5.16 (2H, OBzl -CH2-); 4.39 (1H, Pro αCH); 3.99 (1H, Ile αCH); 3.85, 3.82 (2H, Gly αCH2); 3.78, 3.76 (2H, Pro δCH2); 2.19, 2.13 (2H, Pro βCH2); 1.94, 1.92 (2H, Pro γCH2); 1.36 (9H, Boc t-Bu); 1.27 (3H, LacβCH3); 1.08 (2H, Ile γCH2); 0.83 (3H, Ile γCH3); 0.77 (3H, Ile δCH3).
[実施例2]
(2)poly(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)の合成
(2a:Boc-Gly-Ile-Gly-Lac-Pro-OBzlの合成)
HCl・H-Ile-Gly-Lac-Pro-OBzl (3.28 g, 6.80 mmol)、NMM (0.75 mL, 6.80 mmol)、Boc-Gly-OH (1.31 g, 7.50 mmol)、EDC.HCl (1.44 g, 7.50 mmol)、HOBt (1.15 g, 7.50 mmol)を使用し、縮合反応を行い、黄色オイルを得た。収量3.45 g (収率 83.9%). 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): 8.51 (1H, Gly1 NH); 7.66 (1H, Ile NH); 7.35 (5H, -OBzl C6H5); 7.00 (1H Gly3 NH); 5.21 (1H, Lac αCH); 5.11, 5.08 (2H, OBzl -CH2-); 4.35 (1H, Pro αCH); 4.20 (1H, Ile αCH) ;3.94, 3.93 (2H, Gly3 αCH2); 3.77, 3.76 (2H, Gly1 αCH2); 3.51, 3.49 (2H, Pro δCH2); 2.19, 2.17 (2H, Pro βCH2); 1.93, 1.91 (2H, Pro γCH2); 1.34 (9H, Boc t-Bu); 1.26 (3H, Lac βCH3); 1.03 (2H, Ile γCH2); 0.83 (3H, Ile γCH3); 0.77 (3H, Ile δCH3).
(2b:Boc-Gly-Ile-Gly-Lac-Pro-OHの合成)
Boc-Gly-Ile-Gly-Lac-Pro-OBzl (3.45 g, 5.71 mmol) を300 mLナスフラスコに入れ、メタノールを加えて溶液とした。溶液中にパラジウムカーボン粉末をミクロスパチュラ2杯分加えた後、系全体を水素ガスに置換して接触還元反応を11時間行った。反応終了後、5%パラジウムカーボンをろ別、溶媒を減圧留去した。残渣にベンゼンを加え共沸による脱水操作を3回行った。残渣にヘキサンを加えると結晶化した。これをろ取し、減圧乾燥して目的物を得た。収量2.55 g (収率 87.0 %). 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz): 8.50 (1H, Gly1 NH); 7.64 (1H, Ile NH); 6.97 (1H, Gly3 NH); 5.21 (1H, Lac αCH); 4.73 (1H, Pro αCH); 4.21 (1H, Ile αCH); 3.99, 3.97 (2H, Gly3 αCH2); 3.81, 3.79 (2H, Gly1 αCH2); 3.51, 3.49 (2H, Pro δCH2); 2.19, 2.17 (2H, Pro βCH2); 2.03, 2.01 (2H, Pro γCH2); 1.32 (9H, Boc t-Bu); 1.24 (3H, Lac βCH3); 1.04 (2H, Ile γCH2); 0.83 (3H, Ile γCH3); 0.77 (3H, Ile δCH3).
(2c:Boc-Gly-Ile-Gly-Lac-Pro-OSuの合成)
300 mLナスフラスコにBoc-Gly-Ile-Gly-Lac-Pro-OH (2.55 g, 4.95 mmol) とHOSu(0.57g, 4.95 mmol)を加え、蒸留THFに溶解させた。氷冷撹拌しながらDCC (1.12 g, 5.45 mmol)を加え、氷冷下で1時間、室温で24時間撹拌した。TLCにより反応の終了を確認後、DCUreaをろ別し、ろ液は減圧濃縮した。残渣に酢酸エチルを加え1日間冷蔵庫で静置した。生成したDCUreaをろ別し、ろ液は再び減圧濃縮した。残渣に蒸留THFを加えた後、ヘキサンで結晶化させた。蒸留THF−ヘキサンより再結晶した。収量3.12 g (収率 〜100 %). 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz): 8.50 (1H, Gly1 NH); 7.42 (1H, Ile NH); 6.97 (1H, Gly3 NH); 5.21 (1H, Lac αCH); 4.73 (1H, Pro αCH); 4.21 (1H, Ile αCH); 3.99, 3.97 (2H, Gly3 αCH2); 3.81, 3.79 (2H, Gly1 αCH2); 3.51, 3.49 (2H, Pro δCH2); 2.19, 2.17 (2H, Pro βCH2); 2.03, 2.01 (2H, Pro γCH2); 2.78 (4H, OSu); 1.32 (9H, Boc t-Bu); 1.24 (3H, LacβCH3); 1.04 (2H, Ile γ CH2); 0.84 (3H, Ile γCH3); 0.78 (3H, Ile δCH3).
(2d:HCl・H-Gly-Ile-Gly-Lac-Pro-OSuの合成)
Boc-Gly-Ile-Gly-Lac-Pro-OSu (3.03 g, 4.95 mmol)を4M HCl/dioxane (15 mL)により、アミノ基末端を脱保護し無色粉末を得た。収量: 2.57 g (収率 94.5%).
(2e:poly(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)の合成)
100 mLナスフラスコにHCl.H-Gly-Ile-Gly-Lac-Pro-OSu (2.57 g, 4.69 mmol)を入れ、蒸留DMF 40 mLで溶解させた。トリエチルアミン (0.65 mL, 4.69 mmol) を加えて反応を開始した。これを室温で2週間攪拌した。反応終了後、真空ポンプでDMFを減圧留去し、蒸留水を滴下すると無色固体が生成し、これをろ別した。ろ液に食塩を加えた後、クロロホルムで4回抽出を行った。有機層を減圧濃縮後、脱水エーテルを加えて結晶化し、これをろ取した。収量0.98 g (収率 46.2%).
下記のMALDI-TOF法による質量分析から、得られたポリマーの重合度はおよそ3であった(分子量はおよそ1200であった)。
[実施例3]
(3)Boc-Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-OBzlの合成
(3a:Boc-Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-OBzlの合成)
HCl・H-Ile-Gly-Lac-Pro-OBzl (3.96 g, 8.18 mmol)、NMM (0.90 mL, 8.18 mmol)、Boc-Ala-OH (1.86 g, 9.82 mmol)、EDC.HCl(1.88 g, 9.82 mmol)、HOBt (1.50 g, 9.82 mmol)を用いて縮合反応を行い、無色結晶を得た。収量4.93 g (収率 58.1 %). 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz): 8.47 (1H, Gly NH); 7.53 (1H, Ile NH); 7.34 (5H, -OBzl C6H5); 7.02 (1H, Ala NH); 5.21 (1H, Lac αCH); 5.17, 5.14 (2H, OBzl -CH2-); 4.38 (1H, Pro αCH); 4.20 (1H, Ile αCH); 3.98, 3.94 (2H, Gly αCH2); 3.86 (1H, Ala αCH); 3.64, 3.61 (2H, Pro δCH2); 2.19, 2.17 (2H, Pro βCH2); 1.93, 1.91 (2H, Pro γCH2); 1.36 (9H, Boc t-Bu); 1.31 (3H, Ala βCH3); 1.13 (3H, Lac βCH3); 1.03 (2H, Ile γCH2); 0.83 (3H, Ile γCH3); 0.77 (3H, Ile δCH3).
[実施例4]
(4)poly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)の合成
(4a:Boc-Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-OHの合成)
300 mLナスフラスコにBoc-Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-OBzl (3.34 g, 5.39 mmol)を入れ、メタノールを加えて溶解させた。5%パラジウムカーボン粉末をミクロスパチュラ2杯分加えた後、系全体を水素ガスに置換して接触還元反応を11時間行った。反応終了後、5%パラジウムカーボンをろ別、溶媒を減圧留去した。残渣にベンゼンを加え共沸による脱水操作を3回行った。残渣に少量の酢酸エチルを加えた後、ヘキサンを加えると結晶化した。これをろ取し、減圧乾燥して目的物を得た。
収量2.20 g (収率 77.2%). 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz): 8.46 (1H, Gly NH); 7.55 (1H, Ile NH); 7.01 (1H, Ala NH); 5.21 (1H, Lac αCH); 4.21 (1H, Pro αCH); 3.98 (1H, Ile αCH); 3.97, 3.96 (2H, Gly αCH2); 3.72 (1H, Ala αCH); 3.59, 3.50 (2H, Pro δCH2); 2.14, 2.16 (2H, Pro βCH2); 1.93, 1.91 (2H, Pro γCH2); 1.36 (9H, Boc t-Bu); 1.32 (3H, Ala βCH3); 1.14 (3H, Lac βCH3); 1.12 (2H, Ile γCH2); 0.83 (3H, Ile γCH3); 0.80 (3H, Ile δCH3).
(4b:Boc-Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-OSuの合成)
Boc-Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-OH (2.18 g, 4.12 mmol)とHOSu (0.47g, 4.12 mmol) を300 mLナスフラスコに入れ、蒸留THFに溶解させた。氷冷撹拌しながらDCC (0.93 g, 4.53 mmol) を加えて反応を開始した。氷冷下1時間、室温で21時間撹拌した。TLCにより反応の終了を確認後、DCUreaをろ別し、ろ液を減圧濃縮し、残渣にAcOEtを加え1日間冷蔵庫で静置した。生成したDCUreaを再びろ別した後、ヘキサンにより結晶化させた。さらに酢酸エチル−ヘキサンより再結晶した。収量2.49
g (収率 96.5 %). 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz): 8.48 (1H, Gly NH); 7.55 (1H, Ile NH); 7.00 (1H, Ala NH); 5.24 (1H, Lac αCH); 4.73 (1H, Pro αCH); 3.97 (1H, Ile αCH); 3.78, 3.74 (2H, Gly αCH2); 3.66 (1H, Ala αCH); 3.57, 3.43 (2H, Pro δCH2); 2.79 (4H, OSu); 2.14, 2.16 (2H, Pro βCH2); 1.93, 1.91 (2H, Pro γCH2); 1.36
(9H, Boc t-Bu); 1.33 (3H, Ala βCH3); 1.15 (3H, Lac βCH3); 1.12 (2H, Ile γCH2); 0.83 (3H, Ile γCH3); 0.80 (3H, Ile δCH3).
(4c:HCl・H-Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-OSuの合成)
Boc-Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-OSu (3.03 g, 4.95 mmol) を4M HCl/dioxane (15 mL)により、アミノ基末端を脱保護し無色粉末を得た。収量: 2.51 g (収率 〜100%).
(4d:poly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro) の合成)
100 mLナスフラスコにHCl.H-Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-OSu (1.20 g, 2.13 mmol) を入れ、蒸留DMF 4.0 mLで溶解させた。トリエチルアミン (0.30 mL, 2.13 mmol) を加えて反応を開始した。これを約35℃の水浴で温めながら攪拌した。反応系の粘度が上昇するに従いDMFを加え、最終的に16.0 mLとなった。36時間後、反応系に蒸留水を滴下すると無色固体が生成し、これをろ別した。ろ液に食塩を加えた後、クロロホルムで4回抽出を行った。有機層を減圧濃縮後、脱水エーテルを加えて結晶化し、これをろ取した。収量0.20 g (収率 21.3%). 融点212-214℃. [α]D 20 = -82.4°.
下記のMALDI-TOF法による質量分析から、得られたポリマーの重合度はおよそ10であった(分子量はおよそ4500であった)。
[実施例5]
(5)Boc-(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)n-OBzl(n = 2,3,4)の合成
(5a:Boc-(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)2-OBzlの合成)
HCl・H-Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-OBzl (2.55 g, 4.58 mmol)、NMM (0.51 mL, 4.58 mmol)、Boc- Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-OH (2.67 g, 5.05 mmol)、EDC・HCl(0.97 g, 5.05 mmol)、HOBt (0.77 g, 5.05 mmol)を用いて縮合反応を行い、無色結晶を得た。収量 3.70 g (収率 77.2 %). 融点159-161℃. [α]D 20 = -160.6°. 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): 8.50 (1H, Gly3 NH); 8.45 (1H, Gly8 NH); 8.04 (1H, Ala6 NH); 7.61 (1H, Ile7 NH); 7.57 (1H, Ile2 NH); 7.34 (5H, -OBzl C6H5); 7.05, 6.55 (1H Ala1 NH); 5.21 (2H, Lac4, Lac9 αCH); 5.10, 5.05 (2H, OBzl -CH2-); 4.40, 4.30 (2H, Pro5, Pro10 αCH); 4.25 (1H, Ala6 αCH); 4.20 (2H, Ile2, Ile7 αCH); 4.00 (1H, Ala1 αCH); 3.98, 3.97 (2H, Gly3, Gly8 αCH2); 3.70, 3.72 (2H, Gly3, Gly8 αCH2); 3.57, 3.53 (4H, Pro5, Pro10 δCH2); 2.14, 2.04 (4H, Pro5, Pro10 βCH2); 1.91, 1.80 (4H, Pro γCH2); 1.65 (2H, Ile2, Ile7 γCH2); 1.36 (9H, Boc t-Bu); 1.30 (3H, Lac9 βCH3); 1.25 (3H, Lac4 βCH3); 1.15 (6H, Ala1, Ala6 βCH3); 1.12 (2H, Ile2, Ile7 γCH2); 0.83 (6H, Ile2, Ile7 γCH3); 0.80 (6H, Ile2, Ile7 γCH3).
(5b:HCl・H-(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)2-OBzlの合成)
Boc-(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)2-OBzl (1.20 g, 1.15 mmol)を4M HCl/dioxane (2.9 mL)により、アミノ基末端を脱保護し無色粉末を得た。収量1.02 g (収率91.1%).
(5c:Boc-(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)3-OBzlの合成)
HCl・H-(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)2-OBzl (1.02 g, 0.97 mmol)、NMM (0.118 mL, 0.970 mmol)、Boc-Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-OH (0.570 g, 1.07 mmol)、EDC・HCl(0.220 g, 1.07 mmol)、HOBt (0.145 g, 1.07 mmol)を用いて縮合反応を行い、無色結晶を得た。収量0.90 g (収率62.8%). 融点190-192℃. [α]D 20 = -148.8°. 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): 8.48 (1H, Gly3 NH); 8.43 (1H, Gly8, Gly13 NH); 8.05 (1H, Ala6, Ala11 NH); 7.65 (2H, Ile7, Ile12 NH); 7.55 (1H, Ile2 NH); 7.34 (5H, -OBzl C6H5); 7.05, 6.53 (1H, Ala1 NH); 5.20 (3H, Lac4, Lac9, Lac13 αCH); 5.10, 5.05 (2H, OBzl -CH2-); 4.40, 4.30 (3H, Pro5, Pro10, Pro15 αCH); 4.25 (2H, Ala6, Ala11 αCH); 4.20 (3H, Ile2, Ile7, Ile12 αCH); 3.90 (1H, Ala1 αCH); 3.98, 3.97 (3H, Gly3, Gly8, Gly13 αCH2); 3.70, 3.72 (3H, Gly3, Gly8, Gly13 αCH2); 3.57, 3.53 (6H, Pro5, Pro10, Pro15 δCH2) ;2.14, 2.04 (6H, Pro5, Pro10, Pro15 βCH2); 1.91, 1.80 (6H, Pro5, Pro10, Pro15 γCH2); 1.65 (3H, Ile2, Ile7, Ile12 γCH2); 1.36 (9H, Boc t-Bu); 1.30 (6H, Lac9, Lac13 βCH3); 1.25 (3H, Lac4 βCH3); 1.15 (6H, Ala6, Ala11 βCH3); 1.10 (3H, Ala1 βCH3); 1.05 (3H, Ile2, Ile7, Ile12 γCH2); 0.83 (9H, Ile2, Ile7, Ile12 γCH3); 0.75 (9H, Ile2, Ile7, Ile12 γCH3).
(5d:HCl・H-(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)3-OBzlの合成)
Boc-(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)3-OBzl (1.20 g, 1.15 mmol)を4M HCl/dioxane (0.850 mL)により、アミノ基末端を脱保護し無色粉末を得た。収量0.48 g (収率〜100%).
(5e:Boc-(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)4-OBzlの合成)
HCl・H-(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)3-OBzl (0.48 g, 0.34 mmol)、NMM (0.037 mL, 0.34 mmol)、Boc-Ala-Ile-Gly-Lac-Pro-OH (0.20 g, 5.05 mmol)、EDC.HCl (0.76 g, 0.37 mmol)、HOBt (0.050 g, 0.37 mmol)を用いて縮合反応を行い、無色粉末を得た。収量 0.370 g (収率 57.5 %). 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): 8.48 (1H, Gly3 NH); 8.43 (1H, Gly8, Gly13, Gly18 NH); 8.05 (1H, Ala6, Ala11, Ala16 NH); 7.65 (3H, Ile7, Ile12, Ile17 NH); 7.55 (1H, Ile2 NH); 7.34 (5H, -OBzl C6H5); 7.05, 6.53 (1H, Ala1 NH); 5.20 (4H, Lac4, Lac9, Lac14, Lac18 αCH); 5.10, 5.05 (2H, OBzl -CH2-); 4.40, 4.30 (4H, Pro5, Pro10, Pro15, Pro20 αCH); 4.25 (3H, Ala6, Ala11, Ala16 αCH); 4.20 (4H, Ile2, Ile7, Ile12, Ile17 αCH); 3.90 (1H, Ala1 αCH); 3.98, 3.97 (4H, Gly3, Gly8, Gly13, Gly18 αCH2); 3.70, 3.72 (4H, Gly3, Gly8, Gly13, Gly18 αCH2); 3.57, 3.53 (8H, Pro5, Pro10, Pro15, Pro20 δCH2); 2.14, 2.04 (8H, Pro5, Pro10, Pro15, Pro20 βCH2); 1.91, 1.80 (8H, Pro5, Pro10, Pro15, Pro20 γCH2); 1.65 (4H, Ile2, Ile7, Ile12, Ile17 γCH2); 1.36 (9H, Boc t-Bu); 1.30 (9H, Lac9, Lac14, Lac19 βCH3); 1.25 (3H, Lac4 βCH3); 1.15 (9H, Ala6, Ala11, Ala16 βCH3); 1.10 (3H, Ala1 βCH3); 1.05 (4H, Ile2, Ile7, Ile12, Ile17 γCH2); 0.83 (12H, Ile2, Ile7, Ile12, Ile17 γCH3); 0.75 (12H, Ile2, Ile7, Ile12, Ile17 γCH3).
[実施例6]
(6)MALDI-TOF法による質量分析
実施例2および4で得られたポリマー化合物についてMALDI-スペクトルを測定した。これは重合反応で合成された化合物がどの程度の大きさの分子量を持ったポリマーであるか確かめることができる。ここには図1と図2にpoly(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)とpoly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)の例を示した。その結果、poly(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)(モノマーユニットの質量 = 396.19)は2〜4量体が観測された。また、poly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)(モノマーユニットの質量 = 428.2)は7〜15量体が観測された。ここで用いた試料は透析膜による精製を行っていないこと、高分子量側のピークは照射レーザー強度によって変化することの2点から、特にpoly(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)では低い重合度の化合物が観測されたと考えられる。
[実施例7]
(7)円偏光二色性スペクトル
実施例2および4で得られたポリマー化合物について温度変化円偏光二色性スペクトルを測定した。これは目視観測による温度応答性変化とは異なった情報を得ることができる。例えば溶液構造についての知見である。ここには図3と図4にpoly(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)とpoly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)の例を示した。その結果、スペクトルはそれぞれ、205 nmと210 nmに等円二色性点を示しながら変化した。希薄水溶液(0.1 mg/mL)のために凝集はみられない。温度が上昇するに従ってそれぞれ、195 nmと198 nmに見られる負のバンドが減少してゆくことがわかる。これは発明者らの関連研究により溶液構造がより乱雑になってゆくためと考えられている。(例えば、奥ら、Journal of Polymer Science, Part A, Polymer Chemistry、2000年、38巻、4524ページ。および、奥ら、Journal of Polymer Science, Part A, Polymer Chemistry、2000年、39巻、56ページ。)
[実施例8]
(8)見かけの吸光度による温度応答性の観測
実施例2および4で得られたポリマーについてそれらの水系溶液を加温することによる温度応答性変化をみかけの吸光度により観測した。観測波長には350 nmを用いた。これは目視による光の散乱即ち白濁する現象に対応している。ここには図5と図6にpoly(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)とpoly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro) の例を示した。グラフの縦軸は透過率から換算した濁度を用いた。これにより温度応答の速さを比較することができる。すなわち、昇温速度と降温速度が1℃/5 minの場合、poly(Gly-Ile-Gly-Lac-Pro)は温度を上げるとゲル化し、冷却すると液状化するという可逆的な温度応答性を示すのに対し、poly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro) は冷却しても数時間の範囲で非可逆な温度応答を示すことがわかる。また、目視による観測と測定された濁度の比較では、濁度がおおよそ10〜20%を越えた時点でも十分に凝集が進行している。
特にpoly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)は可逆ではあるものの、高温時の凝集状態を低温(4℃)にした際に、通常見られる数秒間での素早い温度応答(均一な溶液への戻り)が見られなかった点で初めての例である。実際には、溶液を1〜2日間4℃に静置することで、ようやく均一な溶液に戻すことができた。低温での非常にゆっくりとした応答(均一な溶液への戻り)を示す点は、これまでにない全く新規な性質である。
また、実施例5で得られたオリゴデプシペプチドBoc-(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)n-OBzl(n = 2-4)についても、カルボキシ末端やアミノ末端の保護基を外すことにより容易に水溶液となり、ポリデプシペプチドと同様な温度応答性が確認することができた。
[実施例9]
(9)poly(Gly-Val-Gly-Lac-Pro)の合成
(9a:Boc-Val-Gly-Lac-Pro-OBzlの合成) HCl・H-Gly-Lac-Pro-OBzl(6.18 g, 16.7mmol)、NMM(1830 mL, 16.70 mmol)、Boc-Val-OH(3.96 g, 18.20 mmol)、DCC(3.78 g, 18.30 mmol)とHOBt・H2O(0.50 g, 3.26 mmol)を使用し、縮合反応を行い、黄色オイルを得た。収量 8.8 g (収率 99 %). 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz): 8.32(1H, Gly NH); 7.37 (5H, OBzl C6H5-); 6.66 (1H, Val NH); 5.22 (1H, Lac αCH); 5.08 (2H, OBzl -CH2-), 4.39 (1H, Pro αCH); 4.06 (1H, Val αCH); 3.77 (2H, Gly αCH2); 3.53 (2H, Pro γCH2); 2.20 (1H, Val βCH); 1.93 (2H, Pro γCH2); 1.37 (9H, Boc t-Bu-); 1.27 (3H, Lac βCH3); 0.87 (3H, Val γCH3).
(9b:HCl・H-Val-Gly-Lac-Pro-OBzlの合成) Boc-Val-Gly-Lac-Pro-OBzl (2.35g, 4.40 mmol)のTHF溶液に4 M HCl / ジオキサン (11 mL)を加えてアミノ基末端を脱保護した。無色固体。収量 1.9 g (収率 92 %). 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz): 8.90 (1H, Gly NH); 8.17 (2H, Val NH3+-); 7.35 (5H, OBzl C6H5-); 5.25 (Lac αCH); 5.09 (2H, OBzl -CH2-); 4.37 (1H, Pro αCH); 4.17 (1H, Val αCH); 3.89 (Gly αCH2); 3.48 (2H, Pro γCH2); 2.20 (1H, Val βCH); 1.91 (2H, Pro γCH2); 1.39 (3H, Lac βCH3); 0.97 (6H, Val γCH3).
(9c:Boc-Gly1-Val2-Gly3-Lac4-Pro5-OBzlの合成) HCl・Val-Gly-Lac-Pro-OBzl(3.55 g, 7.55 mmol)、NMM (830 mL, 7.55 mmol)、Boc-Gly-OH (1.47g, 8.39 mmol)、EDC・HCl (1.57 g, 8.19 mmol)、HOBt・H2O (0.11g, 0.718 mmol)を用いて縮合反応を行い、黄色オイルを得た。収量 7.7 g (収率 86 %). 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz): 8.48 (1H, Gly3 NH); 7.60 (1H, Val NH); 7.33 (5H, OBzl C6H5-); 6.98 (1H, Gly1 NH); 5.21 (1H, Lac αCH); 5.17 (2H, OBzl -CH2-); 4.36 (1H, Pro αCH); 4.21 (1H, Val αCH); 3.73 (2H, Gly αCH2); 3.55 (2H, Pro δCH2); 2.19 (1H, Val βCH); 1.94 (2H, Pro γCH2); 1.36 (9H, Boc tBu-); 1.25 (3H, Lac βCH3); 0.87 (6H, Val γCH3).
(9d:Boc-Gly1-Val2-Gly3-Lac4-Pro5-OH の合成) Boc-Gly-Val-Gly-Lac-Pro-OBzl (0.81 g, 1.37 mmol)、を300 mLナスフラスコに入れ、メタノールを加えて溶解させた後、Pd-C粉末をミクロスパチュラ2杯加えた。装置を組み立て、300 mLナスフラスコ中を水素ガスで満たしてから撹拌を始め接触還元を行った。5時間後、TLCにより反応終了を確認した。Pd-C粉末を除去し、ろ液を濃縮した後、ベンゼン共沸によりメタノールと水分を十分に留去した。残渣に酢酸エチル続いてヘキサンを加え、これをろ取して減圧乾燥させて無色結晶を得た。収量 0.5 g (収量 73 %). 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): 8.51 (1H, Gly3 NH); 7.67, 7.65 (1H, Val NH, 構造異性に由来する2つのシグナル); 7.00 (1H, Gly1 NH); 5.21 (1H, Lac αCH); 4.20 (1H, Pro αCH); 3.98 (1H, Val αCH); 3.77 (2H, Gly αCH2); 3.56 (2H, Pro δCH2); 2.15 (1H, Val βCH); 1.80 (2H, Pro γCH2); 1.35 (9H, Boc tBu-); 1.29 (3H, Lac βCH3); 0.85 (6H, Val γCH3).
(9e:Boc-Gly1-Val2-Gly3-Lac4-Pro5-OSu の合成) Boc-Gly-Val-Gly-Lac-Pro-OH (0.80 g, 1.60 mmol)、HOSu (0.19 g, 1.65 mmol)、DCC (0.39 g, 1.89 mmol) を用い、蒸留THF中で縮合反応を行い、無色結晶を得た。収量 0.8 g (収率 85 %). 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): 8.51 (1H, Gly3 NH); 7.66, 7.63 (1H, Val NH, 構造異性に由来する2つのシグナル); 7.00 (1H, Gly1 NH); 5.26(1H, Lac αCH); 4.72 (1H, Pro αCH); 4.23 (1H, Val αCH); 3.77 (2H, Gly αCH2); 3.56 (2H, Pro δCH2); 2.79 (1H, Val βCH); 1.80 (2H, Pro γCH2); 1.35 (9H, Boc tBu-); 1.29 (3H, Lac βCH3); 0.85 (6H, Val γCH3).
(9f:HCl・H-Gly1-Val2-Gly3-Lac4-Pro5-OSu の合成) Boc-Gly-Val-Gly-Lac-Pro-OSu (0.81 g, 1.35 mmol)の蒸留クロロホルム溶液にを加えてアミノ基末端を脱保護した。無色固体。収量 726 mg (収率 ほぼ定量的). 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz): 8.61 (1H, Gly3 NH); 8.52, 8.45 (1H, Val NH); 8.07 (1H, Gly1 NH3+-); 5.24 (1H, Lac αCH); 4.74 (1H, Pro αCH); 4.26 (1H, Val αCH); 3.77 (2H, Gly αCH2); 3.62 (2H, Pro δCH2); 2.04 (3H, Val βCH, Pro γCH2); 1.34 (3H, Lac βCH3); 0.92 (6H, Val γCH3).
(9g:poly(Gly-Val-Gly-Lac-Pro)の合成) HCl・H-Gly-Val-Gly-Lac-Pro-OSu(1.38 g, 2.58 mmol)を25mLバイアルに入れ、蒸留DMFを1.2 mL加えて溶解させた。トリエチルアミン (358 mM, 2.58 mmol)を加えて、35℃付近で約3週間攪拌した。3週間後に反応系を減圧濃縮し、アセトニトリルをゆっくり滴下した。無色粉末が析出したのでろ取した。1H NMR測定から目的物であるとわかった。ほぼ無色の目的物固体。収量 673 mg (収率 65 %). 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz): 8.70 (1H, Gly3 NH); 8.16 (1H, Gly1 NH); 7.67, 7.63 (1H, Val NH); 5.25 (1H, Lac αCH); 4.20 (1H, Pro αCH); 3.68 (1H, Val αCH); 3.60 (2H, Gly αCH2); 2.0 (5H, Val βCH, Pro γCH2, Pro δCH2); 1.33 (3H, Lac βCH3); 0.88 (6H, Val γCH3).
[実施例10]
(10)MALDI-TOF法による質量分析
実施例9で得られたポリマー化合物についてMALDI-スペクトルを測定した。これは重合反応で合成された化合物がどの程度の大きさの分子量を持ったポリマーであるか確かめることができる。ここには図7にpoly(Gly-Val-Gly-Lac-Pro)の例を示した。その結果、poly(Gly-Val-Gly-Lac-Pro)(モノマーユニットの質量 = 382.41)は12〜18量体の領域に強いシグナルが観測された。低分子量領域のシグナルは見かけ上2〜4量体に相当する。しかし実際には高分子量体の多価イオンが観測されたと考えられる。
[実施例11]
(11)円偏光二色性スペクトル
実施例9で得られたポリマー化合物について温度変化円偏光二色性スペクトルを測定した。これは目視観測による温度応答性変化とは異なった情報を得ることができる。例えば溶液構造についての知見である。ここには図8にpoly(Gly-Val-Gly-Lac-Pro) の例を示した。その結果、スペクトルは210 nmに等円二色性点を示しながら変化した。希薄水溶液(0.1 mg/mL)のために凝集はみられない。温度が上昇するに従って200 nmに見られる負のバンド強度が減少してゆくことがわかる。
[実施例12]
(12)見かけの吸光度による温度応答性の観測
実施例9で得られたポリマーについて、水系溶液を加温することによる温度応答性変化を、みかけの吸光度により観測した。観測波長には350 nmを用いた。これは目視による光の散乱、即ち白濁する現象に対応している。ここには図9にpoly(Gly-Val-Gly-Hmb-Pro)(Hmb = 2-hydroxy-3-methylbutanoic acid)との比較例を示した。グラフの縦軸は透過率から換算した濁度を用いた。これにより、ヒドロキシカルボン酸残基の違いによる、相転移温度の差を明らかにできる。すなわち、昇温速度と降温速度が1 ℃/5 minの場合、poly(Gly-Val-Gly-Hmb-Pro)は20〜30℃で凝集を起こした。一方、poly(Gly-Val-Gly-Lac-Pro) は同じ条件では凝集温度が70℃以上になることがわかった。これは疎水性が高いほど相転移温度が低くなることで説明できる。
図10に示すとおり、poly(Gly-Val-Gly-Lac-Pro)水溶液の濃度が高くなるにつれて、凝集が70℃以下で観察されるようになった。また、この相転移現象は可逆(図11)であり、凝集温度は、10〜40 mg/mLの範囲では、濃度が増加するにつれて低下することがわかった(図10)。
本発明のデプシペプチド化合物またはそのポリマーは温度応答性デプシペプチド材料やこれを含む温度応答性組成物として使用することができる。本発明の温度応答性材料や組成物は生体内で分解吸収される組成物、土壌などの環境下で分解吸収される組成物、細胞接着剤、薬物運搬体、創傷被覆材料、人工筋肉、マイクロカプセル、バイオマシン、バイオセンサー、分離膜、検査キットなどを構成するのに利用できる。これは発明者らの関連研究を踏まえれば容易に開発することが可能である(例えば、吉田ら、Advanced Materials、1997年、9巻、757ページ;廣木ら、Journal of Polymer Science、1998年、36巻、1495ページ;特開平7-233194;吉田ら、Drug Design and Delivery、1991年、7巻、159ページ;真下ら、北関東医学、1991年、41巻、311ページ)。

Claims (7)

  1. 下記一般式 (I)
    R1−Gly−Lac−Pro−R2 (I) で表される化合物。
    (式中、−Gly−Lac−Pro− は下記式(II)の構造を示し、R1は水素原子、アミド結合で結合したアミノ酸、ポリペプチドまたはヒドロキシカルボン酸、R2は水酸基、アミド結合で結合したアミノ酸もしくはポリペプチド、またはエステル結合で結合したヒドロキシカルボン酸を表す。)
    Figure 2008023582
  2. 前記一般式(I)が、X1−X2−Gly−Lac−Pro (X1およびX2はα−アミノ酸残基を示す)である請求項1に記載の化合物。
  3. 請求項1または2に記載の化合物を重合させて得られるポリマー。
  4. 末端に糖鎖配列、タンパク質、多糖、金属錯体、高分子担体、ゲル、フィルム、ラテックス粒子、金属微粒子、無機微粒子、ガラスプレート、もしくはプラスチックプレートが結合した、請求項1もしくは2に記載の化合物、または請求項3に記載のポリマー。
  5. 請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3に記載のポリマーを、水、緩衝液、食塩水、または含水有機溶媒と混合させることにより得られる組成物であって、溶媒和状態、ゲル状態、懸濁物、均一な溶液、または相分離状態を形成する組成物。
  6. 加温により水分子を放出し、冷却により水分子を取り込む請求項5に記載の組成物。
  7. 請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3に記載のポリマーを含む温度応答性組成物。
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